説明

作業機械の油圧制御装置

【課題】複合操作時に高負荷圧アクチュエータの必要回路流量を確保するとともに、エネルギー効率の改善及びバルブ構成の簡素化を実現する。
【解決手段】油圧ポンプ27,28の吐出管路に、コントローラ36及びパイロット圧制御弁37によって切換制御される切換弁29を設けるとともに、この切換弁29の下流側に、圧力補償付き流量制御弁である第1及び第2両優先弁30,31を設け、複合操作時に、切換弁29及び第1または第2優先弁30,31を介して左右の走行モータ11L,11Rまたは破砕シリンダ12に対し、圧力補償付き流量制御を行いながら優先的にポンプ吐出油を供給する一方、余剰分を他の油圧アクチュエータに供給する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベルやこれを転用して構成される破砕機等の作業機械の油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは、図4に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が縦軸まわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2に、ブーム3、アーム4、バケット5、及びこれらを作動させる油圧アクチュエータとしてのブーム、アーム、バケット各シリンダ(油圧シリンダ)6〜8から成る作業アタッチメントAが装着されて構成され、掘削、積み込み作業等を行う。
【0003】
また、他の油圧アクチュエータとして、下部走行体1を走行駆動する左右の走行モータと、上部旋回体2を旋回駆動する旋回モータ(いずれも図示しない)が設けられている。
【0004】
一方、この油圧ショベルを他の作業機械、たとえば図5に示すような破砕機に転用する場合がある。
【0005】
この場合、作業アタッチメントAの先端に、バケット5に代えて、図示しない破砕シリンダ(オプションアクチュエータ)により開閉作動してコンクリート構造物等を破砕するオプションとしての破砕装置9が取付けられる。従って、油圧アクチュエータは破砕シリンダを加えた七つとなる。
【0006】
この油圧アクチュエータ群、及びこれらを個別に制御する油圧パイロット切換弁であるコントロールバルブ群は、通常、二つにグループ分けされ、両グループが別ポンプで駆動される。
【0007】
たとえばアームシリンダ7、旋回モータ、左走行モータ、破砕シリンダ、及びこれらを個別に制御する油圧パイロット切換弁であるコントロールバルブが第1グループに属し、第1油圧ポンプに対してパラレルに接続される。
【0008】
一方、ブームシリンダ6、バケットシリンダ8、右走行モータ、及びこれらを個別に制御する油圧パイロット切換弁であるコントロールバルブが第2グループに属し、第2油圧ポンプに対してパラレルに接続される。
【0009】
なお、通常、両油圧ポンプの吐出管路に走行直進弁が設けられ、左右の走行モータが同時に作動する直進時に、この走行直進弁により両油圧ポンプの吐出油が合流して両走行モータに同量ずつ分配される。これによって直進性が確保されるように構成される。
【0010】
このような所謂パラレル回路によると、同一グループ内の複数の油圧アクチュエータを同時に作動させる複合操作時に、同時作動する油圧アクチュエータの負荷圧(作動圧)が異なる場合に、高負荷圧側のアクチュエータ流量が不足するという問題がある。
【0011】
たとえば、旋回モータとアームシリンダ7とを同時に作動させる場合、負荷圧の高い旋回モータの回路流量が不足し、旋回速度が遅くなる。また、破砕シリンダと他のアクチュエータとを同時に作動させる場合には、高負荷圧側の破砕シリンダの回路流量が不足する。
【0012】
この問題を解決する手段として、たとえば特許文献1に記載された技術が公知である。
【0013】
この公知技術では、全油圧アクチュエータのうち最高負荷圧の油圧アクチュエータ(以下、特定油圧アクチュエータという)以外の油圧アクチュエータの回路流量を絞り弁(コンペンセータ弁)で絞ることにより、特定油圧アクチュエータの必要回路流量を確保する構成がとられている。
【特許文献1】特開2003−301803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、この公知技術によると、絞りによる圧損が大きくてエネルギー効率(燃費)が悪くなる上に、特定油圧アクチュエータ以外の全油圧アクチュエータに対して絞り弁を設けるため、バルブ構成が複雑化しコストアップとなる。
