説明

低結晶度サセプタフィルム

マイクロ波エネルギー相互作用構造であって、約50%未満の結晶度を有するポリマーフィルム、及び該ポリマーフィルム上のマイクロ波エネルギー相互作用材料層を含む、マイクロ波エネルギー相互作用構造。マイクロ波エネルギー相互作用材料層は、衝突するマイクロ波エネルギーのうちの少なくとも一部を熱エネルギーに変換させるように作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は2009年2月23日付けで出願された米国仮特許出願第61/208,379号、2009年7月30日付けで出願された米国仮特許出願第61/273,090号、及び2009年8月26日付けで出願された米国仮特許出願第61/236,925号(これらは各々その全体が参照により本明細書中に援用される)の利点を主張している。
【背景技術】
【0002】
隣接する食品のブラウニング(browning:焼き色付け)及び/又はクリスピング(crisping)を高めるためにマイクロ波加熱パッケージにサセプタを使用することが知られている。サセプタは、衝突するマイクロ波エネルギーの少なくとも一部を吸収し、マイクロ波エネルギー相互作用材料層における抵抗の喪失によりマイクロ波エネルギーを熱エネルギー(すなわち熱)へと変換する性質がある(tends to)マイクロ波エネルギー相互作用材料の薄層である。残りのマイクロ波エネルギーはサセプタにより反射されるか、又はサセプタを透過する。
【0003】
マイクロ波エネルギー相互作用材料層(すなわちサセプタ)は通常、サセプタフィルムを規定するためにポリマーフィルム上に支持される。最も従来型のサセプタフィルムでは、ポリマーフィルムは二軸延伸熱硬化ポリエチレンテレフタレートを含む。サセプタフィルムは通常、接着剤を用いて又は別の方法で支持層、例えば紙又は板紙に接合(例えばラミネート加工)されており、それによりサセプタフィルムに寸法安定性を与えると共に、金属層を損傷から守る。得られた構造を「サセプタ構造」と称することもある。
【0004】
通常従来型のサセプタフィルムでは、サセプタは、一般的に約500オングストローム未満の厚さ、例えば約60オングストローム〜約100オングストロームの厚さのアルミニウムを含み、光学密度は約0.15〜約0.35、例えば約0.17〜約0.28であり、ポリマーフィルムは、二軸延伸熱硬化フィルム、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)から製造された二軸延伸フィルムを含む。通常、かかるフィルムは「高延伸」である、すなわち延伸プロセス中の伸張率は、縦方向(MD)に約3.5:1〜約4:1、及び横方向(cross-machine direction)(CD)に約3.5:1〜約4:1である。かかるサセプタ構造は通常、「自己制限的」である、すなわちサセプタ構造は、或る特定の温度に達すると損傷又は分解(すなわちクレージング(crazing:ひび割れ)又はクラッキング(cracking:割れ、亀裂))を受け、そのため熱を発生するサセプタの能力が制限される。理論に縛られることは意図しないが、サセプタの熱が高延伸フィルムの残存する収縮力を幾らか解放すること、及び収縮力がその元の構成にフィルムを保持するラミネート加工接着剤の能力を超える場合、ポリマーフィルムでクレージング(すなわちクラッキング)が起こり、それにより金属層での電流の流れを遮断するサセプタにおける断絶が形成されることが考えられている。クレージングが進行し亀裂が互いに交差するにつれて、交差線のネットワークがサセプタ平面を徐々に小さくなる導電性の島へと細分化する(subdivides)。結果として、サセプタの全体としての反射率が低減し、サセプタの全体としての透過率が増大すると共に、サセプタにより顕熱へと変換されるエネルギー量が低減する。
【0005】
この自己制限的な挙動が時期尚早に(すなわち加熱サイクルにおいてあまりにも初期に)起こる場合、サセプタが特定の食品加熱用途に必要な量の熱を発生することができないことがある。これとは対照的に幾つかの場合で、この自己制限的な挙動は、かかる挙動がない場合に(otherwise)サセプタの急騰(runaway)(すなわち非制御)加熱が隣接する食品、及び/又は任意の支持構造若しくは支持基板、例えば紙若しくは板紙の過度のチャーリング(charring:黒焼き)又はスコーチ(scorching:焼け)を引き起こす可能性がある場合には有利であり得る。このためそれぞれの用途で、十分な加熱の必要性と不要な過熱を防ぐ要求とのバランスをとる必要がある。残念ながら、従来型の高延伸PETサセプタでは、クレージングが起こる温度は、例えば金属層の厚さ、接着剤の種類及び量、並びに接着剤塗布の均一性を変更することによりわずかしか制御することができない。
【0006】
本質的により高い融点を有する、他のポリマー、例えばポリエチレンナフタレート、及びポリシクロへキシレン−ジメチレンテレフタレート(PCDMT)等の或る特定のコポリエステルが、高延伸PETの代わりとして提唱されている。しかしながらこれらの材料は加工するのが困難であり、かつPETよりも高価であり、そのため様々な参考文献で開示されているのにもかかわらず、商品化されていないと考えられる。さらに中には、或る特定の加熱条件下で安全上の問題を引き起こすものがある。例えば、特許文献1は、PCDMTが、サセプタ構造において紙を焦がす若しくはチャーリングさせる、又はサセプタと接する食品を焦がす可能性があるほどに熱くなることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,527,413号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、高延伸フィルムから形成される従来型のサセプタ構造よりも大きい熱流束及び/又は高い温度を達成することができ、それにより過度のチャーリングによる損傷もなく食品のより良好なブラウニング(褐変)及び/又はクリスピングを可能にするサセプタ構造に対する必要性が存在する。サセプタ構造の製造時の取り扱いが比較的容易なポリマーフィルムから形成されるサセプタ構造に対する必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は概して、サセプタフィルムに使用するためのポリマーフィルム、このようなポリマーフィルムを製造する方法、及びポリマーフィルムを含むサセプタフィルムに関する。サセプタは支持層と接合し、サセプタ構造を形成することができる。サセプタフィルム及び/又はサセプタ構造を用いて、数多くのマイクロ波エネルギー相互作用構造、マイクロ波加熱パッケージ、又は他のマイクロ波エネルギー相互作用構築物を形成することができる。
【0010】
一態様では、ポリマーフィルムは、電子レンジでの加熱前には約50%未満の結晶(化)度を有し得る。幾つかの実施の形態では、結晶度は25%未満、10%未満、又は7%未満、例えば約5%であり得る。別の態様では、ポリマーフィルムは概して非延伸であり得る(すなわち延伸し得ない)。非延伸ポリマーフィルムはポリマーの融点未満の温度では縦方向及び横方向のいずれか又は両方に伸張しないフィルムである。幾つかの場合、ポリマーフィルムは形成されると迅速に急冷し、これにより低結晶度、例えば約25%未満の結晶度が得られ、このことは概して溶解物を所望の最終フィルム厚まで引き下げることに関連する溶融延伸に起因し得る。高延伸ポリマーフィルムを含む従来型のサセプタ構造より大きい熱流束及び/又は高い温度を達成するために、比較的低い結晶度を有する、及び/又は少なくとも実質的には非延伸のポリマーフィルムをサセプタフィルム及びサセプタ構造に使用することができることが分かっている。
