説明

保持器具

【課題】保持対象物の破損を防止して、保持対象物を強固に挟持して保持する保持器具を提供する。
【解決手段】所定間隔をおいて対向する所定長さの対向片22、24を有する対向片対20を備え、対向片22,24のそれぞれの対向面22a、24aには、挿入された保持対象物100によって押圧されて弾性変形する突起部26、28がそれぞれ設けられている。これにより、対向片22、24間に挿入された保持対象物100を対向片22、24で強固に挟持して保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持器具、特に、所定間隔をおいて互いに対向する所定長さの対向片を備え、これら対向片間に保持対象物が挿入されて保持対象物を挟持保持する保持器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、保持対象となる保持対象物の種類や用途に合わせて、保持対象物を最適に保持可能に選択される保持器具、例えば、保持対象物が薄い書類であればゼムクリップ、比較的厚い書類であればダブルクリップといったように、多種類の保持器具の存在が知られている。
【0003】
特許文献1には、保持対象物を差し込んで保持する保持器具であるクリップが開示されている。このクリップは、相対する第1対向片及び第2対向片を備えるとともに、第1対向片の後端と第2対向片の後端とを連結する連結部を備えたバネ部材によって断面視略コ字状に形成されている。第1対向片と第2対向片との間に保持対象物を差し込むと、連結部が弾性変形して第1対向片と第2対向片との間が拡大するとともに、バネ部材による復元力によって第1対向片の先端と第2対向片の先端とによって保持対象物を保持する。第1対向片または第2対向片のいずれかの先端側には、摩擦係数の高い材料による滑り止め部材が設けられており、保持対象物を保持した際の保持対象物の滑落を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−188697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたクリップによると、第1対向片あるいは第2対向片のいずれかの先端側には保持対象物の滑落を抑制する滑り止め部材が設けられているものの、保持対象物は、第1対向片及び第2対向片の先端同士のみで挟持されて保持されることから、保持対象物を強固に保持することができない可能性がある。そうすると、このクリップに保持された保持対象物を引っ張ると、比較的容易に保持対象物を引き抜くことが可能となってしまうこととなる。かかる事態を回避すべく、バネ部材による復元力を増大させて、クリップによる保持対象物の保持力を増強させることも考えられるが、保持対象物における第1対向片と第2対向片とによって挟持される部分に、局所的に応力が集中することとなり、かかる部分において保持対象物が破損する可能性が生じる。従って、保持対象物の保持に際して、局所的な応力集中を回避しつつ、容易に保持対象物の保持が解除されない高い保持力が要求されるところである。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、保持対象物の破損を防止して、保持対象物を強固に保持する保持器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明による保持器具は、所定間隔をおいて対向する所定長さの対向片を備える対向片対を有し、前記対向片間に挿入された保持対象物を該対向片にて挟持する保持器具において、前記対向片のそれぞれの対向面には、前記挿入された保持対象物によって押圧されて弾性変形する突起部がそれぞれ設けられたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、保持対象物を対向片間に挿入すると、それぞれの対向片の対向面に形成された突起部が保持対象物によって押されて弾性変形する。弾性変形した各対向面に形成された突起部がその復元力の作用によって保持対象物を押圧保持する。しかも、突起部が押圧されて弾性変形することから、突起部と保持対象物との接触面積を大きく確保することができ、その結果、保持時に保持対象物に付与される押圧力を保持対象物上で分散させて、局所的な応力集中を回避して保持対象物の破損を防止して保持対象物を強固に保持することができる。
【0009】
