説明

保持器付き転がり軸受

【課題】運転時に分割型保持器20bを構成する各保持器素子21c、21c同士が円周方向に変位して、隣り合うこれら各保持器素子21c、21c同士が激しく衝突しない構造を実現する。
【解決手段】複数の保持器素子21c、21cを円周方向に関して直列に組み合わせる事により全体を円すい筒状にした状態で、隣り合う上記各保持器素子21c、21cの対向する円周方向端面同士の円周方向に関する総ての隙間の合計Hと、この保持器のピッチ円P21c の周長Lとの関係を、0<H≦0.001Lとする。これにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る保持器付き転がり軸受は、風力発電装置を構成するロータ(ブレード等の羽付きの回転体)の回転中心部に結合固定した回転軸、或はこの回転軸と発電機との間に設けた変速機を構成する回転軸を、上記風力発電装置のハウジングに対して回転自在に支持する為に利用する。
【0002】
近年、二酸化炭素の削減等により地球環境を改善する事を目的として、自然エネルギを利用する発電方法である風力発電が注目される様になっている。図11〜12は風力発電装置の従来構造の1例として、特許文献1に記載された構造を示している。図11はプロペラ形風力発電装置の全体構成図である。風車1は、風の運動エネルギを取り込むブレード2とロータ3、ハウジング4、及びこのハウジング4を地上から十分に(例えば約40m)離れた高さ位置に設置する為のタワー5から構成される。又、このハウジング4の内部には、図12に示す様に、回転軸6、転がり軸受7、7、増速機8、発電機9が納まっており、この回転軸6は、転がり軸受7、7によって、上記ハウジング4に、回転自在に取り付けられている。そして、風の運動エネルギから上記ブレード2が取り込んだ回転力は、上記回転軸6に伝達され、更に、上記増速機8で増速されてから上記発電機9に伝達され、発電する。
【0003】
上記風車1を構成する転がり軸受7、7や上記増速機8等の変速機内部で使用される軸受は、大きなラジアル荷重を支承すべく、ころ軸受等を使用する。この様に、風力発電装置で使用するころ軸受は、この風力発電装置が鉄塔の上等の高所に設けられており、交換等のメンテナンス作業を行ないにくい。この為、上記ころ軸受が早期に寿命に達してしまう事は好ましくない。従って、上記風力発電装置のメンテナンス作業を長期間(最低でも20年間、好ましくは、より長期間)行なわなくても済む様にする為、上記ころ軸受の耐久寿命も十分に確保できる様にする事が望まれる。
【0004】
図13は、この様なころ軸受の1例として、従来から知られている円すいころ軸受10の構造を示している。この円すいころ軸受10は、外輪11と内輪12と複数の円すいころ13、13と、保持器14とを備えている。
このうちの外輪11は、内周面の中間部に円すい凹面状の外輪軌道15を設けている。
又、上記内輪12は、外周面の中間部に円すい凸面状の内輪軌道16を設けている。又、この内輪12の外周面両端部のうち、大径側端部(図13の左端部)には大径側鍔部17を、小径側端部(図13の右端部)には小径側鍔部18を、それぞれ形成している。
又、上記複数の円すいころ13、13は、外周面を円すい凸面状としている。又、次述する保持器14により保持された状態で、上記外輪軌道15と上記内輪軌道16との間に転動自在に設けられている。
又、上記保持器14は、円すい筒状に形成され、円周方向に亙って複数のポケット19、19を等間隔に形成して、これら各ポケット19、19内に1個ずつ、上記各円すいころ13、13を、転動自在に保持している。
【0005】
この様な上記保持器14は、通常は全体が円すい筒状の単一部材から成る、所謂一体型保持器が使用されている。しかし、上記風力発電装置等の主軸等、大きな荷重を受ける環境で使用される場合、上記円すいころ軸受10は大型化して、この円すいころ軸受10を構成する上記保持器14もやはり大型化する。この為、製造装置の能力を超えてしまい、上述した様な一体型の保持器14を製造する事が困難になる事が考えられる。又、製造できた場合でも、組み立て装置の能力を超えてしまっている場合には、やはり組み立て作業を行なう事が困難になる事が考えられる。
そこで、上述した様に上記円すいころ軸受10が大型化した場合に、上記一体型保持器の代わりに、所謂分割型保持器を使用する場合がある。図14はこの分割型保持器の構造を説明する為の模式図である。この分割型保持器20は、それぞれが円弧状に形成された複数の保持器素子21、21を円周方向に関して直列に組み合わせる事により、全体を円すい筒状としている。この様な分割型保持器20を構成する上記各保持器素子21、21は、上記一体型保持器の大きさに比べて、小型である。この為、製造装置や組み立て装置の能力を超える可能性は小さい。
【0006】
又、特許文献1には、分割型保持器の構造が記載されている。図15は、この従来から知られている分割型保持器の構造を説明する為の模式図である。この分割型保持器20aは、それぞれが円弧状に形成された複数の保持器素子21a、21aを、結合する事なく円周方向に関して直列に組み合わせる事により、全体を円すい筒状としている。そして、上記分割型保持器20aは、上記各保持器素子21a、21aを円周方向に直列に並べた状態で、隣り合う各保持器素子21a、21a同士の円周方向端面のうちの、対向する端面同士の間に隙間を存在させている。この隙間の長さの合計は、図15に示す様に、これら各保持器素子21a、21a同士を隙間なく並べた状態で、最初の保持器素子21aの一端面と最後の保持器素子21aの他端面との間の隙間Xの長さに等しくなる。上記特許文献1に記載された発明では、この様な隙間Xの長さを、上記分割型保持器20aのピッチ円P21a の0.15〜1%の範囲に規制している。
