説明

個別包装薬剤自動供給装置

【課題】丸もの薬剤11を袋12に密封した個別包装薬剤10を多数収納しておいて姿勢良く而も確実に逐次供給するコンパクトな個別包装薬剤自動供給装置60を実現する。
【解決手段】鉛直面で循環移動しうる無端条帯41の外周に多数の個別収容部材20が列設されており無端条帯41の上側部分が水平に張られており個別収容部材20が丸もの薬剤11より高さの低い上面解放の箱体からなり個別包装薬剤10を一つ立てて収容しうるようになっている整列収納順次排出機構部40と、その整列収納薬剤のうち先頭薬剤が無端条帯41の循環移動に伴って前に倒れてほぼ水平になるところに受けローラ54が軸方向を水平にして且つ無端条帯41の上側部分の進行方向と直交させて設けられており受けローラ54を軸回転させて先頭薬剤を個別収容部材20から抜き取る取出機構部50とを備える。受けローラ54の上方に押えローラ55も設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、丸ものの個別包装薬剤を整列収納しておいて逐次供給する個別包装薬剤自動供給装置に関する。
ここで、丸もの薬剤は、円筒状容器に薬剤を収容したものである。個別包装薬剤は、丸もの薬剤を一袋に一つずつ詰めて密封したものであって、硬質の内容器と軟質の外袋とによる二重封入形態になっている。
【背景技術】
【0002】
丸もの薬剤の典型例である注射アンプルを多数収納しておいて逐次供給する装置が実用化されているが、それを薬剤の収納態様で大別すると、整列収納タイプとランダム収納タイプとが挙げられる。
【0003】
前者の整列収納タイプでは(例えば特許文献1参照)、アンプルが立って一列に繋がって並ぶ完全整列状態でカートリッジに収納され、それらがバネ等で一方向に付勢され、更にゲートの開閉により先端から一つずつ落下排出される。落下排出後、そのアンプルは、水平搬送され、横になるがやはり一列に繋がって並ぶ完全整列状態でストックされ、更にプッシャで一つずつ移載されて循環式の縦方向搬送ベルトコンベアのリテーナで掬い上げられ、それから反り投げの如く前方へ送り出され、傾斜板を転がり落ちて、整列ケースに収まる。
【0004】
また、整列収納タイプには(例えば特許文献2参照)、一動作で薬品類を手中にでき而も列びを乱さずに薬品類を戻せるようになったものもある。これは、薬品類を整列収納する多数のカセットと、これらのカセットを並べて保持する支持手段とを具えた薬品収納装置であって、前記カセットは薬品類の抜き取りに加えて押し込みも可能な出入口が形成されるとともにその出入口に向けて収納薬品類を付勢する付勢手段が付設されたものであり、前記支持手段は前記出入口を露出させた状態で前記カセットを保持するものであり、且つ、前記カセットにおける薬品類の収納数を求める計数手段が設けられている。これも薬剤が一列に繋がって並ぶ完全整列状態でストックされるものであり、カセットへの薬品類の出し入れを露出して並んでいる出入口から手で行えるようになっている。
【0005】
後者のランダム収納タイプでは(例えば特許文献3参照)、収容器にランダム投入されたアンプルが、循環式の取出部材の上昇移動によって揺り動かされるとともに掬い上げられ、上昇から下降に転じた取出部材によってやはり反り投げの如く反対側へ送り出されて、そこの搬送機構に移載され、縦に向きを変えて水平に搬送される。それから欠落部のところで重い尾部からずり落ちることにより、薬剤の頭尾までも自動で揃えられる。そして、横置きで一列に並んだ完全整列状態で取り出される。この場合、上昇時にアンプルを掬い上げる取出部材の幅がアンプルの直径とほぼ同じなので、プッシャが併用されていなくても、アンプルが重なったまま掬い上げられるという不都合はない。
【0006】
また、アンプル入り薬剤を一つずつ軟質の外袋に封入した個別包装薬剤についても、多数収納しておいて逐次供給する装置が開発されている。これは(例えば特許文献4参照)、丸もの薬剤を一つずつ袋に入れて密封した個別包装薬剤を多数収納かつ逐次供給する個別包装薬剤自動供給装置であって、前板の上方に上枠が設けられた薬剤収納部と、その内底に設けられた搬送機構と、前記個別包装薬剤を複数乗載可能な幅の押上部材が前記搬送機構と前記前板との間で往復昇降し上昇位置では乗載薬剤を前記上枠に仕切らせつつ傾動して逐次排出する逐次排出機構とを備えたものである。
【0007】
丸ものの個別包装薬剤は、硬質の容器の外側に軟質の袋が被されているので完全整列状態で並べることや転がすことが難しい。また、袋詰めされているとはいっても円筒状容器の収まった中央部分とそうでない周辺部分とで硬さや厚さが極端に違うため湿布剤を収納した袋や箱のように摩擦部材や吸着部材だけで逐次排出するのも難しい。そのため、外袋のない丸もの薬剤の掬い上げ方式を原型にしつつも、それを上述したように改造することで、丸もの薬剤に外袋が付いていても一つずつ排出できるようになったのである。
【0008】
【特許文献1】特開平2−28406号公報
【特許文献2】特開2001−198190号公報
【特許文献3】特開2000−185816号公報
【特許文献4】特開2008−150128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[特許文献5] 特願2008−174018号
【0010】
このような従来の自動調剤機では、アンプル等の硬質容器に入った薬剤ばかりか、それを軟質の外袋に封入した個別包装薬剤についても、薬剤を多数収納しておいて必要な時に一つずつ供給することができるようになっている。
しかしながら、丸もの薬剤の掬い上げ方式には、収納量が多いのに整列条件が緩くて済むという利点がある一方、掬い上げられなかったときには再試行することが想定されている方式なので、払出に費やす時間が一定でなく上限が確定しないという特質もある。
【0011】
このため、薬剤逐次払出時間の安定性や上限確定が求められる分野にも個別包装薬剤自動供給装置を提供するには、掬い上げ方式とは別の方式で個別包装薬剤自動供給装置を実現することが必要となる。そして、その候補としては、従来から実用化されている整列収納方式が思い浮かぶが、上述したように個別包装薬剤は完全整列や転動が不向きなので、例えば、繋がっているといった条件を外して、薬剤を一列に並べておいて先頭から一つずつ落下排出させる方式で、個別包装薬剤自動供給装置を具体化することが考えられる。
【0012】
薬剤が繋がっていなくても良いという条件下すなわち列中で前後に位置する薬剤同士が直に接していなくても良いという条件下であれば、一列に並べておいて先頭から順に落下排出させる方式で具体化され、薬剤逐次払出時間の安定したものが開発されている。これは(特許文献5)、薬剤手撒き装置の最終段に設けられる単列コンベアであり、区画室を一つだけ一体形成した区画部材を多数と、水平に平行配置されていて一緒に駆動される一対の無端ベルトとを備え、区画部材を一列に並べて無端ベルトに装架したものである。
