修飾オリゴヌクレオチドを使用するHRP−3の阻害
本発明はPWWPドメインを有するタンパク質の活性を調節するための剤に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明はPWWPドメインを有するタンパク質の活性を調節するための剤に関する。
【0002】
PWWPドメインは、「HDGFファミリー」として知られるタンパク質のファミリー中に見出される保存された構造モチーフである。このファミリーは6つのタンパク質を包含する:原型タンパク質、HDGF;HRP−1、HRP−2、HRP−3、HRP−4(HRP=HDGF関連タンパク質(HDGF Related Protein));及びLEDGF。図1は、この6つのタンパク質のアラインメント及びこのPWWPドメインの構造的保存を示し、これは常に全てのファミリーメンバーのN末端に存在する。更に、PWWPドメインと2つの非関連タンパク質のオリゴヌクレオチド結合ドメインとの間の構造的相同性も強調されている;この相同性はオリゴヌクレオチド結合において推定上保存される役割を指し示す。この結論は最近になって、HRP−3のPWWPドメインと二重鎖DNAとの間での複合体の構造のNMRの解明により支持され、これは、マイクロモーラー(μM)の親和性で少なくとも1のds DNAで結合するPWWPドメインの能力を確認した。PWWPドメインが、オリゴヌクレオチドと結合できるという事実は、治療的及び診断的使用のための短鎖オリゴヌクレオチドによるHDGFファミリー中のタンパク質のターゲッティングの道をひらく。
【0003】
本発明者らは、PWWPドメインタンパク質の新規生物学的活性を同定した。特に、HRP−3は、NIH 3T3細胞の移動、増殖及び/又は足場形成独立成長を阻害することができることが見出された。更に、HRP−3は、HUVEC細胞に対する血管形成促進剤として作用することが見出された。更に、HRP−3は、神経腫瘍中で、特に神経芽腫細胞中で過剰発現することが見出された。最後に、本発明者らは、高い親和性でもってPWWPドメインに結合でき、このようにしてPWWPドメインタンパク質の活性を阻害できる新規の単鎖オリゴヌクレオチド分子を同定した。
【0004】
本発明の第1の観点は、PWWPドメインタンパク質に結合でき、かつ、PWWPドメインタンパク質、例えばHRP−3及びHDGFにより誘発される生物学的作用を阻害及び/又は遮断できる単鎖オリゴヌクレオチド分子に関する。
【0005】
本発明の主題は、配列
【化1】
[式中、Y及びZはヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを示す、
その際、それぞれのY及びZは互いと一緒に塩基対、特にワトソン−クリック塩基対を形成し、X1及びX2は独立してポリ(アルキレングリコール)単位を含む基から選択される、
n及びmは独立して0又は1を示し、その際n及びmの少なくとも1つは1である、
sは1〜20、有利には5〜18の整数である、
Bは架橋基である]
を含む単鎖オリゴヌクレオチド分子である。
【0006】
有利には、本発明は、配列
【化2】
[式中、A、C、T及びGはヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを示す、
X1及びX2は独立してポリ(アルキレングリコール)単位を含む基から選択される、
n及びmは独立して0又は1を示し、その際n及びmの少なくとも1つは1である、かつ
Bは架橋基を示す]
を含む単鎖オリゴヌクレオチド分子に関する。
【0007】
このオリゴヌクレオチド分子は、互いと一緒に塩基対、特にワトソンクリック塩基対を形成できるヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを含む。有利にはこの構成ブロックは、「A」、「C」、「T」及び「G」から選択される。この「A」構成ブロックは、核酸塩基アデニン又はそのアナログであって相補性核酸塩基「T」と塩基対を形成できるもの含む構成ブロックから選択される。この「C」構成ブロックは、核酸塩基シチジン又はそのアナログであって相補性核酸塩基「G」と塩基対を形成できるものを含む構成ブロックから選択される。この「T」構成ブロックは、核酸塩基チミン又はそのアナログであって相補性核酸塩基「A」と塩基対を形成できるもの、例えば核酸塩基ウラシル(代わりに「U」構成ブロックとしても同定される)を、そしてこの「G」構成ブロックは核酸塩基グアニン又はそのアナログであって相補性核酸塩基「C」と塩基対を形成できるものを含む。
【0008】
構成ブロックA、C、T及びGは有利には、デオキシリボヌクレオチド構成ブロック、修飾デオキシリボヌクレオチド構成ブロック、リボヌクレオチド構成ブロック、修飾リボヌクレオチド構成ブロック、ヌクレオチドアナログ構成ブロック、特にPNA、LNA又はモルホリノ構成ブロック又はその組み合わせから選択される。修飾デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド構成ブロックの例はヌクレオチドであって、このリボース糖の2′−C原子がハロゲン、例えばF、Cl、Br又はI、シアノ、アルキル、例えばC1〜C6−アルキル、アルケニル、例えばC2〜C6−アルケニル、アルキニル、例えばC2〜C6−アルキニル、アミノ、モノ−又はジ−アルキル置換アミノ、例えばC1〜C6−アルキルアミノ、アルコキシ、例えばC1〜C6−アルコキシで置換されたものであり、この場合にアルキル、アルケニル及びアルキニル基は非置換であるか又はハロゲン、ヒドロキシ−又はアルコキシ基により一又は多置換されていてよい。構成ブロックの更なる例は、糖−リン酸骨格のリン原子で生じる修飾を有するオリゴヌクレオチドアナログであり、これは例えばホスホロチオアート、メチルホスホナート、ホスホロアミダート及びホスホトリエステルである(例えば、Cohen, J. S., ed. Oligonucleotides: Antisense Inhibitors of Gene Expression,(CRC Press, Inc., Boca Raton FIa., 1989)。有利な例は、ペプチド核酸、(PNA)、ヒドロキシプロリンペプチド核酸(HypNA)、セリンペプチド核酸(SerNA)を含む(例えばWO 2001/068673−オリゴヌクレオチドアナログ、その合成方法及び使用方法)。モルホリノ及び複素環式アナログ、2′−修飾ヌクレオシド、例えば2′F RNA又は2′OMeRNA、コンフォメーションが制限されたヌクレオチド、二、三又は多環式ヌクレオシドアナログ、例えばa−ビシクロ−DNA、8−ビシクロDNA5′,6′ビシクロ−DNA、ロックトヌクレオシドアナログ(LNA)、及び、スピロ基を含むアナログ(cf. Velazquez S, San Felix A, Perez-Perez MJ, Balzarini J, De Clercq E1 Camarasa MJ. lnt Conf AIDS. 1992 JuI 19-24; 8:スペインにより説明されたとおり)、熱不安定性保護基、例えばプロドラッグとしての4−メチルチオ−1−ブチル基を有するオリゴヌクレオチド性アナログ(cf. Beaucage SL, Curr Protoc Nucleic Acid Chem. 2004年12月;第3章:3.11セクションにより説明されたとおり)、2′−5′連結したオリゴヌクレオチド、又は5′−5′又は3′−3′連結を有するオリゴヌクレオチド(逆転アミダイト(reversed amidite)の使用による連結逆位(linkage inversion))。
【0009】
極めて有利な構成ブロックA、C、T及びGはデオキシリボヌクレオチド構成ブロック、リボヌクレオチド構成ブロック、修飾リボヌクレオチド構成ブロック、有利には2′−OMeリボヌクレオチド構成ブロック及び逆転リボヌクレオチド構成ブロックであって3′−3′連結逆位を形成するものから選択される。
【0010】
本発明の単鎖オリゴヌクレオチド分子は、この分子の5′−及び3′−末端に存在する基X1及び/又は基X2をそれぞれ含む。一実施態様において、オリゴヌクレオチド分子はX1及びX2基の両者を含む。更なる一実施態様において、この分子はX1基だけを含み、また更なる実施態様においてX2基だけを含む。
【0011】
この基X1及びX2は、オリゴヌクレオチド分子を安定化できる基から選択される。有利には、X1及びX2は、線状又は分枝鎖状ポリ(C2〜C3−アルキレングリコール)単位、特にポリ(エチレングリコール)単位を含む基から選択される。これら単位は有利には、200〜100000Da、特に有利に300〜50000Daの範囲内の分子量を有する。特に有利な一実施態様において、このポリ(エチレングリコール)単位は、分枝鎖状ポリ(エチレングリコール)単位であってそれぞれ20kDaの2個のポリ(エチレングリコール)鎖を有するものであり、すなわち、分子量40000Daを有する分枝鎖状ポリ(エチレングリコール)(PEG(40KDa))である。
【0012】
更に、本発明のオリゴヌクレオチド分子は、架橋単位Bを含み、これは組立場(scaffold)を提供し、これによりこの分子内での5′−及び3′−自己相補的オリゴヌクレオチド間での二重鎖ステム構造の形成が可能になる。架橋単位の長さは有利には1〜20ヌクレオチド性又は非ヌクレオチド性構成ブロックである。有利にはこの架橋単位は、(i)少なくとも3つの対になっていないヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックのヌクレオチド性スペーサー配列、又は、(ii)非ヌクレオチド性スペーサー配列、例えば少なくとも3つのエチレングリシド単位の、有利には少なくとも5つのエチレングリコール単位のポリ(エチレングリコール)スペーサー配列を含む。
【0013】
より有利には、この架橋単位は、3つの「A」構成ブロック、例えばデオキシリボヌクレオチド配列AAA又はポリ(エチレングリコール)スペーサー配列であって3〜10、有利には5〜10、例えば3、5、7又は10つのエチレングリコール単位を含むものを含む。より有利には、この架橋単位の3つの「A」構成ブロックは、2′OMe修飾リボヌクレオチド構成ブロック、例えば修飾リボヌクレオチド配列AAA(2′−OMe)を含む。
【0014】
本発明のオリゴヌクレオチド分子は、有利には、PWWPドメインタンパク質、例えばHDGF、HDGF−2、HRP−1、HRP−2、HRP−3、HRP−4及び/又はLEDGF、特にHRP−3及び/又はHDGFを阻害できる。有利にはPWWPドメインは、Prosite PS50821、Pfam PF00855又はInterPRO IPR000313で定義されているとおりである。
【0015】
PWWPドメインタンパク質は有利には、哺乳類タンパク質、より有利にはヒトタンパク質、例えばヒトHDGF(Swiss Prot. No. P51858/ Q7Z4S4/Q7Z4S5)、ヒトHDGF−2(Swiss Prot. No. Q7Z4V5)、ヒトHRP−3(Swiss Prot. No. Q9Y3E1)、及び/又はヒトLEDGF(Swiss Prot. No. 075475)である。本発明のオリゴヌクレオチド分子は有利には、PWWPドメインの生物学的活性、例えば血管形成促進性活性を阻害できる。
【0016】
有利な一実施態様において、このオリゴヌクレオチドは、少なくとも10μM、有利には少なくとも100μM、特に有利には少なくとも1000μMの親和性でPWWPドメインタンパク質に結合する。更なる有利な一実施態様において、このオリゴヌクレオチドは、少なくとも10nM、有利には少なくとも100nM、特に有利には少なくとも1000nMの親和性でPWWPドメインタンパク質に結合するタンパク質へのこのオリゴヌクレオチドの結合は、ビアコア(Biacore)システム、円二色性又は電気泳動技術、例えばキャピラリー電気泳動によって決定されてよい。
【0017】
本発明のオリゴヌクレオチド分子は、医薬において、例えばヒト又は獣医学的医薬において、診断及び/又は治療適用のために使用されてよい。例えば、このオリゴヌクレオチド分子は、PWWPドメインタンパク質機能障害、特にPWWPドメインタンパク質過剰発現及び/又は過剰活性に関連、付随する、かつ/又はこれにより引き起こされる状態又は疾病の診断及び治療において使用されてよい。
【0018】
より有利には、このオリゴヌクレオチド分子は、血管形成に関連した疾病、例えば癌、例えば神経癌、例えば神経芽腫、メラノーマ、結腸直腸癌、膵癌、胃癌、肝細胞癌及び肺癌の診断及び治療における使用のためである。特に有利な一実施態様において、このオリゴヌクレオチド分子は、例えば、神経癌、例えば神経芽腫におけるHRP−3の生物学的活性の阻害及び/又は遮断における使用のためである。
【0019】
本発明のオリゴヌクレオチドは、これを必要とする被験体に、活性剤及び医薬的に許容可能な担体、希釈剤及び/又は助剤を含んでよい医薬組成物として投与されてよい。この医薬組成物は、任意の適した形態にあってよく、例えば腸管外、局所的、肺の投与その他のためであってよい。有利には、この医薬組成物は、例えば注射又は輸液による腸管外投与のために適している。
