作業車
【課題】本発明は、エンジンが突然停止した場合に変速装置を中立に戻して、エンジンの再起動を安全に行えるようにすること課題とする。
【解決手段】変速操作具9の操作で変速装置Aを油圧駆動により変速する作業車において、エンジン11の回転を検出する回転センサ1と変速装置Aの変速位置を検出する変速センサ2及び走行装置の駆動を検出する走行検出手段Lを設け、該走行検出手段Lで走行を検出中に回転センサ1でエンジン11の回転が停止したことを検出すると、前記変速装置Aを油圧駆動によって中立に戻す中立復帰手段Nを設けたことを特徴とする作業車の構成とする。
【解決手段】変速操作具9の操作で変速装置Aを油圧駆動により変速する作業車において、エンジン11の回転を検出する回転センサ1と変速装置Aの変速位置を検出する変速センサ2及び走行装置の駆動を検出する走行検出手段Lを設け、該走行検出手段Lで走行を検出中に回転センサ1でエンジン11の回転が停止したことを検出すると、前記変速装置Aを油圧駆動によって中立に戻す中立復帰手段Nを設けたことを特徴とする作業車の構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等の作業車に関する。特に、走行装置のトランスミッション内変速機構を制御装置による油圧機器の作動によって変速操作して走行速度変更を行う走行変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車は、ロータリ作業などの作業時には超低速で走行し、路上走行時には高速で走行するため、エンジンから走行装置へ動力を伝動するトランスミッションケース内に複数段或いは無段の変速装置を組み込み、操縦操作席の近傍に設けた変速レバーの変速位置を読込んでその変速位置に対応するように変速装置を油圧機器の作動によって変速動作させることで、所望の走行速度で走行出来るようにしている。
【0003】
例えば、特開2000−320644号公報には油圧無段変速装置からなる主変速装置と四段のギア変速からなる副変速装置がトランスミッションケース内に組み込まれ、特開2002−250437号公報には油圧無段変速装置からなる主変速装置と三段のギア変速からなる副変速装置がトランスミッションケース内に組み込まれた構成が記載され、それぞれ変速レバー単独或いは主変速レバーと副変速レバーを操作することで変速している。
【特許文献1】特開2000−320644号公報
【特許文献2】特開2002−250437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の作業車において、走行中にエンジンキーを突然切る誤操作によってエンジンが停止すると、変速装置の変速位置が走行中の変速位置のままで走行を停止することになって、エンジンを再起動した場合にエンジンの駆動力が走行装置に直接伝動して機体が突然走り出して危険である。
【0005】
そこで、本発明は、エンジンが突然停止した場合に変速装置を中立に戻して、エンジンの再起動を安全に行えるようにすること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、変速操作具9の操作で変速装置Aを油圧駆動により変速する作業車において、エンジン11の回転を検出する回転センサ1と変速装置Aの変速位置を検出する変速センサ2及び走行装置の駆動を検出する走行検出手段Lを設け、該走行検出手段Lで走行を検出中に回転センサ1でエンジン11の回転が停止したことを検出すると、前記変速装置Aを油圧駆動によって中立に戻す中立復帰手段Nを設けたことを特徴とする作業車としたものである。
【0007】
この構成で、エンジン11が停止すると中立復帰手段Nで変速装置Aが中立に戻されることになる。
また、請求項2に記載の発明は、前記中立復帰手段Nをコントローラ112で制御すべくすると共に、変速装置Aの変速位置を中立にした後に該コントローラ112を電源切にすべくした構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車としたものである。
【0008】
この構成で、エンジン11の停止後に、中立復帰手段Nのコントローラ112の電源が切れて完全に休止状態になる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、変速操作具9を走行位置にして走行中にエンジン11が突然停止すると中立復帰手段Nで変速装置Aを中立にするので、エンジン11を再起動した場合に走行装置Aに動力が伝動せず、急発進を防止出来る。また、長時間停止した後に変速装置Aへの動力伝動クラッチを切ってエンジン11を再起動した場合にも変速装置Aが中立になっているために走行のための変速操作が円滑に行える。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、中立復帰手段Nのコントローラ112が変速装置Aを中立に戻した後に電源切となって、中立復帰制御が確実に行われた後に完全な休止状態となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の走行変速装置を適用したクローラ式トラクタTの全体を示す図面である。トラクタTは、図1に示すように、車体前部にエンジン取付フレーム10を配し、同フレーム10にエンジン11を取り付け、このエンジン11の後部からエンジン出力軸(図示せず)を突設し、同軸の回転を車体前後方向に配した鋳物製トランストランスミッションケース12内の変速装置A,Bに伝達する構成となっている。また、前記変速装置A,Bにより適宜減速された回転動力は、後述するベベルギア56,85や左右アクスルケース内のスプロケット軸86等を介して、左右のクローラ式走行装置13へ伝達する構成となっている。
【0012】
前記トランスミッションケース12の上方には、フロア14を支持し、このフロア14上に、操向操作部となるステアリングハンドル15とこのステアリングハンドル15の左右に走行を前後進に切り換える前後進切換レバー24とロータリRなどの対地作業機或いは機体の前側に装着するフロントドーザ(図示省略)を昇降させるフィンガップレバー23(図2参照)を設け、ステアリングハンドル15の後側に操縦席18を設けてオペレータが着座して操縦操作を行う。
【0013】
操縦席18の左側に走行速度を四段に変速する主変速スイッチ9a,9b(本発明の変速操作具に相当する)9を設けている。この主変速スイッチ9は、シフトアップスイッチ9aとシフトダウンスイッチ9bとから構成されている。そして、作業機の高さを調整するポジションレバー16、走行速度を高・低の二段に変速する副変速レバー17を設けている。この副変速レバー17に前記シフトアップスイッチ9aとシフトダウンスイッチ9bを設ける構成としている。操縦席18の右側にバックアップスイッチ19、ロータリRの傾きを調整する傾き調整ダイヤル20や手動調整レバー21及び水平制御切換スイッチ22を設け、足元のフロア14にブレーキペダル25、クラッチペダル26等を設ける構成となっている。
