説明

保湿性に優れた有機固体粒子およびその製造方法

【課題】 保湿性に優れた有機固体粒子を提供する。
【解決手段】 溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)の残存量が全体に対して重量基準で10000ppm以上(例えば、15000〜50000ppm程度)になるように調整しつつ前記水溶性助剤成分(B)を溶出して有機固体粒子を得る。前記助剤成分(B)は、さらに、糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種の水溶性可塑化成分(B2)を含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿性に優れた有機固体粒子、その製造方法および有機固体粒子の保湿性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品などの分野において、保湿性(保湿性能)の付与は、非常に重要な要件の一つである。このような保湿性を付与するため、保湿剤を無機粒子や有機粒子に担持又は含有させた固形材料が、化粧料用途を中心にこれまでに数多く提案されている。
【0003】
例えば、特開平8−165219号公報(特許文献1)には、平均粒径3〜16μmの球状シリカに多価アルコールなどの保湿成分を吸着させたものを組成物全体に対して0.1〜10重量%含有したことを特徴とする固型化粧料が開示されている。また、特開2004−339175号公報(特許文献2)には、おしろいなどの化粧用パウダーと、デンプン・アクリル酸グラフト重合体部分ナトリウム塩などの粉末状の保湿性物質とを一定の割合にて混合した皮膚保湿用パウダーが開示されている。
【0004】
しかし、これらの文献の方法では、化粧用途などに広く使われている樹脂粒子、例えば、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂などの樹脂粒子に保湿性を付与できない。
【0005】
なお、特開2004−51942号公報(特許文献3)には、樹脂成分(A)及び水溶性助剤成分(B)で構成された分散体であって、助剤成分(B)が、少なくともオリゴ糖(B1)で構成されている分散体、および前記分散体から助剤成分(B)を溶出し、樹脂成分(A)で構成された成形体を製造する方法が開示されている。そして、この文献には、前記成形体が、多孔体又は粒子であってもよいことが開示されている。さらに、この文献には、実施例において、樹脂成分と助剤成分とで構成された樹脂組成物を、ブラベンダーにより設定温度200℃で5分間溶融混練した後、厚さ1mmの板状の分散体を作製し、加圧下で速やかに冷却し、その後60℃の湯水中に浸漬し、助剤成分が当初の含有量の5重量%程度に減少するまで、分散体を放置し、最終的に多孔体を作製したことが記載されている。
【特許文献1】特開平8−165219号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2004−339175号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2004−51942号公報(請求項1,25,26,段落番号[0122])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、優れた保湿性を有する有機固体粒子およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、高い安全性で保湿性が付与された有機固体粒子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、少なくともオリゴ糖で構成された助剤成分と溶融可能な有機固体成分とを組み合わせて形成した分散体から前記助剤成分を溶出して得られる有機固体粒子において、前記溶出量を調整して所定の濃度以上の助剤成分を残存させると、有機固体粒子に優れた保湿性を付与できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の有機固体粒子は、溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)[詳細には、水溶性助剤成分(B)の一部]を溶出(又は溶出処理)して得られた有機固体粒子であって、全体に対して、10000ppm(重量基準)以上[例えば、15000〜50000ppm、好ましくは20000〜40000ppm程度]の水溶性助剤成分(B)が残存している。
【0010】
前記有機固体成分(A)は、通常、熱可塑性樹脂で構成されていてもよく、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース誘導体、及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種で構成されていてもよい。
【0011】
前記助剤成分(B)は、さらに、オリゴ糖(B1)を可塑化するための水溶性可塑化成分を含んでいてもく、このような水溶性可塑化成分(B2)は、例えば、糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種であってもよい。また、前記分散体において、有機固体成分(A)と助剤成分(B)との割合(重量比)は、有機固体成分(A)/助剤成分(B)=55/45〜1/99程度であってもよい。前記粒子の平均粒子径は、例えば、0.05〜100μm(例えば、0.5〜40μm)程度であってもよい。
【0012】
本発明の有機固体粒子は、保湿性に優れており、例えば、30℃および90%RHの条件で12時間処理したときの水分量(又は吸水量)が全体に対して10000ppm以上であってもよく、前記処理後において30℃および50%RHの条件で1時間放置したときの水分量(又は水分保持量)が5000ppm以上であってもよい。
【0013】
本発明の有機固体粒子は、溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)の残存量を全体に対して10000ppm以上(重量基準)に調整しつつ前記水溶性助剤成分(B)を溶出することにより製造できる。
【0014】
また、本発明には、溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)を溶出して有機固体粒子を調製する方法において、前記水溶性助剤成分(B)の溶出量を調整して、水溶性助剤成分(B)を全体に対して10000ppm以上(重量基準)残存させることにより、有機固体粒子の保湿性を向上させる方法も含む。
【0015】
なお、本明細書において、「有機固体成分」とは、固体である限り、炭素系の有機化合物に限らず、ケイ素化合物(シリコーン樹脂など)なども含む意味で用いる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有機固体粒子は、少なくともオリゴ糖で構成された水溶性助剤成分が残存しているので、保湿性に優れている。また、本発明の有機固体粒子は、保湿成分として前記水溶性助剤成分を含有させるため、高い安全性で保湿性が付与されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の有機固体粒子は、溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、前記水溶性助剤成分(B)を溶出して得られる。
【0018】
[有機固体成分(A)]
溶融可能な有機固体成分(A)としては、通常、水溶性助剤(B)に対して非相溶又は疎水性成分(非水溶性成分)が使用できる。前記有機固体成分(A)は、通常、室温(15〜25℃程度)で固体であり、低分子化合物であってもよく、高分子化合物(又は樹脂)であってもよい。低分子有機固体成分(A)の融点は、40〜280℃(好ましくは50〜270℃、さらに好ましくは70〜260℃)程度であってもよく、100〜260℃程度の比較的高い融点を有する化合物も使用できる。有機固体成分(A)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0019】
低分子の有機固体成分(A)としては、例えば、ワックス類又は脂質類、安定化剤(ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系などの酸化防止剤、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、ヒンダードアミン系光安定剤などの紫外線吸収剤など)、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、結晶核剤、加硫促進剤、老化防止剤、加硫剤などが例示できる。前記ワックス類又は脂質類としては、脂肪族炭化水素系ワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックスなど)、植物性又は動物性ワックス(カルナウバワックス、ミツロウ、セラックワックス、モンタンワックスなど)、高級脂肪酸エステル(グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなど)、脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドなど)、アルキレンビス脂肪酸アミド(メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドなど)、脂肪酸金属塩(ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの高級脂肪酸多価金属塩など)などが例示できる。なお、上記ワックス類又は脂質類は滑剤としても使用できる。これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
