説明

作業車両

【課題】簡単な構成で、ボンネットの内部においてラジエータおよびエンジンからの熱により温められる前の外気をエンジンのエアクリーナに導入することができる作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両(1)において、ラジエータカバー38は、ボンネット17の通風口17b側に向かって開口する右側開口部90(第一の開口部)と、エンジン30側に向かって開口する第一左側開口部57(第二の開口部)と、ラジエータ33と反対側に向かって膨出する膨出部55とを有し、エンジン30のエアクリーナ32から延出される第二吸気配管32b(吸気配管)の延出端部を、膨出部55に挿通させて支持し、右側開口部90(第一の開口部)に臨ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関し、特に作業車両のラジエータを被覆するラジエータカバーの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両において、ラジエータをラジエータカバーで被覆する技術は公知となっている。
特許文献1に記載の技術において、ラジエータは、ボンネットの内部で、空気を前記ラジエータに向けて吸気するラジエータファンとともに、前記ラジエータの後方に配置されるラジエータカバーによって後方から被覆される。そして、前記ラジエータおよび前記ラジエータカバーは、板状部材を上下左右方向に組み合わせて形成された枠体などからなるラジエータブラケットを介して機体フレームに取り付けられる。前記ラジエータカバーの後方には、エンジンがクランク軸を前後方向へ向けて配設され、前記エンジンの上方には、エアクリーナが配設される。このような構成により、前記ラジエータファンの回転駆動により前記ボンネットの外部から内部に吸気された空気は、前記ラジエータを冷却し、前記ラジエータカバーによって後方へ案内されて、前記エンジンを冷却する。そして、前記エンジンを冷却した後の空気は、前記エアクリーナによって吸気されて、前記エンジンに吸気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−168688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、前記エアクリーナに吸気される空気は、前記ラジエータファンの回転駆動により前記ボンネットの外部から内部に吸気された空気であって、且つ前記ラジエータおよび前記エンジンを冷却した後の温められた空気である。空気の温度が上がれば上がるほど空気の体積が大きくなり酸素濃度が低下するため、温められた空気がエンジンに吸気されると、前記エンジンの燃焼効率が低下したり、不完全燃焼が発生したりする場合があった。
また、前記ボンネットの外部の空気を吸気するために、吸気配管を前記エアクリーナに設けると、前記吸気配管の吸気口を前記ボンネットの外部へ突出させるための開口部を前記ボンネットに設けたり、前記吸気配管を固定するための固定部材を設けたりする必要がある。よって、前記ボンネットやその内部が複雑な構成となり、その結果製造コストが増加する場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な構成で、ボンネットの内部においてラジエータおよびエンジンからの熱により温められる前の外気をエンジンのエアクリーナに導入することができる作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、クランク軸を機体の進行方向に対して横向きとした状態で配置されるエンジンと、前記エンジンの横一側方に配置されるラジエータと、前記ラジエータを覆うラジエータカバーと、前記エンジンと前記ラジエータとの間に配置されて、前記エンジンにより回転駆動される冷却ファンと、前記エンジン、前記ラジエータを内部に収容する前記ラジエータカバー、及び前記冷却ファンを覆い、前記ラジエータと横方向に対向する部分に通風口を有するボンネットとを備える作業車両において、前記ラジエータカバーは、前記ボンネットの通風口側に向かって開口する第一の開口部と、前記エンジン側に向かって開口する第二の開口部と、前記ラジエータと反対側に向かって膨出する膨出部とを有し、前記エンジンのエアクリーナから延出される吸気配管の延出端部を、前記膨出部に挿通させて支持し、前記第一の開口部に臨ませるものである。
【0008】
