説明

便座暖房装置

【課題】便座を短時間で暖房でき、電力消費を節減でき、さらに着座中でも暖房を継続することが出来る便座暖房装置を提供する。
【解決手段】便座(Z)に設置されたヒータ(1)と、便座ふた(F)に設置された電磁誘導加熱コイル(4)と、ヒータ(1)および電磁誘導加熱コイル(4)の作動を制御する制御部(10)と、トイレへの入室を検知する入室センサ(9)とを具備し、制御部(10)は、入室センサ(9)でトイレへの入室を検知したなら電磁誘導加熱コイル(4)を作動させ、便座(Z)を瞬間暖房する。
【効果】ヒータ式の暖房便座を、便座ふた側に設置した補助暖房装置によって、補助的に瞬間加熱暖房することが出来る。ヒータで常時予熱しなくても済むか又は従来より少ない電力で予熱すれば済み、電力消費を節減できる。便座に着座された後はヒータにより暖房を継続できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座暖房装置に関し、さらに詳しくは、便座を短時間で暖房でき、電力消費を節減でき、さらに着座中でも暖房を継続することが出来る便座暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便座か便座ふたのいずれか一方に電磁誘導加熱コイルを設けた暖房便座が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−23880号公報
【特許文献2】特開2004−113467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発熱抵抗体のようなヒータを用いた暖房便座では、短時間で便座を暖房できないため、常時予熱しておく必要があり、電力消費が大きい問題点があった。
これに対して、電磁誘導加熱コイルを用いた上記従来の暖房便座では、短時間で便座を暖房できるため、常時予熱しなくても済む利点がある。
しかし、電磁誘導加熱コイルから発生する電磁波に起因する人体への悪影響の懸念から、便座に着座された後は暖房を継続できない問題点がある。
そこで、本発明の目的は、便座を短時間で暖房でき、電力消費を節減でき、さらに着座中でも暖房を継続することが出来る便座暖房装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、ヒータ(1)と、電磁誘導加熱コイル(4)と、前記ヒータ(1)および前記電磁誘導加熱コイル(4)の作動を制御する制御手段(10)と、トイレへの入室を検知する入室検知手段(9)とを具備し、前記制御手段(10)は、前記入室検知手段(9)でトイレへの入室を検知したなら前記電磁誘導加熱コイル(4)を作動させることを特徴とする便座暖房装置(100)を提供する。
上記第1の観点による便座暖房装置(100)では、トイレへの入室を検知すると、電磁誘導加熱コイル(4)を作動させる。これにより、瞬間的に便座を暖房できる。よって、ヒータ(1)で常時予熱しなくても済むか又は従来より少ない電力で予熱すればよく、電力消費を節減できる。さらに、便座(Z)に着座された後はヒータ(1)により暖房を継続できる。
【0005】
なお、電磁誘導加熱コイルだけで短時間で便座を暖房するためには、ある程度定格の大きい電磁誘導加熱コイルが必要になる。また、電磁誘導加熱コイルだけで10℃〜25℃の昇温をするには温度ムラが発生しやすく、その解消のために電磁誘導加熱コイルや発熱体が高価なものとなってしまった。
これに対して、上記第1の観点による便座暖房装置(100)では、ヒータ(1)を併用できるため、定格の小さな電源および電磁誘導加熱コイルで足り、温度ムラが発生せず、電磁誘導加熱コイルや発熱体が安価なもので済む利点もある。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による便座暖房装置(100)において、便座ふた(F)の近傍に人体が存在するか否かを検知する人体検知手段(8)を備え、前記制御装置(10)は、前記人体検知手段(8)で人体の存在を検知したなら前記電磁誘導加熱コイル(4)を作動させないことを特徴とする便座暖房装置(100)を提供する。
上記第2の観点による便座暖房装置(100)では、便座ふた(F)の近傍に人体が存在しているときは電磁誘導加熱コイル(4)を作動させない。これにより、電磁誘導加熱コイル(4)から発生する電磁波に起因する人体への直接的な悪影響や、身に着けているアクセサリーやベルトのバックル等の金属物への悪影響を防止できる。
【0007】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点による便座暖房装置(100)において、前記ヒータ(1)を便座(Z)側に設置し、前記電磁誘導加熱コイル(4)を便座ふた(F)側に設置し、前記便座(Z)に対して前記便座ふた(F)が閉じているか開いているかを検知する便座ふた開閉検知手段(6)を具備し、前記制御手段(10)は、前記便座ふた開閉検知手段(6)で前記便座ふた(F)が開いていると検知した時は前記電磁誘導加熱コイル(4)を作動させないことを特徴とする便座暖房装置(100)を提供する。