【0013】
しかしながら、この装置では区画室において個々の薬剤の姿勢が規制されないため、排出された薬剤の姿勢が安定しない。また、アンプルやバイアル等を密封した個別包装薬剤は一般的な錠剤より可成り大きいため、個別包装薬剤を区画室に収容させようとすると区画部材が一気に大形化するので、薬剤を収容するコンベア上側部分はやむを得ないとしても、薬剤を収容しないで戻るコンベア下側部分の大形化は看過できない。このため、上記の単列コンベアを単純に大きくしても個別包装薬剤自動供給装置の実用化はできない。
そこで、丸ものの個別包装薬剤を多数収納しておいて姿勢良く逐次供給する個別包装薬剤自動供給装置をコンパクトに実現することが第1技術課題となる。
【0014】
また、そのような単列コンベア改造方式では、逐次供給に際して個別包装薬剤が立ち姿から前傾して倒れるように前へ排出されることになるので、排出後も良い姿勢を維持させるには水平に近い横向き姿勢で排出するのが望ましい一方、確実な排出には更に倒して頭を下げさせるのが良い。個別包装薬剤の立ち姿を良くするには硬質の内容器の外径とそれを収容する区画室の内法との差である遊びを小さくしなければならないところ、多様に変形しやすい軟質の外袋の変形具合によって個別包装薬剤の抜け落ち易さが大きく変動するため、薬剤収容の遊びが小さいと個別包装薬剤が抜け落ち難くなることも起こりうるので、確実な排出には頭を垂れるほどの姿勢をとらせるのが望ましいが、これでは排出後の姿勢が定まらなくなってしまう。そこで、丸ものの個別包装薬剤を良い姿勢のまま確実に排出しうるよう、改良を重ねることが第2技術課題となる。
【0015】
さらに、個別包装薬剤の確実な排出のため、重力による自然落下に頼るだけでなく、抜き取り力などの外力も加えるようにするには、前倒した先頭の個別包装薬剤を受け止める部材などを追加することが考えられるが、そうすると、先頭の個別包装薬剤を排出しきれなかった場合、次の排出試行時など無端条帯を更に循環移動させたときに、残存薬剤と追加部材との機械的干渉が解消されていないとそれが過大になって何れか一方又は双方が破損してしまいかねない。外力の作用によって薬剤排出の確実性が高まると言っても、個別包装薬剤には硬質の内容器だけでなく軟質の外袋も含まれており、この外袋の変形態様を完全に想定して総てに予め対処しておくのは困難である。そのため、残存薬剤と追加部材との機械的干渉が発生することを前提にして、それが過剰な状態になるのを回避するよう対処しておくのが安全策となる。
そこで、丸ものの個別包装薬剤を姿勢良く逐次供給するに際して先頭薬剤等の破損防止が確実になされるよう、改良を重ねることが第3技術課題となる。
【0016】
また、個別包装薬剤の中味が注射薬のような場合、使用できる期間の短いものが多いのに対し、手術等での使用可能性に基づいて払い出された薬剤が使用されないで戻されることもしばしば起こる。このため、先入れ先出しが原則の通常補充薬剤とは別に、戻りの薬剤については通常補充薬剤より優先的に排出されるようにすることが求められる。
しかしながら、薬剤が一列に繋がって並ぶ完全整列収納を前提として、ところてん式に押し出す方式(特許文献1,2参照)と異なり、単列コンベア改造方式では、個別包装薬剤を別個の区画室に収容することを前提としており、区画室を形成する個別収容部材の移動と傾動に伴って個別包装薬剤が姿勢良く供給されるものなので、戻りの薬剤を整列収納薬剤の列の先頭に押し込むことで優先排出させる手法は採用できない。
そこで、丸ものの個別包装薬剤を姿勢良く逐次供給するに際して優先的な排出も行えるよう、改良を重ねることが第4技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の個別包装薬剤自動供給装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
丸もの薬剤を一つずつ袋に入れて密封した個別包装薬剤を多数収納して逐次供給する個別包装薬剤自動供給装置において、
鉛直面で循環移動しうる無端条帯の外周に多数の個別収容部材が列設されており前記無端条帯の上側部分が水平に張られており前記個別収容部材が前記丸もの薬剤より高さの低い上面解放の箱体からなり前記個別包装薬剤を一つ立てて収容しうるようになっている整列収納順次排出機構部と、
その整列収納薬剤のうち先頭薬剤が前記無端条帯の循環移動に伴って前に倒れてほぼ水平になるところに受けローラが軸方向を水平にして且つ前記無端条帯の上側部分の進行方向と直交させて設けられており前記受けローラを軸回転させて前記先頭薬剤を前記個別収容部材から抜き取る取出機構部と
を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の個別包装薬剤自動供給装置は(解決手段2)、上記解決手段1の個別包装薬剤自動供給装置であって、前記受けローラの上方で昇降する押えローラが前記取出機構部に設けられ、前記先頭薬剤の抜き取り時に前記押えローラと前記受けローラとが前記先頭薬剤を上下から挟むようになっていることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の個別包装薬剤自動供給装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の個別包装薬剤自動供給装置であって、前記取出機構部に対する前記先頭薬剤の押下力を検出する荷重検出部材が前記取出機構部に付設されており、その検出に基づいて過重状態か否かを判別し過重検知時には前記無端条帯の循環移動を停止するようになっていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の個別包装薬剤自動供給装置は(解決手段4)、上記解決手段1〜3の個別包装薬剤自動供給装置であって、前記整列収納順次排出機構部が複数並設されており、前記取出機構部が前記整列収納順次排出機構部のうち特定の整列収納順次排出機構部からの薬剤受取を先に試行して受け取れないときに他の整列収納順次排出機構部からの薬剤受取を行うようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このような本発明の個別包装薬剤自動供給装置にあっては(解決手段1)、整列収納順次排出機構部の無端条帯の上側部分に来ている個別収容部材に一つずつ個別包装薬剤を立てて収容することで、丸ものの個別包装薬剤が一列に整列収納される。そして、無端条帯が鉛直面で循環移動すると、前端では無端条帯と共に先頭の個別収容部材が水平から鉛直へ進行方向を変えながら倒れることから、それに収容されていた個別包装薬剤が前方へ排出されるので、個別包装薬剤が無端条帯の駆動状態に対応した時間で安定して一つずつ排出されることとなる。
