説明

信号伝送装置、および表示装置

【課題】高速回転される筐体の内部にその外部から、駆動電力と信号を途切れることなく連続的に安定して供給する。
【解決手段】電力供給部41は、ブラシ42およびスリップリング43を介して円筒部32に電力を供給する。送信部45は、円筒部32の受信部47に対して導波管46を介して映像信号を送信する。スリップリング43は、電力供給部41からブラシ42を介して供給される電力を受電し、受電した電力を中空モータ44に供給する。円筒部32に固定されている中空モータ44は、モータ制御部63からの制御に従い、導波管46を回転軸として円筒部32を高速回転させる。本発明は、全周囲立体映像表示装置に内蔵されるディスプレイに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送装置、および表示装置に関し、特に、全周囲方向から立体的に視認可能な映像を表示する場合に用いて好適な信号伝送装置、および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョン受像機などに採用されている平面ディスプレイに立体視可能な映像を表示する3次元表示技術が存在する。この3次元表示技術は、例えば、ディスプレイを見る人の左右の眼の視差を利用するものがある。具体的には、例えば、平面ディスプレイに左目用の画像と右目用の映像を交互に表示し、さらに偏光フィルタなどを介することにより、左目には左目用の映像だけが、右目には右目用の映像だけが見られるようにして立体視を実現している。
【0003】
これに対して、被写体を中心とする円周上に設けられた複数の視点から撮像した(または、コンピュータグラフィックスにより被写体を全周囲から見た状態を想定して生成した)視点の異なる複数の画像(以下、視点画像と称する)を用い、全周囲の任意の方向から見ても被写体を立体的に視認できるように表示を行う全周囲立体映像表示装置が数多く提案されている(例えば、特許文献1または2参照)。
【0004】
これらの全周囲立体映像表示装置は、その筐体が円筒形状を成しており、筐体の内部には小型のLED(light emitting diode)などを大量に配置して成す表示部が、筐体にはスリットが設けられており、表示部の映像がスリット越しに筐体の外部から視認できるようになされている。そして、筐体がモータにより高速回転されることにより、円筒形状の筐体側面を任意の方向から見るユーザに対して、表示面の映像が立体的に視認できるようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−177709号公報
【特許文献2】特開2005−114771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、全周囲立体映像表示装置においては、円筒形状の筐体がモータにより高速回転されるので、筐体内部に配置される信号処理部や表示部などに対して駆動電力と映像信号を供給することが必要となる。
【0007】
このためには、例えば、筐体内部に駆動電力を発生するバッテリと、映像信号を記憶するメモリを設ける方法も考えられるが、この方法では、バッテリやメモリの容量に依存して立体像を連続的に表示できる時間に制限が生じてしまう。
【0008】
異なる立体像を連続的に表示させるためには、高速回転される筐体の内部にその外部から、駆動電力と映像信号を途切れることなく連続的に安定して供給することが必要となるが、そのような方法は確立されていない。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高速回転される筐体の内部にその外部から、駆動電力と信号を途切れることなく連続的に安定して供給できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面である信号伝送装置は、回転される回転体の内部に設けられた信号処理部に信号を伝送する信号伝送装置において、前記回転体の回転軸に設けられた導波管と、前記導波管を介して信号を送信する、前記回転体の外部に設けられた送信部と、前記導波管を介して送信された前記信号を受信して前記信号処理部に供給する、前記回転体の内部に設けられた受信部と、前記導波管を回転軸として前記回転体とともに回転されるスリップリングと、前記回転体の外部から前記スリップリングを介して前記信号処理部に電力を供給する電力供給部とを備える。
【0011】
本発明の第1の側面である信号伝送装置は、前記スリップリングと前記信号処理部との間の電力線を非固定で接合する電力線接合部をさらに備えることができる。
【0012】
本発明の第1の側面である信号伝送装置は、前記回転体の内部に設けられ、前記導波管を回転軸として前記回転体および前記スリップリングを回転する中空モータをさらに備えることができる。
【0013】
本発明の第1の側面である信号伝送装置は、前記回転体の内部に設けられ、動力伝達手段を介して、前記導波管を回転軸として前記回転体および前記スリップリングを回転するモータをさらに備えることができる。
