作業車両
【課題】専用の調整治具が無い状況でも、アーム長さを精度良く調整可能とする。
【解決手段】各油圧式無段変速装置3A、3Bの変速作動アーム8A、8Bと走行操作具を機械的に連結し、走行操作具の操作に応じて変速作動アーム8A、8Bを回動させる左右一対の連結リンク機構13A、13Bとを備えるクローラトラクタにおいて、各連結リンク機構13A、13Bに設けられるリンクアーム14A、14Bのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成するにあたり、アーム長さ調整可能なリンクアーム14Bは、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアーム14Bのアーム長さL1を調整するアーム長さ調整部材17を有し、該アーム長さ調整部材17に、アーム長さ調整部材17の基準位置を示すゲージ23を設ける。
【解決手段】各油圧式無段変速装置3A、3Bの変速作動アーム8A、8Bと走行操作具を機械的に連結し、走行操作具の操作に応じて変速作動アーム8A、8Bを回動させる左右一対の連結リンク機構13A、13Bとを備えるクローラトラクタにおいて、各連結リンク機構13A、13Bに設けられるリンクアーム14A、14Bのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成するにあたり、アーム長さ調整可能なリンクアーム14Bは、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアーム14Bのアーム長さL1を調整するアーム長さ調整部材17を有し、該アーム長さ調整部材17に、アーム長さ調整部材17の基準位置を示すゲージ23を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラトラクタなどの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対のクローラ走行装置と、クローラ走行装置毎に設けられ、各クローラ走行装置の動力を無段階に変速する左右一対の油圧式無段変速装置(例えば、HST)と、油圧式無段変速装置毎に設けられ、各油圧式無段変速装置の変速作動アームと走行操作具を機械的に連結し、走行操作具の操作に応じて変速作動アームを回動させる左右一対の連結リンク機構とを備えるクローラトラクタなどの作業車両が知られている。
【0003】
HSTなどの油圧式無段変速装置は、変速作動アームを所定位置に回動操作することにより、入力された動力を所定の変速比で変速して出力するように構成されているが、同様な構造を有していても若干の個体差があり、また、左右の連結リンク機構にも作動誤差があるため、走行操作具が直進操作状態であっても、左右の油圧式無段変速装置が同調せずに作業車両の直進性が低下する場合があった。
【0004】
そこで、各連結リンク機構に設けられる連結ロッドのうち、少なくとも一方を長さ調整可能に構成し、該連結ロッドの長さ調整に基づいて、油圧式無段変速装置の個体差や、連結リンク機構の寸法誤差に起因する左右クローラの速度差を補正することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、各連結リンク機構に設けられるリンクアームのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成しても、同様な効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−132906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来では、連結ロッドの長さ調整やリンクアームのアーム長さ調整に際し、専用の調整治具を使用する必要があり、調整治具が無い状況では調整が困難であった。例えば、出荷後に現地で再調整する場合、調整治具が無いと、連結ロッドやリンクアームの基準長さが不明であるため、調整作業が極めて難しく、精度の良い調整が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、左右一対のクローラ走行装置と、クローラ走行装置毎に設けられ、各クローラ走行装置の動力を無段階に変速する左右一対の油圧式無段変速装置と、油圧式無段変速装置毎に設けられ、各油圧式無段変速装置の変速作動アームと走行操作具を機械的に連結し、走行操作具の操作に応じて変速作動アームを回動させる左右一対の連結リンク機構とを備える作業車両において、各連結リンク機構に設けられるリンクアームのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成するにあたり、アーム長さ調整可能なリンクアームは、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアームのアーム長さを調整するアーム長さ調整部材を有し、該アーム長さ調整部材又はアーム本体に、アーム長さ調整部材の基準位置を示すゲージを設けたことを特徴とする。
また、前記油圧式無段変速装置の変速作動アーム毎に設けられ、各変速作動アームの操作角を検出する一対の角度センサを備えるとともに、少なくとも一方の角度センサをリンクアームに連結し、該リンクアームの検出角度を変速作動アームの操作角と見做すにあたり、前記ゲージは、アーム長さ調整部材に設けられるとともに、角度センサのセンサアームに連結され、アーム長さ調整に際しては、アーム長さ調整部材と一体的に移動してセンサアームとの連結位置を変更することにより、センサアームの回動範囲を自動的に調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、アーム長さ調整部材の基準位置を示すゲージを設けたので、専用の調整治具が無い状況でも、アーム長さを精度良く調整することができる。
また、請求項2の発明によれば、アーム長さ調整に際し、センサアームの回動範囲も自動的に調整することができるので、センサアームの回動範囲を別途調整する場合に比べ、調整時の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】クローラトラクタの側面図である。
【図2】操縦部の平面図である。
【図3】参考例に係る油圧式無段変速装置の操作系を示す斜視図である。
【図4】参考例に係る連結リンク機構の要部斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る連結リンク機構の要部斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るリンクアームの側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るリンクアームの斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係るリンクアームの分解斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る連結リンク機構の要部側面図である。