請求項2においては、前記ラジエータカバーは、前記冷却ファンを囲繞するシュラウドと一体的に構成されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記ラジエータカバーの前記ボンネットに近接する側の外周端部には、前記ボンネットと前記ラジエータカバーとの間をシールするシール部材が設けられるものである。
【0010】
請求項4においては、前記ラジエータは、給水部を前記ラジエータカバーの上側部から上方へ突出して、リザーブタンクから延出される給水配管の延出端部を前記給水部における前記ラジエータカバーの膨出部と反対側に接続するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、エンジンにより冷却ファンが回転駆動されたとき、空気が外部からボンネットの通風口およびラジエータカバーの第一の開口部を通じて当該ラジエータカバーの内部に吸入され、ラジエータを通過した後に第二の開口部を通じてエンジン側へ流れるとともに、ラジエータを通過する前に吸気配管を通じてエアクリーナに導入されることとなる。したがって、ラジエータカバーと吸気配管を用いた簡単な構成で、ボンネットの内部においてラジエータおよびエンジンからの熱により温められる前の空気をエンジンのエアクリーナに導入することができる。
【0013】
請求項2においては、シュラウドをラジエータカバーと別部材として設ける必要がない。したがって、部材点数が削減されて、製造コストの低減化を図ることができる。
【0014】
請求項3においては、ボンネットとラジエータカバーとの間がシール部材によりシールされるので、ラジエータの冷却効果を高めることができる。また、エンジンの冷却効果を高めることができる。
【0015】
請求項4においては、リザーブタンクに接続するための給水配管を、ラジエータカバーに干渉することなく、ラジエータに接続することが可能となる。したがって、膨出部を切り欠いたり、小さく設計したりする必要が無いので、前記膨出部を最適な形状および大きさで構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体構成を示す側面図。
【図2】同じく、全体構成を示す平面図。
【図3】同じく、ボンネットを示す前方斜視図。
【図4】同じく、ボンネットの内部の機器類を示す前方斜視図。
【図5】同じく、ボンネットの内部の機器類を示す後方斜視図。
【図6】同じく、ラジエータとラジエータカバーとを示す前方斜視図。
【図7】同じく、ラジエータカバーと冷却ファンとを示す平面図。
【図8】同じく、ラジエータカバーを示す側面図。
【図9】同じく、ボンネットとラジエータカバーとの取り付け構造の概略を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の一実施形態に係る田植機1の全体構成について、図1および図2を用いて説明する。なお、本実施形態において、田植機1は八条植えの田植機とするが、これは特に限定するものではなく、例えば六条植えや十条植えの田植機であってもよい。
【0018】
図1に示すように、田植機1は、走行部10と植付部40とを有し、走行部10により走行しながら、植付部40により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付部40は、走行部10の後方に配置されて、この走行部10の後部に昇降機構70を介して昇降可能に連結される。
【0019】
走行部10においては、エンジン30が車体フレーム14の前部上に設けられて、ボンネット17により上方および側方から覆われる。エンジン30の右側方にはラジエータ33およびラジエータカバー38が配設される。ミッションケースが車体フレーム14の前部に支持されて、エンジン30の下方に配置される。
【0020】
フロントアクスルケース11が車体フレーム14の前部に支持され、前車輪15が当該フロントアクスルケース11の左右両側に取り付けられる。リアアクスルケース12が車体フレーム14の後部に支持され、後車輪16が当該リアアクスルケース12の左右両側に取り付けられる。
【0021】
そして、動力伝達機構が、エンジン30の動力が前記ミッションケースを介して左右の前車輪15と左右の後車輪16とにそれぞれ伝達されて、これらの前車輪15および後車輪16が回転駆動するように構成される。これにより、走行部10が前進または後進走行可能とされる。
【0022】
走行部10において、車体フレーム14の前後中途部に運転操作部13が設けられる。運転操作部13の前部には、操向操作用の環状の操向ハンドル20や、変速操作用の変速ペダルなどが配置される。運転操作部13の後部には、運転席21が操向ハンドル20の後方に位置するように配置される。
【0023】
