説明

偏光板、及び液晶表示装置

【課題】 本発明の目的は、透明保護フィルムが等方性に優れ、さらに、クニックの発生が抑制された偏光板を提供することである。
【解決手段】 本発明の偏光板1は、透明保護フィルム2と、偏光子3と、複屈折層4とが、この順で積層されており、前記透明保護フィルム2が、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含み、前記透明保護フィルム2と偏光子3が、金属化合物コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤5を用いて貼り合わされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その液晶セルの表面を形成するガラス基板の両側に偏光子を配置することが必要不可欠である。偏光子は、一般的に、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素などの二色性物質で染色した後、架橋剤を用いて架橋し、一軸延伸することにより得られる。この偏光子は、延伸処理が行われているため、収縮し易い。また、ポリビニルアルコールは、親水性ポリマーであるため、前記ポリビニルアルコール系フィルムは、特に加湿条件下で、非常に変形し易い。また、フィルム自体の機械的強度が弱いため、フィルムが裂けたりする問題もある。このため、偏光子の両面又は片面にトリアセチルセルロースフィルムからなる透明保護フィルムを貼り合わせることにより、強度を補った偏光板が用いられている。この偏光板は、偏光子と透明保護フィルムとを接着剤を介して貼り合わせることにより製造されている。
【0003】
上記透明保護フィルムとしては、上述のように、トリアセチルセルロースフィルムが用いられている。しかしながら、トリアセチルセルロースフィルムは、厚み方向に位相差を有する(つまり、異方性フィルムである)。位相差を有する透明保護フィルムを偏光板に用いると、液晶表示装置の視野角特性に悪影響を与えかねない。このため、実質的に位相差を有しない透明保護フィルムを用いた偏光板が求められている。
【0004】
また、偏光子と透明保護フィルムとの接着に用いる偏光板用接着剤としては、水溶性接着剤が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール水溶液に架橋剤を混合したポリビニルアルコール系接着剤が使用されている。しかしながら、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせた場合、加湿条件下で、偏光子と透明保護フィルムとの界面で剥がれが生じる場合がある。この問題に対しては、例えば、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤とを含有する偏光板用接着剤が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、偏光板を作製するにあたって、偏光子と透明保護フィルムとを、上記ポリビニルアルコール系接着剤を介して貼り合わせると、クニックが発生するという問題がある。このクニック(揮点とも呼ばれる)は、偏光子と透明保護フィルムとの界面において生じる局所的な凹凸欠陥である。このクニックの発生に対しては、例えば、含水量を調整したポリビニルアルコール系フィルムの表面を所定条件下にカレンダーロールで処理した偏光子を用い、これを透明保護フィルムと積層して偏光板を得る方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に記載の技術では、クニックの発生を十分に抑止できるとはいえず、クニックの発生がより一層抑止された偏光板が求められている。
【特許文献1】特開平7−198945号公報
【特許文献2】特開平10−166519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、透明保護フィルムが等方性に優れ、さらに、クニックの発生が抑制された偏光板、及びこの偏光板を備える液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の偏光板は、透明保護フィルムと、偏光子と、複屈折層とが、この順で積層されている偏光板において、前記透明保護フィルムが、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含み、前記透明保護フィルムと偏光子が、金属化合物コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わされていることを特徴とする。
【0008】
上記グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む透明保護フィルムは、等方性に優れている。例えば、前記透明保護フィルムの波長590nmにおける面内の位相差値(Re(590))は、0nm〜10nmであり、波長590nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(590))は、−10nm〜10nmである。
このような透明保護フィルムを有する本発明の偏光板は、光学補償の設計上、透明保護フィルムの位相差を無視できる。このため、本発明の偏光板は、液晶パネルの種類に応じた光学補償の設計を容易に行うことができ、この偏光板を用いることにより、視野角特性に優れた液晶表示装置を提供できる。
さらに、前記透明保護フィルムと偏光子が、金属化合物コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わされているので、前記金属化合物コロイドの作用により、クニックの発生が抑制された偏光板を提供できる。
【0009】
本発明の好ましい偏光板は、前記複屈折層が、波長が大きくなるに従い位相差値が大きくなる光学特性を有する。