【0014】
前記送信部および前記受信部は、前記信号の通信にミリ波を用いることができる。
【0015】
本発明の第1の側面である信号伝送装置は、前記送信部と前記受信部との間で通信される信号の偏波方向を変換する、前記導波管の内部に設けられた偏波変換部をさらに備えることができる。
【0016】
本発明の第1の側面においては、回転体の回転軸に設けられた導波管を介して信号が通信される。また、導波管を回転軸として回転体とともに回転されるスリップリングを介して信号処理部に電力が供給される。
【0017】
本発明の第2の側面である表示装置は、回転される回転体の内部に設けられた表示部と、前記回転体の内部に設けられ、前記表示部に映像信号を供給する信号処理部と、前記回転体の回転軸に設けられた導波管と、前記導波管を介して前記映像信号を送信する、前記回転体の外部に設けられた送信部と、前記導波管を介して送信された前記映像信号を受信して前記信号処理部に供給する、前記回転体の内部に設けられた受信部と、前記導波管を回転軸として前記回転体とともに回転されるスリップリングと、前記回転体の外部から前記スリップリングを介して前記表示部および前記信号処理部に電力を供給する電力供給部とを備える。
【0018】
本発明の第2の側面においては、回転体の回転軸に設けられた導波管を介して映像信号が通信される。また、導波管を回転軸として回転体とともに回転されるスリップリングを介して表示部および信号処理部に電力が供給される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の側面によれば、駆動電力および信号を連続的に安定して供給することができる。
【0020】
本発明の第2の側面によれば、映像を連続的に安定して表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用した3次元映像表示システムの構成例を示す図である。
【図2】円筒部および台座部の内部の第1の構成例を示す立体図である。
【図3】円筒部および台座部の内部の第1の構成例を示すブロック図である。
【図4】円筒部および台座部の内部の第1の構成例を示す断面図である。
【図5】円筒部および台座部の内部の第1の構成例の第1の変形例を示す断面図である。
【図6】電力線接合部の構成例を示す立体図である。
【図7】円筒部および台座部の内部の第1の構成例の第2の変形例を示す断面図である。
【図8】円筒部および台座部の内部の第2の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態と称する)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
<1.実施の形態>
[3次元映像表示システムの構成例]
図1は、本発明を適用した3次元映像表示システムの構成例を示している。
【0024】
この3次元画像表示システム10は、画像信号処理装置20、および全周囲立体映像表示装置30から構成される。
【0025】
画像信号処理装置20は、例えば被写体を全周囲方向から撮像した映像信号を全周囲立体映像表示装置30に供給する。
【0026】
全周囲立体映像表示装置30は、台座部31および円筒部32から構成される。台座部31は、内蔵された中空モータにより高速回転する円筒部32に対して駆動電力を供給する。また、台座部31は、画像信号処理装置20から入力される映像信号を円筒部32に供給する。円筒部32は、その側面に複数のスリット33が設けられており、その内部には、円筒部32と共通の回転軸を有する中空モータ44が固定されている。さらに、円筒部32には、信号処理部51および表示部52(いずれも図2)が内蔵されている。
【0027】
[台座部31および円筒部32の内部の第1の構成例]
台座部31および円筒部32の内部の第1の構成例について、図2乃至図4を参照して説明する。
【0028】
図2は、台座部31および円筒部32の内部の第1の構成例を示す立体図であり、図3は、そのブロック図であり、図4は、その断面図である。
【0029】
台座部31は、電力供給部41、ブラシ42、導波管46a、送信部45、台座電源部61、および信号処理部62を備える。
【0030】
電力供給部41は、ブラシ42およびスリップリング43を介して円筒部32に電力を供給する。また、電力供給部41は、台座電源部61に対して電力を供給する。ブラシ42は、中空モータ44とともに高速回転する中空状のスリップリング43と電力供給部41とを電気的に接続する。
【0031】
台座部31に固定されている導波管46aは、円筒部32の回転軸として円筒部32とともに高速回転する導波管46bに非接触接合されており、導波管46bとともに導波管46を成す。
【0032】