そのうえ、運転操作部13の操向ハンドル20や運転席21の周りに、ダッシュボード19や、一部を乗降用ステップとする車体カバー18や、その他のレバーやスイッチなどの操作具が配置される。これらの操向ハンドル20、変速ペダル、およびその他の操作具によって、走行部10および植付部40に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。
【0024】
走行部10において、予備苗載台25が車体フレーム14の前部の左右両側から立設された各取付フレーム24に取り付けられて、ボンネット17の左右両側方に配置される。そして、予備苗が予備苗載台25に載置されて、植付部40への苗補給が可能とされる。
【0025】
走行部10において、施肥装置23が車体フレーム14の後部に支柱フレーム22などを介して支持されて、運転操作部の運転席21の後方に配置される。施肥装置23は、エンジン30からの動力により作動されて、圃場に施肥を行うことができるように構成される。
【0026】
植付部40においては、植付ミッションケースが植付フレーム49の下部中央付近に支持され、伝動軸ケースが当該植付ミッションケースから左右両側方に延設される。四つの植付伝動ケース46がそれぞれ前記伝動軸ケースから後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。
【0027】
ロータリケース44が各植付伝動ケース46の後端部左右両側に回動自在に支持される。ロータリケース44は植付条数と同数、即ち本実施形態では八つ備えられる。そして、二つの植付爪45が、ロータリケース44の回転支点を挟むように、このロータリケース44の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0028】
苗載台41が植付伝動ケース46の上方に前高後低の傾斜状態で配置されて、植付フレーム49の後部に上下のガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台41は、図示せぬ横送り機構により左右往復横送り可能とされる。
【0029】
複数条(8条)の苗マット載置部を備える苗載台41は、それぞれの下端側が一つのロータリケース44と対向するように、左右方向に並べられる。そして、苗マットが各苗載台41に載置されて、ロータリケース44の回転時に植付爪45により1株の苗が当該苗載台41上の苗マットから切り取り可能とされる。
【0030】
条数に合わせた苗縦送りベルト47が苗載台41に設けられる。苗縦送りベルト47は、苗載台41が左右往復横送りのストローク端に到達するごとに、縦送り機構により苗載台41上の苗マットを下方へ向かって縦送りするように作動可能とされる。
【0031】
そして、エンジン30の動力が植付ミッションケースなどを介して各ロータリケース44に伝達されて、このロータリケース44が回転作動するように構成される。これにより、ロータリケース44の回転作動にともなって、二つの植付爪45が交互に苗を苗載台41上の苗マットから取り出して圃場に植付可能とされる。
【0032】
同時に、エンジン30の動力が植付ミッションケースなどを介して横送り機構および縦送り機構に伝達されて、苗載台41が横送り機構により左右往復横送りされ、苗載台41上の苗マットが載台の左右往復横送りに応じて縦送り機構により苗縦送りベルト47を介して下方へ向けて縦送りされるように構成される。これにより、苗載台41上の苗マットが植付爪45に対して適切な位置に移動される。
【0033】
ここで、エンジン30から施肥装置23、ロータリケース44、横送り機構および縦送り機構に動力を伝達するための動力伝達機構は、植付クラッチを含み、植付クラッチの断接に応じて、エンジンの動力が苗縦送りベルト47とロータリケース44とに伝達され、または、伝達されないように構成される。
【0034】
植付部40においては、また、中央2条分ずつの圃場面を整地する左右のセンターフロート42と、左右2条分ずつの圃場面を整地する左右のサイドフロート43とが、それぞれの前部側が後部側を回動支点として上下動自在となるように植付フレーム49側に支持されて、植付伝動ケース46の下方に配置される。
【0035】
植付部40においては、また、線引きマーカ48が植付フレーム49の下部の左右両側に回動可能に支持される。左右の各線引きマーカ48は、その基端側を回動支点として、上方へ向かって回動されることにより収納され、この収納状態から下方へ向かって回動されることにより先端側を左または右側方へ突出させて、圃場に線引きを行うことができるように構成される。
【0036】
