説明

作業機械における油圧制御システム

【課題】油圧ショベル等の作業機械において、油圧アクチュエータの排出油の有する油圧エネルギーを回収、再利用するにあたり、制御の簡略化およびコストの抑制を図る。
【解決手段】アキュムレータ28と、エンジン動力によりポンプとして機能してアキュムレータ28に圧油供給する一方、アキュムレータ28からの圧油供給によりモータとして機能してエンジン動力を補助する油圧ポンプ・モータ29とを備えた油圧源回路Aを設けると共に、該油圧源回路Aと第二油圧アクチュエータ(ブームシリンダ8、旋回用油圧モータ13)との間に、油圧源回路Aからの圧油供給により第二油圧アクチュエータを駆動せしめる一方、第二油圧アクチュエータの排出油の有する油圧エネルギーを油圧源回路Aに回収する第二油圧アクチュエータ用駆動、回収回路B、C、Dを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械において、油圧アクチュエータの排出油の有する油圧エネルギーを回収、再利用するための油圧制御システムの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、作業機械のなかには、油圧ショベルのように、油圧ポンプから圧油供給される複数の油圧アクチュエータを備えたものがあるが、この様な作業機械の油圧回路において、従来、油圧アクチュエータから排出された油は、油タンクに戻されるように構成されている。例えば、油圧ショベルにおいて、作業部を下降させるべくブームシリンダを縮小させると、該ブームシリンダのヘッド側油室から排出された油は油タンクに戻されることになるが、この場合、ブームシリンダのヘッド側油室の油は、フロント作業部の重量を保持しているため高圧であって高い油圧エネルギーを有しており、該高い油圧エネルギーを利用することなく油タンクに戻している。また、油圧ショベルに設けられる旋回用油圧モータからの排出油は、ブレーキ時に高いブレーキ圧を有しているが、該高いブレーキ圧も利用されることなく油タンクに戻されることになって、エネルギーの無駄な損失になる。
そこで、作業部の下降時に油圧アクチュエータから排出された油をアキュムレータに蓄圧すると共に、作業部の上昇時に該アキュムレータに蓄圧された圧油を、専用のポンプを介して油圧アクチュエータに供給するように構成した技術が提唱されている(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、近年、油圧ショベルのような作業機械においても、油圧システムと電気システムとを組み合わせたハイブリッド化が試みられており、例えば、上部旋回体を駆動すると共に上部旋回体の制動時に発電する旋回用電動発電機や、走行体を駆動すると共に走行体の制動時に発電する走行用電動発電機を設けると共に、油圧アクチュエータから油タンクに戻る排出油回路に配したモータに発電機を連結し、そして、該発電機や前記旋回用、走行用電動発電機により得られた電力を、バッテリや電力コントローラを介して旋回用電動発電機や走行用電動発電機に供給するようにした技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2008−14468号公報
【特許文献2】特開2001−207482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、前記特許文献1のように、アキュムレータに蓄圧された圧油を油圧アクチュエータに供給する場合、アキュムレータの蓄圧状態によって専用ポンプから油圧アクチュエータへの供給流量が変化してしまうため、アキュムレータの蓄圧状態に応じて他の油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油供給を増減させる制御が必要であって、制御が複雑になるという問題がある。
一方、特許文献2のように、油圧システムと電気システムとを組み合わせたハイブリッドシステムの場合、電動発電機や大容量のバッテリ、インバータやコンバータ、さらには油圧システムと電気システムとの両方を制御する制御装置等が必要であって、コストが高くなると共に、従来の油圧システムが採用されている作業機械に、この様なハイブリッドシステムを組込むことは事実上不可能であるという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、第一、第二油圧アクチュエータを含む複数の油圧アクチュエータと、エンジン動力により駆動して少なくとも前記第一油圧アクチュエータの油圧供給源になるメインポンプとを備えてなる作業機械の油圧制御システムにおいて、該油圧制御システムに、油圧エネルギーを蓄圧するアキュムレータと、エンジン動力によりポンプとして機能してアキュムレータに圧油供給する一方、アキュムレータからの圧油供給によりモータとして機能してエンジン動力を補助する可変容量型の油圧ポンプ・モータとを備えた油圧源回路を設け、さらに、前記油圧ポンプ・モータをポンプとして機能或いはモータとして機能させるべく制御する制御装置を設けると共に、前記油圧源回路と第二油圧アクチュエータとの間に、油圧源回路からの圧油供給により第二油圧アクチュエータを駆動せしめる一方、第二油圧アクチュエータの排出油の有する油圧エネルギーを油圧源回路に回収する第二油圧アクチュエータ用駆動、回収回路を形成したことを特徴とする作業機械における油圧制御システムである。
請求項2の発明は、制御装置は、第二油圧アクチュエータの駆動状態、アキュムレータの圧力、およびエンジン負荷に応じて、油圧ポンプ・モータをポンプとして機能或いはモータとして機能させるべく制御することを特徴とする請求項1に記載の作業機械における油圧制御システムである。
請求項3の発明は、油圧制御システムは、第二油圧アクチュエータとして作業機械に設けられる旋回体を旋回せしめる旋回用油圧モータを備えると共に、前記油圧源回路と旋回用油圧モータとの間に、旋回用油圧モータの駆動時に油圧源回路から旋回用油圧モータに圧油供給する旋回用駆動回路と、旋回用油圧モータのブレーキ時に該旋回用油圧モータの排出油の有するブレーキ圧を油圧源回路に回収する旋回用回収回路とを形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械における油圧制御システムである。
