説明

作業機械の油圧回路

【課題】作業機械の油圧回路に関し、簡素な構成で外部油圧源の利用時における走行装置の作動を防止する。
【解決手段】走行モータ10と制御弁8とを接続する走行回路42b上に第一切換弁19a,19bを介装し、これに外部油圧源へと接続される外部作動油導入路63aを接続する。
また、走行回路42b上における第一切換弁19a,19bよりも制御弁8側に第二切換弁20a,20bを介装し、これにメイン回路43aから分岐形成された第一流路60aを接続する。
第一切換弁19a,19bは、走行モータ10と制御弁8とを連通させる第一位置、及び、外部作動油導入路63aと制御弁8とを連通させる第二位置に切換自在とする。
また、第二切換弁20a,20bは、走行モータ10と制御弁8とを連通させる第三位置、及び、走行モータ10と第一流路60aとを連通させる第四位置に切換自在とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に搭載される油圧源だけでなく外部油圧源からの作動油の供給を受けて作動する作業機械の油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルをはじめとする油圧駆動の作業機械では、屋内やトンネル内といった閉鎖された空間での使用を想定して、エンジン(内燃機関)に頼ることなく油圧装置を駆動する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、外部電源からの電力供給により油圧ポンプを駆動する電動式の油圧ショベルが開示されている。この技術では、屋内作業が行われる建物の給電装置と油圧ショベルとを着脱式の電源ケーブルで接続して電動モータを駆動し、この電動モータで油圧ポンプを駆動している。また、電源ケーブルの切断時には補助バッテリにより電動モータを駆動することとしている。
【0003】
一方、このような電動式の油圧ショベルでは、油圧装置を作動させるのに十分な出力を有する大型の電動モータが必要となり、製造コストが高騰するおそれがある。なお、電動モータとこれを駆動するためのエンジンとを搭載したハイブリッド型の油圧ショベルでは、このような課題が顕著となる。
そこで、外部から電力の供給を受ける代わりに、圧油の供給を受けて油圧装置を駆動する技術も検討されている。例えば、特許文献2には、建設車両側のバルブに移動式の外部油圧ユニットを接続し、建設車両に搭載された油圧ポンプの代わりに外部油圧ユニットから作動油を供給することで作業機を作動させる技術が開示されている。この技術では、バルブと外部油圧ユニットとの接続を解除することにより、通常の建設車両としても使用することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−225355号公報
【特許文献2】実開平2−50450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に油圧ショベルの油圧ポンプは上部旋回体のポンプルーム内に設けられ、ここから機体前方のフロント作業機や旋回装置,下部走行体の走行装置の各所へと作動油が供給される。また、上部旋回体は下部走行体に対して旋回可能に搭載されるため、これらの接続部にはスイベルジョイントが設けられる。例えば、油圧ポンプと走行装置とを接続する作動油流路は、機体の旋回動作によって遮断されることがないようにスイベルジョイントの内部に設けられる。
【0006】
一方、特許文献2の技術では、外部油圧ユニットからの作動油が流通する接続管がバルブに接続されるため、機体下方に位置する下部走行体から作動油を供給する場合には接続管をスイベルジョイントの中に挿通させる必要がある。つまり、スイベルジョイントの内部に油圧ポンプで走行装置を駆動する場合に使用される作動油流路に加えて、外部油圧ユニットからの作動油流路を設ける必要が生じ、構造が複雑化するという課題がある。
【0007】
特に、油圧ショベルに搭載される油圧装置の駆動回路には高圧の作動油が流通するため、上部旋回体及び下部走行体に跨って配置される作動油流路の数が増加するほど、大型の高価なスイベルジョイントを用いなければならず、製造コストを低く抑えることが難しくなる。
また、油圧ショベルの外部から高圧の作動油を供給する際には、油圧回路保護の観点から油圧ショベルを移動できないようにしたい場合がある。一方、特許文献2に記載のように、外部からの作動油をバルブへと導入する構成では、走行レバーの操作によりバルブが作動し、走行装置へと作動油が供給されるおそれがある。つまり、特許文献2の技術で走行装置の作動を防止するには、通常作業時におけるバルブ制御とは異なるバルブ制御が必要となり、回路構成や制御構成が複雑になるという課題がある。
【0008】
本件の目的の一つは、このような課題に鑑み創案されたもので、簡素な構成で外部油圧源の利用を可能とすることであり、あるいは、外部油圧源の利用時における走行装置の作動を防止することである。
