説明

作業機械

【課題】PMを燃焼してDPFを再生化する際、エンジンの負荷の増大を抑制し、作業機械の駆動の効率を向上する。
【解決手段】ステップS10において、DPF53の前後差圧ΔPFが、PMがDPF53に捕集され、DPF53の再生化を行うべき差圧上限値ΔPFHを超えていると判断された場合は、ステップS12において、最小値選択部21gで選択されたファン目標回転数Nf2に回転数ΔNを加算してファン目標回転数Nf2より大きいファン目標回転数NfSが算出される。そして、電動/発電機15により電動ファン31をファン目標回転数NfSで回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業機械に関し、より詳細には、エンジンの駆動によって排出される排気ガスの浄化装置を装備する作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの駆動によって排出される排気ガス中には有害な粒子状物質(PM)が含まれており、この粒子状物質を浄化する浄化装置を装備した作業機械が知られている。
浄化装置は、通常、DPF(Diesel Particulate Filter)と言われ、多孔質の隔壁を有する。DPFは、粒子状物質をこの隔壁に捕集するが、排気ガスが高温になると捕集した粒子状物質を燃焼させて除去する自己再生機能を有する。
【0003】
このため、DPFに捕集され、堆積された排気ガスの粒子状物質が多量になると、これを検出して、排気ガスを高温にしてDPFの再生化を図るようにしている。
排気ガスを高温にする方法として、エンジンの運転条件を、排気ガス温度が上昇する運転に移行させるようにする。具体的には、エンジンの駆動を、燃費の良好な運転条件から等出力曲線上において、負荷を増大させて、回転速度が減少しトルクが増大するように回転制御する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003―269135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法では、DPFを再生化する際、エンジンの負荷を増大させて、トルクを増大させ、排ガス温度を上昇させる。このため、消費燃料が無駄となり、燃費が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の作業機械は、エンジンと、エンジンの駆動により発電する発電機と、発電機で発電された電力により駆動され、冷却風を送風する電動ファンと、エンジンの駆動時にエンジンから排出される排気ガスに含まれる捕集対象物を捕集し、かつ、再生化することが可能な捕集手段と、捕集手段の再生化の判断をする再生判断手段と、再生判断手段の判断に基づいて前記電動ファンの回転数を増大するファン回転数増大手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、冷却ファンを電動式とし、電動ファンを駆動してエンジンの負荷を増加させることにより捕集手段の再生化を行うので、従来のようにエンジンのトルクを増大させる方法に比し、燃費の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明に係る作業機械の一実施形態としてのホイールローダの外斜視図。
【図2】この発明に係る作業機械の一実施形態としての回路ブロック図。
【図3】図2に図示された作業機械のEPU(電子制御装置)の処理機能を示す機能ブロック図。
【図4】図2に図示された回路ブロックにおける電動ファンの動作の一例を示す処理フロー図。
【図5】この発明に係る作業機械の第2の実施形態としての回路ブロック図。
【図6】図5に図示された回路ブロックにおける電動ファンの動作の一例を示す処理フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、本発明に係る作業機械の一実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。
図1は、本発明に係る作業機械一実施形態としてのホイールローダを示す外観斜視図である。
作業機械100の一例として示されるホイールローダは、アーム111、バケット112、前輪113等を有する前部車体110と、運転室121、エンジン室122、後輪123等を有する後部車体120とで構成される。アーム111はアームシリンダ114の駆動により上下方向に回動(俯仰動)し、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(ダンプまたはクラウド)する。
【0010】
