説明

保持装置

【課題】安定的に対象物を保持しつつ対象物を簡単に着脱することができる保持装置を提供する。
【解決手段】対象物31の保持にあたって、円錐台27の表面は対象物31を受け止める。可動部材24は傾斜姿勢で受け入れ孔18内に保持される。3点接触が実現される。その結果、対象物31は固定部材14および可動部材24の間に簡単に安定的に保持される。しかも、可動ピン24から対象物31に大きな力は作用しない。対象物31の変形や破損は回避される。加えて、対象物31の取り付けにあたって、対象物31は基準面13に沿って固定部材14に向かって変位すれば足りる。同時に、対象物31の取り外しにあたって、対象物31は垂直方向に上方に持ち上げられれば足りる。こうして保持装置11に対して対象物31は簡単に着脱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハードディスク駆動装置(HDD)の製造にあたって、ベースの収容空間内に部品が取り付けられる。取り付け作業の実施時、HDDはパレット上に配置される。パレットの表面に形成されるピンはベースの一方の側面を受け止める。ベースの他方の側面は、パレットの表面に平行な方向に変位自在に形成される押し付け部材を受け止める。押し付け部材は例えばコイルばねの弾性力に基づきピンに向かって所定の押し付け力でベースを押し付ける。こうしてHDDはパレット上に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−170674号公報
【特許文献2】特開2003−324262号公報
【特許文献3】特開平10−26656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押し付け部材の押し付け力はコイルばねの弾性力に基づき変化する。その結果、コイルばねの弾性力が小さいと、取り付け作業の実施にあたって、パレット上からベースは簡単に取り外されるものの、取り付け作業時に部品からベースに作用する外力に基づきパレットの表面に沿ってベースが移動することが想定される。その一方で、コイルばねの弾性力が大きいと、パレット上にベースは高い精度で保持されるものの、パレット上からベースは簡単に取り外されることができない。作業の効率は低下する。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、安定的に対象物を保持しつつ対象物を簡単に着脱することができる保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、保持装置の一具体例は、基準面に変位自在に対象物を受け止める保持ベースと、前記保持ベースに固定されて、前記基準面に直交する稜線または面で前記対象物の変位を受け止める固定部材と、前記保持ベースに穿たれて、前記稜線または前記面に平行な軸心の円柱空間を区画する受け入れ孔と、前記受け入れ孔内に配置されて、前記受け入れ孔の下方から突き出る円柱体および前記円柱体の上端に接続される円錐台を有する可動部材と、前記可動部材に前記軸心に沿って上方に駆動力を印加する弾性部材とを備え、前記可動部材は、前記円錐台の表面に配置されて、前記基準面内で前記対象物に接触する第1接点と、前記円錐台および前記円柱体を仕切る稜線上に配置されて、前記基準面に平行で前記基準面よりも下方に位置する仮想平面内で前記受け入れ孔の壁面に接触する第2接点と、前記円柱体の表面上に配置されて、前記円柱空間の下端で前記受け入れ孔の縁に接触する第3接点とを有する。
【発明の効果】
【0007】
以上のように開示の保持装置によれば、安定的に対象物を保持しつつ対象物を簡単に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る保持装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る保持装置の構造を概略的に示す平面図である。
【図3】保持装置に対象物を取り付ける工程を概略的に示す断面図である。
【図4】保持ベース上で基準面に対象物を押し付ける様子を概略的に示す断面図である。
【図5】保持ベース上で基準面に沿って対象物を変位させる様子を概略的に示す断面図である。
【図6】保持ベース上で固定ピンおよび可動ピンの間に対象物を挟み込む様子を概略的に示す断面図である。
【図7】保持ベース上で固定ピンおよび可動ピンの間に対象物を挟み込む様子を概略的に示す平面図である。
【図8】可動ピンと対象物との関係を示す部分拡大断面図である。
【図9】保持装置に対象物を取り付ける工程を概略的に示す断面図である。