【0020】
医薬組成物は、これを必要とする被験体に、疾病の種類及び深刻度及び投与経路に依存して、治療的有効用量、例えば、一日あたり0.001〜1000mg以上で投与される。
【0021】
本発明のオリゴヌクレオチド分子は単独療法として又は更なる療法、例えば放射線、手術及び/又は更なる医薬、例えば抗癌医薬、例えば化学療法剤及び/又は抗腫瘍抗体の投与と組み合わせて投与されてよい。化学療法剤の有利な例は、チューブリン安定化剤、チューブリン脱安定化剤、代謝拮抗剤、プリン合成阻害剤、ヌクレオシドアナログ、DNAアルキル化剤、DNA修飾剤、及び血管破砕剤である。化学療法剤の特定の例は、アミノグルテチミド、アミノプテリン、アナストロゾール、アンシタビン、ビモラン、5−ブロモウラシル、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、クロロメチン、シスプラチン、クロドロン酸二ナトリウム、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドキソルビシン、エチルイミナム(ethyliminum)、エトポシド、フロクスウリジン、5−フルオロウラシル、フルタミド、フトラフ−ル(ftorafur)、ヒドロキシ尿素、イソホスファミド、イオムスチン、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、ニトロカファン、ポリアクチンA、タモキシフェン、チオ−TEPA、カリケアマイシン、タキソール、ゲムシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ダウノルビシン、ドセタキセル、イリノテカン、エポチロンB、及びエポチロンDである。抗腫瘍抗体の有利な例は、抗VEGFR抗体、例えばAvastin(R)、又は他の抗体、例えばHerceptin(R)、Rituxan(R)、Mylotarg(R)、及びCampath(R)である。
【0022】
本発明の特に有利な一観点によれば、オリゴヌクレオチド分子は、更なる化学療法医薬と組み合わせて投与されてよく、特に有利にはビンクリスチンと組み合わせて投与されてよい。
【0023】
更に、本発明のオリゴヌクレオチド分子は、薬剤スクリーニングのために、例えば、このオリゴヌクレオチド分子及びその標的タンパク質の相互作用を調節する、すなわち、刺激又は阻害する化合物の同定のために使用されてよい。
【0024】
本発明の更なる一観点は、医薬における使用のための、例えば診断及び/又は治療適用のための、HRP−3ポリペプチド、有利には哺乳類HRP−3ポリペプチド、より有利にはヒトHRP−3ポリペプチド、又は、これをコードする核酸分子に関する。この観点は、HRP−3が、哺乳類細胞、特に哺乳類繊維芽細胞、例えばNIH 3T3細胞(つまり、3T3プロトコルにより培養された初代マウス胚性繊維芽細胞)の細胞移動、増殖及び/又は足場独立成長の有力な細胞外阻害剤であるとの知見を基礎とする。
【0025】
この実施態様において、このHRP−3ポリペプチドは、これを必要とする被験体、例えばヒト患者に直接的に投与されてよい。又は、HRP−3ポリペプチドをコードする核酸分子はこの分野で知られている非ウィルス性又はウィルス性ベクター系を使用して投与されてよい。HRP−3ポリペプチド又はこれをコードする核酸が、この活性剤の細胞外提示を可能にするプロトコルにより投与されることが有利である。
【0026】
本発明のまた更なる一実施態様は、医薬における使用のための、例えば診断及び/又は治療的適用のための、HRP−3アンタゴニストに関する。この実施態様は、HRP−3がHUVEC細胞中で有力な血管形成促進性活性を有するとの知見に基づく。
【0027】
HRP−3ポリペプチドアンタゴニストは、HRP−3に対して指向されている抗体又は抗体断片、例えばモノクローナル、キメラヒト化、ヒト又は組み換え抗体又はこの抗原結合断片であってよい。又は、このアンタゴニストは、核酸エフェクター分子、例えばアンチセンス分子、リボザイム、RNA干渉剤、例えばsiRNA分子であってHRP−3発現を阻害及び/又は遮断できるもの、又は、上述のとおりの単鎖オリゴヌクレオチド分子であってよい。又は、このアンタゴニストは、アプタマー、例えば核酸分子であってHRP−タンパク質に結合し、その活性を阻害又は遮断するために選択されたものであってよい。
【0028】
HRP−3アンタゴニストは、活性剤を治療的有効量で含有する医薬組成物の形でこれを必要とする被験体に投与される。抗体、核酸エフェクター分子及びアプタマーを投与するためのプロトコルはこの分野で知られている。
【0029】
本発明の剤は、上述のとおり、血管形成の阻害のために、特に血管形成に関連した状態又は疾病の診断及び/又は治療において、及び/又は過剰増殖症状又は疾病の診断及び治療において特に有用である。更に特に、本発明の剤は、血管形成関連病理学、例えば癌、特に神経癌、例えば神経芽腫、肝癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、又は神経学癌における診断及び治療に有用である。使用の更なる有利な分野は、眼科学、疼痛、心臓血管疾病、皮膚科学、感染疾病、例えばウィルス疾病、炎症及び自己免疫疾病、及び呼吸疾病を含む。
【0030】
更に、本発明は以下の図面及び実施例によりより詳細に説明される。
【0031】
図面の簡単な説明:
図1は、HDGFファミリーの6部分のアラインメント及びPWWPドメインの構造的保存を示し、これは常に全てのファミリーメンバーのN末端に存在する。
図2は、HRP−3によるNIH−3T3移動に対する阻害作用を示す。
図3及び4は、刺激24時間後のHRP−3により誘発される用量依存性HUVEC発芽を示す。
図5及び6は、HUVEC細胞株中でのHRP−3刺激あり及びなしでのVEGFR−2 mRNA発現及びVEGF mRNA発現をそれぞれ示す。
図7は、HUVEC細胞株中でのVEGF刺激あり及びなしでのHRP−3 mRNA発現を示す。
図8は、抗VEGF抗体Avastin及びHRP−3ありでのHUVEC細胞の発芽試験を示す。
図9は、増加する量のHRP−3タンパク質の存在下でのHUVEC細胞移動アッセイを示す。
図10は、様々な正常及び腫瘍性のヒト細胞株中でのHRP−3発現レベルを示す。RNAを細胞から抽出し、DNアーゼ処理、レトロ転写及びリアルタイムPCR分析した。18S RNAレベルを試料標準化のために使用した。HRP−3タンパク質がヒト神経芽腫細胞株により高度にかつ選択的に発現されていることが見出された。
図11はウェスタンブロットアッセイを示し、この場合にHRP−3タンパク質がSHSY条件培地中で見出された。
図12は、設計された二重鎖DNAの配列を示し、二重鎖2、3及び4には赤で下線を引いた塩基があり、Lukasik et al.の二重鎖で導入した変化を強調する(二重鎖1)。
図13は、図12のDNA二重鎖1(DNA1)を用いた3T3移動in vitroアッセイを示す。
図14−A)は、神経芽腫及び非神経芽腫細胞株のHRP−3転写産物レベルを示す。RNAを細胞から抽出し、DNアーゼ処理、レトロ転写及びリアルタイムPCR分析した。18S RNAレベルを試料標準化のために使用した。平均発現値に応じて細胞株を上から下に配置した。神経芽腫細胞株は灰色で印をしてある。
図14−B)は、神経芽腫及び非神経芽腫細胞によるHRP−3の発現及び分泌を示す。タンパク質を細胞ライセートから抽出するか又は濃縮し、この条件培地から沈殿させ、SDS−PAGEゲルで分画し、HRP−3についてイムノブロットした。GADPHレベルを試料標準について測定した。このバンドの相対強度をImageJ softwareを用いて計算した。
図14−C)は、SH−SH5Y、Gl−Ll−N及びHTLA230神経芽腫異種移植片のHRP−3タンパク質レベルを示す。異種移植片腫瘍組織又は正常マウス組織から抽出したタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、HRP−3についてイムノブロットした。精製したHRP−3タンパク質をポジティブコントロールとして使用した。GAPDHのタンパク質レベルを試料標準化のために使用した。バンドの定量化をImageJ softwareを用いて実施した。
図15は、37℃で0〜25時間のマウス血清中でのインキュベーション後の配列番号4、5、6及び7の本発明によるオリゴヌクレオチド分子(それぞれ化合物BN203、BN204、BN205及びBN206として示す)のゲル電気泳動分析を示す。
図16は、配列 配列番号11(化合物BN210として示す)のオリゴヌクレオチド分子の細胞毒性アッセイを示す。MTT試験を、BN210又はコントロール試験物質を用いた24、48及び72時間のインキュべーション後のHepG2及び神経芽腫細胞株Gl−L−lN、SH−SY及びIMR32に対して実施した。ポジティブ及びネガティブコントロールを、それぞれ10%又は0%のウシ血清を含有する細胞培地を用いて実施した。
図17は、ビンクリスチン(VIN)単独又は配列 配列番号11(BN210)のオリゴヌクレオチド分子と組み合わせた場合のin vitro細胞毒性を示す。GI−L−IN神経芽腫細胞を0.15〜5nMの範囲の濃度でのビンクリスチンで、単独で用いて又は250nMのBN210と組み合わせて処理した。48時間後にMTT試験を実施した。
図18は、甲状腺刺激性の神経芽腫異種移植片に対する、化学療法剤ビンクリスチン(VCR)と組み合わせた配列 配列番号11(BN210)の本発明によるオリゴヌクレオチド分子のin vivo活性の結果を示す。
図19は、配列番号1のオリゴヌクレオチドがHRP−3誘発したHUVECの発芽を遮断できることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、HDGFファミリーの6部分のアラインメント及びPWWPドメインの構造的保存を示す図である。
【図2】図2は、HRP−3によるNIH−3T3移動に対する阻害作用を示す図である。
【図3】図3は、刺激24時間後のHRP−3により誘発される用量依存性HUVEC発芽を示す図である。
【図4】図4は、刺激24時間後のHRP−3により誘発される用量依存性HUVEC発芽を示す図である。
【図5】図5は、HUVEC細胞株中でのHRP−3刺激あり及びなしでのVEGFR−2 mRNA発現を示す図である。
【図6】図6は、HUVEC細胞株中でのHRP−3刺激あり及びなしでのVEGF mRNA発現を示す図である。
【図7】図7は、HUVEC細胞株中でのVEGF刺激あり及びなしでのHRP−3 mRNA発現を示す図である。
【図8】図8は、抗VEGF抗体Avastin及びHRP−3ありでのHUVEC細胞の発芽試験を示す。
【図9】図9は、増加する量のHRP−3タンパク質の存在下でのHUVEC細胞移動アッセイを示す図である。
【図10】図10は、様々な正常及び腫瘍性のヒト細胞株中でのHRP−3発現レベルを示す図である。
【図11】図11はウェスタンブロットアッセイを示す図である。
【図12】図12は、設計された二重鎖DNAの配列を示す図である。
【図13】図13は、図12のDNA二重鎖1(DNA1)を用いた3T3移動in vitroアッセイを示す図である。
【図14】図14は、神経芽腫及び非神経芽腫細胞株のHRP−3転写産物レベルを示す(A)、神経芽腫及び非神経芽腫細胞によるHRP−3の発現及び分泌を示す(B)、SH−SH5Y、Gl−Ll−N及びHTLA230神経芽腫異種移植片のHRP−3タンパク質レベルを示す(C)図である。
【図15】図15は、37℃で0〜25時間のマウス血清中でのインキュベーション後の配列番号4、5、6及び7の本発明によるオリゴヌクレオチド分子(それぞれ化合物BN203、BN204、BN205及びBN206として示す)のゲル電気泳動分析を示す図である。
【図16】配列 配列番号11(化合物BN210として示す)のオリゴヌクレオチド分子の細胞毒性アッセイを示す図である。
【図17】図17は、ビンクリスチン(VIN)単独又は配列 配列番号11(BN210)のオリゴヌクレオチド分子と組み合わせた場合のin vitro細胞毒性を示す図である。
【図18】図18は、甲状腺刺激性の神経芽腫異種移植片に対する、化学療法剤ビンクリスチン(VCR)と組み合わせた配列 配列番号11(BN210)の本発明によるオリゴヌクレオチド分子のin vivo活性の結果を示す図である。
【図19】図19は、配列番号1のオリゴヌクレオチドがHRP−3誘発したHUVECの発芽を遮断できることを示す図である。
【0033】
実施例
材料と方法
HRP−3タンパク質供給源
