作業車
【課題】油圧式の作動力と機械式の作動力との何れの操作力であっても、左右のブレーキ機構を均等に操作する制動操作系を少ない部品点数で構成する。
【解決手段】ブレーキピストン77の端部に支持される係合軸体78を天秤状部材79の係合孔部79Hに挿通し、天秤状部材79に連結ピン85を介して操作ワイヤ64を連結し、天秤状部材79の一対のアーム部79Aで後輪ブレーキ機構のブレーキ操作アーム75を操作する操作系を形成する。操作ワイヤ64の引き操作時に連結ピン85を中心にする天秤状部材79の揺動を許すように係合孔部79Hに幅広領域Wを形成した。
【解決手段】ブレーキピストン77の端部に支持される係合軸体78を天秤状部材79の係合孔部79Hに挿通し、天秤状部材79に連結ピン85を介して操作ワイヤ64を連結し、天秤状部材79の一対のアーム部79Aで後輪ブレーキ機構のブレーキ操作アーム75を操作する操作系を形成する。操作ワイヤ64の引き操作時に連結ピン85を中心にする天秤状部材79の揺動を許すように係合孔部79Hに幅広領域Wを形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ操作手段からのブレーキ操作力を、イコライザから左右の車輪のブレーキ機構に伝えるブレーキ操作系を備えると共に、前記イコライザが、左右の前記ブレーキ機構に前記ブレーキ操作力を伝える一対のアーム部を有し、左右の前記ブレーキ機構の操作ストロークの差を吸収するため揺動自在な天秤状部材を備えて構成されている作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された作業車として特許文献1には、ブレーキペダルを踏み込み操作した場合にマスタシリンダからのオイル圧を配管により前輪ブレーキと後輪ブレーキとに伝えて制動操作を行う油圧式の制動系と、パーキングレバー(本発明のブレーキ操作手段)が操作された場合に、操作ワイヤの引き操作力をスタビライザリンク(本発明のイコライザ)から左右の後輪ブレーキに伝えて制動操作を行う機械式の制動系とを備えた作業車が示されている。
【0003】
この特許文献1では、スタビライザリンク(本発明のイコライザ)が、天秤状部材で構成され、パーキングレバー(本発明のブレーキ操作手段)に連係するワイヤが、天秤状部材の中央位置に連結し、この天秤状部材の両端位置に接続するワイヤが左右の後輪ブレーキ(本発明のブレーキ機構)の操作レバーに連結している。このような構成から、パーキングレバーを操作した場合には天秤状部材が揺動することにより左右の後輪ブレーキの操作ストロークの差を吸収して均等な制動操作を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐50952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車には、ブレーキペダルの操作により制動力を得る油圧式の制動系と、パーキング用のブレーキ操作具の操作により制動力を得る機械式の制動系が必要とされ、パーキング用のブレーキ操作具の操作力を左右の後車輪のブレーキ機構に均等に伝えるためのイコライザも必要とされる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるように左右の後輪ブレーキを操作するために左右の油圧シリンダを備えるものでは、油圧シリンダと、この油圧シリンダの駆動力でブレーキ操作を行う機械的な構成とを必要とし、しかも、パーキング用のブレーキ操作具からの操作力を伝えるワイヤ等の構成を必要とするため部品点数が増大し、構成の複雑化も招く点において改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、油圧式の作動力と機械式の作動力との何れの操作力であっても、左右のブレーキ機構を円滑に操作する制動操作系を少ない部品点数で構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、ブレーキ操作手段からのブレーキ操作力を、イコライザから左右の車輪のブレーキ機構に伝えるブレーキ操作系を備えると共に、前記イコライザが、左右の前記ブレーキ機構に前記ブレーキ操作力を伝える一対のアーム部を有し、左右の前記ブレーキ機構の操作ストロークの差を吸収するため揺動自在な天秤状部材を備えて構成されている作業車であって、
前記ブレーキ操作手段が、ブレーキペダルの踏み込み操作によって供給されるブレーキオイルの圧力により突出方向に作動する単一のブレーキピストンと、駐車ブレーキ操作具の操作力が伝えられるブレーキ操作部材とを備えており、前記天秤状部材に対して前記ブレーキ操作部材が連結すると共に、前記天秤状部材に対して前記ブレーキピストンの突出方向への作動力を伝える牽引手段が備えられ、この牽引手段が、前記ブレーキ操作部材の操作力の作用時に前記ブレーキピストンと前記天秤状部材との相対移動を許す融通部を備えている点にある。
【0009】
この構成によると、左右のブレーキ機構が、制動状態に達するまでの操作ストロークが異なるものでも、ブレーキペダルの踏み込み操作によりブレーキピストンが突出した際に天秤状部材が揺動することにより左右のブレーキ機構の均等な操作を実現する。また、駐車ブレーキ操作具を操作した際に、ブレーキ操作部材から天秤状部材に操作力が伝えられる際に、左右のブレーキ機構が制動状態に達するまでの操作ストロークが異なるものでは、天秤状部材が揺動することにより左右のブレーキ機構の操作ストロークの差を吸収して均等な制動操作を実現する。
特に、ブレーキピストンは直線的な作動を行うものであり、駐車ブレーキ操作具の操作で天秤状部材が作動する際には、左右のブレーキ機構の操作系の操作ストロークの差からブレーキピストンの作動方向と直交する方向に天秤状部材を変位させる力が作用することもある。このような場合には、融通手段がブレーキピストンの作動方向に対して直交する方向へ天秤状部材の変位を許すことになり円滑なブレーキ操作を実現する。
従って、油圧式の作動力と機械式の作動力との何れの操作力であっても、左右のブレーキ機構を円滑に操作する制動操作系を少ない部品点数の構成できた。
【0010】
本発明は、前記牽引手段が、前記ブレーキピストンの軸芯と直交する姿勢の係合軸体と、この係合軸体が挿通する係合孔部とを有し、前記ブレーキピストンの突出方向への作動力を、係合軸体と係合孔部の内周との当接により前記天秤状部材に伝える構成を有し、前記融通部が、前記係合軸体と前記係合孔部との前記ブレーキピストンの作動方向と直交する方向への相対移動を許すように前記係合孔部に形成された幅広領域で構成されても良い。
【0011】
これによると、ブレーキピストンの突出方向への作動時には係合軸体から天秤状部材の係合孔部の内周に当接することで天秤状部材を作動させる。また、係合軸体が係合孔部に挿通する構成であるので、天秤状部材の揺動が許され、係合孔部の幅広領域によりブレーキピストンの作動方向と直交する方向への天秤状部材の変位も許される。
【0012】
本発明は、前記係合軸体が、前記ブレーキピストンの先端部に形成され、前記係合孔部が前記天秤状部材に形成され、この係合孔部の形状が、前記係合軸体の軸芯に沿う方向視において、前記ブレーキピストンの突出作動の上手側ほど幅広となる三角形状に形成され、この幅広となる領域で前記幅広領域が形成されても良い。
【0013】
これによると、係合孔が三角形状となる簡単な形状の設定により、天秤状部材の揺動と、ブレーキピストンの作動方向と直交する方向への変位とを許すものとなり、複雑な構成を備えないため簡単に構成できる。
【0014】
本発明は、左右の車輪に駆動力を伝えるミッションケースに左右の前記ブレーキ機構が内蔵されると共に、この左右のブレーキ機構を操作するブレーキ操作軸が平行姿勢で前記ミッションケースの所定の外壁に突設され、前記外壁の外部で、この外壁と平行する姿勢に前記天秤状部材が配置されても良い。
【0015】
これによると、ミッションケースの所定の外壁の外部に天秤状部材を配置し、平行姿勢のブレーキ操作軸に備えられる操作アームと、天秤状部材とをロッドやワイヤ等で連係することにより、ミッションケースの所定の外壁側からミッションケースに内蔵された左右のブレーキ機構を同時に操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】作業車の全体側面図である。
【図2】作業車の全体平面図である。
【図3】作業車の伝動系を示す平面図である。
【図4】機体フレームの斜視図である。
【図5】駆動部の側面図である。
【図6】ブレーキ操作系を模式的に示す図である。
【図7】ブレーキ機構の構成を示すミッションケースの断面図である。
【図8】イコライザの構成を示す側面図である。
【図9】イコライザの構成を示す断面図である。
【図10】イコライザの構成を示す斜視図である。
【図11】昇降制御系とステアリング制御系とを示す油圧回路図である。
【図12】無段変速装置の油圧回路図である。
【図13】別実施形態(a)のイコライザの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1〜図3に示すように、操向操作自在な左右一対の前車輪1と、左右一対の後車輪2とを走行機体Aに備え、この走行機体Aの前部位置に運転部を構成するキャビンBを備え、走行機体Aの後部に荷台3を備え、この荷台3の下方位置に駆動部Cを備えて作業車が構成されている。
【0018】
この作業車は、駆動部Cからの駆動力を前車輪1と後車輪2とに伝える走行駆動系を有した4輪駆動型に構成され、農作業や運搬作業等の多目的の作業に使用される。荷台3は、後端側が走行機体Aの後端位置に対して横向き姿勢の軸芯Pを中心にして揺動自在に支持され、ダンプシリンダ4の作動により前端側を上昇させて積載物を後方に排出できるように構成されている。