【図10】従来例に係るテンションスプリングの組込み状態を示す側面図である。
【図11】従来例に係るテンションスプリングの組込み状態を示す斜視図である。
【図12】従来例に係るテンションスプリングの組込み状態を示す分解斜視図である。
【図13】本実施形態に係るテンションスプリングの組込み状態を示す斜視図である。
【図14】本実施形態に係るテンションスプリングの組込み状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。まず、本発明の実施形態と基本的な構成が共通する参考例について、図1〜図4を参照して説明し、その後に、本発明の実施形態について、図5以降を参照して説明する。
【0011】
[参考例]
図面において、1はクローラトラクタの走行機体であって、該走行機体1は、機体前部に搭載されるエンジン(図示せず)と、左右一対のクローラ走行装置2と、左右のクローラ走行装置2に供給する走行動力を独立的に変速させる一対の油圧式無段変速装置3A、3Bと、キャビン4で覆われる操縦部5と、図示しない作業機が連結される作業機連結部6とを備えて構成されている。
【0012】
油圧式無段変速装置3A、3Bとしては、通常、HSTが用いられる。HSTは、エンジン動力でポンプ駆動されるHSTポンプ(可変容量油圧ポンプ)7A、7Bと、該HSTポンプ7A、7Bの吐出油で駆動される図示しないHSTモータ(固定容量油圧モータ)との組み合せにより、走行動力を無段変速するように構成されている。
【0013】
本実施形態で用いるHSTポンプ7A、7Bは、斜板の角度制御にもとづいて吐出油量を無段階に調節可能な斜板式可変容量油圧ポンプであり、各HSTポンプ7A、7Bの側面には、それぞれの斜板操作を行うための変速作動アーム8A、8Bが設けられている。そして、両方の変速作動アーム8A、8Bを同方向に操作すると、左右のクローラ走行装置2が同期的に増減速(逆転を含む)されて、走行機体1の走行速度が変化する一方、いずれか一方の変速作動アーム8A、8Bを減速方向に操作すると、一方のクローラ走行装置2が減速(逆転を含む)されて、走行機体1が旋回動作することになる。
【0014】
図2に示すように、操縦部5には、オペレータが着座する運転席9や、オペレータによって操作される走行操作具が設けられている。走行操作具には、運転席9の前方に設けられるステアリングハンドル10や、運転席9の側方に設けられる走行変速レバー11が含まれる。そして、ステアリングハンドル10及び走行変速レバー11は、HSTリンクボックス12及び連結リンク機構13A、13Bを介して左右の変速作動アーム8A、8Bに機械的に連結されている。
【0015】
HSTリンクボックス12は、ステアリングハンドル10や走行変速レバー11の操作に応じて左右の変速作動アーム8A、8Bを所定のパターンで回動させるように構成されている。例えば、走行変速レバー11が中立位置から前進走行側に操作された場合、左右の変速作動アーム8A、8Bを前進走行側に回動させる一方、走行変速レバー11が中立位置から後進走行側に操作された場合、左右の変速作動アーム8A、8Bを後進走行側に回動させる。
【0016】
また、走行変速レバー11が中立位置以外の箇所に操作され、かつ、ステアリングハンドル10が中立位置(直進位置)に操作されている場合には、左右のクローラ走行装置2が同速で駆動されるように、左右の変速作動アーム8A、8Bを同期的に回動させる。また、走行変速レバー11が中立位置以外の箇所に操作され、かつ、ステアリングハンドル10が左右いずれかの旋回位置に操作されている場合は、旋回内側のクローラ走行装置2が旋回外側のクローラ走行装置2に比べて低速(逆転を含む)で駆動されるように、左右の変速作動アーム8A、8Bを相対的に回動させる。
【0017】
連結リンク機構13A、13Bは、油圧式無段変速装置3A、3B毎に設けられ、各油圧式無段変速装置3A、3Bの変速作動アーム8A、8BをHSTリンクボックス12に機械的に連結させる。そして、ステアリングハンドル10や走行変速レバー11が操作されると、HSTリンクボックス12が連結リンク機構13A、13Bを介して変速作動アーム8A、8Bを回動させるようになっている。
【0018】
図3及び図4に示す連結リンク機構13A、13Bは、中間部を支点として前後に回動するリンクアーム14A、14Bと、リンクアーム14A、14Bの一端部をHSTリンクボックス12に連結させる連結ロッド15A、15Bと、リンクアーム14A、14Bの他端部を変速作動アーム8A、8Bに連結させる連結ロッド16A、16Bとを備えて構成されている。
【0019】
各連結リンク機構13A、13Bに設けられるリンクアーム14A、14Bのうち、少なくとも一方は、実質的なアーム長さL1が調整可能となっている。アーム長さ調整可能なリンクアーム14Bには、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアーム14Bのアーム長さL1を調整するアーム長さ調整部材17が設けられている。
【0020】
具体的に説明すると、図4に示すアーム長さ調整部材17は、連結ロッド16Bと連結される連結ピン17aを一体的に有し、該連結ピン17aの位置をリンクアーム14Bの長孔14aに沿って移動させることにより、リンクアーム14Bのアーム長さL1を変化させるようになっている。非調整時のアーム長さ調整部材17は、固定ボルト18を介してリンクアーム14Bの突片14bに移動不能に固定されている。そして、アーム長さL1を調整する際には、固定ボルト18を突片14bに固定している一対のナット19を回し操作することにより、アーム長さ調整部材17をリンクアーム14Bの長さ方向に移動させることが可能になる。
【0021】
図4に示すように、各連結リンク機構13A、13Bには、各変速作動アーム8A、8Bの操作角を検出する一対の角度センサ(ポテンショメータ)20A、20Bが連結されている。そして、本参考例では、これらの角度センサ20が検出する各変速作動アーム8A、8Bの操作角にもとづいて、左右のクローラ走行装置2の駆動速度演算、ひいては走行機体1の車速演算を行い、車速表示に用いるようになっている。
【0022】
図4に示すように、本参考例では、各変速作動アーム8A、8Bの操作角を検出する一対の角度センサ20A、20Bを設けるにあたり、一方の角度センサ20Bをリンクアーム14Bに連結し、該リンクアーム14Bの検出角度を変速作動アーム8Bの操作角と見做すようになっている。つまり、角度センサ20Aのセンサアーム20aは、変速作動アーム8Aに突設したセンサピン21に連結される一方、角度センサ20Bのセンサアーム20aは、リンクアーム14Bに突設したセンサピン22に連結されている。このようにすると、一対の変速作動アーム8A、8Bが離間して配置されている場合であっても、一対の角度センサ20A、20Bを近くに配置し、メンテナンス性などを向上させることが可能になる。