このタンパク質をGSTコンジュゲートとして市販の供給源から最初に獲得した。同時に、このcDNAをRT−PCRによりヒト細胞から獲得した。このHRP−3コード領域を、制限部位としてEcoRI及びNdelを使用してpET30ベクター中にクローニングした。この組み換えタンパク質を大腸菌(E. CoIi)TOPF10及び12中で生産しポジティブクローンを獲得した。2つのポジティブクローンを配列決定して、その正確さを確かめ、両者ともに正確である。したがって、このタンパク質発現工程のために我々のポジティブクローンを大腸菌BL21中に形質転換した。異なる条件の温度及び時間における我々のクローンのいくつかの発現アッセイ後に、HRP−3を第1の工程のためにHPLCを用いてカチオン交換により、そして第2の工程のために疎水性精製を用いて精製した。組み換えタンパク質が完全に精製した後に、LAL試験を実施し、エンドトキシンの非存在を確かめ、次いでこれを定量化した。
【0034】
実施例1
NIH 3T3繊維芽細胞のための抗移動剤としてのHRP−3
NIH 3T3繊維芽細胞に対する報告されたHDGF活性と類似して、PWWPドメインに結合できるリガンドによるいかなる干渉活性も報告できる試験を開発すべく、これら細胞に対するHRP−3活性を試験することに決めた。増加する量のタンパク質の存在下での3T3細胞の移動及び増殖アッセイを実施した。これらアッセイは、HRP−3タンパク質の強力な抗移動作用の定義を可能にし、これは30ng/mLで5%のFBSにより24時間で誘発される3T3移動の50%を妨げることができる。この試験はバリデーションされ、今や良好に再現可能である、図2。
【0035】
更に、HRP−3が3T3増殖及び足場依存性成長を0.1ng/mLで遮断することが見出された。これら全てのデータは、3T3細胞の強力な増殖及び移動を誘発する、HDGFの作用とは対照的なHRP−3の作用を示す。
【0036】
実施例2
HUVEC細胞のための血管形成剤としてのHRP−3
HDGFが、様々な種類の腫瘍において血管形成に関連することが見出され、この理由のために、我々はBAEC及びHUVECとしての内皮初代細胞株に対するHRP−3の活性を試験した。BAEC及びHUVEC細胞に対する増殖に対する作用が見出されなかった一方で、HRP−3は、24時間の刺激後にHUVEC発芽を誘発できる。図3及び4に示されるとおり、HRP−3は、用量依存的にHUVEC細胞において発芽を誘発できる。図4には、ネガティブコントロール及びポジティブコントロールを60ng/mLでVEGFを用いて示している。このデータからは、100ng/mlを超える濃度でHUVEC細胞に対する発芽をHRP−3が刺激することを実証した。我々の結果を確かめるために、実験を盲目的にも実施している。
【0037】
内皮細胞機能性の他の重要な観点は新規血管を形成できる能力であり、したがってマトリゲル(Matrigel)中で管形成アッセイを実施した;予備試験によれば、HRP−3は、24時間後にHUVECの血管様網目を維持することができる(示さず)。
【0038】
この刺激の分子的基盤を理解するために、リアルタイムPCRによりHUVEC細胞株中でHRP−3のmRNA発現を研究した。興味深いことに、このタンパク質は高レベルで発現していることが見出された。VEGF又はVEGFR−2がHRP−3誘発機構に関連しているかどうかを理解するために、我々のHRP−3でもってHUVEC細胞を刺激し、VEGF、VEGFR−2、HRP−3及びHDGFのmRNAレベルを検査した。これら遺伝子の発現はHRP−3により変化しなかった。図5及び6。
【0039】
HRP−3がVEGFによりその上で制御されているかどうかを理解するために、HUVEC細胞を60ng/mLのVEGFで処理し、次いでHRP−3 mRNAレベルを測定した:ネガティブコントロールと処理細胞との間には有意差は存在しなかった(図7)。
【0040】
この最後のデータからはHRP−3血管形成促進性活性がVEGFとは独立していることを認めることができる。
【0041】
この証明は、治療的使用のために血管形成を遮断するために極めて重要である。
【0042】
更に、VEGF独立性血管形成活性を確かめるために、我々はAvastin、抗VAGF抗体を用いてVEGF及び我々のタンパク質の存在下で別の発芽試験を実施した。Avastinは、HUVEC発芽をVEGF媒介的に遮断できるが、HRP−3媒介的でない、図8。
【0043】
増加する量のこのタンパク質の存在下でのHUVECの移動アッセイを実施した(図9)。これらアッセイにより、用量依存的にヒトの内皮細胞に対するタンパク質の抗移動作用の定義が可能になり、これは100ng/mlで5%FBSにより5及び16時間で誘発された移動の約80%を妨げることができる。
【0044】
実施例3
神経腫瘍中でのHRP−3発現レベル
以前の刊行物から、HDGF発現が様々なヒトの癌中でメラノーマ、結腸直腸、膵臓、胃、肝細胞及び肺の癌腫として増加することを我々は知っている。このため、ヒトの腫瘍細胞株中のHDGFタンパク質の特異的過剰発現をリアルタイムPCRによりスクリーニングすることが決定され、そして、我々はこの基本のmRNAレベルが全ての細胞株に対してHRP−3よりも高いことを認め、そして、これまでにはHDGFが乳癌、神経芽腫、骨肉腫、リンパ腫、膵臓及び子宮のアデノカルシノーマ中で過剰発現することが見出されているが、しかしこの最大の過剰発現はヒトの肝臓細胞であるChang細胞株中で見出された。
【0045】
HRP3が、PWWP結合オリゴヌクレオチドを開発するためのモデルとして使用すべきPWWP含有タンパク質としてだけ意図されるにもかかわらず、我々は、タンパク質が過剰発現している既知の病理学が存在するかどうかを知りたいと思った。アレイデータのバイオインフォマティクス的スクリーニングは、攻撃的なグレードのヒトのグリオーマ、子供の希有致死性腫瘍、中で特異的な高レベルの発現を示した。この過剰発現は、HRP−3の提案された増殖性機能に関係しているかもしれず、したがって、我々はリアルタイムPCRによりCNS腫瘍細胞株中のこのタンパク質の特異的過剰発現についてスクリーニングを開始した。興味深いことに、このタンパク質は、SH−SY5神経芽腫中で、そしてNSC34、アミノプテリン感受性神経芽腫N18TG2と運動ニューロン富化した胚性の12〜14日の脊髄細胞の融合により生産されたマウス−マウスの神経ハイブリッド細胞株のサブクローン中で過剰発現していることが見出された(図10)。
【0046】
この発現レベルは特異的であり、というのも他の脳の腫瘍株、例えば神経芽腫Neuro2A細胞株、又は他の組織由来の細胞は高レベルでこのタンパク質を発現しなかったからである。SH−SY5細胞は4歳の子供の骨髄に住み着く攻撃性の神経芽腫の二次転移から獲得した。神経芽腫は希少疾患(orphaned ref. ORPHA635)であり、このin vitroモデルは現在ではSH−SY細胞により提示されている。
【0047】
最近の知見は、正常の神経外胚葉由来の組織の発達を駆動する分子経路が、神経芽腫成熟化にも関連していてよいことを示唆している。血管形成は神経分化の間に鍵となる役割を果たし、神経及びグリアの両者に栄養活性を発揮している。血管内皮成長因子(VEGF)を含む、NBsにおける血管形成の誘発における重要な役割を果たすためにこれまでに種々の血管形成因子が同定されている。増加する量のタンパク質の存在下でのSH−SY5及びNCS−34細胞の増殖アッセイを実施した。これらアッセイにより、SHSYに対してだけこのタンパク質の抗増殖性作用の定義が可能になり、これは100ng/mLで5%のFBSにより24及び48hで誘発されたSH−SY5増殖の25%を妨げることが可能である。
【0048】
神経芽腫の内部では、神経芽腫細胞が、内皮細胞中で新規の血管形成プロセスを助けることができる溶解性HRP−3を産生すると我々は推測する。この理論を支持する結果、我々はHRP3タンパク質をSHSY条件培地中でウェスタンブロットアッセイにより見出す、図11。これは、HDGF及びHRP−3の両者がSHSY細胞において高度に発現するが、HRP−3だけが培地中に存在することを確認する。
【0049】
我々の理論を更に支持するために、様々な神経芽腫細胞株を選択し、このHRP−3 mRNA及びタンパク質発現レベルを分析した。図14Aに示されるとおり、HRP−3タンパク質が神経芽腫細胞株中に、検査した他の腫瘍細胞及び正常細胞株に比較してより高レベルで存在することが見出された。
【0050】
次の工程として、HRP−3が神経芽腫細胞により細胞外区画中に放出されるかどうかを分析した。10つの神経芽腫細胞株の条件培地を濃縮し、タンパク質を沈殿させ、ウェスタンブロット分析によりHRP−3の存在について分析した。図14−Bに示されるとおり、Gl−Ll−N、NXS2、IMR32、HTLA230、LAN5及びSKNBE2細胞を含む大抵の神経芽腫細胞株は、HRP−3をその培養培地中に分泌する。
【0051】
更に、我々は2つの以前に説明されているマウスモデルの神経芽腫、同所(orthotopic)異種移植片モデル及び偽転移性異種移植片モデル由来の腫瘍組織中のHRP−3発現を分析した(Pastorino et al., 2003; Marimpietri et al., 2007)。副腎中へのGl−Ll−N細胞の同所注射が局所的な腫瘍の発達を生じた一方で、偽転移性モデル中へのHTLA230細胞の静脈内注射は腎臓中での転移発達を生じた。両者の腫瘍中のHRP−3タンパク質のレベルをウェスタンブロット分析により分析し、未処理の健康なマウスの腎臓及び副腎中のHRP−3発現と比較した。図14Cに示されるとおり、HRP−3は、副腎及び脳組織中で発現することが見出され、その一方で腎臓及び肝臓組織は極めて低いレベルのHRP−3を含有した。重要なことに、HTLA230及びGl−Ll−N腫瘍組織中のHRP−3タンパク質レベルはそれぞれの宿主組織中のレベルを超えた。
【0052】
したがって、神経芽腫組織によるHRP−3発現及び分泌が異常なまでに高いHRP−3レベルを細胞外腫瘍環境において生じることを結論付けることができる。
【0053】
実施例4
オリゴヌクレオチドによるHRP−3ターゲッティング
二重鎖DNAとの複合体にあるPWWPドメインの利用可能な構造を基礎として、短い(15bp)二重鎖DNA及び3つの派生DNA二重鎖をHRP3をターゲッティングするために設計した(図12)。この設計したDNAの配列は図面中で左側に示され、Lukasik et alの二重鎖(二重鎖1)で導入された変化を強調して赤及び下線を引いた塩基を有する。この二重鎖は様々な分子形状を試験するために(二重鎖3)、そして、この結合のためにいかにこの配列が重要であるかを理解するために設計されている(二重鎖2及び4)。
【0054】
4つの全てのDNA二重鎖を、これらがそのPWWPドメインに結合することによりHRP−3機能を妨げることができるかどうかを確認するために、我々の3T3移動in vitroアッセイにおいて試験した(図13)。図13では、この左から最初の欄がFBSを用いたコントロールの移動を、そして、この左から二番目の欄がFBSなしのコントロールの移動を示す。この左から三番目の欄はネガティブコントロールである。この左から四番目の欄はHRP−3の存在における移動阻害を示す。この左から五番目の欄は1000nMの濃度での二重鎖(DNA1)はFBSを用いたコントロールと比較して移動に対するいかなる影響をも有さないことを示す。この更なるデータはDNA1がHRP−3の抗移動作用を濃度依存的に阻害することを示す。特に、DNA1の250nMの濃度では、3T3細胞の移動がFBSを用いたコントロールと匹敵する。このように、二重鎖1は、HRP−3のタンパク質作用を消滅させることができる。この作用は用量依存的であり、かつ、特異的にその構造に関連し、というのも単鎖はいかなる活性をも示さないからである。
【0055】
我々は二重鎖2のわずかな活性だけを見出し、二重鎖3及び4の活性は見出さなかった。これらの最後のデータは特に興味深いものであり、というのもこれらはこの結合が主としてこのオリゴの構造−特異的活性で当然であることを確認するからである。
【0056】
更に、これはHUVEC細胞に対して活性があるので、我々は移動アッセイを実施し、この場合に二重鎖1は50nMの濃度でHRP−3の完全に抗移動性の活性を回復できる(データ示さず)。
【0057】
修飾した単鎖オリゴヌクレオチドを用いてヒトの内皮細胞発芽に対するこのタンパク質の作用を遮断することを2回試みた。組み換えタンパク質、及び合成オリゴ、配列番号1、2及び3を用いる試料においては、この発芽した球状体の数は組み換えタンパク質を用いた試料に比較して減少している(図19)。
【0058】
この結果から出発して、我々は、マウス血清中で改善された耐性を有する、本発明によるヘアピン構造を有するオリゴヌクレオチド配列を獲得した(図15)。化学修飾の導入により、例えば、2′−OMe、2′F又は逆転した極性の導入により、より良好なファーマコキネティック特性を有する本発明による分子配列を我々は設計した。これら配列は有利には線状及び分枝鎖状PEGでもってコンジュゲートされていてよい。
【0059】
