説明

保護層を有する多層物品の製造方法

【課題】保護層を有する多層物品の新規な製造方法の提供。
【解決手段】a)硬化性保護層形成組成物を剥離ライナーの剥離コーティング側に塗布する工程と、b)剥離ライナー上で硬化性保護層形成組成物を硬化させる工程と、c)処理(b)から生じた構造から複数の剥離要素を、前記剥離要素の各々が硬化した保護層を有し、その片方の面が、取り外し可能に剥離ライナーの剥離コーティング側に付着し、硬化した保護層のその反対側が露出している態様で形成させる工程と、d)剥離要素の硬化した保護層の露出面を基材層に対して、それらの間に一定量の硬化性接着剤を介在させて貼り付け、硬化性多層物品を得る工程と、e)前記硬化性多層物品を硬化させ、その剥離要素の保護層をその基材層に粘着結合させる工程と、f)硬化した前記多層物品をその剥離ライナーから分離して、基材層に保護層が接着した多層物品を提供する工程を含んでなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の説明)
本特許出願は米国仮特許出願第60/678,992号(2005年5月9日に出願)の優先権を主張し、その全開示内容を本願明細書に参照により援用する。
【0002】
(背景技術)
本発明は、基材層に結合する保護層を有する多層物品又は積層体、特に大容量光学情報記憶媒体(例えばブルーレイディスク)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光学情報記憶媒体の新規な形である、いわゆる「ブルーレイ」Disc(BD)技術は、最近になりようやく市販されるようになった。ブルーレイディスクフォーマットは、ビデオテープ及び現行のDVD技術を置換することを目的として開発されたものであり、コンピュータデータの保存、高解像度ムービー及びテレビゲームの標準になりつつある。
【0004】
現時点では、ブルーレイ光学情報記憶ディスクは、反射層としての金属又は金属合金を有する、一方にスパッタ堆積を施した1.1mmの基材層、薄い情報層(BD−ROM用)、記録可能層(BD−R用)又は再記録可能層(BD−RE用)、及び最後に100ミクロン保護トップコート(又はカバー)層から構成される。カバー層は比較的高価な、溶媒注型された約100ミクロン厚のポリカーボネート(PC)膜からなり、接着剤を介して情報層、記録可能層又は再記録可能層、場合によっては基材と結合する。このPCフィルムには容易に傷が付き、指紋が付くため、ブルーレイディスクの現在の商業的な用途では保護カートリッジ内に包まれており、それにより生成物の著しいコスト上昇につながる。ブルーレイディスクの情報層、記録可能層若しくは再記録可能層はわずか約100ミクロン以下であり、ゆえにその表面は、従来のコンパクトディスク(CD)又はデジタル汎用ディスク(DVD)の表面の場合に許容されているよりも高い表層完全性が必要である。
【0005】
ディスク上への保護コーティングでブルーレイディスクの保護カートリッジを代替することや、あるいはより低コストであるが有効な代替物でカバー層として使用されるPCフィルムを代替する試みが現在行なわれている。PCフィルムは高価な材料であるのみならず、ディスク製造工程における組立作業が困難である。ブルーレイディスクの改善策の候補となる1つのアプローチとして、2層式のスピンコーティング可能システムが挙げられ、それは第1の94〜98ミクロン層を1.1mmの情報含有基材上へスピンコートし、続いて第2の2〜6ミクロンのハードコート層をスピンコーティングし、それにより耐摩耗性及びフィンガープリント抵抗性が付与される。別のアプローチとして、100mmの単層のスピンコーティング可能なシステムが挙げられる。それは、上述した2つの被覆操作を1つのコーティング工程にまとめ、単一のコーティング組成物を使用するものであり、それにより2コーティングシステムの機能の全てが効果的に組み合わされる。
【0006】
2コーティング又は単一コーティング保護層のどちらのアプローチが最終的に採用されとしても、ブルーレイディスク用の100ミクロンカバー層(ハードコート)を作製するには、新規な物質、製造方法及び器材が必要となる。特に新規な製造方法及び器材に必要となる要件及びそれらの開発に要する高い投資は、これまでブルーレイディスクフォーマットのより広範な利用にとり障害となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CD及びDVDの製作用の既存の器材が利用できる方法であれば、ブルーレイフォーマットの商業的な利用が加速されると考えられる。
