説明

偏光子の製造方法、偏光子、偏光板、画像表示装置および延伸機

【課題】 テンター方式等により幅方向に親水性ポリマーフィルムを延伸しても、延伸ムラの発生が抑制された偏光子を製造可能な偏光子の製造方法を提供する。
【解決手段】 親水性ポリマーフィルム1の幅方向の両端を把持手段2により把持し、前記把持手段2を前記フィルム1の長手方向に進行させると共に、前記フィルム1を液に接触させ、前記フィルム1の両端を把持する前記把持手段2の双方を前記フィルム1の幅方向の外側にも移動させることで前記フィルム1を幅方向に延伸する幅方向延伸工程と、前記フィルム1を二色性物質により染色処理する染色工程とを有する偏光子の製造方法において、前記幅方向延伸工程の前記液の接触を、気相中で、前記フィルム1に前記液を噴霧することで実施し、且つ、前記把持手段2が液の接触を防止する液接触防止手段3を備え、前記液接触防止手段により、前記フィルム1の幅方向の両端部に液が接触しない液非接触領域を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子の製造方法、偏光子、偏光板、画像表示装置および延伸機に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パソコン、携帯電話等の各種液晶表示装置(LCD)には、偏光子が用いられている。通常、前記偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを染色・一軸延伸することで作製されている。PVAフィルムを一軸延伸すると、PVA分子に吸着(染色)した二色性物質が配向するため、偏光子となる。
【0003】
近年、テレビ用としてのLCDの用途が急増しており、画面のサイズも大型化している。これに伴い、テレビに用いられる偏光子にも、大型化が要求されている。このような大型の偏光子を製造する方法として、PVAフィルム全体を液に接触させながら、テンター方式によりPVAフィルムを延伸する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−91374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記方法で偏光子を製造すると、テンタークリップ間で偏光子に延伸ムラが発生するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、テンター方式等により幅方向に親水性ポリマーフィルムを延伸しても、延伸ムラの発生が抑制された偏光子を製造可能な偏光子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の偏光子の製造方法は、
連続的に供給される親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を把持手段により把持し、前記把持手段を前記親水性ポリマーフィルムの長手方向に進行させると共に、前記親水性ポリマーフィルムを液に接触させ、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端の少なくとも一方の側を把持する前記把持手段を前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の外側にも移動させることにより前記親水性ポリマーフィルムを幅方向に延伸する幅方向延伸工程と、
前記親水性ポリマーフィルムを二色性物質により染色処理する染色工程とを有し、
前記幅方向延伸工程を、前記染色工程および前記染色工程とは別の工程の少なくとも一つの工程において実施する偏光子の製造方法であって、
前記幅方向延伸工程において、前記液の接触を、気相中で、前記親水性ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に前記液を噴霧することで実施し、且つ、前記把持手段が前記液の接触を防止する液接触防止手段を備え、前記液接触防止手段により、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端部に前記液が接触しない液非接触領域を形成することを特徴とする。
【0007】
本発明の偏光子は、前記本発明の偏光子の製造方法により製造された偏光子である。
【0008】
本発明の偏光板は、偏光子の少なくとも一方の表面に保護層が積層された偏光板であって、前記偏光子が、前記本発明の偏光子であることを特徴とする。
【0009】
本発明の画像表示装置は、偏光子および偏光板の少なくとも一方を含む画像表示装置であって、前記偏光子が、前記本発明の偏光子であり、前記偏光板が、前記本発明の偏光板であることを特徴とする。
【0010】
本発明の延伸機は、把持手段および前記把持手段を移動させる移動手段を含み、
前記把持手段により親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を把持し、
前記移動手段により前記把持手段を前記親水性ポリマーフィルムの長手方向に進行させると共に、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端の少なくとも一方の側を把持する前記把持手段を前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の外側にも移動させることにより前記親水性ポリマーフィルムを幅方向に延伸する延伸機であって、
前記把持手段が、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端部への液の接触を防止する液接触防止手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の偏光子の製造方法では、把持手段が液の接触を防止する液接触防止手段を備え、前記液接触防止手段により、親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端部に前記液が接触しない液非接触領域が形成される。この結果、前記液非接触領域への前記液の浸入が効果的に防止され、偏光子の製造において、延伸ムラの発生を抑制することが可能となる。本発明の製造方法は、大型の偏光子の製造に好ましく用いられるが、これに限定されず、各種サイズの偏光子の製造にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、前記液には、例えば、後述の膨潤液、染色液、架橋液、延伸液、調整液等の各工程における処理液が含まれる。
【0013】
本発明の偏光子の製造方法および延伸機において、前記液接触防止手段としては、例えば、前記親水性ポリマーフィルムの表面に貼られるシール、防液板等が挙げられる。この中でも、防液板が好ましい。前記液接触防止手段が前記シールである場合には、前記親水性ポリマーフィルムが幅方向に延伸されることにより、前記親水性ポリマーフィルムと前記シールとの間に隙間が生じ、前記隙間から前記液非接触領域に前記液が浸入するおそれがある。これに対し、前記液接触防止手段が前記防液板である場合には、前記液非接触領域への前記液の浸入を、より効果的に防止することが可能である。これにより、偏光子の特性の低下が抑制される。このように、偏光子の特性の低下が抑制されることで、例えば、原反フィルムから偏光子として取れる領域(有効幅)が増加する。前記偏光子の特性には、例えば、位相差、偏光度等が含まれる。
【0014】
本発明の偏光子の製造方法において、前記防液板が、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向両端部を覆う状態で配置され、前記防液板は、気体噴出手段を有し、前記気体噴出手段により、気体が、前記防液板の先端から前記親水性ポリマーフィルムの両端部に噴出され、前記防液板と前記気体の噴出により、前記親水性ポリマーフィルムの両端部に前記液が接触しない液非接触領域を形成することが好ましい。このような形態であれば、前記気体噴出手段により噴出される気体により、親水性ポリマーフィルム幅方向両端部への前記液の接触がさらに効果的に防止される。この結果、前記親水性ポリマーフィルム両端部に前記液が接触しない液非接触領域がより効果的に形成され、前記幅方向延伸工程における延伸ムラの発生をより効果的に抑制することが可能となる、また、本発明の延伸機において、前記防液板が、気体噴出手段を有し、前記気体噴出手段により、気体が、前記防液板の先端から前記親水性ポリマーフィルムの両端部に噴出されることが好ましい。
