信号伝送装置、受信回路、及び、電子機器
【課題】簡易な構成により、他チャネルとの間の周波数差を大きくする手法を採らなくても他チャネルとの間の混信問題を緩和することができる技術を提供する。
【解決手段】周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、送信処理部と受信処理部とをチャネルごとに備える。チャネルの総数は3以上である。何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。好適な態様としては、受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有する。隣接チャネルの関係にあり、且つ、全二重双方向通信が適用されるものについて、増幅部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する利得抑制部を有する。
【解決手段】周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、送信処理部と受信処理部とをチャネルごとに備える。チャネルの総数は3以上である。何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。好適な態様としては、受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有する。隣接チャネルの関係にあり、且つ、全二重双方向通信が適用されるものについて、増幅部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する利得抑制部を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、信号伝送装置、受信回路、及び、電子機器に関する。より詳細には、マルチチャネル伝送を行なう際の相互干渉の対策技術に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、電子機器内や電子機器間の信号伝送において、大容量のデータを扱うことができる技術或いは高速(例えばリアルタイム)に伝送することができる技術が求められている。従前、典型的には、電気配線で接続して信号伝送を行なっていた。高速信号伝送を実現する手法として、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)が知られている。しかしながら、最近のさらなる伝送データの大容量高速化に伴い、消費電力の増加、反射等による信号歪みの影響の増加、不要輻射の増加、等が問題となる。例えば、映像信号(撮像信号を含む)やコンピュータ画像等の信号を機器内で高速(リアルタイム)に伝送する場合にLVDSでは限界に達してきている。
【0003】
伝送データの高速化の問題に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落とす手法がある。しかしながら、この対処では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化や半導体チップサイズの拡大等が求められる。又、高速・大容量のデータを配線で引き回すことによりいわゆる電磁界障害が問題となる。
【0004】
LVDSや配線数を増やす手法における問題は、何れも、電気配線により信号を伝送することに起因している。そこで、電気配線により信号を伝送することに起因する問題を解決する手法として、プラスチックを導波路(Waveguide)に使用してミリ波帯で信号伝送を行なう技術が、例えば“A 12.5+12.5Gb/s Full-Duplex Plastic Waveguide Interconnect”(ISSCC 2011学会発表:その予稿集、発表スライドを参照)に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Satoshi Fukuda, et al.、“A 12.5+12.5Gb/s Full-Duplex Plastic Waveguide Interconnect”、2011 IEEE International Solid-State Circuits Conference ISSCC 2011 / SESSION 8 / ARCHITECTURES & CIRCUITS FOR NEXT GENERATION WIRELINE TRANSCEIVERS / 8.5、平成23年2月、p.150−152
【非特許文献2】Satoshi Fukuda, et al.、“A 12.5+12.5Gb/s Full-Duplex Plastic Waveguide Interconnect”、2011 IEEE International Solid-State Circuits Conference ISSCC 2011 / SESSION 8 / 、平成23年2月、発表スライドp.1−29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、1つの導波路で周波数帯を分けて通信を行なういわゆる周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)を適用する場合、他方のチャネル(チャンネルと称されることもある、以下では「CH」と表記することもある)が妨害波となり通信に悪影響を与えることが問題となる。一般的に「相互干渉」や「チャネル間の混信問題」と称される。典型的には、相互に隣接する2つのチャネルに関しての「隣接チャネル間の混信問題」である。
【0007】
この問題を解消するため、例えば他チャネルとの間の周波数差を一定以上に分離する方法が採られることがあるが、分離を行なえば行なうほど(つまりチャネル間の周波数差を大きくするほど)、全体として必要となる周波数帯域は増加する。この場合、通信装置や通信用半導体装置(チップ)だけではなく、導波路についても、広帯域特性が必要となる難点がある。
【0008】
従って、本開示の目的は、他チャネルとの間の周波数差を大きくする手法を採らなくても他チャネルとの間の混信問題を緩和することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様に係る信号伝送装置は、周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、チャネルの総数は3以上である。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。本開示の第1の態様に係る信号伝送装置の従属項に記載された各信号伝送装置は、本開示の第1の態様に係る信号伝送装置のさらなる有利な具体例を規定する。例えば、受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成る構成を採ることができる。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する。更には、2つのチャネルの組合せが相互に隣接チャネルの関係にある場合であれば、利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制するとよい。
【0010】
本開示の第2の態様に係る信号伝送装置は、周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、チャネルの総数は2以上である。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。
【0011】
本開示の第3の態様に係る受信回路は、チャネルの総数は3以上である場合において、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制回路を有する。
【0012】
本開示の第4の態様に係る受信回路は、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制回路を有する。
【0013】
本開示の第5の態様に係る電子機器は、周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、チャネルの総数は3以上である。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。
【0014】
本開示の第6の態様に係る電子機器は、周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、チャネルの総数は2以上である。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。
【0015】
本開示の第2の態様に係る信号伝送装置、本開示の第3及び第4の態様に係る受信回路、並びに、本開示の第5及び第6の態様に係る電子機器においても、本開示の第1の態様に係る信号伝送装置の従属項に記載された各信号伝送装置に適用される各種の技術・手法(但し、第4の態様に係る受信回路と第6の態様に係る電子機器においては全二重双方向通信に特有の事項を除く)が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、本開示の第2の態様に係る信号伝送装置、本開示の第3及び第4の態様に係る受信回路、並びに、本開示の第5及び第6の態様に係る電子機器のさらなる有利な具体例を規定する。例えば、受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成る構成を採ることができる。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する。更には、2つのチャネルの組合せが相互に隣接チャネルの関係にある場合であれば、利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制するとよい。
【0016】
本明細書で開示する技術では、マルチチャネル伝送を行なう際のチャネル数を問わず、又、全二重双方向通信と片方向二重通信の何れが適用されるのかを問わず、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を増幅部や増幅回路の前段或いは後段に設ける点に特徴がある。好適には、信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成る構成とする。何れか2つのチャネルの組合せに関して、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対して、利得を抑制する利得抑制部を増幅部や増幅回路に設ける。例えば、2つのチャネルの組合せが相互に隣接チャネルの関係にある場合であれば、利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対して、利得を抑制する利得抑制部を増幅部や増幅回路に設ける。そして、全二重双方向通信が適用される場合には、それが適用されるものに関して(好適には、更に、隣接チャネルの関係にあるものに関して)のみ前記の条件に従って利得抑制部を増幅部や増幅回路に設ければよい。
【0017】
因みに、本開示の第1の態様に係る信号伝送装置、本開示の第3の態様に係る受信回路、及び、本開示の第5の態様に係る電子機器においては、チャネルの総数を「3」以上とする。片方向二重通信が適用される場合には、それが適用されるものに関して(好適には、更に、隣接チャネルの関係にあるものに関して)のみ前記の条件に従って信号抑制部や利得抑制部を設ければよい。因みに、本開示の第2の態様に係る信号伝送装置、本開示の第4の態様に係る受信回路、及び、本開示の第6の態様に係る電子機器においては、チャネルの総数を「2」以上とする。全二重双方向通信と片方向二重通信の双方が適用される場合には、それらが適用されるものに関して(好適には、更に、隣接チャネルの関係にあるものに関して)のみ前記の条件に従って信号抑制部や利得抑制部を設ければよい。
【0018】
つまり、本明細書で開示する技術では、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を受信処理部(例えば、増幅部や増幅回路の内部或いはその前段や後段)の何れかに設ける。複数の受信処理部の全てではなく、「何れか」の受信処理部に利得抑制部を設けて、相互の干渉を抑制する。したがって、複数の受信処理部の全てについて他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を設ける場合と比べて構成を簡易にできる。信号抑制部を設けることにより妨害波の影響を抑制することができるので、他チャネルとの周波数間隔を必要以上にとらなくても他チャネルとの間の混信問題を緩和でき、周波数の有効利用が可能となる。
【0019】
本明細書で開示する技術の好適な態様においては、「下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方」に対しての利得を抑制する利得抑制部を受信処理部に設ける。例えば、増幅部や増幅回路の内部或いはその前段や後段、特に好ましくは、増幅部や増幅回路の内部に利得抑制部を設ける。本明細書で開示する技術の好適な態様においては、利得抑制部が設けられていない場合の(以下では「裸の」と記すこともある)増幅部や増幅回路の利得周波数特性が、希望チャネル(自チャネル)の下側(低域側)と上側(高域側)とで非対称であることを前提とする。利得周波数特性が「非対称」とは、下側(低域側)と上側(高域側)の一方については利得の減衰度合いが十分であるが、他方については利得の減衰度合いが不十分であることを意味する。典型的には、何れか2つのチャネルの組合せが相互に隣接チャネルの関係にある場合であり、上側隣接チャネルと下側隣接チャネルの一方については利得の減衰度合いが十分であるが、他方については利得の減衰度合いが不十分であることを意味する。これらの場合、そのままでは、利得の減衰度合いが不十分な方のチャネルからの妨害(相互に隣接チャネルの関係にある場合には、特に隣接妨害とも称する)が問題となる。
【0020】
そこで、本明細書で開示する技術の好適な態様においては、増幅部や増幅回路の裸の利得周波数特性が非対称であることを利用して、下側(低域側)のチャネルと上側(高域側)のチャネルの一方(詳しくは、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネル)についてのみ利得抑制部を設ける。相互に隣接チャネルの関係にある典型的な例では、上側隣接チャネルと下側隣接チャネルの片方(詳しくは、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方)にのみ利得抑制部を設ける。要するに、本明細書で開示する技術の好適な態様においては、増幅部や増幅回路の裸の利得周波数特性が、希望チャネルの下側と上側とで非対称である場合に、他チャネルからの妨害に対しての減衰度合いが不足する方についてのみ利得抑制部を設けて、相互の干渉を抑制する。したがって、下側(低域側)のチャネルと上側(高域側)のチャネルの双方(典型例では上側隣接チャネルと下側隣接チャネルの双方)について利得抑制部を設ける場合と比べて構成を簡易にできる。利得抑制部を設けることにより妨害波の影響を抑制することができるので、他チャネル(典型的には隣接チャネル)との周波数間隔を必要以上にとらなくても他チャネルとの間の混信問題を緩和でき、周波数の有効利用が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の第1及び第2の信号伝送装置、第3及び第4の態様に係る受信回路、並びに、本開示の第5及び第6の態様に係る電子機器によれば、簡易な構成により、他チャネルとの間の周波数差を大きくする手法を採らなくても他チャネルとの間の混信問題を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(A)〜図1(B)は、信号伝送装置或いは電子機器の全体概要を示す図である。
【図2】図2は、信号伝送装置或いは電子機器の具体的な事例を示す図である。
【図3】図3(A)〜図3(B)は、信号伝送装置の機能ブロック図である。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、相互干渉の発生原因を説明する図である。
【図5】図5(A)〜図5(B)は、相互干渉に対する本実施形態の対策原理を説明する図(その1)である。
【図6】図6(A)〜図6(D)は、相互干渉に対する本実施形態の対策原理を説明する図(その2)である。
【図7】図7(A)〜図7(B)は、トラップ回路を備えたローノイズアンプの第1例を説明する図である。
【図8】図8は、トラップ回路を備えたローノイズアンプの第2例を説明する図である。
【図9】図9は、トラップ回路を備えたローノイズアンプの第3例を説明する図である。
【図10】図10(A)〜図10(B)は、トラップ回路を備えていないローノイズアンプを説明する図である。
【図11】図11は、全二重双方向通信を適用した実施例1の送受信系統を説明する図である。
【図12】図12(A)〜図12(C)は、実施例1における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。
【図13】図13は、片方向二重通信を適用した実施例2の送受信系統を説明する図である。
【図14】図14は、実施例2における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。
【図15】図15は、実施例2に対する変形例を説明する図である。
【図16】図16(A)〜図16(C)は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した実施例3で使用されるローノイズアンプのゲイン特性の一例を示す図である。
【図17】図17(A)〜図17(C)は、実施例3の送受信系統を説明する図である。
【図18】図18(A)〜図18(B)は、実施例3に対する変形例を説明する図である。
【図19】図19(A)〜図19(C)は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した実施例4の送受信系統を説明する図である。
【図20】図20(A)〜図20(B)は、実施例4に対する変形例を説明する図である。
【図21】図21(A)〜図21(C)は、実施例5の送受信系統を説明する図である(第1例〜第3例)。
【図22】図22(A)〜図22(C)は、実施例5の送受信系統を説明する図である(第4例〜第6例)。
【図23】図23(A)〜図23(C)は、実施例6の送受信系統を説明する図である(第1例〜第3例)。
【図24】図24(A)〜図24(C)は、実施例6の送受信系統を説明する図である(第4例〜第6例)。
【図25】図25(A)〜図25(B)は、実施例7で使用されるローノイズアンプのゲイン特性の一例を説明する図である。
【図26】図26は、実施例7の送受信系統を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際にはアルファベット或いは“_n”(nは数字)或いはこれらの組合せの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0024】
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.伝送処理系統(基本):機器構成、機能ブロック詳細構成例
3.相互干渉とその対策原理:発生原因、対策手法
4.増幅部の構成例:第1例〜第4例
5.具体的な適用例
実施例1:対策手法の第1例、2CH&全二重双方向
実施例2:対策手法の第1例、2CH&片方向二重
実施例3:対策手法の第1例、3CH以上&全二重双方向と片方向二重の併用
(片方向二重通信系の漏洩パスを無視)
実施例4:対策手法の第1例、3CH以上&全二重双方向と片方向二重の併用
(片方向二重通信系の漏洩パスも考慮)
実施例5:対策手法の第2例、増幅回路以外での対応
(増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用)
実施例6:対策手法の第3例
(増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用しない)
実施例7:隣接チャネル以外の他チャネルの干渉対策
【0025】
<全体概要>
先ず、基本的な事項について以下に説明する。本明細書で開示する信号伝送装置や電子機器においては、伝送信号を受信する複数の受信処理部を受信回路に備える。複数の受信処理部と対応するように、複数の送信処理部を備える。例えば、周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備える。チャネルごとの受信処理部と対応するように、送信処理部をチャネルごとに備える。受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。全ての受信処理部に信号抑制部を設ける場合と比べて、簡易な構成で、他チャネルとの間の混信問題を緩和することができる。
【0026】
好ましい形態としては、受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部(増幅回路)を有する。増幅部の裸の利得周波数特性は、希望チャネル(自チャネル)の下側(低域側)と上側(高域側)とで非対称である。この場合に、本明細書で開示する信号伝送装置や電子機器において好ましい形態としては、その非対称性を利用して、複数の受信処理部の何れかは、妨害波に対しての利得を抑制する利得抑制部を増幅部(増幅回路)内に有するものとする。つまり、信号抑制部が、増幅部に設けられた利得抑制部から成る構成である。自チャネル以外のチャネル(両隣りの関係にある隣接チャネルに限らず、より離れた他チャネルでもよい:纏めて妨害チャネルとも記す)からの影響がある場合に、その妨害チャネルの影響を利得抑制部により抑制する。典型的には、隣接チャネルからの影響を抑制する。例えば、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあるものについて、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する利得抑制部を増幅部に設ける。つまり、利得抑制部が設けられていない場合の増幅部の裸の利得周波数特性が非対称であることを積極的に利用して、利得の減衰度合いの不足する側の隣接チャネル用にトラップ回路等の利得抑制部を設ける。
【0027】
ここで、増幅部の裸の利得周波数特性が非対称を呈する場合、自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得減衰性が不足する第1の状態と、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が不足する第2の状態とをとり得る。第1の状態では下側隣接チャネルに対しての波長選択性が劣り、第2の状態では上側隣接チャネルに対しての波長選択性が劣る。対象となる2つのチャネルの組合せにおいて、一方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性と他方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性とは、その非対称性が同じ状態である場合に限らず、混在する場合も起こり得る。つまり、一方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性が第1の状態であり、他方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性も第1の状態である第1のケース、一方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性が第2の状態であり、他方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性も第2の状態である第2のケース、一方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性が第2の状態であり、他方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は第1の状態である第3のケース、一方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性が第1の状態であり、他方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は第2の状態である第4のケース、の計4つの組合せをとり得る。よって、本実施形態の信号伝送装置や受信回路や電子機器において、増幅部に利得抑制部を設ける場合、前述の4つの組合せのそれぞれについて、「利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する」ことができるように所要のチャネル用の増幅部に利得抑制部を設ける。
【0028】
例えば、チャネルの総数が2であるとし、隣接チャネルの関係にある2つのチャネルの内、一方のチャネルの搬送周波数の方が他方のチャネルの搬送周波数よりも低いとする。便宜的に、搬送周波数の低い一方(低域側)のチャネルを低域チャネルと称し、搬送周波数の高い他方(高域側)のチャネルを高域チャネルと称する。第1のケースでは、両チャネルの増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得減衰性が不足する第1の状態にあるので、高域チャネル用の増幅部にのみ利得抑制部を設ければよく、その利得抑制部は、下側隣接チャネルである低域チャネルに対して利得を抑制するものであればよい。低域チャネル用の増幅部には、利得抑制部を設ける必要はない。第2のケースでは、両チャネルの増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が不足する第2の状態にあるので、低域チャネル用の増幅部にのみ利得抑制部を設ければよく、その利得抑制部は、上側隣接チャネルである高域チャネルに対して利得を抑制するものであればよい。高域チャネル用の増幅部には、利得抑制部を設ける必要はない。このように、両チャネルの増幅部の裸の利得周波数特性が同じ状態の非対称性を呈する第1のケースや第2のケースでは、何れか一方のチャネル用の増幅部にのみ、他方のチャネルに対する利得を抑制する利得抑制部を設ければよい。
【0029】
第3のケースでは、低域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が不足する第2の状態にあり、高域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得減衰性が不足する第1の状態にある。したがって、低域チャネル用の増幅部には上側隣接チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設け、又、高域チャネル用の増幅部には、下側隣接チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設ける。このように、第3のケースでは、何れのチャネルについても、相手チャネルに対する利得の減衰度合いが不足する(減衰度合いが不十分な)状態であるから、何れのチャネルについても、相手チャネルに対する利得を抑制する利得抑制部を設ける必要がある。
【0030】
第4のケースでは、低域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得減衰性が不足する第1の状態にあり、高域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が不足する第2の状態にある。低域チャネル用の増幅部は、利得抑制部を設けなくても、上側隣接チャネルである高域チャネルに対しての利得の減衰度合いは十分であり、又、高域チャネル用の増幅部は、利得抑制部を設けなくても、下側隣接チャネルである低域チャネルに対しての利得の減衰度合いは十分である。このように、第4のケースでは、何れのチャネルについても、相手チャネルに対する利得の減衰度合いが不足していない(減衰度合いが十分な)状態であるから、何れのチャネルについても、相手チャネルに対する利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はない。
【0031】
チャネルの総数が3以上の場合には、更に、他のチャネルとの組合せをとり、それぞれ2つのチャネルでなる各組合せの内で隣接チャネルの関係にあるものに関して、前述の4つのケースの何れに該当するのかに基づいて、利得抑制部の要否や、利得抑制部を設ける場合には何れのチャネルに対する利得を抑制するものとするのか等を決定すればよい。
【0032】
本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器においては、全二重双方向通信を適用してマルチチャネル伝送を行なう場合、全二重双方向通信が適用され且つ隣接チャネルの関係にあるものに関してのみ前記手法に従って利得抑制部を増幅部に設ける。
【0033】
或いは、本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器においては、片方向二重通信を適用してマルチチャネル伝送を行なう場合、片方向二重通信が適用され且つ隣接チャネルの関係にあるものに関してのみ前記手法に従って利得抑制部を増幅部に設ける。
【0034】
或いは、本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器においては、全二重双方向通信と片方向二重通信の双方が適用される場合は、好ましくは、全二重双方向通信と片方向二重通信についての前述の各手法を併用する。尚、全二重双方向通信と片方向二重通信の双方が適用される場合に、片方向二重通信に関しての前述の手法を併用することは必須でない。これは、以下のことに起因する。
【0035】
先ず、全二重双方向通信を適用する場合、一方の通信装置(第1通信装置)側或いは他方の通信装置(第2通信装置)側の何れか一方或いは双方そのものにおいて、自身の送信処理部から受信処理部へほぼ直接に高周波信号が漏れ込む漏洩パスができ、そのエネルギは導波路を介して相手側の通信装置の受信処理部へ漏れ込む漏洩パスでのエネルギに比べると大きい。送信処理部と受信処理部との間に介在する導波路の伝送損失が影響するか否かの相違があるからである。したがって、全二重双方向通信を適用する場合に、一方の通信装置(第1通信装置)側或いは他方の通信装置(第2通信装置)側の何れか一方或いは双方そのものにおいて、自身の送信処理部から受信処理部へほぼ直接に高周波信号が漏れ込む漏洩パスが、2つのチャネルの組合せ(典型的には隣接チャネルの組合せ)にて形成される場合には、全二重双方向通信についての前述の手法を適用するのが好ましい。
【0036】
一方、片方向二重通信を適用する場合、一方の通信装置の送信処理部から他方の通信装置の受信処理部へ導波路を介して高周波信号が伝送されるが、このとき自チャネル用の受信処理部だけでなく他チャネル用の受信処理部へ高周波信号が漏れ込む漏洩パスができる。しかしながら、導波路を介して他方の通信装置に伝送されるので、受信されるエネルギは、全二重双方向通信を適用する場合に形成される自身の送信処理部から受信処理部への漏洩パスでのエネルギに比べると小さい。一方の通信装置と他方の通信装置とを結合する導波路の伝送損失により受信側のエネルギが低下するからである。したがって、場合によっては、片方向二重通信についての前述の手法を適用することが不要となることもある。
【0037】
本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器において、前述の利得抑制部を増幅部に設けることは、原理的には、全二重双方向通信を適用するのか片方向二重通信を適用するのかを問わず、2チャネルの場合から適用可能であり、チャネル総数の最少値は「2」となる。
【0038】
例えば、チャネル総数を「3」以上とする場合に、片方向二重通信は適用せず全二重双方向通信を適用する場合、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、全二重双方向通信についての前述の手法を適用する。典型的には、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、全二重双方向通信が適用されるものについて、全二重双方向通信についての前述の手法を適用する。
【0039】
全二重双方向通信と片方向二重通信の双方が適用される場合には、全二重双方向通信と片方向二重通信についての前述の各手法を併用する。全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用する場合のチャネル総数の最少値は「3」となる。この場合、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、全二重双方向通信についての前述の手法を適用するとともに、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、片方向二重通信についての前述の手法を適用する。典型的には、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、全二重双方向通信が適用されるものについて、全二重双方向通信についての前述の手法を適用するとともに、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、片方向二重通信が適用されるものについて、片方向二重通信についての前述の手法を適用する。
【0040】
利得抑制部を設けない場合の増幅部の裸の利得周波数特性は、多くの場合、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣る非対称性を呈する。対象となる2つのチャネルの組合せに関しては前述の第2のケースとなる。したがって、本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器において好適な態様としては、この特質を利用することにより、増幅部は上側隣接チャネルについてのみ利得抑制部を有するものであればよい。
【0041】
例えば、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣る非対称性を呈する場合であって、チャネルの総数が3の場合に、第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されているとした場合に、全二重双方向通信を適用する場合には、次の3通りの態様をとり得る。3通りの態様は、導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置との間でマルチチャネル伝送を行なうに当たり、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、第3チャネル用の送信処理部、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、第3チャネル用の受信処理部のそれぞれを、第1通信装置と第2通信装置の何れに配置するかによって決まる。
【0042】
例えば、第1の態様は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を第1通信装置が有し、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を第2通信装置が有する構成である。この場合、第2チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第2チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用されると見なすことができる。そしてこの場合、第2通信装置側における第2チャネル用の送信処理部から第1チャネル用の受信処理部への漏洩パスと、第1通信装置側における第3チャネル用の送信処理部から第2チャネル用の受信処理部への漏洩パスとが、隣接チャネル間の混信問題を起こし得る。その対策として、第2通信装置においては、第1チャネル用の受信処理部の増幅部には第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設け、第1通信装置においては、第2チャネル用の受信処理部の増幅部には第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける。
【0043】
第2の態様は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を第1通信装置が有し、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を第2通信装置が有する構成である。この場合、第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用されると見なすことができる。そしてこの場合、第2通信装置側における第3チャネル用の送信処理部から第2チャネル用の受信処理部への漏洩パスが、隣接チャネル間の混信問題を起こし得る。その対策として、第2通信装置においては、第2チャネル用の受信処理部の増幅部には第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける。
【0044】
第3の態様は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を第1通信装置が有し、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を第2通信装置が有する構成である。この場合、第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用されると見なすことができる。そしてこの場合、第1通信装置側における第2チャネル用の送信処理部から第1チャネル用の受信処理部への漏洩パスが、隣接チャネル間の混信問題を起こし得る。その対策として、第1通信装置においては、第1チャネル用の受信処理部の増幅部は第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける。
【0045】
又、これらの3つの態様において更に片方向二重通信を併用することもできる。この場合、第1チャネルと第3チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、片方向二重通信に伴って、導波路を介在して第1通信装置と第2通信装置との間に送受信間の漏洩パスが形成される。ここで、第1の態様において片方向二重通信を併用する場合には、第1通信装置側における第3チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第1チャネル用の受信処理部への漏洩パスと、第1通信装置側における第1チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第3チャネル用の受信処理部への漏洩パスとが形成される。漏洩パスを形成する両チャネルは隣接チャネルの関係にはならないので、隣接チャネル間の混信問題は起こり得ない。よって、片方向二重通信を併用することに伴って、隣接チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を更に何れかの増幅部に設けるという必要はない。つまり、片方向二重通信を併用する場合であっても、全二重双方向通信に関しての第1の態様のままでよい。
【0046】
これに対して、第2の態様において片方向二重通信を併用する場合には、第1チャネルと第2チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、それに伴って、第1通信装置側における第2チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第1チャネル用の受信処理部への漏洩パスと、第1通信装置側における第1チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第2チャネル用の受信処理部への漏洩パスとが形成される。漏洩パスを形成する両チャネルは隣接チャネルの関係にあるので、隣接チャネル間の混信問題を起こし得る。その対策として、片方向二重通信を併用することに伴って、第2通信装置においては、第1チャネル用の受信処理部の増幅部には第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける(追加する)。因みに、前述のように、第2の態様においては、全二重双方向通信を適用する場合における隣接チャネル間の混信問題を抑制するために、第2通信装置においては、第2チャネル用の受信処理部の増幅部には第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部が設けられている。
【0047】
又、第3の態様において片方向二重通信を併用する場合には、第2チャネルと第3チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、それに伴って、第1通信装置側における第3チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第2チャネル用の受信処理部への漏洩パスと、第1通信装置側における第2チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第3チャネル用の受信処理部への漏洩パスとが形成される。漏洩パスを形成する両チャネルは隣接チャネルの関係にあるので、隣接チャネル間の混信問題を起こし得る。その対策として、片方向二重通信を併用することに伴って、第2通信装置においては、第2チャネル用の受信処理部の増幅部には第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける(追加する)。因みに、前述のように、第3の態様においては、全二重双方向通信を適用する場合における隣接チャネル間の混信問題を抑制するために、第1通信装置においては、第1チャネル用の受信処理部の増幅部には第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部が設けられている。
【0048】
本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器においては、信号抑制部は、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制するものであればよく、又、利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルに対しての利得を抑制するものであればよく、何れも、トラップ回路等様々な回路構成のものを採用できる。このことは、全二重双方向通信を適用するのか片方向二重通信を適用するのかを問わず適用可能である。トラップ回路としては、インダクタとコンデンサとの直列共振回路又は並列共振回路或いはその任意の組合せに係る直並列共振回路で構成したものを使用できる。何れを使用し得るかは、利得抑制部が付加される増幅部の構成に依存するが、直列共振回路や並列共振回路が最も簡易な構成である。
【0049】
好適な態様としては、利得抑制部は、増幅部の利得周波数特性が、自チャネルを中心に高域側と低域側の何れか一方が他方よりも高利得となる非対称特性を持つ場合に、利得周波数特性の非対称性による減衰性の不足分を補うものであればよく、様々な回路構成のものを採用できる。つまり、好適な態様の利得抑制部としては、希望波成分に対しては減衰性を呈さずに妨害波(非希望波)成分となる隣接チャネルに対してのみ減衰性を呈する簡易な構成であるのがよく、例えば、トラップ回路で構成されているとよい。
【0050】
トラップ回路を成すインダクタやコンデンサは、1層によるのか複数層によるのかに拘わらず、コイル状にパターン形成することにより集中定数回路として形成してもよいが、これに限らず、例えばマイクロストリップライン等のようにパターン形成して分布定数回路状にしてもよい。何れの場合も、パターン領域を少なくする上では、コンデンサ成分はインダクタをパターン形成する際の分布容量を利用するのが好ましい。
【0051】
[その他]
本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器において、好ましくは、増幅部は、カスケード接続された2つのトランジスタを有するとともに、自チャネルに周波数選択性を持つように定数が設定されたインダクタを負荷に有する増幅段を具備しているとよい。このことは、全二重双方向通信を適用するのか片方向二重通信を適用するのかを問わず適用可能である。この場合、利得抑制部は、2つのトランジスタのカスケード接続点と基準電位点との間に接続されているとよく、利得抑制部としてトラップ回路を使用する場合には直列共振回路にするとよい。つまり、増幅部をカスケードアンプ構成にし、そのカスケード接続点と基準電位点との間に直列共振回路で構成されたトラップ回路を設けるのが好適である。このようなカスケードアンプ構成をCMOS等の半導体集積回路にて実現するには、デュアルゲートMOSFET構造を利用するのが好適である。
【0052】
好ましくは、増幅段のインダクタは、ゲインアップが図られるようにパターン設計をするとよく、例えば、複数の配線層にてパターン形成し、各層のインダクタを電気回路的に並列接続することにより、インダクタの直列抵抗成分を減らすとよい。或いは又、増幅部は、相補型金属酸化膜半導体に形成されているとよい。
【0053】
ここで、増幅部は、増幅段を複数段有しているのが好適である。つまり、増幅部をカスケードアンプ構成にする場合、カスケードアンプの段数は、好ましくは複数段であるのがよい。この場合、線形性(リニアリティ)を重視して1段目の増幅段に利得抑制部を備える構成とすることもできるし、ノイズ性能を重視して1段目以外の少なくとも1つの増幅段に利得抑制部を備える構成とすることもできる。
【0054】
更には、これらを併用して、1段目の増幅段に利得抑制部を備えつつ、1段目以外の少なくとも1つの増幅段にも利得抑制部を備える構成とすることもできる。この場合、1段目の増幅段に設けられている利得抑制部と、1段目以外の少なくとも1つの増幅段に設けられている利得抑制部の少なくとも一方には、利得抑制部の選択的な使用を可能にするスイッチが設けられているとよい。こうすることで、1段目の利得抑制部と1段目以外の利得抑制部のスイッチが設けられている方を使い分けることができる。特に、双方にスイッチが設けらた構成では、1段目の利得抑制部と1段目以外の利得抑制部とを任意に使い分けることができる。
【0055】
本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器においては、送信処理部と受信処理部との間は誘電体素材で成る導波路で結合されているとよい。つまり、各チャネル用の送信処理部或いは受信処理部を、マルチチャネル伝送を行ない得るように、第1通信装置と第2通信装置の何れか配置し、第1通信装置と第2通信装置との間を導波路で結合する。そして、この導波路としては、磁性体或いはプラスチック等の誘電体で成るものを使用し得るが、特に誘電体で成るものが、可撓性、価格、入手容易性、製造容易性等の面で好適である。このことは、全二重双方向通信を適用するのか片方向二重通信を適用するのかを問わず適用可能である。
【0056】
本明細書で開示する信号伝送装置、信号伝送装置と組み合わせて使用可能な受信回路や電子機器においては、例えば、誘電体或いは磁性体で構成された導波路を筺体内に配置しておき、通信装置間を導波路で結合させることにより、導波路を伝わる高周波信号の通信を確立する。こうすることで、高速のデータ伝送を、マルチパス、伝送劣化、不要輻射等を少なくして機器内通信或いは機器間通信を実現する。このことは、全二重双方向通信を適用するのか片方向二重通信を適用するのかを問わず適用可能である。
【0057】
電気配線の接続に対して、導波路と伝送路結合部(高周波信号の伝達機能を持つ伝達構造体、カップラとも称する)の配置は、電気配線のコネクタのようにピン配置や接触位置を特定するのもではなく、相当程度(数ミリメートル〜数センチメートル)の誤差を許容できる。無線接続に対して、電磁波の損失を低くできるので、送信器の電力を低くでき、受信側の構成を簡略化できるし、機器外からの電波の干渉や、逆に、機器外への放射を抑圧することもできる。
【0058】
伝送対象信号をミリ波帯等の高周波信号に変換して伝送するので、高速伝送が可能となるし、導波路を使用することで、カップリングが良く、ロスが小さいため消費電力が小さい。導波路として、入手の容易なプラスチック等の誘電体を使用することもでき信号伝送装置及び電子機器を安価に構成できる。導波路に高周波信号が閉じ込められるため、マルチパスの影響が小さいしEMCの問題も小さい。
【0059】
信号伝送にミリ波帯等の電波の周波数帯の高周波信号を使用すれば、電気配線や光を使用する場合の問題は起きない。即ち、信号伝送を、電気配線や光によらずに電波の周波数帯の高周波信号を利用すれば、無線通信技術を適用でき、電気配線を使用する場合の難点を解消できるし、光を利用する場合よりも簡単かつ安価な構成で信号インタフェースを構築できる。サイズ・コストの面で、光を利用する場合よりも有利である。好ましくは、本実施形態においては、信号伝送は、ミリ波帯(波長が1〜10ミリメートル)の搬送周波数を主に使用するのが好適である。但し、ミリ波帯に限らず、より波長の短い例えばサブミリ波帯(波長が0.1〜1ミリメートル)やより波長の長いセンチ波帯(波長が1〜10センチメートル)等、ミリ波帯近傍の搬送周波数を使用する場合にも適用可能である。例えば、サブミリ波帯〜ミリ波帯、ミリ波帯〜センチ波帯、或いはサブミリ波帯〜ミリ波帯〜センチ波帯を使用してよい。信号伝送にミリ波帯或いはその近傍を使用すれば、他の電気配線に対して妨害を与えずに済み、電気配線(例えばフレキシブルプリント配線)を信号伝送に使ったときのようなEMC対策の必要性が低くなる。ミリ波帯或いはその近傍を使用すれば、電気配線(例えばフレキシブルプリント配線)を使ったときよりもデータレートを大きくとれるので、高精細化やフレームレートの高速化による画像信号の高速化等、高速・高データレートの伝送にも簡単に対応できる。