請求項4の発明は、油圧制御システムは、第二油圧アクチュエータとして作業機械に設けられる作業部を昇降せしめる昇降用油圧シリンダを備えると共に、前記油圧源回路と昇降用油圧シリンダとの間に、作業部の上昇時に油圧源回路からの圧油供給により昇降用油圧シリンダを駆動せしめる一方、作業部の下降時に昇降用油圧シリンダからの排出油を油圧源回路に回収する昇降用駆動、回収回路を形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の作業機械における油圧制御システムである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、油圧源回路は、第二油圧アクチュエータの排出油の有する油圧エネルギーを回収すると共に、第二油圧アクチュエータを駆動させるための圧油を供給することになり、もって、第二油圧アクチュエータの排出油の有する油圧エネルギーを無駄にすることなく回収、再利用できることになって、省エネルギー化に大きく貢献できることになるが、前記油圧源回路は、油圧エネルギーを蓄圧するアキュムレータと、ポンプとして機能することによりアキュムレータに圧油供給する油圧ポンプ・モータとを備えており、而して、油圧源回路は、第二油圧アクチュエータの駆動に必要な流量を常時確保できることになって、安定した圧油供給を行なえると共に、複雑な流量制御も不要になる。しかも、前記油圧ポンプ・モータは、アキュムレータからの圧油供給によりモータとして機能することでエンジン動力を補助することになるから、第二油圧アクチュエータの排出油から回収した油圧エネルギーを、メインポンプを駆動せしめるエンジンの動力補助にも利用できることになり、而して、回収した油圧エネルギーの再利用の用途の拡大に貢献できると共に、エンジン負荷を軽減できて、更なる省エネルギー化を達成できる。そのうえ、この油圧制御システムは、油圧システムと電気システムとを組み合わせたハイブリッドシステムのように電動発電機や大容量のバッテリ、インバータ、コンバータ等を必要とせず、コストの抑制に大きく貢献できると共に、従来の油圧システムが採用されている作業機械に組込むことも、油圧システムの一部を設計変更することにより可能であって、汎用性に優れる。
請求項2の発明とすることにより、油圧ポンプ・モータがポンプとして機能した場合のアキュムレータへの圧油供給、或いはモータとして機能した場合のエンジンの動力補助を、第二油圧アクチュエータの駆動状態とアキュムレータの圧力とエンジン負荷とに応じて、適切に行なうことができる。
請求項3の発明とすることにより、旋回体を停止させるときに発生する高圧のブレーキ圧を、無駄にすることなく回収、再利用することができる。
請求項4の発明とすることにより、作業部の下降時に該作業部の重量により高圧になっている昇降用油圧シリンダからの排出油を、無駄にすることなく回収、再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は作業機械の一例である油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体(本発明の旋回体に相当する)3、該上部旋回体3のフロントに装着される作業部4等の各部から構成され、さらに該作業部4は、基端部が上部旋回体3に上下揺動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に前後揺動自在に支持されるスティック6、該スティック6の先端部に取付けられるバケット7、これらブーム5、スティック6、バケット7をそれぞれ揺動せしめるブームシリンダ8、スティックシリンダ9、バケットシリンダ10等を備えて構成されている。
【0007】
前記油圧ショベル1に設けられる油圧制御システムについて、図2に示す油圧回路図に基づいて説明すると、該図2において、8〜13は油圧ショベル1に設けられる油圧アクチュエータであって、8、9、10はそれぞれ前記ブームシリンダ、スティックシリンダ、バケットシリンダ、11、12は下部走行体2を走行せしめる左右の走行用油圧モータ、13は上部旋回体3を旋回せしめる可変容量型の旋回用油圧モータである。また、14は油タンク、15、16は第一、第二メインポンプであって、これら第一、第二メインポンプ15、16は、油圧ショベル1に搭載されるエンジンEに連結されていて、該エンジンEの動力により駆動するように構成されている。尚、本実施の形態において、油圧ショベル1は本発明の作業機械に相当するが、該油圧ショベル1は、本発明の第一油圧アクチュエータに相当する油圧アクチュエータとして、前記スティックシリンダ9とバケットシリンダ10と左右の走行用油圧モータ11、12とを備える一方、本発明の第二油圧アクチュエータに相当する油圧アクチュエータとして、前記ブームシリンダ8と旋回用油圧モータ13とを備えている。また、ブームシリンダ8は、本発明の昇降用油圧シリンダにも相当する。さらに、前記第一、第二メインポンプ15、16は、本発明のメインポンプに相当するが、本実施の形態では、メインポンプの一つである第一メインポンプ15は、後述するように、第一油圧アクチュエータだけでなく、第二油圧アクチュエータであるブームシリンダ8にも圧油供給する構成になっている。
【0008】
ここで、前記ブームシリンダ8は、ヘッド側油室8aの圧力によって作業部4の重量を保持すると共に、該ヘッド側油室8aへの圧油供給およびロッド側油室8bからの油排出により伸長してブーム5を上昇せしめ、また、ロッド側油室8bへの圧油供給およびヘッド側油室8aからの油排出により縮小してブーム5を下降せしめるように構成されている。そして、該ブームシリンダ8の伸縮駆動に伴うブーム5の上下動によって、作業部4全体が上下動するようになっている。
【0009】
さらに、図2において、17はコントロールバルブユニットであって、該コントロールバルブユニット17には、前記ブームシリンダ8、スティックシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行用油圧モータ11、12に対する油供排制御をそれぞれ行なうブーム用、スティック用、バケット用、左右の走行用の各コントロールバルブ18〜22や、走行直進弁23、メインリリーフ弁24等が配設されている。
【0010】
前記ブーム用コントロールバルブ18は、ブーム用操作具の操作に基づいて出力されるパイロット圧により切換わる三位置切換弁であって、ブーム用操作具が操作されていない状態では、ブームシリンダ8に対する油給排を行なわない中立位置Nに位置しているが、ブーム用操作具がブーム上昇側に操作されることに基づいて上昇側位置Xに切換って、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに第一メインポンプ15の吐出油を供給し、且つ、ロッド側油室8bからの排出油を油タンク14に流す一方、ブーム用操作具がブーム下降側に操作されることに基づいて下降側位置Yに切換わって、ブームシリンダ8のロッド側油室8bに第一メインポンプ15の吐出油を供給するように構成されている。
【0011】
ここで、25はブームシリンダ8のヘッド側油室8aへの油の給排を行なうべくヘッド側油室8aに接続されるブームヘッド側油路、また、26はロッド側油室8bへの油の給排を行なうべくロッド側油室8bに接続されるブームロッド側油路であって、これらブームヘッド側油路25、ブームロッド側油路26を経由して、前記ブーム用コントロールバルブ18とヘッド側油室8a、ロッド側油室8bとの間の油の給排も行なわれることになるが、上記ブームヘッド側油路25には、ブーム用コントロールバルブ18からヘッド側油室8aへの油の流れは許容するが、逆方向の流れは阻止するチェック弁27が配されている。そして、該チェック弁27によって、ヘッド側油室8aからの排出油が下降側位置Yのブーム用コントロールバルブ18を経由して油タンク14に流れてしまうことを阻止するようになっている。尚、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油は、後述するように、油圧源回路Aに回収される構成になっている。
【0012】
