作業車両
【課題】ミッショケースや機体からの振動が直接前後進ペダルや変速センサ、そして、前後進ペダルと変速センサとを連結しているリンク機構に伝わらないようにする。
【解決手段】ミッションケース1に対して緩衝材Kを介してフロアパネル2を装着し、油圧無段変速装置で前後進可能に構成した作業車両において、前記フロアパネル2側には、機体を前後進させる前後進ペダル3,4と、該前後進ペダルの動きを検出する変速センサ5と、前記前後進ペダル及び変速センサとを連結するリンク機構とを設けたことを特徴とする作業車両とする。
【解決手段】ミッションケース1に対して緩衝材Kを介してフロアパネル2を装着し、油圧無段変速装置で前後進可能に構成した作業車両において、前記フロアパネル2側には、機体を前後進させる前後進ペダル3,4と、該前後進ペダルの動きを検出する変速センサ5と、前記前後進ペダル及び変速センサとを連結するリンク機構とを設けたことを特徴とする作業車両とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧無段変速装置を用いて走行するトラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用トラクタ等の油圧駆動車両では、車両の走行方向を前進にする前進ペダルと後進にする後進ペダルを操縦席のフロアパネルに並べて設けて、操縦者が前進ペダルか後進ペダルを適宜に踏込んで車両を前後進させるようにした構成がある。例えば、特開2002−145026号公報や特開2006−177452号公報には、ミッションケースから突出させた油圧無段変速装置の変速軸であるトラニオン軸にメカリンク等で前後進ペダルを直接連結し、前後進の変速を行うようにしている。
【特許文献1】特開2002−145026号公報
【特許文献2】特開2006−177452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の油圧駆動車両の前後進ペダルは、油圧無段変速装置のトラニオン軸を回動させて前後進の速度変更を行うものであるために、微妙な上下の動きで走行速度が変化する。このために、エンジンの振動がミッションケースに伝わって前後進ペダルが振動して一定の踏込み角度に保持して一定速度で走行することが難しい場合がある。
【0004】
そこで、本発明は、ミッショケースの振動が直接前後進ペダルに伝わらないようにして、前後進ペダルを一定の踏込み角度で保持することが容易で安定した速度で走行できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、ミッションケース(1)に対して緩衝材(K)を介してフロアパネル(2)を装着し、油圧無段変速装置(6)で前後進可能に構成した作業車両において、前記フロアパネル(2)側には、機体を前後進させる前後進ペダル(3),(4)と、該前後進ペダル(3),(4)の動きを検出する変速センサ(5)と、前記前後進ペダル(3),(4)及び変速センサ(5)とを連結するリンク機構(R)とを設けたことを特徴とする作業車両とした。
【0006】
この構成で、ミッションケース(1)や機体からの振動は、緩衝材(K)で吸収されるのでフロアパネル(2)の振動は軽減される。そして、この振動の少ないフロアパネル(2)に前後進ペダル(3),(4)と、変速センサ(5)と、前後進ペダル(3),(4)及び変速センサ(5)とを連結するリンク機構(R)を設けて、前後進ペダル(3),(4)を踏込んで油圧無段変速装置(6)を変速する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記変速センサ(5)からの検出信号を制御装置(100)に入力し、該制御装置(100)は前記検出信号に基づきアクチュエータ(8)を作動させて油圧無段変速装置(6)のトラニオン軸(7)を作動させる構成とし、前記アクチュエータ(8)はミッションケース(1)側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両とした。
【0008】
