作業車輌
【課題】エンジンの回転速度を低減する低回転制御を行う作業車輌の操作性を向上する。
【解決手段】緊急ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが作動すると(ステップS2)、作業者の操作によりエンジンの回転速度の変更が規制される(ステップS4)と共に、その回転速度を、アイドリング回転速度とする(ステップS5)制動時回転制御が実行される。この制動時回転制御は、アクセルレバーがアイドリング位置に操作される(ステップS8)と解除される(ステップS9)。また、同様に車輌が走行も作業もしていない際に、エンジンの回転速度を、アイドリング回転速度にするデセル制御(ステップS11)も、アクセルレバーがアイドリング位置に操作されると解除される。
【解決手段】緊急ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが作動すると(ステップS2)、作業者の操作によりエンジンの回転速度の変更が規制される(ステップS4)と共に、その回転速度を、アイドリング回転速度とする(ステップS5)制動時回転制御が実行される。この制動時回転制御は、アクセルレバーがアイドリング位置に操作される(ステップS8)と解除される(ステップS9)。また、同様に車輌が走行も作業もしていない際に、エンジンの回転速度を、アイドリング回転速度にするデセル制御(ステップS11)も、アクセルレバーがアイドリング位置に操作されると解除される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車輌のエンジン回転速度の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トラクタや、建築機械などの作業車輌において、コモンレール式のエンジンが搭載されるようになり、エンジンの回転速度を電気的に制御可能になったことで、様々な制御が行われるようになっている。
【0003】
このエンジンの回転速度制御として、従来、例えばPTOクラッチの切り状態及び走行停止状態の両者が検知されることに基づいて所定のアイドリングセット状態になるまでアクセルダウンさせるデセル制御や(特許文献1参照)、ブレーキが制動状態の際にエンジンの回転速度を低減させる低減制御(特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
一方、作業機が上昇していることに基づいて、上記デセル制御を実行するトラクタにおいて、該作業機を上昇したまま作業を中断した場合、エンジンの回転速度が低下状態であることを忘れて、作業機を下降させると該低下状態が解除されて不意に車速が増速されることがあった。そこで、作業機を上昇して所定時間が経過すると、作業機を下降させてもアクセルレバーを作業者が操作するまではエンジンの回転速度を復帰させないようにしたトラクタが案出されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2006−258060号公報
【特許文献2】特許第3043356号公報
【特許文献3】特開第2000−179370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3に記載のように、アクセルレバーを操作することによって、デセル制御を解除するようにすると、エンジンの回転速度が低いためにアクセルレバーを増速操作した場合には、エンジンの回転速度が元の回転速度に復帰すると共に、更にそこからエンジン回転速度が上昇するため、依然として操作性を損なう虞があった。
【0007】
また、上記低減制御においても、ブレーキから足を離した際に低減制御を解除するように構成すると、上述したデセル制御の場合と同様にエンジン回転速度が元の状態に復帰して不意に機体が加速すると共に、操作性を損なう虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、エンジンの回転速度を所定の回転速度まで低減させる低回転制御を、アクセルレバーの操作に基づいたエンジンの回転速度が上記低回転制御時の回転速度以下になった際に解除し得るようにしたことによって、上記課題を解決した作業車輌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、機体(3)に搭載されたエンジン(4)と、該エンジン(4)の回転速度を操作するアクセルレバー(16)と、前記機体(3)の走行を制動するブレーキ(12,45)と、前記エンジン(3)からの動力により駆動する作業機(18)と、を備えた作業車輌(1)において、
前記アクセルレバー(16)の操作に基づいて前記エンジン(4)の回転速度を設定するアクセル制御手段(50)と、
前記エンジン(4)の回転速度を、前記アクセル制御手段(50)により設定された回転速度から所定の回転速度まで低減させる低回転制御を行う低回転制御手段(51)と、
前記アクセルレバー(16)が操作されて前記アクセル制御手段(50)により設定される前記エンジン(4)の回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際に、前記低回転制御を解除し得る低回転制御解除手段(55)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0010】
また、具体的には、前記低回転制御手段(55)は、前記エンジン(4)と前記作業機(18)との間に介装された作業機クラッチ(24)が切断された状態で、前記作業機(18)の昇降操作及び前記機体(3)の走行が所定時間に亘って行われないことを検出した際に、前記エンジン(4)の回転速度を前記所定の回転速度まで低減させるデセル制御を行うデセル制御手段(56)を有し、
前記低回転制御解除手段(55)は、前記低回転制御としての前記デセル制御を、前記アクセル制御手段(50)により設定される前記エンジン(4)の回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際、あるいは、前記アクセル制御手段(50)により設定される前記エンジン(4)の回転速度が、前記所定の回転速度以下になりかつ、前記作業機クラッチ(24)が接続されるか、前記作業機(18)が昇降操作されるか、前記機体(3)が走行するか、の少なくともいずれか1つの条件が満たされた際に、解除する、と好適である。
【0011】
更に、前記低回転制御手段(51)は、前記ブレーキ(12,45)が制動状態になった際に前記エンジン(4)の回転速度を前記所定の回転速度まで低減させ、かつ該所定の回転速度から前記エンジン(4)の回転速度の変更を禁止する制動時回転制御を行う制動時回転制御手段(57)を有し、
前記低回転制御解除手段(55)は、前記低回転制御としての前記制動時回転制御を、前記アクセル制御手段(50)により設定される前記エンジン(4)の回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際に、解除する、と好適である。
【0012】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、エンジンの回転速度を所定の回転速度まで低減させる低回転制御から復帰する条件として、アクセルレバーの設定に基づくエンジンの回転速度が上記所定の回転速度以下となることを必要としたので、低回転制御が解除された際に作業者の意図に反してエンジン回転速度が急激に上昇することを防止できる。また、このような作業者の意図に反したエンジンの回転速度の上昇により、作業車輌の操作性を損なうことがない。
【0014】
請求項2に係る発明によると、車輌が走行していない、PTOクラッチが切断されている、作業機が昇降操作されていないことを条件として、エンジンの回転速度を所定の回転速度まで低減するデセル制御を実行するため、無駄な燃料の消費及び騒音を減少させることができる。また、作業状態に復帰するには、アクセルレバーの設定に基づくエンジンの回転速度が所定の回転速度以下になる必要があるため、デセル制御から復帰する際に作業者の意図に反してエンジンの回転速度が急激に上昇することがない。
【0015】
請求項3に係る発明によると、機体が制動状態になった際に、エンジンの回転速度を所定の回転速度まで低減させると共に、該所定の回転速度からエンジンの回転速度を変更させることを禁止したため、ブレーキから足を離した際にエンジンの回転速度が復帰して機体が加速することがなく、急発進することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの側面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの運転操作部を示す平面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのメータパネルを示す正面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのレバー周り及びスイッチパネルを示す平面図。
【図5】図4の変速走行レバーを示す要部拡大図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの制御ブロック図。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのデセル制御設定のフローチャート。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのデセル制御のフローチャート。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの呼出制御設定のフローチャート。
【図10】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの回転上限設定のフローチャート。
【図11】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの呼出制御のフローチャート。
【図12】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの増減制御のフローチャート。
【図13】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの増減制御のフローチャート。
【図14】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのアクセル制御のフローチャート。
【図15】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのメインフローチャート。
【図16】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの走行変速レバー周りの変形例を示す模式図。
【図17】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの走行変速レバー周りの変形例を示す模式図。
【図18】本発明の第2の実施形態に係るトラクタのデセル制御のフローチャート。
【図19】本発明の第3の実施形態に係るトラクタのデセル制御のフローチャート。
【図20】本発明の第4の実施形態に係るトラクタの増減制御のフローチャート。
【図21】本発明の第5の実施形態に係るトラクタの増減制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態に係る作業用車輌としてのトラクタについて説明をする。
【0018】
<第1の実施形態>
[トラクタの概略構成]
図1に示すように、トラクタ1は、左右一対のクロ―ラ走行装置2に支持された機体3を有しており、該機体3の前方には、エンジン4がボンネット5に覆われる形で搭載されている。該ボンネット5の後方側には、キャビン6が設けられており、キャビン6内には、作業者が着座して運転操作を行う運転操作部7(図2参照)が設けられている。また、機体3の後端部には、3点リンク機構8及びPTOシャフト14が設けられており、この3点リンク機構8によってロータリ耕運機やハローなどの作業機18が昇降自在に連結されるようになっていると共に、これら作業機18には上記PTOシャフト14によってエンジン4からの動力が伝達されるようになっている(図6も合わせて参照)。