【0015】
そこで本発明は、負荷圧の高い油圧アクチュエータを含む複数油圧アクチュエータの複合操作時に高負荷圧アクチュエータの必要回路流量を確保でき、しかもエネルギー効率の改善及びバルブ構成の簡素化を実現することができる作業機械の油圧制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、油圧ポンプと、この油圧ポンプによって駆動される複数の油圧アクチュエータと、この各油圧アクチュエータの作動を個別に制御する複数のコントロールバルブとを備えた作業機械の油圧制御装置において、上記油圧ポンプの吐出管路に設けられた切換弁と、上記複数の油圧アクチュエータ及びコントロールバルブのうち予め定めた油圧アクチュエータ及びコントロールバルブを優先アクチュエータ及び優先コントロールバルブとしてこれらに優先的にポンプ吐出油を供給する優先弁と、上記切換弁を切換制御する制御手段とを具備し、上記切換弁は、ポンプ吐出油を上記優先弁に向かわせる優先位置と、ポンプ吐出油を上記優先弁をバイパスする径路で上記優先アクチュエータ以外の油圧アクチュエータに供給する非優先位置とを有し、上記制御手段は上記切換弁を、上記優先コントロールバルブの操作時には優先位置に、上記優先コントロールバルブの非操作時には上記非優先位置にそれぞれ切換えるように構成されたものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記優先弁として、上記優先コントロールバルブの圧油供給開口の前後差圧を一定に保つように流量制御を行う圧力補償付きの流量制御弁が用いられたものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、複数の上記優先アクチュエータ及び優先コントロールバルブと、これらに対応する複数の優先弁とを備え、上記切換弁は、上記複数の優先弁に対応する複数の優先位置を有し、制御手段は、上記複数の優先コントロールバルブの操作に応じて切換弁を上記複数の優先位置間で切換えるように構成されたものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの構成において、優先弁は、優先アクチュエータに供給したポンプ吐出油の余剰分を優先アクチュエータ以外の油圧アクチュエータに供給するように構成されたものである。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの構成において、油圧ショベルの左右の走行モータ、旋回モータ、及びオプションアクチュエータとしての破砕シリンダのうちから選択された油圧アクチュエータを優先アクチュエータとして優先弁及び切換弁が設けられたものである。
【0021】
請求項6の発明は、請求項5の構成において、複数の油圧ポンプを有するとともに、左右の走行モータを優先アクチュエータ、これらの作動を制御する左走行用及び右走行用両コントロールバルブを優先コントロールバルブとし、切換弁は、この両走行コントロールバルブの同時操作時に、上記複数の油圧ポンプの吐出油を合流させて優先弁に向かわせるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、予め定めた優先コントロールバルブの操作時に、切換弁及び優先弁を介して優先アクチュエータに優先的にポンプ吐出油を供給する(請求項4ではその余剰分を他の油圧アクチュエータに供給する)構成としたから、基本的な作用効果として、優先アクチュエータの必要回路流量を確保することができる。
【0023】
従って、負荷圧の高い油圧アクチュエータ(たとえば請求項5のように油圧ショベルの走行モータ、旋回モータ、破砕シリンダ)を優先アクチュエータとして優先制御することにより、この優先アクチュエータと他の油圧アクチュエータとを同時に作動させる複合操作時に、優先アクチュエータの回路流量が不足して動作速度が低下するという問題を解消することができる。
【0024】
また、非優先アクチュエータのみの操作時には、ポンプ吐出油を、優先弁をバイパスする径路でこれら非優先アクチュエータに供給する構成であるため、特許文献1に記載された公知技術のように全アクチュエータ流量を絞り弁で絞る場合と比較して圧損を抑え、エネルギー効率を向上させることができるとともに、回路構成を簡素化することができる。