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の作業機械の油圧回路は、油圧源から吐出される作動油を、制御弁を介して走行モータ及び油圧アクチュエータへと供給するとともに該制御弁を介してタンクへ排出する作業機械の油圧回路であって、該油圧源とは別個に設けられる外部油圧源に接続される外部作動油導入路と、該走行モータと該制御弁とを接続する走行回路上に介装されるとともに該外部作動油導入路に接続され、該走行モータと該制御弁とを連通させる第一位置、及び、該外部作動油導入路と該制御弁とを連通させる第二位置の二位置に切換自在に設けられた弁体を有する第一切換弁と、該油圧源と該制御弁とを接続するメイン回路から分岐形成された第一流路と、該第一切換弁よりも該走行回路の該制御弁側に介装されるとともに該第一流路に接続され、該走行モータと該制御弁とを連通させる第三位置、及び、該走行モータと該第一流路とを連通させる第四位置の二位置に切換自在に設けられた弁体を有する第二切換弁と、該メイン回路における該第一流路との分岐点よりも該油圧源側に介装され、該制御弁側から該油圧源側への逆流を防止する第一合流チェック弁と、該第一流路に介装され、該メイン回路側から該第二切換弁側への逆流を防止する第二合流チェック弁とを備えたことを特徴としている。
【0010】
例えば、油圧源の使用時には、第一切換弁の弁体を第一位置とし、第二切換弁の弁体を第三位置とする。また、外部油圧源の使用時には、第一切換弁の弁体を第二位置とし、第二切換弁の弁体を第四位置とする。
また、開示の作業機械の油圧回路は、該タンクとは別個に設けられる外部タンクに接続される外部リターン流路と、該制御弁と該タンクとを接続するリターン回路上に介装されるとともに該外部リターン流路に接続され、該制御弁と該タンクとを連通させる第五位置、及び、該制御弁と該外部リターン流路とを連通させる第六位置の二位置に切換自在に設けられた弁体を有するリターン切換弁とをさらに備えたことを特徴としている。
【0011】
例えば、油圧源の使用時には、リターン切換弁の弁体を第五位置とする。また、外部油圧源の使用時には、リターン切換弁の弁体を第六位置とする。
また、開示の作業機械の油圧回路は、該油圧アクチュエータの作動量を設定するためのパイロット圧を生成するパイロット回路と、該第一流路から分岐形成され、該パイロット回路に接続された第二流路と、該第二流路上に介装された減圧弁とをさらに備えたことを特徴としている。
【0012】
また、開示の作業機械の油圧回路は、該制御弁におけるセンタバイパスの作動油圧をネガコン圧として検出するネガコン圧検出手段と、該ネガコン圧検出手段で検出された該ネガコン圧に基づいて、該外部油圧源からの作動油流量を制御する外部ネガコン制御手段とをさらに備えたことを特徴としている。
また、開示の作業機械の油圧回路は、該第一切換弁が、該作業機械の下部走行体に設けられるとともに、該第二切換弁が、該作業機械の上部旋回体に設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
開示の作業機械の油圧回路によれば、外部油圧源から供給される作動油を走行回路に導入するとともに、第一流路を介してメイン回路へと導入することにより、油圧源だけでなく外部油圧源を利用して油圧アクチュエータを駆動することができる。また、外部油圧源の利用時における走行装置の作動を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係る油圧回路が適用された油圧ショベル及び外部油圧装置を示す図であり、(a)は油圧ショベルの側面図、(b)は外部油圧装置の側面図である。
【図2】図1(a)の油圧ショベルの油圧回路図及びブロック構成図である。
【図3】図1(b)の外部油圧装置の油圧回路図及びブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して作業機械の油圧制御装置の実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下に示す実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、その趣旨を逸脱しない範囲で本実施形態を種々変形して実施してもよい。
[1.全体構成]
本発明は、図1(a)に示す油圧ショベル70(作業機械)に適用される。この油圧ショベル70は、クローラ式の走行装置を装備した下部走行体71と、下部走行体71に搭載された上部旋回体72とを備えて構成される。上部旋回体72は、旋回装置を介して下部走行体71の上に旋回自在に設置される。下部走行体71と上部旋回体72との接続部には、内部に作動油の流路が形成されたロータリージョイント16(スイベルジョイント)が設けられる。