【0019】
走行機体Aの前部位置には開閉自在にボンネット5を備えており、このボンネット5の左右下部には、前車輪1の上部を覆うフロントフェンダー6が配置されている。前記キャビンBには、キャビン本体7の前部にフロントガラス8を備え、この側部に対して開閉自在に備えられるドアー9を備えている。
【0020】
キャビンBの内部に運転者が着座する運転座席11と、この運転座席11に隣接する位置で横長となる2人掛用の助手座席12とが備えられている。運転座席11の前部位置には前車輪1を操向制御するステアリングホイール13と、走行速度を設定する主変速レバー14と、駐車ブレーキ操作具としてのパーキングレバー15とが備えられ、この下部位置には走行速度を制御する変速操作具としてのアクセルペダル16と、ブレーキペダル17とが備えられている。
【0021】
走行機体Aの後端側には、左右の後車輪2の上方を覆うリヤフェンダー18が備えられ、このリヤフェンダー18には、ブレーキランプ19が備えられている。
【0022】
〔機体フレーム〕
走行機体Aの強度メンバーとしての機体フレームFを備えている。この機体フレームFは図4に示すように、前後方向に伸びる左右一対のメインフレーム21と、このメインフレーム21の前部位置においてキャビンBを支持するキャビンフレームユニット22と、メインフレーム21の前端に連結する前部フレームユニット23と、メインフレーム21の後部位置の上方位置でメインフレーム21と平行姿勢となるように走行機体Aの前後方向に伸びる上部フレーム24と、駆動部Cを支持する着脱フレームユニットGとを備えて構成されている。
【0023】
また、メインフレーム21と上部フレーム24とは角パイプ状の鋼材が用いられ、キャビンフレームユニット22と前部フレームユニット23とは、角パイプ材やチャンネル材等で成る鋼材が用いられている。
【0024】
キャビンフレームユニット22は、キャビンBの前部に配置される横向き姿勢のフレーム体と、運転座席11の下側に配置される横向き姿勢のフレーム体とを含む構造物として構成されている。前部フレームユニット23は、ボンネット5の下側に配置される構造物であり、この前部フレームユニット23の左右位置には、ダブルウイッシュボーン型に構成される上下一対の前部サスペンションアーム25の基端部が前後向き姿勢の揺動軸芯を中心にして揺動自在に支持されている。また、前部サスペンションアーム25の上方への揺動時に圧縮される前部サスペンションスプリング26を有した前部サスペンションユニット27の下端が前部サスペンションアーム25に支持され、この前部サスペンションユニット27の上端が前部フレームユニット23に支持されている。
【0025】
左右のメインフレーム21と、この上部に配置される上部フレーム24とは縦向き姿勢で角パイプ状の鋼材で成る連結フレーム28によって連結されている。また、メインフレーム21の後端側に隣接する位置で上部フレーム24の下側にメインフレーム21と上部フレーム24とに対して分離自在に連結するように着脱フレームユニットGが配置されている。左右のメインフレーム21の後部位置には支持フレーム35の両端部が着脱自在に連結し、左右の上部フレーム24の上面側には、左右の上部フレーム24に架け渡される形態の横フレーム37が備えられている。
【0026】
着脱フレームユニットGは、駆動部Cの下側(上部フレーム24より下側)に配置されるマウントフレーム31と、このマウントフレーム31を左右の上部フレーム24に連結するように左右に2つずつ配置される縦フレーム32と、マウントフレームの31の前端側に形成される横向き姿勢の前部フレーム33とを備えて構成されている。
【0027】
左右の縦フレーム32に対して、ダブルウィッシュボーン型に構成される上下一対の後部サスペンションアーム39の基端部が前後向き姿勢の揺動軸芯を中心にして揺動自在に支持されている。また、後部サスペンションアーム39の上方への揺動時に圧縮される後部サスペンションスプリング40を有する後部サスペンションユニット41の下端が後部サスペンションアーム39に支持され、この後部サスペンションユニット41の上端が横フレーム37のサスペンション支持部37Aに支持されている。
【0028】
着脱フレームユニットGの分離の構成は詳述しないが、他のフレームから分離することにより、この着脱フレームユニットGに駆動部Cと後車輪2とを支持した状態で機体フレームFから取り外せるように構成されている。
【0029】
マウントフレーム31は、鋼板をプレス加工する等の加工によりリブ状部分を形成して強度を高めており、横幅が左右の上部フレーム24の左右間隔より短い寸法に設定されている。マウントフレーム31の両端部と、上部フレーム24とを縦フレーム32で直線的に連結するため、左右の縦フレーム32は、上端側ほど機体外方に変位する傾斜姿勢で備えられている。
【0030】
エンジンEとミッションケースMと無段変速装置Vとを、この順序で連結することでエンジンEとミッションケースMと無段変速装置Vとを一体化して駆動部Cが構成されている。図4、図5に示すように、エンジンEの前端位置の下部の左右2箇所が支持フレーム35の左右一対の前部マウント支持体36に対し下部防振マウント45により支持され、ミッションケースMの後端位置の下部の左右2箇所がマウントフレーム31の左右一対の後部マウント支持体34に下部防振マウント45により支持されている。また、横フレーム37の中間位置に上部マウント支持体38が備えられ、この上部マウント支持体38に対してミッションケースMの上面に突設した吊下フレーム47の上端が上部防振マウント48により支持され、これにより駆動部Cが機体フレームFに支持されている。
【0031】
ミッションケースMの後方の上方位置の左側には防熱用のカバー50を有したマフラー51を備えており、このマフラー51にエンジンEの排気ガスが供給され、排気音が低減される。
【0032】
〔ミッションケース・ブレーキ機構〕
この作業車では、図6に示すように、ブレーキペダル17の踏み込み操作時にブレーキオイルの圧力により左右の前車輪1の前輪ブレーキ機構Bfと左右の後車輪2の後輪ブレーキ機構Brとを制動操作する油圧式のブレーキ操作系を備えると共に、ブレーキ操作部材としてのパーキングレバー15の操作力により左右の後車輪2の後輪ブレーキ機構Brを制動操作する機械式のブレーキ操作系を備えている。
【0033】
具体的な構成として、ブレーキペダル17の踏み込み操作時にマスタシリンダ61で加圧されるブレーキオイルを前部ブレーキ油路62を介して左右の前車輪1の前輪ブレーキ機構Bfに供給し、これと同時に、マスタシリンダ61で加圧されるブレーキオイルを後部ブレーキ油路63を介してシリンダユニットDに供給する油路系を備え、このシリンダユニットDの作動力をイコライザHから左右の後車輪2の後輪ブレーキ機構Brに伝えて制動操作を行うように油圧式のブレーキ操作系が構成されている。また、パーキングレバー15の操作時にブレーキ操作部材としての操作ワイヤ64の操作力をイコライザHに伝え、このイコライザHからの操作力を左右の後車輪2の後輪ブレーキ機構Brに伝えて制動操作を行うように機械式のブレーキ操作系が構成されている。
【0034】
図6、図7に示すように、ミッションケースMは、無段変速装置Vで変速された駆動力を複数段に変速し、前後進の切換を行うギヤ式の変速装置(図示せず)と、この変速装置からの駆動力が伝えられるデファレンシャルギヤ66とを内蔵している。また、ミッションケースMにはデファレンシャルギヤ66からの駆動力が伝えられる左右のサイド軸67を備え、このサイド軸67の駆動力を左右の後輪駆動軸68に伝えるギヤ連動機構69を備え、左右のサイド軸67に制動力を作用させる摩擦多板式の後輪ブレーキ機構Brを内蔵している。
【0035】
後輪ブレーキ機構Brは、複数の摩擦板71と、この複数の摩擦板71に圧接力を作用させる圧接プレート72と、この圧接プレート72の回転に伴い圧接プレート72を、サイド軸67の軸芯に沿ってシフトさせるカム機構とを備えている。カム機構は、圧接プレート72に形成されたカム溝72Aと、このカム溝72Aに係入するボール73と備えて構成されている。カム溝72Aは、サイド軸67の軸芯を中心とする円弧状の領域において周方向での深さが異なる形状に形成されている。摩擦板71は、サイド軸67と一体回転するものと、ミッションケースMに対して回転不能に支持されたものとを交互に配置して構成されている。
【0036】
このような構成から、サイド軸67の軸芯を中心に圧接プレート72を制動方向に回転させることにより圧接プレート72がシフトし、複数の摩擦板71を圧接させる結果、後輪ブレーキ機構Brは制動状態に達する。また、圧接プレート72を逆方向に回転させることにより圧接プレート72が逆方向にシフトし、複数の摩擦板71の圧接を解除するため後輪ブレーキ機構Brの制動は解除される。
【0037】
尚、圧接プレート72をシフトさせるカム機構としてボール73を用いずに、例えば、圧接プレート72とミッションケースMの内壁面との何れか一方に凸部を形成し、これに対向する他方の面にも凸部を形成し、圧接プレート72の回転時には凸部同士の接触により圧接プレート72をシフトさせるように構成しても良い。また、カム溝72AはミッションケースMの内面に形成されても良い。
【0038】
図7〜図10に示すように、ミッションケースMには、左右の後輪ブレーキ機構Brに対応する2つのブレーキ操作軸74がサイド軸67と平行する姿勢で回転自在に支持されている。夫々のブレーキ操作軸74の内端を切り欠いて形成した係合部を圧接プレート72の外周の係合部に係合させており、ブレーキ操作軸74の回転に連動して圧接プレート72を回転させるように構成されている。また、夫々のブレーキ操作軸74の外端をミッションケースMの左側の外壁から外部に露出させ、この露出端部にブレーキ操作アーム75を固設し、このブレーキ操作アーム75にはブレーキ操作アーム75を制動解除方向に回転させる付勢力を作用させる復帰バネ76を備えている。この構成によりブレーキ操作軸74が制動方向に回転操作された場合には圧接プレート72を回転させて後輪ブレーキ機構Brが制動状態に達し、ブレーキ操作軸74の回転操作が解除された際には復帰バネ76の付勢力によりブレーキ操作軸74が制動解除方向に回転し後輪ブレーキ機構Brの制動力が解除される。