【0060】
<伝送処理系統(基本)>
図1〜図3は、本実施形態の信号伝送装置及び電子機器の信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。換言すると、本実施形態の信号伝送装置及び電子機器における通信処理に着目した機能ブロック図の基本を示す図である。ここで、図1は、信号伝送装置或いは電子機器の全体概要を示し、図2は、信号伝送装置或いは電子機器の具体的な事例を示し、図3は、信号伝送装置の機能ブロック図である。
【0061】
[機器構成]
図1(A)に示すように、信号伝送装置1は、2つの電子機器8(第1電子機器8_1、第2電子機器8_2)と高周波信号導波路308_31とを備えており、高周波信号導波路308を介しての機器内通信や機器間通信が可能に構成されている。高周波信号導波路308としては例えば誘電体導波路を使用するのが好適である。
【0062】
例えば、第1電子機器8_1には、2つの半導体チップ103(半導体チップ103_1、半導体チップ103_2)が搭載された基板102_1と、2つの半導体チップ103(半導体チップ103_3、半導体チップ103_4)が搭載された基板102_2とが設けられている。第1電子機器8_1内においては、半導体チップ103_1と半導体チップ103_2との間で高周波信号導波路308_11を介した片方向の通信と高周波信号導波路308_12を介した片方向の通信とを組み合わせて双方向の通信が可能になっている。又、第1電子機器8_1内においては、半導体チップ103_1と半導体チップ103_3との間で高周波信号導波路308_13を介した片方向の通信が可能になっているし、半導体チップ103_2と半導体チップ103_4との間で高周波信号導波路308_14を介した片方向の通信が可能になっている。
【0063】
第2電子機器8_2には、2つの半導体チップ203(半導体チップ203_1、半導体チップ203_2)が搭載された基板202_1と、2つの半導体チップ203(半導体チップ203_3、半導体チップ203_4)が搭載された基板202_2とが設けられている。第2電子機器8_2内においては、半導体チップ203_1と半導体チップ203_2との間で高周波信号導波路308_21を介した片方向の通信と高周波信号導波路308_22を介した片方向の通信とを組み合わせて双方向の通信が可能になっている。又、第2電子機器8_2内においては、半導体チップ203_1と半導体チップ203_3との間で高周波信号導波路308_23を介した片方向の通信が可能になっているし、半導体チップ203_2と半導体チップ203_4との間で高周波信号導波路308_24を介した片方向の通信が可能になっている。
【0064】
第1電子機器8_1と第2電子機器8_2との間の機器間通信に関しては、半導体チップ103_2と半導体チップ203_2との間で高周波信号導波路308_31を介した双方向の通信が可能になっている。第1電子機器8_1と第2電子機器8_2とを纏めて1つの筐体内に収容して1つの電子機器8_3として構成し、機器内通信を行なうようにすることもできる。
【0065】
図1(B)には、第1通信装置100と第2通信装置200との間で、高周波信号導波路308を介して通信を行なう場合の機能ブロックが示されている。ここでは、一例として、半導体チップ103_2と半導体チップ203_2との間で高周波信号導波路308_31を介して全二重双方向通信(Full-duplex)を行なう系統に着目して示している。第1通信装置100(半導体チップ103_2)と第2通信装置200(半導体チップ203_2)とには、例えば、データ送受信部、信号変換部、高周波信号入出力部が設けられる。高周波信号導波路308及び高周波信号導波路308と電磁結合される複数の通信装置とから構成される信号伝送装置1において、通信装置間の高周波信号導波路308に複数の伝送パス(通信チャネル)を形成し、通信装置間で双方向のマルチプル伝送を行なう。図示しないが、1つの高周波信号導波路308に1つの伝送パス(通信チャネル)を設ける、つまり、通信チャネルごとに各別の高周波信号導波路308を使用する構成にしてもよい。又、後述の図2(B)で示すように、通信装置間で片方向二重通信(Simplex)を行なう構成にしてもよい。例えば、図2(A)において、半導体チップ103_1と半導体チップ103_2との間の高周波信号導波路308_11を介した通信及び高周波信号導波路308_12を介した通信、半導体チップ103_1と半導体チップ103_3との間の高周波信号導波路308_13を介した通信、半導体チップ103_2と半導体チップ103_4との間の高周波信号導波路308_14を介した通信が該当する。
【0066】
図2には、ビデオカメラを第1電子機器8_1として使用し、液晶や有機EL等の表示デバイスを具備した表示装置を第2電子機器8_2として使用した場合の信号伝送装置1の概要が示されている。尚、理解し易いように、第1通信装置100をビデオカメラをから取り外し、又、第2通信装置200を表示装置から取り外した状態で示している。ビデオカメラ(電子機器8_1)で撮像された被写体の画像情報は第1通信装置100によりミリ波帯の高周波信号に変換され、高周波信号導波路308_31を介して表示装置(電子機器8_2)側の第2通信装置200に伝送される。第2通信装置200は、受信したミリ波帯の高周波信号を復調して被写体の画像情報を再現し、表示装置に供給する。これにより、ビデオカメラで撮像された被写体の画像が表示装置に表示される。
【0067】
[機能ブロック詳細構成例]
図3には、信号伝送装置1の機能ブロック図の詳細が示されている。図3(A)は全二重双方向通信の場合の構成例を示し、図3(B)は片方向二重通信の場合の構成例を示す。図3(A)においては、第1通信装置100において送信系統を詳細に示しており、第2通信装置200において受信系統を詳細に示している。信号伝送装置1は、第1の無線機器の一例である第1通信装置100と第2の無線機器の一例である第2通信装置200が信号伝送路9(例えば高周波信号導波路308)を介して結合され高周波信号(例えばミリ波帯)で信号伝送を行なうようになっている。
【0068】
第1通信装置100にはミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ103が設けられ、第2通信装置200にはミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ203が設けられている。本実施形態では、ミリ波帯での通信の対象となる信号を、高速性や大容量性が求められる信号のみとし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関してはミリ波信号への変換対象としない。これらミリ波信号への変換対象としない信号(電源を含む)については、従前と同様の手法で信号の接続をとる。ミリ波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。後述する各信号生成部はミリ波信号生成部或いは電気信号変換部の一例である。
【0069】
第1通信装置100は、基板102上に、ミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ103と伝送路結合部108が搭載されている。半導体チップ103は、前段信号処理部の一例であるLSI機能部104と送信処理用の信号生成部107_1(伝送対象信号を高周波信号に変換して送信処理を行なう送信処理部TXの一例)及び受信処理用の信号生成部207_1(受信した高周波信号を伝送対象信号に変換する受信処理を行なう受信処理部RXの一例)を一体化したLSI(Large Scale Integrated Circuit)である。LSI機能部104は、第1通信装置100の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方に送信したい各種の信号を処理する回路や、相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。図示しないが、LSI機能部104、信号生成部107_1、信号生成部207_1はそれぞれ各別の構成でもよいし、何れか2つが一体化された構成にしてもよい。
【0070】
半導体チップ103は伝送路結合部108と接続される。因みに、半導体チップ103内に伝送路結合部108を内蔵した構成にすることもできる。伝送路結合部108と信号伝送路9とが結合する箇所(つまり無線信号を送信する部分)が送信箇所或いは受信箇所であり、典型的にはアンテナがこれらに該当する。
【0071】
第2通信装置200は、基板202上に、ミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ203と伝送路結合部208が搭載されている。半導体チップ203は伝送路結合部208と接続される。因みに、半導体チップ203内に伝送路結合部208を内蔵した構成にすることもできる。伝送路結合部208は、伝送路結合部108と同様のものが採用される。半導体チップ203は、後段信号処理部の一例であるLSI機能部204と受信処理用の信号生成部207_2及び送信処理用の信号生成部107_2を一体化したLSIである。図示しないが、LSI機能部204、信号生成部107_2、信号生成部207_2はそれぞれ各別の構成でもよいし、何れか2つが一体化された構成にしてもよい。
【0072】
伝送路結合部108及び伝送路結合部208は、高周波信号(ミリ波帯の電気信号)を信号伝送路9に電磁結合させるもので例えば、アンテナ結合部やアンテナ端子やアンテナ等を具備するアンテナ構造が適用される。或いは、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路そのものでもよい。
【0073】
信号生成部107_1は、LSI機能部104からの信号をミリ波信号に変換し、信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。信号生成部207_1は、信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。信号生成部107_2は、LSI機能部204からの信号をミリ波信号に変換し、信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。信号生成部207_2は、信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。送信側信号生成部110と伝送路結合部108で送信系統(送信部:送信側の通信部)が構成される。受信側信号生成部220と伝送路結合部208で受信系統(受信部:受信側の通信部)が構成される。
【0074】
送信側信号生成部110は、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するために、多重化処理部113、パラレルシリアル変換部114(PS変換部)、変調機能部(変調部115、周波数変換部116)、増幅部117を有する。増幅部117は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。なお、変調部115と周波数変換部116は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。ダイレクトコンバーション方式にすることで、広帯域伝送(Wide bandwidth)にできるし、回路構成が小型で簡易になる利点(Small and simple circuits)が得られる。
【0075】
多重化処理部113は、LSI機能部104からの信号の内で、ミリ波帯での通信の対象となる信号が複数種(N1とする)ある場合に、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重等の多重化処理を行なうことにより、複数種の信号を1系統の信号に纏める。例えば、高速性や大容量性が求められる複数種の信号をミリ波での伝送の対象として、1系統の信号に纏める。
【0076】
パラレルシリアル変換部114は、パラレルの信号をシリアルのデータ信号に変換して変調部115に供給する。変調部115は、伝送対象信号を変調して周波数変換部116に供給する。パラレルシリアル変換部114は、本構成例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられ、シリアルインタフェース仕様の場合は不要である。
【0077】
変調部115としては、基本的には、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。例えば、アナログ変調方式であれば、例えば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、例えば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が代表的である。本実施形態では、特に、受信側で同期検波方式を採用し得る方式を採る。
【0078】
周波数変換部116は、変調部115により変調された後の伝送対象信号を周波数変換してミリ波の電気信号(高周波信号)を生成して増幅部117に供給する。ミリ波の電気信号とは、概ね30ギガヘルツ〜300ギガヘルツの範囲のある周波数の電気信号をいう。「概ね」と称したのはミリ波通信による効果が得られる程度の周波数であればよく、下限は30ギガヘルツに限定されず上限は300ギガヘルツに限定されないことに基づく。
【0079】
周波数変換部116としては様々な回路構成をとり得るが、例えば、周波数混合回路(ミキサー回路)と局部発振回路とを備えた構成を採用すればよい。局部発振回路は、変調に用いる搬送波(キャリア信号、基準搬送波)を生成する。周波数混合回路は、パラレルシリアル変換部114からの信号で局部発振回路が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号を生成して増幅部117に供給する。
【0080】
増幅部117は、周波数変換後のミリ波の電気信号を増幅して伝送路結合部108に供給する。増幅部117には例えば図示しないアンテナ端子を介して双方向の伝送路結合部108に接続される。伝送路結合部108は、送信側信号生成部110によって生成されたミリ波の高周波信号を信号伝送路9に送信する。伝送路結合部108は、例えばアンテナ結合部で構成される。アンテナ結合部は伝送路結合部108(信号結合部)の一例やその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には半導体チップ内の電子回路と、チップ内又はチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップと信号伝送路9を信号結合する部分をいう。例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、信号伝送路9との電磁的な(電磁界による)結合部における構造をいい、ミリ波帯の電気信号を信号伝送路9に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。
【0081】
受信側信号生成部220は、伝送路結合部208によって受信したミリ波の電気信号を信号処理して出力信号を生成するために、増幅部224、復調機能部(周波数変換部225、復調部226)、シリアルパラレル変換部227(SP変換部)、単一化処理部228を有する。増幅部224は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。変調機能部と同様に、周波数変換部225と復調部226は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。又、注入同期(インジェクションロック)方式を適用して復調搬送信号を生成してもよい。伝送路結合部208には受信側信号生成部220が接続される。受信側の増幅部224は、伝送路結合部208に接続され、アンテナによって受信された後のミリ波の電気信号を増幅して周波数変換部225に供給する。周波数変換部225は、増幅後のミリ波の電気信号を周波数変換して周波数変換後の信号を復調部226に供給する。復調部226は、周波数変換後の信号を復調してベースバンドの信号を取得しシリアルパラレル変換部227に供給する。
【0082】
シリアルパラレル変換部227は、シリアルの受信データをパラレルの出力データに変換して単一化処理部228に供給する。シリアルパラレル変換部227は、パラレルシリアル変換部114と同様に、本構成例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられる。第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がシリアル形式の場合は、パラレルシリアル変換部114とシリアルパラレル変換部227を設けなくてもよい。
【0083】
第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がパラレル形式の場合には、入力信号をパラレルシリアル変換して半導体チップ203側へ伝送し、又半導体チップ203側からの受信信号をシリアルパラレル変換することにより、ミリ波変換対象の信号数が削減される。
【0084】
単一化処理部228は、多重化処理部113と対応するもので、1系統に纏められている信号を複数種の信号_n(nは1〜N)に分離する。例えば、1系統の信号に纏められている複数本のデータ信号を各別に分離してLSI機能部204に供給する。
【0085】
LSI機能部204は、第2通信装置200の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。
【0086】
図1との関係では、例えば、LSI機能部104から信号生成部107のパラレルシリアル変換部114まで、又、LSI機能部204からシリアルパラレル変換部227までがデータ送受信部に対応する。変調部115から増幅部117まで或いは増幅部224から復調部226までが高周波信号変換部に対応する。伝送路結合部108や伝送路結合部208が高周波信号入出力部に対応する。
【0087】
〔パラメータ設定〕
本実施形態の信号伝送装置1においては、更に、パラメータ設定機能を備える構成にしてもよい。例えば、図3(B)に示すように、第1通信装置100は第1設定値処理部7100を備え、第2通信装置200は第2設定値処理部7200を備える。送受信間の伝送特性は既知であるものとする。例えば、1つの筐体内の送信部と受信部の配置位置が変化しない場合(機器内通信の場合)や、送信部と受信部のそれぞれが各別の筐体内に配置される場合でも使用状態のときの送信部と受信部の配置位置が予め定められた状態となる場合(比較的近距離の機器間の信号伝送の場合)のように、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、送信部と受信部との間の伝送特性を予め知ることができる。各信号処理部(この例では信号生成部107や信号生成部207)は、設定値に基づいて、予め定められた信号処理を行なう。設定値処理部は、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する。
【0088】
設定値としては、伝送特性に対応した設定値や機器内や機器間の信号伝送には限るものではなく、例えば、回路素子のバラツキ補正のためのパラメータ設定も含む。例えば、回路素子のバラツキ補正のためのパラメータ設定も含むが、好ましくは、設定値処理部は、送信部と受信部との間の伝送特性に対応して予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力するのがよい。本実施形態の構成では、野外通信との比較における大きな相違点として、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。信号処理用の設定値を予め定められた値(つまり固定値)にすることによりパラメータ設定を動的に変化させずに済むので、パラメータ演算回路を削減できるし、消費電力を削減することもできる。機器内や比較的近距離の機器間の信号伝送においては通信環境が固定されるため、通信環境に依存する各種回路パラメータを予め決定することができるし、伝送条件が固定である環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。例えば、工場出荷時に最適なパラメータを求めておき、そのパラメータを装置内部に保持しておくことにより、パラメータ演算回路の削減や消費電力の削減を行なうことができる。
【0089】
信号処理のパラメータ設定としては種々のものがある。例えば、信号増幅部(振幅調整部)のゲイン設定(信号振幅設定)がある。信号増幅部は、例えば、送信電力設定や復調機能部に入力される受信レベル設定や自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)等に利用される。これらの場合、信号処理部は、入力信号の大きさを調整し調整済みの信号を出力する信号処理を行なう振幅調整部を有するものとし、設定値処理部は、入力信号の大きさを調整するための設定値を振幅調整部に入力する。信号処理のパラメータ設定の他の例としては、位相調整量の設定がある。例えば、搬送信号やクロックを別送する系で、送信信号の遅延量に合わせて位相を調整する場合である。これらの場合、信号処理部は、入力信号の位相を調整し調整済みの信号を出力する信号処理を行なう位相調整部を有するものとし、設定値処理部は、入力信号の位相を調整するための設定値を位相調整部に入力する。この位相調整量の設定を前述のゲイン設定と組み合わせた態様とすることもできる。信号処理のパラメータ設定の他の例としては、送信側で予め低域周波数成分や高域周波数成分の振幅を強調する場合での周波数特性の設定、双方向通信を行なう場合のエコーキャンセル量の設定、送信部と受信部がそれぞれ複数のアンテナを有し、送受信間で空間多重通信を行なう場合のクロストークのキャンセル量の設定等もある。更に、信号処理のパラメータ設定の他の例としては、受信した信号に基づく注入同期方式により送信側の搬送信号生成部で生成された変調用の搬送信号(変調搬送信号)と同期した復調用の搬送信号(復調搬送信号)を生成する場合の注入信号の振幅値(注入量)や位相シフト量、あるいは復調機能部に入力される受信信号と復調搬送信号の位相差の補正量等の設定がある。
【0090】
〔信号伝送路〕
ミリ波の伝搬路である信号伝送路9は、自由空間伝送路として、例えば筐体内や電子機器間の空間を伝搬する構成にしてもよいが、本実施形態では、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内等の導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を伝送路に閉じ込める構成にして、効率よく伝送させる特性を有する高周波信号導波路308とする。例えば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材を含んで構成された誘電体導波路にするとよい。誘電体導波路は、例えば、回路基板そのものでもよいし、基板上に配設されていてもよいし、基板に埋め込まれていてもよい。例えば、所定厚さと所定幅を持つ所定長さのポリスチレンその他のプラスチックを誘電体素材として使用することもでき、誘電体導波路を安価に構成できる。尚、信号伝送路9(高周波信号導波路308)は誘電体素材に代えて磁性体素材を使用することもできる。
【0091】
信号伝送路9の送受信箇所を除く周囲(例えば上面、下面、側面:但し送信箇所や受信箇所と対応する部分は除く)は、必要に応じて、遮蔽部材、反射部材、或いは、吸収部材を使用してもよい。例えば、外部からの不要な電磁波の影響を受けないように、或いは、内部からミリ波が漏れ出さないように、遮蔽材(例えば金属メッキを含む金属部材を使用する)で囲むとよい。金属部材を遮蔽材として使用すると、反射材としても機能するので、反射成分を利用することで、それによる反射波も送受信に利用でき感度が向上することが期待される。但し、信号伝送路9内の多重反射により不要な定在波が信号伝送路9内に発生することが問題となり得る。これを避けるには、信号伝送路9の送受信箇所を除く周囲は、開放としたままとしてもよいし、ミリ波を吸収する吸収部材(電波吸収体)を配置してもよい。電波吸収体を用いた場合は、反射波を送受信に利用することはできないが、側面から漏れる電波を吸収することができるので、外部への漏れを防ぐことができるし、信号伝送路9内の多重反射レベルを下げることができる。
【0092】
〔片方向通信への対応〕
図3(A)に示した構成の「双方向通信」は、ミリ波の伝送チャネルである信号伝送路9が1系統(一芯)の一芯双方向伝送となる。この実現には、時分割複信(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式と、周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)等を適用する全二重方式がある。本実施形態では、周波数分割複信を採用する。更に、図3(A)では、複数の回線を束ねて1つの回線を共用する多重化技術として、周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)を採用している。図3(A)に示した例は、通信に用いる周波数帯を半分に分割して、送信と受信に別々の周波数を使用して通信を行なう周波数分割複信(FDD)による全二重双方向通信を適用する構成となる。これに対して、信号生成部107_1と信号生成部207_1の対、或いは、信号生成部107_2と信号生成部207_2の対にすれば、図3(B)に示すように、片方向二重通信(Simplex)に対応した構成になる。
【0093】
〔接続と動作〕
入力信号を周波数変換して信号伝送するという手法は、放送や無線通信で一般的に用いられている。これらの用途では、どこまで通信できるか(熱雑音に対してのS/Nの問題)、反射やマルチパスにどう対応するか、妨害や他チャンネルとの干渉をどう抑えるか等の問題に対応できるような比較的複雑な送信機や受信機等が用いられている。
【0094】
これに対して、本実施形態で使用する信号生成部107と信号生成部207は、放送や無線通信で一般的に用いられる複雑な送信機や受信機等の使用周波数に比べて、より高い周波数帯のミリ波帯で使用され、波長λが短いため、周波数の再利用がし易く、近傍に配置された多くのデバイス間での通信をするのに適したものが使用される。
【0095】
本実施形態では、従来の電気配線を利用した信号インタフェースとは異なり、前述のようにミリ波帯で信号伝送を行なうことにより高速性と大容量に柔軟に対応できるようにしている。例えば、高速性や大容量性が求められる信号のみをミリ波帯での通信の対象としており、装置構成によっては、第1通信装置100と第2通信装置200は、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の電気配線によるインタフェース(端子・コネクタによる接続)を一部に備えることになる。
【0096】
信号生成部107は、設定値(パラメータ)に基づいて予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、LSI機能部104から入力された入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。信号生成部107及び信号生成部207は、例えば、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路で伝送路結合部108に接続され、生成されたミリ波の信号が伝送路結合部108を介して信号伝送路9に供給される。
【0097】
伝送路結合部108は、例えばアンテナ構造を有し、伝送されたミリ波の信号を電磁波に変換し、電磁波を送出する機能を有する。伝送路結合部108は信号伝送路9と電磁結合され、信号伝送路9の一方の端部に伝送路結合部108で変換された電磁波が供給される。信号伝送路9の他端には第2通信装置200側の伝送路結合部208が結合されている。信号伝送路9を第1通信装置100側の伝送路結合部108と第2通信装置200側の伝送路結合部208の間に設けることにより、信号伝送路9にはミリ波帯の電磁波が伝搬する。伝送路結合部208は、信号伝送路9の他端に伝送された電磁波を受信し、ミリ波の信号に変換して信号生成部207(ベースバンド信号生成部)に供給する。信号生成部207は、設定値(パラメータ)に基づいて予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、変換されたミリ波の信号を信号処理して出力信号(ベースバンド信号)を生成しLSI機能部204へ供給する。ここまでは第1通信装置100から第2通信装置200への信号伝送の場合で説明したが、第2通信装置200のLSI機能部204からの信号を第1通信装置100へ伝送する場合も同様に考えればよく双方向にミリ波の信号を伝送できる。
【0098】
<相互干渉とその対策原理>
[相互干渉の発生原因]
図4は、相互干渉の発生原因を説明する図である。増幅部(増幅回路)の理想的なゲイン特性を図4(A)に示し、現実的なゲイン特性を図4(B)及び図4(C)に示す。横軸はギガヘルツ(GHz)で表した周波数、縦軸はデシベル(dB)で表した利得(Gain)である(ゲイン特性図に関して以下同様)。
【0099】
増幅部は希望チャネル(希望波の周波数帯)の信号に対して共振性を持って増幅する構成であり、希望波(搬送周波数FC)にチューニングしたときの増幅部のゲイン特性(利得の周波数特性)、換言すると周波数選択特性を示す特性図は、理想的には、図4(A)に示すように、ピーク点を境に、低域側と高域側とで対称となる、つまり、利得減衰性が上下対称である。しかしながら、実際には、図4(B)に示すように、低域側の方が高域側よりも高ゲイン気味となる特性、つまり、低域側の方が高域側よりも利得減衰性が劣る特性を示したり、逆に、図4(C)に示すように、高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる特性、つまり、高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣る特性を示したりするように、非対称性を持つことがある。増幅部のゲイン特性が非対称性を持つ場合には、希望チャネルに対して下側に位置する(低域側の)隣接チャネル成分(搬送周波数FD)又は上側に位置する(高域側の)隣接チャネル成分(搬送周波数FU)が十分に減衰された状態とはならないことがある。隣接チャネル成分が受信限界レベルを超える場合、その隣接チャネル成分が復調されてしまい、いわゆる相互干渉を引き起こす。例えば、各チャネルの送信レベルと受信レベルとが同じであるとした場合、図4(B)や図4(C)に示すゲイン特性では、隣接チャネル成分が復調される。
【0100】
相互干渉を避けるには例えば、増幅部の利得周波数特性(ゲイン特性)が、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れに対しても利得周波数特性の減衰度合いが不足しないように概ね対称となるようにすればよいのであるが、回路特性のため、単純にはそうならない。多くの場合は、図4(C)に示すように、高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる特性、つまり、高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣る特性を示す。希に、図4(B)に示すように、低域側の方が高域側よりも高ゲイン気味となる特性、つまり、低域側の方が高域側よりも利得減衰性が劣る特性を示すこともある。高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる特性の方が多いのは、増幅部にチューニング性(自チャネルに対しての周波数選択性)を持たせる場合、Q値(Quality factor:共振性能)が周波数特性を有することに起因しており、多くの場合、高周波数側でのQ値の低下度合いが強くなることによる。例えば、Q値が小さくなると、ピークゲインが低下するし、帯域幅が広がり、全体的な利得の減衰度合いも緩やかになるし、Q値の低下度合いが高域側で強い場合には、高域側での利得の減衰度合いが低域側よりも緩やかになる(後述のローノイズアンプ400_1を参照)。
【0101】
[相互干渉の対策手法:第1例]
図5〜図6は、相互干渉に対する本実施形態の第1例の対策手法の原理を説明する図である。ここで、図5(A)は高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる非対称性を持つ場合における対策手法を説明する図であり、図5(B)は低域側の方が高域側よりも高ゲイン気味となる非対称性を持つ場合における対策手法を説明する図である。図6は、チャネルの総数が2であるとした場合における、利得抑制部の要否や、何れのチャネルに対する利得を抑制する利得抑制部とするのかを決定する手法を説明する図である。
【0102】
本実施形態の第1例の相互干渉対策手法では、増幅部の裸のゲイン特性が非対称性を持つと云うことを前提に、その非対称性を有効に利用して、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方についてのみの利得抑制部(利得抑制回路、妨害波除去回路)を増幅部内に設けることにより、隣接チャネルからの妨害を排除する。利得抑制部は、増幅部が自チャネルを中心に高域側と低域側の何れか一方が他方よりも高利得となる非対称特性を持つ場合に、隣接チャネルのうちの、利得周波数特性の非対称の高利得側に位置する方に対しての利得を抑制する。換言すると、増幅部が周波数選択性を持ち、利得抑制部を備えない場合の裸の利得周波数特性が、自チャネルを中心に高域側と低域側の何れか一方が他方よりも利得減衰性が劣る非対称特性を持つ場合に、利得抑制部は、隣接チャネルのうちの、その非対称の利得減衰性が劣る側に位置する方に対しての利得を抑制する。増幅部の裸のゲイン特性が非対称性であることを利用できるので、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの双方について利得抑制部を設ける場合よりも、装置や回路の構成を簡易にできる。
【0103】
つまり、第1例の対策手法において、「ゲイン特性の非対称性を(有効に)利用」とは、裸の利得周波数特性の非対称性による減衰性の不足分を補うべく、希望波に対しての低域側と高域側の何れか一方の妨害チャネルのみに関して利得抑制部を増幅部に実装することを意味する。自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を増幅部の入力側又は増幅部の出力側に配置する手法もとり得るが、第1例の対策手法は、増幅部に設けられた利得抑制部から信号抑制部が成る構成を採り、「増幅部のゲイン特性の非対称性による減衰性の不足分を増幅部において補う」という点に特徴があり、増幅部外に信号抑制部を配置する方法は採用しない。増幅部外に信号抑制部を配置する方法に関しては、第2例の対策手法において説明する。
【0104】
例えば、図5(A)に示すように、低域側の方が高域側よりも高ゲイン気味となる非対称性を持つ場合には、希望チャネル信号(搬送周波数FC)に対して、下側隣接チャネル信号(搬送周波数FD)に減衰周波数(トラップ位置とも称する)を合わせることにより、下側隣接チャネル信号を減衰させることができる。下側隣接チャネル成分を受信限界レベル以下にすることができ、その下側隣接チャネル成分が復調されることはなく、相互干渉を防止できる。一方、図5(B)に示すように、高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる非対称性を持つ場合には、希望チャネル信号(搬送周波数FC)に対して、上側隣接チャネル信号(搬送周波数FU)にトラップ位置を合わせることにより、上側隣接チャネル信号を減衰させることができる。上側隣接チャネル成分を受信限界レベル以下にすることができ、その上側隣接チャネル成分が復調されることはなく、相互干渉を防止できる。増幅部の裸のゲイン特性が持つ利得の減衰度合いの不足分を補うことができればよく、トラップ位置が多少ずれてもよい。
【0105】
「利得抑制部」としては、希望波成分に対しては、理想的には減衰性を呈さずに、妨害波(非希望波)成分に対して、理想的には大きな減衰性を呈するものがよい。例えば、増幅回路の負荷を利用する場合には、希望波成分に対しては、理想的にはインピーダンスがゼロで減衰性を呈さずに、妨害波成分に対して、理想的にはインピーダンスが無限大で大きな減衰性を呈するものがよい。又、負荷以外の形態としては、典型的にはトラップ回路で構成するのが好適であり、この場合には、希望波成分に対しては、理想的にはインピーダンスが無限大で減衰性を呈さずに、妨害波成分に対して、理想的にはインピーダンスがゼロで大きな減衰性を呈するものがよい。「トラップ回路」としては、インダクタ(誘導素子)とコンデンサ(容量素子)との直列共振回路又は並列共振回路、或いはその任意の組合せに係る回路(直並列共振回路)で構成したものを使用できる。何れを使用し得るかは、利得抑制部が付加される増幅部の構成に依存する。トラップ回路は、希望チャネル信号に対しての隣接チャネル信号等の妨害波成分にトラップ位置を合わせることにより、妨害波成分を減衰させるように回路定数が設定される。
【0106】
原理的には、直列共振回路又は並列共振回路は簡易な構成であるが、インダクタとコンデンサのバランスによってトラップ回路のQ値を設定するためトラップ帯域の幅を余り狭くできないし、定数ばらつき等のために希望波チャネル信号の近傍に位置する隣接チャネル信号のみを減衰させることが困難な場合がある。第1例の相互干渉対策手法においては、増幅部のゲイン特性が持つ減衰性の不足分を補う程度のトラップ特性であればよく、減衰量は単純な直列共振回路又は並列共振回路でも十分である。
【0107】
図6には、チャネルの総数が2であるとし、図5(A)同士の組合せや図5(B)同士の組合せや図5(A)と図5(B)との組合せとの関係における、利得抑制部(例えばトラップ回路)の要否や、何れのチャネルに対する利得を抑制する利得抑制部とするのかを決定する手法が示されている。隣接チャネルの関係にある2つのチャネルの内、搬送周波数の低い低域側のチャネルを低域チャネル(搬送周波数FC1)とし、搬送周波数の高い高域側のチャネルを高域チャネル(搬送周波数FC2)とする。
【0108】
図6(A)に示す第1例は、全体概要において述べた第1のケースを説明する図である。この場合、低域チャネルと高域チャネルの何れも、増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得の減衰度合いが不足している。そのため、高域チャネル用の増幅部には、低域チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要がある。但し、チャネルの総数が2であるため、低域チャネル用の増幅部には、下側隣接チャネル(搬送周波数FD)に対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はない。又、高域チャネル用の増幅部は、上側隣接チャネル(搬送周波数FU)に対しての利得の減衰度合いは十分であり、それ用の利得抑制部を設けなくてもよい。
【0109】
図6(B)に示す第2例は、全体概要において述べた第2のケースを説明する図である。この場合、低域チャネルと高域チャネルの何れも、増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得の減衰度合いが不足している。そのため、低域チャネル用の増幅部には、高域チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要がある。但し、チャネルの総数が2であるため、高域チャネル用の増幅部には、上側隣接チャネル(搬送周波数FU)に対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はない。又、低域チャネル用の増幅部は、下側隣接チャネル(搬送周波数FD)に対しての利得の減衰度合いは十分であり、それ用の利得抑制部を設けなくてもよい。
【0110】
図6(C)に示す第3例は、全体概要において述べた第3のケースを説明する図である。この場合、低域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得の減衰度合いが不足しており、高域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得の減衰度合いが不足している。そのため、高域チャネル用の増幅部には、低域チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要があるし、低域チャネル用の増幅部には、高域チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要がある。高域チャネル用の増幅部は、上側隣接チャネル(搬送周波数FU)に対しての利得の減衰度合いは十分であり、それ用の利得抑制部を設けなくてもよいし、低域チャネル用の増幅部は、下側隣接チャネル(搬送周波数FD)に対しての利得の減衰度合いは十分であり、それ用の利得抑制部を設けなくてもよい。
【0111】
図6(D)に示す第4例は、全体概要において述べた第4のケースを説明する図である。この場合、低域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得の減衰度合いが不足しており、高域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得の減衰度合いが不足している。図から明らかなように、低域チャネル用の増幅部は、利得抑制部を設けなくても、高域チャネルに対しての利得の減衰度合いは十分であり、又、高域チャネル用の増幅部は、利得抑制部を設けなくても、下側隣接チャネルである低域チャネルに対しての利得の減衰度合いは十分である。又、チャネルの総数が2であるため、低域チャネル用の増幅部には、下側隣接チャネル(搬送周波数FD)に対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はないし、高域チャネル用の増幅部には、上側隣接チャネル(搬送周波数FU)に対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はない。このように、チャネルの総数が2である場合の第4のケースでは、何れのチャネルについても、下側隣接チャネルや上側隣接チャネルに対する利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はない。
【0112】
以上のように、第1例の相互干渉対策手法においては、増幅部の裸のゲイン特性の非対称性を有効に用いて、下側隣接チャネル或いは上側隣接チャネルの何れか一方についてのみ利得抑制部(トラップ回路等)を設けることにより、周波数分割多重を適用したマルチチャネル伝送において干渉問題を抑制(防止)することができる。妨害波の影響を抑制することができるため、隣接チャネルとの周波数間隔を必要以上にとる必要がなく、周波数の有効利用が可能となる。
【0113】
同様にして、3チャネル以上といった多チャネル化も可能となるし、双方向通信だけでなく片方向通信においても同様に適用できる。因みに、チャネルの総数が3以上の場合には、他の隣接チャネルの組合せに関して、前述の4つのケースの何れに該当するのかに基づいて、利得抑制部の要否や、利得抑制部を設ける場合には何れのチャネルに対する利得を抑制するものとするのか等を決定する。
【0114】
<増幅部の構成例>
[トラップありローノイズアンプ:第1例]
図7は、利得抑制部の一例としてのトラップ回路を備えた低雑音増幅部(ローノイズアンプ400(LNA:Low Noise AMP)と記す、増幅部224に対応)の第1例を説明する図である。ここで、図7(A)は第1例のローノイズアンプ400_1の回路構成例を示し、図7(B)は図7(A)に示したローノイズアンプ400_1のゲイン特性の一例を示す。
【0115】
第1例のローノイズアンプ400_1は、カスケード(カスコード、縦続)接続された2つのNチャネル型のトランジスタ(具体的にはMOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)及び自チャネルに周波数選択性を持つように定数が設定された負荷インダクタを有する増幅段(増幅部)を3段備えた構成である。ここでの「カスケード接続」とは、入力側のトランジスタの主電極端の一方(ドレイン端)と出力(負荷)側のトランジスタの主電極端の一方(ソース端)とが直接に接続されていることを意味している。即ち、入力側のトランジスタのソース接地回路と、出力側のトランジスタのゲート接地回路とを縦統接統したカスケード回路を構成することを意味する。各段は、直流バイアスの設定が容易なように、コンデンサを介して交流結合する構成を採用するが、交流結合に限らず、バイアス回路を工夫して直流結合の構成にしてもよい。ローノイズアンプ400(ローノイズアンプ400_1に限らず後述の他の構成例も含む)は、例えばCMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor、相補型金属酸化膜半導体)等のシリコン集積回路として実現する。
【0116】
例えば、1段目の増幅部410は、入力側のトランジスタQ11と負荷側のトランジスタQ12とがカスケード接続されている。トランジスタQ11の主電極端の他方(ソース端)は基準電位点(例えば接地)に接続されている。トランジスタQ12の主電極端の他方(ドレイン端)は、インダクタL11を介して電源Vddに接続されている。トランジスタQ11の制御入力端(ゲート端、コントロールゲート)は、インダクタL12を介して所定のバイアス電圧BIASが供給されるとともに、結合コンデンサC12を介してローノイズアンプ400_1の入力端INと接続されている。トランジスタQ12の制御入力端(ゲート端、スクリーンゲート)は、電源Vddに接続(交流的に接地)されている。
【0117】
2段目及び3段目も、概ね1段目と同じ構成となっている。例えば、2段目の増幅部420は、入力側のトランジスタQ21と負荷側のトランジスタQ22とがカスケード接続されている。トランジスタQ21の主電極端の他方(ソース端)は基準電位点(接地)に接続されている。トランジスタQ22の主電極端の他方(ドレイン端)は、インダクタL21を介して電源Vddに接続されている。トランジスタQ21の制御入力端(ゲート端)は、抵抗素子R22を介して所定のバイアス電圧BIASが供給されるとともに、結合コンデンサC22を介して1段目の増幅部410のトランジスタQ12の主電極端の他方(ドレイン端)と接続されており1段目の増幅部410の出力信号が供給されるようになっている。トランジスタQ22の制御入力端(ゲート端)は、電源Vddに接続されている。
【0118】
3段目の増幅部430は、入力側のトランジスタQ31と負荷側のトランジスタQ32とがカスケード接続されている。トランジスタQ31の主電極端の他方(ソース端)は基準電位点(接地)に接続されている。トランジスタQ32の主電極端の他方(ドレイン端)は、インダクタL31を介して電源Vddに接続されており、トランジスタQ32の主電極端の他方(ドレイン端)とインダクタL31との接続点がローノイズアンプ400_1の出力端OUTと接続されている。トランジスタQ31の制御入力端(ゲート端)は、抵抗素子R32を介して所定のバイアス電圧BIASが供給されるとともに、結合コンデンサC32を介して2段目の増幅部420のトランジスタQ22の主電極端の他方(ドレイン端)と接続されており2段目の増幅部420の出力信号が供給されるようになっている。トランジスタQ32の制御入力端(ゲート端)は、電源Vddに接続されている。
【0119】
1段目のバイアス用のインダクタL12を2段目や3段目と同じように抵抗素子R12に置き換えることもできる。但し、インダクタL12を使用すると、入力側において高域を強調するピーキング機能(シャントピーキング)を働かせることができる。
【0120】
このように、各段の増幅部4は、入力側のトランジスタのソース端、ゲート端、及び、ドレイン端で形成されるソース接地回路と、出力側のトランジスタのソース端、ゲート端、及び、ドレイン端で形成されるゲート接地回路とを縦統接統したカスケード回路を構成している。入力側のトランジスタと出力側のトランジスタのそれぞれについて、増幅率をμ1、μ2、相互コンダクタンスをgm1、gm2、ドレイン抵抗をrd1、rd2とすると、カスケード回路全体としては、総合増幅率はμ1・μ2となり、出力抵抗は出力側のドレイン抵抗rd2のμ1倍に増加し、相互コンダクタンスはgm2であり、帰還容量は1/μ2になる。
【0121】
MOSFETはドレイン・ゲート間に容量Cdgがあり、一般にはこの値は比佼的大きく、容量Cdgを通して信号がドレイン出力側からゲート入力側に帰還し、高周波では寄生発振を起こし易いし、ミラー効果により等価的に入力容量が増加し好ましくない。これに対してカスケード回路にすれば、これらの問題を抑制することができる。因みに、このようなカスケード回路にするには、デュアルゲートMOSFETとして半導体集積回路に作り込むとよい。カスケード回路のゲート(入力側のトランジスタのゲート端)とドレイン(出力側のトランジスタのドレイン端)との間に出力側のトランジスタが介在することにより、ゲート・ドレイン間の静電遮蔽をすることができ、帰還容量を1/μ2倍に小さくすることができる。