【0025】
この場合、請求項2の発明によると、優先弁として、優先コントロールバルブの圧油供給開口の前後差圧を一定に保つように流量制御を行う圧力補償付きの流量制御弁を用いているため、作業アタッチメントの姿勢変化(他の油圧アクチュエータの負荷圧の変化)の影響を受けて優先アクチュエータ(たとえば走行モータ)の動作速度が変動するという問題を解消することができる。
【0026】
請求項3の発明によると、優先アクチュエータ、優先コントロールバルブ及び優先弁をそれぞれ複数備え、優先コントロールバルブの操作に応じて切換弁を複数の優先位置間で切換えることにより優先すべきアクチュエータを切換えるため、油圧ショベルのように複数の高負荷圧アクチュエータを備えた作業機械において、複合操作時の各高負荷アクチュエータの動作速度の低下という問題を解消することができる。
【0027】
請求項6の発明によると、油圧ショベルにおいて、左右の走行モータの同時操作時(直進時)に、切換弁によって複数の油圧ポンプの吐出油を合流させて優先弁に向かわせる構成、すなわち、従来のショベル回路における走行直進弁の機能を切換弁で行う構成としたから、別途、走行直進弁を設ける必要がなくなる。このため、回路構成を一層簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下の実施形態では、背景技術の説明に合せて、破砕機に転用された油圧ショベルを適用対象として例にとっている。
【0029】
第1実施形態(図1参照)
この油圧ショベルにおいては、油圧アクチュエータとして、ブーム、アーム、バケット各シリンダ6〜8のほか、旋回モータ10、左右の走行モータ11L,11R、それに破砕装置用の破砕シリンダ12とを具備し、これらがそれぞれ油圧パイロット式のコントロールバルブ13〜19によって制御される。
【0030】
また、コントロールバルブごとにリモコン弁20〜26が設けられ、このリモコン弁20〜26からのパイロット圧により各コントロールバルブ13〜19がストローク作動して各アクチュエータ6〜8,10,11L,11R,12の作動が制御される。
【0031】
第1実施形態では、左右の走行モータ11L,11Rとそのコントロールバルブ16,19を第1の優先アクチュエータ及び優先コントロールバルブとし、破砕シリンダ12とそのコントロールバルブ15を第2の優先アクチュエータ及び優先コントロールバルブとした場合を例にとっている。
【0032】
一方、油圧アクチュエータ群に対する油圧源として第1、第2両油圧ポンプ27,28が設けられるとともに、この両油圧ポンプ27,28の吐出管路に油圧パイロット式の切換弁29、この切換弁29の下流側に走行優先用の第1優先弁30と、破砕優先用の第2優先弁31とが設けられている。
【0033】
切換弁29は、図の左側から順に、ポンプ吐出油を破砕シリンダ12に優先的に供給する破砕優先位置イと、ポンプ吐出油を走行モータ11L,11Rに優先的に供給する走行優先位置ロと、優先を解除する非優先位置ハ、それに左右の走行モータ11L,11Rを別ポンプで駆動する走行別駆動位置ニの四つの位置を有し、パイロットポート29aに加えられるパイロット圧に応じて上記四位置間で切換わり作動する。
【0034】
第1及び第2両優先弁30,31は、優先機能に加えて、優先コントロールバルブ(前者は走行用コントロールバルブ16,19、後者は破砕用コントロールバルブ15)の圧油供給開口の前後差圧を一定に保つように流量制御を行う圧力補償付き流量制御弁としての機能を備えている。
【0035】
詳述すると、両優先弁30,31は、片側に優先側パイロットポート30a,31a、反対側に非優先側パイロットポート30b,31bを有する油圧パイロット弁として構成され、両側パイロットポート30a,31a,30b,31bに加えられるパイロット圧に応じて、優先位置イと非優先位置ロとの間で切換わり、かつ、流量制御を行う。
【0036】
第1優先弁30には、走行管路32a,32bを介して両走行用コントロールバルブ16,19の圧油供給開口に通じる通路と、ブーム・バケット管路33を介してブーム用及びアーム用両コントロールバルブ17,18の圧油供給開口に通じる通路とが設けられている。
【0037】
そして、図右側の優先位置イでポンプ吐出油が両走行用コントロールバルブ17,18に優先的に供給され、余剰分がブーム用、バケット用両コントロールバルブ17,18に供給される。