【0015】
本発明の偏光子の製造方法では、前記親水性ポリマーフィルムの表面において、前記噴出された気体は、例えば、前記フィルム幅方向の内側および外側の双方向に流れる。前記気体が、前記フィルム幅方向中心側に流れることにより、前記親水性ポリマーフィルム両端部への前記液の接触が防止され、前記気体が、前記フィルム幅方向外側に流れることにより、例えば、延伸機(例えば、把持手段)から発生する粉塵の前記親水性ポリマーフィルムへの付着が防止される。
【0016】
本発明の偏光子の製造方法および延伸機において、前記防液板が、気体の流路を有し、前記気体が、前記流路に沿って流れて前記防液板の先端から前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端部に噴出されるという形態であってもよい。
【0017】
本発明の偏光子の製造方法および延伸機において、前記防液板は、前記親水性ポリマーフィルムの上側および下側の少なくとも一方の側に配置されることが好ましい。
【0018】
本発明の偏光子の製造方法において、前記液非接触領域の幅は、特に制限されないが、例えば、1〜100mmの範囲である。
【0019】
本発明の偏光子の製造方法において、前記別の工程は、例えば、前記親水性ポリマーフィルムを膨潤させる膨潤工程、および前記親水性ポリマーフィルムを架橋する架橋工程等がある。
【0020】
本発明の偏光子の製造方法において、前記親水性ポリマーフィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく、前記二色性物質はヨウ素が好ましい。
【0021】
つぎに、本発明の偏光子の製造方法について、例を挙げて、以下に説明する。本発明の製造方法は、親水性ポリマーフィルムを材料とし、例えば、膨潤工程、染色工程、架橋工程、調整工程、乾燥工程等の一連の工程を有し、これらの工程の少なくとも一つにおいてまたは別個に前記幅方向延伸工程を実施する。
【0022】
(1)親水性ポリマーフィルム
前記親水性ポリマーフィルムとしては、特に制限されず、従来公知のフィルムが使用できる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系フィルムや、これらの部分ケン化フィルム等の親水性ポリマーフィルム等が挙げられる。また、これらの他にも、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム、延伸配向されたポリビニレン系フィルム等も使用できる。これらの中でも、後述する二色性物質であるヨウ素による染色性に優れることから、PVA系ポリマーフィルムが好ましい。
【0023】
前記PVA系ポリマーフィルムの原料ポリマーとしては、例えば、酢酸ビニルを重合した後にケン化したものや、酢酸ビニルに対して、少量の不飽和カルボン酸や不飽和スルホン酸等の共重合可能なモノマーを共重合したポリマー等が挙げられる。前記PVA系ポリマーの重合度は、特に制限されないが、水に対する溶解度の点等から、500〜10000の範囲が好ましく、より好ましくは、1000〜6000の範囲である。また、前記PVA系ポリマーのケン化度は、75モル%以上が好ましく、より好ましくは、98〜100モル%の範囲である。
【0024】
前記親水性ポリマーフィルム(例えば、PVA系フィルム)は、ロールに巻回した原反フィルムの形態が好ましい。前記親水性ポリマーフィルム(例えば、PVA系フィルム)の厚みは、特に制限されないが、例えば、15〜110μmの範囲であり、好ましくは、38〜110μmの範囲であり、より好ましくは、50〜100μmの範囲であり、さらに好ましくは、60〜80μmの範囲である。
【0025】
(2)幅方向延伸工程
つぎに、本発明の特徴である親水性ポリマーフィルムを幅方向に延伸する幅方向延伸工程について説明する。なお、後述のように、幅方向延伸工程を、別個独立に実施する場合は、架橋工程の後、かつ、調整・乾燥工程の前に実施することが好ましい。
【0026】
前記幅方向延伸工程は、例えば、本発明の延伸機等を用いて実施することができる。前記本発明の延伸機は、前述のとおり、把持手段および前記把持手段を移動させる移動手段を含む。前記把持手段は、液の接触を防止する液接触防止手段(例えば、防液板)を備える。前記本発明の延伸機は、前記把持手段が前記液接触防止手段を備えること以外は、例えば、従来のテンター延伸機と同様の構成とすることができる。図3に、本発明の延伸機の構成の一例を示す。この延伸機では、前記把持手段2が、クリップである。また、この延伸機では、図示のとおり、前記移動手段が、一対の無端状のガイドレール4、一対の無端状のローラチェン5、入口側スプロケット6および出口側スプロケット7から構成される。この延伸機は、図示していないが、親水性ポリマーフィルム1の上側および下側の少なくとも一方の側に、噴霧装置を備える。なお、前記噴霧装置は、前記本発明の延伸機とは別の装置であってもよい。前記クリップ2は、親水性ポリマーフィルム1の幅方向の両端を把持する。前記クリップ2は、防液板3を備える。前記クリップ2は、前記ローラチェン5で連結されている。前記一対のガイドレール4の間が、前記親水性ポリマーフィルム1が移動する領域となり、前記一対のガイドレール4の間の一方側(同図において下側)が、前記親水性ポリマーフィルム1の入口側であり、前記間の他方側(同図において上側)が出口側である。前記一対のガイドレール4は、前記親水性ポリマーフィルム1の入口側(同図において下側)から前記親水性ポリマーフィルム1の出口側(同図において上側)にかけて、その一部(延伸区間D)が前記親水性ポリマーフィルム1の進行方向に沿って幅が広がる末広がり状になるように配置されている。前記ローラチェン5は、前記ガイドレール4の中に配置されている。前記入口側スプロケット6は、前記親水性ポリマーフィルム1の入口側(同図において下側)に左右2個ずつ配置されている。前記出口側スプロケット7は、前記親水性ポリマーフィルム1の出口側(同図において上側)に配置されている。前記ローラチェン5は、前記入口側スプロケット6および前記出口側スプロケット7により駆動される。前記ローラチェン5は、前記ガイドレール4に沿って案内される。この延伸機では、前記各移動手段により前記クリップ2が前記親水性ポリマーフィルム1の長手方向(同図において上側)に進行されると共に、前記延伸区間Dにおいて、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の両端を把持する前記クリップ2の双方が前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の外側にも移動されることにより、前記親水性ポリマーフィルム1が幅方向に延伸される。
【0027】
前記噴霧装置としては、例えば、扶桑精機(株)製の商品名「MKシリーズ」、DeVILBISS社製の商品名「T−AFPV」、ACCUSPRAY社製の商品名「56シリーズ」等が挙げられる。前記噴霧装置において、噴霧用ノズルの数は、例えば、1〜10個の範囲であり、好ましくは、1〜8個の範囲であり、より好ましくは、1〜4個の範囲であり、前記噴霧用ノズルの孔径は、例えば、0.3〜2mmの範囲であり、好ましくは、0.5〜1.5mmの範囲であり、より好ましくは、0.75〜1mmの範囲であり、前記噴霧用ノズル1個当たりの流量は、例えば、10〜1200mL/秒の範囲であり、好ましくは、10〜700mL/秒の範囲であり、より好ましくは、50〜400mL/秒の範囲であり、噴霧空気圧力は、例えば、0.03〜3MPaの範囲であり、好ましくは、0.1〜1MPaの範囲であり、より好ましくは、0.2〜0.5MPaの範囲であり、噴霧角度は、例えば、45°〜135°の範囲であり、好ましくは、60°〜120°の範囲であり、より好ましくは、80°〜100°の範囲である