本発明では、このような低分子有機固体成分であっても、前記水溶性助剤(B)と組み合わせることにより、粒子(特に真球状の粒子)として得ることができるので、低分子有機固体成分(A)の取扱い性を向上できる。
【0021】
有機固体成分(A)としては、高分子化合物(樹脂)を用いる場合が多い。前記樹脂には、熱可塑性樹脂[ポリエステル系樹脂(例えば、芳香族ポリエステル系樹脂や脂肪族ポリエステル系樹脂など)、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂(例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂(例えば、ハロゲン含有ビニル系樹脂、ビニルエステル系樹脂又はその誘導体など)などのビニル重合系熱可塑性樹脂;セルロース誘導体などの天然物由来樹脂、熱可塑性シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマーなど]、および熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンワニスなども含む)など)などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。有機固体成分(A)としては、通常、熱可塑性樹脂、非水溶性樹脂(又は疎水性樹脂、非水溶性熱可塑性樹脂など)が使用される。以下、代表的な熱可塑性樹脂を例示する。
【0022】
(熱可塑性樹脂)
(1)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分、ジオール成分、オキシカルボン酸、ラクトン類を用いた種々の樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2-6アルキレンアリレート系樹脂、C2-6アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステル(例えば、共重合成分が、オキシアルキレン単位を有するポリオキシC2-4アルキレンジオールやC6-12の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸などの非対称性芳香族ジカルボン酸などのコポリエステル)、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステルなどの芳香族ポリエステル系樹脂;ポリC2-6アルキレンオギザレート、ポリC2-6アルキレンサクシネート、ポリC2-6アルキレンアジペートなどのポリ(C2-6アルキレングリコール−C2-10脂肪族ジカルボン酸エステル)、ポリオキシカルボン酸系樹脂(例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸、グリコール酸−乳酸共重合体など)、ポリラクトン系樹脂(例えば、ポリカプロラクトンなどのポリC3-12ラクトン系樹脂など)、これらのコポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン−ポリブチレンサクシネート共重合樹脂など)などが挙げられる。ポリエステル系樹脂はウレタン結合を含んでいてもよい。さらに、ポリエステル系樹脂は生分解性を有していてもよい。
【0023】
(2)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミド系樹脂が使用される。これらのポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4-10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4-20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4-20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4-20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)などが挙げられる。ポリアミド系樹脂のジカルボン酸成分はダイマー酸単位を含んでいてもよい。さらに、ポリアミド系樹脂は生分解性を有していてもよい。
【0025】
(3)ポリウレタン系樹脂
ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ジイソシアネート類(ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類又はその水添ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート類又はその水添ジイソシアネート類など)と、ポリオール類(例えば、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなど)と、必要により鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン系樹脂が例示できる。
【0026】
(4)ポリ(チオ)エーテル系樹脂
ポリ(チオ)エーテル系樹脂としては、例えば、ポリオキシアルキレン系樹脂(安定化されたポリオキシメチレングリコール又はホモ又はコポリアセタール系樹脂、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのポリオキシC1-4アルキレンジオール)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテルケトン系樹脂、ポリスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィド又はその共重合体などのポリチオエーテル系樹脂)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン系樹脂を含む)などが含まれる。
【0027】
(5)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などのビスフェノール類をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが含まれる。
【0028】
(6)ポリスルホン系樹脂
ポリスルホン系樹脂としては、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリールスルホン樹脂などが例示できる。
【0029】
(7)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂には、α−C2-6オレフィンの単独又は共重合体、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
(8)(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリルなど)の単独又は共重合体、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。
【0031】
(9)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体など;スチレン−ブタジエンブロック共重合体などのブロック共重合体など;ゴム成分の存在下、少なくともスチレン系単量体をグラフト重合したグラフト重合体、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、又はゴムグラフトポリスチレン系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、このABS樹脂のブタジエンゴムBに代えて、エチレンプロピレンゴムE、アクリルゴムA、塩素化ポリエチレンC、酢酸ビニル重合体などのゴム成分を用いたグラフト共重合体(AES樹脂,AAS樹脂,ACS樹脂などのAXS樹脂)、アクリロニトリルに代えて(メタ)アクリル系単量体(メタクリル酸メチルなど)を用いたグラフト共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(MBS樹脂)など)などが挙げられる。
【0032】
(10)ハロゲン含有ビニル系樹脂
ハロゲン含有ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン系樹脂、フッ素樹脂などが例示できる。
【0033】
(11)ビニルエステル系樹脂又はその誘導体