変速センサ(5)からの検出信号により、ハーネスを介してミッションケース(1)側に配置されたアクチュエータ(8)を作動して油圧無段変速装置(6)のトラニオン軸(7)を回動する。このトラニオン軸(7)の動きにより作業車両が前後進側に変速されて走行する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、ミッションケース(1)に対して緩衝材(K)を介して装着したフロアパネル(2)に前後進ペダル(3),(4)を設け、さらに前後進ペダル(3),(4)の動きを検出する変速センサ(5)も設ける構成としているので、前後進ペダル(3),(4)自体の振動が少なくなり、前後進ペダル(3),(4)を一定角度に踏み込んで所定の走行速度での走行を行い易くなる。
【0010】
また、前後進ペダル(3),(4)の動きを検出する変速センサ(5)も振動の少ないフロアパネル(2)に設ける構成としているので、検出誤差が少なくなると共に変速センサ(5)の耐久性も向上するようになる。
【0011】
請求項2の発明によれば、ミッションケース(1)からの振動が機械的なリンク等を介して前後進ペダル(3),(4)に伝わるのを軽減できるようになる。また、前後進ペダル(3),(4)は、トラニオン軸(7)の作動部とメカ的に連結していないために、走行速度変更に伴うトラニオン軸(7)からの走行負荷に伴う反力が前後進ペダル(3),(4)に伝わらず、前後進ペダル(3),(4)を常に一定の踏込み負荷に設定出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1と図2は、油圧駆動車両の実施例であるトラクタの全体を示す図面で、機体前側のエンジン10を搭載した原動部11とこの原動部11から後方へ延びるミッションケース1で車体を構成し、ミッションケース1上に緩衝材を介してフロアパネル2を装架し、フロアパネル2の後側に作業者が搭乗して座る操縦席12を設け、機体の前後中間位置にステアリングハンドル13を立設し、底部のミッションケース1から左右に突設する駆動軸に前後輪14,15を装着している。緩衝材Kはフロアパネル2の前後左右の4カ所設けている。
【0013】
ステアリングハンドル3の右側には前後進レバー16を設け、フロアパネル2上の右側に前後進ペダル3,4を設け、フロアパネル2上の左側にクラッチペダル(図示省略)とブレーキペダル(図示省略)を設けている。フロアパネル2はミッションケース1の上側にマウントゴム等の緩衝材Kを介して取付けていて、左右中央部はミッションケース1の形状に沿って前上がりに形成している。このフロアパネル2の左右側部には、水平なサブフロアパネル94,95を張り出して一体的に取付けている。
【0014】
図示を省略するが、操縦席12の左側には、走行変速段を変更する主変速レバーや機体の後部に装着するロータリ等の作業機を駆動するPTO出力軸の駆動断続を行うPTOクラッチレバー等を設けている。
【0015】
次に、ミッションケース1内の動力伝動機構を図3で説明する。
エンジン10の出力を前後輪14,15とPTO出力軸42,43に増減速して伝動するミッションケース1は、前ケース17、中間ケース18、後ケース19の3つの中空ケースを一体に連結した中空のケースである。
【0016】
前ケース17内でエンジン10の出力軸20に連結したカップリング51へスプライン嵌合した入力軸21が油圧無段変速装置(以下、「HST」という)6の入力軸52に連結して動力が伝動される。
【0017】
HST6は可変容量型の油圧ポンプ53と固定容量型の油圧モータ54で構成され、油圧ポンプ53の可動斜板の傾きを変えることで油圧モータ54の回転を変更する。この可動斜板に連結するトラニオン軸7の回動角度は前記前後進レバー16と前後進ペダル3,4の動きを検出して制御装置100で作動する油圧シリンダ8によって変更されて、油圧モータ54のモータ出力軸24の回転が変速される。油圧ポンプ53に繋がるポンプ出力軸23の回転は入力軸52の回転数と同じである。
【0018】
ポンプ出力軸23の回転は、PTO第一中間軸55からギア34,35,36を介してPTO第二中間軸39へ伝動され、このPTO第二中間軸39に直結したPTO入力軸40からPTOギアケース56,57内のギア伝動41で変速及び動力分岐されて最終的に後PTO出力軸42と中間PTO出力軸43で回転が外部へ取り出されて、ロータリーやモア等の作業機を駆動する。
【0019】
モータ出力軸24の回転出力は、ギア25,26,27を介して中継軸28へ伝動され、この中継軸28に直結のギア軸29を回転する。そして、ギア軸29の各ギアにクラッチギア30を噛み合わせて走行軸31へ変速伝動し、走行軸31のベベルギア32を後輪駆動軸58のベベルギア33に噛み合わせて後輪駆動軸58を駆動する。また、走行軸31の回転は、ギア45とクラッチギア46を介して前輪駆動軸47を適宜に駆動する。
