説明

偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の製造方法、該薄膜、該薄膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子、および該素子を用いた表示装置

【課題】偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の偏光発光を維持したままで、その蛍光量子効率を大幅に向上させる手段を提供する。
【解決手段】一方向に配向した蛍光性共役系高分子化合物を含有する層を有し、偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の製造方法であって、該共役系高分子化合物を含有する層を有機溶媒蒸気に暴露する製造方法;該製造方法により得られる前記共役系高分子薄膜;陽極と、陰極と、1層以上の有機層を有し、正孔と電子の再結合で発光する有機薄膜からなる発光層と、を含有し、該陽極および該陰極の少なくとも一方が透明または半透明であり、該発光層が該陽極および該陰極の間に設けられた有機EL素子であって、該発光層が前記共役系高分子薄膜からなる有機EL素子;前記有機EL素子を含む面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、または前記有機EL素子からなるバックライトを含む液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の製造方法、該薄膜、該薄膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということがある。)、および該素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機蛍光色素を発光層とし、これと電子写真の感光体等に用いられている有機電荷輸送化合物とを積層した二層構造を有する有機EL素子が報告されて以来、有機EL素子は、次世代のディスプレイとして注目されている。これまで、低電圧駆動、高輝度に加えて多数の色の発光が容易に得られるという特徴があることから素子構造や有機蛍光色素、有機電荷輸送化合物について多くの試みが報告されている。
また、主に低分子の有機化合物を用いる有機EL素子とは別に、高分子量の発光材料(以下、高分子蛍光体と呼ぶ。)を用いる高分子発光素子(以下高分子LEDということがある。)が提案され、これら高分子LEDに用いられる高分子蛍光体として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(特許文献1)以外にも、ポリフルオレン(非特許文献1)、ポリパラフェニレン誘導体(特許文献2)などが報告されている。
高分子発光素子において、その発光層に用いる高分子量の発光材料を配向させて偏光EL発光を得ようという試みが、従来から行われている。
例えば、特許文献2には、発光層として、高分子蛍光体と液晶材料とを含む発光層を用いた素子が、偏光EL発光する旨記載されている。また、非特許文献3には、配向膜上に成膜した高分子蛍光体を含む発光層を用いた素子が、偏光EL発光する旨記載されている。
【特許文献1】国際公開90/13148号パンフレット
【特許文献2】特表平10−508979号公報
【非特許文献1】ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第30巻、L1941頁(1991年)
【非特許文献2】アドバンスト・マテリアルズ(Adv.Mater.)第4巻、36頁(1992年)
【非特許文献3】アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)第76巻、p.2946−2948(2000年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記公知の素子は、発光効率が低いなどの問題があった。
本発明の目的は、偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の偏光発光を維持したままで、その蛍光量子効率を大幅に向上させる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、一方向に配向した蛍光性共役系高分子化合物を含有する層を有し、偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の製造方法であって、
該共役系高分子化合物を含有する層を有機溶媒蒸気に暴露することを特徴とする製造方法を提供する。
本発明は第二に、前記製造方法により得られる、一方向に配向した蛍光性共役系高分子化合物を含有する層を有し、偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜を提供する。
【0005】
本発明は第三に、
陽極と
陰極と
1層以上の有機層を有し、正孔と電子の再結合で発光する有機薄膜からなる発光層と
を含有し、
該陽極および該陰極の少なくとも一方が透明または半透明であり、
該発光層が該陽極および該陰極の間に設けられた
有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該発光層が前記共役系高分子薄膜からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0006】
本発明は第四に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする面状光源を提供する。
本発明は第五に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とするセグメント表示装置を提供する。
本発明は第六に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とするドットマトリックス表示装置を提供する。
本発明は第七に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子からなるバックライトを含むことを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の製造方法は、偏光発光を維持したままで、蛍光量子効率が大幅に向上した共役系高分子薄膜を提供することから、セグメントタイプの表示素子、ドットマトリックスのフラットパネルディスプレイ等の装置の製造に好ましく適用できる。また、液晶ディスプレイのバックライトまたは照明用としての曲面状や平面状の光源の製造にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[蛍光性共役系高分子化合物の一方向への配向]