ビニルエステル系樹脂又はその誘導体としては、例えば、カルボン酸ビニルエステルの単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、これらのケン化物(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂)、ケン化物(ビニルアルコール系樹脂)からの誘導体(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂など)などが例示できる。エチレン−ビニルアルコール共重合体において、エチレン含量は5〜40重量%程度であってもよい。
【0034】
(12)セルロース誘導体
セルロース誘導体としては、セルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのアシルセルロース;セルロースの無機酸エステルなど)、セルロースエーテル類(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロースなどのアルキルセルロース;ベンジルセルロースなどのアラルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;シアノエチルセルロースなど)、セルロースカーバメート類(セルロースフェニルカーバメートなど)などが挙げられる。
【0035】
(13)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0036】
熱可塑性エラストマーがブロック共重合体であるとき、ブロック構造は特に制限されず、トリブロック構造、マルチブロック構造、星形ブロック構造などであってもよい。
【0037】
有機固体成分(樹脂成分など)の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)は、60〜300℃の範囲から選択でき、例えば、80〜260℃、好ましくは100〜240℃(例えば110〜240℃)、さらに好ましくは120〜230℃(例えば130〜220℃)程度である。好ましい樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂(例えば、ハロゲン含有樹脂、ビニルエステル系樹脂など)、生分解性樹脂[例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリ乳酸系樹脂やポリC3-12ラクトン系樹脂など)、ポリエステルアミドなどの生分解性ポリエステル系樹脂、前記セルロース誘導体]などが挙げられる。なお、助剤成分(B)との溶融混練を容易にするために、アミノ基、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの親水性基を有する樹脂を使用してもよい。
【0038】
有機固体成分(A)(熱可塑性樹脂など)の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量、又は粘度平均分子量で、例えば、500,000以下(例えば、10,000〜500,000程度)、好ましくは50,000〜400,000程度、さらに好ましくは10,000〜350,000程度であってもよい。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量の測定が困難なセルロース誘導体などの熱可塑性樹脂については、粘度平均分子量を採用できる。なお、有機固体成分(A)の重量平均分子量は、有機固体成分(A)の混練時間や混練温度などによっても調節できる。
【0039】
[水溶性助剤]
水溶性助剤は、少なくともオリゴ糖(B1)で構成された水溶性助剤成分(B)で構成され、有機固体成分と組み合わせて分散体を形成する。さらに、オリゴ糖の熱溶融特性を調整するために、水溶性助剤は可塑化成分(B2)をさらに含むのが好ましい。
【0040】
(B1)オリゴ糖
オリゴ糖(B1)は、2〜10分子の単糖類が、グリコシド結合を介して脱水縮合したホモオリゴ糖と、少なくとも2種類以上の単糖類及び/又は糖アルコールが、2〜10分子グリコシド結合を介して脱水縮合したヘテロオリゴ糖とに大別される。オリゴ糖(B1)としては、例えば、二糖類〜十糖類が挙げられ、通常、二糖類〜六糖類のオリゴ糖が使用される。オリゴ糖は、通常、常温で固体である。なお、これらのオリゴ糖は、無水物でもよい。また、オリゴ糖において、単糖類と糖アルコールとが結合していてもよい。これらのオリゴ糖は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、オリゴ糖は複数の糖成分で構成されたオリゴ糖組成物であってもよい。このようなオリゴ糖組成物であっても単にオリゴ糖という場合がある。
【0041】
二糖類としては、トレハロース(例えば、α,α−トレハロース、β,β−トレハロース、α,β−トレハロースなど)、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオースなどのホモオリゴ糖;ラクトース、スクロース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
【0042】
三糖類としては、マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオースなどのホモオリゴ糖;マンニノトリオース、ソラトリオース、メレジトース、プランテオース、ゲンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトスクロース、ラフィノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
【0043】
四糖類としては、マルトテトラオース、イソマルトテトラオースなどのホモオリゴ糖;スタキオース、セロテトラオース、スコロドース、リキノース、パノースの還元末端に糖又は糖アルコールが結合したテトラオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
【0044】
これらの四糖類のうち、パノースの還元末端に単糖類又は糖アルコールが結合したテトラオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノースなどの単糖類や、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコールが結合したテトラオースが例示できる。
【0045】
五糖類としては、マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどのホモオリゴ糖;パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
【0046】
パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースも、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、スクロース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなどの二糖類が結合したペンタオースが例示できる。
【0047】
六糖類としては、マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどのホモオリゴ糖などが挙げられる。
【0048】
オリゴ糖は、有機固体成分との溶融混練性の観点から、少なくとも四糖類で構成されているのが好ましい。
【0049】
オリゴ糖は、多糖類の分解により生成するオリゴ糖組成物であってもよい。オリゴ糖組成物は、通常、四糖類を含んでいる。オリゴ糖組成物としては、例えば、デンプン糖(デンプン糖化物)、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などが挙げられる。これらのオリゴ糖組成物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0050】
例えば、デンプン糖は、デンプンに酸又はグルコアミラーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、複数個のグルコースが結合したオリゴ糖の混合物であってもよい。デンプン糖としては、例えば、東和化成工業(株)製の還元デンプン糖化物(商品名:PO−10、四糖類の含有量90重量%以上)などが挙げられる。
【0051】
ガラクトオリゴ糖は、ラクトースにβ−ガラクトシダーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、ガラクトシルラクトースとガラクトース−(グルコース)nの混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
【0052】
カップリングシュガーは、デンプンとスクロースにシクロデキストリン合成酵素(CGTase)を作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、(グルコース)n−スクロースの混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