【0014】
なお、フィンガップレバー23に代えてポジションレバー16でフロントドーザを昇降するようにしても良い。この時は、ポジションレバー16が中立位置に復帰するように付勢して設けると良い。
【0015】
前記フロア14の左右両側部には、クローラ13の上方を覆うフェンダー27を設ける構成となっている。左右のフェンダー27は、着脱式の燃料タンク28を取り付ける構成となっていて、この燃料タンク28の上部形状は、前記フェンダー27に沿わせた形状とし、この上面に前後に伸びる取手29を設ける構成となっている。この取手29がそのまま乗降用のハンドキャッチャーとなる。
【0016】
左右のフェンダー27の後側面には、作業機の昇降用油圧シリンダ30を昇降させる手動昇降スイッチ47と作業機の左右水平シリンダ32を調整する左右水平シリンダ32の手動水平スイッチ48を設けている。なお、手動昇降スイッチ47と手動水平スイッチ48はそれぞれ二個のスイッチを備えているので、この二個のスイッチを同時に押すことで、調整するシリンダ30,32を反転するようにして、左右どちら側にオペレータが立っても移動することなく昇降と水平の調整を行えるようにしても良い。
【0017】
また、左右水平シリンダ32が無い型式の作業車の場合には手動水平スイッチ48でも昇降用油圧シリンダ30を昇降させるようにすれば良い。
左右のフェンダー27の前後フェンダ中間部49を部分的に取り外せるようにして、クローラ走行装置13のクローラ交換時にこの取り外したフェンダ中間部49の部分からクローラを吊り下げられるようにすれば、交換作業が容易になる。
【0018】
前記トランスミッションケース12の上面には、作業機昇降用アクチュエータとなる昇降用油圧シリンダ30を設け、同シリンダ30のピストンに接続したリフトアーム31を上下回動することにより、リンク機構を介して作業機を昇降する構成となっている。
【0019】
また、車体後部のリンク機構の一部には、作業機の左右ローリング用アクチュエータとして左右水平シリンダ32を取り付け、この作動量を前記シリンダ32に併設するストロークセンサ(図示せず)により検出する構成となっている。
【0020】
ステアリングハンドル15の前側下部に設けるフロントパネル33には、図3と図4に示す如く、燃料計34、バッテリチャージ警告灯35、エンジンオイル圧力警告灯36、水温警告灯37、システム異常警告灯38、スピンターン表示灯39、マイルドターン表示灯40、作業時間等を表示するアワーメータ41、主変速位置表示灯42を設け、さらに、このフロントパネル33の左下側にホ―ンスイッチ44、ウインカーレバー43、ライト切換レバー45、旋回モード切換スイッチ46、雪路走行スイッチ3、非常停止スイッチ98を設けている。
【0021】
ステアリングハンドル15のスポーク部に左右二個の旋回スイッチ124,125を設け、旋回モード切換スイッチ46をブレーキかマイルドにしている時にどちらかの旋回スイッチ124,125を押すとステアリングハンドル15を180°回したと同じ旋回を行うようにしている。また、この旋回スイッチ124,125は、旋回モード切換スイッチ46を押すと左右操行装置の片側をブレーキにして旋回する制御の場合に両方の旋回モード切換スイッチ46を同時に押すと左右の前後進切換クラッチDを中立にして走行を停止するようになる。
【0022】
なお、この旋回スイッチ124,125の機能は急旋回であるので、副変速装置Bが低速の時のみに働くようにして安全を図っている。
次に、トラクタTのトランスミッションケース12内の動力伝動構造を図9と図10で説明する。
【0023】
トランスミッションケース12は、図10に示す如く、前ケース99、第一中間ケース100、第二中間ケース101、第三中間ケース102、後ケース103の5つの中空ケースを連結した構成である。
【0024】
前記エンジン11の出力軸から前ケース99内の入力軸50へ入力された回転動力は、まず該入力軸50に設けた減速ギア組51によりトランスミッションケース12の第一中間ケース100に枢支した主クラッチ入力軸54に伝動され、主クラッチ52を駆動する。そして、この主クラッチ52にて入切操作される動力は、トランスミッションケース12の第三中間ケース102内に設ける主変速装置A及び副変速装置Bにより適宜減速され、後ケース103に枢支してベベルギア56を有する出力軸55へ伝達される。主クラッチ入力軸54の前ケース99外側には油圧ポンプ57を装着して駆動している。
【0025】
油圧多板クラッチから構成される主変速装置Aは、前記シフトアップスイッチ9aとシフトダウンスイッチ9bで変速され、ギヤ式変速装置から構成される副変速装置Bは、前記副変速レバー17で変速される。
【0026】
前記主クラッチ52は主クラッチ出力軸53への動力断続を行い、フロア14上のクラッチペタル26で入切操作される。
主変速装置Aは、主クラッチ出力軸53の延長線に設けるメイン駆動軸58とこのメイン駆動軸58を中心にして上下に配した第一従動軸59と第二従動軸60の三軸で構成されている。
【0027】
主クラッチ出力軸53の回転動力は該主クラッチ出力軸53の後端に設けたギア61に噛合する大径ギア62を備えた減速軸63に伝達され、該減速軸63の小径ギア64と噛合するギア65からメイン駆動軸58に伝達される。
【0028】
メイン駆動軸58にスプライン係合しているギア66と前記第二従動軸60上にニードルベアリングを介して軸受されたギア67とが常時噛合し、前記メイン駆動軸58にスプライン係合している小径ギア68と前記第一従動軸59にニードルベアリングを介して軸受されているギア69とがそれぞれ常時噛合している。なお、ギア65とギア66は一体のギアである。
【0029】
さらにメイン駆動軸58にスプライン係合しているギア70と第一従動軸59にニードルベアリングを介して軸受されているギア71とが常時噛合している。また、メイン駆動軸58にスプライン係合しているギア72と第二従動軸60にニードルベアリングを介して軸受されているギア73とが常時噛合している。
【0030】
第一従動軸59には、一速用のクラッチC1と三速用のクラッチC3を内装して相対回転不能にしたシリンダケース74が設けられている。
第一従動軸59の伝動下手端部にスプライン嵌合したギア75をメイン駆動軸58に遊嵌したギア筒77に固定したギア76と噛み合わせて第一従動軸59の回転をギア筒77に伝動している。
【0031】
また第一従動軸59の軸線上に出力軸55を設け、この出力軸55に副変速装置Bを構成するクラッチギア78をスプライン嵌合し、このクラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせるとギア筒77の回転がギア79からクラッチギア78を介して出力軸55に伝動され、第一従動軸59のギア75と噛み合わせると第一従動軸59の回転或いは後述する第二従動軸60からギア75へ伝動された回転が出力軸55に伝動される。
