説明

侵入者監視システム

【課題】 顔認証のみで不審者を判断でき、更に共連れを検知できる不審者監視システムを提供する。
【解決手段】 監視対象エリアMを撮像するカメラ1と、カメラ1が撮像した映像から人物を認識して追尾する機能を備えた制御機2と、カメラ1の撮像映像を表示し、必要に応じて警報音を発する管理装置3とを備え、制御機2には人物の顔情報を記憶する顔情報記憶部と不審者侵入禁止区域B1に進む特定の行動パターンPT1を含む行動パターンを記憶する行動パターン記憶部を設けた。制御機2は、撮像映像から読み取った人物の顔が顔情報記憶部に登録した顔情報と一致せず、且つ特定の行動パターンPT1の行動軌跡を採ったら不審者侵入と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や研究室等の特定のエリアへ不審者が侵入するのを監視する侵入者監視システムに関し、特に共連れにより不審者が侵入するのを検知できる侵入者監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
不審者の侵入を監視するシステムとして、カメラにより人物の顔を撮像して予め登録した顔情報と一致すれば認証して解錠等を行い入室等の通行を許可するシステムがある。この顔認証の場合、入室者は暗証番号を入力したりIDカードを挿入する等の操作をいちいち行うことなく入室できるため便利であった(例えば、特許文献1参照)。
また、集合住宅内へ居住者の帰宅に合わせて侵入する所謂”共連れを”防止する技術として、ロビー全体を撮像するカメラを設置し、このカメラが不審人物を撮像したらその人物を追尾する機能を集合住宅インターホンシステムに設けて、撮像している不審者が撮像映像の中の所定のエリアに入ったら不審者が侵入と判断して共連れを検知する技術があった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−4321号公報
【特許文献2】特開2009−16926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の顔認証のみで人物を判断するシステムは、認証できなかった場合に不審者と判断するので、共連れを監視することは可能であるが、近づいて来ただけで入室しない人物に対しても判定したり、許可した人物であっても認証できない場合は不審者と判定することがあり、誤動作が多く発生する問題があった。
また、上記共連れを防止する技術は、訪問した人物自身、或いは居住者が通行許可人物を指定する操作が必要であるため、IDカード等による認証操作は必要ないものの、その都度認証操作が必要であり、やはり面倒であった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、顔認証のみで不審者を判断でき、更に共連れを検知できる不審者監視システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、監視対象エリアを撮像するカメラと、カメラが撮像した映像から同時に複数の人物の認識が可能であって、その人物を追尾するアルゴリズムを備えた画像解析手段と、人物の顔情報を予め記憶した顔情報記憶部と、画像解析手段が認識した人物から顔を認識し、認識した顔情報と顔情報記憶部に登録した顔情報とを比較して一致/不一致を判断する顔認証手段と、エリア内に設定された不審者侵入禁止区域に進む特定の行動パターンを含む人物の行動パターンを記憶した行動パターン記憶部と、画像解析手段が追尾した人物の行動軌跡と行動パターン記憶部に記憶された人物の行動パターンとの一致/不一致を判断する行動パターン比較手段と、顔認証手段が不一致と判断した人物が、特定の行動パターンと一致する行動軌跡を採ったら不審者侵入と判断する不審者判定手段とを有することを特徴とする。
この構成によれば、顔情報が登録されていない人物が特定の行動軌跡で動いた場合、不審者と判断される。例えば、外部に通じた出入口から監視対象エリアに入ってきた顔情報登録のない人物が、関係者以外立ち入り禁止の出入口(不審者侵入禁止区域)に近づいてきた場合、特定の行動パターンを採ったとして不審者であると判断される。更には、このような人物が登録されている関係者に混じって侵入しようする所謂”共連れ”が行われようとした場合も、追尾されるため不審者として検知することができる。よって、通行する人物が自身の認証操作をすること無く不審者の侵入や共連れを防止できる。