【0016】
上部旋回体72の車両前方側には、車両前方へ延出するように設けられたフロント作業機80が設けられ、その車体左側に操作者が搭乗するキャブ74が設けられる。また、上部旋回体72の後端部には機体の重量バランスをとるためのカウンタウェイト73が設けられ、その機体前方側にエンジンルーム75が設けられる。エンジンルーム75の内部には、エンジン3(内燃機関)が配置される。
【0017】
エンジンルーム75に隣接するポンプルーム内には、油圧ショベル70に搭載される各種油圧装置の油圧駆動源となるメインポンプ5,6及びパイロットポンプ7が設けられる。これらのメインポンプ5,6及びパイロットポンプ7は、ポンプドライブ4を介してエンジン3の出力軸に接続される。ポンプドライブ4は、エンジン3で生成された動力を各ポンプ5,6,7へ分配するとともに回転数及びトルクを調整する変速機としての機能を有する。エンジン3の作動時にはこれらのメインポンプ5,6及びパイロットポンプ7が駆動され、メインポンプ5,6及びパイロットポンプ7から吐出される作動油が後述する油圧回路へと供給される。
【0018】
フロント作業機80は、上部旋回体72に基端部を軸支されたブーム81と、ブーム81の先端に軸支されたアーム82と、さらにアーム82の先端に軸支されたバケット83とを有する。ブーム81及び上部旋回体72の間には一対のブームシリンダ11が介装され、伸縮動作によりブーム81を上下方向に駆動する。同様に、アームシリンダ12及びバケットシリンダ13は、伸縮動作によりアーム82及びバケット83をそれぞれ駆動する。これらの油圧アクチュエータの作動量を入力するための操作レバーはキャブ74内に配置される。
【0019】
下部走行体71のフレームには、エンジン3の停止時に機体外部から作動油供給を受けるためのジョイント27a,27b,27c(ホースジョイント)が設けられる。エンジン3の停止時にはメインポンプ5,6及びパイロットポンプ7が作動しないため、これらのジョイント27a,27bから導入される作動油が後述する油圧回路に供給されるとともに、ジョイント27cから排出される。
【0020】
エンジン3の停止時に作動油を供給するための外部油圧装置90を図1(b)に示す。外部油圧装置90は、油圧ショベル70とは別個に設けられる動力生成ユニットであり、メインポンプ5,6及びパイロットポンプ7の代わりに作動油を供給する機能を有する。
外部油圧装置90の内部には、外部から電力の供給を受けて作動する外部電動機31,外部ポンプドライブ32,外部メインポンプ33,34及び外部パイロットポンプ35が設けられる。外部メインポンプ33,34及び外部パイロットポンプ35は、外部ポンプドライブ32を介して外部電動機31の出力軸に接続され、外部電動機31によって駆動される。
【0021】
また、外部油圧装置90には、油圧ショベル70との間の作動油の出入口としての外部ジョイント49a,49b,49c(ホースジョイント)が設けられる。例えば、油圧ショベル70のエンジン3の停止時には、これらの外部ジョイント49a,49b,49cと油圧ショベル70側のジョイント27a,27b,27cとがホース等で接続され、油圧回路が形成される。
【0022】
[2.ショベル側油圧回路]
図2に、油圧ショベル70の駆動に係るショベル側油圧回路1の全体構成を示す。
ショベル側油圧回路1は、一対のメインポンプ5,6から各種アクチュエータへの作動油流路を構成するとともに、パイロットポンプ7からパイロット回路15への作動油流路を構成する回路である。各種アクチュエータの例として、図2中にブームシリンダ11,アームシリンダ12,バケットシリンダ13,走行モータ9,10及び旋回モータ14を示す。走行モータ9,10はそれぞれ、下部走行体71の左右の走行装置に内装される。
【0023】
メインポンプ5,6と各種アクチュエータとの間の油圧回路上には、複数の制御弁を内蔵したメインコントロールバルブ8(制御弁)が設けられる。メインコントロールバルブ8は、各種アクチュエータへの作動油流量及び流通方向を制御する複数の弁が内蔵されたバルブユニットである。メインポンプ5,6から吐出された作動油は、メインコントロールバルブ8を介してそれぞれのアクチュエータに供給され、またそれぞれのアクチュエータからの戻り油は、メインコントロールバルブ8を介してタンク40へと流れる。
【0024】
以下、メインポンプ5,6とメインコントロールバルブ8との間の作動油流路のことをメイン回路43a,43bと呼び、メインコントロールバルブ8と走行モータ9,10との間の作動油流路のことを走行回路42a,42bと呼ぶ。また、メインコントロールバルブ8とタンク40との間の作動油流路をリターン回路44と呼ぶ。