【0020】
後ケース19の後上部にリフトアーム50と油圧シリンダ49を備えた作業機作動ケース48を装着している。
図4と図5に示す如く、前後進ペダル3,4を装着するブラケット60はフロアパネル2の底面側に取り付け、HST6のトラニオン軸7を回動する部材をミッションケース1の中間ケース18に取付け、油圧シリンダ8をミッションケース1の前ケース17に取付けている。
【0021】
次に、前後進ペダル3,4の構成を図6から図9で説明する。
前後進ペダル3,4は、フロアパネル2の底面側に取り付けたブラケット60に水平方向に突出させて設けた枢支軸61に枢支したアーム62,63をフロアパネル2の上面に突出させ、そのアーム62,63の上端に取付けている。アーム62,63は枢支軸61にそれぞれ回動可能にすると共に、枢支軸61の後側でブラケット60に設ける別の枢支軸66に回動可能に枢支したセンサ筒67へリンク64,65で上下から連結している。従って、前後進ペダル3,4は、一方を踏込むと他方が浮き上がる関係に連動することになり、同時に前後進ペダル3,4を踏むことがあれば踏込めず、誤操作の防止になる。
【0022】
フロア2のセンサ筒67には先端にピン84を設けたセンサアーム68を固着し、前後進ペダル3,4の踏込みによってピン84が枢支軸66を中心にして回動する。そして、このピン84の動きを検出するポテンショメータからなる変速センサ5のアーム85が係合している。この変速センサ5は、前進ペダル3と後進ペダル4の動きを一個で検出しているので、コストダウンになる。
【0023】
また、フロア2のセンサ筒67には回動を止めるブレーキ91を設けて、このブレーキ91にばね92とワイヤ93で連結するオートクルーズレバーを入りにすると、センサ筒67を固定してその固定位置での走行速度を保持するようにしている。
【0024】
なお、図示を省略しているが、前後進ペダル3,4を中立位置に戻すばねを設けて、踏込みを止めると中立位置に戻り、踏込み時の踏込み抵抗としている。このばねは前進ペダル3と後進ペダル4が連動しているために、一個でよい。
【0025】
変速センサ5が検出する変速角すなわち前後進ペダル3,4の踏込み程度で制御装置(コントローラ)100によって油圧シリンダ8の制御バルブを作動させてHST6のトラニオン軸7を回動して前後進での走行速度を制御しているのであるが、そのトラニオン軸7の作動構成を図10と図11で説明する。
【0026】
ミッションケース1の中間ケース18から突出するトラニオン軸7にカムプレート71を固着し、中間ケース18に取付けたシフトプレート74に立設した支軸75に枢支した作動アーム73と前記カムプレート71を長さ調整可能なロッド72で連結する。ミッションケース1の前ケース17に取付けた油圧シリンダ8のロッドを作動アーム73の先端に連結している。従って、油圧シリンダ8を伸縮させると、作動アーム73が回動し、それに伴って、ロッド72で連結したカムプレート71が回動し、トラニオン軸7を回動することになる。作動アーム73の先端側に油圧シリンダ8を連結し基部側にロッド72を連結することで油圧シリンダ8のロッドの動きを細かくしてカムプレート71に伝え、トラニオン軸7の回動角度を細かく調整できる。
【0027】
作動アーム73には、センサアーム82を後方へ向けて取り付け、このセンサアーム73のピン83にシフト角センサ81のアーム86を係合させて作動アーム73の回動即ちトラニオン軸7の回動角度を検出するようにしている。
【0028】
トラニオン軸7の中立保持機構は、シフトプレート74に枢支したL字状アーム78の片側アームを中間ケース18に取り付けたブラケット80との間に引掛けるばね79で他側アームに設けるローラ77をカムプレート71の端面に押し付けて、このローラ77がカムプレート71の端面凹部に入り込むとトラニオン軸7が中立位置に戻るようにしている。L字状アーム78のばね79を取付けた側のアーム先端にアーム87に連結したロッド88を連結し、アーム87にばね89とワイヤ90でブレーレバーに連結して、ブレーキレバーを引くと、アーム87とロッド88を介してL字状アーム78を回動し、ローラ77をカムプレート71の凹部に落とし込んでトラニオン軸7を中立位置に戻すようになる。
