説明

作業機

【課題】 本発明の課題は、昇降及び左右ローリング可能な縦リンクに対して着脱される作業部を取り外したときには、この縦リンクの左右傾斜姿勢が常に左右水平姿勢となるようローリング制御することによって作業部の装着を容易にし、且つ作業部の縦リンク対する着脱作業の安全化を図る。
【解決手段】 本発明は、走行車体の後側に昇降用油圧シリンダにより作動する昇降リンク装置(3)及びローリングアクチュエータにより作動するローリング装置を介して縦リンク(51)を昇降可能及び左右ローリング可能に設ける。縦リンク(51)に着脱される着脱ヒッチ(53)を介して作業部を装着する。取り外し状態検出装置(79)により作業部を取り外した状態であることを検出したとき、ローリング装置を所定の標準状態に作動させる制御装置を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタや田植機等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業部(耕耘装置)の着脱に際し、走行車体の後部に備えた昇降リンク装置の後端部に連結されたクイックヒッチに、作業部側のトップリンクピンをクイックヒッチ上端部のトップフックで掬い上げて係合し、この下側の左右両端部に有するコ字状のピンガイドで、作業部のロワリンクピンを嵌合させて受け止め、ピンガイドに嵌合されるロワリンクピンをロックフックのばねによる回動によって係止して、クイックヒッチに対する作業部の取付固定を可能にした作業部の着脱装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−103605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、昇降及び左右ローリング可能な縦リンクに対して着脱される作業部を取り外したときには、この縦リンクの左右傾斜姿勢が常に左右水平姿勢となるようローリング制御することによって作業部の装着を容易にし、且つ作業部の縦リンク対する着脱作業の安全化を図る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、走行車体(1)の後側に昇降用油圧シリンダ(26)により作動する昇降リンク装置(3)及びローリングアクチュエータ(25)により作動するローリング装置を介して縦リンク(51)を昇降可能及び左右ローリング可能に設け、縦リンク(51)に着脱される着脱ヒッチ(53)を介して作業部(4)を装着し、取り外し状態検出装置(79)により作業部(4)を取り外した状態であることを検出したとき、ローリング装置を所定の標準状態に作動させる制御装置を設けてあることを特徴とする。
【0006】
作業部(4)が着脱ヒッチ(53)を介して装着される縦リンク(51)は、昇降シリンダ(26)により昇降リンク装置(3)を介して昇降作動し、ローリングアクチュエータ(25)によりローリング装置を介して左右にローリング制御される。
【0007】
作業部を縦リンクから取り外したときには、取り外し状態検出装置(79)により作業部が取り外し状態であることを検出する。この検出結果により、ローリング制御装置が作動して縦リンク(51)が所定の標準姿勢状態(作業部が左右水平姿勢となる状態)に制御されることになり、縦リンク(51)に対する作業部の装着が容易に行える。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1において、作業部装着状態で着脱ヒッチ(53)が外れないようロックするロック装置(59)を設け、走行車体又は作業部の左右傾斜姿勢を検出する左右傾斜センサ(28)を設け、取り外し状態検出装置(79)により作業部を装着した状態であることを検出し、且つ左右傾斜センサ(28)により走行車体又は作業部が左右傾斜状態であることを検出すると、ロック装置(59)のロックの解除を規制する制御装置を設けてあることを特徴とする。
【0009】
作業部(4)を縦リンク(51)から取り外そうとするとき、取り外しのために、ロック装置(59)のロックを解除しようとするが、このとき、左右傾斜センサ(28)により走行車体又は作業部が左右傾斜状態にあることを検出すると、ロック装置(59)のロックの解除を規制する制御装置によってロックの解除が規制される。従って、作業部の取り外しができなくなるため、走行車体又は作業部を所定の標準姿勢状態に戻してからロックを解除して作業部を取り外すことになるので、取り外し時の作業部の移動や姿勢変化による脱落等の危険を回避でき、作業部の着脱作業が安全に行える。