【0053】
フルクトオリゴ糖(フラクトオリゴ糖)は、砂糖にフルクトフラノシダーゼを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、スクロース−(フルクトース)nの混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
【0054】
これらのオリゴ糖組成物において、溶融混練での急激な粘度低下を防止するため、オリゴ糖組成物中の三糖類、四糖類(特に四糖類)の含有量は、例えば、60重量%以上(60〜100重量%)、好ましくは70重量%以上(70〜100重量%)、さらに好ましくは80重量%以上(80〜100重量%)、特に90重量%以上(90〜100重量%)である。
【0055】
オリゴ糖は還元型(マルトース型)であってもよく、非還元型(トレハロース型)であってもよいが、還元型のオリゴ糖は、耐熱性に優れるため好ましい。
【0056】
還元型のオリゴ糖としては、遊離のアルデヒド基又はケトン基を有し、還元性を示す糖であれば、特に限定されず、例えば、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどの二糖類;マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオース、マンニノトリオース、ソラトリオースなどの三糖類;マルトテトラオース、イソマルトテトラオース、セロテトラオース、リキノースなどの四糖類;マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどの五糖類;マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどの六糖類などが挙げられる。
【0057】
一般的に、前記オリゴ糖は、天然物である多糖類の誘導体あるいはそれらの還元によって製造される天然物由来の製造物であるため、環境への負荷を低減できる。
【0058】
混練により、効果的に有機固体成分と助剤成分とを分散させるためには、オリゴ糖の粘度は高いのが望ましい。具体的には、B型粘度計を用いて温度25℃で測定したとき、オリゴ糖の50重量%水溶液の粘度は、1Pa・s以上(例えば、1〜500Pa・s程度)、好ましくは2Pa・s以上(例えば、2〜250Pa・s、特に3〜100Pa・s程度)、さらに好ましくは4Pa・s以上(例えば、4〜50Pa・s程度)、特に6Pa・s以上(例えば、6〜50Pa・s程度)であり、高粘度オリゴ糖を用いることが望ましい。
【0059】
また、オリゴ糖(B1)の融点又は軟化点は、有機固体成分(A)の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)より高いのが好ましい。なお、オリゴ糖の種類[例えば、還元デンプン糖化物などのデンプン糖など]によっては、融点又は軟化点を示さず、熱分解する場合がある。このような場合、分解温度をオリゴ糖(B1)の「融点又は軟化点」としてもよい。
【0060】
オリゴ糖(B1)の融点又は軟化点と、有機固体成分(A)の熱変形温度との温度差は、例えば、1℃以上(例えば、1〜80℃程度)、好ましくは10℃以上(例えば、10〜70℃程度)、さらに好ましくは15℃以上(例えば、15〜60℃程度)である。オリゴ糖(B1)の融点又は軟化点は、有機固体成分(A)の種類などに応じて、70〜300℃の範囲で選択でき、例えば、90〜290℃、好ましくは100〜280℃(例えば、110〜270℃)、さらに好ましくは120〜260℃(例えば、130〜260℃)程度であってもよい。なお、一般にオリゴ糖の無水物は、高い融点又は軟化点を示す。例えば、トレハロースの場合、二水化物の融点は97℃であるが、無水物の融点は203℃である。オリゴ糖の融点又は軟化点が有機固体成分(A)の熱変形温度より高いと、溶融混練でのオリゴ糖の急激な粘度低下を防止できるだけでなく、オリゴ糖の熱劣化も抑制できる。
【0061】
更に、本発明では、水溶性助剤成分(B)において、オリゴ糖(B1)と、オリゴ糖(B1)を可塑化するための水溶性可塑化成分(B2)とを組み合わせることにより、有機固体成分(A)との混練において、水溶性助剤成分(B)の粘度を調整できる。
【0062】
(B2)可塑化成分
可塑化成分(B2)としては、オリゴ糖(B1)が水和して水飴状態となる現象を発現できるものであればよく、例えば、糖類、糖アルコールなどが挙げられる。これらの可塑化成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0063】
(糖類)
糖類としては、オリゴ糖(B1)を有効に可塑化するために、通常、単糖類及び/又は二糖類が使用される。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0064】
単糖類としては、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、デコースなどが挙げられる。これらの化合物は、アルドースやケトースであってもよく、ジアルドース(糖の誘導体であって炭素鎖両末端がアルデヒド基である化合物、例えば、テトラアセチルガラクトヘキソジアルドース、イドヘキソジアルドース、キシロペントドアルドース等)、複数のカルボニル基を有する単糖類(オソン、オノース等のアルドアルコケトース等)、メチル基を有する単糖類(アルトロメチロースなどのメチル糖等)、アシル基(特にアセチル基などのC2-4アシル基等)を有する単糖類(前記アルドースのアセチル体、例えば、アルデヒドグルコースペンタアセチル化合物などのアセチル体など)、カルボキシル基が導入された糖類(糖酸またはウロン酸等)、チオ糖、アミノ糖、デオキシ糖などであってもよい。
【0065】
このような単糖類の具体例としては、例えば、テトロース(エリトロース、トレオロース等)、ペントース(アラビノース、リボース、リキソース、デオキシリボース、キシロース等)、ヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、フコース、ラムノース、タロース、ガラクチュロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン等)などが例示できる。
【0066】
また、単糖類は、ヘミアセタール結合により環状構造を形成した環状異性体であってもよい。単糖類は、旋光性を有している必要はないが、D形、L形、DL形のいずれであってもよい。これらの単糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0067】
二糖類としては、オリゴ糖(B1)を可塑化できるものであれば、特に制限されず、例えば、前記二糖類のうち、低融点または低軟化点を有する二糖類(例えば、ゲンチビオース、メリビオース、トレハロース(二水化物)など)、前記単糖類のホモ及びヘテロ二糖類に相当する二糖類(例えば、グルクロン酸とグルコースとがα−1,6グリコシド結合したグルクロノグルコースなどのアルドビオウロン酸など)が例示できる。
【0068】
糖類は、熱安定性に優れるため、還元糖が好ましく、そのような糖類としては、遊離の単糖類の他、前記二糖類のうち、低融点又は低軟化点の還元糖(例えば、ゲンチビオース、メリビオースなど)が挙げられる。
【0069】
(糖アルコール)
糖アルコール(又は水溶性多価アルコール)としては、アルジトール(グリシトール)などの鎖状糖アルコールであってもよく、イノシットなどの環式糖アルコールであってもよいが、通常は、鎖状糖アルコールが使用される。これらの糖アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0070】
鎖状糖アルコールとしては、テトリトール(トレイトール、エリスリトールなど)、ペンチトール[ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール(アドニトール)、キシリトール、リキシトールなど]、ヘキシトール[ソルビトール、マンニトール、イジトール、グリトール、タリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、アロズルシトール(アリトール)、アルスリトールなど]、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、デキトール、及びドデキトールなどが挙げられる。
【0071】
これらの糖アルコールのうち、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール及びマンニトールが好ましい。糖アルコールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトールから選択された少なくとも1つの糖アルコールを含む場合が多い。
【0072】
可塑化成分(B2)は、常温(例えば、15〜20℃程度)で液体(シロップ状)であってもよいが、取扱い性などの点から、通常、固体である場合が多い。助剤成分(B)をオリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)とで構成すると、オリゴ糖(B1)が明瞭な融点や軟化点を示さない熱分解性オリゴ糖であっても、有効に可塑化又は軟化できる。