前部車体110と後部車体120は連結軸101により互いに回動自在に連結されている。この作業機械100は連結軸101において、前部車体110と後部車体120とが屈曲されるアーティキュレート式のものである。図示はしないが、前部車体110と後部車体120には、連結軸101を中心とする一対のステアリングシリンダ(不図示)の一端側と他端側が、それぞれ、回転可能に係止されている。不図示の油圧装置により、一対のステアリングシリンダを、一方を伸張、他方を縮退させることにより、前部車体110と後部車体120を、それぞれ、連結軸101を中心に回転させる。これにより、前部車体110と後部車体120との相対的な取付角度が変化し、車体が屈曲して換向する。
【0011】
図2は、この発明に係る作業機械における回路ブロック図の一実施形態を示す。
エンジン室122内には、エンジン11、可変容量型の主油圧ポンプ12およびエアコンのコンプレッサ13が収容されている。主油圧ポンプ12は、作動油タンク71から作動油を、制御弁51を介してアームシリンダ114等の各シリンダに給、排油する。図2においては、バケットシリンダ115およびステアリングシリンダ等は図示を省略されており、アームシリンダ114は、全ての油圧シリンダの代表としての意味合いを有しているものでもある。
また、コンプレッサ13はエアコン24内に冷媒を循環させる。
【0012】
主油圧ポンプ12の回転軸は、エンジン11の駆動軸と同軸上にある。コンプレッサ13は、エンジン11の回転軸上に設けられた伝達部材1に連結されている。また、エンジン11の駆動軸と同軸には、電動/発電機15の回転軸とトランスミッション16の入力軸が連結されている。電動/発電機15は、図示はしないが、エンジン11の駆動軸と同軸上にある回転軸にロータが取り付けられ、ロータの外周にステータが配置されている。従って、発電モードでは、電動/発電機15は、エンジン11よってロータが回転することにより発電する。電動モードでは、エンジン11の出力軸にトルクを負荷する。
【0013】
トランスミッション16は、エンジン11の駆動軸の回転が伝達される入力軸の回転数を異なる回転数に変換して出力し、不図示のプロペラシャフトおよびデファレンシャルを介して前輪113および後輪123に伝達する。トランスミッション16は潤滑油によって冷却される。
【0014】
ECU(電子制御装置)21は、CPU、ROM、RAMおよび演算処理装置を含んで構成されている。この場合、ECU21のROMは、後述するように、各装置またはアクチュエータを冷却する冷媒の温度に対する冷却ファンの目標回転数に関する複数のテーブルを記憶する冷却ファン目標回転数情報記憶部を含んでいる。また、ECU21のRAMは、演算により算出した冷却ファンの目標回転数を記憶する冷却ファン目標回転数指定記憶部を含んでいる。
【0015】
電源制御部22は、インバータ回路を含んでおり、電動/発電機15で発電された交流電流を直流に変換して蓄電装置23に充電する。また、電動/発電機15で発電された交流を、後述する、電動ファン31に供給して、電動ファン31を駆動する。蓄電装置23から供給される直流電力は、電源制御部22において交流電力に変換され、電動/発電機15を電動機として動作することができる。
【0016】
エンジン11には、その回転数を検出するエンジン回転数検出器61が装着されており、エンジン回転数検出器61で検出されたエンジン回転数NEはECU21に入力される。エンジン11の排気通路72には排気浄化部50が設けられている。排気浄化部50は、加熱器51と、酸化触媒52とパティキュレートフィルタ(以下、DPF)53とを有する。
【0017】
加熱器51は、排気通路7内の燃料の未燃成分をH2とCOに改質する。加熱器としてプラズマ発生装置を用いることもできる。その場合には、電源制御部22において、蓄電装置23から供給された直流電力を交流電力に変換するとともに、その周波数および交流電圧値を調整してプラズマ発生装置に供給すればよい。
【0018】
酸化触媒52は、白金やパラジウム等の触媒による酸化作用によって、排気に含まれる、軽油、H2、CO等の燃料の未燃成分を燃焼する。軽油が酸化触媒52において燃焼する温度は、約220℃であり、H2が酸化触媒52において燃焼して発熱を開始する温度は約120℃であり、COが還元して発熱を開始する温度は約200℃である。
【0019】
DPF53は、例えばコージェライトのようなセラミックスからなる多孔質のハニカム構造であり、多孔質薄壁によって格子状に流路が区画される。各流路の入口と出口は、交互に目封じされ、DPF53に流入した排気に含まれる粒子状物質(以下、PM)は、多孔質薄壁の内側表面で捕集される。これによりエンジン1からの排気ガスが濾過され、PMが除去された排気ガスが外部に排出される。捕集されたPMは、PMの燃焼可能温度である、例えば600℃以上の排気で燃焼し、DPF53が再生される。
【0020】