本発明の偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の製造方法において、偏光発光を得るためには、通常は発光層に用いる高分子蛍光体を配向させる処理を行う。配向させる処理としては、例えば、ラビング法、光配向法、シェアリング法、引き上げ塗布法等が挙げられる。
【0009】
ラビング法とは、支持基板表面または支持基板上に形成させた配向させる材料を含む層を布などで軽く擦る方法である。支持基板としてはガラスや高分子フィルム等を用いることができる。ラビングした支持基板上に、配向させる共役系高分子化合物を含む層を形成させてもよいし、支持基板上に、配向させる共役系高分子化合物を含む層を形成させ、形成させた層をラビングしてもよい。薄膜表面を擦る布としては、ガーゼやポリエステル、コットン、ナイロン、レーヨンなどの布を用いることができる。また支持基板と配向させる共役系高分子化合物を含む層との間に別途配向膜を形成させると、より配向性能が高くなる。ここで配向膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ナイロン等からなる配向膜などがあげられ、市販の液晶用配向膜も用いることができる。偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜を有機エレクトロルミネッセンス素子における発光層に用いる場合、導電性高分子化合物を配向膜の材料として用いる事により効率的にキャリア注入を行うことができることから、配向膜の材料としてはポリスチレンスルホン酸がより好ましい。配向膜はスピンコート法やフレキソ印刷などで形成させることができる。ラビングに用いる布は、用いる配向膜にあわせて適宜選択することができる。
【0010】
光配向法とは、支持基板上に光反応性を有した材料を含む層を形成させ、それに偏光UV光を照射してあるいはUV光を斜入射照射して配向機能を持たせる方法である。共役系高分子化合物に光反応性を有した材料を混合するまたは共役系高分子化合物に光反応性の置換基を導入するなどの方法により、光配向法で共役系高分子化合物を配向させることができる。また、光配向法で配向させた配向膜の上に、共役系高分子化合物を含む層を形成させ、配向させることも可能である。光配向させる配向膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルシンナメートなどがあげられ、市販の液晶用配向膜も用いることができる。偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜を有機エレクトロルミネッセンスにおける発光層に用いる場合、配向膜の材料として導電性高分子化合物を用いる事により効率的にキャリア注入を行なうことができることから、配向膜の材料としてはポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
【0011】
ラビング法または光配向法において、共役系高分子化合物を配向させるためには、通常は、支持基板を共役系高分子化合物のガラス転移温度(以下、Tgとする)以上あるいは液晶相または等方相の温度にすることが好ましい。この温度にするのは、共役系高分子化合物を支持基板上に塗布する前でも、あとでもよい。共役系高分子化合物を共役系高分子化合物のTg以上あるいは液晶相または等方相の温度にした後、急冷してもよいし、徐冷してもよいが、1度/分以下の速度で徐冷することが好ましく、より好ましくは0.2度/分以下の速度である。共役系高分子化合物を含む層の形成は、共役系高分子化合物を支持基板上にのせてTg以上あるいは液晶相または等方相を示す温度に設定し、ロッドなどで一方向にコーティングするか、共役系高分子化合物を有機溶媒に溶解した溶液を調製し、スピンコートやフレキソ印刷などで塗布する方法で行うことができる。
【0012】
シェアリング法とは、支持基板上にのせた配向させる共役系高分子化合物を含む層の上に別の基板をのせ、液晶相または等方相になる温度下で上にのせた基板を一方向にずらす方法である。このとき、上記ラビング法や光配向法で記載したような配向処理を施した支持基板を用いると、より配向度が高いものが得られる。支持基板としては、ガラスや高分子フィルム等を用いることができる。応力でずらすものは、支持基板ではなく金属製のロッド等でもよい。
【0013】
引き上げ塗布法とは、配向させる材料を溶液として塗布することができる場合、支持基板を、配向させる材料の溶液に浸し、引き上げる手法である。配向させる共役系高分子化合物を溶解させる溶媒や、支持基板の引き上げ速度は特に限定はされないが、共役系高分子化合物の重合度、分子量、溶液の粘度などにあわせて選択、調整することができる。
【0014】
[蛍光性共役系高分子化合物]
本発明の製造方法に用いる蛍光性共役系高分子化合物は、単独重合体であってもよいし、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する重合体、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。また、該共役系高分子化合物としては、配向させやすいという点から液晶性を示すものが好ましい。該共役系高分子化合物としては、π電子系が分子鎖に沿って非極在化している分子構造を有しているもの;σ電子系が分子鎖に沿って非極在化しているもの;等があげられる。これらの共役系高分子化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0015】
π電子系が分子鎖に沿って非極在化している分子構造を有しているものとしては、例えば、ポリアセチレン;ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリピリジン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリチオフェン等のポリアリーレン類;ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン等のポリアリーレンビニレン類;ポリフェニレンサルファイド;ポリカルバゾールなどがあげられる。
【0016】
σ電子系が分子鎖に沿って非極在化しているものとしては、例えばポリシランがあげられる。
【0017】
本発明の製造方法において、前記共役系高分子化合物が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を該共役系高分子化合物中の全繰り返し単位に対して好ましくは50モル%以上100モル%以下、より好ましくは70モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは80モル%以上100モル%以下含有することが蛍光量子効率の観点から好適である。
【0018】
【化1】


