説明

修飾されたフッ化ヌクレオシド類似体

開示された発明は、(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを使用して、動物、特にヒトを含む宿主におけるC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、及びライノウイルス感染を含むフラビウイルス科ウイルス感染を治療するための組成物と方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
この出願は、合衆国を除く全指定国に対する出願人として合衆国に所在するファーマセット・リミテッド名義でPCT国際特許出願として2004年4月21日に出願されたものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、天然のβ-D立体配置を有する(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシドとフラビウイルス科ウイルス感染、特にC型肝炎ウイルス(HCV)の治療方法を含む。
【0003】
(発明の背景)
C型肝炎ウイルス(HCV)感染は、世界の人口の2−15%であると推定される相当数の感染した個人において、肝硬変及び肝臓癌のような慢性肝臓病に至る主要な健康問題である。合衆国疾病管理センターによれば、合衆国においてだけで推定450万人の感染者が存在している。世界保健機関によれば、世界中では2億人を越える感染個体が存在しており、少なくとも3ないし4百万の人々が毎年感染している。ひとたび感染すると、約20%の人々はウイルスを排除するが、残りは残りの人生の間HCVに感染したままになる可能性がある。慢性感染した個体の10から20%が最終的に肝臓を破壊する肝硬変又は癌を発病する。ウイルス疾患は汚染した血液及び血液製品によって非経口的に、又は性的にかつ感染した母又はキャリアである母からその子孫へ垂直に感染する。HCV感染に対する現在の治療法は、組換えインターフェロンαを単独に又はヌクレオシド類似体のリバビリンとの併用で用いる免疫療法に限られており、耐性が急速に発達するので臨床的効果が限られている。更に、HCVには確立されたワクチンはない。従って、慢性HCV感染に効果的に抗する改良された治療剤に対して緊急の必要性が存在している。
【0004】
HCVビリオンは約3010のアミノ酸のポリタンパク質をコードする約9600の塩基の単一のオリゴリボヌクレオチドゲノム配列を有するエンベロープ型プラス鎖RNAウイルスである。HCV遺伝子のタンパク産物は構造タンパク質C、E1、及びE2、及び非構造タンパク質NS2、NS3、NS4A及びNS4B、及びNS5A及びNS5Bからなる。非構造(NS)タンパク質はウイルス複製に対する触媒機構を提供すると思われている。NS3プロテアーゼは、ポリタンパク質鎖からRNA-依存性RNAポリメラーゼであるNS5Bを放出する。HCV NS5Bポリメラーゼは、HCVの複製サイクルにおいて鋳型となる一本鎖ウイルスRNAから二本鎖RNAを合成するのに必要とされる。従って、NS5BポリメラーゼはHCV複製複合体における必須成分であると考えられる(K. Ishi等, "Expression of Hepatitis C Virus NS5B Protein: Characterization of Its RNA Polymerase Activity and RNA Binding," Heptology, 29: 1227-1235 (1999);V. Lohmann等, "Biochemical and Kinetic Analysis of NS5B RNA-Dependent RNA Polymerase of hte Hepatitis C Virus," Virology, 249: 108-118 (1998))。HCV NS5Bポリメラーゼの阻害は二本鎖HCV RNAの形成を防止し、よってHCV特異的抗ウイルス治療法の開発に対する魅力的なアプローチ法を構成する。
HCVは多くの共通の特徴を共有する更に大きなウイルスファミリーに属している。
【0005】
フラビウイルス科(Flaviviridae)ウイルス
フラビウイルス科ウイルスは少なくとも3種の相異なる属を含む:ウシ及びブタに疾患を引き起こすペスチウイルス属(pestiviruses);デング熱及び黄熱病のような疾患の主要原因であるフラビウイルス属(flaviviruses);及びHCVが唯一のメンバーであるヘパシウイルス属(hepaciviruses)である。フラビウイルス属には、血清学的関連性を基にしてグループ分けされた68を越えるメンバーが含まれる(Calisher等, J. Gen. Virol, 1993, 70, 37-43)。臨床的徴候は様々であり、発熱、脳炎及び出血熱を含む(Fields Virology, Editors: Fields, B. N. , Knipe, D. M. ,及びHowley, P. M. , Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, PA, 1996, Chapter 31,931-959)。ヒトの疾患に関連している世界的に懸念があるフラビウイルス属には、デング出血熱ウイルス(DHF)、黄熱病ウイルス、ショック症候群及び西ナイルウイルスが含まれる(Halstead, S. B., Rev. Infect.Dis., 1984,6, 251-264; Halstead, S. B., Science, 239: 476-481,1988 ; Monath, T. P., NewEng J. Med., 1988,319, 641-643)。
【0006】
ペスチウイルス属にはウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ブタコレラウイルス(雄豚コレラウイルスとの呼ばれる)及びヒツジのボーダー病ウイルス(BDV)(Moennig, V.等 Adv. Vir. Res. 1992, 41, 53-98)。家畜(ウシ、ブタ及びヒツジ)のペスチウイルス属ウイルス感染は大きな経済的損失を世界的に引き起こす。BVDVはウシに粘膜疾患を引き起こし、家畜業にとって経済的に重大である(Meyers, G.及びThiel, H.-J., Advances in Virus Research, 1996, 47, 53-118; Moennig V.等, Adv. Vir. Res. 1992, 41, 53-98)。ヒトのペスチウイルスは動物のペスチウイルスとしては大々的には特徴付けされていない。しかし、血清学的調査はヒトにおけるかなりのペスチウイル暴露を示している。
【0007】
ペスチウイルス属及びヘパシウイルス属ウイルスはフラビウイルス科内で密接に関連したウイルス群である。この科における他の密接に関連したウイルスには、GBウイルスA、GBウイルスA様剤、GBウイルス-B及びGBウイルス-C(G型肝炎ウイルス、HGVとも呼ばれる)。ヘパシウイルス属ウイルス群(C型肝炎ウイルス;HCV)はヒトに感染する多くの密接に関連しているが遺伝子型は区別されるウイルスからなる。およそ6のHCV遺伝子型と50を越えるサブタイプが存在する。HCVは世界的に肝炎の主要な原因である。殆どのHCV感染は持続性であり、症例の約75%は慢性の肝疾患に進行する。慢性HCV感染は肝硬変、肝細胞癌及び肝不全の進行に至りうる。ペスチウイルス属とヘパシウイルス属の間の類似性のため、細胞培養でヘパシウイルス属が効率的に増殖する能力に乏しいことに相俟って、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)がしばしばHCVウイルスを研究するための代用として使用される。
【0008】
ペスチウイルス属及びヘパシウイルス属ウイルスの遺伝子的組織は非常に類似している。これらの正方向鎖RNAウイルスはウイルス複製に必要な全てのウイルスタンパク質をコードする単一の大きなオープンリーディングフレーム(ORF)を有している。これらのタンパク質は成熟ウイルスタンパク質を生じるために細胞性及びウイルスコードプロテイナーゼの双方によって翻訳と同時に及び翻訳後にプロセシングを受けるポリタンパク質として発現される。ウイルスゲノムRNAの複製の原因であるウイルスタンパク質はORFのカルボキシ末端のおよそ2/3内に位置しており、非構造(NS)タンパク質と呼ばれる。ペスチウイルス属及びヘパシウイルス属ウイルスの遺伝子的組織及びORFの非構造タンパク質部分のポリタンパク質プロセシングは非常に類似している。ペスチウイルス属及びヘパシウイルス属ウイルスの双方に対して、成熟非構造(NS)タンパク質は、非構造タンパク質コード領域のアミノ末端からORFのカルボキシ末端への逐次的順序で、p7、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、及びNS5Bからなる。
【0009】
ペスチウイルス属及びヘパシウイルス属ウイルスのNSタンパク質は特定のタンパク質機能に特徴的である配列ドメインを共有している。例えば、双方の群のウイルスのNS3タンパク質はセリンプロテイナーゼ及びヘリカーゼに特徴的なアミノ酸配列モチーフを有している(Gorbalenya等(1988) Nature 333: 22; Bazan及びFletterick (1989) Virology 171: 637-639;Gorbalenya等(1989) Nucleic Acid Res. 17.3889-3897)。同様に、ペスチウイルス属及びヘパシウイルス属ウイルスのNS5Bタンパク質はRNA特異的RNAポリメラーゼの特徴であるモチーフを持っている(Koonin, E. V.及びDolja, V. V. (1993) Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol. 28: 375-430)。
【0010】
ウイルスの生活環におけるペスチウイルス属及びヘパシウイルス属ウイルスのNSタンパク質の実際の役割と機能は直接的に類似している。双方の場合、NS3セリンプロテイナーゼがORF中のその位置の下流のポリタンパク質前駆体の全てのタンパク質分解プロセシングの原因である(Wiskerchen及びCollett (1991) Virology 184: 341-350; Bartenschlager等 (1993) J. Virol. 67: 3835-3844; Eckart等(1993) Biochem. Biophys. Res. Comm. 192: 399-406; Grakoui等(1993) J. Virol. 67: 2832-2843; Grakoui等(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10583-10587; Hijikata等(1993) J. Virol. 67: 4665-4675; Tome等(1993) J. Virol. 67:4017-4026)。双方の場合、NS4Aタンパク質はNS3セリンプロテアーゼと共にコファクターとして作用する(Bartenschlager等(1994) J. Virol. 68: 5045-5055; Failla等(1994) J. Virol. 68: 3753-3760; Lin等(1994) 68: 8147-8157; Xu等(1997) J. Virol. 71: 5312-5322)。両方のウイルスのNS3タンパク質はまたヘリカーゼとして機能する(Kim等(1995) Biochem. Biophys. Res. Comm. 215: 160-166; Jin及びPeterson (1995) Arch. Biochem. Biophys. 323: 47-53; Warrener及びCollett (1995) J. Virol. 69: 1720-1726)。最後に、ペスチウイルス属及びヘパシウイルス属ウイルスのNS5Bタンパク質は予想されたRNA-特異的RNAポリメラーゼ活性を有している(Behrens等(1996) EMBO J. 15: 12-22; Lachmannet等(1997) J. Virol. 71: 8416-8428; Yuan等(1997) Biochem. Biophys. Res. Comm. 232: 231-235;Hagedom, 国際公開第97/12033号; Zhong等(1998) J. Virol. 72.9365-9369)。
【0011】
インターフェロンでのHCV感染の治療
インターフェロン(IFNs)は、ほぼ10年間にわたって慢性肝炎の治療に商業的に利用されている化合物である。IFNsはウイルス感染に応答して免疫細胞によって産生される糖タンパク質である。IFNsは、HCVを含む多くのウイルスのウイルス複製を阻害し、C型肝炎感染の単独治療として使用する場合、IFNが血清HCV-RNAを検出できないレベルまで抑制する。また、IFNは血清アミノトランスフェラーゼレベルを正常化する。不幸にも、IFNの効果は一時的であり、持続性の応答はHCVに慢性的に感染した患者の8%−9%のみで生じる(Gary L. Davis. Gastroenterology 18:S104-S114, 2000)。しかしながら、殆どの患者は、深刻なインフルエンザに似た徴候、体重減少、及びエネルギーとスタミナの欠如を生じるインターフェロンでの治療に耐えるのが難しい。
【0012】
多くの特許がインターフェロンベースの治療法を使用するHCVを含むフラビウイルス科ウイルス治療法を開示している。例えば、Blatt等の米国特許第5980884号は、コンセンサスインターフェロンを使用して、HCVに冒された患者の再治療法を開示している。Bazer等の米国特許第5942223号はヒツジ又はウシインターフェロン-τを使用する抗HCV療法を開示している。Alber等の米国特許第5928636号はHCVを含む感染性疾患の治療のためのインターロイキン-12及びインターフェロンαの併用療法を開示している。Chretien等の米国特許第5849696号はHCVを治療するための単独又はインターフェロンとの併用でのサイモシンの使用を開示している。Valtuena等の米国特許第5830455号はインターフェロンとフリーラジカルスカベンジャーを用いる併用HCV療法を開示している。Imakawaの米国特許第5738845号はHCVを治療するためのヒトインターフェロンτタンパク質の使用を開示している。HCVの他のインターフェロンベースの治療法はTesta等の米国特許第5676942号、Blatt等の米国特許第5372808号及び米国特許第5849696号に開示されている。ホフマン-ラ・ロシュの米国特許第5747646号、第5792834号及び第5834594号;EnzonのPCT公開番号第WO99/32139号及び第WO99/32140号;Scheringの第WO95/13090号及び米国特許第5738846号及び第5711944号;及びGlue等の米国特許第5908621号のように、多くの特許がまたインターフェロンのペグ化型を開示している。
【0013】
インターフェロンα-2aとインターフェロンα-2bがHCV治療の単一療法に現在承認されている。ロフェロン(登録商標)-A(Roferon-A)(ロシュ)はインターフェロンα-2aの組換え型である。PEGASYS(登録商標)(ロシュ)はインターフェロンα-2aのペグ化(つまりポリエチレングリコール修飾)型である。イントロン(INTRON)(登録商標)A(シェリング・コーポレーション)はインターフェロンα-2bの組換え型であり、PEG-イントロン(登録商標)(シェリング・コーポレーション)はインターフェロンα-2bのペグ化型である。
【0014】
インターフェロンαの他の形態、並びにインターフェロンβ、γ、τ及びωはHCVの治療のために、現在、臨床展開中である。例えば、InterMuneのINFERGEN(インターフェロン・アルファコン-1)、ViragenのOMNIFERON(天然インターフェロン)、ヒューマン・ゲノム・サイエンスのALBUFERON、Ares-SeronoのREBIF(インターフェロンβ-1a)、バイオメディスンのオメガインターフェロン、アマリロ(Amarillo)バイオサイエンスの経口インターフェロン・アルファ、及びInterMuneのインターフェロンγ-1bが開発中である。
【0015】
リバビリン
リバビリン(l-β-D-リボフラノシル-1-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)は、商品名ビラゾール(Virazole)(The Merck Index,11版,Budavari, S.編, Merck & Co. , Inc. , Rahway, NJ, p1304, 1989)で販売されている合成の非インターフェロン誘導性広域スペクトル抗ウイルスヌクレオシド類似体である。米国特許第3798209号及び再発行特許第29835号(ICN Pharmaceuticals)はリバビリンを開示しクレームしている。リバビリンはグアノシンに構造的に類似し、フラビウイルス科を含む幾つかのDNA及びRNAウイルスに対してインビトロ活性を有している(Gary L. Davis.Gastroenterology118 :S104-S114, 2000)。
リバビリンは40%の患者において血清アミノトランスフェラーゼレベルを正常値まで低減させるが、HCV-RNAの血清レベルは低下させない(Gary L. Davis, 2000)。よって、リバビリン単独ではウイルスRNAレベルを低減するのに効果がない。また、リバビリンはかなりの毒性を持っており、貧血を誘導することが知られている。リバビリンはHCVに対する単一療法には承認されていない。それはHCVの治療に対してはインターフェロンα-2a又はインターフェロンα-2bとの併用で承認されている。
リバビリンはHCVレプリコン系において特異的な抗HCV活性を有していない既知のイノシンモノホスフェートデヒドロゲナーゼ阻害剤である(Stuyver等, Journal of Virology, 2003, 77, 10689-10694)。
【0016】
インターフェロンとリバビリンの併用
慢性C型肝炎の現在の標準的ケアはαインターフェロンとリバビリンの併用療法である。HCV感染の治療のためのインターフェロンとリバビリンの併用はインターフェロン未処置の患者の治療(Battaglia, A. M.等, Ann. Pharmacother. 34: 487-494, 2000)、並びに組織学的疾患が存在する患者の治療に(Berenguer, M.等Antivir.Ther. 3 (Suppl. 3): 125-136, 1998)に効果があることが報告されている。研究は、C型肝炎のより多くの患者が未ペグ化インターフェロンαでの併用療法よりもペグ化インターフェロン-α/リバビリン併用療法に応答することを示している。しかし、単剤療法の場合のように、併用療法の間、溶血、インフルエンザ様徴候、貧血、及び疲労を含むかなりの副作用が生じる(Gary L. Davis. Gastroenterology 118:S104-S114, 2000)。PEG-イントロン(登録商標)(ペグインターフェロンα-2b)及びレベトール(REBETOL)(登録商標)(リバビリン、USP)カプセルでの併用療法剤はシェリング社から入手できる。レベトール(シェリング社)はまたイントロン(登録商標)A(インターフェロンα-2b、組み換体、シェリング社)との併用で承認されている。ロシェのPEGASYS(登録商標)(ペグ化インターフェロンα-2a)とCOPEGUS(リバビリン)はまたHCVの治療に承認されている。
シェリング社のPCT公開番号WO99/59621、WO00/37110、WO01/81359、WO02/32414及びWO03/024461はHCVの治療のためのペグ化インターフェロンαとリバビリンの組み合わせの使用を開示している。ホフマンラロシュ社のPCT公開番号WO99/15194、WO99/64016、及びWO00/24355もまたHCVの治療のためのペグ化インターフェロンαとリバビリンの組み合わせの使用を開示している。
【0017】
フラビウイルス感染を治療するための更なる方法
フラビウイルス感染、特にC型肝炎のための新規な抗ウイルス剤の開発が現在進行中である。HCV由来酵素の特異的阻害剤、例えばプロテアーゼ、ヘリカーゼ及びポリメラーゼ阻害剤が開発中である。HCV複製の他の段階を阻害する薬剤もまた開発中で、例えば、RNAからのHCV抗原の生産を阻害する薬剤(IRES阻害剤)、HCVタンパク質の正常なプロセシングを防止する薬剤(グリコシル化阻害剤)、細胞へのHCVの侵入を防止する薬剤(そのレセプターのブロックによる)及びウイルス感染によって引き起こされる細胞損傷を阻止する非特異的細胞保護剤である。更に、C型肝炎を治療するために分子アプローチ法がまた進行中であり、例えば、特異的ウイルスRNA分子を破壊する酵素であるリボザイム、ウイルスRNAに結合しウイルス複製を阻害するDNAの小相補的セグメントであるアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び研究中であるRNA干渉技術である(Bymock等 Antiviral Chemistry & Chemotherapy, 11: 2; 79-95 (2000);De Francesco等 Antiviral Research, 58: 1-16 (2003);及びKronke等 J ; Virol., 78: 3436-3446 (2004)。
【0018】
ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)はフラビウイルス科に属するペスチウイルスであり、潜在的な抗ウイルス剤のインビトロ試験のための代理に使用されている。BVDVに対する活性が他のフラビウイルス類に対しての活性を示唆しているが、化合物がBVDVに対しては不活性であるが他のフラビウイルスに対しては活性があることがしばしばある。Sommadossi及びLa Collaは、2'の「アップ」位置にメチル基を含むリボヌクレオシドがBVDVに対して活性を有していることを明らかにした("Methods and compositions for treating flaviviruses and pestiviruses", PCT WO01/92282)。しかし、これらの化合物が、細胞培養において又はHCV NS5BレベルでHCVを含む、他のフラビウイルスを阻害し得るかどうかは不明である。興味深いことに、この公報は2'-メチル-2'-X-リボヌクレオシド(ここで、Xはハロゲンである)である多数の化合物を開示しているが、フッ素は考慮されていない。更に、2'の「ダウン」位置がハロゲン化したヌクレオシドを生じる合成経路はこれらの発明者によっては示されていない。
【0019】
デングウイルス(DENV)はデング出血性熱(DHF)の原因物質である。世界保健機関(WHO)によれば、世界の人口の2/5が今このウイルスへの感染のリスクがある。推定500000症例のDHFが毎年入院を必要とし、子供の死亡率は5%である。
西ナイルウイルス(WNV)は、熱帯地域にのみ存在することがこれまで知られているフラビウイルスであり、近年欧州と北米の温暖地域に出現し、公衆衛生に脅威をもたらしている。WNV感染の最も深刻な症状はヒトにおける致死的な脳炎である。ニューヨーク市における発生と合衆国南部における散発的発生が1999年以降に報告されている。
現在のところ、HCV、デングウイルス(DENV)又は西ナイルウイルス感染の予防的治療法は存在しない。現在承認されている値用法はHCVに対してのみ存在し、限られている。C型肝炎フラビウイルスに対して活性があると同定されている抗ウイルス剤の例には次のものが含まれる:
【0020】
1)プロテアーゼ阻害剤:
アルファケトアミド及びヒドラジノ尿素を含む、基質ベースのNS3プロテアーゼ阻害剤(Attwood等, PCT WO 98/22496, 1998;Attwood等, Antiviral Chemistry and Chemotherapy 1999,10, 259-273;Attwood等, Preparation and use of amino acid derivatives as anti-viral agents, German Patent Pub. DE 19914474;Tung等 Inhibitors of serine proteases, particularly hepatitis C virus NS3 protease, PCT WO 98/17679)と、ボロン酸又はホスホネートのような求電子物質で終了する阻害剤(Llinas-Brunet等, Hepatitis C inhibitor peptide analogues, PCT WO 99/07734)が研究されている。
RD3-4082及びRD-3-4078を含む、非基質ベースのNS3プロテアーゼ阻害剤、例えば2,4,6-トリヒドロキシ-3-ニトロ-ベンズアミド誘導体(Sudo K.等, Biochemical and Biophysical Research Communications, 1997,238, 643-647;Sudo K.等 Antiviral Chemistry and Chemotherapy, 1998, 9, 186)で、前者はアミドに14炭素鎖が置換され、後者はパラ-フェノキシフェニル基を有するものがまた研究されている。
SCH68631、つまりフェナントレンキノンはHCVプロテアーゼ阻害剤である(Chu M.等, Tetrahedron Letters, 3 7, 7229-7232, 1996)。同じ著者の他の例では、真菌アオカビ属グリスコフラウム(griscofulvum)から単離されたSCH351633は、プロテアーゼ阻害剤として同定された(Chu M.等, Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 9, 1949-1952)。HCV NS3プロテアーゼ酵素に対するナノモル強度は巨大分子エグリンc(eglin c)に基づく選択的阻害剤の設計によって達成された。ヒルから単離されたエグリンcは、例えばS.グリセウスプロテアーゼA及びB、α-キモトリプシン、チマーゼ及びサブチリシンのような幾つかのセリンプロテアーゼの強力な阻害剤である(Qasim M. A.等, Biochemistry 36: 1598-1607, 1997)。
【0021】
幾つかの米国特許がHCV治療のプロテアーゼ阻害剤を開示している。例えば、Spruce等の米国特許第6004933号はHCVエンドペプチダーゼ2を阻害するためのシステインプロテアーゼ阻害剤の一クラスを開示している。Zhang等の米国特許第5990276号はC型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼの合成阻害剤を開示している。その阻害剤はNS3プロテアーゼの基質又はNS4A補因子の基質の部分列である。HCVを治療するための制限酵素の使用はReyes等の米国特許第5538865号に開示されている。HCVのNS3セリンプロテアーゼ阻害剤としてのペプチドはCorvas International, Inc.の国際公開第02/008251号及びシェリング・コーポレーションの国際公開第02/08187号及び国際公開02/008256号に開示されている。HCV阻害剤トリペプチドはベーリンガー・インゲルハイムの米国特許第6534523号、第6410531号及び第6420380号及びブリストル・マイヤーズ・スクイブの国際公開第02/060926号に開示されている。HCVのNS3セリンプロテアーゼ阻害剤としてのジアリールペプチドは、シェリング・コーポレーションの国際公開第02/48172号に開示されている。HCVのNS3セリンプロテアーゼ阻害剤としてのイミダゾールイジノン(imidazoleidinones)はシェリング・コーポレーションの国際公開第02/08198号及びブリストル・マイヤーズ・スクイブの国際公開第02/48116号に開示されている。ベルテックス・ファーマシューティカルズの国際公開第98/17679号及びブリストル・マイヤーズ・スクイブの国際公開第02/48116号はまたHCVプロテアーゼ阻害剤をまた開示している。
【0022】
2)NS3/4A融合タンパク質及びNS5A/5B基質と逆相HPLCアッセイにおいて関連した阻害を示すチアゾリジン誘導体(例えばSudo K.等, Antiviral Research, 1996,32,9-18)、特に長鎖アルキル鎖が置換された縮合シンナモイル部位を有する化合物RD-1-6250、RD46205及びRD46193;
3)Kakiuchi N.等 J. EBS Letters 421, 217-220;及びTakeshita N.等 Analytical Biochemistry, 1997, 247, 242- 246において同定されたチアゾリジンとベンザニリド;
4)ストレプトマイセス属sp.の発酵培養ブロスから単離されたSDS-PAGE及びオートラジオグラフィーアッセイでのプロテアーゼに対する活性を有するフェナントレンキノン、例えばSch68631(Chu M.等, Tetrahedron Letters, 1996, 37, 7229-7232)、及び真菌アオカビ属グリスコフラウム(griscofulvum)から単離されたSch351633で、これはシンチレーション近接アッセイにおける活性を証明する(Chu M.等, Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 9, 1949-1952);
5)ヘリカーゼ阻害剤(例えばDiana G. D.等, Compounds, compositions and methods for treatment of hepatitis C, 米国特許第5633358号;Diana G. D.等, Piperidine derivatives, pharmaceutical compositions thereof and their use in the treatment of hepatitis C, PCT WO 97/36554);
【0023】
6)ヌクレオチドポリメラーゼ阻害剤及びグリオトキシン(gliotoxin)(Ferrari R.等 Journal of Virology, 1999,73, 1649-1654)、及び天然産物セルレニン(Lohmann V.等, Virology, 1998, 249, 108-118);
7)ウイルスの5'非コード領域(NCR)中の配列伸展に相補的なアンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(S-ODN)(Alt M.等, Hepatology, 1995, 22, 707-717)、又はNCRの3'端を含むヌクレオチド326−348及びHCV RNAのコアコード領域に位置するヌクレオチド371−388(Alt M.等, Archives of Virology, 1997, 142, 589-599;Galderisi U.等, Journal of Cellular Physiology, 1999, 181, 251-257)。
8)IRES依存性翻訳の阻害剤(Ikeda N等, Agent for the prevention and treatment of hepatitis C, Japanese Patent Pub. JP-08268890;Kai Y.等 Prevention and treatment of viral diseases, Japanese Patent Pub.JP-10101591)。
9)リボザイム、例えば、ヌクレアーゼ耐性リボザイム(例えばMaccjak, D. J.等, Hepatology 1999,30, abstract 995)及びBarber等の米国特許第6043077号及びDraper等の米国特許第5869253号及び第5610054号に開示されたもの;
10)ヌクレオシドアナログ(類似体)がまたフラビウイルス科ウイルス感染の治療に開発されている。
【0024】
Idenix Pharmaceuticals社は、国際公開公報国際公開第01/90121号及び国際公開第01/922282号おいて分枝ヌクレオシドとHCV及びフラビウイルス属及びペスチウイル属の治療におけるその使用を開示している。特に、場合によっては薬学的に許容可能な担体中に入れて、単独で又は併用して投与される有効量の生物活性な1',2',3'又は4'-分枝β-D又はβ-Lヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを投与することを含むヒト及び他の宿主動物におけるC型肝炎感染(及びフラビウイルス属及びペスチウイル属)の治療方法はIdenixの公報に開示されている。
2004年1月8日に公開されたIdenixの国際公開第2004/002422号はフラビウイルス感染の治療のための2'-メチルヌクレオシドのファミリーを開示している。2004年1月8日に公開されたIdenixの国際公開第2004/002999号はHCV感染を含むフラビウイルス感染の治療のための1',2',3',又は4'分枝ヌクレオシドの一連の2'又は3'プロドラッグを開示している。
【0025】
C型肝炎ウイルスを治療するためのある種のヌクレオシドアナログの使用を開示する他の特許出願には次のものが含まれる:BioChem Pharma, Inc.(今はShire Biochem, Inc.)出願のPCT/CA00/01316(WO01/32153;2000年11月3日出願)及びPCT/CA01/00197(WO01/60315;2001年2月19日出願);メルク社出願のPCT/US02/01531(WO02/057425;2002年1月18日出願)及びPCT/US02/03086(WO02/057287;2002年1月18日出願);ロシュ出願のPCT/EP0T/09633(WO02/18404;2001年8月21日公開)、及びファーマセット社のPCT公開公報WO01/79246(2001年4月13日出願)、WO02/32920(2001年10月18日出願)及びWO02/48165。
メルク社のWO2004/007512はRNA依存性RNAウイルスポリメラーゼの阻害剤として開示された多くのヌクレオシド化合物を開示している。この刊行物に開示されたヌクレオシドは主に2'-メチル-2'-ヒドロキシ置換ヌクレオシドである。2002年7月25日に公開されたメルク社のWO02/057287は2'-メチル-2'-ヒドロキシ置換体のピリミジン誘導体ヌクレオシドの大きな属を開示している。メルク社のWO2004/009020はRNA依存性RNAウイルスポリメラーゼの阻害剤として一連のチオヌクレオシド誘導体を開示している。メルク等のWO03/105770はHCV感染の治療に有用な一連の炭素環ヌクレオシド誘導体を開示している。
【0026】
「2'-フルオロヌクレオシド」と題されたエモリー大学のPCT公開公報WO99/43691はHCVを治療するためのある種の2'-フルオロヌクレオシドの使用を開示している。「2'-フルオロヌクレオシド」と題されたエモリー大学の米国特許第6348587号はB型肝炎、HCV、HIV及び異常細胞増殖を治療するのに有用な2'-フルオロヌクレオシドのファミリーを開示している。2'置換は「アップ」又は「ダウン」の何れかの位置に開示されている。
Eldrup等(Oral Session V, Hepatitis C Virus, Flaviviridae; 16回 International Conference on Antiviral Research (April 27, 2003, Savannah, Ga.))はHCVの阻害のための2'修飾ヌクレオシドの構造活性関係を記載している。
Bhat等(Oral Session V, Hepatitis C Virus, Flaviviridae;16回 International Conference on Antiviral Research (April 27,2003, Savannah, Ga.); p A75)は、HCV RNA複製の可能な阻害剤としてのヌクレオシド類似体の合成と薬物動態学的性質を記述している。著者は2'-修飾ヌクレオシドが細胞ベースのレプリコンアッセイにおいて強力な阻害活性を示すことを報告している。
Olsen等(Oral Session V, Hepatitis C Virus, Flaviviridae;16回International Conference on Antiviral Research (April 27, 2003, Savannah, Ga.) p A76)はまたHCV RNA複製に対する2'修飾ヌクレオシドの効果を記述している。
【0027】
11)1-アミノ-アルキルシクロヘキサン(Gold等の米国特許第6034134号)、アルキル脂質(Chojkier等の米国特許第5922757号)、ビタミンE及び他の抗酸化剤(Chojkier等の米国特許第5922757号)、スクアレン、アマンタジン、胆汁酸(Ozeki等の米国特許第5846964号)、N-(ホスホノアセチル)-L-アスパラギン酸(Diana等の米国特許第5830905号)、ベンゼンジカルボキサミド(Diana等の米国特許第5633388号)、ポリアデニル酸誘導体(Wang等の米国特許第5496546号)、2',3'-ジデオキシイノシン(Yarchoan等の米国特許第5026687号)、ベンズイミダゾール(Colacino等の米国特許第5891874号)、植物抽出物(Tsai等の米国特許第5837257号、Omer等の米国特許第5725859号、及び米国特許第6056961号)、及びピペリデン類(Diana等の米国特許第5830905号)を含むその他の化合物。
【0028】
12)C型肝炎ウイルスの治療のための臨床前又は臨床段階に現在ある他の化合物には次のものを含む:シェリング-プラウのインターロイキン-10、インターニューロンのIP-501、ヴェルテックスのMerimebodib(VX-497)、Endo Labs Solvayのアマンタジン(AMANTADINE(登録商標))(シンメトレル)、RPIのヘプタジン(HEPTAZYME(登録商標))、Idun PharmaのIDN-6556、XTLのXTL-002、ChironのHCV/MF59、NABIのCIVACIR(登録商標)(C型肝炎免疫グロブリン)、ICN/リバファームのLEVOVIRIN(登録商標)、ICN/リバファームのVIRAMIDINE(登録商標)、SciCloneのZADAXIN(登録商標)(サイモシンα-1)、SciCloneのサイモシンプラスペグ化インターフェロン、マキシムのCEPLENE(登録商標)(ヒスタミン二塩酸塩)、ヴェルテックス/イーライリリーのVX950/LY570310、Isis Pharmaceutical/ElanのISIS14803、Idun Pharmaceuticals社のIDN-6556、AKROS PharmaのJTK003、ベーリンガー・インゲルハイムのBILN-2061、ロシュのCellCept(ミコフェノール酸モフェチル)、T67、Tularikのβチューブリン阻害剤、InnogeneticsのE2に向けられた治療用ワクチン、藤沢ヘルスケア社のFK788、ViroPharma/Wyethの1dB1016(Siliphos, 経口シリビン-ホスファチジルコリン・ファイトザム)、RNA複製阻害剤(VP50406)、Intercellの治療用ワクチン、Epimmune/Genencorの治療用ワクチン、AnadysのIRES阻害剤、AnadysのANA245及びANA246、Avantの免疫療法(Therapore)、Corvas/SCheringのプロテアーゼ阻害剤、ヴェルテックスのヘリカーゼ阻害剤、Trimerisの融合阻害剤、CellExSysのT細胞療法、Biocrystのポリメラーゼ阻害剤、PTC Therapeuticsの標的RNA化学、Immtech, Int.のジカチオン、Agouronのプロテアーゼ阻害剤、Chiron/Medivirのプロテアーゼ阻害剤、AVI BioPharmaのアンチセンス療法、Hybridonのアンチセンス療法、Aethlon Medicalのヘモピュアリファイアー、Merixの治療用ワクチン、Bristol-MyersSquibb/Axysのプロテアーゼ阻害剤、Tripepの治療用ワクチン、Chron-VacC、United TherapeuticsのUT 231 B、Genelabs Technologiesのプロテアーゼ、ヘリカーゼ及びポリメエラーゼ阻害剤、ImmusolのIRES阻害剤、Rigel PharmaceuticalsのR803、InterMuneのINFERGENX (インターフェロンアルファコン-1)、ViragenのOMNIFERON(登録商標)(天然インターフェロン)、ヒューマンゲノムサイエンスのALBUFERON(登録商標)、Ares-SeronoのREBIF(登録商標) (インターフェロンβ-1a)、BioMedicineのインターフェロンω、Amarillo Biosciencesの経口インターフェロンα、, interferon gamma, interferon tau, and Interferongamma-lb byInterMuneのインターフェロンγ、インターフェロンτ、及びインターフェロンγ-1b。Rigel PharmaceuticalsはIFN及びリバビリンと相乗活性を有することが見込まれている非ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤を開発中である。
【0029】
13)現在HCVの治療のための様々な開発フェーズにある上で検討したものの幾つかを含む幾つかの研究中の薬剤のまとめを以下にまとめる:

【0030】
ヌクレオシドプロドラッグは他の型の肝炎の治療にこれまで記載されている。Idenix Pharmaceuticalsの国際公開第00/09531号及び国際公開第00/096353号はHBVの治療のための2'-デオキシ-β-L-ヌクレオシドとその3'-プロドラッグを開示している。Beauchampの米国特許第4957924号はアシクロビルの様々な治療用エステルを開示している。
HCV感染が世界中での流行レベルに達し、感染した患者に対する悲劇的な影響を及ぼすことに鑑みると、宿主に低毒性のC型肝炎を治療する新規の有効な医薬剤を提供する強い必要性が存在している。
更に、他のフラビウイルス科ウイルス感染の増える脅威に照らすと、宿主に低毒性の新規の有効な医薬剤を提供する強い必要性が存在している。
【0031】
発明の概要
現在、C型肝炎ウイルス(HCV)、デングウイルス(DENV)又は西ナイルウイルス(WNV)感染の予防的治療法は存在せず、HCVに対してのみ存在する現在承認されている治療法は限られている。より効果的な併用療法を含む治療標準の発展のために薬学的化合物、特に他の承認され研究されているフラビウイルス科ウイルス、特にHCVの治療薬と相乗活性を有するものを設計し開発することは必須である。
本発明は、(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド(β-D又はβ-L)又はその薬学的に許容可能な塩及び/又はプロドラッグと、C型肝炎、西ナイルウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科に属するウイルスに感染した宿主の治療のためのかかる化合物の使用を提供する。また、本発明のヌクレオシドはライノウイルスに対して活性を示す。ライノウイルス(RVs)は正二十面体(20面)キャプシド内に一本鎖リボ核酸(RNA)ゲノムを含む小さい(30nm)非エンベロープ型ウイルスである。RVsはピコルナウイルス科に属し、これはエンテロウイルス属(ポリオウイルス、コクサッキーウイルス群A及びB、エコーウイルス、番号が付けられたエンテロウイルス)とヘパトウイルス属(A型肝炎ウイルス)を含む。現在、およそ101の血清型が同定されている。ライノウイルスは一般的な風邪、鼻咽頭炎、クループ、肺炎、中耳炎及び喘息悪化に最も頻繁に付随している。
【0032】
発明者は、本発明のβ-D又はβ-Lヌクレオシドへの2'置換がC型肝炎に対して大なる特異性を付与し、また宿主への投与後に低い毒性を示すという意外な発見をした。本発明はまた場合によっては他の効果的な抗ウイルス剤との併用で又は交互に、場合によっては薬学的に許容可能な担体又は希釈剤中の、ここに開示したβ-D又はβ-Lヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの抗ウイルス有効量を投与することを含む、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染を治療する方法を含む。
本発明のヌクレオシドはC型肝炎ウイルスに対して大なる特異性を有し、培養中、又は動物に投与した場合に低い毒性を示すという独特の性質を有している。限定しないがこの一つの可能な理由はリボース環上の2'-フルオロ置換の存在である。例えば、Schinazi等の米国特許第6348587号はC型肝炎ウイルス感染の治療に有用な2'-フルオロヌクレオシド化合物のファミリーを開示している。これに対して、Idenixの国際公開第2004/02999号に示されている2'-C-メチルシチジンに見出されるような2'-メチル置換では、ヌクレオシド環の2'位の2'-メチル置換はC型肝炎に特異的ではない。
【0033】
よって、一態様では、抗ウイルス的に有効なヌクレオシドは、一般式:

[上式中、
(a) Baseがプリン又はピリミジン塩基であり;
(b) XはO、S、CH、Se、NH、N-アルキル、CHW(R、S、又はラセミ)、C(W)であり、ここでWはF、Cl、Br、又はIであり;
(c) RとRは独立してH、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェートを含むホスフェート、又は安定化されたホスフェートプロドラッグ、安定化されたH-ホスホネートを含むH-ホスホネート、置換されていてもよいフェニル及び低級アシルを含むアシル、低級アルキルを含むアルキル、O-置換カルボキシアルキルアミノ又はそのペプチド誘導体、アルキル又はアリールアルキルスルホニル(メタンスルホニル及びベンジルを含む)を含むスルホン酸エステル(ここで、フェニル基は置換されていてもよい)、リン脂質を含む脂質、L又はD-アミノ酸(又はラセミ混合物)、炭水化物、ペプチド、コレステロール、又はインビボ投与されたときに化合物(ここで、RがH又はホスフェートであり;RがH又はホスフェートであり;RとR又はRがまた環状ホスフェート基で結合可能である)を生成可能な他の薬学的に許容可能な離脱基であり;
(d) RとR2'は独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルケニル、C1-4アルキニル、ビニル、N、CN、Cl、Br、F、I、NO、C(O)O(C1-4アルキル)、C(O)O(C1-4アルキル)、C(O)O(C1-4アルキニル)、C(O)O(C1-4アルケニル)、O(C1-4アシル)、O(C1-4アルキル)、O(C1-4アルケニル)、S(C1-4アシル)、S(C1-4アルキル)、S(C1-4アルキニル)、S(C1-4アルケニル)、SO(C1-4アシル)、SO(C1-4アルキル)、SO(C1-4アルキニル)、SO(C1-4アルケニル)、SO(C1-4アシル)、SO(C1-4アルキル)、SO(C1-4アルキニル)、SO(C1-4アルケニル)、OS(C1-4アシル)、OS(C1-4アルキル)、OS(C1-4アルケニル)、NH、NH(C1-4アルキル)、NH(C1-4アルケニル)、NH(C1-4アルキニル)、NH(C1-4アシル)、N(C1-4アルキル)、N(C1-18アシル)であり、ここで、アルキル、アルキニル、アルケニル及びビニルは、N、CN、1から3のハロゲン(Cl、Br、F、I)、NO、C(O)O(C1-4アルキル)、C(O)O(C1-4アルキル)、C(O)O(C1-4アルキニル)、C(O)O(C1-4アルケニル)、O(C1-4アシル)、O(C1-4アルキル)、O(C1-4アルケニル)、S(C1-4アシル)、S(C1-4アルキル)、S(C1-4アルキニル)、S(C1-4アルケニル)、SO(C1-4アシル)、SO(C1-4アルキル)、SO(C1-4アルキニル)、SO(C1-4アルケニル)、SO(C1-4アシル)、SO(C1-4アルキル)、SO(C1-4アルキニル)、SO(C1-4アルケニル)、OS(C1-4アシル)、OS(C1-4アルキル)、OS(C1-4アルケニル)、NH、NH(C1-4アルキル)、NH(C1-4アルケニル)、NH(Cl-4アルキニル)、NH(C1-4アシル)、N(C1-4アルキル)、N(C1-4アシル)、ORによって置換されていてもよく;RとR2'は互いに結合して、N、CN、Cl、Br、F、I、NOの一又は二によって置換されていてもよいビニルを形成可能であり;(e) Rは置換されていてもよいアルキル(低級アルキルを含む)、シアノ(CN)、CH、OCH、OCHCH、ヒドロキシメチル(CHOH)、フルオロメチル(CHF)、アジド(N)、CHCN、CH、CHNH、CHNHCH、CHN(CH)、アルキン(置換されていてもよい)、又はフルオロである]
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド(β-D又はβ-L)又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグである。
【0034】
本発明の様々な態様において、式中のBaseは

[上式中、
(a) YはN又はCHであり、
(b) R、R及びRは独立してH、F、Cl、Br、Iを含むハロゲン、OH、OR'、SH、SR'、NH、NHR'、NR'、C-Cの低級アルキル、CF及びCHCHF等のC-Cのハロゲン化(F、Cl、Br、I)低級アルキル、CH=CHのようなC-Cの低級アルケニル、CH=CHCl、CH=CHBr及びCH=CHIのようなC-Cのハロゲン化(F、Cl、Br、I)低級アルケニル、C≡CHのようなC-Cの低級アルキニル、C-Cのハロゲン化(F、Cl、Br、I)低級アルキニル、CHOH及びCHCHOHのようなC-Cの低級アルコキシ、C-Cのハロゲン化(F、Cl、Br、1)低級アルコキシ、COH、COR'、CONH、CONHR'、CONR'、CH=CHCOH、CH=CHCOR'であり;
ここで、R'は置換されていてもよいC-Cl2アルキル(特にアルキルがアミノ酸残基の場合)、シクロアルキル、置換されていてもよいC-Cアルキニル、置換されていてもよいC-C低級アルケニル、又は置換されていてもよいアシルである]
から選択することができる。
【0035】
更に他の態様では、(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグは次の式のものでありうる:

ここで、
(a) Base、Y、R、R、R2'、R、R、R、R、R及びR'は上に記載の通りである。
本発明の様々な態様はまたここに記載された(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド(β-D又はβ-L)又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグと薬学的に許容可能な担体を含有する薬学的組成物を含む。
【0036】
本発明は、また様々な態様において、ここに開示された(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシドの抗ウイルス有効量を宿主に投与することを含むC型肝炎ウイルス感染、西ナイルウイルス感染、黄熱病ウイルス感染又はライノウイルス感染の治療又は予防のための方法を提供する。本発明は、またヘパシウイルス属(HCV)、ペスチウイルス属(BVDV、CSFV,BDV)又はフラビウイルス属(デングウイルス、日本脳炎ウイルス群(西ナイルウイルスを含む)、及び黄熱病ウイルスの全てのメンバーを含むフラビウイルス科ウイルス感染を治療し又は予防する方法を含む。
様々な態様では、(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルβ-D-ヌクレオシドは、適当な細胞ベースアッセイで試験した場合に、15マイクロモル未満、より詳細には10又は5マイクロモル未満のEC50を有している。他の態様では、ヌクレオシドはエナンチオマーに富んでいる。
【0037】
本発明は、また、ここに開示された(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド(β-D又はβ-L)又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグの有効量を、場合によってはここに記載された薬学的に許容可能な担体又はその希釈剤に入れた、一又は複数の他の有効な抗ウイルス剤と併用して又は交互に投与することを含む、宿主におけるC型肝炎ウイルス感染、西ナイルウイルス感染、黄熱病ウイルス感染又はライノウイルス感染の治療又は予防のための方法を提供する。ここに開示された化合物と併用して使用することができる抗ウイルス剤又はそのプロドラッグのタイプの非限定的な例には、限定するものではないが、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、ペグ化インターフェロン、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンτ及びインターフェロンωを含むインターフェロン;インターロイキン10及びインターロイキン12を含むインターロイキン;リバビリン;リバビリンとの併用でのインターフェロン;NS3インヒビターを含むプロテアーゼインヒビター;ヘリカーゼインヒビター;ポリメラーゼインヒビター;グリオトキシン;IRESインヒビター;及びアンチセンスオリゴヌクレオチド;チアゾリジン誘導体;ベンズアニリド;リボザイム;他のヌクレオシド、ヌクレオシドプロドラッグ又はヌクレオシド誘導体;1-アミノ-アルキルシクロヘキサン;ビタミンEを含む抗酸化剤;スクアレン;アマンタジン;胆汁酸;N-(ホスホノアセチル)-L-アスパラギン酸;ベンゼンジカルボキサミド;ポリアデニル酸;ベンズイミダゾール;サイモシン;βチューブリンインヒビター;予防ワクチン;シリビン-ホスファチジルコリンファイトザム;及びミコフェノレートが含まれる。
【0038】
次の非限定的な態様は本発明のヌクレオシドを得るための幾つかの一般的な方法を例証する。特に、本発明のヌクレオシドの合成は二つの一般的な手段の何れかによって達成することができる:
1)適切に修飾された炭水化物構築ブロックをアルキル化し、ついでフッ素化したあと、カップリングさせて、本発明のヌクレオシドを生成する(スキーム1)か又は
2)グリコシル化してヌクレオシドを生成した後、本発明の前に形成されたヌクレオシドをアルキル化しフッ素化する(スキーム2)。
また、本発明の化合物に対応するL-エナンチオマーは、出発物質としてL-炭水化物構築ブロック又はヌクレオシドL-エナンチオマーを用いて開始して、同じ一般方法(スキーム1又は2)によって調製することができる。
【0039】
従って、本発明は少なくとも次の一般的な特徴を含む:
(a)ここに記載されたような、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグ;
(b)ここに記載されたような、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグの製造方法;
(c)ここに記載されたような、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグを、ここに記載されたような薬学的に許容可能な担体又は希釈剤中に含有する、宿主におけるウイルス感染の治療又は予防のための薬学的組成物;
(d)ここに記載されたように、場合によっては薬学的に許容可能な担体又は希釈剤中に、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグを含有する、宿主におけるウイルス感染の治療又は予防のための薬学的組成物;
(e)ここに記載されたように、場合によっては薬学的に許容可能な担体又は希釈剤中に含めた、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグの有効量を投与することを含む、宿主におけるウイルス感染の治療又は予防のための方法;
(f)ここに記載されたように、場合によっては薬学的に許容可能な担体又は希釈剤中に、一又は複数の他の有効な抗ウイルス剤と併用して又は交互に、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグの有効量を投与することを含む、宿主におけるC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の治療又は予防のための方法;
(g)ここに記載されたように、場合によっては薬学的に許容可能な担体中に含めた、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグの、宿主におけるC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の治療又は予防のための使用;
(h)一又は複数の他の有効な抗ウイルス剤と併用又は交互での、ここに記載されたように、場合によっては薬学的に許容可能な担体中に含めた、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグの、宿主におけるC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の治療又は予防のための使用;
(i)ここに記載されたように、場合によっては薬学的に許容可能な担体中に含めた、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグの、宿主におけるC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の治療又は予防のための医薬の製造における使用;
(j)一又は複数の他の有効な抗ウイルス剤と併用又は交互での、ここに記載されたように、場合によっては薬学的に許容可能な担体中に含めた、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグの、宿主におけるC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の治療又は予防のための医薬の製造における使用;
(k)ここに記載されたように、場合によっては薬学的に許容可能な担体中に含めた、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグの、例えばC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の治療又は予防のための医療における、つまり抗ウイルス剤としての使用;
(i)ここに記載されたように、場合によっては薬学的に許容可能な担体中に含めた、開示された一般式のβ-D及びβ-Lヌクレオシド、又はその薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグの、例えばC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の治療又は予防のための医療における、つまり抗ウイルス剤としての、一又は複数の他の有効な抗ウイルス剤、つまり他の抗ウイルス剤と併用又は交互での使用。
【0040】
(発明の詳細な説明)
本発明の様々な実施態様を以下に詳細に記載する。本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される場合、「a」、「an」及び「the」の意味には、そうでないことが明らかでない限り複数の場合を含む。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される場合、「in」の意味には、そうでないことが明らかでない限り、「in」及び「on」を含む。
本明細書で使用される用語は、一般に、本発明の内容においてまた各用語が使用される特定の文脈で当該分野においてその通常の意味を有している。本発明を記述するために使用されるある種の用語を以下にまた明細書の他の部分で検討し、本発明の組成物と方法及びそれを如何にして製造し使用するかについて実施者に更なる指針を提供する。簡便のために、ある用語は、例えばイタリック体及び/又は引用符を使用して強調することができる。強調の使用は用語の範囲と意味に影響を持たない;用語の範囲と意味は強調されているか否かを問わず同じ文脈で同じである。同じことが一通り以上で言うことができるものと理解される。従って、代わりの言語及び同義語をここで検討される用語の何れか一つ又はそれ以上に対して使用することができるし、用語が詳しいか又はここで検討されているかにかかわらず、特別な意義は置かれない。ある用語の同義語が提供される。一又は複数の同義語の記載は他の同義語の使用を排除しない。ここで検討された任意の用語の例を含む本明細書のどこかにおける例の使用は、本発明又は任意の例示された用語の範囲と意味を決して制限しない。同様に、本発明は本明細書に記載した様々な実施態様に限定されない。
【0041】
ここで使用される「約」又は「およそ」は一般に与えられた値又は範囲の20パーセント以内、好ましくは10パーセント以内、より好ましくは5パーセント以内を意味する。ここで与えられる数値はおよそのものであり、「約」又は「およそ」という用語は明示的に記載されていない場合は推論されうる。
本発明は、宿主におけるC型肝炎、西ナイルウイルス感染、黄熱病ウイルス感染又はライノウイルス感染の治療のための(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド及びその薬学的に許容可能な塩及びプロドラッグを提供する。
開示された化合物又はその薬学的に許容可能な誘導体又は塩又はこれら化合物を含む薬学的に許容可能な製剤はHCV感染の予防と治療に有用である。また、これらの化合物又は製剤は予防的に使用して、抗HCV抗原陽性であるか又はHCVに暴露されている個体における臨床的疾患を予防し又はその進行を遅延させることができる。
ここで開示された化合物は、適切なエステル化剤、例えば酸ハライド又は無水物を用いた反応により薬学的に許容可能なエステルに転換させることができる。その化合物又はその薬学的に許容可能な誘導体は、例えば適切な塩基での処理によって一般的な方法でその薬学的に許容可能な塩に転換させることができる。化合物のエステル又は塩は例えば加水分解により親化合物に転換させることができる。
【0042】
定義
「独立して」という用語はここでは独立に適用される変数が適用毎に独立に変化することを示すために使用される。よって、RXYR(ここでRは「独立して炭素又は窒素である」)のような化合物において、両方のRは炭素であり得、両方のRは窒素であり得、又は一つのRが炭素で、他方のRが窒素であり得る。
ここで使用される場合、「エナンチオマー的に純粋な」又は「エナンチオマーに富んだ」という用語は、そのヌクレオシドの少なくともおよそ95%、好ましくはおよそ97%、98%、99%又は100%の単一のエナンチオマーを含むヌクレオシド組成物を意味する。
ここで使用される場合、「実質的に含まない」又は「実質的に不存在である」という用語は、そのヌクレオシドの指定されたエナンチオマーを少なくとも85又は90重量%、好ましくは95から98重量%、更により好ましくは99から100重量%を含むヌクレオシド組成物を意味する。好適な実施態様では、本発明の方法及び化合物では、化合物は実質的にエナンチオマーを含まない。
【0043】
同様に、「単離された」という用語は、少なくとも85又は90重量%、好ましくは95から98重量%、更により好ましくは99から100重量%のヌクレオシドを含み、残りが他の化学種又はエナンチオマーを含むヌクレオシド組成物を意味する。
ここで使用される場合の「アルキル」という用語は、別段の定義をしない限り、飽和した直鎖状、分枝状、又は環状の一級、二級、又は三級の、典型的にはC〜C10の炭化水素を意味し、特にメチル、トリフルオロメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、及び2,3-ジメチルブチルを含む。その用語には置換及び未置換双方のアルキル基を含む。アルキル基は場合によってはヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、サルフェート、ホスホン酸、ホスフェート、又はホスホネート、あるいはこの化合物の薬理学的活性を阻害しない任意の他の実施可能な官能基で、未保護か、例えば出典明示によりここに取り込まれるGreene等 Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, 3版, 1999に教示され、当業者に知られているように、必要に応じて保護したものからなる群から選択される一又は複数の部分で置換することができる。
【0044】
ここで使用される場合の「低級アルキル」という用語は、別段の定義をしない限り、CからCの飽和した直鎖状、分枝状、又は適切な場合には環状(例えばシクロプロピル)のアルキル基で、置換形態と未置換形態の双方を含むものを意味する。本願で別段の定義をしない限り、アルキルが適切な部分である場合、低級アルキルが好ましい。同様に、アルキル又は低級アルキルが適切な部分である場合、未置換アルキル又は低級アルキルが好ましい。
「アルキルアミノ」又は「アリールアミノ」という用語はそれぞれ一又は二のアルキル又はアリール置換基を有するアミノ基を意味する。
ここで使用される「保護された」という用語は、特段の定義がなされない限り、その更なる反応を防止するため又は他の目的のために酸素、窒素、又はリン原子に加えられる基を意味する。様々な酸素及び窒素保護基が有機化学の当業者に知られている。非限定的な例には次のものを含む:C(O)-アルキル、C(O)Ph、C(O)アリール、CH、CH-アルキル、CH-アルケニル、CHPh、CH-アリール、CHO-アルキル、CHO-アリール、SO-アルキル、SO-アリール、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、及び1,3-(1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサニリデン)。
【0045】
ここで使用される場合の「アリール」という用語は、別段の定義をしない限り、フェニル、ビフェニル、又はナフチル、好ましくはフェニルを意味する。該用語には置換形態と未置換形態の双方が含まれる。アリール基は、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、サルフェート、ホスホン酸、ホスフェート、又はホスホネートで、未保護か、例えばT.W.Greene及びP.G.M. Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis," 3版, John Wiley & Sons, 1999に教示され、当業者に知られているように、必要に応じて保護したものからなる群から選択される一又は複数の部分で置換することができる。
「アルカリール」又は「アルキルアリール」という用語はアリール置換基を持つアルキル基を意味する。「アラルキル」又は「アリールアルキル」という用語はアルキル置換基を持つアリール基を意味する。
ここで使用される「ハロ」という用語にはクロロ、ブロモ、ヨード及びフルオロが含まれる。
「アシル」という用語は、エステル基の非カルボニル部分が直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル又は低級アルキル、メトキシメチルを含むアルコキシアルキル、ベンジルを含むアラルキル、例えばフェノキシメチルのようなアリールオキシアルキル、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、CからCアルキル又はCからCアルコキシで置換されていてもよいフェニルを含むアリール、メタンスルホニルを含むアルキル又はアラルキルスルホニルのようなスルホン酸エステル、モノ、ジ又はトリホスフェートエステル、トリチル又はモノメトキシトリチル、置換ベンジル、トリアルキルシリル(例えばジメチル-t-ブチルシリル)又はジフェニルメチルシリルから選択されるカルボン酸エステルを意味する。エステル中のアリール基は最適にはフェニル基を含む。
「低級アシル」という用語は非カルボニル部分が低級アルキルであるアシル基を意味する。
【0046】
「プリン」又は「ピリミジン」塩基という用語には、限定するものではないが、アデニン、N-アルキルプリン、N-アシルプリン(ここで、アシルはC(O)(アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルである))、N-ベンジルプリン、N-ハロプリン、N-ビニルプリン、N-アセチレンプリン、N-アシルプリン、N-ヒドロキシアルキルプリン、N-アルシルアミノプリン、N-チオアルシルプリン、N-アルキルプリン、N-アルキル-6-チオプリン、チミン、シトシン、5-フルオロシトシン、5-メチルシトシン、6-アザシトシンを含む6-アザピリミジン、2-及び/又は4-メルカプトピリミジン、ウラシル、5-フルオロウラシルを含む5-ハロウラシル、C-アルキルピリミジン、C-ベンジルピリミジン、C-ハロピリミジン、C-ビニルピリミジン、C-アセチレンピリミジン、C-アシルピリミジン、C-ヒドロキシアルキルプリン、C-アミドピリミジン、C-シアノピリミジン、C-ヨードピリミジン、C-ヨード-ピリミジン、C-Br-ビニルピリミジン、C-Br-ビニルピリミジン、C-ニトロピリミジン、C-アミノピリミジン、N-アルキルプリン、N-アルキル-6-チオプリン、5-アザシチジニル、5-アザウラシリル、トリアゾロピリジニル、イミダソロピリジニル、ピロロピリミジニル、及びピラゾロピリミジニルが含まれる。プリン塩基には、限定されるものではないが、グアニン、アデニン、ヒポキサンチン、2,6-ジアミノプリン、及び6-クロロプリンが含まれる。塩基上の官能性酸素及び窒素基は必要に応じて又は所望に応じて保護することができる。好適な保護基は当業者にはよく知られており、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t-ブチルジメチルシリル、及びt-ブチルジフェニルシリル、トリチル、アルキル基、及びアシル基、例えばアセチル及びプロピオニル、メタンスルホニル、及びp-トルエンスルホニルが含まれる。
「アシル」又は「O結合エステル」という用語は式C(O)R'の基を意味し、ここでR'は直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル(低級アルキルを含む)、アミノ酸、フェニルを含むアリール、アイルカリル、ベンジルを含むアラルキル、メトキシメチルを含むアルコキシアルキル、フェノキシメチルのようなアリールオキシアルキル;又は置換アイルシル(低級アルキルを含む)、クロロ、ブロモ、ヨード、CからCアルキル又はCからCアルコキシで置換されていてもよいフェニルを含むアリール、メタンスルホニルを含むアルキル又はアラルキルスルホニルのようなスルホネートエステル、モノ、ジ又はトリホスフェートエステル、トリチル又はモノメトキシ-トリチル、置換ベンジル、アルカリール、ベンジルを含むアラルキル、メトキシメチルを含むアルコキシアリシル、フェノキシメチルのようなアリールオキシアルキルである。エステル中のアリール基は最適にはフェニル基を含む。特に、アシル基には、アセチル、トリフルオロアセチル、メチルアセチル、シクロプロピルアセチル、シクロプロピルカルボキシ、プロピオニル、ブチリル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ネオ-ヘプタノイル、フェニルアセチル、2-アセトキシ-2-フェニルアセチル、ジフェニルアセチル、α-メトキシ-α-トリフルオロメチル-フェニルアセチル、ブロモアセチル、2-ニトロ-ベンゼンアセチル、4-クロロ-ベンゼンアセチル、2-クロロ-2,2-ジフェニルアセチル、2-クロロ-2-フェニルアセチル、トリメチルアセチル、クロロジフルオロアセチル、パーフルオロアセチル、フルオロアセチル、ブロモジフルオロアセチル、メトキシアセチル、2-チオフェンアセチル、クロロスルホニルアセチル、3-メトキシフェニルアセチル、フェノキシアセチル、tert-ブチルアセチル、トリクロロアセチル、モノクロロアセチル、ジクロロアセチル、7H-ドデカフルオロ-ヘプタノイル、パーフルオロ-ヘプタノイル、7H-ドデカフルオロヘプタノイル、7-クロロドデカ-フルオロヘプタノイル、ノナ-フルオロ-3,6-ジオキサ-ヘプタノイル、ノナフルオロ-3,6-ジオキサヘプタノイル、パーフルオロヘプタノイル、メトキシベンゾイル、メチル3-アミノ-5-フェニルチオフェン-2-カルボキシル、3,6-ジクロロ-2-メトキシ-ベンゾイル、4-(1,1,2,2-テトラフルオロ-エトキシ)-ベンゾイル、2-ブロモ-プロピオニル、ω-アミノカプリル、デカノイル、n-ペンタデカノイル、ステアリル、3-シクロペンチル-プロピオニル、1-ベンゼン-カルボキシル、O-アセチルイマンデリル、ピバロイルアセチル、1-アダマンタン-カルボキシル、シクロヘキサン-カルボキシル、2,6-ピリジンジカルボキシル、シクロプロパン-カルボキシル、シクロブタン-カルボキシル、パーフルオロシクロヘキシルカルボキシル、4-メチルベンゾイル、クロロメチルイソキサゾリルカルボニル、パーフルオロシクロヘキシルカルボキシル、クロトニル、1-メチル-1H-インダゾール-3-カルボニル、2-プロペニル、イソバレリル、1-ピロリジンカルボニル、4-フェニルベンゾイルが含まれる。アシルという用語が使用される場合、アセチル、トリフルオロアセチル、メチルアセチル、シクロプロピルアセチル、プロピオニル、ブチリル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ネオ-ヘプタノイル、フェニルアセチル、ジフェニルアセチル、ct-トリフルオロメチル-フェニルアセチル、ブロモアセチル、4-クロロ-ベンゼンアセチル、2-クロロ-2,2-ジフェニルアセチル、2-クロロ-2-フェニルアセチル、トリメチルアセチル、クロロジフルオロアセチル、パーフルオロアセチル、フルオロアセチル、ブロモジフルオロアセチル、2-チオフェンアセチル、tert-ブチルアセチル、トリクロロアセチル、モノクロロ-アセチル、ジクロロアセチル、メトキシベンゾイル、2-ブロモ-プロピオニル、デカノイル、n-ペンタデカノイル、ステアリル、3-シクロペンチル-プロピオニル、1-ベンゼン-カルボキシル、ピバロイルアセチル、1-アダマンタン-カルボキシル、シクロヘキシル-カルボキシル、2,6-ピリジンジカルボキシル、シクロプロパン-カルボキシル、シクロブタン-カルボキシル、4-メチルベンゾイル、クロトニル、1-メチル-1H-インダゾール-3-カルボニル、2-プロペニル、イソバレリル、4-フェニルベンゾイルの特定の独立した開示であることを意味する。
【0047】
「アミノ酸」という用語は天然発生及び合成のα、β、γ又はδアミノ酸を含み、限定されるものではないが、タンパク質に見出されるアミノ酸、つまり、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン及びヒスチジンを含む。好適な実施態様では、アミノ酸はL-配置である。あるいは、アミノ酸は、アラニル、バリニル、ロイシニル、イソロイシニル、プロリニル、フェニルアラニニル、トリプトファニル、メチオニニル、グリシニル、セリニル、スレオニニル、システイニル、チロシニル、アスパラギニル、グルタミニル、アスパルトイル、グルタトイル、リジニル、アルギニニル、ヒスチジニル、β-アラニル、β-バリニル、β-ロイシニル、β-イソロイシニル、β-プロリニル、β-フェニルアラニニル、β-トリプトファニル、β-メチオニニル、β-グリシニル、β-セリニル、β-スレオニニル、β-システイニル、β-チロシニル、β-アスパラギニル、β-グルタミニル、β-アスパルトイル、β-グルタトイル、β-リジニル、β-アルギニニル又はβ-ヒスチジニルの誘導体でありうる。アミノ酸という用語が使用される場合、D及びL配置のα、β、γ又はδグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン及びヒスチジンのエステルの各々の特定で独立した開示であると考えられる。
【0048】
ここで用いられる「宿主」という用語は、細胞株及び動物、好ましくはヒトを含む、ウイルスが複製することができる単細胞又は多細胞生物を意味する。あるいは、宿主は、その複製又は機能を本発明の化合物によって改変させることができるウイルスゲノムの一部を有しうる。宿主という用語は特に感染した細胞、ウイルスゲノムの全て又は一部に感染した細胞、及び動物、特に霊長類及びヒトを意味する。本発明の殆どの動物への利用では、宿主はヒト患者である。しかしながら、ある種の効能では、明らかに獣医用途が本発明によって予期される。
「薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグ」という用語は、患者に投与されると活性化合物をもたらす化合物の任意の薬学的に許容可能な形態(例えば、エステル、リン酸エステル、エステル塩又は関連した群)を記述するために明細書を通して使用される。薬学的に許容可能な塩には、薬学的に許容可能な無機又は有機塩基及び酸から誘導されたものが含まれる。好適な塩には、製薬分野でよく知られた多くの他の酸のなかで、カリウム及びナトリウムのようなアルカリ金属、カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ土類金属から誘導されたものが含まれる。薬学的に許容可能なプロドラッグは宿主中で代謝、例えば加水分解又は酸化されて本発明の化合物を形成する化合物を意味する。プロドラッグの典型的な例には活性な化合物の官能部分に生物学的に不安定な保護基を持つ化合物が含まれる。プロドラッグには、酸化、還元、アミン化、脱アミン化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱加水分解、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、脱リン酸化されて活性化合物を生成できる化合物が含まれる。
【0049】
I.活性化合物、及びその生理学的に許容可能な誘導体及び塩
次の構造:

[上式中、Baseが天然に生じるか又は修飾されたプリン又はピリミジン塩基であり;XはO、S、CH、Se、NH、N-アルキル、CHW、C(W)であり、ここでWはF、Cl、Br、又はIであり;
とRは独立してH、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェートを含むホスフェート、又は安定化されたホスフェートプロドラッグ、安定化されたH-ホスホネートを含むH-ホスホネート、置換されていてもよいフェニル及び低級アシルを含むアシル、低級アルキルを含むアルキル、O-置換カルボキシアルキルアミノ又はそのペプチド誘導体、アルキル又はアリールアルキルスルホニル(メタンスルホニル及びベンジルを含む)を含むスルホン酸エステル(ここで、フェニル基は置換されていてもよい)、リン脂質を含む脂質、L又はD-アミノ酸、炭水化物、ペプチド、コレステロール、又はインビボ投与されたときに化合物(ここで、RがH又はホスフェートであり;RがH又はホスフェートであり;RとR又はRがまた環状ホスフェート基で結合可能である)を生成可能な他の薬学的に許容可能な離脱基であり;
とR2'は独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルケニル、C1-4アルキニル、ビニル、N、CN、Cl、Br、F、I、NO、C(O)O(C1-4アルキル)、C(O)O(C1-4アルキル)、C(O)O(C1-4アルキニル)、C(O)O(C1-4アルケニル)、O(C1-4アシル)、O(C1-4アルキル)、O(C1-4アルケニル)、S(C1-4アシル)、S(C1-4アルキル)、S(C1-4アルキニル)、S(C1-4アルケニル)、SO(C1-4アシル)、SO(C1-4アルキル)、SO(C1-4アルキニル)、SO(C1-4アルケニル)、SO(C1-4アシル)、SO(C1-4アルキル)、SO(C1-4アルキニル)、SO(C1-4アルケニル)、OS(C1-4アシル)、OS(C1-4アルキル)、OS(C1-4アルケニル)、NH、NH(C1-4アルキル)、NH(C1-4アルケニル)、NH(C1-4アルキニル)、NH(C1-4アシル)、N(C1-4アルキル)、N(C1-18アシル)であり、ここで、アルキル、アルキニル、アルケニル及びビニルは、N、CN、1から3のハロゲン(Cl、Br、F、I)、NO、C(O)O(C1-4アルキル)、C(O)O(C1-4アルキル)、C(O)O(C1-4アルキニル)、C(O)O(C1-4アルケニル)、O(C1-4アシル)、O(C1-4アルキル)、O(C1-4アルケニル)、S(C1-4アシル)、S(C1-4アルキル)、S(C1-4アルキニル)、S(C1-4アルケニル)、SO(C1-4アシル)、SO(C1-4アルキル)、SO(C1-4アルキニル)、SO(C1-4アルケニル)、SO(C1-4アシル)、SO(C1-4アルキル)、SO(C1-4アルキニル)、SO(C1-4アルケニル)、OS(C1-4アシル)、OS(C1-4アルキル)、OS(C1-4アルケニル)、NH、NH(C1-4アルキル)、NH(C1-4アルケニル)、NH(Cl-4アルキニル)、NH(C1-4アシル)、N(C1-4アルキル)、N(C1-4アシル)、ORによって置換されていてもよく;RとR2'は互いに結合して、N、CN、Cl、Br、F、I、NOの一又は二によって置換されていてもよいビニルを形成可能であり;
は置換されていてもよいアルキル(低級アルキルを含む)、シアノ(CN)、CH、OCH、OCHCH、ヒドロキシメチル(CHOH)、フルオロメチル(CHF)、アジド(N)、CHCN、CH、CHNH、CHNHCH、CHN(CH)、アルキン(置換されていてもよい)、又はフルオロである]
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0050】
第二の実施態様では、次の構造:

(上式中、Base、R、R、R2'、R及びRは上に記載の通りである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0051】
第三の実施態様では、次の構造:

(上式中、X、R、R、R2'、R及びRは上に記載の通りであり、
Baseが

から選択され、
YがN又はCHであり、
、R及びRが独立してH、F、Cl、Br、Iを含むハロゲン、OH、OR'、SH、SR'、NH、NHR'、NR'、C-Cの低級アルキル、CF及びCHCHF等のC-Cのハロゲン化(F、Cl、Br、I)低級アルキル、CH=CHのようなC-Cの低級アルケニル、CH=CHCl、CH=CHBr及びCH=CHIのようなC-Cのハロゲン化(F、Cl、Br、I)低級アルケニル、C≡CHのようなC-Cの低級アルキニル、C-Cのハロゲン化(F、Cl、Br、I)低級アルキニル、CHOH及びCHCHOHのようなC-Cの低級アルコキシ、C-Cのハロゲン化(F、Cl、Br、1)低級アルコキシ、COH、COR'、CONH、CONHR'、CONR'、CH=CHCOH、CH=CHCOR'であり;
R'は置換されていてもよいC-Cl2アルキル(特にアルキルがアミノ酸残基の場合)、シクロアルキル、置換されていてもよいC-Cアルキニル、置換されていてもよいC-C低級アルケニル、又は置換されていてもよいアシルである]
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド(β-D又はβ-L)又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを提供する。
【0052】
第四の実施態様では、次の構造:

(上式中、Baseは

から選択され、ここで、R、R、R2'、R、R、R及びR及びYは上に記載の通りである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0053】
第五の実施態様は、次の構造:

[上式中、Baseは天然に生じるか又は修飾されたプリン又はピリミジン塩基を意味し;
は独立してH、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェートを含むホスフェート、又は安定化されたホスフェートプロドラッグ、安定化されたH-ホスホネートを含むH-ホスホネート、置換されていてもよいフェニル及び低級アシルを含むアシル、低級アルキルを含むアルキル、O-置換カルボキシアルキルアミノ又はそのペプチド誘導体、アルキル又はアリールアルキルスルホニル(メタンスルホニル及びベンジルを含む)を含むスルホン酸エステル(ここで、フェニル基は置換されていてもよい)、リン脂質を含む脂質、L又はD-アミノ酸、炭水化物、ペプチド、コレステロール、又はインビボ投与されたときに化合物(ここで、RがH又はホスフェートである)を生成可能な他の薬学的に許容可能な離脱基であり;
ここで、XとRは上に定義した通りである]
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド(β-D)又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを提供する。
【0054】
第六の実施態様では、次の構造:

(上式中、Baseは天然に生じるか又は修飾されたプリン又はピリミジン塩基を意味し;
ここで、R及びRは上に記載の通りである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0055】
第七の実施態様は、次の構造:

(上式中、Baseは

から選択され、ここで、X、Y、R、R、R、R、R及びR'は上に記載の通りである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを提供する。
【0056】
第八の実施態様では、次の構造:

(上式中、Baseは

から選択され、ここで、Y、R、R、R、R、R及びR'は上に記載の通りである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0057】
第九の実施態様は、次の構造:

(上式中、Baseは

から選択され、ここで、RがHで、RがOHであり、R2'がHで、RがHであり、RがNH又はOHであり、RがHである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを提供する。
【0058】
第十の実施態様では、次の構造:

(上式中、Baseは

から選択され、ここで、RがHで、RがOHであり、R2'がHで、RがHであり、RがNH又はOHであり、RがHである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0059】
第十一の実施態様は、次の構造:

(上式中、Baseは

であり、ここで、Xは上で定義した通りであり、RがHで、RがOHであり、R2'がHで、RがHであり、RがNH又はOHであり、RがHであり、RがHである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを提供する。
【0060】
第十二の実施態様では、次の構造:

(上式中、Baseは

であり、ここで、RがHで、RがHであり、RがNH又はOHであり、RがHである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
第十三の実施態様は、次の構造:

の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグを提供する。
【0061】
第十四の実施態様では、次の構造:

(上式中、X、R、R及びRが上に定義した通りである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0062】
第十五の実施態様では、次の構造:

(上式中、R、R及びRが上に定義した通りである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0063】
第十六の実施態様では、次の構造:

の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0064】
第十七の実施態様では、次の構造:

(上式中、X及びRが上に定義した通りである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0065】
第十八の実施態様では、次の構造:

の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0066】
第十九の実施態様では、次の構造:

(上式中、X及びRが上に定義した通りである)
の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0067】
第二十の実施態様では、次の構造:

の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグが提供される。
【0068】
本発明はまた次の一般構造式:

(ここで、Base、X、R、R2’、及びRは上に定義した通りである)を有する本発明のヌクレオシド化合物の5'-ヒドロキシル基の5'-トリホスフェート三リン酸エステル誘導体を考慮する。
【0069】
本発明の化合物はまたそれぞれ次の構造式:


(ここで、Base、X、R、R2’、及びRは上に定義した通りである)の三リン酸エステルの薬学的に許容可能な塩並び5'-ジホスフェートエステル及び5'-モノホスフェートエステル誘導体を含むことを意図している。
【0070】
本発明のヌクレオシドのリン酸誘導体の更なる非限定的な例を以下に示す:



【0071】
本発明はまた任意のホスフェートヌクレオシド誘導体が5'-(S-アシル-2-チオエチル)ホスフェート又は5'-モノホスフェートの「SATE」モノ又はジエステル誘導体を含みうることを考慮する。
ホスフェートヌクレオシド誘導体上のN-4アミノ基がH、F、Cl、Br又はIで置き換えることができる他の実施態様もまた考えられる。
更なる実施態様にはここに更に詳細に記載する3'及び/又は5'プロドラッグが含まれる。
様々な実施態様では、フッ素化誘導体が好ましい。フッ素はその大きさのため(ファンデルワールス半径がHで1.20A、Fで1.35A)、水素と「同配体(isosteric)」とみなされる。しかしながら、フッ素の原子量(18.998)と電気陰性度(4.0[ポーリングのスケール]、4.000[サンダーソンのスケール])は水素(2.1[ポーリング]、2.592[サンダーソン])よりも酸素(3.5[ポーリング]、3.654[サンダーソン])により類似している(March, J. ,"Advances in Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure"Third edition, 1985, p. 14., Wiley Interscience, New York)。フッ素は水素結合を形成することができることが知られているが、ヒドロキシル基(プロトン受容体としてもプロトン供与体としても作用可能である)とは異なり、フッ素はプロトン受容体としてのみ作用する。他方、2'-フルオロ-リボヌクレオシドはリボヌクレオシドとデオキシヌクレオシドの双方の類似体とみることができる。それらは宿主RNAポリメラーゼによるよりもトリホスフェートレベルでウイルスRNAポリメラーゼによって良好に認識され得、よってウイルス酵素を選択的に阻害する。
【0072】
II.薬学的に許容可能な塩及びプロドラッグ
化合物が安定な非毒性の酸又は塩基塩を形成するのに十分な塩基性又は酸性である場合、薬学的に許容可能な塩として化合物を投与するのが適切な場合がある。薬学的に許容可能な塩には、薬学的に許容可能な無機又は有機塩基及び酸から誘導されたものが含まれる。好適な塩には、製薬分野でよく知られた多くの他の酸のなかで、カリウム及びナトリウムのようなアルカリ金属、カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ土類金属から誘導されたものが含まれる。特に、薬学的に許容可能な塩の例は酸と形成される有機酸付加塩であり、これは生理学的に許容可能なアニオン、例えばトシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、及びα-グリセロリン酸塩を形成する。硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸塩を含む好適な無機塩がまた形成されうる。
薬学的に許容可能な塩は当該分野でよく知られた標準的な手順を使用して、例えば生理学的に許容可能なアニオンを生じる好適な酸とアミンのような十分に塩基性の化合物を反応させることによって、得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム又はリチウム)又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩をまた形成することができる。
【0073】
ここに記載されたヌクレオシドの何れもヌクレオシドの活性、生物学的利用能、安定性を増大させ又は性質を改変する等のためにヌクレオチドプロドラッグとして投与することができる。多くのヌクレオチドプロドラッグリガンドが知られている。一般に、ヌクレオシドのモノ、ジ又はトリホスフェートのアルキル化、アシル化又は他の親油性修飾はヌクレオシドの安定性を増加させる。ホスフェート塩部分へ一又は複数の水素を置換することができる置換基の例はアルキル、アリール、ステロイド、炭水化物で、糖、1,2-ジアシルグリセロール及びアルコールを含む。多くのものがR. Jones及びN. Bischofberger, Antiviral Research, 27 (1995) 1-17に記載されている。これらの何れも所望の効果を達成するために開示されたヌクレオシドと併用して使用することができる。
【0074】
活性なヌクレオシドは、また、出典明示によりここに取り込まれる次の文献に開示されたように、5'-ホスホエーテル脂質又は5'-エーテル脂質として提供することができる:Kucera, L. S. , N. Iyer, E. Leake, A. Raben, Modest E. K. , D. L. W. , 及びC. Piantadosi. 1990. "Novel membrane-interactive ether lipid analogs that inhibit infectious HIV-1 production and induce defective virus formation." AIDS Res. Hum. Retro Viruses. 6: 491-501;Piantadosi, C. , J. Marasco C. J. , S. L. Morris-Natschke, K. L. Meyer, F. Gumus, J. R. Surles, K. S. Ishaq, L. S. Kucera, N. lyer, C.A. Wallen, S. Piantadosi, 及び E. J. Modest. 1991. "Synthesis and evaluation of novel ether lipid nucleoside conjugates for anti-HIV activity." J. Med. Chem. 34: 1408.1414 ; Hosteller, K. Y. , D. D. Richman, D. A. Carson, L. M. Stuhmiller, G. M. T. van Wijk, 及び H. van den Bosch. 1992. "Greatly enhanced inhibition of human immunodeficiency virus type 1 replication in CEM and HT4-6C cells by 3'-deoxythymidine diphosphate dimyristoylglycerol, a lipid prodrug of 3,-deoxythymidine."Antimicrob. Agents Chemother. 36 : 2025. 2029;Hosetler, K. Y. , L. M.Stuhmiller, H. B. Lenting, H. van den Bosch, 及び D. D. Richman, 1990. "Synthesis and antiretroviral activity of phospholipid analogs of azidothymidine and other antiviralnucleosides."J.Biol. Chem. 265: 61127。
【0075】
ヌクレオシド中、好ましくはヌクレオシドの5'-OH位に共有的に導入することができる好適な親油性置換基又は親油性調製物を開示する米国特許の非限定的な例には、米国特許第5149794号;第5194654号;第5223263号;第5256641号;第5411947号;第5463092号;第5543389号;第5543390号;第5543391号;及び第5554728号が含まれ、その全てが出典明示によりここに取り込まれる。本発明のヌクレオシドに結合させることができる親油性置換基又は親油性調製物を開示する外国特許出願には、WO89/02733、WO90/00555、WO91/16920、WO91/18914、WO93/00910、WO94/26273、WO96/15132、EP0350287、EP93917054.4及びWO91/19721が含まれる。
【0076】
III.薬学的組成物
ここに開示されたβ-D又はβ-L化合物又はその薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグに基づく薬学的組成物は、場合によっては薬学的に許容可能な添加剤、担体又は賦形剤と組み合わせて、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染を治療するための治療的有効量で調製することができる。治療的に有効な量は治療されるべき感染又は症状、その重症度、用いられる治療計画、使用される薬剤の薬物動態学、並びに治療される患者によって変化しうる。
【0077】
本発明に係る一側面では、本発明に係る化合物は、好ましくは薬学的に許容可能な担体と混合されて製剤化される。一般に、薬学的組成物を経口投与可能な形態で投与することが望ましいが、製剤を非経口、静脈内、筋肉内、経皮的、口腔内、皮下、座薬又は他の経路によって投与することもできる。静脈内及び筋肉内投与製剤は好ましくは滅菌生理食塩水で投与される。当業者であれば明細書の教唆で製剤に変更を加えて、本発明の組成物を不安定にしたりその治療活性について妥協することなく特定の投与経路の多くの製剤を提供することができるであろう。特に、例えば水又は他のビヒクルにそれをより可溶であるように所望の化合物を修飾することは常套的な修飾(塩形成、エステル化等々)によって容易に達成することができる。
【0078】
ある種の医薬投薬形態では、本発明の化合物の特にアシル化(アセチル化等)及びエーテル誘導体、リン酸エステル及び様々な塩形態を含む化合物のプロドラッグ形態が好ましい。当業者には、宿主生物又は患者内の標的部位への活性化合物の送達を容易にするために本発明の化合物をプロドラッグ形態に直ぐに修飾する方法は分かるであろう。また当業者は、宿主生物又は患者内の標的部位に所望の化合物を送達させて、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の治療における化合物の意図された効果を最大にする際に、必要な場合には、プロドラッグ形態の好ましい薬物動態学的パラメータを利用するであろう。
【0079】
本発明に係る治療的に活性な製剤中に含まれる化合物の量は、好適な実施態様では、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の治療に有効な量である。一般に、薬学的投薬形態中の本化合物の治療的有効量は通常使用される化合物、治療される症状又は感染及び投与経路に応じて、約50mgから約2000mg又はそれ以上の範囲である。本発明の目的において、本発明に係る組成物の予防的又は防止的有効量は治療的有効量について上述したものと同じ範囲に入り、通常は治療的有効量と同じである。
活性化合物の投与は連続的(静脈内点滴)から一日数回の経口投与(例えばQ.I.D、B.I.D.等)であり、他の投与経路のなかでも、経口、局所的、非経口、筋肉内、静脈内、皮下内、経皮的(浸透促進剤を含みうる)、口腔内及び座薬投与を含みうる。腸溶性経口錠剤をまた用いて経口投与経路からの化合物の生物学的利用能と安定性を向上させることができる。最も効果的な投薬形態は選択される特定の薬剤の薬物動態学、並びに患者における疾患の重症度に依存する。投与が容易で好ましい患者の服薬が見込まれるため経口投薬形態が特に好ましい。
【0080】
本発明に係る薬学的組成物を調製するには、本発明に係る化合物の一又は複数の治療的有効量を、投薬量をつくる常套的な製薬配合技術に従って薬学的に許容可能な担体と好ましくは混合する。担体は例えば経口又は非経口のような投与に望まれる製剤の形態に依存して様々な形態を取りうる。経口投薬形態の薬学的組成物を調製するには、通常の薬学的媒体の任意のものを使用することができる。従って、懸濁液、エリキシル及び溶液のような経口投薬形態で薬学的組成物を調製する際は、水、グリコール、油、アルコール、香料添加剤、保存料、着色剤等々を含む適切な担体及び添加剤を使用することができる。粉末、錠剤、カプセルのような固形経口調製物及び座薬のような固形調製物に対しては、デンプン、糖担体、例えばデキストロース、マンニトール、ラクトース、及び関連した担体、希釈剤、顆粒化剤、滑剤、バインダー、崩壊剤等を使用することができる。所望ならば、錠剤又はカプセルは標準的な技術によって徐放のために腸溶性とすることができる。これらの投薬形態の使用は患者における化合物の生物学的利用能に有意な影響を及ぼしうる。
【0081】
非経口製剤に対しては、担体は通常滅菌水又は塩化ナトリウム水溶液を含むが、分散を補助するものを含む他の成分をまた含めてもよい。滅菌水が使用され、無菌に維持される場合、組成物と担体はまた滅菌されなければならない。注射可能な懸濁液もまた調製することができ、その場合、適切な液体担体、懸濁剤等々を用いることができる。
(ウイルス抗原を標的とするリポソームを含む)リポソーム懸濁液をまた常法により調製して薬学的に許容可能な担体を製造することができる。これは、本発明に係る遊離のヌクレオシド、アシルヌクレオシド又はヌクレオシド化合物のリン酸エステルプロドラッグ形態の送達に適しているであろう。
本発明に係る特に好適な実施態様では、化合物及び組成物はC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染を治療し、防止し又は発症を遅延させるのに使用される。本化合物は好ましくは経口的に投与されるが、非経口的、局所的又は座薬として投与されてもよい。
【0082】
本発明に係る化合物は、ある場合には宿主細胞に対するその低毒性のために、有利には、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染を防止するため、又はウイルス感染又は症状に伴う臨床徴候の発症を防止するために予防的に用いることができる。よって、本発明はまたウイルス感染、特にC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染を予防的に治療するための方法をも包含する。この側面では、本発明によれば、本組成物はC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染を防止し又はその発症を遅延させるために使用される。この予防方法は、そのような治療を必要とするか、又はウイルス又は症状の進行の危険性がある患者へ、ウイルス感染又は症状を軽減し又はその発症を遅延させるのに有効な本発明の化合物の量を投与することを含む。本発明に係る予防的治療方法では、使用される抗ウイルス又は抗増殖化合物は低毒性であることが好適で、好ましくは患者に非毒性でなければならない。本発明のこの側面では、特に好ましくは、使用される化合物はウイルス又は症状に対して最大の効果がなければならず、患者に対して最少の毒性を示すものでなければならない。C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の場合、これらの疾患状態を治療するために使用されうる本発明に係る化合物は、治癒的治療に対するのと同じ用量範囲(つまり経口投薬形態では約250マイクログラムから約1グラム又はそれ以上を一日一回から4回)を、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染を防止し、又は、臨床的徴候にそれ自体が顕れるC型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染の発症を延ばす予防薬として投与することができる。
【0083】
また、本発明に係る化合物は、本発明の他の化合物を含む、一又は複数の抗ウイルス剤と併用して又は交互に投与することができる。本発明に係るある種の化合物は、他の化合物の代謝、異化又は不活化を減じることによって本発明に係るある種の薬剤の生物学的活性を向上させるのに効果的であり得、よってこの意図される効果のために同時投与される。
【0084】
IV.立体異性と多型性
本発明の化合物は幾つかのキラル中心を持ち、光学的に活性なラセミ体として存在し単離されうることが理解される。幾つかの化合物は多型性を示しうる。本発明は、ここに記載した有用な性質を有している本発明の化合物のラセミの、光学的に活性な、ジアステレオマー、多型性又は立体異性形態、又はその混合体を包含するものと理解される。光学的に活性な形態は、(例えば再結晶法によるラセミ体の分割、光学的に活性な出発材料からの合成、キラル合成、又はキラル固定相を使用するクロマトグラフィー分離によって)如何にして調製するかは当該分野でよく知られている。
ヌクレオシドの炭素はキラルであり、その非水素置換基(それぞれ塩基及びCHOR基)は糖環系に対してシス(同じ側)かトランス(反対側)の何れかでありうる。従って、4種の光学異性体は、(酸素原子が後ろにくるように糖部分を水平面に配置する場合)次の立体配置によって表される:シス(双方の基が「上」を向いたシスで、天然に生じるβ-Dの配置に対応する)、シス(双方の基が「下」を向いたシスで、非天然のβ-L配置ある)、トランス(C2'置換基が「上」を向き、C4'置換基が「下」を向いている)、及びトランス(C2'置換基が「下」を向き、C4'置換基が「上」を向いている)。「D-ヌクレオシド」は天然立体配置のシスヌクレオシドであり、「L-ヌクレオシド」は非天然発生立体配置のシスヌクレオシドである。
同様に、殆どのアミノ酸はキラルであり(L又はDと命名され、ここでLエナンチオマーが天然に生じる立体配置である)、別個のエナンチオマーとして存在しうる。
【0085】
光学的に活性な物質を得る方法の例は当該分野で知られており、少なくとも次のものを含む:
i)結晶の物理的分離 − 個々のエナンチオマーの巨視的結晶をマニュアル操作で分離する技術。この技術は、別個のエナンチオマーが存在する場合、つまり物質が集塊状で結晶が目で見て区別される場合に使用することができる;
ii)同時結晶化 − 個々のエナンチオマーをラセミ体の溶液から別個に結晶化させる秘術で、後者が固体状態で集塊状である場合のみ可能である;
iii)酵素的分割 − エナンチオマーの酵素との反応速度の差によってラセミ体を部分的に又は完全に分離する技術。
iv)酵素的不斉合成 − 合成の少なくとも一工程で酵素反応を使用して所望のエナンチオマーのエナンチオマーの純度が高いかそれに富んだ合成前駆体を得る合成技術;
v)化学的不斉合成 − 所望のエナンチオマーを、生成物中に非対称(つまり鏡像異性)をつくりだす条件でアキラルな前駆体から合成する合成技術で、キラル触媒又はキラル補助剤を使用して達成することができる;
vi)ジアステレオマー分離 − 個々のエナンチオマーをジアステレオマーに転換するエナンチオマーの純度が高い試薬(鏡像異性)とラセミ化合物を反応させる技術。得られたジアステレオマーをついでその今度は区別できる構造的差異を利用してクロマトグラフィー又は結晶化によって分離し、その後にキラル補助剤を除去して所望のエナンチオマーを得る;
【0086】
vii)一次及び二次不斉転換 − ラセミ化合物からのジアステレオマーが平衡して所望のエナンチオマー溶液中で優勢になるか所望のエナンチオマーからのジアステレオマーの優先的な結晶化が平衡を乱し、原理的には最終的に全ての物質が所望のエナンチオマーから結晶性ジアステレオマーに転換される。ついで所望のエナンチオマーがジアステレオマーから放出される;
viii)動力学的分解 − この技術は動力学的条件下でキラル、非ラセミ試薬又は触媒とのエナンチオマーの不等の反応速度によるラセミ化合物の部分的な又は完全な分解(又は部分的に分解した化合物の更なる分解)の達成を意味する;
ix)非ラセミ前駆体からのエナンチオ特異的合成 − 所望のエナンチオマーが非キラル出発物質から得られ、立体化学的完全性を合成過程にわたって妥協しないかほんの少しだけ妥協する合成技術;
x)キラル液体クロマトグラフィー − ラセミ化合物のエナンチオマーが液体移動相においてその固定相との異なった相互作用によって分離される技術。固定相はキラル物質から形成され得るか、又は移動相は異なった相互作用を誘発するために更なるキラル物質を含み得る;
xi)キラルガスクロマトグラフィー − 固定された非ラセミキラル吸着相を含むカラムとガス移動相のその異なる相互作用によって、ラセミ化合物が揮発しエナンチオマーが分離される技術;
xii)キラル溶媒での抽出 − 特定のキラル溶媒中への一エナンチオマーの優先的な分解によりエナンチオマーが分離される技術;
xiii)キラル膜を通しての輸送 − ラセミ化合物を薄膜障壁に接触させる技術。障壁は典型的には二種の混和性流体を分離し、一方がラセミ化合物を含み、濃度又は圧力差のような推進力が膜障壁を通過する優先的輸送を生じさせる。分離は、ラセミ化合物の一つのエナンチオマーのみが通過することを可能にする膜の非ラセミキラル特性の結果として生じる。
【0087】
シミュレートした移動床クロマトグラフィーを含むキラルクロマトグラフィーが一実施態様で使用される。様々なキラル固定相が商業的に入手可能である。
ここに記載した化合物の幾つかはオレフィン性二重結合を含み、別段の記載をしない限り、E及びZ幾何異性体を含むことを意味する。
また、ここに記載されたヌクレオシドの幾らかは、ケト-エノール互変異性体のような互変異性体として存在しうる。個々の互変異性体並びにその混合物は以下に例証する本発明の化合物内に包含されることが意図される。
(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジン:

(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルグアノシン:

(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルアデノシン:

上の各例では、最初に記載した構造が好ましい形態である。
【0088】
V.プロドラッグ及び誘導体
活性化合物は、受容者への投与時に親化合物を直接的に又は間接的に提供し得るか又は活性自体を示す任意の塩又はプロドラッグとして投与することができる。非限定的な例は薬学的に許容可能な塩(あるいは「生理学的に許容可能な塩」と称される)、及び5'位、又はプリンもしくはピリミジン塩基(「薬学的に許容可能なプロドラッグ」の一タイプ」)がアルキル化、アシル化、又はその他修飾された化合物である。更に、修飾は、親化合物に対する活性を増大させる場合に、化合物の生物学的活性に影響を及ぼし得る。これは、ここに記載された方法又は当業者に知られた他の方法に従って塩又はプロドラッグを調製し、その抗ウイルス活性を試験することにより容易に評価することができる。
【0089】
薬学的に許容可能な塩
化合物が安定な非毒性の酸又は塩基塩を形成するのに十分な塩基性又は酸性である場合、薬学的に許容可能な塩として化合物を投与するのが適切でありうる。薬学的に許容可能な塩の例は、酸の付加により形成される有機酸付加塩であり、これは生理学的に許容可能なアニオン、例えばトシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、、α-グリセロリン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、及びサリチル酸塩を形成する。硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、臭化水素酸塩及びリン酸を含む好適な無機塩がまた形成されうる。好適な実施態様では、塩は一又は二塩酸塩である。
薬学的に許容可能な塩は当該分野でよく知られた標準的な手順を使用して、例えば生理学的に許容可能なアニオンを生じる好適な酸とアミンのような十分に塩基性の化合物を反応させることによって、得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム又はリチウム)又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩をまた形成することができる。一実施態様では、塩は化合物の塩酸塩、臭化水素酸塩、又はメシル酸塩である。他の実施態様では、薬学的に許容可能な塩は二塩酸塩、二臭化水素酸塩、又は二メシル酸塩である。
【0090】
ヌクレオシドプロドラッグ製剤
ここに記載されたヌクレオシドはヌクレオシドの活性、生物学的利用能、安定性を増大させ又は他に性質を改変させるためにヌクレオチドプロドラッグとして投与することができる。多くのヌクレオチドプロドラッグリガンドが知られている。一般に、ヌクレオシドのモノ、ジ又はトリホスフェートのアルキル化、アシル化又は他の親油性修飾は極性を減少させ細胞内への流通を可能にする。ホスフェート塩部分へ一又は複数の水素を置換することができる置換基の例はアイルシル(ailcyl)、アリール、ステロイド、炭水化物で、糖、1,2-ジアシルグリセロール及びアルコールを含む。多くのものがR. Jones及びN. Bisehoferger, Antiviral Research, 27 (1995) 1-17に記載されている。これらの何れも所望の効果を達成するために開示されたヌクレオシドと併用して使用することができる。
他の実施態様では、ヌクレオシドはホスホネート又はSATE誘導体として送達される。
【0091】
活性なヌクレオシドはまた2'-、3'-及び/又は5'-ホスホエーテル脂質又は2'-、3'-及び/又は5'-エーテル脂質として提供することができる。非限定的な例は、出典明示によりここに取り込まれる次の文献に記載されている:Kucera, L. S. , N. Iyer, E. Leake, A. Raben, Modest E. K. , D. L. W. , 及びC. Piantadosi. 1990. "Novel membrane-interactive ether lipid analogs that inhibit infectious HIV-1 production and induce defective virus formation." AIDS Res. Hum. Retro Viruses. 6: 491-501;Piantadosi, C. , J. Marasco C. J. , S. L. Morris-Natschke, K. L. Meyer, F. Gumus, J. R. Surles, K. S. Ishaq, L. S. Kucera, N. lyer, C.A. Wallen, S. Piantadosi, 及び E. J. Modest. 1991. "Synthesis and evaluation of novel ether lipid nucleoside conjugates for anti-HIV activity." J. Med. Chem. 34: 1408.1414 ; Hosteller, K. Y. , D. D. Richman, D. A. Carson, L. M. Stuhmiller, G. M. T. van Wijk, 及び H. van den Bosch. 1992. "Greatly enhanced inhibition of human immunodeficiency virus type 1 replication in CEM and HT4-6C cells by 3'-deoxythymine diphosphate dimyristoylglycerol, a lipid prodrug of 3,-deoxythymine."Antlnzicrob. Agents Chemother. 36 : 2025. 2029;Hosetler, K. Y. , L. M.Stuhmiller, H. B. Lenting, H. van den Bosch, 及び D. D. Richman, 1990. "Synthesis and antiretroviral activity of phospholipid analogs of azidothymidine and other antiviral nucleosides."J.Biol. Chem. 265: 61127。
【0092】
ヌクレオシドに、好ましくはヌクレオシドの2'-、3'-及び/又は5'-OH位に共有的に導入することができる好適な親油性置換基又は親油性調製物を開示する米国特許の非限定的な例には、米国特許第5149794号(1992年9月22日、Yatvin等);第5194654号(1993年3月16日、Hostetler等);第5223263号(1993年6月29日、Hostetler等);第5256641号(1993年10月26日、Yatvin等);第5411947号(1995年5月2日、Hostetler等);第5463092号(1995年10月31日、Hostetler等);第5543389号(1996年8月6日、Yatvin等);第5543390号(1996年8月6日、Yatvin等);第5543391号(1996年8月6日、Yatvin等);及び第5554728号(1996年9月10日、Basava等)が含まれ、その全てが出典明示によりここに取り込まれる。本発明のヌクレオシドに結合させることができる親油性置換基又は親油性調製物を開示する外国特許出願には、WO89/02733、WO90/00555、WO91/16920、WO91/18914、WO93/00910、WO94/26273、WO96/15132、EP0350287、EP93917054.4及びWO91/19721が含まれる。
アリールエステル、特にフェニルエステルがまた提供される。非限定的な例はDeLambert等, J. Med. Chem. 37:498 (1994)に記載されている。ホスフェートに対してオルト位のカルボン酸エステルを含むフェニルエステルがまた提供される。Khaninei及びTorrence, J. Med. Chem.; 39: 41094115 (1996)。特に、ある場合には、加水分解を加速するためにオルト又はパラ位の置換基を使用して、親化合物を生成するベンジルエステルが提供される。このクラスのプロドラッグの例はMitchell等, J. Chem. Soc. Perkin Trans. I 2345 (1992);Brook等のWO 91/19721;及びGlazier等のWO 91/1 9721に記載されている。
【0093】
環状及び非環状ホスホネートエステルもまた提供される。非限定的な例はHunston等, J. Med. Chem. 27: 440-444(1984)及びStarrett等J. Med. Chem. 37: 1857-1864 (1994)に記載されている。また、環状3',5'-ホスフェートエステルが提供される。非限定的な例はMeier等J. Med. Chem. 22: 811-815 (1979)に記載されている。環状1',3'-プロパニルホスホネート及びホスフェートエステル、例えば縮合アリール環を含むもの、つまり、シクロサリゲニルエステルがまた提供される(Meier等, Bioorg. Med. Chem. Lett. 7: 99-104 (1997))。モノホスフェートの未置換環状1',3'-プロパニルエステルもまた提供される(Farquhar等, J Med. Chem. 26: 1153(1983); Farquhar等, J. Med. Chem. 28:1358(1985))。また、C-1'がピバロイルオキシメチルオキシ基で置換された環状1',3'-プロパニルエステルが提供される(Freed等, Biochem. Pharmac. 38 : 3193(1989);Biller等, 米国特許第5,157,027号)。
環状ホスホラミデートは酸化機構によってインビボで開裂することが知られている。従って、本発明の一実施態様では、様々な1',3'プロパニルサイクリックホスホラミデートが提供される。非限定的な例はZon, Progress in Med. Chem. 19,1205 (1982)に開示されている。また、多くの2'-及び3'-置換プロエステルが提供される。2'-置換基にはメチル、ジメチル、ブロモ、トリフルオロメチル、クロロ、ヒドロキシ、及びメトキシが含まれ;3'-置換基にはフェニル、メチル、トリフルオロメチル、エチル、プロピル、i-プロピル、及びシクロヘキシルが含まれる。様々な1'-置換類似体もまた提供される。
【0094】
リン含有化合物の環状エステルもまた提供される。非限定的な例は次に記載される:
・ Nifantyev等, Phosphorus, Sulfur Silicon and Related Eelements, 113: 1 (1996); Wijnberg等, EP-180276 Alにおいて報告されているリン酸のジ及びトリエステル;
・ リン(III)酸エステル。Kryuchkov等, Izy. Akad. Nauk SSSR, Ser. Khim. 6: 1244 (1987)。化合物の幾つかはL-ドーパ前駆体の不斉合成に有用であることが記載されている。Sylvain等, DE3S 12781 Al;
・ ホスホラミデート。Shili等, Bull. Inst. Chem. Acad. Sin, 41: 9 (1994); Edmundson等, J. Chem. Res. Synop. 5: 122 (1989);及び
・ ホスホネート。Neidlein等, Heterocycles 35: 1185 (1993)。
【0095】
-アシルプロドラッグ
本発明はまたN-アシルプロドラッグを提供する。(2'R)-2'-F-2'-C-メチルシチジンのN-アシル誘導体の非限定的な例を以下に示す:

ここでRはここに記載の任意のアシル基でありうる。
本発明はまた(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド(β-D又はβ-L)のプロドラッグが3'及び/又は5'位に生物学的に開裂可能な部分を含む他の実施態様も考慮する。好適な部分は、D又はL-バリルを含む合成D又はLアミノ酸エステルの天然のものであるが、好ましくはL-アミノ酸エステル、例えばL-バリル、及びアセチルを含むアルキルエステルである。従って、本発明は、特に、任意の所望のプリン又はピリミジン塩基との(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド(β-D又はβ-L)ヌクレオシドの3'、5'-L又はD-ジアミノ酸エステル、好ましくはL-アミノ酸のもので、親薬剤が場合によっては15マイクロモル未満、更により好ましくは10マイクロモル未満のEC50を持つもの;任意の所望のプリン又はピリミジン塩基との(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド(β-D又はβ-L)の3'-(アルキル又はアリール)エステル又は3'、5'-L-ジ(アルキル又はアリール)エステルで、親薬剤が場合によっては10又は15マイクロモル未満のEC50を持つもの;及び(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルヌクレオシド(β-D又はβ-L)の3'、5'-ジエステルのプロドラッグで、(i)3'エステルがアミノ酸エステルであり、5'-エステルがアルキル又はアリールエステルであるもの;(ii)両方のエステルがアミノ酸エステルであるもの;(iii)両方のエステルが独立してアルキル又はアリールエステルであるもの;及び(iv)3'エステルが独立してアルキル又はアリールエステルであり、5'-エステルがアミノ酸エステルであるもので、親薬剤が場合によっては10又は15マイクロモル未満のEC50を持つものを含む。
【0096】
本発明に入るプロドラッグの非限定的な例は次のものである:

【0097】
VI.併用又は交互療法
他の実施態様では、ここに記載した任意のウイルス感染の治療、阻害、防止及び/又は予防のために、活性化合物又はその誘導体又は塩は、他の抗ウイルス剤と併用して又は交互に投与することができる。一般に、併用療法では、二又はそれ以上の薬剤の有効投与量が一緒に投与されるが、交互療法の間は、各薬剤の有効量が連続的に投与される。用量は薬剤の吸収、不活性化及び排泄速度並びに当業者に知られている他の因子に依存する。用量値はまた軽減されるべき症状の深刻度によって変わることに留意されたい。更に、任意の特定の患者に対して、特定の投薬レジメン及びスケジュールは個々の必要性及び組成物を投与し又はその投与の指導をする者の専門的な判断に従って、経時的に調節されなければならない。
抗ウイルス剤での長い治療後にはフラビウイルス属、ペスチウイルス属又はHCVの薬剤耐性変異体が出現しうることが認められる。薬剤耐性は最も典型的にはウイルス複製に用いられる酵素をコードする遺伝子の突然変異によって生じる。ウイルス感染に対する薬剤の効果は、主要な薬剤によって引き起こされるものとは異なる変異を誘導する第二、またおそらくは第三の抗ウイルス化合物と併用又は交互使用して化合物を投与することによって長くし、増強し又は回復させることができる。あるいは、薬剤の薬物動態学、体内分布又は他のパラメータをそのような併用又は交互療法によって改変することができる。一般に、併用療法は、典型的には、ウイルスに対して多重の同時のストレスを誘導するので交互療法よりも好ましい。
【0098】
例えば、当業者であれば、任意の抗ウイルス薬又は治療法を本発明のヌクレオシドと併用して又は交互に使用することができることを理解するであろう。本発明の背景に記載したウイルス治療法の任意のものを本明細書に記載した化合物と併用して又は交互に使用することができる。ここに開示された化合物と併用して使用することができる抗ウイルス剤又はそのプロドラッグのタイプの非限定的な例には、限定するものではないが、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、ペグ化インターフェロン、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンτ及びインターフェロンωを含むインターフェロン;インターロイキン10及びインターロイキン12を含むインターロイキン;リバビリン;リバビリン又はレボビリンとの併用でのインターフェロンα又はペグ化インターフェロンα;NS3インヒビター、NS3-4Aインヒビターを含むプロテアーゼインヒビター;ヘリカーゼインヒビター;HCV RNAポリメラーゼ及びNS5Bポリメラーゼインヒビターを含むポリメラーゼインヒビター;グリオトキシン;IRESインヒビター;及びアンチセンスオリゴヌクレオチド;チアゾリジン誘導体;ベンズアニリド;リボザイム;他のヌクレオシド、ヌクレオシドプロドラッグ又はヌクレオシド誘導体;1-アミノ-アルキルシクロヘキサン;ビタミンEを含む抗酸化剤;スクアレン;アマンタジン;胆汁酸;N-(ホスホノアセチル)-L-アスパラギン酸;ベンゼンジカルボキサミド;ポリアデニル酸;ベンズイミダゾール;サイモシン;βチューブリンインヒビター;予防ワクチン;免疫モジュレーター;IMPDHインヒビター;シリビン-ホスファチジルコリンファイトザム;及びミコフェノレートが含まれる。
【0099】
上に記載したタイプの薬剤又はそのプロドラッグの更なる非限定的な例には次のものが含まれる:アシクロビル(ACV)、ガンシクロビル(GCV又はDHPG)とそのプロドラッグ(例えばバリル-ガンシクロビル)、E-5-(2-ブロモビニル)-2'-デオキシウリジン(BVDU)、(E)-5-ビニル-1-β-D-アラボノシルウラシル(VaraU)、(E)-5-(2-ブロモビニル)-1-β-D-アラビノシルウラシル(BV-araU)、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノシル)-5-ヨードシトシン(D-FIAC)、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-L-アラビノシル)-5-メチルウラシル(L-FMAU,又はクレブジン)、(S)-9-(3-ヒドロキシ-2-ホスホニルメトキシプロピル)アデニン[(S)HPMPA]、(S)-9-(3-ヒドロキシ-2-ホスホニルメトキシプロピル)-2,6-ジアミノプリン[(S)-HPMPDAP]、(S)-1-(3-ヒドロキシ-2-ホスホニル-メトキシプロピル)シトシン[(S)-HPMPC、又はシドフォビル]、及び(2S,4S)-1-[2-(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキソラナ-4-イル]-5-ヨードウラシル(L-5-IoddU)、エンテカビル、ラミブジン(3TC)、LdT、LdC、テノフォビル、及びアデフォビル、2-ヒドロキシメチル-5-(5-フルオロシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの(-)-エナンチオマー((-)-FTC);2-ヒドロキシメチル-5-(シトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの(-)-エナンチオマー(3TC);カルボビル、アシクロビル、ファムシクロビル、ペンシクロビル、AZT、DDI、DDC、L-(-)-FMAU、D4T、アムドキソビル(amdoxovir)、リバーセット、ラシビル(Racivir)、アバカビル、L-DDAホスフェートプロドラッグ、及びβ-D-ジオキソラニル-6-クロロプリン(ACP)、非ヌクレオシドRT阻害剤、例えばネビラピン、MKC-442、DMP-226(サスティバ(sustiva))、プロテアーゼ阻害剤、例えばインジナビル、サキナビル、カレトラ(Kaletra)、アタザナビル;及び抗HIV化合物、例えばBILN-2061、ISIS14803;ビラミジン、NM283、VX-497、JKT-003、レボビリン、イサトリビン、アルブフェロン、ペグ-インフェルゲン(Peg-infergen)、VX-950、R803、HCV-086、R1479及びDMP45。
【0100】
薬学的組成物
ペスチウイルス、フラビウイルス、HCV感染、又はここに記載した任意の他の症状に感染したヒトを含む宿主、又はRNA-依存性RNAウイルスポリメラーゼによって複製するか又はここに記載された任意の他の疾患を治療するための他の生物は、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤の存在下で有効量の活性化合物又はその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を患者に投与することによって治療することができる。活性物質は、液体又は固形形態で、任意の経路、例えば経口的、非傾向的、静脈内、皮内、皮下、又は局所的に投与することができる。
C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス及び黄熱病ウイルスを含むフラビウイルス科ウイルス感染及びライノウイルス感染のための化合物の好適な用量は一日当たり約50から約2000mgを一回から四回の範囲である。より低い用量が有用な場合があり、よってこの範囲は一日当たり50−1000mgを一回から四回を含む。薬学的に許容可能な塩及びプロドラッグの有効投薬量範囲は送達される親ヌクレオシドの重さに基づいて計算することができる。塩又はプロドラッグがそれ自身で活性を示すならば、有効用量は塩又はプロドラッグの重さを使用して上記のようにして又は当業者に知られた他の手段によって推定することができる。
【0101】
化合物は、限定するものではないが25から3000mg、好ましくは50から2000mgの活性成分を単位投薬形態当たりに含むものを含む、任意の好適な単位投薬形態で簡便に投与される。50、100、200、250、300、400、500、600、700、800、900又は1000mgの一又は複数の投薬形態での場合を含む50−1000mgの経口用量が通常は簡便である。0.1−50mg、又は0.1−20mg又は0.1−10.0mgの用量もまた考えられる。更に、例えば注射又は吸入のように非経口経路による投与の場合に低用量が使用されうる。
理想的には、活性成分は約5.0から70μM、好ましくは約5.0から15μMの活性化合物のピーク血漿濃度(Cmax)を達成するように投与されるべきである。これは、例えば、場合によっては生理食塩水中0.1から5%の活性成分溶液の静脈内注射によって達成することができ、又は活性成分のボーラスとして投与される。
薬剤組成物中における活性化合物の濃度は薬剤の吸収、不活性化及び排泄速度並びに当業者に知られている他の因子に依存する。用量値はまた軽減されるべき症状の深刻度によって変わることに留意されたい。更に、任意の特定の患者に対して、特定の投薬レジメンは個々の必要性及び組成物を投与し又はその投与の指導をする者の専門的な判断に従って、経時的に調節されなければならず、ここに記載した濃度範囲は例示のためのみのものであり、本発明に係る組成物の範囲又は実施に制限を課すものではない。活性成分は一度に投与することができ、又は変動する時間間隔をおいて複数の小用量に分けることもできる。
【0102】
活性化合物の投与の好適な態様は経口である。経口組成物は一般に不活性な希釈剤又は可食担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入されていてもよいし又は錠剤に圧密される。経口治療投与の目的では、活性化合物は賦形剤と共に導入し、錠剤、トローチ剤又はカプセル剤の形態で使用することができる。薬学的に適合性のある結合剤及び/又はアジュバント物質も組成物の一部として含有せしめることができる。
錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ剤等々は次の成分又は同様な性質の化合物の任意のものを含みうる:バインダー、例えばマイクロクリスタリンセルロース、トラガカントガム又はゼラチン;賦形剤、例えばデンプン又はラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモジェル(Primogel)又はコーンスターチ;潤沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はステロート(Sterotes);流動促進剤(glidant)、例えばコロイダル二酸化ケイ素;甘味料、例えばスクロース又はサッカリン;又は香味料、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香味料。投薬単位形態がカプセルである場合は、上記のタイプの物質に加えて、脂肪油のような液体担体を含みうる。また、投薬単位形態は投薬単位の物理的形態を改変する様々な他の物質、例えば糖衣、シェラック、又は他の腸溶剤を含みうる。
化合物はエリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、チューインガム等の成分として投与することができる。シロップは活性化合物に加えてスクロースを甘味料として、またある種の保存料、染料及び着色料及び香料を含みうる。
【0103】
化合物又はその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩は、所望の作用を損なわない他の活性物質、又は所望の作用を補填する物質、例えば抗生物質、抗真菌剤、抗炎症剤、又は他の抗ウイルス剤で、他のヌクレオシド化合物を含むものと混合することもできる。非経口、皮内、皮下、又は局所適用のために使用される溶液又は懸濁液は次の成分を含みうる:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩及び浸透圧調整剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース。非経口製剤はガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は多用量バイアルに封入することができる。
静脈内投与される場合は、好適な担体は生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0104】
好適な実施態様では、活性化合物は、移植片及びマイクロカプセル化デリバリー系を含む徐放製剤のような、体からの迅速な除去から化合物を保護する担体と調製される。エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸のような生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は当業者には明らかであろう。その物質はまたAlza社ぁら商業的に得ることもできる。
リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞を標的としたリポソームを含む)がまた薬学的に許容可能な担体として好適である。これらは当業者に知られた方法によって調製することができる。例えば、リポソーム製剤は適切な脂質(例えばステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラカドイルホスファチジルコリン及びコレステロール)を無機溶媒中に溶解させ、溶媒をついで蒸発させ、後に容器の表面上に乾燥した脂質の薄膜を残すことによって調製することができる。活性化合物又はそのモノホスフェート、ジホスフェート及び/又はトリホスフェート誘導体の水溶液をついで容器に導入する。ついで、容器を手で旋回させて容器の側部から脂質物質を遊離させ、脂質凝集体を分散させて、リポソーム懸濁液を形成する。
【0105】
VII.生物学的方法
Huh7細胞中でのHCVレプリコン系での候補化合物の抗ウイルス試験
HCV-レプリコンを含むHuh7細胞を、10%仔ウシ血清、1X非必須アミノ酸、Pen-Strep-Glu(それぞれ100単位/リットル、100マイクログラム/リットル、及び2.92mg/リットル)及び500から1000マイクログラム/ミリリットルのG418を含むDMEM培地(高グルコース、ピルビン酸不含有)中で培養することができる。抗ウイルススクリーニングアッセイはG418がない同じ培地で次のようにして実施することができる:対数増殖期に細胞を維持するために、細胞は低密度で、例えばウェル当たり1000細胞で96ウェルプレートに播種する。細胞の播種後直ぐに試験化合物を添加してインキュベーター中で37℃にて3から7日の期間インキュベートする。ついで、培地を除去し、全核酸抽出のために細胞を準備する(レプリコンRNA及び宿主RNAを含む)。ついで、レプリコンRNAをQ-RT-PCRプロトコルで増幅し、よって定量することができる。未処理のコントロールと比較した場合のレプリコンHCV RNAレベルの観察される差が試験化合物の抗ウイルス能を表す一方法である。
他の典型的な設定では、化合物がウイルスRNAポリメラーゼ活性を減少させるが、宿主RNAポリメラーゼ活性は減少させないかも知れない。従って、rRNA又はβ-アクチンmRNA(又は任意の他の宿主RNA断片)の定量と非薬剤コントロールのRNAレベルとの比較は細胞RNAポリメラーゼに対する試験化合物の阻害効果の相対的測定結果である。
【0106】
活性なトリホスフェートへのヌクレオシドのリン酸化アッセイ
化合物の細胞性代謝を決定するために、Huh-7細胞をアメリカンタイプカルチャーコレクション(Rockville, MD)から取得し、非必須アミノ酸、1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補填した基礎培地で225cm組織培養フラスコ中で成長させる。3日毎に培地を新しくし、細胞を一週間に一回継代培養する。30mLのトリプシン-EDTAへの10分の曝露で付着単層を脱着し培地で三回連続して洗浄した後、コンフルエントなHuH-7細胞を6ウェルプレートにウェル当たり2.5x10細胞の密度で播種し、特定した時間の間、10μMの[H]標識活性化合物(500dpm/pmol)に曝露する。細胞を5%のCO雰囲気下で37℃に維持する。選択した時点で、氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて細胞を三回洗浄する。細胞内活性化合物とその各代謝産物を、細胞ペレットを60%メタノールを用いて−20℃でインキュベートとした後、氷浴中で1時間、更なる20μLの冷メタノールで抽出することにより抽出する。ついで、抽出物を混合し、穏やかな濾過された空気流下で乾燥させ、HPLC分析まで−20℃で保存する。
【0107】
カニクイザルでの生物学的利用能のアッセイ
試験開始1週間前に、カニクイザルに外科的に慢性静脈カテーテル及び皮下静脈アクセスポート(VAP)を移植して、採血を容易にし、血液学及び血清化学評価を含む物理的検査を行い、体重を記録した。各サル(全6匹)は、静脈内ボーラス(3匹のサル、IV)又は経口胃管栄養法(3匹のサル、PO)の何れかによって、5mg/mLの用量濃度で、10mg/kgの用量レベルの活性化合物の各用量と組み合わせたおよそ250μCiのH標識化合物を受ける。各投薬シリンジは投薬の前に計量して、投与される製剤の量を重量測定的に決定する。尿試料は指定された間隔(投薬前およそ18−0時間、投薬後0−4,4−8及び8−12時間)でパンキャッチを介して収集し、加工する。血液試料を慢性静脈カテーテル及びVAPを介して又は慢性静脈カテーテル法が可能ではないならば末梢血管から同様にして収集する(投薬前、投薬後0.25、0.5、1、2、3、6、8、12及び24時間)。血液及び尿試料について最大濃度(Cmax)、最大濃度が達成される時間(Tmax)、曲線下の面積(AUC)、用量濃度の半減期(T1/2)、クリアランス(CL)、定常状態体積及び分布(Vss)及び生物学的利用能(F)。
【0108】
骨髄毒性アッセイ
ヒト骨髄細胞を正常な健常志願者から集め、単核集団を、過去にSommadossi J-P, Carlisle R. "Toxicity of 3'-azido-3'- deoxythymidine and 9-(1,3-dihydroxy-2-propoxymethyl)guanine for normal human hematopoietic progenitor cells in vitro" Antimicrobial Agents and Chemotherapy 1987; 31: 452-454;及びSommadossi J-P, Schinazi RF, Chu CK, Xie M-Y."Comparison of cytotoxicity of the (-)- and (+)- enantiomer of 2', 3'-dideoxy-3'-thiacytidine in normal human bone marrow progenitor cells" Biochemical Pharmacology 1992; 44: 1921-1925に記載されているようにしてFicoll-Hypaque勾配遠心法によって分離する。CFU-GM及びBFU-Eに対する培養アッセイを、二層軟寒天又はメチルセルロース法を使用して実施した。薬剤を組織培養培地に希釈し濾過する。空気中5%のCOの加湿雰囲気中37℃で14から18日後に、50細胞を超えるコロニーを、倒立顕微鏡を用いてカウントする。結果を、溶媒コントロール培養と比較した薬剤の存在下でのコロニー形成の阻害割合として表す。
【0109】
ミトコンロリア毒性アッセイ
50ミクロリットルの2X薬剤希釈物を96ウェルプレートにウェル毎に添加した。「薬剤なし」(培地のみ)コントロールを用いて、生産されたミトコンドリアDNA及びリボソームDNAの最大量を決定した。10μMの3TCをネガティブコントロールとして使用し、10μMのddCを毒性コントロールとして使用した。リボソームDNAレベルを用いてミトコンドリアに対する特異的毒性又は一般に細胞毒性を決定した。HepG2細胞(50μlで5000細胞/ウェル)をプレートに添加した。プレートを加湿5%CO雰囲気中で7日間37℃でインキュベートした。インキュベーション後、上清を除去し、乳酸定量のために保存し、全DNAをRNeasy96ハンドブック(1999年2月)の22−23頁に記載されたようにして細胞から抽出した。DNA消化は実施しなかったので、全RNA及びDNAが抽出された。
抽出されたDNAを増幅し、各試料に対してミトコンドリアDNA及びリボソームDNAの変化を決定した。コントロールに対してのリボソームDNAについて正規化されたミトコンドリアDNAの倍数差を計算した。
乳酸定量はD-乳酸/L-乳酸試験キット(Boehringer Mannheim/ R-Biopharm/ Roche)よって実施した。各試料に対して産生された乳酸の全量並びに乳酸産生における倍数変化(乳酸%/rDNA%)が製造者の指示書に記載されているようにして見出された。
【0110】
細胞毒性アッセイ
50μlの2Xの薬剤希釈物を96ウェルプレートにウェル毎に添加した。薬剤の最終濃度は1から100μMの範囲であった。「薬剤なし」(培地のみ)コントロールを用いて、最少吸光度値を決定し、「細胞+培地のみ」のコントロールを用いて最大吸光度値を決定した。溶媒コントロールを又使用した。ついで、細胞を添加し(PBM:5x10細胞/ウェル;CEM:2.5x10細胞/ウェル;Vero、HepG2、Huh-7、及びクローンA:5x10細胞/ウェル)、加湿した5%CO雰囲気中で3−5日間、37℃でインキュベートした(PBM:5日;CEM:3日、他の全て:4日)。インキュベーション後、Cell Titer Aqueous One Solution Cell Proliferation Assayからの20μlのMTS染料を各ウェルに添加し、プレートを2−4時間、再インキュベートした。ついで、吸光度(490nm)を培地のみ/無細胞ウェルをブランクとして使用して、ELISAプレートリーダーで読み取った。阻害割合を見出し、使用してCC50を計算した。
【0111】
マウスでのインビボ毒性
本発明に開示された様々なヌクレオシドの雌スイスマウス中への注射後にインビボ毒性をまた決定した。腹腔内注射を特定のヌクレオシドの様々な用量の投薬の0日目、1日目、2日目、3日目、及び5日目に行った。別の動物にコントロール群としてビヒクルを注射した。これらの試験では、各投薬群は5−10匹のマウスを含んでいた。各マウスの平均体重変化を化合物の毒性の顕れとして測定した。
【0112】
(BVDV)収量減少アッセイ
Madin-Darby Bovine Kidney(MDBK)細胞を、10%ウシ血清と100μg/mlペニシリン-ストレプトマイシンを補填したダルベッコ変法イーグル培地中で成長させた。細胞を5x10細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、加湿5%CO雰囲気中で37℃にて72時間インキュベートした。細胞を細胞壊死性(NADL株)又は非細胞壊死性(SD-1株)BVDVの何れかに10−2のウイルス希釈度で感染させ、45分インキュベートした。細胞単層を培地で三回洗浄した。用量応答濃度の新鮮培地含有試験化合物又はポジティブコントロールとしてのリバビリンを培養に添加し、薬剤を含まない培地を薬剤なしコントロールに添加した。72時間のインキュベーション後、上清を収集し、QIAmp Viral RNA Mini Kit(Qiagen, CA)を使用して抽出した。ウイルス負荷をNADL又はSD-1(1)に特異的なプライマーを用いてQ-RT-PCRによって定量した。
【0113】
合成プロトコル
次の非限定的な実施態様は本発明のヌクレオシドを得るための幾つかの一般的な方法を例示する。本発明の化合物の製造のための二つの代表的な一般方法をスキーム1及び2で概説し、これらの一般方法の更に特定の例をスキーム3(実施例1)、スキーム4(実施例2)、スキーム5(実施例3)、及びスキーム6(実施例4)に提供する。スキーム1は、(2R)2-デオキシ-2-メチル-2-フルオロ-炭水化物から出発する一般化プロセスを表し、核酸塩基と縮合させることで本発明のヌクレオシドを形成する。スキーム2は場合によってはC-4'が置換された予め形成されたプリン又はピリミジンヌクレオシドから出発し、本発明のC-2'(R)メチル、フルオロヌクレオシドを構築する。これらのスキームは、β-D-リボ立体配置においてフラノース環が存在している一般式(I)及び(II)の本発明の化合物の合成を例証しているが、決して本発明の範囲に制限を付すことを意図しているものではなく、そのように解釈されてはならない。ヌクレオシド及びヌクレオシド合成の分野の当業者であれば、次の調製手順の条件及びプロセスの既知の変形並びにヌクレオシドの既知の操作を用いて、本発明のこれらの及び他の化合物を調製することができることは直ぐに理解するであろう。また、本発明の化合物に対応するL-エナンチオマーは、出発物質として対応するL-炭水化物構築ブロック又はヌクレオシドL-エナンチオマーを用いて同じ方法に従って調製することができる。
【0114】
1.適切に修飾された糖での核酸塩基のグリコシル化