また、前述の昇降機構70が走行部10と植付部40との間に設けられる。具体的には、トップリンク71とロワリンク72とが走行部10と植付部40との間に架設され、昇降用シリンダがロワリンク72と走行部10との間に連結される。そして、この昇降用シリンダの伸縮動作によって、植付部40が走行部10に対して上下方向に回動可能、即ち昇降可能とされる。
【0037】
次に、ボンネット17の構成について、さらに詳しく説明する。
【0038】
図3に示すように、ボンネット17は、中空状の部材であり、側面視で前低後高に傾斜して全体的に先細り形状に形成される。ボンネット17は、図1に示すように、車体フレーム14の前部の上に載置される。
ボンネット17の内部には、図4および図5に示すように、エンジン30やラジエータ33やラジエータカバー38などの機器類が収納される。また、ボンネット17の後上部には、ダッシュボード19が設けられる。ダッシュボード19の上面には、操作パネル19aが配置される。操作パネル19aには、レバーやスイッチなどの操作具や表示装置が配置される。
【0039】
また、ボンネット17は、通風口17bを有する。
通風口17bは、ボンネット17の左右両側壁の下部に左右方向へ開口されて、横長の多角形状に形成される。ネットなどの通気性を有して塵埃等を除去する部材であるカバー26が、通風口17bを完全に覆うように、ボンネット17に取り付けられる。
通風口17bは、ボンネット17における空気の吸排気口であり、ボンネット17の内部と外部とを連通させる。後述の冷却ファン31が回転駆動することによって、空気が左右一側の通風口17bを通じてボンネット17の外部から内部へ吸入され、その吸入された空気が左右他側の通風口17bを通じてボンネット17の外部へ排気される。なお、本実施形態においては、右側の通風口17bが空気の吸気口となり、左側の通風口17bが空気の排出口となる。
【0040】
次に、図4から図6を用いて、ボンネット17の内部の構成について説明する。
【0041】
図5に示すように、ボンネット17の内部においては、エンジン30が、図示せぬクランク軸を機体の進行方向に対して横方向、すなわち左右方向へ向けた状態で、前後左右の略中央に配置されて、車体フレーム14の上に載置される。図4に示すように、エンジン30の前記クランク軸の左側端部には、フライホイール30aが固着される。
【0042】
図4および図5に示すように、エンジン30の上方には、エアクリーナ32が長手方向を前後方向として配設される。エアクリーナ32は、その内部に取り付けられたフィルタにより、エンジン30が吸気する空気中のホコリや異物を浄化するものである。
第一吸気配管32aの一端側がエアクリーナ32の後端部に接続され、第一吸気配管32aの他端側がエンジン30に接続されて、エアクリーナ32がエンジン30と第一吸気配管32aを介して連通される。また、第二吸気配管32bの一端側がエアクリーナ32の右側部に接続され、第二吸気配管32bの他端側が後述するラジエータカバー38に挿設される。
【0043】
図5および図6に示すように、エンジン30の右側方には、ラジエータ33がボンネット17の右側の通風口17bに隣接するように配置される(図4参照)。ラジエータ33は、ラジエータカバー38により被覆された状態で、ラジエータ33の下部に設けられた図示せぬ取付部材を介して、車体フレーム14に固定される。
ラジエータ33は、エンジン30の冷却水を冷却するものであり、冷却水が循環する多数のパイプが張り巡らされたラジエータコア34を備える。ラジエータ33の上部には、円筒状に形成された冷却水の給水部35が配設される。給水部35は、ラジエータカバー38の上側部53の切欠部56から上方へ突設される。給水部35の上端部には、キャップ36が着脱可能に取り付けられる。図6に示すように、給水部35の側部には、第三給水配管39aを取り付けるための取付部37が前方へ向けて突設される。第三給水配管39aの一端側が給水部35の取付部37に接続され、第三給水配管39aの他端側がリザーバタンク39に接続されて、ラジエータ33がリザーバタンク39と第三給水配管39aを介して連通される。これにより、ラジエータ33内の冷却水が所定量となるようになっている。
【0044】
図4に示すように、ラジエータ33とエンジン30との間には、冷却ファン31が配置される。
冷却ファン31は、その駆動軸がエンジン30のクランク軸とプーリ、ベルトを介して連動連結されて、クランク軸により回転駆動可能とされる。冷却ファン31の回転駆動により、ボンネット17の外部の空気がボンネット17の内部に右側の通風口17bを通じて吸入され、その吸入された空気が冷却風としてラジエータカバー38の内部、エンジン30の周囲を流れた後、ボンネット17の内部から外部へ左側の通風口17bを通じて排出される。