請求項2に記載の保持器具は、請求項1に記載の保持器具において、前記突起部の形成位置は、前記対向片相互間で前記保持対象物の挿入方向に位置ずれしていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、それぞれの対向片対の対向面に形成された突起部が、相互に保持対象物の挿入方向で位置ずれして形成されていることから、これら突起部による保持対象物の保持位置が、保持対象物の挿入方向においてそれぞれ異なることとなる。従って、対向片対は、持対象物にそれぞれの突起部を異なる位置で互いに食い込ませた状態で保持し、保持対象物が弾性変形するものであれば、その挿入方向の断面形状がジグザグ状に弾性変形されて保持対象物の弾性変形量が増大される。
【0011】
請求項3に記載の保持器具は、請求項1または2に記載の保持器具において、前記突起部は、前記保持対象物を挟持していない常態時に、前記挿入方向の前方側に先端側が傾斜した構成を有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、突起部は、保持対象物の挿入方向の前方側に傾斜して形成されていることから、保持対象物の挿入を容易に行うことができる。更に、保持対象物に挿入方向と反対方向の引張力が作用すると、突起部の弾性変形した方向(挿入方向)と逆の方向、すなわち突起部が起立する方向に対する力が作用することから、それぞれの対向片の対向面に形成された突起部と保持対象物との間に摩擦力が生じる。その結果、突起部は保持対象物に対して垂直に押圧力を付与し、突起部と保持対象物との間の摩擦力も増加することから、保持対象物に引張力が作用しても保持状態が容易に解除されることがない。
【0013】
請求項4に記載の保持器具は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持器具において、前記突起部は、前記各対向片にそれぞれ複数設けられ、前記突起部の形成位置は、前記対向片相互で、前記挿入方向に交互に位置するように設定されたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、突起部が各対向片に複数設けられていることから、保持時に保持対象物に付与される押圧力を保持対象物の広い範囲に亘って分散させることができる。しかも、突起部が挿入方向に交互に位置するように形成されていることから、押圧力を保持対象物上で均等に分散することができる。
【0015】
請求項5に記載の保持器具は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の保持器具において、前記対向片対が複数設けられ、それぞれ前記保持対象物の挿入動作の可能な状態を維持しつつ一端側で連結されたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、保持器具が、保持対象物の挿入が可能な状態で連結された複数の対向片対を有することから、複数の保持対象物を1つの保持器具で同時に保持することができる。従って、保持器具を、一の保持対象物と他の保持対象物とを連結する連結部材として簡易に用いることができる。例えば、複数の平板状の板材が保持対象物である場合、これらの板材を複数の対向片対にそれぞれ挟持保持させて、この平板上の板材を用いて箱状体を形成することもできる。
【0017】
請求項6に記載の保持器具は、請求項5に記載の保持器具において、前記対向片対が2個設けられ、それぞれ前記保持対象物の挿入方向が180°対向して連結されたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、2個の対向片対が、180°相対する方向から2つの保持対象物を1つの保持器具で容易に保持することから、保持器具を、一の保持対象物と他の保持対象物とを同一方向で連結する連結部材または中継部材として簡易に用いることができる。例えば、小売店等において商品の値札等を保持する場合において、一方の対向片対で値札等を保持し、他方の対向片対で陳列棚の側部等を保持することに用いることができる。
【0019】
請求項7に記載の保持器具は、請求項5に記載の保持器具において、前記対向片対が2個設けられ、該2個の対向片対は、各対向片対のなす角が変更可能に連結されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、対向片対が2個連結して形成され、これら各対向片対は、そのなす角が変更可能に連結されていることから、2つの保持対象物を同時に保持することができ、かつ保持したうえで各対向片対のなす角を変更することができる。従って、保持器具を、一の保持対象物と他の保持対象物とを連結する連結部材として簡潔に用いるとともに、保持対象物を相対的に動かすことができる。