【0028】
本工程の前記液の噴霧において、前記噴霧装置の噴霧用ノズルと前記親水性ポリマーフィルムとの間の距離は、前記噴霧空気圧力等に応じて適宜に決定することができるが、15cm以下の範囲が好ましい。前記距離を前記範囲とすることで、前記液をロスなく、確実に前記親水性ポリマーフィルムに接触させることができる。
【0029】
前記液の噴霧時間は、特に制限されないが、20秒以上の範囲が好ましく、より好ましくは、30〜120秒の範囲であり、さらに好ましくは、40〜60秒の範囲である。また、前記親水性ポリマーフィルムへの前記液の噴霧量は、特に制限されないが、0.06〜0.19mL/1cmの範囲が好ましい。そして、前記液の温度は、特に制限されないが、例えば、40〜70℃の範囲であり、好ましくは、50〜70℃の範囲であり、より好ましくは、60〜70℃の範囲である。
【0030】
図3に示した延伸機を用いた場合を例に、本発明の幅方向延伸工程の実施方法について説明する。偏光子の製造は、例えば、膨潤工程、染色工程、架橋工程、調整工程、乾燥工程という順で実施することが一般的である。前述のように、前記幅方向延伸工程は、これらの各工程で実施してもよいし、別個独立に実施してもよい。図1に、本工程の一例を模式的に示す。同図において、図3と同一部分には、同一符号を付している。図示のように、本工程においては、連続的に供給される親水性ポリマーフィルム1の幅方向(同図において左右方向)の両端を、クリップ2により把持する。そして、矢印Aに示すように、前記クリップ2を前記親水性ポリマーフィルム1の長手方向(同図において上方向)に進行させる。これにより、矢印Bに示すように、前記親水性ポリマーフィルム1は、その長手方向(同図において上方向)に搬送される。それと共に、前記親水性ポリマーフィルム1を液に接触させ、矢印Cに示すように、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の両端を把持する前記クリップ2の双方を前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向にも移動させることにより、前記親水性ポリマーフィルム1を幅方向に延伸する。前記液の接触は、気相中で、前記親水性ポリマーフィルム1の少なくとも一方の面に前記液を噴霧することで実施する。なお、図1は、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の両端を把持する前記クリップ2の双方を前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の外側に移動させることにより、前記親水性ポリマーフィルム1を幅方向に延伸する場合を示している。ただし、本発明は、これに限定されるものではなく、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の両端を把持する前記クリップ2の一方のみを前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の外側に移動させることにより、前記親水性ポリマーフィルム1を幅方向に延伸してもよい。
【0031】
本工程における前記親水性ポリマーフィルムの合計延伸倍率は、例えば、延伸前のフィルム(原反)の長さに対して、例えば、2〜12倍の範囲であり、好ましくは、3〜10倍の範囲であり、より好ましくは、4〜8倍の範囲である。
【0032】
前述のとおり、前記クリップ2は、防液板3を備える。前記防液板3により、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の両端部に液非接触領域が形成される。このように、前記クリップ2が前記防液板3を備えることで、前記液非接触領域への前記液の浸入を、効果的に防止することができる。
【0033】
図2に、図1のI−Iにおける断面を拡大して示す。同図において、図1と同一部分には、同一符号を付している。本例においては、前記防液板3の断面形状は、上下一対のI字状である。
【0034】
前記防液板3の断面形状は、図2に示した形状に限定されず、前記液非接触領域を形成することができるものであれば、どのような形状であってもよい。図4に、前記防液板3の断面形状を例示する。前記防液板3の断面形状は、例えば、図4(A)に示すように、上下一対のL字状であってもよい。また、前記防液板3の断面形状は、図4(B)に示すように、上下一対の略J字状であってもよい。前記図4(A)および図4(B)に示す防液板3においては、その親水性ポリマーフィルム1の幅方向の内側の端が、前記親水性ポリマーフィルム1の表面に近接しているため、前記液非接触領域への前記液の浸入を、より効果的に防止することができる。
【0035】
前記図2、図4(A)および図4(B)に示した防液板3の上側の板および下側の板は、つながっていてもよい。すなわち、前記防液板3の断面形状は、例えば、図5(A)に示すように、コの字状であってもよい。また、前記防液板3の断面形状は、例えば、図5(B)に示すように、上下一対のL字状の板が、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の外側(同図において左側)で別の板によりつながれた形状であってもよい。そして、前記防液板3の断面形状は、例えば、図5(C)に示すように、略C字状であってもよい。
【0036】
なお、前記液の噴霧が、前記親水性ポリマーフィルム1の上側の面のみに行われる場合には、図6(A)〜(C)に示すように、前記図2、図4(A)および図4(B)に示した防液板3の下側の板は、設けなくてもよい。同様に、前記液の噴霧が、前記親水性ポリマーフィルム1の下側の面のみに行われる場合には、前記図2、図4(A)および図4(B)に示した防液板3の上側の板は、設けなくてもよい(図示せず)。
【0037】
前記クリップ2により前記親水性ポリマーフィルム1が把持された状態を、図7に示す。図7(A)に示すように、このクリップ2は、回転軸21、上把持部22および下把持部23を備える。前記上把持部22は、前記回転軸21により前記クリップ2の内側(同図において左側)に移動可能である。この状態で、図7(B)に示すように、前記親水性ポリマーフィルム1の幅方向の一端を前記下把持部23の上に載せ、前記上把持部22を前記親水性ポリマーフィルム1の上面と接するまで前記クリップ2の外側(同図において右側)に移動させることで、前記親水性ポリマーフィルム1を把持する。
【0038】
図8は、図1の一部の拡大図である。前記クリップ2により前記親水性ポリマーフィルム1が把持される部分(つかみしろ)の長さ(同図におけるa)は、特に制限されないが、例えば、10〜100mmの範囲であり、好ましくは、10〜75mmの範囲であり、より好ましくは、25〜75mmの範囲であり、前記つかみしろの幅(同図におけるb)は、特に制限されないが、例えば、5〜50mmの範囲であり、好ましくは、10〜30mmの範囲であり、より好ましくは、10〜20mmの範囲である。また、前記親水性ポリマーフィルム1の長手方向に隣接する前記クリップ2の間の距離(同図におけるc)は、短いほど好ましいが、例えば、1〜20mmの範囲であり、好ましくは、3〜10mmの範囲であり、より好ましくは、3〜6mmの範囲である。そして、前記液非接触領域の幅(同図におけるd)は、例えば、1〜100mmの範囲であり、好ましくは、5〜50mmの範囲であり、より好ましくは、10〜30mmの範囲である。前記液非接触領域の幅が狭くなると、延伸安定性が確保できないおそれがある。また、前記液非接触領域の幅が広くなると、前記親水性ポリマーフィルムの前記液非接触領域の部分が伸びてしまい、偏光子の実質的な延伸倍率が低下するおそれがある。
【0039】
