説明

信号処理装置

【課題】変調信号の復調を実行する際の消費電力を低減し、かつ実装コストを抑制することが可能な信号処理装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る信号処理装置は、互いにほぼ直交する第1及び第2のリファレンス信号を生成する発振器と、搬送波周波数からベースバンド周波数に変換された変調信号の同相成分を示す第1信号と当該変調信号の直交成分を示す第2信号を入力する入力部と、第1信号と第1リファレンス信号の位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第1位相差信号を出力する第1位相比較器と、第2信号と第2リファレンス信号の位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第2位相差信号を出力する第2位相比較器と、第2位相差信号から第1位相差信号を減算し、合成位相差信号を出力する合成部を備え、合成部から出力された信号を復調信号として出力すると共に、発信器への入力として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変調された変調信号を復調する信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周波数変調された変調信号を位相同期ループ(以下:PLL(Phase Locked Loop))方式を用いて復調する復調装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3には、従来技術に係る復調装置1の一例が示されている。同図に示すように、かかる復調装置1では、周波数変調されたアナログの変調信号が入力されると、ADC(Analog-Digital Converter)11によって、デジタル信号に変換された後、I/Q分離部12によって、同相成分を示す信号(以下、I信号)と直交成分を示す信号(以下、Q信号)とに分離される。また、DDC(Digital Down Converter)13では、分離されたI信号とQ信号とのダウンコンバージョン(低周波数変換)が行われて、I信号とQ信号がベースバンド周波数に変換される。
【0004】
また、DDC13から出力されたI信号及びQ信号は、AGC(Automatic Gain Control)14、ノイズ処理部15を介して、DUC(Digital Up Converter)16に入力される。DUC16では、I信号とQ信号との周波数のアップコンバージョン(高周波数変換)が行われ、I/Q合成部17に入力される。I/Q合成部17では、I信号とQ信号とが、キャリア周波数fを用いて合成される。また、PLL装置18では、位相同期ループ(以下:PLL(Phase Locked Loop))方式により、I/Q合成部17から出力された信号と、キャリア周波数に基づいて生成されたリファレンス信号との位相比較が行われ、位相差成分を示す信号が出力される。
【0005】
なお、上記においてDUC16は、ノイズ処理部15から出力された信号の周波数を、I/Q合成部17の仕様に合う周波数に変換する目的で設けられたものであり、省略されるものであっても良い。
【0006】
次に、図4乃至5を参照して、I/Q合成部17とPLL装置18との構成について具体的に説明する。なお、図4の例では、I信号をcos(δ)とし、Q信号をsin(δ)としている。
【0007】
まず、I/Q合成部17では、乗算器17aが、キャリア周波数fに基づいて生成された信号cos(f)と、I信号cos(δ)とを乗算する。また、乗算器17bが、キャリア周波数fに基づいて生成された信号sin(f)とQ信号sin(δ)とを乗算する。この後、減算器17cは、乗算器17aの出力信号から、乗算器17bの出力信号を減算し、算出された信号cos(f+δ)を出力部17dに出力する。また、出力部17dから出力された信号は、PLL装置18に入力される。
【0008】
PLL装置18は、図5に示すように、入力部110と、位相比較器120と、ループフィルタ130と、NCO(数値制御発振器:Numerical Controlled Oscillator)140と、出力部150とを備える。
【0009】
PLL回路は、基準となる信号の周波数とNCOが出力する信号との位相差を検出して常に一致するように補正する回路である。周波数変調されたFM波は、周波数が変調信号によって絶えず変化している。そこで、PLL回路にFM波を入力すると、PLLのNCOに与える制御電圧が、FM波の周波数変化を電圧の変化(振幅の変化)に変換できることになる。この原理を用いたのがPLL検波回路であり、PLL装置18である。
【0010】
PLL装置18では、入力部110が、I/Q合成部17から、入力信号2×cos(f+δ)を入力する。また、位相比較器120は、入力部110で入力された入力信号2×cos(f+δ)と、当該入力信号がループフィルタ130、NCO140を介して、フィードバックされたリファレンス信号sin(f+α)との位相比較を行って、位相差成分の信号2×sin(f+α)×cos(f+δ)を出力する。なお、位相比較器120から出力された出力信号2×sin(f+α)×cos(f+δ)は、下記(1)式のように示される。