例えば、複数の平板状の板材を保持対象物として箱状体を形成する場合に、2枚の板材を相対的に動かしながら箱状体を組み立てることができるので、組立作業性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、保持器具は、それぞれの対向片対の対向面に形成された突起部が弾性変形して保持対象物を押圧保持する対向対片を有することから、保持対象物を強固に保持することができる。しかも、保持対象物の保持の際に、保持対象物に局所的な応力が作用することを回避することから、保持対象物の破損を防止することができる。かかる対向片対を複数形成した保持器具を構成すれば、保持器具を介して複数の保持対象物を結合することができ、一の保持対象物と他の保持対象物とを高強度で結合する連結部材としての保持器具を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る保持器具の概略を説明する断面図である。
【図2】同じく、第1実施の形態に係る保持器具の概略を説明する斜視図である。
【図3】図1のC部拡大図である。
【図4】第1実施の形態に係る保持器具によって、保持対象物を保持する状態を説明する図である。
【図5】同じく、第1実施の形態に係る保持器具によって、保持対象物を保持する状態を説明する図である。
【図6】第1実施の形態に係る保持器具から保持対象物の保持を解除する場合を説明する図である。
【図7】本発明の第2実施の形態に係る保持器具の概略を説明する斜視図である。
【図8】同じく、第2実施の形態に係る保持器具の概略を説明する斜視図である。
【図9】本発明の第1実施の形態及び第2実施の形態に係る保持器具を適用した例を説明する図である。
【図10】図9のG部を拡大した分解図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る保持器具の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施の形態)
次に、本発明の第1実施の形態について、図1〜図6に基づいて説明する。なお、本実施の形態において、保持対象物が、平板状で弾性変形するプラスチックダンボールである場合を例として説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態に係る保持器具10の概略を説明する断面図である。図示のように、保持器具10は、対向片対20を備える。この対向片対20は、互いに対向する第1対向片22及び第2対向片24を備え、第1対向片22及び第2対向片24との間に、矢線Aで示す挿入方向に沿ってプラスチックダンボール100が挿入されて、対向片対20がこのプラスチックダンボール100を挟持して保持する。
【0025】
第1対向片22における第2対向片24と対向する面である第1対向面部22a、及び第2対向片24における第1対向片22と対向する面である第2対向面部24aには、第1対向片22と第2対向片24との間にプラスチックダンボール100が挿入されると、プラスチックダンボール100によって押圧されて弾性変形する第1突起部26及び第2突起部28がそれぞれ形成されている。特に、本実施の形態では、第1突起部26及び第2突起部28は、プラスチックダンボール100の挿入方向Aにおいて位置ずれして複数形成されている。
【0026】
かかる構成を有する対向片対20を備える保持器具10は、本実施の形態では、2個の対向片対20を備えて構成されている。すなわち、2個の対向片対20は、挿入方向Aに沿ってプラスチックダンボール100を挿入することが可能となるように、挿入方向Aの前方側の一端で連結され、それぞれの対向片対20が互いに交差して断面視略L字状に形成されている。
【0027】
次に、本実施の形態に係る保持器具10の各部の具体的構成について説明する。図2は、保持器具10の概略を説明する斜視図である。図示のように、第1対向片22は、挿入方向Aに展伸するとともに挿入方向Aと直交する矢線Bで示す方向に展伸する板状であって、屈曲部22bを介して屈曲して連続する断面L字状に形成される。
【0028】
一方、第2対向片24は、第1対向片22と第2対向片24との間で直交方向Bに延在する中継板30を介して第1対向片22と対向し、挿入方向Aに展伸するとともに挿入方向Aと直交する直交方向Bに展伸する板状に形成され、屈曲部24bを介して屈曲して連続する断面L字状に形成される。
【0029】
第1対向片22の第1対向面部22aには、第2対向面部24a側に突出する第1突起部26が形成され、第2対向片24の第2対向面部24aには、第1対向面部22a側に突出する第2突起部28が形成されている。この第1突起部26及び第2突起部28を、図2及び図1のC部を拡大した図3に基づいて説明する。