【0032】
従って、一速用のクラッチC1を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア68からギア69へ減速伝動され、ギア69の回転がシリンダーケース74を介して第一従動軸59の回転となってギア75を回転する。この時にクラッチギア78をギア75と噛み合わせると第一従動軸59の回転が出力軸55に直接伝動され、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせるとギア75の回転がギア76を介してギア筒77に減速伝動し、ギア筒77の別のギア79から出力軸55に減速伝動される。
【0033】
また、三速用のクラッチC3を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア70からギア71へ増速伝動され、ギア71の回転がシリンダーケース74を介して第一従動軸59の回転となってギア75を回転する。この時にクラッチギア78をギア75と噛み合わせると第一従動軸59の回転が出力軸55に直接伝動され、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせるとギア75の回転がギア76を介してギア筒77に減速伝動し、さらにその回転がギア筒77の別のギア79から出力軸55に減速伝動される。
【0034】
メイン駆動軸58と平行位置に配置された第一従動軸59との間に設けられる前記のギア伝達機構と同様の構成が、メイン駆動軸58と第二従動軸60の間にも設けられていて、二速用のクラッチC2と四速用のクラッチC4を構成している。
【0035】
まず、メイン駆動軸58にスプライン係合しているギア66が第二従動軸60にニードルベアリングを介して軸受されているギア67と常時噛合し、第二従動軸60に相対回転不能にしたシリンダケース80を取り付けている。このシリンダケース80に二速用のクラッチC2と四速用のクラッチC4を内装している。
【0036】
第二従動軸60の後端部に固定したギア81をメイン駆動軸58に遊嵌したギア筒77にスプライン嵌合したギア76と噛み合わして第二従動軸60の回転をギア筒77に伝動している。
【0037】
従って、二速用のクラッチC2を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア66からギア67へ速伝動され、ギア67の回転がシリンダケース80を介して第二従動軸60の回転となってギア81を回転し、さらにギア81からギア76を介してギア75を回転する。この時にクラッチギア78をギア75と噛み合わせると第二従動軸60の回転が出力軸55に伝動され、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせるとギア81の回転がギア76を介してギア筒77に伝動し、ギア79から出力軸55に減速伝動される。
【0038】
また、四速用のクラッチC4を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア72からギア73へ増速伝動され、ギア73の回転がシリンダケース80を介して第二従動軸60の回転となってギア81を回転し、さらにギア81からギア76を介してギア75を回転する。この時にクラッチギア78をギア75と噛み合わせると第二従動軸60の回転が出力軸55に伝動され、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせるとギア81の回転がギア76を介してギア筒77に伝動し、ギア79から出力軸55に減速伝動される。
【0039】
図11は、主変速装置Aの駆動油圧回路図で、一速用のクラッチC1と二速用のクラッチC2は、主変速レバー9の操作で切換える一・二速切換電磁バルブ118によって一・二速作動シリンダ120を作動させられ、三速用のクラッチC3と四速用のクラッチC4は、主変速レバー9の操作で切換える一・二速切換電磁バルブ118によって四・三速作動シリンダ119を作動させられる。エンジン11の停止後に変速位置を中立へ戻す圧力を確保するために回路内にアキュムレータ121と逆止弁122を配している。123はフィルターである。
【0040】
左右のクローラ走行装置13,13を支持する後ケース103の左右側壁間に支持軸94を枢着し、この支持軸94に前記出力軸55に固着のベベルギア56と噛み合うベベルギア85をスプライン係合し、このベベルギア85と左右対称位置にブレーキディスク82を設けている。
【0041】
そして、ブレーキペダル25とブレーキディスク82をリンク機構(図示せず)で接続し、ブレーキペダル25の踏み込み操作によりブレーキディスク82を圧着することによって、支持軸94の回転、即ち左右クローラ走行装置13,13の回転を制動するように構成している。
【0042】
前記支持軸94の端部には減速ギア組83を設け、この減速ギア組83を介して支持軸94の回転をアクスルケース内の入力軸84に伝動する。
前記アクスルケースの内部には前後進切換クラッチDと二段遊星歯ギア機構87で構成した旋回装置を配設している。この旋回装置は、前記入力軸84と、この入力軸84の外端部側に該入力軸84と同軸に枢着されたスプロケット軸86と、入力軸84とスプロケット軸86の間に介装された二段遊星歯ギア機構87と、この二段遊星歯ギア機構87のキャリア88に設けられた湿式多板型の正転用クラッチ89及び逆転用クラッチ90(前後進切換クラッチD)とから構成し、アクスルケース内の左右に設けている。
【0043】
正転用クラッチ89が入となることで前進走行し、逆転用クラッチ90が入になることで後進走行するのであるが、ばね圧によって正転用クラッチ89を入にしていて前後進レバー24を後進側へ操作すると油圧力をクラッチ板に作用して逆転用クラッチ90を入に切換えるようにしている。
【0044】
左右の前後進切換クラッチDは、ステアリングハンドル15での旋回時に該ステアリングハンドル15のハンドル回転角度からクラッチ板に作用する油圧力を調整して左右のクローラ走行装置13の回転数を旋回内側が低速になるように変更して旋回している。
【0045】
このステアリングハンドル15のハンドル回転角度からクラッチ板に作用する油圧力の調整は、通常では140msecのフィードバック制御で行っているが、前記雪路走行スイッチ3を押すと、70msecのフィードバック制御に早めて雪によるスリップを少なくするようにしている。
【0046】
なお、このフィードバック制御は、ハンドル角度が例えば90°以内ではフィードバックを行わず、90°を超えた場合に行うようにしても良い。