【0011】
例示的な1つの実施の形態では、ポリマーフィルムは非結晶性ポリエチレンテレフタレート(APET)又は非結晶性ナイロンを含み得る。
【0012】
必要に応じて、ポリマーフィルムの強度及び/又は加工性を高めるために、1つ又は複数の添加剤(すなわちポリマー)をポリマーフィルムに組み込むことができる。付加的には又は代替的には、多層ポリマーフィルムを用いることによりポリマーフィルムの強度及び/又は加工性を高めることができ、かかる層の1つ又は複数がポリマーフィルムに所望のレベルの頑健性(robustness)をもたらす。したがって、多層フィルムは、フィルムを加工(例えば金属加工、化学的エッチング、ラミネート加工及び/又はプリント加工)し、高速変換操作を用いて様々なサセプタ構造及び/又はパッケージに変換することができるような、引裂強度の増大、強靭性、及び寸法許容性の向上を特徴づけ得る。
【0013】
必要に応じて、所望の特質を有するポリマーを選択することによりさらなる機能特性を多層フィルムに与えることができる。例えば、多層フィルムはポリマーフィルムを多くの用途に、例えば賞味期間の延長を必要とする冷蔵した電子レンジに使える食品用のパッケージに好適にさせ得る障壁特性を有し得る。
【0014】
別の態様では、ポリマーフィルムはポリマーとブレンドした添加剤の使用により変更することができる温度耐性を有し得る。
【0015】
本発明の他の特徴、態様及び実施形態が以下の記載から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
サセプタの自己制限的な挙動を理解するための試みが幾つか為されているが、マイクロ波サセプタフィルムに使用される延伸フィルムの収縮特性と得られるサセプタ性能との間の関係性は概して、調査又は評価されていない。
【0017】
したがって本開示は、所望のレベルの自己制限的な挙動を与えながら従来型のサセプタフィルムより高い温度を達成することが可能な様々なサセプタフィルムに関する。サセプタフィルムは概して、電子レンジでの加熱前に約50%未満の結晶度を有するポリマーフィルムを含む。
【0018】
一態様では、サセプタフィルムは非延伸(すなわち延伸しない)ポリマーフィルムを含み得る。非延伸ポリマーフィルムを迅速に急冷することができ、これにより低結晶度、例えば約25%未満の結晶度が得られ、このことは概して溶解物を所望の最終フィルム厚まで引き下げることに関連する溶融延伸に起因し得る。これとは対照的に、従来型のサセプタフィルム及びサセプタ構造に使用される種類の高延伸フィルムは、延伸又は引っ張り(strain)により誘導される高いレベルの結晶度を有し、かなりの量の収縮力が残存する。
【0019】
任意の好適な非延伸ポリマーフィルムを使用して、本開示に従ってサセプタフィルムを形成することができる。一実施形態では、基板は約25%未満、例えば約10%未満、例えば約7%未満、例えば約5%の結晶度を有する非延伸の非結晶性PET(APET)フィルムを含み得る。好適であり得るAPETフィルムの一例は、Pure-Stat Technologies, Inc.(Lewiston, Maine)から入手可能である。しかしながら、他の好適なAPETフィルム及び/又は他のポリマーフィルムを使用してもよい。
【0020】
本発明者らは、非延伸ポリマーフィルムを含むサセプタフィルムは従来型の高延伸フィルムよりもクレージング耐性が高い傾向があり得ることを発見した。理論に縛られることは意図しないが、高い収縮力がサセプタ構造のクレージングの発生及び伝播に重要な役割を有し得ると考えられている。非延伸フィルムは高延伸フィルムより非常に低い熱誘導性の寸法収縮力を示すので、非延伸ポリマーフィルムは高延伸ポリマーフィルムよりもクレージング耐性が高い傾向があり得る。このため本質的に低い収縮力を有する非延伸ポリマーフィルム、例えばAPETは、本質的に高い収縮力を有する従来型の高延伸フィルム、例えば高延伸PETよりクレージング耐性が高い傾向があり得る。
【0021】
代替的には又は付加的には、理論に縛られることは意図しないが、非延伸ポリマーフィルムの結晶度が加熱サイクルの間に増大し、それによりポリマーを熱により耐性にし、その結果より熱安定性にするとも考えられる。結果として、サセプタフィルムの安定性を加熱サイクルの間に増大させることができる。
【0022】
必要に応じて、ポリマーフィルムの結晶化の速度を操作し、加熱サイクルの様々な時点で所望のレベルの結晶度を達成することができる。時間、温度及び核形成剤の使用は、所望のサセプタフィルム性能を達成するために必要に応じて調整することができる変数である。例えば、高延伸PETサセプタフィルムでのクレージングに関する機構の一部が加熱サイクルの間のフィルム、金属層及び接着剤層の様々な寸法変化であると考えられるので、1つ又は複数の核形成剤を使用して、金属層及び接着剤の寸法変化をより良好に適合させる加熱サイクルの様々な時点での或る特定のフィルム特性を達成することができると考えられる。結果として、層間のストレス、及びひいては任意の不要なクレージングを最小限に抑えることができる。
【0023】
様々な食品は最適な調製のために様々な加熱サイクルを必要とするので、初期の結晶度レベルの制御に関連するさらなる自由度、及び加熱中のさらなる結晶度の速度の増大がカスタマイズ能の拡大を可能にし、それにより本明細書に記載のサセプタフィルムの有用性及び独自性をさらに高めることができることができることが期待される。
【0024】
幾つかの場合、サセプタフィルムは2回以上使用することが意図され得ることも考慮する。このような場合、ポリマーフィルムの結晶度は2回目の使用及び任意のその後の使用の際により高くなり得る。
【0025】
ポリマーフィルムを任意の好適な方法で形成することができる。一例では、ポリマーフィルム基板は水急冷フィルム、キャストフィルム、又は迅速な急冷プロセスを用いて形成される任意の他の種類のポリマーフィルムであり得る。かかるフィルムが従来型の押出後の延伸プロセスを受けない場合、幾つかの場合で、該フィルムは取り扱うのが、及び/又はサセプタ構造へと変換するのが困難であり得ることが理解される。このため、フィルムはフィルムの加工性を改善するために、わずかに(例えば最大で約20%、例えば約5%〜約20%)フィルムを延伸させる(すなわち伸張させる)最小限の延伸プロセスに供され得ることが考慮される。かかる延伸はそれぞれの方向に約250%〜300%伸張する標準的な高延伸フィルムと比較して相対的に小さいため、かかるわずかに延伸したフィルムは本明細書では「実質的に非延伸」であるとみなされるものとする。必要に応じて、非延伸又は実質的に非延伸のフィルムの結晶度を押出後の熱処理又はコンディショニングを通して制御して増大させることができる。上に記載の結晶化速度を変更する添加剤の利用もこの場合では選択肢にある。
