説明

住宅用火災警報器

【課題】煙濃度を検知して火災警報を出力する住宅用火災警報器において、エアコンの吹き出し口から吹き出された気流などの誤動作要因を受けるおそれのある環境下に置かれた場合に、そのことを報知する機能を付加する。
【解決手段】装置の設置場所の温度を検知する熱検知部12と、煙濃度によって火災を判別してないときに、所定の基準を満たすような急峻な温度変化があれば、設置場所の変更を促す報知を行う制御部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の煙濃度を検知して火災警報を出力する住宅用火災警報器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような煙式の火災警報器は、住宅内の各所に設置されるが、検知が不安定になる場所を避けるために、天井面に設置する場合は、壁や梁から60センチ以上離れた位置、また、エアコン等の吹き出し口から1.5メートル以上離れた位置に設置すること、壁面に設置する場合は、天井面から15〜50センチの位置に設置することが定められている。
【0003】
なお、次の特許文献1には、熱検知部と煙検知部と、設置場所を選択する設置場所設定スイッチとを備え、この設置場所設定スイッチによって設置場所が選択されたときには、その設置場所に応じて予め割付けられている、熱検知部、煙検知部の一方あるいは双方を有効な火災検知部として自動設定して機能させる火災警報器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-086566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、煙式の火災警報器は、上記設置条件に従って、エアコンの吹き出し口から1.5メートル以上離れた位置に設置したとしても、場合によっては、図8に示しているように、吹き出し口から吹き出された気流が、付近の煙を吹き飛ばしてしまい、その結果、火災検知が遅れることも考えられる。そこで、本発明は、そのような現象の発生が予想される場合には、設置場所の変更を促すメッセージを自動的に出力する機能を有した住宅用火災警報器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による第1の住宅用火災警報器は、空気中の煙濃度を検知して、火災警報を出力する住宅用火災警報器であって、装置の設置場所の温度を検知する熱検知部と、煙濃度によって火災を判別してないときに、所定基準を満たす急峻な温度変化があれば、設置場所の変更を促す報知を行う制御部とを備える。ここで所定の基準を満たす急峻な温度変化は、時間経過による自然な温度変化ではなく、エアコン等の温風、冷風が直接装置に吹き付けることによる人工的な温度変化を意味しており、それには、例えば、所定時間(例えば、2分毎)に熱検知部を作動させ、前回の計測温度から3℃以上の温度変化があった状態が、所定回数(例えば、3回以上)連続するなどの条件として、使用環境や条件を考慮して適宜設定すればよい。
【0007】
また、本発明による第2の住宅用火災警報器は、空気中の煙濃度を検知して、火災警報を出力する住宅用火災警報器であって、火災警報器の設置場所の温度を検知する熱検知部と、煙濃度によって火災を判別してないときに、所定の上限温度以下であって、かつ所定の条件を満たす急峻な温度変化があれば、設置場所の変更を促す報知を行う制御部とを備える。
【0008】
なお、前記設置場所の変更を促す報知は、音声メッセージとして出力されることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明による第1、第2の住宅用火災警報器では、煙濃度によって火災を判別してないときに、所定の条件を満たす急峻な温度変化があれば、設置場所の変更を促す報知を行うので、それに従って設置位置を変更すれば、エアコン等による温風、冷風によって、装置の周囲の煙が吹き飛ばされ、火災検知が遅れるという問題が発生しなくなる。
【0010】
特に、本発明による第2の住宅用警報器では、上限温度を越えていれば、すなわち火災の可能性があるときには、所定の条件を満たす急峻な温度変化があっても、設置場所の変更を促す報知を行わないので、不要な報知で、ユーザに不信感を与えることがない。
【0011】