【0019】
図2に示すように、上記運転操作部7は、その中央部に運転者が着座する運転座席9が配設されており、該運転座席9の前方側には、ステアリングハンドル10、メータパネル11などが設けられていると共に、メータパネル11の下方側には、緊急時に操作される緊急停止ブレーキペダル12及び駐車ブレーキスイッチ13が設けられている。また、運転座席9の右側方には、走行HST(油圧式無段変速装置)の油圧ポンプの斜板を操作して変速する走行変速レバー15、エンジン4の回転速度を手動で操作するアクセルレバー16、作業機の高さ位置を操作するポジションコントロールレバー17及び複数の自動制御スイッチが配設されているサイドパネル19が設けられていると共に、運転座席9の左側方には、PTOシャフト14の回転を変速するPTO変速レバー20が設けられている。
【0020】
上記メータパネル11は、図3に示すように、中央部にエンジンの回転速度を示すタコメータ21が設けられていると共に、その左方には、燃料計22や各種の警告・表示ランプ群Iが設けられている。また、タコメータ21の右方には、警告・表示ランプ群Iの他に、液晶パネル23が組み込まれており、制御部30の細部の設定を下方の選択スイッチ群25によって操作可能に構成されている。
【0021】
また、図4に示すように、サイドパネル19には、エンジン4から作業機18への伝動系に介装したPTOクラッチ(作業機クラッチ)24を断接(入切)するPTOスイッチ26、エンジン4の回転速度を予め記憶した回転速度に設定する回転メモリスイッチ27などが設けられており、該回転メモリスイッチ27は、それぞれ異なった回転速度を呼び出す回転メモリスイッチA27a及び回転メモリスイッチB27bを有している。
【0022】
また、上記走行変速レバー15には、図5に示すように、エンジン回転速度を微調整(変更、増減)するアップ・ダウンスイッチ(調整スイッチ)29、作業機18を設定した所定の上昇位置と下降位置とに昇降指令するクイックアップスイッチ28が設けられている。これらアップ・ダウンスイッチ29及びクイックアップスイッチ28は、走行変速レバー15の上部に形成されたグリップ部15aに設けられており、該クイックアップスイッチ28は、グリップ部15aの前面に、アップ・ダウンスイッチ29は、グリップ部15aの左側面に配設されている。
【0023】
また、アップ・ダウンスイッチ29は、上部又は下部を押した後に指を離すと中立位置に復帰するモーメンタリスイッチとなっており、スイッチの上部がアップスイッチ29aとなって押操作するとエンジン回転速度が増加し、スイッチの下部がダウンスイッチ29bとなって押操作するとエンジン回転速度が減少するように構成されている。
【0024】
ついで、トラクタ1の制御部30について図6に基づいて説明をする。図6に示すように、トラクタ1の制御部30は、それぞれマイクロコンピュータからなるメインコントロールユニット31、フロントコントロールユニット32、エンジンコントロールユニット(ECU)33、メータユニット35及び液晶コントロールユニット36を有しており、これらのマイコンがシリアル通信もしくはコントロールエリアネットワーク(以下、CANという)などで接続して互いに通信可能に構成されている。
【0025】
上記メインコントロールユニット31は、機体3の走行制御や作業機18の昇降制御など主に機体全般の制御を担当するマイコンであり、その入力側には、上記アップ・ダウンスイッチ29のアップスイッチ29a及びダウンスイッチ29b、回転メモリスイッチ27の回転メモリスイッチA27a及び回転メモリスイッチB27b、PTOスイッチ26、クイックアップスイッチ28の他に、アクセルレバー16の位置(操作)を検出するアクセルセンサ37、緊急停止ブレーキペダル12が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチ39、ポジションコントロールレバー17の回動角を検出するポジションセンサ40、走行HSTの油圧ポンプの傾転角度を検出する左右のポンプレバーセンサ41a,41b、エンジン4を省エネルギーモードで駆動させるエコモードスイッチ42などが接続されている。
【0026】
また、メインコントロールユニット31の出力側には、3点リンク機構8の昇降シリンダへの油圧の供給を制御する油圧上昇比例バルブ43a及び油圧下降比例バルブ43bと、上記ブレーキスイッチ39からの信号に基づいて走行HSTの油圧モータを制動状態にするブレーキバルブ45と、PTOクラッチ24の断接を制御するPTO比例バルブ46などが接続されている。
【0027】
更に、メインコントロールユニット31は、エンジン4の回転速度を制御する部分として、アクセルレバー16の操作に基づいてエンジン4の回転速度を設定するアクセル制御手段50と、エンジン4の回転速度をアクセル制御手段50により設定された回転速度からアイドリング回転速度(所定の回転速度)まで低減させる低回転制御を行う低回転制御手段51と、記憶されている回転速度を呼び出して現在のエンジン4の回転速度とする呼出制御を行う呼出制御手段52と、アップ・ダウンスイッチ29の操作に基づいて、エンジンの回転速度を所定量ごとに変更(増減)し得る増減制御を行う増減制御手段(目標回転設定手段)53と、を有していると共に、これらの自動制御を解除する低回転制御解除手段55、増減制御解除手段54などの解除手段を有している。
【0028】
なお、上記低回転制御としては、詳しくは後述するデセル制御と制動時回転制御との2つの制御があり、低回転制御手段51は、該デセル制御を行うデセル制御手段56と、制動時回転制御を行う制動時回転制御手段57と、を有している。なお、上記自動制御を行う実行手段及び自動制御を解除する解除手段は、制御部30のどのマイコンに設けられても良い。
【0029】
一方、メインコントロールユニット31とシリアル通信を行う上記フロントコントロールユニット32は、主にメータユニット35及び液晶パネル23の表示を制御する液晶コントロールユニット36に電気指令を出力するマイコンであり、メータユニット35及び液晶コントロールユニット36とはCANによって接続されている。このフロントコントロールユニット32には、液晶パネル上において決定された、エンジン回転速度の設定(回転上限切替60、回転上限設定61)、デセル制御の設定(オートデセル切替62)及びエンジン出力特性設定(ドループ切替63、エコモード)などの設定が入力されるように構成されていると共に、フロントコントロールユニット32を介して上記メインコントロールユニット31及びエンジンコントロールユニット33にその設定内容が通信される。
【0030】
また、エンジンコントロールユニット33は、主にエンジン4の回転速度の制御を行うマイコンであり、フロントコントロールユニット32とCANによって接続されていると共に、該フロントコントロールユニット32を介してメインコントロールユニット31ともエンジン制御に関する電気指令を通信可能に構成されている。このエンジンコントロールユニット33の出力側には、メインコントロールユニット31にも分線されて接続されているアクセルセンサ37、アクセルレバー16のアイドル位置を検出してアクセルセンサ37が正常であることを保障するアイドルスイッチ65、エンジン4の回転速度を検出する回転ピックアップセンサ66及び冷却水の水温を検出する冷却水温センサ67などが接続されており、エンジンコントロールユニット33は、これら各センサからの信号及びメインコントロールユニット31からの電気指令に基づいて、エンジン4の回転速度、回転速度の変化割合及び出力特性を変更する。
【0031】
[エンジンの回転速度制御]
ついで、上記エンジン4の回転速度制御について説明をする。
【0032】
[デセル制御]
まず、上述したデセル制御について図7及び図8に基づいて説明をする。デセル制御は、PTOクラッチ24が切断された状態で、作業機18の昇降操作及び機体3の走行が所定時間に亘って行われないことを検出した際に、エンジン4の回転速度をアイドル回転状態(所定の回転速度)まで低減させる制御であり、図7に示すように、液晶パネル上の設定によってそのオン(実行)・オフ(非実行)の切替えが行われる。
【0033】
具体的には、液晶パネル23にてデセル制御の設定画面が呼び出され(ステップS20)、デセル制御のオンが選択されるとオートデセル入りのフラグが設定されると共に、デセル制御がリセットされる(ステップS22)。また、デセル制御のオフが選択されるとオートデセル切りのフラグが設定されると共に、デセル制御がリセットされる(ステップS23)。
【0034】
そして、デセル制御に移行するまでのタイムアップ時間(上記所定時間)の設定の変更が行われる場合(ステップS24)、早い、標準、遅いの3種類ある待ち時間T0,T1,T2(T0<T1<T2)の中から、何れか1つが選択されて設定されると共に、その後、復帰する(ステップS25〜S29)。
【0035】
一方、実際のデセル制御は、図8に示すように、まず、上記デセル制御の設定にてデセル制御がオン(入)となっているかが判断され(ステップS30)、デセル制御がオフ(切)の場合は、そのままデセル制御を行わずに復帰する(ステップS31)。また、デセル制御がオンの場合、作業機18の油圧昇降が停止していること(作業機18が昇降操作されていないこと)(ステップS32)、PTOクラッチ24が切断されていること(ステップS33)、機体3の走行が停止していること(ステップS35)、の何れの条件も満たしていると、タイマーがセットされる(ステップS36、ステップS39)。そして、タイムアップ時間T0,T1,T2が経過すると(ステップS37)、エンジン4の回転速度がアイドリング回転速度に設定されてデセル制御が実行され(ステップS38)、このデセル制御が実行されると復帰する(ステップS31)。
【0036】
一方、上記いずれか1つの条件でも満たしていない場合、アクセルレバー16がアイドリング位置(最低回転速度位置)にいるかが判断され(ステップS40)、アイドリング位置にある場合にはデセル制御を解除し(ステップS41)、詳しくは後述する呼出制御(メモリA,B)をオフすると共に増減制御(回転増減調整)をオフする(ステップS42)。そして、これら呼出制御及び増減制御をオフすると、タイマーをリセットして(ステップS43)、復帰する(ステップS31)。また、アクセルレバー16がアイドリング位置にない場合には、単にタイマーをリセットして(ステップS43)、復帰する(ステップS31)。
【0037】
なお、作業機18の油圧昇降が停止していることは、作業機18を昇降制御する油圧上昇比例バルブ43a及び油圧下降比例バルブ43bに対してメインコントロールユニット31から3点リンク機構8を昇降させる電気指令が出力されていないこと(ポジションセンサ40によりポジションコントロールレバー17の操作が検出されていないこと)によって判断され、PTOクラッチ24が切断されていることは、PTOスイッチがオフされていることによって判断され、機体3が停止していることは、左右のポンプレバーセンサ41a,41bが共に中立の範囲であること(走行変速レバー15(ポジションセンサ40)が操作されていないこと)によって判断される。
【0038】
[呼出制御]
ついで、呼出制御について図9乃至図11に基づいて説明をする。呼出制御は、回転メモリスイッチA27a又は回転メモリスイッチB27bを押すことで、エンジン4の回転速度を記憶された所望の回転速度に切替えることができる制御であり、図11に示すように、液晶パネル上の設定によって呼び出す回転速度が決められる。
【0039】
具体的には、液晶パネル23にて呼出制御の設定画面が呼び出され、まず、回転メモリスイッチA27aにより呼び出されるメモリA回転速度を記憶するメモリAの設定が行われるかが判断され(ステップS50)、メモリAの設定が行われる場合には、基本的に、現在の回転速度をメモリA回転速度として記憶する(ステップS51)。一方、この時、エンジン回転速度の上限設定がなされており(ステップS52)、その上限回転速度がメモリA回転速度よりも小さい場合(ステップS53)は、メモリA回転速度を現在のエンジン回転速度ではなく、上限回転速度に設定する。