【0039】
ミッションケースMの左側の外壁の外面には、この外壁と平行する方向に出退自在にブレーキピストン77を内嵌するシリンダユニットDが備えられ、このブレーキピストン77の突出端にはブレーキピストン77の軸芯と直交する横向き姿勢の係合軸体78が、ブレーキピストン77の先端から嵌め込む形態で備えられている。ブレーキピストン77を挟み込む位置にプレート状の2枚の天秤状部材79がミッションケースMの左側の外壁面に平行する姿勢で配置されている。この2枚の天秤状部材79に形成された係合孔部79H(融通部の一例)に係合軸体78が挿通し、この係合軸体78の軸端には抜け止め用のワッシャー80が備えられている。この係合軸体78と係合孔部79Hとで牽引手段が構成されている。
【0040】
2枚の天秤状部材79は、係合孔部79Hが形成された位置を中央位置として対称となる位置に一対のアーム部79Aを形成し、中央位置をブレーキピストン77の突出方向(図8、図9において左方向)に突出させた突出部を形成した二等辺三角形に近似する形状を有している。融通部としての係合孔部79Hはブレーキピストン77の突出方向を頂点とする二等辺三角形状に形成され、ブレーキピストン77の突出作動の上手側(反突出側)ほど幅広となる幅広領域Wが形成されている。この幅広領域Wにより、ブレーキピストン77の突出方向と直交する方向に向けてブレーキピストン77と天秤状部材79との相対移動が許される。
【0041】
一対のアーム部79Aの端部と、前述した一対のブレーキ操作アーム75との間にボルト材で成るブレーキ操作ロッド81を備えている。具体的な構成として、天秤状部材79のアーム部79Aには天秤状部材79の外端側(アーム部79Aの外端側)が小径で中央側が大径となるダルマ状孔部79Bが形成され、ブレーキ操作アーム75の操作端にはブレーキ操作軸74の軸芯と平行する姿勢の軸芯を中心にして回転自在に支持軸体82が備えらされ、この支持軸体82にはブレーキ操作ロッド81が挿通する貫通孔が形成されている。
【0042】
ダルマ状孔部79Bの大径部分に挿通する外径でダルマ状孔部79Bの小径部分に係合する環状溝83Aを有する係脱軸体83が構成され、この係脱軸体83にはブレーキ操作ロッド81が挿通する貫通孔が形成されている。このような構成から、ダルマ状孔部79Bの大径部分から係脱軸体83を挿入し、環状溝83Aをダルマ状孔部79Bの小径部分に係合させ、この係脱軸体83の貫通孔と支持軸体82の貫通孔とにブレーキ操作ロッド81を挿通し、ブレーキ操作ロッド81の端部のネジ部にナット81Aを螺合させることで、天秤状部材79からの力をブレーキ操作アーム75に伝える操作系が構成される。
【0043】
2枚の天秤状部材79の突出部に対し係合軸体78と平行する姿勢の連結ピン85により、この連結ピン85の軸芯を中心にして揺動自在にブラケット86を揺動自在に連結している。ブレーキ作部材としての操作ワイヤ64は、インナワイヤ64Aとアウタワイヤ64Bとで構成され、ブラケット86にインナワイヤ64Aの端部が連結し、アウタワイヤ64Bの端部が支持部材87によりミッションケースMの外面に支持されている。
【0044】
ブレーキピストン77と操作ワイヤ64とでブレーキ操作手段が構成されている。このブレーキ操作手段としてのブレーキピストン77、又は、操作ワイヤ64からの操作力により左右の後輪ブレーキ機構Brに操作力を伝える天秤状部材79を備えた操作系によって前述したイコライザHが構成されている。また、イコライザHは、ブレーキ操作手段からブレーキ操作力が作用した場合に左右の後輪ブレーキ機構Brの操作ストロークの差を吸収して左右の後輪ブレーキ機構Brを均等に制動操作するように機能する。
【0045】
〔後輪ブレーキ機構の作動形態〕
このような構成からブレーキペダル17を踏み込み操作した場合には、マスタシリンダ61で加圧されたブレーキオイルが後部ブレーキ油路63からシリンダユニットDに供給され、ブレーキピストン77を突出方向に作動させる。この突出作動を牽引手段としての係合軸体78が天秤状部材79の係合孔部77Hの内壁面に伝え、天秤状部材79を突出方向に作動させる。この作動力は、天秤状部材79の一対のアーム部79Aから一対のブレーキ操作ロッド81を引く操作力として伝えられ、一対のブレーキ操作アーム75を操作し、一対のブレーキ操作軸74を同時に制動方向に回転させることで左右の複数の摩擦板71を圧接させ左右の後輪ブレーキ機構Brの制動が実現する。
【0046】
左右の後輪ブレーキ機構Brが制動状態に達するまでのブレーキ操作アーム75の揺動量が異なる(操作ストロークに差を有する)場合には、ブレーキピストン77の突出作動時に天秤状部材79の一対のアーム部79Aのうち、先に制動状態に達したブレーキ操作アーム75に対応する側の変位が抑制された状態で他方のアーム部79Aの変位が行われる。つまり、天秤状部材79は、係合孔部79Hの内周面に係合軸体78が当接する状態で、この当接部位を中心にして揺動し、一対のブレーキ操作アーム75の操作ストローク差を吸収して左右の後輪ブレーキ機構Brに均等な制動力をさせる。
【0047】
また、駐車ブレーキ操作具としてのパーキングレバー15を操作した場合には、ブレーキ操作部材としての操作ワイヤ64からの引き操作力がブラケット86から天秤状部材79に伝えられ、この天秤状部材79を引き操作する。この引き操作の方向はブレーキピストン77の突出方向と同方向であり、左右の後輪ブレーキ機構Brが制動状態に達するまでのブレーキ操作アーム75の揺動量が異なる(操作ストロークに差を有する)場合には、天秤状部材79が連結ピン85を中心にして揺動することで一対のブレーキ操作アーム75に均等に作動力を作用させる。
【0048】
特に、例えば、前述した係合孔部77Hが係合軸体78の外径と同径である場合には、天秤状部材79の揺動が不能となるものの、前述したように係合孔部79Hの形状が二等辺三角形に形成されているため、この係合孔部79Hの幅広領域Wにおいて係合軸体78と、天秤状部材79との相対変位が可能となり、ブレーキピストン77に対する天秤状部材79の揺動が実現する。
【0049】
〔油圧系〕
図11に示すように、この作業車では、作業用油圧ポンプ90からの作動油をダンプシリンダ4に給排する昇降制御弁91を有する昇降制御系を備えると共に、中立位置にある昇降制御弁91からの作動油をステアリング弁92に供給し、このステアリング弁92からメータリングポンプ93と、ステアリングシリンダ94とに供給することによりステアリングホイール13の操作に連係してステアリングシリンダ94を操作して前車輪1のステアリングを実現するステアリング制御系とを備えて油圧回路が構成されている。
【0050】
作業用油圧ポンプ90から作動油を昇降制御弁91に供給する油路から分岐する経路に主リリーフ弁95と主チェック弁96とを備えており、これらを単一のブロックに組み込んだ昇降制御弁ユニットKが構成され、この昇降制御弁ユニットKがミッションケースMの右側の内部に備えられている。
【0051】
この油圧回路では、ミッションケースMの潤滑油を作動油として用いており、昇降制御弁ユニットKには油圧ブロックに作動油が供給される油路(圧力が作用する油路)が形成され、この油圧ブロックに形成されたスプール孔に昇降制御弁91を構成するスプールを挿入している。これと同様に、主リリーフ弁95と主チェック弁96を構成する弁体とバネとを油圧ブロックの内部にセットする構成を採用しており、作動油をドレンに戻す油路をミッションケースMの内部に開放する構成から構造の簡素化を実現している。
【0052】
ステアリング弁92は、ステアリングホイール13の操作に連係して操作されるものであり、ステアリング操作によりステアリング弁92が操作され作業用油圧ポンプ90からの作動油をステアリングシリンダ94に供給する。この作動油の供給時にはメータリングポンプ93が作動油の油量に対応した量だけ作動し、ステアリング弁92を中立位置に戻す作動が行われ、ステアリングホイール13の回転操作量を維持した状態では、この回転操作量に対応した角度だけ前車輪1を操向操作(操舵)する。
【0053】
図12に示すように、無段変速装置Vは、エンジンEの駆動力により作動するアキシャルプランジャ型の可変容量型に構成された油圧ポンプ101と、この油圧ポンプ101から供給される作動油により回転するアキシャルプランジャ型の可変容量形に構成された油圧モータ102と、これらを接続する高圧側油路103と低圧側油路104とを備え、油圧ポンプ101とともに駆動されるチャージポンプ105を備え、油圧ポンプ101の斜板の角度を設定するサーボシリンダ106を備え、このサーボシリンダ106を制御するサーボ制御弁107を備えている。
【0054】
サーボ制御弁107は、チャージポンプ105からの作動油を制御すると共に、アクセルペダル16と機械的に連係しており、アクセルペダル16が踏み込み操作された場合には、サーボ量に対応した角度だけサーボシリンダ106を作動させて油圧ポンプ101の斜板の角度を変更し、走行速度の増大を図る。
【0055】
また、油圧モータ102の斜板の角度を設定するため第1調整シリンダ108と第2調整シリンダ109とを備えている。第1調整シリンダ108の第1ピストン108Aは、斜板角を0度に設定するように復元バネ108Bで突出方向に付勢され、この第1調整シリンダ108にはピストンを収縮させる方向に高圧側油路103から作動油が供給される。また、第2調整シリンダ109は低圧側油路104から供給される作動油により突出方向に作動する第2ピストン109Aを備えている。