設置場所の変更を促す報知は、音声メッセージとして出力される構成では、ユーザがその報知に確実に気付くようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】は、本発明の住宅用火災警報器の一実施例を横方向から見た外観図である。
【図2】は、実施例の分解斜視図である。
【図3】は、実施例の基本的なブロック図である。
【図4】は、検知温度と報知出力との関連を示したタイミング図である。
【図5】は、検知温度と報知出力との関連を示した他のタイミング図である。
【図6】は、検知温度と報知出力との関連を示した他のタイミング図である。
【図7】は、検知温度と報知出力との関連を示した他のタイミング図である。
【図8】は、エアコンによる温風、冷風が火災検知に与える影響を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1、図2は、天井面に設置して使用される火災警報器であって、回路基板、電源電池等を収容したボディ10から、空気中の煙濃度を検知する煙検知部11が突出した外観を有している。
【0014】
煙検知部11は、遮光しつつ空気の流通を許容するラビリンス壁11aの内側に、発光ダイオード等で構成された発光部(不図示)と、ホトダイオード等で構成された受光部(不図示)とを適宜配置した基本構造で、発光部から照射した光が空気中の煙粒子によって反射された反射光を、受光部で光電変換して、検知信号として出力する仕組みである。なお、煙検知部11の中央部には、サーミスタ等で構成された熱検知部12が配置され、設置場所の気温を検知する。
【0015】
次いで基本構成を説明する。図3に示す実施例は、電源電池を有した電源回路13と、空気中の煙粒子を検知する煙検知部11と、装置の温度を検知する熱検知部12と、スピーカ14から火災警報等のメッセージを出力させる音声回路15と、装置の作動状態を表示する表示灯16と、警報停止操作を受け付ける操作部17と、煙検知部11、音声回路15等を制御する制御部18とを備えている。音声回路15は、音声合成IC等で構成できる。音声合成ICは、「ヒュー、ヒュー、火事です。火事です」というような火災警報メッセージ、「設置場所を変更して下さい」、「電池を交換して下さい」というような報知メッセージが予め登録されており、それらのメッセージを選択的に再生することができる。
【0016】
警報器1は、煙検知部11の作動を休止させて電力消費を抑制する待機モードと、煙検知部11を作動させて火災を監視する監視モードとを所定時間毎に繰り返す機能を有する。例えば、待機モードは30秒、監視モードは1秒としてもよい。監視モードでは、煙検知部11を所定回数作動させて煙濃度を計測し、測定した煙濃度が所定値を超えた回数等に基づいて、火災を判別する。そして、火災発生と判断した場合は、スピーカ14から火災警報を出力開始すると共に、表示灯16を点灯状態にする。この火災警報は、煙検知部11が火災要因を検出している間は、操作部17によって警報停止操作がなされるまで継続し、煙検知部11が火災要因を検知しなくなった場合には自動的に停止する。また、所定時間毎に電源電池の出力電圧を監視して、所定値を下回っていれば、表示灯16を点滅状態にして、電池交換を促す。
【0017】
また、煙濃度によって火災を判別してないときに、所定の基準を満たす急峻な温度変化があれば、設置場所の変更を促す報知を行う。
【0018】
具体的には、例えば、所定の時間間隔で熱検知部12を繰り返し作動させ、非火災時すなわち、火災発生と判断していない状態で、前回の検出温度と今回の検出温度の差が閾値以上である状態が所定回数連続すれば、所定の基準を満たす急峻な温度変化があったと判断してもよい。
【0019】
あるいは、所定の時間間隔で熱検知部12を繰り返し作動させ、直近所定回数の検出温度から平均温度を算出し、今回の検出温度と平均温度との差が閾値以上である状態が、所定回数連続すれば、所定の基準を満たす急峻な温度変化があったと判断してもよい。なお、平均温度は、室内の日常的な緩やかな温度変化に追随させる必要がある。そのためには、平均温度を、熱検知部12を作動させる毎に更新してもよいし、あるいは、所定時間が経過する毎に更新してもよい。要するに、ここでいう所定の基準は、警報器1が、エアコン等の温風、冷風を直接受けるなどの環境下に置かれることによって、誤動作や安定した検知動作が阻害される要因を除くための基準であり、使用環境や、使用条件などによって、適宜、選択変更される。