【0023】
上記のように構成された参考例では、二つの問題点がある。第一の問題点は、リンクアーム14Bのアーム長さ調整に際し、専用の調整治具を使用する必要があり、調整治具が無い状況では調整が困難になることである。例えば、出荷後に現地で再調整する場合、調整治具が無いと、リンクアーム14Bの基準長さが不明であるため、調整作業が極めて難しく、精度の良い調整が困難であった。
【0024】
第二の問題点は、リンクアーム14Bのアーム長さ調整に応じて角度センサ20Bの検出値に誤差が生じることである。つまり、リンクアーム14Bのアーム長さL1を調整すると、変速作動アーム8Bの回動範囲が変化するため、それに伴って角度センサ20Bの回動範囲も変化する必要があるが、参考例の角度センサ20Bは、リンクアーム14Bの角度を変速作動アーム8Bの操作角と見做すため、アーム長さ調整を行ってもセンサアーム20aの回動範囲は変化せず、これが誤差の原因となる。
【0025】
以下、これらの問題点を解決することができる本発明の実施形態に係るクローラトラクタについて、図5以降を参照して説明する。ただし、参考例と共通の構成については、参考例と同じ符号を用いることにより、参考例の説明を援用する。
【0026】
[本発明の実施形態]
図5〜図9に示すように、本発明の実施形態は、各連結リンク機構13A、13Bに設けられるリンクアーム14A、14Bのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成するにあたり、アーム長さ調整可能なリンクアーム14Bに、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアーム14Bのアーム長さL1を調整するアーム長さ調整部材17が設けられる点は前記参考例と同様であるが、該アーム長さ調整部材17に、アーム長さ調整部材17の基準位置を示すゲージ23を設けた点が前記参考例と相違している。このようにすると、専用の調整治具が無い状況でも、アーム長さ調整部材17の基準位置が明確となるので、リンクアーム14Bのアーム長さL1を精度良く調整することができる。
尚、ゲージ23は、アーム長さ調整部材17側ではなく、アーム本体側に設けてもよい。例えば、アーム長さ調整部材17の基準位置を示す目盛り(ゲージ)をアーム本体に刻設する。
【0027】
具体的に説明すると、本実施形態のゲージ23は、アーム長さ調整部材17にボルト24(連結ピン17aと同心)を介して取り付けられるプレート部材であり、該プレート部材の左側下端部に形成される当接面23aが、突片14bの左側に延長形成(延長寸法L2)される延長片14cに上方から当接するとき、アーム長さ調整部材17が基準位置であることを示すように、連結ピン17aの中心と当接面23aの距離L3が設定されている。尚、ゲージ23の右側下端部には、当接面23aよりも上方に逃げる逃げ面23bが形成されている。
【0028】
このようなゲージ23を備えるリンクアーム14Bのアーム長さL1を調整する場合は、まず、アーム長さ調整部材17を移動操作により、ゲージ23の当接面23aを突片14bの延長片14cに上方から当接させ、アーム長さ調整部材17の基準位置を確認する。尚、アーム長さ調整部材17の移動操作に際し、ゲージ23がナット19の回し操作の邪魔になる場合は、ボルト24を緩めてゲージ23を回動させることにより、ナット19を露出させることができる。
【0029】
ここで、リンクアーム14Bのアーム長さL1を短い側に調整する場合は、ナット19を回し操作してアーム長さ調整部材17をアーム支点側に移動させることにより、アーム長さL1が短い側に調整される。一方、リンクアーム14Bのアーム長さL1を長い側に調整する場合は、ゲージ23と突片14bの当接により、アーム長さ調整部材17の移動が規制されるので、まず、ボルト24及びゲージ23を一旦取り外し、ゲージ23の表裏を反転させる。そして、表裏を反転させると、ゲージ23の当接面23aが右側、逃げ面23bが左側となり、延長片14cとの当接による移動規制が解除されるので、アーム長さL1を長くする方向にアーム長さ調整部材17を移動させることが可能になる。その後、ナット19を回し操作してアーム長さ調整部材17をアーム支点から遠ざかる方向に移動させることにより、アーム長さL1が長い側に調整される。
【0030】
また、本発明の実施形態は、油圧式無段変速装置3A、3Bの変速作動アーム8A、8B毎に設けられ、各変速作動アーム8A、8Bの操作角を検出する一対の角度センサ20A、20Bを備えるとともに、少なくとも一方の角度センサ20Bをリンクアーム14Bに連結し、該リンクアーム14Bの検出角度を変速作動アーム8Bの操作角と見做す点は前記参考例と同様であるが、アーム長さ調整部材17にゲージ23を設けるとともに、該ゲージ23を角度センサ20Bのセンサアーム20aに連結し、アーム長さ調整に際しては、アーム長さ調整部材17とゲージ23を一体的に移動させて、ゲージ23とセンサアーム20aとの連結位置を変更することにより、センサアーム20aの回動範囲を自動的に調整する点が前記参考例と相違している。このようにすると、アーム長さ調整に際し、センサアーム20aの回動範囲も自動的に調整することができるので、センサアーム20aの回動範囲を別途調整する場合に比べ、調整時の作業性を向上させることができる。
【0031】
具体的に説明すると、ゲージ23には、センサピン23cが一体的に設けられており、該センサピン23cを、角度センサ20Bのセンサアーム20aに形成される長孔20bに係合させることにより、リンクアーム14Bの角度変化がセンサアーム20aに伝わり、角度センサ20Bによって検出されるようになっている。また、センサアーム20aの回動中心は、リンクアーム14Bの回動中心に対して上方に所定寸法L4だけオフセットされている。これにより、リンクアーム14Bのアーム長さ調整に際し、センサアーム20aの回動範囲を自動的に調整することが可能になる。ちなみに、センサアーム20aとリンクアーム14Bの回動中心が同心上であった場合、アーム長さ調整部材17をアーム長さ方向に移動させても、センサアーム20aの回動範囲は変化しない。
【0032】
上記の自動調整作用を、図9を例として説明する。図9の上側は、連結リンク機構13Aの要部を示し、図9の下側は、アーム長さ調整可能なリンクアーム14Bを備える連結リンク機構13Bの要部を示している。ここで、図9の上側に示す連結リンク機構13Aにおいて、走行変速レバー11が操作されてリンクアーム14Aが30゜回動すると、変速作動アーム8Aは、同じく30゜回動し、その場合、角度センサ20のセンサアーム20aは25.3゜回動する。
【0033】