【発明の効果】
【0010】
要するに、請求項1の本発明によれば、作業部を取り外した後、作業部を縦リンクに装着しようとするとき、縦リンクの左右傾斜姿勢が標準姿勢状態となっているので、作業部の装着が容易にでき、且つ作業部の装着が安全に行える。
【0011】
請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、作業部を取り外そうとするとき、走行車体又は作業部が左右傾斜状態であるとロック装置のロックの解除を規制するので、作業部を左右傾斜状態で取り外そうとする際の作業部の移動や姿勢変化による脱落等の危険を回避でき、作業部の着脱作業を安全に行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ポット式苗移植機の側面図
【図2】同上要部の平面図
【図3】機体後部の要部拡大側面図
【図4】整地装置の支持構造を示す要部の側面図
【図5】着脱ヒッチ機構の要部拡大側面図
【図6】同上要部の背面図
【図7】整地装置の支持構造要部の平面図
【図8】苗植付作業部の要部の側面図
【図9】苗箱供給部及び苗箱搬送部の側面図
【図10】苗箱供給の制御ブロック図
【図11】駆動ケースの背断面図
【図12】図10のS1−S1断面図
【図13】制御ブロック図
【図14】整地装置の上下動機構を示す要部の背面図
【図15】副変速レバー牽制装置の側面図
【図16】畦クラッチケーブルの分離接続構造を示す側面図
【図17】同上要部の背面図
【図18】スタンドの側面図
【図19】スタンドと整地フレームとの関係背面図
【図20】水タンク部の平面図
【図21】水タンク部の側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
農作業機の一例として、図1の側面図に示す苗移植機は、8条植えのポット型苗株移植機であって、操向駆動可能な左右一対の前輪6,6と左右一対の駆動後輪7,7を備えた走行車体1の後側に、上下のリンクで構成されてその後端部にローリング調節部を備える昇降リンク装置3を介してポット式苗植付作業部4が昇降可能に装着され、このポット式苗植付作業部4の下方に設けたフロート5の前方に整地装置8を設ける。
【0014】
整地装置8は、昇降リンク装置3の後端部に取付け、その後方に離れた位置に、昇降リンク装置3からその上下のリンクの延長線上に延びる上下のフレームによる延長フレーム9を介してポット式苗植付作業部4を支持する。そのほかに機体の前側には前輪6,6を操向操舵するステアリングハンドル12、操縦座席13、予備苗載台15、線引きマーカ16等を備え、操縦座席13の後方に施肥装置17、側方に水タンク18を装備する。ステアリングハンドル12及び操作ボックス2近くには、HST(油圧式無断変速装置)を介して走行速を変速制御する変速レバー14が設けられている。
【0015】
(苗植付作業部)
苗植付作業部の各機器について詳細に説明すると、8条植えの構成例によるポット式苗植付作業部4は、その要部拡大側面図を図3に示すように、可撓性を有する苗トレイに格子状配列の多数の育苗ポットを形成してそれぞれに苗を1株づつ収容して苗箱に保持した態様で取扱うために、隣接する2条づつで共用の後下がりに傾斜した上下2段のポット苗箱導入部30,30…が左右並列に4組設けられ、これら各組のポット苗箱導入部30,30…の後端部には、苗箱主搬送路31,31…が接続されて苗箱を移送する搬送部を形成する。
【0016】
各苗箱主搬送路31は、上下2段のポット苗箱導入部30,30から順に1個づつ供給される苗箱を前半は下向きに搬送し、途中から円弧に沿って搬送方向を徐々に変え、後半は上向きに搬送する側面視略U字状に形成され、この苗箱主搬送路31の終端部に接続して、苗取出位置で苗を取り出された後の空の苗箱を複数個上下に重ねた状態で収容することのできる空箱収容部38が設けられている。苗箱主搬送路31には、ポット苗箱導入部30にある苗箱を送り出す供給ローラによる苗箱供給装置が備えられ、載置されている苗箱はポット苗箱導入部30,30の底面の空転ローラにより傾斜に沿って自重で後方に滑り落ちる。
【0017】