【0040】
また、回転メモリスイッチB27bにより呼び出されるメモリB回転速度も同様に、まず、メモリBの設定があると(ステップS55)、現在のエンジン回転速度(ステップS56)をメモリB回転速度とし(ステップS56)、このエンジン回転速度が上限設定により設定された上限回転速度よりも高い場合には、上限回転速度をメモリB回転速度として設定して復帰する(ステップS57〜S60)。
【0041】
なお、上記上限回転速度設定も、図10に示すように液晶パネル上にて行われ、その設定画面が呼び出されると、エンジン回転速度の上限設定のオン・オフ(入切)の設定(スッテップS61〜64)ができるようになっていると共に、上限回転速度を変更する場合には、その数値を所望の回転速度に設定できるようになっている(ステップS65〜S67)。
【0042】
一方、実際の呼出制御は、図11に示すように、まず、デセル制御が実行されているかどうかが判断され(ステップS70)、デセル制御が実行中の場合には、呼出制御を実行せずに復帰する(ステップS80)。即ち、デセル制御が呼出制御に対して優先して実行される。また、デセル制御が実行されていない場合において、回転メモリスイッチA27aがオン(入)されると(ステップS71、S72)、メモリAのフラグがオンされると共に、背反的にメモリBのフラグがオフされてエンジン4の設定回転速度が、メモリA回転速度に設定される(ステップS73、S74)。また、回転メモリスイッチA27aがオフされた場合には(ステップS75)、メモリAのフラグがオフされる。
【0043】
また、メモリAに続いてメモリBについて呼出制御が行われたかが判断されると共に(ステップS36)、回転メモリスイッチB27bがオン(入)されると(ステップS71、S72)、メモリBのフラグがオンされると共に、背反的にメモリAのフラグがオフされてエンジン4の設定回転速度が、メモリB回転速度に設定される(ステップS78、S79)。また、回転メモリスイッチB27bがオフされた場合には(ステップS81)、メモリBのフラグがオフされる。
【0044】
[増減制御]
ついで、増減制御について図12及び図13に基づいて説明をする。増減制御は、アップスイッチ29a及びダウンスイッチ29bによってエンジン回転速度を微調整する制御であり、具体的には、図12に示すように、まず、デセル制御が実行されているかどうかが判断され(ステップS90)、デセル制御が実行されている際にはそのまま復帰する(ステップS91)。即ち、デセル制御は、増減制御に優先されて実行される。
【0045】
また、デセル制御が実行されていない場合、増減制御のオン・オフを判断するフラグがセットされているかどうかが判断され(ステップS92)、フラグがオフの場合(即ち、増減制御が行われていない場合)にアップスイッチ29aが操作されると(ステップ93)、上記フラグがセットされ(ステップS94)、正規化を行うかどうかが判断される(ステップS95)。
【0046】
ここで、エンジン回転速度の正規化とは、例えば、アクセルレバー16によってエンジン4の回転速度が設定されると、その回転速度はアナログ的に増減するため、切りの良い数字とは限らず、エンジン4の回転速度と連動しているPTOシャフト14の回転速度を作業機18の適正回転速度(切りの良い数字であることが多い)に合わせ易くすることを目的として、エンジン4の回転速度を切りの良い数字に設定することである。
【0047】
そして、上記正規化の判断で正規化が必要であると判断されると、正規化が行われる(ステップS96)。具体的には、アップスイッチ29aが押された際に、エンジン回転速度の下二桁が50未満である場合には、その下二桁を「50」に置き換えると共に、エンジン回転速度の下二桁が50より大きい場合には、その下二桁の値に(100−下二桁の値)の数を加算する。例えば、現在のエンジンの設定回転速度が1520RPMであった際には、設定回転速度を50RPM刻みの値(1550RPM)に設定する。
【0048】
一方、正規化の必要がない場合、作業者がアップスイッチ29aを押している時間に応じて、「短押」であれば現在のエンジン回転速度に対して50RPM増やし、「長押」であれば現在のエンジン回転速度に対して500RPM増やし、これが「連続」した際には、現在のエンジン回転速度に対して500RPMずつ増やして行く(ステップS97)。
【0049】
次に、ダウンスイッチ29bが操作されているかどうかが判断される(ステップS98)。このエンジン回転速度の低減調整は、アップスイッチ29aの場合と同様に、ダウンスイッチ29bが押されると、増減制御の入フラグがセットされ(ステップS99)、正規化の必要がない場合には、作業者がダウンスイッチ29bを押している時間に応じて、「短押」であれば現在のエンジン回転速度に対して50RPM減らし、「長押」であれば現在のエンジン回転速度に対して500RPM減らし、これが「連続」した際には、現在のエンジン回転速度に対して500RPMずつ減らして行く(ステップS100、S101)。また、正規化が必要な場合には、正規化される(ステップS102)。
【0050】
即ち、上記エンジン4の設定回転速度の増減調整を言い換えると、増減制御手段53は、エンジン4の回転速度の範囲を、50RPM(所定の単位回転速度、所定量)ごとに分割してそれぞれを目標値として設定し、アップ・ダウンスイッチ29の操作に基づいて、エンジン4の回転速度をこの目標値単位で変更している。つまり、アップ・ダウンスイッチ29によるエンジン回転速度の調整は、アクセルレバー16の操作とは違い、エンジン4の回転速度が、0RPMから50RPMごとに設定されたいずれかの目標値になるように制御されており、アップ・ダウンスイッチ29の押時間に応じて、50RPM単位で目標値を移動するか、500RPM単位で目標値を移動するか、即ち変更するエンジン4の回転速度の量を変化させている。
【0051】
また、上記正規化とは、エンジン回転速度が目標値にない(目標値単位で前記エンジンの回転速度が制御されていない)状態から、アップ・ダウンスイッチ29が操作されて目標値単位でエンジンの回転速度を制御する状態に移行する場合、アップ・ダウンスイッチ29の押時間に係らず、回転速度の変更方向の最も近い目標値にエンジンの回転速度を設定するということができる。
【0052】
上述したエンジンの設定回転速度の増減調節が行われると、増減制御のフラグがオンの場合(即ち増減調節が行われた場合)(ステップ103)、メモリA、Bのオン/オフにより呼出制御が実行されているかが判断され(ステップS104)、これらメモリA、Bのどちらか一方がオンの場合は、呼出制御が実行されていると判断される。そして、実行されている側のメモリ回転速度が、エンジン4の設定回転速度よりも大きい場合(ステップS105)、設定回転速度をそのメモリ回転速度に合わせる(ステップS106)。
【0053】
また、回転速度の上限設定がある場合には(ステップS107)、エンジン4の設定回転速度が上限回転速度よりも大きくないかが判断され(ステップS108)、設定回転速度が上限回転速度よりも大きくなった場合には、上限回転速度を優先して、該上限回転速度を設定回転速度とする(ステップS109)。
【0054】
即ち、上記増減制御で微調整されたエンジン回転速度は、呼出制御が実行されている際には、その呼び出された回転速度より低くなることが無いように制御され、上限回転速度が設定されている際には、その上限回転速度よりも大きくならないように制御される。また、当然、この増減制御によってエンジン4の回転速度は、アイドリング回転速度以下にはならない。
【0055】
一方、この増減制御は、図12のステップS110、S111に示すように、アクセルセンサ値と設定回転速度とが一致した場合、即ち、上述したアクセル制御手段50によって設定されるエンジン回転速度と、増減制御手段によって設定されるエンジン回転速度とが一致した場合に、その制御が増減制御解除手段54によってオフ(切)される。
【0056】
[アクセル制御]
ついで、アクセル制御について図14に基づいて説明をする。アクセル制御は、アクセルレバー16の操作によって手動でエンジン4の回転速度を設定できるようにした制御であり、図14に示すように、デセル制御が実行されていない(デセル制御のフラグがオフ、ステップS110)、呼出制御が行われていない(メモリA,Bが共にオフ、ステップS111)、増減制御が実行されていない(回転増減調節がオフ、ステップS112)ことを条件として、エンジン4の設定回転速度をアクセルセンサ37の検出値に基づいた回転速度に設定する。
【0057】
そして、回転速度の上限設定がなされているかどうかを判断し(ステップS114)、上記設定回転速度が上限回転速度よりも大きい場合には(ステップS115)、該上限回転速度を設定回転速度とする(ステップS116、117)。
【0058】
[制動時回転制御及び全体動作]
ついで、図15に基づいて制動時回転制御及びトラクタ1の全体動作を説明する。制動時回転制御は、ブレーキが制動状態になった際にエンジン4の回転速度をアイドリング回転速度(所定の回転速度)まで低減させ、かつアイドリング回転速度からエンジンの回転速度の変更を禁止する制御である。
【0059】
具体的には、図15に示すように、緊急停止ブレーキペダル12が踏み込まれてブレーキ44が作動すると(ステップS2)、上述した呼出制御(メモリA,B)及び増減制御(フラグ切)が解除され(ステップS3)、アクセルレバー16、アップ・ダウンスイッチ29によるエンジン4の回転速度の変更を禁止する回転変更規制が実行(オン)される(ステップS4)。そして、エンジン回転速度をアイドル回転速度まで低減させ、復帰する(ステップS6)。
【0060】
また、通常の走行時には、制御部30は、接続されている各種センサからの信号を読込み(ステップS1)、ブレーキスイッチ39がオフされていることによって、ブレーキ44が作動してないと判定すると(ステップS2)、上記回転変更規制がされていないかを判断する(ステップS7)。そして、回転変更規制がない場合には、上述した、デセル制御、呼出制御、増減制御、アクセル制御の順で各制御が実行されているかを判断し(ステップS11〜S14)、設定された回転速度をエンジン4の回転速度とする。
【0061】
一方、上記制動時回転制御が実行されて回転変更規制が実行されている場合には、デセル制御、呼出制御、増減制御、アクセル制御の判断を行わずに復帰するため(ステップS10、S6)、制動時回転制御によって設定されたアイドル回転速度が維持される。即ち、制動時回転制御は、どのエンジン回転速度制御よりも優先されて実行される。
【0062】
この制動時回転制御は、アクセルレバー16がアイドリング回転速度位置(LOW)に設定されると(ステップS8)、回転変更規制がオフされて解除される(ステップS9)。また、図8のステップS40に示すように、デセル制御もその解除条件として、アクセルレバー16がアイドリング回転速度位置に設定されることを有しており、言い換えると、低回転制御解除手段55は、これら制動時回動制御手段及びデセル制御からなる低回転速度制御を、アクセルレバー16が操作されてアクセル制御手段50により設定されるエンジンの回転速度が、アイドリング回転速度になった際に、解除し得る。
【0063】
上述したように、エンジン4の回転速度を、例えば、アイドリング回転速度である所定の回転速度まで低減させるデセル制御や制動時回転制御などの低回転制御から復帰する条件として、アクセルレバー16の設定に基づくエンジン4の回転速度が低回転制御により低減された所定の回転速度以下になることを必要としたので、低回転制御が解除された際に作業者の意図に反してエンジン回転速度が急激に上昇することを防止できる。また、このような作業者の意図に反したエンジンの回転速度の上昇により、作業車輌の操作性を損なうことがない。
【0064】