【0045】
次に、図6から図9を用いて、ラジエータカバー38の構成について、さらに詳細に説明する。
【0046】
ラジエータカバー38は、図6に示すように、ラジエータ33の周囲に配置され、ラジエータ33の前後、左側部の一部、上部、及び下部の一部を被覆するものである。図4に示すように、ラジエータカバー38は、右側面全体の形状をボンネット17の右側壁の内周面形状に略沿った形状に形成されて、エンジン30の右側方でラジエータ33を被覆した状態で、ボンネット17との間に隙間が生じないように、その右側面をボンネット17の右側壁に密接させる。
ラジエータカバー38は、カバー本体50と、シュラウド61と、弾性部材62などにより構成される。
【0047】
カバー本体50は、図6から図8に示すように、ラジエータカバー38の外郭を構成する部材であり、前側部51と、後側部52と、上側部53と、左側部54とにより、右側部、左側部54の一部および下側部を開口した略箱状に形成される(以下、カバー本体50の右側部に形成された開口を右側開口部90と称する)。
カバー本体50は、前後・上下・左右方向の長さをラジエータ33の前後・上下・左右の長さよりもそれぞれ若干長く設定して、その内部にラジエータ33を収容する。
【0048】
図7に示すように、カバー本体50の上側部53は、前側部51の上端部と後側部52の上端部とに連続して前後方向に延長される。このカバー本体50の上側部53には、切欠部56と、膨出部55とが備えられる。
【0049】
切欠部56は、カバー本体50の上側部53の右側を平面視で略矩形に切り欠いて形成されて、上側部53の前後方向略中央に配置される。前述したように、切欠部56からは、ラジエータ33の円筒状に形成された給水部35が上方へ向けて突出される。
【0050】
膨出部55は、カバー本体50の後上部にラジエータ33と反対方向、かつクランク軸の軸線方向に対して直交する方向へ膨出する、具体的には上方へ向けて膨出するように形成されて、エアクリーナ32の右側方にこれと対向して配置される。膨出部55の上面は、上側部53の切欠部56の後端付近から後上方へ向けて延出され、その延出端部で屈曲された後、上側部53の後端まで後方へ向けて延出される。こうして、カバー本体50の上側部53は、前部が低く後部が膨出部55により高くなるように略階段状に形成されて、図9に示すように、側面視で前低後高に傾斜したボンネット17の上部内周面に沿って配置される。
【0051】
図6および図7に示すように、切欠部56の上方においては、第三給水配管39aを取り付けるための取付部37が、給水部35の側部から前方へ向けて、すなわち膨出部55と反対側へ向かって突出される。
このような構成により、リザーブタンク39に接続するための第三給水配管39aを、ラジエータカバー38(特に、膨出部55)に干渉することなく、ラジエータ33に取付部37を介して接続することが可能となる。したがって、膨出部55を切り欠いたり、小さく設計したりする必要が無いので、膨出部55を最適な形状および大きさで構成することができる。
【0052】
カバー本体50の側面(左側部54)には、図8に示すように、複数の左側開口部、すなわち第一左側開口部57と、第二左側開口部58と、第三左側開口部59と、および第四左側開口部60とが備えられる。
【0053】
第一左側開口部57は、冷却ファン31の回転駆動によりラジエータカバー38の内部にボンネット17の通風口17bを通じて吸入された空気をエンジン30へ向けて通過させるための開口部である。
第一左側開口部57は、ラジエータカバー38の膨出部55を含む全体の左側部54に左右方向へ向けて側面視で略円形状に開口される。第一左側開口部57の開口縁部からは、後述の冷却ファン31を囲繞するシュラウド61が左方へ延出される。このシュラウド61の内部に冷却ファン31が配置される。ここで、第一左側開口部57の内径は、冷却ファン31の外径よりも長く設定される。
【0054】
第二左側開口部58は、第二吸気配管32bと挿通させて支持する開口部である。