上記各保持器素子21a、21aは、それぞれ図16に示す様に、軸方向両端部に設けられた、それぞれが円弧状である1対のリム部22a、22a同士を備える。又、これら両リム部22a、22a同士を、複数の柱部23a、23aで結合している。又、これら両リム部22a、22aの内側面と、円周方向に隣り合う各柱部23a、23aの円周方向側面とにより周囲を囲まれる部分を、前記各円すいころ13、13を転動自在に保持する為のポケット19a、19aとしている。そして、これら各ポケット19a、19aの内面のうち、円周方向両端部を、上記各円すいころ13、13の転動面を案内する各柱部23a、23aの案内面としている。
【0007】
この様な分割型保持器20aの場合、軸受内部の温度上昇による上記各保持器素子21a、21aの円周方向への熱膨張を考慮して、上記隙間Xの長さを規制している。軸受内部の温度が上昇した場合、上記分割型保持器20aを構成する上記各保持器素子21a、21aは熱膨張する。そして、この熱膨張により、上記隙間Xと、総ての上記各保持器素子21a、21aの円周方向への熱膨張量の総和との差分が円周方向隙間として残る。しかし、運転時の軸受内部の温度がそれほど高くならない場合には、上記熱膨張量の総和が上記隙間Xに対して小さくなり、この隙間Xに近い隙間が円周方向に残ってしまう。この様に、円周方向に比較的大きな隙間が残ると、運転時に上記各保持器素子21a、21aの円周方向への変位量が増えて、隣り合う各保持器素子21a、21a同士の円周方向端面同士が強く衝突し合う。この為、異音が発生したり、この衝突により大きな応力が発生し、長期間の使用に伴って、これら各保持器素子21a、21aが破損する可能性が考えられる。
【0008】
又、特許文献2に記載された分割型保持器は、上記特許文献1に記載された分割型保持器20aと同様に、それぞれが円弧状に形成された複数の保持器素子21b、21bを、円周方向に関して直列に組み合わせる事により、全体を円すい筒状としている。但し、上記特許文献2に記載された分割型保持器は、隣り合う上記各保持器素子21b、21b同士を機械的に結合している。図17〜18は、この結合状態を説明する為の、これら各保持器素子21b、21bの円周方向端部を示す斜視図である。これら各保持器素子21b、21bは、円周方向一端部に接合凸部24を、他端部にこの接合凸部24と係合する接合凹部25を、それぞれ形成している。そして、これら接合凸部24と接合凹部25とを図18に示す様に係合させ、更に、超音波溶着により溶着して、互いに結合している。
【0009】
この様な、特許文献2に記載されている分割型保持器の場合、隣り合う上記各保持器素子21b、21b同士の間に円周方向の隙間を設けていない。この為、上述した特許文献1の分割型保持器20aの様に、軸受の運転時に前記各保持器素子21a、21aが円周方向へ変位する事により隣り合う上記各保持器素子21a、21aの対向する円周方向端面同士が激しく衝突する問題は生じない。しかし、軸受内部の温度上昇により上記各保持器素子21b、21bが熱膨張した場合に、次の様な問題が考えられる。軸受内部の温度が上昇すると、上記各保持器素子21b、21bは、あらゆる方向に熱膨張しようとする。しかし、上記各保持器素子21b、21bは機械的に結合されており、これら各保持器素子21b、21bの対向する円周方向端面同士の間には隙間を設けていない。この為、上記各保持器素子21b、21bの円周方向両端面は、円周方向に拡がる方向へは熱膨張する事ができず、この円周方向に熱膨張できない分が、上記各保持器素子21b、21bの各ポケットの案内面等の変形として現れてしまう。そして、この変形により、これら各ポケットが保持している転動体を拘束してしまい、異音の発生や、トルク上昇等を引き起こし、上記各保持器素子21b、21bが破損してしまう事が考えられる。
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第10246825号明細書
【特許文献2】特開2004−125088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、軸受運転時にこの保持器を構成する各保持器素子同士が円周方向に変位する事で、隣り合うこれら各保持器素子同士が激しく衝突し、異音が発生したり、破損したりする事を防止して耐久性を確保でき、しかも、温度上昇時にポケットの内面が歪む事を防止できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象となる保持器付き転がり軸受は、内輪と、外輪と、複数個の転動体と、保持器とを備える。
このうちの、内輪は、外周面に外輪軌道を有する。
又、上記外輪は、内周面に外輪軌道を有する。
又、上記各転動体は、上記外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられている。