【0011】

2×sin(f+α)×cos(f+δ)
=Sin(2f+α+δ)+Sin(α−δ) ・・・(1)

当該出力信号は、ループフィルタ130によって、高周波成分(第1項)が除去され、位相差成分の信号sin(α―δ)が出力部150から出力される。このようにして、上述した復調装置1では、PLL装置18からの位相差成分の信号が、復調信号として出力される。
【特許文献1】特開2002−151964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した復調装置1では、PLL装置18にキャリア周波数fを用いて変調された高周波数の信号が入力される。よって、PLL装置18では、十分な性能を得るため、処理速度が高速の処理機能(例えば、サンプリング周波数がキャリア周波数fの2倍以上)が必要になり、ハードウエアで動作させる場合、消費電力が大きくなるという問題があった。また、PLL装置をソフトウエアによって構成する場合、高性能の演算処理機能が必要になり、実装時の回路コストが向上してしまうという問題があった。
【0013】
また、本願出願人は、FM受信機の復調回路として用いられるPLL装置を、ALUアレイを用いたリコンフィギュラブル回路(例えば、特開2005−275698号、公報など)によって実現することを検討している。
【0014】
しかしながら、現状、上記のリコンフィギュラブル回路は、PLL装置の実現に必要な高い周波数で動作することができないため、このようなリコンフィギュラブル回路を利用したFM受信機が実現できないという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、PLL方式を用いて復調を実行する際、消費電力を低減し、かつ実装コストを抑制することが可能な信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明ある態様は、周波数変調された信号を復調する信号処理装置に関し、互いにほぼ直交する第1及び第2のリファレンス信号を生成する発振器と、搬送波周波数からベースバンド周波数に変換された変調信号の同相成分を示す第1信号と、当該変調信号の直交成分を示す第2信号を入力する入力部と、前記第1信号と前記第1リファレンス信号の位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第1位相差信号を出力する第1位相比較器と、前記第2信号と前記第2リファレンス信号の位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第2位相差信号を出力する第2位相比較器と、前記第2位相差信号から前記第1位相差信号を減算し、合成位相差信号を出力する合成部を備え、前記合成部から出力された信号を復調信号として出力すると共に、前記発信器への入力として用いることを特徴とする。
【0017】
かかる特徴によれば、信号処理装置では、ベースバンド周波数に周波数変換された第1信号と第2信号とを入力し、第1信号と第2信号とに対して、それぞれ別々にリファレンス信号との位相比較を行う。
【0018】
このように、信号処理装置では、ベースバンド周波数に変換された入力信号に基づいて、位相同期ループ(PLL)方式を用いて復調処理を実行することができるので、信号処理装置に実装する演算処理機能の動作速度を低減できる。よって、信号処理装置では、消費電力を低減し、かつ、実装コストを抑制することができる。
【0019】
なお、上記の信号処理装置においては、前記合成位相差信号の高周波成分を除去するフィルタを更に備え、前記フィルタにより高周波成分が除去された信号を復調信号として出力すると共に、前記発信器への入力として用いるものであっても良い。
【0020】
また、前記発信器は、リコンフィギュラブル回路により実現されるものであっても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明の特徴によれば、PLL方式を用いて復調を実行する際、消費電力を低減し、かつ実装コストを抑制することが可能な信号処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(本発明の実施形態に係る復調装置の構成)
本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。本発明の実施形態に係る復調装置1は、周波数変調(FM変調)された信号を入力し、当該信号に対して復調処理を実行するものである。図1には、本実施形態に係る復調装置1の全体概略構成が示されている。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る復調装置1は、ADC21と、I/Q分離部22と、DDC23と、AGC24と、ノイズ処理部25と、PLL装置26(信号処理装置)とを備える。ADC21は、復調装置1に入力されたアナログの変調信号をデジタル信号に変換する。また、ADC21は、変換後の信号をI/Q分離部22に出力する。