前述のとおり、前記防液板は、気体噴出手段を有することが好ましい。この場合には、前記防液板は、前記親水性ポリマーフィルムの両端部を覆う状態で配置される。図9の断面図に、気体噴出手段を有する防液板の一例を示す。同図において、図1から図8と同一部分には同一符号を付している。図示のように、本例の防液板3の断面形状は、側面(同図において左側面)にスリット状の空隙を有する矩形である。前記防液板3の板本体31の内部に、クリップ2が配置され、前記スリット状の空隙を通して親水性ポリマーフィルム1の一端が前記クリップ2により把持されている。前記防液板3のスリットを有する側の側壁は、前記スリットを境とした上側の構造が、外板32aと内板33aとからなる二重構造となっており、前記両板の間が、気体の流路34aになっており、同様に、前記スリットを境とした下側の構造が、外板32bと内板33bとからなる二重構造となっており、前記両板の間が、気体の流路34bになっている。そして、前記上下の二つの流路の奥側(同図において、流路34aの上側、流路34bの下側)に、それぞれ、気体噴出手段である噴出管35aおよび35bが配置されている。また、前記流路34aの下側の口が気体噴出口であり、かつ防液板3の先端である。同様に、前記流路34bの上側の口が気体噴出口であり、かつ防液板3の先端である。
【0040】
図10に、前記噴出管35の構造の一例を示す。図示のように、噴出管35は、一方の端部が閉塞され、他方の端部がポンプ(図示せず)に連結されており、気体噴出用孔351を1個以上有する。ポンプにより送られた気体Aは、図示のように、気体噴出用孔351から噴出される。
【0041】
図9に示す防液板において、親水性ポリマーフィルム両端部への前記液の接触の防止は、例えば、次のようにして実施される。すなわち、まず、前述のように、親水性ポリマーフィルム1に対し、液が噴霧されるが、まず、防液板3により、液の親水性ポリマーフィルム1の幅方向両端部への侵入が阻止される。また、二つの噴出管35a、35bより噴出される気体(例えば、空気)が、前記流路34a、34bを通り、前記親水性ポリマーフィルム1の両端部の幅方向中心側の境界付近に噴出される。図示のように、前記親水性ポリマーフィルム1の一方の面(同図において上面)に噴出された空気は、前記フィルム面において、矢印A1で示すように、フィルム幅方向中心側に流れることで、より効果的に液の侵入が防止され、矢印A2で示すように、フィルム幅方向外側に流れることにより、クリップ2等の延伸機から発生する粉塵が前記フィルムに付着することが防止される。同様に、前記親水性ポリマーフィルム1の他方の面(同図において下面)に噴出された空気は、前記フィルム面において、矢印B1で示すように、フィルム幅方向中心側に流れることで、より効果的に液の侵入が防止され、矢印B2で示すように、フィルム幅方向外側に流れることにより、クリップ2等の延伸機から発生する粉塵が前記フィルムに付着することが防止される。
【0042】
本発明において、気体噴出手段により噴出する気体は特に制限されず、例えば、空気があげられる。前記防液板長1m当たりの気体噴出流量は、特に制限されないが、例えば、0.05〜5m/分(N.T.P)であり、好ましくは、0.1〜2.5m/分(N.T.P)である。なお、前記「N.T.P」とは、normal temperature and pressureの略であり、0℃、1気圧(1.01325×10Pa)を表す。
【0043】
気体噴出手段を有する防液板において、図9に示す防液板は、親水性ポリマーフィルムの幅方向両端部の上下を覆うタイプであるが、本発明では、これに限定されない。例えば、液の噴霧が、親水性ポリマーフィルムのいずれか一方の面である場合、その面の側に防液板が配置されるタイプのものであってもよい。親水性ポリマーフィルムの片側に配置されるタイプの防液板の例を、図11(A)および(B)に示す。同図において、図9と同一部分には同一符号を付している。図11(A)に示す防液板は、親水性ポリマーフィルムを水平方向に移動する場合、上面側から液を噴霧する際に、液の侵入を防止できるように、前記フィルムの上面側に配置されるタイプのものである。図11(B)に示す防液板は、親水性ポリマーフィルムを水平方向に移動する場合、下面側から液を噴霧する際に、液の侵入を防止できるように、前記フィルムの下面側に配置されるタイプのものである。
【0044】
本発明において、気体噴出手段を有する防液板の形状は、特に制限されず、図9に示す略矩形状以外の形状であってもよい。図12に、断面が略C字状の防液板3の例を示す。同図において、図9と同一部分には同一符号を付している。図示のように、本例の防液板3は、断面が略C字状であり、外板32と内板33とで構成され、前記両板の間は、気体の流路34a、34bが形成されている。前記両板の間で、かつ前記略C字状の奥には、一つの噴出管35が配置されている。この噴出管35は、上下に気体噴出孔が設けられている。そして、前記噴出管5の上側の気体噴出孔から噴出された気体は、流路34aを通り、防液板3の上側の先端部(気体噴出口)から噴出され、親水性ポリマーフィルム1の上側表面において、フィルム幅方向中心側(矢印A1)およびフィルム幅方向外側(矢印A2)に流れる。同様に、前記噴出管35の下側の気体噴出孔から噴出された気体は、流路34bを通り、防液板3の下側の先端部(気体噴出口)から噴出され、親水性ポリマーフィルム1の下側表面において、フィルム幅方向中心側(矢印B1)およびフィルム幅方向外側(矢印B2)に流れる。その他の構成や気体の噴出条件は、前述の例と同様である。
【0045】
図12に示す防液板は、親水性ポリマーフィルムの上下を覆うタイプであるが、前述のように、本発明では、これに限定されない。親水性ポリマーフィルムの片側に配置されるタイプの防液板の他の例を、図13(A)および(B)に示す。同図において、図12と同一部分には同一符号を付している。図13(A)に示す防液板は、親水性ポリマーフィルムを水平方向に移動する場合、上面側から液を噴霧する際に、液の侵入を防止できるように、前記フィルムの上面側に配置されるタイプのものである。図13(B)に示す防液板は、親水性ポリマーフィルムを水平方向に移動する場合、下面側から液を噴霧する際に、液の侵入を防止できるように、前記フィルムの下面側に配置されるタイプのものである。
【0046】
前記幅方向延伸工程は、前述のように、膨潤工程、染色工程、架橋工程、調整工程等の各工程で実施してもよいし、別個独立に実施してもよい。ただし、均一性の向上、延伸ムラの発生の抑制の点で、前記液非接触領域の効果を最大にするためには、前述の各工程のすべてにおいて、テンター方式等による延伸と噴霧処理とを採用することが、より好ましい。前記幅方向延伸工程を、別個独立に実施する場合には、前記親水性ポリマーフィルムを、延伸液に接触させながら延伸する。
【0047】
前記延伸液としては、特に制限されないが、例えば、ホウ酸、ヨウ化カリウム、各種金属塩やその他のヨウ化化合物、亜鉛化合物等を含む溶液が使用できる。この溶液の溶媒としては、例えば、水、エタノール等が使用できる。具体的には、例えば、ホウ酸およびヨウ化カリウムを含むことが好ましく、前記両者の含有量は、例えば、合計で2〜18重量%の範囲であり、好ましくは、合計で4〜17重量%の範囲であり、より好ましくは、合計で6〜15重量%の範囲である。また、前記ホウ酸(A)とヨウ化カリウム(B)との含有割合(A:B(重量比))は、例えば、A:B=1:0.1〜1:4の範囲であり、好ましくは、A:B=1:0.2〜1:3.5の範囲であり、より好ましくは、A:B=1:0.5〜1:3の範囲である。
【0048】
(3)膨潤工程
前記親水性ポリマーフィルムを、まず、膨潤液に接触させて膨潤させる。
【0049】
前記膨潤液としては、例えば、水、グリセリン水溶液、ヨウ化カリウム水溶液等が使用できる。
【0050】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施する場合の前記親水性ポリマーフィルムに前記膨潤液を接触させる手段および条件等については、前記幅方向延伸工程で述べたとおりである。また、幅方向延伸工程を実施しない場合であっても、把持手段により、親水性ポリマーフィルムの幅方向両端を把持してフィルム長手方向に搬送し、かつ前記液を接触させる場合は、前述の防液板を用いてフィルム幅方向両端部への前記液の接触を防止することが好ましい。