また、前記スティック用、バケット用、左右の走行用の各コントロールバルブ19〜22は、前記ブーム用コントロールバルブ18と同様に、対応する操作具操作に基づいて、スティックシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行用油圧モータ11、12に対する油給排制御をそれぞれ行なうように構成されている。そして、これら各コントロールバルブ19〜22を経由して、第一メインポンプ15或いは第二メインポンプ16の圧油がスティックシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行用油圧モータ11、12に供給されることによって、スティックシリンダ9やバケットシリンダ10の伸縮作動、或いは左右の走行用油圧モータ11、12の正逆駆動が行なわれるように構成されている。
【0013】
一方、前記油圧源回路Aは、油圧エネルギーを蓄圧するアキュムレータ28と、エンジンEにギア等の動力伝達機構30を介して連結される可変容量型の油圧ポンプ・モータ29とを備えると共に、該油圧ポンプ・モータ29は、後述する制御装置60の制御に基づいて、エンジン動力によりポンプとして機能して上記アキュムレータ28に圧油供給する一方、アキュムレータ28からの圧油供給によりモータとして機能してエンジン動力を補助するように構成されている。尚、本実施の形態において、油圧源回路Aは、前記アキュムレータ28、油圧ポンプ・モータ29、後述する第一油路31、第一油路用電磁切換弁35、第二油路33、第二油路用電磁切換弁36、アキュムレータ油路32等から構成されている。
【0014】
つまり、前記油圧ポンプ・モータ29の第一ポート(出口側ポート)29aは、第一油路31およびアキュムレータ油路32を介してアキュムレータ28に接続される一方、第二ポート29b(入口側ポート)は、第二油路33およびアキュムレータ油路32を介してアキュムレータ28に接続されると共に、油タンク14から第二ポート29bへの油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止するチェック弁34を介して油タンク14に接続されている。尚、前記アキュムレータ油路32は、アキュムレータ28に油を給排するべくアキュムレータ28に接続される油路である。
【0015】
さらに、前記第一油路31には、制御装置60から出力される制御信号に基づいて、中立位置Nと作動位置Xとに切換わる第一油路用電磁切換弁35が配設されているが、該第一油路用電磁切換弁35は、中立位置Nに位置している状態では、油圧ポンプ・モータ29の第一ポート29aから供給される油を油タンク14に流す一方、作動位置Xに位置している状態では、油圧ポンプ・モータ29の第一ポート29aから供給される圧油をアキュムレータ28に供給するように構成されている。
【0016】
また、前記第二油路33には、制御装置60から出力される制御信号に基づいて、第二油路33を閉じる中立位置Nと開く作動位置Xとに切換わる第二油路用電磁切換弁36が配設されている。
【0017】
そして、前記油圧ポンプ・モータ29は、第二油路用電磁切換弁36が中立位置Nに位置している状態では、エンジン動力により駆動して、第二ポート29bから油タンク14の油を吸込んで第一ポート29aから吐出するポンプとして機能する。この場合、油圧ポンプ・モータ29の吐出油は、第一油路用電磁切換弁35が中立位置Nに位置している状態では油タンク14に流れ、また、第一油路用電磁切換弁35が作動位置Xに位置している状態ではアキュムレータ28に供給される。一方、第二油路用電磁切換弁36が作動位置Xに位置し、且つ、第一油路用電磁切換弁35が中立位置Nに位置している状態では、アキュムレータ28の圧油が油圧ポンプ・モータ29の第二ポート29bに流入すると共に、第一ポート29aから流出する油が油タンク14に流れ、これにより油圧ポンプ・モータ29は、エンジン動力を補助するモータとして機能するようになっている。尚、該油圧ポンプ・モータ29の容量は、制御装置60から出力される制御信号に基づいて制御される。
【0018】
さらに、37は油圧源回路用リリーフ弁であって、該油圧源回路用リリーフ弁37の設定圧によって、前記油圧源回路Aのリリーフ圧が設定されるようになっている。また、38はアキュムレータ28の圧力を検出するアキュムレータ圧力センサである。
【0019】
一方、Bは前記油圧源回路Aとブームシリンダ8との間に設けられるブーム用駆動、回収回路(本発明の第二油圧アクチュエータ用駆動、回収回路、或いは昇降用駆動、回収回路に相当する)であって、該ブーム用駆動、回収回路Bには、制御装置60からの制御信号により容量が制御される可変容量型のブーム用第一油圧ポンプ・モータ39と、該ブーム用第一油圧ポンプ・モータ39に機械的に連結される固定容量型のブーム用第二油圧ポンプ・モータ40とが配されている。尚、本実施の形態において、ブーム用駆動、回収回路Bは、前記ブーム用第一油圧ポンプ・モータ39、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40、後述する第三油路41、第三油路用流量制御弁42、第四油路43、第四油路用電磁切換弁46、第五油路44、第五油路用電磁切換弁47等から構成されている。
【0020】
前記ブーム用第一油圧ポンプ・モータ39の第一ポート39a(モータ機能時には入口側ポート、ポンプ機能時には出口側ポート)は、第三油路41を介して前記油圧源回路Aのアキュムレータ油路32に接続される一方、第二ポート39b(モータ機能時には出口側ポート、ポンプ機能時には入口側ポート)は油タンク14に接続されている。さらに、前記第三油路41には、制御装置60から出力される制御信号に基づいて、第三油路41を閉じる中立位置Nと開く作動位置Xとに切換わる電磁比例式の第三油路用流量制御弁42が配設されているが、作動位置Xのときの第三油路用流量制御弁42の開口面積は、制御装置60から出力される制御信号値によって制御される。
【0021】
また、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の第一ポート40a(ポンプ機能時には出口側ポート、モータ機能時には入口側ポート)は、第四油路43および前記ブームヘッド側油路25を介してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに接続される一方、第二ポート40b(ポンプ機能時には入口側ポート、モータ機能時には出口側ポート)は、第五油路44を介して油圧源回路Aのアキュムレータ油路32に接続されると共に、油タンク14から第二ポート40bへの油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止するチェック弁45を介して油タンク14に接続されている。
【0022】
さらに、前記第四油路43には、制御装置60から出力される制御信号に基づいて、中立位置Nと作動位置Xとに切換わる第四油路用電磁切換弁46が配設されているが、該第四油路用電磁切換弁46は、中立位置Nに位置している状態では、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の第一ポート40aを油タンク14に接続する一方、作動位置Xに位置している状態では、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の第一ポート40aとブームシリンダ8のヘッド側油室8aとを接続するように構成されている。