【図10】保持ベース上で基準面に対象物を押し付ける様子を概略的に示す断面図である。
【図11】保持ベース上で固定ピンおよび可動ピンの間に対象物を挟み込む様子を概略的に示す平面図である。
【図12】本発明の第1実施形態の一変形例に係る保持装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図13】本発明の第1実施形態の一変形例に係る保持装置の構造を概略的に示す平面図である。
【図14】保持ベース上で固定ピンおよび可動ピンの間に対象物を挟み込む様子を概略的に示す断面図である。
【図15】保持ベース上で固定ピンおよび可動ピンの間に対象物を挟み込む様子を概略的に示す平面図である。
【図16】本発明の第1実施形態の他の変形例に係る保持装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図17】本発明の第2実施形態に係る保持装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係る保持装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図19】本発明の第1実施例に係る保持装置に対象物を取り付けた様子を概略的に示す平面図である。
【図20】本発明の第2実施例に係る保持装置に対象物を取り付けた様子を概略的に示す断面図である。
【図21】本発明の第3実施例に係る保持装置に対象物を取り付けた様子を概略的に示す断面図である。
【図22】本発明の第4実施例に係る保持装置に対象物を取り付けた様子を概略的に示す断面図である。
【図23】本発明の第4実施例に係る保持装置に対象物を取り付けた様子を概略的に示す平面図である。
【図24】本発明の第5実施例に係る保持装置に対象物を取り付けた様子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
図1は本発明の第1実施形態に係る保持装置11の構造を概略的に示す。この保持装置11は例えば直方体形状の保持ベース12を備える。保持ベース12は例えば金属材料から形成される。保持ベース12の表面には平坦な基準面13が規定される。図2を併せて参照し、保持ベース12には例えば円柱形状の固定部材すなわち固定ピン14が固定される。固定ピン14は基準面13から立ち上がる。固定ピン14の下端は、例えば保持ベース12に形成される円柱形状の取り付け孔15に固定される。固定ピン14の軸心は基準面13に直交する。固定ピン14には軸心回りに円筒面14aが規定される。円筒面14aは基準面13に直交する。固定ピン14は例えば金属材料から形成される。
【0011】
保持ベース12には貫通孔16が穿たれる。貫通孔16は、基準面13から基準面13の裏側の底面まで保持ベース12を貫通する。貫通孔16は固定ピン14から所定の間隔で隔てられる。貫通孔16は基準面13で開口17を規定する。貫通孔16の軸心は基準面13に直交する。貫通孔16は、上端で開口17を規定する受け入れ孔18と、受け入れ孔18の下端に接続されつつ保持ベース12の底面で開口する収容孔19とを区画する。受け入れ孔18および収容孔19はそれぞれ円柱空間を区画する。すなわち、開口17は正円形状に形成される。収容孔19の径は受け入れ孔18の径より大きく形成される。受け入れ孔18の軸心は収容孔19の軸心に一致する。
【0012】
受け入れ孔18および収容孔19の境界には環状の段差面21が規定される。段差面21は基準面13に平行に規定される。収容孔19の開口は、保持ベース12の底面に固定される受け板22で塞がれる。収容孔19には弾性部材すなわちコイルばね23が収容される。コイルばね23は貫通孔16の軸心に沿って延びる。コイルばね23の下端は受け板22に固定される。コイルばね23の上端には貫通孔16内に配置される可動部材すなわち可動ピン24の下端が受け止められる。コイルばね23の上端は可動ピン24の下端に固定される。コイルばね23は弾性力に基づき貫通孔16の軸心に沿って上方に可動ピン24に駆動力を印加する。
【0013】
可動ピン24は、受け入れ孔18内に配置される円柱形状の円柱体25を備える。円柱体25の表面は円筒面の外壁面で規定される。円柱体25の下端は受け入れ孔18の下方から収容孔19内に突き出る。円柱体25の下端には円柱体25の外壁面から遠心方向に広がる環状のフランジ26が形成される。フランジ26は収容孔19内に収容される。フランジ26の径は受け入れ孔18の径より大きく形成される。同時に、フランジ26の径は収容孔19の径より小さく形成される。その結果、フランジ26は貫通孔16の段差面21に受け止められる。フランジ26の働きでコイルばね23の駆動力にも拘わらず貫通孔16から可動ピン24の脱落は回避される。