一方、図9の下側に示す連結リンク機構13Bにおいて、走行変速レバー11が操作されてリンクアーム14Bがリンクアーム14Aと同様に30゜回動すれば、アーム長さを調整する必要はないが、リンクガタが存在してリンクアーム14Bが仮に28゜しか回動しない場合は、変速作動アーム8Bも同じく28゜しか回動しないため、ステアリングハンドル10を中立にしても、左右の回転差によってクローラトラクタは左右いずれかに旋回してしまう。
【0034】
そこで、リンクアーム14Bが28゜回動したときに、変速作動アーム8Bが30゜回転するようにリンクアーム14Bのアーム長さL1を調整する。具体的には、アーム長さ調整部材17を下側に6.95mm下げる。その場合、角度センサ20Bのセンサアーム20aにおいては、回動範囲が調整前の23.70゜から25.1゜に自動調整され、角度センサ20Aの回動範囲である25.3゜に近似される。
【0035】
次に、従来例及び本実施形態に係るクローラ走行装置2について、図1、図10〜図14を参照して説明する。図1に示すように、クローラ走行装置2は、角パイプ状のクローラフレーム30と、クローラフレーム30の前後に設けられる駆動スプロケット31及びアイドラホイール32と、クローラフレーム30の下方に設けられる複数の転輪33と、これらの輪体31、32、33に懸回されるクローラ34とを備えて構成されている。
【0036】
図10に示すように、クローラフレーム30には、アイドラホイール32を前後移動自在に支持するアジャスタアーム35と、アジャスタアーム35を介してアイドラホイール32に所定のテンション荷重を作用させるテンションスプリング36と、テンションスプリング36及びアジャスタアーム35を介してアイドラホイール32の前後位置を調整するアジャスタシリンダ37が内装されている。クローラフレーム30の前端側には、給脂バルブ30aが設けられており、ここから給脂することにより、アジャスタシリンダ37のシリンダ37aが伸長し、アイドラホイール32を後方に移動又は押圧するようになっている。
【0037】
図11及び図12に示すように、従来のクローラ走行装置2では、テンションスプリング36、スプリングガイド38、サポート39、ナット40などからなるスプリングアッシAを予め構成し、該スプリングアッシAをクローラフレーム30に組み込んでいる。この場合、組込み前にテンションスプリング36のスプリング荷重をセットできるという利点があるものの、部品点数や組立工程数が増加するという問題があった。
【0038】
そこで、本実施形態では、図13及び図14に示すように、スプリングアッシAを予め構成することなく、テンションスプリング36をクローラフレーム30に直接組み込み可能とした。具体的には、テンションスプリング36の前端部及び後端部を嵌合保持する前後一対のスプリングガイド41と共にテンションスプリング36をテンションスプリング36をクローラフレーム30に直接組み込んだ後、アジャスタシリンダ37でクローラ34を張る段階でテンションスプリング36のスプリング荷重をセットするようにしている。また、このようなスプリング組み込み方法では、テンションスプリング36を自由長さで組み込むことになるので、テンションスプリング36の自由長さとセット長さとの差分(L11−L12)だけアジャスタアーム35を短くするとともに、アジャスタシリンダ36の伸長ストロークを差分だけ長くすることにより、クローラ装着時の全長を同一としている。
【0039】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、左右一対のクローラ走行装置2と、クローラ走行装置2毎に設けられ、各クローラ走行装置2の動力を無段階に変速する左右一対の油圧式無段変速装置3A、3Bと、油圧式無段変速装置3A、3B毎に設けられ、各油圧式無段変速装置3A、3Bの変速作動アーム8A、8Bと走行操作具を機械的に連結し、走行操作具の操作に応じて変速作動アーム8A、8Bを回動させる左右一対の連結リンク機構13A、13Bとを備えるクローラトラクタにおいて、各連結リンク機構13A、13Bに設けられるリンクアーム14A、14Bのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成するにあたり、アーム長さ調整可能なリンクアーム14Bは、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアーム14Bのアーム長さL1を調整するアーム長さ調整部材17を有し、該アーム長さ調整部材17に、アーム長さ調整部材17の基準位置を示すゲージ23を設けたので、専用の調整治具が無い状況でも、アーム長さL1を精度良く調整することができる。
【0040】
また、油圧式無段変速装置3A、3Bの変速作動アーム8A、8B毎に設けられ、各変速作動アーム8A、8Bの操作角を検出する一対の角度センサ20A、20Bを備えるとともに、少なくとも一方の角度センサ20Bをリンクアーム14Bに連結し、該リンクアーム14Bの検出角度を変速作動アーム8Bの操作角と見做すにあたり、ゲージ23は、アーム長さ調整部材17に設けられるとともに、角度センサ20Bのセンサアーム20aに連結され、アーム長さ調整に際しては、アーム長さ調整部材17と一体的に移動してセンサアーム20aとの連結位置を変更することにより、センサアーム20aの回動範囲を自動的に調整するので、センサアーム20aの回動範囲を別途調整する場合に比べ、調整時の作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 走行機体
2 クローラ走行装置
3 油圧式無段変速装置
8 変速作動アーム
10 ステアリングハンドル
11 走行変速レバー
12 リンクボックス
13 連結リンク機構
14 リンクアーム
17 アーム長さ調整部材
20 角度センサ
20a センサアーム
23 ゲージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラトラクタなどの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対のクローラ走行装置と、クローラ走行装置毎に設けられ、各クローラ走行装置の動力を無段階に変速する左右一対の油圧式無段変速装置(例えば、HST)と、油圧式無段変速装置毎に設けられ、各油圧式無段変速装置の変速作動アームと走行操作具を機械的に連結し、走行操作具の操作に応じて変速作動アームを回動させる左右一対の連結リンク機構とを備えるクローラトラクタなどの作業車両が知られている。
【0003】
HSTなどの油圧式無段変速装置は、変速作動アームを所定位置に回動操作することにより、入力された動力を所定の変速比で変速して出力するように構成されているが、同様な構造を有していても若干の個体差があり、また、左右の連結リンク機構にも作動誤差があるため、走行操作具が直進操作状態であっても、左右の油圧式無段変速装置が同調せずに作業車両の直進性が低下する場合があった。