【0122】
〔インダクタの構成例〕
ローノイズアンプ400_1は、希望波の周波数に関して周波数選択性(共振特性)を持つように、各段の負荷となるコイル(インダクタL11、インダクタL21、及び、インダクタL31)の定数が設定される。コイルのインダクタ成分と配線やトランジスタ等の寄生容量成分とで、並列共振回路が構成される。これにより、各段の増幅部は、周波数選択性を持った増幅機能が働く。
【0123】
又、各段の負荷となるインダクタL11、インダクタL21、及び、インダクタL31に加えて、1段目の入力側のトランジスタQ11に直流バイアスを与えるインダクタL12は、好ましくは、ゲインアップが図られるようにパターン設計をするとよい。例えば、各インダクタLを1つの配線層(例えば1層目)にてパターン形成することも考えられるが、複数の配線層(例えば1層目及び2層目、1層目〜3層目等)にてパターン形成し、各層のインダクタLをともに接続する(電気回路的に並列接続する)ことにより、全体としてのインダクタLの直列抵抗成分を減らすとよい。こうすることにより、インダクタLのQ値が、1つの配線層(金属層)だけによるものと比較して大きくなり、ローノイズアンプ400は、希望周波数におけるゲインが向上する、つまり利得強化が図られる(後述のローノイズアンプ400_4を参照)。因みに、Q値が大きくなることにより、帯域幅が狭くなる可能性があるが、必要十分な帯域幅は維持可能である。
【0124】
インダクタLの直列抵抗成分を減らすことにより利得強化を図る手法は、高域側のローノイズアンプ400になるほど適用することが好ましい。先に述べた「Q値の周波数特性」から類推されるように、増幅部にチューニング性(周波数選択性)を持たせる場合に、多くの場合、高周波数側でのQ値の低下度合いが強く低周波数用に比べると高周波数用の方がゲイン低下が見られることに基づく。例えば、信号伝送装置1を57ギガヘルツ帯と80ギガヘルツ帯による全二重双方向通信に対応した構成とする場合であれば、57ギガヘルツ帯用のローノイズアンプ400には適用せずに80ギガヘルツ帯用のローノイズアンプ400にのみ適用する。
【0125】
〔トラップ回路〕
第1例のローノイズアンプ400_1は、1段目の増幅部410のカスケード接続点にトラップ回路601を有する点に特徴がある。具体的には、ローノイズアンプ400_1は、トランジスタQ11とトランジスタQ12とのカスケード接続点(ノードND1と記す)と基準電位点(接地)との間に、インダクタL13とコンデンサC13との直列共振回路で構成されたトラップ回路601を有する。インダクタL13とコンデンサC13とが成す直列共振回路の共振周波数が妨害波となる隣接チャネルの搬送周波数と一致するように、インダクタL13とコンデンサC13の各定数を設定するべく、インダクタL13とコンデンサC13のパターン設計を行なう。
【0126】
インダクタL13をパターン形成する際には、例えば、1つの配線層(例えば1層目)にて形成することも考えられるが、複数の配線層にて形成し、各層のインダクタLをともに接続する(並列接続する)ことにより、インダクタLの直列抵抗成分を減らして、1つの配線層(金属層)だけによるものよりもQ値が大きくなるようにしてもよい。
【0127】
更には、トラップ回路601は、1層によるのか複数層によるのかに拘わらず、コイル状にパターン形成することにより集中定数回路として形成してもよいが、これに限らず、例えばマイクロストリップライン等のようにパターン形成して分布定数回路状にしてもよい。何れの場合も、コンデンサC成分はインダクタLをパターン形成する際の分布容量を利用するのが好ましい。
【0128】
図7(B)には、図7(A)に示したローノイズアンプ400_1のゲイン特性の一例が示されている。この例は、57ギガヘルツ帯(希望波の周波数帯)に対応したローノイズアンプ400_1のゲイン特性例(シミュレーションによる)を示しており、トラップ回路601を設けていない場合が破線で示され、トラップ回路601を設けている場合が実線で示されている。図示のように、トラップ回路601を設けていない場合のゲイン特性は、ピーク点(57ギガヘルツ近傍)を境に、高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる特性を示した、非対称性を持つ。よって、低域側と比べるとお、高域側の隣接チャネル周波数が十分にトラップされた状態とはなっておらず、高域側の隣接チャネル成分(例えば80ギガヘルツ帯)に対しての周波数選択性が劣り、このままでは、隣接チャネル成分(80ギガヘルツ帯)が復調されてしまい、いわゆる相互干渉を引き起こす。
【0129】
これに対して、80ギガヘルツ帯に共振周波数を設定したトラップ回路601を設けた場合には、図示の例ではおおよそ15デシベル(dB)程度ゲインを減衰(低下)させることができており、80ギガヘルツ帯の送信系統から57ギガヘルツ帯の受信系統に漏らされた信号のための干渉を減らすことができる。
【0130】
因みに、線形性(リニアリティ)やNF(Noise Figure:雑音指数)は1段目が最も強く影響される。ここで、利得抑制部(トラップ回路601)を1段目の増幅部410に設けることは、後述の第2例と比べると、線形性の面で有利である。信号振幅の小さな段において妨害波除去機能(トラップ機能)を働かせるからである。但し、利得抑制部(トラップ回路601)はノイズ源となり得るし、トラップ回路601の希望周波数におけるインピーダンスは無限大ではないのでピークゲインが少し低下するため、NFの面では不利である。
【0131】
[トラップありローノイズアンプ:第2例]
図8は、利得抑制部の一例としてのトラップ回路を備えたローノイズアンプ400の第2例の回路構成例を示す図である。第2例のローノイズアンプ400_2は、利得抑制部(トラップ回路)を1段目以外の増幅部4に備える点に特徴がある。図示する第2例のローノイズアンプ400_2は、2段目の増幅部420のカスケード接続点にトラップ回路602を設けている。具体的には、ローノイズアンプ400_2は、トランジスタQ21とトランジスタQ22とのカスケード接続点(ノードND2と記す)と基準電位点(接地)との間に、インダクタL23とコンデンサC23との直列共振回路で構成されたトラップ回路602を有する。その他は、トラップ回路601を備えていない点を除いて第1例と同様である。第2例の構成では、利得抑制部(トラップ回路601)を1段目以外の増幅部4に設けるので、第1例と比べると、線形性の面では不利である。信号振幅の大きな段において妨害波除去機能(トラップ機能)を働かせるからである。但し、NFへの影響度合いの低い1段目以外において妨害波除去機能(トラップ機能)を働かせるので、トラップ回路602の希望周波数におけるインピーダンスが無限大ではなくピークゲインが少し低下したとしても、第1例よりはNFの面で有利である。よって、第2例では、前述の第1例に比べてノイズ性能を改善することができる。
【0132】
[トラップありローノイズアンプ:第3例]
図9は、利得抑制部の一例としてのトラップ回路を備えたローノイズアンプ400の第3例の回路構成例を示す図である。第3例のローノイズアンプ400_3は、第1例のローノイズアンプ400_1と第2例のローノイズアンプ400_2とを組み合わせるとともに、利得抑制部(トラップ回路)の動作の有効/無効を切替え可能に構成した点に特徴がある。換言すると、第3例のローノイズアンプ400_3は、利得抑制部の選択的な使用を可能にするスイッチを使用することにより、第1例のローノイズアンプ400_1と第2例のローノイズアンプ400_2とを使い分けることを可能にしたものである。
【0133】
トラップ回路の動作の有効/無効を切替え可能にするべく、ローノイズアンプ400_3は、トラップ回路601のノードND1とは反対側に切替スイッチの機能をなすトランジスタQ13を有するとともに、トラップ回路602のノードND2とは反対側に切替スイッチの機能をなすトランジスタQ23を有する。トランジスタQ13及びトランジスタQ23はNチャネル型のトランジスタ(具体的にはMOSFET)である。トランジスタQ13は、主電極端の一方(ドレイン端)がコンデンサC13と接続され、主電極端の他方(ソース端)が基準電位点(接地)に接続され、制御入力端(ゲート端)に、スイッチをオン/オフ制御する制御信号CNT1が供給されるようになっている。トランジスタQ23は、主電極端の一方(ドレイン端)がコンデンサC23に接続され、主電極端の他方(ソース端)が基準電位点(接地)に接続され、制御入力端(ゲート端)に、スイッチをオン/オフ制御する制御信号CNT2が供給されるようになっている。
【0134】
制御信号CNT1がハイレベルのときにはスイッチとしてのトランジスタQ13がオンするのでトラップ回路601が有効に機能する一方、制御信号CNT1がローレベルのときにはスイッチとしてのトランジスタQ13がオフするのでトラップ回路601が設けられていない場合と同様になる。制御信号CNT2がハイレベルのときにはスイッチとしてのトランジスタQ23がオンするのでトラップ回路602が有効に機能する一方、制御信号CNT2がローレベルのときにはスイッチとしてのトランジスタQ23がオフするのでトラップ回路602が設けられていない場合と同様になる。
【0135】
このような第3例のローノイズアンプ400_3によれば、使用用途や要求される仕様(リニアリティ重視かノイズ性能重視か)に応じて、第1例のローノイズアンプ400_1と第2例のローノイズアンプ400_2とを使い分けることができる。又、トランジスタQ13とトランジスタQ23の双方をオンさせてトラップ回路601及びトラップ回路602の両方を有効に機能させることにより、片方だけを機能させる場合よりも減衰量をより大きくすることができ、片方だけの場合のトラップ量の不足への対処が可能である。
【0136】
〔変形例〕
前述の第3例は、第1例と第2例とを単純に組み合わせるのではなく、トラップ回路の設置位置の使い分けを可能にしたものであるが、第1例と第2例とを組み合わせる点においては、このことは必須でない。例えば、図示しないが、第3例のローノイズアンプ400_3をベースにして、トラップ回路601とトラップ回路602の双方を常時使用する構成としてもよい。或いは、第3例のローノイズアンプ400_3をベースにして、トラップ回路601とトラップ回路602の何れか一方は常時使用する構成とし、他方のみにスイッチ(トランジスタQ13又はトランジスタQ23)を設けて選択的に使用可能に構成してもよい。例えば、トラップ回路601を常時使用する第1例を基本構成として、トラップ回路602を選択的に使用可能な構成にすれば、通常時は線形性を重視しつつ隣接チャネルの干渉対策を図ることができるし、トラップ回路602を機能させることによりトラップ量の不足時への対処も可能である。逆に、トラップ回路602を常時使用する第2例を基本構成として、トラップ回路601を選択的に使用可能な構成にすれば、通常時はノイズ性能を重視しつつ隣接チャネルの干渉対策を図ることができるし、トラップ回路601を機能させることによりトラップ量の不足時への対処も可能である。
【0137】
[トラップなしローノイズアンプ]
図10は、利得抑制部の一例としてのトラップ回路を備えていない通常のローノイズアンプ400_4を説明する図である。ここで、図10(A)はローノイズアンプ400_4の回路構成例を示し、図10(B)は図10(A)に示したローノイズアンプ400_4のゲイン特性の一例を示す。
【0138】
ローノイズアンプ400_4は、前述のトラップ回路を備えているローノイズアンプ400_1等と同様に、2つのトランジスタがカスケード接続された増幅部4を3段備えた構成である。例えば、第1例との対比では、トラップ回路601を備えていない点と、1段目の増幅部410を増幅部460に変更(その構成部材の参照子を10番台から60番台に変更)し、2段目の増幅部420を増幅部470に変更(その構成部材の参照子を20番台から70番台に変更)し、3段目の増幅部430を増幅部480に変更(その構成部材の参照子を30番台から80番台に変更)している点が異なる。参照番号の相違があるが、基本的には第1例において説明した通りであるので、ここでは詳細説明は割愛する。
【0139】
図10(B)には、図10(A)に示したローノイズアンプ400_4のゲイン特性の一例が示されている。この例は、80ギガヘルツ帯(希望波の周波数帯)に対応したローノイズアンプ400_4のゲイン特性例(シミュレーションによる)を示しており、各インダクタLを1つの配線層(例えば1層目)にて形成した場合が破線で示され、各インダクタLを複数層(この例では1層目と2層目)にて形成して直列抵抗成分を低減する場合が実線で示されている。図示のように、各インダクタLを1つの配線層にて形成した場合のゲイン特性に比べると、各インダクタLを複数層にて形成して直列抵抗成分を低減する場合の方が、ピーク点(80ギガヘルツ近傍)のゲインが大きくなっており、利得強化が図られていることが分かる。尚、インダクタLの直列抵抗成分が低減されることによりQ値が大きくなるため、帯域幅が少し狭くなるが、必要十分な帯域幅が維持されていることも分かる。
【0140】
以下に、希望波に対して低域側と高域側の何れか一方の妨害チャネルのみに関して利得抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)を使用することにより相互干渉対策を図る第1例の対策手法の具体的な適用例について説明する。尚、以下では、代表的に、利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性が自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、希望波に対して高域側の妨害チャネルのみに関して利得抑制部(特にトラップ回路)を使用する場合で説明する。但し、これは代表例であり、利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性が自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得減衰性が劣っており、希望波に対して低域側の妨害チャネルのみに関して利得抑制部(特にトラップ回路)を使用するように変形することもできる。更には、これらが混在する場合でも同様の手法を適用できる。
【実施例1】
【0141】
[ミリ波帯の信号伝送機能の詳細]
実施例1は、全二重双方向通信に対応した構成における相互干渉対策への適用事例である。図11は、実施例1の送受信系統を説明する図であって、変調機能部から高周波信号導波路308(信号伝送路9)を経由しての復調機能部までの信号伝送機能に着目した実施例1の機能ブロック図である。図は、低域側(例えば57ギガヘルツ(GHz)帯、12.5ギガビット毎秒(Gb/s))と高域側(例えば80ギガヘルツ(GHz)帯、12.5ギガビット毎秒(Gb/s))の全二重双方向通信に対応した構成で示している。
【0142】
実施例1の信号伝送装置1Aにおいて、第1通信装置100は、送信処理部(TX)に高域側(80ギガヘルツ帯)の搬送周波数を使用し、受信処理部(RX)に低域側(57ギガヘルツ帯)の搬送周波数を使用する構成となっている。即ち、第1通信装置100は、80ギガヘルツの送信処理部と57ギガヘルツの受信処理部とを有する。一方、第2通信装置200は、送信処理部(TX)に低域側(57ギガヘルツ帯)の搬送周波数を使用し、受信処理部(RX)に高域側(80ギガヘルツ帯)の搬送周波数を使用する構成となっている。即ち、第2通信装置200は、57ギガヘルツの送信処理部と80ギガヘルツの受信処理部とを有する。そして、第1通信装置100及び第2通信装置200は、低域側(57ギガヘルツ帯)及び高域側(80ギガヘルツ帯)の2チャネルの何れについても概ね同様の構成であり、又、送受信処理部(増幅部4とローノイズアンプ400の組合せで成る回路及びその周辺回路)は1チップ構成であるのが好適である。
【0143】
例えば、送信側においては、伝送対象の信号(入力ベースバンド信号BB_IN:例えば12ビットの画像信号)は図示しないパラレルシリアル変換部により高速なシリアル・データ系列に変換され差動信号として変調機能部8300に供給される。変調機能部8300は、パラレルシリアル変換部からの信号を変調信号として、予め定められた変調方式に従ってミリ波帯の信号に変調する。変調機能部8300としては、変調方式に応じて様々な回路構成をとり得るが、例えば、振幅を変調する方式であれば、差動信号の系統ごとに2入力型の周波数混合部8302(ミキサー回路、乗算器)と送信側局部発振部8304とを備えたダイレクトコンバーション方式の構成を採用すればよい。送信側局部発振部8304(第1の搬送信号生成部)は、変調に用いる搬送信号(変調搬送信号)を生成する。周波数混合部8302(第1の周波数変換部)は、パラレルシリアル変換部からの信号で送信側局部発振部8304が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号(被変調信号)を生成して増幅部8117(AMP:増幅部117と対応)に供給する。伝送信号は増幅部8117で増幅されアンテナ8136から放射される。
【0144】
受信系においては、送信系の変調方式と対応した構成が採用される。例えば、振幅を変調する方式であれば、受信した高周波信号(の包絡線)振幅の二乗に比例した検波出力を得る自乗検波回路や、自乗特性を有しない単純な包絡線検波回路を使用することができる。更には、復調用の搬送信号を生成し、この搬送信号により受信した高周波信号を同期検波する回路(同期検波回路)を用いることもでき、当該同期検波回路は位相や周波数を変調する方式にも利用できる。
【0145】
ここで、本実施形態の受信系においては、同期検波回路を用いたダイレクトコンバーション方式を採用し、且つ、注入同期(インジェクションロック)方式を採用して復調用の搬送信号を生成する構成にしている。アンテナ8236で受信されたミリ波受信信号は可変ゲイン型且つ低ノイズ型の増幅部8224(LNA、増幅部224と対応)に入力され振幅調整が行なわれた後に復調機能部8400に供給される。復調機能部8400は、2入力型の周波数混合部8402(ミキサー回路)と受信側局部発振部8404とベースバンド増幅部8412とを備え、インジェクションパス(Injection path)を経由して注入信号を受信側局部発振部8404に供給することにより、送信側で変調に使用した搬送信号に対応した出力信号を取得する。典型的には受信側局部発振部8404は送信側で使用した搬送信号に同期した発振出力信号を取得する。そして、受信した信号と受信側局部発振部8404の出力信号に基づく復調用の搬送信号(復調搬送信号:再生搬送信号と称する)を周波数混合部8402で乗算する(同期検波する)ことにより同期検波信号を取得する。周波数混合部8402は、同期検波により周波数変換(ダウンコンバート・復調)を行なうことにより、例えばビット誤り率特性が優れる、直交検波に発展させることにより位相変調や周波数変調を適用できる等の利点が得られる。同期検波信号は図示しないフィルタ処理部で高域成分の除去が行なわれることにより送信側から送られてきた入力信号の波形(出力入力ベースバンド信号BB_OUT:例えば12ビットの画像信号)が得られる。フィルタ処理部は受信側局部発振部8404とベースバンド増幅部8412の間やベースバンド増幅部8412の後段に設ければよい。
【0146】
受信側局部発振部8404の出力信号に基づく再生搬送信号を周波数混合部8402に供給して復調するに当たっては、位相ズレを考慮する必要があり、同期検波系において位相調整回路を設けることが肝要となる。本実施形態では、位相調整回路の機能だけでなく注入振幅を調整する機能も持つ位相振幅調整部8406を復調機能部8400に設けている。受信側局部発振部8404と位相振幅調整部8406で、変調搬送信号と同期した復調搬送信号を生成して周波数混合部8402に供給する復調側(第2)の搬送信号生成部が構成される。位相振幅調整部8406は、受信側局部発振部8404への注入信号、受信側局部発振部8404の出力信号の何れに対して設けてもよく、その両方に適用してもよい。図は、増幅部8224と受信側局部発振部8404との間に位相振幅調整部8406を設ける例で示している。
【0147】
尚、注入同期方式を採用する場合には、注入信号の位相(注入位相)や振幅(注入電圧)を制御(調整)するだけでなく、受信側局部発振部8404の自走発振周波数Foを制御することも、ロックレンジを制御(調整)する上で肝要である。換言すると、注入同期がとれるように、注入位相や注入電圧や自走発振周波数Foを調整することが肝要となる。このため、図示しないが、周波数混合部8402の後段に注入同期制御部を設け、周波数混合部8402で取得された同期検波信号(ベースバンド信号)に基づき注入同期の状態を判定し、その判定結果に基づいて、注入同期がとれるように、調整対象の各部を制御する構成を採る。
【0148】
周波数分割多重方式により多チャンネル化を実現する場合に、自乗検波回路を用いる方式では、次のような難点がある。受信側の周波数選択のためのバンドパスフィルタを自乗検波回路の前段に配置する必要があるが、急峻なバンドパスフィルタを小型に実現するのは容易ではない。また、急峻なバンドパスフィルタを用いた場合は送信側の搬送周波数の安定度についても要求仕様が厳しくなる。これに対して、注入同期を適用すれば、同期検波との併用により、波長選択用のバンドパスフィルタを受信側で使用しなくても、多チャンネル化や全二重の双方向化を行なう場合等のように複数の送受信ペアが同時に独立な伝送をする場合でも干渉の問題の影響を受け難くなる。
【0149】
このような構成の信号伝送装置1においては、第1通信装置100に入力された差動のベースバンド信号BB_INが変調機能部8300によって80ギガヘルツ帯の信号にアップコンバートされ、増幅部8117により増幅されて、アンテナ8136を介して高周波信号導波路308に結合する。80ギガヘルツ帯の信号は高周波信号導波路308を伝送し第2通信装置200側のアンテナ8236に受信される。この受信信号は、増幅部8224(ローノイズアンプ400)により増幅され、周波数混合部8402に供給されるとともに、インジェクションパスの位相振幅調整部8406を経由して受信側局部発振部8404にも供給される。受信側局部発振部8404にて変調用の80ギガヘルツの搬送信号と同期した復調用の80ギガヘルツの搬送信号が受信側局部発振部8404にて生成される。復調機能部8400では、復調用の搬送信号が周波数混合部8402に供給されることにより、受信された80ギガヘルツ帯の信号がベースバンド信号BB_INにダウンコンバートされる。
【0150】
同様に、第1通信装置100に入力された差動のベースバンド信号BB_INが変調機能部8300によって57ギガヘルツ帯の信号にアップコンバートされ、増幅部8117により増幅されて、アンテナ8136を介して高周波信号導波路308に結合する。57ギガヘルツ帯の信号は高周波信号導波路308を伝送し第2通1装置100側のアンテナ8236に受信される。この受信信号は、増幅部8224(ローノイズアンプ400)により増幅され、周波数混合部8402に供給されるとともに、インジェクションパスの位相振幅調整部8406を経由して受信側局部発振部8404にも供給される。受信側局部発振部8404にて変調用の57ギガヘルツの搬送信号と同期した復調用の57ギガヘルツの搬送信号が受信側局部発振部8404にて生成される。復調機能部8400では、復調用の搬送信号が周波数混合部8402に供給されることにより、受信された57ギガヘルツ帯の信号がベースバンド信号BB_INにダウンコンバートされる。
【0151】
ところで、図11に示す全二重双方向通信に対応した構成では、送信側のアンテナ8136から高周波信号導波路308(伝送損失を例えば15〜20デシベル、全域平坦とする)を経由して受信側のアンテナ8236へ低域チャネル(57ギガヘルツ帯)及び高域チャネル(80ギガヘルツ帯)の2チャネル分の高周波信号がそれぞれ相手方に伝送される。このとき、第1通信装置100側においは近接して配置されたアンテナ8136からアンテナ8236へ高域チャネル(80ギガヘルツ帯)の信号が供給される漏洩パス(図中の破線a)が形成されるし、第2通信装置200側においては近接して配置されたアンテナ8136からアンテナ8236へ低域チャネル(57ギガヘルツ帯)の信号が供給される漏洩パス(図中の破線b)が形成される。この漏洩パスの信号エネルギは、高周波信号導波路308を介してのアンテナ8136からアンテナ8236への通常パスに比べると、アンテナ8136とアンテナ8236とが近接しているため高周波信号導波路308による損失が殆どなくかなり大きい。したがって、例え注入同期方式を採用していたとしても、受信側(例えば増幅部8224)の波長選択特性が不十分な場合には、隣接チャネル成分が復調されてしまう「隣接チャネル間の混信問題」の発生が懸念される。この対策として、「ゲイン特性の非対称性を(有効に)利用」して、希望波に対して低域側と高域側の何れか一方の妨害チャネルのみに関して利得抑制部を使用する手法を適用する。
【0152】
[相互干渉対策]
図12は、実施例1(図11に示した全二重双方向通信に対応した構成)における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。ここで、図12(A)は、送信用の増幅部から高周波信号導波路308を経由しての受信用の増幅部(ローノイズアンプ400)までの信号伝送機能に着目した簡略した機能ブロック図である。図12(B)は、低域側用のローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示し(図7(B)に示す特性と同じ)、図12(C)は、高域側用のローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示す(図10(B)に示す特性と同じ)。
【0153】
図中において、「High」は高域チャネル(80ギガヘルツ帯)を示し、「Low」は低域チャネル(57ギガヘルツ帯)を示す。希望チャネルを「Low」チャネルとしたとき、上側隣接チャネルは高域チャネルであり、希望チャネルを「High」としたとき、下側隣接チャネルは低域チャネルである。「TX」は送信処理部を示し、「RX」は受信処理部を示す。「TXANT」は送信側のアンテナ8136(送信アンテナ)であり、「RXANT」は受信側のアンテナ8236(受信アンテナ)であり、「AMP」は送信用の増幅部(増幅部117や増幅部8117)であり、「LNA」はローノイズアンプ400(増幅部224や増幅部8224)である。「TP」は希望チャネル成分に対しての妨害波(隣接チャネル成分)を抑制する利得抑制部(トラップ回路)であり、その参照子(「_H」や「_L」)により減衰周波数(トラップ位置)を高域側と低域側の何れの隣接チャネルに合わせるのかを示す。
【0154】
この例では、低域チャネル用のローノイズアンプ400に「トラップ回路TP_H」が設けられており、上側隣接チャネルである80ギガヘルツ帯に減衰周波数を合わせている(図12(B)に示すゲイン特性を参照)。高域チャネル用のローノイズアンプ400には下側隣接チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)は設けられていない(図12(C)に示すゲイン特性を参照)。
【0155】
第1通信装置100の増幅部(AMP)から発せられた80ギガヘルツ帯(High)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され、高周波信号導波路308を経由して第2通信装置200に伝送される。第2通信装置200においては、80ギガヘルツ帯(High)の高周波信号が受信アンテナRXANTにより受信され80ギガヘルツ帯用のローノイズアンプ400に供給される。このとき、第1通信装置100側においては、送信アンテナTXANTから発せられた80ギガヘルツ帯(High)の高周波信号が漏洩パス(図中の破線a)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図12(B)に示すように、80ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第1通信装置100においては、図示しない後段の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0156】
第2通信装置200の増幅部(AMP)から発せられた57ギガヘルツ帯(Low)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され、高周波信号導波路308を経由して第1通信装置100に伝送される。第1通信装置100においては、57ギガヘルツ帯の高周波信号が受信アンテナRXANTにより受信され低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。このとき、第2通信装置200側においては、送信アンテナTXANTから発せられた57ギガヘルツ帯の高周波信号が漏洩パス(図中の破線b)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み高域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。高域チャネル用のローノイズアンプ400には利得抑制部が設けられていないが、図12(C)に示すように、57ギガヘルツ近傍のゲインは十分に減衰されている。このため、第2通信装置100においては、利得抑制部を使用しなくても、図示しない後段の復調機能部8400では57ギガヘルツ帯は復調されず、57ギガヘルツ帯の送信処理部TXから80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【実施例2】
【0157】
[ミリ波帯の信号伝送機能の詳細]
図13は、実施例2の送受信系統を説明する図であって、変調機能部から高周波信号導波路308(信号伝送路9)を経由しての復調機能部までの信号伝送機能に着目した実施例2の機能ブロック図である。図は、低域側(例えば57ギガヘルツ(GHz)帯、12.5ギガビット毎秒(Gb/s))及び高域側(例えば80ギガヘルツ(GHz)帯、12.5ギガビット毎秒(Gb/s))の片方向二重通信に対応した構成で示している。尚、送信処理部(2つの増幅部4で成る回路及びその周辺回路)や受信処理部(2つのローノイズアンプ400で成る回路及びその周辺回路)は1チップ構成であるのが好適である。
【0158】
実施例2は、片方向二重通信に対応した構成における相互干渉の対策への適用事例である。実施例2の信号伝送装置1B_1は、図11に示した実施例1の信号伝送装置1Aとの対比では、第1通信装置100と第2通信装置200の何れか一方(この例では第1通信装置100)に低域側(57ギガヘルツ帯)用及び高域側(80ギガヘルツ帯)用の送信処理部TXをそれぞれ設け、反対側(この例では第2通信装置200)に低域側(57ギガヘルツ帯)用及び高域側(80ギガヘルツ帯)用の受信処理部TXをそれぞれ設けている点が異なる。このような片方向二重通信の適用により、実質的には、25.0ギガビット毎秒(Gb/s)の伝送レートを確保できる。
【0159】
ここで、図13に示す片方向二重通信に対応した構成では、送信側のアンテナ8136から高周波信号導波路308を経由して受信側のアンテナ8236へ低域側(57ギガヘルツ帯)及び高域側(80ギガヘルツ帯)の2チャネルの信号がそれぞれ相手方に伝送される。このとき、第2通信装置200側においは低域側用のアンテナ8236へも高域チャネル(80ギガヘルツ帯)の信号が供給される漏洩パス(図中の破線a)が形成されるし、高域側用のアンテナ8236へも低域チャネル(57ギガヘルツ帯)の信号が供給される漏洩パス(図中の破線b)が形成される。
【0160】
周波数帯に関わらず高周波信号導波路308の伝送損失が同じであるとした場合は送信電力を同じにでき、漏洩パスの信号エネルギは通常パスと同程度となる。しかしながら、実際には、高周波信号導波路308の伝送特性(周波数特性)は、マルチチャネル伝送の全伝送帯域に亘って平坦とすることは難しく、少なからず低域側或いは高域側に片寄った特性を持つ。又、受信側のローノイズアンプ400のピークゲインも周波数帯に関わらず同じとすることは難しい。これらを踏まえた場合、送信電力は、低域側或いは高域側の何れかを大きくすることになる。したがって、例え注入同期方式を採用していたとしても、受信側(例えば増幅部8224)の波長選択特性が不十分な場合には、隣接チャネル成分が復調されてしまう「隣接チャネル間の混信問題」の発生が懸念される。更には、この例ではチャネル間隔を「80−57=23ギガヘルツ」としているが、チャネル間隔をより狭くする場合には、ローノイズアンプ400のゲイン特性例から推測されるように、隣接チャネル成分が復調されてしまう「隣接チャネル間の混信問題」の発生の可能性が高まる。このように、片方向二重通信においても、「ゲイン特性の非対称性を(有効に)利用」して、希望波に対して低域側と高域側の何れか一方の妨害チャネルのみに関して利得抑制部を使用する手法を適用することが好ましい場合がある。
【0161】
[相互干渉対策]
図14は、実施例2(図13に示した片方向二重通信に対応した構成)における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。ここで、図14は、送信用の増幅部から高周波信号導波路308を経由しての受信用の増幅部(ローノイズアンプ400)までの信号伝送機能に着目した簡略した機能ブロック図である。
【0162】
低域チャネル(57ギガヘルツ帯)用のローノイズアンプ400のゲイン特性は図14(B)と同じであり、高域チャネル(80ギガヘルツ帯)用のローノイズアンプ400のゲイン特性は図12(C)と同じである。高域チャネル用のローノイズアンプ400のピークゲインは、低域チャネル用のローノイズアンプ400のピークゲインよりも小さいので、仮に周波数帯に関わらず高周波信号導波路308の伝送損失が同じであるとした場合、送信電力は、低域側よりも高域側の方を大きくする。信号伝送装置1B_1は、第2通信装置200側において、低域チャネル用のローノイズアンプ400は80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hを有する。
【0163】
このため、第2通信装置200側においては、57ギガヘルツ帯(Low)よりも電力の大きな80ギガヘルツ帯(High)の高周波信号が漏洩パス(図中の破線a)を経由して受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図12(B)に示すように、80ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段の57ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0164】
一方、高域チャネル用の受信アンテナRXANTには、80ギガヘルツ帯よりも電力の小さな57ギガヘルツ帯(Low)の高周波信号も漏洩パス(図中の破線b)を経由して飛び込み高域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。高域チャネル用のローノイズアンプ400には利得抑制部が設けられていないが、57ギガヘルツ帯の高周波信号は希望波である80ギガヘルツ帯よりも電力が小さいし、図12(C)に示すように、57ギガヘルツ近傍のゲインは十分に減衰されている。このため、第2通信装置100においては、利得抑制部を使用しなくても、図示しない後段の80ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では57ギガヘルツ帯は復調されず、57ギガヘルツ帯の送信処理部TXから80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0165】
〔変形例〕
図15は、実施例2に対する変形例を説明する図であって、片方向多重通信に対応した構成における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。ここで、図15は、送信用の増幅部から高周波信号導波路308を経由しての受信用の増幅部(ローノイズアンプ400)までの信号伝送機能に着目した簡略した機能ブロック図である。前述の実施例2は、2チャネルでの片方向通信において、「ゲイン特性の非対称性を(有効に)利用」して、希望波に対して低域側と高域側の何れか一方の妨害チャネルのみに関して利得抑制部を使用する手法を適用することについて説明したが、この変形例は、チャネル数を3以上に一般展開したものである。この変形例では、何れかの2チャネルの組合せの内で隣接チャネルの関係にあって且つ片方向多重通信が適用されるものについて実施例2を適用する。
【0166】
図示のように、信号伝送装置1B_2は、第2通信装置200側において、FX(Xは1〜n−1、FX<FX+1)ギガヘルツ帯用のローノイズアンプ400にFX+1ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_X+1を有する。第2通信装置200側においては、FX+1ギガヘルツ帯の高周波信号が漏洩パス(図中の破線α)を経由してFXギガヘルツ帯用の受信アンテナRXANTに飛び込みローノイズアンプ400に供給される。FXギガヘルツ帯用のローノイズアンプ400にはFX+1ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_X+1が設けられているので、FX+1ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_X+1の機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段のFXギガヘルツ帯用の復調機能部8400ではFX+1ギガヘルツ帯は復調されず、FX+1ギガヘルツ帯の送信処理部TXからFXギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。詳細説明は割愛するが、これ以外の漏洩パス(図中の破線αを除く破線)については、利得抑制部を使用しなくても、復調機能部8400では妨害波は復調されず、漏洩成分による干渉を防止することができる。
【実施例3】
【0167】
実施例3は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した構成における相互干渉の対策への適用事例である。ここでは、最も基本となる3チャネルの場合で説明する。後述の実施例4との相違は、片方向二重通信においては、送信側同士及び受信側同士では相互干渉対策(つまり実施例2の手法)は不要であるとの前提に立った構成である。つまり、何れかの2チャネルの組合せの内で隣接チャネルの関係にあって且つ全二重双方向通信が適用されるものについて実施例1を適用する。片方向二重通信系の漏洩パスについては無視する。
【0168】
以下においては、3チャネルの関係において、「Low」は低域チャネル(57ギガヘルツ帯)を示し、「Mid」は中域チャネル(80ギガヘルツ帯)を示し、「High」は高域チャネル(103ギガヘルツ帯)を示す。希望チャネルを低域チャネルとしたとき、上側隣接チャネルは中域チャネルである。希望チャネルを中域チャネルとしたとき、下側隣接チャネルは低域チャネルであり、上側隣接チャネルは高域チャネルである。希望チャネルを高域チャネルとしたとき、下側隣接チャネルは中域チャネルである。
【0169】
図16〜図17は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した実施例3における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。ここで、図16は実施例3で使用されるローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示す図である。具体的には、図16(A)は、低域チャネル(57ギガヘルツ帯)用のローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示し(図7(B)と同じ)、図16(B)は、中域チャネル(80ギガヘルツ帯)用のローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示し、図16(C)は、高域チャネル(103ギガヘルツ帯)用のローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示す。
【0170】
図17は、実施例3の送受信系統を説明する図であって、送信用の増幅部から高周波信号導波路308を経由しての受信用の増幅部(ローノイズアンプ400)までの信号伝送機能に着目した簡略した機能ブロック図であり、送信処理部と受信処理部の周波数帯の組合せとしてとり得る3通りの構成を示している。送受信処理部(増幅部4とローノイズアンプ400の組合せで成る回路及びその周辺回路)は1チップ構成であるのが好適である。
【0171】
実施例3の信号伝送装置1Cでは、何れかの2チャネルの組合せの内で隣接チャネルの関係にあるものについて実施例1を適用する。具体的には、第1通信装置100自身或いは第2通信装置200自身において、ある周波数帯の受信処理部RXに着目したときに、上側隣接チャネルが送信処理部TXである組合せについてローノイズアンプ400に利得抑制部(トラップ回路)を設け、これ以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。以下、3通りの構成について具体的に説明する。
【0172】
[第1例]
図17(A)に示す第1例の信号伝送装置1C_1では、第1通信装置100には、高域チャネル(103ギガヘルツ帯)用の送信処理部TX、中域チャネル(80ギガヘルツ帯)用の受信処理部RX、及び、低域チャネル(57ギガヘルツ帯)用の送信処理部TXが設けられている。第2通信装置200には、高域チャネル用の受信処理部RX、中域チャネル用の送信処理部TX、及び、低域チャネル用の受信処理部RXが設けられている。このような構成では、高域チャネと中域チャネルとにより或いは低域チャネルと中域チャネルとにより全二重双方向通信が適用可能であり、高域チャネルと低域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能である。
【0173】
第1通信装置100自身において、中域チャネル用の受信処理部RXに着目したとき、上側隣接チャネルである高域チャネルが送信処理部TXである組合せとなるので、中域チャネル用のローノイズアンプ400に高域チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)を設ける。又、第2通信装置200自身において、低域チャネル用の受信処理部RXに着目したとき、上側隣接チャネルである中域チャネルが送信処理部TXである組合せとなるので、低域チャネル用のローノイズアンプ400に中域チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)を設ける。これら以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。
【0174】
即ち、第1通信装置100においては、中域チャネル用のローノイズアンプ400に「トラップ回路TP_H」が設けられており、高域チャネルの103ギガヘルツ帯に減衰周波数を合わせている(図16(B)に示す実線のゲイン特性を参照)。低域チャネル用のローノイズアンプ400には利得抑制部(トラップ回路)は設けられていないし(図16(A)に示す破線のゲイン特性を参照)、高域チャネル用のローノイズアンプ400にも利得抑制部(トラップ回路)は設けられていない(図16(C)に示すゲイン特性を参照)。第2通信装置200においては、低域チャネル用のローノイズアンプ400に「トラップ回路TP_M」が設けられており、中域チャネルの80ギガヘルツ帯に減衰周波数を合わせている(図16(A)に示す実線のゲイン特性を参照)。中域チャネル用のローノイズアンプ400には利得抑制部(トラップ回路)は設けられていないし(図16(B)に示す破線のゲイン特性を参照)、高域チャネル用のローノイズアンプ400にも利得抑制部(トラップ回路)は設けられていない(図16(C)に示すゲイン特性を参照)。
【0175】
第1通信装置100においては、103ギガヘルツ帯(High)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第2通信装置200側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線a)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み中域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には103ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図16(B)に示すように、103ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第1通信装置100においては、図示しない後段の80ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では103ギガヘルツ帯は復調されず、103ギガヘルツ帯の送信処理部TXから80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。又、57ギガヘルツ帯(Low)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第2通信装置200側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線b)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み中域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。中域チャネル用のローノイズアンプ400には57ギガヘルツ帯の利得を抑制する利得抑制部が設けられていないが、図16(B)に示すように、57ギガヘルツ近傍のゲインは十分に減衰されている。このため、第2通信装置100においては、利得抑制部を使用しなくても、図示しない後段の80ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では57ギガヘルツ帯は復調されず、57ギガヘルツ帯の送信処理部TXから80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0176】
一方、第2通信装置200においては、80ギガヘルツ帯(Mid)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第1通信装置100側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線c)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Mが設けられているので、図16(A)に示すように、80ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Mの機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段の57ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。又、103ギガヘルツ帯(Low)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第1通信装置100側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線d)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み高域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。高域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯の利得を抑制する利得抑制部が設けられていないが、図16(C)に示すように、80ギガヘルツ近傍のゲインは十分に減衰されている。このため、第2通信装置100においては、利得抑制部を使用しなくても、図示しない後段の103ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから103ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0177】
[第2例]
図17(B)に示す第2例の信号伝送装置1C_2では、第1通信装置100には、高域チャネル(103ギガヘルツ帯)用の受信処理部RX、中域チャネル(80ギガヘルツ帯)用の送信処理部TX、及び、低域チャネル(57ギガヘルツ帯)用の送信処理部TXが設けられている。第2通信装置200には、高域チャネル用の送信処理部TX、中域チャネル用の受信処理部RX、及び、低域チャネル用の受信処理部RXが設けられている。このような構成では、高域チャネルと中域チャネルとにより或いは高域チャネルと低域チャネルとにより全二重双方向通信が適用可能であり、中域チャネルと低域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能である。
【0178】
第2通信装置200自身において、中域チャネル用の受信処理部RXに着目したときに、上側隣接チャネルである高域チャネルが送信処理部TXである組合せとなるので、中域チャネル用のローノイズアンプ400に高域チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)を設ける。これら以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。第2例は、第1例との対比では、第1通信装置100には利得抑制部を設ける必要がない点に特徴がある。