【0056】
このような構成から、アクセルペダル16が操作されない場合のように高圧側油路103の圧力が極めて低い状態では復元バネ108Bの付勢力で油圧モータ102の斜板が0度に維持され、走行機体Aの走行は行われない。これに対して、アクセルペダル16が踏み込み操作され高圧側油路103の圧力が上昇した場合には、油圧ポンプ101からの作動油が高圧側油路103を介して油圧モータ102に供給され、低圧側油路104を介して油圧ポンプ101に戻される。この状態では復元バネ108Bの付勢力に抗して第1ピストン108Aが突出作動することになるが、低圧側油路104からの作動油の圧力により第2ピストン109Aが突出状態を維持する力を作用させることで夫々の力がバランスする状態で斜板の角度が増大することになり、これにより走行が行われる。
【0057】
この無段変速装置Vでは、ブレーキペダル17が踏み込み操作された際に、高圧側油路103の作動油をタンクポート側(ドレン側)に逃がすことで油圧モータ102の回転を停止させるアンロード弁120が備えられている。
【0058】
また、前述したチャージポンプ105からの作動油の供給圧を決めるリリーフ型のチャージ圧弁110を備え、チャージポンプ105からの作動油を高圧側油路103に供給する第1チャージ油路111と、低圧側油路104に供給する第2チャージ油路112とを備えている。第1チャージ油路111には第1チェック弁113が備えられ、並列する油路に第1リリーフ弁114が備えられている。第2チャージ油路112には第2チェック弁115が備えられ、並列する油路に第2リリーフ弁116が備えられ、これらに並列する油路にオリフィス117が備えられている。
【0059】
特に、走行時にアクセルペダル16から足を離した場合のように走行機体Aの動慣性により移動する状況では、油圧モータ102の回転に伴い低圧側油路104の圧力が高圧側油路103の圧力より高い値に達することもある。このような場合に低圧側油路104の圧力を高圧側油路103に逃がしエンジンブレーキを円滑に作用させるため、第2リリーフ弁116のリリーフ圧を設定する設定バネ116Aの付勢力が調節自在に構成されている(構成は図示せず)。つまり、低圧側油路104の圧力が高圧側油路103の圧力より上昇した場合には、低圧側油路104の圧力を第2リリーフ弁116が高圧側油路103に逃がすことにより急激な速度変化を抑制して良好にエンジンブレーキを作用させて減速を行えるようにしている。
【0060】
尚、第2リリーフ弁116の設定バネ116Aの付勢力を調節するための構成は、ノブ等を人為的に操作する構成のものを想定しているが、これを電動モータによって変更するように構成しても良い。
【0061】
〔実施形態の作用・効果〕
このような構成のため、ブレーキペダル17が踏み込み操作された場合には、マスタシリンダ61で加圧されたブレーキオイルが前部ブレーキ油路62から左右の前輪ブレーキ機構Bfに供給され前車輪1を制動する。これと同時に、マスタシリンダ61で加圧されたブレーキオイルが後部ブレーキ油路63からシリンダユニットDに供給されブレーキピストン77が突出作動し、天秤状部材79を有したイコライザHが左右のブレーキ操作アーム75を操作して左右の後輪ブレーキ機構Brを均等に制動する。特に、イコライザHが天秤状部材79を備えた操作系で構成され、ブレーキペダル17の踏み込み操作によりブレーキピストン77が突出作動した場合には、係合軸体78が天秤状部材79の係合孔部77Hの内面との当接部位で揺動自在となるため、この揺動により左右の後輪ブレーキ機構Brの操作ストロークの差を吸収して左右の後輪ブレーキ機構Brを均等に制動操作する。
【0062】
また、係合軸体78が係合孔部79Hに幅広領域Wにおいて移動できるように構成されているので、パーキングレバー15を操作してブラケット86が作動した場合には天秤状部材79が連結ピン85の連結部位を中心にする揺動が自由に行われ、この天秤状部材79の揺動により左右の後輪ブレーキ機構Brの操作ストロークの差を吸収して左右の後輪ブレーキ機構Brを均等に制動操作する。この構成では、単一のシリンダユニットDで左右の後輪ブレーキ機構Brを操作するので複数のシリンダを備えるものと比較して油圧系を簡素化してコストダウンを実現している。
【0063】
また、昇降制御弁ユニットKがミッションケースMの右側の内部に備えられているため、昇降制御弁91と主リリーフ弁95と主チェック弁96との組み立てを容易にすると共に、これらに作動油をドレンに戻す油路系の単純化を実現している。
【0064】
また、ブレーキペダル17を踏み込み操作するために、アクセルペダル16から足を離した場合には、無段変速装置Vの第2リリーフ弁116がリリーフ状態に達し、低圧側油路104の作動油を高圧側油路103に流し、エンジンブレーキ状態で円滑な減速が実現する。特に、ブレーキペダル17が踏み込み操作された場合には、無段変速装置Vのアンロード弁120が操作され、高圧側油路103の作動油をタンクポート(ドレン側)に排出することで、無段変速装置Vの油圧モータ102を停止させ、走行機体Aを速やかに停車させる。
【0065】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0066】
(a)図13に示すように、ブレーキピストン77の突出側の端部にプレート状の支持部77Aを一体形成し、この支持部77Aに対し、ブレーキピストン77の突出作動の下手側ほど幅広となる二等辺三角形状となる係合孔部77Hを形成する。また、天秤状部材79に貫通する係合軸体78を係合孔部77Hに対しブレーキピストン77の軸芯と直交する姿勢で挿通することで牽引手段を構成する。天秤状部材79にはブレーキ操作部材としての操作ワイヤ64のインナワイヤ64Aが連結ピン85により連結する。
【0067】
この構成では、係合孔部77Hに幅広領域Wが構成され、ブレーキピストン77の突出作動時には天秤状部材79が係合軸体78の当接部位を中心にした揺動を実現すると共に、操作ワイヤ64が引き操作時には天秤状部材79が連結ピン85を中心にした揺動を実現する。
【0068】
(b)ブレーキ操作手段からの操作力を前車輪1の前輪ブレーキ機構Bfに伝えるブレーキ操作系にイコライザHを備える。また、この前車輪1の前輪ブレーキ機構Bfと後車輪2の後輪ブレーキ機構Brとを併せて作業車の制動系を構成する。このように制動系を構成することにより、制動操作系の構成が単純化し部品点数の低減が実現する。
【0069】
(c)天秤状部材79を有するイコライザHを、ミッションケースMの上面や下面等、側面以外の部位に備える。このような構成により、ミッションケースMの外面のデッドスペースを有効に利用して制動系を構成できる。
【0070】
(d)イコライザHを構成する天秤状部材79として2枚の部材に代えて単一の部材を用いる。このように単一の部材を用いることで部品点数の低減が実現する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、ブレーキ機構を操作するためにイコライザを備えた作業車に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
2 車輪(後車輪)
15 駐車ブレーキ操作具(パーキングレバー)
16 ブレーキペダル
64 ブレーキ操作部材(操作ワイヤ)
74 ブレーキ操作軸
77 ブレーキピストン
78 係合軸体
79 天秤状部材
79A アーム部
79H 融通部・係合孔部
Br ブレーキ機構(後輪ブレーキ機構)
H イコライザ
M ミッションケース
W 幅広領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ操作手段からのブレーキ操作力を、イコライザから左右の車輪のブレーキ機構に伝えるブレーキ操作系を備えると共に、前記イコライザが、左右の前記ブレーキ機構に前記ブレーキ操作力を伝える一対のアーム部を有し、左右の前記ブレーキ機構の操作ストロークの差を吸収するため揺動自在な天秤状部材を備えて構成されている作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された作業車として特許文献1には、ブレーキペダルを踏み込み操作した場合にマスタシリンダからのオイル圧を配管により前輪ブレーキと後輪ブレーキとに伝えて制動操作を行う油圧式の制動系と、パーキングレバー(本発明のブレーキ操作手段)が操作された場合に、操作ワイヤの引き操作力をスタビライザリンク(本発明のイコライザ)から左右の後輪ブレーキに伝えて制動操作を行う機械式の制動系とを備えた作業車が示されている。
【0003】