メインポンプ5,6のそれぞれには、傾転斜板の傾斜角を調整することにより吐出流量及び吐出圧を制御するレギュレータ5a,6a(斜板制御機構)が併設される。レギュレータ5a,6aは、メインコントロールバルブ8におけるセンタバイパスの作動油圧(ネガコン圧)の高低に対応するようにメインポンプ5,6の吐出流量を減少又は増加させて、メインポンプ5,6の出力を一定に保たせる機能を有する。以下、メインコントロールバルブ8のセンタバイパスとレギュレータ5a,6aとを接続する作動油流路のことをネガコン回路45a,45bと呼ぶ。
【0025】
ネガコン回路45a,45bには、ネガコン圧を検出する圧力センサ28a,28bが介装される。一方の圧力センサ28aは、一方のメインポンプ5から供給される作動油によって生じるネガコン圧P1を検出し、他方の圧力センサ28bは、他方のメインポンプ6から供給される作動油によって生じるネガコン圧P2を検出する。圧力センサ28a,28bで検出されたこれらのネガコン圧P1,P2は、後述するデータ処理器29へ伝達される。
【0026】
各メイン回路43a,43bはそれぞれ同様の構成であり、また各走行回路42a,42bはそれぞれ同様の構成である。ここでは、一方のメイン回路43a及び走行回路42bを代表して詳述し、他方のメイン回路43b及び走行回路42aについての重複する記載は部分的に省略する。
メイン回路43aの中途からは、第一流路60aが分岐形成される。メイン回路43aと第一流路60aとの分岐点よりもメインポンプ5側には第一合流チェック弁22aが介装され、メインポンプ5側への作動油の逆流が防止される。また、第一流路60a上にも第二合流チェック弁23aが介装される。したがって、作動油の流通方向は、メインポンプ5及び第一流路60a側からメインコントロールバルブ8へと向かう方向に制限される。なお、メイン回路43bからも第一流路60bが分岐形成され、第一合流チェック弁22b及び第二合流チェック弁23bが設けられる。
【0027】
走行回路42bには、二種類の切換弁が二個ずつ介装される。走行回路42bでは、作動油が走行モータ10へと向かう流入側の流路と、走行モータ10から排出される流出側の流路とが対をなしており、それぞれの流路に対して二種類の切換弁が設けられる。走行モータ10側に介装されるものを第一切換弁19a,19bと呼び、メインコントロールバルブ8側に介装されるものを第二切換弁20a,20bと呼ぶ。
【0028】
第一切換弁19a,19bはロータリージョイント16よりも下方(下部走行体71側)に配置され、第二切換弁20a,20bはロータリージョイント16よりも上方(上部旋回体72側)に配置される。また、第一切換弁19a,19b及び第二切換弁20a,20bは、ともにスプール(弁体)の位置を二位置に切換自在に構成される。
第一切換弁19a,19bには、一端をジョイント27aに接続された外部作動油導入路63aの他端が接続される。第一切換弁19a,19bのスプール位置には、走行モータ10及びメインコントロールバルブ8間を接続する第一位置aと、外部作動油導入路63aをメインコントロールバルブ8側へと接続させる第二位置bとが設けられる。
【0029】
第二切換弁20a,20bには、第一流路60aが接続される。第二切換弁20a,20bのスプール位置には、走行モータ10及びメインコントロールバルブ8間を接続する第三位置cと、第一流路60aを走行モータ10側へと接続させる第四位置dとが設けられる。
ここで、第一切換弁19a,19bと第二切換弁20a,20bとの間を繋ぐ流路を接続路46と呼ぶ。第一切換弁19a,19bのスプール位置が第二位置であるときには、外部作動油導入路63aと接続路46とが連通する。このとき、第二切換弁20a,20bのスプール位置が第四位置であれば、接続路46と第一流路60aとが連通し、すなわち、外部作動油導入路63aと第一流路60aとが繋がる。接続路46は、ロータリージョイント16(スイベルジョイント)の内部に形成される。
【0030】
第一位置a及び第三位置cは、油圧ショベル70の通常駆動時(例えばメインポンプ5,6の作動時)における作動油流路を形成する位置である。一方、第二位置b及び第四位置dは、外部油圧装置90から供給される作動油流路を形成する位置である。
なお、走行回路42aにおける第一切換弁17a,17bはそれぞれ、走行回路42bにおける第一切換弁19a,19bに対応する機能を有する。同様に、走行回路42aにおける第二切換弁18a,18bは、走行回路42bにおける第二切換弁20a,20bに対応する機能を有する。また、第一切換弁17a,17b及び第二切換弁18a,18bの間を繋ぐ流路を接続路47と呼ぶ。接続路47は、接続路46と同様に、ロータリージョイント16の内部に形成される。
【0031】
リターン回路44上には、リターン切換弁21が介装される。リターン切換弁21には、一端をジョイント27cに接続された外部リターン流路62の他端が接続される。リターン切換弁21のスプール位置には、メインコントロールバルブ8及びタンク40を連通させる第五位置eと、メインコントロールバルブ8及び外部リターン流路62間を連通させる第六位置fとが設けられる。