【0179】
第2通信装置200においては、103ギガヘルツ帯(High)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第1通信装置100側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線a)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み中域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。中域チャネル用のローノイズアンプ400には103ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図16(B)に示すように、103ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段の80ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では103ギガヘルツ帯は復調されず、103ギガヘルツ帯の送信処理部TXから80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。詳細説明は割愛するが、これ以外の漏洩パス(図中の破線b,c,d)については、利得抑制部を使用しなくても、復調機能部8400では妨害波は復調されず、漏洩成分による干渉を防止することができる。
【0180】
[第3例]
図17(C)に示す第3例の信号伝送装置1C_3では、第1通信装置100には、高域チャネル(103ギガヘルツ帯)用の送信処理部TX、中域チャネル(80ギガヘルツ帯)用の送信処理部TX、及び、低域チャネル(57ギガヘルツ帯)用の受信処理部RXが設けられている。第2通信装置200には、高域チャネル用の受信処理部RX、中域チャネル用の受信処理部RX、及び、低域チャネル用の送信処理部TXが設けられている。このような構成では、高域チャネルと低域チャネルとにより或いは中域チャネルと低域チャネルとにより全二重双方向通信が適用可能であり、高域チャネルと中域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能である。
【0181】
第1通信装置100自身において、低域チャネル用の受信処理部RXに着目したときに、上側隣接チャネルである中域チャネルが送信処理部TXである組合せとなるので、低域チャネル用のローノイズアンプ400に中域チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)を設ける。これら以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。第3例は、第1例との対比では、第2通信装置200には利得抑制部を設ける必要がない点に特徴がある。
【0182】
第1通信装置100においては、80ギガヘルツ帯(Mid)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第2通信装置200側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線a)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Mが設けられているので、図16(A)に示すように、80ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Mの機能により十分に減衰される。このため、第1通信装置100においては、図示しない後段の57ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。詳細説明は割愛するが、これ以外の漏洩パス(図中の破線b,c,d)については、利得抑制部を使用しなくても、復調機能部8400では妨害波は復調されず、漏洩成分による干渉を防止することができる。
【0183】
〔変形例〕
図18は、実施例3に対する変形例を説明する図である。この変形例は、3チャネルの場合で説明した実施例3の手法を、4チャネル以上の場合に適用するものである。実施例3では、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用する場合に最も基本となる3チャネルの場合で説明したが、4チャネル以上の場合でも同様に考えればよい。何れかの2チャネルの組合せの内で隣接チャネルの関係にあるものについて実施例3を適用する。一例として、第1チャネル(F1ギガヘルツ帯)、第2チャネル(F2ギガヘルツ帯)、第3チャネル(F3ギガヘルツ帯)、第4チャネル(F4ギガヘルツ帯)、第5チャネル(F5ギガヘルツ帯)、第6チャネル(F6ギガヘルツ帯)、及び、第7チャネル(F7ギガヘルツ帯)の計7つのチャネル(搬送周波数FY(Yは1〜7、FY<FY+1))の場合の幾つかの例について説明する。
【0184】
図は、各チャネルの搬送周波数の配置と、第1通信装置100及び第2通信装置200に設けられる各チャネル用の送信処理部TX及び受信処理部RXを簡略的に表している。図中において、周波数軸上のあるチャネルでの上向きの太い矢印はそのチャネルの送信処理部TXであることを示し、下向きの太い矢印はそのチャネルの受信処理部RXであることを示す。第1通信装置100と第2通信装置200との間の実線は通常パスを示し、第1通信装置100内や第2通信装置200内の破線は漏洩パスを示す。
【0185】
図18(A)に示す第1例では、第1通信装置100には、F1ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F2ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F3ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F4ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F5ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F6ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F7ギガヘルツ帯用の受信処理部RXが設けられている。第2通信装置200には、F1ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F2ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F3ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F4ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F5ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F6ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F7ギガヘルツ帯用の送信処理部TXが設けられている。
【0186】
隣接した第1チャネルと第2チャネルの組合せ、隣接した第2チャネルと第3チャネルとの組合せ、隣接した第3チャネルと第4チャネルとの組合せ、隣接した第4チャネルと第5チャネルとの組合せ、隣接した第6チャネルと第7チャネルとの組合せ、のそれぞれにおいて全二重双方向通信が適用されると見なすことができる。
【0187】
この場合において、実施例3の手法を適用して、上側隣接チャネルが送信処理部TXである組合せについて、Yチャネル用のローノイズアンプ400にはY+1チャネルの利得を抑制する(Y+1チャネル帯に減衰周波数が設定されている)トラップ回路TP_Y+1を設ける。例えば、第1通信装置100には、第2チャネル用のローノイズアンプ400に第3チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_3を設け、第4チャネル用のローノイズアンプ400に第5チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_5を設ける。第2通信装置200には、第1チャネル用のローノイズアンプ400に第2チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_2を設け、第3チャネル用のローノイズアンプ400に第4チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_4を設け、第6チャネル用のローノイズアンプ400に第7チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_7を設ける。
【0188】
図18(B)に示す第2例では、第1通信装置100には、F1ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F2ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F3ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F4ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F5ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F6ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F7ギガヘルツ帯用の送信処理部TXが設けられている。第2通信装置200には、F1ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F2ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F3ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F4ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F5ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F6ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F7ギガヘルツ帯用の受信処理部RXが設けられている。
【0189】
隣接した第1チャネルと第2チャネルの組合せ、隣接した第3チャネルと第4チャネルとの組合せ、隣接した第5チャネルと第6チャネルとの組合せ、隣接した第6チャネルと第7チャネルとの組合せ、のそれぞれにおいて全二重双方向通信が適用されると見なすことができる。第1通信装置100には、第3チャネル用のローノイズアンプ400に第4チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_4を設け、第6チャネル用のローノイズアンプ400に第7チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_7を設ける。第2通信装置200には、第1チャネル用のローノイズアンプ400に第2チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_2を設け、第5チャネル用のローノイズアンプ400に第6チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_6を設ける。
【0190】
このように、4チャネル以上の場合でも、第1通信装置100と第2通信装置200との間で全二重双方向通信を行なう隣接チャネルの組合せについて、Yチャネル用のローノイズアンプ400にはY+1チャネル帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Y+1を設けることにより、Y+1チャネル帯の送信処理部TXから漏洩パスを経由してYチャネルの受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【実施例4】
【0191】
実施例4は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した構成における相互干渉の対策への適用事例である。前述の実施例3との相違は、片方向二重通信においては、送信側同士では相互干渉対策(つまり実施例2の手法)は不要であるが受信側同士では相互干渉対策(つまり実施例2の手法)が必要であるとの前提に立った構成である。つまり、実施例3に加えて、何れかの2チャネルの組合せの内で隣接チャネルの関係にあって且つ片方向二重通信が適用されるものについて実施例2を適用する。実施例3とは異なり、片方向二重通信系の漏洩パスについても考慮する。
【0192】
図19は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した実施例4の送受信系統を説明する図であって、送信用の増幅部から高周波信号導波路308を経由しての受信用の増幅部(ローノイズアンプ400)までの信号伝送機能に着目した簡略した機能ブロック図である。ここでは、送信処理部と受信処理部の周波数帯の組合せとしてとり得る3通りの構成を示している。尚、送受信処理部(増幅部4とローノイズアンプ400の組合せで成る回路及びその周辺回路)は1チップ構成であるのが好適である。
【0193】
実施例4の信号伝送装置1Dでは、第1通信装置100と第2通信装置200との間の片方向二重通信において、ある周波数帯の受信処理部RXに着目したときに、上側隣接チャネルが送信処理部TXである組合せについてローノイズアンプ400に利得抑制部(トラップ回路)を設け、これ以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。以下、実施例3との相違点に着目して、3通りの構成について具体的に説明する。
【0194】
[第1例]
図19(A)に示す第1例の信号伝送装置1D_1は、実施例3の第1例の構成に対する変形例であり、高域チャネルと低域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能であり、漏洩パス(図中の破線e及び破線f)が形成される。しかしながら、両チャネルは隣接チャネルの関係にないので、実施例2の適用の余地(必要性)はない。
【0195】
[第2例]
図19(B)に示す第2例の信号伝送装置1D_2は、実施例3の第2例の構成に対する変形例であり、中域チャネルと低域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能であり、漏洩パス(図中の破線e及び破線f)が形成される。両チャネルは隣接チャネルの関係にあるので、実施例2の適用の余地がある。具体的には、第2通信装置200側において、低域チャネル用のローノイズアンプ400に80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Mを設ける、つまり、実施例3の第2例に対して更にトラップ回路TP_Mを追加する。
【0196】
第2通信装置200側においては、57ギガヘルツ帯(Low)よりも電力の大きな80ギガヘルツ帯(Mid)の高周波信号が漏洩パス(図中の破線e)を経由して受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Mが設けられているので、図16(A)に示すように、80ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Mの機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段の57ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから漏洩パスeを経由して57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0197】
[第3例]
図19(C)に示す第3例の信号伝送装置1D_3は、実施例3の第3例の構成に対する変形例であり、高域チャネルと中域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能であり、漏洩パス(図中の破線e及び破線f)が形成される。両チャネルは隣接チャネルの関係にあるので、実施例2の適用の余地がある。具体的には、第2通信装置200側において、中域チャネル用のローノイズアンプ400に103ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hを設ける、つまり、実施例3の第3例に対して更にトラップ回路TP_Hを追加する。
【0198】
第2通信装置200側においては、80ギガヘルツ帯(Low)よりも電力の大きな103ギガヘルツ帯(High)の高周波信号が漏洩パス(図中の破線e)を経由して受信アンテナRXANTに飛び込み中域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。高域チャネル用のローノイズアンプ400には103ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図16(B)に示すように、103ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段の80ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では103ギガヘルツ帯は復調されず、103ギガヘルツ帯の送信処理部TXから漏洩パスeを経由して80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0199】
〔変形例〕
図20は、実施例4に対する変形例を説明する図である。この変形例は、3チャネルの場合で説明した実施例4の手法を、4チャネル以上の場合に適用するものである。実施例4では、最も基本となる3チャネルの場合で説明したが、4チャネル以上の場合でも同様に考えればよい。一例として、図18に示した実施例3の変形例をベースに説明する。
【0200】
実施例4の手法を適用して、上側隣接チャネルが送信処理部TXである片方向二重通信が適用されるチャネルの組合せ(図中に楕円で括った組合せのもの)について、Yチャネル用のローノイズアンプ400にはY+1チャネルに対しての利得を抑制する(Y+1チャネル帯に減衰周波数が設定されている)トラップ回路TP_Y+1を設ける。
【0201】
例えば、図20(A)に示す第1例では、実施例3の変形例(第1例)で説明した隣接チャネルの組合せにおける全二重双方向通信に加えて、隣接した第5チャネルと第6チャネルとの組合せにおいて片方向二重通信が適用されると見なすことができる。そこで、第1通信装置100には、第5チャネル用のローノイズアンプ400に第6チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_6を設ける。
【0202】
図20(B)に示す第2例では、実施例3の変形例(第2例)で説明した隣接チャネルの組合せにおける全二重双方向通信に加えて、隣接した第2チャネルと第3チャネルとの組合せ、及び、隣接した第4チャネルと第5チャネルとの組合せ、のそれぞれにおいて片方向二重通信が適用されると見なすことができる。そこで、第1通信装置100には、第2チャネル用のローノイズアンプ400に第3チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_3を設け、第2通信装置200には、第4チャネル用のローノイズアンプ400に第5チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_5を設ける。
【0203】
このように、4チャネル以上の場合でも、第1通信装置100と第2通信装置200との間で片方向二重通信を行なう隣接チャネルの組合せについて、Yチャネル用のローノイズアンプ400にはY+1チャネル帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Y+1を設けることにより、Y+1チャネル帯の送信処理部TXから漏洩パスを経由してYチャネルの受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【実施例5】
【0204】
[相互干渉の対策手法:第2例]
次に、第2例の相互干渉対策手法及びその具体的な適用例について説明する。第2例の相互干渉対策手法は、第1例の相互干渉対策手法と同様に、増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用して、「増幅部のゲイン特性の非対称性による減衰性の不足分を補う」という点に特徴がある。但し、その実現のため、増幅部外(但し、復調処理以前である)に自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を配置する方法を採用する点が異なる。信号抑制部としては、例えばトラップ回路を採用する。
【0205】
図21及び図22は、実施例5の送受信系統を説明する図である。ここで、図21は、第1例〜第3例を示し、図22は、第4例〜第6例を示す。何れも、実施例4に対しての変形例で示すが、実施例1〜実施例3に対しても、同様に適用できる。
【0206】
図21(A)〜図21(C)に示す第1例〜第3例はそれぞれ、実施例4の第1例〜第3例に対しての変形例であり、信号抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)を、ローノイズアンプ400内に設けるのではなく、ローノイズアンプ400の前段に設けた形態である。一方、図22(A)〜図22(C)に示す第1例〜第3例はそれぞれ、実施例4の第1例〜第3例に対しての変形例であり、信号抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)を、ローノイズアンプ400内に設けるのではなく、ローノイズアンプ400の後段(復調機能部8400の前段)に設けた形態である。
【0207】
このような第2例の相互干渉対策手法を適用した形態であっても、信号抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)の機能により妨害チャネルの信号レベルが減衰されるため、ローノイズアンプ400の後段に設けられる図示しない復調機能部8400では、妨害チャネル成分は復調されず、相互干渉を防止することができる。増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用するので、信号抑制部は、利得周波数特性の非対称性による減衰性の不足分を補う程度の減衰特性を持つものであればよい。対象のチャネル位置で小さな減衰度となる減衰特性を持つものでよく、例えばトラップ回路であれば、トラップ量は少なくてもよく、簡易な構成で実現できる。
【実施例6】
【0208】
[相互干渉の対策手法:第3例]
次に、第3例の相互干渉対策手法及びその具体的な適用例について説明する。第3例の相互干渉対策手法は、第1例や第2例の相互干渉対策手法とは異なり、増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用しない点に特徴がある。換言すると、増幅回路の裸の利得周波数特性が対称であるのか非対称であるのかを問わず適用可能な形態である。例えば、増幅回路が、周波数(波長)選択性を持たない広帯域の増幅回路である場合でも適用できる形態である。この場合においても、全てのチャネルの受信処理部に利得抑制部を設けるのではなく、受信処理部の何れかに、自チャネル以外の他チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける。これにより、少なくとも利得抑制部を設けたチャネルからの妨害を防止することができる。
【0209】
図23及び図24は、実施例6の送受信系統を説明する図である。ここで、図23は、第1例〜第3例を示し、図24は、第4例〜第6例を示す。図23は、実施例4に対しての変形例で示し、図24は、実施例5に対しての変形例で示すが、その他の実施例に対しても、同様に適用できる。
【0210】
図23(A)〜図23(C)に示す第1例〜第3例はそれぞれ、利得抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)をローノイズアンプ400内に設けている実施例4の第1例〜第3例に対しての変形例であり、図24(A)〜図24(C)に示す第4例〜第6例はそれぞれ、利得抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)をローノイズアンプ400の前段に設けている実施例5の第1例〜第3例に対しての変形例である。
【0211】
何れも、ローノイズアンプ400は、裸の利得周波数特性は明確な非対称性を持たず、例えば、周波数選択性を持たず、全チャネル帯域分に亘って利得がほぼ平坦なフラットアンプ(多少のうねりは許容する)であるとする。ローノイズアンプ400の裸の利得周波数特性の非対称性を利用するものではないので、利得抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)は、大きな減衰特性を持つものが必要となる。
【0212】
このような第3例の相互干渉対策手法を適用した形態であっても、少なくとも利得抑制部を設けた系統に関しては、利得抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)の機能により妨害チャネルの信号レベルが減衰されるため、ローノイズアンプ400の後段に設けられる図示しない復調機能部8400では、妨害チャネル成分は復調されず、干渉を防止することができる。増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用するものではないので、実施例4や実施例5等と比べると、利得抑制部は、対象のチャネル位置で大きな減衰度となる減衰特性を持つものが必要であり、例えばトラップ回路であれば、トラップ量の多いものを使用する。
【実施例7】
【0213】
図25〜図26は、実施例7を説明する図である。ここで、図25は、実施例7で使用するローノイズアンプ400の周波数特性例を示す図である。図26は、実施例7の送受信系統を説明する図である。
【0214】
前述の各実施例では、典型的な例として、両隣りの関係にある隣接チャネルからの妨害(相互干渉)をトラップ回路等を利用した利得抑制部により抑制することについて具体的に説明したが、本明細書で開示する技術は、これには限らない。本明細書で開示する技術は、隣接チャネルに限らず、より離れたチャネルを含む自チャネル以外の他チャネルから妨害波としての影響がある場合に、自チャネル以外の他チャネル(妨害チャネル)の影響をトラップ回路等を利用した利得抑制部により抑制するものであればよい。例えば、隣接チャネルのもう1つ隣りのチャネルからの影響も防止することができる。
【0215】
例えば、図25には、実施例7で使用するローノイズアンプ400の周波数特性例が示されている。一例として、高域側に利得抑制部を適用する図4(C)及び図5(B)に対する変形例で示すが、低域側に利得抑制部を適用する図4(B)及び図5(A)に対しても同様の思想を適用できる。図25(A)に示すように、ローノイズアンプ400の裸の周波数特性は、希望チャネル信号(搬送周波数FC)つまり自チャネルに周波数選択性を持っており、且つ、下側隣接チャネル信号(搬送周波数FD)及び上側隣接チャネル信号(搬送周波数FU1)の何れについても十分に減衰している。但し、上側隣接チャネル(搬送周波数FU1)よりも更に高域側の周波数では跳ね上がり現象が存在し、もう1つ上側のチャネル信号(搬送周波数FU2)に対しての利得減衰度が不足した特性を持っている。つまり、自チャネルに対して2チャネル分上側(隣接チャネルのもう1つ高域側のチャネル)であるチャネル(搬送周波数FU2)では、利得減衰度が不足している。
【0216】
このような場合、図25(B)に示すように、このチャネル信号(搬送周波数Fう2)に減衰周波数(トラップ位置)を合わせた利得抑制部を適用することにより、このチャネル信号成分(搬送周波数Fう2)を減衰させることができる。チャネル信号成分(搬送周波数Fう2)を受信限界レベル以下にすることができ、そのチャネル信号成分(搬送周波数Fう2)が復調されることはなく、相互干渉を防止できる。
【0217】
図26には、この手法を適用した実施例7の送受信系統が示されている。図は、図17(C)に示した実施例3の第3例に対する変形例で示している。第1通信装置100自身において、低域チャネル用の受信処理部RXに着目したときに、2チャネル分上側(隣接チャネルのもう1つ高域側のチャネル)である高域チャネルが送信処理部TXである組合せとなるので、低域チャネル用のローノイズアンプ400に高域チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)を設ける。これら以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。因みに、図17(A)に示した実施例3の第1例や図17(B)に示した実施例3の第2例に対しては適用の余地(必要性)がない。
【0218】
第1通信装置100においては、103ギガヘルツ帯(High)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第2通信装置200側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線b)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には103ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図25(B)に示すように、103ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第1通信装置100においては、図示しない後段の57ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では103ギガヘルツ帯は復調されず、103ギガヘルツ帯の送信処理部TXから57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。詳細説明は割愛するが、これ以外の漏洩パス(図中の破線a,c,d)については、利得抑制部を使用しなくても、復調機能部8400では妨害波は復調されず、漏洩成分による干渉を防止することができる。
【0219】
以上、本明細書で開示する技術について実施形態を用いて説明したが、請求項の記載内容の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本明細書で開示する技術の技術的範囲に含まれる。前記の実施形態は、請求項に係る技術を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、本明細書で開示する技術が対象とする課題の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の技術が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の技術を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、本明細書で開示する技術が対象とする課題と対応した効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成も、本明細書で開示する技術として抽出され得る。
【0220】
前記実施形態の記載を踏まえれば、特許請求の範囲に記載の請求項に係る技術は一例であり、例えば、以下の技術が抽出される。以下列記する。
[付記A1]
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は3以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する信号伝送装置。
[付記A2]
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A1に記載の信号伝送装置。
[付記A3]
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A2に記載の信号伝送装置。
[付記A4]
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
下側隣接チャネル用の増幅部に設けられる利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する付記A3に記載の信号伝送装置。
[付記A5]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第2チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第2チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記A4に記載の信号伝送装置。
[付記A6]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記A4に記載の信号伝送装置。
[付記A7]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記A4に記載の信号伝送装置。
[付記A8]
更に、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A2乃至付記A7の何れか1項に記載の信号伝送装置。
[付記A9]
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A8に記載の信号伝送装置。
[付記A10]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記A6に記載の信号伝送装置。
[付記A11]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第2チャネルと第3チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記A7に記載の信号伝送装置。
[付記A12]
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は2以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する信号伝送装置。
[付記A13]
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A12に記載の信号伝送装置。
[付記A14]
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A13に記載の信号伝送装置。
[付記A15]
利得抑制部は、トラップ回路で構成されている付記A1乃至付記A15の何れか1項に記載の信号伝送装置。
[付記A16]
トラップ回路は、インダクタとコンデンサとの直列共振回路で構成されている付記A15に記載の信号伝送装置。
[付記A17]
チャネルの総数は3以上である場合において、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する受信回路。
[付記A18]
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する受信回路。
[付記A19]
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は3以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する電子機器。
[付記A20]
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は2以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する電子機器。
【0221】
[付記B1]
伝送信号を受信する複数の受信処理部を備え、
複数の受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する信号伝送装置。
[付記B2]
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記B1に記載の信号伝送装置。
[付記B3]
利得抑制部は、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあるものについて、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する付記B2に記載の信号伝送装置。
[付記B4]
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する付記B3に記載の信号伝送装置。
[付記B5]
何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、全二重双方向通信が適用されるものについて、増幅部は利得抑制部を有する付記B3に記載の信号伝送装置。
[付記B6]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第2チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第2チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記B5に記載の信号伝送装置。
[付記B7]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記B5に記載の信号伝送装置。
[付記B8]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記B5に記載の信号伝送装置。
[付記B9]
チャネルの総数は3以上であり、
更に、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、片方向二重通信が適用されるものについて、増幅部は利得抑制部を有する付記B5に記載の信号伝送装置。
[付記B10]
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する付記B9に記載の信号伝送装置。
[付記B11]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記B10に記載の信号伝送装置。
[付記B12]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第2チャネルと第3チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記B10に記載の信号伝送装置。
[付記B13]
何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、片方向二重通信が適用されるものについて、増幅部は利得抑制部を有する付記B3に記載の信号伝送装置。
[付記B14]
利得抑制部は、トラップ回路で構成されている付記B2に記載の信号伝送装置。
[付記B15]
トラップ回路は、インダクタとコンデンサとの直列共振回路で構成されている付記B14に記載の信号伝送装置。
[付記B16]
増幅部は、カスケード接続された2つのトランジスタを有するとともに、自チャネルに周波数選択性を持つように定数が設定されたインダクタを負荷に有する増幅段を具備し、
トラップ回路は、2つのトランジスタのカスケード接続点と基準電位点との間に接続されている付記B14に記載の信号伝送装置。
[付記B17]
増幅部は、増幅段を複数段有しており、
トラップ回路は、1段目の増幅段に設けられている付記B16に記載の信号伝送装置。
[付記B18]
増幅部は、増幅段を複数段有しており、
トラップ回路は、1段目以外の少なくとも1つの増幅段に設けられている付記B16に記載の信号伝送装置。
[付記B19]
自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅回路を有し、
増幅回路は、自チャネル以外の他チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制回路を有する受信回路。
[付記B20]
伝送信号を受信する受信処理部をチャネルごとに備え、
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
増幅部は、自チャネル以外の他チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する電子機器。
【0222】
[付記C1]
チャネルの総数が2であって、周波数帯を分けて全二重双方向通信を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
受信処理部は、隣接チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する信号伝送装置。
[付記C2]
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する付記C1に記載の信号伝送装置。
[付記C3]
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
下側隣接チャネル用の増幅部に設けられる利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する付記C2に記載の信号伝送装置。
[付記C4]
利得抑制部は、トラップ回路で構成されている付記C1に記載の信号伝送装置。
[付記C5]
トラップ回路は、インダクタとコンデンサとの直列共振回路で構成されている付記C4に記載の信号伝送装置。
[付記C6]
インダクタは、複数の配線層にてパターン形成されるとともに、各層のインダクタを電気回路的に並列接続することにより形成されている付記C5に記載の信号伝送装置。
[付記C7]
コンデンサは、インダクタをパターン形成する際の分布容量を利用したものである付記C5に記載の信号伝送装置。
[付記C8]
増幅部は、カスケード接続された2つのトランジスタを有するとともに、自チャネルに周波数選択性を持つように定数が設定されたインダクタを負荷に有する増幅段を具備し、
トラップ回路は、2つのトランジスタのカスケード接続点と基準電位点との間に接続されている付記C4に記載の信号伝送装置。
[付記C9]
増幅部は、増幅段を複数段有しており、
トラップ回路は、1段目の増幅段に設けられている付記C8に記載の信号伝送装置。
[付記C10]
増幅部は、増幅段を複数段有しており、
トラップ回路は、1段目以外の少なくとも1つの増幅段に設けられている付記C8に記載の信号伝送装置。
[付記C11]
増幅部は、増幅段を複数有しており、
トラップ回路は、1段目の増幅段と、1段目以外の少なくとも1つの増幅段のそれぞれに設けられている付記C8に記載の信号伝送装置。
[付記C12]
1段目の増幅段に設けられている利得抑制部と、1段目以外の少なくとも1つの増幅段に設けられているトラップ回路の少なくとも一方には、トラップ回路の選択的な使用を可能にするスイッチが設けられている付記C11に記載の信号伝送装置。
[付記C13]
インダクタは、複数の配線層にてパターン形成されるとともに、各層のインダクタを電気回路的に並列接続することにより形成されている付記C8に記載の信号伝送装置。
[付記C14]
増幅部は、相補型金属酸化膜半導体に形成されている付記C2に記載の信号伝送装置。
[付記C15]
送信処理部と受信処理部との間は導波路で結合されている付記C2に記載の信号伝送装置。
[付記C16]
導波路は、誘電体素材で成る付記C15に記載の信号伝送装置。
[付記C17]
自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する、チャネルの総数が2であって周波数帯を分けて全二重双方向通信を行なう受信回路。
[付記C18]
チャネルの総数が2であって、周波数帯を分けて全二重双方向通信を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
受信処理部は、隣接チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する電子機器。
[付記C19]
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する付記C18に記載の電子機器。
[付記C20]
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
下側隣接チャネル用の増幅部に設けられる利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する付記C19に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0223】
1…信号伝送装置、100…第1通信装置、103…半導体チップ、200…第2通信装置、203…半導体チップ、400…ローノイズアンプ、601…トラップ回路、602…トラップ回路、603…トラップ回路、604…トラップ回路、8…電子機器8、308…高周波信号導波路、TX…送信処理部(送信回路)、RX…受信処理部(受信回路)
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、信号伝送装置、受信回路、及び、電子機器に関する。より詳細には、マルチチャネル伝送を行なう際の相互干渉の対策技術に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、電子機器内や電子機器間の信号伝送において、大容量のデータを扱うことができる技術或いは高速(例えばリアルタイム)に伝送することができる技術が求められている。従前、典型的には、電気配線で接続して信号伝送を行なっていた。高速信号伝送を実現する手法として、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)が知られている。しかしながら、最近のさらなる伝送データの大容量高速化に伴い、消費電力の増加、反射等による信号歪みの影響の増加、不要輻射の増加、等が問題となる。例えば、映像信号(撮像信号を含む)やコンピュータ画像等の信号を機器内で高速(リアルタイム)に伝送する場合にLVDSでは限界に達してきている。
【0003】
伝送データの高速化の問題に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落とす手法がある。しかしながら、この対処では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化や半導体チップサイズの拡大等が求められる。又、高速・大容量のデータを配線で引き回すことによりいわゆる電磁界障害が問題となる。
【0004】
LVDSや配線数を増やす手法における問題は、何れも、電気配線により信号を伝送することに起因している。そこで、電気配線により信号を伝送することに起因する問題を解決する手法として、プラスチックを導波路(Waveguide)に使用してミリ波帯で信号伝送を行なう技術が、例えば“A 12.5+12.5Gb/s Full-Duplex Plastic Waveguide Interconnect”(ISSCC 2011学会発表:その予稿集、発表スライドを参照)に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Satoshi Fukuda, et al.、“A 12.5+12.5Gb/s Full-Duplex Plastic Waveguide Interconnect”、2011 IEEE International Solid-State Circuits Conference ISSCC 2011 / SESSION 8 / ARCHITECTURES & CIRCUITS FOR NEXT GENERATION WIRELINE TRANSCEIVERS / 8.5、平成23年2月、p.150−152
【非特許文献2】Satoshi Fukuda, et al.、“A 12.5+12.5Gb/s Full-Duplex Plastic Waveguide Interconnect”、2011 IEEE International Solid-State Circuits Conference ISSCC 2011 / SESSION 8 / 、平成23年2月、発表スライドp.1−29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、1つの導波路で周波数帯を分けて通信を行なういわゆる周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)を適用する場合、他方のチャネル(チャンネルと称されることもある、以下では「CH」と表記することもある)が妨害波となり通信に悪影響を与えることが問題となる。一般的に「相互干渉」や「チャネル間の混信問題」と称される。典型的には、相互に隣接する2つのチャネルに関しての「隣接チャネル間の混信問題」である。
【0007】
