説明

作業台車

【課題】走行安定性を向上することが可能な作業台車を提供する。
【解決手段】前後一列に所定の間隔を隔てて配置される走行車輪としての前輪21および後輪22と、走行車輪の駆動源としての走行モータ23(モータ)と、走行モータ23に電力を供給するための走行バッテリ25(バッテリ)とを備える作業台車1であって、前輪21の径は、後輪22よりも小径であり、走行モータ23は、前輪21の上方近傍に配置され、走行バッテリ25は、走行モータ23の後方、かつ前輪21と後輪22との間に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後一列に所定の間隔を隔てて配置される走行車輪としての前輪および後輪を備える作業台車の技術に関する。より詳細には、作業台車の走行安定性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前輪と後輪とを前後一列に配置した、自走式作業台車の技術は公知となっている。作業台車は、作業台車を走行させる移動台車と、作業を行う際に使用する荷台および載置台とを備える。かかる荷台および載置台においては、薬剤や肥料等の散布物を散布する散布装置を搭載することで畦畔散布機を構成でき、荷台として機能するコンテナを搭載することで運搬車を構成できる。このように、作業台車は、その作業用途に応じて、多目的に使用されていた。
【0003】
一方、このような作業台車に関しては、重量物、例えば、作業台車を移動させるための走行装置および散布物を散布する散布装置等を搭載するため、作業台車のバランスが悪くなり転倒してしまうという問題があった。そこで、作業台車のバランスを向上させる、転倒防止手段を設ける等、走行安定性を向上させる必要があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、転倒防止手段を設ける作業台車の技術が記載されている。前記転倒防止手段は、前輪に設けられるガイド装置と、後輪に設けられる補助輪とで構成されている。
前記ガイド装置は、上下方向および左右方向に回動可能なガイドローラと、前記ガイドローラを上下方向に回動させるための昇降操作レバーと、前記ガイドローラを左右方向に回動させるための開閉操作レバーとを備えている。前記ガイドローラは、前記前輪の両端部に設けられている。また、前記昇降操作レバーおよび前記開閉操作レバーとは、それぞれ後輪の上部に設けられるハンドルの近傍に設けられている。
前記補助輪は、後輪の近傍に設けられるスタンドに設けられ、前記スタンド未使用時(スタンドの長手方向と地面とが平行である状態)において、前記スタンドの長手方向と直交して、地面に当接している。
【0005】
確かに、作業台車で作業を行う際に、前記昇降操作レバーおよび前記開閉操作レバーを操作して、前記ガイドローラを地面に近接させることで、前記前輪および前記ガイドローラと、前記後輪および前記補助輪とで走行可能となるため、作業台車が転倒することなく作業を行うことができる。しかし、特許文献1に記載の作業台車は、エンジンおよびバッテリが前輪の上方、詳しくは、前輪の上方に設けられる荷台に取り付けられるため、重心が高くなる。言い換えれば、作業台車自身のバランスが悪くなる。つまり、作業台車の走行安定性が低下するという点で不利であった。また、別部材であるガイド装置および補助輪を作業台車に取り付けるため、製造工程が複雑になるという点で不利であった。
【0006】
このような作業台車において、バランスを崩し易い場所で作業を行う場合、例えば傾斜面等で作業を行う場合、次のような問題が生じると考えられる。すなわち、作業台車が前(後)方向に傾くことで、バランスを崩すこととなり、作業台車が前(後)方向に倒れるという可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−58017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、走行安定性を向上することが可能な作業台車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1においては、前後一列に所定の間隔を隔てて配置される走行車輪としての前輪および後輪と、前記走行車輪の駆動源としてのモータと、該モータに電力を供給するためのバッテリとを備える作業台車であって、前記前輪の径は、前記後輪よりも小径であり、前記モータは、前記前輪の上方近傍に配置され、前記バッテリは、前記モータの後方、かつ前記前輪と前記後輪との間に配置されているものである。
【0010】