【0029】
なお、油圧シリンダ8の伸縮を制御する電磁バルブは図示を省略するが、中間ケース18に取付けている。また、油圧シリンダ8を後ケース19側に取付けた構成にすると、飛び跳ねる泥土がシリンダケース内に侵入し難くなる。
【0030】
この実施例では、トラニオン軸7を回動するアクチュエータとして油圧シリンダ8を用いた構成を示しているが、油圧モータでトラニオン軸7を直接回動するような構成でも本発明を実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】油圧駆動車両(トラクタ)の平面図である。
【図2】油圧駆動車両(トラクタ)の側面図である。
【図3】ミッションケースの側断面図である。
【図4】一部の拡大側面図である。
【図5】一部の拡大平面図である。
【図6】一部の拡大側面図である。
【図7】一部の拡大平面図である。
【図8】作用状態を示す一部の側面図である。
【図9】作用状態を示す一部の側面図である。
【図10】一部の拡大側面図である。
【図11】一部の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ミッションケース
2 フロアパネル
3 前進ペダル
4 後進ペダル
5 変速センサ
6 油圧無段変速装置(HST)
7 トラニオン軸
8 アクチュエータ(油圧シリンダ)
100 制御装置(コントローラ)
K 緩衝材
R リンク機構
【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧無段変速装置を用いて走行するトラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用トラクタ等の油圧駆動車両では、車両の走行方向を前進にする前進ペダルと後進にする後進ペダルを操縦席のフロアパネルに並べて設けて、操縦者が前進ペダルか後進ペダルを適宜に踏込んで車両を前後進させるようにした構成がある。例えば、特開2002−145026号公報や特開2006−177452号公報には、ミッションケースから突出させた油圧無段変速装置の変速軸であるトラニオン軸にメカリンク等で前後進ペダルを直接連結し、前後進の変速を行うようにしている。
【特許文献1】特開2002−145026号公報
【特許文献2】特開2006−177452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の油圧駆動車両の前後進ペダルは、油圧無段変速装置のトラニオン軸を回動させて前後進の速度変更を行うものであるために、微妙な上下の動きで走行速度が変化する。このために、エンジンの振動がミッションケースに伝わって前後進ペダルが振動して一定の踏込み角度に保持して一定速度で走行することが難しい場合がある。
【0004】
そこで、本発明は、ミッショケースの振動が直接前後進ペダルに伝わらないようにして、前後進ペダルを一定の踏込み角度で保持することが容易で安定した速度で走行できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、ミッションケース(1)に対して緩衝材(K)を介してフロアパネル(2)を装着し、油圧無段変速装置(6)で前後進可能に構成した作業車両において、前記フロアパネル(2)側には、機体を前後進させる前後進ペダル(3),(4)と、該前後進ペダル(3),(4)の動きを検出する変速センサ(5)と、前記前後進ペダル(3),(4)及び変速センサ(5)とを連結するリンク機構(R)とを設けたことを特徴とする作業車両とした。
【0006】
この構成で、ミッションケース(1)や機体からの振動は、緩衝材(K)で吸収されるのでフロアパネル(2)の振動は軽減される。そして、この振動の少ないフロアパネル(2)に前後進ペダル(3),(4)と、変速センサ(5)と、前後進ペダル(3),(4)及び変速センサ(5)とを連結するリンク機構(R)を設けて、前後進ペダル(3),(4)を踏込んで油圧無段変速装置(6)を変速する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記変速センサ(5)からの検出信号を制御装置(100)に入力し、該制御装置(100)は前記検出信号に基づきアクチュエータ(8)を作動させて油圧無段変速装置(6)のトラニオン軸(7)を作動させる構成とし、前記アクチュエータ(8)はミッションケース(1)側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両とした。
