説明

作業車両

【課題】PTO装置による駆動系と電動モータによる駆動系とが接続された油圧ポンプにより駆動される作業機械を搭載した作業車両において、油圧ポンプ単体を容易に交換可能にする。
【解決手段】本作業車両1cは、バッテリ8と、バッテリを電源とする駆動回路9と、駆動回路により駆動される電動モータ10と、電動モータ10により駆動される油圧ポンプ7と、油圧ポンプにより駆動される作業機械(2,3,4,5等)と、走行用のエンジン25と、エンジンの動力を取り出して油圧ポンプを駆動するPTO装置6とを備え、電動モータのロータ10aの一端が油圧ポンプに連結され、他端がPTO装置に連結されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTO装置による駆動系と電動モータによる駆動系とが接続された油圧ポンプにより駆動される作業機械を搭載した作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られるように、現在、作業車両として様々なものが利用されている。ここで作業車両とは、車両上に作業機械を搭載し、この作業機械により作業(車両の走行を除く)を行う車両である。以下に塵芥収集車の例で紹介するように、PTO装置による駆動系と電動モータによる駆動系とが接続された油圧ポンプにより駆動される作業機械を搭載した作業車両が提案されている。
【0003】
従来、図7に示すような回転式のコンベアパネル(回転板)2及び揺動式のラムパネル(押込板)3を有した塵芥収集車1が利用されている。コンベアパネル2は油圧モータ4により駆動される。ラムパネル3は油圧シリンダ5により駆動される。塵芥収集車1には、油圧モータ4及び油圧シリンダ5を駆動する油圧回路内の駆動源として油圧ポンプが搭載されている。
【0004】
その油圧ポンプの駆動方式として以下の3方式は知られている。
図8に示す塵芥収集車1aは、PTO方式を採用する。
塵芥収集車1aは、車両駆動用エンジン25を稼動させた上で、PTO(Power Take Off:車両駆動用エンジン等から別作業のために動力を取り出す)装置6をオンにし、このPTO装置6によりエンジン25から動力を取り出し、この動力により油圧ポンプ7を回転させ、油圧回路内の作動油の流れを発生させる。
図9及び図10に示す塵芥収集車1bは、電気駆動式を採用する。塵芥収集車1bは、搭載されたバッテリ8を電源としたインバータ9を制御して電動モータ10を駆動し、電動モータ10の回転を油圧ポンプ7に伝達して油圧ポンプ7を回転させ、油圧回路内の作動油の流れを発生させる。
【0005】
さらに、油圧ポンプの回転駆動系としてエンジン駆動系と電気駆動系との双方を備えた方式がある。かかる方式は、特許文献1〜4に記載される。
特許文献1,2には、油圧ポンプの回転駆動系としてエンジン・PTO装置系統とバッテリ・電動モータ系統とが記載された構成ブロック図が記載されている。具体的構成として特許文献1に、油圧ポンプのロータ周りに電動モータを構成してポンプとモータを一体化した構成の回転軸にPTO装置から駆動軸が連結された構成が記載されている。
特許文献3には、エンジンにより駆動される駆動軸が油圧ポンプに接続された構成図が記載されている。かかる構成図によると上記油圧ポンプには電気駆動系も接続されている。特許文献4には、エンジン、発電電動機、油圧ポンプの順で連結された構成が記載されている。特許文献3,4に記載の構成においては、PTO装置は用いられていない。
【0006】
いずれの方式においても、油圧ポンプ7の回転により発生した圧油は、油圧モータ4や油圧シリンダ5を駆動し、コンベアパネル2やラムパネル3を作動させ、塵芥積込等の作業動作を行わせる。そのために塵芥収集車1は、電気信号等により油圧回路中の制御バルブ(3ポジション両ソレノイド型等)を切り替えることで作動油の流れを変え、油圧モータ4や油圧シリンダ5等の油圧アクチュエータの動作を制御する。
【特許文献1】特開平10−37904号公報
【特許文献2】特開2003−146600号公報
【特許文献3】特開平10−42587号公報
【特許文献4】特開2004−150307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、以上の従来技術にあってもさらに次のような問題があった。
以上の従来技術のうち特許文献1,2に示されるような、PTO装置による駆動系と電動モータによる駆動系とが接続された油圧ポンプにより駆動される作業機械を搭載した作業車両においては、振動対策や作業動作の最適化のために、油圧ポンプと電動モータとの適合性のみならず、油圧ポンプとエンジンやPTO装置との適合性をも考慮しなければならない。