上記第3の観点による便座暖房装置(100)では、便座(Z)側にヒータ(1)を設置すると共に便座ふた(F)側に電磁誘導加熱コイル(4)を設置している。これにより、ヒータ式の暖房便座を、便座ふた側に設置した補助暖房装置によって、補助的に瞬間加熱暖房することが出来る。そして、便座ふた(F)が開いていると検知した時は電磁誘導加熱コイル(4)を作動させないので、便座ふた(F)が開いている状態で電磁誘導加熱コイル(4)を作動させる無駄を防止できる。
【0008】
第4の観点では、本発明は、前記第3の観点による便座暖房装置(100)において、前記人体検知手段(8)で人体の存在を検知せず且つ前記便座ふた開閉検知手段(6)で前記便座ふた(F)が開いていると検知する状態が所定時間続いた時に前記便座ふた(F)を電動で閉じる便座ふた電動閉じ手段(7)を具備したことを特徴とする便座暖房装置(100)を提供する。
便座ふた(F)が開けられたままで放置された場合、次に人体が接近してきたときに電磁誘導加熱コイル(4)により便座暖房を行うことが出来ない。
そこで、上記第4の観点による便座暖房装置(100)では、便座ふた(F)が開けられたままで放置されたときに便座ふた(F)を自動的に閉じる。これにより、次に人体が接近してきたときに電磁誘導加熱コイル(4)により便座暖房を行うことが出来る。
【0009】
第5の観点では、本発明は、前記第1から第4のいずれかの観点による便座暖房装置(100)において、前記電磁誘導加熱コイル(4)は、2個から4個のコイルで形成されていることを特徴とする便座暖房装置(100)を提供する。
上記第5の観点による便座暖房装置(100)では、電磁誘導加熱コイル(4)が2個から4個のコイルで形成されているので、着座部の全体に分布させて設置すれば着座部の全体を加熱できる。また、いくつかの特定部分(例えば最低温領域部)に設置すればそれらの特定部分を加熱できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の便座暖房装置によれば、便座を短時間で暖房でき、電力消費を節減でき、さらに着座中でも暖房を継続することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係る便座暖房装置100を示す構成説明図である。
この便座暖房装置100は、便座Z側に設置された電熱ヒータ1,アルミ箔2および温度センサ3と、便座ふたF側に設置された電磁誘導加熱コイル4,発熱体5および開閉センサ6と、便座ふたFを電動で閉じるためのモータ7と、便座ふたFの近傍に人体が存在するか否かを検知する人体センサ8と、便所に人が入室してきたことを検知する入室センサ9と、便座Zの暖房の制御を行う制御部10とを具備している。
【0013】
アルミ箔2は、便座Zの温度分布を均一化するための伝熱材であり、便座Zの下面に貼り付けられている。
温度センサ3は、アルミ箔2の温度を検知するものである。
【0014】
電磁誘導加熱コイル4は、2個,3個または4個のコイルで形成されており、便座Zの着座部の全体を加熱できるように、便座Zの着座部に全体的に対応するように分布して便座ふたF側に設置されている。
なお、便座Zのいくつかの特定部分(例えば最低温領域部)を加熱できるように、便座Zのいくつかの特定部分に対応するように便座ふたF側に設置してもよい。
【0015】
発熱体5は、電磁誘導加熱コイル4から発生する磁束によって誘導される渦電流によりジュール熱を発生する金属板または磁性体板であり、便座ふたFの下面に貼り付けられている。
開閉センサ6は、例えば便座Zからの反射光により便座Zに対して便座ふたFが閉じているか開いているかを検知するものである。
【0016】
人体センサ8は、例えば近傍空間の人体の熱を検知する焦電センサである。
入室センサ9は、例えば人体による赤外線ビームの反射光によりトイレへの入室(便器Kへの人体の接近)を検知するものである。
【0017】
図1は、便座Zが便器Kに下ろされると共に便座ふたFが便座Zに下ろされている状態を示している。
開閉センサ6は、便座Zに対して便座ふたFが閉じられていることを検知する。
【0018】
図2は、便座Zが便器Kに下ろされると共に便座ふたFが上げられている状態を示している。
開閉センサ6は、便座Zに対して便座ふたFが開けられていることを検知する。
【0019】
図3は、便座Zおよび便座ふたFが上げられている状態を示している。
開閉センサ6は、便座Zに対して便座ふたFが閉じられていることを検知する。
【0020】
制御部10は、次のように便座暖房処理を行う。
(1)人体センサ8で人体が検知されず、入室センサ9でトイレへの入室が検出されず、且つ、温度センサ3で検出される温度が25℃より低い場合、温度センサ3で検出される温度が25℃以上になるように電熱ヒータ1に通電する。つまり、気温、室温が高く、通電しなくても便座温度が25℃以上なら通電しない(予熱不要)。電磁誘導加熱コイル4は作動させない。(予熱運転)
(2)人体センサ8で人体が検知されず、入室センサ9でトイレへの入室が検出された時、温度センサ3で検出される温度が30℃になるように電熱ヒータ1に通電する。また、便座ふたFが閉じていることが開閉センサ6で検知されたなら電磁誘導加熱コイル4に高周波電流を通電する。便座ふたFが開いていることが開閉センサ6で検知されたなら電磁誘導加熱コイル4は作動させない。(急速加熱運転)
(3)便座ふたFが開けられたことが開閉センサ6で検知されるか又は人体センサ8で人体が検知されたなら電磁誘導加熱コイル4は作動させない。(無駄な加熱の防止および安全のための停止)