以下の本発明による配列においては、下線を引いたか又は星印を付したモノマーが修飾ヌクレオチド構成ブロックである:この下線を引いたモノマーは合成の2′−OMe RNA構成ブロックであり、かつ、星印を付したモノマーは末端基NH2を5′(5′−アミノ基)に有するヌクレオチド構成ブロックであり、これはPEG単位とアミド結合を形成できる。モノマー「iA」は、逆転した極性を指し、すなわち、3′−3′の逆位連結を有する構成ブロックである。
【0060】
配列
【0061】
実施例5
細胞毒性試験
結合(ref. Lukasik et al., 2006)、及び、in vitroでの溶解性HRP−3の血管形成促進性作用の遮断(データ示さず)のためのこれら配列の能力から出発して、我々は、図16で示されるように、様々な細胞株中での配列番号11(化合物名BN210で同定)の細胞毒性、及びin vivoでのその急性毒性を試験することを決定した。
【0062】
我々はBN210の急性毒性をin vivoで評価した。21.8〜22.9gの重さの30匹のCD−1雌マウス(Charles River Italia s.r.l., Via Indipendenza, 11 23885 CALCO (Lecco))を5匹の動物毎の、6つの群にわけ、マクロロンケージ(タイプIII)中で室温22±3℃及び相対湿度55±15%で飼育した。空気交換は180〜220/時間である。リン酸緩衝食塩水中に溶解したBN210の3つの用量を試験した:3、10及び30mg/kgを静脈内に(i.v.、尾静脈を介して)又は腹腔内に(i.p.)投与した。BN210濃度はこの処方物中でそれぞれ0.155、0.517及び1.551mg/mlであった。マウスを、薬物投与後14日間にわたり毒性徴候の外観について毎日、2回/日観察した。アーヴィン試験(Irvin test)において普通チェックするパラメーターを考慮した。この観察期間を通じて臨床的又は挙動変化の徴候はi.v.又はi.p.のいずれかで投与されたこの全ての3つの用量で検出されなかった。観察14日後に全てのマウスを屠殺し、明白な病理学的検査のために解剖した。この剖検の間の全ての徴候又は病理学的変化が精査の対象であった。巨視的徴候又は病理学的変化はこの剖検検査の間に検出されなかった。
【0063】
BN210が、ビンクリスチン、臨床使用において最も有力な化学療法剤の1つ、との相乗作用を有する可能性を更に試験した。このために、250nMのBN210単独で、又は様々な濃度のビンクリスチンと組み合わせて、Gl−L−lN神経芽腫細胞でMTT試験を実施した。図4に示されるように、ビンクリスチンが2.5〜5nMの濃度でGl−Ll−N細胞の増殖を阻害することができた一方で、250nMのBN210の添加はビンクリスチン処理の作用を促進も阻害もしなかった。更に、BN210単独、又はPEG後端部単独、は、Gl−Ll−N細胞に対していかなる細胞毒性作用も示さなかった。
【0064】
実施例6
in vivoモデル
以前の実験において、BN210は、in vitroで抗血管形成作用を有することが示されている(データ示さず)。したがって、腫瘍血管形成のモデルにおいてin vivoでBN210の効力を試験した。神経芽腫を腫瘍モデルとして選択し、というのもHRP−3は原則的にマウス中の神経系で発現するからであり、そして以前の実験はHRP−3が、様々なヒトの神経芽腫細胞株の条件培地中に存在し、かつ、過剰発現することを示している。HRP−3は試験した細胞株のいずれの増殖にも作用しないので、細胞毒性剤、ビンクリスチンと組み合わせてBN210を使用することが適当であることが見出された。
【0065】
マウスを特定の病原体フリーの条件下で飼育した。このin vivo実験を5週齢の雌の無胸腺(ヌードnu)マウスを使用して実施した。マウスをキシラジン(10mg/kg)及びケタミン(90mg/kg)の混合物で麻酔処理し(Imalgene 1000, Merial Italia S.p.A., Milan,イタリア)、開腹手術し、神経芽腫(NB)細胞株、Gl−Ll−N(10μlの食塩水溶液/マウス中1.5×106細胞)で、左の副腎の包中に同所的に注射した、これは以前に報告されているとおりである(Pastorino F. et al., Cancer Res 63, 2003; Pastorino F. et al., Clin Cancer Res 2008)。腫瘍細胞移植後に死亡率は観察されなかった。NB腫瘍を22日間にわたりこの注射した細胞から成長させ、次いで動物をランダムに3つの群に分けた。1つの群は5週間にわたり週に一回ビンクリスチン1mg/kgを用いて、i.v.処理した(VCR、全部で5投与)。第2の群の動物をVCR(1mg/kgのi.v.注射、5週間にわたり週に1回、全部で5投与)、及び、BN210(7mg/kgのi.p.注射、5日/週、全部で20投与)の組み合わせで処理した。ネガティブコントロールマウスをHEPES緩衝食塩水で処理した。生存実験における実験群(n=8マウス/群)の間での差異の有意性を、カイ二乗ログランク試験を使用してカプラン・マイヤー曲線により決定した。これら知見はP値が<0.05である場合に有意であるとみなされた。
【0066】
同所性神経芽腫(NB)異種移植片に対するビンクリスチン(VCR)と組み合わせた配列 配列番号11(BN210)のin vivo抗腫瘍活性
VCR単独投与と比較して、BN210がNB異種移植片中でVCRの治療作用を改善するために使用できるかどうかを決定するために、Gl−Ll−N細胞をヌードマウスの左の副腎中に注入し、約200mm3mpサイズに達するまで成長させた(22日)。NB腫瘍を有するマウスを次いで、上で報告されているとおり、週毎の間隔で薬剤で処理した。図18に示されているとおり、VCR単独で処理した(1mg/kg i.v.、この実験において治療量以下の用量)NBを有するマウスは、ネガティブコントロールマウスに比較してその寿命のいかなる増加も示さなかった。対照的に、VCR+BN210の組み合わせで処理したマウスは、ネガティブコントロール及びVCR処理群に比較してその寿命の統計学的に有意な増加を有した(p=0.0058)(図18)。
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明はPWWPドメインを有するタンパク質の活性を調節するための剤に関する。
【0002】
PWWPドメインは、「HDGFファミリー」として知られるタンパク質のファミリー中に見出される保存された構造モチーフである。このファミリーは6つのタンパク質を包含する:原型タンパク質、HDGF;HRP−1、HRP−2、HRP−3、HRP−4(HRP=HDGF関連タンパク質(HDGF Related Protein));及びLEDGF。図1は、この6つのタンパク質のアラインメント及びこのPWWPドメインの構造的保存を示し、これは常に全てのファミリーメンバーのN末端に存在する。更に、PWWPドメインと2つの非関連タンパク質のオリゴヌクレオチド結合ドメインとの間の構造的相同性も強調されている;この相同性はオリゴヌクレオチド結合において推定上保存される役割を指し示す。この結論は最近になって、HRP−3のPWWPドメインと二重鎖DNAとの間での複合体の構造のNMRの解明により支持され、これは、マイクロモーラー(μM)の親和性で少なくとも1のds DNAで結合するPWWPドメインの能力を確認した。PWWPドメインが、オリゴヌクレオチドと結合できるという事実は、治療的及び診断的使用のための短鎖オリゴヌクレオチドによるHDGFファミリー中のタンパク質のターゲッティングの道をひらく。
【0003】
本発明者らは、PWWPドメインタンパク質の新規生物学的活性を同定した。特に、HRP−3は、NIH 3T3細胞の移動、増殖及び/又は足場形成独立成長を阻害することができることが見出された。更に、HRP−3は、HUVEC細胞に対する血管形成促進剤として作用することが見出された。更に、HRP−3は、神経腫瘍中で、特に神経芽腫細胞中で過剰発現することが見出された。最後に、本発明者らは、高い親和性でもってPWWPドメインに結合でき、このようにしてPWWPドメインタンパク質の活性を阻害できる新規の単鎖オリゴヌクレオチド分子を同定した。
【0004】
本発明の第1の観点は、PWWPドメインタンパク質に結合でき、かつ、PWWPドメインタンパク質、例えばHRP−3及びHDGFにより誘発される生物学的作用を阻害及び/又は遮断できる単鎖オリゴヌクレオチド分子に関する。
【0005】
本発明の主題は、配列
【化1】
[式中、Y及びZはヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを示す、
その際、それぞれのY及びZは互いと一緒に塩基対、特にワトソン−クリック塩基対を形成し、X1及びX2は独立してポリ(アルキレングリコール)単位を含む基から選択される、
n及びmは独立して0又は1を示し、その際n及びmの少なくとも1つは1である、
sは1〜20、有利には5〜18の整数である、
Bは架橋基である]
を含む単鎖オリゴヌクレオチド分子である。
【0006】
有利には、本発明は、配列
【化2】
[式中、A、C、T及びGはヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを示す、
X1及びX2は独立してポリ(アルキレングリコール)単位を含む基から選択される、
n及びmは独立して0又は1を示し、その際n及びmの少なくとも1つは1である、かつ
Bは架橋基を示す]
を含む単鎖オリゴヌクレオチド分子に関する。
【0007】
このオリゴヌクレオチド分子は、互いと一緒に塩基対、特にワトソンクリック塩基対を形成できるヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを含む。有利にはこの構成ブロックは、「A」、「C」、「T」及び「G」から選択される。この「A」構成ブロックは、核酸塩基アデニン又はそのアナログであって相補性核酸塩基「T」と塩基対を形成できるもの含む構成ブロックから選択される。この「C」構成ブロックは、核酸塩基シチジン又はそのアナログであって相補性核酸塩基「G」と塩基対を形成できるものを含む構成ブロックから選択される。この「T」構成ブロックは、核酸塩基チミン又はそのアナログであって相補性核酸塩基「A」と塩基対を形成できるもの、例えば核酸塩基ウラシル(代わりに「U」構成ブロックとしても同定される)を、そしてこの「G」構成ブロックは核酸塩基グアニン又はそのアナログであって相補性核酸塩基「C」と塩基対を形成できるものを含む。
【0008】
構成ブロックA、C、T及びGは有利には、デオキシリボヌクレオチド構成ブロック、修飾デオキシリボヌクレオチド構成ブロック、リボヌクレオチド構成ブロック、修飾リボヌクレオチド構成ブロック、ヌクレオチドアナログ構成ブロック、特にPNA、LNA又はモルホリノ構成ブロック又はその組み合わせから選択される。修飾デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド構成ブロックの例はヌクレオチドであって、このリボース糖の2′−C原子がハロゲン、例えばF、Cl、Br又はI、シアノ、アルキル、例えばC1〜C6−アルキル、アルケニル、例えばC2〜C6−アルケニル、アルキニル、例えばC2〜C6−アルキニル、アミノ、モノ−又はジ−アルキル置換アミノ、例えばC1〜C6−アルキルアミノ、アルコキシ、例えばC1〜C6−アルコキシで置換されたものであり、この場合にアルキル、アルケニル及びアルキニル基は非置換であるか又はハロゲン、ヒドロキシ−又はアルコキシ基により一又は多置換されていてよい。構成ブロックの更なる例は、糖−リン酸骨格のリン原子で生じる修飾を有するオリゴヌクレオチドアナログであり、これは例えばホスホロチオアート、メチルホスホナート、ホスホロアミダート及びホスホトリエステルである(例えば、Cohen, J. S., ed. Oligonucleotides: Antisense Inhibitors of Gene Expression,(CRC Press, Inc., Boca Raton FIa., 1989)。有利な例は、ペプチド核酸、(PNA)、ヒドロキシプロリンペプチド核酸(HypNA)、セリンペプチド核酸(SerNA)を含む(例えばWO 2001/068673−オリゴヌクレオチドアナログ、その合成方法及び使用方法)。モルホリノ及び複素環式アナログ、2′−修飾ヌクレオシド、例えば2′F RNA又は2′OMeRNA、コンフォメーションが制限されたヌクレオチド、二、三又は多環式ヌクレオシドアナログ、例えばa−ビシクロ−DNA、8−ビシクロDNA5′,6′ビシクロ−DNA、ロックトヌクレオシドアナログ(LNA)、及び、スピロ基を含むアナログ(cf. Velazquez S, San Felix A, Perez-Perez MJ, Balzarini J, De Clercq E1 Camarasa MJ. lnt Conf AIDS. 1992 JuI 19-24; 8:スペインにより説明されたとおり)、熱不安定性保護基、例えばプロドラッグとしての4−メチルチオ−1−ブチル基を有するオリゴヌクレオチド性アナログ(cf. Beaucage SL, Curr Protoc Nucleic Acid Chem. 2004年12月;第3章:3.11セクションにより説明されたとおり)、2′−5′連結したオリゴヌクレオチド、又は5′−5′又は3′−3′連結を有するオリゴヌクレオチド(逆転アミダイト(reversed amidite)の使用による連結逆位(linkage inversion))。
