説明

保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体及びその製造方法

【課題】保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム120と、基膜110と、保護膜130と、を備え、前記カーボンナノチューブフィルム120は、前記基膜110及び保護膜130の間に挟まれ、前記保護膜130は剥離層134を含み、前記剥離層134は、前記カーボンナノチューブフィルム120に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube,CNT)は1991年に飯島によって発見され、21世紀において重要な新素材の1つであると期待されている。カーボンナノチューブは機械・電気・熱特性に優れていることから、エレクトロニクス、バイオ、エネルギー、複合材料等、広範な分野での応用が期待されている。非特許文献1に掲載されて以来、カーボンナノチューブは微視的尺度の分野に広く応用されているが、それらの製造処理や、操作などが困難である。従って、カーボンナノチューブフィルムのような操作可能な巨視的尺度を有するカーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブの利用において重要な意味を有する。
【0003】
特許文献1には、従来の一種のカーボンナノチューブアレイから直接的に引き出して形成されたカーボンナノチューブフィルムが掲示されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で長さ方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブフィルムの表面と本質的に平行する。従って、該カーボンナノチューブフィルムは、良好な透明度を有する。カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、本質的に同じ方向に沿って配列されているので、該カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブの長軸方向に沿って、優れた熱・電伝導性のような特性を持っている。さらに、カーボンナノチューブフィルムは、それ自体が良好な接着性及び柔軟性を有する。従って、カーボンナノチューブフィルムは様々な分野に使用することができる。例えば、カーボンナノチューブフィルムは、タッチパネル或は液体ディスプレイなどにおいて透明な導電性のフィルムとして使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第101239712号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sumio Iijima、“Helical Microtubules of Graphitic Carbon”、Nature、1991年11月7日、第354巻、p.56‐58
【非特許文献2】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記カーボンナノチューブフィルムは非常に薄い。該カーボンナノチューブフィルムでは、隣接したカーボンナノチューブが、分子間力によって互いに結合されており、且つ該分子間力が比較的弱い。したがって、該カーボンナノチューブフィルムが、外部から機械的な力を受けて容易に破壊される。さらに、カーボンナノチューブフィルムは、大きな比表面積を有し、即ち大きな粘着性を有するので、保存、運送及び使用することが難しい。従って、産業に多量に生産することが容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、前記課題を解決するために、本発明はカーボンナノチューブフィルムが保護されることができる保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体及びその製造方法を提供する。
【0008】
本発明の保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムと、支持体と、被覆膜と、を備え、前記カーボンナノチューブフィルムは、前記支持体及び被覆膜の間に挟まれ、前記被覆膜は剥離層を含み、前記剥離層は、前記カーボンナノチューブフィルムに接触する。
【0009】
本発明の保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体の製造方法は、カーボンナノチューブアレイを提供する第一ステップと、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き出す第二ステップと、支持体と、少なくとも一つの被覆膜と、二つのローラーと、一つの第一巻軸と、を提供する第三ステップと、前記支持体、前記カーボンナノチューブフィルム及び前記被覆膜を、順次的に積み重ねて、前記二つのローラーの間の隙間に通過させて、前記第一巻軸に巻き付ける第四ステップと、前記二つのローラーの回転方向を反対にし、前記第一巻軸の回転方向を前記二つのローラーのいずれか一つのローラーの回転方向と同じように、且つ同じ回転速度で前記二つのローラー及び前記第一巻軸を回転させて、前記二つのローラーの間の作用力によって前記基膜、前記カーボンナノチューブフィルム及び前記保護膜を結合させて、保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体を形成する第五ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
従来の技術と比べて、本発明の保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体及びその製造方法は、少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルムを引き出して得るとともに、それを支持体及び被覆膜の間に挟んでいるので、前記カーボンナノチューブフィルムを保護することができる。従って、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体を大規模かつ連続的に生産することができる。前記方法によって形成された保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体は、前記第一巻軸に巻き付いているので、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体の保存及び運送が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体の実施例1の構造を示す図である。
【図2】図1に示す保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体の一つの巻軸に捲き付けた構造を示す図である。
【図3】図1に示す保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図3に示すカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図5】図1に示す保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体の製造工程を示す図である。