油圧ポンプと電動モータが一体化した構成を採用していると、例えば、エンジン・PTO装置によって駆動した場合に共振やエンスト等の不都合が発生したときには、油圧ポンプ及び電動モータを交換せざるを得ない。また、効率化・出力の最適化等の何らかの目的で油圧ポンプを変更したい場合には、必ず油圧ポンプ及び電動モータを交換しなければならない。
また、油圧ポンプの片側にPTO装置を連結し、他の片側に電動モータを連結した構造を採用していると、両方の連結を解かなければならないので、油圧ポンプを交換しづらい。
【0008】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、PTO装置による駆動系と電動モータによる駆動系とが接続された油圧ポンプにより駆動される作業機械を搭載した作業車両において、油圧ポンプ単体を容易に交換可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、バッテリと、
前記バッテリを電源とする駆動回路と、
前記駆動回路により駆動される電動モータと、
前記電動モータにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより駆動される作業機械と、
走行用のエンジンと、
前記エンジンの動力を取り出して前記油圧ポンプを駆動するPTO装置とを備え、
前記電動モータのロータの一端が前記油圧ポンプに連結され、他端が前記PTO装置に連結されてなる作業車両である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記PTO装置の作動スイッチがオン操作されたことに基づき、前記電動モータへの駆動信号の出力を阻止し、前記電動モータの作動スイッチがオン操作されたことに基づき、前記PTO装置への駆動信号の出力を阻止する電気回路を備える請求項1に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動モータの回転出力が油圧ポンプに伝達されるとともに、PTO装置の回転出力がロータを介して前記油圧ポンプに伝達される。
また本発明によれば、電動モータから油圧ポンプを取り外すことにより油圧ポンプを交換することができ、電動モータとともに交換する必要もなく、電動モータから取り外す以外にPTO装置との連結を解く作業はないため、油圧ポンプ単体を容易に交換することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る塵芥収集車の概略平面図である。本塵芥収集車1cは、車両駆動用エンジン25と、PTO装置6と、油圧ポンプ7と、バッテリ8と、インバータ9と、電動モータ10とを搭載する。また、本塵芥収集車1cは、エンジン25、PTO装置6及び電動モータ10をそれぞれ始動・停止操作するエンジンキー及び作動スイッチが構成された操作部31を備えている。
【0014】
本塵芥収集車1cは、PTO装置6の作動スイッチ(操作部31内)が操作者によってオフ操作され、電動モータ10の作動スイッチ(操作部31内)が操作者によってオン操作されると、PTO装置6をオフにし、バッテリ8を電源としたインバータ9を制御して電動モータ10を駆動し、電動モータ10の回転を油圧ポンプ7に伝達して油圧ポンプ7を回転させ、油圧回路内の作動油の流れを発生させる。
本塵芥収集車1cは、PTO装置6の作動スイッチ(操作部31内)が操作者によってオン操作され、電動モータ10の作動スイッチ(操作部31内)が操作者によってオフ操作されると、PTO装置6をオンにし、エンジン25が稼働中であれば、PTO装置6によりエンジン25から動力を取り出し、この動力により油圧ポンプ7を回転させ、油圧回路内の作動油の流れを発生させる。
油圧ポンプ7の回転により発生した圧油は、油圧モータ4や油圧シリンダ5を駆動し、コンベアパネル2やラムパネル3を作動させ、塵芥積込等の作業動作を行わせる。そのために本塵芥収集車1cは、電気信号等により油圧回路中の制御バルブ(3ポジション両ソレノイド型等)を切り替えることで作動油の流れを変え、油圧モータ4や油圧シリンダ5等の油圧アクチュエータの動作を制御する。
【0015】
PTO装置6の作動スイッチを31aとし、電動モータ10の作動スイッチを31bとして、図2に示すような電気回路32を、本塵芥収集車1cの油圧制御システムに組み込んでも良い。この場合、かかる電気回路32は、PTO装置6の作動スイッチ31aがオン操作されたことに基づき、電動モータ10への駆動信号の出力を阻止し、電動モータ10の作動スイッチ31bがオン操作されたことに基づき、PTO装置6への駆動信号の出力を阻止する。