この特許文献1では、スタビライザリンク(本発明のイコライザ)が、天秤状部材で構成され、パーキングレバー(本発明のブレーキ操作手段)に連係するワイヤが、天秤状部材の中央位置に連結し、この天秤状部材の両端位置に接続するワイヤが左右の後輪ブレーキ(本発明のブレーキ機構)の操作レバーに連結している。このような構成から、パーキングレバーを操作した場合には天秤状部材が揺動することにより左右の後輪ブレーキの操作ストロークの差を吸収して均等な制動操作を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐50952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車には、ブレーキペダルの操作により制動力を得る油圧式の制動系と、パーキング用のブレーキ操作具の操作により制動力を得る機械式の制動系が必要とされ、パーキング用のブレーキ操作具の操作力を左右の後車輪のブレーキ機構に均等に伝えるためのイコライザも必要とされる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるように左右の後輪ブレーキを操作するために左右の油圧シリンダを備えるものでは、油圧シリンダと、この油圧シリンダの駆動力でブレーキ操作を行う機械的な構成とを必要とし、しかも、パーキング用のブレーキ操作具からの操作力を伝えるワイヤ等の構成を必要とするため部品点数が増大し、構成の複雑化も招く点において改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、油圧式の作動力と機械式の作動力との何れの操作力であっても、左右のブレーキ機構を円滑に操作する制動操作系を少ない部品点数で構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、ブレーキ操作手段からのブレーキ操作力を、イコライザから左右の車輪のブレーキ機構に伝えるブレーキ操作系を備えると共に、前記イコライザが、左右の前記ブレーキ機構に前記ブレーキ操作力を伝える一対のアーム部を有し、左右の前記ブレーキ機構の操作ストロークの差を吸収するため揺動自在な天秤状部材を備えて構成されている作業車であって、
前記ブレーキ操作手段が、ブレーキペダルの踏み込み操作によって供給されるブレーキオイルの圧力により突出方向に作動する単一のブレーキピストンと、駐車ブレーキ操作具の操作力が伝えられるブレーキ操作部材とを備えており、前記天秤状部材に対して前記ブレーキ操作部材が連結すると共に、前記天秤状部材に対して前記ブレーキピストンの突出方向への作動力を伝える牽引手段が備えられ、この牽引手段が、前記ブレーキ操作部材の操作力の作用時に前記ブレーキピストンと前記天秤状部材との相対移動を許す融通部を備えている点にある。
【0009】
この構成によると、左右のブレーキ機構が、制動状態に達するまでの操作ストロークが異なるものでも、ブレーキペダルの踏み込み操作によりブレーキピストンが突出した際に天秤状部材が揺動することにより左右のブレーキ機構の均等な操作を実現する。また、駐車ブレーキ操作具を操作した際に、ブレーキ操作部材から天秤状部材に操作力が伝えられる際に、左右のブレーキ機構が制動状態に達するまでの操作ストロークが異なるものでは、天秤状部材が揺動することにより左右のブレーキ機構の操作ストロークの差を吸収して均等な制動操作を実現する。
特に、ブレーキピストンは直線的な作動を行うものであり、駐車ブレーキ操作具の操作で天秤状部材が作動する際には、左右のブレーキ機構の操作系の操作ストロークの差からブレーキピストンの作動方向と直交する方向に天秤状部材を変位させる力が作用することもある。このような場合には、融通手段がブレーキピストンの作動方向に対して直交する方向へ天秤状部材の変位を許すことになり円滑なブレーキ操作を実現する。
従って、油圧式の作動力と機械式の作動力との何れの操作力であっても、左右のブレーキ機構を円滑に操作する制動操作系を少ない部品点数の構成できた。
【0010】
本発明は、前記牽引手段が、前記ブレーキピストンの軸芯と直交する姿勢の係合軸体と、この係合軸体が挿通する係合孔部とを有し、前記ブレーキピストンの突出方向への作動力を、係合軸体と係合孔部の内周との当接により前記天秤状部材に伝える構成を有し、前記融通部が、前記係合軸体と前記係合孔部との前記ブレーキピストンの作動方向と直交する方向への相対移動を許すように前記係合孔部に形成された幅広領域で構成されても良い。
【0011】
これによると、ブレーキピストンの突出方向への作動時には係合軸体から天秤状部材の係合孔部の内周に当接することで天秤状部材を作動させる。また、係合軸体が係合孔部に挿通する構成であるので、天秤状部材の揺動が許され、係合孔部の幅広領域によりブレーキピストンの作動方向と直交する方向への天秤状部材の変位も許される。
【0012】
本発明は、前記係合軸体が、前記ブレーキピストンの先端部に形成され、前記係合孔部が前記天秤状部材に形成され、この係合孔部の形状が、前記係合軸体の軸芯に沿う方向視において、前記ブレーキピストンの突出作動の上手側ほど幅広となる三角形状に形成され、この幅広となる領域で前記幅広領域が形成されても良い。
【0013】
これによると、係合孔が三角形状となる簡単な形状の設定により、天秤状部材の揺動と、ブレーキピストンの作動方向と直交する方向への変位とを許すものとなり、複雑な構成を備えないため簡単に構成できる。
【0014】
本発明は、左右の車輪に駆動力を伝えるミッションケースに左右の前記ブレーキ機構が内蔵されると共に、この左右のブレーキ機構を操作するブレーキ操作軸が平行姿勢で前記ミッションケースの所定の外壁に突設され、前記外壁の外部で、この外壁と平行する姿勢に前記天秤状部材が配置されても良い。
【0015】
これによると、ミッションケースの所定の外壁の外部に天秤状部材を配置し、平行姿勢のブレーキ操作軸に備えられる操作アームと、天秤状部材とをロッドやワイヤ等で連係することにより、ミッションケースの所定の外壁側からミッションケースに内蔵された左右のブレーキ機構を同時に操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】作業車の全体側面図である。
【図2】作業車の全体平面図である。
【図3】作業車の伝動系を示す平面図である。
【図4】機体フレームの斜視図である。
【図5】駆動部の側面図である。
【図6】ブレーキ操作系を模式的に示す図である。
【図7】ブレーキ機構の構成を示すミッションケースの断面図である。
【図8】イコライザの構成を示す側面図である。
【図9】イコライザの構成を示す断面図である。
【図10】イコライザの構成を示す斜視図である。
【図11】昇降制御系とステアリング制御系とを示す油圧回路図である。
【図12】無段変速装置の油圧回路図である。
【図13】別実施形態(a)のイコライザの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1〜図3に示すように、操向操作自在な左右一対の前車輪1と、左右一対の後車輪2とを走行機体Aに備え、この走行機体Aの前部位置に運転部を構成するキャビンBを備え、走行機体Aの後部に荷台3を備え、この荷台3の下方位置に駆動部Cを備えて作業車が構成されている。
【0018】
この作業車は、駆動部Cからの駆動力を前車輪1と後車輪2とに伝える走行駆動系を有した4輪駆動型に構成され、農作業や運搬作業等の多目的の作業に使用される。荷台3は、後端側が走行機体Aの後端位置に対して横向き姿勢の軸芯Pを中心にして揺動自在に支持され、ダンプシリンダ4の作動により前端側を上昇させて積載物を後方に排出できるように構成されている。
【0019】
走行機体Aの前部位置には開閉自在にボンネット5を備えており、このボンネット5の左右下部には、前車輪1の上部を覆うフロントフェンダー6が配置されている。前記キャビンBには、キャビン本体7の前部にフロントガラス8を備え、この側部に対して開閉自在に備えられるドアー9を備えている。
【0020】
キャビンBの内部に運転者が着座する運転座席11と、この運転座席11に隣接する位置で横長となる2人掛用の助手座席12とが備えられている。運転座席11の前部位置には前車輪1を操向制御するステアリングホイール13と、走行速度を設定する主変速レバー14と、駐車ブレーキ操作具としてのパーキングレバー15とが備えられ、この下部位置には走行速度を制御する変速操作具としてのアクセルペダル16と、ブレーキペダル17とが備えられている。
【0021】
走行機体Aの後端側には、左右の後車輪2の上方を覆うリヤフェンダー18が備えられ、このリヤフェンダー18には、ブレーキランプ19が備えられている。
【0022】
〔機体フレーム〕
走行機体Aの強度メンバーとしての機体フレームFを備えている。この機体フレームFは図4に示すように、前後方向に伸びる左右一対のメインフレーム21と、このメインフレーム21の前部位置においてキャビンBを支持するキャビンフレームユニット22と、メインフレーム21の前端に連結する前部フレームユニット23と、メインフレーム21の後部位置の上方位置でメインフレーム21と平行姿勢となるように走行機体Aの前後方向に伸びる上部フレーム24と、駆動部Cを支持する着脱フレームユニットGとを備えて構成されている。
【0023】
また、メインフレーム21と上部フレーム24とは角パイプ状の鋼材が用いられ、キャビンフレームユニット22と前部フレームユニット23とは、角パイプ材やチャンネル材等で成る鋼材が用いられている。
【0024】
キャビンフレームユニット22は、キャビンBの前部に配置される横向き姿勢のフレーム体と、運転座席11の下側に配置される横向き姿勢のフレーム体とを含む構造物として構成されている。前部フレームユニット23は、ボンネット5の下側に配置される構造物であり、この前部フレームユニット23の左右位置には、ダブルウイッシュボーン型に構成される上下一対の前部サスペンションアーム25の基端部が前後向き姿勢の揺動軸芯を中心にして揺動自在に支持されている。また、前部サスペンションアーム25の上方への揺動時に圧縮される前部サスペンションスプリング26を有した前部サスペンションユニット27の下端が前部サスペンションアーム25に支持され、この前部サスペンションユニット27の上端が前部フレームユニット23に支持されている。
【0025】
左右のメインフレーム21と、この上部に配置される上部フレーム24とは縦向き姿勢で角パイプ状の鋼材で成る連結フレーム28によって連結されている。また、メインフレーム21の後端側に隣接する位置で上部フレーム24の下側にメインフレーム21と上部フレーム24とに対して分離自在に連結するように着脱フレームユニットGが配置されている。左右のメインフレーム21の後部位置には支持フレーム35の両端部が着脱自在に連結し、左右の上部フレーム24の上面側には、左右の上部フレーム24に架け渡される形態の横フレーム37が備えられている。