【図6】図1に示す保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体及びITO層を含む導電体の耐折性のテスト結果を比較したグラフである。
【図7】本発明保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体の実施例2の構造を示す図である。
【図8】本発明保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体の実施例3の構造を示す図である。
【図9】本発明保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体の実施例4の構造を示す図である。
【図10】図3に示すカーボンナノチューブフィルムを引き出す見取り図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
(実施例1)
図1を参照すると、本実施例は、一つの保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100を提供する。前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100は、基膜110、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム120、及び保護膜130、を備える。前記少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルム120は、前記基膜110の一つの表面に配置される。前記保護膜130は、前記カーボンナノチューブフィルム120の、前記基膜110に接触する表面と対向する表面に被覆されている。即ち、前記カーボンナノチューブフィルム120は、前記基膜110及び前記保護膜130の間に挟まれている。前記基膜110及び前記保護膜130の間に複数のカーボンナノチューブフィルム120が挟まれている場合、前記複数のカーボンナノチューブフィルム120を積み重ね、又は同一平面上に配置することができる。
【0014】
前記基膜110及び前記保護膜130の面積は、前記カーボンナノチューブフィルム120の面積より大きく、又は等しく設けられている。
【0015】
本実施例において、前記基膜110、前記カーボンナノチューブフィルム120及び前記保護膜130は、それぞれ長方形である。前記基膜110及び前記保護膜130の幅は、前記カーボンナノチューブフィルム120の幅より広い。前記カーボンナノチューブフィルム120は、それ自体が良好な接着性を有するので、前記基膜110に直接的に接着することができ、且つ前記カーボンナノチューブフィルム120と前記基膜110の間に強い接着力を保持できる。
【0016】
前記基膜110及び前記保護膜130の厚さは、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100を曲げることができる厚さに限られる。本実施例において、前記基膜110及び前記保護膜130の厚さは、それぞれ0.01mm〜5mmである。
【0017】
図2を参照すると、前記基膜110及び前記保護膜130は可撓性材料からなる。従って、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100を曲げて、第一巻軸160に巻き付けることができる。前記基膜110は、前記カーボンナノチューブフィルム120を支持するために用いられる。前記基膜110は、ポリマー材料、ペーパー、例えばプラスチック又は樹脂などの弾性材料からなる。前記基膜110は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ベンゾシクロブタジエン(BCB)、繊維素エステル、ポリエステル及びアクリル樹脂などの一種又は数種からなる。本実施例において、前記基膜110は、良好な透明度を有するポリエチレンテレフタラート(PET)からなる。
【0018】
前記保護膜130は、前記カーボンナノチューブフィルム120を保護するために用いられる。前記保護膜130は、保護基膜132及び剥離層134を含んでいる。前記剥離層134は、前記保護基膜132の一つの表面に配置されている。前記保護基膜132の材料は、前記基膜110の材料と同じでよい。前記保護膜130の剥離層134は、前記カーボンナノチューブフィルム120に接触するように配置される。前記剥離層134は、前記カーボンナノチューブフィルム120から剥離し易い材料からなる。即ち、前記剥離層134は、界面エネルギーが低い材料からなる。
【0019】
前記剥離層134は、分子間力によって前記カーボンナノチューブフィルム120に接着されている。前記剥離層134と前記カーボンナノチューブフィルム120の間の分子間力は、前記基膜110と前記カーボンナノチューブフィルム120の間の接着力より弱いことが好ましい。前記剥離層134は、シリコーン、パラフィン及びテフロン(登録商標)(TEFLON)などの一種又は数種からなる。本実施例において、前記剥離層134は、テフロン(登録商標)からなる。
【0020】
前記カーボンナノチューブフィルム120は、分子間力で緊密に結合された複数のカーボンナノチューブを含む。前記カーボンナノチューブフィルム120は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブフィルム120を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブフィルム120を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブフィルム120の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブフィルム120を懸架させることができることを意味する。
【0021】
本実施例において、前記カーボンナノチューブフィルム120は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。前記カーボンナノチューブフィルム120は、超配列カーボンナノチューブアレイ(非特許文献2を参照)から引き出して得られたものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム120において、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている(図10を参照する)。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルム120は、分子間力で長さ方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。また、前記複数のカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブフィルム120の表面に平行して配列されている。図3及び図4を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム120は、複数のカーボンナノチューブセグメント143aを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143aは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143aは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143aにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さが同じである。前記カーボンナノチューブフィルム120の幅は100μm〜10cmに設けられ、厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。前記カーボンナノチューブフィルム120の厚さは小さいので、良好な透明度を有する。本実施例において、前記カーボンナノチューブフィルム120の光透過率が、70%〜99%である。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。