【0009】
極めて有利な構成ブロックA、C、T及びGはデオキシリボヌクレオチド構成ブロック、リボヌクレオチド構成ブロック、修飾リボヌクレオチド構成ブロック、有利には2′−OMeリボヌクレオチド構成ブロック及び逆転リボヌクレオチド構成ブロックであって3′−3′連結逆位を形成するものから選択される。
【0010】
本発明の単鎖オリゴヌクレオチド分子は、この分子の5′−及び3′−末端に存在する基X1及び/又は基X2をそれぞれ含む。一実施態様において、オリゴヌクレオチド分子はX1及びX2基の両者を含む。更なる一実施態様において、この分子はX1基だけを含み、また更なる実施態様においてX2基だけを含む。
【0011】
この基X1及びX2は、オリゴヌクレオチド分子を安定化できる基から選択される。有利には、X1及びX2は、線状又は分枝鎖状ポリ(C2〜C3−アルキレングリコール)単位、特にポリ(エチレングリコール)単位を含む基から選択される。これら単位は有利には、200〜100000Da、特に有利に300〜50000Daの範囲内の分子量を有する。特に有利な一実施態様において、このポリ(エチレングリコール)単位は、分枝鎖状ポリ(エチレングリコール)単位であってそれぞれ20kDaの2個のポリ(エチレングリコール)鎖を有するものであり、すなわち、分子量40000Daを有する分枝鎖状ポリ(エチレングリコール)(PEG(40KDa))である。
【0012】
更に、本発明のオリゴヌクレオチド分子は、架橋単位Bを含み、これは組立場(scaffold)を提供し、これによりこの分子内での5′−及び3′−自己相補的オリゴヌクレオチド間での二重鎖ステム構造の形成が可能になる。架橋単位の長さは有利には1〜20ヌクレオチド性又は非ヌクレオチド性構成ブロックである。有利にはこの架橋単位は、(i)少なくとも3つの対になっていないヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックのヌクレオチド性スペーサー配列、又は、(ii)非ヌクレオチド性スペーサー配列、例えば少なくとも3つのエチレングリシド単位の、有利には少なくとも5つのエチレングリコール単位のポリ(エチレングリコール)スペーサー配列を含む。
【0013】
より有利には、この架橋単位は、3つの「A」構成ブロック、例えばデオキシリボヌクレオチド配列AAA又はポリ(エチレングリコール)スペーサー配列であって3〜10、有利には5〜10、例えば3、5、7又は10つのエチレングリコール単位を含むものを含む。より有利には、この架橋単位の3つの「A」構成ブロックは、2′OMe修飾リボヌクレオチド構成ブロック、例えば修飾リボヌクレオチド配列AAA(2′−OMe)を含む。
【0014】
本発明のオリゴヌクレオチド分子は、有利には、PWWPドメインタンパク質、例えばHDGF、HDGF−2、HRP−1、HRP−2、HRP−3、HRP−4及び/又はLEDGF、特にHRP−3及び/又はHDGFを阻害できる。有利にはPWWPドメインは、Prosite PS50821、Pfam PF00855又はInterPRO IPR000313で定義されているとおりである。
【0015】
PWWPドメインタンパク質は有利には、哺乳類タンパク質、より有利にはヒトタンパク質、例えばヒトHDGF(Swiss Prot. No. P51858/ Q7Z4S4/Q7Z4S5)、ヒトHDGF−2(Swiss Prot. No. Q7Z4V5)、ヒトHRP−3(Swiss Prot. No. Q9Y3E1)、及び/又はヒトLEDGF(Swiss Prot. No. 075475)である。本発明のオリゴヌクレオチド分子は有利には、PWWPドメインの生物学的活性、例えば血管形成促進性活性を阻害できる。
【0016】
有利な一実施態様において、このオリゴヌクレオチドは、少なくとも10μM、有利には少なくとも100μM、特に有利には少なくとも1000μMの親和性でPWWPドメインタンパク質に結合する。更なる有利な一実施態様において、このオリゴヌクレオチドは、少なくとも10nM、有利には少なくとも100nM、特に有利には少なくとも1000nMの親和性でPWWPドメインタンパク質に結合するタンパク質へのこのオリゴヌクレオチドの結合は、ビアコア(Biacore)システム、円二色性又は電気泳動技術、例えばキャピラリー電気泳動によって決定されてよい。
【0017】
本発明のオリゴヌクレオチド分子は、医薬において、例えばヒト又は獣医学的医薬において、診断及び/又は治療適用のために使用されてよい。例えば、このオリゴヌクレオチド分子は、PWWPドメインタンパク質機能障害、特にPWWPドメインタンパク質過剰発現及び/又は過剰活性に関連、付随する、かつ/又はこれにより引き起こされる状態又は疾病の診断及び治療において使用されてよい。
【0018】
より有利には、このオリゴヌクレオチド分子は、血管形成に関連した疾病、例えば癌、例えば神経癌、例えば神経芽腫、メラノーマ、結腸直腸癌、膵癌、胃癌、肝細胞癌及び肺癌の診断及び治療における使用のためである。特に有利な一実施態様において、このオリゴヌクレオチド分子は、例えば、神経癌、例えば神経芽腫におけるHRP−3の生物学的活性の阻害及び/又は遮断における使用のためである。
【0019】
本発明のオリゴヌクレオチドは、これを必要とする被験体に、活性剤及び医薬的に許容可能な担体、希釈剤及び/又は助剤を含んでよい医薬組成物として投与されてよい。この医薬組成物は、任意の適した形態にあってよく、例えば腸管外、局所的、肺の投与その他のためであってよい。有利には、この医薬組成物は、例えば注射又は輸液による腸管外投与のために適している。
【0020】
医薬組成物は、これを必要とする被験体に、疾病の種類及び深刻度及び投与経路に依存して、治療的有効用量、例えば、一日あたり0.001〜1000mg以上で投与される。
【0021】
本発明のオリゴヌクレオチド分子は単独療法として又は更なる療法、例えば放射線、手術及び/又は更なる医薬、例えば抗癌医薬、例えば化学療法剤及び/又は抗腫瘍抗体の投与と組み合わせて投与されてよい。化学療法剤の有利な例は、チューブリン安定化剤、チューブリン脱安定化剤、代謝拮抗剤、プリン合成阻害剤、ヌクレオシドアナログ、DNAアルキル化剤、DNA修飾剤、及び血管破砕剤である。化学療法剤の特定の例は、アミノグルテチミド、アミノプテリン、アナストロゾール、アンシタビン、ビモラン、5−ブロモウラシル、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、クロロメチン、シスプラチン、クロドロン酸二ナトリウム、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドキソルビシン、エチルイミナム(ethyliminum)、エトポシド、フロクスウリジン、5−フルオロウラシル、フルタミド、フトラフ−ル(ftorafur)、ヒドロキシ尿素、イソホスファミド、イオムスチン、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、ニトロカファン、ポリアクチンA、タモキシフェン、チオ−TEPA、カリケアマイシン、タキソール、ゲムシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ダウノルビシン、ドセタキセル、イリノテカン、エポチロンB、及びエポチロンDである。抗腫瘍抗体の有利な例は、抗VEGFR抗体、例えばAvastin(R)、又は他の抗体、例えばHerceptin(R)、Rituxan(R)、Mylotarg(R)、及びCampath(R)である。
【0022】
本発明の特に有利な一観点によれば、オリゴヌクレオチド分子は、更なる化学療法医薬と組み合わせて投与されてよく、特に有利にはビンクリスチンと組み合わせて投与されてよい。
【0023】
更に、本発明のオリゴヌクレオチド分子は、薬剤スクリーニングのために、例えば、このオリゴヌクレオチド分子及びその標的タンパク質の相互作用を調節する、すなわち、刺激又は阻害する化合物の同定のために使用されてよい。
【0024】
本発明の更なる一観点は、医薬における使用のための、例えば診断及び/又は治療適用のための、HRP−3ポリペプチド、有利には哺乳類HRP−3ポリペプチド、より有利にはヒトHRP−3ポリペプチド、又は、これをコードする核酸分子に関する。この観点は、HRP−3が、哺乳類細胞、特に哺乳類繊維芽細胞、例えばNIH 3T3細胞(つまり、3T3プロトコルにより培養された初代マウス胚性繊維芽細胞)の細胞移動、増殖及び/又は足場独立成長の有力な細胞外阻害剤であるとの知見を基礎とする。
【0025】
この実施態様において、このHRP−3ポリペプチドは、これを必要とする被験体、例えばヒト患者に直接的に投与されてよい。又は、HRP−3ポリペプチドをコードする核酸分子はこの分野で知られている非ウィルス性又はウィルス性ベクター系を使用して投与されてよい。HRP−3ポリペプチド又はこれをコードする核酸が、この活性剤の細胞外提示を可能にするプロトコルにより投与されることが有利である。
【0026】
本発明のまた更なる一実施態様は、医薬における使用のための、例えば診断及び/又は治療的適用のための、HRP−3アンタゴニストに関する。この実施態様は、HRP−3がHUVEC細胞中で有力な血管形成促進性活性を有するとの知見に基づく。
【0027】
HRP−3ポリペプチドアンタゴニストは、HRP−3に対して指向されている抗体又は抗体断片、例えばモノクローナル、キメラヒト化、ヒト又は組み換え抗体又はこの抗原結合断片であってよい。又は、このアンタゴニストは、核酸エフェクター分子、例えばアンチセンス分子、リボザイム、RNA干渉剤、例えばsiRNA分子であってHRP−3発現を阻害及び/又は遮断できるもの、又は、上述のとおりの単鎖オリゴヌクレオチド分子であってよい。又は、このアンタゴニストは、アプタマー、例えば核酸分子であってHRP−タンパク質に結合し、その活性を阻害又は遮断するために選択されたものであってよい。
【0028】
HRP−3アンタゴニストは、活性剤を治療的有効量で含有する医薬組成物の形でこれを必要とする被験体に投与される。抗体、核酸エフェクター分子及びアプタマーを投与するためのプロトコルはこの分野で知られている。
【0029】
本発明の剤は、上述のとおり、血管形成の阻害のために、特に血管形成に関連した状態又は疾病の診断及び/又は治療において、及び/又は過剰増殖症状又は疾病の診断及び治療において特に有用である。更に特に、本発明の剤は、血管形成関連病理学、例えば癌、特に神経癌、例えば神経芽腫、肝癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、又は神経学癌における診断及び治療に有用である。使用の更なる有利な分野は、眼科学、疼痛、心臓血管疾病、皮膚科学、感染疾病、例えばウィルス疾病、炎症及び自己免疫疾病、及び呼吸疾病を含む。
【0030】
更に、本発明は以下の図面及び実施例によりより詳細に説明される。
【0031】
図面の簡単な説明:
図1は、HDGFファミリーの6部分のアラインメント及びPWWPドメインの構造的保存を示し、これは常に全てのファミリーメンバーのN末端に存在する。
図2は、HRP−3によるNIH−3T3移動に対する阻害作用を示す。
図3及び4は、刺激24時間後のHRP−3により誘発される用量依存性HUVEC発芽を示す。
図5及び6は、HUVEC細胞株中でのHRP−3刺激あり及びなしでのVEGFR−2 mRNA発現及びVEGF mRNA発現をそれぞれ示す。
図7は、HUVEC細胞株中でのVEGF刺激あり及びなしでのHRP−3 mRNA発現を示す。
図8は、抗VEGF抗体Avastin及びHRP−3ありでのHUVEC細胞の発芽試験を示す。
図9は、増加する量のHRP−3タンパク質の存在下でのHUVEC細胞移動アッセイを示す。
図10は、様々な正常及び腫瘍性のヒト細胞株中でのHRP−3発現レベルを示す。RNAを細胞から抽出し、DNアーゼ処理、レトロ転写及びリアルタイムPCR分析した。18S RNAレベルを試料標準化のために使用した。HRP−3タンパク質がヒト神経芽腫細胞株により高度にかつ選択的に発現されていることが見出された。
図11はウェスタンブロットアッセイを示し、この場合にHRP−3タンパク質がSHSY条件培地中で見出された。
図12は、設計された二重鎖DNAの配列を示し、二重鎖2、3及び4には赤で下線を引いた塩基があり、Lukasik et al.の二重鎖で導入した変化を強調する(二重鎖1)。
図13は、図12のDNA二重鎖1(DNA1)を用いた3T3移動in vitroアッセイを示す。