【0026】
付加的には又は代替的には、その特性を変更し、加工を容易にするために又はより堅固なマイクロ波加熱性能を与えるために、添加剤をフィルムに組み込むことができる。一例として、強度を高める添加剤(例えばポリマー)を使用して、添加剤を使用しないと幾らか脆弱な低ゲージのキャストAPETフィルムをより堅固にすることができる。好適であり得る添加剤の例としては、エチレン−メチルアクリレートコポリマー、エチレン−オクテンコポリマー、又はポリマーフィルムの強度及び/又は加工性を改善する任意の他の好適なポリマー若しくは材料が挙げられる。様々な機能又は利点を与える他の添加剤を使用してもよい。かかる添加剤のいずれかを任意の好適な量、例えば最大でポリマーフィルムの約15重量%、最大でポリマーフィルムの約10重量%、最大でポリマーフィルムの約5重量%、又は任意の他の好適な量添加してもよい。他の例では添加剤をポリマーフィルムの約1重量%〜約10重量%、約2重量%〜約8重量%、3重量%〜約5重量%の量で、又は任意の好適な量若しくは任意の好適な範囲の量で使用してもよい。
【0027】
代替的には又は付加的には、APETを使用して、それぞれが1つ又は複数のポリマー、及び任意で1つ又は複数の添加剤を含み得る少なくとも2つの異なる層を含む多層フィルムを形成することができる。該層は同時押出してもよく、又は別々に形成し、接着剤、タイ層(tie layer:結着層)、熱結合を用いて、若しくは任意の他の好適な技法を用いて互いに接合してもよい。他の好適な技法は押出コーティング及び同時押出コーティングを含み得る。
【0028】
多層フィルムのそれぞれの層は、迅速に急冷するフィルム、すなわち押出金型の隙間から出した後、ポリマー溶解物の非常に迅速な凍結をもたらす条件下で形成されるフィルムであり得る。この迅速な凍結、及び固化ポリマーフィルムの温度のさらなる低下が結晶性のミクロ構造又はマクロ構造の発達を最小限に抑える。低結晶度を有するフィルムを使用してサセプタフィルムを形成する場合、サセプタフィルムは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)から作製された従来型のサセプタと比較して、マイクロ波加熱中により高い温度及び熱流束を達成することが可能であると考えられる。
【0029】
必要に応じて、所望の特質を有するポリマーを選択することによりさらなる機能特性を多層フィルムに与えることができる。例えば、エチレンビニルアルコール(EVOH)を使用して、酸素障壁特性を与えることができる。ポリプロピレン(PP)を使用して、水蒸気障壁特性を与えることができる。特にチルド食品又は常温保存可能食品(通常、冷凍食品よりも高度な酸素障壁及び水分障壁が必要である)に関して、かかる特性により、該フィルムが制御又は変更雰囲気のパッケージングに有用になり得る。多くの他の可能性が考慮される。
【0030】
多くの多層フィルムが本開示により考慮される。例示であり、これらに限定されないが、幾つかの例示的な構造としては、(a)APET/オレフィン;(b)APET/タイ層/オレフィン;(c)APET/タイ層/オレフィン/タイ層/APET;(d)APET/タイ層/PP/タイ層/APET;(e)APET/タイ層/PP/タイ層/非結晶性ナイロン6又はナイロン6,6;(f)APET/タイ層/APET;(g)APET/タイ層/EVOH/タイ層/APET;(h)APET/タイ層;(i)APET/タイ層/全層のリグラインド(regrind)/タイ層/EVOH/タイ層/APET;(j)APET/タイ層/EVOH/タイ層/非結晶性ナイロン6又はナイロン6,6;(k)APET/タイ層/オレフィン/タイ層/EVOH/タイ層/APET;及び(l)APET/タイ層/オレフィン/タイ層/EVOH/タイ層/ナイロン6,6が挙げられる。
【0031】
例a〜c及び例k〜lでは、並びに本開示で考慮される任意の他の多層フィルムでは、オレフィン層は、任意の好適なポリオレフィン、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、かかるポリマーのいずれかのコポリマー、及び/又はメタロセン触媒型のこれらのポリマー若しくはコポリマーを含み得る。
【0032】
例iでは、及び本開示で考慮される任意の他の多層フィルムでは、リグラインド層は従来の実施に従って、フィルム縁片及び任意の他の再生利用可能な材料を含み得る。様々な他の例(例a〜h又は例j〜l)又は本開示で考慮される他のフィルムのいずれもがかかるリグラインド層を含有し得る。幾つかの場合、リグラインド層は隣接するフィルム層と十分に結合させるために、タイ層を必要とすることがある。
【0033】
例b〜jでは、及び本開示で考慮される任意の他の多層フィルムでは、タイ層は隣接した層間での所望のレベルの接着を与える任意の好適な材料を含み得る。幾つかの例示的な実施形態では、タイ層はDuPont製のBynel(登録商標)、Equistar, a LyondellBasell社製のPlexar(登録商標)、又はExxon製のExxlor(商標)を含み得る。タイ層の正確な選択は、接合を目的とする隣接した層、及び同時押出プロセスにおける層の均一な分布を確実にするレオロジー特性に応じて変わる。例えば、DuPontのBynel 21E781はPET、ナイロン、EVOH、ポリエチレン(PE)、PP、及びエチレンコポリマーとの接着に使用されることが最も多いBynel 2100シリーズの無水修飾エチレンアクリレート樹脂の1つ(part)である。Plexar(登録商標)PX1007は、これまでに言及されたBynel樹脂と同様の範囲の材料を結合するのに使用することができるエチレン−酢酸ビニルコポリマー群の1つである。Exxlor(登録商標)グレードを使用して、様々なナイロンポリマーの衝撃性能を高めることができる。さらに、タイ層及び他の樹脂を、食品中への最小限の樹脂抽出物が許容されるレトルトパウチ等の用途に関して高温フィルムでこれまでに認められた使用に対して選択することができる。
【0034】
非結晶性ナイロン6又はナイロン6,6のいずれかは本開示の範囲内で上記の多層フィルム構造又は任意の他の構造のいずれかでAPETの代わりとすることができることが考慮される。数多くの他の構造が考慮される。
【0035】
多くの技法を用いて、多層フィルムを形成することができる。フィルムキャスティングが一般的に用いられる迅速な急冷フィルム製造技法であるが、空冷インフレートフィルム(blown film)プロセスの適合により、本開示の多層フィルムの作製に好適な急冷速度を生じさせることもできる。インフレーションフィルム「バブル」の外側に適用されるチルド空気の使用により、バブルの外表面のみに向かう室温空気を使用するのに比べて急冷速度を増大させることができる。さらに、内部のバブル冷却のためのチルド空気交換の使用により、放出速度を高めることができる。より高い急冷速度をバブルの内側に接触させる水冷マンドレルの使用により達成することができるが、このプロセスは、より高い急冷速度がポリマーバブルとマンドレルとの間での密接な接触によってしか達成されず、異なるフィルム幅を得るのに異なるマンドレルが必要となるので、製造され得るフィルムの幅において相対的に柔軟性がない。
【0036】