また、本発明の他の好ましい偏光板は、前記グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が、下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位、及び一般式(2)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有する。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基を表す。
上記一般式(2)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基を表す。Rは、置換若しくは無置換の炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜5の脂環式炭化水素基を表す。
【0013】
本発明の他の好ましい偏光板は、前記金属化合物コロイドの平均粒子径が1nm〜100nmである。
さらに、本発明の他の好ましい偏光板は、前記ポリビニルアルコール系接着剤が、ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対し、前記金属化合物コロイドが200質量部以下含有されている。
かかるポリビニルアルコール系接着剤を用いることにより、クニックの発生がより抑制された偏光板を提供できる。
【0014】
本発明の他の好ましい偏光板は、前記金属化合物コロイドが、アルミナコロイドである。アルミナコロイドは、正電荷を有する金属化合物コロイドである。このアルミナコロイドは、負電荷を有する金属コロイドに比べて、クニックの発生を抑制する効果が大きいので特に好ましい。
【0015】
本発明の他の好ましい偏光板は、前記ポリビニルアルコール系接着剤に、更に架橋剤が含有されている。
【0016】
また、本発明の液晶表示装置は、上記いずれかの偏光板を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の偏光板は、等方性に優れた透明保護フィルムが積層されている。さらに、本発明の偏光板は、クニックの発生が抑制されており、光学的に均一で、更に、耐久性にも優れている。
本発明の液晶表示装置は、上記偏光板を備えているので、画像表示及び視野角特性などに優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における用語は、次の意味である。
(1)全光線透過率:
全光線透過率は、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された値を意味する。
(2)複屈折層:
複屈折層は、その面内及び/又は厚み方向に複屈折(屈折率の異方性)を有する光学部材を意味する。複屈折層は、例えば、23℃で波長590nmにおける面内及び/又は厚み方向の複屈折率が、1×10−4以上であるものを含む。
(3)偏光子:
偏光子は、自然光又は偏光を直線偏光に変換することができる特性を有する光学部材を意味する。
(4)nx、ny、nz:
「nx」、「ny」及び「nz」は、互いに異なる方向の屈折率を示す。nxは、面内において屈折率が最大となる方向(X軸方向という)の屈折率を示し、nyは、面内において前記X軸方向と直交する方向(Y軸方向という)の屈折率を示し、nzは、前記X軸方向及びY軸方向に直交する方向(Z軸方向という)の屈折率を示す。
なお、「nx=ny」とは、nxとnyが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合も含まれる。nxとnyが実質的に同一である場合とは、例えば、Re[590]が0nm〜10nmであり、好ましくは0nm〜5nmであり、より好ましくは0nm〜3nmである。
また、「ny=nz」とは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合も含まれる。nyとnzが実質的に同一である場合とは、例えば、Re(590)−Rth(590)が−10nm〜10nmであり、好ましくは−5nm〜5nmであり、より好ましくは−3nm〜3nmである。
(5)Re(λ):
「面内の位相差値(Re(λ))」は、23℃で波長λ(nm)の光で測定した面内の位相差値を意味する。
Re(λ)は、測定対象の厚みをd(nm)としたとき、Re(λ)=(nx−ny)×dによって求めることができる。
例えば、Re(590)は、23℃、波長590nmの光で測定した面内の位相差値である。
(6)Rth(λ):
「厚み方向の位相差値(Rth(λ))」は、23℃、波長λ(nm)の光で測定した厚み方向の位相差値を意味する。Rth(λ)は、測定対象の厚みをd(nm)としたとき、Rth(λ)=(nx−nz)×dによって求めることができる。
例えば、Rth(590)は、23℃、波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値である。
(7)Nz係数:
「Nz係数」は、Rth(λ)/Re(λ)から算出される値である。本発明では、Nz係数は、590nmを基準とする、Rth(590)/Re(590)から算出される値である。Rth(590)及びRe(590)の意味は、前記のとおりである。
(8)直交:
「直交」とは、光学的な2つの軸のなす角度が、90°±2°である場合を含み、好ましくは90°±1°である。
(9)樹脂:
「樹脂」は、1種の構成単位の重合体又は2種以上の異なる構成単位の重合体を意味する。この重合体には、重合度(2以上の構成単位を含む場合は、各構成単位の合計の重合度)が20以上の高重合体を含み、さらに、重合度が2以上20未満の低重合体(オリゴマーともいう)を含む。
(10)(メタ)アクリル酸:
(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、又は、メタクリル酸を意味する。
【0019】
[本発明の偏光板の概要]
図1に、本発明の偏光板の層構成を示す。同図においては、分かりやすくするために、各部材の大きさや比率等は、実際とは異なっている(他の図も同様)。
本発明の偏光板1は、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む透明保護フィルム2と、偏光子3と、複屈折層4とが、この順で積層されている。