【0026】
着脱フレームユニットGは、駆動部Cの下側(上部フレーム24より下側)に配置されるマウントフレーム31と、このマウントフレーム31を左右の上部フレーム24に連結するように左右に2つずつ配置される縦フレーム32と、マウントフレームの31の前端側に形成される横向き姿勢の前部フレーム33とを備えて構成されている。
【0027】
左右の縦フレーム32に対して、ダブルウィッシュボーン型に構成される上下一対の後部サスペンションアーム39の基端部が前後向き姿勢の揺動軸芯を中心にして揺動自在に支持されている。また、後部サスペンションアーム39の上方への揺動時に圧縮される後部サスペンションスプリング40を有する後部サスペンションユニット41の下端が後部サスペンションアーム39に支持され、この後部サスペンションユニット41の上端が横フレーム37のサスペンション支持部37Aに支持されている。
【0028】
着脱フレームユニットGの分離の構成は詳述しないが、他のフレームから分離することにより、この着脱フレームユニットGに駆動部Cと後車輪2とを支持した状態で機体フレームFから取り外せるように構成されている。
【0029】
マウントフレーム31は、鋼板をプレス加工する等の加工によりリブ状部分を形成して強度を高めており、横幅が左右の上部フレーム24の左右間隔より短い寸法に設定されている。マウントフレーム31の両端部と、上部フレーム24とを縦フレーム32で直線的に連結するため、左右の縦フレーム32は、上端側ほど機体外方に変位する傾斜姿勢で備えられている。
【0030】
エンジンEとミッションケースMと無段変速装置Vとを、この順序で連結することでエンジンEとミッションケースMと無段変速装置Vとを一体化して駆動部Cが構成されている。図4、図5に示すように、エンジンEの前端位置の下部の左右2箇所が支持フレーム35の左右一対の前部マウント支持体36に対し下部防振マウント45により支持され、ミッションケースMの後端位置の下部の左右2箇所がマウントフレーム31の左右一対の後部マウント支持体34に下部防振マウント45により支持されている。また、横フレーム37の中間位置に上部マウント支持体38が備えられ、この上部マウント支持体38に対してミッションケースMの上面に突設した吊下フレーム47の上端が上部防振マウント48により支持され、これにより駆動部Cが機体フレームFに支持されている。
【0031】
ミッションケースMの後方の上方位置の左側には防熱用のカバー50を有したマフラー51を備えており、このマフラー51にエンジンEの排気ガスが供給され、排気音が低減される。
【0032】
〔ミッションケース・ブレーキ機構〕
この作業車では、図6に示すように、ブレーキペダル17の踏み込み操作時にブレーキオイルの圧力により左右の前車輪1の前輪ブレーキ機構Bfと左右の後車輪2の後輪ブレーキ機構Brとを制動操作する油圧式のブレーキ操作系を備えると共に、ブレーキ操作部材としてのパーキングレバー15の操作力により左右の後車輪2の後輪ブレーキ機構Brを制動操作する機械式のブレーキ操作系を備えている。
【0033】
具体的な構成として、ブレーキペダル17の踏み込み操作時にマスタシリンダ61で加圧されるブレーキオイルを前部ブレーキ油路62を介して左右の前車輪1の前輪ブレーキ機構Bfに供給し、これと同時に、マスタシリンダ61で加圧されるブレーキオイルを後部ブレーキ油路63を介してシリンダユニットDに供給する油路系を備え、このシリンダユニットDの作動力をイコライザHから左右の後車輪2の後輪ブレーキ機構Brに伝えて制動操作を行うように油圧式のブレーキ操作系が構成されている。また、パーキングレバー15の操作時にブレーキ操作部材としての操作ワイヤ64の操作力をイコライザHに伝え、このイコライザHからの操作力を左右の後車輪2の後輪ブレーキ機構Brに伝えて制動操作を行うように機械式のブレーキ操作系が構成されている。
【0034】
図6、図7に示すように、ミッションケースMは、無段変速装置Vで変速された駆動力を複数段に変速し、前後進の切換を行うギヤ式の変速装置(図示せず)と、この変速装置からの駆動力が伝えられるデファレンシャルギヤ66とを内蔵している。また、ミッションケースMにはデファレンシャルギヤ66からの駆動力が伝えられる左右のサイド軸67を備え、このサイド軸67の駆動力を左右の後輪駆動軸68に伝えるギヤ連動機構69を備え、左右のサイド軸67に制動力を作用させる摩擦多板式の後輪ブレーキ機構Brを内蔵している。
【0035】
後輪ブレーキ機構Brは、複数の摩擦板71と、この複数の摩擦板71に圧接力を作用させる圧接プレート72と、この圧接プレート72の回転に伴い圧接プレート72を、サイド軸67の軸芯に沿ってシフトさせるカム機構とを備えている。カム機構は、圧接プレート72に形成されたカム溝72Aと、このカム溝72Aに係入するボール73と備えて構成されている。カム溝72Aは、サイド軸67の軸芯を中心とする円弧状の領域において周方向での深さが異なる形状に形成されている。摩擦板71は、サイド軸67と一体回転するものと、ミッションケースMに対して回転不能に支持されたものとを交互に配置して構成されている。
【0036】
このような構成から、サイド軸67の軸芯を中心に圧接プレート72を制動方向に回転させることにより圧接プレート72がシフトし、複数の摩擦板71を圧接させる結果、後輪ブレーキ機構Brは制動状態に達する。また、圧接プレート72を逆方向に回転させることにより圧接プレート72が逆方向にシフトし、複数の摩擦板71の圧接を解除するため後輪ブレーキ機構Brの制動は解除される。
【0037】
尚、圧接プレート72をシフトさせるカム機構としてボール73を用いずに、例えば、圧接プレート72とミッションケースMの内壁面との何れか一方に凸部を形成し、これに対向する他方の面にも凸部を形成し、圧接プレート72の回転時には凸部同士の接触により圧接プレート72をシフトさせるように構成しても良い。また、カム溝72AはミッションケースMの内面に形成されても良い。
【0038】
図7〜図10に示すように、ミッションケースMには、左右の後輪ブレーキ機構Brに対応する2つのブレーキ操作軸74がサイド軸67と平行する姿勢で回転自在に支持されている。夫々のブレーキ操作軸74の内端を切り欠いて形成した係合部を圧接プレート72の外周の係合部に係合させており、ブレーキ操作軸74の回転に連動して圧接プレート72を回転させるように構成されている。また、夫々のブレーキ操作軸74の外端をミッションケースMの左側の外壁から外部に露出させ、この露出端部にブレーキ操作アーム75を固設し、このブレーキ操作アーム75にはブレーキ操作アーム75を制動解除方向に回転させる付勢力を作用させる復帰バネ76を備えている。この構成によりブレーキ操作軸74が制動方向に回転操作された場合には圧接プレート72を回転させて後輪ブレーキ機構Brが制動状態に達し、ブレーキ操作軸74の回転操作が解除された際には復帰バネ76の付勢力によりブレーキ操作軸74が制動解除方向に回転し後輪ブレーキ機構Brの制動力が解除される。
【0039】
ミッションケースMの左側の外壁の外面には、この外壁と平行する方向に出退自在にブレーキピストン77を内嵌するシリンダユニットDが備えられ、このブレーキピストン77の突出端にはブレーキピストン77の軸芯と直交する横向き姿勢の係合軸体78が、ブレーキピストン77の先端から嵌め込む形態で備えられている。ブレーキピストン77を挟み込む位置にプレート状の2枚の天秤状部材79がミッションケースMの左側の外壁面に平行する姿勢で配置されている。この2枚の天秤状部材79に形成された係合孔部79H(融通部の一例)に係合軸体78が挿通し、この係合軸体78の軸端には抜け止め用のワッシャー80が備えられている。この係合軸体78と係合孔部79Hとで牽引手段が構成されている。
【0040】
2枚の天秤状部材79は、係合孔部79Hが形成された位置を中央位置として対称となる位置に一対のアーム部79Aを形成し、中央位置をブレーキピストン77の突出方向(図8、図9において左方向)に突出させた突出部を形成した二等辺三角形に近似する形状を有している。融通部としての係合孔部79Hはブレーキピストン77の突出方向を頂点とする二等辺三角形状に形成され、ブレーキピストン77の突出作動の上手側(反突出側)ほど幅広となる幅広領域Wが形成されている。この幅広領域Wにより、ブレーキピストン77の突出方向と直交する方向に向けてブレーキピストン77と天秤状部材79との相対移動が許される。
【0041】
一対のアーム部79Aの端部と、前述した一対のブレーキ操作アーム75との間にボルト材で成るブレーキ操作ロッド81を備えている。具体的な構成として、天秤状部材79のアーム部79Aには天秤状部材79の外端側(アーム部79Aの外端側)が小径で中央側が大径となるダルマ状孔部79Bが形成され、ブレーキ操作アーム75の操作端にはブレーキ操作軸74の軸芯と平行する姿勢の軸芯を中心にして回転自在に支持軸体82が備えらされ、この支持軸体82にはブレーキ操作ロッド81が挿通する貫通孔が形成されている。
【0042】
ダルマ状孔部79Bの大径部分に挿通する外径でダルマ状孔部79Bの小径部分に係合する環状溝83Aを有する係脱軸体83が構成され、この係脱軸体83にはブレーキ操作ロッド81が挿通する貫通孔が形成されている。このような構成から、ダルマ状孔部79Bの大径部分から係脱軸体83を挿入し、環状溝83Aをダルマ状孔部79Bの小径部分に係合させ、この係脱軸体83の貫通孔と支持軸体82の貫通孔とにブレーキ操作ロッド81を挿通し、ブレーキ操作ロッド81の端部のネジ部にナット81Aを螺合させることで、天秤状部材79からの力をブレーキ操作アーム75に伝える操作系が構成される。