【0073】
可塑化成分(B2)の融点又は軟化点は、通常、有機固体成分(A)の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)以下である。なお、可塑化成分の中には、高融点(例えば200℃以上)を有するにも拘わらず、オリゴ糖と共存すると、実際の融点よりも低い温度で融解する物質が存在する。例えば、ペンタエリスリトールは、実際の融点(260℃)より低温(例えば160〜180℃程度)でオリゴ糖に対する可塑化効果を発揮するとともに、自身も融解状態となる。このような高融点の可塑化成分は、単独では有機固体成分の熱変形温度において融解しないため利用できないが、オリゴ糖と組み合わせることによって有効に利用できる。なお、実際の融点より低温でオリゴ糖に対する可塑化効果を発揮する可塑化成分(例えば、ペンタエリスリトールなど)においては、オリゴ糖に対して可塑化効果を発揮する温度を、可塑化成分(B2)の「融点又は軟化点」としてもよい。
【0074】
また、オリゴ糖(B1)は、可塑化成分(B2)の融点又は軟化点より高い温度で融点又は軟化点を示すか、若しくは分解してもよい。オリゴ糖(B1)の融点又は軟化点(若しくは分解温度)よりも、可塑化成分(B2)の融点又は軟化点を低くすると、分散体の冷却に伴って、可塑化成分(B2)が凝固することにより、オリゴ糖(B1)も凝固し、連続相(マトリックス)を効率よく固定できるため、有機固体成分の固化温度に達しなくても、分散相の形状を、例えば、球状などに固定することができる。特に、可塑化成分が低分子であるため、明瞭な凝固点を示し(凝固点の幅が狭く)、瞬時に可塑化成分を凝固することができる。
【0075】
助剤成分(B)の融点又は軟化点は、有機固体成分(A)の熱変形温度以上であってもよく、以下であってもよい。有機固体成分(A)及び助剤成分(B)は、少なくとも混練温度(又は成形加工温度)において溶融又は軟化すればよい。例えば、助剤成分(B)の融点又は軟化点と、有機固体成分(A)の熱変形温度との温度差は、0〜100℃の範囲で選択してもよく、例えば、3〜80℃(例えば3〜55℃)、好ましくは5〜60℃(例えば、5〜45℃)、さらに好ましくは5〜40℃(例えば、10〜35℃)程度であってもよい。なお、助剤成分(B)の融点又は軟化点と、有機固体成分(A)の熱変形温度との温度差が小さい場合(例えば前記温度差が0〜20℃程度である場合)、固化速度の高い助剤成分(B)(例えば、糖成分)により短時間で分散形態を固定化できるという利点がある。
【0076】
さらに、助剤成分(B)(例えば、オリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)とを含む助剤成分)のメルトフローレートは、例えば、有機固体成分(A)の熱変形温度(例えば、前記ビカット軟化点)より30℃高い温度でJIS K 7210で規定されるメルトフローレートを測定したとき、1以上(例えば、1〜40程度)、好ましくは5以上(例えば、5〜30程度)、さらに好ましくは10以上(例えば、10〜20程度)であってもよい。
【0077】
助剤成分(B)において、可塑化成分(B2)の割合(重量比)は、溶融混練に伴って、可塑化成分が凝集などにより局在化せず、オリゴ糖(B1)を効率的に可塑化できる量、例えば、オリゴ糖(B1)/可塑化成分(B2)=99/1〜50/50から選択でき、好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは90/10〜70/30程度である。なお、溶融混練温度(加工温度)に応じて、オリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)との割合を適宜調整することにより、有機固体成分(A)と助剤成分(B)との混練の効率をコントロールしてもよい。例えば、比較的低温(例えば、90〜180℃程度)で溶融混練する場合などには、可塑化成分の割合を大きくすると、成分(A)及び(B)を効率よく混練することもできる。
【0078】
有機固体成分(A)と助剤成分(B)との相溶性は、特に制限されず、非相溶性であってもよく、相溶性であってもよい。有機固体成分と助剤成分とが相溶する場合、有機固体成分と助剤成分とが混練温度において均一な単一相を形成しても、混練後の放置時間や、冷却過程における両者の表面張力、結晶化などの固化速度の相違などにより、有機固体成分と助剤成分とを相分離でき、有機固体成分と助剤成分とで分散系を形成できる。有機固体成分と助剤成分とが相溶する系においても、有機固体成分と助剤成分とを相分離できる理由としては、前記助剤成分が、低い表面張力を有するとともに、有機固体成分との混練温度においても比較的高粘度を保持でき、さらに低分子量であるために冷却時の固化速度が有機固体成分に比して極端に速いという特異な物性を有していることが挙げられる。
【0079】
有機固体成分(A)と助剤成分(B)との割合(重量比)は、有機固体成分及び助剤成分の種類や粘度、有機固体成分と助剤成分との相溶性などに応じて選択でき、特に制限されないが、通常、成形性を損なわない量、例えば、有機固体成分(A)/助剤成分(B)=55/45〜1/99、好ましくは50/50〜5/95、さらに好ましくは45/55〜10/90程度である。
【0080】
本発明において、有機固体成分(A)と助剤成分(B)とは同一又は異なる溶融粘度(せん断粘度)を有している。特に、オリゴ糖(又はオリゴ糖を含む助剤成分(B))の粘度を、有機固体成分(A)の溶融粘度に近づけると、有機固体成分(A)の分散性を向上でき、分散相(及び得られる有機固体粒子)の粒子径を小さくできるとともに、粒度分布を狭くできる。
【0081】
孔径1mm及び長さ40mmのキャピラリーを用いて、温度180℃及び剪断速度126sec-1で測定したとき、水溶性助剤(B)の剪断粘度は、例えば、5Pa・s以上(例えば、5〜250Pa・s)程度の範囲から選択でき、通常、8Pa・s以上(例えば、8〜200Pa・s)、好ましくは10Pa・s以上(例えば、10〜150Pa・s)、さらに好ましくは12Pa・s以上(例えば、15〜150Pa・s)であり、20〜150Pa・s(例えば、40〜130Pa・s)程度であってもよい。このような溶融粘度特性を有する水溶性助剤(B)を用いると、水溶性助剤(B)の分離を防止しつつ樹脂成分などの有機固体成分(A)との組成物を均一に溶融混練可能であり、前記有機固体成分(A)を粒子状に形成できる。さらに、成形装置において、ベント部やフィードブロック、ダイスなどの継ぎ目部から水溶性助剤又は加工助剤(B)が流出することがなく、スクリューの空転を防止しつつ、混練力を前記組成物に有効に作用させることができる。なお、樹脂などの成形加工温度は、通常、140〜240℃であり、押出機などの代表的な加工機の剪断速度は、通常、50〜200sec-1程度であると思われる。そのため、本発明では、代表的な条件として、前記温度180℃及び剪断速度126sec-1を採用している。
【0082】
なお、有機固体成分(A)の前記せん断粘度ηAは、助剤成分(B)のせん断粘度ηBに応じて適宜選択でき、例えば、50〜1000Pa・sec、好ましくは100〜900Pa・sec、さらに好ましくは150〜800Pa・sec程度であってもよい。
【0083】
例えば、分散体の調製に伴う有機固体成分(A)と助剤成分(B)との溶融混練温度において、有機固体成分(A)のせん断粘度ηAと前記助剤成分(B)のせん断粘度ηBとの比ηA/ηBを小さくすることにより、平均粒子径の変動係数を低減でき、粒子径をコントロールすることができる。前記せん断粘度比ηA/ηB は、通常、20/1以下(例えば、0.05/1〜20/1程度)、好ましくは0.06/1〜15/1、さらに好ましくは0.1/1〜10/1程度であってもよい。なお、平均粒子径の変動係数は、有機固体成分(A)と助剤成分(B)との組合せや加工温度(混合温度又は混練温度など)を調整することにより、コントロールできる。
【0084】
本発明において、有機固体成分(A)と助剤成分(B)とは、互いに異なる表面張力を有している。特に、助剤成分(B)は、少なくともオリゴ糖(B1)や水溶性可塑化成分(B2)を含むため、有機固体成分(A)に比べて、通常、表面張力が非常に小さい。このように、本発明では、有機固体成分(A)と助剤成分(B)との表面張力の差又は比を大きくでき、分散相を表面張力の大きな有機固体成分で構成するため、分散相(又は有機固体粒子)の形状を球状にすることができる。
【0085】
有機固体成分(A)の表面張力と、助剤成分(B)の表面張力との相違は、例えば、両者の水との接触角の比で表すことができる。25℃において、有機固体成分(A)の水との接触角θAと、助剤成分(B)の水との接触角θBとの比(θA/θB)が2以上(例えば、θA/θB=2/1〜10/1程度)、好ましくは2.5以上(例えば、θA/θB=2.5/1〜9/1程度)、さらに好ましくは3以上(例えば、θA/θB=3/1〜8/1程度)であってもよい。なお、接触角とは、室温(25℃)で有機固体成分や助剤成分の表面上に水滴を置き、水滴の広がりが停止したときの水滴の表面と有機固体成分(又は助剤成分)の表面との交点において、水滴に対する接線と有機固体成分(又は助剤成分)の表面との間に形成される角のうち、水滴側の角度を指す。
