説明

低雑音電圧制御発振回路

【課題】 電源雑音を除去し、低周波雑音の特性を良好にできる低雑音電圧制御発振回路を提供する。
【解決手段】 駆動用トランジスタQ1 のベースとGNDの間にコンデンサC11を設けることで、そのベースに入力される低周波ノイズを除去でき、駆動用トランジスタQ1 をhFEの低いトランジスタとすることで、電源から入力される低周波ノイズを除去することができ、発振用トランジスタQ2 のエミッタ側に、コイルL3 を設けることで、周波数特性を広域化して位相雑音の周波数特性を良好にでき、発振用トランジスタQ2 のエミッタ側に、コンデンサC7 とコイルL3 で構成される共振回路における共振周波数をVCOの発振周波数帯域の中心辺りに設定することで、ノイズの影響を受けにくい発振周波数にすることができる低雑音電圧制御発振回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御発振回路に係り、特に、電源雑音を除去し、低周波雑音の特性を良好にする低雑音電圧制御発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来の電圧制御発振回路(VCO:Voltage Controlled Oscillator)は、制御端子に印加する直流電圧によって発振周波数を変化させる回路である。
そして、従来のVCOには、外部電源が直接接続される構成のものがあり、そのような構成のVCOでは、外部電源の電源雑音、特に数kHz以下の低周波ノイズの影響をそのまま受け、その帯域の位相雑音特性が劣化することになる。
【0003】
[電源雑音による位相雑音の劣化:図4]
従来のVCOにおける電源雑音による位相雑音の劣化について図4を参照しながら説明する。図4は、電源雑音による位相雑音の劣化を示す図である。図4において、横軸が周波数(Offset Frequency)を示し、縦軸が位相雑音(Phase noise)を示している。
【0004】
そして、図4に示すように、従来のVCOにおける電源雑音による位相雑音の劣化は、下側の曲線が電源雑音の影響を受けていない場合の特性であり、上側の曲線が電源雑音の影響を受けていない場合の特性を示している。電源雑音による影響を受けた場合の方が、特性は悪くなっている。
【0005】
[電源雑音低減のVCO使用方法:図5]
そこで、上記の電源雑音による位相雑音の劣化を防ぐために、図5に示すように、電源にリップルフィルタ回路や大容量の低ESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)コンデンサなどを使用することが考えられる。
図5は、電源雑音を低減させたVCOの使用方法を示す図である。
【0006】
図5では、VCO100の電源端子にリップリフィルタ回路200を挿入し、更に、その電源端子に低ESRコンデンサを接続している。
リップリフィルタ回路200は、コレクタを電源に接続し、エミッタをVCO100の電源入力端子に接続するトランジスタTrと、コレクタとベースを抵抗Rで接続し、ベースにコンデンサCの一端が接続して他端が接地している。
【0007】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開平08−107309号公報「電圧制御発振回路」(出願人:株式会社東芝)[特許文献1]と、特開平09−191215号公報「電圧制御発振器」(出願人:三菱電機株式会社)[特許文献2]と、特開平11−225020号公報「VCO回路」(出願人:株式会社村田製作所)[特許文献3]がある。
【0008】
特許文献1には、電圧制御発振回路において、バッファアンプ回路部1の増幅用トランジスタTr2のベースを低周波交流的に接地するコンデンサC10を設け、バッファアンプ回路部1に電源端子Bから加わる低周波雑音に対してはリップルフィルタとになせるようにし、発振回路部2から加わる信号については通常の増幅動作を行わせる構成が示されている。
【0009】
特許文献2には、電圧制御発振器において、トランジスタを高周波的にコレクタ接地し、位相遅れをキャンセルする位相進み回路としてハイパスフィルタを挿入して、出力周波数を誘電体共振器の共振周波数近傍で低位相雑音な信号として取り出すことができる構成が示されている。
【0010】
特許文献3には、VCO回路において、入力端子3と共振回路となるトランジスタ8のベースとの間に抵抗4、インダクタ12、共振子13、コンデンサ7を直列接続し、抵抗4とインダクタ12との接続点を他端接地のバリキャップ6を接続し、共振回路の出力をタンク回路2に与え、トランジスタ8のエミッタに抵抗14を介してインダクタ15及び抵抗16が並列接続されて接地される構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−107309号公報
【特許文献2】特開平09−191215号公報