【0004】
そこで、各連結リンク機構に設けられる連結ロッドのうち、少なくとも一方を長さ調整可能に構成し、該連結ロッドの長さ調整に基づいて、油圧式無段変速装置の個体差や、連結リンク機構の寸法誤差に起因する左右クローラの速度差を補正することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、各連結リンク機構に設けられるリンクアームのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成しても、同様な効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−132906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来では、連結ロッドの長さ調整やリンクアームのアーム長さ調整に際し、専用の調整治具を使用する必要があり、調整治具が無い状況では調整が困難であった。例えば、出荷後に現地で再調整する場合、調整治具が無いと、連結ロッドやリンクアームの基準長さが不明であるため、調整作業が極めて難しく、精度の良い調整が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、左右一対のクローラ走行装置と、クローラ走行装置毎に設けられ、各クローラ走行装置の動力を無段階に変速する左右一対の油圧式無段変速装置と、油圧式無段変速装置毎に設けられ、各油圧式無段変速装置の変速作動アームと走行操作具を機械的に連結し、走行操作具の操作に応じて変速作動アームを回動させる左右一対の連結リンク機構とを備える作業車両において、各連結リンク機構に設けられるリンクアームのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成するにあたり、アーム長さ調整可能なリンクアームは、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアームのアーム長さを調整するアーム長さ調整部材を有し、該アーム長さ調整部材又はアーム本体に、アーム長さ調整部材の基準位置を示すゲージを設けたことを特徴とする。
また、前記油圧式無段変速装置の変速作動アーム毎に設けられ、各変速作動アームの操作角を検出する一対の角度センサを備えるとともに、少なくとも一方の角度センサをリンクアームに連結し、該リンクアームの検出角度を変速作動アームの操作角と見做すにあたり、前記ゲージは、アーム長さ調整部材に設けられるとともに、角度センサのセンサアームに連結され、アーム長さ調整に際しては、アーム長さ調整部材と一体的に移動してセンサアームとの連結位置を変更することにより、センサアームの回動範囲を自動的に調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、アーム長さ調整部材の基準位置を示すゲージを設けたので、専用の調整治具が無い状況でも、アーム長さを精度良く調整することができる。
また、請求項2の発明によれば、アーム長さ調整に際し、センサアームの回動範囲も自動的に調整することができるので、センサアームの回動範囲を別途調整する場合に比べ、調整時の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】クローラトラクタの側面図である。
【図2】操縦部の平面図である。
【図3】参考例に係る油圧式無段変速装置の操作系を示す斜視図である。
【図4】参考例に係る連結リンク機構の要部斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る連結リンク機構の要部斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るリンクアームの側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るリンクアームの斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係るリンクアームの分解斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る連結リンク機構の要部側面図である。
【図10】従来例に係るテンションスプリングの組込み状態を示す側面図である。
【図11】従来例に係るテンションスプリングの組込み状態を示す斜視図である。
【図12】従来例に係るテンションスプリングの組込み状態を示す分解斜視図である。
【図13】本実施形態に係るテンションスプリングの組込み状態を示す斜視図である。
【図14】本実施形態に係るテンションスプリングの組込み状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。まず、本発明の実施形態と基本的な構成が共通する参考例について、図1〜図4を参照して説明し、その後に、本発明の実施形態について、図5以降を参照して説明する。
【0011】
[参考例]
図面において、1はクローラトラクタの走行機体であって、該走行機体1は、機体前部に搭載されるエンジン(図示せず)と、左右一対のクローラ走行装置2と、左右のクローラ走行装置2に供給する走行動力を独立的に変速させる一対の油圧式無段変速装置3A、3Bと、キャビン4で覆われる操縦部5と、図示しない作業機が連結される作業機連結部6とを備えて構成されている。
【0012】
油圧式無段変速装置3A、3Bとしては、通常、HSTが用いられる。HSTは、エンジン動力でポンプ駆動されるHSTポンプ(可変容量油圧ポンプ)7A、7Bと、該HSTポンプ7A、7Bの吐出油で駆動される図示しないHSTモータ(固定容量油圧モータ)との組み合せにより、走行動力を無段変速するように構成されている。
【0013】
本実施形態で用いるHSTポンプ7A、7Bは、斜板の角度制御にもとづいて吐出油量を無段階に調節可能な斜板式可変容量油圧ポンプであり、各HSTポンプ7A、7Bの側面には、それぞれの斜板操作を行うための変速作動アーム8A、8Bが設けられている。そして、両方の変速作動アーム8A、8Bを同方向に操作すると、左右のクローラ走行装置2が同期的に増減速(逆転を含む)されて、走行機体1の走行速度が変化する一方、いずれか一方の変速作動アーム8A、8Bを減速方向に操作すると、一方のクローラ走行装置2が減速(逆転を含む)されて、走行機体1が旋回動作することになる。
【0014】
図2に示すように、操縦部5には、オペレータが着座する運転席9や、オペレータによって操作される走行操作具が設けられている。走行操作具には、運転席9の前方に設けられるステアリングハンドル10や、運転席9の側方に設けられる走行変速レバー11が含まれる。そして、ステアリングハンドル10及び走行変速レバー11は、HSTリンクボックス12及び連結リンク機構13A、13Bを介して左右の変速作動アーム8A、8Bに機械的に連結されている。