【0032】
第五位置eは、油圧ショベル70の通常駆動時における作動油のタンク40への還流路を形成する位置である。一方、第六位置fは、外部油圧装置90への還流路を形成する位置である。
第一流路60aにおける第二合流チェック弁23aよりも第二切換弁20a,20b側から分岐して、第二流路61aが形成される。第二流路61aは、第一流路60aを流通する作動油を油圧ショベル70のパイロット回路15へ供給するための流路であり、パイロットポンプ7及びパイロット回路15間を繋ぐパイロット流路48に接続される。なお、第一流路60bからも、パイロット回路15へ作動油を供給するための第二流路61bが分岐形成される。
【0033】
パイロット回路15と第二流路61aとの接続点よりもパイロットポンプ7側には、第三合流チェック弁24が介装され、パイロットポンプ7側への作動油の逆流が防止される。また、第二流路61a上にも第四合流チェック弁25aが介装される。したがって、作動油の流通方向は、パイロットポンプ7及び第二流路61a側からパイロット回路15へと向かう方向に制限される。
【0034】
また、第二流路61a上の第四合流チェック弁25aよりもパイロット回路15側には減圧弁26が介装される。これにより、減圧された第一流路60aの作動油圧がパイロット回路15へと導入される。
第二流路61bにも同様に、第四合流チェック弁25bが介装される。なお、二本の第二流路61a,61bの合流点よりも下流側(パイロット回路15側)に減圧弁26が配置される。
【0035】
油圧ショベル70にはデータ処理器29及び送信機30が設けられる。データ処理器29は、外部油圧装置90へ伝達される情報を処理するための電子制御装置であり、周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスとして提供される。データ処理器29は、圧力センサ28a,28bで検出されたネガコン圧P1,P2を読み込み、A/D変換等を行って送信データを生成する。ここで生成された送信データは、無線通信により送信機30から送信される。
【0036】
[3.外部油圧回路]
図3に、外部油圧装置90に内蔵された外部油圧回路2の全体構成を示す。
外部油圧回路2において、一対の外部メインポンプ33,34の作動油吐出口は、それぞれ外部ジョイント49a,49bに接続され、ホース52a,52bを介してショベル側油圧回路1のジョイント27a,27bに接続される。また、ショベル側油圧回路1のジョイント27cは、ホース52cを介して外部ジョイント49cに接続される。ジョイント27cと外部タンク41とを結ぶ外部リターン流路65上には、外部オイルクーラ37が介装される。
【0037】
外部パイロットポンプ35は、外部パイロットリリーフ回路36に作動油を供給するものである。外部パイロットリリーフ回路36とは、回路保護のために設けているリリーフ回路である。
外部メインポンプ33,34のそれぞれには、傾転斜板の傾斜角を調整することにより吐出流量及び吐出圧を制御する外部レギュレータ33a,34a(斜板制御機構)が併設される。外部レギュレータ33a,34aは、油圧ショベル70側のネガコン圧の高低に対応するように外部メインポンプ33,34の吐出流量を減少又は増加させて、外部メインポンプ33,34の出力を一定に保たせる機能を有する。つまり、ショベル側油圧回路1のメインポンプ5,6で実施されるネガコン制御と同様の制御が外部メインポンプ33,34に対して実施される。
【0038】
外部レギュレータ33a,34aにおけるネガコン用のパイロット作動油は、外部パイロットリリーフ回路36から導入される。外部パイロットリリーフ回路36と外部レギュレータ33a,34aとの間の流路上には、外部電磁比例減圧弁39a,39bが介装される。外部電磁比例減圧弁39a,39bは、外部パイロットリリーフ回路36側の作動油圧を制御して、適切な圧力の作動油を外部レギュレータ33a,34a側に供給する機能を有する。
【0039】
外部油圧装置90には、受信機50及び比例弁ドライバ51が設けられる。受信機50は、油圧ショベル70の送信機30からの送信データを受信して比例弁ドライバ51へ入力するものである。また、比例弁ドライバ51は、入力された送信データに基づいて外部電磁比例減圧弁39a,39bの開度を制御する電子制御装置である。
ここでは、油圧ショベル70のネガコン圧P1,P2と同一圧の作動油が外部レギュレータ33a,34a側に供給されるように、比例弁ドライバ51が外部電磁比例減圧弁39a,39bを制御する。したがって
外部メインポンプ33はメインポンプ5の代理としての作動油供給源となり、外部メインポンプ34はメインポンプ6の代理としての作動油供給源となる。
【0040】
[4.作用,効果]