【0023】
また、前記第五油路44には、制御装置60から出力される制御信号に基づいて、中立位置Nと第一、第二作動位置X、Yとに切換わる第五油路用電磁切換弁47が配されているが、該第五油路用電磁切換弁47は、中立位置Nに位置している状態では第五油路44を閉じる一方、第一作動位置Xに位置している状態では、アキュムレータ油路32からブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の第二ポート40bへの油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止し、また、第二作動位置Yに位置している状態では、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の第二ポート40bからアキュムレータ油路32への油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止するように構成されている。尚、前記ブーム用第一油圧ポンプ・モータ39およびブーム用第二油圧ポンプ・モータ40のポンプ機能、モータ機能については後述する。
【0024】
一方、48は前記ブームヘッド側油路25から分岐形成されて油タンク14に至るブームヘッド側排出油路であって、該ブームヘッド側排出油路48には、ブームロッド側油路26の圧力が入力されるパイロットポート49aを備えたブームヘッド側排出バルブ49が配設されている。そして、該ブームヘッド側排出バルブ49は、ブームシリンダ8のロッド側油室8bの圧力(ブームロッド側油路26の圧力)Prが予め設定される所定圧Prs未満(Pr<Prs)の場合には、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから油タンク14への油排出を阻止する中立位置Nに位置しているが、ロッド側油室8bの圧力Prが前記所定圧Prs以上(Pr≧Prs)になると、ヘッド側油室8aから油タンク14への油排出を許容する作動位置Xに切換るように構成されている。ここで、前記所定圧Prsは、ブーム5の下降が、空中での下降か、或いはバケット7が着地している状態での下降かを判断するために設定される値であって、ブームシリンダ8のロッド側油室8bの圧力Prが所定圧Prs未満の場合には空中でのブーム下降と判断し、また、所定圧Prs以上の場合にはバケット7が着地している状態でのブーム下降であると判断される。而して、ブーム5の下降時に、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油は、後述するように、前記油圧源回路Aのアキュムレータ28に回収されるように構成されているが、ブームシリンダ8のロッド側油室8bの圧力Prが所定圧Prs以上の場合、つまり、バケット7が着地している状態でのブーム下降時には、前記ブームヘッド側排出バルブ49が作動位置Xに切換わることによって、ヘッド側油室8aからの排出油を油タンク14に流すことができるように構成されている。そして、該ヘッド側油室8aからの排出油が油タンク14に流れることでヘッド側油室8aの圧力が低下して、ピストン8cをシリンダ縮小側に移動せしめる推力が大きくなり、これにより、バケット7が着地している状態、つまり、ブーム5の下降に抗する力が作用している状態でのブーム下降を、スムーズに行うことができるようになっている。
【0025】
さらに、Cは前記油圧源回路Aと旋回用油圧モータ13との間に形成される旋回用駆動回路であって、該旋回用駆動回路Cには、旋回用流量制御弁50と旋回用切換弁51とが配設されている。尚、本実施の形態において、旋回用駆動回路Cは、前記旋回用流量制御弁50、旋回用切換弁51、後述する第六油路58等から構成されている。さらに、前記旋回用駆動回路Cは、後述する旋回用回収回路Dと共に、本発明の第二油圧アクチュエータ用駆動、回収回路を構成する。
【0026】
前記旋回用流量制御弁50は、制御装置60から出力される制御信号に基づいて、アキュムレータ油路32から旋回用切換弁51に至る第六油路58を閉じる中立位置Nと開く作動位置Xとに切換わるが、作動位置Xのときの旋回用流量制御弁50の開口面積は、制御装置60から出力される制御信号値によって制御される。
【0027】
また、前記旋回用切換弁51は、旋回用操作具の操作に基づいて出力されるパイロット圧により切換わる三位置切換弁であって、旋回用用操作具が操作されていない状態では、旋回用油圧モータ13に対する油給排を行なわない中立位置Nに位置しているが、旋回用操作具が左旋回側に操作されることに基づいて左旋回側位置Xに切換って、前記旋回用流量制御弁50から供給されるアキュムレータ28の圧油を、第一旋回用油路52を介して旋回用油圧モータ13の一方のポート13aに供給すると共に、他方のポート13bから第二旋回用油路53に排出された油を油タンク14に流し、また、旋回用操作具が右側旋回側に操作されることに基づいて右側旋回側位置Yに切換って、アキュムレータ28の圧油を第二旋回用油路53を介して旋回用油圧モータ13の他方のポート13bに供給すると共に、一方のポート13aから第一旋回用油路52に排出された油を油タンク14に流すように構成されている。尚、前記第一旋回用油路52は、旋回用油圧モータ13の一方のポート13aへの油の給排を行なうべく一方のポート13aに接続される油路、また、第二旋回用油路53は、旋回用油圧モータ13の他方のポート13bへの油の給排を行なうべく他方のポート13bに接続される油路である。また、旋回用油圧モータ13の容量は、制御装置60から出力される制御信号値に基づいて制御される。
【0028】
さらに、Dは前記油圧源回路Aと旋回用油圧モータ13との間に形成される旋回用回収回路であって、該旋回用回収回路Dには、高圧選択弁54と旋回用回収バルブ55とが配設されている。尚、本実施の形態において、旋回用回収回路Dは、前記高圧選択弁54、旋回用回収バルブ55、後述する第七油路59等から構成されている。
【0029】
前記高圧選択弁54は、第一旋回用油路52と第二旋回用油路53とのうち高圧側の圧油を選択して、第七油路59に供給する。
【0030】
前記第七油路59は、前記高圧選択弁54からアキュムレータ油路32に至る油路であって、該第七油路59には、前記旋回用回収バルブ55が配設されている。該旋回用回収バルブ55は、制御装置60から出力される制御信号に基づいて中立位置Nと作動位置Xとに切換わる電磁切換弁であって、該旋回用回収バルブ55が中立位置Nに位置している状態では、前記高圧選択弁54により選択された第一旋回用油路52或いは第二旋回用油路53の圧油をアキュムレータ28に流す一方、作動位置Nに位置している状態では、高圧選択弁54からアキュムレータ28への油の流れを阻止するように構成されている。さらに、該旋回用回収バルブ55とアキュムレータ28との間には、旋回用回収バルブ55からアキュムレータ28への油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止するチェック弁56が配設されている。