請求項2においては、前記モータからの回転を第一動力伝達手段を介して前輪に伝え、前記前輪から第二動力伝達手段を介して後輪に伝える構成であって、第一動力伝達手段を前輪と後輪の左右一側に配置し、第二動力伝達手段を左右他側に配置して、前記第二動力伝達手段は、前輪の周速が後輪の周速よりも大きくなる伝達比とするとともに、前記第二動力伝達手段の駆動伝達経路にワンウェイクラッチを設けるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、作業台車の重心が低くなるため、走行安定性を向上できる。また、製造工程を単純化・簡略化することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、第一動力伝達手段と第二動力伝達手段は左右に振り分け配置されて、重量バランスが向上されて、安定走行が可能となり、また、前輪と後輪が大きさ異なる構成であっても、駆動力に大きな負荷変動が生じることなく前輪または後輪に動力を伝えることができて、走行安定性を向上できる。さらに、前輪を浮かせることで、手押し走行ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例にかかる作業台車の全体的な構成を示した側面図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例にかかる作業台車の全体的な構成を示した側面図、図2は同じく正面図、図3は同じく背面図である。
【0015】
本実施形態にかかる作業台車1は、圃場等に薬剤や肥料等を散布可能とする動力散布装置40を装着可能とし、荷台上に散布する薬剤や肥料を収納した袋や収穫物等を収納したコンテナ等を載置して搬送可能とするものである。作業台車1は、前後の走行輪により移動可能に構成され、動力散布装置40を装着した場合には、作業者による操作によって移動させられながら散布物を散布可能とする。
なお、説明の便宜上、作業台車1は、畦畔散布機として説明を行うが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、圃場等で作物を運搬する運搬車に適用することもできる。
また、以下の説明においては、図1における左方向(矢印A参照)を前方向として、作業台車1における前後方向および左右方向を定義する。したがって図2における左右方向が、作業台車1における左右方向に対応することとなる。また、図1〜図3における上下方向を、作業台車1における上下方向とする。
【0016】
作業台車1は、移動台車10と、この移動台車10上に設けられる動力散布装置40とを備える。移動台車10は、本実施形態の作業台車1において、移動可能に構成される台車部として機能する。動力散布装置40は、回転駆動源により回転させられる回転体を有しこの回転体の回転を用いて粒状の薬剤を散布する。
【0017】
移動台車10は、前後一列に所定の間隔を隔てて配置される前輪21および後輪22により作業台車1を走行させるためのものである。移動台車10は、その主な部分が複数のフレーム部材によって構成される。移動台車10は、フレーム部材として、移動台車10の本体部を構成する本体フレーム11と、移動台車10のハンドル12を構成するハンドルフレーム13とを有する。
【0018】
本体フレーム11は、平面視で略長方形状に枠組み形成される部分である水平フレーム部11aと、この水平フレーム部11aの後端部において下方に向けて延設される部分である縦フレーム部11bとを含み、図1に示すように、側面視で略L字状に形成される。水平フレーム部11aは、移動台車10において荷台を構成する部分として用いられる。そこで、水平フレーム部11aは、その前側および左右両側の各縁部に、水平フレーム部11a上に搭載されるコンテナ等の落下防止等のためのガードフレーム部11cを有する。ガードフレーム部11cは、水平フレーム部11aの前側および左右両側において上方に向けて突出する略門状の形状を有する部分として設けられる。荷台として機能する水平フレーム部11a上には、例えばコンテナ等が載せられる(符号Cで示す二点鎖線参照)。
このように、作業台車1は、動力散布装置40を取り外して、水平フレーム部11a上にコンテナを載せることで、運搬車として構成可能である。
【0019】
ハンドルフレーム13は、本体フレーム11の後端部において左右両側から斜め後上方に向けて延設される二つのフレーム部材により構成される。ハンドルフレーム13の各フレーム部材は、本体フレーム11の縦フレーム部11bに対して固定されることにより支持される。ハンドルフレーム13は、本体フレーム11の縦フレーム部11bに対して固定される部分である支持部13aと、この支持部13aから斜め後上方に向けて延設される部分である延設部13bと、この延設部13bから略水平後方に向けて配されハンドル12を構成する部分であるハンドル部13cとを含む。ハンドルフレーム13は、二つのフレーム部材により、図3に示すように、背面視で略V字状となるように形成される。ハンドルフレーム13を構成する二つのフレーム部材の間には、横フレーム13dが設けられている。横フレーム13dは、二つのフレーム部材の互いの延設部13b間に架設される。
【0020】