第二左側開口部58は、膨出部55における左側部54に左右方向へ向けて側面視で略円形状に開口される。第二左側開口部58は、ラジエータカバー38に収容されたラジエータ33よりも上方に位置して、ボンネット17の通風口17b側から見て、ラジエータ33と重ならないようにに配置される。そして、エアクリーナ32からクランク軸の軸線方向と略平行に延出された第二吸気配管32bの延出端部(他端側)が、当該第二左側開口部58にエンジン30側からラジエータカバー38内に向かって挿通されて、膨出部55内に突出した状態で右側開口部90に臨むように支持される(図5参照)。これにより、ラジエータカバー38の内部とエアクリーナ32とが第二吸気配管32bを介して連通されて、空気が、冷却ファン31の回転駆動によりラジエータカバー38の内部にボンネット17の通風口17bおよびラジエータカバー38の右側開口部90を通じて吸入されたとき、ラジエータ33を通過する前に第二吸気配管32bを通じてエアクリーナ32に導入されることとなる。
【0055】
第三・第四左側開口部59・60は、それぞれ冷却水用の配管59a・60aと挿通させる開口部である。
第三左側開口部59は、左側部54の第一左側開口部57の前上方に左右方向へ向けて側面視で略円形状に開口される。図7に示すように、ラジエータ33に設けられた第一給水配管59aの取付部33aが第三左側開口部59から左側方へ向けて突出する。そして、第一給水配管59aの一端側が取付部33aに接続され、第一給水配管59aの他端側がエンジン30と接続される。
第四左側開口部60は、左側部54の第一左側開口部57の後下方に左右方向へ向けて側面視で略円形状に開口される。ラジエータ33に設けられた第二給水配管60aの図示せぬ取付部が第四左側開口部60から左側方へ向けて突出する。そして、第二給水配管60aの一端側が取付部に接続され、第二給水配管60aの他端側がエンジン30と接続される。
このような構成により、ラジエータ33とエンジン30とが2本の配管59a・60aを介して連通されて、エンジン30を冷却した後の冷却水が第一給水配管59aを介してエンジン30からラジエータ33に流入し、ラジエータ33により冷却やされた冷却水が、第二給水配管60aを介してラジエータ33からエンジン30へ流入する。
【0056】
シュラウド61は、冷却ファン31の回転駆動によって、ラジエータ33からエンジン30側へ向けて、送風が乱れないように空気を効率よく案内するものである。
シュラウド61は、左右方向の円筒状に形成され、右側開口部の開口縁部をカバー本体50の第一左側開口部57の開口縁部に一体的に固定し、左側開口部をエンジン30に臨むように配置して構成される。シュラウド61は、図7に示すように、平面視で冷却ファン31の一部、具体的には略右側半分を被覆するように配置される。
【0057】
このような構成により、簡単な構成で冷却ファン31が回転駆動した場合に、ラジエータ33を通過した空気を集中させてエンジン30側へ送るようにしている。したがって、簡単な構成でエンジン30の冷却効果を高めることができる。また、冷却ファン31によりエンジン30側へ送られる空気は、ラジエータカバー38の内部の空気に限定するようにしている。したがって、ラジエータカバー38の内部の空気は、第一左側開口部57を通じて外部(エンジン30側)へ効率良く排出することができるので、これに応じてボンネット17の外部の空気をラジエータカバー38の内部へ通風口17bおよび右側開口部90を通じて効率良く吸入することができる。その結果、簡単な構成でラジエータ33の冷却効果を高めることができる。
また、シュラウド61をラジエータカバー38と別部材として設ける必要がない。したがって、部材点数が削減されて、製造コストの低減化を図ることができる。
【0058】
弾性部材62は、スポンジやゴム等の素材からなるシール部材である。
弾性部材62は、カバー本体50の前側部51、上側部53、および後側部52のそれぞれ右側端部に(換言すれば、右側開口部90の開口縁部に)、すなわちカバー本体50のボンネット17に近接する側の外周端部である右側端部を取り囲むように取り付けられる。
弾性部材62は、ボンネット17の右側壁と隙間なく接触して、カバー本体50とボンネット17とを密着させる。その結果、弾性部材62が取り付けられるカバー本体50の前側部51、上側部53および後側部52と、ボンネット17の右側壁との間は、通気しないようにシールされた状態(ラジエータカバー38の外部であってボンネット17の内部の空気が、ラジエータカバー38の内部へ吸気されない状態)となる。
【0059】
このような構成により、ラジエータカバー38の外部であってボンネット17の内部の空気(エンジン30や図示せぬ油圧配管などを冷却した後の空気)が、ボンネット17の内部を循環してラジエータカバー38と、ボンネット17の右側壁との間からラジエータカバー38の内部へ吸気されることを防止することができる。したがって、ラジエータ33やエンジン30を冷却したあとの(温度が上がった)空気によって、再びラジエータ33やエンジン30を冷却することを防止することができる。その結果、ラジエータ33の冷却効果を高めることができる。