DPF53の上流側と酸化触媒52との間には圧力検出器54および排気ガスの温度TFを検出する温度センサ62が配置されている。また、DPF53の下流側には圧力検出器55が配置されている。圧力検出器54で検出される圧力PF、圧力検出器55で検出される圧力PRおよび温度センサ62で検出される温度TFの各情報はECU21に入力される。ECU21では圧力検出器54および55から送出される圧力PF、圧力PRから差圧ΔPFを算出する。
【0021】
作業機械100には、エンジン21を冷却する冷却水用熱交換器73と、主油圧ポンプ12を冷却する作動油冷却用熱交換器74と、トランスミッション16を冷却する潤滑油冷却用熱交換器75と、エアコン24を冷却する冷媒冷却用熱交換器76等が配されている。図2においては、各熱交換器73〜76に接続される配管のレイアウトは図示を省略されている。しかし、作業機械100のエンジン室122の上部には、冷却水用熱交換器73、作動油冷却用熱交換器74、潤滑油冷却用熱交換器75および冷媒冷却用熱交換器76が、図2に図示される如く、積層されまたは平面的に隣接して集中的に配置されている。
冷却水用熱交換器73、作動油冷却用熱交換器74、潤滑油冷却用熱交換器75およびエアコン冷媒冷却用熱交換器76には、それぞれ、温度センサ63、64、65、66が設置され、検出された各冷媒の温度情報TW、TP、TT、TAがECU21に入力される。
【0022】
各熱交換器73〜76が集中して配置された領域に、電動ファン31が配置されている。電動ファン31は、電動モータ31Aと、電動モータ31Aの回転軸に中心が取り付けられた冷却用のファン31Bから構成される。電動ファン31は、電源制御部22を介して、ECU21の冷却ファンの目標回転数指定記憶部に設定された目標回転数で駆動される。電動ファン31は、通常は、各熱交換器73〜76で冷却する対象流体の温度に応じて目標回転数で駆動される。しかし、後述するように、回転数DPF53の再生化を行う時には、電動ファン31は、目標回転数よりも大きい回転数で駆動される。電動モータ31Aには、電動/発電機15が発電する電力が、電源制御部22を介して、リアルタイムに供給され、電動ファン31が駆動される。このことにより、エンジン11の負荷が増大される。
【0023】
図3は、図2に図示された作業機械のECU(電子制御装置)の処理機能を示す機能ブロック図である。
図3において、EPU21は、冷却水冷却目標回転数演算部21a、作動油冷却目標回転数演算部21b、潤滑油冷却目標回転数演算部21c、エアコン冷媒冷却目標回転数演算部21d、最大値選択部21e、エンジン冷却目標回転数演算部21f、最小値選択部21g、ファン回転数増大部21hの各機能を有している。
【0024】
冷却水冷却目標回転数演算部21aは、温度センサ63により検出したエンジン冷却水(クーラント)の温度TWを入力し、これをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、そのときの冷却水の温度TWXに応じたファン目標回転数NWXを算出する。メモリのテーブルには、冷却水温が上昇するに従ってファン目標回転数が上昇する冷却水温TWとファン目標回転数NWとの関係特性fTWが設定されている。
【0025】
作動油冷却目標回転数演算部21bは、温度センサ64により検出した主油圧ポンプ12等で用いる作動油の温度TPを入力し、これをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、そのときの作動油の温度TPXに応じたファン目標回転数NPXを算出する。メモリのテーブルには、作動の温度が上昇するに従ってファン目標回転数が上昇する作動油の温度TPとファン目標回転数NPとの関係特性fTPが設定されている。
【0026】
潤滑油冷却目標回転数演算部21cは、温度センサ65により検出したトランスミッション16で用いる潤滑油の温度TTを入力し、これをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、そのときの潤滑油の温度TTXに応じたファン目標回転数NTXを算出する。メモリのテーブルには、潤滑油の温度が上昇するに従ってファン目標回転数が上昇する潤滑油の温度TTとファン目標回転数NTとの関係特性fTTが設定されている。
【0027】
エアコン冷媒冷却目標回転数演算部21dは、温度センサ66により検出したコンプレッサ13の冷媒の温度TA入力し、これをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、そのときの冷媒の温度TAXに応じたファン目標回転数NAXを算出する。メモリのテーブルには、冷媒の温度TAが上昇するに従ってファン目標回転数が上昇する冷媒の温度TACとファン目標回転数NAとの関係特性fTAが設定されている。