スキーム1の工程1は、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム又はジエチルエーテルのような無水溶媒中においてメチルリチウム、トリメチルアルミニウム、又はメチルマグネシウム臭化物のような適切なアルキル化剤を使用して、2-メチル基を導入する。化合物1−1から1−4は純粋にα又はβであり得、あるいはそれらはα及びβアノマーの両方を任意の比で含むアノマー混合物として存在しうる。しかしながら、構造1−1の好適なアノマー立体配置はβである。
工程2はアルキルフラノシドの2位にフッ素原子を導入する。これは、無水の非極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン又はトルエン中で、市販のフッ素化剤、例えば三フッ化(ジエチルアミノ)(DAST)又はDeoxofluorを用いて第3級アルコール1−2の処理によって達成することができる。好ましくは立体化学はC-2で立体配置が逆転して進行する。つまり、構造1−2においてC-2ヒドロキシル「上」(又はアラビノフラノシド)から出発して、C-2フッ素は中間体リボフラノシド1−3では「下」である。
【0115】
工程3では、任意の保護基(Pg)を脱保護することができ、また残りの操作により適した基に再保護される(T. W. Greene及びP. G. M. Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis, "3版, John Wiley & Sons, 1999)。例えば、ベンジルエーテル(Bn)は保護されたヌクレオシド1−5では除去が困難で、脱保護され、構造タイプ1−5のヌクレオシドから除去するのにより容易な基で置き換えられうる。更に、アノマー位(C-1)はまた場合によっては核酸塩基とのカップリング反応のために好適な基に操作することができる(工程4)。アノマー操作のための幾つかの方法がヌクレオシド合成の当業者には知られている。無水酢酸、酢酸、及び触媒量の硫酸の混合物(アセトリシス)によるアルキルフラノシド(1−3、R=アルキル)の処理による非限定的な例では、R=Acで場合によっては保護基を持つ構造1−4が得られる。また、1−3においてアルキル基は、例えば、限定されないが硫酸、塩酸、及び臭化水素酸からなる無機酸又は限定されないがトリフルオロ酢酸、酢酸及びギ酸からなる有機酸を使用することにより(室温又は高温で)最初に1-Oアルキル基を1-ヒドロキシル基に加水分解することによりアセテート、ベンゾエート、メシレート、トシレート、トリフレート、又はトシレートに転換させることができる。ついで、還元糖を、トリエチルアミン、ピリジン、又はジメチルアミノピリジンのような適当な塩基の存在下で、塩化アセチル、無水酢酸、塩化ベンゾイル、又は塩化トシルで処理することによって所望の炭水化物に転換させることができる。
ヌクレオシド結合は、通常はトルエン、アセトニトリル、ベンゼン、又はこれら溶媒の任意のもの又は全ての混合物のような非極性溶媒中、高温にて、四塩化スズ、四塩化チタン、トリメチルシリルトリフレートのようなルイス酸又は水銀(II)試薬(HgO/HgBr)の存在下で適切なパーシリル化核酸塩基を用いて中間体1−3又は1−4を処理することによって構築される。
保護されたヌクレオシド又は構造式1−5における任意基の保護基は確率された脱保護法(T. W. Greene及びP. G. M. Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis," 3版, John Wiley & Sons, 1999)に従って切断することができる。
【0116】
2.予め形成されたヌクレオシドの修飾

このプロセスの出発物質は2'-OH及び2'-Hを持つ適切に置換されたプリン又はピリミジンヌクレオシドである。そのヌクレオシドは購入するか標準的なカップリング技術を含む任意の既知の手段によって調製することができる。ヌクレオシドは、場合によっては、T. W. Greene及びP. G. M. Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis," 3版, John Wiley & Sons, 1999に教唆されるように、当業者には公知の方法によって、適切な保護基、好ましくはアシル又はシリル基で保護することができる。
プリン又はピリミジンヌクレオシドはついで適切な温度で適合性のある溶媒中適切な酸化剤を用いて、2'位を酸化することができ、2'-修飾ヌクレオシドを生じる。可能な酸化剤はジメチルスルホキシド、無水トリフルオロ酢酸又は無水酢酸の混合物(Swern/Moffat酸化反応)、三酸化クロム又は他のクロメート試薬、Dess-Martinパーヨージナン(periodinane)、又は四酸化ルテニウム/過ヨウ素酸ナトリウムである。
保護されていてもよいヌクレオシド2'-ケトンはついでテトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム又はジエチルエーテルのような無水溶媒中において通常は0℃以下の温度でメチルリチウム、トリメチルアルミニウム、メチルマグネシウム臭化物又は同様の試薬のようなアルキル化剤を使用して、アルキル化する。構造式2−3の化合物は2'(S)又は2'-メチル「下」、2'-OH「上」立体配置を有するのが好ましい。
【0117】
構造2−3のヌクレオシドは、脱保護され、塩基に対するO-アシル(アルキル又はアリール)、O-スルホニル、又はN-アシル(アルキル又はアリール)のような多くの保護基で再保護できる。この任意の再保護工程は化学的保護基として機能する保護基に制限される必要はない。他の保護基、例えば6から18の炭素原子単位又はアミノ酸の長鎖アシル基を核酸塩基又は糖に独立に導入することができる。保護基は活性物質のプロドラッグになりうる。
工程5は予め形成されたヌクレオシドの2'位にフッ素を導入する。これは、無水の非極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン又はトルエン中で、市販のフッ素化剤、例えば三フッ化(ジエチルアミノ)(DAST)又はDeoxofluorを用いて第3級アルコール2−4の処理によって達成することができる。好ましくは立体化学は2位で立体配置が逆転して進行する。つまり、構造2−4においてC-2'ヒドロキシル「上」(又はアラビノフラノシド)から出発して、C-2'フッ素は中間体ヌクレオシド2−5では「下」である。構造2−4のヌクレオシドの絶対的立体配置は(2'S)であり構造2−5のヌクレオシドの絶対的立体配置は(2'R)である。
ついで、構造タイプ2−5のヌクレオシドは、T.W.Greene及びP.G.M. Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis," 3版, John Wiley & Sons, 1999に教示され、当業者に知られている方法によって脱保護することができる。
【0118】
次の実施例は本発明の方法の更なる理解をもたらし、上のスキーム1及び2における一般的実施例を更に例証する。これらの実施例は例証の目的のものであり、本発明の範囲を限定するものではない。方法の一般的範囲から逸脱しないで、記載された特定の溶媒、試薬又は反応条件を、均等、類似又は好適な溶媒、試薬又は反応条件に置き換えることができる。
【実施例】
【0119】
実施例1
炭水化物を出発とする(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの合成

工程1: 化合物3−1(7.7g、0.022mmol)を無水ジエチルエーテルに溶解し−78℃まで冷却した。この溶液にMeLi(30mL,ジエチルエーテル中1.6M)を加えた。反応が完了した後、混合物を塩化アンモニウム(1M,65mL)で処理し、有機相を分離し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮乾固させた。シリカゲルクロマトグラフィーの後、ジエチルエーテル-ヘキサンから結晶化させて純粋な化合物3−2(6.31g)を得た。 H NMR(400MHz,CDC1):δ1.40(s,3H),3.41(s,3H),3.49(dd,1H,J=10.3,6.89Hz),3.57(dd,1H,J=10.3,3.88Hz),3.84(d,1H,J=7.3Hz),4.03(m,1H),4.48(s,1H),4.58(m,3H),4.83(d,1H,J=11.6Hz),7.31−7.36(m,10H);13C NMR(100MHz,CDC13):δ18.4,55.4,72.2,73.4,79.5,80.2,84.7,107.4,127.7,127.8,127.83,128.5,138.2,138.3。
【0120】
工程2: 化合物3−2をCHClに溶解させ、室温でDAST(4.0mL,30.3mmol)で処理した。その溶液を室温で一晩撹拌した。このようにして得られた混合物を飽和NaHCO(100mL)に注ぎ、飽和NaHCO(1x15mL)で洗浄した。有機層を更に通常の方法で念入りに仕上げた。シリカゲルクロマトグラフィー(1:5 EtOAc-ヘキサン)により粗化合物3−3(0.671g)を得たが、これは次工程用に十分な純度であった。 H NMR(400MHz,CDC1):δ1.43(d,3H,J=22.8Hz),3.35(s,3H),3.49(dd,1H,J=10.5,5.4Hz),3.55(dd,1H,J=10.5,4.1Hz),3.87(dd,1H,J=23.5,7.5Hz),4.26(m,1H),4.56(d,2H,J=6.9Hz),4.66(d,2H,J=8.2Hz),4.72(d,1H,J=10.8Hz),7.29−7.36(m,10H);13C NMR(100MHz,CDC13):δ17.0(d,J=24.4Hz),55.2,77.1,73.4,73.8,77.3,80.3,81.2(d,J=16Hz),99.7(d,J=178.9Hz),106.8(d,J=32.0Hz),127.7,127.8,128.1,128.3,128.5,128.6,137.8,138.3;19F NMR(100MHz,CDCl):δ−8.2(m,1F)。
【0121】
工程3: 化合物3−3(0.39g,1.1mmol)を1:2のEtOH-EtOAcに溶解し、Pd/C(〜0.1g)とシクロヘキセン(〜1mL)で処理した。混合物を一晩還流した後、セライトで濾過した。溶媒を減圧除去し、残渣をピリジン(〜5mL)に溶解させた。この溶液に塩化ベンゾイル(0.22mL,1.83mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。ピリジンを減圧除去し、残渣をCHClと飽和NaHCO(10.0mL)の間で分配した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮乾固させた。カラムクロマトグラフィーにより0.350gの純粋な化合物3−4を得た。 H NMR(400MHz,CDC1):δ1.53(d,3H,J=22.4Hz),3.39(s,3H),4.46(dd,1H,J=11.6,4.7Hz),4.58(m,1H),4.65(dd,1H,J=11.6,3.9Hz),4.87(d,1H,J=9.9Hz),5.64(dd,2H,J=24.1,7.8Hz),7.29−7.36(m,10H);19F NMR(100MHz,CDC1):δ−7.5(m,1F)。
【0122】
工程4: ビス(トリメチルシリル)-N-ベンゾイルシトシン(0.28g,0.77mmol)と化合物3−4(0.20g,0.5mmol)の1,2ジクロロエタン(2mL)及びトルエン(2mL)中の溶液をTMSOTf(0.15mL,0.77mmol)で処理した。TLCで判定して出発物質の殆どが消失したところで、溶液を室温まで冷却し水(1x5mL)、鹹水(1x5mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮乾固させた。フラッシュクロマトグラフィーの後、CHCl-ヘキサンから結晶化させて化合物3−5(68mg)を得た。 mp241℃;H NMR(400MHz,CDC1):δ1.49(d,3H,J=22.4Hz),4.64(dd,1H,J=12.9,3.4Hz),4.73(app d,1H,J=9.5Hz),4.89(dd,1H,J=12.7,2.2Hz),5.56(dd,1H,J=20.7,8.6Hz),6.52(d,1H,J=15.9Hz),7.38−7.67(m,10H),7.89(d,2H,J=6.9Hz),8.07−8.11(m,5H),8.67(s,1H);19F NMR(100MHz,CDCl):δ2.85(m,1F)。
【0123】
工程5: 化合物3−5(40mg,0.05mmol)をメタノール性アンモニアに溶解させ、室温で48時間撹拌した。溶液を濃縮乾固させ、1:4のEtOH−CHClで溶出させるクロマトグラフィー(SiO)にかけた。収量は純粋な(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジン3−6が約12mgであった。 H NMR(400MHz,CDC1):δ1.16(d,3H,J=22.0Hz),3.61(dd,1H,J=11.6,5.2Hz),3.60−3.83(m,3H,J=10.5,5.4Hz),5.24(s,1H,DOと交換可能),5.59(s,1H,DOと交換可能),5.71(d,1H,J=7.3Hz),6.08(d,1H,J=19.0Hz),7.24(d,1H,J=17.7Hz,DOと交換可能),7.87(d,1H);19NMR(100MHz,DMSO-d):δ4.13(m,1F)。
【0124】
実施例2
シチジンを出発とする(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの合成