【0015】
HSTリンクボックス12は、ステアリングハンドル10や走行変速レバー11の操作に応じて左右の変速作動アーム8A、8Bを所定のパターンで回動させるように構成されている。例えば、走行変速レバー11が中立位置から前進走行側に操作された場合、左右の変速作動アーム8A、8Bを前進走行側に回動させる一方、走行変速レバー11が中立位置から後進走行側に操作された場合、左右の変速作動アーム8A、8Bを後進走行側に回動させる。
【0016】
また、走行変速レバー11が中立位置以外の箇所に操作され、かつ、ステアリングハンドル10が中立位置(直進位置)に操作されている場合には、左右のクローラ走行装置2が同速で駆動されるように、左右の変速作動アーム8A、8Bを同期的に回動させる。また、走行変速レバー11が中立位置以外の箇所に操作され、かつ、ステアリングハンドル10が左右いずれかの旋回位置に操作されている場合は、旋回内側のクローラ走行装置2が旋回外側のクローラ走行装置2に比べて低速(逆転を含む)で駆動されるように、左右の変速作動アーム8A、8Bを相対的に回動させる。
【0017】
連結リンク機構13A、13Bは、油圧式無段変速装置3A、3B毎に設けられ、各油圧式無段変速装置3A、3Bの変速作動アーム8A、8BをHSTリンクボックス12に機械的に連結させる。そして、ステアリングハンドル10や走行変速レバー11が操作されると、HSTリンクボックス12が連結リンク機構13A、13Bを介して変速作動アーム8A、8Bを回動させるようになっている。
【0018】
図3及び図4に示す連結リンク機構13A、13Bは、中間部を支点として前後に回動するリンクアーム14A、14Bと、リンクアーム14A、14Bの一端部をHSTリンクボックス12に連結させる連結ロッド15A、15Bと、リンクアーム14A、14Bの他端部を変速作動アーム8A、8Bに連結させる連結ロッド16A、16Bとを備えて構成されている。
【0019】
各連結リンク機構13A、13Bに設けられるリンクアーム14A、14Bのうち、少なくとも一方は、実質的なアーム長さL1が調整可能となっている。アーム長さ調整可能なリンクアーム14Bには、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアーム14Bのアーム長さL1を調整するアーム長さ調整部材17が設けられている。
【0020】
具体的に説明すると、図4に示すアーム長さ調整部材17は、連結ロッド16Bと連結される連結ピン17aを一体的に有し、該連結ピン17aの位置をリンクアーム14Bの長孔14aに沿って移動させることにより、リンクアーム14Bのアーム長さL1を変化させるようになっている。非調整時のアーム長さ調整部材17は、固定ボルト18を介してリンクアーム14Bの突片14bに移動不能に固定されている。そして、アーム長さL1を調整する際には、固定ボルト18を突片14bに固定している一対のナット19を回し操作することにより、アーム長さ調整部材17をリンクアーム14Bの長さ方向に移動させることが可能になる。
【0021】
図4に示すように、各連結リンク機構13A、13Bには、各変速作動アーム8A、8Bの操作角を検出する一対の角度センサ(ポテンショメータ)20A、20Bが連結されている。そして、本参考例では、これらの角度センサ20が検出する各変速作動アーム8A、8Bの操作角にもとづいて、左右のクローラ走行装置2の駆動速度演算、ひいては走行機体1の車速演算を行い、車速表示に用いるようになっている。
【0022】
図4に示すように、本参考例では、各変速作動アーム8A、8Bの操作角を検出する一対の角度センサ20A、20Bを設けるにあたり、一方の角度センサ20Bをリンクアーム14Bに連結し、該リンクアーム14Bの検出角度を変速作動アーム8Bの操作角と見做すようになっている。つまり、角度センサ20Aのセンサアーム20aは、変速作動アーム8Aに突設したセンサピン21に連結される一方、角度センサ20Bのセンサアーム20aは、リンクアーム14Bに突設したセンサピン22に連結されている。このようにすると、一対の変速作動アーム8A、8Bが離間して配置されている場合であっても、一対の角度センサ20A、20Bを近くに配置し、メンテナンス性などを向上させることが可能になる。
【0023】
上記のように構成された参考例では、二つの問題点がある。第一の問題点は、リンクアーム14Bのアーム長さ調整に際し、専用の調整治具を使用する必要があり、調整治具が無い状況では調整が困難になることである。例えば、出荷後に現地で再調整する場合、調整治具が無いと、リンクアーム14Bの基準長さが不明であるため、調整作業が極めて難しく、精度の良い調整が困難であった。
【0024】
第二の問題点は、リンクアーム14Bのアーム長さ調整に応じて角度センサ20Bの検出値に誤差が生じることである。つまり、リンクアーム14Bのアーム長さL1を調整すると、変速作動アーム8Bの回動範囲が変化するため、それに伴って角度センサ20Bの回動範囲も変化する必要があるが、参考例の角度センサ20Bは、リンクアーム14Bの角度を変速作動アーム8Bの操作角と見做すため、アーム長さ調整を行ってもセンサアーム20aの回動範囲は変化せず、これが誤差の原因となる。
【0025】
以下、これらの問題点を解決することができる本発明の実施形態に係るクローラトラクタについて、図5以降を参照して説明する。ただし、参考例と共通の構成については、参考例と同じ符号を用いることにより、参考例の説明を援用する。
【0026】
[本発明の実施形態]
図5〜図9に示すように、本発明の実施形態は、各連結リンク機構13A、13Bに設けられるリンクアーム14A、14Bのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成するにあたり、アーム長さ調整可能なリンクアーム14Bに、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアーム14Bのアーム長さL1を調整するアーム長さ調整部材17が設けられる点は前記参考例と同様であるが、該アーム長さ調整部材17に、アーム長さ調整部材17の基準位置を示すゲージ23を設けた点が前記参考例と相違している。このようにすると、専用の調整治具が無い状況でも、アーム長さ調整部材17の基準位置が明確となるので、リンクアーム14Bのアーム長さL1を精度良く調整することができる。
尚、ゲージ23は、アーム長さ調整部材17側ではなく、アーム本体側に設けてもよい。例えば、アーム長さ調整部材17の基準位置を示す目盛り(ゲージ)をアーム本体に刻設する。
【0027】