(式中、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dは、独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数7〜26のフェニルアルキル基、炭素原子数7〜26のフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素原子数7〜26のアルキル基置換フェニル基、炭素原子数7〜26のアルコキシ基置換フェニル基、炭素原子数2〜21のアルキルカルボニル基、ホルミル基、炭素原子数2〜21のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又は1価の共役系多環式芳香族化合物残基を表す。あるいは、R1bとR1c、及びR2bとR2cは、上記の原子または基を表す代わりに、一緒になって、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
【0019】
アルキル基としては、例えば、炭素原子数が、通常1〜20、好ましくは5〜15、より好ましくは8〜12のものが挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ドデシル基などが挙げられる。
【0020】
アルコキシ基としては、例えば、炭素原子数が、通常1〜20、好ましくは5〜15、より好ましくは8〜12のものが挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などが挙げられる。
【0021】
フェニルアルキル基としては、例えば、炭素原子数が、通常7〜26、好ましくは11〜21、より好ましくは14〜18のものが挙げられ、具体的には、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、フェニルデシル基、フェニルドデシル基などが挙げられる。
【0022】
フェニルアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数が、通常7〜26、好ましくは11〜21、より好ましくは14〜18のものが挙げられ、具体的には、例えば、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルプロピルオキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチルオキシ基、フェニルヘキシルオキシ基、フェニルヘプチルオキシ基、フェニルオクチルオキシ基、フェニルノニルオキシ基、フェニルデシルオキシ基、フェニルドデシルオキシ基などが挙げられる。
【0023】
アルキル基置換フェニル基とは、フェニル基上の1つ以上の水素原子が炭素原子数1〜20のアルキル基で置換された基、即ち、モノアルキルフェニル基、ジアルキルフェニル基、トリアルキルフェニル基、テトラアルキルフェニル基、およびペンタアルキルフェニル基をいう。アルキル基置換フェニル基としては、例えば、炭素原子数が、通常7〜26、好ましくは11〜21、より好ましくは14〜18のものが挙げられ、具体的には、例えば、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタメチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタエチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタプロピルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタイソプロピルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタブチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタイソブチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ−s−ブチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ−t−ブチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタペンチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタイソアミルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタヘキシルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタヘプチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタオクチルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ(2−エチルヘキシル)フェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタノニルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタデシルフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ(3,7−ジメチルオクチル)フェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタドデシルフェニル基などが挙げられる。
【0024】
アルコキシ基置換フェニル基とは、フェニル基上の1つ以上の水素原子が炭素原子数1〜20のアルコキシ基で置換された基、即ち、モノアルコキシフェニル基、ジアルコキシフェニル基、トリアルコキシフェニル基、テトラアルコキシフェニル基、およびペンタアルコキシフェニル基をいう。アルコキシ基置換フェニル基としては、例えば、炭素原子数が、通常7〜26、好ましくは11〜21、より好ましくは14〜18のものが挙げられ、具体的には、例えば、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタメトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタエトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタプロピルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタイソプロピルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタブトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタイソブトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ−s−ブトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ−t−ブトキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタペンチルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタヘキシルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタヘプチルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタオクチルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタノニルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタデシルオキシフェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニル基;モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタドデシルオキシフェニル基などが挙げられる。
【0025】
アルキルカルボニル基としては、例えば、炭素原子数が、通常2〜21、好ましくは5〜15、より好ましくは8〜12のものが挙げられ、具体的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、2−エチルヘキサノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ドデカノイル基などが挙げられる。
【0026】
アルコキシカルボニル基としては、例えば、炭素原子数が、通常2〜21、好ましくは5〜15、より好ましくは8〜12のものが挙げられ、具体的には、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0027】
1価の共役系多環式芳香族化合物残基とは、共役系多環式芳香族化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。共役系多環式芳香族化合物としては、下記の正孔輸送性を有する部分構造または下記の電子輸送性を有する部分構造を与える化合物が挙げられる。
【0028】
本発明の共役系高分子薄膜において、共役系高分子化合物は、正孔注入性および/または正孔輸送性が高いことが好ましい。よって、該共役系高分子化合物は、主鎖及び/又は側鎖に、正孔輸送性を有する部分構造を含んでいてもよい。正孔輸送性を有する部分構造とは、正孔を輸送する機能を有する部分構造であり、非局在化したHOMOの分布を有する2個以上の芳香環が共役した構造を有するものが挙げられる。広い意味で、正孔注入性を有する部分構造、電子阻止性を有する部分構造も正孔輸送性を有する部分構造に含まれる。正孔輸送性を有する部分構造としては、従来、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知の化合物の部分構造を用いることができる。その具体的な構造としては、芳香族アミン骨格を有する基、ジアゾ骨格、無金属フタロシアニン骨格、金属フタロシアニン骨格、ペリレン骨格、多環キノン骨格、スクアリリウム骨格、アズレニウム骨格、チアピリリウム骨格、カルバゾール骨格とその誘導体、シロキサン誘導体からなる骨格、ピラゾリン誘導体からなる骨格、アリールアミン誘導体からなる骨格、スチルベン誘導体からなる骨格、トリフェニルジアミン骨格、アニリン骨格及びその誘導体、チオフェン骨格及びその誘導体が例示される。
【0029】
本発明の共役系高分子薄膜において、共役系高分子化合物は、電子輸送性に優れることが好ましい。よって、該共役系高分子化合物は、主鎖及び/又は側鎖に、電子輸送性を有する部分構造を有していてもよい。電子輸送性を有する部分構造とは、電子を輸送する機能を有する部分構造であり、非局在化したLUMOの分布を有する2個以上の芳香環が共役した構造を有するものが挙げられる。広い意味で、電子注入性を有する部分構造、正孔阻止性を有する部分構造も電子輸送性を有する部分構造に含まれる。電子輸送性を有する部分構造としては、従来、電子の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の電子注入層、電子輸送層に使用される公知の化合物の部分構造を用いることができる。その具体的な構造としては、例えばピリジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環のような含窒素芳香環が含まれる共役した構造を有する基が挙げられる。
【0030】
よって、1価の共役系多環式芳香族化合物残基のうち、正孔輸送性を有する部分構造を与える化合物由来のものとしては、例えば、下記式(2)または(3)の、芳香族アミン骨格を有する基が挙げられる。
【0031】
【化2】