【0008】
変速センサ(5)からの検出信号により、ハーネスを介してミッションケース(1)側に配置されたアクチュエータ(8)を作動して油圧無段変速装置(6)のトラニオン軸(7)を回動する。このトラニオン軸(7)の動きにより作業車両が前後進側に変速されて走行する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、ミッションケース(1)に対して緩衝材(K)を介して装着したフロアパネル(2)に前後進ペダル(3),(4)を設け、さらに前後進ペダル(3),(4)の動きを検出する変速センサ(5)も設ける構成としているので、前後進ペダル(3),(4)自体の振動が少なくなり、前後進ペダル(3),(4)を一定角度に踏み込んで所定の走行速度での走行を行い易くなる。
【0010】
また、前後進ペダル(3),(4)の動きを検出する変速センサ(5)も振動の少ないフロアパネル(2)に設ける構成としているので、検出誤差が少なくなると共に変速センサ(5)の耐久性も向上するようになる。
【0011】
請求項2の発明によれば、ミッションケース(1)からの振動が機械的なリンク等を介して前後進ペダル(3),(4)に伝わるのを軽減できるようになる。また、前後進ペダル(3),(4)は、トラニオン軸(7)の作動部とメカ的に連結していないために、走行速度変更に伴うトラニオン軸(7)からの走行負荷に伴う反力が前後進ペダル(3),(4)に伝わらず、前後進ペダル(3),(4)を常に一定の踏込み負荷に設定出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1と図2は、油圧駆動車両の実施例であるトラクタの全体を示す図面で、機体前側のエンジン10を搭載した原動部11とこの原動部11から後方へ延びるミッションケース1で車体を構成し、ミッションケース1上に緩衝材を介してフロアパネル2を装架し、フロアパネル2の後側に作業者が搭乗して座る操縦席12を設け、機体の前後中間位置にステアリングハンドル13を立設し、底部のミッションケース1から左右に突設する駆動軸に前後輪14,15を装着している。緩衝材Kはフロアパネル2の前後左右の4カ所設けている。
【0013】
ステアリングハンドル3の右側には前後進レバー16を設け、フロアパネル2上の右側に前後進ペダル3,4を設け、フロアパネル2上の左側にクラッチペダル(図示省略)とブレーキペダル(図示省略)を設けている。フロアパネル2はミッションケース1の上側にマウントゴム等の緩衝材Kを介して取付けていて、左右中央部はミッションケース1の形状に沿って前上がりに形成している。このフロアパネル2の左右側部には、水平なサブフロアパネル94,95を張り出して一体的に取付けている。
【0014】
図示を省略するが、操縦席12の左側には、走行変速段を変更する主変速レバーや機体の後部に装着するロータリ等の作業機を駆動するPTO出力軸の駆動断続を行うPTOクラッチレバー等を設けている。
【0015】
次に、ミッションケース1内の動力伝動機構を図3で説明する。
エンジン10の出力を前後輪14,15とPTO出力軸42,43に増減速して伝動するミッションケース1は、前ケース17、中間ケース18、後ケース19の3つの中空ケースを一体に連結した中空のケースである。
【0016】
前ケース17内でエンジン10の出力軸20に連結したカップリング51へスプライン嵌合した入力軸21が油圧無段変速装置(以下、「HST」という)6の入力軸52に連結して動力が伝動される。
【0017】
HST6は可変容量型の油圧ポンプ53と固定容量型の油圧モータ54で構成され、油圧ポンプ53の可動斜板の傾きを変えることで油圧モータ54の回転を変更する。この可動斜板に連結するトラニオン軸7の回動角度は前記前後進レバー16と前後進ペダル3,4の動きを検出して制御装置100で作動する油圧シリンダ8によって変更されて、油圧モータ54のモータ出力軸24の回転が変速される。油圧ポンプ53に繋がるポンプ出力軸23の回転は入力軸52の回転数と同じである。
【0018】
ポンプ出力軸23の回転は、PTO第一中間軸55からギア34,35,36を介してPTO第二中間軸39へ伝動され、このPTO第二中間軸39に直結したPTO入力軸40からPTOギアケース56,57内のギア伝動41で変速及び動力分岐されて最終的に後PTO出力軸42と中間PTO出力軸43で回転が外部へ取り出されて、ロータリーやモア等の作業機を駆動する。
