説明

作業車

【課題】 エンジン出力軸に発電機の回転子を直結することによって、小型作業機でも高出力の発電を可能とした作業機を提供する。
【解決手段】 エンジン1の駆動力によって走行する歩行操作型の走行機体と、その走行機体に搭載されてエンジン1の駆動力で発電を行う発電機3とを備え、前記発電機3の回転子を、エンジン1の出力軸に直結すると共に、エンジン1の出力を、走行部または発電機3のいずれか一方へのみ供給する。発電を行う場合には、走行部へ動力が伝達されないように主クラッチレバー6をロックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業、土木作業、山間部での作業等に使用する作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農作業や山間部での作業では、各種作業機が使用されているが、これらの作業機は走行装置に加えて、作業の目的に応じた作業機器が一体として搭載されている。
作業に際しては、作業車に乗車して現場に向かい、現場では作業機の目的に応じた作業を行うと共に、作業機に積載した電動機器等を降ろして、それらの操作を行う。
電動機器の操作においては、電源が必要となるが、この電源は特別の発電機によって供給を受ける他、作業機に備え付けの発電機から電力の供給を受ける。
そして、このような発電機を搭載した作業車に関する技術として特開2005−14771号公報記載の技術が知られている。
【特許文献1】特開2005−14771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記公報記載の作業車は乗用の大型車両であるため、狭小地は通行できないという問題があった。
特に、傾斜地の果樹園、山間部等では、乗用の車両が入り込めない場所も多く、このような現場では作業ができないという問題があった。
一方、歩行操作型の作業車では、狭小地でも通行することができるが、発電出力が小さいため、負荷の大きな電動機器を使用することはできない。また、発電機を荷台に積載して運搬することも可能であるが、歩行型操作型の作業機では荷台も狭く運搬能力に限界がある。
そこで、歩行型の作業車でもエンジン出力を効率良く発電機へ転換することができれば効率的である。
本発明は係る従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、エンジン出力軸に発電機の回転子を直結することによって、小型作業機でも高出力の発電を可能とした作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するための手段として、請求項1記載の作業車では、エンジンの駆動力によって走行する歩行操作型の走行機体と、その走行機体に搭載されてエンジンの駆動力で発電を行う発電機とを備え、前記発電機の回転子を、エンジンの出力軸に直結すると共に、エンジンの出力を、走行部または発電機のいずれか一方へのみ供給する構成とした。
【0005】
請求項2記載の作業車では、請求項1記載の作業車において、エンジンから出力軸を左右に突設し、一方側の出力軸に走行部を接続し、他方側の出力軸に発電機を接続した。
【0006】
請求項3記載の作業車では、請求項1又は2記載の作業車において、発電を行う場合には、走行部へ動力が伝達されないように主クラッチレバーをロックする構成とした。
【0007】
請求項4記載の作業車では、請求項3記載の作業機において、プラグソケットのプラグ挿入口は閉塞部を備え、その閉塞部を開放して電力を供給できる状態とした場合には、閉塞部と連動して主クラッチレバーがロックされる構成とした。
【発明の効果】
【0008】
前記構成を採用したことにより、本発明では次の効果を有する。
請求項1記載の作業機では、発電機の回転子を、エンジンの駆動を走行部へ出力する出力軸に直結したので、歩行操作型の小型作業機においても、発電機をコンパクトに搭載することができる。
また、エンジンの出力を、走行部または発電機のいずれか一方へのみ伝達する切換機構を配置したので、エンジン出力を効率的に発電機に供給することができ、小型の作業機であっても高出力の電力を得ることができる。
【0009】
請求項2記載の作業機では、エンジンから出力軸を左右に突設し、一方側の出力軸に動力伝達軸を接続し、他方側の出力軸に発電機を接続したので、確実に発電機とエンジンを直結することができる。
また、エンジンと発電機を連結するためのベルト配設スペースを省略できるため、歩行操作型の小型作業機においても、比較的大きな発電機を搭載することが可能となる。
【0010】
請求項3記載の作業機では、発電を行う場合には、走行部へ動力が伝達されないように主クラッチレバーをロックする構成としたので、発電中に誤動作により作業機が走行するおそれがない。
本発明の作業機では、エンジンの出力軸を発電機と走行部が共有しているので、発電の最中に走行した場合には、過剰な負荷が出力軸に掛かり、その負荷に耐えきれずに出力軸が折れるおそれがある。
これを避けるためには、出力軸を太くすることも考えられるが、出力軸が太くなると動力の損失、コンパクト化を阻害するという問題がある。
本発明では、主クラッチレバーをロックするということにより、これらの問題を回避して、エンジン及び発電機の小型化を実現し、小型作業機であっても高出力の発電を可能としている。
【0011】