送信部45は、導波管46aの内部に設けられたアンテナ部71から、円筒部32の受信部47に対して導波管46を介して映像信号を送信する。送信部45と受信部47との間の通信にはミリ波の円偏波を用いる。図4に示されるように、導波管46aと導波管46bとの接合部分はチョークフランジ構造73を有している。このチョークフランジ構造73により、導波管46aと導波管46bとの接合部分からのミリ波の漏洩が抑止される。
【0033】
なお、送信部45と受信部47との間の通信には、ミリ波以外の電磁波信号、またはレーザ光などの光信号を用いるようにしてもよい。光信号を用いる場合、導波管46の代わりに、ファイバ、レンズなどを用いればよい。
【0034】
台座電源部61は、台座部31に設けられた送信部45および信号処理部62に対して電力を供給する。信号処理部62は、画像信号処理装置20から入力される映像信号に所定の処理を行って送信部45に出力する。
【0035】
円筒部32は、スリップリング43、中空モータ44、受信部47、信号処理部51、表示部52、モータ制御部63、および円筒電源部64を備える。
【0036】
スリップリング43は、電力供給部41からブラシ42を介して供給される電力を受電し、受電した電力を中空モータ44に供給する。また、スリップリング43は、受電した電力を電力線84を介して円筒電源部64に供給する。
【0037】
円筒部32に固定されている中空モータ44は、モータ制御部63からの制御に従い、導波管46を回転軸として円筒部32を高速回転させる。受信部47は、導波管46bの内部に設けられたアンテナ部72により、送信部45から送信される映像信号を受信して信号処理部51に出力する。信号処理部51は、入力される映像信号に所定の処理を行って表示部52に出力する。
【0038】
表示部52は、スリット33の数と同じ数のディスプレイから構成される。全周囲立体映像表示装置30は、画像信号処理装置20から入力される、被写体の全周囲の各視点から見た場合の映像信号の画像を所定の順序で各ディスプレイに表示する。
【0039】
モータ制御部63は、中空モータ44の回転を制御する。円筒電源部64は、スリップリング43を介して供給された電力を受信部47、信号処理部51、および表示部52に対し駆動電力として供給する。
【0040】
以上に説明した第1の構成例によれば、スリップリング43を介することにより、高速回転する円筒部32に電力を安定して供給することができる。また、円筒部32の回転軸の内部に中空の導波管46を設けたので映像信号を無線により安定して通信することができる。さらに、円筒部32に回転軸を共通とする中空モータ44を内蔵したので、以下に説明する第2の構成例に比較して全周囲立体映像表示装置30の装置規模を小さくすることができる。
【0041】
[台座部31および円筒部32の内部の第1の構成例の変形例]
次に、台座部31および円筒部32の内部の第1の構成例の変形例について説明する。
【0042】
図5は、台座部31および円筒部32の内部の第1の構成例の第1の変形例の断面図を示している。
【0043】
当該第1の変形例は、図4に示された第1の構成例に対して、スリップリング43から円筒電源部64に電力を供給するための電力線上に電力線接合部100を追加したものである。
【0044】
図6は、電力線接合部100の詳細を示している。電力線接合部100は、対向する第1電極基板101と第2電極基板103とから成る。第1電極基板101の第2電極基板103に対向する面には、第1電極部102が設けられており、第1電極部102にはスリップリング43からの電力線84が接続されている。一方、第2電極基板103の第1電極基板101に対向する面の第1電極部102に接触する位置には、第2電極部104が設けられており、第2電極部104には円筒電源部64に繋がる電力線105が接続されている。なお、図示するように、第1電極部102および第2電極部104は、その一方を凸状に、他方を凹状にするなどして、第1電極部102と第2電極部104とが互いに嵌合し易く、または取り外しも容易なように形成するようにしてもよい。
【0045】
第1電極基板101と第2電極基板103とは、ハンダ付けなどにより固定されてはいないものの、第1電極部102と第2電極部104とが接触するので、スリップリング43によって受電された電力が、電力線84、第1電極部102、第2電極部104、および電力線105を介して円筒電源部64に供給されることになる。
【0046】
このような電力線接合部100を設けることにより、電力線接合部100を設けていない場合に比較して、磨耗などに起因して換装の必要が生じたスリップリング43を容易に換装することができる。
【0047】
図7は、台座部31および円筒部32の内部の第1の構成例の第2の変形例の断面図を示している。
【0048】
当該第2の変形例は、図4に示された第1の構成例に対して、中空の導波管46の内部に偏波変換部121および122を追加したものである。この場合、送信部45のアンテナ部71は、直線偏波にて映像信号を送信し、送信された直線偏波を偏波変換部121が円偏波に変換する。また、送信された映像信号の円偏波を偏波変換部122が直線偏波に変換し、受信部47のアンテナ部72が直線偏波を受信する。