又、上記保持器は、それぞれが円弧状に形成された複数の保持器素子を円周方向に関して直列に組み合わせる事により、全体を円筒状若しくは円すい筒状とした、所謂分割型保持器である。又、これら各保持器素子は、軸方向両端部に設けられた、それぞれが円弧状である1対のリム部同士を、複数の柱部で結合して成る。又、これら両リム部の内側縁と円周方向に隣り合う各柱部の円周方向側縁とにより周囲を囲まれる部分を、上記各転動体を転動自在に保持する為のポケットとしている。
【0013】
特に、本発明の保持器付き転がり軸受に於いては、上記各保持器素子を、機械的に結合せず、円周方向に直列に組み合わせて円筒状若しくは円すい筒状の保持器とした状態で、隣り合う各保持器素子の対向する円周方向端面同士の円周方向に関する隙間の合計Hと、この保持器のピッチ円の周長Lとの関係を、常温(20℃)で、H≦0.001Lとしている。即ち、上記各保持器素子を、或る1つの保持器素子を基準として、これら各保持器素子を、隙間なく円周方向に直列に組み合わせた状態で、先頭となる保持器素子の円周方向一端面と最後尾となる保持器素子の円周方向他端面との円周方向に関する距離である、上記合計値Hを、上記周長Lの0.001倍以下の正の値としている。
【0014】
上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、上記合計値Hと上記周長Lとの関係を、0<H≦0.001Lとする。
又、この様な請求項1〜2に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した様に、上記各ポケット内での上記各転動体の、保持器の径方向に関する変位を許容する径方向隙間を、これら各ポケットの内面と上記各転動体の転動面との間に設ける。
又、この様な請求項1〜3に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した様に、上記保持器の外周面と、前記外輪の内周面である案内周面とを摺接若しくは近接対向させる事でこの保持器の径方向の位置決めを図る外輪案内構造、又は、この保持器の内周面と、前記内輪の外周面である案内周面とを摺接若しくは近接対向させる事でこの保持器の径方向の位置決めを図る内輪案内構造の何れかである軌道面案内構造とする。
【0015】
又、この様な請求項4に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した様に、上記各案内周面(外輪案内構造の場合には上記外輪の内周面、内輪案内構造の場合には上記内輪の外周面)と摺接若しくは近接対向する上記保持器の周面を、上記各柱部の一部に設けられた案内部とする。又、この案内部の一部に、潤滑剤を保持又は供給する為の切り欠き部を形成する。
又、この様な請求項1〜5に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項6に記載した様に、上記各柱部の円周方向両側面のうち、上記案内周面側に近い部分に、各転動体の転動面との係合に基づいて上記保持器の径方向位置を規制する案内面を設ける。
又、この様な請求項4〜6に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項7に記載した様に、上記各柱部の円周方向側面の一部で、径方向に関する位置が上記案内周面と反対寄り部分に、係止突部を形成する。又、上記各ポケット内で互いに対向するこれら係止突部の先端縁同士の円周方向に関する距離を、各転動体の外径よりも小さくする。
又、この様な請求項1〜7に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項8に記載した様に、上記各保持器素子の円周方向端面を、軸方向中央部が突出した凸形状とする。
又、この様な請求項1〜8に記載した発明を実施する場合に好ましくは、上記各転動体を請求項9に記載した様なころとする。
又、この様な請求項1〜9に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項10に記載した様に、上記保持器を、芳香族ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂により作製する。
【発明の効果】
【0016】
上述の様に構成する本発明の保持器付き転がり軸受は、保持器を構成する、隣り合う各保持器素子の対向する円周方向端面同士の間の隙間が大きくなり過ぎない様に、設ける隙間を規制している。この様に円周方向の隙間を規制する事で、上記軸受の運転時にこの軸受内部の温度が上昇せず、上記各保持器素子の円周方向に関する熱膨張量が小さい場合にも、これら各保持器素子が円周方向に大きく変位する事を防止して、隣り合うこれら各保持器素子の対向する円周方向端面同士が激しく衝突する事を防止できる。
又、上記軸受の運転時にこの軸受内部の温度が上昇して、上記各保持器素子が熱膨張した場合、これら各保持器素子の円周方向両端面は、上記隙間を設けている分だけ、円周方向へ拡がる方向に熱膨張する事ができるので、円周方向に隣り合う上記各保持器素子同士が結合されている場合に比べて、各ポケットの案内面等の変形量を小さく抑える事ができる。この為、これら各ポケットの案内面が、保持している転動体を拘束してしまう事で発生する、異音や、トルクの上昇を防止して、上記各保持器素子の耐久性の向上、延いてはこれら各保持器素子を組み込んだ転がり軸受の耐久性の向上を図る事ができる。