【0031】
さらに、57は旋回用リリーフ弁であって、該旋回用リリーフ弁57の設定圧によって、前記第一、第二旋回用油路52、53のリリーフ圧が設定されるようになっている。
【0032】
一方、前記制御装置60は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されるものであって、図3のブロック図に示す如く、前記アキュムレータ28の圧力を検出するアキュムレータ圧力センサ38、ブーム用操作具の操作状態(操作方向および操作量)を検出するブーム操作検出手段61、旋回用操作具の操作状態(操作方向および操作量)を検出する旋回操作検出手段62、エンジン回転数設定具63、エンジンEの回転数を検出するエンジン回転数センサ64等からの信号を入力し、該入力信号に基づいて、前述した第一油路用電磁切換弁35、第二油路用電磁切換弁36、第三油路用流量制御弁42、第四油路用電磁切換弁46、第五油路用電磁切換弁47、旋回用流量制御弁50、旋回用回収バルブ55、旋回用油圧モータ13の容量可変手段13c、油圧ポンプ・モータ29の容量可変手段29c、ブーム用第一油圧ポンプ・モータ39の容量可変手段39c、ブーム用コントロールバルブ18にパイロット圧を出力するブーム用電磁比例減圧弁65(図2には図示せず)、旋回用切換弁51にパイロット圧を出力する旋回用電磁比例減圧弁66(図2には図示せず)等に制御信号を出力する。尚、前記エンジン回転数設定具63は、オペレータがエンジンEの無負荷時の回転数を任意に設定するための操作具(アクセルダイヤル、アクセルレバー等)である。
【0033】
次いで、前記制御装置60の行なう油圧源回路Aの制御について説明すると、制御装置60は、後述するエンジン動力補助制御を行なう場合以外には、油圧ポンプ・モータ29をエンジン動力により駆動するポンプとして機能させるべく、第二油路用電磁切換弁36を中立位置Nに位置せしめる。これにより、油圧ポンプ・モータ29は、第二ポート29bから油タンク14の油を吸い込んで第一ポート29bから吐出するポンプとして機能する。
【0034】
さらに、制御装置60は、アキュムレータ圧力センサ38から入力される検出信号に基づいて、油圧源回路Aの圧力(アキュムレータ28の圧力)PAが予め設定される第一設定圧P1以上(PA≧P1)に保持されるように、第一油路用電磁切換弁35および油圧ポンプ・モータ29の容量可変手段29cを制御する。つまり、アキュムレータ28の圧力PAが前記第一設定圧P1以上(PA≧P1)の場合には、第一油路用電磁切換弁35を中立位置Nにして油圧ポンプ・モータ29の吐出油を油タンク14に流すと共に、該油圧ポンプ・モータ29の吐出流量が最少流量になるように、容量可変手段29cを制御する。一方、アキュムレータ28の圧力PAが前記第一設定圧P1未満(PA<P1)の場合には、第一油路用電磁切換弁35を作動位置Xにして油圧ポンプ・モータ29の吐出油をアキュムレータ28に供給すると共に、該アキュムレータ28の圧力PAが低いほど油圧ポンプ・モータ29の吐出流量を多くするように、容量可変手段29cを制御する。これにより、油圧源回路Aの圧力PAは、第一設定圧P1以上に保持されるように制御される。尚、前記第一設定圧P1は、後述するように油圧源回路Aからブームシリンダ8或いは旋回用油圧モータ13に圧油供給する場合に、該圧油供給に必要な圧力を確保できるように設定される。
【0035】
次に、ブーム用操作具が操作された場合の制御について説明する。まず、ブーム用操作具がブーム上昇側に操作されると、制御装置60は、ブーム用電磁比例減圧弁65に対して、ブーム用コントロールバルブ18を上昇側位置Xに切換えるためのパイロット圧を出力するように制御信号を出力する。これにより、ブーム用コントロールバルブ18は上昇側位置Xに切換り、該上昇側位置Xのブーム用コントロールバルブ18を経由して、第一メインポンプ15の吐出油がブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されると共に、ロッド側油室8bからの排出油が油タンク14に排出される。
【0036】
さらに、ブーム上昇側に操作された場合、制御装置60は、第三油路用流量制御弁42および第四油路用電磁切換弁46に対し、作動位置Xに位置するように制御信号を出力すると共に、ブーム用第一油圧ポンプ・モータ39の容量制御を行なう。
【0037】
前記制御装置60からの制御信号により第三油路用流量制御弁42が作動位置Xに位置することにより、アキュムレータ28の圧油が前記第三油路用流量制御弁42を経由してブーム用第一油圧ポンプ・モータ39の第一ポート39aに供給される。そして、該第一ポート39aにアキュムレータ28の圧油が供給されることによりブーム用第一油圧ポンプ・モータ39はモータとして機能して、該ブーム用第一油圧ポンプ・モータ39に機械的に連結されるブーム用第二油圧ポンプ・モータ40を駆動せしめる。これにより、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40は、第二ポート40bから油タンク14の油を吸込んで第一ポート40aから吐出するポンプとして機能する。
【0038】
さらに、前記制御装置60からの制御信号により第四油路用電磁切換弁46が作動位置Xに位置することにより、前記ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の第一ポート40aから吐出された圧油は、前記第四油路用電磁切換弁46を経由し、さらにブームヘッド側油路25において前述したブーム用コントロールバルブ18からの供給圧油と合流して、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給される。この場合、制御装置60は、前記第三油路用流量制御弁42の開口面積とブーム用第一油圧ポンプ・モータ39の容量とを制御してブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の回転速度を増減調整することによって、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40からヘッド側油室8aへの供給流量を、ブーム用操作具の操作量に対応して増減するように制御する。
【0039】
さらに、前記ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40がポンプとして機能しているとき、制御装置60は、アキュムレータ28の圧力が低い場合には、第五油路用電磁切換弁47に対し、第一作動位置Xに位置するように制御信号を出力する。これにより、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の第二ポート40bにアキュムレータ28の圧油が供給される、つまり、ポンプとして機能するブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の入口側圧力が加圧され、これによって、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の吐出圧が増圧し、該増圧された圧油をブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給することができるように構成されている。