[4−1.エンジン3の作動時]
油圧ショベル70のエンジン3の作動時には、走行回路42aの第一切換弁17a,17b及び走行回路42bの第一切換弁19a,19bの全てのスプール位置と第一位置aに設定する。同時に、走行回路42aの第二切換弁18a,18b及び走行回路42bの第二切換弁20a,20bの全てのスプール位置と第三位置cに設定する。また、リターン切換弁21のスプール位置は第五位置eとする。
【0041】
油圧ショベル70のメインポンプ5,6はエンジン3によって駆動され、それぞれのメインポンプ5,6から吐出された作動油がメイン回路43a,43b側へと流通する。メイン回路43a,43bから分岐形成された第一流路60a,60bには第二合流チェック弁23a,23bが介装されているため、作動油の第一流路60a,60b側への流出が防止され、メインコントロールバルブ8側へと流入する。
【0042】
したがって、図示しない走行操作レバーへの操作入力に応じて作動油が走行回路42a,42bへと供給される。例えば、走行モータ9には第二切換弁18a及び第一切換弁17aを介して作動油が供給され、戻り油は第一切換弁17b及び第二切換弁18bを介してメインコントロールバルブ8に戻る。走行モータ9の回転方向が逆方向である場合には、作動油の流通方向が逆になる。
【0043】
同様に、走行モータ10の駆動時には、例えば第二切換弁20a及び第一切換弁19aを介して作動油が供給され、戻り油は第一切換弁19b及び第二切換弁20bを介してメインコントロールバルブ8に戻る。作動油の流通方向は、走行モータ10の回転方向に依存する。メインコントロールバルブ8に戻った作動油はリターン回路44を流通し、リターン切換弁21を介してタンク40へ排出される。
【0044】
図示しないブーム操作レバーやアーム操作レバーが操作された場合には、その操作量及び操作方向に応じてブームシリンダ11やアームシリンダ12へ作動油が供給され、ブーム81やアーム82を作動させることができる。メインポンプ5,6の吐出流量は、メインコントロールバルブ8のセンタバイパスの作動油圧(ネガコン圧)に応じて制御される。したがって、油圧ショベル70の通常の運転が可能である。
【0045】
[4−2.外部油圧装置90の作動時]
外部油圧装置90での駆動時には、走行回路42aの第一切換弁17a,17b及び走行回路42bの第一切換弁19a,19bの全てのスプール位置と第二位置bに設定する。同時に、走行回路42aの第二切換弁18a,18b及び走行回路42bの第二切換弁20a,20bの全てのスプール位置と第四位置dに設定する。リターン切換弁21のスプール位置は第六位置fとする。
【0046】
さらに、図3に示すように、ショベル側油圧回路1のジョイント27a,27b,27cを外部油圧回路2の外部ジョイント49a,49b,49cのそれぞれにホース52a,52b,52cで接続し、外部油圧装置90を外部電源に接続する。
油圧ショベル70のメインポンプ5,6は停止しており作動油を吐出しない。その代わりに、外部メインポンプ33,34から吐出される作動油がショベル側油圧回路1に導入される。
【0047】
例えば、一方の外部メインポンプ33から吐出される作動油は、ホース52aを介して外部作動油導入路63aに導入される。このとき、走行回路42bの第一切換弁19a,19bのスプールはともに第二位置bとされているため、作動油は双方の接続路46へ導入される。さらに、第二切換弁20a,20bのスプールがともに第四位置dとされているため、接続路46の作動油は第一流路60aへと導入され、第二合流チェック弁23aを介してメイン回路43aに供給される。メイン回路43aには第一合流チェック弁22aが介装されているため、作動油のメインポンプ5側への流出が防止され、メインコントロールバルブ8側へと流入する。
【0048】
同様に、他方の外部メインポンプ34から吐出される作動油は、ホース52bを介して外部作動油導入路63bに導入され、走行回路42aの第一切換弁17a,17b及び第二切換弁18a,18bを介して第一流路60bへと導入され、第二合流チェック弁23bを介してメイン回路43bに供給される。また、第一合流チェック弁22bにより作動油のメインポンプ6側への逆流も防止される。
【0049】
さらに、第一流路60a,60bから第二流路61a,61b側へと作動油が分流し、減圧弁26で減圧された作動油がパイロット回路15に供給される。したがって、ブーム操作レバーやアーム操作レバーが操作された場合には、その操作量及び操作方向に応じてブームシリンダ11やアームシリンダ12へ作動油が供給され、ブーム81やアーム82を作動させることができる。
【0050】
一方、走行回路42a、42bには外部作動油導入路63a,63bからの作動油が流通しており、第二切換弁18a,18b,20a,20bにおいて走行モータ9,10側への作動油供給が遮断される。したがって、誤って走行操作レバーへの操作入力がなされた場合であっても、走行モータ9,10の作動を確実に防止することができる。