【0024】
I/Q分離部22は、ADC21によって変換されたデジタル信号を入力する。また、I/Q分離部22は、入力したデジタル信号の同相成分を示す信号(以下、I信号)と、入力したデジタル信号の直交成分を示す信号(以下、Q信号)とに分離する。また、I/Q分離部22は、分離したI信号とQ信号とをDDC23に出力する。
【0025】
DDC23は、I/Q分離部22によって分離されたI信号とQ信号とを入力する。また、DDC23は、I信号とQ信号とにダウンコンバージョン(低周波数変換)を行って、I信号とQ信号とを、搬送波周波数からベースバンド周波数(ベースバンド信号)に変換する。例えば、DDC23は、復調装置1への入力信号が音声信号である場合、I信号とQ信号とを数十KHz程度の周波数に変換する。
【0026】
AGC24は、DDC23によってベースバンド周波数に変換されたI信号及びQ信号を入力する。また、AGC24は、入力したI信号及びQ信号の振幅に応じて、I信号及びQ信号のそれぞれにゲイン調整を行い、調整後のI信号及びQ信号をノイズ処理部25に出力する。
【0027】
ノイズ処理部25は、AGC24から出力されたI信号及びQ信号を入力し、ノイズ低減処理等の各種信号処理を行って、処理後のI信号及びQ信号をPLL装置26に出力する。
【0028】
PLL装置26は、ノイズ処理部25から出力されたI信号及びQ信号を入力し、PLL方式による信号処理を実行する。具体的に、PLL装置26は、I信号とQ信号と、リファレンス信号とを比較して、I信号及びQ信号のそれぞれの位相差成分を示す信号を生成する。また、PLL装置26は、生成したI信号とQ信号の位相差成分を合成して、合成位相差成分を示す信号を出力する。なお、PLL装置26の構成については、詳細を後述する。本実施形態において、PLL装置26は、信号処理装置を構成する。
【0029】
また、復調装置1は、上述した機能に加え、PLL装置26からの出力信号を入力し、高周波を遮断するローパスフィルタ(図示せず)等を更に備えていてもよい。
【0030】
(本実施形態に係るPLL装置の構成)
次に、図2を参照し、本実施形態に係るPLL装置26の構成について具体的に説明する。また、以下、本発明との関連がある部分について主に説明する。したがって、PLL装置26は、PLL装置としての機能を実現する上で必須な、図示しない或いは説明を省略した機能ブロック(電源部など)を備える場合があることに留意されたい。
【0031】
図2に示すように、PLL装置26は、入力部211乃至212と、乗算器221乃至222と、減算器230と、ループフィルタ240と、NCO(数値制御発振器)250と、出力部260とを備える。
【0032】
入力部211乃至212は、搬送波周波数からベースバンド周波数に変換されたI信号(第1信号)と、Q信号(第2信号)とをノイズ処理部25から入力する。また、入力部211は、入力したI信号を乗算器221へ出力する。また、入力部212は、入力したQ信号を乗算器222へ出力する。
【0033】
乗算器221は、入力部211からI信号を入力すると共に、NCO250から第1リファレンス信号を入力する。また、乗算器221は、I信号と第1リファレンス信号とを乗算することにより、位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第1位相差信号を減算器230に出力する。なお、第1リファレンス信号については、詳細を後述する。本実施形態において、乗算器221は、第1位相比較器を構成する。
【0034】
乗算器222は、入力部212からQ信号を入力すると共に、NCO250から第2リファレンス信号を入力する。また、乗算器222は、Q信号と第2リファレンス信号とを乗算することにより、位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第2位相差信号を減算器230に出力する。なお、第2リファレンス信号については、詳細を後述する。本実施形態において、乗算器222は、第2位相比較器を構成する。
【0035】
減算器230は、乗算器221から出力された第1位相差信号と、乗算器222から出力された第2位相差信号とを入力する。また、減算器230は、第2位相差信号から第1位相差信号を減算し、算出した信号(合成位相差信号)をループフィルタに出力する。本実施形態において、減算器230は、合成部を構成する。
【0036】