図12は、雪路走行スイッチ3を押した場合の旋回制御のフローチャートである。ステップS10で雪路走行スイッチ3を押し、ステップS11のハンドル角度判定で角度が0以外で旋回操作であれば、ステップS12で内側クローラを停止させ、ステップS13で所定時間が経過すると、ステップS14で内側クローラを減速駆動し、ステップS15で所定時間が経過すると、再びステップS116でハンドル角度判定を行い、まだ旋回操作中であればステップS12の前に戻って内側クローラの停止と減速駆動を繰り返す。ステップS11とステップS16のハンドル角度判定でハンドル角度が0であれば、直進中であるから左右の両クローラを全駆動して直進走行する。すなわち、雪路走行スイッチ3を押すことで、旋回内側のクローラを停止したり減速駆動することで旋回外側のクローラが雪を掻き過ぎて沈み込むのを防ぐのである。
【0047】
なお、雪路走行スイッチ3はコントローラ112に雪路を走行していることを認識させる手段で、作業機として融雪剤を積載したブロードキャスタを機体後部に装着した場合には、リフトアーム31を上昇させる昇降用油圧シリンダ30にブロードキャスタ重量の半分程度の上昇圧力を加えて、機体とブロードキャスタの全体前後重量バランスを均等にして部分的に沈下するのを防ぐようなことも行う。
【0048】
また、雪路走行スイッチ3を押すことで、前進速度よりも後進速度を速くして、除雪作業時における前後進切換を行い易くするようなことも出来る。
さらに、雪路走行スイッチ3を押すことで、リフトアーム31の上昇時に主変速レバー9を操作すると速くなり、降下時に主変速レバー9を操作すると遅くなるような速度設定にすれば、作業時と移動走行時の変速操作が単純になる。
【0049】
なお、前記の前後進時の速度変更とリフトアーム31の昇降時の速度変更は、副変速装置Bが低速の時にのみ機能するようにして安全を図る。
104は、スプロケット軸86の回転状態検出用のギアで、2個の回転センサ105,106(本発明の走行検出手段Lに相当する)で回転状態を検出する。機体が走行しているかの判断は、回転センサ105,106からの信号だけでなく、主変速レバー9や副変速レバー17や前後進切換レバー24が中立及びクラッチペダル26が踏み込みのどれか一つでもYESの条件では回転センサ105,106からの回転信号を無視して機体の走行状態ではないと判断する。これは、機体停止時にエンジン振動による回転を回転センサ105,106が検出して無視するためである。
【0050】
メイン駆動軸58の回転は、軸端に連結したPTO入力軸91に伝動され、PTO変速機構92を介してPTO出力軸93へ伝動される。
なお、主変速レバー9と副変速レバー17を適宜に操作して所望の走行速度で走行するのであるが、副変速レバー17の低速は主としてロータリ作業などの作業時に使用し、副変速レバー17の高速は路上走行などの移動時に使用する。
【0051】
図13は、エンジン制御ブロック図で、メインキー110によるエンジン11の始動と停止を制御し、本発明の中立復帰手段Nの主要部をコントローラ112で構成する。メインキー110のオン信号がスタータ114に送られてエンジン11を起動すると共に、キープリレー111に送られてコントローラ112への電力供給を自己保持する。メインキー110のオフ信号はコントローラ112へ直接送られる。さらに、コントローラ112には主変速レバー9の変速位置情報が主速センサ2から送られ、副変速装置Bの変速位置が副変速センサ107から送られ、ブレーキペダル25の踏込み情報がブレーキセンサ108から送られ、クラッチペダル26の踏込み情報がクラッチセンサ109から送られ、エンジン11の回転センサ1からエンジンの出力軸回転数が送られる。
【0052】
コントローラ112にメインキー110からオフ信号が入力すると主変速レバー9が中立以外であれば主変速バルブ115へ中立指令信号が出力されて主変速装置Aを中立にして、その後にヒューエルカットバルブ116へ燃料カット信号が送られエンジン11を停止し、さらにキープリレー111に燃料カット指令が出力されてコントローラ112への電力供給が停止される。なお、副変速装置Bが中立でブレーキペダル25が踏込まれていなくクラッチペダル26が踏込まれていなければコントローラ112からヒューエルカットバルブ116へ燃料カット指令が出力されないでエンジンが停止しないようにしても良い。
【0053】
メインキー110の近くには非常停止スイッチ98を設けて、緊急時には前記のエンジン制御を無視してエンジン11を強制的に停止できるようにしている。
図14は、走行中にエンジン11を停止した場合の制御フローチャートで、ステップS1でエンジン11の回転を回転センサ1で読み込み、ステップS2で変速装置Aの変速位置を変速センサ2で読み込み、ステップS3の走行中判定(前記走行検出手段Lの回転有無で判定)で、走行中(YESの判定)であれば、ステップS4でエンジン11の停止判定(回転センサ1の出力有無で判定)を行い、エンジン停止(YESの判定)であればステップS5で変速装置Aの変速位置を中立にして、ステップS6でコントローラ112の電源を切って制御を終了し、ステップS7の走行停止になる。
【0054】
図15は、トラクタTの三点リンクにロータリRを装着した状態で、トラクタTの後部とロータリRの間にゴム板からなる泥避けプレート124を張ってローラリRが跳ね上げる泥土がトラクタT上のオペレータに降りかからないようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例を示すトラクタの全体側面図である。
【図2】本発明の実施例を示すトラクタの全体平面図である。
【図3】トラクタの一部斜視図である。
【図4】トラクタの一部拡大平面図である。
【図5】トラクタの一部拡大平面図である。
【図6】トラクタの全体斜視図である。
【図7】トラクタの一部平面図である。
【図8】トラクタの一部斜視図である。
【図9】トラクタの動力伝動線図である。
【図10】ミッションケースの全体側断面図である。
【図11】一部の油圧回路図である。
【図12】制御のフローチャート図である。
【図13】制御のブロック図である。
【図14】制御のフローチャート図である。
【図15】トラクタにロータリを装着した全体側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 回転センサ
2 変速センサ
9 変速操作具
11 エンジン
112 コントローラ
A 変速装置
L 走行検出手段
N 中立復帰手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等の作業車に関する。特に、走行装置のトランスミッション内変速機構を制御装置による油圧機器の作動によって変速操作して走行速度変更を行う走行変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車は、ロータリ作業などの作業時には超低速で走行し、路上走行時には高速で走行するため、エンジンから走行装置へ動力を伝動するトランスミッションケース内に複数段或いは無段の変速装置を組み込み、操縦操作席の近傍に設けた変速レバーの変速位置を読込んでその変速位置に対応するように変速装置を油圧機器の作動によって変速動作させることで、所望の走行速度で走行出来るようにしている。