管状フィルム吹き付け(blowing)プロセスに関する別のアプローチは管状水急冷プロセス(TWQ)である。TWQは冷却水のポリマーバブルの外側との直接接触を伴い、これにより押出ポリマーフィルムの極めて高い熱伝達率及び非常に迅速な急冷が起こる。幾つかのTWQプロセスは、バブルの外側との直接水接触を、支持及びさらなる冷却のための内部マンドレルと組み合わせる。別のTWQプロセスは、バブルの内側でのチルド空気交換が追加されることもある、バブルの外表面上での直接水接触のみを利用することができる。幾つかの状況では、後者のTWQプロセスは、内部マンドレルのない装置は構築及び操作するのにコストが低く、フィルム幅の変化においてより大きい柔軟性を与えるため、使用に対してより有利であり得る。かかるTWQ押出ラインが、例えばAquaFrost(登録商標)システムという商品名でカナダのBrampton Engineeringから利用可能である。しかしながら、多くの他のプロセス及びシステムを使用してもよい。
【0037】
ポリマーフィルムの坪量及び/又はキャリパー(calipler:はさみ尺)は単層又は多層にかかわらず、それぞれの用途で異なり得る。幾つかの実施形態では、フィルムは約12ミクロン〜約50ミクロン厚、例えば約15ミクロン〜約35ミクロン厚、例えば約20ミクロン厚であり得る。しかしながら、他のキャリパーが考慮される。
【0038】
フィルム製造後、マイクロ波エネルギー相互作用材料層(すなわちサセプタ又はマイクロ波感受性コーティング)をポリマーフィルムの片側又は両側に被覆し、サセプタフィルムを形成することができる。マイクロ波エネルギー相互作用材料は、導電性若しくは半導性材料、例えば真空蒸着金属若しくは合金、又は金属インク、有機インク、無機インク、金属ペースト、有機ペースト、無機ペースト、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。好適であり得る金属及び合金の例としては、アルミニウム、クロム、銅、インコネル合金(ニオブを含むニッケル−クロム−モリブデン合金)、鉄、マグネシウム、ニッケル、ステンレス鋼、スズ、チタン、タングステン及びそれらの任意の組み合わせ又は合金が挙げられるが、それらに限定されない。
【0039】
代替的には、マイクロ波エネルギー相互作用材料は、任意に導電性材料と併せて使用される金属酸化物、例えばアルミニウム、鉄及びスズの酸化物を含み得る。好適であり得る別の金属酸化物はインジウムスズ酸化物(ITO)である。ITOは、より均一な結晶構造を有するため、ほとんどのコーティング厚において透明である。
【0040】
さらに代替的には、マイクロ波エネルギー相互作用材料は、好適な導電性、半導性若しくは非導電性の人工誘電体又は強誘電体を含み得る。人工誘電体は、重合体又は他の好適なマトリクス又は結合剤中に導電性の細分化された材料を含み、導電性金属、例えばアルミニウムのフレークを含み得る。
【0041】
他の実施形態では、マイクロ波エネルギー相互作用材料は、例えば米国特許第4,943,456号、同第5,002,826号、同第5,118,747号及び同第5,410,135号に開示のようにカーボンベースであり得る。
【0042】
さらに他の実施形態では、マイクロ波エネルギー相互作用材料は、電子レンジにおける電磁エネルギーの磁性部分と相互作用し得る。正確に選択されたこの種類の材料は、材料のキュリー温度が達成される場合、相互作用の喪失に基づき自己制限的であり得る。かかる相互作用コーティングの一例は、米国特許第4,283,427号に記載される。
【0043】
そのためサセプタフィルムを別の材料にラミネート加工して又はその他の方法で接合して、サセプタ構造又はサセプタパッケージを製造することができる。一例において、サセプタフィルムを紙又は板紙にラミネート加工し、従来型の紙又は板紙ベースのサセプタ構造よりも高い熱流束出力を有するサセプタ構造を作製することができる。紙は約15lb/連(lb/3000平方フィート)〜約60lb/連、例えば約20lb/連〜約40lb/連、例えば約25lb/連の坪量を有し得る。板紙は約60lb/連〜約330lb/連、例えば約80lb/連〜約140lb/連の坪量を有し得る。板紙は一般的に、約6ミル〜約30ミル、例えば約12ミル〜約28ミルの厚さを有し得る。1つの具体例では、板紙は約14ミル(0.014インチ)の厚さを有する。任意の好適な板紙、例えば固形漂白硫酸板、例えばInternational Paper Company(Memphis, TN)から市販されているFortress(登録商標)ボード、又は固形無漂白硫酸板、例えばGraphic Packaging Internationalから市販されているSUS(登録商標)ボードを使用することができる。
【0044】
必要に応じて、ポリマーフィルムは、ポリマーフィルム上にマイクロ波エネルギー相互作用材料を被覆する前に表面を修飾するために1つ又は複数の処理に供することができる。例示的であり、これらに限定されないが、ポリマーフィルムは、ポリマーフィルムの表面の粗度を変更するためにプラズマ処理に供することができる。理論に縛られることは意図しないが、かかる表面処理により、マイクロ波エネルギー相互作用材料を受けるためのより均一な表面をもたらすことができ、これにより得られたサセプタ構造の熱流束及び最大温度を増大させることができることが考えられる。かかる処理は2010年2月22日付けで出願された米国特許出願第12/709,578号(その全体が参照により本明細書に援用される)で検討されている。
【0045】
また必要に応じて、サセプタフィルムを他のマイクロ波エネルギー相互作用要素及び/又は構造と併せて使用することができる。複数のサセプタ層を含む構造も検討される。かかる要素及び/又は構造と共に本発明のサセプタフィルム及び/又はサセプタ構造を使用することにより、従来型のサセプタに比べて結果の改善がもたらされ得ることが理解される。
【0046】
例えば、サセプタフィルムを衝突するマイクロ波エネルギーのかなりの部分を反射するのに十分な厚さを有するホイル又は高光学密度の蒸着材料と共に使用することができる。かかる要素は通常、約0.000285インチ〜約0.005インチ、例えば約0.0003インチ〜約0.003インチの厚さを概ね有する中実の「パッチ」の形態の、導電性の反射金属又は合金、例えばアルミニウム、銅又はステンレス鋼から形成される。他のかかる要素は、約0.00035インチ〜約0.002インチ、例えば約0.0016インチの厚さを有し得る。
【0047】
幾つかの場合で、マイクロ波エネルギー反射(又は反射性)要素は、食品が加熱中にスコーチ又は乾燥する傾向がある場合、遮蔽要素として使用することができる。他の場合では、より小さいマイクロ波エネルギー反射要素を使用して、マイクロ波エネルギー強度を拡散又は減少させることができる。かかるマイクロ波エネルギー反射要素を利用する材料の一例は、MicroRite(登録商標)パッケージング材料という商品名でGraphic Packaging International, Inc.(Marietta, GA)から市販されている。他の例では、複数のマイクロ波エネルギー反射要素を配置し、マイクロ波エネルギーを食品の特定の領域に方向付けるマイクロ波エネルギー分配要素を形成することができる。必要に応じて、ループはマイクロ波エネルギーを共振させ、それにより分配効果を高める長さを有し得る。マイクロ波エネルギー分配要素は、米国特許第6,204,492号、同第6,433,322号、同第6,552,315号及び同第6,677,563号(それらの全体がそれぞれ、参照により援用される)に記載されている。