【0020】
報知は、表示灯16の点滅でもよいが、例えば「設置場所を変えて下さい」のような音声メッセージとすれば、ユーザがその報知に確実に気付くようになる。
【0021】
このように、煙濃度によって火災を判別してないときに、所定の基準を満たす急峻な温度変化があれば、設置場所の変更を促す報知を行えば、その報知に従って、警報器1の設置位置を変更するだけで、エアコン等による温風、冷風によって、装置の周囲の煙が吹き飛ばされ、火災検知が遅れるという問題が発生せず、安全性が高められる。
【0022】
なお、火災の可能性がある場合には、設置場所の変更を促す報知は不要であり、そのような報知を行うと、ユーザに不信感を与えることになる。従って、煙濃度によって火災を判別してないときに、所定の上限温度以下であって、かつ所定の基準を満たす急峻な温度変化があれば、設置場所の変更を促す報知を行う構成がより望ましい。更に、その上限温度以上の熱検知温度を超えた場合は、火災と判断して火災警報を出力してもよい。
【0023】
以下、検知温度に基づいた報知の例を図に従って説明する。
【0024】
図4は、冬季の例で、温度差の閾値は3℃と想定し、グラフの開始時点で、室内の平均温度は10℃と算出されていることとする。時刻T1でエアコンによる暖房が開始され、時刻T2で、検知温度が平均温度より3℃以上高い(13℃以上)状態が3回連続しているので、警報器1が装置の設置場所の変更を促す報知を行っている。
【0025】
図5は、夏季の例で、上記と同様に温度差の閾値は3℃と想定し、グラフの開始時点で、室内の平均温度は30℃と算出されていることとする。時刻T3でエアコンによる冷房が開始され、時刻T4で、平均温度より3℃以上低い(27℃以下)状態が3回連続しているので、警報器1が装置の設置場所の変更を促す報知を行っている。
【0026】
図6は、火災による温度上昇の例で、温度差の閾値は3℃と想定し、グラフの開始時点で、室内の平均温度は10℃と算出されていることとする。時刻T5で火災が発生し、時刻T6で警報器1が火災警報を出力している。火災発生後、時刻T7で、平均温度より3℃以上高い(13℃以上)状態が3回連続しているが、既に火災警報状態なので、設置場所の変更を促す報知は行っていない。
【0027】
図7は、火災による温度上昇の例であるが、図5の場合とは、煙濃度が検知濃度まで達していない点が異なっている。なお、温度差の閾値は3℃と想定し、グラフの開始時点で、室内の平均温度は10℃と算出されていることとする。また、この例では、検知温度が所定の上限温度以上のときは、装置の設置場所の変更を促す報知を禁止する構成としている。上限温度は、50℃と想定する。まず、時刻T8で火災が発生し、時刻T9で平均温度より3℃以上高い(13℃以上)状態となって、その後、更に、上限温度以上の状態となっている。そのため、時刻T9で、設置場所の変更を促す報知は行っていない。
【符号の説明】
【0028】
1 火災警報器
12 熱検知部
18 制御部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の煙濃度を検知して、火災警報を出力する住宅用火災警報器において、
装置の設置場所の温度を検知する熱検知部と、
煙濃度によって火災を判別してないときに、所定の基準を満たす急峻な温度変化があれば、設置場所の変更を促す報知を行う制御部とを備えた住宅用火災警報器。
【請求項2】
空気中の煙濃度を検知して、火災警報を出力する住宅用火災警報器において、
火災警報器の設置場所の温度を検知する熱検知部と、
煙濃度によって火災を判別してないときに、所定の上限温度以下であって、かつ所定の基準を満たす急峻な温度変化があれば、設置場所の変更を促す報知を行う制御部とを備えた住宅用火災警報器。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記設置場所の変更を促す報知は、音声メッセージとして出力される住宅用火災警報器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−34314(P2011−34314A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179568(P2009−179568)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】