【0022】
しかも、個別包装薬剤が何れも立った状態から前へ倒れるようにして排出されることから、排出された個別包装薬剤は、頭尾の向きが揃うので、姿勢が良く安定していると言える。さらに、個別収容部材の高さが個別包装薬剤よりも低く抑えられているので、個別包装薬剤を排出して空になった個別収容部材が前から後へ戻るときに移動する無端条帯の下側部分に確保しておかなければならない個別収容部材の移動領域は、無端条帯の上側部分に確保しておかなければならない個別包装薬剤の整列移動領域より、小さくて済む。
このような整列収納順次排出機構部は、丸ものの個別包装薬剤を多数収納しておいて姿勢良く逐次排出するものとなっており、第1技術課題の解決に寄与する。
【0023】
それに加え、本発明の個別包装薬剤自動供給装置にあっては(解決手段1)、整列収納順次排出機構部に整列収納されている薬剤のうち先頭の薬剤が、排出位置に来て前倒してほぼ水平になると、そこで待ち受けていた受けローラに載り、受けローラの軸回転によって先頭薬剤の中の丸もの薬剤の長手方向へ移動する。重力による自然落下だけでなく受けローラによる引き抜き力も作用するため、個別包装薬剤であっても確実に個別収容部材から抜け出す。しかも、水平に近い横向き姿勢を維持したまま抜け出す。
このような取出機構部を上述の整列収納順次排出機構部の薬剤排出先に設けたことにより、丸ものの個別包装薬剤を良い姿勢のまま確実に排出することができることとなる。
したがって、この発明によれば、第1技術課題に加えて第2技術課題も解決される。
【0024】
また、本発明の個別包装薬剤自動供給装置にあっては(解決手段2)、受けローラから個別包装薬剤に引き抜き力を作用させるときに、押えローラが上から下降して個別包装薬剤を受けローラに押し付けることから、受けローラから個別包装薬剤に引き抜き力が良く伝達されるので、先頭薬剤の抜き取りの確実性が高まる。
したがって、この発明によれば、第1技術課題が解決されるのに加えて、第2技術課題が高度に解決されることとなる。
【0025】
さらに、本発明の個別包装薬剤自動供給装置にあっては(解決手段3)、取出機構部に付設された荷重検出部材の検出に基づいて取出機構部に対する先頭薬剤の押下力が過重状態になっている否かが判別され、その押下力が過大になっている過重状態が検知された時には無端条帯の循環移動が停止する。押下力の過剰増大が、不所望に排出されないで残存してしまった薬剤と、整列収納順次排出機構部に追加されて先頭薬剤を受け止める取出機構部部材との異常な機械的干渉に起因するところ、上述のように異常加重検知時には通常動作を打ち切って緊急停止するようになっているので、例え不所望な機械的干渉が生じたとしても残存薬剤も取出機構部も破損は免れることとなる。
したがって、この発明によれば、第1技術課題と第2技術課題に加えて第3技術課題も解決される。
【0026】
また、本発明の個別包装薬剤自動供給装置にあっては(解決手段4)、戻りの薬剤など成る可く先に使ってしまいたい言わば優先排出薬剤は、特定の整列収納順次排出機構部に収納し、それほど急がない通常補充薬剤は、他の整列収納順次排出機構部に収納しておく。そうすると、複数の整列収納順次排出機構部から取出機構部へ個別包装薬剤を排出させるときに、優先排出薬剤が有るうちはそれが先に排出され、優先排出薬剤が無くなった後に通常補充薬剤が排出される。このように、整列収納順次排出機構部を複数化して、それらの排出に優先順位を課したことにより、丸ものの個別包装薬剤を姿勢良く逐次供給するため完全整列収納方式でなく個別収納方式を採用していても、先入れ先出しを原則とした排出に加えて優先的な排出も行えることとなる。
したがって、この発明によれば、第1技術課題と第2技術課題に加えて第4技術課題も解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
このような本発明の実施に好適な形態は(実施形態1)、上述した解決手段の個別包装薬剤自動供給装置における前記整列収納順次排出機構部を次のように規定し直したものである。すなわち、前記整列収納順次排出機構部は、上面が解放され高さが前記丸もの薬剤より低い箱体からなり前記個別包装薬剤を一つ立てて収容しうる個別収容部材を多数と、上側部分が水平に張られた無端条帯と、この無端条帯を鉛直面で循環移動させる駆動部とを備え、前記個別収容部材が前記無端条帯の外周に列設されている、というものである。
【0028】
また、本発明の実施に好適な形態は(実施形態2)、上述した解決手段や実施形態の個別包装薬剤自動供給装置であって更に、前記個別収容部材は、前記箱体が直方体状であり、前記無端条帯の上側部分の張設方向である前後方向における内法が前記丸もの薬剤より狭く、左右の内法が前記丸もの薬剤より広く、前後の側壁の中央部分が上から下まで欠けていて前記個別包装薬剤を遊挿可能になっていることを特徴とする。
【0029】
このような実施形態2の個別包装薬剤自動供給装置にあっては、個別包装薬剤を個別収容部材に立てて収容するとき、前後の側壁中央の欠けに挟まれた中央部分に丸もの薬剤を射し込むとともに、外袋の縁部など張出部分は側壁で囲まれたところに収めることで、丸もの薬剤の頭尾ばかりか外袋の表裏まで揃えて整列収納することができる。しかも、その姿勢が、立ち姿勢から前倒姿勢への変化を除けば、薬剤排出時まで引き継がれるので、排出された個別包装薬剤の姿勢も一層良くなる。
さらには、個別包装薬剤が最も膨らんでいる丸もの薬剤の収容箇所の前後で、個別収容部材の側壁が無くなっていることから、前後の個別包装薬剤の間を短く詰めることができるので、薬剤整列方向である前後の長さについても、コンパクト実装が達成される。
したがって、この発明によれば、丸ものの個別包装薬剤を多数収納しておいて一層姿勢良く逐次供給する個別包装薬剤自動供給装置を一層コンパクトに実現することができる。
【0030】
このような本発明の個別包装薬剤自動供給装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜10に示した実施例1は、上述した解決手段1〜3(出願当初の請求項1〜3)や,実施形態1〜2を総て具現化したものである。
なお、その図示に際しては、簡明化等のため、フレームや,ボルト等の締結具,ヒンジ等の連結具,タイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0031】
本発明の個別包装薬剤自動供給装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、前板62と右側板65を透視して見た個別包装薬剤自動供給装置60の全体外観の斜視図である。