【特許文献3】特開平11−225020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の電圧制御発振回路(VCO)では、電源雑音を低減させるために、外部電源との間にリップルフィルタ回路を設け、また、低ESRコンデンサを設ける必要があるため、近年、電子部品の小型化が要求される現状で、VCO単体で、更にVCOを使用するPLL(Phase Locked Loop)シンセサイザで小型化できないという問題点があった。
【0013】
また、特許文献1では、バッファアンプ回路部がリップルフィルタの役割を果たすように構成したものに過ぎず、また、特許文献2,3では、低雑音化を図るものではあるが、電源からの低周波雑音を除去するものではない。
【0014】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、電源雑音を除去し、低周波雑音の特性を良好にできる低雑音電圧制御発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、電圧制御発振回路において、電源電圧が第1の抵抗を介してエミッタに供給され、ベースには電源電圧が分圧された電圧が印加される駆動用トランジスタと、駆動用トランジスタのコレクタがベースに接続されて発振動作を行う発振用トランジスタと、発振用トランジスタのコレクタからの出力を分岐して入力し、帯域制限して発振用トランジスタのベースに帰還させ、外部からの制御電圧によって当該ベースに供給される電圧を調整するフィルタ回路と、発振用トランジスタのコレクタからの出力を増幅するバッファアンプとを有し、駆動用トランジスタのベースに一端が接続し、他端が接地する第1のコンデンサを設け、駆動用トランジスタを直流電流増幅率が通常の駆動用トランジスタに比べて低いトランジスタを使用し、駆動用トランジスタのエミッタと発振用トランジスタのコレクタが並列接続の第2の抵抗と第1のコイルを介して接続され、発振用トランジスタのエミッタに一端が接続し、他端が接地する第2のコイルを設けたことを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記電圧制御発振回路において、発振用トランジスタのエミッタと第2のコイルとの間に、第2のコンデンサを直列に接続して、第2のコイルと第2のコンデンサで共振回路を形成し、当該共振回路における共振周波数を発振周波数帯域に中心辺りに設定したことを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記電圧制御発振回路において、フィルタ回路が、入力端子と出力端子を結ぶラインにコイルを直列に接続し、当該ラインにカソードを接続し、アノードを接地する可変容量ダイオードを設けて形成されたローパスフィルタによって構成され、当該コイルの両端に制御電圧が印加されるようにしたことを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記電圧制御発振回路において、フィルタ回路におけるコイルをストリップラインで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電源電圧が第1の抵抗を介してエミッタに供給され、ベースには電源電圧が分圧された電圧が印加される駆動用トランジスタと、駆動用トランジスタのコレクタがベースに接続されて発振動作を行う発振用トランジスタと、発振用トランジスタのコレクタからの出力を分岐して入力し、帯域制限して発振用トランジスタのベースに帰還させ、外部からの制御電圧によって当該ベースに供給される電圧を調整するフィルタ回路と、発振用トランジスタのコレクタからの出力を増幅するバッファアンプとを有し、駆動用トランジスタのベースに一端が接続し、他端が接地する第1のコンデンサを設け、駆動用トランジスタを直流電流増幅率が通常の駆動用トランジスタに比べて低いトランジスタを使用し、駆動用トランジスタのエミッタと発振用トランジスタのコレクタが並列接続の第2の抵抗と第1のコイルを介して接続され、発振用トランジスタのエミッタに一端が接続し、他端が接地する第2のコイルを設けた電圧制御発振回路としているので、駆動用トランジスタでのノイズ電流を低減して発振用トランジスタへの影響を少なくし、周波数特性を広帯域化して位相雑音の周波数特性を改善できる効果がある。
【0020】
本発明によれば、発振用トランジスタのエミッタと第2のコイルとの間に、第2のコンデンサを直列に接続して、第2のコイルと第2のコンデンサで共振回路を形成し、当該共振回路における共振周波数を発振周波数帯域に中心辺りに設定した上記電圧制御発振回路としているので、ノイズの影響を受けにくい発振周波数とすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る電圧制御発振回路の構成ブロック図である。
【図2】フィルタ回路の回路図である。
【図3】VCOのノイズ耐性を示す図である。
【図4】電源雑音による位相雑音の劣化を示す図である。