図14−A)は、神経芽腫及び非神経芽腫細胞株のHRP−3転写産物レベルを示す。RNAを細胞から抽出し、DNアーゼ処理、レトロ転写及びリアルタイムPCR分析した。18S RNAレベルを試料標準化のために使用した。平均発現値に応じて細胞株を上から下に配置した。神経芽腫細胞株は灰色で印をしてある。
図14−B)は、神経芽腫及び非神経芽腫細胞によるHRP−3の発現及び分泌を示す。タンパク質を細胞ライセートから抽出するか又は濃縮し、この条件培地から沈殿させ、SDS−PAGEゲルで分画し、HRP−3についてイムノブロットした。GADPHレベルを試料標準について測定した。このバンドの相対強度をImageJ softwareを用いて計算した。
図14−C)は、SH−SH5Y、Gl−Ll−N及びHTLA230神経芽腫異種移植片のHRP−3タンパク質レベルを示す。異種移植片腫瘍組織又は正常マウス組織から抽出したタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、HRP−3についてイムノブロットした。精製したHRP−3タンパク質をポジティブコントロールとして使用した。GAPDHのタンパク質レベルを試料標準化のために使用した。バンドの定量化をImageJ softwareを用いて実施した。
図15は、37℃で0〜25時間のマウス血清中でのインキュベーション後の配列番号4、5、6及び7の本発明によるオリゴヌクレオチド分子(それぞれ化合物BN203、BN204、BN205及びBN206として示す)のゲル電気泳動分析を示す。
図16は、配列 配列番号11(化合物BN210として示す)のオリゴヌクレオチド分子の細胞毒性アッセイを示す。MTT試験を、BN210又はコントロール試験物質を用いた24、48及び72時間のインキュべーション後のHepG2及び神経芽腫細胞株Gl−L−lN、SH−SY及びIMR32に対して実施した。ポジティブ及びネガティブコントロールを、それぞれ10%又は0%のウシ血清を含有する細胞培地を用いて実施した。
図17は、ビンクリスチン(VIN)単独又は配列 配列番号11(BN210)のオリゴヌクレオチド分子と組み合わせた場合のin vitro細胞毒性を示す。GI−L−IN神経芽腫細胞を0.15〜5nMの範囲の濃度でのビンクリスチンで、単独で用いて又は250nMのBN210と組み合わせて処理した。48時間後にMTT試験を実施した。
図18は、甲状腺刺激性の神経芽腫異種移植片に対する、化学療法剤ビンクリスチン(VCR)と組み合わせた配列 配列番号11(BN210)の本発明によるオリゴヌクレオチド分子のin vivo活性の結果を示す。
図19は、配列番号1のオリゴヌクレオチドがHRP−3誘発したHUVECの発芽を遮断できることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、HDGFファミリーの6部分のアラインメント及びPWWPドメインの構造的保存を示す図である。
【図2】図2は、HRP−3によるNIH−3T3移動に対する阻害作用を示す図である。
【図3】図3は、刺激24時間後のHRP−3により誘発される用量依存性HUVEC発芽を示す図である。
【図4】図4は、刺激24時間後のHRP−3により誘発される用量依存性HUVEC発芽を示す図である。
【図5】図5は、HUVEC細胞株中でのHRP−3刺激あり及びなしでのVEGFR−2 mRNA発現を示す図である。
【図6】図6は、HUVEC細胞株中でのHRP−3刺激あり及びなしでのVEGF mRNA発現を示す図である。
【図7】図7は、HUVEC細胞株中でのVEGF刺激あり及びなしでのHRP−3 mRNA発現を示す図である。
【図8】図8は、抗VEGF抗体Avastin及びHRP−3ありでのHUVEC細胞の発芽試験を示す。
【図9】図9は、増加する量のHRP−3タンパク質の存在下でのHUVEC細胞移動アッセイを示す図である。
【図10】図10は、様々な正常及び腫瘍性のヒト細胞株中でのHRP−3発現レベルを示す図である。
【図11】図11はウェスタンブロットアッセイを示す図である。
【図12】図12は、設計された二重鎖DNAの配列を示す図である。
【図13】図13は、図12のDNA二重鎖1(DNA1)を用いた3T3移動in vitroアッセイを示す図である。
【図14】図14は、神経芽腫及び非神経芽腫細胞株のHRP−3転写産物レベルを示す(A)、神経芽腫及び非神経芽腫細胞によるHRP−3の発現及び分泌を示す(B)、SH−SH5Y、Gl−Ll−N及びHTLA230神経芽腫異種移植片のHRP−3タンパク質レベルを示す(C)図である。
【図15】図15は、37℃で0〜25時間のマウス血清中でのインキュベーション後の配列番号4、5、6及び7の本発明によるオリゴヌクレオチド分子(それぞれ化合物BN203、BN204、BN205及びBN206として示す)のゲル電気泳動分析を示す図である。
【図16】配列 配列番号11(化合物BN210として示す)のオリゴヌクレオチド分子の細胞毒性アッセイを示す図である。
【図17】図17は、ビンクリスチン(VIN)単独又は配列 配列番号11(BN210)のオリゴヌクレオチド分子と組み合わせた場合のin vitro細胞毒性を示す図である。
【図18】図18は、甲状腺刺激性の神経芽腫異種移植片に対する、化学療法剤ビンクリスチン(VCR)と組み合わせた配列 配列番号11(BN210)の本発明によるオリゴヌクレオチド分子のin vivo活性の結果を示す図である。
【図19】図19は、配列番号1のオリゴヌクレオチドがHRP−3誘発したHUVECの発芽を遮断できることを示す図である。
【0033】
実施例
材料と方法
HRP−3タンパク質供給源
このタンパク質をGSTコンジュゲートとして市販の供給源から最初に獲得した。同時に、このcDNAをRT−PCRによりヒト細胞から獲得した。このHRP−3コード領域を、制限部位としてEcoRI及びNdelを使用してpET30ベクター中にクローニングした。この組み換えタンパク質を大腸菌(E. CoIi)TOPF10及び12中で生産しポジティブクローンを獲得した。2つのポジティブクローンを配列決定して、その正確さを確かめ、両者ともに正確である。したがって、このタンパク質発現工程のために我々のポジティブクローンを大腸菌BL21中に形質転換した。異なる条件の温度及び時間における我々のクローンのいくつかの発現アッセイ後に、HRP−3を第1の工程のためにHPLCを用いてカチオン交換により、そして第2の工程のために疎水性精製を用いて精製した。組み換えタンパク質が完全に精製した後に、LAL試験を実施し、エンドトキシンの非存在を確かめ、次いでこれを定量化した。
【0034】
実施例1
NIH 3T3繊維芽細胞のための抗移動剤としてのHRP−3
NIH 3T3繊維芽細胞に対する報告されたHDGF活性と類似して、PWWPドメインに結合できるリガンドによるいかなる干渉活性も報告できる試験を開発すべく、これら細胞に対するHRP−3活性を試験することに決めた。増加する量のタンパク質の存在下での3T3細胞の移動及び増殖アッセイを実施した。これらアッセイは、HRP−3タンパク質の強力な抗移動作用の定義を可能にし、これは30ng/mLで5%のFBSにより24時間で誘発される3T3移動の50%を妨げることができる。この試験はバリデーションされ、今や良好に再現可能である、図2。
【0035】
更に、HRP−3が3T3増殖及び足場依存性成長を0.1ng/mLで遮断することが見出された。これら全てのデータは、3T3細胞の強力な増殖及び移動を誘発する、HDGFの作用とは対照的なHRP−3の作用を示す。
【0036】
実施例2
HUVEC細胞のための血管形成剤としてのHRP−3
HDGFが、様々な種類の腫瘍において血管形成に関連することが見出され、この理由のために、我々はBAEC及びHUVECとしての内皮初代細胞株に対するHRP−3の活性を試験した。BAEC及びHUVEC細胞に対する増殖に対する作用が見出されなかった一方で、HRP−3は、24時間の刺激後にHUVEC発芽を誘発できる。図3及び4に示されるとおり、HRP−3は、用量依存的にHUVEC細胞において発芽を誘発できる。図4には、ネガティブコントロール及びポジティブコントロールを60ng/mLでVEGFを用いて示している。このデータからは、100ng/mlを超える濃度でHUVEC細胞に対する発芽をHRP−3が刺激することを実証した。我々の結果を確かめるために、実験を盲目的にも実施している。
【0037】
内皮細胞機能性の他の重要な観点は新規血管を形成できる能力であり、したがってマトリゲル(Matrigel)中で管形成アッセイを実施した;予備試験によれば、HRP−3は、24時間後にHUVECの血管様網目を維持することができる(示さず)。
【0038】
この刺激の分子的基盤を理解するために、リアルタイムPCRによりHUVEC細胞株中でHRP−3のmRNA発現を研究した。興味深いことに、このタンパク質は高レベルで発現していることが見出された。VEGF又はVEGFR−2がHRP−3誘発機構に関連しているかどうかを理解するために、我々のHRP−3でもってHUVEC細胞を刺激し、VEGF、VEGFR−2、HRP−3及びHDGFのmRNAレベルを検査した。これら遺伝子の発現はHRP−3により変化しなかった。図5及び6。
【0039】
HRP−3がVEGFによりその上で制御されているかどうかを理解するために、HUVEC細胞を60ng/mLのVEGFで処理し、次いでHRP−3 mRNAレベルを測定した:ネガティブコントロールと処理細胞との間には有意差は存在しなかった(図7)。
【0040】
この最後のデータからはHRP−3血管形成促進性活性がVEGFとは独立していることを認めることができる。
【0041】
この証明は、治療的使用のために血管形成を遮断するために極めて重要である。
【0042】
更に、VEGF独立性血管形成活性を確かめるために、我々はAvastin、抗VAGF抗体を用いてVEGF及び我々のタンパク質の存在下で別の発芽試験を実施した。Avastinは、HUVEC発芽をVEGF媒介的に遮断できるが、HRP−3媒介的でない、図8。
【0043】
増加する量のこのタンパク質の存在下でのHUVECの移動アッセイを実施した(図9)。これらアッセイにより、用量依存的にヒトの内皮細胞に対するタンパク質の抗移動作用の定義が可能になり、これは100ng/mlで5%FBSにより5及び16時間で誘発された移動の約80%を妨げることができる。
【0044】
実施例3
神経腫瘍中でのHRP−3発現レベル
以前の刊行物から、HDGF発現が様々なヒトの癌中でメラノーマ、結腸直腸、膵臓、胃、肝細胞及び肺の癌腫として増加することを我々は知っている。このため、ヒトの腫瘍細胞株中のHDGFタンパク質の特異的過剰発現をリアルタイムPCRによりスクリーニングすることが決定され、そして、我々はこの基本のmRNAレベルが全ての細胞株に対してHRP−3よりも高いことを認め、そして、これまでにはHDGFが乳癌、神経芽腫、骨肉腫、リンパ腫、膵臓及び子宮のアデノカルシノーマ中で過剰発現することが見出されているが、しかしこの最大の過剰発現はヒトの肝臓細胞であるChang細胞株中で見出された。
【0045】
HRP3が、PWWP結合オリゴヌクレオチドを開発するためのモデルとして使用すべきPWWP含有タンパク質としてだけ意図されるにもかかわらず、我々は、タンパク質が過剰発現している既知の病理学が存在するかどうかを知りたいと思った。アレイデータのバイオインフォマティクス的スクリーニングは、攻撃的なグレードのヒトのグリオーマ、子供の希有致死性腫瘍、中で特異的な高レベルの発現を示した。この過剰発現は、HRP−3の提案された増殖性機能に関係しているかもしれず、したがって、我々はリアルタイムPCRによりCNS腫瘍細胞株中のこのタンパク質の特異的過剰発現についてスクリーニングを開始した。興味深いことに、このタンパク質は、SH−SY5神経芽腫中で、そしてNSC34、アミノプテリン感受性神経芽腫N18TG2と運動ニューロン富化した胚性の12〜14日の脊髄細胞の融合により生産されたマウス−マウスの神経ハイブリッド細胞株のサブクローン中で過剰発現していることが見出された(図10)。
【0046】
この発現レベルは特異的であり、というのも他の脳の腫瘍株、例えば神経芽腫Neuro2A細胞株、又は他の組織由来の細胞は高レベルでこのタンパク質を発現しなかったからである。SH−SY5細胞は4歳の子供の骨髄に住み着く攻撃性の神経芽腫の二次転移から獲得した。神経芽腫は希少疾患(orphaned ref. ORPHA635)であり、このin vitroモデルは現在ではSH−SY細胞により提示されている。
【0047】
最近の知見は、正常の神経外胚葉由来の組織の発達を駆動する分子経路が、神経芽腫成熟化にも関連していてよいことを示唆している。血管形成は神経分化の間に鍵となる役割を果たし、神経及びグリアの両者に栄養活性を発揮している。血管内皮成長因子(VEGF)を含む、NBsにおける血管形成の誘発における重要な役割を果たすためにこれまでに種々の血管形成因子が同定されている。増加する量のタンパク質の存在下でのSH−SY5及びNCS−34細胞の増殖アッセイを実施した。これらアッセイにより、SHSYに対してだけこのタンパク質の抗増殖性作用の定義が可能になり、これは100ng/mLで5%のFBSにより24及び48hで誘発されたSH−SY5増殖の25%を妨げることが可能である。