また、各苗箱主搬送路31に対応して、苗箱を苗箱搬送路に沿って搬送する苗箱送り機構と、搬送路31の下端に位置する苗取出位置において、搬送中の苗箱からポット横一列分づつ苗を取り出す苗取出機構33、取り出された苗を下側前方に弧を描くような軌跡でもって搬送する苗搬送機構34、該苗搬送機構から苗を抜き出す苗抜き機構35、該苗抜き機構35によって抜き出される横1列分の半分づつ左右両側に横送りする苗横送り機構36、該苗横送り機構36によって供給される苗を取って圃場に植え付ける苗植付機構37等からなる植付部32が設けられ、さらに、植付部32には駆動ケースや植付伝動フレームが一体に構成され、苗載台支持フレームを介して上下2段のポット苗箱導入部30を支持している。
(整地装置)
整地装置8は、図3に示す実施例では、土塊を破砕して圃場を整地するための前後配置の2つの整地ロータ41,41と、その前後をそれぞれ上方から支持する吊ワイヤ42aと吊リンク42bを備えて構成し、これをポット式苗植付部4の下方位置に高さ調節可能に配置している。
【0018】
吊リンク42bは、昇降リンク装置3の後端部に縦フレーム43を設け、この縦フレーム43から上下の2つのリンク45,46を介して上下動作可能に連結するとともに、揺動動作可能な調節レバー44で高さ調節可能に構成する。調節レバー44は2つの空箱収容部38の間の位置でその揺動範囲との干渉を避けて配置する。
【0019】
この場合において、整地装置8を空箱収容部38の下方位置で、その吊リンク42bをポット式苗植付部4の屈曲形状に沿って並行するように屈曲して構成することにより、ポット式苗植付部4の前側のスペースAを有効に活用することができる上に、リンクを必要以上に延ばさないで構成することができる。また、調節レバー44を空箱収容部38の下に配置した場合は、ホッパの邪魔にならずに開閉が可能となる。
【0020】
上記構成においては、整地装置8は昇降リンク装置3の後端位置に、また、ポット式苗植付作業部4は昇降リンク装置3の後方に延びる延長フレーム9を介した位置に支持されることから、両者は機体後部の昇降リンク装置3により一体に昇降可能に支持されて整地圃場にポット苗の植付けを行うとともに、ポット式苗植付作業部4の前側には、整地装置8との間にメンテナンス用スペースAが確保される。したがって、整地装置8によって多様な圃場条件に対して適用範囲を拡大することができるとともに、ポット式苗植付作業部4の植付装置32の前側のメンテナンス用スペースAにより、その植付部32の異常事態にも即応できてポット苗の植付けの作業能率を確保することができる。
【0021】
次に、図4及び図5に示す整地装置の支持構造並びに作業部の着脱構造について説明すると、走行車体1の後側に設けた昇降リンク装置3の後端部に昇降する縦リンク51を備え、縦リンク51に設けた前後方向のローリング軸24を介して左右にローリングする取付フレーム52を縦リンク51の後側に設けている。取付フレーム52に対して着脱する着脱ヒッチ53及び延長フレーム9を介して農作業部(苗植付作業部)4を取付フレーム52の後側に配設する。着脱ヒッチ53には、前記取付フレーム52に設けられた係合凹部52a,52aに受止保持させる係止具53a,53a,が突設されている。そして、取付フレーム52とこれに装着状態の着脱ヒッチ53との間には、係止具53aが係合凹部52aから外れないようにロックする支点Q周りに揺動開閉可能な開閉ロック具58aとロック解除レバー58bなどからなるロック装置59が設けられている。ロック装置59には、ロック解除レバー58bによるロック状態を検出するロック検出スイッチ77と、該ロック解除レバー58bによるロック解除を規制するロック解除規制ピン78と、取付フレームに対する着脱ヒッチの取り外し状態を検出する取り外し状態検出装置(取り外し状態検出スイッチ)79が設けられている。ロック解除規制ピン78は、ロック検出スイッチ77の検出結果に基づき、制御部19がロック解除規制ソレノイド80に出力してロック解除レバー58bのロック解除方向への移動を規制するように構成されている。
【0022】
整地装置8及び植付作業部4全体は、左右傾斜センサ(ローリングセンサ)28の検出値に基づき、この検出値が設定値に維持されるように制御部(コントローラ)からの信号によりローリングモータ25を正逆転駆動することで、ローリング軸24回りに左右ローリング制御されるようになっている。また、このような左右ローリング自動制御可能な構成に加えて、作業部4を縦リンク51から取り外したとき、取り外し状態検出装置79により作業部が取り外し状態であることを検出すると、この検出結果に基づき、ローリングモータ25によりローリング装置を作動させて縦リンク51が所定の標準姿勢状態(作業部が左右水平姿勢となる状態で受け入れ可能な姿勢)となるよう制御する制御手段が制御部19に備えられている。