ループフィルタ240は、信号の高周波数成分を除去するローパスフィルタとして機能する。ループフィルタ240は、減算器230から出力された合成位相差信号の高周波成分を除去する。また、ループフィルタ240は、Gain1と、加算器241と、遅延器242と、Gain2とを備える。ループフィルタ240に入力された信号は、Gain1において予め設定されている定数(g1)で乗算され、加算器241に入力される。加算器241には、二つの入力端のそれぞれにGain1とGain2とが接続され、出力端に遅延器242が接続されている。また、加算器241は、Gain1から出力された信号と、遅延器242及びGain2を介してフィードバックされた信号とを加算して、加算後の信号を遅延器242に出力する。なお、Gain2から加算器241に入力される信号は、Gain2において予め設定される定数(g2)によって乗算された信号である。ここで、定数(g2)は、1以下の小数である。なお、定数(g1)と定数(g2)とは、PLL装置26の動作を安定して実行するために予め定められており、定数(g1)+定数(g2)=1になるように設定されている。また、ループフィルタ240において、遅延器242から出力された信号は、NCO250と出力部260とに出力される。
【0037】
NCO250は、アナログ方式のPLL装置における電圧制御発振器(VCO)に相当する。NCO250は、ループフィルタによって高周波成分が除去された合成位相差信号に基づいて、所定周波数のリファレンス信号を生成する。具体的に、NCO250は、減算器230から出力された合成位相差信号をループフィルタ240を介して入力すると共に、入力信号に応じて所定周波数のリファレンス信号を出力する。
【0038】
例えば、NCO250は、起動開始時などの信号が入力されない場合、NCO250からは、いわゆる自走周波数と呼ばれる周波数の信号が出力される。そして、NCO250は、信号が入力されると、初めは同期していないが、次第に周波数が近づいて、同期がとられる。また、NCO250は、ループフィルタ240からの入力信号が、“+”の値の場合、より高い周波数の正弦波信号及び余弦波信号を出力し、入力信号が“−”の値の場合、より低い周波数の正弦波信号及び余弦波信号を出力する。また、NCO250は、ループフィルタ240からの入力信号が“0(ゼロ)”で続いている場合、つまり、PLL装置26において同期状態(ロック状態)が継続している場合、前回出力した周波数のリファレンス信号を繰り返し出力する。なお、NCO250は、本発明の発振器の一例に相当する。
【0039】
以下、NCO250の構成を詳細に説明する。NCO250は、Gain3と、加算器251と、遅延器252と、インデックス生成部253と、ROM(sin)255と、ROM(cos)256とを備える。
【0040】
NCO250に入力された信号は、Gain3において予め設定される定数(g3)で乗算され、加算器251に入力される。ここで、定数(g3)は、例えば、0.75等の小数である。
【0041】
加算器251は、二つの入力端のそれぞれに、Gain3と遅延器252とが接続されている。また、加算器251では、出力端が分岐されており、それぞれがインデックス生成部253と遅延器252とに接続されている。加算器251は、Gain3から出力された信号と、遅延器252を介してフィードバックされた信号とを加算し、加算後の信号をインデックス生成部253と遅延器252とに出力する。このようにして、加算器251は、二つの入力端から入力された信号を累積加算する。
【0042】
インデックス生成部253は、加算器251から出力された信号に基づいて、一周期分(2π)のインデックスアドレスを、ROM(sin)255とROM(cos)256とに出力する。
【0043】
ROM(sin)255は、I信号に対応する第1リファレンス信号を生成して出力する。また、ROM(sin)255は、I信号にほぼ直交する第1リファレンス信号を生成する。具体的に、ROM(sin)255には、正弦波関数の数値が予め記憶されている。また、ROM(sin)255は、インデックス生成部253からのインデックスアドレスに応じて、位相差成分を示す正弦波信号を、第1リファレンス信号として出力する。ROM(sin)255から出力された第1リファレンス信号は、乗算器221に入力される。本実施形態において、ROM(sin)255は、第1発振部を構成する。
【0044】
ROM(cos)256は、Q信号に対応する第2リファレンス信号を生成する。また、ROM(cos)256は、Q信号にほぼ直交する第2リファレンス信号を生成する。具体的に、ROM(cos)256には、余弦波関数の数値が予め記憶されている。また、ROM(cos)256は、インデックス生成部253からのインデックスアドレスに応じて、位相差成分を示す余弦波信号を、第2リファレンス信号として出力する。ROM(cos)256から出力された第2リファレンス信号は、乗算器222に入力される。本実施形態において、ROM(cos)256は、第2発振部を構成する。
【0045】
なお、ROM(sin)255とROM(cos)256とは、同一のROMによって構成されていてもよい。かかる場合、ROMは、インデックス生成部253からのインデックスアドレスに応じて、第1リファレンス信号(正弦波)又は第2リファレンス信号(余弦波)とを出力する。
【0046】
出力部260は、ループフィルタ240から出力された位相差成分の信号を入力し、外部に出力する。また、出力部260から出力される信号が、復調信号となる。なお、実際には、この後、出力部260から出力された信号は、ローパスフィルタ等によって、高周波成分が除去されるが、本実施形態では、かかる説明を省略している。