【0038】
第2優先弁31には、破砕管路34を介して破砕用コントロールバルブ15に通じる通路と、アーム・旋回管路35を介してアーム用及び旋回用両コントロールバルブ13,14の圧油供給開口に通じる通路とが設けられている。
【0039】
そして、図左側の優先位置イでポンプ吐出油が破砕用コントロールバルブ15に優先的に供給され、余剰分がアーム用及び旋回用両コントロールバルブ13,14に供給される。
【0040】
一方、第1優先弁30の優先側パイロットポート30aには走行モータ作動時の負荷圧が、非優先側パイロットポート30bには走行モータ作動時の供給圧がそれぞれパイロット圧として加えられる。
【0041】
第2優先弁31の優先側パイロットポート31aには、破砕シリンダ作動時の負荷圧が、非優先側パイロットポート31bには破砕シリンダ作動時の供給圧がそれぞれパイロット圧として加えられる。
【0042】
これらパイロット圧により、両優先弁30,31が優先位置イと非優先位置ロとの間で切換わり、かつ、走行用または破砕用コントロールバルブ16,19,15の圧油供給開口の前後差圧を一定に保つ流量制御が行われる。
【0043】
切換弁29のパイロットポート29aには、コントローラ36によって制御される電磁比例弁であるパイロット圧制御弁37(この両者で制御手段が構成される)が接続され、このパイロット圧制御弁37からの制御圧がパイロット圧として加えられる。
【0044】
コントローラ36には、各リモコン弁20〜26の操作をそれぞれのリモコン圧によって検出する圧力センサ38〜44からの信号(図1中の操作信号)が入力され、この操作信号に応じたコントローラ36からの指令に基づくパイロット圧制御弁37からの制御圧によって切換弁29が各位置イ〜ニ間で切換わり作動する。
【0045】
この点の作用を含めたこの制御装置の作用を説明する。
【0046】
I.走行を含む複合操作時
左右の走行リモコン弁23,26が操作されると、圧力センサ41,44からの操作信号がコントローラ36に入力され、コントローラ36からパイロット圧制御弁37を介して切換弁29に加えられるパイロット圧によって切換弁29が図1に示す走行優先位置ロに切換わる。
【0047】
この走行優先位置ロでは、両油圧ポンプ27,28の吐出油が第1優先弁30及び走行用コントロールバルブ16,19を介して左右の走行モータ11L,11Rに優先的に供給され、余剰分がブーム・バケット管路33を介してブーム用及びバケット用両コントロールバルブ17,18に向けて送られる。
【0048】
ここで、第1優先弁30は、走行モータ11L,11Rの負荷圧をパイロット圧として取り込み、負荷圧が高くなると走行管路32a,32bに通じる開度が大きくなる。逆に、負荷圧が低くなると走行管路32a,32bに通じる開度が小さくなるように設定されている。
【0049】
この結果、第1優先弁30は、走行モータ11L,11Rの負荷圧の変動にかかわらず一定の流量を両走行モータ11L,11Rに優先的に供給する。
【0050】
一方、切換弁29がこの走行優先位置ロにあるときは、第2優先弁31に通じる通路はブロックされており、アーム用、旋回用、破砕用の各コントロールバルブ13〜15へのポンプ吐出油の供給はこの第2優先弁31をバイパスして行われる。
【0051】
また、切換弁29が走行優先位置ロにあるときは、図示のように両油圧ポンプ27,28の吐出油が切換弁29内で合流し、この合流油が上記のように両走行モータ11L,11Rに供給される。
【0052】
すなわち、従来のショベル回路において左右の走行モータを同量、同圧の油によって同速で駆動するための走行直進弁の作用が走行優先位置ロで切換弁29によって行われる。
【0053】
II.破砕を含む複合操作時
この場合、切換弁29は破砕優先位置イに切換わる。
【0054】
この破砕優先位置イでは、第1油圧ポンプ27の吐出油が切換弁29、第2優先弁31の優先位置イ、破砕管路34、破砕用コントロールバルブ15の径路で破砕シリンダ12に優先的に供給され、余剰分がアーム・旋回管路35に送られる。
【0055】
このとき、第2優先弁31には、破砕シリンダ12の負荷圧がパイロット圧として加えられるため、第1優先弁30と同様に、破砕シリンダ12の負荷圧の変動にかかわらず一定の流量を流す制御が行われる。
【0056】
III.走行操作及び破砕操作が無く、これ以外の操作が行われた場合