この問題を解消するため、例えば他チャネルとの間の周波数差を一定以上に分離する方法が採られることがあるが、分離を行なえば行なうほど(つまりチャネル間の周波数差を大きくするほど)、全体として必要となる周波数帯域は増加する。この場合、通信装置や通信用半導体装置(チップ)だけではなく、導波路についても、広帯域特性が必要となる難点がある。
【0008】
従って、本開示の目的は、他チャネルとの間の周波数差を大きくする手法を採らなくても他チャネルとの間の混信問題を緩和することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様に係る信号伝送装置は、周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、チャネルの総数は3以上である。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。本開示の第1の態様に係る信号伝送装置の従属項に記載された各信号伝送装置は、本開示の第1の態様に係る信号伝送装置のさらなる有利な具体例を規定する。例えば、受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成る構成を採ることができる。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する。更には、2つのチャネルの組合せが相互に隣接チャネルの関係にある場合であれば、利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制するとよい。
【0010】
本開示の第2の態様に係る信号伝送装置は、周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、チャネルの総数は2以上である。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。
【0011】
本開示の第3の態様に係る受信回路は、チャネルの総数は3以上である場合において、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制回路を有する。
【0012】
本開示の第4の態様に係る受信回路は、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制回路を有する。
【0013】
本開示の第5の態様に係る電子機器は、周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、チャネルの総数は3以上である。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。
【0014】
本開示の第6の態様に係る電子機器は、周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、チャネルの総数は2以上である。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。
【0015】
本開示の第2の態様に係る信号伝送装置、本開示の第3及び第4の態様に係る受信回路、並びに、本開示の第5及び第6の態様に係る電子機器においても、本開示の第1の態様に係る信号伝送装置の従属項に記載された各信号伝送装置に適用される各種の技術・手法(但し、第4の態様に係る受信回路と第6の態様に係る電子機器においては全二重双方向通信に特有の事項を除く)が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、本開示の第2の態様に係る信号伝送装置、本開示の第3及び第4の態様に係る受信回路、並びに、本開示の第5及び第6の態様に係る電子機器のさらなる有利な具体例を規定する。例えば、受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成る構成を採ることができる。そして、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する。更には、2つのチャネルの組合せが相互に隣接チャネルの関係にある場合であれば、利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制するとよい。
【0016】
本明細書で開示する技術では、マルチチャネル伝送を行なう際のチャネル数を問わず、又、全二重双方向通信と片方向二重通信の何れが適用されるのかを問わず、受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を増幅部や増幅回路の前段或いは後段に設ける点に特徴がある。好適には、信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成る構成とする。何れか2つのチャネルの組合せに関して、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対して、利得を抑制する利得抑制部を増幅部や増幅回路に設ける。例えば、2つのチャネルの組合せが相互に隣接チャネルの関係にある場合であれば、利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対して、利得を抑制する利得抑制部を増幅部や増幅回路に設ける。そして、全二重双方向通信が適用される場合には、それが適用されるものに関して(好適には、更に、隣接チャネルの関係にあるものに関して)のみ前記の条件に従って利得抑制部を増幅部や増幅回路に設ければよい。
【0017】
因みに、本開示の第1の態様に係る信号伝送装置、本開示の第3の態様に係る受信回路、及び、本開示の第5の態様に係る電子機器においては、チャネルの総数を「3」以上とする。片方向二重通信が適用される場合には、それが適用されるものに関して(好適には、更に、隣接チャネルの関係にあるものに関して)のみ前記の条件に従って信号抑制部や利得抑制部を設ければよい。因みに、本開示の第2の態様に係る信号伝送装置、本開示の第4の態様に係る受信回路、及び、本開示の第6の態様に係る電子機器においては、チャネルの総数を「2」以上とする。全二重双方向通信と片方向二重通信の双方が適用される場合には、それらが適用されるものに関して(好適には、更に、隣接チャネルの関係にあるものに関して)のみ前記の条件に従って信号抑制部や利得抑制部を設ければよい。
【0018】
つまり、本明細書で開示する技術では、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を受信処理部(例えば、増幅部や増幅回路の内部或いはその前段や後段)の何れかに設ける。複数の受信処理部の全てではなく、「何れか」の受信処理部に利得抑制部を設けて、相互の干渉を抑制する。したがって、複数の受信処理部の全てについて他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を設ける場合と比べて構成を簡易にできる。信号抑制部を設けることにより妨害波の影響を抑制することができるので、他チャネルとの周波数間隔を必要以上にとらなくても他チャネルとの間の混信問題を緩和でき、周波数の有効利用が可能となる。
【0019】
本明細書で開示する技術の好適な態様においては、「下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方」に対しての利得を抑制する利得抑制部を受信処理部に設ける。例えば、増幅部や増幅回路の内部或いはその前段や後段、特に好ましくは、増幅部や増幅回路の内部に利得抑制部を設ける。本明細書で開示する技術の好適な態様においては、利得抑制部が設けられていない場合の(以下では「裸の」と記すこともある)増幅部や増幅回路の利得周波数特性が、希望チャネル(自チャネル)の下側(低域側)と上側(高域側)とで非対称であることを前提とする。利得周波数特性が「非対称」とは、下側(低域側)と上側(高域側)の一方については利得の減衰度合いが十分であるが、他方については利得の減衰度合いが不十分であることを意味する。典型的には、何れか2つのチャネルの組合せが相互に隣接チャネルの関係にある場合であり、上側隣接チャネルと下側隣接チャネルの一方については利得の減衰度合いが十分であるが、他方については利得の減衰度合いが不十分であることを意味する。これらの場合、そのままでは、利得の減衰度合いが不十分な方のチャネルからの妨害(相互に隣接チャネルの関係にある場合には、特に隣接妨害とも称する)が問題となる。
【0020】
そこで、本明細書で開示する技術の好適な態様においては、増幅部や増幅回路の裸の利得周波数特性が非対称であることを利用して、下側(低域側)のチャネルと上側(高域側)のチャネルの一方(詳しくは、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネル)についてのみ利得抑制部を設ける。相互に隣接チャネルの関係にある典型的な例では、上側隣接チャネルと下側隣接チャネルの片方(詳しくは、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方)にのみ利得抑制部を設ける。要するに、本明細書で開示する技術の好適な態様においては、増幅部や増幅回路の裸の利得周波数特性が、希望チャネルの下側と上側とで非対称である場合に、他チャネルからの妨害に対しての減衰度合いが不足する方についてのみ利得抑制部を設けて、相互の干渉を抑制する。したがって、下側(低域側)のチャネルと上側(高域側)のチャネルの双方(典型例では上側隣接チャネルと下側隣接チャネルの双方)について利得抑制部を設ける場合と比べて構成を簡易にできる。利得抑制部を設けることにより妨害波の影響を抑制することができるので、他チャネル(典型的には隣接チャネル)との周波数間隔を必要以上にとらなくても他チャネルとの間の混信問題を緩和でき、周波数の有効利用が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の第1及び第2の信号伝送装置、第3及び第4の態様に係る受信回路、並びに、本開示の第5及び第6の態様に係る電子機器によれば、簡易な構成により、他チャネルとの間の周波数差を大きくする手法を採らなくても他チャネルとの間の混信問題を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(A)〜図1(B)は、信号伝送装置或いは電子機器の全体概要を示す図である。
【図2】図2は、信号伝送装置或いは電子機器の具体的な事例を示す図である。
【図3】図3(A)〜図3(B)は、信号伝送装置の機能ブロック図である。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、相互干渉の発生原因を説明する図である。
【図5】図5(A)〜図5(B)は、相互干渉に対する本実施形態の対策原理を説明する図(その1)である。
【図6】図6(A)〜図6(D)は、相互干渉に対する本実施形態の対策原理を説明する図(その2)である。
【図7】図7(A)〜図7(B)は、トラップ回路を備えたローノイズアンプの第1例を説明する図である。
【図8】図8は、トラップ回路を備えたローノイズアンプの第2例を説明する図である。
【図9】図9は、トラップ回路を備えたローノイズアンプの第3例を説明する図である。
【図10】図10(A)〜図10(B)は、トラップ回路を備えていないローノイズアンプを説明する図である。
【図11】図11は、全二重双方向通信を適用した実施例1の送受信系統を説明する図である。
【図12】図12(A)〜図12(C)は、実施例1における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。
【図13】図13は、片方向二重通信を適用した実施例2の送受信系統を説明する図である。
【図14】図14は、実施例2における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。
【図15】図15は、実施例2に対する変形例を説明する図である。
【図16】図16(A)〜図16(C)は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した実施例3で使用されるローノイズアンプのゲイン特性の一例を示す図である。
【図17】図17(A)〜図17(C)は、実施例3の送受信系統を説明する図である。
【図18】図18(A)〜図18(B)は、実施例3に対する変形例を説明する図である。
【図19】図19(A)〜図19(C)は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した実施例4の送受信系統を説明する図である。
【図20】図20(A)〜図20(B)は、実施例4に対する変形例を説明する図である。
【図21】図21(A)〜図21(C)は、実施例5の送受信系統を説明する図である(第1例〜第3例)。
【図22】図22(A)〜図22(C)は、実施例5の送受信系統を説明する図である(第4例〜第6例)。
【図23】図23(A)〜図23(C)は、実施例6の送受信系統を説明する図である(第1例〜第3例)。
【図24】図24(A)〜図24(C)は、実施例6の送受信系統を説明する図である(第4例〜第6例)。
【図25】図25(A)〜図25(B)は、実施例7で使用されるローノイズアンプのゲイン特性の一例を説明する図である。
【図26】図26は、実施例7の送受信系統を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際にはアルファベット或いは“_n”(nは数字)或いはこれらの組合せの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0024】
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.伝送処理系統(基本):機器構成、機能ブロック詳細構成例
3.相互干渉とその対策原理:発生原因、対策手法
4.増幅部の構成例:第1例〜第4例
5.具体的な適用例
実施例1:対策手法の第1例、2CH&全二重双方向
実施例2:対策手法の第1例、2CH&片方向二重
実施例3:対策手法の第1例、3CH以上&全二重双方向と片方向二重の併用
(片方向二重通信系の漏洩パスを無視)
実施例4:対策手法の第1例、3CH以上&全二重双方向と片方向二重の併用
(片方向二重通信系の漏洩パスも考慮)
実施例5:対策手法の第2例、増幅回路以外での対応
(増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用)
実施例6:対策手法の第3例
(増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用しない)
実施例7:隣接チャネル以外の他チャネルの干渉対策
【0025】
<全体概要>
先ず、基本的な事項について以下に説明する。本明細書で開示する信号伝送装置や電子機器においては、伝送信号を受信する複数の受信処理部を受信回路に備える。複数の受信処理部と対応するように、複数の送信処理部を備える。例えば、周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備える。チャネルごとの受信処理部と対応するように、送信処理部をチャネルごとに備える。受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する。全ての受信処理部に信号抑制部を設ける場合と比べて、簡易な構成で、他チャネルとの間の混信問題を緩和することができる。
【0026】
好ましい形態としては、受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部(増幅回路)を有する。増幅部の裸の利得周波数特性は、希望チャネル(自チャネル)の下側(低域側)と上側(高域側)とで非対称である。この場合に、本明細書で開示する信号伝送装置や電子機器において好ましい形態としては、その非対称性を利用して、複数の受信処理部の何れかは、妨害波に対しての利得を抑制する利得抑制部を増幅部(増幅回路)内に有するものとする。つまり、信号抑制部が、増幅部に設けられた利得抑制部から成る構成である。自チャネル以外のチャネル(両隣りの関係にある隣接チャネルに限らず、より離れた他チャネルでもよい:纏めて妨害チャネルとも記す)からの影響がある場合に、その妨害チャネルの影響を利得抑制部により抑制する。典型的には、隣接チャネルからの影響を抑制する。例えば、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあるものについて、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する利得抑制部を増幅部に設ける。つまり、利得抑制部が設けられていない場合の増幅部の裸の利得周波数特性が非対称であることを積極的に利用して、利得の減衰度合いの不足する側の隣接チャネル用にトラップ回路等の利得抑制部を設ける。
【0027】
ここで、増幅部の裸の利得周波数特性が非対称を呈する場合、自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得減衰性が不足する第1の状態と、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が不足する第2の状態とをとり得る。第1の状態では下側隣接チャネルに対しての波長選択性が劣り、第2の状態では上側隣接チャネルに対しての波長選択性が劣る。対象となる2つのチャネルの組合せにおいて、一方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性と他方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性とは、その非対称性が同じ状態である場合に限らず、混在する場合も起こり得る。つまり、一方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性が第1の状態であり、他方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性も第1の状態である第1のケース、一方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性が第2の状態であり、他方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性も第2の状態である第2のケース、一方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性が第2の状態であり、他方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は第1の状態である第3のケース、一方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性が第1の状態であり、他方のチャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は第2の状態である第4のケース、の計4つの組合せをとり得る。よって、本実施形態の信号伝送装置や受信回路や電子機器において、増幅部に利得抑制部を設ける場合、前述の4つの組合せのそれぞれについて、「利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する」ことができるように所要のチャネル用の増幅部に利得抑制部を設ける。
【0028】
例えば、チャネルの総数が2であるとし、隣接チャネルの関係にある2つのチャネルの内、一方のチャネルの搬送周波数の方が他方のチャネルの搬送周波数よりも低いとする。便宜的に、搬送周波数の低い一方(低域側)のチャネルを低域チャネルと称し、搬送周波数の高い他方(高域側)のチャネルを高域チャネルと称する。第1のケースでは、両チャネルの増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得減衰性が不足する第1の状態にあるので、高域チャネル用の増幅部にのみ利得抑制部を設ければよく、その利得抑制部は、下側隣接チャネルである低域チャネルに対して利得を抑制するものであればよい。低域チャネル用の増幅部には、利得抑制部を設ける必要はない。第2のケースでは、両チャネルの増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が不足する第2の状態にあるので、低域チャネル用の増幅部にのみ利得抑制部を設ければよく、その利得抑制部は、上側隣接チャネルである高域チャネルに対して利得を抑制するものであればよい。高域チャネル用の増幅部には、利得抑制部を設ける必要はない。このように、両チャネルの増幅部の裸の利得周波数特性が同じ状態の非対称性を呈する第1のケースや第2のケースでは、何れか一方のチャネル用の増幅部にのみ、他方のチャネルに対する利得を抑制する利得抑制部を設ければよい。
【0029】
第3のケースでは、低域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が不足する第2の状態にあり、高域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得減衰性が不足する第1の状態にある。したがって、低域チャネル用の増幅部には上側隣接チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設け、又、高域チャネル用の増幅部には、下側隣接チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設ける。このように、第3のケースでは、何れのチャネルについても、相手チャネルに対する利得の減衰度合いが不足する(減衰度合いが不十分な)状態であるから、何れのチャネルについても、相手チャネルに対する利得を抑制する利得抑制部を設ける必要がある。
【0030】
第4のケースでは、低域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得減衰性が不足する第1の状態にあり、高域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が不足する第2の状態にある。低域チャネル用の増幅部は、利得抑制部を設けなくても、上側隣接チャネルである高域チャネルに対しての利得の減衰度合いは十分であり、又、高域チャネル用の増幅部は、利得抑制部を設けなくても、下側隣接チャネルである低域チャネルに対しての利得の減衰度合いは十分である。このように、第4のケースでは、何れのチャネルについても、相手チャネルに対する利得の減衰度合いが不足していない(減衰度合いが十分な)状態であるから、何れのチャネルについても、相手チャネルに対する利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はない。
【0031】
チャネルの総数が3以上の場合には、更に、他のチャネルとの組合せをとり、それぞれ2つのチャネルでなる各組合せの内で隣接チャネルの関係にあるものに関して、前述の4つのケースの何れに該当するのかに基づいて、利得抑制部の要否や、利得抑制部を設ける場合には何れのチャネルに対する利得を抑制するものとするのか等を決定すればよい。
【0032】
本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器においては、全二重双方向通信を適用してマルチチャネル伝送を行なう場合、全二重双方向通信が適用され且つ隣接チャネルの関係にあるものに関してのみ前記手法に従って利得抑制部を増幅部に設ける。
【0033】
或いは、本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器においては、片方向二重通信を適用してマルチチャネル伝送を行なう場合、片方向二重通信が適用され且つ隣接チャネルの関係にあるものに関してのみ前記手法に従って利得抑制部を増幅部に設ける。
【0034】
或いは、本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器においては、全二重双方向通信と片方向二重通信の双方が適用される場合は、好ましくは、全二重双方向通信と片方向二重通信についての前述の各手法を併用する。尚、全二重双方向通信と片方向二重通信の双方が適用される場合に、片方向二重通信に関しての前述の手法を併用することは必須でない。これは、以下のことに起因する。
【0035】
先ず、全二重双方向通信を適用する場合、一方の通信装置(第1通信装置)側或いは他方の通信装置(第2通信装置)側の何れか一方或いは双方そのものにおいて、自身の送信処理部から受信処理部へほぼ直接に高周波信号が漏れ込む漏洩パスができ、そのエネルギは導波路を介して相手側の通信装置の受信処理部へ漏れ込む漏洩パスでのエネルギに比べると大きい。送信処理部と受信処理部との間に介在する導波路の伝送損失が影響するか否かの相違があるからである。したがって、全二重双方向通信を適用する場合に、一方の通信装置(第1通信装置)側或いは他方の通信装置(第2通信装置)側の何れか一方或いは双方そのものにおいて、自身の送信処理部から受信処理部へほぼ直接に高周波信号が漏れ込む漏洩パスが、2つのチャネルの組合せ(典型的には隣接チャネルの組合せ)にて形成される場合には、全二重双方向通信についての前述の手法を適用するのが好ましい。
【0036】
一方、片方向二重通信を適用する場合、一方の通信装置の送信処理部から他方の通信装置の受信処理部へ導波路を介して高周波信号が伝送されるが、このとき自チャネル用の受信処理部だけでなく他チャネル用の受信処理部へ高周波信号が漏れ込む漏洩パスができる。しかしながら、導波路を介して他方の通信装置に伝送されるので、受信されるエネルギは、全二重双方向通信を適用する場合に形成される自身の送信処理部から受信処理部への漏洩パスでのエネルギに比べると小さい。一方の通信装置と他方の通信装置とを結合する導波路の伝送損失により受信側のエネルギが低下するからである。したがって、場合によっては、片方向二重通信についての前述の手法を適用することが不要となることもある。
【0037】
本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器において、前述の利得抑制部を増幅部に設けることは、原理的には、全二重双方向通信を適用するのか片方向二重通信を適用するのかを問わず、2チャネルの場合から適用可能であり、チャネル総数の最少値は「2」となる。
【0038】
例えば、チャネル総数を「3」以上とする場合に、片方向二重通信は適用せず全二重双方向通信を適用する場合、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、全二重双方向通信についての前述の手法を適用する。典型的には、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、全二重双方向通信が適用されるものについて、全二重双方向通信についての前述の手法を適用する。
【0039】
全二重双方向通信と片方向二重通信の双方が適用される場合には、全二重双方向通信と片方向二重通信についての前述の各手法を併用する。全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用する場合のチャネル総数の最少値は「3」となる。この場合、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、全二重双方向通信についての前述の手法を適用するとともに、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、片方向二重通信についての前述の手法を適用する。典型的には、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、全二重双方向通信が適用されるものについて、全二重双方向通信についての前述の手法を適用するとともに、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、片方向二重通信が適用されるものについて、片方向二重通信についての前述の手法を適用する。
【0040】
利得抑制部を設けない場合の増幅部の裸の利得周波数特性は、多くの場合、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣る非対称性を呈する。対象となる2つのチャネルの組合せに関しては前述の第2のケースとなる。したがって、本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器において好適な態様としては、この特質を利用することにより、増幅部は上側隣接チャネルについてのみ利得抑制部を有するものであればよい。
【0041】
例えば、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣る非対称性を呈する場合であって、チャネルの総数が3の場合に、第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されているとした場合に、全二重双方向通信を適用する場合には、次の3通りの態様をとり得る。3通りの態様は、導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置との間でマルチチャネル伝送を行なうに当たり、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、第3チャネル用の送信処理部、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、第3チャネル用の受信処理部のそれぞれを、第1通信装置と第2通信装置の何れに配置するかによって決まる。
【0042】
例えば、第1の態様は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を第1通信装置が有し、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を第2通信装置が有する構成である。この場合、第2チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第2チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用されると見なすことができる。そしてこの場合、第2通信装置側における第2チャネル用の送信処理部から第1チャネル用の受信処理部への漏洩パスと、第1通信装置側における第3チャネル用の送信処理部から第2チャネル用の受信処理部への漏洩パスとが、隣接チャネル間の混信問題を起こし得る。その対策として、第2通信装置においては、第1チャネル用の受信処理部の増幅部には第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設け、第1通信装置においては、第2チャネル用の受信処理部の増幅部には第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける。
【0043】
第2の態様は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を第1通信装置が有し、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を第2通信装置が有する構成である。この場合、第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用されると見なすことができる。そしてこの場合、第2通信装置側における第3チャネル用の送信処理部から第2チャネル用の受信処理部への漏洩パスが、隣接チャネル間の混信問題を起こし得る。その対策として、第2通信装置においては、第2チャネル用の受信処理部の増幅部には第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける。
【0044】
第3の態様は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を第1通信装置が有し、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を第2通信装置が有する構成である。この場合、第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用されると見なすことができる。そしてこの場合、第1通信装置側における第2チャネル用の送信処理部から第1チャネル用の受信処理部への漏洩パスが、隣接チャネル間の混信問題を起こし得る。その対策として、第1通信装置においては、第1チャネル用の受信処理部の増幅部は第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける。
【0045】
又、これらの3つの態様において更に片方向二重通信を併用することもできる。この場合、第1チャネルと第3チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、片方向二重通信に伴って、導波路を介在して第1通信装置と第2通信装置との間に送受信間の漏洩パスが形成される。ここで、第1の態様において片方向二重通信を併用する場合には、第1通信装置側における第3チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第1チャネル用の受信処理部への漏洩パスと、第1通信装置側における第1チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第3チャネル用の受信処理部への漏洩パスとが形成される。漏洩パスを形成する両チャネルは隣接チャネルの関係にはならないので、隣接チャネル間の混信問題は起こり得ない。よって、片方向二重通信を併用することに伴って、隣接チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を更に何れかの増幅部に設けるという必要はない。つまり、片方向二重通信を併用する場合であっても、全二重双方向通信に関しての第1の態様のままでよい。
【0046】
これに対して、第2の態様において片方向二重通信を併用する場合には、第1チャネルと第2チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、それに伴って、第1通信装置側における第2チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第1チャネル用の受信処理部への漏洩パスと、第1通信装置側における第1チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第2チャネル用の受信処理部への漏洩パスとが形成される。漏洩パスを形成する両チャネルは隣接チャネルの関係にあるので、隣接チャネル間の混信問題を起こし得る。その対策として、片方向二重通信を併用することに伴って、第2通信装置においては、第1チャネル用の受信処理部の増幅部には第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける(追加する)。因みに、前述のように、第2の態様においては、全二重双方向通信を適用する場合における隣接チャネル間の混信問題を抑制するために、第2通信装置においては、第2チャネル用の受信処理部の増幅部には第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部が設けられている。
【0047】
又、第3の態様において片方向二重通信を併用する場合には、第2チャネルと第3チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、それに伴って、第1通信装置側における第3チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第2チャネル用の受信処理部への漏洩パスと、第1通信装置側における第2チャネル用の送信処理部から第2通信装置側における第3チャネル用の受信処理部への漏洩パスとが形成される。漏洩パスを形成する両チャネルは隣接チャネルの関係にあるので、隣接チャネル間の混信問題を起こし得る。その対策として、片方向二重通信を併用することに伴って、第2通信装置においては、第2チャネル用の受信処理部の増幅部には第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける(追加する)。因みに、前述のように、第3の態様においては、全二重双方向通信を適用する場合における隣接チャネル間の混信問題を抑制するために、第1通信装置においては、第1チャネル用の受信処理部の増幅部には第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部が設けられている。
【0048】
本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器においては、信号抑制部は、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制するものであればよく、又、利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルに対しての利得を抑制するものであればよく、何れも、トラップ回路等様々な回路構成のものを採用できる。このことは、全二重双方向通信を適用するのか片方向二重通信を適用するのかを問わず適用可能である。トラップ回路としては、インダクタとコンデンサとの直列共振回路又は並列共振回路或いはその任意の組合せに係る直並列共振回路で構成したものを使用できる。何れを使用し得るかは、利得抑制部が付加される増幅部の構成に依存するが、直列共振回路や並列共振回路が最も簡易な構成である。
【0049】
好適な態様としては、利得抑制部は、増幅部の利得周波数特性が、自チャネルを中心に高域側と低域側の何れか一方が他方よりも高利得となる非対称特性を持つ場合に、利得周波数特性の非対称性による減衰性の不足分を補うものであればよく、様々な回路構成のものを採用できる。つまり、好適な態様の利得抑制部としては、希望波成分に対しては減衰性を呈さずに妨害波(非希望波)成分となる隣接チャネルに対してのみ減衰性を呈する簡易な構成であるのがよく、例えば、トラップ回路で構成されているとよい。
【0050】
トラップ回路を成すインダクタやコンデンサは、1層によるのか複数層によるのかに拘わらず、コイル状にパターン形成することにより集中定数回路として形成してもよいが、これに限らず、例えばマイクロストリップライン等のようにパターン形成して分布定数回路状にしてもよい。何れの場合も、パターン領域を少なくする上では、コンデンサ成分はインダクタをパターン形成する際の分布容量を利用するのが好ましい。
【0051】
[その他]
本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器において、好ましくは、増幅部は、カスケード接続された2つのトランジスタを有するとともに、自チャネルに周波数選択性を持つように定数が設定されたインダクタを負荷に有する増幅段を具備しているとよい。このことは、全二重双方向通信を適用するのか片方向二重通信を適用するのかを問わず適用可能である。この場合、利得抑制部は、2つのトランジスタのカスケード接続点と基準電位点との間に接続されているとよく、利得抑制部としてトラップ回路を使用する場合には直列共振回路にするとよい。つまり、増幅部をカスケードアンプ構成にし、そのカスケード接続点と基準電位点との間に直列共振回路で構成されたトラップ回路を設けるのが好適である。このようなカスケードアンプ構成をCMOS等の半導体集積回路にて実現するには、デュアルゲートMOSFET構造を利用するのが好適である。
【0052】
好ましくは、増幅段のインダクタは、ゲインアップが図られるようにパターン設計をするとよく、例えば、複数の配線層にてパターン形成し、各層のインダクタを電気回路的に並列接続することにより、インダクタの直列抵抗成分を減らすとよい。或いは又、増幅部は、相補型金属酸化膜半導体に形成されているとよい。
【0053】
ここで、増幅部は、増幅段を複数段有しているのが好適である。つまり、増幅部をカスケードアンプ構成にする場合、カスケードアンプの段数は、好ましくは複数段であるのがよい。この場合、線形性(リニアリティ)を重視して1段目の増幅段に利得抑制部を備える構成とすることもできるし、ノイズ性能を重視して1段目以外の少なくとも1つの増幅段に利得抑制部を備える構成とすることもできる。
【0054】
更には、これらを併用して、1段目の増幅段に利得抑制部を備えつつ、1段目以外の少なくとも1つの増幅段にも利得抑制部を備える構成とすることもできる。この場合、1段目の増幅段に設けられている利得抑制部と、1段目以外の少なくとも1つの増幅段に設けられている利得抑制部の少なくとも一方には、利得抑制部の選択的な使用を可能にするスイッチが設けられているとよい。こうすることで、1段目の利得抑制部と1段目以外の利得抑制部のスイッチが設けられている方を使い分けることができる。特に、双方にスイッチが設けらた構成では、1段目の利得抑制部と1段目以外の利得抑制部とを任意に使い分けることができる。
【0055】
本明細書で開示する信号伝送装置や受信回路や電子機器においては、送信処理部と受信処理部との間は誘電体素材で成る導波路で結合されているとよい。つまり、各チャネル用の送信処理部或いは受信処理部を、マルチチャネル伝送を行ない得るように、第1通信装置と第2通信装置の何れか配置し、第1通信装置と第2通信装置との間を導波路で結合する。そして、この導波路としては、磁性体或いはプラスチック等の誘電体で成るものを使用し得るが、特に誘電体で成るものが、可撓性、価格、入手容易性、製造容易性等の面で好適である。このことは、全二重双方向通信を適用するのか片方向二重通信を適用するのかを問わず適用可能である。
【0056】
本明細書で開示する信号伝送装置、信号伝送装置と組み合わせて使用可能な受信回路や電子機器においては、例えば、誘電体或いは磁性体で構成された導波路を筺体内に配置しておき、通信装置間を導波路で結合させることにより、導波路を伝わる高周波信号の通信を確立する。こうすることで、高速のデータ伝送を、マルチパス、伝送劣化、不要輻射等を少なくして機器内通信或いは機器間通信を実現する。このことは、全二重双方向通信を適用するのか片方向二重通信を適用するのかを問わず適用可能である。
【0057】
電気配線の接続に対して、導波路と伝送路結合部(高周波信号の伝達機能を持つ伝達構造体、カップラとも称する)の配置は、電気配線のコネクタのようにピン配置や接触位置を特定するのもではなく、相当程度(数ミリメートル〜数センチメートル)の誤差を許容できる。無線接続に対して、電磁波の損失を低くできるので、送信器の電力を低くでき、受信側の構成を簡略化できるし、機器外からの電波の干渉や、逆に、機器外への放射を抑圧することもできる。
【0058】
伝送対象信号をミリ波帯等の高周波信号に変換して伝送するので、高速伝送が可能となるし、導波路を使用することで、カップリングが良く、ロスが小さいため消費電力が小さい。導波路として、入手の容易なプラスチック等の誘電体を使用することもでき信号伝送装置及び電子機器を安価に構成できる。導波路に高周波信号が閉じ込められるため、マルチパスの影響が小さいしEMCの問題も小さい。
【0059】
信号伝送にミリ波帯等の電波の周波数帯の高周波信号を使用すれば、電気配線や光を使用する場合の問題は起きない。即ち、信号伝送を、電気配線や光によらずに電波の周波数帯の高周波信号を利用すれば、無線通信技術を適用でき、電気配線を使用する場合の難点を解消できるし、光を利用する場合よりも簡単かつ安価な構成で信号インタフェースを構築できる。サイズ・コストの面で、光を利用する場合よりも有利である。好ましくは、本実施形態においては、信号伝送は、ミリ波帯(波長が1〜10ミリメートル)の搬送周波数を主に使用するのが好適である。但し、ミリ波帯に限らず、より波長の短い例えばサブミリ波帯(波長が0.1〜1ミリメートル)やより波長の長いセンチ波帯(波長が1〜10センチメートル)等、ミリ波帯近傍の搬送周波数を使用する場合にも適用可能である。例えば、サブミリ波帯〜ミリ波帯、ミリ波帯〜センチ波帯、或いはサブミリ波帯〜ミリ波帯〜センチ波帯を使用してよい。信号伝送にミリ波帯或いはその近傍を使用すれば、他の電気配線に対して妨害を与えずに済み、電気配線(例えばフレキシブルプリント配線)を信号伝送に使ったときのようなEMC対策の必要性が低くなる。ミリ波帯或いはその近傍を使用すれば、電気配線(例えばフレキシブルプリント配線)を使ったときよりもデータレートを大きくとれるので、高精細化やフレームレートの高速化による画像信号の高速化等、高速・高データレートの伝送にも簡単に対応できる。
【0060】
<伝送処理系統(基本)>
図1〜図3は、本実施形態の信号伝送装置及び電子機器の信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。換言すると、本実施形態の信号伝送装置及び電子機器における通信処理に着目した機能ブロック図の基本を示す図である。ここで、図1は、信号伝送装置或いは電子機器の全体概要を示し、図2は、信号伝送装置或いは電子機器の具体的な事例を示し、図3は、信号伝送装置の機能ブロック図である。
【0061】
[機器構成]
図1(A)に示すように、信号伝送装置1は、2つの電子機器8(第1電子機器8_1、第2電子機器8_2)と高周波信号導波路308_31とを備えており、高周波信号導波路308を介しての機器内通信や機器間通信が可能に構成されている。高周波信号導波路308としては例えば誘電体導波路を使用するのが好適である。
【0062】
例えば、第1電子機器8_1には、2つの半導体チップ103(半導体チップ103_1、半導体チップ103_2)が搭載された基板102_1と、2つの半導体チップ103(半導体チップ103_3、半導体チップ103_4)が搭載された基板102_2とが設けられている。第1電子機器8_1内においては、半導体チップ103_1と半導体チップ103_2との間で高周波信号導波路308_11を介した片方向の通信と高周波信号導波路308_12を介した片方向の通信とを組み合わせて双方向の通信が可能になっている。又、第1電子機器8_1内においては、半導体チップ103_1と半導体チップ103_3との間で高周波信号導波路308_13を介した片方向の通信が可能になっているし、半導体チップ103_2と半導体チップ103_4との間で高周波信号導波路308_14を介した片方向の通信が可能になっている。
【0063】
第2電子機器8_2には、2つの半導体チップ203(半導体チップ203_1、半導体チップ203_2)が搭載された基板202_1と、2つの半導体チップ203(半導体チップ203_3、半導体チップ203_4)が搭載された基板202_2とが設けられている。第2電子機器8_2内においては、半導体チップ203_1と半導体チップ203_2との間で高周波信号導波路308_21を介した片方向の通信と高周波信号導波路308_22を介した片方向の通信とを組み合わせて双方向の通信が可能になっている。又、第2電子機器8_2内においては、半導体チップ203_1と半導体チップ203_3との間で高周波信号導波路308_23を介した片方向の通信が可能になっているし、半導体チップ203_2と半導体チップ203_4との間で高周波信号導波路308_24を介した片方向の通信が可能になっている。
【0064】
第1電子機器8_1と第2電子機器8_2との間の機器間通信に関しては、半導体チップ103_2と半導体チップ203_2との間で高周波信号導波路308_31を介した双方向の通信が可能になっている。第1電子機器8_1と第2電子機器8_2とを纏めて1つの筐体内に収容して1つの電子機器8_3として構成し、機器内通信を行なうようにすることもできる。
【0065】
図1(B)には、第1通信装置100と第2通信装置200との間で、高周波信号導波路308を介して通信を行なう場合の機能ブロックが示されている。ここでは、一例として、半導体チップ103_2と半導体チップ203_2との間で高周波信号導波路308_31を介して全二重双方向通信(Full-duplex)を行なう系統に着目して示している。第1通信装置100(半導体チップ103_2)と第2通信装置200(半導体チップ203_2)とには、例えば、データ送受信部、信号変換部、高周波信号入出力部が設けられる。高周波信号導波路308及び高周波信号導波路308と電磁結合される複数の通信装置とから構成される信号伝送装置1において、通信装置間の高周波信号導波路308に複数の伝送パス(通信チャネル)を形成し、通信装置間で双方向のマルチプル伝送を行なう。図示しないが、1つの高周波信号導波路308に1つの伝送パス(通信チャネル)を設ける、つまり、通信チャネルごとに各別の高周波信号導波路308を使用する構成にしてもよい。又、後述の図2(B)で示すように、通信装置間で片方向二重通信(Simplex)を行なう構成にしてもよい。例えば、図2(A)において、半導体チップ103_1と半導体チップ103_2との間の高周波信号導波路308_11を介した通信及び高周波信号導波路308_12を介した通信、半導体チップ103_1と半導体チップ103_3との間の高周波信号導波路308_13を介した通信、半導体チップ103_2と半導体チップ103_4との間の高周波信号導波路308_14を介した通信が該当する。
【0066】
図2には、ビデオカメラを第1電子機器8_1として使用し、液晶や有機EL等の表示デバイスを具備した表示装置を第2電子機器8_2として使用した場合の信号伝送装置1の概要が示されている。尚、理解し易いように、第1通信装置100をビデオカメラをから取り外し、又、第2通信装置200を表示装置から取り外した状態で示している。ビデオカメラ(電子機器8_1)で撮像された被写体の画像情報は第1通信装置100によりミリ波帯の高周波信号に変換され、高周波信号導波路308_31を介して表示装置(電子機器8_2)側の第2通信装置200に伝送される。第2通信装置200は、受信したミリ波帯の高周波信号を復調して被写体の画像情報を再現し、表示装置に供給する。これにより、ビデオカメラで撮像された被写体の画像が表示装置に表示される。