また、メインコントロールバルブ8のセンタバイパスの作動油圧(ネガコン圧)P1,P2の情報は、油圧ショベル70の送信機30から外部油圧装置90に無線送信される。外部油圧装置90では、油圧ショベル70のネガコン圧P1,P2に応じて外部電磁比例減圧弁39a,39bが制御され、外部メインポンプ33,34の吐出流量が制御される。
【0051】
このように、開示の作業機械の油圧回路によれば、外部メインポンプ33,34(外部油圧源)から供給される作動油を走行回路42a,42bに導入するとともに、第一流路60a,60bを介してメイン回路43a,43bへと導入することにより、メインポンプ5,6だけでなく外部メインポンプ33,34を利用して油圧アクチュエータを駆動することができる。また、外部メインポンプ33,34の利用時における走行モータ9,10の作動を確実に防止することができる。
【0052】
また、メインポンプ5,6を利用するモードから外部メインポンプ33,34を利用するモードへと油圧回路を切り換えるには、第一切換弁17a,17b,19a,19b,第二切換弁18a,18b,20a,20b及びリターン切換弁21のスプール位置を一斉に変更するだけで済み、容易に切り換え作業を実施することができる。
また、メイン回路43a,43bと第一流路60a,60bとの接続部におけるそれぞれの上流側に第一合流チェック弁22a,22b及び第二合流チェック弁23a,23bを介装することにより、メインポンプ5,6及び外部メインポンプ33,34からの作動油の流通方向を一意に設定することができ、油圧回路の動作を安定させることができる。
【0053】
また、開示の油圧回路は、外部メインポンプ33,34から供給される作動油をメイン回路43a,43bだけでなくパイロット回路15にも供給する回路構成である。したがって、外部メインポンプ33,34をメインポンプ5,6の代理としてだけでなく、パイロットポンプ7の代理として機能させることができる。さらに、第二流路61a,61bの作動油圧を減圧弁26で減圧してパイロット回路15に供給しているため、ブーム操作やアーム操作に係るパイロット圧の生成に支障を生じることもなく、通常運転時とほぼ同一の操作感を提供することができる。
【0054】
また、ネガコン圧P1,P2に応じて外部メインポンプ33,34の吐出流量が制御されるため、ブーム81やアーム82の作動時においても、油圧ショベル70の通常運転時と同一の操作感を確保することができる。また、外部メインポンプ33,34の出力が一定となるため、たとえ大きな負荷変動が生じたとしても適切な作動油流量を確保することができる。
【0055】
また、外部メインポンプ33,34からの作動油供給時には、メインコントロールバルブ8からの戻り油が外部リターン流路62及びホース52cを通って外部タンク41へと戻されるため、外部油圧装置90に一定の作動油流量を確保することができる。
また、開示の油圧回路では、ロータリージョイント16を挟んでその下方に第一切換弁17a,17b,19a,19bを配置し、上方に第二切換弁18a,18b,20a,20bを配置している。つまり、外部油圧装置90からの作動油供給時には、通所運転時における走行モータ9,10の駆動用の作動油流路が油圧ショベル70全体の動力導入路として転用されることになる。したがって、下部走行体71と上部旋回体72とを結ぶロータリージョイント16の内部流路の有効利用が可能となる。また、ロータリージョイント16の内部に形成される流路数及び流路断面積を変更することなく適用することができ、既存のロータリージョイントをそのまま流用することができる。
【0056】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態における第一切換弁17a,17b,19a,19b,第二切換弁18a,18b,20a,20b及びリターン切換弁21のスプール位置の切り換え手法は任意であり、手動で切り換える構成としてもよいし、自動的に切り換えられる構成としてもよい。前者の場合、簡素な構成でのモード切換が可能であり、コストをさらに削減することができる。後者の場合、上記の切換弁として電磁切換弁を使用するとともに、電磁切換弁を電気的に制御する切換制御装置(切換制御手段)を用いることが考えられる。切換制御装置に要求される機能としては、スイッチ操作あるいはジョイント27a,27b,27cへのホース52a,52b,52cの差し込み等を検知して、電磁切換弁のスプール位置を変更する制御信号を出力すること等である。このような構成により、メインポンプ5,6及び外部メインポンプ33,34の切り換え作業を自動的に行うことができ、利便性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、走行モータ及び油圧アクチュエータを有する作業機械(例えば、油圧ショベルや油圧式クレーン,下部走行体に油圧走行装置を備えた車両等)全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ショベル側油圧回路