【0014】
円柱体25の径は受け入れ孔18の径より小さく形成される。その結果、円柱体25の外壁面は受け入れ孔18の内壁面に向き合う。受け入れ孔18の内壁面は円筒面で規定される。円柱体25の外壁面は円筒面で規定されることから、円柱体25の外壁面と受け入れ孔18の内壁面との間には円柱体25の軸心回りに所定の隙間が規定される。その一方で、可動ピン24は、円柱体25の上端に接続される円錐台形状の円錐台27を備える。円錐台27は上端に向かうにつれて先細る。円錐台27の表面は円錐面で規定される。円柱体25の上端および円錐台27の下端は稜線28で仕切られる。円錐台27は開口17内に配置される。円錐台27の上端には例えば丸みが形成される。こうした可動ピン24は例えば金属材料から形成される。
【0015】
いま、保持装置11に保持の対象物を取り付ける場面を想定する。ここでは、図3に示されるように、対象物31には例えば直方体形状の物体が用いられる。対象物31は保持ベース12の上方から保持ベース12上に配置される。図4に示されるように、対象物31の平坦な底面は可動ピン24の上端に受け止められる。対象物31の底面が基準面13に押し付けられると、可動ピン24はコイルばね23の駆動力に抗して貫通孔16内に押し込まれる。フランジ26は段差面21から離れる。コイルばね23には収縮に基づき弾性力すなわち駆動力が蓄積される。コイルばね23は貫通孔16の軸心に沿って可動ピン24に対して上方に所定の駆動力を印加する。
【0016】
その後、対象物31は基準面13に押し付けられつつ固定ピン14に向かって変位する。円錐台27の表面は円錐面で規定されることから、図5に示されるように、対象物31の底面の角は円錐台27の表面に点接触する。コイルばね23の駆動力に基づき可動ピン24は受け入れ孔18から上方に突き出ていくことから、対象物31の変位に応じて対象物31の底面の角は円錐台27の表面を下っていく。円柱体25および受け入れ孔18の間の隙間に基づき円柱体25の軸心は受け入れ孔18の軸心から傾く。可動ピン24の傾斜姿勢が確立される。その結果、稜線28上で円柱体25の外壁面は受け入れ孔18の内壁面に点接触する。同時に、円柱体25の外壁面は受け入れ孔18の下縁に点接触する。対象物31の変位に応じて点接触の位置は変化していく。
【0017】
図6に示されるように、対象物31がさらに変位すると、対象物31の変位は固定ピン14に受け止められる。図7を併せて参照し、固定ピン14は円筒面14aで対象物31の側面を受け止める。円筒面14aと対象物31とは基準面13に直交する仮想平面32上で線接触する。同時に、上方に向かう可動ピン24の変位は停止する。可動ピン24は静止する。このとき、図8に示されるように、コイルばね23から作用する駆動力Eに基づき可動ピン24は、基準面13内で円錐台27の表面に配置される第1接点すなわち加圧点P1と、稜線28上に配置される第2接点すなわち支持点P2と、円柱体25の外壁面上に配置される第3接点すなわち支点P3とで3点接触する。こうした3点接触に基づき可動ピン24の静止が実現される。
【0018】
支持点P2は、基準面13に平行で基準面13よりも下方に位置する仮想平面33内に規定される。基準面13および仮想平面33の距離はできる限り小さく設定されることが望ましい。支点P3は、基準面13に平行で仮想平面33よりも下方に位置する仮想平面34内に規定される。加圧点P1、支持点P2および支点P3は同一の平面内に配置される。この平面内で加圧点P1および支点P3は円柱体25の軸心よりも固定ピン14に近い側に配置される。同様に、平面内で支持点P2は円柱体25の軸心よりも固定ピン14から遠い側に配置される。支持点P2は加圧点P1よりも仮想平面32から遠ざかる。支点P3は加圧点P1よりも仮想平面32に近づく。
【0019】
ここで、対象物31の底面の角が円錐台27の表面に点接触するためには、基準面13内で規定される対象物31の長さLが、基準面13に平行な方向に仮想平面32から円錐台27の上端までの距離D1より小さく設定されると同時に、基準面13に平行な方向に仮想平面32から円錐台27の下端までの距離D2より大きく設定されることが条件として要求される。この条件が満たされると、対象物31の底面の角は円錐台27の表面に確実に点接触する。距離D1および距離D2は対象物31の長さLに基づき適宜調整されればよい。なお、距離D1は、円錐台27で丸みと円錐面との境界の稜線までの距離で特定されればよい。
【0020】