【0022】
前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100は、更に粘着層140を備える。前記粘着層140は、前記カーボンナノチューブフィルム120及び前記基膜110の間に配置されて、前記カーボンナノチューブフィルム120を、前記基膜110に更に堅固的に固定させるために設けられている。一つの例として、前記粘着層140と前記カーボンナノチューブフィルム120は、化学結合(例えば水素結合)によって結合される。
【0023】
一つの例として、前記粘着層140は、感圧接着剤層である。前記粘着層140は、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、酢酸ビニル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸、過酸化ベンゾイル、トルエン及び酢酸エチルの混合物からなる。前記粘着層140は、高い凝集力と接着強度を持っている。
【0024】
もう一つの例として、前記粘着層140は、メタクリル酸メチル(CHC(CH)COOCH)からなる熱溶融性接着剤層である。該粘着層140を加熱し溶解させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム120を、前記基膜110に接着させる。
【0025】
もう一つの例として、前記粘着層140は、ポリメタクリル酸メチル樹脂からなる感光接着剤層である。該粘着層140を紫外線で照射して凝固させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム120を、前記基膜110に接着させる。
【0026】
図5を参照すると、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100の製造方法は次のステップを含む。
【0027】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイ150を提供する。該カーボンナノチューブアレイ150は、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献2を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイ150の製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ150を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイ150の高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイ150は、互いに平行し、基材に垂直するように生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイ150は、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0028】
本実施例において、前記カーボンを含むガスとしては例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0029】
本実施例により提供されたカーボンナノチューブアレイ150は、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0030】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイ150から、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルム120を引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブセグメントからなる連続するカーボンナノチューブフィルム120を形成する。
【0031】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブセグメントが端と端で接合され、連続するカーボンナノチューブフィルム120が形成される。該カーボンナノチューブフィルム120の一端は、分子間力で前記カーボンナノチューブアレイ150に結合され、前記カーボンナノチューブフィルム120の前記一端に対向する他端は、引き出す装置に接続されている。
【0032】
前記カーボンナノチューブアレイ150を生長させるための機材の面積が4インチである場合、前記カーボンナノチューブフィルム120の幅が0.5nm〜10cmであり、前記カーボンナノチューブフィルム120の厚さが0.5nm〜100μmである。
【0033】
第三ステップでは、一つの保護膜130と、一つの基膜110と、二つのローラー180と、一つの第一巻軸160と、を提供し、前記二つのローラー180は、互いに平行し近接するように配置されている。前記第一巻軸160は、前記二つのローラー180と所定の距離で配置されている。前記基膜110を前記二つのローラー180の間の隙間に通過させて、前記第一巻軸160に巻き付ける。
【0034】
本実施例において、前記保護膜130及び基膜110は、それぞれ一つの第二巻軸170に巻き付いている。前記保護膜130及び基膜110を、平滑的に前記二つのローラー180の間の隙間に通過させて、前記第一巻軸160に巻き付けるために、前記第一巻軸160、第二巻軸170及び前記ローラー180の巻軸を、互いに平行するように配置する。
【0035】
第四ステップでは、前記カーボンナノチューブフィルム120の前記カーボンナノチューブアレイ150から離れた端部及び前記第二巻軸170に巻き付いた前記保護膜130の端部を、前記二つのローラー180の間の隙間に通過させて、順次的に前記基膜110の表面に被覆させる。前記保護膜130は、直接的に前記カーボンナノチューブフィルム120の表面に被覆される。ここで、前記保護膜130の剥離層134は、前記カーボンナノチューブフィルム120に接触する。
【0036】
第四ステップでは、前記カーボンナノチューブフィルム120及び前記保護膜130を、順次的に前記基膜110の表面に被覆させる前に、前記基膜110の表面に更に一つの粘着層140を形成することができる。
【0037】
第五ステップでは、前記二つのローラー180の回転方向を反対にして、前記第一巻軸160の回転方向を前記二つのローラー180のいずれか一つのローラー180の回転方向と同じように、且つ同じ回転速度で前記二つのローラー180及び前記第一巻軸160を回転させて、前記二つのローラー180の間の作用力によって前記基膜110、前記カーボンナノチューブフィルム120及び前記保護膜130を結合させて、保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100を形成する。前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100を、前記カーボンナノチューブアレイ150から離れる方向に移動させ、前記第一巻軸160に巻き付ける。