【0030】
図示のように、第1突起部26は、第1対向面部22aと連続する基端26a及び基端26aから離間して第2対向面部24a側に突出する先端26bを備え、先端26bが基端26aに対して挿入方向A前方側に配置されるように傾斜して形成される。この第1突起部26は、本実施の形態では、第1対向片22における挿入方向Aで所定間隔をおいて3本形成されており、3本それぞれが、第1対向片22の矢線B方向における展伸方向に沿って延在して形成されている。
【0031】
第2突起部28は、第2対向面部24aと連続する基端28a及び基端28aから離間して第1対向面部22a側に突出する先端28bを備え、先端28bが基端28aに対して挿入方向A前方側に配置されるように傾斜して形成される。この第2突起部28は、本実施の形態では、第2対向片24の挿入方向Aにおいて所定間隔をおいて第1突起部26と交互に2本形成されており、2本それぞれが、第2対向片24の矢線B方向における展伸方向に沿って延在して形成されている。
【0032】
これら第1突起部26と第2突起部28とにおける、矢線hで示す対向片対20の高さ方向の間隔は、プラスチックダンボール100の板圧に対して小さく形成される。本実施の形態では、第1突起部26及び第2突起部28は、それぞれの先端26b及び28bが挿入方向Aに伸張する仮想中心線Lにそれぞれ接しており、高さ方向hにおけるクリアランスが略ゼロとなるように構成されている。
【0033】
上記構成を有する保持器具10は、加熱溶融した熱可塑性プラスチック樹脂材料または熱硬化性プラスチック樹脂材料を用いた押出射出成形工法によって、容易にかつ大量に生産することが可能である。
【0034】
次に、本実施の形態に係る保持器具10によるプラスチックダンボール100の保持について、図4及び図5を用いて説明する。
【0035】
図4(a)で示すように、挿入方向Aに沿って、プラスチックダンボール100を保持部20の第1対向片22と第2対向片24との間に挿入する。更に挿入方向Aに沿って挿入すると、図4(b)で示すように、プラスチックダンボール100の先端縁100aが、挿入方向A後方側の第1突起部26及び第2突起部28に当接して押圧する。これにより、第1突起部26及び第2突起部28は、挿入方向A前方側に弾性変形する。弾性変形した挿入方向A後方側の第1突起部26及び第2突起部28は、その復元力によってプラスチックダンボール100を押圧する。このとき、第1突起部26及び第2突起部28は、挿入方向Aに沿って傾斜して形成されていることから、プラスチックダンボール100のスムーズな挿入が実現される。
【0036】
プラスチックダンボール100を更に挿入方向A前方側に沿って挿入すると、図4(c)及び(d)で示すように、プラスチックダンボール100の先端縁100aが、挿入方向A前方側の第1突起部26及び第2突起部28に当接して押圧し、第1突起部26及び第2突起部28が挿入方向A前方側に弾性変形する。弾性変形した挿入方向A前方側の第1突起部26及び第2突起部28は、その復元力によってプラスチックダンボール100を押圧する。このとき、プラスチックダンボール100の挿入に基づくプラスチック樹脂製の対向片対20の弾発力によって、第1対向片22及び第2対向片24が、第1突起部26及び第2突起部28を介してプラスチックダンボール100を押圧する。これにより、プラスチックダンボール100は、対向片対20によって強固に押圧保持される。
【0037】
このとき、上記のように、第1突起部26の先端26bと第2突起部28の先端28bとのクリアランスは略ゼロなので、第1突起部26も第2突起部28も共に同程度の変形量で弾性変形することから、第1突起部26による押圧力も第2突起部28による押圧力も同程度であり、プラスチックダンボール100の安定した保持が実現される。
【0038】
第1突起部26及び第2突起部28はそれぞれ、矢線B方向における第1対向片22の展伸方向及び矢線B方向における第2対向片24の展伸方向に沿って延在しており、しかも本実施の形態では第1突起部26及び第2突起部28を合わせて5本備えることから、対向片対20とプラスチックダンボール100との接触面積を大きく確保することができ、プラスチックダンボール100に付与される押圧力をプラスチックダンボール100上の広い範囲で分散させて、プラスチックダンボール100への局所的な応力集中を回避することができる。
【0039】