【0017】
又、請求項3に記載した様に、上記各ポケットの内面と各転動体の転動面との間に、これら各ポケット内でのこれら各転動体の、上記保持器の径方向に関する変位を許容する径方向隙間を設ける構造にすれば、軸受内部の温度上昇に伴って上記各保持器素子が径方向外方に熱膨張しても、上記各ポケットの内面がこれら各玉を拘束してしまう事を防止できる。
又、請求項4に記載した様に、外輪案内構造、又は、内輪案内構造の何れかの軌道面案内構造にする事で、上記軸受の運転時にこの保持器が傾斜する事を防止できる。この為、上記各ポケットの内面と上記各転動体の転動面とが強く摩擦し合う事を防止して、回転抵抗が大きくなる事も防止できる。特に、内輪案内構造の場合には、軸受内部の温度が上昇して、上記各保持器素子が径方向外方に熱膨張する事を妨げる事がない。この為、上記各保持器素子に過大な内部応力が発生する事を防止して、上記各ポケットの内面が歪む事を防止できる。
又、請求項5に記載した様に、上記外輪、又は内輪の何れかの案内周面と摺接若しくは近接対向する上記保持器の周面を、各柱部の一部に設けられた案内部として、この案内部の一部に、潤滑剤を保持又は供給する切り欠き部を形成すれば、軸受内部の潤滑性を向上して、この軸受内部の温度が上昇する事を防止できる。又、上記切り欠き部を設けた分、上記案内部と上記案内周面との接触面積を少なくする事ができる。この為、運転時の軸受トルクを小さく抑える事ができ、摩擦による発熱も少なく抑える事ができる。
又、請求項6に記載した様に、上記各柱部の円周方向両側面のうち、案内周面(外輪案内構造の場合には上記外輪の内周面、内輪案内構造の場合には上記内輪の外周面)側に近い部分に、上記各転動体の転動面との係合に基づいて上記保持器の径方向位置を規制する案内面を設ける構造にする事で、この保持器が熱膨張等した場合でも、内輪案内構造から転動体案内構造へ、又は転動体案内構造から外輪案内構造へと上記保持器の案内構造を運転時に移行する事ができる。この為、熱膨張により上記保持器の径方向の位置決めが図れなくなる事はない。
又、請求項7に記載した様に、上記各柱部の円周方向側面の一部で、径方向に関する位置が上記案内周面と反対寄り部分に係止突部を形成する事で、保持器及び各転動体を、外輪の内周面と内輪の外周面との間に組み込む以前であっても、上記各転動体がこれら各係止突部を設けた径方向側に上記各ポケットから脱落する事を防止できる。この為、転がり軸受の組立作業が容易になる。
又、請求項8に記載した様に、上記各保持器素子の円周方向端面を、軸方向中央部が突出した凸形状にすれば、これら各保持器素子を組み込む際に、これら各保持器素子の円周方向端面を円周方向に弾性変形する事ができる為、組み込み作業を容易に行なう事ができる。又、上記軸受の運転時に、隣り合う上記各保持器素子の対向する円周方向端面同士が衝突した場合にも、この様に、これら各保持器素子の円周方向端面が円周方向に弾性変形できる為、衝撃を緩和する事ができる。更に、温度上昇に基づいて前記隙間が消滅した後にも、熱膨張分の吸収を図れる。
又、請求項9に記載した様に、転動体をころにすれば、上記軸受の負荷容量を大きくする事ができる。
又、請求項10に記載した様に、上記保持器を、芳香族ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂から作れば、軽量で、自己潤滑性、低摩擦特性、耐食性、静音性等の点に優れた保持器を得る事ができる。又、この様な、合成樹脂製の保持器は、大量生産に適した射出成形等により製造する事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[実施の形態の第1例]
図1〜4は、請求項1〜5、7〜10に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の保持器付き転がり軸受の特徴は、この転がり軸受を構成する保持器の構造に工夫した点にある。この特徴部分以外の構造及び作用は、前述の図13に示した転がり軸受を含め、従来から知られている転がり軸受の場合と同様である。この為、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0019】
図1は、本例の保持器付き転がり軸受を構成している分割型保持器の構造を説明する為の模式図である。この分割型保持器20bは、図1に示す様に、それぞれが、芳香族ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂を射出成形して成る、複数の保持器素子21c、21cを、機械的に結合せず、円周方向に関して直列に組み合わせる事により、全体を円筒状若しくは円すい筒状に構成している。又、この様に組み合わせた状態で、隣り合う上記各保持器素子21c、21cの対向する円周方向端面同士の間に存在する総ての隙間の合計Hと、この保持器のピッチ円P21c の周長Lとの関係を、0<H≦0.001Lとしている。尚、図1では、上記各保持器素子21c、21c同士を隙間なく並べた状態で、最初の保持器素子21cの一端面と最後の保持器素子21cの他端面との間の隙間の長さとして、上記Hを示している。
【0020】