【0003】
例えば、特開2000−320644号公報には油圧無段変速装置からなる主変速装置と四段のギア変速からなる副変速装置がトランスミッションケース内に組み込まれ、特開2002−250437号公報には油圧無段変速装置からなる主変速装置と三段のギア変速からなる副変速装置がトランスミッションケース内に組み込まれた構成が記載され、それぞれ変速レバー単独或いは主変速レバーと副変速レバーを操作することで変速している。
【特許文献1】特開2000−320644号公報
【特許文献2】特開2002−250437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の作業車において、走行中にエンジンキーを突然切る誤操作によってエンジンが停止すると、変速装置の変速位置が走行中の変速位置のままで走行を停止することになって、エンジンを再起動した場合にエンジンの駆動力が走行装置に直接伝動して機体が突然走り出して危険である。
【0005】
そこで、本発明は、エンジンが突然停止した場合に変速装置を中立に戻して、エンジンの再起動を安全に行えるようにすること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、変速操作具9の操作で変速装置Aを油圧駆動により変速する作業車において、エンジン11の回転を検出する回転センサ1と変速装置Aの変速位置を検出する変速センサ2及び走行装置の駆動を検出する走行検出手段Lを設け、該走行検出手段Lで走行を検出中に回転センサ1でエンジン11の回転が停止したことを検出すると、前記変速装置Aを油圧駆動によって中立に戻す中立復帰手段Nを設けたことを特徴とする作業車としたものである。
【0007】
この構成で、エンジン11が停止すると中立復帰手段Nで変速装置Aが中立に戻されることになる。
また、請求項2に記載の発明は、前記中立復帰手段Nをコントローラ112で制御すべくすると共に、変速装置Aの変速位置を中立にした後に該コントローラ112を電源切にすべくした構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車としたものである。
【0008】
この構成で、エンジン11の停止後に、中立復帰手段Nのコントローラ112の電源が切れて完全に休止状態になる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、変速操作具9を走行位置にして走行中にエンジン11が突然停止すると中立復帰手段Nで変速装置Aを中立にするので、エンジン11を再起動した場合に走行装置Aに動力が伝動せず、急発進を防止出来る。また、長時間停止した後に変速装置Aへの動力伝動クラッチを切ってエンジン11を再起動した場合にも変速装置Aが中立になっているために走行のための変速操作が円滑に行える。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、中立復帰手段Nのコントローラ112が変速装置Aを中立に戻した後に電源切となって、中立復帰制御が確実に行われた後に完全な休止状態となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の走行変速装置を適用したクローラ式トラクタTの全体を示す図面である。トラクタTは、図1に示すように、車体前部にエンジン取付フレーム10を配し、同フレーム10にエンジン11を取り付け、このエンジン11の後部からエンジン出力軸(図示せず)を突設し、同軸の回転を車体前後方向に配した鋳物製トランストランスミッションケース12内の変速装置A,Bに伝達する構成となっている。また、前記変速装置A,Bにより適宜減速された回転動力は、後述するベベルギア56,85や左右アクスルケース内のスプロケット軸86等を介して、左右のクローラ式走行装置13へ伝達する構成となっている。
【0012】
前記トランスミッションケース12の上方には、フロア14を支持し、このフロア14上に、操向操作部となるステアリングハンドル15とこのステアリングハンドル15の左右に走行を前後進に切り換える前後進切換レバー24とロータリRなどの対地作業機或いは機体の前側に装着するフロントドーザ(図示省略)を昇降させるフィンガップレバー23(図2参照)を設け、ステアリングハンドル15の後側に操縦席18を設けてオペレータが着座して操縦操作を行う。
【0013】
操縦席18の左側に走行速度を四段に変速する主変速スイッチ9a,9b(本発明の変速操作具に相当する)9を設けている。この主変速スイッチ9は、シフトアップスイッチ9aとシフトダウンスイッチ9bとから構成されている。そして、作業機の高さを調整するポジションレバー16、走行速度を高・低の二段に変速する副変速レバー17を設けている。この副変速レバー17に前記シフトアップスイッチ9aとシフトダウンスイッチ9bを設ける構成としている。操縦席18の右側にバックアップスイッチ19、ロータリRの傾きを調整する傾き調整ダイヤル20や手動調整レバー21及び水平制御切換スイッチ22を設け、足元のフロア14にブレーキペダル25、クラッチペダル26等を設ける構成となっている。
【0014】
なお、フィンガップレバー23に代えてポジションレバー16でフロントドーザを昇降するようにしても良い。この時は、ポジションレバー16が中立位置に復帰するように付勢して設けると良い。
【0015】
前記フロア14の左右両側部には、クローラ13の上方を覆うフェンダー27を設ける構成となっている。左右のフェンダー27は、着脱式の燃料タンク28を取り付ける構成となっていて、この燃料タンク28の上部形状は、前記フェンダー27に沿わせた形状とし、この上面に前後に伸びる取手29を設ける構成となっている。この取手29がそのまま乗降用のハンドキャッチャーとなる。
【0016】
左右のフェンダー27の後側面には、作業機の昇降用油圧シリンダ30を昇降させる手動昇降スイッチ47と作業機の左右水平シリンダ32を調整する左右水平シリンダ32の手動水平スイッチ48を設けている。なお、手動昇降スイッチ47と手動水平スイッチ48はそれぞれ二個のスイッチを備えているので、この二個のスイッチを同時に押すことで、調整するシリンダ30,32を反転するようにして、左右どちら側にオペレータが立っても移動することなく昇降と水平の調整を行えるようにしても良い。
【0017】
また、左右水平シリンダ32が無い型式の作業車の場合には手動水平スイッチ48でも昇降用油圧シリンダ30を昇降させるようにすれば良い。
左右のフェンダー27の前後フェンダ中間部49を部分的に取り外せるようにして、クローラ走行装置13のクローラ交換時にこの取り外したフェンダ中間部49の部分からクローラを吊り下げられるようにすれば、交換作業が容易になる。
【0018】