【0023】
更に、前記取り外し状態検出装置79により作業部を装着した状態であることを検出し、且つ左右傾斜センサ28により走行車体又は作業部が左右傾斜状態であることを検出すると、ロック装置59のロックの解除を規制する制御手段が制御部19に備えられている。
【0024】
作業部4の下側には、この作業部を走行車体から取り外したときにこれを下から受けて支持するスタンド93が設置されるようになっている。このスタンド93は、図18及び図19に示すように、基台93a、脚部93b、受け部93c、ロープ掛け用フック93d等からなる。
【0025】
整地装置8が本機側に設置されてある着脱式の田植機において、図19に示すように、ロータ41とロータ41の間にあるロータを吊り下げる整地フレーム56の左右位置と、前記作業部のスタンド93の左右両端位置が左右方向で同じ位置になるよう配置構成することで、作業部を脱着する時、本機側と植付作業部側の左右位置がわかり易くなり、ドッキングが容易にできる。
【0026】
また、前記取付フレーム52には、該取付フレームから後側に延びる整地装置支持フレーム54,54を整地支持部材57を介して支持させて設け、整地装置支持フレーム54,54に該整地装置支持フレームから前側に延びる上下回動アーム55u,55dを連結し、上下回動アーム55u,55dに整地フレーム56を連結して整地装置8を上下回動可能に支持し、前記整地装置支持フレーム54,54と整地フレーム56が機体側面視で重複して交差するように配置構成している。従って、かかる構成によれば、着脱ヒッチにより整地装置を走行車体側に残したままで苗植付作業部のみを異なる種類の農作業部に交換できるものでありながら、ローリング軸により苗植付作業部と整地装置とを共に左右ローリングさせることができる。また、整地装置を上下動可能に支持する支持構造を上下動のストロークを十分に得ながら強固なものにでき、この支持構造により整地装置を前寄りに配置でき、ひいては農作業部も走行車体側に配置できて、機体の前後バランスが良好に行えるものとなる。
【0027】
そして、前記整地フレーム56の左右位置には、これに接近して整地装置支持フレーム54,54を配置することによって、整地フレーム56の上下動が左右の整地装置支持フレームによりガイドされ、整地装置の上下動が円滑に行えるように構成している。
【0028】
整地装置8の上下動機構としては、図14に示す実施例では、上下調節レバー44を矢印イ方向に回動操作すると、操作アーム90a、回動軸90b、揺動リンク90c、昇降ロッド90d等からなる上下動機構90を介して整地装置8が上方の収納位置に上動し、逆に、矢印ロ方向に回動操作すると、前記の上下動機構90を介して整地装置8が下方の作業位置に下動するようになっている。そして、上下調節レバー44には整地装置8の上下位置を検出するロータ上下位置センサ91が設置されている。なお、前記整地装置上下動機構90の別実施例として、図4に示すように、ロータ上下動モータ92の作動によって整地装置を上下動制御する構成にすることもできる。例えば、ロータ上下位置センサ91が上下調節レバー44によるロータ上げ位置を検出すると、ロータ上下動モータ92の作動により整地装置8が上方の収納位置へ自動的に上昇するように連動構成することができる。
【0029】
また、図13に示すように、制御部19には、整地装置8が収納位置でないとき、昇降用電磁油圧バルブ27を中立位置にロックして昇降用油圧シリンダ26が作動しないように昇降リンク装置3の昇降を規制する油圧昇降規制制御手段が備えられている。
【0030】
更に、整地装置8を作業位置にしたままで作業部4を縦リンクから取り外そうとしたとき、取り外しのために、ロック装置(59)のロックを解除しようとするが、整地装置が収納位置でないとき、ロック装置59のロックの解除を規制するロック解除規制制御手段が制御部19に備えられている。
【0031】
また、作業部4を縦リンク51から外すとき、ロック装置59のロックの解除又は取り外し状態検出装置79が作業部の取り外し状態を検出すると、この検出結果に基づき、整地装置8が上方の収納位置へ自動的に上動するように、整地装置上動制御手段が制御部19に備えられている。
【0032】
作業部装着時、本機側に前後の角度変化があると、昇降用油圧シリンダ26が作動しないように油圧をストップするようにしている。つまり、傾斜センサ95が本機の所定以上の前後傾斜を検出すると昇降用電磁油圧バルブ27への油圧をストップすることで、作業部の装着が困難であることをオペレータが気づくようにし、本機を正常な水平姿勢に戻してから作業部を装着するように促すことができる。