2 外部油圧回路
3 エンジン
5,6 メインポンプ(油圧源)
5a,6a レギュレータ
7 パイロットポンプ
8 メインコントロールバルブ(制御弁)
9,10 走行モータ
15 パイロット回路
16 ロータリージョイント
21 リターン切換弁
22a,22b 第一合流チェック弁
23a,23b 第二合流チェック弁
24 第三合流チェック弁
25a,25b 第四合流チェック弁
26 減圧弁
28a,28b 圧力センサ(ネガコン圧検出手段)
29 データ処理器
30 送信機
33,34 外部メインポンプ(外部油圧源)
33a,34a 外部レギュレータ(外部ネガコン制御手段)
35 外部パイロットポンプ
36 外部パイロットリリーフ回路
39a,39b 外部電磁比例減圧弁
42a,42b 走行回路
43a,43b メイン回路
44 リターン回路
45a,45b ネガコン回路
46,47 接続路
48 パイロット流路
50 受信機
51 比例弁ドライバ
60a,60b 第一流路
61a,61b 第二流路
62 外部リターン流路
63a,63b 外部作動油導入路
65 外部リターン流路
70 油圧ショベル(作業機械)
90 外部油圧装置
1,P2 ネガコン圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧源から吐出される作動油を、制御弁を介して走行モータ及び油圧アクチュエータへと供給するとともに該制御弁を介してタンクへ排出する作業機械の油圧回路であって、
該油圧源とは別個に設けられる外部油圧源に接続される外部作動油導入路と、
該走行モータと該制御弁とを接続する走行回路上に介装されるとともに該外部作動油導入路に接続され、該走行モータと該制御弁とを連通させる第一位置、及び、該外部作動油導入路と該制御弁とを連通させる第二位置の二位置に切換自在に設けられた弁体を有する第一切換弁と、
該油圧源と該制御弁とを接続するメイン回路から分岐形成された第一流路と、
該第一切換弁よりも該走行回路の該制御弁側に介装されるとともに該第一流路に接続され、該走行モータと該制御弁とを連通させる第三位置、及び、該走行モータと該第一流路とを連通させる第四位置の二位置に切換自在に設けられた弁体を有する第二切換弁と、
該メイン回路における該第一流路との分岐点よりも該油圧源側に介装され、該制御弁側から該油圧源側への逆流を防止する第一合流チェック弁と、
該第一流路に介装され、該メイン回路側から該第二切換弁側への逆流を防止する第二合流チェック弁と
を備えたことを特徴とする、作業機械の油圧回路。
【請求項2】
該タンクとは別個に設けられる外部タンクに接続される外部リターン流路と、
該制御弁と該タンクとを接続するリターン回路上に介装されるとともに該外部リターン流路に接続され、該制御弁と該タンクとを連通させる第五位置、及び、該制御弁と該外部リターン流路とを連通させる第六位置の二位置に切換自在に設けられた弁体を有するリターン切換弁とをさらに備えた
ことを特徴とする、請求項1記載の作業機械の油圧回路。
【請求項3】
該油圧アクチュエータの作動量を設定するためのパイロット圧を生成するパイロット回路と、
該第一流路から分岐形成され、該パイロット回路に接続された第二流路と、
該第二流路上に介装された減圧弁とをさらに備えた
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の作業機械の油圧回路。
【請求項4】
該制御弁におけるセンタバイパスの作動油圧をネガコン圧として検出するネガコン圧検出手段と、
該ネガコン圧検出手段で検出された該ネガコン圧に基づいて、該外部油圧源からの作動油流量を制御する外部ネガコン制御手段とをさらに備えた
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の作業機械の油圧回路。
【請求項5】
該第一切換弁が、該作業機械の下部走行体に設けられるとともに、
該第二切換弁が、該作業機械の上部旋回体に設けられる
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の作業機械の油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−127280(P2011−127280A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283920(P2009−283920)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】