請求項4記載の作業機では、プラグソケットのプラグ挿入口は閉塞部を備え、その閉塞部を開放して電力を供給できる状態とした場合には、閉塞部と連動して主クラッチレバーがロックされる構成としたので、電動機器の電源プラグを差し込んでいる状態では、走行部への動力伝達は確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の車両の動力伝達構造を実現する最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の第1実施例に係る作業車は、エンジン1によって駆動される走行機体と、走行部を構成するクローラ2と、エンジン1の側部に接続された発電機3と、走行機体上に配置された荷台4と、走行機体の後方へ突設されたハンドル5と、そのハンドル5に備えられた主クラッチレバー6及び操舵クラッチ7と、外部電動機器に電力を供給するプラグソケット8を主要な構成としている。
本発明の作業車は人が歩行しながら操作を行う歩行操作型の作業車であり、走行部はクローラ2によって構成されているので、果樹園等の急傾斜地でも登坂能力を有し、乗用型の車両が入り込めない狭小地でも通行できる。
また、前方の荷台4には、各種電動作業機を積載できるようになっており、山間部での作業では、荷台に電動作業機器を積載して、現場でそれらを降ろして、作業車本体から電力の供給を受けて作業を行うことができる。
【0014】
前記エンジン1は機体後方に搭載されて、上方には燃料タンク9を備え、そのエンジン1から機体の横へ水平に出力軸10が突設されている。この出力軸10にはベルト11が巻回されて従動側プーリ12へ延びている。従動側プーリ12ではトランスミッション13を介してクローラ2へ動力が伝達される。
トランスミッション13にはレバー14が備えられて、このレバー操作により前進、後進、走行ギア比を選択する。
前記ベルト12にはテンションローラ15が配置されて(図2参照)、後述する主クラッチレバー6の操作により、テンションローラ15がベルト11を押圧してベルト11に張力を付与して動力を伝達する。テンションローラ15を緩めると、ベルト11が弛緩して動力が遮断される。
【0015】
走行機体の後部左右にはロッド16が固定されて、そのロッド16が斜め後方に延び、上方は水平に折れ曲がって、その先端同士が連結されてハンドル5が形成されている。
ハンドル5の先端部分は水平に折れ曲がって歩行操作者が把持する取っ手となり、その取っ手部分は歩行者の腰から胸の高さに位置している。
ハンドル5の左右には操舵クラッチ7が配置され、ハンドル5の上方には主クラッチレバー6が配置されている。
この主クラッチレバー6は左右の基端が、ハンドル左右のロッド部分に回動自在に固定されて、半楕円の弧状部分がハンドルの上部に弾力的に突設されたものである。通常は弾力をもって上方に付勢され、操作者が主クラッチレバー6を押し下げるとワイヤ17を引っ張りテンションローラ15がベルト11を押圧して走行部に動力が伝達される。
操作者はハンドル5と共にクラッチレバー6を把持しながら、歩行操作を行う。操作者がハンドル5を離すと、主クラッチレバー5は上方に反発してテンションローラ15がベルト11を弛緩させる。このように、ハンドル5を離すと動力が遮断されて走行機体の走行は停止するので、安全上の対策もなされている。
【0016】
また、ハンドル5の左側には、電動機器へ電力を供給するためのプラグソケット8が配置されている。このプラグソケット8は発電機からの電力を外部作業機器へ供給するための接続口であり、本実施例では縦に2カ所のプラグソケット8が設けられている。
このプラグソケットにはスライド式の板状の閉塞部18が配置され、2カ所のプラグソケット8をスライドして閉塞し、また開放するようになっている。
このスライド式の閉塞部18はスライド棒19と連動しており、閉塞部18を左にスライドさせると、スライド棒19の先端がそれに応じて左にスライドする。すると、スライド棒19の先端が主クラッチレバー6の付け根部分に突設する。主クラッチレバー6が回動しようとすると、それに衝突して回動を防止する。
また、閉塞部18を右にスライドさせてプラグソケット8の挿入口を閉塞すると、スライド棒19は右にスライドして、主クラッチレバーのロックは解除されて、主クラッチレバーを押し下げることが可能になる。
【0017】
前記エンジン1の側方には発電機3が接続され、発電機3とエンジン1が一体的に構成されている。
図1ではエンジン1の出力軸10が右に突設されて、それにベルト11が巻回しているが、この出力軸10と反対側の左にも同様に出力軸が突設している。この出力軸は発電機3の回転子に直結されたものである。本実施例では、エンジンから出力軸を左右に突設し、一方側の出力軸10に走行部を接続し、他方側の出力軸に発電機3を接続している。
このように、エンジン1と発電機3をベルトを介さずに直結していることにより、発電機がコンパクトに搭載されている。このコンパクト化されることにより、同型の歩行型作業機に比べて、大型の発電機の搭載が可能となっている。
本発明では、エンジンの出力軸が発電機3に直結されているため、走行部と発電機に同時に動力が伝達された場合には、出力軸に過剰な負荷が掛かり、それに耐えきれずに出力軸が折れるおそれがある。そこで、本発明ではそれを防止するために、エンジン1の出力を、走行部または発電機3のいずれか一方へのみ伝達する構成としている。
【0018】
前記発電機3は制御回路及び固定子と回転子を備えており、発電機は電流が流れると磁界を形成する回転子コイル、及びこの回転子コイルの発生する磁界の変化によって発電を行う三相の固定子コイル等から構成され、例えば回転子コイルが車両に搭載されたエンジンによって回転駆動される。また、回転子コイルは制御回路によりデューティ比制御される通電時間の長さにより通電量が変わる。