工程1: DMF(2.06L)中に入れたシチジン(100g,0.411mol)の懸濁液に無水安息香酸(102.4g,0.452mol)を加えた。混合物を室温で20時間撹拌した。DMFを減圧除去し、残渣をジエチルエーテルで粉砕した。得られた固形物を吸引濾過で収集し、ジエチルエーテル(2x200mL)で洗浄した。室温での更なる真空乾燥によりNベンザミド(140.6g,98.3%)が得られた。この物質の一部(139.3g,0.401mol)を無水ピリジン(1.2L)に溶解させ、室温にて1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトライソプロピル-ジシロキサン(141.4mL,0.441mol)で処理した。溶液を室温で一晩撹拌した。混合物を減圧濃縮して乾固近くにし、トルエン(3x200mL)で共蒸発させた。残渣をEtOAc(1.8L)で処理し、HC1(2x200mL,0.05N)、NaHCO(5%,2x400mL)で洗浄した。有機層を洗浄し乾燥させ(NaSO)、濾過し、蒸発乾固させた。化合物4−1(256.5g,>100%)が白色のフォームとして分離され、更なる精製をしないで使用した。
【0125】
工程2: 化合物4−1(236.5g,0.40mol)をドライTHF(1.22L)に溶解させた。無水dmso(180.8mL,2.1mol)を添加し、得られた溶液を−20℃と−15℃の間まで冷却した。無水トリフルオロ酢酸(90.6mL,0.64mol)を45分かけて滴下して加え、その溶液を−20℃と−15℃の間で2時間撹拌した後、無水トリエチルアミン(223.5mL,1.6mol)を20分かけて添加した。ケトン4−2を含む粗反応物をEtOAc(500mL)に溶解させ、得られた溶液をHO(3x400mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、溶媒を減圧除去して黄色の固形物を得て、ヘキサン中Et2O(0−60%)の段階的勾配の後、ヘキサン中EtOAc(50−100%)の段階的勾配を用いて溶出させるシリカゲルカラムで精製した。このようにして得られた粗ケトン(〜192g)を石油エーテルから結晶化させて白色固形物としてケトン4−2(138.91g,シチジンから57.5%)と黄色固形物として22gの未反応出発物質4−1を得た。
【0126】
工程3: 化合物4−2(48.57g,8.26mmol)を無水トルエン(〜400mL)に溶解させ、溶媒を真空除去し、水分を排除した。ついで、残渣をもう2時間更に真空乾燥(オイルプンプ)させた。厳密に水分を除去して、残渣フォームをアルゴン下で無水ジエチルエーテル(1.03L)に溶解させた。得られた溶液をアルゴン下で−78℃まで冷却し、MeLi(1.6M,258.0mL,0.413mol)を更なる漏斗を介して滴下して加えた。添加が完了した後、混合物を−78℃で2時間撹拌した。水性1MのNHC1(500mL)をゆっくり加えた。室温まで温めた後、混合物をHO(2x500mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、ついで濃縮乾固して褐色のフォームを得た(〜60g,>100%)。
反応を、37.62g及び56.4gの化合物4−2を使用してもう二回実施した。混合した粗生成物(128.0g,0.212mol)をTHF(1.28L)に溶解し、濃HOAc(23mL,0.402mol)で処理した。その溶液にTBAF(384.0mL,THF中1M)を添加した。その溶液を室温で0.75時間撹拌し、混合物をシリカゲル(750g)で処理し、濃縮乾固させた。粉末をCHClに充填したシリカゲルカラムに配した。1:7のEtOH−CHClでの溶出により、シリカゲル(300g)に前もって吸着させ、前のようにクロマトグラフィーにかけた暗色のロウ状固形物が得られた。化合物4−3(46.4g,4−2から53.0%)をオフホワイト固形物として単離した。 H NMR(DMSO-d):δ1.20(s,3H,CH),3.62−3.69(m,2H,),3.73−3.78(m,2H,),5.19(t,1H,J=5.4Hz,OH−5’),5.25(s,1H,OH−2’),5.52(d,1H,J=5.0Hz,OH−3’),5.99(s,1H,H−1’),7.32(d,1H,J=5.8Hz),7.50(Ψt,2H,J=7.7Hz),7.62(Ψt,1H,J=7.3Hz),8.00(d,2H,J=7.3Hz),8.14(d,1H,J=6.9Hz),11.22(s,1H,NH)。 C17l9・0.5HOに対する分析計算値:C,55.13;H,5.44;N,11.35。実測値:C,55.21;H,5.47;N,11.33。
【0127】
工程4: 化合物4−3(46.0g,0.13mol)を無水ピリジンに溶解し、真空で濃縮乾固した。得られたシロップをアルゴン下で無水ピリジンに溶解し撹拌しながら0℃まで冷却した。その褐色の溶液を10分かけて滴下して塩化ベンゾイル(30mL,0.250mol)で処理した。氷浴を取り除き、1.5時間撹拌を続けると、TLCは出発物質が残っていないことを示した。その混合物を水(5mL)の添加により急冷し濃縮乾固させた。残渣を最少量のCHClに溶解させ、飽和NaHCO(1x500mL)とHO(1x500mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮乾固し、EtOAc−ヘキサン(25−60%)の段階的勾配を用いた溶出によりシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけ、黄色のフォームとして化合物4−4を得た(48.5g,67%)。 H NMR(CDC1):δ1.64(s,3H,CH),4.50(m,1H,H−4),4.78−4.85(m,2H,H−5’,5a’),5.50(d,1H,J=3.4Hz,H−3’),6.42(s,1H,H−1’),7.44−7.54(m,7H,Ar),7.57−7.66(m,3H,Ar),7.94(d,2H,J=7.8Hz),8.05−8.09(m,4H,Ar),8.21(d,1H,J=7.3Hz)。 C3127に対する分析計算値:C,65.37;H,4.78;N,7.38。実測値:C,65.59;H,4.79;N,7.16。
【0128】
工程5: 化合物4−4(7.50g,0.013mol)をアルゴン下で無水トルエン(150mL)に溶解し−20℃まで冷却した。DAST(2.5mL,18.9mmol)をゆっくりと加え、冷却浴を、添加が完了したところで取り除いた。撹拌を1時間継続し、混合物を飽和NaHCO(100mL)に注ぎ、ガスの発生が止まるまで洗浄した。有機相を乾燥させ(NaSO)、濃縮させ、1:1のEtOAc−ヘキサンで溶出させるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。収量は白色固形物として1.22g(16.3%)の純粋な4−5であった。mp241℃(CHCl−ヘキサン); H NMR(400MHz,CDC1):δ1.49(d,3H,J=22.4Hz,CH3),4.64(dd,1H,J=3.44,12.9Hz,H−5’),4.73(d,1H,J=9.5Hz,H−4’),4.90(dd,1H,J=2.4,12.7Hz,H−5a’),5.56(dd,1H,J=8.6,20.7Hz,H−3’),6.52(d,1H,J=18.0Hz,H−1’),7.47−7.57(m,7H,Ar),7.62−7.71(m,3H,Ar),7.89(d,2H,J=6.9Hz),8.07−8.11(m,5H,Ar),8.67(bs,1H,NH)。 19F NMR(CDCl):δ3.3(m)。 C3126FNに対する分析計算値:0.7HO:C,63.74;H,4.72;N,7.20。 実測値:C,63.71;H,4.54;N,7.20。
【0129】
工程6: 化合物4−5(6.30g,0.011mol)をメタノール性アンモニア(約7N,150mL)に懸濁させ、室温で一晩撹拌した。溶媒を真空除去し、メタノール(1x20mL)で共蒸発させ、シリカゲルに前もって吸着させた。白色粉末をシリカゲルカラム(CHClに充填)に配し、カラムをCHCl中9%EtOH、ついでCHCl中17%EtOH及び最後に25%EtOHで溶出させた。生成物を含む画分を濃縮し、0.4μmのディスクを通して濾過し、水から凍結乾燥して化合物4−6,2.18g(76%)を得た。 H NMR(DMSO-d):δ1.17(d,3H,J=22.3Hz,CH3),3.63(dd,1H,J=2.7,13.7Hz,H−5’),3.70−3.84(m,3H,H−3’,H−4’,H−5a’),5.24(apps,1H,OH−3’),5.60(d,1H,J=5.4Hz,H−5’),5.74(d,1H,J=7.71Hz,H−5),6.07(d,1H,J=18.9Hz,H−1’),7.31(s,1H,NH2),7.42(s,1H,NH2),7.90(d,1H,J=7.3Hz,H−6)。 19F NMR(DMSO-d):δ2.60(m)。 C1014FN・1.4HOに対する分析計算値:C,44.22;H,5.95;N,14.77。 実測値:C,42.24;H,5.63;N,14.54。 化合物4−6(0.10g,0.386mmol)を、水(2mL)に溶解させ1MのHClでpHを約3.0に調節することによって塩酸塩に転換させた。水を真空除去し、残渣を水性EtOHから結晶化させて塩酸塩(71.0mg)として4−6を得た。 mp243℃(dec); H NMR(DMSO-d):δ1.29(d,3H,J=22.6Hz,CH3),3.65(dd,1H,J=2.3,12.7Hz,H−5’),3.76−3.90(m,3H,H−3’,H−4’,H−5a’),5.96(d,1H,J=17.3Hz,H−1’),6.15(d,1H,J=7.9Hz,H−5),8.33(d,1H,J=7.9Hz,H−6),8.69(s,1.5H,NH),9.78(s,1.5H,NH)。 19F NMR(DMSO-d):δ1.69(m)。 C1014FN・HClに対する分析計算値:C,40.62;H,5.11;N,14.21。 実測値:C,40.80;H,5.09;N,14.23。
【0130】
実施例3
6-クロロプリンリボシドを出発とする(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルプリンの合成

工程1: ヌクレオシドの6-クロロプリンリボシド(3.18g,11.09mmol)を無水ピリジン(300mL)に溶解させ、アルゴン雰囲気下、0℃にて滴下して1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトライソプロピル-ジシロキサン(4.08mL,12.75mmol)で処理した。その溶液を室温までもっていき一晩撹拌した。混合物を真空濃縮してほぼ乾固させ、最少量のクロロホルムに溶解させ、HCl(100mL,0.05N)及びNaHCO(5%,100mL)で洗浄した。有機層を乾燥(NaSO)させ、濾過し、蒸発乾固させて、琥珀色のガラスとして化合物5−1(6.10g,>100%)を得て、更なる精製をしないで使用した。 H NMR(CDC1):δ1.01−1.13(m,24H),4.03−4.18(m,3H),4.58(d,1H,J=5.2Hz),5.01(m,1H),6.07(s,1H),8.31(s,1H),8.71(s,1H)。
【0131】
工程2: 化合物5−1(7.13g,13.47mmol)をドライTHF(35mL)に溶解させた。無水DMSO(5.11mL,72.06mmol)を添加し、得られた溶液を−20℃と−15℃の間まで冷却した。無水トリフルオロ酢酸(3.06mL,21.69mmol)を45分かけて滴下して加え、溶液を−20℃と−15℃の間で2時間撹拌した後、無水トリエチルアミン(8.08mL,57.92mmol)を20分かけて添加した。ケトン5−2を含む粗反応物をEtO(25mL)に溶解させ、得られた溶液をHO(2x50mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、溶媒を真空除去して黄色固形物を得て、これを0−50%の石油エーテル−ジエチルエーテルの段階的勾配を用いて溶出させるシリカゲルカラムで精製し、対応するジェミナルなジオールとの混合物として化合物5−2を得た。ガラスをCHClに溶解させ、36時間、過剰のMgSOで撹拌した。ジェミナルなジオールから遊離した混合物を濾過し、蒸発乾固して、琥珀色のガラスとして化合物5−2(7.0g,97%)を得た。 H NMR(CDC1):δ1.01−1.13(m,24H),4.09−4.22(m,3H),5.55(d,1H,J=9.6Hz),5.80(s,1H),8.19(s,1H),8.61(s,1H)。
【0132】
工程3: 無水テトラヒドロフラン(45mL)中に入れた化合物5−2(7.0g,13.26mmol)の溶液をアルゴン雰囲気下で撹拌しながら−78℃に冷却した。その溶液に30分かけて臭化メチルマグネシウム(15.85mL,エチルエーテル中3.0M)を滴下して加えた。−78℃で更に3時間撹拌した後、水性の1MのNHCl(50.0mL)を注意深く添加して反応を停止させた。室温まで温めた後、混合物をHO(2x500mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮乾固して褐色のフォーム(3.8g)を得て、これをテトラヒドロフラン(50mL)に溶解させ、TBAF(18.9mL,THF中1M溶液)及び氷酢酸(0.85mL)の溶液で室温にて処理した。その溶液を室温で2時間撹拌し、濃縮乾固し、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製して化合物5−3(2.0g,50%)を得た。
【0133】
工程4: 化合物5−3(0.491g,1.63mmol)をピリジン(3mL)に溶解させ、無水酢酸(0.38mL,4.08mL)で室温にて処理した。溶液を室温で2時間撹拌し、その後に溶液を濃縮乾固し、ジエチルエーテル(10mL)及び水(5mL)で処理した。有機層を更に水(2x10mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、蒸発乾固してフォームとして化合物5−4を得た(0.450g,91.0%)。 H NMR(CDC1):δ1.39(s,3H),2.15(s,3H),2.21(s,3H),4.27(m,1H),4.49(dd,1H,J=4.2,11.9Hz),4.57(dd,1H,J=6.16,11.9Hz),5.14(d,1H,J=3.1Hz),6.25(s,1H),8.54(s,1H),8.75(s,1H)。
【0134】
工程5: 化合物5−4(0.100g,0.259mmol)をアルゴン下で無水トルエン(3.0mL)に溶解し、−20℃まで冷却した。DAST(0.2mL,1.55mmol)をゆっくり添加し、冷却浴を添加が完了した後に除去した。撹拌を1時間継続し、混合物を飽和NaHCO(100mL)中に注ぎ、ガスの発生が止まるまで洗浄した。有機相を乾燥させ(NaSO)、濃縮し、30%EtO−石油エーテルで溶出させるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して純粋な5−5(0.028g,27.9%)を得た。 H NMR(CDC1):δ1.24(d,3H,J=22.8Hz),2.20(s,3H),2.22(s,3H),4.41−4.55(m,3H),4.47(dd,1H,J=9.2,22.0Hz),6.37(d,1H,J=17.6Hz),8.45(s,1H),8.82(s,1H)。
【0135】
工程6: 化合物5−5(0.018g,0.047mmol)をメタノール(5mL)に溶解し、メタノール(5mL)中ナトリウムメトキシド溶液(3.6mg,0.67mmol)で処理した。その溶液を室温で1時間撹拌し、濃酢酸で中和し、EtO/メタノール(0−5%)の段階的勾配で溶出させるシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけて化合物5−6(0.010g,70.9%)を得た。 H NMR(CDC1):δ1.23(d,3H,J=22.4Hz),4.04(dd,1H,J=2.11,12.5Hz),4.17(dd,1H,J=1.5,9.2Hz,),4.25(dd,1H,J=1.9,12.3Hz),4.61(dd,1H,J=9.2,22.3Hz),6.37(d,1H,J=17.3Hz),8.70(s,1H),8.78(s,1H)。
【0136】
実施例4
(2'R)-6-クロロ-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルプリンを出発とする(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルアデノシンの合成

工程1: 化合物5−5(0.100g,0.26mmol)をメタノール性アンモニア(約7N,25mL)と共に圧力管中で80℃にて12時間加熱した。粗反応物をシリカゲルに前もって吸着させ、EtO−MeOH(0−5%)の段階的勾配で溶出させるカラムクロマトグラフィーによって精製した。不純な生成物を、最少量のエタノールに化合物を溶解させ溶液を0.5mLの0.6MのHCl溶液で処理することによって塩酸塩に転換した。濃縮してほぼ乾固させてオフホワイトの結晶として化合物6−1を得た(0.020g,24.2%)。 H NMR(CDOD):δ1.19(d,3H,J=22.3Hz),3.88(dd,1H,J=2.7,12.7Hz),4.06(dd,1H,J=2.1,12.5Hz,),4.11(app d,1H,J=9.2Hz),4.35(dd,1H,J=9.4,24.5Hz),6.35(d,1H,J=16.5Hz),8.43(s,1H),8.85(s,1H)。
【0137】
実施例5
(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの抗ウイルス活性
HCVレプリコンアッセイ
化合物の抗フラビウイルス活性をStuyver等("Ribonucleoside analogue that blocks replication of bovine viral diarrhea and hepatitis C viruses in culture", Antimicrobial Agents and Chemotherapy 47: 244-254 (2003))に記載されているようにして定量した。化合物をDMSOに溶解し、3から100μMの範囲の最終濃度で培養培地に加えた。4日のインキュベーションによりレプリコンHCV RNAの用量依存的減少が生じた(図1A)。レプリコンRNAの1-log減少(又はEC90値)におよそ2.5μMで達した。rRNAの減少の測定により細胞性ポリメラーゼに対する阻害効果が示された。抗ウイルス値からのこの細胞毒性値の減算により治療指数ライン及びEC90値が得られる。これらの計算に基づいておよそ2.5μMの細胞毒性に対して修正した平均EC90値が得られた。図1Aは(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンでの治療に基づくレプリコンHCV RNAの用量依存性減少を示している。ウイルスの減少を細胞性RNAレベル(リボソームRNA)の減少と比較して治療指数値を得た。EC90値は(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの用量依存性投与後96時間での有効濃度90%を表す。図1Bは5及び25μMでの治療後7日までのレプリコンHCV RNAの延長された減少を示している。
【0138】
レプリコン系における(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの活性を氷にまとめる。(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジン並びに2'-C-メチルシチジン及び2'-C-メチルアデノシンに対するEC90値を3種の別個のレプリコンクローン(HCV-WT(野生型),9−13及び21−5)並びに2種の他のクローン(S282T及びrRNA)に対して示した。(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンに対するEC90値はレプリコンクローンに対して1.6から4.6μMの範囲であった。これに対して、2'-C-メチルシチジンに対するEC90値は6.6−37.4μMの範囲であった。興味深いことに、2'-C-メチルアデノシンに対するEC90値は(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンのものに匹敵した。試験した他のレプリコンにおける(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジン及び2'-C-メチルシチジンの活性を表に示す。
【0139】
ポリメラーゼアッセイ
表3はNS5Bポリメラーゼアッセイにおける(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジン-5'-トリホスフェート(TP)の効力を示している。50%阻害濃度は1.7から7.7μMの範囲にあることが定量された。
【0140】
毒性
ミトコンドリア毒性アッセイを使用する(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンに対する毒性データのまとめを表6及び7に示す。表7はミトコンドリアDNA合成に対する(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジン及び2'-C-メチルシチジンの効果の欠如並びにこのアッセイにおける乳酸の増加に対する効果の欠如を示している。結果は、(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの毒性の相対的欠如を示している。表6は様々な細胞株(クローンA,Huh7,HepG2,MDBK,PBM,CEM,Vero,MRC-5)における細胞毒性分析を示している。50%細胞毒性濃度(CC50)は(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジン並びに2'-C-メチルシチジンに対して試験した全クローンにおいて75−100μMより多かった。2'-C-メチルアデノシンの相対毒性はこれに対する。
ヒト骨髄細胞に対して試験したヌクレオシド類似体の効果を表9に示す。示されているように、2'-メチル-2'-フルオロシチジンに対するIC50値は2'-メチルシタジン又はAZTと比較して有意に高かった(98.2,BFU-E)及び93.9(CFU-GM)。結果は、2'-メチル-2'-フルオロシチジンが他のヌクレオシド化合物と比較して有意に毒性が低かったことを示している。
【0141】
動物実験
図2は様々な用量での(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンのインビボ毒性分析における雌スイスマウスの平均体重変化(%)を示す。0日目から5日目に0、3.3、10、33、100mg/kgの腹腔内注射を行った。各用量群は5匹のマウスを含んでおり、30日間の実験の間マウスは死ななかった。マウスに有意な毒性は観察されなかった。
図3及び表6は経口(表6,図3)又は静脈投与(図3)で一回用量(33.3mg/kg)の(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンを与えたアカゲザルにおける(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの薬物動態学的パラメータをまとめている。
【0142】
他の抗ウイルス活性
(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの抗ウイルス活性の範囲のまとめを表4に示す。表は、HCVウイルスに加えて、(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンがライノウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス及びデングウイルスに対して活性を示すことを示している。
表5はHCV代理モデルBVDV並びにHIV、HBV及びコロナ(Corona)ウイルスを含む他のウイルスに対する(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの活性の欠如を示している。これに対して、2'-C-メチルシチジン及び2'-C-メチルアデノシンはHCV代理モデルBVDVにおいてより大きな活性を示す。これらの結果は、HCVレプリコン系対代理HCV計に対してこの一連の化合物をスクリーニングするための必要性を示している。
【0143】

【0144】

【0145】

【0146】

【0147】

【0148】

【0149】

【0150】

【0151】

【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1A】(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンでの治療に基づくレプリコンHCV RNAの用量依存性減少の模式図である。(A):ウイルスの減少を細胞RNAレベルの(リボソームRNA)の減少と比較して治療指数値を得た。(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの用量依存性投与96時間後に有効濃度90%を示すEC90を5μMであると決定された。
【図1B】(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンでの治療に基づくレプリコンHCV RNAの用量依存性減少の模式図である。(B):HCV RNAは25μMでの治療後7日間で用量依存的な形で有意に減少した。
【図2】様々な用量でのβ-D-(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの毒性研究における雌スイスマウスの平均体重変化(%)を示す。0日目から5日目に0、3.3、10、33、100mg/kgの腹腔内注射を行った。各用量群は5匹のマウスを含んでおり、30日間の実験の間マウスは死ななかった。
【図3】経口又は静脈投与で一回用量(33.3mg/kg)のβ-D-(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンを与えたアカゲザルにおけるβ-D-(2'R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンの薬物動態学を示す。


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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526629(P2006−526629A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513231(P2006−513231)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/012472
【国際公開番号】WO2005/003147
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505442842)ファーマセット,インク. (20)
【Fターム(参考)】