【0040】
而して、ブーム上昇側に操作された場合には、油圧源回路Aからの供給圧油によりブーム用第一油圧ポンプ・モータ39がモータとして機能してブーム用第二油圧ポンプ・モータ40を駆動せしめると共に、該ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40は、ポンプとして機能してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに圧油を供給し、これによりブームシリンダ8は伸長側に駆動してブーム5を上昇せしめる。このとき、ブームシリンダ8のロッド側油室8bからの排出油は、前述したように、ブーム用コントロールバルブ18を経由して油タンク14に流れる。また、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aには、前述したように、ブーム用コントロールバルブ18を経由する第一メインポンプ15の吐出油も前記ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40からの供給圧油と合流して供給されることになり、而して、作業部4の重量負荷に抗するブーム5の上昇であっても、該ブーム5の上昇に必要な流量をブームシリンダ8に不足なく供給できるようになっている。
【0041】
一方、ブーム用操作具がブーム下降側に操作された場合、制御装置60は、ブーム用電磁比例減圧弁65に対して、ブーム用コントロールバルブ18を下降側位置Yに切換えるためのパイロット圧を出力するように制御信号を出力する。これにより、ブーム用コントロールバルブ18は下降側位置Yに切換り、該下降側位置Yのブーム用コントロールバルブ18を経由して、第一メインポンプ15の吐出油がブームシリンダ8のロッド側油室8aに供給される。
【0042】
さらに、ブーム下降側に操作された場合、制御装置60は、第四油路用電磁切換弁46に対して作動位置Xに位置するように、また、第五油路用電磁切換弁47に対して第二作動位置Yに位置するように制御信号を出力する。さらに、制御装置60は、第三油路用流量制御弁42に対して、開口面積を全開にするべく作動位置Xに位置するように制御信号を出力すると共に、ブーム用第一油圧ポンプ・モータ39の容量制御を行なう。
【0043】
前記制御装置60からの制御信号により第四油路用電磁切換弁46が作動位置Xに位置することにより、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油が前記第四油路用電磁切換弁46を経由してブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の第一ポート40aに供給される。また、第五油路用電磁切換弁47が第二作動位置Yに位置することにより、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の第二ポート40bから流出する油が、前記第五油路用電磁切換弁47を経由して油圧源回路Aのアキュムレータ28に供給される。而して、ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40は、第一ポート40aから流入するブームシリンダのヘッド側油室8aの排出油を第二ポート40bから流出して油圧源回路Aに供給するモータとして機能する。
【0044】
さらに、前記ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40がモータとして機能することにより、該ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40に機械的に連結されるブーム用第一油圧ポンプ・モータ39は、第二ポート39bbから油タンク14の油を吸込んで第一ポート39aから吐出するポンプとして機能する。この場合、制御装置60は、ブーム用第一油圧ポンプ・モータ39の容量を制御してブーム用第二油圧ポンプ・モータ40の回転速度を増減調整することによって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出流量を、ブーム用操作具の操作量に対応して増減するように制御する。そして、前記ブーム用第一油圧ポンプ・モータ39の第一ポート39aから吐出された圧油は、油圧源回路Aのアキュムレータ28に供給される。
【0045】
而して、ブーム5の下降時に、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出される圧油は、作業部4の重量により高圧になっていると共に、ピストン8cに作用する受圧面積の関係からロッド側油室8bへの供給量に対して略二倍の排出量になるが、該ヘッド側油室8aからの排出油は、モータとして機能するブーム用第二油圧ポンプ・モータ40を経由して油圧源回路Aのアキュムレータ28に回収されることになる。さらに、前記ブーム用第二油圧ポンプ・モータ40に機械的に連結されるブーム用第一油圧ポンプ・モータ39は、ポンプとして機能してアキュムレータ28に圧油を供給することになる。尚、ブームシリンダ8のロッド側油室8bには、前述したように、ブーム用コントロールバルブ18を経由する第一メインポンプ15の吐出油が供給される。また、前述したように、バケット7が着地している状態でのブーム下降時には、ブームヘッド側排出バルブ49が作動位置Xに切換わることによって、ヘッド側油室8aからの排出油は油タンク14に流れるようになっている。
【0046】
次に、旋回用操作具が操作された場合の制御について説明する。まず、旋回用操作具が左旋回側、または右旋回側に操作されたことが旋回操作検出手段62により検出されると、制御装置60は、旋回用流量制御弁50に対し作動位置Xに位置するように制御信号を出力すると共に、旋回用電磁比例減圧弁66に対し、旋回用切換弁51を左旋回側位置X、または右旋回側位置Yに切換えるためのパイロット圧を出力するように制御信号を出力する。これにより、油圧源回路Aのアキュムレータ28からの圧油が、前記旋回用流量制御弁50および旋回用切換弁51を経由して、旋回用油圧モータ13の一方のポート13a、或いは他方のポート13bに供給される一方、他方のポート13b、或いは一方のポート13aからの排出油は旋回用切換弁51を経由して油タンク14に流れ、これにより、旋回用油圧モータ13は、上部旋回体3を左旋回、或いは右旋回するべく回転駆動する。この場合、制御装置60は、前記旋回用流量制御弁50の開口面積と旋回用油圧モータ13の容量とを制御することによって、旋回用油圧モータ13の回転速度を、旋回用操作具の操作量に対応して増減するように制御する。
【0047】
さらに、旋回用操作具が左旋回側、または右旋回側に操作された場合、制御装置60は、旋回用回収バルブ55に対し、作動位置Xに位置するように制御信号を出力する。これにより、前記アキュムレータ28から旋回用油圧モータ13への供給圧油が、高圧選択弁54および旋回用回収バルブ55を経由してアキュムレータ28に戻ってしまうことを回避できるようになっている。
【0048】