又、上記各保持器素子21c、21cは、図2〜3に示す様に、全体が円弧状に形成されている。又、軸方向両端部に設けられた、それぞれが円弧状である1対のリム部22b、22b同士を、複数の柱部23b、23bで結合している。又、これら両リム部22b、22bの内側面と円周方向に隣り合う各柱部23b、23bの円周方向側面とにより周囲を囲まれる部分を、各円すいころ13、13を転動自在に保持する為のポケット19b、19bとしている。又、これら各ポケット19b、19bの内面のうち、各柱部23b、23bの円周方向側面を、上記各円すいころ13、13の転動面を案内する為の案内面としている。
又、上記各ポケット19b、19b内での各円すいころ13、13の、上記分割型保持器20bの径方向に関する変位を許容する径方向隙間Aを、これら各ポケット19b、19bの内面と上記円すいころ13、13の転動面との間に設けている。
又、上記各柱部23b、23bのうち、上記分割型保持器20bの径方向内端部には案内部26、26を設けており、これら各案内部26、26の径方向内側面と、内輪12の外周面である案内周面27とを摺接若しくは近接対向させる事で、この分割型保持器20bの径方向に関する位置決めを図る、内輪案内構造としている。又、これら各案内部26、26は、円周方向に互いに対向しているこれら各案内部26、26の先端縁同士の円周方向に関する距離B1 を、軸方向位置で対応する上記各円すいころ13、13の外径Dよりも小さく(B1 <D)している。
又、上記各案内部26、26の上記分割型保持器20bの軸方向中央部には、潤滑剤を保持又は供給する切り欠き部28、28を形成している。
又、上記各柱部23b、23bの円周方向側面の外径寄り部分の、軸方向両端部分に、それぞれ係止突部29、29を形成している。又、上記各ポケット19b、19b内で互いに対向している、これら各係止突部29、29の先端縁同士の円周方向に関する距離C1 を、軸方向位置で対応する各円すいころ13、13の外径Dよりも小さく(C1 <D)している。
又、上記図1〜3に示している各保持器素子21c、21cは、これら各保持器素子21c、21cの円周方向端面の形状を平坦面としている。これに対して、図4の模式図に示す様に、これら各保持器素子21c、21cの円周方向端部に位置する柱部23bを、ポケット19bと反対側に凸に湾曲させる事で、上記各保持器素子21c、21cの円周方向端面の形状を、軸方向中央部が突出した凸形状としても良い。
【0021】
上述の様に本例の保持器付き転がり軸受は、上記分割型保持器20bを構成する、隣り合う上記各保持器素子21c、21c同士を機械的に結合せず、これら各保持器素子21c、21cの対向する円周方向端面同士の間の総ての隙間の合計Hを規制している。従って、上記保持器付転がり軸受の運転時に、この転がり軸受内部の温度が上昇せず、上記各保持器素子21c、21cの円周方向への熱膨張量が小さい場合でも、円周方向に大きな隙間が存在しないので、これら各保持器素子21c、21cの円周方向への変位量を小さく抑える事ができる。この為、隣り合うこれら各保持器素子21c、21cの対向する円周方向端面同士が激しく衝突する事を防止できる。
又、上記転がり軸受の運転時にこの軸受内部の温度が上昇して、上記各保持器素子21c、21cが熱膨張した場合、これら各保持器素子21c、21cの円周方向両端面は、上記隙間Hを設けている分だけ、円周方向へ拡がる方向に熱膨張する事ができる。この為、円周方向に隣り合う上記各保持器素子同士が機械的に結合されている場合に比べて、上記各保持器素子21c、21cに生じる内部応力を小さくできる。そして、上記各ポケット19b、19bの案内面等の変形量を小さく抑えられる。この為、これら各ポケット19b、19bの案内面が、保持している前記各円すいころ13、13を拘束してしまう事で発生する、異音や、トルクの上昇を防止して、上記各保持器素子21c、21cの耐久性、延いてはこれら各保持器素子21c、21cを組み込んだ軸受の耐久性の向上を図る事ができる。
【0022】
又、上記各ポケット19b、19bの内面と上記各円すいころ13、13の転動面との間に、これら各ポケット19b、19b内でのこれら各円すいころ13、13の、上記分割型保持器20bの径方向に関する変位を許容する前記径方向隙間Aを設けているので、軸受内部の温度が上昇しこの分割型保持器20bが径方向外方に熱膨張した場合でも、上記各ポケット19b、19bの内面が上記円すいころ13、13を拘束してしまう様な事を防止できる。
又、上記分割型保持器20bの各案内部26、26の径方向内側面と、上記案内周面27とを摺接若しくは近接対向させて、この分割型保持器20bの径方向に関する位置決めを図る内輪案内構造にしているので、上記軸受の運転時にこの分割型保持器20bが傾斜する様な事を防止できる。この為、上記各ポケット19b、19bの内周縁と上記各円すいころ13、13の転動面とが強く摩擦し合う事がなく、回転抵抗が大きくなる事もない。又、転がり軸受内部の温度が上昇した場合に、上記各保持器素子21c、21cが径方向外方に熱膨張する事を妨げない。この為、上記各保持器素子21c、21cに過大な内部応力が発生する事を防止できる。