【0048】
神経芽腫の内部では、神経芽腫細胞が、内皮細胞中で新規の血管形成プロセスを助けることができる溶解性HRP−3を産生すると我々は推測する。この理論を支持する結果、我々はHRP3タンパク質をSHSY条件培地中でウェスタンブロットアッセイにより見出す、図11。これは、HDGF及びHRP−3の両者がSHSY細胞において高度に発現するが、HRP−3だけが培地中に存在することを確認する。
【0049】
我々の理論を更に支持するために、様々な神経芽腫細胞株を選択し、このHRP−3 mRNA及びタンパク質発現レベルを分析した。図14Aに示されるとおり、HRP−3タンパク質が神経芽腫細胞株中に、検査した他の腫瘍細胞及び正常細胞株に比較してより高レベルで存在することが見出された。
【0050】
次の工程として、HRP−3が神経芽腫細胞により細胞外区画中に放出されるかどうかを分析した。10つの神経芽腫細胞株の条件培地を濃縮し、タンパク質を沈殿させ、ウェスタンブロット分析によりHRP−3の存在について分析した。図14−Bに示されるとおり、Gl−Ll−N、NXS2、IMR32、HTLA230、LAN5及びSKNBE2細胞を含む大抵の神経芽腫細胞株は、HRP−3をその培養培地中に分泌する。
【0051】
更に、我々は2つの以前に説明されているマウスモデルの神経芽腫、同所(orthotopic)異種移植片モデル及び偽転移性異種移植片モデル由来の腫瘍組織中のHRP−3発現を分析した(Pastorino et al., 2003; Marimpietri et al., 2007)。副腎中へのGl−Ll−N細胞の同所注射が局所的な腫瘍の発達を生じた一方で、偽転移性モデル中へのHTLA230細胞の静脈内注射は腎臓中での転移発達を生じた。両者の腫瘍中のHRP−3タンパク質のレベルをウェスタンブロット分析により分析し、未処理の健康なマウスの腎臓及び副腎中のHRP−3発現と比較した。図14Cに示されるとおり、HRP−3は、副腎及び脳組織中で発現することが見出され、その一方で腎臓及び肝臓組織は極めて低いレベルのHRP−3を含有した。重要なことに、HTLA230及びGl−Ll−N腫瘍組織中のHRP−3タンパク質レベルはそれぞれの宿主組織中のレベルを超えた。
【0052】
したがって、神経芽腫組織によるHRP−3発現及び分泌が異常なまでに高いHRP−3レベルを細胞外腫瘍環境において生じることを結論付けることができる。
【0053】
実施例4
オリゴヌクレオチドによるHRP−3ターゲッティング
二重鎖DNAとの複合体にあるPWWPドメインの利用可能な構造を基礎として、短い(15bp)二重鎖DNA及び3つの派生DNA二重鎖をHRP3をターゲッティングするために設計した(図12)。この設計したDNAの配列は図面中で左側に示され、Lukasik et alの二重鎖(二重鎖1)で導入された変化を強調して赤及び下線を引いた塩基を有する。この二重鎖は様々な分子形状を試験するために(二重鎖3)、そして、この結合のためにいかにこの配列が重要であるかを理解するために設計されている(二重鎖2及び4)。
【0054】
4つの全てのDNA二重鎖を、これらがそのPWWPドメインに結合することによりHRP−3機能を妨げることができるかどうかを確認するために、我々の3T3移動in vitroアッセイにおいて試験した(図13)。図13では、この左から最初の欄がFBSを用いたコントロールの移動を、そして、この左から二番目の欄がFBSなしのコントロールの移動を示す。この左から三番目の欄はネガティブコントロールである。この左から四番目の欄はHRP−3の存在における移動阻害を示す。この左から五番目の欄は1000nMの濃度での二重鎖(DNA1)はFBSを用いたコントロールと比較して移動に対するいかなる影響をも有さないことを示す。この更なるデータはDNA1がHRP−3の抗移動作用を濃度依存的に阻害することを示す。特に、DNA1の250nMの濃度では、3T3細胞の移動がFBSを用いたコントロールと匹敵する。このように、二重鎖1は、HRP−3のタンパク質作用を消滅させることができる。この作用は用量依存的であり、かつ、特異的にその構造に関連し、というのも単鎖はいかなる活性をも示さないからである。
【0055】
我々は二重鎖2のわずかな活性だけを見出し、二重鎖3及び4の活性は見出さなかった。これらの最後のデータは特に興味深いものであり、というのもこれらはこの結合が主としてこのオリゴの構造−特異的活性で当然であることを確認するからである。
【0056】
更に、これはHUVEC細胞に対して活性があるので、我々は移動アッセイを実施し、この場合に二重鎖1は50nMの濃度でHRP−3の完全に抗移動性の活性を回復できる(データ示さず)。
【0057】
修飾した単鎖オリゴヌクレオチドを用いてヒトの内皮細胞発芽に対するこのタンパク質の作用を遮断することを2回試みた。組み換えタンパク質、及び合成オリゴ、配列番号1、2及び3を用いる試料においては、この発芽した球状体の数は組み換えタンパク質を用いた試料に比較して減少している(図19)。
【0058】
この結果から出発して、我々は、マウス血清中で改善された耐性を有する、本発明によるヘアピン構造を有するオリゴヌクレオチド配列を獲得した(図15)。化学修飾の導入により、例えば、2′−OMe、2′F又は逆転した極性の導入により、より良好なファーマコキネティック特性を有する本発明による分子配列を我々は設計した。これら配列は有利には線状及び分枝鎖状PEGでもってコンジュゲートされていてよい。
【0059】
以下の本発明による配列においては、下線を引いたか又は星印を付したモノマーが修飾ヌクレオチド構成ブロックである:この下線を引いたモノマーは合成の2′−OMe RNA構成ブロックであり、かつ、星印を付したモノマーは末端基NH2を5′(5′−アミノ基)に有するヌクレオチド構成ブロックであり、これはPEG単位とアミド結合を形成できる。モノマー「iA」は、逆転した極性を指し、すなわち、3′−3′の逆位連結を有する構成ブロックである。
【0060】
配列
【0061】
実施例5
細胞毒性試験
結合(ref. Lukasik et al., 2006)、及び、in vitroでの溶解性HRP−3の血管形成促進性作用の遮断(データ示さず)のためのこれら配列の能力から出発して、我々は、図16で示されるように、様々な細胞株中での配列番号11(化合物名BN210で同定)の細胞毒性、及びin vivoでのその急性毒性を試験することを決定した。
【0062】
我々はBN210の急性毒性をin vivoで評価した。21.8〜22.9gの重さの30匹のCD−1雌マウス(Charles River Italia s.r.l., Via Indipendenza, 11 23885 CALCO (Lecco))を5匹の動物毎の、6つの群にわけ、マクロロンケージ(タイプIII)中で室温22±3℃及び相対湿度55±15%で飼育した。空気交換は180〜220/時間である。リン酸緩衝食塩水中に溶解したBN210の3つの用量を試験した:3、10及び30mg/kgを静脈内に(i.v.、尾静脈を介して)又は腹腔内に(i.p.)投与した。BN210濃度はこの処方物中でそれぞれ0.155、0.517及び1.551mg/mlであった。マウスを、薬物投与後14日間にわたり毒性徴候の外観について毎日、2回/日観察した。アーヴィン試験(Irvin test)において普通チェックするパラメーターを考慮した。この観察期間を通じて臨床的又は挙動変化の徴候はi.v.又はi.p.のいずれかで投与されたこの全ての3つの用量で検出されなかった。観察14日後に全てのマウスを屠殺し、明白な病理学的検査のために解剖した。この剖検の間の全ての徴候又は病理学的変化が精査の対象であった。巨視的徴候又は病理学的変化はこの剖検検査の間に検出されなかった。
【0063】
BN210が、ビンクリスチン、臨床使用において最も有力な化学療法剤の1つ、との相乗作用を有する可能性を更に試験した。このために、250nMのBN210単独で、又は様々な濃度のビンクリスチンと組み合わせて、Gl−L−lN神経芽腫細胞でMTT試験を実施した。図4に示されるように、ビンクリスチンが2.5〜5nMの濃度でGl−Ll−N細胞の増殖を阻害することができた一方で、250nMのBN210の添加はビンクリスチン処理の作用を促進も阻害もしなかった。更に、BN210単独、又はPEG後端部単独、は、Gl−Ll−N細胞に対していかなる細胞毒性作用も示さなかった。
【0064】
実施例6
in vivoモデル
以前の実験において、BN210は、in vitroで抗血管形成作用を有することが示されている(データ示さず)。したがって、腫瘍血管形成のモデルにおいてin vivoでBN210の効力を試験した。神経芽腫を腫瘍モデルとして選択し、というのもHRP−3は原則的にマウス中の神経系で発現するからであり、そして以前の実験はHRP−3が、様々なヒトの神経芽腫細胞株の条件培地中に存在し、かつ、過剰発現することを示している。HRP−3は試験した細胞株のいずれの増殖にも作用しないので、細胞毒性剤、ビンクリスチンと組み合わせてBN210を使用することが適当であることが見出された。
【0065】
マウスを特定の病原体フリーの条件下で飼育した。このin vivo実験を5週齢の雌の無胸腺(ヌードnu)マウスを使用して実施した。マウスをキシラジン(10mg/kg)及びケタミン(90mg/kg)の混合物で麻酔処理し(Imalgene 1000, Merial Italia S.p.A., Milan,イタリア)、開腹手術し、神経芽腫(NB)細胞株、Gl−Ll−N(10μlの食塩水溶液/マウス中1.5×106細胞)で、左の副腎の包中に同所的に注射した、これは以前に報告されているとおりである(Pastorino F. et al., Cancer Res 63, 2003; Pastorino F. et al., Clin Cancer Res 2008)。腫瘍細胞移植後に死亡率は観察されなかった。NB腫瘍を22日間にわたりこの注射した細胞から成長させ、次いで動物をランダムに3つの群に分けた。1つの群は5週間にわたり週に一回ビンクリスチン1mg/kgを用いて、i.v.処理した(VCR、全部で5投与)。第2の群の動物をVCR(1mg/kgのi.v.注射、5週間にわたり週に1回、全部で5投与)、及び、BN210(7mg/kgのi.p.注射、5日/週、全部で20投与)の組み合わせで処理した。ネガティブコントロールマウスをHEPES緩衝食塩水で処理した。生存実験における実験群(n=8マウス/群)の間での差異の有意性を、カイ二乗ログランク試験を使用してカプラン・マイヤー曲線により決定した。これら知見はP値が<0.05である場合に有意であるとみなされた。
【0066】
同所性神経芽腫(NB)異種移植片に対するビンクリスチン(VCR)と組み合わせた配列 配列番号11(BN210)のin vivo抗腫瘍活性
VCR単独投与と比較して、BN210がNB異種移植片中でVCRの治療作用を改善するために使用できるかどうかを決定するために、Gl−Ll−N細胞をヌードマウスの左の副腎中に注入し、約200mm3mpサイズに達するまで成長させた(22日)。NB腫瘍を有するマウスを次いで、上で報告されているとおり、週毎の間隔で薬剤で処理した。図18に示されているとおり、VCR単独で処理した(1mg/kg i.v.、この実験において治療量以下の用量)NBを有するマウスは、ネガティブコントロールマウスに比較してその寿命のいかなる増加も示さなかった。対照的に、VCR+BN210の組み合わせで処理したマウスは、ネガティブコントロール及びVCR処理群に比較してその寿命の統計学的に有意な増加を有した(p=0.0058)(図18)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列
【化1】
[式中、Y及びZはヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを示す、
その際、それぞれのY及びZは相互に一緒に塩基対、特にワトソン−クリック塩基対を形成し、X1及びX2は独立してポリ(アルキレングリコール)単位を含む基から選択される、
n及びmは独立して0又は1を示し、その際n及びmの少なくとも1つは1である、
sは1〜20、有利には5〜18の整数である、かつ
Bは架橋基である]
を含む単鎖オリゴヌクレオチド分子。
【請求項2】
配列
【化2】
[式中、A、C、T及びGはヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを示す、
X1及びX2は独立してポリ(アルキレングリコール)単位を含む基から選択される、
n及びmは独立して0又は1を示し、その際n及びmの少なくとも1つは1である、かつ