前記トランスミッションケース12の上面には、作業機昇降用アクチュエータとなる昇降用油圧シリンダ30を設け、同シリンダ30のピストンに接続したリフトアーム31を上下回動することにより、リンク機構を介して作業機を昇降する構成となっている。
【0019】
また、車体後部のリンク機構の一部には、作業機の左右ローリング用アクチュエータとして左右水平シリンダ32を取り付け、この作動量を前記シリンダ32に併設するストロークセンサ(図示せず)により検出する構成となっている。
【0020】
ステアリングハンドル15の前側下部に設けるフロントパネル33には、図3と図4に示す如く、燃料計34、バッテリチャージ警告灯35、エンジンオイル圧力警告灯36、水温警告灯37、システム異常警告灯38、スピンターン表示灯39、マイルドターン表示灯40、作業時間等を表示するアワーメータ41、主変速位置表示灯42を設け、さらに、このフロントパネル33の左下側にホ―ンスイッチ44、ウインカーレバー43、ライト切換レバー45、旋回モード切換スイッチ46、雪路走行スイッチ3、非常停止スイッチ98を設けている。
【0021】
ステアリングハンドル15のスポーク部に左右二個の旋回スイッチ124,125を設け、旋回モード切換スイッチ46をブレーキかマイルドにしている時にどちらかの旋回スイッチ124,125を押すとステアリングハンドル15を180°回したと同じ旋回を行うようにしている。また、この旋回スイッチ124,125は、旋回モード切換スイッチ46を押すと左右操行装置の片側をブレーキにして旋回する制御の場合に両方の旋回モード切換スイッチ46を同時に押すと左右の前後進切換クラッチDを中立にして走行を停止するようになる。
【0022】
なお、この旋回スイッチ124,125の機能は急旋回であるので、副変速装置Bが低速の時のみに働くようにして安全を図っている。
次に、トラクタTのトランスミッションケース12内の動力伝動構造を図9と図10で説明する。
【0023】
トランスミッションケース12は、図10に示す如く、前ケース99、第一中間ケース100、第二中間ケース101、第三中間ケース102、後ケース103の5つの中空ケースを連結した構成である。
【0024】
前記エンジン11の出力軸から前ケース99内の入力軸50へ入力された回転動力は、まず該入力軸50に設けた減速ギア組51によりトランスミッションケース12の第一中間ケース100に枢支した主クラッチ入力軸54に伝動され、主クラッチ52を駆動する。そして、この主クラッチ52にて入切操作される動力は、トランスミッションケース12の第三中間ケース102内に設ける主変速装置A及び副変速装置Bにより適宜減速され、後ケース103に枢支してベベルギア56を有する出力軸55へ伝達される。主クラッチ入力軸54の前ケース99外側には油圧ポンプ57を装着して駆動している。
【0025】
油圧多板クラッチから構成される主変速装置Aは、前記シフトアップスイッチ9aとシフトダウンスイッチ9bで変速され、ギヤ式変速装置から構成される副変速装置Bは、前記副変速レバー17で変速される。
【0026】
前記主クラッチ52は主クラッチ出力軸53への動力断続を行い、フロア14上のクラッチペタル26で入切操作される。
主変速装置Aは、主クラッチ出力軸53の延長線に設けるメイン駆動軸58とこのメイン駆動軸58を中心にして上下に配した第一従動軸59と第二従動軸60の三軸で構成されている。
【0027】
主クラッチ出力軸53の回転動力は該主クラッチ出力軸53の後端に設けたギア61に噛合する大径ギア62を備えた減速軸63に伝達され、該減速軸63の小径ギア64と噛合するギア65からメイン駆動軸58に伝達される。
【0028】
メイン駆動軸58にスプライン係合しているギア66と前記第二従動軸60上にニードルベアリングを介して軸受されたギア67とが常時噛合し、前記メイン駆動軸58にスプライン係合している小径ギア68と前記第一従動軸59にニードルベアリングを介して軸受されているギア69とがそれぞれ常時噛合している。なお、ギア65とギア66は一体のギアである。
【0029】
さらにメイン駆動軸58にスプライン係合しているギア70と第一従動軸59にニードルベアリングを介して軸受されているギア71とが常時噛合している。また、メイン駆動軸58にスプライン係合しているギア72と第二従動軸60にニードルベアリングを介して軸受されているギア73とが常時噛合している。
【0030】
第一従動軸59には、一速用のクラッチC1と三速用のクラッチC3を内装して相対回転不能にしたシリンダケース74が設けられている。
第一従動軸59の伝動下手端部にスプライン嵌合したギア75をメイン駆動軸58に遊嵌したギア筒77に固定したギア76と噛み合わせて第一従動軸59の回転をギア筒77に伝動している。
【0031】
また第一従動軸59の軸線上に出力軸55を設け、この出力軸55に副変速装置Bを構成するクラッチギア78をスプライン嵌合し、このクラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせるとギア筒77の回転がギア79からクラッチギア78を介して出力軸55に伝動され、第一従動軸59のギア75と噛み合わせると第一従動軸59の回転或いは後述する第二従動軸60からギア75へ伝動された回転が出力軸55に伝動される。
【0032】
従って、一速用のクラッチC1を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア68からギア69へ減速伝動され、ギア69の回転がシリンダーケース74を介して第一従動軸59の回転となってギア75を回転する。この時にクラッチギア78をギア75と噛み合わせると第一従動軸59の回転が出力軸55に直接伝動され、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせるとギア75の回転がギア76を介してギア筒77に減速伝動し、ギア筒77の別のギア79から出力軸55に減速伝動される。
【0033】
また、三速用のクラッチC3を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア70からギア71へ増速伝動され、ギア71の回転がシリンダーケース74を介して第一従動軸59の回転となってギア75を回転する。この時にクラッチギア78をギア75と噛み合わせると第一従動軸59の回転が出力軸55に直接伝動され、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせるとギア75の回転がギア76を介してギア筒77に減速伝動し、さらにその回転がギア筒77の別のギア79から出力軸55に減速伝動される。
【0034】
メイン駆動軸58と平行位置に配置された第一従動軸59との間に設けられる前記のギア伝達機構と同様の構成が、メイン駆動軸58と第二従動軸60の間にも設けられていて、二速用のクラッチC2と四速用のクラッチC4を構成している。