ハンドル12は、前記のとおりハンドルフレーム13のハンドル部13cにより構成される。ハンドル12においては、ハンドルフレーム13のハンドル部13cにグリップ12aが取り付けられている。ハンドル12を構成する左側のフレーム部材におけるハンドル部13cの近傍には、走行スイッチ14aおよび操作盤14bが設けられている。走行スイッチ14aは、移動台車10の走行の入切や前後進の切替え等を行うためのスイッチ操作部である。操作盤14bにおいては、移動台車10が有するバッテリ(後述する走行バッテリ25)の異常等を操作者に知らせるためのバッテリチェッカや、走行速度の設定を行うための操作部等が設けられる。
【0021】
また、図3に示すように、移動台車10は、前後二輪の走行車輪を有する作業台車1を非作業時や収納時等に立った状態に保持するためのスタンド16を有する。スタンド16は、板状の部材が略U字状に折曲げ形成されたものであり、移動台車10において後輪22を間に介するような位置にて、左右方向を回動軸方向として回動可能に支持された状態で設けられる。スタンド16は、略U字状の開放側の両端部が、左右両側のケース体15に対してステー15aを介して支持される。
【0022】
スタンド16は、ケース体15に対してバネ17により付勢された状態で設けられる。バネ17は、その一端がケース体15に支持されるとともに、他端がスタンド16に支持されることにより、スタンド16の回動にともなって、バネ17の一端を中心として回動する。かかる構成において、図1に示すように、バネ17の付勢力等により、スタンド16は、その回動によって、前後略水平方向となる状態と略鉛直方向となる状態との各状態が維持できるように構成される。なお、スタンド16は、移動台車10における前後方向の位置について前輪21を介するような位置や前輪21と後輪22との間の位置等に設けられてもよく、その配置される位置は限定されない。
【0023】
動力散布装置40は、作業台車1において薬剤を散布するためのものである。動力散布装置40は、散布する薬剤を吐出するための散布口42を有する。動力散布装置40は、移動台車10の後部に設けられる。具体的には、図1に示すように、動力散布装置40は、本体フレーム11の後端部においてステー等を介して設けられる載置台11d上に固定された状態で設けられる。動力散布装置40は、移動台車10に搭載された状態で、散布口42が所望の高さ位置となるように設けられる。したがって、載置台11dは、動力散布装置40を支持する載置面の高さが、動力散布装置40の散布口42の所望の高さ位置に応じた高さとなるように構成される。
【0024】
動力散布装置40は、薬剤を散布する散布部41と、この散布部41に供給される薬剤を繰り出すための繰出部44とを有する。散布部41は、所定の回転駆動源により回転させられる回転体としてのインペラ43(図3参照)を有し、このインペラ43の回転を用いて薬剤を散布口42から散布する。繰出部44は、薬剤タンク45内に貯溜されている薬剤を、繰出機構を介して、散布部41のインペラ43の部分に供給する。すなわち、動力散布装置40においては、薬剤タンク45内に貯溜されている薬剤が、繰出機構を介して薬剤の吐出経路に繰り出される。この吐出経路は、散布部41においてインペラ43が収容される空間に連通する。そして、吐出経路を介してインペラ43の部分に供給された薬剤が、インペラ43の回転による送風と遠心力によって散布口42から放出されることで散布される。
【0025】
以下では、本実施形態の移動台車10の詳細構成について説明する。
【0026】
移動台車10は、走行するための走行装置を有する。走行装置は、移動台車10において本体フレーム11の下部にて構成される。走行装置は、前後一列に配される(前後二輪からなる)走行車輪としての前輪21および後輪22と、走行モータ23と、走行バッテリ25とを備える。
本実施形態の作業台車1においては、図1に示すように、前輪21は、後輪22に対して小さい(小径である)。詳しくは、前輪21の上方と、水平フレーム部11aの下方との間に走行モータ23を配置することができるように、前輪21の径は、後輪22の径と、走行モータ23の短手(上下)方向の外形の長さとの差と略同じ、または、小さくなるように構成している。
【0027】
走行モータ23は、走行バッテリ25の電力により駆動させられる電動モータとして構成される。走行モータ23は、本体フレーム11を構成する水平フレーム部11aの下側において、前輪21の上側の後寄りに配置された状態で、ステー等の支持部材を介して本体フレーム11に設けられる。図3に示すように、走行モータ23は、その回転駆動軸(出力軸)24の軸方向が左右方向となる状態で設けられる。
【0028】
走行バッテリ25は、走行モータ23の後方、かつ、前輪21と後輪22との間に配置された状態で、ステー等の支持部材を介して本体フレーム11に設けられる。走行バッテリ25は、走行モータ23と接続され、その電力を走行モータ23に供給可能である。このように、走行バッテリ25により駆動させられる走行モータ23の動力は、動力伝達機構を介して、前輪21および後輪22に伝達される。動力伝達機構は、チェーンやスプロケット等により構成される第一動力伝達手段26と第二動力伝達手段27を備える。該第一動力伝達手段26と第二動力伝達手段27は左右反対側、つまり、前輪21と後輪22の左右一側に第一動力伝達手段26、他側に第二動力伝達手段27が配置される。