以下、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を、単に「(メタ)アクリル系樹脂」と記す場合がある。
透明保護フィルム2と偏光子3の間には、第1接着層5が設けられている。透明保護フィルム2と偏光子3は、前記第1接着層5を介して貼り付けられている。この第1接着層5は、金属化合物コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤で構成されている。
偏光子3と複屈折層4の間には、第2接着層6が設けられている。偏光子3と複屈折層4は、前記第2接着層6を介して貼り付けられている。この第2接着層6は、任意の接着剤(接着剤とは、一般に粘着剤と呼ばれている剤を含む意味である)で構成されている。例えば、第2接着層6は、本発明の金属化合物コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤で構成されていてもよいし、この接着剤以外の接着剤で構成されていてもよい。金属化合物コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤以外の接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタン系接着剤などが挙げられる。
前記複屈折層4は、波長が大きくなるに従い位相差値が大きくなる光学特性を有することが好ましい。また、偏光子3と複屈折層4は、例えば、偏光子3の吸収軸方向と複屈折層4の遅相軸方向が直交するように貼り付けられている。
なお、本明細書において、接頭語の「第1」及び「第2」は、便宜上、用語を区別するために付しており、該「第1」及び「第2」を付した用語の順序や優劣などを意味するわけではない。
【0020】
[液晶パネルの構成例]
図2に、本発明の液晶パネルの構成の一例を示す。
この液晶パネル10は、液晶セル9と、第1偏光板11と、第2偏光板12とを具備する。前記第1偏光板11は、例えば、前記液晶セル9の視認側に配置されている。前記第2偏光板12は、例えば、前記液晶セル9の反視認側に配置されている。
第1偏光板11及び第2偏光板12の少なくとも何れか一方は、図1に示すような、上記本発明の偏光板1が用いられる。好ましくは、第1偏光板11及び第2偏光板12は、いずれも上記本発明の偏光板1が用いられる。
第1偏光板11と第2偏光板12は、例えば、互いの偏光子の吸収軸方向が直交するように、液晶セル9に配置されている。
また、第1偏光板11と第2偏光板12は、偏光子と液晶セル9の間に複屈折層が位置するように、液晶セル9に配置されている。
なお、本発明の液晶パネル10は、上記第1偏光板11と液晶セル9の間に、及び/又は、上記第2偏光板12と液晶セル9の間に、任意の複屈折層や光学フィルムが設けられていてもよい。また、液晶パネルの各部材間は、任意の接着層を介して接着される。
【0021】
上記液晶セルとしては、例えば、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型等を例示できる。また、前記液晶セルとしては、スーパーツイストネマチック液晶表示装置に採用されているような、単純マトリクス型などでもよい。
【0022】
液晶セルは、一般に、一対の基板により液晶層が形成されている(図示せず)。
例えば、液晶セルは、一対の基板の間に、スペーサーが配置されることにより、空間が形成されている。この空間に、液晶分子を封入した液晶層が形成されている。前記一対の基板のうち、一方の基板(アクティブマトリクス基板)には、例えば、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(例えば、TFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線と、が設けられる。前記一対の基板のうち、他方の基板には、例えば、カラーフィルターが設けられる。なお、カラーフィルターは、前記アクティブマトリクス基板に設けてもよい。
【0023】
前記液晶セルは、その屈折率楕円体がnx=ny<nzの関係を満足することが好ましい。屈折率楕円体がnx=ny<nzの液晶セルとしては、液晶配向モードの分類によれば、垂直配向(VA)モード、ツイスティッド・ネマチック(TN)モード、垂直配向型電界制御複屈折(ECB)モード、光学補償複屈折(OCB)モード等を例示できる。本発明において、前記液晶セルの液晶配向モードは、好ましくは垂直配向モード(VAモード)である。
【0024】
[本発明の液晶表示装置の構成例]
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の液晶パネルを具備する。本発明の液晶表示装置は、前記液晶パネルを含む以外は、従来の液晶表示装置と同様の構成であってもよい。
例えば、本発明の液晶表示装置は、前記液晶パネルと、液晶パネルの一方の側に配置されたバックライトユニットとを少なくとも備える。前記バックライトユニットは、直下方式でもよいし、サイドライト方式でもよい。
【0025】
直下方式が採用される場合、上記バックライトユニットは、好ましくは、光源と、反射フィルムと、拡散板と、プリズムシートと、輝度向上フィルムとを少なくとも備える。サイドライト方式が採用される場合、上記バックライトユニットは、好ましくは、光源と、反射フィルムと、拡散板と、プリズムシートと、輝度向上フィルムと、導光板と、ライトリフレクターとを少なくとも備える。なお、これらの部材は、液晶表示装置の照明方式や液晶セルの駆動モードなどに応じて、その一部が省略され得るか、または、他の部材に代替され得る。
【0026】
上記液晶表示装置は、液晶パネルの反視認側から光を照射して画面を見る、透過型であっても良いし、液晶パネルの視認側から光を照射して画面を見る、反射型であっても良い。あるいは、上記液晶表示装置は、透過型と反射型の両方の性質を併せ持つ、半透過型であっても良い。
【0027】
本発明の液晶表示装置の用途は、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ,テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、又は、介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