【0086】
有機固体成分(A)の接触角θAは、例えば、40〜110°、好ましくは50〜105°、さらに好ましくは60〜105°程度であってもよい。また、助剤成分(B)の接触角θBは、例えば、10〜25°、好ましくは10〜20°(例えば、12〜20°)、さらに好ましくは15〜20°程度であってもよい。
【0087】
さらに、水溶性助剤(B)は、B型粘度計で測定した10重量%水溶液の粘度が25℃で10cps(mPa・s)以下(例えば、2〜10cps)、好ましくは7cps以下(例えば、2〜7cps)、さらに好ましくは5cps以下(例えば、2〜5cps)であり、通常、3〜7cps程度である。このように水溶性助剤成分(B)の水溶液粘度が小さいため、水などによる溶出操作により、有機固体成分(A)で構成された成形体(粒子や多孔体など)との分離効率(又は濾過効率)を大きく向上できる。そのため、水溶性高分子を溶出する方法と異なり、水溶液の粘度を低減できる。そのため、エネルギー的に有利であるとともに有機固体成分(A)で構成された成形体の生産性を向上できる。
【0088】
このような特性を有する水溶性助剤成分(B)は、溶融粘度が高いにも拘わらず、水に対する溶解性が高く、しかも水溶液粘度が低い。しかも、樹脂成分などの有機固体成分(A)と溶融混練して、射出成形、押出成形などの種々の方法で、溶融成形可能である。そのため、水溶性助剤成分(B)は溶融可能な有機固体成分(A)と組み合わせて用い、混練により生成した有機固体成分(A)の成形体を得るのに好適である。すなわち、水溶性助剤成分(B)は溶融混練して前記有機固体粒子を生成するための助剤として有用である。
【0089】
前記分散体は、特に制限されないが、通常、有機固体成分(A)と助剤成分(B)とを混練することにより調製できる。有機固体成分(A)と助剤成分(B)との混練は、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロールなど)を用いて行なうことができる。混練時間は、例えば、10秒〜1時間の範囲から選択してもよく、通常30秒〜45分、好ましくは1〜30分(例えば、1〜10分)程度である。また、混練に先立ち、有機固体成分および助剤成分は、予め凍結粉砕機などで粉体状に予備加工したり、ヘンシェルミキサー、タンブルミキサー、ボールミルなどで予備混練してもよい。
【0090】
このようにして得られた混練物は、そのまま水溶性助剤成分の溶出処理に供してもよいが、通常、混練後に成形(予備成形)したのち、助剤成分の溶出に供される。成形法としては、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形などが挙げられ、通常、生産性や加工の容易さの点から、押出成形又は射出成形が使用される。予備成形体の形状は、特に制限されず、0次元的形状(粒状、ペレット状など)、1次元的形状(ストランド状、棒状など)、2次元的形状(板状、シート状、フィルム状など)、3次元的形状(管状、ブロック状など)などであってもよい。助剤成分の溶出性を考慮すると、ストランド状、棒状、シート状、又はフィルム状に加工することが望ましい。また、予備成形体は、成形過程において、他の基材を積層して加工してもよい。
【0091】
なお、混練温度や成形加工温度は、使用される原材料(例えば、有機固体成分及び助剤成分)に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、90〜300℃、好ましくは110〜260℃(例えば、170〜250℃)、さらに好ましくは140〜240℃(例えば、170〜240℃)、特に170〜230℃(例えば、180〜220℃)程度である。助剤成分(オリゴ糖および可塑化成分)の熱分解を避けるため、混練温度や成形加工温度を230℃以下にしてもよい。
【0092】
分散系(有機固体成分と助剤成分とが分散した形態)は、混練及び/又は成形加工後、溶融物(例えば、混練物、予備成形体)を、適宜冷却することにより形成してもよい。例えば、冷却温度は、有機固体成分の熱変形温度、又は助剤成分の融点若しくは軟化点よりも少なくとも10℃程度低い温度であればよく、例えば、上記温度(有機固体成分の熱変形温度、又は助剤成分の融点若しくは軟化点)より10〜100℃程度低い温度、好ましくは前記温度より15〜80℃程度低い温度、さらに好ましくは前記温度より20〜60℃程度低い温度であってもよい。具体的には、例えば、冷却温度は、有機固体成分又は助剤成分の種類に応じて5〜150℃の範囲から選択でき、例えば、10〜120℃(例えば、10〜60℃)、好ましくは15〜100℃(例えば、15〜50℃)、さらに好ましくは20〜80℃(例えば、20〜40℃)程度であってもよい。冷却時間は、有機固体成分や助剤成分の種類、冷却温度等に応じて適宜設定でき、例えば、30秒〜20時間の広い範囲から選択してもよく、例えば、45秒〜10時間、好ましくは1分〜5時間(例えば、1分〜1時間)、さらに好ましくは1.5〜30分程度であってもよい。冷却によって、有機固体成分と助剤成分とが相溶であっても、冷却工程において、表面張力、結晶化などの固化速度の相違などによって、分散系を形成できる。
【0093】
粒子形状や粒子サイズは、有機固体成分と助剤成分との相溶性、有機固体成分及び助剤成分の溶融粘度、混練条件(例えば、混練時間、混練温度など)、成形加工温度、並びに冷却条件(例えば、冷却時間、冷却温度など)などによりコントロールできる。
【0094】
上記のようにして得られた分散体(又は予備成形体)では、助剤成分が、海島構造における連続相(樹脂相が独立した相分離構造)を形成している。
【0095】
[有機固体粒子]
本発明の有機固体粒子は、所定の濃度の水溶性助剤成分(B)を含有しており、優れた保湿性を有している。本発明の有機固体粒子において、水溶性助剤成分(B)の含有量(又は残存量)は、有機固体粒子全体に対して、重量基準で、10000ppm以上(例えば、11000〜100000ppm)、好ましくは13000ppm以上(例えば、15000〜50000ppm程度)、さらに好ましくは18000ppm以上(例えば、20000〜40000ppm程度)、特に21000ppm以上(例えば、22000〜35000ppm程度)である。なお、水溶性助剤成分(B)の残存量が少ないと十分な保湿性を有機固体粒子に付与できず、また、残存量が大きすぎると粒子のべたつきなどが生じる虞がある。
【0096】
なお、前記分散体において、助剤成分として、オリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)とを組み合わせる場合、有機固体粒子に残存するオリゴ糖(B1)と可塑化成分(B2)との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜50/50から選択でき、好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは90/10〜70/30程度であってもよい。
【0097】
このような本発明の有機固体粒子は、前記分散体(すなわち、有機固体成分(A)が水溶性助剤成分(B)に粒子状に分散した分散体)から、前記水溶性助剤成分(B)を溶出して得られる。溶出は、通常、前記分散体と溶媒とを接触させることにより行うことができ、例えば、溶媒に分散体を浸漬することにより行うことができる。
【0098】
溶媒としては、水性媒体、例えば、水、水溶性溶媒(例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、エーテル類(セロソルブ、ブチルセロソルブなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。環境への負荷が少なく、工業コストを低減できるため、溶媒は水(水単独)が好ましい。
【0099】
なお、水溶性助剤成分(B)は、溶媒(特に水)に対する溶解性に優れており、単に溶出するだけでは、前記範囲(例えば、粒子全体に対して11000〜100000ppm程度)で残存させることは困難である。そのため、本発明では、前記分散体からの前記水溶性助剤成分(B)の溶出量を前記所定の濃度(10000ppm以上)になるように調整(又はコントロール)しつつ溶出することにより、前記所定の濃度の水溶性助剤成分(B)を含有する有機固体粒子を調製する。
【0100】
溶出量の調整は、分散体(前記予備成形体)の形状などにもよるが、溶媒の量、溶出温度、溶出時間などの溶出条件を適宜調整することにより行うことができる。
【0101】
溶出に用いる溶媒の量は、前記分散体1重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは5〜20重量部、さらに好ましくは8〜15重量部程度である。また、助剤成分の溶出温度は、有機固体成分及び助剤成分に応じて、適宜設定することができ、有機固体成分の融点又は軟化点未満の温度であって、過度に溶出させない温度、例えば、3〜80℃、好ましくは5〜60℃、さらに好ましくは10〜40℃(例えば、15〜35℃)、特に20〜30℃程度で行ってもよい。なお、助剤成分の溶出は、例えば、常圧下(例えば、1atm又は10万Pa程度)、減圧下、又は加圧下で行うことができ、通常、常圧下で行ってもよい。