Bは架橋基を示す]
を含む請求項1記載の単鎖オリゴヌクレオチド分子。
【請求項3】
ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログが、デオキシリボヌクレオチド構成ブロック、修飾したデオキシリボヌクレオチド構成ブロック、リボヌクレオチド構成ブロック、修飾したリボヌクレオチド構成ブロック、ヌクレオチドアナログ構成ブロック、特にPNA、LNA、O−メチルRNA、又はモルホリノ構成ブロック又はこの組み合わせから選択される請求項1又は2記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項4】
X1及びX2が、200〜100000Daの範囲内にある分子量を有する線状又は分枝鎖状のポリ(エチレングリコール)単位を含む基から選択される請求項1から3までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項5】
Bが、相補ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを連結でき、かつ、塩基対の形成を支持できる20つまでの構成ブロックのスペーサー配列である請求項1から4までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項6】
Bが、
(i)少なくとも3つの対となっていないヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックのヌクレオチド性スペーサー配列、又は
(ii)非ヌクレオチド性スペーサー配列、例えば少なくとも5つのエチレングリコール単位のポリ(エチレングリコール)スペーサー配列
を含む結合基である請求項1から5までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項7】
PWWPドメインタンパク質、例えばHDGF、HRP−1、HRP−2、HRP−3、HRP−4及び/又はLEDGF、特にHRP−3及び/又はHDGFを阻害するための請求項1から6までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項8】
PWWPドメインタンパク質に少なくとも10μM、有利には少なくとも100μM、特に有利には少なくとも1000μMの親和性で結合する請求項1から7までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項9】
医薬における使用のための、例えば診断及び/又は治療適用のための請求項1から8までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項10】
PWWPドメインタンパク質機能障害と関連、付随する、かつ/又はこれにより引き起こされる状態又は疾病の診断及び治療における使用のための請求項9記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項11】
血管形成に関連した疾病、例えば癌、例えば神経芽腫、メラノーマ、結腸直腸癌、膵癌、胃癌、肝細胞癌及び肺癌の診断及び治療における使用のための請求項9又は10記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
更なる療法、例えば放射線、手術及び/又は更なる医薬の投与と組み合わせた使用のための請求項9から11までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項13】
薬剤スクリーニングにおける使用のための請求項1から8までのいずれか1記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
医薬における使用のための、例えば診断及び/又は治療適用のためのHRP−3ポリペプチド、特に哺乳類のHRP−3、又は、これをコードする核酸分子。
【請求項15】
細胞の移動、増殖及び/又は足場形成独立成長の阻害のための剤としての請求項13又は14記載の化合物。
【請求項16】
過剰増殖状態又は疾病の診断及び治療における使用のための請求項14又は15記載の化合物。
【請求項17】
医薬における使用のための、例えば診断及び/又は治療適用のためのHRP−3アンタゴニスト。
【請求項18】
抗体、抗体断片、アンチセンス分子、リボザイム、RNAi剤又はアプタマーである請求項17記載の化合物。
【請求項19】
血管形成の阻害のための剤としての請求項17又は18記載の化合物。
【請求項20】
血管形成に関連した状態又は疾病の診断及び治療における使用のための請求項17から19までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項1】
配列
【化1】
[式中、Y及びZはヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを示す、
その際、それぞれのY及びZは相互に一緒に塩基対、特にワトソン−クリック塩基対を形成し、X1及びX2は独立してポリ(アルキレングリコール)単位を含む基から選択される、
n及びmは独立して0又は1を示し、その際n及びmの少なくとも1つは1である、
sは1〜20、有利には5〜18の整数である、かつ
Bは架橋基である]
を含む単鎖オリゴヌクレオチド分子。
【請求項2】
配列
【化2】
[式中、A、C、T及びGはヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを示す、
X1及びX2は独立してポリ(アルキレングリコール)単位を含む基から選択される、
n及びmは独立して0又は1を示し、その際n及びmの少なくとも1つは1である、かつ
Bは架橋基を示す]
を含む請求項1記載の単鎖オリゴヌクレオチド分子。
【請求項3】
ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログが、デオキシリボヌクレオチド構成ブロック、修飾したデオキシリボヌクレオチド構成ブロック、リボヌクレオチド構成ブロック、修飾したリボヌクレオチド構成ブロック、ヌクレオチドアナログ構成ブロック、特にPNA、LNA、O−メチルRNA、又はモルホリノ構成ブロック又はこの組み合わせから選択される請求項1又は2記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項4】
X1及びX2が、200〜100000Daの範囲内にある分子量を有する線状又は分枝鎖状のポリ(エチレングリコール)単位を含む基から選択される請求項1から3までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項5】
Bが、相補ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックを連結でき、かつ、塩基対の形成を支持できる20つまでの構成ブロックのスペーサー配列である請求項1から4までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項6】
Bが、
(i)少なくとも3つの対となっていないヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ構成ブロックのヌクレオチド性スペーサー配列、又は
(ii)非ヌクレオチド性スペーサー配列、例えば少なくとも5つのエチレングリコール単位のポリ(エチレングリコール)スペーサー配列
を含む結合基である請求項1から5までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項7】
PWWPドメインタンパク質、例えばHDGF、HRP−1、HRP−2、HRP−3、HRP−4及び/又はLEDGF、特にHRP−3及び/又はHDGFを阻害するための請求項1から6までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項8】
PWWPドメインタンパク質に少なくとも10μM、有利には少なくとも100μM、特に有利には少なくとも1000μMの親和性で結合する請求項1から7までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項9】
医薬における使用のための、例えば診断及び/又は治療適用のための請求項1から8までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項10】
PWWPドメインタンパク質機能障害と関連、付随する、かつ/又はこれにより引き起こされる状態又は疾病の診断及び治療における使用のための請求項9記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項11】
血管形成に関連した疾病、例えば癌、例えば神経芽腫、メラノーマ、結腸直腸癌、膵癌、胃癌、肝細胞癌及び肺癌の診断及び治療における使用のための請求項9又は10記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
更なる療法、例えば放射線、手術及び/又は更なる医薬の投与と組み合わせた使用のための請求項9から11までのいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド分子。
【請求項13】
薬剤スクリーニングにおける使用のための請求項1から8までのいずれか1記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
医薬における使用のための、例えば診断及び/又は治療適用のためのHRP−3ポリペプチド、特に哺乳類のHRP−3、又は、これをコードする核酸分子。
【請求項15】
細胞の移動、増殖及び/又は足場形成独立成長の阻害のための剤としての請求項13又は14記載の化合物。
【請求項16】
過剰増殖状態又は疾病の診断及び治療における使用のための請求項14又は15記載の化合物。
【請求項17】
医薬における使用のための、例えば診断及び/又は治療適用のためのHRP−3アンタゴニスト。
【請求項18】
抗体、抗体断片、アンチセンス分子、リボザイム、RNAi剤又はアプタマーである請求項17記載の化合物。
【請求項19】
血管形成の阻害のための剤としての請求項17又は18記載の化合物。
【請求項20】
血管形成に関連した状態又は疾病の診断及び治療における使用のための請求項17から19までのいずれか1項記載の化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14−1】
【図14−2】
【図14−3】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図16−4】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14−1】
【図14−2】
【図14−3】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図16−4】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2011−524745(P2011−524745A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512892(P2011−512892)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004186
【国際公開番号】WO2009/149921
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510328386)バイオニュークレオン ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ (1)
【氏名又は名称原語表記】Bionucleon S.r.l.
【住所又は居所原語表記】Via Ribes 5, I−10010 Colleretto Giacosa (TO), Italy
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004186
【国際公開番号】WO2009/149921
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510328386)バイオニュークレオン ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ (1)
【氏名又は名称原語表記】Bionucleon S.r.l.
【住所又は居所原語表記】Via Ribes 5, I−10010 Colleretto Giacosa (TO), Italy
【Fターム(参考)】
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