【0051】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施しない場合(例えば、無延伸処理、以下同じ)には、前記膨潤液の接触は、例えば、前記膨潤液への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬等により行われてもよい。この場合には、膨潤浴が用いられる。この場合における前記膨潤液(膨潤浴)への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬時間は、特に制限されないが、例えば、20〜300秒の範囲であり、好ましくは、30〜200秒の範囲であり、より好ましくは、30〜120秒の範囲であり、前記膨潤液(膨潤浴)の温度は、例えば、20〜45℃の範囲であり、好ましくは、25〜40℃の範囲であり、より好ましくは、27〜37℃の範囲である。
【0052】
(4)染色工程
つぎに、前記膨潤後の親水性ポリマーフィルムを、二色性物質を含む染色液に接触させる。
【0053】
前記二色性物質としては、従来公知の物質が使用でき、例えば、ヨウ素や有機染料等が挙げられる。前記有機染料を使用する場合には、例えば、可視光領域のニュートラル化を図る点より、二種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0054】
前記染色液としては、前記二色性物質を溶媒に溶解した溶液が使用できる。前記溶媒としては、例えば、水が使用できるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されてもよい。前記溶液における二色性物質の濃度は、特に制限されないが、例えば、0.005〜0.40重量%の範囲であり、好ましくは、0.01〜0.30重量%の範囲である。
【0055】
また、前記二色性物質としてヨウ素を使用する場合、溶解度、染色効率等をより一層向上できることから、ヨウ素に加えて、助剤としてヨウ化物をさらに添加することが好ましい。前記ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等があげられる。これらのヨウ化物の添加割合は、前記染色液において、0.05〜10重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.10〜5重量%の範囲である。
【0056】
例えば、ヨウ素とヨウ化カリウムとを組み合わせて使用する場合、前記溶液におけるヨウ素(A)とヨウ化カリウム(B)の割合(A:B(重量比))は、例えば、A:B=1:5〜1:100の範囲であり、好ましくは、A:B=1:7〜1:50の範囲であり、より好ましくは、A:B=1:10〜1:30の範囲である。
【0057】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施する場合の前記親水性ポリマーフィルムに前記染色液を接触させる手段および条件等については、前記幅方向延伸工程で述べたとおりである。また、幅方向延伸工程を実施しない場合であっても、把持手段により、親水性ポリマーフィルムの幅方向両端を把持してフィルム長手方向に搬送し、かつ前記液を接触させる場合は、前述の防液板を用いてフィルム幅方向両端部への前記液の接触を防止することが好ましい。
【0058】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施しない場合には、前記染色液の接触は、例えば、前記染色液への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬等により行われてもよい。この場合には、染色浴が用いられる。この場合における前記染色液(染色浴)への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬時間は、特に制限されないが、例えば、10〜90秒の範囲であり、好ましくは、15〜60秒の範囲であり、より好ましくは、20〜45秒の範囲であり、前記染色液(染色浴)の温度は、例えば、5〜42℃の範囲であり、好ましくは、10〜35℃の範囲であり、より好ましくは、12〜30℃の範囲である。
【0059】
(5)架橋工程
つぎに、前記染色処理後の親水性ポリマーフィルムを、架橋剤を含む架橋液に接触させる。
【0060】
前記架橋剤としては、従来公知の物質が使用でき、例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物等があげられる。これらは一種類で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記架橋液としては、前記架橋剤を溶媒に溶解した溶液が使用できる。前記溶媒としては、例えば、水が使用できるが、さらに水と相溶性のある有機溶媒を含んでもよい。
【0061】
前記溶液における架橋剤の濃度は、特に制限されないが、例えば、前記溶媒(例えば、水)100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、1.5〜8重量部の範囲であり、さらに好ましくは、2〜6重量部の範囲である。
【0062】
前記架橋液は、偏光子の面内の均一な特性が得られる点から、前記ホウ酸化合物の他に、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を含んでいてもよい。これらの中でもホウ酸とヨウ化カリウムとの組み合わせが好ましい。前記溶液における前記助剤の含有量は、例えば、0.05〜15重量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜8重量%の範囲である。
【0063】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施する場合の前記親水性ポリマーフィルムに前記架橋液を接触させる手段および条件等については、前記幅方向延伸工程で述べたとおりである。また、幅方向延伸工程を実施しない場合であっても、把持手段により、親水性ポリマーフィルムの幅方向両端を把持してフィルム長手方向に搬送し、かつ前記液を接触させる場合は、前述の防液板を用いてフィルム幅方向両端部への前記液の接触を防止することが好ましい。
【0064】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施しない場合には、前記架橋液の接触は、例えば、前記架橋液への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬等により行われてもよい。この場合には、架橋浴が用いられる。この場合における前記架橋液(架橋浴)への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬時間は、特に制限されないが、例えば、5〜150秒の範囲であり、好ましくは、10〜90秒の範囲であり、より好ましくは、20〜40秒の範囲であり、前記架橋液(架橋浴)の温度は、例えば、20〜70℃の範囲であり、好ましくは、40〜60℃の範囲である。
【0065】
(6)幅方向延伸工程
幅方向延伸工程を、別個独立に実施する場合は、架橋工程の後、調整・乾燥工程の前に実施することが好ましい。幅方向延伸工程の詳細は、前述のとおりである。
【0066】
(7)調整・乾燥工程
最後に、前記親水性ポリマーフィルムをヨウ化物含有水溶液(調整液)に接触させた後、乾燥することにより、本発明の偏光子が得られる。
【0067】
前記ヨウ化物含有水溶液におけるヨウ化物としては、前述のものが使用でき、その中でも、例えば、ヨウ化カリウムやヨウ化ナトリウム等が好ましい。このヨウ化物含有水溶液によって、前記幅方向延伸工程において使用した残存するホウ酸を、親水性ポリマーフィルムから洗い流すことができる。
【0068】
前記水溶液が、ヨウ化カリウム水溶液の場合、その濃度は、例えば、0.5〜20重量%の範囲であり、好ましくは、1〜15重量%の範囲であり、より好ましくは、1.5〜7重量%の範囲である。