【0008】
現在、ブルーレイディスクのカバー層は次の2つの方法のうちのいずれか1つにより調製される。すなわち1つの方法では、100ミクロンのポリカーボネート膜カバー層を、紫外線光(UV)で処理した接着剤を使用して1.1mmの熱可塑性基材に結合する。もう1つの方法では、100ミクロンのカバー層を1.1mmの熱可塑性基材上へスピンコーティングし、更にUV硬化させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、保護層を有する多層物品の製造方法であって、
a)硬化性保護層形成組成物を剥離ライナーの剥離コーティング側に塗布する工程と、
b)剥離ライナー上で硬化性保護層形成組成物を硬化させる工程と、
c)処理(b)から生じた構造から複数の剥離要素を、前記剥離要素の各々が硬化した保護層を有し、その片方の面が、取り外し可能に剥離ライナーの剥離コーティング側に付着し、硬化した保護層のその反対側が露出している態様で形成させる工程と、
d)剥離要素の硬化した保護層の露出面を基材層に対して、それらの間に一定量の硬化性接着剤を介在させて貼り付け、硬化性多層物品を得る工程と、
e)前記硬化性多層物品を硬化させ、その剥離要素の保護層をその基材層に粘着結合させる工程と、
f)硬化した前記多層物品をその剥離ライナーから分離して、基材層に保護層が接着した多層物品を提供する工程を含んでなる方法の提供に関する。
【0010】
前述の方法のブルーレイディスクの製造への適用では、既存の装置、材料及び方法を利用しながら、新規な方法において、著しく減少したコストでディスクが提供される。
【0011】
本発明における用語「硬化性保護層」とは、少なくとも1つの硬化性モノマーを含んでなる組成物の層であって、その層の硬化後に、それが接着する基材層の少なくとも1つの面を保護する層を指す。
【0012】
本発明における用語「基材層」とは、予備成形された層であって、単一の層又は個々の層による構築体から構成され、保護層が少なくとも1つの面に塗布される層を意味する。
【0013】
本発明における「硬化性」の用語は、1つ以上の硬化性モノマーを含有する組成物が完全若しくは部分的に硬化して例えば少なくとも組成物が「グリーン」強度になることを指し、その硬化は適当な手段(例えば熱硬化、UV硬化、Eビームなどの周知及び従来公知の方法)に従って行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の工程を、特にブルーレイディスク(BD)などの大容量光学情報記憶媒体(「光ディスク」)の作製に関して以下に記載する。ここで、ディスクの保護層を「カバー層」と称することとする。光ディスクの作製方法は、少なくとも、
a)硬化性カバー層形成組成物を剥離ライナーの剥離コーティング側に塗布する工程と、
b)剥離ライナー上で硬化性カバー層形成組成物を硬化させる工程と、
c)処理(b)から生じた構造から複数の剥離ディスクを、前記剥離ディスクの各々がカバー層を有し、その片方の面が、取り外し可能に剥離ライナーの剥離コーティング側に付着し、カバー層のその反対側が露出する態様で形成させる工程と、
d)剥離ディスクのカバー層の露出した面を基材層に対して、それらの間に一定量の硬化性接着剤を介在させて貼り付け、硬化性ディスク構築体を得る工程と、
e)前記硬化性ディスク構築体を硬化させ、その剥離ディスクをその基材層に結合させる工程と、
f)前記剥離ディスクを、それに結合している前記熱可塑性基材と共に剥離ライナーから分離し、光学ディスクを提供する工程を含んでなる。
【0015】
A.剥離ライナー
本発明の工程では、剥離ライナー(すなわち剥離コーティングを有する柔軟性シート又はフィルム)又は層を、光ディスクの保護カバー層部分をその上に形成するための一時的な表面として利用する。当該剥離ライナーは、剥離コーティングを適切なライナー(例えば約0.01〜約0.6mmの厚、及びディスク形の光学的情報記憶装置の直径(例えばBDの場合120mm)を上回る幅を有するポリエステルシート又はフィルム)の一方に塗布することによって得られる。
【0016】
一実施態様では、剥離コーティングは、硬化性剥離コーティング形成組成物をライナー(例えば適切な溶媒中に溶解させたUV硬化性シリコーンエポキシド及び光重合開始剤)に塗布し、その後で、紫外線に露光させて組成物を硬化させることによって得られる。