一方、旋回を停止させるべく旋回用操作具が中立位置に戻されたことが旋回操作検出手段62により検出されると、制御装置60は、前記旋回用流量制御弁50に対し中立位置Nに位置するように制御信号を出力すると共に、旋回用電磁比例減圧弁66に対して旋回用切換弁51へのパイロット圧の出力を停止するように、つまり旋回用切換弁51を中立位置Nに位置せしめるように制御信号を出力する。さらに、制御装置60は、旋回用回収バルブ55に対して、中立位置Nに位置するように制御信号を出力する。そして、前記旋回用流量制御弁50および旋回用切換弁51が中立位置Nに位置することにより、アキュムレータ28から旋回用油圧モータ13への圧油供給が停止されると共に、旋回用油圧モータ13から油タンク14への油排出が停止されて、旋回用油圧モータ13にブレーキがかかる。このとき、旋回用油圧モータ13の慣性により排出側の第一旋回用油路52或いは第二旋回用油路53には高いブレーキ圧が発生するが、該ブレーキ圧は高圧選択弁54により選択され、中立位置Nの旋回用回収バルブ55を経由してアキュムレータ28に供給されるようになっている。
【0049】
而して、旋回用操作具が上部旋回体3を旋回させるべく操作された場合には、油圧源回路Aのアキュムレータ28の圧油が、旋回用流量制御弁50および旋回用切換弁51を経由して旋回用油圧モータ13に供給される一方、旋回用操作具が旋回を停止させるべく操作された場合には、旋回用油圧モータ13の排出油の有するブレーキ圧が、高圧選択弁54および旋回用回収バルブ55を経由してアキュムレータ28に回収されるように構成されている。
【0050】
次に、制御装置60の行なうエンジン動力補助制御について説明すると、制御装置60は、ブーム操作検出手段61、旋回操作検出手段62、アキュムレータ圧力センサ38、およびエンジン回転数センサ64から入力される検出信号に基づいて、前記油圧源回路Aの油圧ポンプ・モータ29を、エンジン動力を補助するモータとして機能させるエンジン動力補助制御を行なう。
【0051】
前記エンジン動力補助制御を行なう条件について、図4に示すフローチャート図に基づいて説明すると、制御装置60は、まず、ブーム用操作具がブーム上昇側に操作されているか否かを判断し(ステップS1)、続けて、旋回用操作具が左旋回側或いは右旋回側に操作されているか否かを判断する(ステップS2)。
【0052】
前記ステップS1、S2の判断で、何れも「NO」の場合、つまり、ブーム用操作具がブーム上昇側に操作されておらず、且つ、旋回用操作具が左旋回側にも右旋回側にも操作されていない場合には、ブームシリンダ8の伸長側駆動も旋回用油圧モータ13の駆動も行なわれていない、つまり、油圧源回路Aからブームシリンダ8、旋回用油圧モータ13の何れにも圧油供給されていないとして、続けて、アキュムレータ28の圧力PAが予め設定される第二設定圧P2以上であるか否か(PA≧P2?)が判断される(ステップS3)。尚、前記第二設定圧P2は、アキュムレータ28が充分に蓄圧されているとして予め設定される圧力であって、前記第一設定圧P1よりも高圧(P2>P1)に設定される。
【0053】
前記ステップS3の判断で「YES」の場合、つまり、アキュムレータ28の圧力PAが第二設定圧P2以上であって充分に蓄圧されていると判断される場合には、続けて、エンジン回転数設定具63により設定される無負荷時のエンジン回転数Naと、エンジン回転数センサ64から入力される実際のエンジン回転数Nとの回転数差ΔN(ΔN=Na−N)を求め、該回転数差ΔNが予め設定される所定回転数差ΔNs以上であるか否か(ΔN≧ΔNs?)を判断する(ステップS4)。ここで、前記所定回転数差ΔNsは、エンジンEの負荷を判断するために設定される値であって、前記回転数差ΔNが所定回転数差ΔNs以上(ΔN≧ΔNs)の場合には、エンジン負荷が高いと判断される。
【0054】
前記ステップS4の判断で「YES」の場合、つまり、回転数差ΔNが所定回転数差ΔNs以上であってエンジン負荷が高いと判断される場合には、油圧源回路Aの油圧ポンプ・モータ29を、エンジン動力を補助するモータとして機能させるエンジン動力補助制御を行なう(ステップS5)。
【0055】
つまり、制御装置60は、ブームシリンダ8の伸長側駆動も旋回用油圧モータ13の駆動も行なわれておらず、つまり、油圧源回路Aからブームシリンダ8にも旋回用油圧モータ13にも圧油供給されておらず、且つ、アキュムレータ28に充分に蓄圧されており、且つ、エンジン負荷が高い場合にエンジン動力補助制御を行なうが、該エンジン動力補助制御を行なう場合には、第二油路用電磁切換弁36を作動位置Xに位置せしめると共に、第一油路用電磁切換弁35を中立位置Nに位置せしめる。この状態では、アキュムレータ28の圧油が、第二油路用電磁切換弁36を経由して油圧ポンプ・モータ29の第二ポート29bに流入すると共に、第一ポート29aから流出する油は、第一油路用電磁切換弁35を経由して油タンク14に流れ、これにより油圧ポンプ・モータ29は、エンジン動力を補助するモータとして機能する。而して、該モータ機能する油圧ポンプ・モータ29によって、エンジンEにかかる負荷を軽減して平滑にすることができるようになっている。
【0056】
一方、前記ステップS1またはステップS2が「YES」の場合、或いはステップS3またはステップS4が「NO」の場合にはエンジン動力補助制御は行なわれず、前述した油圧ポンプ・モータ29をエンジン動力により駆動するポンプとして機能させる制御が実行される。この場合には、前述したように、油圧源回路Aの圧力PAは、第一設定圧P1以上に保持されるように制御される。
【0057】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベル1の油圧制御システムは、第一油圧アクチュエータとしてスティックシリンダ9、バケットシリンダ10、および左右の走行用油圧モータ11、12を備え、また、第二油圧アクチュエータとしてブームシリンダ8、旋回用油圧モータ13を備えると共に、エンジン動力により駆動して少なくとも前記第一油圧アクチュエータの油圧供給源になる第一、第二メインポンプ15、16を備えているが、さらに油圧ショベル1の油圧制御システムには、油圧エネルギーを蓄圧するアキュムレータ28と、エンジン動力によりポンプとして機能してアキュムレータ28に圧油供給する一方、アキュムレータ28からの圧油供給によりモータとして機能してエンジン動力を補助する可変容量型の油圧ポンプ・モータ29とを備えた油圧源回路Aが設けられていると共に、上記油圧ポンプ・モータ29をポンプとして機能、或いはモータとして機能させるべく制御する制御装置60が設けられている。さらに、該油圧源回路Aとブームシリンダ8との間には、ブーム5の上昇時に油圧源回路Aからの圧油供給によりブームシリンダ8を伸長側に駆動させる一方、ブーム5の下降時にブームシリンダ8の排出油の有する油圧エネルギーを油圧源回路Aに回収するブーム用駆動、回収回路Bが設けられており、また、油圧源回路Aと旋回用油圧モータ13との間には、油圧源回路Aからの圧油供給により旋回用油圧モータ13を駆動せしめる旋回用駆動回路Cと、旋回用油圧モータ13のブレーキ時に旋回用油圧モータ13からの排出油の有するブレーキ圧を油圧源回路Aに回収する旋回用回収油路Dとが設けられている。
【0058】