【0102】
溶出時間は、例えば、1分〜5時間、好ましくは5分〜4時間、さらに好ましくは10分〜3時間、特に20分〜2時間(例えば、30〜90分)程度であってもよい。なお、助剤成分(B)の水への溶解性は、重量半減時間Tを指標として表すことができ、例えば、水中での重量半減時間Tは、25mm×25mm×3mmの板状成形体を25℃の蒸留水500mL中に600秒間浸漬したとき、下記式
T=W1/(W1−W2)×600×0.5
(式中、W1は浸漬前の板状成形体の重量、W2は板状成形体を600秒間浸漬した後、乾燥により水分を除去した後の重量を示す)
で表される。具体的には、助剤成分(B)の重量半減時間は、1500秒以下(例えば、10〜1500秒)、好ましくは1200秒以下(例えば、20〜1200秒)、さらに好ましくは1000秒以下(例えば、30〜1000秒)であってもよい。好ましい態様において、水溶性助剤(B)の重量半減時間は、800秒以下(例えば、10〜800秒)、好ましくは780秒以下(例えば、10〜750秒)、特に720秒以下(例えば、10〜720秒)である。このように、水溶性助剤(B)は、水に対する溶解速度が大きく、溶解性または溶出性が高い。本発明では、このような重量半減時間を指標として、水溶性助剤成分の含有量を10000ppm以上となるように溶出時間を調整してもよい。
【0103】
さらに、溶出時間は、溶媒に浸漬した分散体の一部をサンプリングして助剤成分の含有量を測定し、得られた測定値に基づいて調整することもできる。
【0104】
なお、溶出は、攪拌下で行ってもよい。また、溶出回数は、一回であってもよく、複数回(例えば、2〜5回程度)行ってもよい。複数回行う場合、濾過、遠心分離などの方法に有機固体粒子を回収した後、さらに同様の溶出操作を繰り返すことができる。溶出回数は、助剤成分を残存させるという観点から、通常、1回である場合が多い。
【0105】
溶出後の有機固体粒子は、濾過、遠心分離などの回収方法を用いて回収できる。得られた有機固体粒子中には、所定の濃度で助剤成分が残留しているが、助剤成分が天然物由来の化合物であるため、有機固体粒子に与える悪影響は少ない。
【0106】
なお、溶媒で抽出された助剤成分は、慣用の分離手段(例えば、蒸留、濃縮、再結晶、乾燥(フリーズドライ)など)を用いて回収できる。
【0107】
このようにして得られた有機固体粒子の形状は、粒子状であれば特に限定されず、例えば、球状、楕円体状、多角体状、角柱状、円柱状、棒状、不定形状などであってもよい。前記製造方法によると、球状、特に真球状の粒子が簡便に製造できる。なお、球状とは、真球に限られず、例えば、短径に対する長径の割合が長径/短径=1.5/1〜1/1程度である形状を包含し、好ましくは1.3/1〜1/1、さらに好ましくは1.1/1〜1/1程度である。
【0108】
有機固体粒子の平均粒子径は、特に制限されず、用途に応じて0.05μm〜1mm程度の範囲から選択でき、0.1〜800μm、好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは0.2〜50μm、特に1〜40μm程度であってもよい。また、有機固体成分(A)や水溶性助剤(B)の種類を適宜選択することにより、有機固体粒子の平均粒子径を、例えば、0.05〜100μm、好ましくは0.05〜10μm、さらに好ましくは0.05〜5μm、特に0.1〜3μm程度にまで小さくすることもできる。
【0109】
また、本発明の有機固体粒子は、粒子径の分布範囲が狭い。粒子径の変動係数([粒子径の標準偏差/平均粒子径]×100)は、例えば、60以下(例えば、5〜60程度)、さらに好ましくは50以下(例えば、10〜50程度)である。
【0110】
本発明の有機固体粒子は、水溶性助剤成分(B)を水で溶出できるため、環境負荷の大きい有機溶媒を実質的に含んでない。また、溶出が困難な水溶性高分子(例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール系樹脂、澱粉類など)も実質的に含んでいない。
【0111】
また、本発明の有機固体粒子は、水溶性助剤成分を含んでいるため、前記のように保湿性に優れている。例えば、本発明の有機固体粒子を、30℃および90%RHの条件で12時間処理(吸湿処理)したときの水分量(又は吸湿量又は吸水量)は、有機固体粒子の全体に対して、8000ppm以上(例えば、9000〜100000ppm程度)の範囲から選択でき、例えば、10000ppm以上(例えば、12000〜70000ppm程度)、好ましくは15000ppm以上(例えば、18000〜50000ppm程度)、さらに好ましくは20000ppm以上(例えば、21000〜40000ppm程度)程度である。なお、前記処理に供する有機固体粒子には、絶乾状態の有機固体粒子を使用する。
【0112】
また、本発明の有機固体粒子を、前記処理後(30℃および90%RHの条件で12時間処理後)において、30℃および50%RHの条件で1時間処理(又は放置)したときの水分量(水分保持量)は、有機固体粒子の全体に対して、例えば、4000ppm以上(例えば、4500〜40000ppm程度)、好ましくは5000ppm以上(例えば、5500〜20000ppm程度)、さらに好ましくは6000ppm以上(例えば、6500〜15000ppm程度)であり、保湿性に優れている。なお、前記水分保持量は、通常、前記吸湿量よりも小さい値となる。
【0113】
以上のように本発明では、前記有機固体粒子に残存させる水溶性助剤成分の量を調整することにより、有機固体粒子に優れた保湿性(及び吸湿性)を付与できる。そのため、本発明には、前記有機固体成分(A)と、前記水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、前記水溶性助剤成分(B)を溶出して有機固体粒子を調製する方法において、前記水溶性助剤成分(B)の溶出量を調整して、水溶性助剤成分(B)を全体に対して10000ppm以上残存させることにより、有機固体粒子の保湿性を向上させる方法も含まれる。
【0114】
有機固体粒子には、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、フィラー[例えば、粉粒状フィラー又は補強剤(マイカ、クレー、タルク、ケイ酸類、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、フェライトなど)、繊維状フィラー又は補強剤(レーヨン、ナイロン、ビニロン、アラミドなどの有機繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、ホイスカーなどの無機繊維)など]、可塑剤又は軟化剤、光分解性付与剤(アナターゼ型酸化チタンなど)、滑剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候(光)安定剤など)、紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物の粉末など)、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤[油溶性有機染料などの染料;無機又は有機顔料(例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属(粉末);マグネタイト、フェライトなどの強磁性合金(粉末);磁性酸化鉄などの強磁性金属酸化物(粉末)などの強磁性材料も含む)など]、電荷制御剤(ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、アミン系化合物などの正荷電制御剤;サリチル酸金属錯体、アゾ染料金属錯体、銅フタロシアニン染料、ニトロイミダゾール誘導体、尿素誘導体などの負電荷制御剤など)、流動化剤、ワックス類[ポリエチレンワックス、エチレン共重合体ワックス、ポリプロピレンワックスなどのオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;高級脂肪酸又はその誘導体(塩、多価アルコールエステル、アミド(高級脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアルキレンビス高級脂肪酸アミド、ステアロアミドエチルステアレートなどのN−(C2-6アルキル−C16-34アルカンカルボン酸エステル)C16-34アルカンカルボン酸アミドなどのエステルアミド類など)など;エステル系ワックスなど]、架橋剤、結晶核剤、抗菌剤、防腐剤などの他の添加剤を含んでいてもよい。なお、添加剤は、分散体を構成する分散相(樹脂成分などの有機固体成分(A)を構成する各樹脂など)及びマトリックスのいずれに含有させてもよい。
【0115】