【0035】
まず、メイン駆動軸58にスプライン係合しているギア66が第二従動軸60にニードルベアリングを介して軸受されているギア67と常時噛合し、第二従動軸60に相対回転不能にしたシリンダケース80を取り付けている。このシリンダケース80に二速用のクラッチC2と四速用のクラッチC4を内装している。
【0036】
第二従動軸60の後端部に固定したギア81をメイン駆動軸58に遊嵌したギア筒77にスプライン嵌合したギア76と噛み合わして第二従動軸60の回転をギア筒77に伝動している。
【0037】
従って、二速用のクラッチC2を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア66からギア67へ速伝動され、ギア67の回転がシリンダケース80を介して第二従動軸60の回転となってギア81を回転し、さらにギア81からギア76を介してギア75を回転する。この時にクラッチギア78をギア75と噛み合わせると第二従動軸60の回転が出力軸55に伝動され、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせるとギア81の回転がギア76を介してギア筒77に伝動し、ギア79から出力軸55に減速伝動される。
【0038】
また、四速用のクラッチC4を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア72からギア73へ増速伝動され、ギア73の回転がシリンダケース80を介して第二従動軸60の回転となってギア81を回転し、さらにギア81からギア76を介してギア75を回転する。この時にクラッチギア78をギア75と噛み合わせると第二従動軸60の回転が出力軸55に伝動され、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせるとギア81の回転がギア76を介してギア筒77に伝動し、ギア79から出力軸55に減速伝動される。
【0039】
図11は、主変速装置Aの駆動油圧回路図で、一速用のクラッチC1と二速用のクラッチC2は、主変速レバー9の操作で切換える一・二速切換電磁バルブ118によって一・二速作動シリンダ120を作動させられ、三速用のクラッチC3と四速用のクラッチC4は、主変速レバー9の操作で切換える一・二速切換電磁バルブ118によって四・三速作動シリンダ119を作動させられる。エンジン11の停止後に変速位置を中立へ戻す圧力を確保するために回路内にアキュムレータ121と逆止弁122を配している。123はフィルターである。
【0040】
左右のクローラ走行装置13,13を支持する後ケース103の左右側壁間に支持軸94を枢着し、この支持軸94に前記出力軸55に固着のベベルギア56と噛み合うベベルギア85をスプライン係合し、このベベルギア85と左右対称位置にブレーキディスク82を設けている。
【0041】
そして、ブレーキペダル25とブレーキディスク82をリンク機構(図示せず)で接続し、ブレーキペダル25の踏み込み操作によりブレーキディスク82を圧着することによって、支持軸94の回転、即ち左右クローラ走行装置13,13の回転を制動するように構成している。
【0042】
前記支持軸94の端部には減速ギア組83を設け、この減速ギア組83を介して支持軸94の回転をアクスルケース内の入力軸84に伝動する。
前記アクスルケースの内部には前後進切換クラッチDと二段遊星歯ギア機構87で構成した旋回装置を配設している。この旋回装置は、前記入力軸84と、この入力軸84の外端部側に該入力軸84と同軸に枢着されたスプロケット軸86と、入力軸84とスプロケット軸86の間に介装された二段遊星歯ギア機構87と、この二段遊星歯ギア機構87のキャリア88に設けられた湿式多板型の正転用クラッチ89及び逆転用クラッチ90(前後進切換クラッチD)とから構成し、アクスルケース内の左右に設けている。
【0043】
正転用クラッチ89が入となることで前進走行し、逆転用クラッチ90が入になることで後進走行するのであるが、ばね圧によって正転用クラッチ89を入にしていて前後進レバー24を後進側へ操作すると油圧力をクラッチ板に作用して逆転用クラッチ90を入に切換えるようにしている。
【0044】
左右の前後進切換クラッチDは、ステアリングハンドル15での旋回時に該ステアリングハンドル15のハンドル回転角度からクラッチ板に作用する油圧力を調整して左右のクローラ走行装置13の回転数を旋回内側が低速になるように変更して旋回している。
【0045】
このステアリングハンドル15のハンドル回転角度からクラッチ板に作用する油圧力の調整は、通常では140msecのフィードバック制御で行っているが、前記雪路走行スイッチ3を押すと、70msecのフィードバック制御に早めて雪によるスリップを少なくするようにしている。
【0046】
なお、このフィードバック制御は、ハンドル角度が例えば90°以内ではフィードバックを行わず、90°を超えた場合に行うようにしても良い。
図12は、雪路走行スイッチ3を押した場合の旋回制御のフローチャートである。ステップS10で雪路走行スイッチ3を押し、ステップS11のハンドル角度判定で角度が0以外で旋回操作であれば、ステップS12で内側クローラを停止させ、ステップS13で所定時間が経過すると、ステップS14で内側クローラを減速駆動し、ステップS15で所定時間が経過すると、再びステップS116でハンドル角度判定を行い、まだ旋回操作中であればステップS12の前に戻って内側クローラの停止と減速駆動を繰り返す。ステップS11とステップS16のハンドル角度判定でハンドル角度が0であれば、直進中であるから左右の両クローラを全駆動して直進走行する。すなわち、雪路走行スイッチ3を押すことで、旋回内側のクローラを停止したり減速駆動することで旋回外側のクローラが雪を掻き過ぎて沈み込むのを防ぐのである。
【0047】
なお、雪路走行スイッチ3はコントローラ112に雪路を走行していることを認識させる手段で、作業機として融雪剤を積載したブロードキャスタを機体後部に装着した場合には、リフトアーム31を上昇させる昇降用油圧シリンダ30にブロードキャスタ重量の半分程度の上昇圧力を加えて、機体とブロードキャスタの全体前後重量バランスを均等にして部分的に沈下するのを防ぐようなことも行う。
【0048】
また、雪路走行スイッチ3を押すことで、前進速度よりも後進速度を速くして、除雪作業時における前後進切換を行い易くするようなことも出来る。
さらに、雪路走行スイッチ3を押すことで、リフトアーム31の上昇時に主変速レバー9を操作すると速くなり、降下時に主変速レバー9を操作すると遅くなるような速度設定にすれば、作業時と移動走行時の変速操作が単純になる。
【0049】
なお、前記の前後進時の速度変更とリフトアーム31の昇降時の速度変更は、副変速装置Bが低速の時にのみ機能するようにして安全を図る。