即ち、本実施形態では、上述したように、制動時回転制御は、アクセルレバー16がアイドリング位置となって、アクセル制御手段50によって設定されるエンジン4の回転速度がアイドリング回転速度になった際に、低回転制御解除手段55により解除される。そのため、ブレーキから足を離した際にエンジンの回転速度が復帰して機体が加速することがなく、機体が急発進することを防止することができる。
【0065】
また、デセル制御の場合、作業機18の昇降操作、PTOクラッチ24の入操作、機体3の走行操作のいずれかが行われた際に、アクセル制御手段50によって設定されるエンジン4の回転速度がアイドリング回転速度になっていると、低回転制御解除手段55により解除される。このため、作業者は、無意識に上記低回転制御を解除してしまい、作業機18の回転速度や車速が急に上昇してしまうことを防止できると共に、アイドリング回転速度から円滑に作業を開始することができる。
【0066】
更に、所定の単位回転速度ごとにエンジン4の回転速度を変更し得るアップ・ダウンスイッチ29を設けたため、作業者は、作業中にエンジン4の回転速度が足りないと感じた際や、走行スピードが出すぎてしまったと感じた場合、アップ・ダウンスイッチ29が、走行変速レバー15のグリップ部15aに設けられたことと相俟って、走行変速レバー15から手を離して、いちいち該走行変速レバーを同じ側にあるアクセルレバー16を操作せずとも状況に応じてエンジン4の回転速度を調整することができる。
【0067】
また、エンジン4の回転速度をアップ・ダウンスイッチ29によって、所定量ずつ増減させることができるため、一定量ずつエンジン回転速度を変更したい場合、アクセルレバー16のように回転速度が目標回転速度から行き過ぎてしまうようなことが無く、操作が容易であると共に、このようなアップ・ダウンスイッチ29をアクセルレバー16と共に設けたことによって、目標値近傍までは、一度に大きくエンジン回転速度を変更できるアクセルレバー16によって調整し、目標回転速度付近になった場合になると、アップ・ダウンスイッチ29でエンジン4の回転速度を調整することができ、エンジン回転速度を迅速かつ正確に行うことができる。
【0068】
更に、アップ・ダウンスイッチ29の操作に基づいて、エンジン4の回転速度の範囲を所定量ごとに分割した目標値単位でエンジン4の回転速度を変更するように構成したことによって、エンジン4の回転速度が上記目標値と一致していない状態から、アップ・ダウンスイッチ29を操作することによってエンジン4の回転速度を調整する場合、その回転速度の操作方向の最も近い目標値をエンジン4の回転速度に設定することができ、基準時の回転速度が目標値となるため、その後、エンジン4の回転速度を容易に所望の回転速度まで調整することができる。
【0069】
また、アップ・ダウンスイッチ29の押時間に応じてエンジン回転速度の変化量を変更させたことによって、所望の回転速度までの差に応じて、作業者はアップ・ダウンスイッチ29の操作によるエンジン回転速度の変化率を調整でき、エンジン回転速度の調整の迅速化を図ることができると共に操作性が向上した。
【0070】
なお、上記アップ・ダウンスイッチ29は、図16及び図17に示すように、丸ハンドル仕様ではなく、2本レバー仕様のトラクタ1の場合には、この2本レバー72とは反対側に設けられた作業機18の操作パネル71にアップ・ダウンスイッチ29を設けてもよい。具体的にアップ・ダウンスイッチ29は、図16に示すように、作業機18を昇降させる昇降スイッチ70の近傍に配設されており、これにより、作業者は、左手で上記2本レバー72を操作しつつ、右手でアップ・ダウンスイッチ29を操作することができる。また、右手で作業機18を操作しつつエンジン4の回転速度を操作することもできる。
【0071】
また、上記アップ・ダウンスイッチ29の操作による増減制御を、上記低回転速度制御時と同様に、アクセルレバー16で操作されたエンジン4の回転速度が、増減制御時(現在)の回転速度になった際に、解除するようにしたことによって、増減制御が解除した際に、エンジンの回転速度が急に変動することを防止することができる。また、増減制御をアクセルレバー16の操作によって解除可能にしたことによって、解除操作が容易になり、操作性を向上させることができる。
【0072】
なお、上記低回転制御は、耕耘作業を行う通常の作業回転速度よりも低い低回転速度であれば、必ずしもアイドリング回転速度でなくとも良い。また、増減制御は、基準時のエンジン回転速度から所定量ずつエンジンの回転速度を増減させるようにしても良い。即ち、現在のエンジンの設定回転速度が1520RPMであった際には、設定回転速度を1570RPMに設定しても良い。また、この所定量の値を操作可能にして、所望の回転速度が目標値になるように設定可能に構成してもよい。
【0073】
<第2の実施形態>
ついで本発明に係る第2の実施形態について、図18に基づいて説明をする。この第2の実施形態は、第1の実施形態とデセル制御の解除条件で相異しているものであり、この相違点についてのみ説明をする。
【0074】
図18に示すように、第2の実施形態に係るトラクタ1では、デセル制御が入である場合(ステップS30)、作業機18の昇降操作がされているかどうか(ステップS32)、PTOクラッチ24が切断されているかどうか(ステップS33)、機体3が停止しているかどうか(ステップS35)が判断され、このいずれかの条件を満たしていない場合、そのまま復帰する。
【0075】
また、上記条件を全て満たしている場合、デセル制御が実行されているかどうかが判断される(ステップS120)。デセル制御が実行されている場合には、アクセルセンサ37が検出した値がアイドリング回転速度であるかどうかが判断され(ステップS40)、アイドリング回転速度である場合には、デセル制御が解除される(ステップS41)。
【0076】
即ち、デセル制御の解除条件として、アクセルレバー16がアイドリング位置(Low位置)に操作れたことのみを条件とし、上記作業機18の昇降、PTOクラッチ24の切断、機体3の走行停止をその条件としないこととしている。
【0077】
このように、アクセルレバー16の操作のみを解除条件としても、デセル制御から復帰した際に、不意にエンジン4の回転速度が上昇してしまうことを防止することができる。
【0078】
<第3の実施形態>
ついで本発明に係る第3の実施形態について、図19に基づいて説明をする。この第3の実施形態は、第1の実施形態とデセル制御の解除条件で相異しているものであり、この相違点についてのみ説明をする。
【0079】
図19に示すように、第3の実施形態に係るトラクタ1では、デセル制御が入である場合(ステップS30)、作業機18の昇降操作がされているかどうか(ステップS32)、PTOクラッチ24が切断されているかどうか(ステップS33)、機体3が停止しているかどうか(ステップS35)が判断され、作業機18の昇降操作、PTOクラッチ24の接続動作があった場合には、デセル制御を解除するかどうかが判断される(ステップS40〜ステップS43)。
【0080】
一方、機体3の停止については、解除条件とはせず、走行変速レバー15の操作があったとしても、デセル制御を解除するかどうかを判断せずに復帰する。これにより、デセル制御が解除されたことによって、機体が急発進することを防止することができる。
【0081】
なお、作業機18の油圧昇降は、昇降時にエンジン4に連動して駆動するオイルポンプが出力不足に陥ることを防止することを目的として解除条件としていると共に、PTOクラッチ24の断切は、作業開始の判断条件として、デセル制御の解除条件としているが、これらのいずれか1つないし2つを解除条件から外しても良い。即ち、デセル制御の解除条件として、作業機18の昇降、PTOクラッチ24の断接、機体3の走行は、どのように組み合わせても良い。
【0082】
<第4の実施形態>
ついで本発明に係る第4の実施形態について、図20に基づいて説明をする。この第4の実施形態は、第1の実施形態と増減制御の解除条件で相異しているものであり、この相違点についてのみ説明をする。
【0083】
図20に示すように、第4の実施形態に係るトラクタ1では、増減制御が入である場合(ステップS92)、アクセルレバー16が所定量以上、低速側に操作されたかどうかが判断される(ステップS130)。そしてアクセルレバー16が低速側に所定量以上、操作されている場合には、増減制御がオフ(切)されて復帰するようになっている。
【0084】
即ち、増減制御の解除条件を、アクセルレバー16が低速側に所定量以上操作されることとしており、これにより、増減制御が解除された際に、エンジン4の回転速度が、急に増速することを防止できる。
【0085】
<第5の実施形態>
ついで本発明に係る第5の実施形態について、図21に基づいて説明をする。この第5の実施形態は、第1の実施形態と増減制御の解除条件で相異しているものであり、この相違点についてのみ説明をする。
【0086】
図21に示すように、第5の実施形態に係るトラクタ1では、増減制御が入である場合(ステップS92)、アクセルレバー16が例えば、アイドリング回転速度などの所定の低回転速度に設定されているかが判断され(ステップS140)、アクセルセンサ値が該所定回転速度である場合(ステップS141)、増減制御がオフ(切)されて復帰するようになっている。
【0087】
即ち、増減制御の解除条件を、アクセルレバー16が所定の低回転速度位置に操作されることとしており、これにより、増減制御が解除された際に、エンジン4の回転速度が、急に増速することを防止できる。
【0088】
なお、上記所定の低回転速度位置は、必ずしもアイドリング回転速度でなくともよく、その場合は、該低回転速度位置以上、アクセルレバー16が低速側に操作された際に増減制御が解除される。
【0089】
なお、上記第1乃至第5の実施形態では、トラクタを用いて説明したが、本発明は、コンバイン、田植機などの他の農業機械や、ブルドーザ等の建築機械など、どのような作業車輌にも適用することが出来ると共に、これら第1乃至第5に記載された発明は、どのように組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0090】
1 作業車輌(トラクタ)
3 機体
4 エンジン
16 アクセルレバー
18 作業機
24 作業機クラッチ
44 ブレーキ
50 アクセル制御手段
51 低回転制御手段
55 低回転制御解除手段
56 デセル制御手段
57 制動時回転制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車輌のエンジン回転速度の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トラクタや、建築機械などの作業車輌において、コモンレール式のエンジンが搭載されるようになり、エンジンの回転速度を電気的に制御可能になったことで、様々な制御が行われるようになっている。
【0003】
このエンジンの回転速度制御として、従来、例えばPTOクラッチの切り状態及び走行停止状態の両者が検知されることに基づいて所定のアイドリングセット状態になるまでアクセルダウンさせるデセル制御や(特許文献1参照)、ブレーキが制動状態の際にエンジンの回転速度を低減させる低減制御(特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
一方、作業機が上昇していることに基づいて、上記デセル制御を実行するトラクタにおいて、該作業機を上昇したまま作業を中断した場合、エンジンの回転速度が低下状態であることを忘れて、作業機を下降させると該低下状態が解除されて不意に車速が増速されることがあった。そこで、作業機を上昇して所定時間が経過すると、作業機を下降させてもアクセルレバーを作業者が操作するまではエンジンの回転速度を復帰させないようにしたトラクタが案出されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2006−258060号公報
【特許文献2】特許第3043356号公報