第1突起部26と第2突起部28とはその突出位置が挿入方向Aにおいてそれぞれ交互に位置ずれしていることから、対向片対20がプラスチックダンボール100を保持した際には、本実施の形態に係る保持器具10の作用を説明するためにプラスチックダンボール100の弾性変形を模式的に表した図5で示すように、プラスチックダンボール100の挿入方向Aにおける断面形状はジグザグ状に弾性変形している。
【0040】
すなわち、第1対向片22と第2対向片24との間に、プラスチックダンボール100を挿入方向Aに沿って挿入して矢線Pで示す方向の荷重が生じると、第1突起部26及び第2突起部28とプラスチックダンボール100との間に生じる摩擦力によって、第1突起部26と第2突起部28が矢線Qで示す方向に弾性変形する。そうすると、第1突起部26及び第2突起部28に復元力が作用して、第1突起部26及び第2突起部28がプラスチックダンボール100に矢線Rで示す垂直方向の荷重を付与する。このとき、第1突起部26と第2突起部28とはその突出位置が挿入方向Aにおいてそれぞれ交互に変位していることから、第1突起部26及び第2突起部28によるプラスチックダンボール100における挿入方向Aにおける保持位置がそれぞれ異なることとなる。
【0041】
これによって、プラスチックダンボール100の挿入方向Aにおける断面形状がジグザグ状に弾性変形して、プラスチックダンボール100の弾性変形量が増大する。このとき、プラスチックダンボール100を挿入方向Aと反対方向に引っ張ると、矢線Q方向に弾性変形している第1突起部26及び第2突起部28とプラスチックダンボール100との間に生じる摩擦力によって、矢線Q方向と逆方向の矢線Q´で示す方向である起立方向に対する力が作用する。そうすると、第1突起部26及び第2突起部28がプラスチックダンボール100に矢線R´で示す垂直方向の荷重を付与して、プラスチックダンボール100を押圧保持する。これにより、容易にプラスチックダンボール100の保持が解除されることはなく、保持器具10によってプラスチックダンボール100を強固に保持することができる。
【0042】
次に、本実施の形態に係る保持器具10からプラスチックダンボール100の保持を解除する場合について、図6を用いて説明する。
【0043】
図6は、本実施の形態に係る保持器具10からプラスチックダンボール100を解除する場合の概略を説明する図であり、(a)は保持器具10によってプラスチックダンボール100が保持されている状態を説明する図、(b)は、プラスチックダンボール100に発生する分散荷重を説明する図である。
【0044】
図6(a)で示すように、保持器具10にはプラスチックダンボール100が保持されており、プラスチックダンボール100の挿入方向Aと直交する直交方向Bにおける第1側端100b側に、矢線F1で示す引張荷重を付与する。これにより、図6(b)で示すように、プラスチックダンボール100に、引張荷重F1が分散した分散荷重F2が発生する。この分散荷重F2は、プラスチックダンボール100における直交方向Bにおける第1側端100b側から第2側端100c側に移行するに従って漸次減少する。
【0045】
引張荷重F1の付与によって、プラスチックダンボール100に矢線Tで示す回転モーメントが発生し、分散荷重F2の大きい第1側端100b側の部分のプラスチックダンボール100と第1突起部26及び第2突起部28との接触面積が次第に減少して、摩擦抵抗が減少する。更に引張荷重F1を付与することによって、第1側端100b側から第2側端100c側に向かってプラスチックダンボール100と第1突起部26及び第2突起部28との接触面積が減少して、摩擦抵抗が更に減少する。これにより、保持器具10によるプラスチックダンボール100の保持が解除される。
【0046】
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態について、図7及び図8を用いて説明する。なお、図7及び図8において、図1〜図6と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
図7は、本実施の形態に係る保持器具40の概略を説明する斜視図である。図示のように、保持器具40は、本実施の形態では2個の対向片対50を備える。この2基の対向片対50は、それぞれの対向片対50のなす角が変更可能となるように、挿入方向Aの前方側の一端で連結して形成されている。すなわち、各対向片対50が相対的に動くように構成されている。
【0048】