【0069】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施する場合の前記親水性ポリマーフィルムに前記調整液を接触させる手段および条件等については、前記幅方向延伸工程で述べたとおりである。また、幅方向延伸工程を実施しない場合であっても、把持手段により、親水性ポリマーフィルムの幅方向両端を把持してフィルム長手方向に搬送し、かつ前記液を接触させる場合は、前述の防液板を用いてフィルム幅方向両端部への前記液の接触を防止することが好ましい。
【0070】
本工程において、前記幅方向延伸工程を実施しない場合には、前記調整液の接触は、例えば、前記調整液への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬等により行われてもよい。この場合には、調整浴が用いられる。この場合における前記調整液(調整浴)への前記親水性ポリマーフィルムの浸漬時間は、特に制限されないが、例えば、2〜15秒の範囲であり、好ましくは、3〜12秒の範囲であり、前記調整液(調整浴)の温度は、例えば、15〜40℃の範囲であり、好ましくは、20〜35℃の範囲である。
【0071】
乾燥は、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥等、従来公知の方法で実施すればよい。加熱乾燥の場合は、特に制限されないが、温度25〜60℃の範囲が好ましく、より好ましくは、30〜50℃の範囲であり、さらに好ましくは、30〜45℃の範囲である。
【0072】
以上、膨潤工程、染色工程、架橋工程、幅方向延伸工程、調整・乾燥工程について、説明してきた。本発明の偏光子の製造方法は、膨潤工程、染色工程、架橋工程、幅方向延伸工程および調整・乾燥工程の順番で実施することが好ましいが、これに限定されない。また、これらの工程は、別々に実施してもよいが、一工程にまとめることが可能な工程は、まとめて実施してもよい。また、各工程終了ごとに、調整・乾燥工程を実施してもよい。
【0073】
このような一連の工程を経て、偏光子を製造することができる。偏光子は、通常、所定の大きさにカットして使用される。
【0074】
(8)偏光子
本発明の偏光子の厚みは、特に制限されないが、例えば、5〜40μmの範囲であり、好ましくは、10〜37μmの範囲であり、より好ましくは、15〜35μmの範囲である。
【0075】
(9)偏光板
つぎに、本発明の偏光板は、前記本発明の偏光子の少なくとも一方の表面に保護層が積層された構成である。前記保護層は、前記偏光子の片面のみに積層されてもよいし、両面に積層されてもよい。両面に積層する場合には、例えば、同じ種類の保護層を使用してもよいし、異なる種類の保護層を使用してもよい。
【0076】
図14に、本発明の偏光板の一例の断面図を示す。図示のように、この偏光板80は、前記偏光子81の両面に保護層82がそれぞれ積層されている。
【0077】
前記保護層82としては、特に制限されず、従来公知の保護フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、アクリル系、アセテート系、ポリオレフィン系等の樹脂等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。
【0078】
この他にも、特開2001−343529号公報やWO 01/37007号公報に記載されているような、例えば、イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物の混合押出物からなるフィルム等も使用できる。
【0079】
さらに、これらの保護フィルムは、例えば、その表面が、アルカリ等によってケン化処理されてもよい。これらの中でも、偏光特性や耐久性等の点から、TACフィルムが好ましく、より好ましくは、その表面がケン化処理されたTACフィルムである。
【0080】
前記保護層の厚みは、例えば、1〜500μmの範囲であり、好ましくは、5〜200μmの範囲であり、より好ましくは、10〜150μmの範囲である。
【0081】
前記保護層の位相差値としては、フィルム面内の位相差値(Re)が、好ましくは、0〜5nmの範囲であり、より好ましくは、0〜3nmの範囲であり、さらに好ましくは、0〜1nmの範囲であり、厚み方向の位相差値(Rth)が、好ましくは、0〜15nmの範囲であり、より好ましくは、0〜12nmの範囲であり、さらに好ましくは、0〜5nmの範囲であり、最も好ましくは、0〜3nmの範囲である。
【0082】
前記保護層は、例えば、偏光子に前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光子に前記樹脂製フィルム等を積層する方法等、従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
【0083】
また、前記保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、拡散やアンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。
【0084】
前記偏光子と前記保護層との接着方法は、例えば、粘着剤やその他の接着剤等が使用され、その種類は、偏光子や保護層の種類等によって適宜決定できる。接着層や粘着剤層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1〜500nmの範囲であり、好ましくは、10〜300nmの範囲であり、より好ましくは、20〜100nmの範囲である。
【0085】
また、本発明の偏光板は、例えば、液晶セル等への積層が容易になることから、その最外層に、さらに粘着剤層を有していることが好ましい。図15に、このような粘着剤層を有する偏光板の断面図を示す。図15において、図14と同一部分には、同一符号を付している。図示のように、偏光板90は、前記偏光板80の一方の保護層82の表面にさらに粘着剤層91が配置されているという構成である。
【0086】
前記保護層表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、粘着剤の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記保護層の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するセパレータ上に粘着剤層を形成させて、それを前記保護層の所定面に移着する方式等によって行うことができる。なお、このような粘着剤層は、前記図15のように偏光板のいずれか一方の表面に形成してもよいが、これには限定されず、必要に応じて両面に配置してもよい。
【0087】
前記粘着剤層としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の従来公知の粘着剤を適宜使用して形成できる。前記粘着剤層の表面は、汚染防止等を目的として、セパレータによってカバーすることが好ましい。このセパレータは、前記保護フィルム等のような薄層のフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを設ける方法等によって形成できる。
【0088】
前記粘着剤層の厚みは、特に制限されないが、例えば、5〜35μmの範囲であり、好ましくは、10〜25μmの範囲であり、より好ましくは、15〜25μmの範囲である。
【0089】
(10)用途
本発明の偏光子および偏光板は、液晶表示装置(LCD)やELディスプレイ(ELD)等の各種の画像表示装置に好ましく用いることができる。本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光子および偏光板の少なくとも一方を用いること以外は、従来の液晶表示装置と同様の構成である。本発明の液晶表示装置は、例えば、液晶セル、本発明の偏光子等の光学部材、および必要に応じて照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0090】