【0048】
さらに別の例では、サセプタフィルム及び/若しくはサセプタ構造をマイクロ波エネルギー相互作用絶縁材料と共に使用することができるか、又はサセプタフィルム及び/若しくはサセプタ構造を使用して、マイクロ波エネルギー相互作用絶縁材料を形成することができる。かかる材料の例は、米国特許第7,019,271号、米国特許第7,351,942号、及び2008年4月3日付けで公開された米国特許出願公開第2008/0078759号(それらの全体がそれぞれ、参照により本明細書中に援用される)で与えられている。
【0049】
必要に応じて、本明細書に記載されるか又は本明細書によって考慮される多くのマイクロ波エネルギー相互作用要素のいずれかは、実質的に連続的な、すなわち実質的な破断部若しくは中断部を有しないものであってもよく、又は例えばマイクロ波エネルギーを透過させる1つ又は複数の破断部若しくは開口部を含むことにより不連続なものであってもよい。破断部又は開口部は、構造全体を貫通するか、又は1つ又は複数の層のみを貫通してもよい。かかる破断部又は開口部の数、形状、サイズ及び位置は、形成される構築物の種類、構築物内又は構築物上で加熱される食品、加熱、ブラウニング及び/又はクリスピングの所望の程度、食品の均一な加熱を達成するためにマイクロ波エネルギーへの直接暴露が必要又は望ましいか否か、直接加熱による食品の温度変化の調節の必要性、並びに通気する必要があるのか否か、またどの程度までその必要があるのかに応じて、特定の用途に関して変わり得る。
【0050】
例として、マイクロ波エネルギー相互作用要素は、食品の誘電加熱をもたらす1つ又は複数の透過性領域を含み得る。しかしながら、マイクロ波エネルギー相互作用要素がサセプタを含む場合、かかる開口部が総マイクロ波エネルギー相互作用領域を減少させ、それにより食品の表面の加熱、ブラウニング及び/又はクリスピングに利用可能なマイクロ波エネルギー相互作用材料の量を減少させる。このため、マイクロ波エネルギー相互作用領域とマイクロ波エネルギー透過性領域との相対量は、特定の食品に対して所望の全体としての加熱特性を達成するためにバランスをとる必要がある。
【0051】
幾つかの実施形態では、サセプタの1つ又は複数の部分を、ブラウニング及び/若しくはクリスピングを目的としない食品の部分に又は加熱環境に喪失するのではなく、マイクロ波エネルギーを加熱、ブラウニング及び/又はクリスピングの対象となる領域に効率的に集中させることを確実にするために、マイクロ波エネルギーに不活性となるように設計することができる。
【0052】
他の実施形態では、食品及び/又はサセプタを含む構築物の過熱又はチャーリングを防ぐために、1つ又は複数の不連続又は不活性領域を作製することが有益であり得る。例として、サセプタは、食品への熱移動が低くサセプタが熱くなり過ぎる傾向があり得るサセプタ構造の領域でサセプタ構造における亀裂の伝播を制限し、それにより過熱を制御する、1つ又は複数の「ヒューズ」要素を組み込むことができる。ヒューズのサイズ及び形状を必要に応じて変えることができる。かかるヒューズを含むサセプタの例は、例えば米国特許第5,412,187号、米国特許第5,530,231号、2008年2月14日付けで公開された米国特許出願公開第2008/0035634号、及び2007年11月8日付けで公開されたPCT出願の国際公開第2007/127371号(それらの全体がそれぞれ、参照により本明細書中に援用される)で与えられる。
【0053】
サセプタの場合、かかる不連続又は開口部のいずれかは、構造若しくは構築物を形成するのに使用される1つ又は複数の層若しくは材料にある物理的な開口部若しくは空隙を含み得るか、又は非物理的な「開口部」であり得る。非物理的な開口部は、構造を切り抜く実際の空隙又は孔が存在せずともマイクロ波エネルギーが構造を通過することを可能にするマイクロ波エネルギー透過性領域である。かかる領域は、単にマイクロ波エネルギー相互作用材料を特定の領域に適用しないことによって、特定の領域からマイクロ波エネルギー相互作用材料を取り除くことによって、又は特定の領域を機械的に不活性化する(この領域を電気的に不連続にする)ことによって形成することができる。代替的には、これらの領域は、特定の領域のマイクロ波エネルギー相互作用材料を化学的に不活性化し、それによりその領域のマイクロ波エネルギー相互作用材料をマイクロ波エネルギーに対して透過性の(すなわちマイクロ波エネルギーに不活性の)物質に変換することによって形成することができる。物理的な開口部及び非物理的な開口部の両方が食品をマイクロ波エネルギーによって直接加熱することを可能にするが、物理的な開口部は、食品から放出される水蒸気又は他の蒸気又は液体を食品から逃がすことを可能にする通気機能も提供する。
【0054】
本発明は、限定することは決して意図しない以下の実施例を考慮してさらに理解することができる。提示される情報は全て他に特に規定されない限り、およその値を表す。
【実施例】
【0055】
実施例1
熱量測定試験を、様々なサセプタ構造により生じる熱流束、及び様々なサセプタ構造により達成される最大温度を決定するために行った。
【0056】
表1に記載のように、様々なポリマーフィルムを使用して、サセプタ構造を形成した。ポリマーフィルムには、DuPont Mylar(登録商標)800C BOPET(DuPont Teijin Films(商標), Hopewell, VA)、Pure−Stat APET(Pure-Stat Technologies, Inc., Lewiston, Maine)、DuPont HS2 PET(DuPont Teijin Films(商標), Hopewell, VA)、及びToray Lumirror(登録商標)F65 PET(Toray Films Europe)が含まれていた。屈折率データ(サンプル1−1及びサンプル1−6の屈折率と、サンプル1−3及びサンプル1−4の屈折率とを比較する)から明らかなように、Pure−Stat APETフィルム以外のフィルムは全て高延伸であった。これらのフィルムは全て、着色剤を添加せず又は染色(pigmentation)も行わなかったため、透明であった。
【0057】
約1.5lb/連〜約2.0lb/連の以下の接着剤のうちの1つを使用してサセプタフィルムを板紙支持層に接合することによりそれぞれのサセプタ構造を作製した:Royal 20469(Royal Adhesives & Sealants, South Bend, IN)、Royal 20123(Royal Adhesives & Sealants, South Bend, IN)又はHenkel 5T−5380M5(Henkel Adhesives, Elgin, IL)。しかしながら他の好適な接着剤を使用してもよい。
【0058】