【0047】
(PLL装置の信号処理)
図2を参照して、PLL装置26の信号処理について、一例を挙げて説明する。なお、ここでは、PLL装置26において、入力部211に入力されるI信号をcos(δ)とし、入力部212に入力されるQ信号をsin(δ)として説明する。また、NCO250において、ROM(sin)255から出力される第1リファレンス信号をsin(α)とし、ROM(cos)256から出力される第2リファレンス信号をcos(α)として説明する。なお、上述した“δ”は、I信号及びQ信号の位相成分を示し、“α”は、第1リファレンス信号sin(α)及び第2リファレンス信号cos(α)の位相成分を示す。また、“δ”と“α”とは、時間(t)に応じて変動する変数である。よって、詳細には“δ(t)”、“α(t)”として示してもよい。
【0048】
PLL装置26では、入力部211が、入力したI信号cos(δ)を、乗算器221に出力する。入力部212が、入力したQ信号sin(δ)を、乗算器222に出力する。
【0049】
乗算器221乃至222では、I信号cos(δ)及びQ信号sin(δ)と、NCO250を介して、フィードバックされた第1リファレンス信号sin(α)及び第2リファレンス信号cos(α)とを入力する。
【0050】
具体的に、乗算器221は、I信号cos(δ)と第1リファレンス信号sin(α)とを入力し、乗算後、第1位相差信号cos(δ)×sin(α)を出力する。また、乗算器222は、Q信号sin(δ)と第2リファレンス信号cos(α)とを入力し、乗算後、第2位相差信号sin(δ)×cos(α)を出力する。
【0051】
減算器230は、第2位相差信号sin(δ)×cos(α)から、第1位相差信号cos(δ)×sin(α)を減算して、算出した合成位相差信号sin(δ)×cos(α)−cos(δ)×sin(α)をループフィルタ240に出力する。また、合成位相差信号は、三角関数の和積公式から、(2)式のように示される。
【0052】

sin(δ)×cos(α)−cos(δ)×sin(α)
=1/2×(sin(δ+α)+sin(δ−α))
−1/2×(sin(δ+α)−sin(δ−α))
=sin(δ−α) ・・・ (2)

また、ループフィルタ240は、合成位相差信号を入力し、高周波成分を遮断した位相差信号sin(δ−α)を、NCO250と出力部260とに出力する。
【0053】
(本実施形態に係るPLL装置の作用・効果)
本実施形態に係る復調装置1によれば、PLL装置26では、ベースバンド周波数に周波数変換されたI信号とQ信号とを入力する。また、PLL装置26では、乗算器221が、I信号と第1リファレンス信号とを乗算(位相比較)して第1位相差信号を出力し、乗算器222が、Q信号と第2リファレンス信号とを乗算(位相比較)して、第2位相差信号を出力する。また、PLL装置26では、減算器230が、第1位相差信号から第2位相差信号を減算(合成)することによって、算出した合成位相差信号を、ループフィルタを介して、外部に出力する。
【0054】
このように、PLL装置26では、ベースバンド周波数(例えば、20KHz)に変換されたI信号及びQ信号(ベースバンド信号)を入力し、位相同期ループ方式により復調処理を実行することができる。よって、従来技術であれば、PLL装置に実装するループフィルタ240やNCO250等において、1.4〜8MHz程度の処理速度が必要であったところを、大きく低減(例えば、350〜700KHz程度に低減)できるので、消費電力を低減し、かつ、演算処理機能の実装コストを抑制することができる。また、本実施形態に係るPLL装置26では、ベースバンド周波数に変換されたI信号及びQ信号を入力して位相ループ方式による復調処理を実行できるので、処理速度を低減していながら、PLL装置26からの出力信号は、従来技術に係るPLL装置と同等の品質を確保することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るPLL装置26は、リコンフィギュラブル回路(リコンフィギュラブルプロセッサ)上でソフトウエアによって構成する場合も有効である。リコンフィギュラブル回路は、例えば、特開2005−275698号公報に開示されるように、ハードウエアを動的に再構成することが可能であり、近年、様々な分野で開発が進められている。
【0056】
このようなリコンフィギュラブル回路によれば、回路の変更が瞬時に可能である。したがって、このリコンフィギュラブル回路による信号処理装置を、あるときはFM受信機として、あるときはAM受信機として、或いはワンセグ受信機として、その他の受信機として、瞬時に切り換えて使用することができるので、これらの全体の機能を実現するための回路規模を小さくすることができる。
【0057】
従来技術に係るPLL装置では、高速の処理機能を必要としていたため、リコンフィギュラブル回路上で構成することが困難であったが、本実施形態に係るPLL装置26によれば、これも可能になる。また、本実施形態に係るPLL装置26は、周波数シンセサイザ、モータの制御回路などの他の装置においても有用である。