したがって、電気回路32を適用した場合は、油圧ポンプ7に対するPTO装置6による駆動系と電動モータ10による駆動系の双方が同時に作動することはない。電動モータ10により油圧ポンプ7を駆動したい場合は、電動モータ10の作動スイッチ31bをオンにし、PTO装置6の作動スイッチ31aをオフにしなければならない。PTO装置6により油圧ポンプ7を駆動したい場合は、電動モータ10の作動スイッチ31bをオフにし、PTO装置6の作動スイッチ31aをオンにしなければならない。
【0016】
続いて、PTO装置6、油圧ポンプ7及び電動モータ10の動力伝達系の連結構造につき説明する。互いに連結された状態の油圧ポンプ7及び電動モータ10の側面図を図3に、斜視図を図4に、断面図を図5に示す。本塵芥収集車1cの裏面斜視図を図6に示す。 図1、図3〜図6からわかるように、電動モータ10のロータ10aの軸の一端が油圧ポンプ7に連結されている。具体的には、ロータ10aと油圧ポンプ7の回転入力軸とが一体回転可能に連結される。したがって、電動モータ10の作動時、ロータ10aの回転が油圧ポンプ7に伝達されて油圧ポンプ7が作動する。
ロータ10aの軸の他端は、伝達軸33を介してPTO装置6に連結されている。具体的には、伝達軸33とロータ10aとが一体回転可能に連結される。したがって、PTO装置6の作動時、PTO装置6の回転がロータ10aを介して油圧ポンプ7に伝達され、油圧ポンプ7が作動する。
【0017】
以上のようなPTO装置6、油圧ポンプ7及び電動モータ10の動力伝達系の連結構造を採用するので、電動モータ10から油圧ポンプ7を取り外すことにより油圧ポンプ7を交換することができ、電動モータ10とともに交換する必要もなく、電動モータ10から取り外す以外にPTO装置6との連結を解く作業はないため、油圧ポンプ7単体を容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る塵芥収集車の概略平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電気回路図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る油圧ポンプ7及び電動モータ10の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る油圧ポンプ7及び電動モータ10の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る油圧ポンプ7及び電動モータ10の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る塵芥収集車の裏面斜視図である。
【図7】塵芥収集車を示す斜視図である。
【図8】PTO方式の塵芥収集車を示す概略平面図である。
【図9】電気駆動式塵芥収集車を示す概略平面図である。
【図10】電気駆動式塵芥収集車を示す左側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 塵芥収集車
1a 塵芥収集車(従来例)
1b 塵芥収集車(従来例)
1c 塵芥収集車(本発明)
2 コンベアパネル
3 ラムパネル
4 油圧モータ
5 油圧シリンダ
6 PTO装置
7 油圧ポンプ
8 バッテリ
9 インバータ
10a ロータ
10 電動モータ
25 車両駆動用エンジン
31a 作動スイッチ
31b 作動スイッチ
31 操作部
32 電気回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
前記バッテリを電源とする駆動回路と、
前記駆動回路により駆動される電動モータと、
前記電動モータにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより駆動される作業機械と、
走行用のエンジンと、
前記エンジンの動力を取り出して前記油圧ポンプを駆動するPTO装置とを備え、
前記電動モータのロータの一端が前記油圧ポンプに連結され、他端が前記PTO装置に連結されてなる作業車両。
【請求項2】
前記PTO装置の作動スイッチがオン操作されたことに基づき、前記電動モータへの駆動信号の出力を阻止し、前記電動モータの作動スイッチがオン操作されたことに基づき、前記PTO装置への駆動信号の出力を阻止する電気回路を備える請求項1に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−262759(P2009−262759A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114736(P2008−114736)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】