【0028】
最大値選択部21eは、冷却水冷却目標回転数演算部21aで計算したファン目標回転数NWXと、作動油冷却目標回転数演算部21bで計算したファン目標回転数NPXと、潤滑油冷却目標回転数演算部21cで計算されたファン目標回転数NTXと、エアコン冷媒冷却目標回転数演算部21dで計算されたファン目標回転数NAXとのうちで最も高い回転数Nf1を選択する。
【0029】
エンジン冷却目標回転数演算部21fは、エンジン回転数検出器61により検出したエンジン回転数NEを入力し、これをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、そのときのエンジン回転数NEに応じたファン目標回転数NFXを算出する。メモリのテーブルには、エンジン回転数NEが上昇するに従ってファン目標回転数が上昇するエンジン回転数NEとファン目標回転数NFとの関係特性fNEが設定されている。
【0030】
最小値選択部21gは、最大値選択部21eで選択したファン目標回転数Nf1とエンジン冷却目標回転数演算部21fで計算したファン目標回転数NFXの小さい方の回転数Nf2を選択する。
【0031】
ここで、最小値選択部21gにおいて、最大値選択部21eで選択したファン目標回転数Nf1とエンジン冷却目標回転数演算部21fで計算したファン目標回転数NFXとの小さい方の回転数Nf2を選択することは、下記のことを意味する。
1)最大値選択部21eで選択したファン目標回転数Nf1がエンジン冷却目標回転数演算部21fで計算したファン目標回転数NFXより小さいときは、ファン目標回転数Nf1を選択することを意味する。
2)最大値選択部21eで選択したファン目標回転数Nf1がエンジン冷却目標回転数演算部21fで計算したファン目標回転数NFXより大きいときは、ファン目標回転数NFXを選択することを意味する。
その結果、最小値選択部21gでは、エンジン冷却目標回転数演算部21fで計算したファン目標回転数NFXを制限値として、最大値選択部21eで選択したファン目標回転数Nf1がその制限値を超えないようにファン目標回転数が補正される。また、エンジン冷却目標回転数演算部21fでは、エンジン回転数NEが低くなるに従って低くなるファン目標回転数NFXの制限値が計算される。
【0032】
ECU21は、最小値選択部21gで選択されたファン目標回転数Nf2を適宜増大させるファン目標回転数増大部21hを有する。ファン目標回転数増大部21hではファン目標回転数Nf2より大きいファン目標回転数NfSを得る。
また、ECU21は、ファン目標回転数増大部21hで増大されたファン目標回転数Nfsおよびファン目標回転数Nf2のいずれかを冷却ファン目標回転数指定記憶部21iに設定し、電源制御部22を介して電動ファン31に供給するように制御する
次に、本発明に係る作業機械100における電動ファン31とDPF53の再生化との関について説明する。
【0033】
図4は、本発明に係る作業機械100における電動ファン31とDPF53の再生化の関連動作の一実施形態を示す処理フロー図である。
この処理フローはECU21内の制御プログラムを実行して行われる。
DPF再生化の処理フローは、ステップS1に示すように、エンジン11が駆動された状態でスタートする。エンジン11が駆動されるとステップS2に進み、温度センサ63から送出されるそのときのエンジン11の冷却水の温度TWXに基づいて、ECU21の冷却水冷却目標回転数演算部21aにおいてファン目標回転数NWXが算出される。上述した如く、冷却水冷却目標回転数演算部21aには、冷却水温TWとファン目標回転数NWとの関係特性fTWがテーブルとして設定されており、ファン目標回転数NWXは、このテーブルに基づいて演算される。
【0034】
以下、同様に、ステップS3〜S5において、温度センサ64、65、66からそれぞれ送出されるそのときのポンプ等の作動油の温度TPX、潤滑油の温度TTX、エアコン冷媒の温度TAXに基づいて、ファン目標回転数NPX、ファン目標回転数NTX、ファン目標回転数NAXが演算される。上述した如く、ファン目標回転数NPX、ファン目標回転数NTX、ファン目標回転数NAX、は、それぞれ、作動油冷却目標回転数演算部21b、潤滑油冷却目標回転数演算部21c、エアコン冷媒冷却目標回転数演算部21dにおいて算出される。
なお、ステップS2〜S5は、上記の順序で行われる必要はなく、要は、ファン目標回転数NWX、ファン目標回転数NPX、ファン目標回転数NTX、およびファン目標回転数NAX、が全て算出されればよい。
【0035】
次に、ステップS6に進み、最大値選択部21eにおいて、ファン目標回転数NWX、ファ目標回転数NPX、ファン目標回転数NTX、およびファン目標回転数NAXのうち、最も高い回転数Nf1が選択される。
