説明

信号機制御システム

【課題】簡単な構成で雷サージから確実に保護するとともに信号機の誤現示を確実に防止する。
【解決手段】各現示灯6a〜6cの現示制御を行う現示制御回路7a〜7cの出力側と、信号機電源3の出力端子CXと信号機2の各現示灯6a〜6cに接続される制御線14dとを接続する電源線16との間に雷サージ保護素子8a〜8cをそれぞれ接続し、制御線14dと接地間に雷サージ保護素子9と放電管10とを直列接続した雷サージ保護手段5を接続して、現示制御回路7a〜7cの出力側に接続された雷サージ保護素子8a〜8cに故障が生じて導通したときに、現示制御を行っている現示灯6を消灯させるとともに他の現示灯6も点灯しない状態にして列車の安全運行が損なわれることを防ぐ。
ことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の電子連動システムにおける信号機制御システム、特に雷サージの保護に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の分野では列車を安全かつ効率的に運行するため、信号機や転てつ機などの相互間で、その取扱いについて一定の順序と制限をつける電子連動システムが開示されている。
【0003】
この電子連動システムにおいて各駅における信号機の現示を制御する信号機制御装置においては、従来、大形の鉄道信号用電磁リレーを使用して信号機の現示制御が行われている。この鉄道信号用電磁リレーは、一般に雷サージ耐量が大きいため雷サージ保護の機能を必要としなかった。
【0004】
近年、鉄道信号分野の制御において電子化が趨勢になり、鉄道信号用電磁リレーに代わって電子回路による制御が行われている。この電子回路は雷サージ耐量が小さいため、特許文献1に示すように、雷サージ保護機能を設けることが必要になった。この雷サージ保護機能を、例えば図2に示すように、進行(G)・注意(Y)・停止(R)の3現示の信号機2と信号機2の現示制御を行う信号機制御装置3aの間に設ける場合、信号機制御装置3aと信号機2間の全ての制御線14a〜14dに例えば酸化亜鉛(ZnO)素子からなる非線形抵抗素子からなる雷サージ保護素子9と放電管10とを直列に接続した雷サージ保護手段5を接続して接地することが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この雷サージ保護手段5a〜5dにおいては、雷サージ保護手段5a〜5dの導通故障時に接地経由の閉回路が構成されて信号機2が不正現示となるおそれがあった。例えば図2において信号機制御装置3aのR現示制御回路7aが導通制御されて信号灯電源トランス4の電源出力BX、CXが制御線14aと制御線14dを通って信号機2のR現示灯6aを点灯してR現示をしている状態で制御線14aと接地E間の雷サージ保護手段5aの雷サージ保護素子9aと放電管10aが故障となって導通し、かつ制御線14bと接地E間の雷サージ保護手段5bの雷サージ保護素子9bと放電管10bが故障となって導通すると、制御線14aと制御線14bが接地E経由で接続され、正規のR現示のほかの信号機2のY現示灯6bが点灯する誤現示になってしまう。また、R現示灯6aの現示回路が断線しているとY現示となる。このため列車の安全運行が損なわれるおそれが発生してしまう。
【0006】
同様なことは、制御線14aと接地E間の雷サージ保護手段5aの雷サージ保護素子9aと放電管10aが故障して導通し、かつ、制御線14cと接地E間の雷サージ保護手段5cの雷サージ保護素子9cと放電管10cが故障して導通すると、正規のR現示のほかの信号機2のG現示灯6cが点灯する誤現示になってしまう。
【0007】
この雷サージ保護手段5a〜5cで複数が同時に故障して導通する機会はほとんど無視できると考えられるが、一方、例えば制御線14aと接地E間の雷サージ保護手段5aが故障により導通した後、時間が経過して制御線14bと接地E間の雷サージ保護手段5bに故障が発生して導通することによる二重導通故障の発生は無視できない。
【0008】
また、一般に、雷サージ保護手段5a〜5dは大形で高価であり、全ての制御線14a〜14dに雷サージ保護手段5a〜5dを接続することは、経済性とともに大きな設置スペースを必要とする問題もある。
【0009】