【0017】
その後の過程で熱可塑性基材にカバー層を結合させるのに用いる硬化性接着剤がUV硬化性であるとき、ライナー材料は、紫外線を透過させるために紫外線透過性である必要がある。
【0018】
好適には、本発明の方法は連続的又は半継続的な方法であり、かかる方法では、連続的又は断続的に、剥離ライナーのストリップを移動させ、その長手方向に沿って経時的な操作(硬化性カバー層形成組成物を剥離ライナーに塗布する操作)を所定の間隔で行い、カバー層形成組成物を硬化させて硬化カバー層を提供し、複数の剥離ディスクを、カバー層−剥離ライナーの一時的な構築体から形成する工程が行われる。
【0019】
B.カバー層
光学情報記憶媒体のカバー層部分は、剥離層を有する剥離ライナーの全ての面上に形成される。カバー層は、一度のみ又は何度かにわたり1つ以上の硬化性液状組成物として剥離ライナーに塗布され、硬化の後、適切な厚(例えば第1の実施態様では約0.1〜約100のミクロン厚、第2の実施態様では約0.01〜約10ミクロン厚)の層が形成される。
【0020】
一実施態様では、硬化性組成物は、ロールコーティング工程により塗布される。グラビアコーティング、浸漬(ディップ)コーティング及びカーテンコーティングはすべて、本発明において利用できる適切なロールコーティング工程である。
【0021】
カバー層が硬化性カバー層形成組成物の複数回の塗布により形成される場合、個々の塗布に用いる組成物はその他と同一であってもよく、異なってもよい。光ディスクの保護カバー層部分の形成に従来使用していた周知の硬化性組成物のいずれも本発明に利用できる。
【0022】
一実施態様では、硬化性カバー層形成組成物は、少なくとも1つの官能化コロイド状シリカ、少なくとも1つの重合性モノマー及び少なくとも1つの硬化剤を含んでなる。周知の方法に従って、硬化条件(例えば紫外線)に曝露することによって得られた硬化した組成物は、本発明に係る大容量光学情報記憶ディスクに寸法的な安定性、かき傷耐性及び耐摩耗性の保護カバー層を提供する。
【0023】
C.剥離ディスク
剥離ライナー上におけるカバー層形成組成物の硬化に続いて、複数のディスク形の単位を、例えば型抜き又はスタンピングなどの適切な操作により形成する。標準のディスクサイズは通常、外径が約120mmで、内径が15mmで、個々の保護カバー層及び付随する剥離ライナーの厚の合計の厚を有する。ディスク形の単位(本発明で「剥離ディスク」と称する)は、硬化したカバー層から形成され、剥離ライナーの剥離層側に取り外し可能に一時的に付着している。
【0024】
本発明では、剥離ディスクは熱可塑性基材の部分と容易に結合でき、それを行うことにより大容量光学情報記憶媒体の完成品が得られる。
【0025】
D.熱可塑性物質基材
本発明の方法の一実施態様では、上記の方法で得られた剥離ディスクは、通常射出成型が行われる従来のDVD製作ラインの1つの面に供給される。この製造工程段階では、剥離ディスクは、周知の方法を使用して予備成形された熱可塑性基材に永久的に結合する。
【0026】
簡単に説明すると、剥離ディスクと熱可塑性基材との結合は、所定量の硬化性接着剤を、同じサイズに予備成形された熱可塑性物質基材ディスクの反射面の内径上へ適用し、その後、その上に剥離ディスクを配置することによりなされる。本発明における予備成形された熱可塑性基材ディスクの「反射面」とは、従来公知の方法に従い反射コーティング(例えばアルミニウム又は銀合金)が塗布された基材の面のことを指す。
【0027】
剥離ディスクを熱可塑性基材ディスク上の接着剤と広い接触面を介して押し付ける際、ごくわずかな力を用いるのみで十分である。更にこの構築体を回転させ、ディスク「サンドイッチ」に付着させた接着剤を外径方向に移動させる。その後構築体を硬化条件(例えば紫外線)に曝し、剥離ディスクを熱可塑性基材に、その間に存在する硬化した接着剤を介して永久に結合させる。完成したディスク構造の典型的な寸法は、熱可塑性基材(情報層を含む)/接着材層/剥離ディスクの合計で1.1mmである。接着材層及び剥離ライナー厚なしでの剥離ディスクの合計厚は通常約100ミクロンである。ディスクの使用に際し、剥離ライナーの部品は、例えば接着したディスク構築体から剥がすことによりそこから分離され、得られる完成単位は1.1mmの基材及び100ミクロンのカバー層を有する。
【0028】
当然ながら、上記の操作の各々(剥離ライナーの製造から光ディスク単位最終組立体まで、並びにいかなる任意の操作)は、本発明の工程に特に適している自動高速機械を使用して行ってもよい。