この場合、切換弁29は非優先位置ハに切換わる。
【0057】
この非優先位置ハでは、両油圧ポンプ27,28の吐出油は、両優先弁30,31をバイパスする径路(アーム・旋回管路35及びブーム・バケット管路33)によって走行モータ11L,11R及び破砕シリンダ12以外の非優先アクチュエータ(アームシリンダ7、旋回モータ10、ブームシリンダ6、バケットシリンダ8)に供給される。
【0058】
IV.走行のみの操作時
この場合、切換弁29は走行別駆動位置ニに切換わる。
【0059】
この走行別駆動位置ニでは、第1油圧ポンプ27の吐出油が左走行モータ11Lに、第2油圧ポンプ28の吐出油が右走行モータ11Rにそれぞれのコントロールバルブ16,19を介して供給される。
【0060】
すなわち、左右の走行モータ11L,11Rが別ポンプで駆動される。
【0061】
上記のように、ポンプ吐出油を、走行操作を含む複合操作時には走行優先として走行モータ11L,11Rに、破砕操作を含む複合操作時には破砕優先として破砕シリンダ12にそれぞれ優先的に供給する構成としたから、上記複合操作時に負荷圧の高い走行モータ11L,11Rまたは破砕シリンダ12の回路流量が不足して動作速度が低下するという問題を解消することができる。
【0062】
また、優先弁30,31として圧力補償付き流量制御弁を用い、走行モータ11L,11Rまたは破砕シリンダ12の負荷圧の変動にかかわらずこれらに一定流量を供給する構成としたから、図5に示す作業アタッチメントAの姿勢変化(他の油圧アクチュエータの負荷圧の変化)の影響を受けて優先アクチュエータ(走行モータ11L,11R及び破砕シリンダ12)の動作速度が変動するという問題をも解消することができる。
【0063】
さらに、非優先アクチュエータ(ブーム、アーム、バケット各シリンダ6〜8及び旋回モータ10)のみの操作時には、ポンプ吐出油を、優先弁30,31をバイパスする径路でこれら非優先アクチュエータ6〜8,10に供給する構成であるため、特許文献1に記載された公知技術のように全アクチュエータ流量を絞り弁で絞る場合と比較して圧損を抑え、エネルギー効率を向上させることができるとともに、回路構成を簡素化することができる。
【0064】
一方、左右の走行モータ11L,11Rの同時操作時(直進時)に、切換弁29によって両油圧ポンプ27,28の吐出油を合流させて優先弁30に向かわせる構成、すなわち、従来のショベル回路における走行直進弁の機能を切換弁29で行う構成としたから、別途、走行直進弁を設ける必要がなくなる。このため、回路構成をさらに簡略化することができる。
【0065】
第2実施形態(図2参照)
以下の第2、第3実施形態については、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0066】
第2実施形態においては、旋回モータ10の負荷圧が破砕シリンダ12の負荷圧よりも高い場合の構成として、第2優先弁31により、第1実施形態の破砕シリンダ12に代えて旋回モータ10にポンプ吐出油を優先的に供給する構成がとられている。
【0067】
第1優先弁30によって左右の走行モータ11L,11Rにポンプ吐出油を優先的に供給する点を含む他の構成は第1実施形態と同じである。
【0068】
なお、この場合、旋回用及び破砕用両コントロールバルブ14´,15´のバルブ構成を第1実施形態の旋回用コントロールバルブ14,15と異ならせる必要があるためそれぞれ異なる符号を付している。また、第1実施形態の「アーム・旋回管路」35が「アーム・破砕管路」となる。
【0069】
第3実施形態(図3参照)
第3実施形態においては、第1実施形態のバリエーションとして、破砕優先用の第2優先弁45として、コントローラ36からの指令に基づいてパイロット圧制御弁46からパイロットポート45aに加えられるパイロット圧によって開度が変化する絞り弁が用いられている。
【0070】
この構成によると、アーム・旋回管路35に通じる管路47が第2優先弁45で絞られることにより、ポンプ吐出油が破砕用コントロールバルブ15´を介して破砕シリンダ12に優先的に供給される。
【0071】
但し、この場合、第1、第2両実施形態の第2優先弁31のような圧力補償付き流量制御作用は行われない。
【0072】