【0038】
第五ステップでは、前記二つのローラー180及び前記第一巻軸160を、それぞれ一つの回転モーター(図示せず)に固定させて、連続的に回転させる。前記第三ステップで、前記基膜110を前記二つのローラー180の間の隙間に通過させて、前記第一巻軸160に巻き付けており、第五ステップにおいて、前記第一巻軸160を回転させることにより、前記基膜110と、それを覆う前記カーボンナノチューブフィルム120と、前記保護膜130と、を併せて移動させる。これにより、前記カーボンナノチューブアレイ150からのカーボンナノチューブフィルム120及び前記第二巻軸170からの保護膜130を、連続的に前記二つのローラー180の間の隙間に通過させることができる。前記二つのローラー180は、前記二つのローラー180の間の隙間を通過した前記基膜110、前記カーボンナノチューブフィルム120及び保護膜130に圧力を印加するので、前記基膜110、前記カーボンナノチューブフィルム120及び前記保護膜130は、密接されて、保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100に形成する。前記第二巻軸170は、前記第一巻軸160の回転作用に従って動作される。
【0039】
さらに、前記基膜110及び前記保護膜130の間に、複数のカーボンナノチューブフィルム120を設置する場合、複数のカーボンナノチューブアレイ150を提供して、各々のカーボンナノチューブアレイ150から引き出したカーボンナノチューブフィルム120を積層させて、前記二つのローラー180の間の隙間を通過させることができる。
【0040】
前記製造方法により、大規模かつ連続的に前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100を生産することができる。前記方法によって形成された保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100は、前記第一巻軸160に巻き付けるので、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100の保存及び運送が容易である。前記カーボンナノチューブ構造体100は、剥離層134を含むので、前記保護膜130は、前記カーボンナノチューブフィルム120から容易に剥離することができる。前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100は、希望の長さ及び形にカットすることができるので、多くの分野で使用することができる。また、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100は、良好な透明度及び柔軟性を有するので、透明な柔性導電膜として使用することができる。
【0041】
一つの実験として、前記基膜110及び前記保護膜130の間に、それぞれカーボンナノチューブフィルム120及びインジウム酸化スズ(ITO)層を配置し、二つの導電体を形成する。前記二つの導電体の、曲率及び抵抗の間の関係は、図6に示されている。例えば、半径がRである円柱体を利用して前記二つの導電体を曲げる場合、前記二つの導電体の曲率をそれぞれ1/Rとして定義する。この場合、前記曲率1/Rの増加に伴って、カーボンナノチューブフィルム120を含む前記導電体の抵抗は大きく変化しないが、前記ITO層を含む導電体の抵抗は急増する。即ち、前記カーボンナノチューブフィルム120を含む導電体は、より良好な耐折性を有する。
【0042】
本実施例において、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100の基膜110は、前記カーボンナノチューブフィルム120を支持する支持体として用いられることができるが、前記保護膜130は、前記カーボンナノチューブフィルム120の上に被覆して被覆膜として用いられることができる。
【0043】
(実施例2)
図7を参照すると、本実施例は、一つの保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体200を提供する。前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体200は、少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルム220及び二つの保護膜230、を備える。前記カーボンナノチューブフィルム220は、前記二つの保護膜230の間に挟まれている。前記二つの保護膜230の間に、複数のカーボンナノチューブフィルム220が挟まれている場合、前記複数のカーボンナノチューブフィルム220を積み重ね、又は同一平面上に配置することができる。
【0044】
前記カーボンナノチューブフィルム220及び保護膜230は、実施例1に係るカーボンナノチューブフィルム120及び保護膜130と同じである。即ち、前記二つの保護膜230は、それぞれ保護基膜232及び剥離層234を含んでいる。ここで、前記二つの保護膜230の剥離層234は、それぞれ前記カーボンナノチューブフィルム220に接触するように配置される。
【0045】
本実施例において、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体200の一つの保護膜230は、前記カーボンナノチューブフィルム220を支持する支持体として用いられることができるが、前記他の保護膜230は、前記カーボンナノチューブフィルム220の上に被覆して被覆膜として用いられることができる。
【0046】
(実施例3)
図8を参照すると、本実施例は、一つの保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体300を提供する。前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体300は、一つの基膜310、少なくとも二つのカーボンナノチューブフィルム320及び二つの保護膜330、を備える。前記一つのカーボンナノチューブフィルム320は、前記基膜310の一つの表面に配置されるが、前記他の少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルム320は、前記基膜310の前記表面に対向する表面に配置される。前記二つの保護膜330は、それぞれ前記基膜310の両側表面に配置されたカーボンナノチューブフィルム320の、前記基膜310から離れた表面を覆う。
【0047】