【0019】
モータ出力軸24の回転出力は、ギア25,26,27を介して中継軸28へ伝動され、この中継軸28に直結のギア軸29を回転する。そして、ギア軸29の各ギアにクラッチギア30を噛み合わせて走行軸31へ変速伝動し、走行軸31のベベルギア32を後輪駆動軸58のベベルギア33に噛み合わせて後輪駆動軸58を駆動する。また、走行軸31の回転は、ギア45とクラッチギア46を介して前輪駆動軸47を適宜に駆動する。
【0020】
後ケース19の後上部にリフトアーム50と油圧シリンダ49を備えた作業機作動ケース48を装着している。
図4と図5に示す如く、前後進ペダル3,4を装着するブラケット60はフロアパネル2の底面側に取り付け、HST6のトラニオン軸7を回動する部材をミッションケース1の中間ケース18に取付け、油圧シリンダ8をミッションケース1の前ケース17に取付けている。
【0021】
次に、前後進ペダル3,4の構成を図6から図9で説明する。
前後進ペダル3,4は、フロアパネル2の底面側に取り付けたブラケット60に水平方向に突出させて設けた枢支軸61に枢支したアーム62,63をフロアパネル2の上面に突出させ、そのアーム62,63の上端に取付けている。アーム62,63は枢支軸61にそれぞれ回動可能にすると共に、枢支軸61の後側でブラケット60に設ける別の枢支軸66に回動可能に枢支したセンサ筒67へリンク64,65で上下から連結している。従って、前後進ペダル3,4は、一方を踏込むと他方が浮き上がる関係に連動することになり、同時に前後進ペダル3,4を踏むことがあれば踏込めず、誤操作の防止になる。
【0022】
フロア2のセンサ筒67には先端にピン84を設けたセンサアーム68を固着し、前後進ペダル3,4の踏込みによってピン84が枢支軸66を中心にして回動する。そして、このピン84の動きを検出するポテンショメータからなる変速センサ5のアーム85が係合している。この変速センサ5は、前進ペダル3と後進ペダル4の動きを一個で検出しているので、コストダウンになる。
【0023】
また、フロア2のセンサ筒67には回動を止めるブレーキ91を設けて、このブレーキ91にばね92とワイヤ93で連結するオートクルーズレバーを入りにすると、センサ筒67を固定してその固定位置での走行速度を保持するようにしている。
【0024】
なお、図示を省略しているが、前後進ペダル3,4を中立位置に戻すばねを設けて、踏込みを止めると中立位置に戻り、踏込み時の踏込み抵抗としている。このばねは前進ペダル3と後進ペダル4が連動しているために、一個でよい。
【0025】
変速センサ5が検出する変速角すなわち前後進ペダル3,4の踏込み程度で制御装置(コントローラ)100によって油圧シリンダ8の制御バルブを作動させてHST6のトラニオン軸7を回動して前後進での走行速度を制御しているのであるが、そのトラニオン軸7の作動構成を図10と図11で説明する。
【0026】
ミッションケース1の中間ケース18から突出するトラニオン軸7にカムプレート71を固着し、中間ケース18に取付けたシフトプレート74に立設した支軸75に枢支した作動アーム73と前記カムプレート71を長さ調整可能なロッド72で連結する。ミッションケース1の前ケース17に取付けた油圧シリンダ8のロッドを作動アーム73の先端に連結している。従って、油圧シリンダ8を伸縮させると、作動アーム73が回動し、それに伴って、ロッド72で連結したカムプレート71が回動し、トラニオン軸7を回動することになる。作動アーム73の先端側に油圧シリンダ8を連結し基部側にロッド72を連結することで油圧シリンダ8のロッドの動きを細かくしてカムプレート71に伝え、トラニオン軸7の回動角度を細かく調整できる。
【0027】
作動アーム73には、センサアーム82を後方へ向けて取り付け、このセンサアーム73のピン83にシフト角センサ81のアーム86を係合させて作動アーム73の回動即ちトラニオン軸7の回動角度を検出するようにしている。
【0028】