熱量測定データをパナソニック株式会社製の1300ワットの家庭用(consumer)電子レンジモデルNN−S760WAに取り付けられた、8つのチャネルを有するFISO MWS Microwave Work Station光ファイバー温度検出装置(FISO, Quebec, Canada)を用いて収集した。約5インチの直径を有するサンプルを、それぞれ約0.25インチの厚さと約5インチの直径とを有する2つの円形のPyrex(登録商標)プレートの間に配置した。約1インチの厚さの拡張(expanded)ポリスチレン絶縁シートの上に乗せた約250gの水が入ったプラスチック製のボールをプレートの上に置いた(そのため水からの放射熱はプレートに影響を与えなかった)。底のプレートを3つの実質的に三角形のセラミックスタンドを用いて、ガラス製のターンテーブルの約1インチ上に持ち上げた。熱光学プローブを上部のプレートの上部表面に取り付け、プレートの表面温度を測定した。約1300Wの電子レンジにおいて約5分間最大出力でサンプルを加熱した後、上部プレート表面の平均最大温度の上昇(℃)を記録した(熱量測定試験法の有限要素解析モデリングは、平均最大温度の上昇がサセプタ構造により発生する熱流束に比例することを示している)。それぞれのサンプルの導電率σ(mmho/sq)を熱量測定試験を行う前にDelcom 717コンダクタンスモニター(Delcom Instruments, Inc., Prescott, WI)を用いて測定し、5つのデータ点を収集し、平均を求めた。結果を表1に示す。
【0059】
概して、構造1−3及び構造1−4が最大の加熱出力及び最小量のクレージングを示したが、構造1−1は構造1−3及び構造1−4よりも低い加熱出力及び最大量のクレージングを示した。構造1−6は対照構造1−1よりも少ないクレージングを有し、中程度の加熱出力を示した。
【0060】
特に、既に1回加熱している構造1−5は、構造1−1よりも大きい出力を示した。視認できるクレージングは観察されなかったが、(ΔTmaxにより明らかなように)サンプルは依然として或る程度の自己制限的な挙動を示した。理論に縛られることは意図しないが、この自己制限的な挙動は少なくとも部分的にはマイクロ波加熱サイクルの間のポリマーフィルム密度の変化の結果であると考えられる。具体的には、ポリマーフィルム密度はポリマーフィルムが加熱すると低減し得ることが知られている。しかしながら、ポリマーフィルムが加熱すると、結晶度も増大し、それに伴い密度も増大する。この密度の増大の程度が初期の密度の減少の程度を超えており、そのため加熱サイクルの間は全体として密度が増大していると考えられる。さらに、この密度の増大が原子スケールでの電気断絶を生じるサセプタ構造の破壊又はミクロクレージングを引き起こす可能性があると考えられる。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例2
様々な加熱時間による実施例1に記載の熱量測定試験を用いて、従来型のサセプタ構造(構造1−1)のマイクロ波の反射、吸収及び透過(RAT)の性質を実験サセプタ構造(構造1−3)と比較した。さらに加熱後のそれぞれのサンプルを検査するために画像解析を用いて、新たなパラメーターとして、視野面積で除算したクレージング周囲長(P/A、mm/mm)を構造1−1の幾つかの加熱時間に関して求めた。またメリット係数をそれぞれの加熱時間で算出した。ここで、
メリット係数=吸収(A)/(1−反射(R))。
結果を表2及び表3に示す。構造1−3ではほとんど又は全くクレージングが観察されなかったので、P/Aデータは表3には示していない。
【0063】
特に、加熱時間が長くなると、構造1−3は構造1−1よりも大きい加熱を示した。より大きいメリット係数を有するサセプタ構造は概して、サセプタ吸収を最大限にしながらも食品の直接的なマイクロ波加熱の量を制限するため、食品表面のより大きいブラウニング及びクリスピングを示す。そのため実際問題として、低結晶度ポリマーフィルムを使用した構造は、食品の誘電加熱を最小限にしながらより大きいレベルの表面のブラウニング及び/又はクリスピングを有利に与えることができる可能性がある。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
実施例3
画像解析を用いて、様々なサセプタ構造を使用した食品のブラウニングの程度を決定した。それぞれの例では、スタウファーのフラットブレッド溶解物を1000Wの電子レンジにおいて約2.5分間サセプタ構造で加熱した。加熱サイクルが完了したら、食品を裏返し、サセプタに隣接して加熱された食品の側面を撮影した。Adobeのフォトショップを用いて、画像を評価した。そのために、様々なRGB(赤色/緑色/青色)定値を褐色の様々な色合いに対応させるように選択した(より高い定値はより明るい色合いに対応する)。それぞれのRGB定値で、この色合いを有するピクセル数を数えた。公差は20を用いた。結果を表4に示す。全ての構造が或る程度のブラウニング及び/又はクリスピングを示したが、構造1−3は食品又はサセプタ構造を焦がすことなく最大のブラウニング及びクリスピングを示した。
【0067】
【表4】

【0068】
実施例4
様々なフィルム及びサセプタ構造を評価のために調製した。2つのフィルム製造業者を利用して、APETフィルムを調製した:SML Maschinengesellschaft mbH(Lenzing, Austria)(「SML」)(サンプル5−3)及びPure-Stat Technologies, Inc.(Lewiston, ME)(「Pure−Stat」)(サンプル5−4〜サンプル5−15)。さらに、Dartek(登録商標)N201ナイロン6,6(Liqui-box Canada, Whitby, Ontario, Canada)を評価した(サンプル5−2)。Mylar(登録商標)800二軸延伸PET(DuPont Teijin(商標) Films, Hopewell, VA)(サンプル5−1)を対照材料として評価した。
【0069】
Optima(商標)TC 120及びOptima(商標)TC 220 ExCo(エチレン−メチルアクリレートコポリマー樹脂、ExxonMobil Chemical)、Sukano im F535(エチレン−メチルアクリレートコポリマー樹脂、Sukano Polymers Corporation, Duncan, SC)、Engage(商標)8401(エチレン−オクテンコポリマー、Dow Plastics)及びAmerichem 60461−CD1(組成不明)(Americhem Cuyahoga Falls, OH)を含む様々な強度を高めるための添加剤も評価した。
【0070】
Pure-Stat Technologies, Inc.により使用されたAPETフィルムを形成するプロセスは以下の通りであった。Traytuf(登録商標)9506 PET樹脂ペレット(M&G Polymers USA, LLC, Houston, TX)を乾燥剤により乾燥し、キャストフィルムライン押出機ホッパーに運んだ。さらなるペレットを押出機のど口(extruder throat)で秤量し、乾燥PETペレットと組み合わせ、溶融し、混合して、スロットダイを通して押し出し、平らな溶融フィルムを形成した。溶融フィルムを冷却ドラムに流し込み、大部分が非結晶性の固体状態になるまで急速に急冷し、ローラー上で巻き取り機(windup)へと運び、そこでフィルムをさらなる加工のためにロールへと巻き付けた。フィルムは、約0.0008インチ又は約80ゲージの厚さであった。押出機の出力及び冷却ドラム表面の速度を変えることにより、より厚い又はより薄いフィルムを製造することができることに留意する。SML Maschinengesellschaft mbHにより使用されるプロセスは同じようなものであった。