本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等が挙げられる。
【実施例】
【0091】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例および比較例によってなんら限定ないし制限されない。また、実施例および各比較例における各種特性および物性の測定は、下記の方法により実施した。
【0092】
(1)位相差
位相差は、王子計測機器(株)製、商品名「KOBRA31×100/IR」を用いて測定した。
【0093】
(2)単体透過率
単体透過率は、日本電子機械工業規格(EIAJ)LD−201(1983年版)に準拠した分光光度計((株)村上色彩技術研究所製、商品名「Dot−3C」、測定誤差±0.03%)を用いて、JIS Z 8701(1982年版)に規定の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値を測定して求めた。測定は、25℃以下にて行った。
【0094】
(3)偏光度
偏光度は、日本電子機械工業規格(EIAJ)LD−201(1983年版)に準拠した分光光度計((株)村上色彩技術研究所製、商品名「Dot−3C」、測定誤差±0.03%)を用いて、偏光子の平行透過率(H)および直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H−H90)/(H+H90)}1/2×100より求めた。前記平行透過率(H)は、同じ種類の2枚の偏光子を、互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。また、前記直交透過率(H90)は、同じ種類の2枚の偏光子を、互いに吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光子の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JIS Z 8701(1982年版)に規定の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。測定は、25℃以下にて行った。
【0095】
[実施例1]
(PVAフィルムの準備)
原反PVAフィルム(クラレ社製、商品名「VF−PS」)を準備した。このPVAフィルムの厚みは、75μmであった。図3に示す構成の延伸機を用い、前記PVAフィルムの幅方向の両端をクリップにより把持し、前記PVAフィルムを、その長手方向に搬送しながら、下記の各工程を実施した。この際、前記クリップによるつかみしろの長さは10mm、幅は45mmとした。また、前記PVAフィルムの長手方向に隣接する前記クリップの間の距離は、10mmとした。そして、液非接触領域の幅は、10mmとした。
【0096】
(偏光子の作製)
(1)膨潤工程
前記PVAフィルムの両面に、気相中で、室温(23℃)の水(膨潤液)を90秒噴霧した。
【0097】
(2)染色工程
前記PVAフィルムの片面に、気相中で、20重量%のヨウ素を含む室温(23℃)の水溶液(染色液)を50秒噴霧した。
【0098】
(3)架橋工程
前記PVAフィルムの片面に、気相中で、3重量%のホウ酸を含む室温(23℃)の水溶液(架橋液)を30秒噴霧した。
【0099】
(4)幅方向延伸工程
前記染色処理後の前記PVAフィルムの片面に、気相中で、5重量%のホウ酸と4重量%のヨウ化カリウムとを含む室温(23℃)の水溶液(延伸液)を噴霧した。この際、前記クリップにより、前記PVAフィルムを延伸前の原反フィルムの長さに対して、5.9倍の長さになるように幅方向に延伸した。
【0100】
(5)調整工程
前記延伸後の前記PVAフィルムの片面に、気相中で、4重量%のヨウ化カリウムを含む室温(23℃)の水溶液(調整液)を20秒噴霧した。
【0101】
(6)乾燥工程
前記架橋後の前記PVAフィルムに60℃で4分間熱風乾燥処理を施して、本実施例の偏光子を得た。
【0102】
[実施例2]
延伸機の防液板が、気体噴出手段を備え、前記気体噴出手段により空気を噴出しながら前記各工程を実施したこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例の偏光子を得た。
【0103】
[実施例3]
空気の噴出を実施しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、本実施例の偏光子を得た。
【0104】
[比較例1]
クリップが防液板を備えない延伸機を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例の偏光子を得た。
【0105】
[比較例2]
液非接触領域の幅を、0mmとした(液非接触領域を形成しなかった)こと以外は、実施例1と同様にして、本比較例の偏光子を得た。
【0106】
図16のグラフに、実施例1および比較例1、2の偏光子の位相差の測定結果を示す。また、図17のグラフに、実施例1および比較例1、2の偏光子の偏光度の測定結果を示す。なお、前記位相差および前記偏光度の測定は、図18に示すように、PVAフィルム1の幅方向に、前記PVAフィルム1の長手方向に隣接するクリップ2の中間の位置において実施した。また、前記測定は、実施例1において延伸液が噴霧された領域(図18において、左側の防液板3のPVAフィルム1の幅方向の内側の端から右側の防液板3のPVAフィルム1の幅方向の内側の端までの領域)について実施した。前記位相差は、10mmおきに測定した。前記偏光度は、10mmおきに測定した。
【0107】
下記表1に、実施例1および比較例1の偏光子において、位相差が、700nm以上、800nm以上、900nm以上および1000nm以上であった幅(有効幅)を示す。また、下記表2に、実施例1および比較例1の偏光子において、偏光度が、99%以上および99.9%以上であった幅(有効幅)を示す。なお、比較例2の偏光子においては、位相差700nm以上および偏光度99%以上を達成できなかった。
【0108】
(表1)
有効幅(mm)
位相差 実施例1 比較例1
700nm以上 180 140
800nm以上 150 130
900nm以上 120 70
1000nm以上 80 20

【0109】
(表2)
有効幅(mm)
偏光度 実施例1 比較例1
99以上 140 120
99.9以上 50 20

【0110】
図16、17および前記表1、2からわかるように、実施例1では、比較例1、2と比べて位相差および偏光度が高く、偏光子の特性の低下が抑制されていた。また、実施例1では、偏光子の延伸ムラも抑制されていた。
【0111】
また、実施例2では、前記各工程において、PVAフィルムの幅方向両端部に前記各処理液が接触することを効果的に防止でき、かつ延伸機に起因する粉塵のフィルムへの付着も効果的に防止できた。実施例2で得られた偏光子は、偏光特性等の光学特性が均一であった。一方、実施例3では、前記各工程において、PVAフィルムの幅方向両端部に前記各処理液が接触することは防止できたものの、一部において接触が認められた。また、延伸機に起因する粉塵のフィルムへの付着も確認された。実施例3で得られた偏光子は、偏光特性等の光学特性が、実施例2と比べるとやや不均一であったが、比較例1および2と比べると均一であり、実用上問題のないレベルであった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上のように、本発明の偏光子の製造方法によれば、延伸ムラの発生が抑制された偏光子を製造可能である。本発明の偏光子およびそれを用いた偏光板、画像表示装置の用途は、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等が挙げられ、その用途は限定されず、広い分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は、本発明の幅方向延伸工程の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、図1のI−Iにおける断面図である。