又、上記案内周面27と摺接若しくは近接対向する前記各案内部26、26の一部に、潤滑剤を保持又は供給する切り欠き部28、28を形成している為、軸受内部の潤滑性を向上して、この軸受内部の温度が上昇する事を防止できる。又、上記各切り欠き部28、28を設けた分、上記各案内部26、26の径方向内側面と上記案内周面27との接触面積を少なくする事ができる。この為、運転時の軸受トルクを小さく抑える事ができ、摩擦による発熱も少なくする事ができる。又、上記各案内部26、26は、円周方向に互いに対向しているこれら各案内部の先端縁同士の円周方向に関する距離B1 を、軸方向位置で対応する上記各円すいころ13、13の直径Dよりも小さくしている為、これら各円すいころ13、13を上記各ポケット19b、19b内に組み付けた後、内輪12の周囲に組み付ける以前の状態でも、上記各円すいころ13、13が上記各ポケット19b、19bから、径方向内方に脱落する事を防止できる。
又、前記各柱部23b、23bの円周方向側面の一部で、径方向に関する位置が上記案内周面27と反対寄り部分の軸方向両端部に形成した前記各係止突部29、29の先端縁同士の円周方向に関する距離C1 を、軸方向位置で対応する各円すいころ13、13の外径Dよりも小さく(C1 <D)している為、これら各円すいころを上記各ポケット19b、19b内に組み付けた後、外輪11の内径側に組み付ける以前の状態でも、上記各円すいころ13、13が上記各ポケット19b、19bから、径方向外方に脱落する事を防止できる。これらにより、保持器付転がり軸受の組立作業の容易化を図れる。
又、上記図4に示す様に、上記各保持器素子21cの円周方向端面の形状を軸方向中央部が突出した凸形状にする事で、これら各保持器素子21cを組み込む際に、これら各保持器素子21cの円周方向端面の突出部を円周方向に弾性変形する事で、組み込み作業を容易に行なう事ができる。又、上記転がり軸受の運転時に、隣り合う上記各保持器素子21cの対向する円周方向端面同士が衝突した場合にも、この様に、これら各保持器素子21cの円周方向端面の突出部を円周方向に弾性変形できる為、衝撃を緩和する事ができる。更に、温度上昇時に前記隙間が消滅した後の状態でも、熱膨張分を吸収して、上記各ポケット19b、19bが歪む事を防止できる。
又、上記各保持器素子21c、21cは、芳香族ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドの何れかの合成樹脂を射出成形して成る為、軽量で、自己潤滑性、低摩擦特性、耐食性、静音性等の点に優れた保持器を得る事ができる。又、この様に、射出成形で形成できる為、大量生産に適している。
【0023】
尚、前期各切り欠き部28、28を形成する位置は、本例の様に前記各案内部26、26の軸方向中央部に限らない。又、本例の様に上記各案内部26、26にそれぞれ1箇所だけでなく、例えば軸方向両端部等の複数個所に形成しても良い。
又、上記各係止突部29、29は、本例の様に、上記各柱部23b、23bの外径寄り部分の、軸方向両端部にそれぞれ形成する構造に限らず、軸方向に連続した形状の係止突部にしても良い。
又、本例は転動体として前記各円すいころ13、13を使用しているが、円筒ころや、ニードル等を使用したころ軸受に対して適応しても同様の効果を得る事ができる。
【0024】
[実施の形態の第2例]
図5〜6は、請求項1〜10に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の保持器付き転がり軸受の分割型保持器を構成している各保持器素子21dは、各柱部23c、23cの円周方向両側面のうち、内輪12の外周面である案内周面27に近い部分に、各円すいころ13、13の転動面との係合に基づいて上記分割型保持器の径方向位置を規制する、案内面30、30を設けている。
【0025】
この様な本例の保持器付き転がり軸受によれば、上記分割型保持器が、熱膨張や遠心力等により、内輪案内構造が成立しない状態(各案内部26、26の径方向内側面と上記案内周面27との距離が大きくなり、摺接若しくは近接対向できない状態)になった場合に、上記各案内面30、30が上記各円すいころ13、13の転動面と係合する事により、上記分割型保持器の径方向外側への変位を規制できる。上記分割型保持器の径方向内側への変位は、上記各保持器素子21d同士が円周方向に突っ張り合う事で規制する。この様にして、運転時に内輪案内構造から転動体案内構造へ移行する事ができる。
【0026】
又、本例では内輪案内構造を採用しているが、上記各柱部23c、23cの円周方向側面の外径寄り部分に形成した各係止突部29、29と、上記円すいころ13、13の転動面との径方向隙間L1 (図示せず。)の大きさと、上記各案内部26、26の径方向内側面と上記案内周面27との間の距離の大きさL2 (図示せず。)との関係を、L1 <L2 とすれば、常に上記分割型保持器の径方向の変位が上記各円すいころ13、13に拠り規制される、転動体案内構造にする事ができる。
その他の部分の構成及び作用に就いては、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0027】
[実施の形態の第3例]
図7〜8は、請求項1〜5、7〜10に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の保持器付き転がり軸受の分割型保持器を構成している保持器素子21eは、各柱部23d、23dのうち、この保分割型保持器の径方向に関して外端部に、案内部26a、26aを設けている。そして、これら案内部26a、26aの径方向外側面と、外輪11の内周面である案内周面27aとを摺接若しくは近接対向させる事で、上記分割型保持器の径方向に関する位置決めを図る、外輪案内構造としている。又、これら各案内部26a、26aは、円周方向に互いに対向しているこれら各案内部26a、26aの先端縁同士の円周方向に関する距離B2 を、軸方向位置で対応する各円すいころの外径Dよりも小さく(B2 <D)している。