前記添加剤は、樹脂粒子の用途などに応じて選択でき、例えば、化粧品(ファンデーション、白粉、頬紅など)などの用途では、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系吸収剤、ケイ皮酸系吸収剤、p−アミノ安息香酸系吸収剤、サリチル酸系吸収剤、ジベンゾイルメタン系吸収剤、ウロカニン酸又はそのエステル、β−イソプロピルフラノン、β−カロチンなど)、前記紫外線散乱剤、着色剤などを使用してもよい。トナーなどの画像記録材料用途では、例えば、電荷制御剤、流動化剤、ワックス類、着色剤などを用いてもよい。また、塗料などの用途では、例えば、架橋剤、耐候(光)安定剤、紫外線吸収剤、流動化剤、着色剤などを使用してもよい。
【0116】
これらの添加剤は、それぞれ有効量であればよく、例えば、有機固体成分100重量部に対して、添加剤の総量は、0〜50重量部程度、好ましくは0.1〜20重量部程度、さらに好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。また、有機固体成分100重量部に対して、各添加剤は、0〜30重量部程度、好ましくは0.05〜20重量部程度、さらに好ましくは0.1〜10重量部程度であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の有機固体粒子は、水溶性助剤成分を所定の濃度で含んでいるため、吸湿性や保湿性が高く、また、長期間に亘り保湿性を保持できる。そのため、親水性や保湿性などが要求される分野、例えば、ファンデーション、白粉、頬紅、アイシャドーなどの化粧品用粒子(特に樹脂粒子)などとして有効に利用できる。さらに、本発明の有機固体粒子は、親水性溶媒に対する親和性が高い。そのため、例えば、再分散性エマルジョンなどとして利用できる他、顔料、染料などの着色剤などを含有する粒子は、湿式インク用着色粒子、水性分散媒を用いた化粧品用着色粒子、水性塗料などとして利用できる。
【実施例】
【0118】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0119】
なお、実施例及び比較例で得られた粒子の平均粒子径、残存する水溶性助剤成分量、吸湿性、および保湿量は以下のようにして測定した。
【0120】
(粒子の平均粒子径)
得られた粒子を走査型電子顕微鏡により観察し、全体形状の写真を得た。得られた写真を用い、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径より、数平均粒子径を得た。
【0121】
(粒子に残存する水溶性助剤成分量)
得られた粒子を重量比で100倍の純水中に取り、60℃で一時間超音波処理した後、メンブレン膜(孔経0.2μm,セルロースアセテート製)を用いて、固形分(粒子)を除去した。ろ過液中に含まれる成分(溶出成分)を、全有機探索計(TOC−V、島津製作所(株))製を用いて、以下の分析条件で溶出した助剤成分の量を測定した。
【0122】
TC炉温度:680℃
キャリア:高純度エア(流量150ml/分)
(粒子の吸湿性および保湿性の評価)
得られた粒子を、重量減少がなくなるまで、65℃に設定した熱風乾燥機中で乾燥させた。続いて、30℃、90%RH設定した恒温恒室槽中に12時間放置した後、重量変化を測定することにより吸湿量を得た。
【0123】
その後、粒子30℃、50%RHに設定した恒温恒湿槽中に1時間放置した後、重量を測定することにより水分量(水分保持量)を得た。
【0124】
(分散体の調製)
ポリアミド12樹脂(ダイセル・デグサ(株)製、ダイアミドL1640)、オリゴ糖(東和化成工業(株)製、還元デンプン糖化物PO−10)、ソルビトール(東和化成工業(株)製、ソルビット)を、ナイロン12/オリゴ糖/ソルビトールが重量比率で、それぞれ、30/75/25となるように混合し、二軸押出機(L/D=14)を用いて温度190℃で混練、押出し、冷却して、直径4mmのストランド状に成形された分散体を得、ペレタイザーによりカットしてペレットを得た。
【0125】
(実施例1)
得られたペレット状の分散体10gを、100mlの純水中に浸漬し、25℃で1時間、マグネティックスターラーを用いて撹拌することにより樹脂粒子の懸濁液を得た。メンブレン膜(孔経0.45μm、ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し樹脂の微粒子を回収した。回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に静置して、45℃で8時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒を用いて目視上凝集部分がなくなるまで粉砕した。
【0126】
(比較例1)
得られたペレット状の分散体10gを、100mlの純水中に浸漬し、25℃で1時間、マグネティックスターラーを用いて撹拌することにより樹脂粒子の懸濁液を得た。メンブレン膜(孔経0.45μm、ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別して樹脂の微粒子を回収した。回収した樹脂粒子を再び100mlの純水中に分散させ、超音波槽にて15分間処理した後、再び、メンブレン膜(孔経0.45μm、ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、樹脂の微粒子を回収した。回収した微粒子をさらに再び100mlの純水中に分散させ、超音波槽にて30分間処理した後、再び、メンブレン膜(孔経0.45μm、ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、微粒子を回収した。回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に静置して、45℃で8時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒を用いて目視上凝集部分がなくなるまで粉砕した。
【0127】
表1に、実施例1および比較例1で得られた粒子の粒径、TOCにより得た粒子に残留した糖成分量及び吸湿量、水分量(水分保持量)を示す。
【0128】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)を溶出して得られた有機固体粒子であって、全体に対して、10000ppm(重量基準)以上の水溶性助剤成分(B)が残存している有機固体粒子。
【請求項2】
全体に対して、15000〜50000ppmの水溶性助剤成分(B)が残存している請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項3】
全体に対して、20000〜40000ppmの水溶性助剤成分(B)が残存している請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項4】
有機固体成分(A)が熱可塑性樹脂で構成されている請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項5】
有機固体成分(A)が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース誘導体、及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項6】
助剤成分(B)が、さらに、糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種の水溶性可塑化成分(B2)を含む請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項7】
分散体において、有機固体成分(A)と助剤成分(B)との割合(重量比)が、有機固体成分(A)/助剤成分(B)=55/45〜1/99である請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項8】
平均粒子径が0.5〜40μmであり、30℃および90%RHの条件で12時間処理したときの水分量が全体に対して10000ppm以上であり、かつ前記処理後において30℃および50%RHの条件で1時間放置したときの水分量が5000ppm以上である請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項9】
溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)の残存量を全体に対して10000ppm以上(重量基準)に調整しつつ前記水溶性助剤成分(B)を溶出して請求項1記載の有機固体粒子を製造する方法。
【請求項10】
溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)を溶出して有機固体粒子を調製する方法において、前記水溶性助剤成分(B)の溶出量を調整して、水溶性助剤成分(B)を全体に対して10000ppm以上(重量基準)残存させることにより、有機固体粒子の保湿性を向上させる方法。

【公開番号】特開2006−328245(P2006−328245A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154670(P2005−154670)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】