【特許文献3】特開第2000−179370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3に記載のように、アクセルレバーを操作することによって、デセル制御を解除するようにすると、エンジンの回転速度が低いためにアクセルレバーを増速操作した場合には、エンジンの回転速度が元の回転速度に復帰すると共に、更にそこからエンジン回転速度が上昇するため、依然として操作性を損なう虞があった。
【0007】
また、上記低減制御においても、ブレーキから足を離した際に低減制御を解除するように構成すると、上述したデセル制御の場合と同様にエンジン回転速度が元の状態に復帰して不意に機体が加速すると共に、操作性を損なう虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、エンジンの回転速度を所定の回転速度まで低減させる低回転制御を、アクセルレバーの操作に基づいたエンジンの回転速度が上記低回転制御時の回転速度以下になった際に解除し得るようにしたことによって、上記課題を解決した作業車輌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、機体(3)に搭載されたエンジン(4)と、該エンジン(4)の回転速度を操作するアクセルレバー(16)と、前記機体(3)の走行を制動するブレーキ(12,45)と、前記エンジン(3)からの動力により駆動する作業機(18)と、を備えた作業車輌(1)において、
前記アクセルレバー(16)の操作に基づいて前記エンジン(4)の回転速度を設定するアクセル制御手段(50)と、
前記エンジン(4)の回転速度を、前記アクセル制御手段(50)により設定された回転速度から所定の回転速度まで低減させる低回転制御を行う低回転制御手段(51)と、
前記アクセルレバー(16)が操作されて前記アクセル制御手段(50)により設定される前記エンジン(4)の回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際に、前記低回転制御を解除し得る低回転制御解除手段(55)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0010】
また、具体的には、前記低回転制御手段(55)は、前記エンジン(4)と前記作業機(18)との間に介装された作業機クラッチ(24)が切断された状態で、前記作業機(18)の昇降操作及び前記機体(3)の走行が所定時間に亘って行われないことを検出した際に、前記エンジン(4)の回転速度を前記所定の回転速度まで低減させるデセル制御を行うデセル制御手段(56)を有し、
前記低回転制御解除手段(55)は、前記低回転制御としての前記デセル制御を、前記アクセル制御手段(50)により設定される前記エンジン(4)の回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際、あるいは、前記アクセル制御手段(50)により設定される前記エンジン(4)の回転速度が、前記所定の回転速度以下になりかつ、前記作業機クラッチ(24)が接続されるか、前記作業機(18)が昇降操作されるか、前記機体(3)が走行するか、の少なくともいずれか1つの条件が満たされた際に、解除する、と好適である。
【0011】
更に、前記低回転制御手段(51)は、前記ブレーキ(12,45)が制動状態になった際に前記エンジン(4)の回転速度を前記所定の回転速度まで低減させ、かつ該所定の回転速度から前記エンジン(4)の回転速度の変更を禁止する制動時回転制御を行う制動時回転制御手段(57)を有し、
前記低回転制御解除手段(55)は、前記低回転制御としての前記制動時回転制御を、前記アクセル制御手段(50)により設定される前記エンジン(4)の回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際に、解除する、と好適である。
【0012】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、エンジンの回転速度を所定の回転速度まで低減させる低回転制御から復帰する条件として、アクセルレバーの設定に基づくエンジンの回転速度が上記所定の回転速度以下となることを必要としたので、低回転制御が解除された際に作業者の意図に反してエンジン回転速度が急激に上昇することを防止できる。また、このような作業者の意図に反したエンジンの回転速度の上昇により、作業車輌の操作性を損なうことがない。
【0014】
請求項2に係る発明によると、車輌が走行していない、PTOクラッチが切断されている、作業機が昇降操作されていないことを条件として、エンジンの回転速度を所定の回転速度まで低減するデセル制御を実行するため、無駄な燃料の消費及び騒音を減少させることができる。また、作業状態に復帰するには、アクセルレバーの設定に基づくエンジンの回転速度が所定の回転速度以下になる必要があるため、デセル制御から復帰する際に作業者の意図に反してエンジンの回転速度が急激に上昇することがない。
【0015】
請求項3に係る発明によると、機体が制動状態になった際に、エンジンの回転速度を所定の回転速度まで低減させると共に、該所定の回転速度からエンジンの回転速度を変更させることを禁止したため、ブレーキから足を離した際にエンジンの回転速度が復帰して機体が加速することがなく、急発進することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの側面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの運転操作部を示す平面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのメータパネルを示す正面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのレバー周り及びスイッチパネルを示す平面図。
【図5】図4の変速走行レバーを示す要部拡大図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの制御ブロック図。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのデセル制御設定のフローチャート。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのデセル制御のフローチャート。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの呼出制御設定のフローチャート。
【図10】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの回転上限設定のフローチャート。
【図11】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの呼出制御のフローチャート。
【図12】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの増減制御のフローチャート。
【図13】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの増減制御のフローチャート。
【図14】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのアクセル制御のフローチャート。
【図15】本発明の第1の実施形態に係るトラクタのメインフローチャート。
【図16】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの走行変速レバー周りの変形例を示す模式図。
【図17】本発明の第1の実施形態に係るトラクタの走行変速レバー周りの変形例を示す模式図。
【図18】本発明の第2の実施形態に係るトラクタのデセル制御のフローチャート。
【図19】本発明の第3の実施形態に係るトラクタのデセル制御のフローチャート。
【図20】本発明の第4の実施形態に係るトラクタの増減制御のフローチャート。
【図21】本発明の第5の実施形態に係るトラクタの増減制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態に係る作業用車輌としてのトラクタについて説明をする。
【0018】
<第1の実施形態>
[トラクタの概略構成]
図1に示すように、トラクタ1は、左右一対のクロ―ラ走行装置2に支持された機体3を有しており、該機体3の前方には、エンジン4がボンネット5に覆われる形で搭載されている。該ボンネット5の後方側には、キャビン6が設けられており、キャビン6内には、作業者が着座して運転操作を行う運転操作部7(図2参照)が設けられている。また、機体3の後端部には、3点リンク機構8及びPTOシャフト14が設けられており、この3点リンク機構8によってロータリ耕運機やハローなどの作業機18が昇降自在に連結されるようになっていると共に、これら作業機18には上記PTOシャフト14によってエンジン4からの動力が伝達されるようになっている(図6も合わせて参照)。
【0019】
図2に示すように、上記運転操作部7は、その中央部に運転者が着座する運転座席9が配設されており、該運転座席9の前方側には、ステアリングハンドル10、メータパネル11などが設けられていると共に、メータパネル11の下方側には、緊急時に操作される緊急停止ブレーキペダル12及び駐車ブレーキスイッチ13が設けられている。また、運転座席9の右側方には、走行HST(油圧式無段変速装置)の油圧ポンプの斜板を操作して変速する走行変速レバー15、エンジン4の回転速度を手動で操作するアクセルレバー16、作業機の高さ位置を操作するポジションコントロールレバー17及び複数の自動制御スイッチが配設されているサイドパネル19が設けられていると共に、運転座席9の左側方には、PTOシャフト14の回転を変速するPTO変速レバー20が設けられている。
【0020】
上記メータパネル11は、図3に示すように、中央部にエンジンの回転速度を示すタコメータ21が設けられていると共に、その左方には、燃料計22や各種の警告・表示ランプ群Iが設けられている。また、タコメータ21の右方には、警告・表示ランプ群Iの他に、液晶パネル23が組み込まれており、制御部30の細部の設定を下方の選択スイッチ群25によって操作可能に構成されている。
【0021】
また、図4に示すように、サイドパネル19には、エンジン4から作業機18への伝動系に介装したPTOクラッチ(作業機クラッチ)24を断接(入切)するPTOスイッチ26、エンジン4の回転速度を予め記憶した回転速度に設定する回転メモリスイッチ27などが設けられており、該回転メモリスイッチ27は、それぞれ異なった回転速度を呼び出す回転メモリスイッチA27a及び回転メモリスイッチB27bを有している。
【0022】
また、上記走行変速レバー15には、図5に示すように、エンジン回転速度を微調整(変更、増減)するアップ・ダウンスイッチ(調整スイッチ)29、作業機18を設定した所定の上昇位置と下降位置とに昇降指令するクイックアップスイッチ28が設けられている。これらアップ・ダウンスイッチ29及びクイックアップスイッチ28は、走行変速レバー15の上部に形成されたグリップ部15aに設けられており、該クイックアップスイッチ28は、グリップ部15aの前面に、アップ・ダウンスイッチ29は、グリップ部15aの左側面に配設されている。
【0023】
また、アップ・ダウンスイッチ29は、上部又は下部を押した後に指を離すと中立位置に復帰するモーメンタリスイッチとなっており、スイッチの上部がアップスイッチ29aとなって押操作するとエンジン回転速度が増加し、スイッチの下部がダウンスイッチ29bとなって押操作するとエンジン回転速度が減少するように構成されている。
【0024】
ついで、トラクタ1の制御部30について図6に基づいて説明をする。図6に示すように、トラクタ1の制御部30は、それぞれマイクロコンピュータからなるメインコントロールユニット31、フロントコントロールユニット32、エンジンコントロールユニット(ECU)33、メータユニット35及び液晶コントロールユニット36を有しており、これらのマイコンがシリアル通信もしくはコントロールエリアネットワーク(以下、CANという)などで接続して互いに通信可能に構成されている。
【0025】