而して、油圧源回路Aは、ブームシリンダ8および旋回用油圧モータ13の排出油の有する油圧エネルギーを回収すると共に、ブームシリンダ8および旋回用油圧モータ13を駆動させるべく圧油供給することになり、もって、排出油の有する油圧エネルギーを無駄にすることなく回収、再利用できることになって、省エネルギー化に大きく貢献できることになるが、このものにおいて、前記油圧源回路Aは、油圧エネルギーを蓄圧するアキュムレータ28と、ポンプとして機能することによりアキュムレータ28に圧油供給できる油圧ポンプ・モータ29とを備えている。この結果、油圧源回路Aは、ブームシリンダ8および旋回用油圧モータ13の駆動に必要な流量を常時確保できることになり、而して、安定した圧油供給を行なえると共に、複雑な流量制御も不要になる。
【0059】
さらに、前記油圧源回路Aの油圧ポンプ・モータ29は、アキュムレータ28からの圧油供給によりモータとして機能することでエンジン動力を補助することになるから、ブームシリンダ8或いは旋回用油圧モータ13の排出油から回収した油圧エネルギーを、第一、第二メインポンプ15、16を駆動せしめるエンジンEの動力補助にも利用できることになり、而して、回収した油圧エネルギーの再利用の用途の拡大に寄与できると共に、エンジン負荷を軽減できて、更なる省エネルギー化を達成できる。
【0060】
しかもこの油圧制御システムは、油圧システムと電気システムとを組み合わせたハイブリッドシステムのように、電動発電機や大容量のバッテリ、或いはインバータやコンバータを必要とせず、コストの抑制に大きく貢献できると共に、従来の油圧システムが採用されている作業機械に組込むことも、油圧システムの一部を設計変更することにより可能であって、汎用性に優れる。
【0061】
さらに、前記油圧ポンプ・モータ29は、制御装置60によって、操作具操作から判断されるブームシリンダ8および旋回用油圧モータ13の駆動状態と、アキュムレータ圧力センサ64から入力されるアキュムレータ28の圧力PAと、エンジン回転数センサ64から入力されるエンジン回転数Nにより判断されるエンジン負荷とに応じて、ポンプ機能或いはモータ機能するべく制御されることになるから、該油圧ポンプ・モータ29がポンプとして機能した場合のアキュムレータ28への圧油供給、およびモータとして機能した場合のエンジンEの動力補助を、必要に応じて適切に行なうことができる。
【0062】
また、このものでは、上部旋回体3を旋回せしめる旋回用油圧モータ13と油圧源回路Aとの間に、該旋回用油圧モータ13の駆動時に油圧源回路Aから旋回用油圧モータ13に圧油供給する旋回用駆動回路Cと、旋回用油圧モータ13のブレーキ時に旋回用油圧モータ13の排出油の有するブレーキ圧を油圧源回路Aに回収する旋回用回収油路Dとが形成されており、而して、上部旋回体3を停止させるときに発生する高圧のブレーキ圧を、無駄にすることなく回収、再利用することができる。
【0063】
さらにこのものでは、作業部4を上下動させるブームシリンダ8と油圧源回路Aとの間に、作業部4の上昇時に油圧源回路Aからの圧油供給によりブームシリンダ8を駆動せしめる一方、作業部4の下降時にブームシリンダ8からの排出油を油圧源回路Aに回収するブーム用駆動、回収回路Bが形成されており、而して、作業部4の下降時に該作業部4の重量により高圧になっているブームシリンダ8からの排出油を、無駄にすることなく回収、再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】油圧制御システムの油圧回路図である。
【図3】制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図4】油圧源回路の制御を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0065】
8 ブームシリンダ
9 スティックシリンダ
10 バケットシリンダ
11、12 左右の走行用油圧モータ
13 旋回用油圧モータ
15 第一メインポンプ
16 第二メインポンプ
28 アキュムレータ
29 油圧ポンプ・モータ
38 アキュムレータ圧力センサ
60 制御装置
64 エンジン回転数センサ
A 油圧源回路
B ブーム用駆動、回収回路
C 旋回用駆動回路
D 旋回用回収回路
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一、第二油圧アクチュエータを含む複数の油圧アクチュエータと、エンジン動力により駆動して少なくとも前記第一油圧アクチュエータの油圧供給源になるメインポンプとを備えてなる作業機械の油圧制御システムにおいて、該油圧制御システムに、油圧エネルギーを蓄圧するアキュムレータと、エンジン動力によりポンプとして機能してアキュムレータに圧油供給する一方、アキュムレータからの圧油供給によりモータとして機能してエンジン動力を補助する可変容量型の油圧ポンプ・モータとを備えた油圧源回路を設け、さらに、前記油圧ポンプ・モータをポンプとして機能或いはモータとして機能させるべく制御する制御装置を設けると共に、前記油圧源回路と第二油圧アクチュエータとの間に、油圧源回路からの圧油供給により第二油圧アクチュエータを駆動せしめる一方、第二油圧アクチュエータの排出油の有する油圧エネルギーを油圧源回路に回収する第二油圧アクチュエータ用駆動、回収回路を形成したことを特徴とする作業機械における油圧制御システム。
【請求項2】
制御装置は、第二油圧アクチュエータの駆動状態、アキュムレータの圧力、およびエンジン負荷に応じて、油圧ポンプ・モータをポンプとして機能或いはモータとして機能させるべく制御することを特徴とする請求項1に記載の作業機械における油圧制御システム。
【請求項3】
油圧制御システムは、第二油圧アクチュエータとして作業機械に設けられる旋回体を旋回せしめる旋回用油圧モータを備えると共に、前記油圧源回路と旋回用油圧モータとの間に、旋回用油圧モータの駆動時に油圧源回路から旋回用油圧モータに圧油供給する旋回用駆動回路と、旋回用油圧モータのブレーキ時に該旋回用油圧モータの排出油の有するブレーキ圧を油圧源回路に回収する旋回用回収回路とを形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械における油圧制御システム。
【請求項4】
油圧制御システムは、第二油圧アクチュエータとして作業機械に設けられる作業部を昇降せしめる昇降用油圧シリンダを備えると共に、前記油圧源回路と昇降用油圧シリンダとの間に、作業部の上昇時に油圧源回路からの圧油供給により昇降用油圧シリンダを駆動せしめる一方、作業部の下降時に昇降用油圧シリンダからの排出油を油圧源回路に回収する昇降用駆動、回収回路を形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の作業機械における油圧制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−121726(P2010−121726A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296766(P2008−296766)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】