また、コイルばね23の駆動力Eは、加圧点P1で可動ピン24から支点P3回りに対象物31に作用する押し付け力Uを生成する。同時に、対象物31から円錐台27に押し付け力Uに等しい反力Rが作用する。押し付け力Uは、基準面13内で固定ピン14に向かう分力U1と、基準面13に直交する垂直方向上向きの分力U2とに分解される。分力U1に基づき対象物31は固定ピン14および可動ピン24の間に挟み込まれる。なお、駆動力Eは、可動ピン24の重量より大きく、加圧点P1で下向きに生成される分力U2の反力(図示されず)より小さく設定される。ただし、駆動力Eはできる限り分力U2の反力に近い大きさに設定されることが望ましい。加えて、円錐台27では反力Rに対して十分な剛性が確保されることが要求される。剛性の確保にあたって、円錐台27の断面積や円錐台27の下端の外径が適宜設定されればよい。
【0021】
反力Rは、円錐台27の母線に直交しつつ円錐台27の軸心に向かう分力R1と、分力R1に直交しつつ円錐台27の母線に沿って上向きの分力R2とに分解される。ここで、可動ピン24の静止の実現にあたって、対象物31および円錐台27の表面の間に規定される摩擦係数と分力R1との積が、分力R2より常に大きく設定されることが条件として要求される。同時に、この条件を満たす角度αが設定されることが求められる。角度αは、基準面13に直交する垂直面と円錐台27の母線との交差角で特定される。ここでは、角度αは例えば0度より大きく45度以下に設定される。角度αは例えば30度程度に設定されることが望ましい。角度αの設定にあたって、円錐台27の軸心と円錐台27の母線との間で形成される角度βと、円柱体25および受け入れ孔18の間の隙間の大きさとが適宜設定される。
【0022】
次に、保持ベース12から対象物31を取り外す場面を想定する。対象物31の取り外しにあたって、対象物31は基準面13から垂直方向に上方に持ち上げられる。円錐台27は上端に向かうにつれて先細る。しかも、円錐台27から対象物31の底面の角にはそれほど大きな押し付け力Uは作用しない。その結果、垂直方向への対象物31の持ち上げに基づき対象物31および円錐台27の点接触は容易に解消される。こうして対象物31は保持装置11から簡単に取り外される。コイルばね23の駆動力に基づきフランジ26は段差面21に受け止められる。円錐台27は開口17から外側に最大限に突き出る。円柱体25の軸心は受け入れ孔18の軸心に一致する。
【0023】
以上のような保持装置11によれば、対象物31の保持にあたって、円錐台27の表面は対象物31の底面の角を受け止める。その結果、可動ピン24は傾斜姿勢で受け入れ孔18内に保持される。3点接触が実現される。その結果、対象物31は固定ピン14および可動ピン24の間に簡単に安定的に保持される。しかも、可動ピン24から対象物31に大きな押し付け力Uは作用しない。対象物31の変形や破損は回避される。加えて、対象物31の取り付けにあたって、対象物31は基準面13に沿って固定ピン14に向かって変位すれば足りる。同時に、対象物31の取り外しにあたって、対象物31は垂直方向に上方に持ち上げられれば足りる。こうして保持装置11に対して対象物31は簡単に着脱される。
【0024】
また、可動ピン24は金属材料から例えば成型に基づき形成される。高精度の加工は必要とされない。保持装置11の実現にあたって、可動ピン24が受け入れ孔18内に配置されるとともに、固定ピン14が保持ベース12に固定されれば足りる。保持装置11は簡単な構成で実現される。保持装置11は安価に組み立てられる。加えて、固定ピン14の仮想平面32からの距離D1および距離D2の間に対象物31の長さLが設定されれば、対象物31は確実に保持装置11に保持される。こうして距離D1および距離D2の間に対象物31の長さLが含まれれば足りることから、保持装置11における保持対象の長さLの寸法誤差はある程度許容される。
【0025】
図9に示されるように、対象物31の底面に例えば1対の突片すなわち支持脚35、35が形成される場合を想定する。対象物31の長さLは固定ピン14の軸心および可動ピン24の軸心の間の距離D3より大きく設定される。対象物31の取り付けにあたって、図10に示されるように、対象物31は支持脚35で基準面13に受け止められる。一方の支持脚35は取り付け孔17内に可動ピン24を押し込む。他方の支持脚35は基準面13に受け止められる。支持脚35、35同士の間に固定ピン14が配置される。その後、対象物31は基準面13に向かって押し付けられつつ基準面13に沿って変位する。対象物31の変位に応じて一方の支持脚35の内端の角は円錐台27の表面に点接触する。前述と同様に、コイルばね23の駆動力に基づき可動ピン24は上方に突き出ていく。