【0032】
この個別包装薬剤自動供給装置60は、筐体と整列収納順次排出機構部40と取出機構部50と図示しない電動モータやタイミングベルト等の駆動部とやはり図示しない電源やコントローラ等の電子制御回路とを具えている。
筐体は、上面解放の箱体からなり、底板61と前板62と左側板63と背板64には欠けが無いが、右側板65は、前側部分が欠かれて、払出口66が形成されている。なお、払出口66は、取出機構部50の払出方向に適合していれば、右側板65でなく左側板63側に形成しても良く、両側板63,65に形成しても良い。
【0033】
整列収納順次排出機構部40は、例えば四個が装備され、後端部を背板64近くに寄せるとともに、前端部を前板62に向けながらも離隔して、筐体内に並設されている。
取出機構部50は、整列収納順次排出機構部40と同じく四個並設しても良く、整列収納順次排出機構部40四個分をカバーする幅広のもの一個だけでも良いが、この実施例では、単一の整列収納順次排出機構部40をカバーする幅狭で小形のものが採用されている。取出機構部50は、筐体内に装備されて、整列収納順次排出機構部40の前端と前板62の内面との間に位置し、図示しない直線往復移動機構の駆動により前板62に沿って左右方向Gに移動しうるようになっている。
【0034】
このような個別包装薬剤自動供給装置60について、以下、次の順序で詳述する。すなわち、先ず単体の整列収納順次排出機構部40についてその構造と動作を説明し、次に取出機構部50の要部構造とその抜き取り動作を説明し、それから、整列収納順次排出機構部40の選択や取出機構部50の移動を伴った個別包装薬剤自動供給装置60の使用態様と動作を説明する。
【0035】
先ず、整列収納順次排出機構部40について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図2は、(a)が整列収納順次排出機構部40に整列収納される個別包装薬剤10の斜視図、(b)が一体形の個別収容部材20の斜視図、(c)が組合せ形の個別収容部材20の展開斜視図、(d)が整列収納順次排出機構部40の斜視図である。
【0036】
整列収納順次排出機構部40の取扱対象であり取出機構部50の払出対象でもある個別包装薬剤10は(図2(a)参照)、丸もの薬剤11を一つずつ外袋12に入れて密封した二重封入形態のものである。丸もの薬剤11の典型例は、アンプルやバイアル等の円筒状容器に注射薬や輸液などの薬液を収容したものである。ガラスやプラスチック等からなる硬質の内容器の形状が円筒状なので、丸ものと呼ばれている。この内容器が硬質であるのに対し、外袋12は、軟質であり、例えば薬液のpH上昇を抑制するためガスバリア性のフィルムからなる。
【0037】
整列収納順次排出機構部40は(図2(d)参照)、個別包装薬剤10を多数収納しておいて逐次供給するに際して姿勢良く供給するために且つコンパクト実装を叶えるために、既述した単列コンベア方式を改良したものであり、個別包装薬剤10を一つずつ収容する個別収容部材20を多数と、個別収容部材20を装着可能であって而も鉛直面で循環移動の可能な無端条帯41と、無端条帯41を前後で軸支して無端条帯41の上側部分も下側部分も水平に張る従動軸42及び駆動軸43と、駆動軸43を介して無端条帯41を循環移動させる駆動部44とを具えており、個別収容部材20が一列に並んで無端条帯41の外周に装着されている。
【0038】
この整列収納順次排出機構部40には、駆動軸43や駆動部44等を支持するとともに個別収容部材20の横ずれを規制する簡略図示の側板45も具わっている。なお、説明の便宜上、前後左右や上下などの方向を指す場合、無端条帯41の上側部分の水平な張設方向を前後方向とし、更に無端条帯41の上側部分の進行方向を前向きとして、それに直交する水平方向を左右方向とし、鉛直方向を上下方向としている。個別収容部材20については、無端条帯41に装着されて無端条帯41の水平な上側部分に来ているときの向きを採用している。
【0039】
個別収容部材20は、個別包装薬剤10を収容するときに個別包装薬剤10を一つだけ立てて収容しうるよう、上面の解放された箱体21が具わっている。また、無端条帯41の外周に装着しうるよう、下面・底面には係止部27が設けられている。係止部27は、鈎爪状のものを図示したが、装着を可能とするものであれば、他のものでも良い。例えばネジ止めなどの着脱式でも良く、接着などの固着式でも良い。個別収容部材20は、硬質プラスチック等から射出成型等で安価に量産でき、一体形でも良く(図2(b)参照)、二体の組合せ形でも良い(図2(c)参照)。図示した組合せ形では、係止部27を設けた座部30と、収納室22を囲む箱体21とが分かれており、例えば皿ネジを箱体21の貫通穴28に挿通してから座部30のネジ穴31にねじ込むことで合体するが、フッキングやチャッキング等の着脱式でも良く、接着や溶着等の固着式でも良い。
【0040】
何れの形態であれ、個別収容部材20は(図2(b)参照)、前後に短く左右に長い直方体状の箱体21を主体にしたものであり、箱体21の上開き内部空間が個別包装薬剤10の収納室22になっており、収納室22の高さCが丸もの薬剤11の高さAより低くなっており、収納室22の左右の内法Dが丸もの薬剤11の外径Bより広くなっており、収納室22の前後の内法Eが丸もの薬剤11の外径Bより狭くなっており、箱体21の前後の外寸Fが丸もの薬剤11の外径Bより広くなっており、水平四方の側壁のうち前壁23には欠け24が形成されて前壁23の中央部分が上から下まで欠けており、前壁23と対峙する後壁25には欠け26が形成されて後壁25の中央部分も上から下まで欠けている。そのため、個別収容部材20は、個別包装薬剤10を指先で摘んで丸もの薬剤11の下端側から収納室22に差し込めば丸もの薬剤11の下側部分と外袋12の下側の中央部分とが収納室22の中央に緩く嵌って抜き差し容易な状態で丸もの薬剤11が立つとともに、個別包装薬剤10の外袋12の下側の左右部分が収納室22の左右部分に収まるようになっている。
【0041】
無端条帯41は、循環移動の可能な輪状・環状になっていて個別収容部材20を装着できるものであれば、幅広の単一条帯でも良く、平行配置されて一緒に駆動される複数の条帯でも良い。例えば、合成ゴム製の歯付きベルトからなる無端ベルトや、金属製リンクチェーンなどのエンドレスチェーン、戦車のプラモデルのクローラ部分などが、採用される。従動軸42と駆動軸43は、ギヤ付きロールやスプロケットホイルなどが採用され、軸回転可能な状態で水平に支持されている。駆動部44は、制御容易なパルスモータや安価なACモータが採用され、駆動軸43に直接連結されて又は減速ギヤ等の伝動機構を介して間接的に駆動軸43と連結されて、駆動軸43を循環移動させるようになっている。