【0029】
本発明の処理を光ディスクの製造に適用した場合の例を以下に例示する。
【実施例】
【0030】
Dr.Schenk PROmeteus MT−146/Blu−ray計測器を使用して傾斜を測定した。
【0031】
A.UV硬化性カバー層形成組成物の調製
2Lの4首フラスコ(温度計、コンデンサ、滴下漏斗及びオーバーヘッドスターラーを備える)に、300gのコロイド状シリカ水溶液(Nalco 1034A、Nalco社製、34重量%のSiO/水)、300gのメトキシプロパノール及び5.1gのフェニルトリメトキシシラン(コロイド状シリカのための官能化用試薬)を添加した。混合物を2時間、窒素下で80℃で加熱した。0.5gのトリエチルアミンのアリコートを添加し、更に1時間80℃で混合を継続させた。合計360gのメトキシプロパノールをバッチに連続的に添加しながら、バッチ温度が110℃に達するまで、混合物を加熱し、水を蒸発除去した。バッチを90℃まで冷却し、0.5gのトリメチルアミン及び15gのヘキサメチルトリシラザン(コロイド状シリカの表面上に残留する水酸基のためのキャッピング試薬)を添加した。バッチを1時間、110℃で還流加熱した。わずかに真空にし、約50gの溶媒を蒸発除去した。官能化され、キャッピングされたコロイド状シリカを含むバッチを40℃まで冷却し、67.3gのエポキシ樹脂(3,4−エポキシ−シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸エステル(Dow Chemical社製、Cyracure(商標)UVR6105))と混合した。エポキシ樹脂を完全に溶解させた後、真空にして溶媒を蒸発除去した。バッチを、13mmHgの完全な真空下で徐々に100℃まで加熱し、30分間これらの条件下に静置し、完全に揮発性物質を除去した。揮発性物質を除去した後、バッチ温度を60℃まで低下させ、77.8gの3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(Dow Chemical社製、Cyracure(商標)UVR6000)及び16.9gのJoncryl 587AC(Johnson Polymers社製、50%の活性を有するアセトン中のアクリレートポリオール)をバッチに添加した。Joncryl 587ACを完全に溶解させた後、アセトンを真空除去した。バッチを40℃まで更に冷却し、3.0gのIrgacure(登録商標)250(Ciba Specialty Chemicals社製)及び15.0gの使用前に混合した10%のIracure(登録商標)2959(Ciba Specialty Chemicals社製)/Cyracure(商標)UVR6105と混合し、触媒作用を及ぼした。
【0032】
B.UV硬化性剥離層形成組成物の調製
UV硬化性解放形成組成物は、100重量部のUV9315(GE Advanced Materials−Silicone社製、UV硬化性シリコーンエポキシド)と、2.5重量部のUV9390C(GE Advanced Materials社製、ヨウ素系光重合開始剤)とを混合し調製した。次いで、ヘキサン:20%(w/w)アセトン=9:1を含んでなる溶媒混合液中に樹脂を溶解させた。
【0033】
C.UV硬化性接着剤の調製
UV硬化性接着剤は、ポリエステル樹脂Genomer6083HD(RahnUSA社製)を78.6重量部、ヘキサンジオールジアクリレートを17.3重量部、及びDarocure 1173(Ciba Specialty Chemicals社製、ラジカル光重合開始剤)4.1重量部を、完全に溶解するまで混合して調製した。
【0034】
D.剥離ディスクの作製
約100ミクロン厚の透明なポリエステルライナー(厚さ5mil)を上記のUV硬化性剥離層形成溶液でコーティングし、剥離ライナーを調製した。1.5W/cmの強度及び1J/cmの照射量のH球を備えたFusion UVシステムを用い、コーティングを完全に硬化させた。上記のUV硬化性のカバー層形成組成物をその後、#48の巻線を使用して剥離ライナーを塗布した。1.5W/cmの強度及び3J/cmの照射量のH球を備えたFusion UVシステムを用い、コーティングを硬化させた。120mmの外径及び15mmの内径を有する剥離ディスクを、カバー層をコーティングされた剥離ライナーからスタンピングした。
【0035】