この発明は、このような問題を解消し、簡単な構成で雷サージから確実に保護するとともに信号機の誤現示を確実に防止することができる信号機制御システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の信号機制御システムは、複数の現示灯を有する信号機と、該信号機の現示制御を行う信号機制御装置及び雷サージ保護手段を有し、前記信号機制御装置は、前記信号機の各現示灯の現示制御を行う複数の現示制御回路と、複数の雷サージ保護素子を有し、複数の現示制御回路の入力側は信号機電源の一方の出力端子に接続され、制御出力側はそれぞれ制御線を介して前記信号機の各現示灯に接続され、前記複数の雷サージ保護素子は、非線形抵抗素子で構成され、前記現示制御回路の制御出力側と、前記信号機電源の他方の出力端子と前記信号機の各現示灯に接続される制御線とを接続する電源線との間に接続され、前記雷サージ保護手段は、非線形抵抗素子で形成された雷サージ素子と放電管の直列接続で構成され、前記電源線が接続された制御線と接地間に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、信号機制御装置の入力側が信号機電源の一方の出力端子に接続され、出力側がそれぞれ制御線を介して信号機の各現示灯に接続されて、各現示灯の現示制御を行う複数の現示制御回路の出力側と、信号機電源の他方の出力端子と信号機の各現示灯に接続される制御線とを接続する電源線との間に非線形抵抗素子で構成された雷サージ保護素子をそれぞれ接続し、電源線が接続された制御線と接地間に非線形抵抗素子で構成された雷サージ保護素子と放電管とを直列接続して構成された雷サージ保護手段を接続したから、信号機の現示灯の現示制御を行っている現示制御回路の出力側に接続された雷サージ保護素子に故障が生じて導通したときに、現示制御を行っている現示灯を消灯させるとともに他の現示灯も点灯しない状態にして列車の安全運行が損なわれることを防ぐことができる。
【0012】
また、雷サージ保護手段の数を最小限にすることにより、雷サージ保護機能の低価格化を実現することができる。
【0013】
さらに、雷サージ保護素子を信号機制御装置に内蔵するから、信号機制御装置を設置するとき雷サージ保護手段だけを信号機制御装置の外部に接続すれば良く、施工を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の信号機制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】従来の信号機制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、この発明の信号機制御システムの構成を示すブロック図である。図に示すように、信号機制御システム1は、信号機2と、信号機2の現示制御を行う信号機制御装置3と、信号機電源トランス4及び雷サージ保護手段5を有する。信号機2は例えば進行(G)・注意(Y)・停止(R)の3現示を示すG現示灯6cとY現示灯6bとR現示灯6aを有する。
【0016】
信号機制御装置3は信号機2のR現示灯6aの現示制御を行うR現示制御回路7aと、Y現示灯6bの現示制御を行うY現示制御回路7bと、G現示灯6cの現示制御を行うG現示制御回路7cと、雷サージ保護素子8a〜8cを有する。R現示制御回路7aとY現示制御回路7b及びG現示制御回路7cは信号機電源トランス4の一方の電源出力BXを入力する入力端子11と各制御出力端子13a〜13cを有する。各制御出力端子13a〜13cは制御線14a〜制御線14cにより信号機2のR現示灯6aとY現示灯6bとG現示灯6cにそれぞれ接続されている。雷サージ保護素子8a〜8cは非線形抵抗素子、例えば酸化亜鉛(ZnO)素子で構成され、R現示制御回路7aとY現示制御回路7b及びG現示制御回路7cの制御出力端子13a〜13cと、信号機制御装置3に設けられ、信号機電源トランス4の他方の出力端子CXに接続される端子12及び信号機2のR現示灯6aとY現示灯6bとG現示灯6cとの間に接続された制御線14dが接続される端子15とを連結した電源線16との間に接続されている。また、雷サージ保護手段5は直列に接続された非線形抵抗素子例えば酸化亜鉛(ZnO)素子である雷サージ保護素子9と放電管10とからなり、制御線14dと接地E間に接続されている。