【図5】電源雑音を低減させたVCOの使用方法を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る電圧制御発振回路は、電源電圧が第1の抵抗を介してエミッタに供給され、ベースには電源電圧が分圧された電圧が印加される駆動用トランジスタと、駆動用トランジスタのコレクタがベースに接続されて発振動作を行う発振用トランジスタと、発振用トランジスタのコレクタからの出力を分岐して入力し、帯域制限して発振用トランジスタのベースに帰還させ、外部からの制御電圧によって当該ベースに供給される電圧を調整するフィルタ回路と、発振用トランジスタのコレクタからの出力を増幅するバッファアンプとを有する電圧制御発振回路であって、駆動用トランジスタのベースに一端が接続し、他端が接地する第1のコンデンサを設け、駆動用トランジスタを直流電流増幅率が通常の駆動用トランジスタに比べて低いトランジスタを使用し、駆動用トランジスタのエミッタと発振用トランジスタのコレクタが並列接続の第2の抵抗と第1のコイルを介して接続され、発振用トランジスタのエミッタに一端が接続し、他端が接地する第2のコイルを設けたものであり、駆動用トランジスタでのノイズ電流を低減して発振用トランジスタへの影響を少なくし、周波数特性を広帯域化して位相雑音の周波数特性を改善できる。
【0023】
また、本発明の実施の形態に係る電圧制御発振回路は、発振用トランジスタのエミッタと第2のコイルとの間に、第2のコンデンサを直列に接続して、第2のコイルと第2のコンデンサで共振回路を形成し、当該共振回路における共振周波数を発振周波数帯域に中心辺りに設定したものであり、ノイズの影響を受けにくい発振周波数とすることができる。
【0024】
尚、請求項における構成と実施の形態における構成との対応は、第1の抵抗はR6 に、第1のコンデンサはC11に、第2の抵抗はR7 に、第1のコイルはL1 に、第2のコイルはL3 に、第2のコンデンサはC7 に相当している。
【0025】
[電圧制御発振回路:図1]
本発明の実施の形態に係る電圧制御発振回路について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る電圧制御発振回路の構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る電圧制御発振回路(本回路)は、図1に示すように、電源電圧Vccが入力される端子(電源端子)と、制御電圧Vt が入力される端子(制御電圧端子)と、出力Fout が出力される端子(出力端子)を備え、駆動用トランジスタQ1 と、発振用トランジスタQ2 と、バッファアンプとなるIC1と、フィルタ回路10を基本的に有している。
【0026】
そして、発振用トランジスタQ2 のコレクタ出力からベースにフィルタ回路10を介して帰還させて発振させ、フィルタ回路10のカットオフを制御電圧Vt により可変にすることで発振周波数を調整している。
また、発振用トランジスタQ2 のコレクタ側の負荷は、コイルL1 を抵抗R7 でダンピングさせ、周波数帯域をブロードにしている。
【0027】
[接続関係]
本回路における接続関係を具体的に説明する。
駆動用トランジスタQ1 は、hFE(直流電流増幅率)の低いトランジスタを使用している。
電源端子が、直列接続の抵抗R1 、ダイオードD1 、抵抗R2 を介して接地されている。
そして、ダイオードD1 のカソード側と抵抗R2 を接続する点が駆動用トランジスタQ1 のベースに接続している。
【0028】
また、抵抗R1 の電源端子側の点にコンデンサC1 の一端が接続され、その他端は接地されている。
更に、電源端子が、コンデンサC2 を介して駆動用トランジスタQ1 のベースに接続し、当該ベースにはコンデンサC11を介して接地されている。
また、電源端子は、抵抗R6 を介して駆動用トランジスタQ1 のエミッタに接続されている。抵抗R6 は、駆動用トランジスタQ1 のエミッタ抵抗である。
【0029】
駆動用トランジスタQ1 のコレクタは、直列接続の抵抗R3 と抵抗R5 を介して発振用トランジスタQ2 のベースに接続している。
駆動用トランジスタQ1 のエミッタと、抵抗R3 と抵抗R5 の間の点が、直列接続のコンデンサC3 と抵抗R4 を介して接続されている。
【0030】
また、発振用トランジスタQ2 のコレクタとそのベースは、コンデンサC4 を介して接続し、当該ベースは、フィルタ回路10の出力側にコンデンサC5 を介して接続している。
抵抗R6 とコンデンサC3 を接続する点は、並列接続の抵抗R7 とコイルL1 を介して発振用トランジスタQ2 のコレクタに接続している。
そして、抵抗R7 とコイルL1 の並列接続と抵抗R6 の間の点が、コンデンサC6 を介して接地されている。
【0031】
発振用トランジスタQ2 のコレクタは、コンデンサC8 を介してIC1の入力側に接続し、IC1の出力側がコンデンサC10を介して出力端子に接続している。