(式中、Ar、Ar及びArは、独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。Ar3’、Ar、Ar及びArは、独立に、アリール基又は1価の複素環基を表す。o及びpは、独立に、0又は1を表す。)
【0032】
【化3】


(式中、Ar1’は、アリール基又は1価の複素環基を表す。Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、o及びpは前記のとおりである。)
【0033】
前記式(2)または(3)中、アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ペンタレンジイル基、インデンジイル基、ヘプタレンジイル基、インダセンジイル基、トリフェニレンジイル基、ビナフチルジイル基、フェニルナフチレンジイル基、スチルベンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。2価の複素環基(2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を取り除いてなる原子団を意味する。)の具体例としては、ピリジン−ジイル基、ジアザフェニレン基、キノリンジイル基、キノキサリンジイル基、アクリジンジイル基、ビピリジルジイル基、フェナントロリンジイル基等が挙げられる。アリール基は、炭素原子数が、通常、6〜60のものであり、具体的には、例えばフェニル基等である。また、1価の複素環基は、複素環式化合物から水素原子1個を取り除いてなる原子団を意味し、具体的には、例えばピリジル基等である。
【0034】
前記式(2)または(3)で表される1価の共役系多環式芳香族化合物残基の具体例としては、下記式で表される基が挙げられる。
【0035】
【化4】

【0036】
1価の共役系多環式芳香族化合物残基の具体例として上記した構造式中、芳香環上の水素原子は独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数7〜26のフェニルアルキル基、炭素原子数7〜26のフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素原子数7〜26のアルキル基置換フェニル基、炭素原子数7〜26のアルコキシ基置換フェニル基、炭素原子数2〜21のアルキルカルボニル基、ホルミル基、炭素原子数2〜21のアルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基で置換されていてもよい。これらの基は、具体的には、前記式(1)中のR1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dで表される基として具体的に説明し例示したものと同様である。また、芳香環の隣接位に2つの置換基が存在する場合、それらが互いに結合して環を形成していてもよい。
【0037】
また、1価の共役系多環式芳香族化合物残基のうち、電子輸送性を有する部分構造を与える化合物由来のものとしては、以下に示すような化合物から水素原子1個を除いた残りの1価の基が挙げられる。
【0038】
【化5】

【0039】
1bとR1c、及びR2bとR2cが、上記の原子または基を表す代わりに、一緒になって、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成する場合、その環としては、例えば、炭素原子数4〜10のシクロアルカン環、炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素環、炭素原子数4〜14の複素環等が挙げられる。
【0040】
シクロアルカン環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環などが挙げられる。
【0041】
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられる。
【0042】
複素環としては、例えば、フラン環、テトラヒドロフラン環、チオフェン環、テトラヒドロチオフェン環、インドール環、テトラヒドロインドール環、イソキノリン環、ピリジン環、チアゾール環、オキサゾール環などが挙げられる。
【0043】
蛍光量子効率がさらに高いという点から、本発明の製造方法において、前記共役系高分子化合物が、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を該共役系高分子化合物中の全繰り返し単位に対して50モル%以上100モル%以下含有することがさらに好ましい。
【0044】
【化6】


(式中、R及びRは、独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数7〜26のフェニルアルキル基、炭素原子数7〜26のフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素原子数7〜26のアルキル基置換フェニル基、炭素原子数7〜26のアルコキシ基置換フェニル基、炭素原子数2〜21のアルキルカルボニル基、ホルミル基、炭素原子数2〜21のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又は1価の共役系多環式芳香族化合物残基を表す。)
【0045】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位の具体例としては、
【0046】
【化7】


などが挙げられる。
【0047】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量が共役系高分子化合物中の全繰り返し単位に対して100モル%未満である場合、上記一般式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、例えば、2価の共役系多環式芳香族化合物残基からなる繰り返し単位が挙げられる。2価の共役系多環式芳香族化合物残基とは、共役系多環式芳香族化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。上記のとおり、共役系多環式芳香族化合物としては、正孔輸送性を有する部分構造または電子輸送性を有する部分構造を与える化合物が挙げられる。
【0048】
2価の共役系多環式芳香族化合物残基からなる繰り返し単位のうち、正孔輸送性を有する部分構造を与える化合物由来のものとしては、例えば、下記式(5)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0049】
【化8】