【0029】
動力伝達機構は、具体的には次のような構成を有する。すなわち、第一動力伝達手段26は走行モータ23と前輪21との間に配置され、走行モータ23の回転駆動力が、走行モータ23の回転駆動軸24の一側部(図2における右側)に固定されるスプロケット26aと、前輪21の車軸(回転支持軸)28の一側部に固定されるスプロケット26bと、これら両スプロケット26a、26bに巻回されるチェーン26cとによって前輪21に伝達される。また、第二動力伝達手段27は前輪21と後輪22との間に配置され、前輪21の回転は、前輪21の車軸28の他側部(図2における右側)に固定されるスプロケット27aと、後輪22の車軸(回転支持軸)29の他側部に固定されるスプロケット27bと、これら両スプロケット27a、27bに巻回されるチェーン27cとによって後輪22に伝達される。
スプロケット26b、27aは、略同一形状の部材であり、かつ、スプロケット26b、27aの径は、スプロケット27bの径よりも小さく(小径である)、前輪21と後輪22の径に合わせて略同速(実際は後述するように前輪21のほうが速い)で走行できるように適宜のスプロケットの歯数が設定される。
【0030】
走行バッテリ25は、走行装置を構成する走行モータ23に電力を供給する。すなわち、走行装置においては、走行バッテリ25の電力により駆動する走行モータ23の駆動力が、スプロケット26a、26bおよびチェーン26cによって前輪21に伝達されるとともに、スプロケット27a、27bおよびチェーン27cによって前輪21を介して後輪22に伝達される。これにより、前輪21および後輪22が回転駆動する。なお、走行バッテリ25の電力は、移動台車10が備える走行スイッチ14aや操作盤14bその他の操作部等の作動に対しても供給される。このような走行装置と動力伝達機構とにより、移動台車10が移動可能に構成される。
【0031】
このように構成される作業台車1は、重量物である走行モータ23および走行バッテリ25が、作業台車1の下部に設置されるため、作業台車1の重心を低くすることが可能となる。つまり、作業台車1自身の上下方向のバランスが向上するため、バランスを崩し易い場所で作業を行う場合、例えば傾斜面等で作業を行う場合において、作業台車1が前(後)方向にバランスを崩し難くなるため、作業台車1が前(後)方向に倒れ難くなる。
また、走行モータ23は前輪21の後上方、つまり、走行モータ23の重心が車軸28よりも後方となるように配置され、該走行モータ23よりも重量が重く、体積も大きい走行バッテリ25が走行モータ23の後部であって後輪22よりも前方に配置される。こうして前輪21と後輪22との間の間隔をできるだけ近づけた状態で、走行モータ23と走行バッテリ25とを前輪21と後輪22との間の上部に配置して、全長を短くしている。そして、作業台車1上に設置される作業機としての動力散布装置40が走行モータ23と前後反対側の後輪22の上方に配設される。更に、走行モータ23および走行バッテリ25および動力散布装置40の各重心が左右中央に位置するように配置される。こうして、作業台車1の前後方向および左右方向の重量バランスが向上され、前後に一輪づつ配置した作業台車1であっても安定した走行が可能となる。
【0032】
ここで、前輪21の径は、後輪22の径よりも小径であるため、前輪21と後輪22との接地面積に違いが生じ、走行面からの反作用も前輪21と後輪22でその大きさが異なり、負荷も異なり、走行モータ23や伝動機構に異常な負荷がかかることがある。つまり、前輪21の周速と後輪22の周速とが同じとなるように伝動機構を設定した場合、例えば、前輪21がスリップした時に、前輪21に対する駆動負荷は急激に減少し、後輪22に対する駆動負荷は急激に増加する。また、下り傾斜を走行している時には、前輪21よりも後輪22から走行モータ23に逆回転の力がかかる。
【0033】
そこで本実施例では、前輪21の周速が後輪22の周速よりも速くなるようにスプロケット27a、27bを設定するとともに、前輪21の回転は、後輪22に対してワンウェイクラッチ30を介して伝達される。つまり、第二動力伝達手段27にワンウェイクラッチ30が配置され、詳細には、後輪22の車軸29と、この車軸29の他側部に固定されるスプロケット27bとの間にワンウェイクラッチ30が介装されている。
前記ワンウェイクラッチ30は、前輪21からの動力を伝えるが逆回転(反対方向の回転)は空転させるものである。
これにより、径の異なる前輪21(スプロケット27a)と後輪22(スプロケット27b)との回転差が吸収される構成となっている。つまり、動力伝達部(スプロケット27a、27bとチェーン27c)において前輪21の周速は後輪22の周速よりも速くなるように設定されているため、路上走行時等では前輪21が駆動されて後輪22は従動される(スプロケット27bの回転数よりも後輪22の回転数が大きい)。よって、駆動負荷は前輪21にのみかかっており、前輪21がスリップすると後輪22により駆動されることになり、大きな負荷の変動生じることはない。こうして、前輪21と後輪22の回転差はワンウェイクラッチ30により吸収されることになる。