また、IC1には、電源電圧がコイルL2 を介して提供されている。
コンデンサC8 とIC1の入力側との間の点が、コンデンサC12を介してフィルタ回路10の入力側に接続している。
【0032】
そして、発振用トランジスタQ2 のエミッタには、抵抗R8 と、直列接続のコンデンサC7 、コイルL3 、抵抗R9 とが並列に接続され、各他端は接地されている。
【0033】
[電源雑音除去の工夫]
本回路における電源雑音除去に関する特徴部分を説明する。
第1に、コンデンサC1 ,C2 の他に、駆動用トランジスタQ1 のベースとグランド(GND)間にコンデンサC11を設け、電源から駆動用トランジスタQ1 のベースに入力される低周波ノイズを除去している。
これは、電源から低周波雑音が入力されると、駆動用トランジスタQ1 のベースにノイズ電流が流れることになるので、コンデンサC11によって低周波ノイズを除去している。
【0034】
第2に、駆動用トランジスタQ1 に使用するトランジスタを、通常の駆動用トランジスタに比べてhFEの低いトランジスタとすることで、電源から発振用トランジスタQ2 に入力する低周波ノイズを低減している。
これは、抵抗R6 は、駆動用トランジスタQ1 のエミッタ抵抗となっているため、電源から低周波雑音が入力されると、駆動用トランジスタQ1 のベースにノイズ電流が流れ、抵抗R6 にノイズ電流が流れることになる。結果として、駆動用トランジスタQ1 のコレクタにはノイズ電流のhFE倍された電流が流れ、発振用トランジスタQ2 のベースに影響を及ぼす。更に、発振用トランジスタQ2 でノイズ電流が増加するため、抵抗R6 のノイズ電流を増やし、結果として、駆動用トランジスタQ1 のノイズ電流を増加させるフィードバックが起こってしまう。
そのため、駆動用トランジスタQ1 に、hFEの低いトランジスタを用いることで、発振用トランジスタQ2 へのノイズ電流の影響を低減できるものである。
【0035】
具体的には、駆動用トランジスタのhFEは、品種によって様々であるが、一般的には50〜1000程度で、50〜200,200〜400,400〜800,600〜1000といったようにランク分けされて製造されている。
通常、高周波増幅用途では、hFEの高いトランジスタを使用するのが一般的であるが、本回路においては、上記ランク分けされた中でも、最も低いランクのhFEを選択して使用している。
【0036】
第3に、発振用トランジスタQ2 のエミッタ側に、コイルL3 を設け、周波数特性をブロードにし、位相雑音のf特(周波数特性)をなくすよう対応している。
【0037】
第4に、発振用トランジスタQ2 のエミッタ側に、コンデンサC7 とコイルL3 で構成される共振回路における共振周波数は、VCOの発振周波数帯域の中心辺りに設定することで、ノイズの影響を受けにくい発振周波数とすることができる。
これは、発振用トランジスタQ2 のコレクタ側の負荷として、コイルL1 のインダクタンスを抵抗R7 の抵抗値でダンピングし、周波数帯域をブロード(広帯域化)しているが、発振用トランジスタQ2 のエミッタ側は周波数特性(f特)を持っているため、広帯域VCOの場合、ノイズに対する耐性が周波数によって異なり、ノイズの影響を受けやすい発振周波数と受けにくい発振周波数ができてしまう。
そこで、コンデンサC7 とコイルL3 で構成される共振回路の共振周波数を、VCOの発振周波数帯域の中心辺りに設定することにより、ノイズの影響を受けにくい発振周波数にしている。
【0038】
[フィルタ回路:図2]
次に、本回路におけるフィルタ回路10について図2を参照しながら説明する。図2は、フィルタ回路の回路図である。
フィルタ回路10は、図2に示すように、制御電圧Vt が入力される端子(制御電圧入力端子)と、入力端子と、出力端子とを備え、入力端子から出力端子に可変容量ダイオードD6 、コイルL、可変容量ダイオードD1 が直列に接続され、アノード側が接地し、カソード側が入力端子と出力端子を結ぶラインに接続する可変容量ダイオードD2 〜D5 を備えている。
【0039】
具体的には、可変容量ダイオードD1 のカソードがコイルLに接続し、アノードが出力端子に接続し、可変容量ダイオードD6 のカソードがコイルLに接続し、アノードが入力端子に接続している。
また、出力端子と可変容量ダイオードD1 のアノードとの間の点に、抵抗R1 の一端が接続され、他端が接地され、入力端子と可変容量ダイオードD6 のアノードとの間の点に、抵抗R2 の一端が接続され、他端が接地されている。
【0040】
また、可変容量ダイオードD1 のカソードとコイルLとの間の点に、可変容量ダイオードD2 ,D3 のカソードが接続され、そのアノードが接地され、可変容量ダイオードD6 のカソードとコイルLとの間の点に、可変容量ダイオードD4 ,D5 のカソードが接続され、そのアノードが接地されている。
【0041】
更に、制御電圧入力端子がコイルLの両端に接続し、制御電圧Vt がコイルLの両端に印加される。制御電圧Vt を制御することで、フィルタ特性を変更している。