【0026】
図11に示されるように、他方の支持脚35の内端が固定ピン14に突き当たると、固定ピン14は円筒面14aで対象物31の変位を受け止める。可動ピン24は前述とは逆方向に傾斜姿勢を確立する。円筒面14aは仮想平面32上で他方の支持脚35に線接触する。このとき、前述と同様に、可動ピン24は、基準面13内で円錐台27の表面に配置される加圧点P1と、仮想平面32上に配置される支持点P2と、円柱体25の外壁面上に配置される支点P3とで3点接触する。この3点接触に基づき可動ピン24の静止が実現される。対象物31は固定ピン14および可動ピン24の間に保持される。加圧点P1、支持点P2および支点P3は同一の平面内に配置される。支持点P2は加圧点P1よりも仮想平面32に近づく。支点P3は加圧点P1よりも仮想平面32から遠ざかる。
【0027】
ただし、基準面13内で規定される対象物31の支持脚35の内端同士の距離D4が、基準面13に平行な方向に仮想平面32から円錐台27の外端の上端までの距離D5より大きく設定されると同時に、基準面13に平行な方向に仮想平面32から円錐台27の外端の下端までの距離D6より小さく設定されることが条件として要求される。この条件が満たされると、対象物31の支持脚35の内端の角は円錐台27の表面に確実に点接触する。その一方で、対象物31の取り外しにあたって、前述と同様に、対象物31が垂直方向に上方に持ち上げられればよい。こうした保持装置11によれば、前述と同様の作用効果が実現される。
【0028】
図12は本発明の第2実施形態に係る保持装置11aの構造を概略的に示す。この保持装置11aでは、前述の可動ピン24に代えて、可動部材に可動ブロック41が用いられる。図13を併せて参照し、受け入れ孔18は直方体空間を区画する。同様に、収容孔19は直方体空間を区画する。基準面13に平行な方向に規定される受け入れ孔18の幅は同様に規定される収容孔19の幅より小さく設定される。可動ブロック41は、受け入れ孔18内に配置される直方体形状の直方体42を備える。直方体42の下端は受け入れ孔18の下方から収容孔19に向かって突き出る。直方体42の下端には相互に平行に広がる直方体42の外壁面42a、42aから基準面13に平行に突き出るフランジ43が形成される。フランジ43は段差面21に受け止められる。
【0029】
直方体42の幅は受け入れ孔18の幅より小さく形成される。その結果、直方体42の外壁面42a、42aは、相互に平行に広がる受け入れ孔18の内壁面18a、18aにそれぞれ向き合う。内壁面18aは平面で規定される。外壁面42aと内壁面18aとの間には所定の隙間が規定される。その一方で、可動ブロック41は、直方体42の上端に接続される角柱44を備える。角柱44は上端に向かうにつれて先細る。相互に反対向きに規定される角柱44の表面44a、44aは平面で規定される。表面44aの下端は外壁面42aの上端に接続される。角柱44の上端に向かうにつれて表面44a、44a同士は相互に近づく。直方体42の上端および角柱44の下端は稜線45で仕切られる。角柱44は開口17から上方に突き出る。その他、前述の保持装置11と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0030】
こうした保持装置11aによれば、対象物31の保持にあたって対象物31は前述と同様の方法で保持ベース12上に取り付けられる。図14に示されるように、対象物31の保持にあたって、可動ブロック41は、基準面13内で角柱44の表面44aに配置される加圧点P1と、稜線45上に配置される支持点P2と、直方体42の外壁面42a上に配置される支点P3とで3点接触する。この3点接触に基づき可動ブロック41の静止が実現される。図15を併せて参照し、角柱44の表面44aは加圧点P1で対象物31に線接触する。その結果、対象物31に対する可動ブロック41の単位面積あたりの接触圧は低減される。同様に、直方体42は支持点P2および支点P3で受け入れ孔18の内壁面18aに線接触する。その他、保持装置11aによれば、前述の保持装置11と同様の作用効果が実現される。
【0031】
図16に示されるように、保持装置11では、固定ピン14は直方体形状に形成されてもよい。このとき、固定ピン14は、固定ピン14の側面に規定される稜線46で対象物31を受け止める。稜線46は基準面13に直交する。稜線46は、基準面13に直交する垂直方向に規定される。すなわち、稜線46は貫通孔16の軸心に平行に規定される。同様に、保持装置11aでは、固定ピン14は直方体形状に形成されてもよい。このとき、受け入れ孔18の内壁面18aは稜線46に平行に規定される。こうした保持装置11、11aによれば、固定ピン14は対象物31に線接触することができる。その他、前述と同様の作用効果が実現される。