【0042】
コントローラ(制御装置)は、整列収納順次排出機構部40の制御部分を述べると、供給指示に応じて駆動部44に動作信号を送出することにより整列収納順次排出機構部40から個別包装薬剤10を排出させるものである。供給指示は、ボタン押し操作等の手動操作に応じて単発で出されることもあれば、処方箋データや派生した調剤指示データ等に従って所要数の個別包装薬剤10を自動供給するためにコントローラ内部で繰り返し生成することもあるが、整列収納順次排出機構部40から排出された個別包装薬剤10を取出機構部50に引き渡す時間を確保するために、取出機構部50と協動させて無端条帯41を間欠送りすることが必要なので、大抵、コントローラはプログラマブルなマイクロプロセッサやシーケンサ等を主体とした電子回路で具体化される。
【0043】
コントローラの具体的な実装については、整列収納順次排出機構部40それぞれにローカルコントローラを設けるとともにそれらと取出機構部50とを制御するメインコントローラとに分けて設置しても良く、四個の整列収納順次排出機構部40と一個の四台取出機構部50を一台の制御装置で集中制御するようにしても良い。一台で集中制御するときはスター接続になるが、コントローラを分散設置したときにはLAN(Local Area Network)接続が便利である。また、具体的なプログラムの作り方は、多種多様なので、その煩雑な詳細説明は割愛して、制御プログラムの機能を以下の動作説明で例示する。
【0044】
このような構成の整列収納順次排出機構部40について、単体での動作を、図面を引用して説明する。図3は、(a)〜(c)何れも、多数の個別包装薬剤10を一列に整列収納した整列収納順次排出機構部40の右側面図である。
【0045】
先ず(図3(a)参照)、整列収納を済ませておかなければならないので、無端条帯41の上側部分に来て前後方向一列に並んでいる個別収容部材20それぞれに一つずつ個別包装薬剤10を立てて収容する。そのとき、個別包装薬剤10の丸もの薬剤11の上側部分を外袋12ごと指で摘んで、個別包装薬剤10の丸もの薬剤11の下側部分を外袋12ごと収納室22の中央部に差し込むことで、簡単かつ容易に、丸ものの個別包装薬剤10が立って収納される。その際、外袋12の下側部分のうち左右に張り出した部分は、収納室22のうち左右の側壁で囲まれたところに収める。そのような収納作業を繰り返すと、多数の個別包装薬剤10が個別収容部材20に倣って一列に整列収納される。
【0046】
そして(図3(b)参照)、供給指示が出されると、それに応じて無端条帯41が循環動作を開始し、無端条帯41の循環移動によって、前端(図3では左端)では、無端条帯41が従動軸42の軸回転に倣って下向きに転回しようとし、それと共に先頭の個別収容部材20が進行方向を水平な前向きから斜め前へ変えながら斜度を増すので、先頭の個別包装薬剤10も前傾姿勢をとる。更に傾いて(図3(c)参照)、ほぼ横向きに倒れる頃には、先頭の個別包装薬剤10の頭部・上部が取出機構部50の上に乗るとともに、無端条帯41の循環移動が止まる。
【0047】
こうして、先頭だった個別包装薬剤10が、尾部・下部は個別収容部材20に収容したままであるが頭部・上部は取出機構部50に乗せた姿勢で、横たわるので、個別包装薬剤10が姿勢良く排出されて取出機構部50による抜き取りに備える態勢が整う。具体的には、丸もの薬剤11の頭部が前になり、丸もの薬剤11の尾部・底部が後ろになり、外袋12が左右に延展した状態になる。しかも、外袋12の表裏については、前倒によってほぼ90゜向きを変えつつも、収容時の前後面に対応して一意に表裏が確定する。
【0048】
このような整列収納順次排出機構部40の場合、無端条帯41の上方には、個別包装薬剤10を立てて並べるので、丸もの薬剤11の高さAより背の高い空間を確保しておかなければならず、この条件は回避しようがないが、無端条帯41の下方には、空の個別収容部材20の高さより少し背の高い空間を確保しておけば足り、個別収容部材20の高さは丸もの薬剤11の高さAより低いので、無端条帯41及び個別収容部材20の実装に上下折返し方式を採用した割には、コンパクトな実装が達成されている。
【0049】
しかも、個別包装薬剤10が最も膨らんでいる丸もの薬剤11の収容箇所から個別収容部材20の前壁23と後壁25とが無くなっていることから、一列の並びにおいて隣り合っている前後の個別収容部材20ひいては前後の個別包装薬剤10の間隙を短く詰めることができるので、一つの個別包装薬剤10に一つの個別収容部材20を割り当てる個別収納方式でありながら、薬剤整列方向である前後の長さについてまで、コンパクト実装が達成されている。
【0050】
次に、取出機構部50について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は、(a)が取出機構部50の要部の右側面図、(b)が要部の背面図である。
取出機構部50の図示に際しては、上述したように、可動基部51を左右方向Gに移動させる直線往復移動機構の図示を割愛した。また、その機構の駆動源としての電動モータに加え、後述する押えローラ55や,受けローラ54,払出部材53を作動させる電動モータ及び伝動部材についても、図示を割愛して、作動部材を中心に図示した。
【0051】
取出機構部50は、左右方向Gに直線往復移動しうる可動基部51と、いずれも可動基部51に装着されていて随伴移動する留置座部52と払出部材53と受けローラ54と押えローラ55と荷重検出部材56とを具えている。留置座部52は、可動基部51の上に装着された板状体であり、上面が個別包装薬剤10を載せて置ける平坦面になっており、払出口66側の側面が個別包装薬剤10を横滑りさせる傾斜面になっている。払出部材53は、図示しない電動モータ及び伝動部材の駆動によって留置座部52の上面を拭くかのように左右方向Gと平行な方向Jに直線往復移動しうるものであり、常態では留置座部52の上面のうち払出口66から遠い方の端部に位置しているが、留置座部52の上に一時留置した個別包装薬剤10を払出口66に向けて送り出すときには留置座部52の上面の払出口66寄り端部まで行ってから戻るようになっている。
【0052】
受けローラ54は、留置座部52と並んで可動基部51の上に装着されているが、留置座部52よりも整列収納順次排出機構部40寄りに位置している。そこは、可動基部51の移動によって対峙している整列収納順次排出機構部40が排出動作を行って、その整列収納薬剤のうち先頭薬剤が無端条帯41の循環移動に伴って前に倒れてほぼ水平になったときに、その先頭薬剤の頭部・上部が乗ってくるところでもある。