トラニオン軸7の中立保持機構は、シフトプレート74に枢支したL字状アーム78の片側アームを中間ケース18に取り付けたブラケット80との間に引掛けるばね79で他側アームに設けるローラ77をカムプレート71の端面に押し付けて、このローラ77がカムプレート71の端面凹部に入り込むとトラニオン軸7が中立位置に戻るようにしている。L字状アーム78のばね79を取付けた側のアーム先端にアーム87に連結したロッド88を連結し、アーム87にばね89とワイヤ90でブレーレバーに連結して、ブレーキレバーを引くと、アーム87とロッド88を介してL字状アーム78を回動し、ローラ77をカムプレート71の凹部に落とし込んでトラニオン軸7を中立位置に戻すようになる。
【0029】
なお、油圧シリンダ8の伸縮を制御する電磁バルブは図示を省略するが、中間ケース18に取付けている。また、油圧シリンダ8を後ケース19側に取付けた構成にすると、飛び跳ねる泥土がシリンダケース内に侵入し難くなる。
【0030】
この実施例では、トラニオン軸7を回動するアクチュエータとして油圧シリンダ8を用いた構成を示しているが、油圧モータでトラニオン軸7を直接回動するような構成でも本発明を実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】油圧駆動車両(トラクタ)の平面図である。
【図2】油圧駆動車両(トラクタ)の側面図である。
【図3】ミッションケースの側断面図である。
【図4】一部の拡大側面図である。
【図5】一部の拡大平面図である。
【図6】一部の拡大側面図である。
【図7】一部の拡大平面図である。
【図8】作用状態を示す一部の側面図である。
【図9】作用状態を示す一部の側面図である。
【図10】一部の拡大側面図である。
【図11】一部の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ミッションケース
2 フロアパネル
3 前進ペダル
4 後進ペダル
5 変速センサ
6 油圧無段変速装置(HST)
7 トラニオン軸
8 アクチュエータ(油圧シリンダ)
100 制御装置(コントローラ)
K 緩衝材
R リンク機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケース(1)に対して緩衝材(K)を介してフロアパネル(2)を装着し、油圧無段変速装置(6)で前後進可能に構成した作業車両において、前記フロアパネル(2)側には、機体を前後進させる前後進ペダル(3),(4)と、該前後進ペダル(3),(4)の動きを検出する変速センサ(5)と、前記前後進ペダル(3),(4)及び変速センサ(5)とを連結するリンク機構(R)とを設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記変速センサ(5)からの検出信号を制御装置(100)に入力し、該制御装置(100)は前記検出信号に基づきアクチュエータ(8)を作動させて油圧無段変速装置(6)のトラニオン軸(7)を作動させる構成とし、前記アクチュエータ(8)はミッションケース(1)側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項1】
ミッションケース(1)に対して緩衝材(K)を介してフロアパネル(2)を装着し、油圧無段変速装置(6)で前後進可能に構成した作業車両において、前記フロアパネル(2)側には、機体を前後進させる前後進ペダル(3),(4)と、該前後進ペダル(3),(4)の動きを検出する変速センサ(5)と、前記前後進ペダル(3),(4)及び変速センサ(5)とを連結するリンク機構(R)とを設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記変速センサ(5)からの検出信号を制御装置(100)に入力し、該制御装置(100)は前記検出信号に基づきアクチュエータ(8)を作動させて油圧無段変速装置(6)のトラニオン軸(7)を作動させる構成とし、前記アクチュエータ(8)はミッションケース(1)側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−132309(P2009−132309A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310874(P2007−310874)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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