具体的に説明すると、本実施形態のゲージ23は、アーム長さ調整部材17にボルト24(連結ピン17aと同心)を介して取り付けられるプレート部材であり、該プレート部材の左側下端部に形成される当接面23aが、突片14bの左側に延長形成(延長寸法L2)される延長片14cに上方から当接するとき、アーム長さ調整部材17が基準位置であることを示すように、連結ピン17aの中心と当接面23aの距離L3が設定されている。尚、ゲージ23の右側下端部には、当接面23aよりも上方に逃げる逃げ面23bが形成されている。
【0028】
このようなゲージ23を備えるリンクアーム14Bのアーム長さL1を調整する場合は、まず、アーム長さ調整部材17を移動操作により、ゲージ23の当接面23aを突片14bの延長片14cに上方から当接させ、アーム長さ調整部材17の基準位置を確認する。尚、アーム長さ調整部材17の移動操作に際し、ゲージ23がナット19の回し操作の邪魔になる場合は、ボルト24を緩めてゲージ23を回動させることにより、ナット19を露出させることができる。
【0029】
ここで、リンクアーム14Bのアーム長さL1を短い側に調整する場合は、ナット19を回し操作してアーム長さ調整部材17をアーム支点側に移動させることにより、アーム長さL1が短い側に調整される。一方、リンクアーム14Bのアーム長さL1を長い側に調整する場合は、ゲージ23と突片14bの当接により、アーム長さ調整部材17の移動が規制されるので、まず、ボルト24及びゲージ23を一旦取り外し、ゲージ23の表裏を反転させる。そして、表裏を反転させると、ゲージ23の当接面23aが右側、逃げ面23bが左側となり、延長片14cとの当接による移動規制が解除されるので、アーム長さL1を長くする方向にアーム長さ調整部材17を移動させることが可能になる。その後、ナット19を回し操作してアーム長さ調整部材17をアーム支点から遠ざかる方向に移動させることにより、アーム長さL1が長い側に調整される。
【0030】
また、本発明の実施形態は、油圧式無段変速装置3A、3Bの変速作動アーム8A、8B毎に設けられ、各変速作動アーム8A、8Bの操作角を検出する一対の角度センサ20A、20Bを備えるとともに、少なくとも一方の角度センサ20Bをリンクアーム14Bに連結し、該リンクアーム14Bの検出角度を変速作動アーム8Bの操作角と見做す点は前記参考例と同様であるが、アーム長さ調整部材17にゲージ23を設けるとともに、該ゲージ23を角度センサ20Bのセンサアーム20aに連結し、アーム長さ調整に際しては、アーム長さ調整部材17とゲージ23を一体的に移動させて、ゲージ23とセンサアーム20aとの連結位置を変更することにより、センサアーム20aの回動範囲を自動的に調整する点が前記参考例と相違している。このようにすると、アーム長さ調整に際し、センサアーム20aの回動範囲も自動的に調整することができるので、センサアーム20aの回動範囲を別途調整する場合に比べ、調整時の作業性を向上させることができる。
【0031】
具体的に説明すると、ゲージ23には、センサピン23cが一体的に設けられており、該センサピン23cを、角度センサ20Bのセンサアーム20aに形成される長孔20bに係合させることにより、リンクアーム14Bの角度変化がセンサアーム20aに伝わり、角度センサ20Bによって検出されるようになっている。また、センサアーム20aの回動中心は、リンクアーム14Bの回動中心に対して上方に所定寸法L4だけオフセットされている。これにより、リンクアーム14Bのアーム長さ調整に際し、センサアーム20aの回動範囲を自動的に調整することが可能になる。ちなみに、センサアーム20aとリンクアーム14Bの回動中心が同心上であった場合、アーム長さ調整部材17をアーム長さ方向に移動させても、センサアーム20aの回動範囲は変化しない。
【0032】
上記の自動調整作用を、図9を例として説明する。図9の上側は、連結リンク機構13Aの要部を示し、図9の下側は、アーム長さ調整可能なリンクアーム14Bを備える連結リンク機構13Bの要部を示している。ここで、図9の上側に示す連結リンク機構13Aにおいて、走行変速レバー11が操作されてリンクアーム14Aが30゜回動すると、変速作動アーム8Aは、同じく30゜回動し、その場合、角度センサ20のセンサアーム20aは25.3゜回動する。
【0033】
一方、図9の下側に示す連結リンク機構13Bにおいて、走行変速レバー11が操作されてリンクアーム14Bがリンクアーム14Aと同様に30゜回動すれば、アーム長さを調整する必要はないが、リンクガタが存在してリンクアーム14Bが仮に28゜しか回動しない場合は、変速作動アーム8Bも同じく28゜しか回動しないため、ステアリングハンドル10を中立にしても、左右の回転差によってクローラトラクタは左右いずれかに旋回してしまう。
【0034】
そこで、リンクアーム14Bが28゜回動したときに、変速作動アーム8Bが30゜回転するようにリンクアーム14Bのアーム長さL1を調整する。具体的には、アーム長さ調整部材17を下側に6.95mm下げる。その場合、角度センサ20Bのセンサアーム20aにおいては、回動範囲が調整前の23.70゜から25.1゜に自動調整され、角度センサ20Aの回動範囲である25.3゜に近似される。
【0035】
次に、従来例及び本実施形態に係るクローラ走行装置2について、図1、図10〜図14を参照して説明する。図1に示すように、クローラ走行装置2は、角パイプ状のクローラフレーム30と、クローラフレーム30の前後に設けられる駆動スプロケット31及びアイドラホイール32と、クローラフレーム30の下方に設けられる複数の転輪33と、これらの輪体31、32、33に懸回されるクローラ34とを備えて構成されている。
【0036】
図10に示すように、クローラフレーム30には、アイドラホイール32を前後移動自在に支持するアジャスタアーム35と、アジャスタアーム35を介してアイドラホイール32に所定のテンション荷重を作用させるテンションスプリング36と、テンションスプリング36及びアジャスタアーム35を介してアイドラホイール32の前後位置を調整するアジャスタシリンダ37が内装されている。クローラフレーム30の前端側には、給脂バルブ30aが設けられており、ここから給脂することにより、アジャスタシリンダ37のシリンダ37aが伸長し、アイドラホイール32を後方に移動又は押圧するようになっている。
【0037】
図11及び図12に示すように、従来のクローラ走行装置2では、テンションスプリング36、スプリングガイド38、サポート39、ナット40などからなるスプリングアッシAを予め構成し、該スプリングアッシAをクローラフレーム30に組み込んでいる。この場合、組込み前にテンションスプリング36のスプリング荷重をセットできるという利点があるものの、部品点数や組立工程数が増加するという問題があった。
【0038】