(式中、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、o及びpは前記のとおりである。)
【0050】
前記式(5)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記式で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0051】
【化9】

【0052】
前記式(5)で表される繰り返し単位の具体例として上記した構造式中、芳香環上の水素原子は独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数7〜26のフェニルアルキル基、炭素原子数7〜26のフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素原子数7〜26のアルキル基置換フェニル基、炭素原子数7〜26のアルコキシ基置換フェニル基、炭素原子数2〜21のアルキルカルボニル基、ホルミル基、炭素原子数2〜21のアルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基で置換されていてもよい。これらの基は、具体的には、前記式(1)中のR1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dで表される基として具体的に説明し例示したものと同様である。また、芳香環の隣接位に2つの置換基が存在する場合、それらが互いに結合して環を形成していてもよい。
【0053】
また、2価の共役系多環式芳香族化合物残基からなる繰り返し単位のうち、電子輸送性を有する部分構造を与える化合物由来のものとしては、以下に示すような化合物から水素原子2個を除いた残りの2価の基からなる繰り返し単位が挙げられる。
【0054】
【化10】

【0055】
本発明に用いる共役系高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は通常1×10〜1×10であり、好ましくは2×10〜1×10であり、より好ましくは5×10〜6×106である。該重量平均分子量がこの範囲内にあると、該共役系高分子化合物は、溶媒への溶解性が良くなる傾向にあり、薄膜にしたときの成膜性が良くなる傾向にある。
【0056】
本発明において、ポリスチレン換算の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求める。GPC測定には、(株)東ソー製のTSKgel SuperHM-H(商品名)2本と(株)東ソー製のTSKgel SuperH2000(商品名、4.6mm I.d.×15cm)1本とをカラムとして用い、ポリマー溶出時間の検出には、示差屈折率計(島津製作所製、商品名:SHIMADZU RID-10A)を用い、移動相にはテトラヒドロフラン(THF)を用いる。
【0057】
本発明に用いる共役系高分子化合物の具体例としては、例えば、下記式(6)または(7)で表される共役系高分子化合物が挙げられる。
【0058】
【化11】

【0059】
【化12】


(式中、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dは前記のとおりであり、Aは上記式(5)で表される繰り返し単位、または、電子輸送性を有する部分構造を与える化合物として上記で具体的に例示した化合物から水素原子2個を除いた残りの2価の基からなる繰り返し単位を表し、qおよびr+sはそれぞれ上記式(6)および(7)で表される共役系高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量が1×10〜1×10、好ましくは2×10〜1×10、より好ましくは5×10〜6×106となるような整数を表し、上記式(7)において、上記一般式(1)で表される繰り返し単位と上記Aで表される繰り返し単位との配列は規則的でもランダムでもよく、部分的に規則的で部分的にランダムでもよい。)
【0060】
[蛍光性共役系高分子化合物の合成方法]
前記共役系高分子化合物の合成方法としては、特に限定されないが、例えば、所望の共役系高分子化合物に応じたモノマーからSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、適切な脱離基を有する中間体高分子化合物の分解による方法等が挙げられる。これらのうち、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法が、反応制御が容易である点で好ましい。
【0061】
前記反応においては、反応促進のために、適宜、アルカリ、適切な触媒を添加することができる。これらアルカリ、適切な触媒は、反応の種類に応じて選択すればよいが、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリとしては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基;トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩基;フッ化セシウム等の無機塩が挙げられる。触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート類が挙げられる。
【0062】
前記共役系高分子化合物を有機EL素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与えるので、反応前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に重合(反応)させることが好ましく、また、共役系高分子化合物の合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0063】
前記反応に用いられる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類;塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸等が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0064】
反応後は、例えば、水でクエンチした後に有機溶媒で抽出し、該有機溶媒を留去する等の通常の後処理で、粗製の共役系高分子化合物を得ることができる。また、上記のとおり、共役系高分子化合物の単離及び精製はクロマトグラフィーによる分取、再結晶等の方法により行うことができる。
【0065】
前記共役系高分子化合物の合成方法の具体例としては、下記式(8)で表される化合物を単独で、または、下記式(8)で表される化合物と下記式(9)で表される化合物とを、上記の方法により重合させる方法が挙げられる。
【0066】
【化13】


−A−X (9)
(式中、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d及びAは前記のとおりであり、X1〜Xは独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アリールアルキルスルホ基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH)2)、ホルミル基、又はビニル基を表す。)
【0067】
前記式(8)または(9)で表される化合物の合成上の観点及び反応のし易さの観点から、X1〜Xは独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アリールアルキルスルホ基、ホウ酸エステル残基、又はホウ酸残基であることが好ましい。
【0068】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が例示される。
【0069】
アルキルスルホ基としては、メタンスルホ基、エタンスルホ基、トリフルオロメタンスルホ基などが例示される。アリールスルホ基としては、ベンゼンスルホ基、p−トルエンスルホ基などが例示される。アリールアルキルスルホ基としては、ベンジルスルホ基などが例示される。
【0070】
ホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式で示される基が挙げられる。
【0071】
【化14】