【0071】
DSCデータを、分解を防ぐために窒素パージを用いて、10℃/分でPerkin-Elmerの示差走査熱量測定器(DSC−7)においてサンプルを加熱することによりそれぞれのフィルムサンプルで取得した。300℃まで加熱し、40℃まで冷却したサンプルで値を測定した。結果を表5に示す。DSCデータを試験試料(test specimen)の初期加熱から取得したことに留意することが重要である。そのため値は、任意の押出後延伸の影響、及び加工によりそれぞれの試料が受けた特定の熱履歴、及び試料の結晶度に対する影響を反映した。結晶化に関連する負のエンタルピー変化は試料に存在する非結晶ポリマーの量と比例関係にある。溶融に関連する正のエンタルピー変化は、DSC測定の間に試料により達成される結晶度の程度の評価基準である。これらのエンタルピー値の絶対値がより等しければ、試料はより非結晶性である。そのため、該値により、高延伸フィルム、サンプル5−1が非常に高レベルの延伸及び結晶度を有しており、キャストAPETフィルム、サンプル5−3〜サンプル5−15が低レベルの結晶度を有していたことが確認される。サンプル5−6〜サンプル5−15で注記されるエンタルピーの幾らか大きい差異は存在する非PET強化添加剤の影響を反映しているが、依然としてこれらのフィルムでの低レベルの結晶度を示す。
【0072】
それぞれのフィルムの表面の見かけの頑健性(PEL)を処理の前後で評価した。フィルム表面の画像を0nm〜100nmの実寸で原子間力顕微鏡(AFM)を用いて得た。Integrated Paper Services(IPS)(Appleton, WI)で開発された画像解析システムを用いて、0単位〜256単位の実寸の明暗グレースケールを用いて、グレーレベルのヒストグラムを作成した。二値画像を120のグレースケールで作成し、これは120/256×100nm=46.9nm、すなわち469オングストロームの高さでAFM画像のZ方向と交差する平面と同等である。検出領域の周囲長を測定し、画像の線形サイズにより正規化して、無次元比、縁の長さで除算した周囲長、すなわちPELを形成する。PEL値がより大きければ表面がより粗いことを示す。概して、PELデータは、より低いPELレベル(より平滑なフィルム表面)がより高い熱量及びブラウニング結果に関連することを示している。
【0073】
温度に応じたサンプル長の変化をモニタリングすることにより、Perkin-ElmerのDMA 7eを用いた幾つかの代表的なフィルムサンプルに関して収縮/拡張データを得た。該機器を一定の力の熱機械的解析モードで使用した。サンプルを10mNの一定の静的力を用いてヘリウムパージ下で1分当たり2.5℃で40℃から230℃まで加熱した。伸張解析測定システムを3.2mm幅に切断し、厚さが0.015mmであり、ゲージ長が約10mmであるサンプルと共に使用した。氷水浴を用いて、炉温の制御を補助した。結果を寸法の1%変化が起こったときのセルシウス度(℃)の温度として表す。対照サンプル(サンプル5−1)に関して、1% MD収縮での温度(℃)は130℃及び160℃であり(2つのサンプル)、1% CD収縮での温度(℃)は170℃であった。残りの試験サンプル(サンプル5−6、サンプル5−7、サンプル5−8、サンプル5−10、サンプル5−12及びサンプル5−14)は収縮を示さず、代わりに、試験方法においてサンプルに適用された小さい張力のためにわずかに拡張した。対照サンプル(サンプル5−1)における残りのストレスの放出が、上で言及される収縮が生じる試験方法の張力を乗り越えた。
【0074】
破断前のピーク負荷をTAPPI T−494 om−01に従って測定した。該値はサンプル5−6〜サンプル5−15の強化添加剤がフィルムの頑健性を増大させるのに成功したことを示している。このことは市販の製造装置での検査において実証され、ここで強化添加剤は無理なく加工されたフィルムを改質し、サンプル5−3〜サンプル5−5により表された種類の非改質フィルムは変換操作においてより脆弱であり、通常の加工パラメータ(例えば張力)への調整を必要とし、あまり効率的に変換されなかった。
【0075】
それぞれのポリマーフィルムのヘイズ(曇り度)(haze)をBYK Gardener Haze−Gard plus 4725濁度計を使用してASTM D 1003に従って測定した。全ての場合で、強化添加剤の組込みにより、フィルムの濁度が増大した。幾つかの場合、最も好ましい添加剤は、加工のために望まれる強度の増大を与えながらもより低いレベルの濁度を示すものである場合があり、サセプタフィルム及びサセプタ構造に添加する場合、有利に増大した加熱性能をもたらす。
【0076】
それからフィルムをアルミニウムで金属加工し、約1lb/連〜約2lb/連(必要に応じて)のRoyal Hydra Fast−en(登録商標)20123接着剤(Royal Adhesives, South Bend, IN)の実質的に連続した層を使用して、14pt(0.014インチ厚)のFortress(登録商標)ボード(International Paper Company, Memphis, TN)に接合して、サセプタ構造を形成した。
【0077】
それからそれぞれのサセプタ構造を、実施例1に記載の熱量測定試験を用いて評価した。結果を表5に示す。ここでΔΔTはサンプルに関する温度の上昇と、対照サンプル(構造5−1、標準的な二軸延伸熱硬化PETフィルム)に関する温度の上昇との間の差異である。
【0078】
さらには、それぞれの構造を、104のRGB(赤色/緑色/青色)定値のみを使用した(RGB=104は概して、ブラウニング、クリスピングした食品に一般的に関連した茶色の色合いに対応する)以外は実施例1に記載のピザのブラウニング試験を用いて評価した。公差は100を用いた。さらに、Kraft DiGiornoのピザを使用した。この色合いを有するピクセル数を記録し、より多くのピクセル数はより大きいブラウニングが存在することを示すものとした。
【0079】
構造5−1(対照)を評価する前に、加熱していないピザ生地を検査し、RGB値104に関連する色を有する24313ピクセルのベースラインピクセル数を求めたことに留意する。このベースライン値を用いて、表1に示された結果を算出した。ここで、
ΔUBは、ブラウニングしていない生地に関するベースライン値(24313)を減算した所定のサンプルに関するピクセル数であり、
Δ%Impは対照サンプル(構造5−1)で得られた結果に対する改善(%)である。
【0080】
熱量測定結果及びピザのブラウニング結果の両方が、添加剤を組み込むか又は組み込まないかにかかわらず、全ての非延伸低結晶度フィルムで対照に対する顕著な増大を示す。調理したピザ生地の目視観察により、高二軸延伸高結晶度フィルムから作製された標準対照サンプルで達成されたものよりもずっと望ましいレベルのブラウニングが確認された。このため、強化添加剤は、マイクロ波サセプタフィルム及びマイクロ波サセプタ構造に組み込む場合、性能に悪影響を及ぼすことなくフィルム頑健性を改善することができる。