また、冷却ファン31によって、ボンネット17の内部に右側の通風口17bを通じて吸入されたボンネット17の外部の空気は、ボンネット17の右側壁とラジエータカバー38の右側端部との隙間から、ラジエータカバー38の外部であってボンネット17の内部へ漏れることがない。つまり、ラジエータカバー38の内部に吸入されたボンネット17の外部の空気を確実にエンジン30へと導くことができる。その結果、エンジン30の冷却効果を高めることができる。
【0060】
以上のような構成の田植機1は、クランク軸を機体の進行方向に対して横向きとした状態で配置されるエンジン30と、前記エンジン30の横一側方に配置されるラジエータ33と、前記ラジエータ33を覆うラジエータカバー38と、前記エンジン30と前記ラジエータ33との間に配置されて、前記エンジン30により回転駆動される冷却ファン31と、前記エンジン30、前記ラジエータ33を内部に収容する前記ラジエータカバー38、及び前記冷却ファン31を覆い、前記ラジエータ33と横方向に対向する部分に通風口17bを有するボンネット17とを備える作業車両において、前記ラジエータカバー38は、前記ボンネット17の通風口17b側に向かって開口する右側開口部90(第一の開口部)と、前記エンジン30側に向かって開口する第一左側開口部57(第二の開口部)と、前記ラジエータ33と反対側に向かって膨出する膨出部55とを有し、前記エンジン30のエアクリーナ32から延出される第二吸気配管32b(吸気配管)の延出端部を、前記膨出部55に挿通させて支持し、前記右側開口部90(第一の開口部)に臨ませるものである。
【0061】
このような構成により、エンジンにより冷却ファン31が回転駆動されたとき、空気が外部からボンネット17の通風口17bおよびラジエータカバー38の右側開口部90(第一の開口部)を通じて当該ラジエータカバー38の内部に吸入され、ラジエータ33を通過した後に第一左側開口部57(第二の開口部)を通じてエンジン30側へ流れるとともに、ラジエータ33を通過する前に第二吸気配管32b(吸気配管)を通じてエアクリーナ32に導入されることとなる。したがって、ラジエータカバー38と第二吸気配管32b(吸気配管)を用いた簡単な構成で、ボンネット17の内部においてラジエータ33およびエンジン30からの熱により温められる前の空気をエンジン30のエアクリーナ32に導入することができる。
【0062】
また、前記田植機1において前記ラジエータカバー38は、前記膨出部55を前記ボンネット17の内周面に沿って前記クランク軸の軸線方向に対して直交する方向へ膨出させて、前記膨出部55を含む全体の右側開口部90(第一の開口部)側を前記ボンネット17の内周面に密接させるものである。
【0063】
このような構成により、ラジエータカバー38がその右側開口部90(第一の開口部)側とボンネット17の内周面との間に隙間が生じないように配置され、ボンネット17の通風口17bから吸入された空気のみが第二吸気配管32b(吸気配管)を通じてエアクリーナ32に導入されることとなる。したがって、簡単な構成で、ボンネット17の内部においてラジエータ33およびエンジン30からの熱により暖められる前の空気をエンジン30のエアクリーナ32に効率良く導入することができる。
【0064】
また、田植機1において前記ラジエータカバー38は、前記冷却ファン31を囲繞するシュラウド61と一体的に構成されるものである。
【0065】
このような構成により、冷却ファン31が回転駆動した場合に、ラジエータ33を通過した空気を集中させてエンジン30側へ送るようにしている。したがって、簡単な構成でエンジン30の冷却効果を高めることができる。また、冷却ファン31によりエンジン30側へ送られる空気は、ラジエータカバー38の内部の空気に限定するようにしている。したがって、ラジエータカバー38の内部の空気は、第一左側開口部57を通じて外部(エンジン30側)へ効率良く排出することができるので、これに応じてボンネット17の外部の空気をラジエータカバー38の内部へ通風口17bおよび右側開口部90を通じて効率良く吸入することができる。その結果、簡単な構成でラジエータ33の冷却効果を高めることができる。
また、シュラウド61をラジエータカバー38と別部材として設ける必要がない。したがって、部材点数が削減されて、製造コストの低減化を図ることができる。
【0066】
また、田植機1において、前記ラジエータカバーのボンネット側の外周端部には、当該ボンネットと当該ラジエータカバーとの間をシールするシール部材が設けられるものである。