【0036】
次に、ステップS7に進み、エンジン冷却目標回転数演算部21fにおいて、エンジン回転数検出器61から送出されるそのときのエンジン回転数NEに基づいてファン目標回転数NFXが算出される。
【0037】
次に、ステップS8に進み、最大値選択部21eで選択したファン目標回転数Nf1とエンジン冷却目標回転数演算部21fで計算したファン目標回転数NFXの小さい方の回転数Nf2が選択される。
【0038】
次に、ステップS9に進み、DPF53の上流に配置された圧力検出器54により検出された圧力PFから、DPF53の下流に配置された圧力検出器55により検出され圧力PRを減算してDPF53の前後差圧ΔPFが算出される。
なお、ステップS9の処理を行う前に、図4には図示されていないが、電源制御部22から電力を供給して加熱器51を駆動し、エンジン11から排出される排気ガスに含まれる軽油、H、CO等の燃料の未燃成分を燃焼する。
【0039】
次に、ステップS10に進み、DPF53の前後差圧ΔPFが、エンジン回転数NEに対応して予め設定されている差圧上限値ΔPFHを越えているか否かが判断される。
ステップS10において、DPF53の前後差圧ΔPFが差圧上限値ΔPFHを超えていると判断された場合は、ステップS11に進み、DPF53と酸化触媒52の間に配置された温度センサ62から送出される排気ガスの温度TFが予め設定されているPM燃焼下限温度TLより低いか否かが判断される。PM燃焼下限温度TLは、PMが燃焼可能な下限温度であり、例えば600℃程度である。
【0040】
ステップS11において、温度センサ62から送出される排気ガスの温度TFが、PM燃焼下限温度TL未満と判断されるとステップS12の処理に進む。
ステップS12では、ファン目標回転数増大部21hにおいて、最小値選択部21gで選択されたファン目標回転数Nf2に回転数ΔNを加算してファン目標回転数Nf2より大きいファン目標回転数NfSが算出される。
【0041】
そして、ステップS13に進み、ECU21から電源制御部22にファン目標回転数NfSを送出し、電動ファン31を駆動する。電動ファン31の駆動は、エンジン11により電動/発電機15を駆動して発電させ、この発電された電力を、電源制御部22を介して電動ファン31に供給して行う。
【0042】
つまり、DPF53の前後差圧ΔPFが差圧上限値ΔPFHを超えており(ステップS10のYes)、排気ガスの温度TFが、PM燃焼下限温度TL未満である(ステップS11のYes)状態は、DPF53がPMで目詰まりしている状態であり、且つ、排気ガスの温度TFがPM燃焼下限温度TLに達していない状態である。ここで、電動/発電機15を駆動して発電させ、ファン目標回転数Nf2に回転数ΔNが加算されたファン目標回転数NfSで電動ファン31を駆動すると、電動/発電機15に連結されたエンジン11の負荷が増大する。
このため、エンジン11から排出される排気ガスの温度TFが、PM燃焼下限温度TLを超えるようになり、DPF53に捕集されたPMが燃焼し、DPF53は再生化される。
【0043】
ステップS10において、DPF53の前後差圧ΔPFが差圧上限値ΔPFH未満と判断された場合は、DPF53にはPMが目詰まりされていない状態であるので、ステップS13に進み、ステップS8で選択されたファン目標回転数NfSで電動ファン31を駆動する。電動ファン31の駆動は、エンジン11により電動/発電機15を駆動して発電させ、この発電された電力を、電動ファン31に供給して行う。
【0044】
また、ステップS11において、温度センサ62から送出される排気ガスの温度TFが、PM燃焼下限温度TLを超えていると判断されると、ステップS13に進み、ステップS8で選択されたファン目標回転数NfSで電動ファン31を駆動する。つまり、ステップS11において、温度センサ62から送出される排気ガスの温度TFが、PM燃焼下限温度TLを超えている状態は、DPF53に捕集されたPMが燃焼する状態であるので、これ以上、エンジン11の負荷を増大する必要はない。この場合にも、電動ファン31の駆動は、エンジン11により電動/発電機15を駆動して発電させ、この発電された電力を、電動ファン31に供給して行う。
【0045】
但し、ファン目標回転数Nf2で電動ファン31を駆動する場合には、蓄電装置23に充電された電気エネルギを補助的に電動ファン31に供給するようにしてもよい。
ステップS13が完了すると、ステップS2に戻り、以下、同様に、ステップS2〜S13の処理が反復される。
【0046】
本発明の実施形態として示す作業機械100によれば、以下に示す効果を奏する。