【図3】図3は、本発明の延伸機の構成の一例を示す平面図である。
【図4】図4は、本発明の防液板の断面形状の例を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の防液板の断面形状のその他の例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の防液板の断面形状のさらにその他の例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明のクリップによる親水性ポリマーフィルムの把持について説明する図である。
【図8】図8は、図1の一部の拡大図である。
【図9】図9は、気体噴出手段を有する本発明の防液板の一例を示す構成断面図である。
【図10】図10は、本発明の延伸機の噴出管の一例を示す構成断面図である。
【図11】図11(A)および(B)は、気体噴出手段を有する本発明の防液板のその他の例を示す構成断面図である。
【図12】図12は、気体噴出手段を有する本発明の防液板のさらにその他の例を示す構成断面図である。
【図13】図13(A)および(B)は、気体噴出手段を有する本発明の防液板のその他の例を示す構成断面図である。
【図14】図14は、本発明の偏光板の構成の一例を示す断面図である。
【図15】図15は、本発明の偏光板の構成のその他の例を示す断面図である。
【図16】図16は、本発明の実施例における偏光子の幅方向の位相差の測定結果を示すグラフである。
【図17】図17は、本発明の実施例における偏光子の幅方向の偏光度の測定結果を示すグラフである。
【図18】図18は、本発明の実施例における偏光子の位相差および偏光度の測定位置を説明する図である。
【符号の説明】
【0114】
1 親水性ポリマーフィルム
2 クリップ
3 防液板
4 ガイドレール
5 ローラチェン
6 入口側スプロケット
7 出口側スプロケット
21 回転軸
22 上把持部
23 下把持部
31 防液板本体
32、32a、32b 外板
33、33a、33b 内板
34、34a、34b 流路
35、35a、35b 気体噴出管
351 気体噴出用孔
80、90 偏光板
81 偏光子
82 保護層
91 粘着剤層
A、A1、A2、B、B1、B2、C 矢印
D 延伸区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に供給される親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を把持手段により把持し、前記把持手段を前記親水性ポリマーフィルムの長手方向に進行させると共に、前記親水性ポリマーフィルムを液に接触させ、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端の少なくとも一方の側を把持する前記把持手段を前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の外側にも移動させることにより前記親水性ポリマーフィルムを幅方向に延伸する幅方向延伸工程と、
前記親水性ポリマーフィルムを二色性物質により染色処理する染色工程とを有し、
前記幅方向延伸工程を、前記染色工程および前記染色工程とは別の工程の少なくとも一つの工程において実施する偏光子の製造方法であって、
前記幅方向延伸工程において、前記液の接触を、気相中で、前記親水性ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に前記液を噴霧することで実施し、且つ、前記把持手段が前記液の接触を防止する液接触防止手段を備え、前記液接触防止手段により、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端部に前記液が接触しない液非接触領域を形成することを特徴とする偏光子の製造方法。
【請求項2】
前記液接触防止手段が、防液板である請求項1記載の偏光子の製造方法。
【請求項3】
前記防液板が、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向両端部を覆う状態で配置され、前記防液板は、気体噴出手段を有し、前記気体噴出手段により、気体が、前記防液板の先端から前記親水性ポリマーフィルムの両端部に噴出され、前記防液板と前記気体の噴出により、前記親水性ポリマーフィルムの両端部に前記液が接触しない液非接触領域を形成する請求項2記載の偏光子の製造方法。
【請求項4】
前記親水性ポリマーフィルムの表面において、前記噴出された気体が、前記フィルム幅方向の中心側および外側の双方向に流れる請求項3記載の偏光子の製造方法。
【請求項5】
前記防液板が、気体の流路を有し、前記気体が、前記流路に沿って流れて前記防液板の先端から前記親水性ポリマーフィルムの幅方向両端部に噴出される請求項3または4記載の偏光子の製造方法。
【請求項6】
前記防液板を、前記親水性ポリマーフィルムの上側および下側の少なくとも一方の側に配置する請求項2から5のいずれか一項に記載の偏光子の製造方法。
【請求項7】
前記液非接触領域の幅が、1〜100mmの範囲である請求項1から6のいずれか一項に記載の偏光子の製造方法。
【請求項8】
前記別の工程が、前記親水性ポリマーフィルムを膨潤させる膨潤工程および前記親水性ポリマーフィルムを架橋する架橋工程の少なくとも一方の工程を含む請求項1から7のいずれか一項に記載の偏光子の製造方法。
【請求項9】
前記親水性ポリマーフィルムが、ポリビニルアルコール系フィルムであり、前記二色性物質がヨウ素である請求項1から8のいずれか一項に記載の偏光子の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の製造方法により製造された偏光子。
【請求項11】
偏光子の少なくとも一方の表面に保護層が積層された偏光板であって、前記偏光子が、請求項10記載の偏光子である偏光板。
【請求項12】
偏光子および偏光板の少なくとも一方を含む画像表示装置であって、前記偏光子が、請求項10記載の偏光子であり、前記偏光板が、請求項11記載の偏光板である画像表示装置。
【請求項13】
把持手段および前記把持手段を移動させる移動手段を含み、
前記把持手段により親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端を把持し、
前記移動手段により前記把持手段を前記親水性ポリマーフィルムの長手方向に進行させると共に、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端の少なくとも一方の側を把持する前記把持手段を前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の外側にも移動させることにより前記親水性ポリマーフィルムを幅方向に延伸する延伸機であって、
前記把持手段が、前記親水性ポリマーフィルムの幅方向の両端部への液の接触を防止する液接触防止手段を備えることを特徴とする延伸機。
【請求項14】
前記液接触防止手段が、防液板である請求項13記載の延伸機。
【請求項15】
前記防液板が、気体噴出手段を有し、前記気体噴出手段により、気体が、前記防液板の先端から前記親水性ポリマーフィルムの両端部に噴出される請求項14記載の延伸機。
【請求項16】
前記防液板が、気体の流路を有し、前記気体が、前記流路に沿って流れて前記防液板の先端から前記親水性ポリマーフィルムの幅方向両端部に噴出される請求項15記載の延伸機。
【請求項17】
前記防液板が、前記親水性ポリマーフィルムの上側および下側の少なくとも一方の側に配置される請求項14から16のいずれか一項に記載の延伸機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−209891(P2008−209891A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198879(P2007−198879)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】