【0067】
[機能ブロック詳細構成例]
図3には、信号伝送装置1の機能ブロック図の詳細が示されている。図3(A)は全二重双方向通信の場合の構成例を示し、図3(B)は片方向二重通信の場合の構成例を示す。図3(A)においては、第1通信装置100において送信系統を詳細に示しており、第2通信装置200において受信系統を詳細に示している。信号伝送装置1は、第1の無線機器の一例である第1通信装置100と第2の無線機器の一例である第2通信装置200が信号伝送路9(例えば高周波信号導波路308)を介して結合され高周波信号(例えばミリ波帯)で信号伝送を行なうようになっている。
【0068】
第1通信装置100にはミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ103が設けられ、第2通信装置200にはミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ203が設けられている。本実施形態では、ミリ波帯での通信の対象となる信号を、高速性や大容量性が求められる信号のみとし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関してはミリ波信号への変換対象としない。これらミリ波信号への変換対象としない信号(電源を含む)については、従前と同様の手法で信号の接続をとる。ミリ波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。後述する各信号生成部はミリ波信号生成部或いは電気信号変換部の一例である。
【0069】
第1通信装置100は、基板102上に、ミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ103と伝送路結合部108が搭載されている。半導体チップ103は、前段信号処理部の一例であるLSI機能部104と送信処理用の信号生成部107_1(伝送対象信号を高周波信号に変換して送信処理を行なう送信処理部TXの一例)及び受信処理用の信号生成部207_1(受信した高周波信号を伝送対象信号に変換する受信処理を行なう受信処理部RXの一例)を一体化したLSI(Large Scale Integrated Circuit)である。LSI機能部104は、第1通信装置100の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方に送信したい各種の信号を処理する回路や、相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。図示しないが、LSI機能部104、信号生成部107_1、信号生成部207_1はそれぞれ各別の構成でもよいし、何れか2つが一体化された構成にしてもよい。
【0070】
半導体チップ103は伝送路結合部108と接続される。因みに、半導体チップ103内に伝送路結合部108を内蔵した構成にすることもできる。伝送路結合部108と信号伝送路9とが結合する箇所(つまり無線信号を送信する部分)が送信箇所或いは受信箇所であり、典型的にはアンテナがこれらに該当する。
【0071】
第2通信装置200は、基板202上に、ミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ203と伝送路結合部208が搭載されている。半導体チップ203は伝送路結合部208と接続される。因みに、半導体チップ203内に伝送路結合部208を内蔵した構成にすることもできる。伝送路結合部208は、伝送路結合部108と同様のものが採用される。半導体チップ203は、後段信号処理部の一例であるLSI機能部204と受信処理用の信号生成部207_2及び送信処理用の信号生成部107_2を一体化したLSIである。図示しないが、LSI機能部204、信号生成部107_2、信号生成部207_2はそれぞれ各別の構成でもよいし、何れか2つが一体化された構成にしてもよい。
【0072】
伝送路結合部108及び伝送路結合部208は、高周波信号(ミリ波帯の電気信号)を信号伝送路9に電磁結合させるもので例えば、アンテナ結合部やアンテナ端子やアンテナ等を具備するアンテナ構造が適用される。或いは、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路そのものでもよい。
【0073】
信号生成部107_1は、LSI機能部104からの信号をミリ波信号に変換し、信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。信号生成部207_1は、信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。信号生成部107_2は、LSI機能部204からの信号をミリ波信号に変換し、信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。信号生成部207_2は、信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。送信側信号生成部110と伝送路結合部108で送信系統(送信部:送信側の通信部)が構成される。受信側信号生成部220と伝送路結合部208で受信系統(受信部:受信側の通信部)が構成される。
【0074】
送信側信号生成部110は、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するために、多重化処理部113、パラレルシリアル変換部114(PS変換部)、変調機能部(変調部115、周波数変換部116)、増幅部117を有する。増幅部117は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。なお、変調部115と周波数変換部116は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。ダイレクトコンバーション方式にすることで、広帯域伝送(Wide bandwidth)にできるし、回路構成が小型で簡易になる利点(Small and simple circuits)が得られる。
【0075】
多重化処理部113は、LSI機能部104からの信号の内で、ミリ波帯での通信の対象となる信号が複数種(N1とする)ある場合に、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重等の多重化処理を行なうことにより、複数種の信号を1系統の信号に纏める。例えば、高速性や大容量性が求められる複数種の信号をミリ波での伝送の対象として、1系統の信号に纏める。
【0076】
パラレルシリアル変換部114は、パラレルの信号をシリアルのデータ信号に変換して変調部115に供給する。変調部115は、伝送対象信号を変調して周波数変換部116に供給する。パラレルシリアル変換部114は、本構成例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられ、シリアルインタフェース仕様の場合は不要である。
【0077】
変調部115としては、基本的には、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。例えば、アナログ変調方式であれば、例えば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、例えば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が代表的である。本実施形態では、特に、受信側で同期検波方式を採用し得る方式を採る。
【0078】
周波数変換部116は、変調部115により変調された後の伝送対象信号を周波数変換してミリ波の電気信号(高周波信号)を生成して増幅部117に供給する。ミリ波の電気信号とは、概ね30ギガヘルツ〜300ギガヘルツの範囲のある周波数の電気信号をいう。「概ね」と称したのはミリ波通信による効果が得られる程度の周波数であればよく、下限は30ギガヘルツに限定されず上限は300ギガヘルツに限定されないことに基づく。
【0079】
周波数変換部116としては様々な回路構成をとり得るが、例えば、周波数混合回路(ミキサー回路)と局部発振回路とを備えた構成を採用すればよい。局部発振回路は、変調に用いる搬送波(キャリア信号、基準搬送波)を生成する。周波数混合回路は、パラレルシリアル変換部114からの信号で局部発振回路が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号を生成して増幅部117に供給する。
【0080】
増幅部117は、周波数変換後のミリ波の電気信号を増幅して伝送路結合部108に供給する。増幅部117には例えば図示しないアンテナ端子を介して双方向の伝送路結合部108に接続される。伝送路結合部108は、送信側信号生成部110によって生成されたミリ波の高周波信号を信号伝送路9に送信する。伝送路結合部108は、例えばアンテナ結合部で構成される。アンテナ結合部は伝送路結合部108(信号結合部)の一例やその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には半導体チップ内の電子回路と、チップ内又はチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップと信号伝送路9を信号結合する部分をいう。例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、信号伝送路9との電磁的な(電磁界による)結合部における構造をいい、ミリ波帯の電気信号を信号伝送路9に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。
【0081】
受信側信号生成部220は、伝送路結合部208によって受信したミリ波の電気信号を信号処理して出力信号を生成するために、増幅部224、復調機能部(周波数変換部225、復調部226)、シリアルパラレル変換部227(SP変換部)、単一化処理部228を有する。増幅部224は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。変調機能部と同様に、周波数変換部225と復調部226は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。又、注入同期(インジェクションロック)方式を適用して復調搬送信号を生成してもよい。伝送路結合部208には受信側信号生成部220が接続される。受信側の増幅部224は、伝送路結合部208に接続され、アンテナによって受信された後のミリ波の電気信号を増幅して周波数変換部225に供給する。周波数変換部225は、増幅後のミリ波の電気信号を周波数変換して周波数変換後の信号を復調部226に供給する。復調部226は、周波数変換後の信号を復調してベースバンドの信号を取得しシリアルパラレル変換部227に供給する。
【0082】
シリアルパラレル変換部227は、シリアルの受信データをパラレルの出力データに変換して単一化処理部228に供給する。シリアルパラレル変換部227は、パラレルシリアル変換部114と同様に、本構成例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられる。第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がシリアル形式の場合は、パラレルシリアル変換部114とシリアルパラレル変換部227を設けなくてもよい。
【0083】
第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がパラレル形式の場合には、入力信号をパラレルシリアル変換して半導体チップ203側へ伝送し、又半導体チップ203側からの受信信号をシリアルパラレル変換することにより、ミリ波変換対象の信号数が削減される。
【0084】
単一化処理部228は、多重化処理部113と対応するもので、1系統に纏められている信号を複数種の信号_n(nは1〜N)に分離する。例えば、1系統の信号に纏められている複数本のデータ信号を各別に分離してLSI機能部204に供給する。
【0085】
LSI機能部204は、第2通信装置200の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。
【0086】
図1との関係では、例えば、LSI機能部104から信号生成部107のパラレルシリアル変換部114まで、又、LSI機能部204からシリアルパラレル変換部227までがデータ送受信部に対応する。変調部115から増幅部117まで或いは増幅部224から復調部226までが高周波信号変換部に対応する。伝送路結合部108や伝送路結合部208が高周波信号入出力部に対応する。
【0087】
〔パラメータ設定〕
本実施形態の信号伝送装置1においては、更に、パラメータ設定機能を備える構成にしてもよい。例えば、図3(B)に示すように、第1通信装置100は第1設定値処理部7100を備え、第2通信装置200は第2設定値処理部7200を備える。送受信間の伝送特性は既知であるものとする。例えば、1つの筐体内の送信部と受信部の配置位置が変化しない場合(機器内通信の場合)や、送信部と受信部のそれぞれが各別の筐体内に配置される場合でも使用状態のときの送信部と受信部の配置位置が予め定められた状態となる場合(比較的近距離の機器間の信号伝送の場合)のように、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、送信部と受信部との間の伝送特性を予め知ることができる。各信号処理部(この例では信号生成部107や信号生成部207)は、設定値に基づいて、予め定められた信号処理を行なう。設定値処理部は、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する。
【0088】
設定値としては、伝送特性に対応した設定値や機器内や機器間の信号伝送には限るものではなく、例えば、回路素子のバラツキ補正のためのパラメータ設定も含む。例えば、回路素子のバラツキ補正のためのパラメータ設定も含むが、好ましくは、設定値処理部は、送信部と受信部との間の伝送特性に対応して予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力するのがよい。本実施形態の構成では、野外通信との比較における大きな相違点として、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。信号処理用の設定値を予め定められた値(つまり固定値)にすることによりパラメータ設定を動的に変化させずに済むので、パラメータ演算回路を削減できるし、消費電力を削減することもできる。機器内や比較的近距離の機器間の信号伝送においては通信環境が固定されるため、通信環境に依存する各種回路パラメータを予め決定することができるし、伝送条件が固定である環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。例えば、工場出荷時に最適なパラメータを求めておき、そのパラメータを装置内部に保持しておくことにより、パラメータ演算回路の削減や消費電力の削減を行なうことができる。
【0089】
信号処理のパラメータ設定としては種々のものがある。例えば、信号増幅部(振幅調整部)のゲイン設定(信号振幅設定)がある。信号増幅部は、例えば、送信電力設定や復調機能部に入力される受信レベル設定や自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)等に利用される。これらの場合、信号処理部は、入力信号の大きさを調整し調整済みの信号を出力する信号処理を行なう振幅調整部を有するものとし、設定値処理部は、入力信号の大きさを調整するための設定値を振幅調整部に入力する。信号処理のパラメータ設定の他の例としては、位相調整量の設定がある。例えば、搬送信号やクロックを別送する系で、送信信号の遅延量に合わせて位相を調整する場合である。これらの場合、信号処理部は、入力信号の位相を調整し調整済みの信号を出力する信号処理を行なう位相調整部を有するものとし、設定値処理部は、入力信号の位相を調整するための設定値を位相調整部に入力する。この位相調整量の設定を前述のゲイン設定と組み合わせた態様とすることもできる。信号処理のパラメータ設定の他の例としては、送信側で予め低域周波数成分や高域周波数成分の振幅を強調する場合での周波数特性の設定、双方向通信を行なう場合のエコーキャンセル量の設定、送信部と受信部がそれぞれ複数のアンテナを有し、送受信間で空間多重通信を行なう場合のクロストークのキャンセル量の設定等もある。更に、信号処理のパラメータ設定の他の例としては、受信した信号に基づく注入同期方式により送信側の搬送信号生成部で生成された変調用の搬送信号(変調搬送信号)と同期した復調用の搬送信号(復調搬送信号)を生成する場合の注入信号の振幅値(注入量)や位相シフト量、あるいは復調機能部に入力される受信信号と復調搬送信号の位相差の補正量等の設定がある。
【0090】
〔信号伝送路〕
ミリ波の伝搬路である信号伝送路9は、自由空間伝送路として、例えば筐体内や電子機器間の空間を伝搬する構成にしてもよいが、本実施形態では、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内等の導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を伝送路に閉じ込める構成にして、効率よく伝送させる特性を有する高周波信号導波路308とする。例えば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材を含んで構成された誘電体導波路にするとよい。誘電体導波路は、例えば、回路基板そのものでもよいし、基板上に配設されていてもよいし、基板に埋め込まれていてもよい。例えば、所定厚さと所定幅を持つ所定長さのポリスチレンその他のプラスチックを誘電体素材として使用することもでき、誘電体導波路を安価に構成できる。尚、信号伝送路9(高周波信号導波路308)は誘電体素材に代えて磁性体素材を使用することもできる。
【0091】
信号伝送路9の送受信箇所を除く周囲(例えば上面、下面、側面:但し送信箇所や受信箇所と対応する部分は除く)は、必要に応じて、遮蔽部材、反射部材、或いは、吸収部材を使用してもよい。例えば、外部からの不要な電磁波の影響を受けないように、或いは、内部からミリ波が漏れ出さないように、遮蔽材(例えば金属メッキを含む金属部材を使用する)で囲むとよい。金属部材を遮蔽材として使用すると、反射材としても機能するので、反射成分を利用することで、それによる反射波も送受信に利用でき感度が向上することが期待される。但し、信号伝送路9内の多重反射により不要な定在波が信号伝送路9内に発生することが問題となり得る。これを避けるには、信号伝送路9の送受信箇所を除く周囲は、開放としたままとしてもよいし、ミリ波を吸収する吸収部材(電波吸収体)を配置してもよい。電波吸収体を用いた場合は、反射波を送受信に利用することはできないが、側面から漏れる電波を吸収することができるので、外部への漏れを防ぐことができるし、信号伝送路9内の多重反射レベルを下げることができる。
【0092】
〔片方向通信への対応〕
図3(A)に示した構成の「双方向通信」は、ミリ波の伝送チャネルである信号伝送路9が1系統(一芯)の一芯双方向伝送となる。この実現には、時分割複信(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式と、周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)等を適用する全二重方式がある。本実施形態では、周波数分割複信を採用する。更に、図3(A)では、複数の回線を束ねて1つの回線を共用する多重化技術として、周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)を採用している。図3(A)に示した例は、通信に用いる周波数帯を半分に分割して、送信と受信に別々の周波数を使用して通信を行なう周波数分割複信(FDD)による全二重双方向通信を適用する構成となる。これに対して、信号生成部107_1と信号生成部207_1の対、或いは、信号生成部107_2と信号生成部207_2の対にすれば、図3(B)に示すように、片方向二重通信(Simplex)に対応した構成になる。
【0093】
〔接続と動作〕
入力信号を周波数変換して信号伝送するという手法は、放送や無線通信で一般的に用いられている。これらの用途では、どこまで通信できるか(熱雑音に対してのS/Nの問題)、反射やマルチパスにどう対応するか、妨害や他チャンネルとの干渉をどう抑えるか等の問題に対応できるような比較的複雑な送信機や受信機等が用いられている。
【0094】
これに対して、本実施形態で使用する信号生成部107と信号生成部207は、放送や無線通信で一般的に用いられる複雑な送信機や受信機等の使用周波数に比べて、より高い周波数帯のミリ波帯で使用され、波長λが短いため、周波数の再利用がし易く、近傍に配置された多くのデバイス間での通信をするのに適したものが使用される。
【0095】
本実施形態では、従来の電気配線を利用した信号インタフェースとは異なり、前述のようにミリ波帯で信号伝送を行なうことにより高速性と大容量に柔軟に対応できるようにしている。例えば、高速性や大容量性が求められる信号のみをミリ波帯での通信の対象としており、装置構成によっては、第1通信装置100と第2通信装置200は、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の電気配線によるインタフェース(端子・コネクタによる接続)を一部に備えることになる。
【0096】
信号生成部107は、設定値(パラメータ)に基づいて予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、LSI機能部104から入力された入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。信号生成部107及び信号生成部207は、例えば、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路で伝送路結合部108に接続され、生成されたミリ波の信号が伝送路結合部108を介して信号伝送路9に供給される。
【0097】
伝送路結合部108は、例えばアンテナ構造を有し、伝送されたミリ波の信号を電磁波に変換し、電磁波を送出する機能を有する。伝送路結合部108は信号伝送路9と電磁結合され、信号伝送路9の一方の端部に伝送路結合部108で変換された電磁波が供給される。信号伝送路9の他端には第2通信装置200側の伝送路結合部208が結合されている。信号伝送路9を第1通信装置100側の伝送路結合部108と第2通信装置200側の伝送路結合部208の間に設けることにより、信号伝送路9にはミリ波帯の電磁波が伝搬する。伝送路結合部208は、信号伝送路9の他端に伝送された電磁波を受信し、ミリ波の信号に変換して信号生成部207(ベースバンド信号生成部)に供給する。信号生成部207は、設定値(パラメータ)に基づいて予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、変換されたミリ波の信号を信号処理して出力信号(ベースバンド信号)を生成しLSI機能部204へ供給する。ここまでは第1通信装置100から第2通信装置200への信号伝送の場合で説明したが、第2通信装置200のLSI機能部204からの信号を第1通信装置100へ伝送する場合も同様に考えればよく双方向にミリ波の信号を伝送できる。
【0098】
<相互干渉とその対策原理>
[相互干渉の発生原因]
図4は、相互干渉の発生原因を説明する図である。増幅部(増幅回路)の理想的なゲイン特性を図4(A)に示し、現実的なゲイン特性を図4(B)及び図4(C)に示す。横軸はギガヘルツ(GHz)で表した周波数、縦軸はデシベル(dB)で表した利得(Gain)である(ゲイン特性図に関して以下同様)。
【0099】
増幅部は希望チャネル(希望波の周波数帯)の信号に対して共振性を持って増幅する構成であり、希望波(搬送周波数FC)にチューニングしたときの増幅部のゲイン特性(利得の周波数特性)、換言すると周波数選択特性を示す特性図は、理想的には、図4(A)に示すように、ピーク点を境に、低域側と高域側とで対称となる、つまり、利得減衰性が上下対称である。しかしながら、実際には、図4(B)に示すように、低域側の方が高域側よりも高ゲイン気味となる特性、つまり、低域側の方が高域側よりも利得減衰性が劣る特性を示したり、逆に、図4(C)に示すように、高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる特性、つまり、高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣る特性を示したりするように、非対称性を持つことがある。増幅部のゲイン特性が非対称性を持つ場合には、希望チャネルに対して下側に位置する(低域側の)隣接チャネル成分(搬送周波数FD)又は上側に位置する(高域側の)隣接チャネル成分(搬送周波数FU)が十分に減衰された状態とはならないことがある。隣接チャネル成分が受信限界レベルを超える場合、その隣接チャネル成分が復調されてしまい、いわゆる相互干渉を引き起こす。例えば、各チャネルの送信レベルと受信レベルとが同じであるとした場合、図4(B)や図4(C)に示すゲイン特性では、隣接チャネル成分が復調される。
【0100】
相互干渉を避けるには例えば、増幅部の利得周波数特性(ゲイン特性)が、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れに対しても利得周波数特性の減衰度合いが不足しないように概ね対称となるようにすればよいのであるが、回路特性のため、単純にはそうならない。多くの場合は、図4(C)に示すように、高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる特性、つまり、高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣る特性を示す。希に、図4(B)に示すように、低域側の方が高域側よりも高ゲイン気味となる特性、つまり、低域側の方が高域側よりも利得減衰性が劣る特性を示すこともある。高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる特性の方が多いのは、増幅部にチューニング性(自チャネルに対しての周波数選択性)を持たせる場合、Q値(Quality factor:共振性能)が周波数特性を有することに起因しており、多くの場合、高周波数側でのQ値の低下度合いが強くなることによる。例えば、Q値が小さくなると、ピークゲインが低下するし、帯域幅が広がり、全体的な利得の減衰度合いも緩やかになるし、Q値の低下度合いが高域側で強い場合には、高域側での利得の減衰度合いが低域側よりも緩やかになる(後述のローノイズアンプ400_1を参照)。
【0101】
[相互干渉の対策手法:第1例]
図5〜図6は、相互干渉に対する本実施形態の第1例の対策手法の原理を説明する図である。ここで、図5(A)は高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる非対称性を持つ場合における対策手法を説明する図であり、図5(B)は低域側の方が高域側よりも高ゲイン気味となる非対称性を持つ場合における対策手法を説明する図である。図6は、チャネルの総数が2であるとした場合における、利得抑制部の要否や、何れのチャネルに対する利得を抑制する利得抑制部とするのかを決定する手法を説明する図である。
【0102】
本実施形態の第1例の相互干渉対策手法では、増幅部の裸のゲイン特性が非対称性を持つと云うことを前提に、その非対称性を有効に利用して、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方についてのみの利得抑制部(利得抑制回路、妨害波除去回路)を増幅部内に設けることにより、隣接チャネルからの妨害を排除する。利得抑制部は、増幅部が自チャネルを中心に高域側と低域側の何れか一方が他方よりも高利得となる非対称特性を持つ場合に、隣接チャネルのうちの、利得周波数特性の非対称の高利得側に位置する方に対しての利得を抑制する。換言すると、増幅部が周波数選択性を持ち、利得抑制部を備えない場合の裸の利得周波数特性が、自チャネルを中心に高域側と低域側の何れか一方が他方よりも利得減衰性が劣る非対称特性を持つ場合に、利得抑制部は、隣接チャネルのうちの、その非対称の利得減衰性が劣る側に位置する方に対しての利得を抑制する。増幅部の裸のゲイン特性が非対称性であることを利用できるので、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの双方について利得抑制部を設ける場合よりも、装置や回路の構成を簡易にできる。
【0103】
つまり、第1例の対策手法において、「ゲイン特性の非対称性を(有効に)利用」とは、裸の利得周波数特性の非対称性による減衰性の不足分を補うべく、希望波に対しての低域側と高域側の何れか一方の妨害チャネルのみに関して利得抑制部を増幅部に実装することを意味する。自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を増幅部の入力側又は増幅部の出力側に配置する手法もとり得るが、第1例の対策手法は、増幅部に設けられた利得抑制部から信号抑制部が成る構成を採り、「増幅部のゲイン特性の非対称性による減衰性の不足分を増幅部において補う」という点に特徴があり、増幅部外に信号抑制部を配置する方法は採用しない。増幅部外に信号抑制部を配置する方法に関しては、第2例の対策手法において説明する。
【0104】
例えば、図5(A)に示すように、低域側の方が高域側よりも高ゲイン気味となる非対称性を持つ場合には、希望チャネル信号(搬送周波数FC)に対して、下側隣接チャネル信号(搬送周波数FD)に減衰周波数(トラップ位置とも称する)を合わせることにより、下側隣接チャネル信号を減衰させることができる。下側隣接チャネル成分を受信限界レベル以下にすることができ、その下側隣接チャネル成分が復調されることはなく、相互干渉を防止できる。一方、図5(B)に示すように、高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる非対称性を持つ場合には、希望チャネル信号(搬送周波数FC)に対して、上側隣接チャネル信号(搬送周波数FU)にトラップ位置を合わせることにより、上側隣接チャネル信号を減衰させることができる。上側隣接チャネル成分を受信限界レベル以下にすることができ、その上側隣接チャネル成分が復調されることはなく、相互干渉を防止できる。増幅部の裸のゲイン特性が持つ利得の減衰度合いの不足分を補うことができればよく、トラップ位置が多少ずれてもよい。
【0105】
「利得抑制部」としては、希望波成分に対しては、理想的には減衰性を呈さずに、妨害波(非希望波)成分に対して、理想的には大きな減衰性を呈するものがよい。例えば、増幅回路の負荷を利用する場合には、希望波成分に対しては、理想的にはインピーダンスがゼロで減衰性を呈さずに、妨害波成分に対して、理想的にはインピーダンスが無限大で大きな減衰性を呈するものがよい。又、負荷以外の形態としては、典型的にはトラップ回路で構成するのが好適であり、この場合には、希望波成分に対しては、理想的にはインピーダンスが無限大で減衰性を呈さずに、妨害波成分に対して、理想的にはインピーダンスがゼロで大きな減衰性を呈するものがよい。「トラップ回路」としては、インダクタ(誘導素子)とコンデンサ(容量素子)との直列共振回路又は並列共振回路、或いはその任意の組合せに係る回路(直並列共振回路)で構成したものを使用できる。何れを使用し得るかは、利得抑制部が付加される増幅部の構成に依存する。トラップ回路は、希望チャネル信号に対しての隣接チャネル信号等の妨害波成分にトラップ位置を合わせることにより、妨害波成分を減衰させるように回路定数が設定される。
【0106】
原理的には、直列共振回路又は並列共振回路は簡易な構成であるが、インダクタとコンデンサのバランスによってトラップ回路のQ値を設定するためトラップ帯域の幅を余り狭くできないし、定数ばらつき等のために希望波チャネル信号の近傍に位置する隣接チャネル信号のみを減衰させることが困難な場合がある。第1例の相互干渉対策手法においては、増幅部のゲイン特性が持つ減衰性の不足分を補う程度のトラップ特性であればよく、減衰量は単純な直列共振回路又は並列共振回路でも十分である。
【0107】
図6には、チャネルの総数が2であるとし、図5(A)同士の組合せや図5(B)同士の組合せや図5(A)と図5(B)との組合せとの関係における、利得抑制部(例えばトラップ回路)の要否や、何れのチャネルに対する利得を抑制する利得抑制部とするのかを決定する手法が示されている。隣接チャネルの関係にある2つのチャネルの内、搬送周波数の低い低域側のチャネルを低域チャネル(搬送周波数FC1)とし、搬送周波数の高い高域側のチャネルを高域チャネル(搬送周波数FC2)とする。
【0108】
図6(A)に示す第1例は、全体概要において述べた第1のケースを説明する図である。この場合、低域チャネルと高域チャネルの何れも、増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得の減衰度合いが不足している。そのため、高域チャネル用の増幅部には、低域チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要がある。但し、チャネルの総数が2であるため、低域チャネル用の増幅部には、下側隣接チャネル(搬送周波数FD)に対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はない。又、高域チャネル用の増幅部は、上側隣接チャネル(搬送周波数FU)に対しての利得の減衰度合いは十分であり、それ用の利得抑制部を設けなくてもよい。
【0109】
図6(B)に示す第2例は、全体概要において述べた第2のケースを説明する図である。この場合、低域チャネルと高域チャネルの何れも、増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得の減衰度合いが不足している。そのため、低域チャネル用の増幅部には、高域チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要がある。但し、チャネルの総数が2であるため、高域チャネル用の増幅部には、上側隣接チャネル(搬送周波数FU)に対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はない。又、低域チャネル用の増幅部は、下側隣接チャネル(搬送周波数FD)に対しての利得の減衰度合いは十分であり、それ用の利得抑制部を設けなくてもよい。
【0110】
図6(C)に示す第3例は、全体概要において述べた第3のケースを説明する図である。この場合、低域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得の減衰度合いが不足しており、高域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得の減衰度合いが不足している。そのため、高域チャネル用の増幅部には、低域チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要があるし、低域チャネル用の増幅部には、高域チャネルに対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要がある。高域チャネル用の増幅部は、上側隣接チャネル(搬送周波数FU)に対しての利得の減衰度合いは十分であり、それ用の利得抑制部を設けなくてもよいし、低域チャネル用の増幅部は、下側隣接チャネル(搬送周波数FD)に対しての利得の減衰度合いは十分であり、それ用の利得抑制部を設けなくてもよい。
【0111】
図6(D)に示す第4例は、全体概要において述べた第4のケースを説明する図である。この場合、低域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得の減衰度合いが不足しており、高域チャネル用の増幅部の裸の利得周波数特性は自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得の減衰度合いが不足している。図から明らかなように、低域チャネル用の増幅部は、利得抑制部を設けなくても、高域チャネルに対しての利得の減衰度合いは十分であり、又、高域チャネル用の増幅部は、利得抑制部を設けなくても、下側隣接チャネルである低域チャネルに対しての利得の減衰度合いは十分である。又、チャネルの総数が2であるため、低域チャネル用の増幅部には、下側隣接チャネル(搬送周波数FD)に対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はないし、高域チャネル用の増幅部には、上側隣接チャネル(搬送周波数FU)に対して利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はない。このように、チャネルの総数が2である場合の第4のケースでは、何れのチャネルについても、下側隣接チャネルや上側隣接チャネルに対する利得を抑制する利得抑制部を設ける必要はない。
【0112】
以上のように、第1例の相互干渉対策手法においては、増幅部の裸のゲイン特性の非対称性を有効に用いて、下側隣接チャネル或いは上側隣接チャネルの何れか一方についてのみ利得抑制部(トラップ回路等)を設けることにより、周波数分割多重を適用したマルチチャネル伝送において干渉問題を抑制(防止)することができる。妨害波の影響を抑制することができるため、隣接チャネルとの周波数間隔を必要以上にとる必要がなく、周波数の有効利用が可能となる。
【0113】
同様にして、3チャネル以上といった多チャネル化も可能となるし、双方向通信だけでなく片方向通信においても同様に適用できる。因みに、チャネルの総数が3以上の場合には、他の隣接チャネルの組合せに関して、前述の4つのケースの何れに該当するのかに基づいて、利得抑制部の要否や、利得抑制部を設ける場合には何れのチャネルに対する利得を抑制するものとするのか等を決定する。
【0114】
<増幅部の構成例>
[トラップありローノイズアンプ:第1例]
図7は、利得抑制部の一例としてのトラップ回路を備えた低雑音増幅部(ローノイズアンプ400(LNA:Low Noise AMP)と記す、増幅部224に対応)の第1例を説明する図である。ここで、図7(A)は第1例のローノイズアンプ400_1の回路構成例を示し、図7(B)は図7(A)に示したローノイズアンプ400_1のゲイン特性の一例を示す。
【0115】
第1例のローノイズアンプ400_1は、カスケード(カスコード、縦続)接続された2つのNチャネル型のトランジスタ(具体的にはMOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)及び自チャネルに周波数選択性を持つように定数が設定された負荷インダクタを有する増幅段(増幅部)を3段備えた構成である。ここでの「カスケード接続」とは、入力側のトランジスタの主電極端の一方(ドレイン端)と出力(負荷)側のトランジスタの主電極端の一方(ソース端)とが直接に接続されていることを意味している。即ち、入力側のトランジスタのソース接地回路と、出力側のトランジスタのゲート接地回路とを縦統接統したカスケード回路を構成することを意味する。各段は、直流バイアスの設定が容易なように、コンデンサを介して交流結合する構成を採用するが、交流結合に限らず、バイアス回路を工夫して直流結合の構成にしてもよい。ローノイズアンプ400(ローノイズアンプ400_1に限らず後述の他の構成例も含む)は、例えばCMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor、相補型金属酸化膜半導体)等のシリコン集積回路として実現する。
【0116】
例えば、1段目の増幅部410は、入力側のトランジスタQ11と負荷側のトランジスタQ12とがカスケード接続されている。トランジスタQ11の主電極端の他方(ソース端)は基準電位点(例えば接地)に接続されている。トランジスタQ12の主電極端の他方(ドレイン端)は、インダクタL11を介して電源Vddに接続されている。トランジスタQ11の制御入力端(ゲート端、コントロールゲート)は、インダクタL12を介して所定のバイアス電圧BIASが供給されるとともに、結合コンデンサC12を介してローノイズアンプ400_1の入力端INと接続されている。トランジスタQ12の制御入力端(ゲート端、スクリーンゲート)は、電源Vddに接続(交流的に接地)されている。
【0117】
2段目及び3段目も、概ね1段目と同じ構成となっている。例えば、2段目の増幅部420は、入力側のトランジスタQ21と負荷側のトランジスタQ22とがカスケード接続されている。トランジスタQ21の主電極端の他方(ソース端)は基準電位点(接地)に接続されている。トランジスタQ22の主電極端の他方(ドレイン端)は、インダクタL21を介して電源Vddに接続されている。トランジスタQ21の制御入力端(ゲート端)は、抵抗素子R22を介して所定のバイアス電圧BIASが供給されるとともに、結合コンデンサC22を介して1段目の増幅部410のトランジスタQ12の主電極端の他方(ドレイン端)と接続されており1段目の増幅部410の出力信号が供給されるようになっている。トランジスタQ22の制御入力端(ゲート端)は、電源Vddに接続されている。
【0118】
3段目の増幅部430は、入力側のトランジスタQ31と負荷側のトランジスタQ32とがカスケード接続されている。トランジスタQ31の主電極端の他方(ソース端)は基準電位点(接地)に接続されている。トランジスタQ32の主電極端の他方(ドレイン端)は、インダクタL31を介して電源Vddに接続されており、トランジスタQ32の主電極端の他方(ドレイン端)とインダクタL31との接続点がローノイズアンプ400_1の出力端OUTと接続されている。トランジスタQ31の制御入力端(ゲート端)は、抵抗素子R32を介して所定のバイアス電圧BIASが供給されるとともに、結合コンデンサC32を介して2段目の増幅部420のトランジスタQ22の主電極端の他方(ドレイン端)と接続されており2段目の増幅部420の出力信号が供給されるようになっている。トランジスタQ32の制御入力端(ゲート端)は、電源Vddに接続されている。
【0119】
1段目のバイアス用のインダクタL12を2段目や3段目と同じように抵抗素子R12に置き換えることもできる。但し、インダクタL12を使用すると、入力側において高域を強調するピーキング機能(シャントピーキング)を働かせることができる。
【0120】
このように、各段の増幅部4は、入力側のトランジスタのソース端、ゲート端、及び、ドレイン端で形成されるソース接地回路と、出力側のトランジスタのソース端、ゲート端、及び、ドレイン端で形成されるゲート接地回路とを縦統接統したカスケード回路を構成している。入力側のトランジスタと出力側のトランジスタのそれぞれについて、増幅率をμ1、μ2、相互コンダクタンスをgm1、gm2、ドレイン抵抗をrd1、rd2とすると、カスケード回路全体としては、総合増幅率はμ1・μ2となり、出力抵抗は出力側のドレイン抵抗rd2のμ1倍に増加し、相互コンダクタンスはgm2であり、帰還容量は1/μ2になる。
【0121】
MOSFETはドレイン・ゲート間に容量Cdgがあり、一般にはこの値は比佼的大きく、容量Cdgを通して信号がドレイン出力側からゲート入力側に帰還し、高周波では寄生発振を起こし易いし、ミラー効果により等価的に入力容量が増加し好ましくない。これに対してカスケード回路にすれば、これらの問題を抑制することができる。因みに、このようなカスケード回路にするには、デュアルゲートMOSFETとして半導体集積回路に作り込むとよい。カスケード回路のゲート(入力側のトランジスタのゲート端)とドレイン(出力側のトランジスタのドレイン端)との間に出力側のトランジスタが介在することにより、ゲート・ドレイン間の静電遮蔽をすることができ、帰還容量を1/μ2倍に小さくすることができる。
【0122】
〔インダクタの構成例〕
ローノイズアンプ400_1は、希望波の周波数に関して周波数選択性(共振特性)を持つように、各段の負荷となるコイル(インダクタL11、インダクタL21、及び、インダクタL31)の定数が設定される。コイルのインダクタ成分と配線やトランジスタ等の寄生容量成分とで、並列共振回路が構成される。これにより、各段の増幅部は、周波数選択性を持った増幅機能が働く。
【0123】
又、各段の負荷となるインダクタL11、インダクタL21、及び、インダクタL31に加えて、1段目の入力側のトランジスタQ11に直流バイアスを与えるインダクタL12は、好ましくは、ゲインアップが図られるようにパターン設計をするとよい。例えば、各インダクタLを1つの配線層(例えば1層目)にてパターン形成することも考えられるが、複数の配線層(例えば1層目及び2層目、1層目〜3層目等)にてパターン形成し、各層のインダクタLをともに接続する(電気回路的に並列接続する)ことにより、全体としてのインダクタLの直列抵抗成分を減らすとよい。こうすることにより、インダクタLのQ値が、1つの配線層(金属層)だけによるものと比較して大きくなり、ローノイズアンプ400は、希望周波数におけるゲインが向上する、つまり利得強化が図られる(後述のローノイズアンプ400_4を参照)。因みに、Q値が大きくなることにより、帯域幅が狭くなる可能性があるが、必要十分な帯域幅は維持可能である。
【0124】
インダクタLの直列抵抗成分を減らすことにより利得強化を図る手法は、高域側のローノイズアンプ400になるほど適用することが好ましい。先に述べた「Q値の周波数特性」から類推されるように、増幅部にチューニング性(周波数選択性)を持たせる場合に、多くの場合、高周波数側でのQ値の低下度合いが強く低周波数用に比べると高周波数用の方がゲイン低下が見られることに基づく。例えば、信号伝送装置1を57ギガヘルツ帯と80ギガヘルツ帯による全二重双方向通信に対応した構成とする場合であれば、57ギガヘルツ帯用のローノイズアンプ400には適用せずに80ギガヘルツ帯用のローノイズアンプ400にのみ適用する。
【0125】
〔トラップ回路〕
第1例のローノイズアンプ400_1は、1段目の増幅部410のカスケード接続点にトラップ回路601を有する点に特徴がある。具体的には、ローノイズアンプ400_1は、トランジスタQ11とトランジスタQ12とのカスケード接続点(ノードND1と記す)と基準電位点(接地)との間に、インダクタL13とコンデンサC13との直列共振回路で構成されたトラップ回路601を有する。インダクタL13とコンデンサC13とが成す直列共振回路の共振周波数が妨害波となる隣接チャネルの搬送周波数と一致するように、インダクタL13とコンデンサC13の各定数を設定するべく、インダクタL13とコンデンサC13のパターン設計を行なう。
【0126】
インダクタL13をパターン形成する際には、例えば、1つの配線層(例えば1層目)にて形成することも考えられるが、複数の配線層にて形成し、各層のインダクタLをともに接続する(並列接続する)ことにより、インダクタLの直列抵抗成分を減らして、1つの配線層(金属層)だけによるものよりもQ値が大きくなるようにしてもよい。
【0127】
更には、トラップ回路601は、1層によるのか複数層によるのかに拘わらず、コイル状にパターン形成することにより集中定数回路として形成してもよいが、これに限らず、例えばマイクロストリップライン等のようにパターン形成して分布定数回路状にしてもよい。何れの場合も、コンデンサC成分はインダクタLをパターン形成する際の分布容量を利用するのが好ましい。
【0128】
図7(B)には、図7(A)に示したローノイズアンプ400_1のゲイン特性の一例が示されている。この例は、57ギガヘルツ帯(希望波の周波数帯)に対応したローノイズアンプ400_1のゲイン特性例(シミュレーションによる)を示しており、トラップ回路601を設けていない場合が破線で示され、トラップ回路601を設けている場合が実線で示されている。図示のように、トラップ回路601を設けていない場合のゲイン特性は、ピーク点(57ギガヘルツ近傍)を境に、高域側の方が低域側よりも高ゲイン気味となる特性を示した、非対称性を持つ。よって、低域側と比べるとお、高域側の隣接チャネル周波数が十分にトラップされた状態とはなっておらず、高域側の隣接チャネル成分(例えば80ギガヘルツ帯)に対しての周波数選択性が劣り、このままでは、隣接チャネル成分(80ギガヘルツ帯)が復調されてしまい、いわゆる相互干渉を引き起こす。
【0129】
これに対して、80ギガヘルツ帯に共振周波数を設定したトラップ回路601を設けた場合には、図示の例ではおおよそ15デシベル(dB)程度ゲインを減衰(低下)させることができており、80ギガヘルツ帯の送信系統から57ギガヘルツ帯の受信系統に漏らされた信号のための干渉を減らすことができる。
【0130】
因みに、線形性(リニアリティ)やNF(Noise Figure:雑音指数)は1段目が最も強く影響される。ここで、利得抑制部(トラップ回路601)を1段目の増幅部410に設けることは、後述の第2例と比べると、線形性の面で有利である。信号振幅の小さな段において妨害波除去機能(トラップ機能)を働かせるからである。但し、利得抑制部(トラップ回路601)はノイズ源となり得るし、トラップ回路601の希望周波数におけるインピーダンスは無限大ではないのでピークゲインが少し低下するため、NFの面では不利である。
【0131】
[トラップありローノイズアンプ:第2例]