(1)冷却ファンを電動式の電動ファン15とし、電動/発電機15の発電電力により電動ファン31を駆動するようにしたので、油圧装置により冷却ファンを駆動する方式のように、冷却ファンの回転数がエンジン11の回転数により制限されることがなく、エンジン回転数が小さい場合でも、電動ファン31の回転数を適切に調整することができる。
(2)電動/発電機15の発電電力により電動ファン31を駆動し、DPF53を再生化する際には、電動ファン31の増速を電動/発電機15の発電電力を増大して行うので、DPF53の再生化時におけるエンジン11の負荷の増大量は、電動ファン31の増速分に対応する電力分だけでよい。つまり、DPF53を再生化する際にエンジン11の出力トルクを増大する必要がなく、燃費効率の向上に有利である。
上記(2)に関し、冷却ファンを油圧可変ポンプおよび油圧モータで駆動する従来方式と対比すると、従来方式では、作業機械が作業待ちの状態では、エンジンの負荷が小さく、排気ガスの温度が低い。従って、このままでは、PMがDPFに捕集されているにも拘わらずDPFの再生化は行われない。DPFの再生化が行われるようにするには、冷却ファンを駆動する油圧可変ポンプの容量を大きくしてエンジンの負荷を増大し、排気ガスの温度をPMの可燃温度まで上昇するようにする必要がある。しかし、油圧可変ポンプの容量を大きくすると、油圧ポンプによって給、排される作動油の油量が増加する。作動油の油量の増加に伴い作動油の温度が上昇する傾向となり、冷却ファンによって、この作動油の温度も冷却する必要が生じる。このため、DPFの再生化の際、冷却ファンの速度を、作動油の温度の上昇を抑えるように大きく増大する必要が生じ、エンジンの燃費が大幅に悪化する。
【0047】
(実施形態2)
図5は本発明に係る作業機械の実施形態2を示す回路ブロック図であり、図6は、図5に図示された回路ブロックにおける電動ファンの動作の一例を示す処理フロー図である。
実施形態1に示された作業機械100では、DPF53を再生化するか否かの判断を、DPF53の前後に圧力検出器54、55を配置し、DPF53の前後差圧ΔPFによって行うものであった。
これに対し、実施形態2の作業機械100は、図5の回路ブロック図に図示されるように、圧力検出器54、55を備えていない。しかし、アームシリンダ114のボトム側油室の圧力Pcを検出する圧力検出器68を備えている。圧力検出器68は、一般的に作業機械には装備されているものであって、この実施形態の実現のために、特別に、必要とされるものではない。また、図示はしないが、ECU21は、予め実験等により確認された、DPF53に捕集されたPMを燃焼するに必要とされる時間TIMErecが設定されたPM燃焼時間記憶部を有しており、さらに、DPF53において再生化処理を行う時間を測定するタイマを含んでいる。他の構成は、図2に図示された構成と同様であり、対応する構成に同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0048】
次に、図6に図示された処理フロー図を参照して、実施形態2における電動ファンとDPF53の再生化との関連動作を説明する。
ステップS1〜S8は、実施形態1として示された図4の処理フローにおける各ステップと同一である。
ステップS8の処理をした後、ステップS21に進み、エンジン回転数検出器61から送出されるエンジン回転数NEが所定の回転数NL未満か否かが判断される。エンジン回転数NEが所定の回転数NLを超えていると判断されるとステップS25に進み、エンジン回転数NEが所定の回転数NL未満であると判断されるとステップS22に進む。
所定の回転数NLは、PMが発生する限界状態のエンジン11の回転数として予めECU21に設定されているものである。
【0049】
ステップS22では、アームシリンダ114の圧力Pcが所定の圧力PL未満であるか否かが判断される。ステップS22において、アームシリンダ114の圧力Pcが所定の圧力PLを超えていると判断されると、ステップS25に進み、アームシリンダ114の油圧Pcが所定の圧力PL未満であると判断されると、ステップS23に進む。
所定の圧力PLは、PMが目詰まり状態となって燃焼を開始すべき限界状態のアームシリンダ114の圧力として予めECU21に設定されているものである。
【0050】
DPF53でのPMの堆積量は、エンジン回転数NEが小さく、エンジン11の負荷が小さいアイドリング状態のときに最も大きくなる。ステップS21とステップS22は、エンジン11の駆動状態が、PMが堆積する状態であるかどうかを検出する処理である。ステップS21およびステップS22においていずれも肯定される場合は、PMが堆積する条件を満足する状態であり、いずれかのステップで否定されれば、PMが堆積する条件を満足する状態ではない。
【0051】