又、これら各案内部26a、26aの、上記分割型保持器の軸方向中央部には、潤滑剤を保持又は供給する切り欠き部28a、28aを形成している。
又、上記各柱部23d、23dの円周方向側面の径方向内寄り部分の軸方向両端部分に、それぞれ係止突部29a、29aを形成している。又、各ポケット19c、19c内で互いに対向しているこれら各係止突部29a、29aの先端縁同士の円周方向に関する距離C2 を、軸方向位置で対応する各円すいころ13、13の外径Dよりも小さく(C2 <D)している。
【0028】
この様な、本例の保持器付き転がり軸受は、上記分割型保持器の各案内部26a、26aの径方向外側面と、上記案内周面27aとを摺接若しくは近接対向させて、この分割型保持器の径方向に関する位置決めを図る外輪案内構造にしているので、上記軸受の運転時に回転速度が高速になった場合でも、上記分割型保持器が遠心力等の力により振れ回り運動等を起こしたり、傾斜したりする様な事を効果的に防止できる。この為、上記各ポケット19c、19cの内周縁と上記各円すいころ13、13の転動面とが強く摩擦し合う事がなく、回転抵抗が大きくなる事もない。
又、上記各案内部26a、26aの、円周方向に互いに対向しているこれら各案内部26a、26aの先端縁同士の円周方向に関する距離B2 を、軸方向位置で対応する上記各円すいころ13、13の直径Dよりも小さく(B2 <D)している為、組立途中で、上記各円すいころ13、13が径方向外方に、上記各ポケット19c、19cから脱落する事を防止できる。
又、前記各柱部23d、23dの円周方向側面の一部で、径方向に関する位置が上記案内周面27aと反対寄り部分の軸方向両端部に形成した前記各係止突部29a、29aの円周方向に関する距離C2 を、軸方向位置で対応する各円すいころ13、13の外径Dよりも小さく(C2 <D)している為、組立途中で、上記各円すいころ13、13が径方向内方に、上記各ポケット19c、19cから脱落する事を防止できる。本例の構造の場合には、前述の図4に示した凸形状の柱部構造を採用する事により、温度上昇時に上記各案内部26a、26aの径方向外側面と上記案内周面27aとの摺接部の面圧上昇を抑えられる。
その他の部分の構成及び作用に就いては、上述した実施の形態の第1例とほぼ同様であるから、重複する説明は省略する。
【0029】
[実施の形態の第4例]
図9〜10は、請求項1〜10に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の保持 器付き転がり軸受の分割型保持器を構成している保持器素子21fは、上記各柱部23e、23eの円周方向両側面のうち、外輪11の内周面である案内周面27aに近い部分に、各円すいころ13、13の転動面との係合に基づいて上記分割型保持器の径方向位置を規制する、案内面30a、30aを設けている。そして、上記転がり軸受は、比較的低温、且つ低速での運転時には、これら各案内面30a、30aと上記各円すいころ13、13の転動面との係合に基づいて上記分割型保持器の径方向に関する、位置決めを図る転動体案内構造により運動する。この際、上記案内周面27aと上記保持器素子21fの各案内部26a、26aの径方向外側面とは、当接及び近接対向する事はなく、僅かな隙間E(図10)を介して対向する。
【0030】
この様な、本例の保持器付き転がり軸受は、運転時に内部の温度が上昇したり、回転速度上昇に伴って上記各保持器素子21fに作用する遠心力が大きくなると、この保持器素子21fが熱膨張して径方向外方に変位すると、各案内部26a、26aの径方向外側面と上記案内周面27aとが摺接又は近接対向する。即ち、転動体案内構造から外輪案内構造へと移行する。
この様に、運転時に転動体案内構造から外輪案内構造へと移行する事で、上記各案内面30a、30aと上記各円すいころ13、13の転動面との係合が外れた場合にも、上記分割型保持器が傾斜したり、遠心力により振れ回り運動したりする事を防止できる。
その他の部分の構成及び作用に就いては、上述した実施の形態の第3例とほぼ同様であるから、重複する説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、各保持器素子を円周方向に並べた状態での円周方向隙間を説明する為の、保持器の模式図。
【図2】同じく、保持器素子の斜視図。
【図3】同じく、外輪と内輪と円すいころと保持器とを組み合わせた状態での、図2のイ−イ断面図に相当する図。
【図4】同じく、保持器素子の端部の構造の別例を説明する為の模式図。
【図5】本発明の実施の形態の第2例を示す、保持器素子の斜視図。
【図6】同じく、外輪と内輪と円すいころと保持器とを組み合わせた状態での、図5のロ−ロ断面図に相当する図。
【図7】本発明の実施の形態の第3例を示す、保持器素子の斜視図。
【図8】同じく、外輪と内輪と円すいころと保持器とを組み合わせた状態での、図7のハ−ハ断面図。
【図9】本発明の実施の形態の第4例を示す、保持器素子の斜視図。
【図10】同じく、外輪と内輪と円すいころと保持器とを組み合わせた状態での、図9のニ−ニ断面図。