(4)人体センサ8で人体が検知されている間、温度センサ3で検出される温度が30℃になるように電熱ヒータ1に通電する。(使用時運転)
(5)電磁誘導加熱コイル4を作動させている時間が連続して10秒間になると電磁誘導加熱コイル4への通電を停止する。(トイレに入室したが直ぐに出て行った場合や直ぐに便座に座らなかった場合に異常加熱を防止するための停止)
(6)人体センサ8で人体が検知されず、入室センサ9でも人体の接近が検出されない状態が連続して5分になり、便座ふたFが開けられていることが開閉センサ6で検知されると、モータ7により便座ふたFを下ろす。(便座ふた閉じ)
【0021】
実施例1の便座暖房装置100によれば、トイレへの入室を検知すると、電磁誘導加熱コイル4を作動させ、便座Zを瞬間加熱するので、短時間で便座を暖房できる。このため、ヒータ1による予熱は従来より低い温度で保温すればよいので少ない電力で済み、電力消費を節減できる。さらに、便座Zに着座された後はヒータ1により暖房を継続することが出来る。
【実施例2】
【0022】
図4は実施例2に係る便座暖房装置100を示す構成説明図である。
この便座暖房装置100は、実施例1から発熱体5を省略したものであり、アルミ箔2が発熱体として機能する。
【実施例3】
【0023】
図5は実施例3に係る便座暖房装置100を示す構成説明図である。
この便座暖房装置100は、実施例2の電磁誘導加熱コイル4を便座ふたFの上面に貼り付けたものである。
【実施例4】
【0024】
図6は実施例4に係る便座暖房装置100を示す構成説明図である。
この便座暖房装置100は、実施例3に発熱体5を追加したものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の便座暖房装置は、便座を暖める装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1に係る便座暖房装置を示す構成説明図である。
【図2】実施例1に係る便座暖房装置で便座ふたのみを上げた状態を示す構成説明図である。
【図3】実施例1に係る便座暖房装置で便座および便座ふたを上げた状態を示す構成説明図である。
【図4】実施例2に係る便座暖房装置を示す構成説明図である。
【図5】実施例3に係る便座暖房装置を示す構成説明図である。
【図6】実施例4に係る便座暖房装置を示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ヒータ
3 温度センサ
4 電磁誘導加熱コイル
5 発熱体
6 開閉センサ
7 モータ
8 人体センサ
9 入室センサ
10 制御部
100 便座暖房装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータ(1)と、電磁誘導加熱コイル(4)と、前記ヒータ(1)および前記電磁誘導加熱コイル(4)の作動を制御する制御手段(10)と、トイレへの入室を検知する入室検知手段(9)とを具備し、前記制御手段(10)は、前記入室検知手段(9)でトイレへの入室を検知したなら前記電磁誘導加熱コイル(4)を作動させることを特徴とする便座暖房装置(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の便座暖房装置(100)において、便座ふた(F)の近傍に人体が存在するか否かを検知する人体検知手段(8)を備え、前記制御装置(10)は、前記人体検知手段(8)で人体の存在を検知したなら前記電磁誘導加熱コイル(4)を作動させないことを特徴とする便座暖房装置(100)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の便座暖房装置(100)において、前記ヒータ(1)を便座(Z)側に設置し、前記電磁誘導加熱コイル(4)を便座ふた(F)側に設置し、前記便座(Z)に対して前記便座ふた(F)が閉じているか開いているかを検知する便座ふた開閉検知手段(6)を具備し、前記制御手段(10)は、前記便座ふた開閉検知手段(6)で前記便座ふた(F)が開いていると検知した時は前記電磁誘導加熱コイル(4)を作動させないことを特徴とする便座暖房装置(100)。
【請求項4】
請求項3に記載の便座暖房装置(100)において、前記人体検知手段(8)で人体の存在を検知せず且つ前記便座ふた開閉検知手段(6)で前記便座ふた(F)が開いていると検知する状態が所定時間続いた時に前記便座ふた(F)を電動で閉じる便座ふた電動閉じ手段(7)を具備したことを特徴とする便座暖房装置(100)。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の便座暖房装置(100)において、前記電磁誘導加熱コイル(4)は、2個から4個のコイルで形成されていることを特徴とする便座暖房装置(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−18114(P2008−18114A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193511(P2006−193511)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】