【0043】
2枚の天秤状部材79の突出部に対し係合軸体78と平行する姿勢の連結ピン85により、この連結ピン85の軸芯を中心にして揺動自在にブラケット86を揺動自在に連結している。ブレーキ作部材としての操作ワイヤ64は、インナワイヤ64Aとアウタワイヤ64Bとで構成され、ブラケット86にインナワイヤ64Aの端部が連結し、アウタワイヤ64Bの端部が支持部材87によりミッションケースMの外面に支持されている。
【0044】
ブレーキピストン77と操作ワイヤ64とでブレーキ操作手段が構成されている。このブレーキ操作手段としてのブレーキピストン77、又は、操作ワイヤ64からの操作力により左右の後輪ブレーキ機構Brに操作力を伝える天秤状部材79を備えた操作系によって前述したイコライザHが構成されている。また、イコライザHは、ブレーキ操作手段からブレーキ操作力が作用した場合に左右の後輪ブレーキ機構Brの操作ストロークの差を吸収して左右の後輪ブレーキ機構Brを均等に制動操作するように機能する。
【0045】
〔後輪ブレーキ機構の作動形態〕
このような構成からブレーキペダル17を踏み込み操作した場合には、マスタシリンダ61で加圧されたブレーキオイルが後部ブレーキ油路63からシリンダユニットDに供給され、ブレーキピストン77を突出方向に作動させる。この突出作動を牽引手段としての係合軸体78が天秤状部材79の係合孔部77Hの内壁面に伝え、天秤状部材79を突出方向に作動させる。この作動力は、天秤状部材79の一対のアーム部79Aから一対のブレーキ操作ロッド81を引く操作力として伝えられ、一対のブレーキ操作アーム75を操作し、一対のブレーキ操作軸74を同時に制動方向に回転させることで左右の複数の摩擦板71を圧接させ左右の後輪ブレーキ機構Brの制動が実現する。
【0046】
左右の後輪ブレーキ機構Brが制動状態に達するまでのブレーキ操作アーム75の揺動量が異なる(操作ストロークに差を有する)場合には、ブレーキピストン77の突出作動時に天秤状部材79の一対のアーム部79Aのうち、先に制動状態に達したブレーキ操作アーム75に対応する側の変位が抑制された状態で他方のアーム部79Aの変位が行われる。つまり、天秤状部材79は、係合孔部79Hの内周面に係合軸体78が当接する状態で、この当接部位を中心にして揺動し、一対のブレーキ操作アーム75の操作ストローク差を吸収して左右の後輪ブレーキ機構Brに均等な制動力をさせる。
【0047】
また、駐車ブレーキ操作具としてのパーキングレバー15を操作した場合には、ブレーキ操作部材としての操作ワイヤ64からの引き操作力がブラケット86から天秤状部材79に伝えられ、この天秤状部材79を引き操作する。この引き操作の方向はブレーキピストン77の突出方向と同方向であり、左右の後輪ブレーキ機構Brが制動状態に達するまでのブレーキ操作アーム75の揺動量が異なる(操作ストロークに差を有する)場合には、天秤状部材79が連結ピン85を中心にして揺動することで一対のブレーキ操作アーム75に均等に作動力を作用させる。
【0048】
特に、例えば、前述した係合孔部77Hが係合軸体78の外径と同径である場合には、天秤状部材79の揺動が不能となるものの、前述したように係合孔部79Hの形状が二等辺三角形に形成されているため、この係合孔部79Hの幅広領域Wにおいて係合軸体78と、天秤状部材79との相対変位が可能となり、ブレーキピストン77に対する天秤状部材79の揺動が実現する。
【0049】
〔油圧系〕
図11に示すように、この作業車では、作業用油圧ポンプ90からの作動油をダンプシリンダ4に給排する昇降制御弁91を有する昇降制御系を備えると共に、中立位置にある昇降制御弁91からの作動油をステアリング弁92に供給し、このステアリング弁92からメータリングポンプ93と、ステアリングシリンダ94とに供給することによりステアリングホイール13の操作に連係してステアリングシリンダ94を操作して前車輪1のステアリングを実現するステアリング制御系とを備えて油圧回路が構成されている。
【0050】
作業用油圧ポンプ90から作動油を昇降制御弁91に供給する油路から分岐する経路に主リリーフ弁95と主チェック弁96とを備えており、これらを単一のブロックに組み込んだ昇降制御弁ユニットKが構成され、この昇降制御弁ユニットKがミッションケースMの右側の内部に備えられている。
【0051】
この油圧回路では、ミッションケースMの潤滑油を作動油として用いており、昇降制御弁ユニットKには油圧ブロックに作動油が供給される油路(圧力が作用する油路)が形成され、この油圧ブロックに形成されたスプール孔に昇降制御弁91を構成するスプールを挿入している。これと同様に、主リリーフ弁95と主チェック弁96を構成する弁体とバネとを油圧ブロックの内部にセットする構成を採用しており、作動油をドレンに戻す油路をミッションケースMの内部に開放する構成から構造の簡素化を実現している。
【0052】
ステアリング弁92は、ステアリングホイール13の操作に連係して操作されるものであり、ステアリング操作によりステアリング弁92が操作され作業用油圧ポンプ90からの作動油をステアリングシリンダ94に供給する。この作動油の供給時にはメータリングポンプ93が作動油の油量に対応した量だけ作動し、ステアリング弁92を中立位置に戻す作動が行われ、ステアリングホイール13の回転操作量を維持した状態では、この回転操作量に対応した角度だけ前車輪1を操向操作(操舵)する。
【0053】
図12に示すように、無段変速装置Vは、エンジンEの駆動力により作動するアキシャルプランジャ型の可変容量型に構成された油圧ポンプ101と、この油圧ポンプ101から供給される作動油により回転するアキシャルプランジャ型の可変容量形に構成された油圧モータ102と、これらを接続する高圧側油路103と低圧側油路104とを備え、油圧ポンプ101とともに駆動されるチャージポンプ105を備え、油圧ポンプ101の斜板の角度を設定するサーボシリンダ106を備え、このサーボシリンダ106を制御するサーボ制御弁107を備えている。
【0054】
サーボ制御弁107は、チャージポンプ105からの作動油を制御すると共に、アクセルペダル16と機械的に連係しており、アクセルペダル16が踏み込み操作された場合には、サーボ量に対応した角度だけサーボシリンダ106を作動させて油圧ポンプ101の斜板の角度を変更し、走行速度の増大を図る。
【0055】
また、油圧モータ102の斜板の角度を設定するため第1調整シリンダ108と第2調整シリンダ109とを備えている。第1調整シリンダ108の第1ピストン108Aは、斜板角を0度に設定するように復元バネ108Bで突出方向に付勢され、この第1調整シリンダ108にはピストンを収縮させる方向に高圧側油路103から作動油が供給される。また、第2調整シリンダ109は低圧側油路104から供給される作動油により突出方向に作動する第2ピストン109Aを備えている。
【0056】
このような構成から、アクセルペダル16が操作されない場合のように高圧側油路103の圧力が極めて低い状態では復元バネ108Bの付勢力で油圧モータ102の斜板が0度に維持され、走行機体Aの走行は行われない。これに対して、アクセルペダル16が踏み込み操作され高圧側油路103の圧力が上昇した場合には、油圧ポンプ101からの作動油が高圧側油路103を介して油圧モータ102に供給され、低圧側油路104を介して油圧ポンプ101に戻される。この状態では復元バネ108Bの付勢力に抗して第1ピストン108Aが突出作動することになるが、低圧側油路104からの作動油の圧力により第2ピストン109Aが突出状態を維持する力を作用させることで夫々の力がバランスする状態で斜板の角度が増大することになり、これにより走行が行われる。
【0057】
この無段変速装置Vでは、ブレーキペダル17が踏み込み操作された際に、高圧側油路103の作動油をタンクポート側(ドレン側)に逃がすことで油圧モータ102の回転を停止させるアンロード弁120が備えられている。
【0058】
また、前述したチャージポンプ105からの作動油の供給圧を決めるリリーフ型のチャージ圧弁110を備え、チャージポンプ105からの作動油を高圧側油路103に供給する第1チャージ油路111と、低圧側油路104に供給する第2チャージ油路112とを備えている。第1チャージ油路111には第1チェック弁113が備えられ、並列する油路に第1リリーフ弁114が備えられている。第2チャージ油路112には第2チェック弁115が備えられ、並列する油路に第2リリーフ弁116が備えられ、これらに並列する油路にオリフィス117が備えられている。
【0059】
特に、走行時にアクセルペダル16から足を離した場合のように走行機体Aの動慣性により移動する状況では、油圧モータ102の回転に伴い低圧側油路104の圧力が高圧側油路103の圧力より高い値に達することもある。このような場合に低圧側油路104の圧力を高圧側油路103に逃がしエンジンブレーキを円滑に作用させるため、第2リリーフ弁116のリリーフ圧を設定する設定バネ116Aの付勢力が調節自在に構成されている(構成は図示せず)。つまり、低圧側油路104の圧力が高圧側油路103の圧力より上昇した場合には、低圧側油路104の圧力を第2リリーフ弁116が高圧側油路103に逃がすことにより急激な速度変化を抑制して良好にエンジンブレーキを作用させて減速を行えるようにしている。
【0060】
尚、第2リリーフ弁116の設定バネ116Aの付勢力を調節するための構成は、ノブ等を人為的に操作する構成のものを想定しているが、これを電動モータによって変更するように構成しても良い。
【0061】
〔実施形態の作用・効果〕