【図11】本発明の対象となる円すいころ軸受を組み込む風力発電装置の1例を示す図。
【図12】同じく風力発電装置のハウジング内部を示す部分切断斜視図。
【図13】従来構造の円すいころ軸受の断面図。
【図14】分割型保持器の構造を説明する為の模式図。
【図15】従来構造の分割型保持器の1例での円周方向隙間を説明する為の模式図。
【図16】従来構造の1例を示す、保持器素子の斜視図。
【図17】同じく、他の構造の保持器素子の特徴部分を説明する為の図で、保持器素子の円周方向両端部の斜視図。
【図18】同じく、隣り合う保持器素子の円周方向端面同士を結合した状態での、これら各保持器素子の円周方向両端部の斜視図。
【符号の説明】
【0032】
1 風車
2 ブレード
3 ロータ
4 ハウジング
5 タワー
6 回転軸
7 転がり軸受
8 増速機
9 発電機
10、10a 円すいころ軸受
11 外輪
12 内輪
13 円すいころ
14、14a 保持器
15 外輪軌道
16 内輪軌道
17 大径側鍔部
18 小径側鍔部
19、19a、19b、19c ポケット
20、20a、20b 分割型保持器
21、21a、21b、21c、21d、21e、21f 保持器素子
22、22a、22b リム部
23、23a、23b、23c、23d、23e 柱部
24 接合凸部
25 接合凹部
26、26a 案内部
27、27a 案内周面
28、28a 切り欠き部
29、29a 係止突部
30、30a 案内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道を有する外輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、これら各転動体を転動自在に保持する保持器とを備え、この保持器は、それぞれが円弧状に形成された複数の保持器素子を円周方向に関して直列に組み合わせる事により、全体を円筒状若しくは円すい筒状とした分割型保持器であり、上記各保持器素子は、軸方向両端部に設けられた、それぞれが円弧状である1対のリム部同士を、複数の柱部で結合して成り、これら両リム部の内側縁と円周方向に隣り合う各柱部の円周方向側縁とにより周囲を囲まれる部分を、上記各転動体を転動自在に保持する為のポケットとした保持器付き転がり軸受に於いて、
上記各保持器素子を円周方向に直列に組み合わせて円筒状若しくは円すい筒状の保持器とした状態で、隣り合う各保持器素子の対向する円周方向端面同士の円周方向に関する隙間の合計Hと、この保持器のピッチ円の周長Lとの関係が、常温で、H≦0.001Lである事を特徴とする保持器付き転がり軸受。
【請求項2】
隣り合う各保持器素子の対向する円周方向端面同士の円周方向に関する隙間の合計Hと、保持器のピッチ円の周長Lとの関係が、常温で、0<H≦0.001Lである、請求項1に記載した保持器付き転がり軸受。
【請求項3】
各ポケット内での各転動体の、保持器の径方向に関する変位を許容する径方向隙間を、これら各ポケットの内面とこれら各転動体の転動面との間に設けている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した保持器付き転がり軸受。
【請求項4】
保持器の周面と、外輪の内周面と内輪の外周面とのうちの何れかの周面である案内周面とを近接対向させる事で、この保持器の径方向に関する位置決めを図っている、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した保持器付き転がり軸受。
【請求項5】
案内周面と近接対向する保持器の周面が、各柱部の一部に設けられた案内部であり、この案内部の一部に、潤滑剤を保持又は供給する切り欠き部を形成している、請求項4に記載した保持器付き転がり軸受。
【請求項6】
各柱部の円周方向両側面のうち、案内周面側に近い部分に、各転動体の転動面との係合に基づいて保持器の径方向位置を規制する案内面を設けている、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した保持器付き転がり軸受。
【請求項7】
各柱部の円周方向側面の一部で、径方向に関する位置が案内周面と反対寄り部分に係止突部を形成し、ポケット内で互いに対向する係止突部の先端縁同士の円周方向に関する距離を、各転動体の外径よりも小さくした、請求項4〜6のうちの何れか1項に記載した保持器付き転がり軸受。
【請求項8】
各保持器素子の円周方向端面が、軸方向中央部が突出した凸形状である、請求項1〜7のうちの何れか1項に記載した保持器付き転がり軸受。
【請求項9】
転動体がころである、請求項1〜8のうちの何れか1項に記載した保持器付き転がり軸受。
【請求項10】
保持器が、芳香族ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドの何れかの合成樹脂から成る、請求項1〜9のうちの何れか1項に記載した保持器付き転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−97525(P2009−97525A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266641(P2007−266641)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】