上記メインコントロールユニット31は、機体3の走行制御や作業機18の昇降制御など主に機体全般の制御を担当するマイコンであり、その入力側には、上記アップ・ダウンスイッチ29のアップスイッチ29a及びダウンスイッチ29b、回転メモリスイッチ27の回転メモリスイッチA27a及び回転メモリスイッチB27b、PTOスイッチ26、クイックアップスイッチ28の他に、アクセルレバー16の位置(操作)を検出するアクセルセンサ37、緊急停止ブレーキペダル12が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチ39、ポジションコントロールレバー17の回動角を検出するポジションセンサ40、走行HSTの油圧ポンプの傾転角度を検出する左右のポンプレバーセンサ41a,41b、エンジン4を省エネルギーモードで駆動させるエコモードスイッチ42などが接続されている。
【0026】
また、メインコントロールユニット31の出力側には、3点リンク機構8の昇降シリンダへの油圧の供給を制御する油圧上昇比例バルブ43a及び油圧下降比例バルブ43bと、上記ブレーキスイッチ39からの信号に基づいて走行HSTの油圧モータを制動状態にするブレーキバルブ45と、PTOクラッチ24の断接を制御するPTO比例バルブ46などが接続されている。
【0027】
更に、メインコントロールユニット31は、エンジン4の回転速度を制御する部分として、アクセルレバー16の操作に基づいてエンジン4の回転速度を設定するアクセル制御手段50と、エンジン4の回転速度をアクセル制御手段50により設定された回転速度からアイドリング回転速度(所定の回転速度)まで低減させる低回転制御を行う低回転制御手段51と、記憶されている回転速度を呼び出して現在のエンジン4の回転速度とする呼出制御を行う呼出制御手段52と、アップ・ダウンスイッチ29の操作に基づいて、エンジンの回転速度を所定量ごとに変更(増減)し得る増減制御を行う増減制御手段(目標回転設定手段)53と、を有していると共に、これらの自動制御を解除する低回転制御解除手段55、増減制御解除手段54などの解除手段を有している。
【0028】
なお、上記低回転制御としては、詳しくは後述するデセル制御と制動時回転制御との2つの制御があり、低回転制御手段51は、該デセル制御を行うデセル制御手段56と、制動時回転制御を行う制動時回転制御手段57と、を有している。なお、上記自動制御を行う実行手段及び自動制御を解除する解除手段は、制御部30のどのマイコンに設けられても良い。
【0029】
一方、メインコントロールユニット31とシリアル通信を行う上記フロントコントロールユニット32は、主にメータユニット35及び液晶パネル23の表示を制御する液晶コントロールユニット36に電気指令を出力するマイコンであり、メータユニット35及び液晶コントロールユニット36とはCANによって接続されている。このフロントコントロールユニット32には、液晶パネル上において決定された、エンジン回転速度の設定(回転上限切替60、回転上限設定61)、デセル制御の設定(オートデセル切替62)及びエンジン出力特性設定(ドループ切替63、エコモード)などの設定が入力されるように構成されていると共に、フロントコントロールユニット32を介して上記メインコントロールユニット31及びエンジンコントロールユニット33にその設定内容が通信される。
【0030】
また、エンジンコントロールユニット33は、主にエンジン4の回転速度の制御を行うマイコンであり、フロントコントロールユニット32とCANによって接続されていると共に、該フロントコントロールユニット32を介してメインコントロールユニット31ともエンジン制御に関する電気指令を通信可能に構成されている。このエンジンコントロールユニット33の出力側には、メインコントロールユニット31にも分線されて接続されているアクセルセンサ37、アクセルレバー16のアイドル位置を検出してアクセルセンサ37が正常であることを保障するアイドルスイッチ65、エンジン4の回転速度を検出する回転ピックアップセンサ66及び冷却水の水温を検出する冷却水温センサ67などが接続されており、エンジンコントロールユニット33は、これら各センサからの信号及びメインコントロールユニット31からの電気指令に基づいて、エンジン4の回転速度、回転速度の変化割合及び出力特性を変更する。
【0031】
[エンジンの回転速度制御]
ついで、上記エンジン4の回転速度制御について説明をする。
【0032】
[デセル制御]
まず、上述したデセル制御について図7及び図8に基づいて説明をする。デセル制御は、PTOクラッチ24が切断された状態で、作業機18の昇降操作及び機体3の走行が所定時間に亘って行われないことを検出した際に、エンジン4の回転速度をアイドル回転状態(所定の回転速度)まで低減させる制御であり、図7に示すように、液晶パネル上の設定によってそのオン(実行)・オフ(非実行)の切替えが行われる。
【0033】
具体的には、液晶パネル23にてデセル制御の設定画面が呼び出され(ステップS20)、デセル制御のオンが選択されるとオートデセル入りのフラグが設定されると共に、デセル制御がリセットされる(ステップS22)。また、デセル制御のオフが選択されるとオートデセル切りのフラグが設定されると共に、デセル制御がリセットされる(ステップS23)。
【0034】
そして、デセル制御に移行するまでのタイムアップ時間(上記所定時間)の設定の変更が行われる場合(ステップS24)、早い、標準、遅いの3種類ある待ち時間T0,T1,T2(T0<T1<T2)の中から、何れか1つが選択されて設定されると共に、その後、復帰する(ステップS25〜S29)。
【0035】
一方、実際のデセル制御は、図8に示すように、まず、上記デセル制御の設定にてデセル制御がオン(入)となっているかが判断され(ステップS30)、デセル制御がオフ(切)の場合は、そのままデセル制御を行わずに復帰する(ステップS31)。また、デセル制御がオンの場合、作業機18の油圧昇降が停止していること(作業機18が昇降操作されていないこと)(ステップS32)、PTOクラッチ24が切断されていること(ステップS33)、機体3の走行が停止していること(ステップS35)、の何れの条件も満たしていると、タイマーがセットされる(ステップS36、ステップS39)。そして、タイムアップ時間T0,T1,T2が経過すると(ステップS37)、エンジン4の回転速度がアイドリング回転速度に設定されてデセル制御が実行され(ステップS38)、このデセル制御が実行されると復帰する(ステップS31)。
【0036】
一方、上記いずれか1つの条件でも満たしていない場合、アクセルレバー16がアイドリング位置(最低回転速度位置)にいるかが判断され(ステップS40)、アイドリング位置にある場合にはデセル制御を解除し(ステップS41)、詳しくは後述する呼出制御(メモリA,B)をオフすると共に増減制御(回転増減調整)をオフする(ステップS42)。そして、これら呼出制御及び増減制御をオフすると、タイマーをリセットして(ステップS43)、復帰する(ステップS31)。また、アクセルレバー16がアイドリング位置にない場合には、単にタイマーをリセットして(ステップS43)、復帰する(ステップS31)。
【0037】
なお、作業機18の油圧昇降が停止していることは、作業機18を昇降制御する油圧上昇比例バルブ43a及び油圧下降比例バルブ43bに対してメインコントロールユニット31から3点リンク機構8を昇降させる電気指令が出力されていないこと(ポジションセンサ40によりポジションコントロールレバー17の操作が検出されていないこと)によって判断され、PTOクラッチ24が切断されていることは、PTOスイッチがオフされていることによって判断され、機体3が停止していることは、左右のポンプレバーセンサ41a,41bが共に中立の範囲であること(走行変速レバー15(ポジションセンサ40)が操作されていないこと)によって判断される。
【0038】
[呼出制御]
ついで、呼出制御について図9乃至図11に基づいて説明をする。呼出制御は、回転メモリスイッチA27a又は回転メモリスイッチB27bを押すことで、エンジン4の回転速度を記憶された所望の回転速度に切替えることができる制御であり、図11に示すように、液晶パネル上の設定によって呼び出す回転速度が決められる。
【0039】
具体的には、液晶パネル23にて呼出制御の設定画面が呼び出され、まず、回転メモリスイッチA27aにより呼び出されるメモリA回転速度を記憶するメモリAの設定が行われるかが判断され(ステップS50)、メモリAの設定が行われる場合には、基本的に、現在の回転速度をメモリA回転速度として記憶する(ステップS51)。一方、この時、エンジン回転速度の上限設定がなされており(ステップS52)、その上限回転速度がメモリA回転速度よりも小さい場合(ステップS53)は、メモリA回転速度を現在のエンジン回転速度ではなく、上限回転速度に設定する。
【0040】
また、回転メモリスイッチB27bにより呼び出されるメモリB回転速度も同様に、まず、メモリBの設定があると(ステップS55)、現在のエンジン回転速度(ステップS56)をメモリB回転速度とし(ステップS56)、このエンジン回転速度が上限設定により設定された上限回転速度よりも高い場合には、上限回転速度をメモリB回転速度として設定して復帰する(ステップS57〜S60)。
【0041】
なお、上記上限回転速度設定も、図10に示すように液晶パネル上にて行われ、その設定画面が呼び出されると、エンジン回転速度の上限設定のオン・オフ(入切)の設定(スッテップS61〜64)ができるようになっていると共に、上限回転速度を変更する場合には、その数値を所望の回転速度に設定できるようになっている(ステップS65〜S67)。
【0042】
一方、実際の呼出制御は、図11に示すように、まず、デセル制御が実行されているかどうかが判断され(ステップS70)、デセル制御が実行中の場合には、呼出制御を実行せずに復帰する(ステップS80)。即ち、デセル制御が呼出制御に対して優先して実行される。また、デセル制御が実行されていない場合において、回転メモリスイッチA27aがオン(入)されると(ステップS71、S72)、メモリAのフラグがオンされると共に、背反的にメモリBのフラグがオフされてエンジン4の設定回転速度が、メモリA回転速度に設定される(ステップS73、S74)。また、回転メモリスイッチA27aがオフされた場合には(ステップS75)、メモリAのフラグがオフされる。
【0043】
また、メモリAに続いてメモリBについて呼出制御が行われたかが判断されると共に(ステップS36)、回転メモリスイッチB27bがオン(入)されると(ステップS71、S72)、メモリBのフラグがオンされると共に、背反的にメモリAのフラグがオフされてエンジン4の設定回転速度が、メモリB回転速度に設定される(ステップS78、S79)。また、回転メモリスイッチB27bがオフされた場合には(ステップS81)、メモリBのフラグがオフされる。
【0044】
[増減制御]
ついで、増減制御について図12及び図13に基づいて説明をする。増減制御は、アップスイッチ29a及びダウンスイッチ29bによってエンジン回転速度を微調整する制御であり、具体的には、図12に示すように、まず、デセル制御が実行されているかどうかが判断され(ステップS90)、デセル制御が実行されている際にはそのまま復帰する(ステップS91)。即ち、デセル制御は、増減制御に優先されて実行される。
【0045】
また、デセル制御が実行されていない場合、増減制御のオン・オフを判断するフラグがセットされているかどうかが判断され(ステップS92)、フラグがオフの場合(即ち、増減制御が行われていない場合)にアップスイッチ29aが操作されると(ステップ93)、上記フラグがセットされ(ステップS94)、正規化を行うかどうかが判断される(ステップS95)。
【0046】
ここで、エンジン回転速度の正規化とは、例えば、アクセルレバー16によってエンジン4の回転速度が設定されると、その回転速度はアナログ的に増減するため、切りの良い数字とは限らず、エンジン4の回転速度と連動しているPTOシャフト14の回転速度を作業機18の適正回転速度(切りの良い数字であることが多い)に合わせ易くすることを目的として、エンジン4の回転速度を切りの良い数字に設定することである。