図8は、利得抑制部の一例としてのトラップ回路を備えたローノイズアンプ400の第2例の回路構成例を示す図である。第2例のローノイズアンプ400_2は、利得抑制部(トラップ回路)を1段目以外の増幅部4に備える点に特徴がある。図示する第2例のローノイズアンプ400_2は、2段目の増幅部420のカスケード接続点にトラップ回路602を設けている。具体的には、ローノイズアンプ400_2は、トランジスタQ21とトランジスタQ22とのカスケード接続点(ノードND2と記す)と基準電位点(接地)との間に、インダクタL23とコンデンサC23との直列共振回路で構成されたトラップ回路602を有する。その他は、トラップ回路601を備えていない点を除いて第1例と同様である。第2例の構成では、利得抑制部(トラップ回路601)を1段目以外の増幅部4に設けるので、第1例と比べると、線形性の面では不利である。信号振幅の大きな段において妨害波除去機能(トラップ機能)を働かせるからである。但し、NFへの影響度合いの低い1段目以外において妨害波除去機能(トラップ機能)を働かせるので、トラップ回路602の希望周波数におけるインピーダンスが無限大ではなくピークゲインが少し低下したとしても、第1例よりはNFの面で有利である。よって、第2例では、前述の第1例に比べてノイズ性能を改善することができる。
【0132】
[トラップありローノイズアンプ:第3例]
図9は、利得抑制部の一例としてのトラップ回路を備えたローノイズアンプ400の第3例の回路構成例を示す図である。第3例のローノイズアンプ400_3は、第1例のローノイズアンプ400_1と第2例のローノイズアンプ400_2とを組み合わせるとともに、利得抑制部(トラップ回路)の動作の有効/無効を切替え可能に構成した点に特徴がある。換言すると、第3例のローノイズアンプ400_3は、利得抑制部の選択的な使用を可能にするスイッチを使用することにより、第1例のローノイズアンプ400_1と第2例のローノイズアンプ400_2とを使い分けることを可能にしたものである。
【0133】
トラップ回路の動作の有効/無効を切替え可能にするべく、ローノイズアンプ400_3は、トラップ回路601のノードND1とは反対側に切替スイッチの機能をなすトランジスタQ13を有するとともに、トラップ回路602のノードND2とは反対側に切替スイッチの機能をなすトランジスタQ23を有する。トランジスタQ13及びトランジスタQ23はNチャネル型のトランジスタ(具体的にはMOSFET)である。トランジスタQ13は、主電極端の一方(ドレイン端)がコンデンサC13と接続され、主電極端の他方(ソース端)が基準電位点(接地)に接続され、制御入力端(ゲート端)に、スイッチをオン/オフ制御する制御信号CNT1が供給されるようになっている。トランジスタQ23は、主電極端の一方(ドレイン端)がコンデンサC23に接続され、主電極端の他方(ソース端)が基準電位点(接地)に接続され、制御入力端(ゲート端)に、スイッチをオン/オフ制御する制御信号CNT2が供給されるようになっている。
【0134】
制御信号CNT1がハイレベルのときにはスイッチとしてのトランジスタQ13がオンするのでトラップ回路601が有効に機能する一方、制御信号CNT1がローレベルのときにはスイッチとしてのトランジスタQ13がオフするのでトラップ回路601が設けられていない場合と同様になる。制御信号CNT2がハイレベルのときにはスイッチとしてのトランジスタQ23がオンするのでトラップ回路602が有効に機能する一方、制御信号CNT2がローレベルのときにはスイッチとしてのトランジスタQ23がオフするのでトラップ回路602が設けられていない場合と同様になる。
【0135】
このような第3例のローノイズアンプ400_3によれば、使用用途や要求される仕様(リニアリティ重視かノイズ性能重視か)に応じて、第1例のローノイズアンプ400_1と第2例のローノイズアンプ400_2とを使い分けることができる。又、トランジスタQ13とトランジスタQ23の双方をオンさせてトラップ回路601及びトラップ回路602の両方を有効に機能させることにより、片方だけを機能させる場合よりも減衰量をより大きくすることができ、片方だけの場合のトラップ量の不足への対処が可能である。
【0136】
〔変形例〕
前述の第3例は、第1例と第2例とを単純に組み合わせるのではなく、トラップ回路の設置位置の使い分けを可能にしたものであるが、第1例と第2例とを組み合わせる点においては、このことは必須でない。例えば、図示しないが、第3例のローノイズアンプ400_3をベースにして、トラップ回路601とトラップ回路602の双方を常時使用する構成としてもよい。或いは、第3例のローノイズアンプ400_3をベースにして、トラップ回路601とトラップ回路602の何れか一方は常時使用する構成とし、他方のみにスイッチ(トランジスタQ13又はトランジスタQ23)を設けて選択的に使用可能に構成してもよい。例えば、トラップ回路601を常時使用する第1例を基本構成として、トラップ回路602を選択的に使用可能な構成にすれば、通常時は線形性を重視しつつ隣接チャネルの干渉対策を図ることができるし、トラップ回路602を機能させることによりトラップ量の不足時への対処も可能である。逆に、トラップ回路602を常時使用する第2例を基本構成として、トラップ回路601を選択的に使用可能な構成にすれば、通常時はノイズ性能を重視しつつ隣接チャネルの干渉対策を図ることができるし、トラップ回路601を機能させることによりトラップ量の不足時への対処も可能である。
【0137】
[トラップなしローノイズアンプ]
図10は、利得抑制部の一例としてのトラップ回路を備えていない通常のローノイズアンプ400_4を説明する図である。ここで、図10(A)はローノイズアンプ400_4の回路構成例を示し、図10(B)は図10(A)に示したローノイズアンプ400_4のゲイン特性の一例を示す。
【0138】
ローノイズアンプ400_4は、前述のトラップ回路を備えているローノイズアンプ400_1等と同様に、2つのトランジスタがカスケード接続された増幅部4を3段備えた構成である。例えば、第1例との対比では、トラップ回路601を備えていない点と、1段目の増幅部410を増幅部460に変更(その構成部材の参照子を10番台から60番台に変更)し、2段目の増幅部420を増幅部470に変更(その構成部材の参照子を20番台から70番台に変更)し、3段目の増幅部430を増幅部480に変更(その構成部材の参照子を30番台から80番台に変更)している点が異なる。参照番号の相違があるが、基本的には第1例において説明した通りであるので、ここでは詳細説明は割愛する。
【0139】
図10(B)には、図10(A)に示したローノイズアンプ400_4のゲイン特性の一例が示されている。この例は、80ギガヘルツ帯(希望波の周波数帯)に対応したローノイズアンプ400_4のゲイン特性例(シミュレーションによる)を示しており、各インダクタLを1つの配線層(例えば1層目)にて形成した場合が破線で示され、各インダクタLを複数層(この例では1層目と2層目)にて形成して直列抵抗成分を低減する場合が実線で示されている。図示のように、各インダクタLを1つの配線層にて形成した場合のゲイン特性に比べると、各インダクタLを複数層にて形成して直列抵抗成分を低減する場合の方が、ピーク点(80ギガヘルツ近傍)のゲインが大きくなっており、利得強化が図られていることが分かる。尚、インダクタLの直列抵抗成分が低減されることによりQ値が大きくなるため、帯域幅が少し狭くなるが、必要十分な帯域幅が維持されていることも分かる。
【0140】
以下に、希望波に対して低域側と高域側の何れか一方の妨害チャネルのみに関して利得抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)を使用することにより相互干渉対策を図る第1例の対策手法の具体的な適用例について説明する。尚、以下では、代表的に、利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性が自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、希望波に対して高域側の妨害チャネルのみに関して利得抑制部(特にトラップ回路)を使用する場合で説明する。但し、これは代表例であり、利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性が自チャネルを中心に低域側の方が高域側よりも利得減衰性が劣っており、希望波に対して低域側の妨害チャネルのみに関して利得抑制部(特にトラップ回路)を使用するように変形することもできる。更には、これらが混在する場合でも同様の手法を適用できる。
【実施例1】
【0141】
[ミリ波帯の信号伝送機能の詳細]
実施例1は、全二重双方向通信に対応した構成における相互干渉対策への適用事例である。図11は、実施例1の送受信系統を説明する図であって、変調機能部から高周波信号導波路308(信号伝送路9)を経由しての復調機能部までの信号伝送機能に着目した実施例1の機能ブロック図である。図は、低域側(例えば57ギガヘルツ(GHz)帯、12.5ギガビット毎秒(Gb/s))と高域側(例えば80ギガヘルツ(GHz)帯、12.5ギガビット毎秒(Gb/s))の全二重双方向通信に対応した構成で示している。
【0142】
実施例1の信号伝送装置1Aにおいて、第1通信装置100は、送信処理部(TX)に高域側(80ギガヘルツ帯)の搬送周波数を使用し、受信処理部(RX)に低域側(57ギガヘルツ帯)の搬送周波数を使用する構成となっている。即ち、第1通信装置100は、80ギガヘルツの送信処理部と57ギガヘルツの受信処理部とを有する。一方、第2通信装置200は、送信処理部(TX)に低域側(57ギガヘルツ帯)の搬送周波数を使用し、受信処理部(RX)に高域側(80ギガヘルツ帯)の搬送周波数を使用する構成となっている。即ち、第2通信装置200は、57ギガヘルツの送信処理部と80ギガヘルツの受信処理部とを有する。そして、第1通信装置100及び第2通信装置200は、低域側(57ギガヘルツ帯)及び高域側(80ギガヘルツ帯)の2チャネルの何れについても概ね同様の構成であり、又、送受信処理部(増幅部4とローノイズアンプ400の組合せで成る回路及びその周辺回路)は1チップ構成であるのが好適である。
【0143】
例えば、送信側においては、伝送対象の信号(入力ベースバンド信号BB_IN:例えば12ビットの画像信号)は図示しないパラレルシリアル変換部により高速なシリアル・データ系列に変換され差動信号として変調機能部8300に供給される。変調機能部8300は、パラレルシリアル変換部からの信号を変調信号として、予め定められた変調方式に従ってミリ波帯の信号に変調する。変調機能部8300としては、変調方式に応じて様々な回路構成をとり得るが、例えば、振幅を変調する方式であれば、差動信号の系統ごとに2入力型の周波数混合部8302(ミキサー回路、乗算器)と送信側局部発振部8304とを備えたダイレクトコンバーション方式の構成を採用すればよい。送信側局部発振部8304(第1の搬送信号生成部)は、変調に用いる搬送信号(変調搬送信号)を生成する。周波数混合部8302(第1の周波数変換部)は、パラレルシリアル変換部からの信号で送信側局部発振部8304が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号(被変調信号)を生成して増幅部8117(AMP:増幅部117と対応)に供給する。伝送信号は増幅部8117で増幅されアンテナ8136から放射される。
【0144】
受信系においては、送信系の変調方式と対応した構成が採用される。例えば、振幅を変調する方式であれば、受信した高周波信号(の包絡線)振幅の二乗に比例した検波出力を得る自乗検波回路や、自乗特性を有しない単純な包絡線検波回路を使用することができる。更には、復調用の搬送信号を生成し、この搬送信号により受信した高周波信号を同期検波する回路(同期検波回路)を用いることもでき、当該同期検波回路は位相や周波数を変調する方式にも利用できる。
【0145】
ここで、本実施形態の受信系においては、同期検波回路を用いたダイレクトコンバーション方式を採用し、且つ、注入同期(インジェクションロック)方式を採用して復調用の搬送信号を生成する構成にしている。アンテナ8236で受信されたミリ波受信信号は可変ゲイン型且つ低ノイズ型の増幅部8224(LNA、増幅部224と対応)に入力され振幅調整が行なわれた後に復調機能部8400に供給される。復調機能部8400は、2入力型の周波数混合部8402(ミキサー回路)と受信側局部発振部8404とベースバンド増幅部8412とを備え、インジェクションパス(Injection path)を経由して注入信号を受信側局部発振部8404に供給することにより、送信側で変調に使用した搬送信号に対応した出力信号を取得する。典型的には受信側局部発振部8404は送信側で使用した搬送信号に同期した発振出力信号を取得する。そして、受信した信号と受信側局部発振部8404の出力信号に基づく復調用の搬送信号(復調搬送信号:再生搬送信号と称する)を周波数混合部8402で乗算する(同期検波する)ことにより同期検波信号を取得する。周波数混合部8402は、同期検波により周波数変換(ダウンコンバート・復調)を行なうことにより、例えばビット誤り率特性が優れる、直交検波に発展させることにより位相変調や周波数変調を適用できる等の利点が得られる。同期検波信号は図示しないフィルタ処理部で高域成分の除去が行なわれることにより送信側から送られてきた入力信号の波形(出力入力ベースバンド信号BB_OUT:例えば12ビットの画像信号)が得られる。フィルタ処理部は受信側局部発振部8404とベースバンド増幅部8412の間やベースバンド増幅部8412の後段に設ければよい。
【0146】
受信側局部発振部8404の出力信号に基づく再生搬送信号を周波数混合部8402に供給して復調するに当たっては、位相ズレを考慮する必要があり、同期検波系において位相調整回路を設けることが肝要となる。本実施形態では、位相調整回路の機能だけでなく注入振幅を調整する機能も持つ位相振幅調整部8406を復調機能部8400に設けている。受信側局部発振部8404と位相振幅調整部8406で、変調搬送信号と同期した復調搬送信号を生成して周波数混合部8402に供給する復調側(第2)の搬送信号生成部が構成される。位相振幅調整部8406は、受信側局部発振部8404への注入信号、受信側局部発振部8404の出力信号の何れに対して設けてもよく、その両方に適用してもよい。図は、増幅部8224と受信側局部発振部8404との間に位相振幅調整部8406を設ける例で示している。
【0147】
尚、注入同期方式を採用する場合には、注入信号の位相(注入位相)や振幅(注入電圧)を制御(調整)するだけでなく、受信側局部発振部8404の自走発振周波数Foを制御することも、ロックレンジを制御(調整)する上で肝要である。換言すると、注入同期がとれるように、注入位相や注入電圧や自走発振周波数Foを調整することが肝要となる。このため、図示しないが、周波数混合部8402の後段に注入同期制御部を設け、周波数混合部8402で取得された同期検波信号(ベースバンド信号)に基づき注入同期の状態を判定し、その判定結果に基づいて、注入同期がとれるように、調整対象の各部を制御する構成を採る。
【0148】
周波数分割多重方式により多チャンネル化を実現する場合に、自乗検波回路を用いる方式では、次のような難点がある。受信側の周波数選択のためのバンドパスフィルタを自乗検波回路の前段に配置する必要があるが、急峻なバンドパスフィルタを小型に実現するのは容易ではない。また、急峻なバンドパスフィルタを用いた場合は送信側の搬送周波数の安定度についても要求仕様が厳しくなる。これに対して、注入同期を適用すれば、同期検波との併用により、波長選択用のバンドパスフィルタを受信側で使用しなくても、多チャンネル化や全二重の双方向化を行なう場合等のように複数の送受信ペアが同時に独立な伝送をする場合でも干渉の問題の影響を受け難くなる。
【0149】
このような構成の信号伝送装置1においては、第1通信装置100に入力された差動のベースバンド信号BB_INが変調機能部8300によって80ギガヘルツ帯の信号にアップコンバートされ、増幅部8117により増幅されて、アンテナ8136を介して高周波信号導波路308に結合する。80ギガヘルツ帯の信号は高周波信号導波路308を伝送し第2通信装置200側のアンテナ8236に受信される。この受信信号は、増幅部8224(ローノイズアンプ400)により増幅され、周波数混合部8402に供給されるとともに、インジェクションパスの位相振幅調整部8406を経由して受信側局部発振部8404にも供給される。受信側局部発振部8404にて変調用の80ギガヘルツの搬送信号と同期した復調用の80ギガヘルツの搬送信号が受信側局部発振部8404にて生成される。復調機能部8400では、復調用の搬送信号が周波数混合部8402に供給されることにより、受信された80ギガヘルツ帯の信号がベースバンド信号BB_INにダウンコンバートされる。
【0150】
同様に、第1通信装置100に入力された差動のベースバンド信号BB_INが変調機能部8300によって57ギガヘルツ帯の信号にアップコンバートされ、増幅部8117により増幅されて、アンテナ8136を介して高周波信号導波路308に結合する。57ギガヘルツ帯の信号は高周波信号導波路308を伝送し第2通1装置100側のアンテナ8236に受信される。この受信信号は、増幅部8224(ローノイズアンプ400)により増幅され、周波数混合部8402に供給されるとともに、インジェクションパスの位相振幅調整部8406を経由して受信側局部発振部8404にも供給される。受信側局部発振部8404にて変調用の57ギガヘルツの搬送信号と同期した復調用の57ギガヘルツの搬送信号が受信側局部発振部8404にて生成される。復調機能部8400では、復調用の搬送信号が周波数混合部8402に供給されることにより、受信された57ギガヘルツ帯の信号がベースバンド信号BB_INにダウンコンバートされる。
【0151】
ところで、図11に示す全二重双方向通信に対応した構成では、送信側のアンテナ8136から高周波信号導波路308(伝送損失を例えば15〜20デシベル、全域平坦とする)を経由して受信側のアンテナ8236へ低域チャネル(57ギガヘルツ帯)及び高域チャネル(80ギガヘルツ帯)の2チャネル分の高周波信号がそれぞれ相手方に伝送される。このとき、第1通信装置100側においは近接して配置されたアンテナ8136からアンテナ8236へ高域チャネル(80ギガヘルツ帯)の信号が供給される漏洩パス(図中の破線a)が形成されるし、第2通信装置200側においては近接して配置されたアンテナ8136からアンテナ8236へ低域チャネル(57ギガヘルツ帯)の信号が供給される漏洩パス(図中の破線b)が形成される。この漏洩パスの信号エネルギは、高周波信号導波路308を介してのアンテナ8136からアンテナ8236への通常パスに比べると、アンテナ8136とアンテナ8236とが近接しているため高周波信号導波路308による損失が殆どなくかなり大きい。したがって、例え注入同期方式を採用していたとしても、受信側(例えば増幅部8224)の波長選択特性が不十分な場合には、隣接チャネル成分が復調されてしまう「隣接チャネル間の混信問題」の発生が懸念される。この対策として、「ゲイン特性の非対称性を(有効に)利用」して、希望波に対して低域側と高域側の何れか一方の妨害チャネルのみに関して利得抑制部を使用する手法を適用する。
【0152】
[相互干渉対策]
図12は、実施例1(図11に示した全二重双方向通信に対応した構成)における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。ここで、図12(A)は、送信用の増幅部から高周波信号導波路308を経由しての受信用の増幅部(ローノイズアンプ400)までの信号伝送機能に着目した簡略した機能ブロック図である。図12(B)は、低域側用のローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示し(図7(B)に示す特性と同じ)、図12(C)は、高域側用のローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示す(図10(B)に示す特性と同じ)。
【0153】
図中において、「High」は高域チャネル(80ギガヘルツ帯)を示し、「Low」は低域チャネル(57ギガヘルツ帯)を示す。希望チャネルを「Low」チャネルとしたとき、上側隣接チャネルは高域チャネルであり、希望チャネルを「High」としたとき、下側隣接チャネルは低域チャネルである。「TX」は送信処理部を示し、「RX」は受信処理部を示す。「TXANT」は送信側のアンテナ8136(送信アンテナ)であり、「RXANT」は受信側のアンテナ8236(受信アンテナ)であり、「AMP」は送信用の増幅部(増幅部117や増幅部8117)であり、「LNA」はローノイズアンプ400(増幅部224や増幅部8224)である。「TP」は希望チャネル成分に対しての妨害波(隣接チャネル成分)を抑制する利得抑制部(トラップ回路)であり、その参照子(「_H」や「_L」)により減衰周波数(トラップ位置)を高域側と低域側の何れの隣接チャネルに合わせるのかを示す。
【0154】
この例では、低域チャネル用のローノイズアンプ400に「トラップ回路TP_H」が設けられており、上側隣接チャネルである80ギガヘルツ帯に減衰周波数を合わせている(図12(B)に示すゲイン特性を参照)。高域チャネル用のローノイズアンプ400には下側隣接チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)は設けられていない(図12(C)に示すゲイン特性を参照)。
【0155】
第1通信装置100の増幅部(AMP)から発せられた80ギガヘルツ帯(High)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され、高周波信号導波路308を経由して第2通信装置200に伝送される。第2通信装置200においては、80ギガヘルツ帯(High)の高周波信号が受信アンテナRXANTにより受信され80ギガヘルツ帯用のローノイズアンプ400に供給される。このとき、第1通信装置100側においては、送信アンテナTXANTから発せられた80ギガヘルツ帯(High)の高周波信号が漏洩パス(図中の破線a)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図12(B)に示すように、80ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第1通信装置100においては、図示しない後段の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0156】
第2通信装置200の増幅部(AMP)から発せられた57ギガヘルツ帯(Low)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され、高周波信号導波路308を経由して第1通信装置100に伝送される。第1通信装置100においては、57ギガヘルツ帯の高周波信号が受信アンテナRXANTにより受信され低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。このとき、第2通信装置200側においては、送信アンテナTXANTから発せられた57ギガヘルツ帯の高周波信号が漏洩パス(図中の破線b)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み高域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。高域チャネル用のローノイズアンプ400には利得抑制部が設けられていないが、図12(C)に示すように、57ギガヘルツ近傍のゲインは十分に減衰されている。このため、第2通信装置100においては、利得抑制部を使用しなくても、図示しない後段の復調機能部8400では57ギガヘルツ帯は復調されず、57ギガヘルツ帯の送信処理部TXから80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【実施例2】
【0157】
[ミリ波帯の信号伝送機能の詳細]
図13は、実施例2の送受信系統を説明する図であって、変調機能部から高周波信号導波路308(信号伝送路9)を経由しての復調機能部までの信号伝送機能に着目した実施例2の機能ブロック図である。図は、低域側(例えば57ギガヘルツ(GHz)帯、12.5ギガビット毎秒(Gb/s))及び高域側(例えば80ギガヘルツ(GHz)帯、12.5ギガビット毎秒(Gb/s))の片方向二重通信に対応した構成で示している。尚、送信処理部(2つの増幅部4で成る回路及びその周辺回路)や受信処理部(2つのローノイズアンプ400で成る回路及びその周辺回路)は1チップ構成であるのが好適である。
【0158】
実施例2は、片方向二重通信に対応した構成における相互干渉の対策への適用事例である。実施例2の信号伝送装置1B_1は、図11に示した実施例1の信号伝送装置1Aとの対比では、第1通信装置100と第2通信装置200の何れか一方(この例では第1通信装置100)に低域側(57ギガヘルツ帯)用及び高域側(80ギガヘルツ帯)用の送信処理部TXをそれぞれ設け、反対側(この例では第2通信装置200)に低域側(57ギガヘルツ帯)用及び高域側(80ギガヘルツ帯)用の受信処理部TXをそれぞれ設けている点が異なる。このような片方向二重通信の適用により、実質的には、25.0ギガビット毎秒(Gb/s)の伝送レートを確保できる。
【0159】
ここで、図13に示す片方向二重通信に対応した構成では、送信側のアンテナ8136から高周波信号導波路308を経由して受信側のアンテナ8236へ低域側(57ギガヘルツ帯)及び高域側(80ギガヘルツ帯)の2チャネルの信号がそれぞれ相手方に伝送される。このとき、第2通信装置200側においは低域側用のアンテナ8236へも高域チャネル(80ギガヘルツ帯)の信号が供給される漏洩パス(図中の破線a)が形成されるし、高域側用のアンテナ8236へも低域チャネル(57ギガヘルツ帯)の信号が供給される漏洩パス(図中の破線b)が形成される。
【0160】
周波数帯に関わらず高周波信号導波路308の伝送損失が同じであるとした場合は送信電力を同じにでき、漏洩パスの信号エネルギは通常パスと同程度となる。しかしながら、実際には、高周波信号導波路308の伝送特性(周波数特性)は、マルチチャネル伝送の全伝送帯域に亘って平坦とすることは難しく、少なからず低域側或いは高域側に片寄った特性を持つ。又、受信側のローノイズアンプ400のピークゲインも周波数帯に関わらず同じとすることは難しい。これらを踏まえた場合、送信電力は、低域側或いは高域側の何れかを大きくすることになる。したがって、例え注入同期方式を採用していたとしても、受信側(例えば増幅部8224)の波長選択特性が不十分な場合には、隣接チャネル成分が復調されてしまう「隣接チャネル間の混信問題」の発生が懸念される。更には、この例ではチャネル間隔を「80−57=23ギガヘルツ」としているが、チャネル間隔をより狭くする場合には、ローノイズアンプ400のゲイン特性例から推測されるように、隣接チャネル成分が復調されてしまう「隣接チャネル間の混信問題」の発生の可能性が高まる。このように、片方向二重通信においても、「ゲイン特性の非対称性を(有効に)利用」して、希望波に対して低域側と高域側の何れか一方の妨害チャネルのみに関して利得抑制部を使用する手法を適用することが好ましい場合がある。
【0161】
[相互干渉対策]
図14は、実施例2(図13に示した片方向二重通信に対応した構成)における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。ここで、図14は、送信用の増幅部から高周波信号導波路308を経由しての受信用の増幅部(ローノイズアンプ400)までの信号伝送機能に着目した簡略した機能ブロック図である。
【0162】
低域チャネル(57ギガヘルツ帯)用のローノイズアンプ400のゲイン特性は図14(B)と同じであり、高域チャネル(80ギガヘルツ帯)用のローノイズアンプ400のゲイン特性は図12(C)と同じである。高域チャネル用のローノイズアンプ400のピークゲインは、低域チャネル用のローノイズアンプ400のピークゲインよりも小さいので、仮に周波数帯に関わらず高周波信号導波路308の伝送損失が同じであるとした場合、送信電力は、低域側よりも高域側の方を大きくする。信号伝送装置1B_1は、第2通信装置200側において、低域チャネル用のローノイズアンプ400は80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hを有する。
【0163】
このため、第2通信装置200側においては、57ギガヘルツ帯(Low)よりも電力の大きな80ギガヘルツ帯(High)の高周波信号が漏洩パス(図中の破線a)を経由して受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図12(B)に示すように、80ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段の57ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0164】
一方、高域チャネル用の受信アンテナRXANTには、80ギガヘルツ帯よりも電力の小さな57ギガヘルツ帯(Low)の高周波信号も漏洩パス(図中の破線b)を経由して飛び込み高域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。高域チャネル用のローノイズアンプ400には利得抑制部が設けられていないが、57ギガヘルツ帯の高周波信号は希望波である80ギガヘルツ帯よりも電力が小さいし、図12(C)に示すように、57ギガヘルツ近傍のゲインは十分に減衰されている。このため、第2通信装置100においては、利得抑制部を使用しなくても、図示しない後段の80ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では57ギガヘルツ帯は復調されず、57ギガヘルツ帯の送信処理部TXから80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0165】
〔変形例〕
図15は、実施例2に対する変形例を説明する図であって、片方向多重通信に対応した構成における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。ここで、図15は、送信用の増幅部から高周波信号導波路308を経由しての受信用の増幅部(ローノイズアンプ400)までの信号伝送機能に着目した簡略した機能ブロック図である。前述の実施例2は、2チャネルでの片方向通信において、「ゲイン特性の非対称性を(有効に)利用」して、希望波に対して低域側と高域側の何れか一方の妨害チャネルのみに関して利得抑制部を使用する手法を適用することについて説明したが、この変形例は、チャネル数を3以上に一般展開したものである。この変形例では、何れかの2チャネルの組合せの内で隣接チャネルの関係にあって且つ片方向多重通信が適用されるものについて実施例2を適用する。
【0166】
図示のように、信号伝送装置1B_2は、第2通信装置200側において、FX(Xは1〜n−1、FX<FX+1)ギガヘルツ帯用のローノイズアンプ400にFX+1ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_X+1を有する。第2通信装置200側においては、FX+1ギガヘルツ帯の高周波信号が漏洩パス(図中の破線α)を経由してFXギガヘルツ帯用の受信アンテナRXANTに飛び込みローノイズアンプ400に供給される。FXギガヘルツ帯用のローノイズアンプ400にはFX+1ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_X+1が設けられているので、FX+1ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_X+1の機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段のFXギガヘルツ帯用の復調機能部8400ではFX+1ギガヘルツ帯は復調されず、FX+1ギガヘルツ帯の送信処理部TXからFXギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。詳細説明は割愛するが、これ以外の漏洩パス(図中の破線αを除く破線)については、利得抑制部を使用しなくても、復調機能部8400では妨害波は復調されず、漏洩成分による干渉を防止することができる。
【実施例3】
【0167】
実施例3は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した構成における相互干渉の対策への適用事例である。ここでは、最も基本となる3チャネルの場合で説明する。後述の実施例4との相違は、片方向二重通信においては、送信側同士及び受信側同士では相互干渉対策(つまり実施例2の手法)は不要であるとの前提に立った構成である。つまり、何れかの2チャネルの組合せの内で隣接チャネルの関係にあって且つ全二重双方向通信が適用されるものについて実施例1を適用する。片方向二重通信系の漏洩パスについては無視する。
【0168】
以下においては、3チャネルの関係において、「Low」は低域チャネル(57ギガヘルツ帯)を示し、「Mid」は中域チャネル(80ギガヘルツ帯)を示し、「High」は高域チャネル(103ギガヘルツ帯)を示す。希望チャネルを低域チャネルとしたとき、上側隣接チャネルは中域チャネルである。希望チャネルを中域チャネルとしたとき、下側隣接チャネルは低域チャネルであり、上側隣接チャネルは高域チャネルである。希望チャネルを高域チャネルとしたとき、下側隣接チャネルは中域チャネルである。
【0169】
図16〜図17は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した実施例3における相互干渉対策の具体的な対処手法を説明する図である。ここで、図16は実施例3で使用されるローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示す図である。具体的には、図16(A)は、低域チャネル(57ギガヘルツ帯)用のローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示し(図7(B)と同じ)、図16(B)は、中域チャネル(80ギガヘルツ帯)用のローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示し、図16(C)は、高域チャネル(103ギガヘルツ帯)用のローノイズアンプ400のゲイン特性の一例を示す。
【0170】
図17は、実施例3の送受信系統を説明する図であって、送信用の増幅部から高周波信号導波路308を経由しての受信用の増幅部(ローノイズアンプ400)までの信号伝送機能に着目した簡略した機能ブロック図であり、送信処理部と受信処理部の周波数帯の組合せとしてとり得る3通りの構成を示している。送受信処理部(増幅部4とローノイズアンプ400の組合せで成る回路及びその周辺回路)は1チップ構成であるのが好適である。
【0171】
実施例3の信号伝送装置1Cでは、何れかの2チャネルの組合せの内で隣接チャネルの関係にあるものについて実施例1を適用する。具体的には、第1通信装置100自身或いは第2通信装置200自身において、ある周波数帯の受信処理部RXに着目したときに、上側隣接チャネルが送信処理部TXである組合せについてローノイズアンプ400に利得抑制部(トラップ回路)を設け、これ以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。以下、3通りの構成について具体的に説明する。
【0172】
[第1例]
図17(A)に示す第1例の信号伝送装置1C_1では、第1通信装置100には、高域チャネル(103ギガヘルツ帯)用の送信処理部TX、中域チャネル(80ギガヘルツ帯)用の受信処理部RX、及び、低域チャネル(57ギガヘルツ帯)用の送信処理部TXが設けられている。第2通信装置200には、高域チャネル用の受信処理部RX、中域チャネル用の送信処理部TX、及び、低域チャネル用の受信処理部RXが設けられている。このような構成では、高域チャネと中域チャネルとにより或いは低域チャネルと中域チャネルとにより全二重双方向通信が適用可能であり、高域チャネルと低域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能である。
【0173】
第1通信装置100自身において、中域チャネル用の受信処理部RXに着目したとき、上側隣接チャネルである高域チャネルが送信処理部TXである組合せとなるので、中域チャネル用のローノイズアンプ400に高域チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)を設ける。又、第2通信装置200自身において、低域チャネル用の受信処理部RXに着目したとき、上側隣接チャネルである中域チャネルが送信処理部TXである組合せとなるので、低域チャネル用のローノイズアンプ400に中域チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)を設ける。これら以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。
【0174】
即ち、第1通信装置100においては、中域チャネル用のローノイズアンプ400に「トラップ回路TP_H」が設けられており、高域チャネルの103ギガヘルツ帯に減衰周波数を合わせている(図16(B)に示す実線のゲイン特性を参照)。低域チャネル用のローノイズアンプ400には利得抑制部(トラップ回路)は設けられていないし(図16(A)に示す破線のゲイン特性を参照)、高域チャネル用のローノイズアンプ400にも利得抑制部(トラップ回路)は設けられていない(図16(C)に示すゲイン特性を参照)。第2通信装置200においては、低域チャネル用のローノイズアンプ400に「トラップ回路TP_M」が設けられており、中域チャネルの80ギガヘルツ帯に減衰周波数を合わせている(図16(A)に示す実線のゲイン特性を参照)。中域チャネル用のローノイズアンプ400には利得抑制部(トラップ回路)は設けられていないし(図16(B)に示す破線のゲイン特性を参照)、高域チャネル用のローノイズアンプ400にも利得抑制部(トラップ回路)は設けられていない(図16(C)に示すゲイン特性を参照)。
【0175】
第1通信装置100においては、103ギガヘルツ帯(High)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第2通信装置200側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線a)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み中域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には103ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図16(B)に示すように、103ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第1通信装置100においては、図示しない後段の80ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では103ギガヘルツ帯は復調されず、103ギガヘルツ帯の送信処理部TXから80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。又、57ギガヘルツ帯(Low)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第2通信装置200側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線b)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み中域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。中域チャネル用のローノイズアンプ400には57ギガヘルツ帯の利得を抑制する利得抑制部が設けられていないが、図16(B)に示すように、57ギガヘルツ近傍のゲインは十分に減衰されている。このため、第2通信装置100においては、利得抑制部を使用しなくても、図示しない後段の80ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では57ギガヘルツ帯は復調されず、57ギガヘルツ帯の送信処理部TXから80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0176】
一方、第2通信装置200においては、80ギガヘルツ帯(Mid)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第1通信装置100側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線c)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Mが設けられているので、図16(A)に示すように、80ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Mの機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段の57ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。又、103ギガヘルツ帯(Low)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第1通信装置100側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線d)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み高域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。高域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯の利得を抑制する利得抑制部が設けられていないが、図16(C)に示すように、80ギガヘルツ近傍のゲインは十分に減衰されている。このため、第2通信装置100においては、利得抑制部を使用しなくても、図示しない後段の103ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから103ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0177】
[第2例]
図17(B)に示す第2例の信号伝送装置1C_2では、第1通信装置100には、高域チャネル(103ギガヘルツ帯)用の受信処理部RX、中域チャネル(80ギガヘルツ帯)用の送信処理部TX、及び、低域チャネル(57ギガヘルツ帯)用の送信処理部TXが設けられている。第2通信装置200には、高域チャネル用の送信処理部TX、中域チャネル用の受信処理部RX、及び、低域チャネル用の受信処理部RXが設けられている。このような構成では、高域チャネルと中域チャネルとにより或いは高域チャネルと低域チャネルとにより全二重双方向通信が適用可能であり、中域チャネルと低域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能である。
【0178】
第2通信装置200自身において、中域チャネル用の受信処理部RXに着目したときに、上側隣接チャネルである高域チャネルが送信処理部TXである組合せとなるので、中域チャネル用のローノイズアンプ400に高域チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)を設ける。これら以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。第2例は、第1例との対比では、第1通信装置100には利得抑制部を設ける必要がない点に特徴がある。
【0179】
第2通信装置200においては、103ギガヘルツ帯(High)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第1通信装置100側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線a)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み中域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。中域チャネル用のローノイズアンプ400には103ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図16(B)に示すように、103ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段の80ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では103ギガヘルツ帯は復調されず、103ギガヘルツ帯の送信処理部TXから80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。詳細説明は割愛するが、これ以外の漏洩パス(図中の破線b,c,d)については、利得抑制部を使用しなくても、復調機能部8400では妨害波は復調されず、漏洩成分による干渉を防止することができる。
【0180】
[第3例]
図17(C)に示す第3例の信号伝送装置1C_3では、第1通信装置100には、高域チャネル(103ギガヘルツ帯)用の送信処理部TX、中域チャネル(80ギガヘルツ帯)用の送信処理部TX、及び、低域チャネル(57ギガヘルツ帯)用の受信処理部RXが設けられている。第2通信装置200には、高域チャネル用の受信処理部RX、中域チャネル用の受信処理部RX、及び、低域チャネル用の送信処理部TXが設けられている。このような構成では、高域チャネルと低域チャネルとにより或いは中域チャネルと低域チャネルとにより全二重双方向通信が適用可能であり、高域チャネルと中域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能である。
【0181】
第1通信装置100自身において、低域チャネル用の受信処理部RXに着目したときに、上側隣接チャネルである中域チャネルが送信処理部TXである組合せとなるので、低域チャネル用のローノイズアンプ400に中域チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)を設ける。これら以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。第3例は、第1例との対比では、第2通信装置200には利得抑制部を設ける必要がない点に特徴がある。
【0182】
第1通信装置100においては、80ギガヘルツ帯(Mid)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第2通信装置200側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線a)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Mが設けられているので、図16(A)に示すように、80ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Mの機能により十分に減衰される。このため、第1通信装置100においては、図示しない後段の57ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。詳細説明は割愛するが、これ以外の漏洩パス(図中の破線b,c,d)については、利得抑制部を使用しなくても、復調機能部8400では妨害波は復調されず、漏洩成分による干渉を防止することができる。
【0183】
〔変形例〕
図18は、実施例3に対する変形例を説明する図である。この変形例は、3チャネルの場合で説明した実施例3の手法を、4チャネル以上の場合に適用するものである。実施例3では、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用する場合に最も基本となる3チャネルの場合で説明したが、4チャネル以上の場合でも同様に考えればよい。何れかの2チャネルの組合せの内で隣接チャネルの関係にあるものについて実施例3を適用する。一例として、第1チャネル(F1ギガヘルツ帯)、第2チャネル(F2ギガヘルツ帯)、第3チャネル(F3ギガヘルツ帯)、第4チャネル(F4ギガヘルツ帯)、第5チャネル(F5ギガヘルツ帯)、第6チャネル(F6ギガヘルツ帯)、及び、第7チャネル(F7ギガヘルツ帯)の計7つのチャネル(搬送周波数FY(Yは1〜7、FY<FY+1))の場合の幾つかの例について説明する。
【0184】
図は、各チャネルの搬送周波数の配置と、第1通信装置100及び第2通信装置200に設けられる各チャネル用の送信処理部TX及び受信処理部RXを簡略的に表している。図中において、周波数軸上のあるチャネルでの上向きの太い矢印はそのチャネルの送信処理部TXであることを示し、下向きの太い矢印はそのチャネルの受信処理部RXであることを示す。第1通信装置100と第2通信装置200との間の実線は通常パスを示し、第1通信装置100内や第2通信装置200内の破線は漏洩パスを示す。
【0185】