制御回路は、発電電圧と目標電圧とを比較して、その比較結果に基づいて回転子コイルへの通電時間の長さを制御することにより固定子コイルの発電電圧の制御を行う。また、制御回路は、使用電圧の変化により異なる目標電圧に切り替わった時、切替制御開始前の電圧から徐々に目標電圧に近づくように、回転子コイルへの通電時間の長さを徐変することにより固定子コイルの発電電圧の制御を行う。
つまり、制御回路は、プラグソケット8に挿入した電動機器の電気の使用量によって、発電量を制御する機能を有している。プラグソケット8に挿入した電動機器の電気負荷が増加すると、制御回路がそれを検知して、発電量を増加させる。これに伴って、発電機に対するエンジン出力の負荷が増大することになる。
【0019】
次に本発明の作用を説明する。
山間部、傾斜地の果樹園等の乗用作業機の入り込めない地域での作業では、本発明の作業機を使用する。本発明の作業機は歩行操作型なので、乗用作業機の入り込めない場所であっても到達できる。また、本発明の作業機の走行部はクローラ2によって構成されているので、軟弱地盤、傾斜地であっても走行が可能である。
作業機の荷台4には現場で使用する電動機器等を積載する。本発明の作業機は高出力の発電機を一体として搭載しているので、別途発電機を積載する必要は無い。
走行時には、主クラッチレバー6を押し下げて、ハンドル5と共に把持しながら進行し、方向操作は左右の操舵クラッチ7によって行う。
エンジン1の出力軸の一方には走行部、他方には発電機3が接続されているが、走行中には走行部へのみ動力が伝達される。発電機3の回転子も回転されることになるが、プラグソケットには電動機器が接続されていないので、制御回路が発電を行わず、回転子を回転させる動力ロスは無視できる値となる。
【0020】
目的地へ到達して主クラッチレバー6を離すと、主クラッチレバー6は弾力により上方へ回動して、ベルト11が弛緩して動力が切断される。
プラグソケット8の閉塞部18をスライドさせて、挿入口を露出させ、荷台から降ろした電動機器を接続する。
ここで、閉塞部18をスライドさせることにより、スライド棒19が主クラッチレバー6の回動部の基端に突出することになる。この突出部は主クラッチレバー6の回動を阻止する。このため、主クラッチレバー6はロックされた状態となりテンションローラ15はベルト11に押圧することはできず、走行部への動力伝達は阻止される。
プラグソケット8へ電動機器を接続すると、制御回路が検知して、目標電圧に応じた発電が行われ、エンジン1から発電機への動力負荷が徐々に増大することになる。
このとき、エンジン1からの出力はすべて発電機へ供給されることになる。
本実施例では、作業機の走行中はプラグソケット8を閉塞するので、発電は行われない。一方、発電中は主クラッチレバー6がロックされるので、走行部への動力伝達は阻止される。これによって、エンジン1の出力が、走行部または発電機のいずれか一方へのみ供給する構成が実現され、出力軸への過剰な負荷は防止され、それにより出力軸が折れるおそれは無い。
【0021】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では発電機と走行部の出力軸を左右反対側に設けたが、出力軸を共有して同一方向に設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】作業車の背面図である。
【図2】作業車の左側面図である。
【図3】作業車の平面図である。
【図4】ハンドル部分の右側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 エンジン
2 クローラ
3 発電機
4 荷台
5 ハンドル
6 主クラッチレバー
7 操舵クラッチ
8 プラグソケット
9 燃料タンク
10 出力軸
11 ベルト
12 従動プーリ
13 トランスミッション
14 レバー
15 押圧ローラ
16 ロッド
17 ワイヤ
18 閉塞部
19 スライド棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動力によって走行する歩行操作型の走行機体と、その走行機体に搭載されてエンジンの駆動力で発電を行う発電機とを備え、
前記発電機の回転子を、エンジンの出力軸に直結すると共に、エンジンの出力を、走行部または発電機のいずれか一方へのみ供給する構成とした作業車。
【請求項2】
エンジンから出力軸を左右に突設し、一方側の出力軸に走行部を接続し、他方側の出力軸に発電機を接続した請求項1記載の作業車。
【請求項3】
発電を行う場合には、走行部へ動力が伝達されないように主クラッチレバーをロックする構成とした請求項1又は2記載の作業車。
【請求項4】
プラグソケットのプラグ挿入口は閉塞部を備え、その閉塞部を開放して電力を供給できる状態とした場合には、閉塞部と連動して主クラッチレバーがロックされる構成とした請求項3記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−45369(P2007−45369A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234130(P2005−234130)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(390005234)株式会社筑水キャニコム (21)
【Fターム(参考)】