【0033】
作業部を取り外す時、副変速レバー11がPTO位置でない場合には、ロック装置59のロックが外れないようにする(副変速レバーセンサ96が「PTO」位置を検出しているときのみロックが外れるようにする。)ことで、副変速レバーが移動速(高低速)域にある場合のように機体が不意に動くおそれがなく、作業部の取り外しが安全に行える。
【0034】
作業部装着時は、走行部を移動させながらドッキングさせるが、この時、走行速が移動速(路上走行速)であると速度が速過ぎるため危険である。通常、作業部の着脱に際しては、作業部専用の接続ハーネスを途中部から本機側と作業部側とに取り外し(分離)たり、取り付け(接続)たりする(電装カプラ99を抜き差しする)が、本例では、図15に示すように、ドッキング時に、接続ハーネスの電装カプラ99を抜き外した状態にすると、副変速レバー規制ソレノイド107の作動によって副変速レバー11が移動速に入らないように牽制する構成としている。従って、これによると、「植付速」・「PTO」の遅い速度でドッキングさせることができ、作業が安全に行える。
【0035】
また、作業部を取り外し、作業部ハーネスを取り外した状態では、走行速が1〜2速以上にまでアップしないように車速を規制することによっても一層の安全性向上が図れる。
更に、作業部を取り外す時において、着脱ヒッチ53の下側の係止具53aが外れると、油圧下降速度が遅くなるように構成することで、作業部の急な傾きをなくし、安全性の向上を図ることができる。
【0036】
なお、植付走行中において、着脱ヒッチのロックが外れると、走行が自動停止するように構成しておくと安全である。
また、作業部ハーネスを取り外さないと、ロックが外れないように構成することもでき、図16に示すように、畦クラッチケーブル108がドッキングしたままであると、ロックが解除できないように構成することもできる。つまり、本機側畦クラッチケーブル108aの下向き係合凹部109aと、作業部側畦クラッチケーブル108bの上向き係合凹部109bを係脱自在に構成して設け、図17に示すように、下向き係合凹部109aを上向き係合凹部109bに係合(接続)させたままの場合ではロックが解除できないようにし、図16に示すように、上向き係合凹部109bに対し下向き係合凹部109aを離脱(分離)させると、畦クラッチケーブル接続センサ110がOFFになり、ロックが解除できるように構成している。なお、110は把手で、これをもってすれば両係合凹部109a,109bをワンタッチで係脱することができる。
【0037】
なお、ポット式田植機において、機体後方から作業ができる位置のリンク装置3部に、ハーネス、水ホース、ケーブル等のジョイント部を設けておくと、機体後方からの脱着作業が容易にできる。ポット式田植機は、ロータと苗箱の回収ボックスがあるため、本機横側からの着脱作業がしにくいが、上記構成により解決できる。
【0038】
機体を旋回するターンには、旋回時に旋回内側の後輪のサイドクラッチを自動的に断って旋回する通常のターン(以下「くっるとターン」と云う。)と、この「くるっとターン」では、耕盤の圃場等で旋回内側の後輪が抵抗により円滑に遊転せず、該後輪で圃場を荒らすおそれがあるので、旋回外側の後輪の回転数(回転速度)に対して旋回内側の後輪の回転数(回転速度)が所定速度(旋回外側の後輪の回転数の5分の1)以下になると、旋回内側のサイドクラッチを強制的に「入」にして旋回内側の後輪を所定の回転量(走行距離67mm程度)だけ強制駆動しながら旋回するターン(以下「ポンピングターン」と云う。)とがある。そして、操作ボックス2上に設置されたポンピングクラッチ調節ダイヤル97(図13の制御回路図参照)は、前記旋回内側後輪の所定回転量を変更調節するものであり、ポンピングターン自体を「切」にすることもできる。ポンピングクラッチ調節ダイヤル97がポンピングターン「切」以外の位置で、且つハンドル切れ角がポンピングターンを作動させる角度であるとき、ハンドル切れ角センサ98の検出結果に基づき、整地装置を自動収納するように関連構成しておくと、旋回時における機体左右揺れによる整地装置の圃場面への干渉をなくし、旋回が良好に行える。なお、図13中、103は制御部19の入力側に設けられた後輪回転数検出センサであり、104は制御部19の出力側に設けられたサイドクラッチ操作用電磁油圧バルブである。
【0039】