また、受けローラ54は、軸方向を左右方向Gに一致させた状態で支持されており、これによって軸方向が水平であって而も整列収納順次排出機構部40の無端条帯41の上側部分の進行方向と直交するものとなっている。
【0053】
さらに、受けローラ54は、中央部分が両端部より細めに形成されており、そこの高さが留置座部52の上面とほぼ同じ高さになるところに設置されている。しかも、図示しない電動モータ及び伝動部材の駆動によって軸回転するようになっており、上側が整列収納順次排出機構部40側から留置座部52側へ移動する方向Hに軸回転することで、受けローラ54の上に先頭薬剤が乗っていればそれを個別収容部材20から抜き取って留置座部52の上に移載する力を先頭薬剤に作用させるものとなっている。
【0054】
押えローラ55は、軸方向が受けローラ54の軸方向と平行になる状態で受けローラ54の上方に設けられており、例えば基端を可動基部51か留置座部52に軸支され図示しない電動モータ及び伝動部材の駆動によって揺動するアーム55aの揺動端に装着されていて、アーム55aの揺動によって昇降するようになっている。また、押えローラ55は、受けローラ54の上に先頭薬剤が乗っていてそれを受けローラ54の軸回転にて抜き取るときにはその抜き取り動作に先だち、下降して、押えローラ55と一緒になって先頭薬剤を上下から挟むようになっている。押えローラ55は、軸回転自由な状態で支持されているので、受けローラ54が軸回転するとそれを邪魔することなく随伴して軸回転することで、先頭の個別包装薬剤を受けローラ55に押し付けるものとなっている。この押えローラ55も、上述の受けローラ54同様、中央部分が両端部より細めになっている。
【0055】
荷重検出部材56は、可動基部51と留置座部52の間や可動基部51と受けローラ54の支持部との間に設置されて、取出機構部50に対する先頭薬剤の押下力を検出できれば、より具体的には留置座部52に対する先頭薬剤の押下力と受けローラ54に対す先頭薬剤の押下力とのうち何れか一方または双方それぞれ或いは双方の合力を検出できれば、局所の機械的な歪みを検出するストレインゲージや,受圧面に掛かる圧力を検出する圧力センサでも良いが、不所望な破損を迅速かつ的確に回避するには、衝撃力を素早く検出する能力に優れたピエゾ素子を組み込んだ圧電変換器が特に好ましい。
【0056】
コントローラ(制御装置)は、上述した整列収納順次排出機構部40の動作制御に加えて、取出機構部50の動作制御も行うようになっている。取出機構部50の通常動作に係る制御は各部材51〜55について上述した通りであるが、それに加えて、荷重検出部材56の検出に基づく判定処理と緊急停止制御も行うようになっている。すなわち、荷重検出部材56の検出に基づいて取出機構部50に対する先頭薬剤の押下力が過重状態になっているのか否かを判別し、過重状態になっているのを検知した時に、整列収納順次排出機構部40の無端条帯41を循環移動させていれば直ちに無端条帯41の循環移動を停止させるとともに、無端条帯41が停止していれば過重状態が解消するまで無端条帯41に循環移動を開始させないようになっている。
【0057】
このような構成の取出機構部50について、その抜き取り動作を、図面を引用して説明する。図4,図5は、作動部材51〜55を中心に図示したものであり、図4(a)と(b)が先頭薬剤待ち受け時の右側面図と背面図、図5(a)と(b)が先頭薬剤倒れ込み時の右側面図と背面図、図5(c)と(d)が先頭薬剤挟み付け時の右側面図と背面図、図5(e)と(f)が先頭薬剤抜き取り時の右側面図と背面図、図5(g)と(h)が先頭薬剤送り出し時の右側面図と背面図である。
【0058】
先ず取出機構部50は先頭薬剤待ち受け態勢をとる(図4参照)。具体的には、個別包装薬剤10を排出しようとしている整列収納順次排出機構部40の前に移動して停止し、押えローラ55を上昇させた状態で整列収納順次排出機構部40と対峙したまま、整列収納順次排出機構部40から先頭の個別包装薬剤10が倒れ込んで来るのを待つ。
そして、整列収納順次排出機構部40の先頭の個別収容部材20の前倒に伴って先頭の個別包装薬剤10も前倒し、その先頭薬剤が受けローラ54の上に倒れ込んで横倒しになると(図5(a),(b)参照)、押えローラ55が下降してそれと受けローラ54とが先頭薬剤を上下から挟み付ける(図5(c),(d)参照)。
【0059】
なお、先頭薬剤の倒れ込み時に受けローラ54や留置座部52に過大な衝撃が加えられたときには、その衝撃荷重が荷重検出部材56によって検出され、それに応じて整列収納順次排出機構部40の無端条帯41の循環移動が緊急停止し、過重が解消するまで再稼動も止められる。そのため、例えば、個別包装薬剤10を個別収容部材20に収容するときに個別包装薬剤10が不適切な姿勢で収容されていたことに起因して、個別包装薬剤10が前傾速度減速前に受けローラ54の太いところに当たってしまったり、予想外のところに嵌り込んで強い圧迫を受けたり、不所望な事態が発生しても、致命傷は避けられる。
【0060】
それから、受けローラ54が薬剤抜取方向Hに軸回転して、先頭薬剤が前送りされ、それによって、先頭薬剤の尾部・下部が個別収容部材20から抜け出し、さらには先頭薬剤が完全に留置座部52の上に乗り移る(図5(e),(f)参照)。そのとき、先頭薬剤が軸回転自由な押えローラ55によって受けローラ54に押し付けられているので、先頭薬剤の抜き取りが受けローラ54の軸回転に従って確実かつ円滑に遂行される。また、受けローラ54も押えローラ55も中央部分が細くなっていて、ローラ中央部分に丸もの薬剤11が嵌り込むと同時に、外袋12の左右両縁部がローラ両脇部分に収まるうえ、受けローラ54の中央部と留置座部52の上面とが高さを揃えられているので、個別包装薬剤10は姿勢を崩すことなく移載される。
【0061】
個別包装薬剤10を一つ受け取った取出機構部50が払出口66のところに移動して、留置座部52の傾斜側面が払出口66に臨む。それから、払出部材53が留置座部52の上面の払出口66寄り端部まで往復移動するので(図5(g),(h)参照)、留置座部52上に一時留置されていた個別包装薬剤10が、留置座部52の傾斜側面に送り出され、そこを滑り落ちて払出口66から供給される。なお、これらの動作中でも、荷重検出部材56によって過重が検出されると、整列収納順次排出機構部40だけでなく取出機構部50の動作も緊急停止するので、個別包装薬剤10が想定外の姿勢で引っ掛かった等の不所望な事態が発生した場合でも、やはり致命傷は避けられる。
こうして、個別包装薬剤10が高い確度で円滑かつ安全に抜き取られ送り出される。
【0062】