【0047】
そして、上記正規化の判断で正規化が必要であると判断されると、正規化が行われる(ステップS96)。具体的には、アップスイッチ29aが押された際に、エンジン回転速度の下二桁が50未満である場合には、その下二桁を「50」に置き換えると共に、エンジン回転速度の下二桁が50より大きい場合には、その下二桁の値に(100−下二桁の値)の数を加算する。例えば、現在のエンジンの設定回転速度が1520RPMであった際には、設定回転速度を50RPM刻みの値(1550RPM)に設定する。
【0048】
一方、正規化の必要がない場合、作業者がアップスイッチ29aを押している時間に応じて、「短押」であれば現在のエンジン回転速度に対して50RPM増やし、「長押」であれば現在のエンジン回転速度に対して500RPM増やし、これが「連続」した際には、現在のエンジン回転速度に対して500RPMずつ増やして行く(ステップS97)。
【0049】
次に、ダウンスイッチ29bが操作されているかどうかが判断される(ステップS98)。このエンジン回転速度の低減調整は、アップスイッチ29aの場合と同様に、ダウンスイッチ29bが押されると、増減制御の入フラグがセットされ(ステップS99)、正規化の必要がない場合には、作業者がダウンスイッチ29bを押している時間に応じて、「短押」であれば現在のエンジン回転速度に対して50RPM減らし、「長押」であれば現在のエンジン回転速度に対して500RPM減らし、これが「連続」した際には、現在のエンジン回転速度に対して500RPMずつ減らして行く(ステップS100、S101)。また、正規化が必要な場合には、正規化される(ステップS102)。
【0050】
即ち、上記エンジン4の設定回転速度の増減調整を言い換えると、増減制御手段53は、エンジン4の回転速度の範囲を、50RPM(所定の単位回転速度、所定量)ごとに分割してそれぞれを目標値として設定し、アップ・ダウンスイッチ29の操作に基づいて、エンジン4の回転速度をこの目標値単位で変更している。つまり、アップ・ダウンスイッチ29によるエンジン回転速度の調整は、アクセルレバー16の操作とは違い、エンジン4の回転速度が、0RPMから50RPMごとに設定されたいずれかの目標値になるように制御されており、アップ・ダウンスイッチ29の押時間に応じて、50RPM単位で目標値を移動するか、500RPM単位で目標値を移動するか、即ち変更するエンジン4の回転速度の量を変化させている。
【0051】
また、上記正規化とは、エンジン回転速度が目標値にない(目標値単位で前記エンジンの回転速度が制御されていない)状態から、アップ・ダウンスイッチ29が操作されて目標値単位でエンジンの回転速度を制御する状態に移行する場合、アップ・ダウンスイッチ29の押時間に係らず、回転速度の変更方向の最も近い目標値にエンジンの回転速度を設定するということができる。
【0052】
上述したエンジンの設定回転速度の増減調節が行われると、増減制御のフラグがオンの場合(即ち増減調節が行われた場合)(ステップ103)、メモリA、Bのオン/オフにより呼出制御が実行されているかが判断され(ステップS104)、これらメモリA、Bのどちらか一方がオンの場合は、呼出制御が実行されていると判断される。そして、実行されている側のメモリ回転速度が、エンジン4の設定回転速度よりも大きい場合(ステップS105)、設定回転速度をそのメモリ回転速度に合わせる(ステップS106)。
【0053】
また、回転速度の上限設定がある場合には(ステップS107)、エンジン4の設定回転速度が上限回転速度よりも大きくないかが判断され(ステップS108)、設定回転速度が上限回転速度よりも大きくなった場合には、上限回転速度を優先して、該上限回転速度を設定回転速度とする(ステップS109)。
【0054】
即ち、上記増減制御で微調整されたエンジン回転速度は、呼出制御が実行されている際には、その呼び出された回転速度より低くなることが無いように制御され、上限回転速度が設定されている際には、その上限回転速度よりも大きくならないように制御される。また、当然、この増減制御によってエンジン4の回転速度は、アイドリング回転速度以下にはならない。
【0055】
一方、この増減制御は、図12のステップS110、S111に示すように、アクセルセンサ値と設定回転速度とが一致した場合、即ち、上述したアクセル制御手段50によって設定されるエンジン回転速度と、増減制御手段によって設定されるエンジン回転速度とが一致した場合に、その制御が増減制御解除手段54によってオフ(切)される。
【0056】
[アクセル制御]
ついで、アクセル制御について図14に基づいて説明をする。アクセル制御は、アクセルレバー16の操作によって手動でエンジン4の回転速度を設定できるようにした制御であり、図14に示すように、デセル制御が実行されていない(デセル制御のフラグがオフ、ステップS110)、呼出制御が行われていない(メモリA,Bが共にオフ、ステップS111)、増減制御が実行されていない(回転増減調節がオフ、ステップS112)ことを条件として、エンジン4の設定回転速度をアクセルセンサ37の検出値に基づいた回転速度に設定する。
【0057】
そして、回転速度の上限設定がなされているかどうかを判断し(ステップS114)、上記設定回転速度が上限回転速度よりも大きい場合には(ステップS115)、該上限回転速度を設定回転速度とする(ステップS116、117)。
【0058】
[制動時回転制御及び全体動作]
ついで、図15に基づいて制動時回転制御及びトラクタ1の全体動作を説明する。制動時回転制御は、ブレーキが制動状態になった際にエンジン4の回転速度をアイドリング回転速度(所定の回転速度)まで低減させ、かつアイドリング回転速度からエンジンの回転速度の変更を禁止する制御である。
【0059】
具体的には、図15に示すように、緊急停止ブレーキペダル12が踏み込まれてブレーキ44が作動すると(ステップS2)、上述した呼出制御(メモリA,B)及び増減制御(フラグ切)が解除され(ステップS3)、アクセルレバー16、アップ・ダウンスイッチ29によるエンジン4の回転速度の変更を禁止する回転変更規制が実行(オン)される(ステップS4)。そして、エンジン回転速度をアイドル回転速度まで低減させ、復帰する(ステップS6)。
【0060】
また、通常の走行時には、制御部30は、接続されている各種センサからの信号を読込み(ステップS1)、ブレーキスイッチ39がオフされていることによって、ブレーキ44が作動してないと判定すると(ステップS2)、上記回転変更規制がされていないかを判断する(ステップS7)。そして、回転変更規制がない場合には、上述した、デセル制御、呼出制御、増減制御、アクセル制御の順で各制御が実行されているかを判断し(ステップS11〜S14)、設定された回転速度をエンジン4の回転速度とする。
【0061】
一方、上記制動時回転制御が実行されて回転変更規制が実行されている場合には、デセル制御、呼出制御、増減制御、アクセル制御の判断を行わずに復帰するため(ステップS10、S6)、制動時回転制御によって設定されたアイドル回転速度が維持される。即ち、制動時回転制御は、どのエンジン回転速度制御よりも優先されて実行される。
【0062】
この制動時回転制御は、アクセルレバー16がアイドリング回転速度位置(LOW)に設定されると(ステップS8)、回転変更規制がオフされて解除される(ステップS9)。また、図8のステップS40に示すように、デセル制御もその解除条件として、アクセルレバー16がアイドリング回転速度位置に設定されることを有しており、言い換えると、低回転制御解除手段55は、これら制動時回動制御手段及びデセル制御からなる低回転速度制御を、アクセルレバー16が操作されてアクセル制御手段50により設定されるエンジンの回転速度が、アイドリング回転速度になった際に、解除し得る。
【0063】
上述したように、エンジン4の回転速度を、例えば、アイドリング回転速度である所定の回転速度まで低減させるデセル制御や制動時回転制御などの低回転制御から復帰する条件として、アクセルレバー16の設定に基づくエンジン4の回転速度が低回転制御により低減された所定の回転速度以下になることを必要としたので、低回転制御が解除された際に作業者の意図に反してエンジン回転速度が急激に上昇することを防止できる。また、このような作業者の意図に反したエンジンの回転速度の上昇により、作業車輌の操作性を損なうことがない。
【0064】
即ち、本実施形態では、上述したように、制動時回転制御は、アクセルレバー16がアイドリング位置となって、アクセル制御手段50によって設定されるエンジン4の回転速度がアイドリング回転速度になった際に、低回転制御解除手段55により解除される。そのため、ブレーキから足を離した際にエンジンの回転速度が復帰して機体が加速することがなく、機体が急発進することを防止することができる。
【0065】
また、デセル制御の場合、作業機18の昇降操作、PTOクラッチ24の入操作、機体3の走行操作のいずれかが行われた際に、アクセル制御手段50によって設定されるエンジン4の回転速度がアイドリング回転速度になっていると、低回転制御解除手段55により解除される。このため、作業者は、無意識に上記低回転制御を解除してしまい、作業機18の回転速度や車速が急に上昇してしまうことを防止できると共に、アイドリング回転速度から円滑に作業を開始することができる。
【0066】
更に、所定の単位回転速度ごとにエンジン4の回転速度を変更し得るアップ・ダウンスイッチ29を設けたため、作業者は、作業中にエンジン4の回転速度が足りないと感じた際や、走行スピードが出すぎてしまったと感じた場合、アップ・ダウンスイッチ29が、走行変速レバー15のグリップ部15aに設けられたことと相俟って、走行変速レバー15から手を離して、いちいち該走行変速レバーを同じ側にあるアクセルレバー16を操作せずとも状況に応じてエンジン4の回転速度を調整することができる。
【0067】
また、エンジン4の回転速度をアップ・ダウンスイッチ29によって、所定量ずつ増減させることができるため、一定量ずつエンジン回転速度を変更したい場合、アクセルレバー16のように回転速度が目標回転速度から行き過ぎてしまうようなことが無く、操作が容易であると共に、このようなアップ・ダウンスイッチ29をアクセルレバー16と共に設けたことによって、目標値近傍までは、一度に大きくエンジン回転速度を変更できるアクセルレバー16によって調整し、目標回転速度付近になった場合になると、アップ・ダウンスイッチ29でエンジン4の回転速度を調整することができ、エンジン回転速度を迅速かつ正確に行うことができる。
【0068】
更に、アップ・ダウンスイッチ29の操作に基づいて、エンジン4の回転速度の範囲を所定量ごとに分割した目標値単位でエンジン4の回転速度を変更するように構成したことによって、エンジン4の回転速度が上記目標値と一致していない状態から、アップ・ダウンスイッチ29を操作することによってエンジン4の回転速度を調整する場合、その回転速度の操作方向の最も近い目標値をエンジン4の回転速度に設定することができ、基準時の回転速度が目標値となるため、その後、エンジン4の回転速度を容易に所望の回転速度まで調整することができる。
【0069】
また、アップ・ダウンスイッチ29の押時間に応じてエンジン回転速度の変化量を変更させたことによって、所望の回転速度までの差に応じて、作業者はアップ・ダウンスイッチ29の操作によるエンジン回転速度の変化率を調整でき、エンジン回転速度の調整の迅速化を図ることができると共に操作性が向上した。
【0070】
なお、上記アップ・ダウンスイッチ29は、図16及び図17に示すように、丸ハンドル仕様ではなく、2本レバー仕様のトラクタ1の場合には、この2本レバー72とは反対側に設けられた作業機18の操作パネル71にアップ・ダウンスイッチ29を設けてもよい。具体的にアップ・ダウンスイッチ29は、図16に示すように、作業機18を昇降させる昇降スイッチ70の近傍に配設されており、これにより、作業者は、左手で上記2本レバー72を操作しつつ、右手でアップ・ダウンスイッチ29を操作することができる。また、右手で作業機18を操作しつつエンジン4の回転速度を操作することもできる。