そして、顔を認証できない人物の接近を検出しても、特定の行動を採らなければ、例えば外部に通じる出入口から入ってきた人物でなければ、不審者侵入禁止区域に近づいて来ても不審者と判断しないよう動作させることができるので、不要な警報を発することもない。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、顔認証手段が不一致と判断した人物が撮像されている場合、その画像を録画する録画制御手段を有することを特徴とする。
この構成によれば、不審者画像は自動録画されるので、セキュリティの向上に利用できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の構成において、顔情報記憶部は、不審者侵入区域に侵入可とする侵入許可人物の顔情報に加えて、侵入不可人物の顔情報も記憶し、不審者判定手段は、顔認証手段が侵入不可人物の存在を認識したら、特定の行動パターンの判定を待たずに不審者侵入と判断することを特徴とする。
この構成によれば、侵入不可人物が現れた場合は、その人物を検知した時点で警報等を発報させることができ、不審者が居ることを速やかに通報することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顔情報が登録されていない人物が特定の行動軌跡で動いた場合、不審者と判断される。例えば、外部に通じた出入口から監視対象エリアに入ってきた顔情報登録のない人物が、関係者以外立ち入り禁止の出入口(不審者侵入禁止区域)に近づいてきた場合、特定の行動パターンを採ったとして不審者であると判断される。更には、このような人物が登録されている関係者に混じって侵入しようする所謂”共連れ”が行われようとした場合も、追尾されるため不審者として検知することができる。よって、通行する人物が自身の認証操作をすること無く不審者の侵入や共連れを防止できる。
そして、顔を認証できない人物の接近を検出しても、特定の行動を採らなければ、例えば外部に通じる出入口から入ってきた人物でなければ、不審者侵入禁止区域に近づいて来ても不審者と判断しないよう動作させることができるので、不要な警報を発することもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る不審者監視システムの一例を示す構成図である。
【図2】図1の制御機のブロック図である。
【図3】図1の管理装置のブロック図である。
【図4】行動パターン記憶部が記憶する行動パターンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る不審者監視システムの一例を示す構成図であり、1は監視対象エリアMを撮像するカメラ、2はカメラ1の撮像映像から人物を認識して所定の判定を行う制御機、3はカメラ1が撮像した人物を出画すると共に各種操作を行う管理装置を示している。カメラ1と制御機2とは伝送線L1により接続され、制御機2と管理装置3とは伝送線L2により接続されている。
監視対象エリアMは平面図で示し、周囲に第1出入口B1〜第4出入口B4を備えている。このうちカメラ1を備えた第1出入口B1は予め登録された人物以外は入室できない不審者侵入禁止区域となっている。また、P1〜P3は人物、Rはカメラ1が撮像して実際に監視する監視エリアを示し、PT1〜PT3は後述する行動パターンを示している。
尚、第1〜第4の出入口B1〜B4は、鍵付きのドアであっても良いし、扉の無い出入り口であっても良い。更には、エレベータの扉であっても良い。
【0012】
カメラ1は、第1出入口B1の上部に設置され、前方となる第3出入口B3方向を中心に監視対象エリアM全体を撮像するよう略180度の広角レンズを備えている。
【0013】
制御機2は、社員等入室を許可した人物の顔情報を記憶する顔情報記憶部10、カメラが撮像した人物の顔情報と登録された顔情報とを比較して一致/不一致を判定する顔認証部11、人物を追尾するアルゴリズムを備えて、カメラ1の撮像映像から人物を判別したらその人物を追尾する画像解析部12、監視エリアM内での人の行動パターンを複数記憶した行動パターン記憶部13、行動パターン記憶部13に記憶されたパターンと画像解析部12により追尾した人物の行動パターンが一致するかを比較する行動パターン比較部14、カメラ1と通信する第1インターフェース(第1IF)15、管理装置3と通信する第2インターフェース(第2IF)16、制御機2全体を制御する制御機CPU17等を備えている。
【0014】
管理装置3は、カメラ1の撮像映像を表示するモニタ20、モニタ20に映像を表示するために映像信号の復調等の映像処理する映像処理部21、撮像した人物の行動情報等を記憶する情報記憶部22、不審者検知を報知する報知部23、制御機2と通信するための管理装置IF24、管理装置3全体を制御する管理装置CPU25等を備えている。この管理装置3は、例えばパーソナルコンピュータで構成することができる。