次に、対向片対50の各部の具体的構成について説明する。対向片対50は、互いに対向する第1対向片52及び第2対向片54を備える。第1対向片52は、挿入方向Aに展伸するとともに挿入方向Aと直交する直交方向Bに長尺で展伸する板状であって、第1対向片52の長尺方向に亘って肉薄状に形成された溝部56を有して形成される。この第1対向片52は、溝部56において、矢線E1で示す屈曲方向に屈曲する。
【0049】
一方、第2対向片54は、第1対向片52と第2対向片54との間で直交方向Bに延在する中継板60を介して第1対向片52と対向し、挿入方向Aに展伸するとともに直交方向Bに長尺で展伸する板状に形成される。この第2対向片54は、第1対向片52が溝部56において屈曲方向E1に屈曲すると分割した状態となるように形成され、第2対向片54における挿入方向Aの前方側のそれぞれの端縁54bは、分割によって互いに離間するように構成されている。
【0050】
これら第1対向片52の第1対向面部52aには、第2対向片54側に突出する第1突起部26が形成されており、第2対向片54の第2対向面部54aには、第1対向片52側に突出する第2突起部28が形成されている。
【0051】
上記構成を有する保持器具40は、加熱溶融した熱可塑性プラスチック樹脂材料または熱硬化性プラスチック樹脂材料を用いた押出射出成形工法によって、容易にかつ大量に生産することが可能である。
【0052】
図8は、本実施の形態に係る保持器具40の断面図である。図8(a)で示すように、2基の対向片対50をそれぞれ屈曲方向E1に相対的に動かすと、第1対向片52が溝部56において屈曲し、第2対向片54が分割してそれぞれの端縁54bが互いに離間する。一方、2個の対向片対50をそれぞれ展開方向E2に相対的に動かすと、図8(b)で示すように、第1対向片52は、溝部56において伸張して断面視略直線状となる。第2対向片54は、それぞれの端縁54bが当接して断面視略直線状となる。
【0053】
(適用例)
次に、図9及び図10に基づいて、本発明に係る保持器具10及び40を用いて、物を収容する収容箱110を形成する場合を例として、本発明の適用例を説明する。
【0054】
図9は、保持器具10及び40を用いて形成した収容箱110の概略を説明する図である。図示のように、収容箱110はプラスチックダンボール製であって、本体部112、底部114、蓋部116によって構成される。そして、底部114に本体部112が載置され、本体部112の上端縁に蓋部116が載置されて略立方体状に形成される。この収容箱110は、保持器具10及び40を用いて組立が行われる。
【0055】
本体部112は4枚の本体部側壁112a〜112dによって構成される。この本体部側壁112a〜112dは、互いに隣接する各側壁112a〜112dの端縁が保持器具40によって保持されて、本体部112が形成される。底部114は、底面部114a及び底面部114aの各辺から連続して形成される底部側壁114b〜114eによって構成される。この底部側壁114b〜114eは、互いに隣接する各側壁114b〜114eの端縁が保持器具10によって保持されて、底部114が構成される。蓋部116は、天面部116a及び天面部116aの各辺から連続して形成される蓋部側壁116b〜116eによって構成される。この蓋部側壁116b〜116eは、互いに隣接する各側壁116b〜116eの端縁が保持器具10によって保持されて、蓋部116が構成される。
【0056】
次に、図10を用いて、保持器具10及び40を用いて収容箱110を組み立てる方法について説明する。
【0057】
図10は、図9のG部を拡大した分解図である。図示のように、まず、蓋部116を組み立てる場合は、矢線Hで示す蓋部116の起函方向に折り返されていない状態の蓋部側壁116bの端縁を保持器具10の一方の対向片対20に挿入する。その後、蓋部側壁116bを起函方向Hに折り返しつつ、蓋部側壁116cも起函方向Hに折り返しながら、蓋部側壁116cの端縁を保持器具10の他方の対向片対20に挿入する。これにより、蓋部側壁116bと蓋部側壁116cとが保持器具10によって保持されて連結される。蓋部側壁116cと蓋部側壁116d、及び蓋部側壁116dと蓋部側壁116e、蓋部側壁116eと蓋部側壁116bについても、同様に連結させる。これにより、蓋部116が起函される。この蓋部116と同様の組み立て方によって、底部114の起函も行う。
【0058】