【0067】
このような構成により、ラジエータカバー38の外部であってボンネット17の内部の空気(エンジン30や図示せぬ油圧配管などを冷却した後の空気)が、ボンネット17の内部を循環してラジエータカバー38と、ボンネット17の右側壁との間からラジエータカバー38の内部へ吸気されることを防止することができる。したがって、ラジエータ33やエンジン30を冷却したあとの(温度が上がった)空気によって、再びラジエータ33やエンジン30を冷却することを防止することができる。その結果、ラジエータ33の冷却効果を高めることができる。
また、冷却ファン31によって、ボンネット17の内部に右側の通風口17bを通じて吸入されたボンネット17の外部の空気は、ボンネット17の右側壁とラジエータカバー38の右側端部との隙間から、ラジエータカバー38の外部であってボンネット17の内部へ漏れることがない。つまり、ラジエータカバー38の内部に吸入されたボンネット17の外部の空気を確実にエンジン30へと導くことができる。その結果、エンジン30の冷却効果を高めることができる。
【0068】
また、田植機1において、前記ラジエータ33は、給水部35を前記ラジエータカバー38の上側部53から上方へ突出して、リザーブタンク39から延出される第三給水配管39a(給水配管)の延出端部を前記給水部35における前記ラジエータカバー38の膨出部55と反対側に接続するものである。
【0069】
このような構成により、リザーブタンク39に接続するための第三給水配管39a(給水配管)を、ラジエータカバー38(特に、膨出部55)に干渉することなく、ラジエータ33に接続することができる。したがって、膨出部55を切り欠いたり、小さく設計したりする必要が無いので、前記膨出部55を最適な形状および大きさで構成することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 田植機
17 ボンネット
17b 通風口
32 エアクリーナ
32b 第二吸気配管
33 ラジエータ
35 給水部
37 取付部
38 ラジエータカバー
39 リザーブタンク
39a 第三給水配管
50 カバー本体
53 上側部
55 膨出部
56 切欠部
57 第一左側開口部(第二の開口部)
62 弾性部材
90 右側開口部(第一の開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸を機体の進行方向に対して横向きとした状態で配置されるエンジンと、
前記エンジンの横一側方に配置されるラジエータと、
前記ラジエータを覆うラジエータカバーと、
前記エンジンと前記ラジエータとの間に配置されて、前記エンジンにより回転駆動される冷却ファンと、
前記エンジン、前記ラジエータを内部に収容する前記ラジエータカバー、及び前記冷却ファンを覆い、前記ラジエータと横方向に対向する部分に通風口を有するボンネットとを備える作業車両において、
前記ラジエータカバーは、
前記ボンネットの通風口側に向かって開口する第一の開口部と、
前記エンジン側に向かって開口する第二の開口部と、
前記ラジエータと反対側に向かって膨出する膨出部とを有し、
前記エンジンのエアクリーナから延出される吸気配管の延出端部を、前記膨出部に挿通させて支持し、前記第一の開口部に臨ませる、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ラジエータカバーは、前記冷却ファンを囲繞するシュラウドと一体的に構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ラジエータカバーの前記ボンネットに近接する側の外周端部には、前記ボンネットと前記ラジエータカバーとの間をシールするシール部材が設けられる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記ラジエータは、給水部を前記ラジエータカバーの上側部から上方へ突出して、リザーブタンクから延出される給水配管の延出端部を前記給水部における前記ラジエータカバーの膨出部と反対側に接続する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−189904(P2011−189904A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59830(P2010−59830)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】