【0015】
図4は、制御機2の行動パターン記憶部13に記憶されている行動パターンの一例を示し、カメラ1から見て正面の第3出入口B3から進んで来た人物の行動パターンを示し、(a)は第1出入口B1へ向かってくる第1の行動パターンPT1、(b)は右に曲がる第2の行動パターンPT2、(c)は左に曲がる第3の行動パターンPT3を示している。
【0016】
尚、ここでは、第3出入口B3が外部から出入りする例えば玄関であって、第1、第2出入口B1,B2から入った先、更には第4出入口B4から入った先は、夫々独立したエリアであり、夫々のエリアには第3出入口B3を通過しなければ出入り出来ないものとしている。そして、不審者を判定するための行動パターンとしては、第2出入口B2から進んで来た場合、第4出入口B4から進んで来た場合があり、行動パターン記憶部13にはそれらの行動パターンも記憶されている。そして、これらの行動パターンは詳細に設定することが可能である。
【0017】
ここでは、許可のない人物(登録されていない人物)が第3出入口B3から進んで来て第1出入口B1に入ろうとした場合に不審者が居ると判断する場合を説明する。この場合、図4の第1の行動パターンPT1がそれに該当し、許可のない人が第1の行動パターンPT1に該当する行動を採った場合に、警報報知が実施される。
【0018】
具体的に説明すると、まずカメラ1は常時撮像動作し、映像信号を制御機2に伝送している。制御機2は、第1IF15を介して制御機CPU17が映像信号を受信すると、画像解析部12にカメラ1の撮像画像から人物の抽出を行わせる。また、カメラ1の撮像映像は第2IF16を介して管理装置3へ伝送され、管理装置IF24、映像処理部21を介してモニタ20に表示される。
この状態で、人物(ここでは、人物P1とする)が第3出入口B3から現れると、カメラ1の撮像映像に人物P1が入り込む。人物P1がカメラ1に撮像されることで、画像解析部12がそれを検出する。
【0019】
尚、画像解析部12は、映像に複数の人物が写っている場合は夫々の人物を認識し、その複数の人物に対して後述する同様の判定を行う。この映像情報から人物を特定する技術、及び追尾する技術は公知の技術を適用することができ、例えば特開2001−111987号公報、特開2001−333422号公報等の技術を適用することができる。
【0020】
人物P1が認識されると、制御機CPU17は、その人物の顔情報を顔認証部11で認識させ、顔認証部11は認識した顔情報と顔情報記憶部10に登録されている顔情報とを比較する。また並行して画像解析部12は、認識した人物P1を追尾し、この追尾情報は行動パターン比較部14に送られ、行動パターン記憶部13に記憶されている行動パターンと比較される。
【0021】
画像解析部12は、人物P1を追尾している途中で顔情報の比較結果を制御機CPU17に通知する。制御機CPU17は、この通知内容が、顔情報記憶部10に登録された人物のうちの一人(例えば人物J1)であるとする情報であれば、追尾している人物P1の行動軌跡が何れの行動パターンを採っても、警報報知等の制御は行わない。但し、この追尾データは、第2IF16を介して管理装置3に送信され、管理装置IF24を介して追尾データを受信した管理装置CPU25は、登録されている人物J1の行動情報として情報記憶部22に記憶制御する。
【0022】
また、制御機CPU17は、画像解析部12からの通知内容が顔情報記憶部10に登録された何れの人物の顔情報とも一致しないとする情報であれば、行動パターン比較部14の判定結果を待ち、第1の行動パターンPT1に該当する行動軌跡を採ったとする判断を受けたら、第1出入口に不審者が入ろうとしていると判断し、第2IF16を介して管理装置3に警報信号を送信する。
【0023】
管理装置IF24を介して警報信号を受信した管理装置CPU25は、報知部23から警報音を報音させる。同時に、情報記憶部22にこのときカメラ1が撮像している不審者映像を録画する。
このように、外部に通じた出入口から監視対象エリアに入ってきた顔情報登録のない人物が、関係者以外立ち入り禁止の出入口(不審者侵入禁止区域)に近づいてきた場合、特定の行動パターンを採ったとして不審者であると判断される。更には、このような人物が登録されている関係者に混じって侵入しようする所謂”共連れ”が行われようとした場合も、追尾されるため不審者として検知することができる。よって、通行する人物が自身の認証操作をすること無く不審者の侵入や共連れを防止できる。