【0032】
図17は本発明の第3実施形態に係る保持装置11bの構造を概略的に示す。この保持装置11bでは、保持ベース12に吸着機構51が組み込まれる。吸着機構51は、保持ベース12に形成される吸入路52を備える。吸入路52の一端は基準面13で開放される。吸入路52の一端は例えば対象物31の底面で密閉される。吸着機構51は吸入路52の他端に接続される例えば負圧ポンプ53を備える。負圧ポンプ53の働きで吸入路52には負圧が発生する。その結果、対象物31は基準面13に吸着する。こうした吸着は対象物31の保持を補強する。こうした保持装置11bは、例えば基準面13が鉛直方向に直立する場合に特に有用に用いられる。その他、前述の保持装置11、11aと均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0033】
図18は本発明の第4実施形態に係る保持装置11cの構造を概略的に示す。この保持装置11cでは、保持ベース12に磁石55が組み込まれる。ここでは、磁石55は、保持ベース12の基準面13に形成される窪み56内に配置される。磁石55には例えば永久磁石が用いられる。保持ベース12上に例えば磁性材料から形成される対象物31が配置される場合、磁石55は磁界に基づき対象物31を基準面13に吸着することができる。こうした吸着は対象物31の保持を補強する。その結果、保持装置11cは、例えば基準面13が鉛直方向に直立する場合などに特に有用に用いられる。その他、前述の保持装置11、11aと均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【実施例1】
【0034】
次に、本発明の第1実施例を説明する。第1実施例では、図19に示されるように、前述の例えば保持装置11にハードディスク駆動装置(HDD)61といった記憶装置が保持される。HDD61は箱形のベース62を備える。HDD61はベース62の底面で保持ベース12の基準面13に受け止められる。ここでは、保持ベース12は搬送用パレットを構成する。ベース62は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース62は例えばアルミニウムといったといった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。ベース62の収容空間には、記憶媒体としての磁気ディスク63やスピンドルモータ64、キャリッジ65が組み込まれる。
【0035】
保持ベース12には2つの可動ピン24が組み込まれる。一方の可動ピン24はベース62の長尺の側端を受け止める。長尺の側端に対応するベース62の側端は2つの固定ピン14、14に受け止められる。固定ピン14、14は共通の面66内でベース62の側端を受け止める。ここでは、ベース62の角に隣接して固定ピン14、14が配置される。ベース62の角同士の中間位置に可動ピン24が配置される。その一方で、他方の可動ピン24がベース62の短尺の側端を受け止める。短尺の側端に対応するベース62の側端は1つの固定ピン14に受け止められる。こうしてベース62は保持装置11に保持される。このとき、ベース62に例えばカバー(図示されず)がねじ留めされる。
【実施例2】
【0036】
次に、本発明の第2実施例を説明する。第2実施例では、図20に示されるように、前述の例えば保持装置11bに携帯電話端末67といった電子機器の試験用パレット68が保持される。試験用パレット68は例えば直方体形状に形成される。保持装置11bの吸着機構51の働きで試験用パレット68の底面は保持ベース12の基準面13に密着する。試験用パレット68上に携帯電話端末67が固定される。ここでは、保持装置11bが電子機器の圧迫試験装置の一部品を構成する。携帯電話端末67の例えばキーボード上には押し治具69の下端が押し付けられる。押し付けに基づき携帯電話端末67には圧迫荷重がかけられる。圧迫荷重の大きさは様々に変えられる。こうして筐体や液晶装置の割れといった携帯電話端末67の不具合の評価が実施される。
【実施例3】
【0037】