104は、スプロケット軸86の回転状態検出用のギアで、2個の回転センサ105,106(本発明の走行検出手段Lに相当する)で回転状態を検出する。機体が走行しているかの判断は、回転センサ105,106からの信号だけでなく、主変速レバー9や副変速レバー17や前後進切換レバー24が中立及びクラッチペダル26が踏み込みのどれか一つでもYESの条件では回転センサ105,106からの回転信号を無視して機体の走行状態ではないと判断する。これは、機体停止時にエンジン振動による回転を回転センサ105,106が検出して無視するためである。
【0050】
メイン駆動軸58の回転は、軸端に連結したPTO入力軸91に伝動され、PTO変速機構92を介してPTO出力軸93へ伝動される。
なお、主変速レバー9と副変速レバー17を適宜に操作して所望の走行速度で走行するのであるが、副変速レバー17の低速は主としてロータリ作業などの作業時に使用し、副変速レバー17の高速は路上走行などの移動時に使用する。
【0051】
図13は、エンジン制御ブロック図で、メインキー110によるエンジン11の始動と停止を制御し、本発明の中立復帰手段Nの主要部をコントローラ112で構成する。メインキー110のオン信号がスタータ114に送られてエンジン11を起動すると共に、キープリレー111に送られてコントローラ112への電力供給を自己保持する。メインキー110のオフ信号はコントローラ112へ直接送られる。さらに、コントローラ112には主変速レバー9の変速位置情報が主速センサ2から送られ、副変速装置Bの変速位置が副変速センサ107から送られ、ブレーキペダル25の踏込み情報がブレーキセンサ108から送られ、クラッチペダル26の踏込み情報がクラッチセンサ109から送られ、エンジン11の回転センサ1からエンジンの出力軸回転数が送られる。
【0052】
コントローラ112にメインキー110からオフ信号が入力すると主変速レバー9が中立以外であれば主変速バルブ115へ中立指令信号が出力されて主変速装置Aを中立にして、その後にヒューエルカットバルブ116へ燃料カット信号が送られエンジン11を停止し、さらにキープリレー111に燃料カット指令が出力されてコントローラ112への電力供給が停止される。なお、副変速装置Bが中立でブレーキペダル25が踏込まれていなくクラッチペダル26が踏込まれていなければコントローラ112からヒューエルカットバルブ116へ燃料カット指令が出力されないでエンジンが停止しないようにしても良い。
【0053】
メインキー110の近くには非常停止スイッチ98を設けて、緊急時には前記のエンジン制御を無視してエンジン11を強制的に停止できるようにしている。
図14は、走行中にエンジン11を停止した場合の制御フローチャートで、ステップS1でエンジン11の回転を回転センサ1で読み込み、ステップS2で変速装置Aの変速位置を変速センサ2で読み込み、ステップS3の走行中判定(前記走行検出手段Lの回転有無で判定)で、走行中(YESの判定)であれば、ステップS4でエンジン11の停止判定(回転センサ1の出力有無で判定)を行い、エンジン停止(YESの判定)であればステップS5で変速装置Aの変速位置を中立にして、ステップS6でコントローラ112の電源を切って制御を終了し、ステップS7の走行停止になる。
【0054】
図15は、トラクタTの三点リンクにロータリRを装着した状態で、トラクタTの後部とロータリRの間にゴム板からなる泥避けプレート124を張ってローラリRが跳ね上げる泥土がトラクタT上のオペレータに降りかからないようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例を示すトラクタの全体側面図である。
【図2】本発明の実施例を示すトラクタの全体平面図である。
【図3】トラクタの一部斜視図である。
【図4】トラクタの一部拡大平面図である。
【図5】トラクタの一部拡大平面図である。
【図6】トラクタの全体斜視図である。
【図7】トラクタの一部平面図である。
【図8】トラクタの一部斜視図である。
【図9】トラクタの動力伝動線図である。
【図10】ミッションケースの全体側断面図である。
【図11】一部の油圧回路図である。
【図12】制御のフローチャート図である。
【図13】制御のブロック図である。
【図14】制御のフローチャート図である。
【図15】トラクタにロータリを装着した全体側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 回転センサ
2 変速センサ
9 変速操作具
11 エンジン
112 コントローラ
A 変速装置
L 走行検出手段
N 中立復帰手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速操作具(9)の操作で変速装置(A)を油圧駆動により変速する作業車において、エンジン(11)の回転を検出する回転センサ(1)と変速装置(A)の変速位置を検出する変速センサ(2)及び走行装置の駆動を検出する走行検出手段(L)を設け、該走行検出手段(L)で走行を検出中に回転センサ(1)でエンジン(11)の回転が停止したことを検出すると、前記変速装置(A)を油圧駆動によって中立に戻す中立復帰手段(N)を設けたことを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記中立復帰手段(N)をコントローラ(112)で制御すべくすると共に、変速装置(A)の変速位置を中立にした後に該コントローラ(112)を電源切にすべくした構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項1】
変速操作具(9)の操作で変速装置(A)を油圧駆動により変速する作業車において、エンジン(11)の回転を検出する回転センサ(1)と変速装置(A)の変速位置を検出する変速センサ(2)及び走行装置の駆動を検出する走行検出手段(L)を設け、該走行検出手段(L)で走行を検出中に回転センサ(1)でエンジン(11)の回転が停止したことを検出すると、前記変速装置(A)を油圧駆動によって中立に戻す中立復帰手段(N)を設けたことを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記中立復帰手段(N)をコントローラ(112)で制御すべくすると共に、変速装置(A)の変速位置を中立にした後に該コントローラ(112)を電源切にすべくした構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−298204(P2008−298204A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145610(P2007−145610)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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