他の構成及び作用は第1実施形態と基本的に同じであり、基本的に第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態を示す回路構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す回路構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す回路構成図である。
【図4】油圧ショベルの概略側面図である。
【図5】油圧ショベルを破砕機に転用した状態の概略側面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 油圧ショベルの下部走行体
2 同、上部旋回体
3 ブーム
4 アーム
5 バケット
6 ブームシリンダ
7 アームシリンダ
8 バケットシリンダ
9 破砕装置
10 旋回モータ
11L 走行モータ
11R 右走行モータ
12 破砕シリンダ
13〜19 コントロールバルブ
27,28 油圧ポンプ
29 切換弁
30 第1優先弁
31 第2優先弁
36 制御手段を構成するコントローラ
37 同、パイロット圧制御弁
38〜44 操作を検出する圧力センサ
45 第2優先弁
46 パイロット圧制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと、この油圧ポンプによって駆動される複数の油圧アクチュエータと、この各油圧アクチュエータの作動を個別に制御する複数のコントロールバルブとを備えた作業機械の油圧制御装置において、上記油圧ポンプの吐出管路に設けられた切換弁と、上記複数の油圧アクチュエータ及びコントロールバルブのうち予め定めた油圧アクチュエータ及びコントロールバルブを優先アクチュエータ及び優先コントロールバルブとしてこれらに優先的にポンプ吐出油を供給する優先弁と、上記切換弁を切換制御する制御手段とを具備し、上記切換弁は、ポンプ吐出油を上記優先弁に向かわせる優先位置と、ポンプ吐出油を上記優先弁をバイパスする径路で上記優先アクチュエータ以外の油圧アクチュエータに供給する非優先位置とを有し、上記制御手段は上記切換弁を、上記優先コントロールバルブの操作時には優先位置に、上記優先コントロールバルブの非操作時には上記非優先位置にそれぞれ切換えるように構成されたことを特徴とする作業機械の油圧制御装置。
【請求項2】
上記優先弁として、上記優先コントロールバルブの圧油供給開口の前後差圧を一定に保つように流量制御を行う圧力補償付きの流量制御弁が用いられたことを特徴とする請求項1記載の作業機械の油圧制御装置。
【請求項3】
複数の上記優先アクチュエータ及び優先コントロールバルブと、これらに対応する複数の優先弁とを備え、上記切換弁は、上記複数の優先弁に対応する複数の優先位置を有し、制御手段は、上記複数の優先コントロールバルブの操作に応じて切換弁を上記複数の優先位置間で切換えるように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械の油圧制御装置。
【請求項4】
優先弁は、優先アクチュエータに供給したポンプ吐出油の余剰分を優先アクチュエータ以外の油圧アクチュエータに供給するように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械の油圧制御装置。
【請求項5】
油圧ショベルの左右の走行モータ、旋回モータ、及びオプションアクチュエータとしての破砕シリンダのうちから選択された油圧アクチュエータを優先アクチュエータとして優先弁及び切換弁が設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業機械の油圧制御装置。
【請求項6】
複数の油圧ポンプを有するとともに、左右の走行モータを優先アクチュエータ、これらの作動を制御する左走行用及び右走行用両コントロールバルブを優先コントロールバルブとし、切換弁は、この両走行コントロールバルブの同時操作時に、上記複数の油圧ポンプの吐出油を合流させて優先弁に向かわせるように構成されたことを特徴とする請求項5記載の作業機械の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−101095(P2010−101095A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274525(P2008−274525)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】