次に、本発明の第3実施例を説明する。第3実施例では、図21に示されるように、前述の例えば保持装置11bにプリント基板71が保持される。プリント基板71は例えば樹脂製基板から形成される。ここでは、保持装置11bが例えばLSI(大規模集積回路)チップパッケージ72の実装装置の一部品を構成する。吸着機構51の働きで軽量なプリント基板71でも確実に保持ベース12に保持される。しかも、可動ピン24からプリント基板71には大きな押し付け力は作用しないことから、プリント基板71の破損は防止される。プリント基板71の表面にはLSIチップパッケージ72が例えばフリップチップ実装される。実装にあたって、LSIチップパッケージ72は実装ヘッド73に保持される。実装ヘッド73の下降に基づきLSIチップパッケージ72はプリント基板71上に実装される。
【実施例4】
【0038】
次に、本発明の第4実施例を説明する。第4実施例では、図22に示されるように、前述の例えば保持装置11に筒体75が保持される。筒体75は例えば金属材料から形成される。図23を併せて参照し、筒体75の中心軸回りに180度の回転角で2組の固定ピン14および可動ピン24が配置される。こうして筒体75は固定ピン14および可動ピン24の間に挟み込まれる。筒体75の内壁面には環状のフランジ76が形成される。フランジ76上にはレンズ77の周縁が受け止められる。レンズ77の周縁は環状リング78を受け止める。フランジ76および環状リング78は同一の径を有する。こうしてレンズ77の周縁はフランジ76および環状リング78の間に挟み込まれる。このとき、例えばレーザ溶接に基づき環状リング78は筒体75の内壁面に接合される。こうして保持装置11は、固定ピン14および可動ピン24の配置に基づき曲線で規定される輪郭を有する対象物を保持することができる。
【実施例5】
【0039】
次に、本発明の第5実施例を説明する。第5実施例では、図24に示されるように、前述の例えば2台の保持装置11cに光スイッチ81のレンズユニット82や反射ユニット83がそれぞれ保持される。レンズユニット82や反射ユニット83は保持装置11cごと光スイッチ81の筐体84に対して位置決めされる。このとき、レンズユニット82の位置は保持装置11cの例えば水平移動に基づき調整される。同様に、反射ユニット83の位置は保持装置11cの例えば垂直移動に基づき調整が実施される。こうしてレンズユニット82や反射ユニット83は筐体84に例えばレーザ溶接に基づき接合される。接合後、保持装置11cはレンズユニット82や反射ユニット83から取り外される。
【符号の説明】
【0040】
11〜11c 保持装置、12 保持ベース、13 基準面、14 固定部材(固定ピン)、14c 面、18 受け入れ孔、23 弾性部材(コイルばね)、24 可動部材(可動ピン・可動ブロック)、25 円柱体、27 円錐台、31 対象物、33 仮想平面、46 稜線、P1 第1接点(加圧点)、P2 第2接点(支持点)、P3 第3接点(支点)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に変位自在に対象物を受け止める保持ベースと、
前記保持ベースに固定されて、前記基準面に直交する稜線または面で前記対象物の変位を受け止める固定部材と、
前記保持ベースに穿たれて、前記稜線または前記面に平行な軸心の円柱空間を区画する受け入れ孔と、
前記受け入れ孔内に配置されて、前記受け入れ孔の下方から突き出る円柱体および前記円柱体の上端に接続される円錐台を有する可動部材と、
前記可動部材に前記軸心に沿って上方に駆動力を印加する弾性部材とを備え、
前記可動部材は、
前記円錐台の表面に配置されて、前記基準面内で前記対象物に接触する第1接点と、
前記円錐台および前記円柱体を仕切る稜線上に配置されて、前記基準面に平行で前記基準面よりも下方に位置する仮想平面内で前記受け入れ孔の壁面に接触する第2接点と、
前記円柱体の表面上に配置されて、前記円柱空間の下端で前記受け入れ孔の縁に接触する第3接点とを有することを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記円錐台の軸心と前記円錐台の母線との間で形成される角度は、
前記第3接点回りで前記第1接点に前記対象物から受ける反力と、
前記対象物および前記円錐台の表面の間の摩擦係数とに基づき設定されることを特徴とする保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−36940(P2011−36940A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185181(P2009−185181)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】