予備成形されたディスク形の熱可塑性基材に剥離ディスクを貼り付け、ディスクを完成させた。この工程では、ディスク形の基材(GE Noryl(登録商標):ポリフェニレンオキシド(PPO)及びポリスチレン(PS)のブレンド、120mmの直径及び1.1mmの厚みを有する)の内径上へ上記のUV−硬化性接着剤を塗布し、次いで基材ディスクの上に剥離ディスクを重ねて配置させた。広い接触面にわたり、わずかな押圧力を用いて剥離ディスクと接着剤を接着させた。更に得られた構築体を回転させてこの構築体の外径方向に接着剤を移動させた。1.5W/cmの強度及び3J/cmの照射量でポリエステル製剥離ライナーに紫外線を照射して透過させ、接着剤を硬化させた。剥離ライナーは、その下に積層する保護カバー層にダメージを与えることなく、容易に剥ぎ取ることができた。剥離ライナーの除去後、完成した大容量情報記憶ディスクの平均の半径方向チルトを測定した結果−0.11未満であった。
【0036】
本発明の方法を具体的な実施態様に関して記載したが、当業者であれば、本発明の範囲内で様々に変化させることができ、その部材に関して均等物に代替することができることを理解するであろう。更に、本発明の基本的範囲から逸脱することなく、多くの修飾を行い、具体的な状況又は材料を本発明の教示に適応させることが可能である。すなわち、本発明は本発明の最良の実施形態として開示される具体例に限定することを意図するものではなく、むしろ本発明は添付の特許請求の範囲に属する全ての実施態様を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層を有する多層物品の製造方法であって、
a)硬化性保護層形成組成物を剥離ライナーの剥離コーティング側に塗布する工程と、
b)剥離ライナー上で硬化性保護層形成組成物を硬化させる工程と、
c)工程(b)から生じた構造から複数の剥離要素を、前記剥離要素の各々が硬化した保護層を有し、その片方の面が、取り外し可能に剥離ライナーの剥離コーティング側に付着し、硬化した保護層のその反対側が露出する態様で形成させる工程と、
d)剥離要素の硬化した保護層の露出した面を基材層に対して、それらの間に一定量の硬化性接着剤を介在させて貼り付け、硬化性多層物品を得る工程と、
e)前記硬化性多層物品を硬化させ、その剥離要素の保護層をその基材層に粘着結合させる工程と、
f)硬化した前記多層物品をその剥離ライナーから分離して、基材層に保護層が接着した多層物品を提供する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
前記硬化性保護層形成組成物が、少なくとも1つの熱硬化性モノマー、少なくとも1つのUV硬化性モノマー、又は少なくとも1つの熱硬化性モノマーと少なくとも1つのUV硬化性モノマーの混合物、並びに任意に官能化コロイド状シリカを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記硬化性保護層形成組成物が、少なくとも1つのUV硬化性モノマー、任意に官能化コロイド状シリカ、並びにUV透過性剥離ライナーを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記剥離要素が工程(b)の構造からスタンプ又は型抜きされる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記剥離要素がディスク形である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
工程(d)の前記基材層が熱可塑性樹脂から作製される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
工程(d)の前記基材層が熱可塑性樹脂から作製され、前記基材層がディスク形で、剥離要素の直径と実質的に同じ直径を有する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
工程(a)の前記剥離ライナーが、硬化性の剥離層形成組成物をライナーに塗布し、その後で、剥離層形成組成物を硬化条件下に置くことによって得られる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記剥離層形成組成物が熱硬化性及び/又はUV硬化性である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記剥離層形成組成物がUV硬化性であり、前記ライナーがUV透過性のシートである、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記シートが柔軟性ポリエステルシートである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