ポット式苗植付作業部の全体構成について更に詳しく説明すると、苗植付作業部4の昇降操作は、変速レバー14の握り部に設けた植付・昇降スイッチ10の操作に基づいて手動操作できるように構成され、昇降用電磁油圧バルブ27を介して伸縮作動する昇降用油圧シリンダ26によって苗植付作業部4が上下に昇降する構成である。
【0040】
上下2段の苗箱供給部(苗箱導入部)30が左右並列に4組設けられ、これら各組の苗箱供給部の終端部に苗箱主搬送部(苗箱主搬送路)31が接続されている。苗箱主搬送部31の終端部に接続して、後記苗取出位置Pで苗を取り出された後の空の苗箱を複数個上下に重ねた状態で収容することのできる空箱収容部38が設けられている。空箱ガイドレール39aと39bとの繋ぎ目に対応する部位には、空箱を上側から案内するガイド体40が設けられ、苗箱の周回移動が円滑に行われるように構成している。
【0041】
苗箱導入部30の底面には空転ローラ20…が設けられていて、載置されている苗箱が自重で後方に滑り落ちるようになっている。各苗箱導入部30の後端部には、苗箱種搬送部31の搬送路へ苗箱を供給する供給装置29として、苗箱の左右縁を把持して苗箱を主搬送部側に繰り出す左右各一対の供給ローラ21,22と、該供給ローラの前方に位置し、外周部に形成された突起がポットとポットの隙間に下側から係合して苗箱を送る幅広の送りローラ23とが設けられている。上下苗箱供給部の下側供給ローラ22及び送りローラ23は、それぞれモータM1,M2によって回転駆動される。
【0042】
駆動ケース47aと一体のフレーム47bの下側から植付伝動フレーム47cが後方に延出され、駆動ケース47aの上面には苗載台支持フレーム47dが固着され、苗箱導入部30を支持している。ローリング軸24は、植付部支持ブラケット48に取り付けた軸受ケース50に回動自在に軸受けされ、整地装置及び植付部全体がローリング自在に支持されている。
【0043】
苗箱送り機構は、左右一対の送り爪60,60及び係止爪61,61とからなり、これらの作動により、苗箱搬送路31に沿って苗箱がポット配列の1ピッチ分づつ間欠的に送られるようになっている。送り爪60,60及び係止爪61,61の搬送上手側には苗箱搬送路31を滑り落ちてくる後続の苗箱を一旦受け止める遮断爪63,63が設けられている。
【0044】
苗箱送りカム65の回転により、苗箱送り作動アーム66が揺動し、苗箱送り駆動軸69を介して苗箱送り駆動アーム70,70に伝えられ、送り爪60,60を上下に往復動させる。カム65がローラ67を押す時に送り爪60,60が下動して苗箱を送るようになっている。カム65を伝動回転する伝動軸64には、これと一体的に回転する筒体64aに外部操作によって伝動を入り切りする定位置停止用クラッチ64bが設けられている。
【0045】
また、図8に示すように、苗搬送装置34は、苗押し出しピンにより苗箱から押し出される苗の床土部を保持する苗ホルダー83を備えている。この苗ホルダー83は、上下の揺動リンク84,85に連結された支持部材86に固定されており、揺動リンク84,85の揺動により、円弧軌跡を描いて往復動するようになっている。更に、苗ホルダー83は、苗植付時において、植付クラッチ又は畦クラッチ64bを切った時の苗ホルダーの停止位置が下死点付近の位相で停止し、且つ苗を取りに行く方向で洗浄ノズル89から噴水される噴水圏(イ)内にあって停止するようになっている。
【0046】
更に、図8において、苗植付機構37は、植付駆動軸100と一体回転する回転ケース101に一対の苗植込具102,102が取り付けられ、この苗植込具が閉ループの軌跡を描いて移動し、苗を交互に一株づつ取って圃場に植え付けるようにしている。
【0047】
図9に示す構成例において、苗箱検出センサSW1〜SW7は、図9に示すように、コントローラに接続されていて、各センサからの情報に基づきコントローラ72がモータM1,M2、苗減少ランプ及び苗減少ブザーに出力する。モータM1又はM2の作動により、苗箱供給部にある苗箱が主搬送部の所定位置に繰り出されるものであるが、このとき、モータM1又はM2が所定時間以上作動しても、苗箱が所定位置まで送られて来ない場合には、苗箱検出センサW3がOFF作動し、苗箱送り不良警報装置BZに出力してオペレータに告知するようにしている。
【0048】
苗箱の自動供給装置において、上段搬送路と下段搬送路を送るモータMI,M2の作動時には、車速が所定の速度より少し遅くなるようにコントローラ72が変速モータ74(HST操作)に出力して制御する構成になっている。