【0071】
また、上記アップ・ダウンスイッチ29の操作による増減制御を、上記低回転速度制御時と同様に、アクセルレバー16で操作されたエンジン4の回転速度が、増減制御時(現在)の回転速度になった際に、解除するようにしたことによって、増減制御が解除した際に、エンジンの回転速度が急に変動することを防止することができる。また、増減制御をアクセルレバー16の操作によって解除可能にしたことによって、解除操作が容易になり、操作性を向上させることができる。
【0072】
なお、上記低回転制御は、耕耘作業を行う通常の作業回転速度よりも低い低回転速度であれば、必ずしもアイドリング回転速度でなくとも良い。また、増減制御は、基準時のエンジン回転速度から所定量ずつエンジンの回転速度を増減させるようにしても良い。即ち、現在のエンジンの設定回転速度が1520RPMであった際には、設定回転速度を1570RPMに設定しても良い。また、この所定量の値を操作可能にして、所望の回転速度が目標値になるように設定可能に構成してもよい。
【0073】
<第2の実施形態>
ついで本発明に係る第2の実施形態について、図18に基づいて説明をする。この第2の実施形態は、第1の実施形態とデセル制御の解除条件で相異しているものであり、この相違点についてのみ説明をする。
【0074】
図18に示すように、第2の実施形態に係るトラクタ1では、デセル制御が入である場合(ステップS30)、作業機18の昇降操作がされているかどうか(ステップS32)、PTOクラッチ24が切断されているかどうか(ステップS33)、機体3が停止しているかどうか(ステップS35)が判断され、このいずれかの条件を満たしていない場合、そのまま復帰する。
【0075】
また、上記条件を全て満たしている場合、デセル制御が実行されているかどうかが判断される(ステップS120)。デセル制御が実行されている場合には、アクセルセンサ37が検出した値がアイドリング回転速度であるかどうかが判断され(ステップS40)、アイドリング回転速度である場合には、デセル制御が解除される(ステップS41)。
【0076】
即ち、デセル制御の解除条件として、アクセルレバー16がアイドリング位置(Low位置)に操作れたことのみを条件とし、上記作業機18の昇降、PTOクラッチ24の切断、機体3の走行停止をその条件としないこととしている。
【0077】
このように、アクセルレバー16の操作のみを解除条件としても、デセル制御から復帰した際に、不意にエンジン4の回転速度が上昇してしまうことを防止することができる。
【0078】
<第3の実施形態>
ついで本発明に係る第3の実施形態について、図19に基づいて説明をする。この第3の実施形態は、第1の実施形態とデセル制御の解除条件で相異しているものであり、この相違点についてのみ説明をする。
【0079】
図19に示すように、第3の実施形態に係るトラクタ1では、デセル制御が入である場合(ステップS30)、作業機18の昇降操作がされているかどうか(ステップS32)、PTOクラッチ24が切断されているかどうか(ステップS33)、機体3が停止しているかどうか(ステップS35)が判断され、作業機18の昇降操作、PTOクラッチ24の接続動作があった場合には、デセル制御を解除するかどうかが判断される(ステップS40〜ステップS43)。
【0080】
一方、機体3の停止については、解除条件とはせず、走行変速レバー15の操作があったとしても、デセル制御を解除するかどうかを判断せずに復帰する。これにより、デセル制御が解除されたことによって、機体が急発進することを防止することができる。
【0081】
なお、作業機18の油圧昇降は、昇降時にエンジン4に連動して駆動するオイルポンプが出力不足に陥ることを防止することを目的として解除条件としていると共に、PTOクラッチ24の断切は、作業開始の判断条件として、デセル制御の解除条件としているが、これらのいずれか1つないし2つを解除条件から外しても良い。即ち、デセル制御の解除条件として、作業機18の昇降、PTOクラッチ24の断接、機体3の走行は、どのように組み合わせても良い。
【0082】
<第4の実施形態>
ついで本発明に係る第4の実施形態について、図20に基づいて説明をする。この第4の実施形態は、第1の実施形態と増減制御の解除条件で相異しているものであり、この相違点についてのみ説明をする。
【0083】
図20に示すように、第4の実施形態に係るトラクタ1では、増減制御が入である場合(ステップS92)、アクセルレバー16が所定量以上、低速側に操作されたかどうかが判断される(ステップS130)。そしてアクセルレバー16が低速側に所定量以上、操作されている場合には、増減制御がオフ(切)されて復帰するようになっている。
【0084】
即ち、増減制御の解除条件を、アクセルレバー16が低速側に所定量以上操作されることとしており、これにより、増減制御が解除された際に、エンジン4の回転速度が、急に増速することを防止できる。
【0085】
<第5の実施形態>
ついで本発明に係る第5の実施形態について、図21に基づいて説明をする。この第5の実施形態は、第1の実施形態と増減制御の解除条件で相異しているものであり、この相違点についてのみ説明をする。
【0086】
図21に示すように、第5の実施形態に係るトラクタ1では、増減制御が入である場合(ステップS92)、アクセルレバー16が例えば、アイドリング回転速度などの所定の低回転速度に設定されているかが判断され(ステップS140)、アクセルセンサ値が該所定回転速度である場合(ステップS141)、増減制御がオフ(切)されて復帰するようになっている。
【0087】
即ち、増減制御の解除条件を、アクセルレバー16が所定の低回転速度位置に操作されることとしており、これにより、増減制御が解除された際に、エンジン4の回転速度が、急に増速することを防止できる。
【0088】
なお、上記所定の低回転速度位置は、必ずしもアイドリング回転速度でなくともよく、その場合は、該低回転速度位置以上、アクセルレバー16が低速側に操作された際に増減制御が解除される。
【0089】
なお、上記第1乃至第5の実施形態では、トラクタを用いて説明したが、本発明は、コンバイン、田植機などの他の農業機械や、ブルドーザ等の建築機械など、どのような作業車輌にも適用することが出来ると共に、これら第1乃至第5に記載された発明は、どのように組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0090】
1 作業車輌(トラクタ)
3 機体
4 エンジン
16 アクセルレバー
18 作業機
24 作業機クラッチ
44 ブレーキ
50 アクセル制御手段
51 低回転制御手段
55 低回転制御解除手段
56 デセル制御手段
57 制動時回転制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に搭載されたエンジンと、該エンジンの回転速度を操作するアクセルレバーと、前記機体の走行を制動するブレーキと、前記エンジンからの動力により駆動する作業機と、を備えた作業車輌において、
前記アクセルレバーの操作に基づいて前記エンジンの回転速度を設定するアクセル制御手段と、
前記エンジンの回転速度を、前記アクセル制御手段により設定された回転速度から所定の回転速度まで低減させる低回転制御を行う低回転制御手段と、
前記アクセルレバーが操作されて前記アクセル制御手段により設定される前記エンジンの回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際に、前記低回転制御を解除し得る低回転制御解除手段と、を備えた、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記低回転制御手段は、前記エンジンと前記作業機との間に介装された作業機クラッチが切断された状態で、前記作業機の昇降操作及び前記機体の走行が所定時間に亘って行われないことを検出した際に、前記エンジンの回転速度を前記所定の回転速度まで低減させるデセル制御を行うデセル制御手段を有し、
前記低回転制御解除手段は、前記低回転制御としての前記デセル制御を、前記アクセル制御手段により設定される前記エンジンの回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際、あるいは、前記アクセル制御手段により設定される前記エンジンの回転速度が、前記所定の回転速度以下になりかつ、前記作業機クラッチが接続されるか、前記作業機が昇降操作されるか、前記機体が走行するか、の少なくともいずれか1つの条件が満たされた際に、解除する、
請求項1記載の作業車輌。
【請求項3】
前記低回転制御手段は、前記ブレーキが制動状態になった際に前記エンジンの回転速度を前記所定の回転速度まで低減させ、かつ該所定の回転速度から前記エンジンの回転速度の変更を禁止する制動時回転制御を行う制動時回転制御手段を有し、
前記低回転制御解除手段は、前記低回転制御としての前記制動時回転制御を、前記アクセル制御手段により設定される前記エンジンの回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際に、解除する、
請求項1又は2記載の作業車輌。
【請求項1】
機体に搭載されたエンジンと、該エンジンの回転速度を操作するアクセルレバーと、前記機体の走行を制動するブレーキと、前記エンジンからの動力により駆動する作業機と、を備えた作業車輌において、
前記アクセルレバーの操作に基づいて前記エンジンの回転速度を設定するアクセル制御手段と、
前記エンジンの回転速度を、前記アクセル制御手段により設定された回転速度から所定の回転速度まで低減させる低回転制御を行う低回転制御手段と、
前記アクセルレバーが操作されて前記アクセル制御手段により設定される前記エンジンの回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際に、前記低回転制御を解除し得る低回転制御解除手段と、を備えた、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記低回転制御手段は、前記エンジンと前記作業機との間に介装された作業機クラッチが切断された状態で、前記作業機の昇降操作及び前記機体の走行が所定時間に亘って行われないことを検出した際に、前記エンジンの回転速度を前記所定の回転速度まで低減させるデセル制御を行うデセル制御手段を有し、
前記低回転制御解除手段は、前記低回転制御としての前記デセル制御を、前記アクセル制御手段により設定される前記エンジンの回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際、あるいは、前記アクセル制御手段により設定される前記エンジンの回転速度が、前記所定の回転速度以下になりかつ、前記作業機クラッチが接続されるか、前記作業機が昇降操作されるか、前記機体が走行するか、の少なくともいずれか1つの条件が満たされた際に、解除する、
請求項1記載の作業車輌。
【請求項3】
前記低回転制御手段は、前記ブレーキが制動状態になった際に前記エンジンの回転速度を前記所定の回転速度まで低減させ、かつ該所定の回転速度から前記エンジンの回転速度の変更を禁止する制動時回転制御を行う制動時回転制御手段を有し、
前記低回転制御解除手段は、前記低回転制御としての前記制動時回転制御を、前記アクセル制御手段により設定される前記エンジンの回転速度が、前記所定の回転速度以下になった際に、解除する、
請求項1又は2記載の作業車輌。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−196284(P2011−196284A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65289(P2010−65289)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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