最後に、上述した構成の個別包装薬剤自動供給装置60について、使用態様と動作を説明する。特に、整列収納順次排出機構部40の選択や取出機構部50の移動を伴った個別包装薬剤自動供給装置60の動作を中心に説明する。図6(a)〜(e),図7(a)〜(f),図8(a)〜(f),図9(a)〜(f),図10(a)〜(c)は、いずれも、個別包装薬剤自動供給装置60の平面図である。
【0063】
なお、コントローラ(制御装置)は、上述した単体の整列収納順次排出機構部40と取出機構部50を対象にした基本的な動作制御に加えて、整列収納順次排出機構部40の複数並設化に基づく拡張的な動作制御も行うよう、プログラムが一部変更・拡張されている。具体的には、供給指示が出されたら直ちに個別包装薬剤10を払出口66から送り出すことができるよう、供給指示を待たずに整列収納順次排出機構部40からの薬剤排出と取出機構部50での薬剤受取および一時留置とを先行させるように、変更されている。
また、薬剤排出有無の迅速確定のため、荷重検出部材56にて適度な範囲内の荷重が検出されたら、整列収納順次排出機構部40から取出機構部50へ個別包装薬剤10が倒れ込んで来たと判定するように、拡張されている。
【0064】
さらに、戻りの薬剤については通常補充薬剤より優先的に排出するため、四個の整列収納順次排出機構部40のうち一個だけは戻りの個別包装薬剤10を収容する特定の整列収納順次排出機構部48とし、他の三個は通常補充の個別包装薬剤10を収容する通常の整列収納順次排出機構部49として、取出機構部50が整列収納順次排出機構部48からの薬剤受取を先に試行して個別包装薬剤10を受け取れる限り整列収納順次排出機構部48を優先させ、整列収納順次排出機構部48から個別包装薬剤10を受け取れないときに初めて他の整列収納順次排出機構部49からの薬剤受取を行うように、拡張されている。
【0065】
このような個別包装薬剤自動供給装置60を使用するとき、先ずは空の個別収容部材20に(図6(a)参照)手作業で個別包装薬剤10を補充しておくが、通常補充では三個の整列収納順次排出機構部49に均して且つ前側に寄せて整列収納させる(図6(b)参照)。整列収納順次排出機構部48は、一旦供給した個別包装薬剤10が戻されるまで、空けておく。それから、電源を投入すると、個別包装薬剤自動供給装置60の自動動作が開始されて、取出機構部50が整列収納順次排出機構部48の前に移動するとともに整列収納順次排出機構部48からの薬剤排出が優先して試行されるが(図6(c)参照)、個別包装薬剤10の排出が無いと薬剤排出対象が整列収納順次排出機構部49に移る。
【0066】
整列収納順次排出機構部49は三個あるが、何れも同じ通常補充先なので、なるべく均等に排出が進められるよう、例えば左側のものから右側のものへ一回ずつ薬剤排出が試行され、再び左側のものから右側のものへ一回ずつ薬剤排出が試行され、更に同様の試行が繰り返される。詳述すると、取出機構部50が最左の整列収納順次排出機構部49の前に移動し(図6(d)参照)、最左の整列収納順次排出機構部49が無端条帯41を循環移動させると、先頭の個別包装薬剤10が取出機構部50の受けローラ54の上に倒れ込んで来る(図6(e)参照)。
【0067】
そして、そのときまでは上に在った押えローラ55が受けローラ54に向かって下降して個別包装薬剤10を挟み付け(図7(a)参照)、受けローラ54が軸回転して個別包装薬剤10が個別収容部材20から抜き取られて留置座部52上に移載される(図7(b)参照)。それから、押えローラ55が上昇して戻るとともに(図7(c)参照)、取出機構部50が払出口66のところに移動して停止し(図7(d)参照)、個別包装薬剤10を一時留置したまま供給指示を待つ。こうして、即時供給の態勢が整う。
【0068】
取出機構部50が待っているところに供給指示が出されると、直ちに取出機構部50の払出部材53が払出口66側へ移動して(図7(e)参照)、個別包装薬剤10が取出機構部50から送り出される(図7(f)参照)。こうして、個別包装薬剤10が一つ迅速に払出口66から装置の外へ供給される。
そして、再び次の即時供給の態勢を整えるべく、整列収納順次排出機構部40から取出機構部50への薬剤排出が試行されるが、その際、特定の整列収納順次排出機構部48からの薬剤排出が優先試行され(図8(a)参照)、この場合は薬剤排出が無いので、通常の整列収納順次排出機構部49に試行対象が移る。
【0069】
三個の整列収納順次排出機構部49からは均等に個別包装薬剤10を排出させるため、取出機構部50が左から二番目の整列収納順次排出機構部49の前に移動し(図8(b)参照)、そこから先頭の個別包装薬剤10が排出されて取出機構部50に移載され、個別包装薬剤10を一時留置した取出機構部50が払出口66のところに移動する(図8(c)参照)。こうして再び即時供給の態勢が整うので、二個目の供給指示が既に出ていれば直ちに、二個目の供給指示が未だ出ていなければ供給指示が出されるのを待って速やかに、二個目の個別包装薬剤10が払出口66から払い出される。
【0070】
三個目の個別包装薬剤10についても、同様のことが繰り返されて、即時供給の態勢が整えられる。先ず特定の整列収納順次排出機構部48からの薬剤排出が優先試行され(図8(d)参照)、この場合も薬剤排出が無いので通常の整列収納順次排出機構部49に試行対象が移り、取出機構部50が左から三番目の整列収納順次排出機構部49の前に移動し(図8(e)参照)、そこから先頭の個別包装薬剤10が排出されて取出機構部50に移載され、個別包装薬剤10を一時留置した取出機構部50が払出口66のところに移動し(図8(f)参照)、即時供給の態勢を整えて三個目の供給指示を待つ。
【0071】
ここで、供給指示が出される前に、供給済みの個別包装薬剤10が二個ほど使用されずに戻されたとする。戻りの個別包装薬剤10は何れも手作業で整列収納順次排出機構部48の個別収容部材20に個別収容される。そのとき個別包装薬剤10は二個とも前側に寄せて整列収納順次排出機構部48に整列収納しておくのが良い(図9(a)参照)。
この状態で供給指示が出されると、自動動作が再開され、払出部材53が移動して、取出機構部50に一時留置されていた個別包装薬剤10が直ちに払出口66から送り出され(図9(b)参照)。
【0072】
そして、即時供給の態勢をとるために特定の整列収納順次排出機構部48からの薬剤排出が優先試行され(図9(c)参照)、この場合は、整列収納順次排出機構部48から先頭の個別包装薬剤10が排出され取出機構部50に移載されるので(図9(d)参照)、戻りの個別包装薬剤10が通常補充の個別包装薬剤10に優先して供給対象に選出される。一個目の戻り薬剤10が供給された後も二個目の戻り薬剤10が整列収納順次排出機構部48に残っているのでその排出が先に試行される(図9(e)参照)。こうして、戻り薬剤10が有るうちは、それが優先して整列収納順次排出機構部48から排出され取出機構部50に一時留置されて即時供給を待つこととなる(図9(f)参照)。