従って、ステップS21またはステップS22において、否定された場合は、DPF53にPMが堆積されてはいないので、DPF53の再生化をする必要がなく、ステップS25に進み、ステップS8で選択されたファン目標回転数Nf2で電動ファン31を駆動する。
【0052】
ステップS23において、温度センサ62から送出される排気ガスの温度TFが、PM燃焼下限温度TL未満か否かが判断される。排気ガスの温度TFが、PM燃焼下限温度TLを超えていると判断されると、ステップS25に進み、ステップS8で選択されたファン目標回転数Nf2で電動ファン31を駆動する。ステップS23において、温度センサ62から送出される排気ガスの温度TFが、PM燃焼下限温度TLを超えている状態は、DPF53に捕集されたPMを燃焼することが可能な状態であるので、これ以上、エンジン11の負荷を増大する必要はない。
【0053】
ステップS23において、排気ガスの温度TFが、PM燃焼下限温度TL未満と判断されるとステップS24に進む。ステップS24では、ファン目標回転数増大部21hにおいて、最小値選択部21gで選択されたファン目標回転数Nf2に回転数ΔNを加算してファン目標回転数Nf2より大きいファン目標回転数NfSが算出される。
【0054】
ステップS24の次に、ステップS26に進み、ECU21から電源制御部22にファン目標回転数NfSを送出して電動ファン31をファン目標回転数NfSで回転させる。電動ファン31の駆動は、エンジン11により電動/発電機15を駆動して発電させ、この発電された電力を、電源制御部22を介して電動ファン31に供給して行う。
【0055】
電動ファン31をファン目標回転数Nf2に回転数ΔNが加算されたファン目標回転数NfSで回転するため、電動/発電機15は増加した回転数ΔN分だけ発電電力が大きくなるように制御されるので、電動/発電機15に連結されたエンジン11の負荷が増大する。
このため、エンジン11から排出される排気ガスの温度TFが、PM燃焼下限温度TLを超えるようになり、DPF53に捕集されたPMが燃焼し、DPF53は再生化される。
【0056】
ステップS26において電動ファン31をファン目標回転数NfSで駆動した後は、ステップS27に進み、電動ファン31の駆動時間TIMEfunが、PMを燃焼するに必要な時間TIMErecを越えたか否かが判断される。PMを燃焼するに必要な時間TIMErecは、予め実験等により確認して、ECU21に設定しておく。
【0057】
ステップS27において、電動ファン31の駆動時間TIMEfunが、PMを燃焼するに必要な時間TIMErec未満と判断されると、ステップS26に戻り、電動ファン31をファン目標回転数NfSで駆動する。電動ファン31の駆動は、ステップS27において、電動ファン31の駆動時間TIMEfunが、PMを燃焼するに必要な時間TIMErecを越えたと判断されるまで継続される。
【0058】
ステップS27において、電動ファン31の駆動時間TIMEfunが、PMを燃焼するに必要な時間TIMErecを越えたと判断されるとステップS2に戻る。また、ステップS25において、電動ファン31をファン目標回転数NfSで回転した後は、所定時間後にステップS2に戻る。そして、ステップS2〜S27の処理が反復される。
【0059】
実施形態2においても、エンジン11の駆動状態が、PMが堆積する状態である場合には、電動ファン31をファン目標回転数Nf2に回転数ΔNが加算されたファン目標回転数NfSで回転する。従って、実施形態1と同様な効果を奏する。しかも、DPF53前後の差圧ΔPFを算出するための圧力検出器54、55を装備する必要がないので、実施形態1の場合より価格を低減することができる。
【0060】
なお、実施形態2において、エンジン11の負荷状態を把握するために、アームシリンダ114の圧力Pcを検出する場合で説明したが、他の駆動部の油圧シリンダの圧力や、複数の油圧シリンダの圧力を検出するようにしてもよい。複数の油圧シリンダの圧力を検出する場合には、油圧シリンダ毎に、PMを燃焼させる限界状態の圧力を異なる値とすることが望ましい。
【0061】
また、エンジン11の負荷状態を把握する方法として、油圧シリンダの圧力検出器以外の他のアクチュエータや検出器、例えば、アタッチメントの重量、荷役の重量を測定する重量センサ等を用いるようにしてもよい。
【0062】
上記各実施形態では、電動ファン31により冷却する冷媒として、エンジン21を冷却する冷却水、主油圧ポンプ12を冷却する作動油、トランスミッション16等の潤滑油、エアコン24の冷媒を挙げたが、これは、単なる一例である。他に、トルクコンバータ、インタークーラ、インバータ等の冷媒を冷却するようにしてもよい。この場合、ファン目標回転数も、各装置や部材毎に設定する。
【0063】