本体部112を組み立てる場合は、本体部側壁112aの端縁を保持器具40の一方の対向片対50に挿入する。そして、本体部側壁112bの端縁を保持器具40の他方の対向片対50に挿入する。本体部側壁112bと本体部側壁112c、本体部側壁112cと本体部側壁112d、本体部側壁112dと本体部側壁112aについても、同様に連結させる。これにより、本体部112が組み立てられる。このとき、保持器具40を介して各本体部側壁112a〜112dを相対的に動かしながら、本体部側壁112aと本体部側壁112bとを連結することができることから、本体部112の組立作業性の向上が図られる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記各実施の形態及び適用例では、保持器具10及び40によってプラスチックダンボール100が保持される場合を説明したが、保持器具10及び40の具体的な構造に限定されることはなく、また、保持対象物がプラスチックダンボール100に限定されるものではない。例えば、第1突起部26及び第2突起部28を有する対向片対20(50)の構造を用いて、図11で示すように、対向片対20(50)における挿入方向Aの前方側の一端で、中継板80を介して2個の対向片対20(50)を連結させて、保持対象物の挿入方向Aがそれぞれの対向片対20において180°対向する保持器具70を構成してもよい。この保持器具70は、例えば、小売店等において商品の値札やPOPを保持する場合に用いることもできる。すなわち、一方の対向片対20(50)で値札等を保持し、他方の対向片対20(50)で陳列棚の側部等を保持することに用いることで、値札等を強固に保持し、値札等が陳列棚から脱落することを防止することができる。
【0060】
上記各実施の形態及び適用例では、1つの第1突起部26と1つの第2突起部28とが挿入方向Aにおいて交互に変位して突出形成されている場合を説明したが、複数の第1突起部26が挿入方向Aにおいて順次配列され、次に複数の第2突起部28が挿入方向Aにおいて順次配列されるように構成して、複数の第1突起部26と複数の第2突起部28とを挿入方向Aにおいて交互に変位させて突出形成してもよい。かかる構成によっても、保持対象物の挿入方向の断面形状がジグザグ状に弾性変形することから、保持対象物を強固に保持することができる。
【符号の説明】
【0061】
10、40、70 保持器具
20、50 対向片対
22、52 第1対向片(対向片)
22a、52a 第1対向面部(対向面)
24、54 第2対向片(対向片)
24a、54a 第2対向面部(対向面)
26 第1突起部(突起部)
28 第2突起部(突起部)
56 溝部
100 プラスチックダンボール(保持対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔をおいて対向する所定長さの対向片を備える対向片対を有し、前記対向片間に挿入された保持対象物を該対向片にて挟持する保持器具において、
前記対向片のそれぞれの対向面には、前記挿入された保持対象物によって押圧されて弾性変形する突起部がそれぞれ設けられたことを特徴とする保持器具。
【請求項2】
前記突起部の形成位置は、
前記対向片相互間で前記保持対象物の挿入方向に位置ずれしていることを特徴とする請求項1に記載の保持器具。
【請求項3】
前記突起部は、
前記保持対象物を挟持していない常態時に、前記挿入方向の前方側に先端側が傾斜した構成を有することを特徴とする請求項1または2に記載の保持器具。
【請求項4】
前記突起部は、
前記各対向片にそれぞれ複数設けられ、
前記突起部の形成位置は、前記対向片相互で、前記挿入方向に交互に位置するように設定されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持器具。
【請求項5】
前記対向片対が複数設けられ、
それぞれ前記保持対象物の挿入動作の可能な状態を維持しつつ一端側で連結されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保持器具。
【請求項6】
前記対向片対が2個設けられ、
それぞれ前記保持対象物の挿入方向が180°対向して連結されたことを特徴とする請求項5に記載の保持器具。
【請求項7】
前記対向片対が2個設けられ、
該2個の対向片対は、
各対向片対のなす角が変更可能に連結されていることを特徴とする請求項5に記載の保持器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−126421(P2012−126421A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278878(P2010−278878)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(510287131)株式会社禄宏 (2)
【Fターム(参考)】