ここで、コイルLをストリップラインで構成してもよい。
図2では、可変容量ダイオードとコイルにより、ローパスフィルタを構成している。
【0042】
[VCOのノイズ耐性:図3]
次に、本回路におけるVCOのノイズ耐性について図3を参照しながら説明する。図3は、VCOのノイズ耐性を示す図である。図3において、従来技術と比較するために、左図(1)が従来のVCOのノイズ耐性を示し、右図(2)が本回路のノイズ耐性を示している。また、横軸がノイズ周波数[Hz]を示し、縦軸がスプリアスレベル[dBc/Hz]を示している。また、各図で、周波数が低い場合(Low Frequency)、中位の場合(Middle Frequency)、高い場合(High Frequency)の3つが示されている。
【0043】
図3において、擬似低周波ノイズとして、VCOの電源ラインにファンクションジェネレータから700Hz〜10kHzまでの信号を入力し、VCOの出力に現れるスプリアスレベルを測定した。
従来のVCOでは、発振周波数の低・中・高によるノイズ耐性が異なり、ノイズに対する影響も受けやすかったが、本回路では、発振周波数による周波数特性がなく、ノイズ耐性が良くなっている。
尚、図3(1)の従来の回路では、駆動用トランジスタのhFEは400程度とし、図3(2)の本回路では、駆動用トランジスタのhFEは150程度としている。
【0044】
[実施の形態の効果]
本回路によれば、駆動用トランジスタQ1 のベースとGNDの間にコンデンサC11を設けることで、そのベースに入力される低周波ノイズを除去でき、駆動用トランジスタQ1 をhFEの低いトランジスタとすることで、電源から入力される低周波ノイズを除去することができ、発振用トランジスタQ2 のエミッタ側に、コイルL3 を設けることで、周波数特性を広域化して位相雑音の周波数特性を良好にでき、発振用トランジスタQ2 のエミッタ側に、コンデンサC7 とコイルL3 で構成される共振回路における共振周波数をVCOの発振周波数帯域の中心辺りに設定することで、ノイズの影響を受けにくい発振周波数とすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、電源雑音を除去し、低周波雑音の特性を良好にできる低雑音電圧制御発振回路に好適である。
【符号の説明】
【0046】
1…IC、 10…フィルタ回路、 100…VCO、 200…リップルフィルタ回路、 Q1 …駆動用トランジスタ、 Q2 …発振用トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が第1の抵抗を介してエミッタに供給され、ベースには電源電圧が分圧された電圧が印加される駆動用トランジスタと、
前記駆動用トランジスタのコレクタがベースに接続されて発振動作を行う発振用トランジスタと、
前記発振用トランジスタのコレクタからの出力を分岐して入力し、帯域制限して前記発振用トランジスタのベースに帰還させ、外部からの制御電圧によって当該ベースに供給される電圧を調整するフィルタ回路と、
前記発振用トランジスタのコレクタからの出力を増幅するバッファアンプとを有し、
前記駆動用トランジスタのベースに一端が接続し、他端が接地する第1のコンデンサを設け、
前記駆動用トランジスタを直流電流増幅率が通常の駆動用トランジスタに比べて低いトランジスタを使用し、
前記駆動用トランジスタのエミッタと前記発振用トランジスタのコレクタが並列接続の第2の抵抗と第1のコイルを介して接続され、
前記発振用トランジスタのエミッタに一端が接続し、他端が接地する第2のコイルを設けたことを特徴とする電圧制御発振回路。
【請求項2】
発振用トランジスタのエミッタと第2のコイルとの間に、第2のコンデンサを直列に接続して、前記第2のコイルと前記第2のコンデンサで共振回路を形成し、
当該共振回路における共振周波数を発振周波数帯域に中心辺りに設定したことを特徴とする請求項1記載の電圧制御発振回路。
【請求項3】
フィルタ回路は、入力端子と出力端子を結ぶラインにコイルを直列に接続し、当該ラインにカソードを接続し、アノードを接地する可変容量ダイオードを設けて形成されたローパスフィルタによって構成され、前記コイルの両端に制御電圧が印加されるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の電圧制御発振回路。
【請求項4】
フィルタ回路におけるコイルをストリップラインで構成したことを特徴とする請求項3記載の電圧制御発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−283728(P2010−283728A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137114(P2009−137114)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】