作業機械に装着する電動ファン31は1つに限らない。複数の電動ファンを、冷却する対象に合わせて適切な場所に配置することができる。電動ファンが複数の場合、DFP53の再生化において、回転数を増大する電動ファンは、それらの全てでもよいし、一部の電動ファンの回転数を選択的に増大するようにしてもよい。
【0064】
ファン目標回転数の増大する方法として、ファン目標回転数Nf2に回転数ΔNを加算する方法で説明したがこの方法に限られない。加算するΔNは、一定値とする以外に、ファン目標回転数Nf2に所定の割合を乗じて算出するようにしてもよい。または、ファン目標回転数Nf2を、例えば、回転数大、回転数中、回転数小等の回転数別の複数のグループに分割し、グループ毎に加算する回転数ΔNを割り振るようにしてもよい。この場合、加算する回転数ΔNの値は一定値でもよいし、異なる値としてもよい。
また、ファン目標回転数Nf2に回転数ΔNを加算する方法ではなく、ファン目標回転数Nf2より大きいファン目標回転数Nf3をECU21に設定しておき、このファン目標回転数Nf3に切り換える方法としてもよい。ファン目標回転数Nf3は、一定値でもよいし、演算により算出するようにしてもよい。
【0065】
電動/発電機15を、発電機能のみを有する発電機としてもよい。
その他、本発明に係る作業機械は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して構成することが可能であり、要は、エンジンと、エンジンの駆動により発電する発電機と、発電機で発電された電力により駆動され、冷却風を送風する電動ファンと、エンジンの駆動時にエンジンから排出される排気ガスに含まれる捕集対象物を捕集し、かつ、再生化することが可能な捕集手段と、捕集手段の再生化の判断をする再生判断手段と、再生判断手段の判断に基づいて前記電動ファンの回転数を増大するファン回転数増大手段とを備えるものであればよい。
【符号の説明】
【0066】
11 エンジン
12 油圧ポンプ
15 電動/発電機
16 トランスミッション
21 ECU(電子制御装置)
22 電源制御部
53 DPF(パティキュレートフィルタ)
54、55、68 圧力検出器
61 エンジン回転数検出器
62〜66 温度センサ
73〜76 熱交換器
100 作業機械(ホイールローダ)
114 アームシリンダ
122 エンジン室



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの駆動により発電する発電機と、
前記発電機で発電された電力により駆動され、冷却風を送風する電動ファンと、
前記エンジンの駆動時に前記エンジンから排出される排気ガスに含まれる捕集対象物を捕集し、かつ、再生化することが可能な捕集手段と、
前記捕集手段の再生化の判断をする再生判断手段と、
前記再生判断手段の判断に基づいて前記電動ファンの回転数を増大するファン回転数増大手段とを備えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械おいて、前記再生判断手段は、前記捕集手段の前後における前記排気ガスの差圧を検出する手段を有することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、前記再生判断手段は、前記エンジンの回転数を検出する手段および前記エンジンの負荷を検出する手段を有することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、さらに、油圧ポンプによって駆動される油圧シリンダを有し、前記エンジンの負荷を検出する手段は、前記油圧シリンダの圧力を検出する手段を含むことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、前記電動ファンを、回転数を増大して駆動を開始した後、所定時間経過後に、前記電動ファンを、回転数を低減して駆動する制御手段を含むことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の作業機械において、前記電動ファンは、エンジン冷却水、油圧ポンプまたは油圧モータ作動油、トランスミッション潤滑油、エアコン冷媒の中の、複数を冷却することを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の作業機械において、前記電動ファンを複数有することを特徴とする作業機械。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−247182(P2011−247182A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121391(P2010−121391)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】