本実施形態に係る保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体300は、実施例1に係る保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100と比べて、次の異なる点がある。前記基膜310の対向する二つの表面に、それぞれ少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルム320が配置されているが、前記カーボンナノチューブフィルム320の前記基膜310から離れた表面は、いずれも一つの保護膜330で覆われている。前記二つの保護膜330は、いずれも保護基膜332及び剥離層334を含んでいる。ここで、前記二つの保護膜330の剥離層334は、それぞれ前記カーボンナノチューブフィルム320に接触するように配置されている。前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体300の製造方法は、実施例1に係る保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100の製造方法を二回実施するものである。即ち、まず、前記基膜310の一つの表面に、実施例1に係る保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100の製造方法により、実施例1に係る保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100の構造と同じである構造を形成した後、次に前記基膜310の前記表面に対向する表面を、実施例1に係る保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100の製造方法により、少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルム320及び一つの保護膜330で覆い、保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体300を形成する。
【0048】
本実施例において、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体300の基膜310は、それぞれその両側に配置された前記カーボンナノチューブフィルム320を支持する支持体として用いられることができるが、前記二つの保護膜330は、前記カーボンナノチューブフィルム320の上に被覆して被覆膜として用いられることができる。
【0049】
(実施例4)
図9を参照すると、本実施例は、一つの保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体400を提供する。前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体400は、一つの基膜410、少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルム420及び一つの剥離層434、を備える。前記基膜410の一つの表面に、前記カーボンナノチューブフィルム420が配置されているが、前記基膜410の前記カーボンナノチューブフィルム420が配置された表面に対向する表面に前記剥離層434が配置されている。即ち、前記剥離層434、基膜410及び少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルム420は、順次的に積層するように配置されている。前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体400を、一つの第一巻軸460に巻き付ける場合、前記カーボンナノチューブフィルム420は、前記基膜410及び剥離層434の間に挟まれているので、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体400を、前記第一巻軸460からの取り外しが容易である。
【0050】
本実施例において、前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体400の基膜410は、前記カーボンナノチューブフィルム420を支持する支持体として用いられることができるが、前記剥離層434は、前記カーボンナノチューブフィルム420の上に被覆して被覆膜として用いられることができる。
【0051】
前記保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体400の製造方法は、前記基膜410の一つの表面に剥離層434が積層されるように、一つの第二巻軸に巻き付けたものを提供した後、実施例1に係る保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体100の製造方法により、前記基膜410の前記剥離層434を有する表面に対向する表面を、少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルム420で覆い、保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体400を形成する。
【符号の説明】
【0052】
100、200、300、400 保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体
110、310、410 基膜
120、220、320、420 カーボンナノチューブフィルム
130、230、330 保護膜
132、232、332 保護基膜
134、234、334、434 剥離層
140 粘着層
160、460 第一巻軸
150 カーボンナノチューブアレイ
170 第二巻軸
180 ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムと、支持体と、被覆膜と、を備える保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体であって、
前記カーボンナノチューブフィルムは、前記支持体及び被覆膜の間に挟まれ、
前記被覆膜は剥離層を含み、
前記剥離層は、前記カーボンナノチューブフィルムに接触することを特徴とする保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体。
【請求項2】
カーボンナノチューブアレイを提供する第一ステップと、
前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き出す第二ステップと、
支持体と、少なくとも一つの被覆膜と、二つのローラーと、一つの第一巻軸と、を提供する第三ステップと、
前記支持体、前記カーボンナノチューブフィルム及び前記被覆膜を、順次的に積み重ねて、前記二つのローラーの間の隙間に通過させて、前記第一巻軸に巻き付ける第四ステップと、
前記二つのローラーの回転方向を反対にし、前記第一巻軸の回転方向を前記二つのローラーのいずれか一つのローラーの回転方向と同じように、且つ同じ回転速度で前記二つのローラー及び前記第一巻軸を回転させて、前記二つのローラーの間の作用力によって前記基膜、前記カーボンナノチューブフィルム及び前記保護膜を結合させて、保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体を形成する第五ステップと、を含むことを特徴とする保護構造体を有するカーボンナノチューブ構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−285344(P2010−285344A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131967(P2010−131967)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】