(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)
【0072】
スルホニウムメチル基としては、下記式で示される基が例示される。
−CH2+Me2-、 −CH2+Ph2-
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。)
【0073】
ホスホニウムメチル基としては、下記式で示される基が例示される。
−CH2+Ph3-
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Phはフェニル基を示す。)
【0074】
ホスホネートメチル基としては、下記式で示される基が例示される。
−CH2PO(OR’)2
(式中、R’はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基を示す。)
【0075】
モノハロゲン化メチル基としては、フッ化メチル基、塩化メチル基、臭化メチル基またはヨウ化メチル基が例示される。
【0076】
[共役系高分子薄膜およびその製造方法]
本発明の共役系高分子薄膜の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、発光効率が最適な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、逆に、あまり厚いと、エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧が高くなる傾向がある。従って、該膜厚は、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0077】
本発明の共役系高分子薄膜の溶液からの成膜に用いる溶媒としては、共役系高分子化合物を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、n−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、デカリン等の飽和炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。共役系高分子化合物の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に該共役系高分子化合物を0.1重量%以上溶解させることができる。
【0078】
溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0079】
本発明の偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜において、発光の二色比、すなわち共役系高分子化合物を一方向に配向させた方向と平行な方向に偏光した光による発光強度(I//)と垂直な方向に偏光した光による発光強度(I⊥)との比(I///I⊥)が大きいことが好ましい。このために、共役系高分子化合物を配向させた膜の光吸収係数の二色比、すなわち共役系高分子化合物を一方向に配向させた方向と平行な方向に偏光した光による光吸収係数(α//)と垂直な方向に偏光した光による光吸収係数(α⊥)との比(α///α⊥)が2以上であることが好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。
【0080】
本発明の製造方法において、共役系高分子化合物を含有する層を暴露する有機溶媒蒸気に特に制限はないが、該有機溶媒蒸気が、該共役系高分子化合物が可溶である溶媒の蒸気を含有することが好ましい。本発明の製造方法において用いる有機溶媒蒸気を与える有機溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、n−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、デカリン等の飽和炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。共役系高分子化合物の構造や分子量にもよるが、該有機溶媒は、沸点が50℃以上300℃以下であることが好ましく、80℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。その蒸気に暴露することで最も効果的に高蛍光量子効率化させるための好ましい有機溶媒として、芳香族炭化水素系溶媒の蒸気を含有する有機溶媒蒸気が挙げられる。中でも特に好ましい有機溶媒蒸気は、トルエン又はキシレンの蒸気を含有する有機溶媒蒸気である。
【0081】
共役系高分子薄膜を有機溶媒中に暴露する時間は、蛍光量子効率向上の効果が得られるのに十分な時間であればよく、当業者は各高分子化合物ごとに簡単なテストで容易に発見できるが、暴露による効果と生産性の関係から、通常、1分〜50時間でよく、好ましくは5分〜10時間、より好ましくは5分〜1時間、更により好ましくは5分〜10分でよい。
【0082】
本発明の偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜は、発光効率が高いことが好ましい。すなわち、該共役系高分子薄膜は、PL量子効率が50〜100%であることが好ましく、70〜100%であることがさらに好ましい。
【0083】
[有機エレクトロルミネッセンス素子]
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、
陽極と
陰極と
1層以上の有機層を有し、正孔と電子の再結合で発光する有機薄膜からなる発光層と
を含有し、
該陽極および該陰極の少なくとも一方が透明または半透明であり、
該発光層が該陽極および該陰極の間に設けられた
有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該発光層が前記共役系高分子薄膜からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。正孔注入する電極(陽極と呼ぶ)と電子注入する電極(陰極と呼ぶ)との間の有機層としては、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層から適宜選定して積層することが例示される。以下に代表的な構造を例示するが、これに限定されるものではなく、他の有機層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子注入層、正孔注入層などをそれぞれ効果的な積層構造の位置に挿入することができる。
陽極/発光層/陰極
陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
陽極/発光層/電子輸送層/陰極
陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
陽極/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/陰極
ここで、/は、この記号の両側に記載された層どうしまたは層と電極を積層したことを示す。さらに、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、正孔ブロック層は一層でもよいし、同じ機能を有する層を2層以上積層してもよい。
【0084】
本発明の有機層に用いることのできる材料として、低分子型有機EL素子や高分子型有機EL素子に用いられる電荷輸送材料が例示される。発光色としては、赤、青、緑の3原色以外に、中間色や白色が例示される。フルカラー素子には、3原色の発光を示す材料が、平面光源には白色や中間色の発光を示す材料が好適に使用される。
【0085】
これらの各層の厚みとしては、発光効率や駆動電圧が望みの値になるように、適宜選択されるが、5nmから200nmが一般的である。特に、正孔輸送層の厚みとしては、10〜100nmが例示され、好ましくは20〜80nmである。正孔ブロック層の厚みとしは、5〜50nmが例示され、10nmから30nmが好ましい。電子注入層の厚みとしては、10〜100nmが例示され、20〜80nmが好ましい。
これらの層の製膜方法としては、真空蒸着、クラスター蒸着、分子線蒸着などの真空プロセス以外に、溶解性があるものやエマルジョンを形成できるものについては、前述のコーティング法や印刷法にて製膜する方法が例示される。
【0086】
高分子型有機EL素子用の材料としては、「高分子EL材料」(大西敏博、小山珠美 共著 共立出版 2004年刊 初版版第1刷発行)33ページから58ページに記載の材料が例示され、発光層を電荷注入層や電荷輸送層と積層した構造で有機エレクトロルミネッセンス素子を構築することができる。より具体的には、高分子化合物である正孔輸送性材料、電子輸送性材料および発光材料としては、WO99/13692号公開明細書、WO99/48160公開明細書、GB2340304A、WO00/53656公開明細書、WO01/19834公開明細書、WO00/55927公開明細書、GB2348316、WO00/46321公開明細書、WO00/06665公開明細書、WO99/54943公開明細書、WO99/54385公開明細書、US5777070、WO98/06773公開明細書、WO97/05184公開明細書、WO00/35987公開明細書、WO00/53655公開明細書、WO01/34722公開明細書、WO99/24526公開明細書、WO00/22027公開明細書、WO00/22026公開明細書、WO98/27136公開明細書、US573636、WO98/21262公開明細書、US5741921、WO97/09394公開明細書、WO96/29356公開明細書、WO96/10617公開明細書、EP0707020、WO95/07955公開明細書、特開2001−181618号公報、特開2001−123156号公報、特開2001−3045号公報、特開2000−351967号公報、特開2000−303066号公報、特開2000−299189号公報、特開2000−252065号公報、特開2000−136379号公報、特開2000−104057号公報、特開2000−80167号公報、特開平10−324870号公報、特開平10−114891号公報、特開平9−111233号公報、特開平9−45478号公報等に開示されているポリフルオレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体および共重合体、芳香族アミンおよびその誘導体の(共)重合体が例示される。
【0087】