そして、顔を認証できない人物の接近を検出しても、特定の行動を採らなければ、例えば外部に通じる出入口から入ってきた人物でなければ、不審者侵入禁止区域に近づいて来ても不審者と判断しないよう動作させることができるので、不要な警報を発することもない。
また、撮像した人物の行動情報が保存されるので、何らかの問題が発生した際に、映像を見て個々の人物の行動を確認すること無く、一目で各登録人物の行動を把握することができ、映像情報の管理がし易い。更に、不審者画像は自動録画されるので、セキュリティの向上に利用できる。
【0024】
尚、上記実施形態では、行動軌跡が特定の行動パターンに合致した場合にのみ警報報知を行う構成としたが、これに限らず行動パターンごとに通知動作を設定しても良く、例えば、顔を認証出来ない人物が第2の行動パターンPT2を採ったら第2出入口B2に設けたランプ(図示せず)を点灯させる等注意を促しても良い。また、カメラ1を常時動作させているが、人の出入りが少ないエリアであれば人感センサを活用でき、人物を検出してからカメラ1を動作させても良い。
また、顔情報記憶部10には、通行を許可する人物の顔情報のみ登録して記憶させているが、過去の不審者データ等を基に、通行禁止の人物の顔情報も合わせて登録しても良い。この場合、顔認証部11がカメラ撮像している人物が通行禁止の人物であると判断したら、その人物の行動軌跡が第1の行動パターンPT1を採らなくても、管理装置3において警報報知させることができ、不審者が居ることを速やかに通報することが可能となる。
また、監視対象エリアMを壁により閉塞された空間全体としているが、一部に壁がない開かれた空間の一部が監視対象エリアMであっても良く、不審者侵入禁止区域B1や監視エリアRを決めることで、同様に不審者の監視を実施することができる。
また、カメラ1が撮像する監視エリアRは、監視対象エリアMとほぼ同一となっているが、監視対象エリアMが開かれた空間の一部となっている場合は、監視対象エリアMを含む更に広いエリアを監視エリアRとして撮像すれば、不審者の監視に死角が発生することがない。
【符号の説明】
【0025】
1・・カメラ、2・・制御機、3・・管理装置、10・・顔情報記憶部、11・・顔認証部、12・・画像解析部、13・・行動パターン記憶部、14・・行動パターン比較部、17・・制御機CPU(不審者判定手段)、20・・モニタ、22・・情報記憶部、23・・報知部、25・・管理装置CPU(録画制御手段)、M・・監視対象エリア、B1・・不審者侵入禁止区域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象エリアを撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した映像から同時に複数の人物の認識が可能であって、その人物を追尾するアルゴリズムを備えた画像解析手段と、
人物の顔情報を予め記憶した顔情報記憶部と、
前記画像解析手段が認識した人物から顔を認識し、認識した顔情報と前記顔情報記憶部に登録した顔情報とを比較して一致/不一致を判断する顔認証手段と、
前記エリア内に設定された不審者侵入禁止区域に進む特定の行動パターンを含む人物の行動パターンを記憶した行動パターン記憶部と、
前記画像解析手段が追尾した人物の行動軌跡と前記行動パターン記憶部に記憶された人物の行動パターンとの一致/不一致を判断する行動パターン比較手段と、
前記顔認証手段が不一致と判断した人物が、前記特定の行動パターンと一致する行動軌跡を採ったら不審者侵入と判断する不審者判定手段とを有することを特徴とする侵入者監視システム。
【請求項2】
顔認証手段が不一致と判断した人物が撮像されている場合、その画像を録画する録画制御手段を有することを特徴とする請求項1記載の侵入者監視システム。
【請求項3】
前記顔情報記憶部は、前記不審者侵入区域に侵入可とする侵入許可人物の顔情報に加えて、侵入不可人物の顔情報も記憶し、前記不審者判定手段は、前記顔認証手段が侵入不可人物の存在を認識したら、前記特定の行動パターンの判定を待たずに不審者侵入と判断することを特徴とする請求項1又は2記載の侵入者監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−211514(P2010−211514A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56909(P2009−56909)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】