【0081】
【表5】

【0082】
本発明は、本明細書中において特定の態様及び実施形態に関して詳細に説明されているが、この詳細な説明は、本発明を示し例示するものに過ぎず、単に本発明の十分かつ権利が与えられる開示を提供する目的で、また本発明がなされた時点で本発明者らが知っていた本発明を実施するための最良の形態を記載するためになされていることを理解すべきである。本明細書に記載される詳細な説明は、例示的なものに過ぎず、本発明を限定するか、又はそうでなくとも本発明の任意のかかる他の実施形態、適合形態、変形形態、変更形態及び均等な構成を除外する意図はなく、またそのように解釈すべきでもない。全ての方向に関する言及(例えば上側、下側、上方、下方、左、右、左側、右側、上部、底部、上、下、垂直、水平、時計回り及び反時計回り)は、本発明の種々の実施形態を読み手が理解することを助けるために識別する目的で使用されるに過ぎず、特許請求の範囲において具体的に記載されない限り、特に本発明の位置、向き又は使用に関して限定するものではない。接合に関する言及(例えば接合される、取り付けられる、結合される、接続される等)は、広範に解釈すべきであり、要素と要素とを接続する中間の部材、及び要素間の相対的な移動を含み得る。したがって、接合に関する言及は、必ずしも2つの要素が直接的に接続されて互いに固定された関係にあることを示唆するものではない。さらに、種々の実施形態を参照して説明された種々の要素を入れ替えて、本発明の範囲内にある全く新しい実施形態を創出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波エネルギー相互作用構造であって、
約50%未満の結晶度を有するポリマーフィルム、及び
衝突するマイクロ波エネルギーのうちの少なくとも一部を熱エネルギーに変換させるように作用する、前記ポリマーフィルム上のマイクロ波エネルギー相互作用材料層、
を含むマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項2】
前記ポリマーフィルムが約25%未満の結晶度を有する請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項3】
前記ポリマーフィルムが約10%未満の結晶度を有する請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項4】
前記ポリマーフィルムが約7%未満の結晶度を有する請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項5】
前記ポリマーフィルムが約5%の結晶度を有する請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項6】
前記ポリマーフィルムが非結晶性ポリエチレンテレフタレートを含む請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項7】
前記ポリマーフィルムが非結晶性ナイロンを含む請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項8】
前記ポリマーフィルムが非延伸である請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項9】
前記ポリマーフィルムが実質的に非延伸である請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項10】
前記ポリマーフィルムの強度を高めるための添加剤をさらに含む請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項11】
前記添加剤が最大で前記ポリマーフィルムの約10重量%の量で存在する請求項10に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項12】
前記添加剤が最大で前記ポリマーフィルムの約5重量%の量で存在する請求項10に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項13】
前記添加剤がエチレン−メチルアクリレートコポリマーを含む請求項10に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項14】
前記添加剤がエチレン−オクテンコポリマーを含む請求項10に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項15】
前記ポリマーフィルムが多層ポリマーフィルムである請求項1に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項16】
前記多層フィルムが、
非結晶性ポリエチレンテレフタレートを含む層、並びに
非結晶性ナイロン層、非結晶性ナイロン6,6層、オレフィン層及びエチレンビニルアルコール層のうちの少なくとも1つ、
を含む、請求項15に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項17】
前記多層フィルムが、
非結晶性ナイロン及びナイロン6,6のうちの少なくとも1つを含む層、並びに
非結晶性ポリエチレンテレフタレート層、オレフィン層及びエチレンビニルアルコール層のうちの少なくとも1つ、
を含む請求項15に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項18】
前記マイクロ波エネルギー相互作用材料層に接合した支持層を、該マイクロ波エネルギー相互作用材料層が前記ポリマーフィルムと前記支持層との間に配置されるようにさらに含む請求項1〜17のいずれか一項に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項19】
前記支持層が紙、板紙、又はそれらの任意の組合せを含む請求項18に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。
【請求項20】
電子レンジで食品を加熱、ブラウニング及び/又はクリスピングするためのマイクロ波加熱構築物の少なくとも一部を含む請求項1〜17のいずれか一項に記載のマイクロ波エネルギー相互作用構造。

【公表番号】特表2012−518559(P2012−518559A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551264(P2011−551264)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/024864
【国際公開番号】WO2010/096740
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(504075588)グラフィック パッケージング インターナショナル インコーポレイテッド (137)
【Fターム(参考)】