前記の高分子化合物である発光材料や電荷輸送材料には、低分子型有機EL素子用の発光材料や電荷輸送材料を混合して用いてもよい。低分子型有機EL素子用の正孔輸送材料としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体が挙げられる。低分子型有機EL素子用の電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体等が挙げられる。具体的には、特開昭63-70257号公報、同63-175860号公報、特開平2-135359号公報、同2-135361号公報、同2-209988号公報、同3-37992号公報、同3-152184号公報に記載されている正孔輸送材料や電子輸送材料等が好適に利用できる。低分子型有機EL素子用の発光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素等の色素類、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等が挙げられる。具体的には、例えば、特開昭57-51781号公報、特開昭59-194393号公報等に記載されているもの等の、公知のものを使用することができる。
【0088】
これらの低分子化合物や高分子化合物である発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料はそれぞれ併用することができる。
【0089】
陰極に接して10nm以下の絶縁層を設けてもよい。絶縁層の材料としては、金属フッ化物や金属酸化物、または有機絶縁材料等が挙げられ、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属等の金属フッ化物や金属酸化物が好ましい。
絶縁層の成膜方法としては真空蒸着法が例示される。
【0090】
本発明の有機EL素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極や該素子の各層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板などが例示される。不透明な基板を用いる場合には、該基板により近い電極に対して反対側の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明または半透明であることが好ましい。
【0091】
次に本発明の有機EL素子が有する陽極および陰極について説明する。
本発明の有機EL素子においては、陽極又は陰極の少なくともいずれか一方が透明又は半透明であれば、発生した光が透過するため、発光の取出し効率がよく好都合である。
【0092】
本発明において、陽極側が透明または半透明であることが好ましい。該陽極の材料としては、導電性の金属酸化物、半透明の金属等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラス(NESAなど)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0093】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0094】
陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0095】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、陰極は、通常、透明又は半透明である。このような陰極の材料としては、仕事関数の小さいものが好ましく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の他の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物等が用いられる。合金としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。なお、陰極は、一層であっても二層以上であってもよい。また、前記陰極の材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0096】
陰極の厚さは、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜調整することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0097】
陰極の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等の方法が用いられる。また、陰極と有機層との間に、導電性高分子化合物からなる層、金属酸化物、金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層(通常、平均膜厚2nm以下の層である)を設けてもよい。
【0098】
陰極作製後、該有機EL素子を保護する保護層を装着していてもよい。該有機EL素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層および/または保護カバーを装着することが好ましい。
【0099】
該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属窒酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、該カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子が破損するのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム、酸化カルシウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子の性能を低下させるのを制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0100】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライト等として用いることができる。
【0101】
本発明の製造方法を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極または陰極のいずれか一方、または両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にOn/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる重合体を塗り分ける方法や、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動でも、アモルファスシリコンや低温ポリシリコンを用いた薄膜トランジスタなどと組み合わせたアクティブ駆動でもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置として用いることができる。
【0102】
さらに、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、あるいは面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例および比較例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0104】
[実施例1](偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の作製)
ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(以下、F8とする。)は、WO00/53656記載の方法で合成した。得られたF8の重量平均分子量は120000であった。
ガラス基板上にポリイミド前駆体(SE−150;日産化学製)をスピンコート法により塗布し、80℃で5分熱処理後、さらに290℃で60分熱処理してポリイミド膜を形成させた。その後、ナイロン布によりラビング処理し、配向ポリイミド膜を作製した。トルエンに1.5wt%の濃度で溶解したF8を、上記配向ポリイミド膜上にスピンコートし、100nmの厚みのF8を含む層を形成させた。そのF8が塗布された基板を250℃に加熱し、90分保持後1℃/分の速度で室温まで冷却した。その後、得られたF8薄膜をトルエンからなる溶媒を滴下したシャーレの近傍に置き、シャーレとF8薄膜の両方を覆うようにビーカーをかぶせることで、トルエンと直接接触させることなくF8をトルエン蒸気に暴露させた。この状態を12時間保持し、その後、F8薄膜を80℃で30分間真空乾燥することで、残留溶媒を完全に揮発させた。
【0105】
<偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の評価>
(1)2色比
上記で得られる薄膜にHe−Cdレーザーを照射することにより、青色蛍光が観測された。蛍光スペクトルより、F8からの発光であることが確認できた。
得られたF8を含む層の偏光吸収スペクトルを測定したところ、配向膜のラビング方向に平行な方向に偏光した光による光吸収係数(α//)と垂直な方向に偏光した光による光吸収係数(α⊥)との比(α///α⊥)、10が得られ、F8が配向膜のラビング方向に配向していることを確認した。
【0106】
(2)発光2色比
上記で得られたF8を含む層の偏光発光スペクトルを測定したところ、配向方向に垂直な方向および平行な方向の蛍光強度から、その発光2色比、31が得られた。
【0107】
(3)蛍光量子効率
得られたF8を含む層の蛍光量子効率を測定したところ、67.3%であった。
【0108】
[比較例1]
F8をトルエン蒸気に暴露させなかった以外は実施例1と同様にしてF8を含有する薄膜を作製した。得られた薄膜の蛍光量子効率の測定を行ったところ、43.7%であった。得られたF8を含む層の偏光吸収スペクトルを測定したところ、配向膜のラビング方向に平行な方向に偏光した光による光吸収係数(α//)と垂直な方向に偏光した光による光吸収係数(α⊥)との比(α///α⊥)、18が得られた。得られたF8を含む層の偏光発光スペクトルを測定したところ、配向方向に垂直な方向および平行な方向の蛍光強度から、その発光2色比、31が得られた。
【0109】
実施例1と比較例1から、配向したF8薄膜をトルエンからなる有機溶媒蒸気に暴露することで、偏光発光を維持したままで、蛍光量子効率の大幅な向上が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配向した蛍光性共役系高分子化合物を含有する層を有し、偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜の製造方法であって、
該共役系高分子化合物を含有する層を有機溶媒蒸気に暴露することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記共役系高分子化合物が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を該共役系高分子化合物中の全繰り返し単位に対して50モル%以上100モル%以下含有することを特徴とする請求項1に係る製造方法。
【化1】