【0017】
この信号機制御システム1で信号機制御装置3に設けた雷サージ保護素子8a〜8cと雷サージ保護素子9を構成するZnO素子は、印加電圧が低く、非直線現象が起こる前の領域で高抵抗となっており、雷サージが流れた後、印加電圧が低くなると絶縁抵抗が元の高抵抗となって絶縁性を回復して続流を防止することができる。また、制御線14dと接地E間に接続された雷サージ保護手段5を構成する放電管10は雷サージのような高電位ではアーク放電を起こして電流を流し、一度放電が生じると電流を遮断しない限り通電状態のままになる。この雷サージ保護素子8a〜8cと雷サージ保護手段5を直列に接続することにより、雷サージが発生したときに続流の遮断能力と雷サージ流入抑止効果を得ることができる。
【0018】
この信号機制御システム1において、信号機制御装置3のR現示制御回路7aが導通制御されて信号灯電源トランス4の出力BXと出力CXが制御線14aと制御線14dを通って信号機2のR現示灯6aを点灯してR現示をしている状態で、R現示制御回路7aの制御出力端子13aと電源線16の間に接続された雷サージ保護素子8aが故障して導通すると、信号機電源トランス4の電源出力BX,CXがR現示制御回路7aと導通した雷サージ保護素子8aにより短絡される。このためR現示灯6aが消灯し、他のY現示灯6bとG現示灯6cも点灯しない状態になる。この状態は、R現示と同等であるため列車の安全運行が損なわれることを防ぐことができる。
【0019】
この現象は雷サージ保護素子8bと雷サージ保護素子8cが故障して導通した場合でも同様であり、さらに、雷サージ保護素子8a〜8cの複数、例えば雷サージ保護素子8aと雷サージ保護素子8bが故障して導通した場合もR現示灯6aとY現示灯6c及びG現示灯6cのいずれも点灯しないで済む。
【0020】
また、信号機制御装置3のR現示制御回路7aとY現示制御回路7b及びG現示制御回路7cの制御出力端子13a〜13cと電源線16との間に雷サージ保護素子8a〜8cを接続し、制御線14dと接地Eとの間に雷サージ保護手段5を接続することにより、雷サージ保護手段5の使用数を最小限にすることができ、雷サージ保護機能の低価格化を実現することができる。
【0021】
さらに、雷サージ保護素子8a〜8cを信号機制御装置3に内蔵するから、信号機制御装置3を設置するとき雷サージ保護手段5だけを外部で接続すれば良く、施工を容易に行なうことができる。
【符号の説明】
【0022】
1;信号機制御システム、2;信号機、3;信号機制御装置、
4;信号機電源トランス、5;雷サージ保護手段、6現示灯、7;現示制御回路、
8,9;雷サージ保護素子、10;放電管、14;制御線。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2003−165440号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の現示灯を有する信号機と、該信号機の現示制御を行う信号機制御装置及び雷サージ保護手段を有し、
前記信号機制御装置は、前記信号機の各現示灯の現示制御を行う複数の現示制御回路と、複数の雷サージ保護素子を有し、複数の現示制御回路の入力側は信号機電源の一方の出力端子に接続され、制御出力側はそれぞれ制御線を介して前記信号機の各現示灯に接続され、前記複数の雷サージ保護素子は非線形抵抗素子で構成され、前記現示制御回路の制御出力側と、前記信号機電源の他方の出力端子と前記信号機の各現示灯に接続される制御線とを接続する電源線との間に接続され、
前記雷サージ保護手段は、非線形抵抗素子で形成された雷サージ素子と放電管の直列接続で構成され、前記電源線が接続された制御線と接地間に接続されていることを特徴とする信号機制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−234927(P2010−234927A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83928(P2009−83928)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】