そして、この構成において、作業者が手押しによって作業台車1を前方に移動させる場合、例えば、走行モータ23が故障した場合や走行モータ23による駆動速度よりも速く走行させる場合等では、前輪21を浮かせて手押し走行すると、後輪22の駆動軸29は、ワンウェイクラッチ30に対して空回りすることになり、その回転は、スプロケット26a、26b、27a、27bに伝達されない。
また、これら動力伝達機構を構成する各部材は、少なくともその一部がカバー部材としてのケース体15により覆われている。ケース体15は、前後一列に配される前輪21および後輪22の左右両外側にて、本体フレーム11に対してステー等を介して固定された状態で設けられる。
さらに、前記のとおり、走行モータ23および走行バッテリ25が、作業台車1の下部に設置されることで、作業台車1の重心は低くなっているため、当該後輪22のみでの手押し走行において、作業台車1が前(後)方向にバランスを崩すことなく、作業台車1を安定して移動させるこことができる。
【0034】
以上の如く、本発明にかかる作業台車1の実施の一形態である作業台車1は、前後一列に所定の間隔を隔てて配置される走行車輪としての前輪21および後輪22と、走行車輪の駆動源としての走行モータ23(モータ)と、走行モータ23に電力を供給するための走行バッテリ25(バッテリ)とを備える作業台車1であって、前輪21の径は、後輪22よりも小径であり、走行モータ23は、前輪21の上方近傍に配置され、走行バッテリ25は、走行モータ23の後方、かつ前輪21と後輪22との間に配置されているものである。
このように構成することにより、作業台車1の重心が低くなるため、走行安定性を向上できる。さらに、製造工程を単純化・簡略化することができる。
また、走行モータ23(モータ)からの回転を第一動力伝達手段26を介して前輪21に伝え、前輪21から第二動力伝達手段27を介して後輪22に伝える構成であって、第一動力伝達手段26を前輪21と後輪22の左右一側に配置し、第二動力伝達手段27を左右他側に配置して、第二動力伝達手段27は、前輪21の周速が後輪22の周速よりも大きくなる伝達比とするとともに、第二動力伝達手段27の駆動伝達経路にワンウェイクラッチ30を設けるものである。
このように構成することにより、第一動力伝達手段26と第二動力伝達手段27は左右に振り分け配置されて、重量バランスが向上されて、安定走行が可能となり、また、前輪21と後輪22が大きさ異なる構成であっても、駆動力に大きな負荷変動が生じることなく前輪21または後輪22に動力を伝えることができて、走行安定性を向上できる。さらに、前輪21を浮かせることで、手押し走行ができる。
【0035】
なお、本実施形態では、ワンウェイクラッチ30(一方向クラッチ)を後輪22の車軸29と、スプロケット27bとの間に設けるが、車軸28とスプロケット27aとの間や、車軸29と後輪22との間に配置することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 作業台車
10 移動台車
21 前輪
22 後輪
23 走行モータ(モータ)
25 走行バッテリ(バッテリ)
26 第一動力伝達手段
27 第二動力伝達手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後一列に所定の間隔を隔てて配置される走行車輪としての前輪および後輪と、前記走行車輪の駆動源としてのモータと、該モータに電力を供給するためのバッテリとを備える作業台車であって、
前記前輪の径は、前記後輪よりも小径であり、
前記モータは、前記前輪の上方近傍に配置され、
前記バッテリは、前記モータの後方、かつ前記前輪と前記後輪との間に配置されていることを特徴とする作業台車。
【請求項2】
前記モータからの回転を第一動力伝達手段を介して前輪に伝え、
前記前輪から第二動力伝達手段を介して後輪に伝える構成であって、
第一動力伝達手段を前輪と後輪の左右一側に配置し、第二動力伝達手段を左右他側に配置して、
前記第二動力伝達手段は、前輪の周速が後輪の周速よりも大きくなる伝達比とするとともに、
前記第二動力伝達手段の駆動伝達経路にワンウェイクラッチを設けることを特徴とする請求項1に記載の作業台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−241303(P2010−241303A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93278(P2009−93278)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(390029621)ニューデルタ工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】