このような構成のため、ブレーキペダル17が踏み込み操作された場合には、マスタシリンダ61で加圧されたブレーキオイルが前部ブレーキ油路62から左右の前輪ブレーキ機構Bfに供給され前車輪1を制動する。これと同時に、マスタシリンダ61で加圧されたブレーキオイルが後部ブレーキ油路63からシリンダユニットDに供給されブレーキピストン77が突出作動し、天秤状部材79を有したイコライザHが左右のブレーキ操作アーム75を操作して左右の後輪ブレーキ機構Brを均等に制動する。特に、イコライザHが天秤状部材79を備えた操作系で構成され、ブレーキペダル17の踏み込み操作によりブレーキピストン77が突出作動した場合には、係合軸体78が天秤状部材79の係合孔部77Hの内面との当接部位で揺動自在となるため、この揺動により左右の後輪ブレーキ機構Brの操作ストロークの差を吸収して左右の後輪ブレーキ機構Brを均等に制動操作する。
【0062】
また、係合軸体78が係合孔部79Hに幅広領域Wにおいて移動できるように構成されているので、パーキングレバー15を操作してブラケット86が作動した場合には天秤状部材79が連結ピン85の連結部位を中心にする揺動が自由に行われ、この天秤状部材79の揺動により左右の後輪ブレーキ機構Brの操作ストロークの差を吸収して左右の後輪ブレーキ機構Brを均等に制動操作する。この構成では、単一のシリンダユニットDで左右の後輪ブレーキ機構Brを操作するので複数のシリンダを備えるものと比較して油圧系を簡素化してコストダウンを実現している。
【0063】
また、昇降制御弁ユニットKがミッションケースMの右側の内部に備えられているため、昇降制御弁91と主リリーフ弁95と主チェック弁96との組み立てを容易にすると共に、これらに作動油をドレンに戻す油路系の単純化を実現している。
【0064】
また、ブレーキペダル17を踏み込み操作するために、アクセルペダル16から足を離した場合には、無段変速装置Vの第2リリーフ弁116がリリーフ状態に達し、低圧側油路104の作動油を高圧側油路103に流し、エンジンブレーキ状態で円滑な減速が実現する。特に、ブレーキペダル17が踏み込み操作された場合には、無段変速装置Vのアンロード弁120が操作され、高圧側油路103の作動油をタンクポート(ドレン側)に排出することで、無段変速装置Vの油圧モータ102を停止させ、走行機体Aを速やかに停車させる。
【0065】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0066】
(a)図13に示すように、ブレーキピストン77の突出側の端部にプレート状の支持部77Aを一体形成し、この支持部77Aに対し、ブレーキピストン77の突出作動の下手側ほど幅広となる二等辺三角形状となる係合孔部77Hを形成する。また、天秤状部材79に貫通する係合軸体78を係合孔部77Hに対しブレーキピストン77の軸芯と直交する姿勢で挿通することで牽引手段を構成する。天秤状部材79にはブレーキ操作部材としての操作ワイヤ64のインナワイヤ64Aが連結ピン85により連結する。
【0067】
この構成では、係合孔部77Hに幅広領域Wが構成され、ブレーキピストン77の突出作動時には天秤状部材79が係合軸体78の当接部位を中心にした揺動を実現すると共に、操作ワイヤ64が引き操作時には天秤状部材79が連結ピン85を中心にした揺動を実現する。
【0068】
(b)ブレーキ操作手段からの操作力を前車輪1の前輪ブレーキ機構Bfに伝えるブレーキ操作系にイコライザHを備える。また、この前車輪1の前輪ブレーキ機構Bfと後車輪2の後輪ブレーキ機構Brとを併せて作業車の制動系を構成する。このように制動系を構成することにより、制動操作系の構成が単純化し部品点数の低減が実現する。
【0069】
(c)天秤状部材79を有するイコライザHを、ミッションケースMの上面や下面等、側面以外の部位に備える。このような構成により、ミッションケースMの外面のデッドスペースを有効に利用して制動系を構成できる。
【0070】
(d)イコライザHを構成する天秤状部材79として2枚の部材に代えて単一の部材を用いる。このように単一の部材を用いることで部品点数の低減が実現する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、ブレーキ機構を操作するためにイコライザを備えた作業車に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
2 車輪(後車輪)
15 駐車ブレーキ操作具(パーキングレバー)
16 ブレーキペダル
64 ブレーキ操作部材(操作ワイヤ)
74 ブレーキ操作軸
77 ブレーキピストン
78 係合軸体
79 天秤状部材
79A アーム部
79H 融通部・係合孔部
Br ブレーキ機構(後輪ブレーキ機構)
H イコライザ
M ミッションケース
W 幅広領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作手段からのブレーキ操作力を、イコライザから左右の車輪のブレーキ機構に伝えるブレーキ操作系を備えると共に、前記イコライザが、左右の前記ブレーキ機構に前記ブレーキ操作力を伝える一対のアーム部を有し、左右の前記ブレーキ機構の操作ストロークの差を吸収するため揺動自在な天秤状部材を備えて構成されている作業車であって、
前記ブレーキ操作手段が、ブレーキペダルの踏み込み操作によって供給されるブレーキオイルの圧力により突出方向に作動する単一のブレーキピストンと、駐車ブレーキ操作具の操作力が伝えられるブレーキ操作部材とを備えており、
前記天秤状部材に対して前記ブレーキ操作部材が連結すると共に、前記天秤状部材に対して前記ブレーキピストンの突出方向への作動力を伝える牽引手段が備えられ、この牽引手段が、前記ブレーキ操作部材の操作力の作用時に前記ブレーキピストンと前記天秤状部材との相対移動を許す融通部を備えている作業車。
【請求項2】
前記牽引手段が、前記ブレーキピストンの軸芯と直交する姿勢の係合軸体と、この係合軸体が挿通する係合孔部とを有し、前記ブレーキピストンの突出方向への作動力を、係合軸体と係合孔部の内周との当接により前記天秤状部材に伝える構成を有し、
前記融通部が、前記係合軸体と前記係合孔部との前記ブレーキピストンの作動方向と直交する方向への相対移動を許すように前記係合孔部に形成された幅広領域で構成されている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記係合軸体が、前記ブレーキピストンの先端部に形成され、前記係合孔部が前記天秤状部材に形成され、この係合孔部の形状が、前記係合軸体の軸芯に沿う方向視において、前記ブレーキピストンの突出作動の上手側ほど幅広となる三角形状に形成され、この幅広となる領域で前記幅広領域が形成されている請求項2記載の作業車。
【請求項4】
左右の車輪に駆動力を伝えるミッションケースに左右の前記ブレーキ機構が内蔵されると共に、この左右のブレーキ機構を操作するブレーキ操作軸が平行姿勢で前記ミッションケースの所定の外壁に突設され、前記外壁の外部で、この外壁と平行する姿勢に前記天秤状部材が配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項1】
ブレーキ操作手段からのブレーキ操作力を、イコライザから左右の車輪のブレーキ機構に伝えるブレーキ操作系を備えると共に、前記イコライザが、左右の前記ブレーキ機構に前記ブレーキ操作力を伝える一対のアーム部を有し、左右の前記ブレーキ機構の操作ストロークの差を吸収するため揺動自在な天秤状部材を備えて構成されている作業車であって、
前記ブレーキ操作手段が、ブレーキペダルの踏み込み操作によって供給されるブレーキオイルの圧力により突出方向に作動する単一のブレーキピストンと、駐車ブレーキ操作具の操作力が伝えられるブレーキ操作部材とを備えており、
前記天秤状部材に対して前記ブレーキ操作部材が連結すると共に、前記天秤状部材に対して前記ブレーキピストンの突出方向への作動力を伝える牽引手段が備えられ、この牽引手段が、前記ブレーキ操作部材の操作力の作用時に前記ブレーキピストンと前記天秤状部材との相対移動を許す融通部を備えている作業車。
【請求項2】
前記牽引手段が、前記ブレーキピストンの軸芯と直交する姿勢の係合軸体と、この係合軸体が挿通する係合孔部とを有し、前記ブレーキピストンの突出方向への作動力を、係合軸体と係合孔部の内周との当接により前記天秤状部材に伝える構成を有し、
前記融通部が、前記係合軸体と前記係合孔部との前記ブレーキピストンの作動方向と直交する方向への相対移動を許すように前記係合孔部に形成された幅広領域で構成されている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記係合軸体が、前記ブレーキピストンの先端部に形成され、前記係合孔部が前記天秤状部材に形成され、この係合孔部の形状が、前記係合軸体の軸芯に沿う方向視において、前記ブレーキピストンの突出作動の上手側ほど幅広となる三角形状に形成され、この幅広となる領域で前記幅広領域が形成されている請求項2記載の作業車。
【請求項4】
左右の車輪に駆動力を伝えるミッションケースに左右の前記ブレーキ機構が内蔵されると共に、この左右のブレーキ機構を操作するブレーキ操作軸が平行姿勢で前記ミッションケースの所定の外壁に突設され、前記外壁の外部で、この外壁と平行する姿勢に前記天秤状部材が配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−43520(P2013−43520A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181778(P2011−181778)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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