硬化性の前記保護層形成組成物が、ロールコーティング操作によって剥離ライナーに塗布される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記ロールコーティング操作がグラビアコーティング、浸漬コーティング及びカーテンコーティングのいずれか1つである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記保護層が、同じ若しくは異なる組成物の連続塗布及び硬化により形成された少なくとも2枚の層から構成される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
a)硬化性ハードコート形成組成物の層、及びb)ライナーの少なくとも1つの面上に剥離層を有する剥離ライナーを含んでなる構造体であって、前記硬化性ハードコート形成組成物の層が、その硬化後に、剥離ライナーの剥離層側に取り外し可能に付着している前記構造体。
【請求項16】
前記剥離ライナーの剥離層が、硬化性剥離層形成組成物をライナーの1つの面に塗布し、その後前記剥離層形成組成物を硬化条件下に置くことにより得られる、請求項15記載の構造体。
【請求項17】
前記剥離層形成組成物が熱硬化性及び/又はUV硬化性である、請求項16記載の構造体。
【請求項18】
前記硬化性ハードコート形成組成物の層が熱硬化性及び/又はUV硬化性である、請求項15記載の構造体。
【請求項19】
前記硬化性ハードコート形成組成物の層がUV硬化性であり、前記剥離ライナーがUV透過性である、請求項15記載の構造体。
【請求項20】
前記硬化性ハードコート形成組成物の層が、その硬化後にかき傷耐性、耐摩耗性及び/又は指紋防止特性を示す、請求項15記載の構造体。
【請求項21】
保護層を有する光ディスクの製造方法であって、
a)硬化性カバー層形成組成物を剥離ライナーの剥離コーティング側に塗布する工程と、
b)剥離ライナー上で硬化性カバー層形成組成物を硬化させる工程と、
c)工程(b)から生じた構造から複数の剥離要素を、前記剥離要素の各々が硬化したカバー層を有し、その片方の面が、取り外し可能に剥離ライナーの剥離コーティング側に付着し、硬化したカバー層のその反対側が露出する態様で形成させる工程と、
d)剥離ディスクのカバー層の露出した面を、予備成形された熱可塑性基材ディスクの反射面に対して、それらの間に一定量の硬化性接着剤を介在させて貼り付け、硬化性ディスク構築体を得る工程と、
e)前記硬化性ディスク構築体を硬化させて、熱可塑性基材に剥離ディスクを結合させる工程と、
f)剥離ディスクを、それに接着している熱可塑性基材ディスクと共に剥離ライナーから分離して、光ディスクを得る工程を含んでなる方法。
【請求項22】
前記予備成形された熱可塑性基材ディスクが、約1〜約50cmの外側直径及び約0.1〜約5mmの厚を有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記予備成形された熱可塑性基材ディスクが、約3〜約15cmの外側直径及び約0.9〜約1.3mmの厚を有する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記光ディスクがブルーレイディスクである、請求項1記載の方法。
【請求項25】
カバー層の厚が約0.1〜約100ミクロンである、請求項24記載の方法。

【公表番号】特表2008−543601(P2008−543601A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511149(P2008−511149)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/015890
【国際公開番号】WO2006/121623
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507267193)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (23)
【Fターム(参考)】