そこで、本実施形態では、図13及び図14に示すように、スプリングアッシAを予め構成することなく、テンションスプリング36をクローラフレーム30に直接組み込み可能とした。具体的には、テンションスプリング36の前端部及び後端部を嵌合保持する前後一対のスプリングガイド41と共にテンションスプリング36をテンションスプリング36をクローラフレーム30に直接組み込んだ後、アジャスタシリンダ37でクローラ34を張る段階でテンションスプリング36のスプリング荷重をセットするようにしている。また、このようなスプリング組み込み方法では、テンションスプリング36を自由長さで組み込むことになるので、テンションスプリング36の自由長さとセット長さとの差分(L11−L12)だけアジャスタアーム35を短くするとともに、アジャスタシリンダ36の伸長ストロークを差分だけ長くすることにより、クローラ装着時の全長を同一としている。
【0039】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、左右一対のクローラ走行装置2と、クローラ走行装置2毎に設けられ、各クローラ走行装置2の動力を無段階に変速する左右一対の油圧式無段変速装置3A、3Bと、油圧式無段変速装置3A、3B毎に設けられ、各油圧式無段変速装置3A、3Bの変速作動アーム8A、8Bと走行操作具を機械的に連結し、走行操作具の操作に応じて変速作動アーム8A、8Bを回動させる左右一対の連結リンク機構13A、13Bとを備えるクローラトラクタにおいて、各連結リンク機構13A、13Bに設けられるリンクアーム14A、14Bのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成するにあたり、アーム長さ調整可能なリンクアーム14Bは、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアーム14Bのアーム長さL1を調整するアーム長さ調整部材17を有し、該アーム長さ調整部材17に、アーム長さ調整部材17の基準位置を示すゲージ23を設けたので、専用の調整治具が無い状況でも、アーム長さL1を精度良く調整することができる。
【0040】
また、油圧式無段変速装置3A、3Bの変速作動アーム8A、8B毎に設けられ、各変速作動アーム8A、8Bの操作角を検出する一対の角度センサ20A、20Bを備えるとともに、少なくとも一方の角度センサ20Bをリンクアーム14Bに連結し、該リンクアーム14Bの検出角度を変速作動アーム8Bの操作角と見做すにあたり、ゲージ23は、アーム長さ調整部材17に設けられるとともに、角度センサ20Bのセンサアーム20aに連結され、アーム長さ調整に際しては、アーム長さ調整部材17と一体的に移動してセンサアーム20aとの連結位置を変更することにより、センサアーム20aの回動範囲を自動的に調整するので、センサアーム20aの回動範囲を別途調整する場合に比べ、調整時の作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 走行機体
2 クローラ走行装置
3 油圧式無段変速装置
8 変速作動アーム
10 ステアリングハンドル
11 走行変速レバー
12 リンクボックス
13 連結リンク機構
14 リンクアーム
17 アーム長さ調整部材
20 角度センサ
20a センサアーム
23 ゲージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のクローラ走行装置と、
クローラ走行装置毎に設けられ、各クローラ走行装置の動力を無段階に変速する左右一対の油圧式無段変速装置と、
油圧式無段変速装置毎に設けられ、各油圧式無段変速装置の変速作動アームと走行操作具を機械的に連結し、走行操作具の操作に応じて変速作動アームを回動させる左右一対の連結リンク機構とを備える作業車両において、
各連結リンク機構に設けられるリンクアームのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成するにあたり、アーム長さ調整可能なリンクアームは、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアームのアーム長さを調整するアーム長さ調整部材を有し、該アーム長さ調整部材又はアーム本体に、アーム長さ調整部材の基準位置を示すゲージを設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記油圧式無段変速装置の変速作動アーム毎に設けられ、各変速作動アームの操作角を検出する一対の角度センサを備えるとともに、少なくとも一方の角度センサをリンクアームに連結し、該リンクアームの検出角度を変速作動アームの操作角と見做すにあたり、
前記ゲージは、アーム長さ調整部材に設けられるとともに、角度センサのセンサアームに連結され、アーム長さ調整に際しては、アーム長さ調整部材と一体的に移動してセンサアームとの連結位置を変更することにより、センサアームの回動範囲を自動的に調整することを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項1】
左右一対のクローラ走行装置と、
クローラ走行装置毎に設けられ、各クローラ走行装置の動力を無段階に変速する左右一対の油圧式無段変速装置と、
油圧式無段変速装置毎に設けられ、各油圧式無段変速装置の変速作動アームと走行操作具を機械的に連結し、走行操作具の操作に応じて変速作動アームを回動させる左右一対の連結リンク機構とを備える作業車両において、
各連結リンク機構に設けられるリンクアームのうち、少なくとも一方をアーム長さ調整可能に構成するにあたり、アーム長さ調整可能なリンクアームは、アーム本体に対する位置変更に基づいて、リンクアームのアーム長さを調整するアーム長さ調整部材を有し、該アーム長さ調整部材又はアーム本体に、アーム長さ調整部材の基準位置を示すゲージを設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記油圧式無段変速装置の変速作動アーム毎に設けられ、各変速作動アームの操作角を検出する一対の角度センサを備えるとともに、少なくとも一方の角度センサをリンクアームに連結し、該リンクアームの検出角度を変速作動アームの操作角と見做すにあたり、
前記ゲージは、アーム長さ調整部材に設けられるとともに、角度センサのセンサアームに連結され、アーム長さ調整に際しては、アーム長さ調整部材と一体的に移動してセンサアームとの連結位置を変更することにより、センサアームの回動範囲を自動的に調整することを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−41941(P2012−41941A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180862(P2010−180862)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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