【0058】
なお、実施形態の作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。また、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0059】
例えば、上記のループフィルタ240に代えて、通常のローパスフィルタを用いて、本願発明の「フィルタ」を実現し、これにより減算器230から出力された信号の高周波成分を除去しても良い。
【0060】
或いは、減算器230から出力される信号に高周波成分がない場合、或いは復調信号として高周波成分が問題のない大きさである場合、ループフィルタ240、及びローパスフィルタ等のフィルタを省略して、減算器230から出力された信号を、PLL装置18の出力信号、或いは、NCO250への入力信号としても良い。
【0061】
また、上記のNCO250に代えて、VCO(電圧制御発信回路)を用いて、本願発明の「発信器」を実現しても良い。
【0062】
或いは、上記実施形態のPLL装置は、リコンフィギュラブル回路に代えて、DSPにより実現されるものであっても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、本発明の「位相比較器」の例として乗算器(221、222)を挙げたが、乗算器以外の回路を用いて位相比較器を実現しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る復調装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るPLL装置の構成を示す機能図である。
【図3】従来技術に係る復調装置の構成を示す概略構成図である。
【図4】従来技術に係るI/Q合成部の構成を示す構成図である。
【図5】従来技術に係るPLL装置の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0065】
1…復調装置、12…分離部、13…DDC、15…ノイズ処理部、16…DUC、17…合成部、17a…乗算器、17b…乗算器、17c…減算器、17d…出力部、18…PLL装置、21…ADC、22…分離部、23…DDC、24…AGC、25…ノイズ処理部、26…PLL装置、110…入力部、120…位相比較器、130…ループフィルタ、140…NCO、150…出力部、211乃至212…入力部、221乃至222…乗算器、230…減算器、240…ループフィルタ、241…加算器、242…遅延器、250…NCO、251…加算器、252…遅延器、253…インデックス生成部、255…ROM、256…ROM、260…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調された信号を復調する信号処理装置であって、
互いにほぼ直交する第1及び第2のリファレンス信号を生成する発振器と、
搬送波周波数からベースバンド周波数に変換された変調信号の同相成分を示す第1信号と、当該変調信号の直交成分を示す第2信号を入力する入力部と、
前記第1信号と前記第1リファレンス信号の位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第1位相差信号を出力する第1位相比較器と、
前記第2信号と前記第2リファレンス信号の位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第2位相差信号を出力する第2位相比較器と、
前記第2位相差信号から前記第1位相差信号を減算し、合成位相差信号を出力する合成部を備え、
前記合成部から出力された信号を復調信号として出力すると共に、前記発信器への入力として用いる
ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記合成位相差信号の高周波成分を除去するフィルタを更に備え、
前記フィルタにより高周波成分が除去された信号を復調信号として出力すると共に、前記発信器への入力として用いることを特徴とする、請求項1記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記発信器をリコンフィギュラブル回路により実現したことを特徴とする、請求項1又は2に記載の信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−283382(P2008−283382A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124742(P2007−124742)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【復代理人】
【識別番号】100117064
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 市太郎
【Fターム(参考)】