(式中、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dは、独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数7〜26のフェニルアルキル基、炭素原子数7〜26のフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素原子数7〜26のアルキル基置換フェニル基、炭素原子数7〜26のアルコキシ基置換フェニル基、炭素原子数2〜21のアルキルカルボニル基、ホルミル基、炭素原子数2〜21のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又は一価の共役系多環式芳香族化合物残基を表す。あるいは、R1bとR1c、及びR2bとR2cは、上記の原子または基を表す代わりに、一緒になって、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記有機溶媒蒸気が、前記共役系高分子化合物が可溶である溶媒の蒸気を含有する請求項1または2に係る製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、一方向に配向した蛍光性共役系高分子化合物を含有する層を有し、偏光した蛍光を発する共役系高分子薄膜。
【請求項5】
陽極と
陰極と
1層以上の有機層を有し、正孔と電子の再結合で発光する有機薄膜からなる発光層と
を含有し、
該陽極および該陰極の少なくとも一方が透明または半透明であり、
該発光層が該陽極および該陰極の間に設けられた
有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該発光層が請求項4に記載の共役系高分子薄膜からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記陰極と前記発光層との間に、該発光層に隣接して設けられた電子輸送層
を更に含有することを特徴とする請求項5に係る有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記陽極と前記発光層との間に、該発光層に隣接して設けられた正孔輸送層
を更に含有することを特徴とする請求項5または6に係る有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする面状光源。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とするセグメント表示装置。
【請求項10】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とするドットマトリックス表示装置。
【請求項11】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子からなるバックライトを含むことを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2008−243437(P2008−243437A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79143(P2007−79143)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】