図18(A)に示す第1例では、第1通信装置100には、F1ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F2ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F3ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F4ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F5ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F6ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F7ギガヘルツ帯用の受信処理部RXが設けられている。第2通信装置200には、F1ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F2ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F3ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F4ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F5ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F6ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F7ギガヘルツ帯用の送信処理部TXが設けられている。
【0186】
隣接した第1チャネルと第2チャネルの組合せ、隣接した第2チャネルと第3チャネルとの組合せ、隣接した第3チャネルと第4チャネルとの組合せ、隣接した第4チャネルと第5チャネルとの組合せ、隣接した第6チャネルと第7チャネルとの組合せ、のそれぞれにおいて全二重双方向通信が適用されると見なすことができる。
【0187】
この場合において、実施例3の手法を適用して、上側隣接チャネルが送信処理部TXである組合せについて、Yチャネル用のローノイズアンプ400にはY+1チャネルの利得を抑制する(Y+1チャネル帯に減衰周波数が設定されている)トラップ回路TP_Y+1を設ける。例えば、第1通信装置100には、第2チャネル用のローノイズアンプ400に第3チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_3を設け、第4チャネル用のローノイズアンプ400に第5チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_5を設ける。第2通信装置200には、第1チャネル用のローノイズアンプ400に第2チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_2を設け、第3チャネル用のローノイズアンプ400に第4チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_4を設け、第6チャネル用のローノイズアンプ400に第7チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_7を設ける。
【0188】
図18(B)に示す第2例では、第1通信装置100には、F1ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F2ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F3ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F4ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F5ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F6ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F7ギガヘルツ帯用の送信処理部TXが設けられている。第2通信装置200には、F1ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F2ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F3ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F4ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F5ギガヘルツ帯用の受信処理部RX、F6ギガヘルツ帯用の送信処理部TX、F7ギガヘルツ帯用の受信処理部RXが設けられている。
【0189】
隣接した第1チャネルと第2チャネルの組合せ、隣接した第3チャネルと第4チャネルとの組合せ、隣接した第5チャネルと第6チャネルとの組合せ、隣接した第6チャネルと第7チャネルとの組合せ、のそれぞれにおいて全二重双方向通信が適用されると見なすことができる。第1通信装置100には、第3チャネル用のローノイズアンプ400に第4チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_4を設け、第6チャネル用のローノイズアンプ400に第7チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_7を設ける。第2通信装置200には、第1チャネル用のローノイズアンプ400に第2チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_2を設け、第5チャネル用のローノイズアンプ400に第6チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_6を設ける。
【0190】
このように、4チャネル以上の場合でも、第1通信装置100と第2通信装置200との間で全二重双方向通信を行なう隣接チャネルの組合せについて、Yチャネル用のローノイズアンプ400にはY+1チャネル帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Y+1を設けることにより、Y+1チャネル帯の送信処理部TXから漏洩パスを経由してYチャネルの受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【実施例4】
【0191】
実施例4は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した構成における相互干渉の対策への適用事例である。前述の実施例3との相違は、片方向二重通信においては、送信側同士では相互干渉対策(つまり実施例2の手法)は不要であるが受信側同士では相互干渉対策(つまり実施例2の手法)が必要であるとの前提に立った構成である。つまり、実施例3に加えて、何れかの2チャネルの組合せの内で隣接チャネルの関係にあって且つ片方向二重通信が適用されるものについて実施例2を適用する。実施例3とは異なり、片方向二重通信系の漏洩パスについても考慮する。
【0192】
図19は、全二重双方向通信と片方向二重通信とを併用した実施例4の送受信系統を説明する図であって、送信用の増幅部から高周波信号導波路308を経由しての受信用の増幅部(ローノイズアンプ400)までの信号伝送機能に着目した簡略した機能ブロック図である。ここでは、送信処理部と受信処理部の周波数帯の組合せとしてとり得る3通りの構成を示している。尚、送受信処理部(増幅部4とローノイズアンプ400の組合せで成る回路及びその周辺回路)は1チップ構成であるのが好適である。
【0193】
実施例4の信号伝送装置1Dでは、第1通信装置100と第2通信装置200との間の片方向二重通信において、ある周波数帯の受信処理部RXに着目したときに、上側隣接チャネルが送信処理部TXである組合せについてローノイズアンプ400に利得抑制部(トラップ回路)を設け、これ以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。以下、実施例3との相違点に着目して、3通りの構成について具体的に説明する。
【0194】
[第1例]
図19(A)に示す第1例の信号伝送装置1D_1は、実施例3の第1例の構成に対する変形例であり、高域チャネルと低域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能であり、漏洩パス(図中の破線e及び破線f)が形成される。しかしながら、両チャネルは隣接チャネルの関係にないので、実施例2の適用の余地(必要性)はない。
【0195】
[第2例]
図19(B)に示す第2例の信号伝送装置1D_2は、実施例3の第2例の構成に対する変形例であり、中域チャネルと低域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能であり、漏洩パス(図中の破線e及び破線f)が形成される。両チャネルは隣接チャネルの関係にあるので、実施例2の適用の余地がある。具体的には、第2通信装置200側において、低域チャネル用のローノイズアンプ400に80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Mを設ける、つまり、実施例3の第2例に対して更にトラップ回路TP_Mを追加する。
【0196】
第2通信装置200側においては、57ギガヘルツ帯(Low)よりも電力の大きな80ギガヘルツ帯(Mid)の高周波信号が漏洩パス(図中の破線e)を経由して受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には80ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Mが設けられているので、図16(A)に示すように、80ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Mの機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段の57ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では80ギガヘルツ帯は復調されず、80ギガヘルツ帯の送信処理部TXから漏洩パスeを経由して57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0197】
[第3例]
図19(C)に示す第3例の信号伝送装置1D_3は、実施例3の第3例の構成に対する変形例であり、高域チャネルと中域チャネルとにより片方向二重通信が適用可能であり、漏洩パス(図中の破線e及び破線f)が形成される。両チャネルは隣接チャネルの関係にあるので、実施例2の適用の余地がある。具体的には、第2通信装置200側において、中域チャネル用のローノイズアンプ400に103ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hを設ける、つまり、実施例3の第3例に対して更にトラップ回路TP_Hを追加する。
【0198】
第2通信装置200側においては、80ギガヘルツ帯(Low)よりも電力の大きな103ギガヘルツ帯(High)の高周波信号が漏洩パス(図中の破線e)を経由して受信アンテナRXANTに飛び込み中域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。高域チャネル用のローノイズアンプ400には103ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図16(B)に示すように、103ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第2通信装置200においては、図示しない後段の80ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では103ギガヘルツ帯は復調されず、103ギガヘルツ帯の送信処理部TXから漏洩パスeを経由して80ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【0199】
〔変形例〕
図20は、実施例4に対する変形例を説明する図である。この変形例は、3チャネルの場合で説明した実施例4の手法を、4チャネル以上の場合に適用するものである。実施例4では、最も基本となる3チャネルの場合で説明したが、4チャネル以上の場合でも同様に考えればよい。一例として、図18に示した実施例3の変形例をベースに説明する。
【0200】
実施例4の手法を適用して、上側隣接チャネルが送信処理部TXである片方向二重通信が適用されるチャネルの組合せ(図中に楕円で括った組合せのもの)について、Yチャネル用のローノイズアンプ400にはY+1チャネルに対しての利得を抑制する(Y+1チャネル帯に減衰周波数が設定されている)トラップ回路TP_Y+1を設ける。
【0201】
例えば、図20(A)に示す第1例では、実施例3の変形例(第1例)で説明した隣接チャネルの組合せにおける全二重双方向通信に加えて、隣接した第5チャネルと第6チャネルとの組合せにおいて片方向二重通信が適用されると見なすことができる。そこで、第1通信装置100には、第5チャネル用のローノイズアンプ400に第6チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_6を設ける。
【0202】
図20(B)に示す第2例では、実施例3の変形例(第2例)で説明した隣接チャネルの組合せにおける全二重双方向通信に加えて、隣接した第2チャネルと第3チャネルとの組合せ、及び、隣接した第4チャネルと第5チャネルとの組合せ、のそれぞれにおいて片方向二重通信が適用されると見なすことができる。そこで、第1通信装置100には、第2チャネル用のローノイズアンプ400に第3チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_3を設け、第2通信装置200には、第4チャネル用のローノイズアンプ400に第5チャネルに対しての利得を抑制するトラップ回路TP_5を設ける。
【0203】
このように、4チャネル以上の場合でも、第1通信装置100と第2通信装置200との間で片方向二重通信を行なう隣接チャネルの組合せについて、Yチャネル用のローノイズアンプ400にはY+1チャネル帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Y+1を設けることにより、Y+1チャネル帯の送信処理部TXから漏洩パスを経由してYチャネルの受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。
【実施例5】
【0204】
[相互干渉の対策手法:第2例]
次に、第2例の相互干渉対策手法及びその具体的な適用例について説明する。第2例の相互干渉対策手法は、第1例の相互干渉対策手法と同様に、増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用して、「増幅部のゲイン特性の非対称性による減衰性の不足分を補う」という点に特徴がある。但し、その実現のため、増幅部外(但し、復調処理以前である)に自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を配置する方法を採用する点が異なる。信号抑制部としては、例えばトラップ回路を採用する。
【0205】
図21及び図22は、実施例5の送受信系統を説明する図である。ここで、図21は、第1例〜第3例を示し、図22は、第4例〜第6例を示す。何れも、実施例4に対しての変形例で示すが、実施例1〜実施例3に対しても、同様に適用できる。
【0206】
図21(A)〜図21(C)に示す第1例〜第3例はそれぞれ、実施例4の第1例〜第3例に対しての変形例であり、信号抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)を、ローノイズアンプ400内に設けるのではなく、ローノイズアンプ400の前段に設けた形態である。一方、図22(A)〜図22(C)に示す第1例〜第3例はそれぞれ、実施例4の第1例〜第3例に対しての変形例であり、信号抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)を、ローノイズアンプ400内に設けるのではなく、ローノイズアンプ400の後段(復調機能部8400の前段)に設けた形態である。
【0207】
このような第2例の相互干渉対策手法を適用した形態であっても、信号抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)の機能により妨害チャネルの信号レベルが減衰されるため、ローノイズアンプ400の後段に設けられる図示しない復調機能部8400では、妨害チャネル成分は復調されず、相互干渉を防止することができる。増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用するので、信号抑制部は、利得周波数特性の非対称性による減衰性の不足分を補う程度の減衰特性を持つものであればよい。対象のチャネル位置で小さな減衰度となる減衰特性を持つものでよく、例えばトラップ回路であれば、トラップ量は少なくてもよく、簡易な構成で実現できる。
【実施例6】
【0208】
[相互干渉の対策手法:第3例]
次に、第3例の相互干渉対策手法及びその具体的な適用例について説明する。第3例の相互干渉対策手法は、第1例や第2例の相互干渉対策手法とは異なり、増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用しない点に特徴がある。換言すると、増幅回路の裸の利得周波数特性が対称であるのか非対称であるのかを問わず適用可能な形態である。例えば、増幅回路が、周波数(波長)選択性を持たない広帯域の増幅回路である場合でも適用できる形態である。この場合においても、全てのチャネルの受信処理部に利得抑制部を設けるのではなく、受信処理部の何れかに、自チャネル以外の他チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を設ける。これにより、少なくとも利得抑制部を設けたチャネルからの妨害を防止することができる。
【0209】
図23及び図24は、実施例6の送受信系統を説明する図である。ここで、図23は、第1例〜第3例を示し、図24は、第4例〜第6例を示す。図23は、実施例4に対しての変形例で示し、図24は、実施例5に対しての変形例で示すが、その他の実施例に対しても、同様に適用できる。
【0210】
図23(A)〜図23(C)に示す第1例〜第3例はそれぞれ、利得抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)をローノイズアンプ400内に設けている実施例4の第1例〜第3例に対しての変形例であり、図24(A)〜図24(C)に示す第4例〜第6例はそれぞれ、利得抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)をローノイズアンプ400の前段に設けている実施例5の第1例〜第3例に対しての変形例である。
【0211】
何れも、ローノイズアンプ400は、裸の利得周波数特性は明確な非対称性を持たず、例えば、周波数選択性を持たず、全チャネル帯域分に亘って利得がほぼ平坦なフラットアンプ(多少のうねりは許容する)であるとする。ローノイズアンプ400の裸の利得周波数特性の非対称性を利用するものではないので、利得抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)は、大きな減衰特性を持つものが必要となる。
【0212】
このような第3例の相互干渉対策手法を適用した形態であっても、少なくとも利得抑制部を設けた系統に関しては、利得抑制部(トラップ回路601やトラップ回路602)の機能により妨害チャネルの信号レベルが減衰されるため、ローノイズアンプ400の後段に設けられる図示しない復調機能部8400では、妨害チャネル成分は復調されず、干渉を防止することができる。増幅回路の裸の利得周波数特性の非対称性を利用するものではないので、実施例4や実施例5等と比べると、利得抑制部は、対象のチャネル位置で大きな減衰度となる減衰特性を持つものが必要であり、例えばトラップ回路であれば、トラップ量の多いものを使用する。
【実施例7】
【0213】
図25〜図26は、実施例7を説明する図である。ここで、図25は、実施例7で使用するローノイズアンプ400の周波数特性例を示す図である。図26は、実施例7の送受信系統を説明する図である。
【0214】
前述の各実施例では、典型的な例として、両隣りの関係にある隣接チャネルからの妨害(相互干渉)をトラップ回路等を利用した利得抑制部により抑制することについて具体的に説明したが、本明細書で開示する技術は、これには限らない。本明細書で開示する技術は、隣接チャネルに限らず、より離れたチャネルを含む自チャネル以外の他チャネルから妨害波としての影響がある場合に、自チャネル以外の他チャネル(妨害チャネル)の影響をトラップ回路等を利用した利得抑制部により抑制するものであればよい。例えば、隣接チャネルのもう1つ隣りのチャネルからの影響も防止することができる。
【0215】
例えば、図25には、実施例7で使用するローノイズアンプ400の周波数特性例が示されている。一例として、高域側に利得抑制部を適用する図4(C)及び図5(B)に対する変形例で示すが、低域側に利得抑制部を適用する図4(B)及び図5(A)に対しても同様の思想を適用できる。図25(A)に示すように、ローノイズアンプ400の裸の周波数特性は、希望チャネル信号(搬送周波数FC)つまり自チャネルに周波数選択性を持っており、且つ、下側隣接チャネル信号(搬送周波数FD)及び上側隣接チャネル信号(搬送周波数FU1)の何れについても十分に減衰している。但し、上側隣接チャネル(搬送周波数FU1)よりも更に高域側の周波数では跳ね上がり現象が存在し、もう1つ上側のチャネル信号(搬送周波数FU2)に対しての利得減衰度が不足した特性を持っている。つまり、自チャネルに対して2チャネル分上側(隣接チャネルのもう1つ高域側のチャネル)であるチャネル(搬送周波数FU2)では、利得減衰度が不足している。
【0216】
このような場合、図25(B)に示すように、このチャネル信号(搬送周波数Fう2)に減衰周波数(トラップ位置)を合わせた利得抑制部を適用することにより、このチャネル信号成分(搬送周波数Fう2)を減衰させることができる。チャネル信号成分(搬送周波数Fう2)を受信限界レベル以下にすることができ、そのチャネル信号成分(搬送周波数Fう2)が復調されることはなく、相互干渉を防止できる。
【0217】
図26には、この手法を適用した実施例7の送受信系統が示されている。図は、図17(C)に示した実施例3の第3例に対する変形例で示している。第1通信装置100自身において、低域チャネル用の受信処理部RXに着目したときに、2チャネル分上側(隣接チャネルのもう1つ高域側のチャネル)である高域チャネルが送信処理部TXである組合せとなるので、低域チャネル用のローノイズアンプ400に高域チャネルの利得を抑制する利得抑制部(トラップ回路)を設ける。これら以外の組合せについては利得抑制部(トラップ回路)を設けない。因みに、図17(A)に示した実施例3の第1例や図17(B)に示した実施例3の第2例に対しては適用の余地(必要性)がない。
【0218】
第1通信装置100においては、103ギガヘルツ帯(High)の高周波信号は送信アンテナTXANTにより高周波信号導波路308に結合され第2通信装置200側へ伝送されるが、このとき、漏洩パス(図中の破線b)を経由して自身の受信アンテナRXANTに飛び込み低域チャネル用のローノイズアンプ400に供給される。低域チャネル用のローノイズアンプ400には103ギガヘルツ帯に減衰周波数が設定されているトラップ回路TP_Hが設けられているので、図25(B)に示すように、103ギガヘルツ帯の高周波信号はトラップ回路TP_Hの機能により十分に減衰される。このため、第1通信装置100においては、図示しない後段の57ギガヘルツ帯用の復調機能部8400では103ギガヘルツ帯は復調されず、103ギガヘルツ帯の送信処理部TXから57ギガヘルツ帯の受信処理部RXに漏洩された高周波信号による干渉を防止することができる。詳細説明は割愛するが、これ以外の漏洩パス(図中の破線a,c,d)については、利得抑制部を使用しなくても、復調機能部8400では妨害波は復調されず、漏洩成分による干渉を防止することができる。
【0219】
以上、本明細書で開示する技術について実施形態を用いて説明したが、請求項の記載内容の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本明細書で開示する技術の技術的範囲に含まれる。前記の実施形態は、請求項に係る技術を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、本明細書で開示する技術が対象とする課題の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の技術が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の技術を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、本明細書で開示する技術が対象とする課題と対応した効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成も、本明細書で開示する技術として抽出され得る。
【0220】
前記実施形態の記載を踏まえれば、特許請求の範囲に記載の請求項に係る技術は一例であり、例えば、以下の技術が抽出される。以下列記する。
[付記A1]
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は3以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する信号伝送装置。
[付記A2]
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A1に記載の信号伝送装置。
[付記A3]
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A2に記載の信号伝送装置。
[付記A4]
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
下側隣接チャネル用の増幅部に設けられる利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する付記A3に記載の信号伝送装置。
[付記A5]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第2チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第2チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記A4に記載の信号伝送装置。
[付記A6]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記A4に記載の信号伝送装置。
[付記A7]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記A4に記載の信号伝送装置。
[付記A8]
更に、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A2乃至付記A7の何れか1項に記載の信号伝送装置。
[付記A9]
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A8に記載の信号伝送装置。
[付記A10]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記A6に記載の信号伝送装置。
[付記A11]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第2チャネルと第3チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記A7に記載の信号伝送装置。
[付記A12]
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は2以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する信号伝送装置。
[付記A13]
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A12に記載の信号伝送装置。
[付記A14]
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記A13に記載の信号伝送装置。
[付記A15]
利得抑制部は、トラップ回路で構成されている付記A1乃至付記A15の何れか1項に記載の信号伝送装置。
[付記A16]
トラップ回路は、インダクタとコンデンサとの直列共振回路で構成されている付記A15に記載の信号伝送装置。
[付記A17]
チャネルの総数は3以上である場合において、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する受信回路。
[付記A18]
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する受信回路。
[付記A19]
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は3以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する電子機器。
[付記A20]
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は2以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する電子機器。
【0221】
[付記B1]
伝送信号を受信する複数の受信処理部を備え、
複数の受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する信号伝送装置。
[付記B2]
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する付記B1に記載の信号伝送装置。
[付記B3]
利得抑制部は、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあるものについて、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する付記B2に記載の信号伝送装置。
[付記B4]
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する付記B3に記載の信号伝送装置。
[付記B5]
何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、全二重双方向通信が適用されるものについて、増幅部は利得抑制部を有する付記B3に記載の信号伝送装置。
[付記B6]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第2チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第2チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記B5に記載の信号伝送装置。
[付記B7]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記B5に記載の信号伝送装置。
[付記B8]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記B5に記載の信号伝送装置。
[付記B9]
チャネルの総数は3以上であり、
更に、何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、片方向二重通信が適用されるものについて、増幅部は利得抑制部を有する付記B5に記載の信号伝送装置。
[付記B10]
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する付記B9に記載の信号伝送装置。
[付記B11]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記B10に記載の信号伝送装置。
[付記B12]
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第2チャネルと第3チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する付記B10に記載の信号伝送装置。
[付記B13]
何れか2つのチャネルの組合せの内で、隣接チャネルの関係にあり、且つ、片方向二重通信が適用されるものについて、増幅部は利得抑制部を有する付記B3に記載の信号伝送装置。
[付記B14]
利得抑制部は、トラップ回路で構成されている付記B2に記載の信号伝送装置。
[付記B15]
トラップ回路は、インダクタとコンデンサとの直列共振回路で構成されている付記B14に記載の信号伝送装置。
[付記B16]
増幅部は、カスケード接続された2つのトランジスタを有するとともに、自チャネルに周波数選択性を持つように定数が設定されたインダクタを負荷に有する増幅段を具備し、
トラップ回路は、2つのトランジスタのカスケード接続点と基準電位点との間に接続されている付記B14に記載の信号伝送装置。
[付記B17]
増幅部は、増幅段を複数段有しており、
トラップ回路は、1段目の増幅段に設けられている付記B16に記載の信号伝送装置。
[付記B18]
増幅部は、増幅段を複数段有しており、
トラップ回路は、1段目以外の少なくとも1つの増幅段に設けられている付記B16に記載の信号伝送装置。
[付記B19]
自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅回路を有し、
増幅回路は、自チャネル以外の他チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制回路を有する受信回路。
[付記B20]
伝送信号を受信する受信処理部をチャネルごとに備え、
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
増幅部は、自チャネル以外の他チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する電子機器。
【0222】
[付記C1]
チャネルの総数が2であって、周波数帯を分けて全二重双方向通信を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
受信処理部は、隣接チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する信号伝送装置。
[付記C2]
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する付記C1に記載の信号伝送装置。
[付記C3]
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
下側隣接チャネル用の増幅部に設けられる利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する付記C2に記載の信号伝送装置。
[付記C4]
利得抑制部は、トラップ回路で構成されている付記C1に記載の信号伝送装置。
[付記C5]
トラップ回路は、インダクタとコンデンサとの直列共振回路で構成されている付記C4に記載の信号伝送装置。
[付記C6]
インダクタは、複数の配線層にてパターン形成されるとともに、各層のインダクタを電気回路的に並列接続することにより形成されている付記C5に記載の信号伝送装置。
[付記C7]
コンデンサは、インダクタをパターン形成する際の分布容量を利用したものである付記C5に記載の信号伝送装置。
[付記C8]
増幅部は、カスケード接続された2つのトランジスタを有するとともに、自チャネルに周波数選択性を持つように定数が設定されたインダクタを負荷に有する増幅段を具備し、
トラップ回路は、2つのトランジスタのカスケード接続点と基準電位点との間に接続されている付記C4に記載の信号伝送装置。
[付記C9]
増幅部は、増幅段を複数段有しており、
トラップ回路は、1段目の増幅段に設けられている付記C8に記載の信号伝送装置。
[付記C10]
増幅部は、増幅段を複数段有しており、
トラップ回路は、1段目以外の少なくとも1つの増幅段に設けられている付記C8に記載の信号伝送装置。
[付記C11]
増幅部は、増幅段を複数有しており、
トラップ回路は、1段目の増幅段と、1段目以外の少なくとも1つの増幅段のそれぞれに設けられている付記C8に記載の信号伝送装置。
[付記C12]
1段目の増幅段に設けられている利得抑制部と、1段目以外の少なくとも1つの増幅段に設けられているトラップ回路の少なくとも一方には、トラップ回路の選択的な使用を可能にするスイッチが設けられている付記C11に記載の信号伝送装置。
[付記C13]
インダクタは、複数の配線層にてパターン形成されるとともに、各層のインダクタを電気回路的に並列接続することにより形成されている付記C8に記載の信号伝送装置。
[付記C14]
増幅部は、相補型金属酸化膜半導体に形成されている付記C2に記載の信号伝送装置。
[付記C15]
送信処理部と受信処理部との間は導波路で結合されている付記C2に記載の信号伝送装置。
[付記C16]
導波路は、誘電体素材で成る付記C15に記載の信号伝送装置。
[付記C17]
自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する、チャネルの総数が2であって周波数帯を分けて全二重双方向通信を行なう受信回路。
[付記C18]
チャネルの総数が2であって、周波数帯を分けて全二重双方向通信を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
受信処理部は、隣接チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する電子機器。
[付記C19]
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方に対しての利得を抑制する付記C18に記載の電子機器。
[付記C20]
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
下側隣接チャネル用の増幅部に設けられる利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する付記C19に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0223】
1…信号伝送装置、100…第1通信装置、103…半導体チップ、200…第2通信装置、203…半導体チップ、400…ローノイズアンプ、601…トラップ回路、602…トラップ回路、603…トラップ回路、604…トラップ回路、8…電子機器8、308…高周波信号導波路、TX…送信処理部(送信回路)、RX…受信処理部(受信回路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は3以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する信号伝送装置。
【請求項2】
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
下側隣接チャネル用の増幅部に設けられる利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する請求項3に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第2チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第2チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する請求項4に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する請求項4に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する請求項4に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
更に、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項9】
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項8に記載の信号伝送装置。
【請求項10】
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
下側隣接チャネル用の増幅部に設けられる利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する請求項9に記載の信号伝送装置。
【請求項11】
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する請求項10に記載の信号伝送装置。
【請求項12】
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第2チャネルと第3チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する請求項10に記載の信号伝送装置。
【請求項13】
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は2以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する信号伝送装置。
【請求項14】
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項13に記載の信号伝送装置。
【請求項15】
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項14に記載の信号伝送装置。
【請求項16】
利得抑制部は、トラップ回路で構成されている請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項17】
チャネルの総数は3以上である場合において、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する受信回路。
【請求項18】
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する受信回路。
【請求項19】
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は3以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する電子機器。
【請求項20】
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は2以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する電子機器。
【請求項1】
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は3以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する信号伝送装置。
【請求項2】
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
下側隣接チャネル用の増幅部に設けられる利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する請求項3に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第2チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第2チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する請求項4に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する請求項4に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する請求項4に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
更に、何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項9】
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項8に記載の信号伝送装置。
【請求項10】
利得抑制部を有さない場合の増幅部の利得周波数特性は、自チャネルを中心に高域側の方が低域側よりも利得減衰性が劣っており、
下側隣接チャネル用の増幅部に設けられる利得抑制部は、上側隣接チャネルに対しての利得を抑制する請求項9に記載の信号伝送装置。
【請求項11】
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第3チャネルと第1チャネルとの組合せ及び第3チャネルと第2チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する請求項10に記載の信号伝送装置。
【請求項12】
導波路で結合されている第1通信装置と第2通信装置とを備え、
第1通信装置は、第1チャネル用の受信処理部、第2チャネル用の送信処理部、及び、第3チャネル用の送信処理部を有し、
第2通信装置は、第1チャネル用の送信処理部、第2チャネル用の受信処理部、及び、第3チャネル用の受信処理部を有し、
第1チャネルの搬送周波数よりも第2チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、且つ、第2チャネルの搬送周波数よりも第3チャネルの搬送周波数の方が高く設定されており、
第1チャネルと第2チャネルとの組合せ及び第1チャネルと第3チャネルの組合せにて全二重双方向通信が適用可能であり、
第2チャネルと第3チャネルとの組合せにて片方向二重通信が適用可能であり、
第1チャネル用の受信処理部の増幅部は、第2チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有し、
第2チャネル用の受信処理部の増幅部は、第3チャネルに対しての利得を抑制する利得抑制部を有する請求項10に記載の信号伝送装置。
【請求項13】
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は2以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する信号伝送装置。
【請求項14】
受信処理部は、自チャネルに対しての周波数選択性を持ち、且つ、受信した信号を増幅する増幅部を有し、
信号抑制部は、増幅部に設けられた利得抑制部から成り、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
利得抑制部は、自チャネル以外の他チャネルであって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項13に記載の信号伝送装置。
【請求項15】
2つのチャネルの組合せは、相互に隣接チャネルの関係にあり、
利得抑制部は、下側隣接チャネルと上側隣接チャネルの何れか一方であって、利得周波数特性の減衰度合いが不足する方のチャネルに対しての利得を抑制する請求項14に記載の信号伝送装置。
【請求項16】
利得抑制部は、トラップ回路で構成されている請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項17】
チャネルの総数は3以上である場合において、何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する受信回路。
【請求項18】
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する受信回路。
【請求項19】
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は3以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、全二重双方向通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する電子機器。
【請求項20】
周波数帯を分けてマルチチャネル伝送を行なうことを可能に、受信処理部をチャネルごとに備え、
チャネルの総数は2以上であり、
何れか2つのチャネルの組合せの内で、片方向二重通信が適用されるものについて、
受信処理部の何れかは、自チャネル以外の他チャネルの信号成分を抑制する信号抑制部を有する電子機器。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図1】
【図2】
【公開番号】特開2013−38646(P2013−38646A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174068(P2011−174068)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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