【0049】
苗箱供給時に車速が速いと車体の揺れによって苗箱供給が不安定となる問題があるが、車速を遅くすることによって苗箱自動供給が安定し精度が向上する。
なお、前記変速モータ74は、通常は変速レバー14の操作で、変速レバーセンサ73の検知結果に基づき駆動され、車速が任意変速制御されるようになっている。
【0050】
操縦座席13の左右両側には畦クラッチレバー75が設けられている。畦クラッチレバー75の操作で、畦クラッチを「切り」にし、その後、植付クラッチモータ76の作動で植付クラッチを「切」にして、再度、植付クラッチを「入」にすると、植付部の苗植込具102が1行程回った後、機体が走行発進するように構成している。これにより、走行しながらの植付作業が欠株なく行える。
【0051】
マーカ操作装置105において、旋回の度に線引きする左右マーカ16,16を左右に切り替える「自動」位置と、左右両方のマーカで線引きする「両出」位置と、常時マーカを非線引き状態にする「切」位置とに切り替えるマーカ切替スイッチと、線引きするマーカを左右反対側に切り替えるボタンを押す度に線引きするマーカが左右交互に切り替わる左右切替ボタンを備え、マーカ操作装置105からの指令に基づいて、マーカ用ソレノイド106が作動し、苗植付作業部4の昇降に連動して線引きマーカが倒伏作動又は起立作動するようになっている。
【0052】
そして、前記線引きマーカが線引き作用位置にある時のみ、植付・昇降スイッチ10の苗植付作業部「上げ」操作で、エンジン回転数をアクセルモータ112の作動により自動的にアップしてマーカのリフトスピードが速くなるように連動構成している。かかる構成によれば、水車マーカでは、泥が付き易くて重くなるため、マーカを上げる負荷が大きくなり、リフトスピードが遅くなる問題を解消することができる。
【0053】
図20、図21に示すように、水タンク18は、機体の外側張り出し状態から機体内方側へ収納可能に構成している。水タンク18を受ける支持フレーム114から延びる支持アーム115を上下方向のタンク支軸116に軸支して、該水タンク18が支軸116を支点として外側から内方に向けて旋回収納する構成としている。
【0054】
また、この図例において、フロント側のマーカ16を収納位置にした時に水タンク18がストッパとなるような関係位置に配置することによって植付作業部とマーカが干渉しないようにしている。つまり、水タンクがマーカのストッパになることによってマーカと植付作業部の干渉を防ぐことができ、破損を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 走行車体
3 昇降リンク装置
4 作業部(苗植付作業部)
24 ローリング軸
25 ローリングアクチュエータ(ローリングモータ)
26 昇降用シリンダ
28 左右傾斜センサ
51 縦リンク
53 着脱ヒッチ
59 ロック装置
79 取り外し状態検出装置
80 ロック解除規制ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)の後側に昇降用油圧シリンダ(26)により作動する昇降リンク装置(3)及びローリングアクチュエータ(25)により作動するローリング装置を介して縦リンク(51)を昇降可能及び左右ローリング可能に設け、縦リンク(51)に着脱される着脱ヒッチ(53)を介して作業部(4)を装着し、取り外し状態検出装置(79)により作業部(4)を取り外した状態であることを検出したとき、ローリング装置を所定の標準状態に作動させる制御装置を設けてあることを特徴とする作業機。
【請求項2】
作業部装着状態で着脱ヒッチ(53)が外れないようロックするロック装置(59)を設け、走行車体又は作業部の左右傾斜姿勢を検出する左右傾斜センサ(28)を設け、取り外し状態検出装置(79)により作業部を装着した状態であることを検出し、且つ左右傾斜センサ(28)により走行車体又は作業部が左右傾斜状態であることを検出すると、ロック装置(59)のロックの解除を規制する制御装置を設けてあることを特徴とする請求項1記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−268746(P2010−268746A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124394(P2009−124394)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】