【0073】
さらに供給指示が出されて、戻りの個別包装薬剤10が総て払い出されると、次に整列収納順次排出機構部48から薬剤排出を優先試行しても薬剤排出が無いので(図10(a)参照)、通常の整列収納順次排出機構部49に試行対象が移る。そして、順番により最左の整列収納順次排出機構部49からの薬剤排出が試行され(図10(b)参照)、そこから排出された先頭の個別包装薬剤10が取出機構部50に一時留置されて払出口66のところに運ばれる(図10(c)参照)。
こうして、戻りの個別包装薬剤10の優先供給を伴った即時供給が遂行される。
【0074】
[その他]
上記実施例では、整列収納順次排出機構部40について無端条帯41を循環移動させて先頭薬剤を前倒させ先頭薬剤がほぼ水平になって受けローラ54に乗ったときに無端条帯41の循環移動を止める制御がオープン制御か荷重検出部材56の検出に基づくフィードバック制御になっていたが、前倒してほぼ水平になった先頭薬剤を検出するセンサを別に追加し、その検出に基づいて無端条帯41の循環移動を止めるフィードバック制御を行うようにしても良い。そのような先頭薬剤前倒検出用センサは、光学センサでも磁気センサでも音波センサでも良く、複数個を設けて一つずつ整列収納順次排出機構部40それぞれの前端部に臨ませても良く、検出ラインが複数の整列収納順次排出機構部40の前方を横断するものを一組だけ設けるのでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の個別包装薬剤自動供給装置は、上記実施例のように単体で使用できる他、複数台・多数台を並設しておいて各種の個別包装薬剤を種類ごとに収納しても良く、装置全体をカセット化して自動払出装置に着脱可能なものにしても良く、装置全体を自動払出装置に組み込んで固定しても良く、二体物に分割して一部を自動払出装置の棚等に固定し残部を着脱可能なものにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1について、個別包装薬剤自動供給装置の斜視図である。
【図2】個別包装薬剤自動供給装置のうち整列収納順次排出機構部の構造を示し、(a)が個別包装薬剤の斜視図、(b)が一体形の個別収容部材の斜視図、(c)が組合せ形の個別収容部材の展開斜視図、(d)が整列収納順次排出機構部の斜視図である。
【図3】整列収納順次排出機構部の動作状態を示し、(a)〜(c)何れも右側面図である。
【図4】個別包装薬剤自動供給装置のうち取出機構部の構造を示し、(a)が要部の右側面図、(b)が要部の背面図である。
【図5】取出機構部の動作状態を示し、(a)と(b)が先頭薬剤倒れ込み時の要部右側面図と要部背面図、(c)と(d)が先頭薬剤挟み付け時の要部右側面図と要部背面図、(e)と(f)が先頭薬剤抜き取り時の要部右側面図と要部背面図、(g)と(h)が先頭薬剤送り出し時の要部右側面図と要部背面図である。
【図6】個別包装薬剤自動供給装置の動作状態を示し、(a)〜(e)いずれも平面図である。
【図7】個別包装薬剤自動供給装置の動作状態を示し、(a)〜(f)いずれも平面図である。
【図8】個別包装薬剤自動供給装置の動作状態を示し、(a)〜(f)いずれも平面図である。
【図9】個別包装薬剤自動供給装置の動作状態を示し、(a)〜(f)いずれも平面図である。
【図10】個別包装薬剤自動供給装置の動作状態を示し、(a)〜(c)いずれも平面図である。
【符号の説明】
【0077】
10…個別包装薬剤、
11…丸もの薬剤(内容器)、12…外袋、
20…個別収容部材、
21…箱体、22…収納室、23…前壁(側壁)、
24…欠け、25…後壁(側壁)、26…欠け、
27…係止部、28…貫通穴、30…座部、31…ネジ穴、
40…整列収納順次排出機構部、
41…無端条帯、42…従動軸、
43…駆動軸、44…駆動部、45…側板、
48…整列収納順次排出機構部(特定、優先)、
49…整列収納順次排出機構部(他、通常)、
50…取出機構部、
51…可動基部、52…留置座部、53…払出部材、
54…受けローラ、55…押えローラ、56…荷重検出部材、
60…個別包装薬剤自動供給装置、
61…底板、62…前板、63…左側板、
64…背板、65…右側板、66…払出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸もの薬剤を一つずつ袋に入れて密封した個別包装薬剤を多数収納して逐次供給する個別包装薬剤自動供給装置において、鉛直面で循環移動しうる無端条帯の外周に多数の個別収容部材が列設されており前記無端条帯の上側部分が水平に張られており前記個別収容部材が前記丸もの薬剤より高さの低い上面解放の箱体からなり前記個別包装薬剤を一つ立てて収容しうるようになっている整列収納順次排出機構部と、その整列収納薬剤のうち先頭薬剤が前記無端条帯の循環移動に伴って前に倒れてほぼ水平になるところに受けローラが軸方向を水平にして且つ前記無端条帯の上側部分の進行方向と直交させて設けられており前記受けローラを軸回転させて前記先頭薬剤を前記個別収容部材から抜き取る取出機構部とを備えたことを特徴とする個別包装薬剤自動供給装置。
【請求項2】
前記受けローラの上方で昇降する押えローラが前記取出機構部に設けられ、前記先頭薬剤の抜き取り時に前記押えローラと前記受けローラとが前記先頭薬剤を上下から挟むようになっていることを特徴とする請求項1記載の個別包装薬剤自動供給装置。
【請求項3】
前記取出機構部に対する前記先頭薬剤の押下力を検出する荷重検出部材が前記取出機構部に付設されており、その検出に基づいて過重状態か否かを判別し過重検知時には前記無端条帯の循環移動を停止するようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された個別包装薬剤自動供給装置。
【請求項4】
前記整列収納順次排出機構部が複数並設されており、前記取出機構部が前記整列収納順次排出機構部のうち特定の整列収納順次排出機構部からの薬剤受取を先に試行して受け取れないときに他の整列収納順次排出機構部からの薬剤受取を行うようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載された個別包装薬剤自動供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−35683(P2010−35683A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199471(P2008−199471)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】