【0049】
なお、上述した第1の変形例と第2の変形例を組み合わせるようにしてもよい。
【0050】
[台座部31および円筒部32の内部の第2の構成例]
次に、台座部31および円筒部32の内部の第2の構成例について、図8を参照して説明する。
【0051】
図8は、台座部31および円筒部32の内部の第2の構成例を示すブロック図である。当該第2の構成例は、図3などに示された第1の構成例が採用していた中空モータ44の代わりに、円筒部32の外部にモータ131を設け、モータ131の回転駆動力を、ベルト132を介して円筒部32に伝達することにより、円筒部32を回転駆動させる。なお、ベルト132の代わりに、ギヤなどの動力伝達手段を用いてもよい。モータ131およびベルト132以外の構成は、第1の構成例を同様であるので、その説明は省略する。
【0052】
モータ131は、第1の構成例に採用された中空モータ44に比較して安価であるので、全周囲立体映像表示装置30のコストを下げることができる。また、モータ131は、円筒部32の外部に設けられているので、故障などに際して、中空モータ44に比較して容易に換装することができる。
【0053】
当該第2の構成例に対しても、図5の変形例および図7の変形例を採用することができる。
【0054】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0055】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
30 全周囲立体映像表示装置, 31 台座部, 32 円筒部, 41 電力供給部, 42 ブラシ, 43 スリップリング, 44 中空モータ, 45 送信部, 46 導波管, 47 受信部, 73 チョークフランジ構造, 100 電力線接合部, 121,122 偏波変換部, 131 モータ, 132 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転される回転体の内部に設けられた信号処理部に信号を伝送する信号伝送装置において、
前記回転体の回転軸に設けられた導波管と、
前記導波管を介して信号を送信する、前記回転体の外部に設けられた送信部と、
前記導波管を介して送信された前記信号を受信して前記信号処理部に供給する、前記回転体の内部に設けられた受信部と、
前記導波管を回転軸として前記回転体とともに回転されるスリップリングと、
前記回転体の外部から前記スリップリングを介して前記信号処理部に電力を供給する電力供給部と
を備える信号伝送装置。
【請求項2】
前記スリップリングと前記信号処理部との間の電力線を非固定で接合する電力線接合部を
さらに備える請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記回転体の内部に設けられ、前記導波管を回転軸として前記回転体および前記スリップリングを回転する中空モータを
さらに備える請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
前記回転体の内部に設けられ、動力伝達手段を介して、前記導波管を回転軸として前記回転体および前記スリップリングを回転するモータを
さらに備える請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
前記送信部および前記受信部は、前記信号の通信にミリ波を用いる
請求項1乃至4に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
前記送信部と前記受信部との間で通信される信号の偏波方向を変換する、前記導波管の内部に設けられた偏波変換部を
さらに備える請求項5に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
回転される回転体の内部に設けられた表示部と、
前記回転体の内部に設けられ、前記表示部に映像信号を供給する信号処理部と、
前記回転体の回転軸に設けられた導波管と、
前記導波管を介して前記映像信号を送信する、前記回転体の外部に設けられた送信部と、
前記導波管を介して送信された前記映像信号を受信して前記信号処理部に供給する、前記回転体の内部に設けられた受信部と、
前記導波管を回転軸として前記回転体とともに回転されるスリップリングと、
前記回転体の外部から前記スリップリングを介して前記表示部および前記信号処理部に電力を供給する電力供給部と
を備える表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−90044(P2012−90044A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234503(P2010−234503)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】