【0028】
上記液晶表示装置の好ましい用途は、テレビである。前記テレビの画面サイズは、好ましくは、ワイド17型(373mm×224mm)以上であり、より好ましくは、ワイド23型(499mm×300mm)以上であり、さらに好ましくは、ワイド32型(687mm×412mm)以上である。
【0029】
[本発明の偏光板の各部材の詳細]
本発明の偏光板は、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む透明保護フィルムと、偏光子と、複屈折層とがこの順で積層されており、透明保護フィルムと偏光子が、金属化合物コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わされている。
【0030】
(透明保護フィルムについて)
上記透明保護フィルムは、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を主たる樹脂成分として含むフィルムである。
透明保護フィルムは、その全光線透過率が高いほど好ましい。透明保護フィルムの全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは、88%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0031】
また、透明保護フィルムの波長590nmにおける面内の位相差値(Re(590))は、0nm〜10nmであり、好ましくは、0nm〜5nmであり、より好ましくは、0nm〜3nmである。さらに、透明保護フィルムの波長590nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(590))は、−10nm〜10nmであり、好ましくは、−5nm〜5nmであり、より好ましくは、−3nm〜3nmである。かかるRe(590)及びRth(590)の透明保護フィルムは、実質的に位相差を有しない(つまり、等方性である)。このため、視野角特性に優れた液晶表示装置を得るために偏光板を設計する上で、透明保護フィルムに起因する位相差を無視できる。従って、偏光板の作製において、液晶パネルの種類に応じた光学補償の設計を容易に行うことができる。
グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることにより、前記のような実質的に位相差を有しないフィルム(つまり、等方性フィルム)が得られる。
【0032】
前記グルタル酸無水物構造としては、例えば、下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位が挙げられる。
【0033】
【化3】

【0034】
ただし、上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基を表す。
前記炭素数1〜5のアルキル基が置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、ハロゲン、−OH、−COOH、−NH、−SOHなどが挙げられる。
【0035】
さらに、上記(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは、上記グルタル酸無水物単位、及び下記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有する。
【0036】
【化4】

【0037】
ただし、上記一般式(2)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基を表す。Rは、置換若しくは無置換の炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜5の脂環式炭化水素基を表す。
前記炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又は炭素数1〜5の脂環式炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、ハロゲン、−OH、−COOH、−NH、−SOHなどが挙げられる。
【0038】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、特開2004−70290号公報、特開2004−70296号公報、特開2004−163924号公報、特開2004−292812号公報、特開2005−314534号公報、特開2006−206881号公報、特開2006−265532号公報、特開2006−283013号公報、特開2006−299005号公報、特開2006−335902号公報などに記載されているものを用いることができる。
【0039】
前記(メタ)アクリル系樹脂において、一般式(1)で表される単位の含有量は、好ましくは、5〜50モル%であり、より好ましくは、10〜45モル%であり、さらに好ましくは、15〜40モル%であり、特に好ましくは、20〜35モル%であり、最も好ましくは、25〜35モル%である。この単位の含有量が5モル%よりも少ないと、一般式(1)で表される単位に由来して発現される効果(例えば、等方性、機械的強度、及び偏光子に対する接着性などに優れた透明保護フィルムが得られるという効果)が十分に発揮されないおそれがある。また、前記単位の含有量が50モル%を超えると、例えば、耐熱性及び透明性に十分に優れた透明保護フィルムが得られないおそれがある。
【0040】
前記(メタ)アクリル系樹脂において、一般式(2)で表される単位の含有量は、好ましくは、50〜95モル%であり、より好ましくは、55〜90モル%であり、さらに好ましくは、60〜85モル%であり、特に好ましくは、65〜80モル%であり、最も好ましくは、65〜75モル%である。この単位の含有量が50モル%よりも少ないと、一般式(2)で表される単位に由来して発現される効果(例えば、耐熱性及び透明性に優れた透明保護フィルムが得られるという効果)が十分に発揮されないおそれがある。また、前記単位の含有量が95モル%を超えると、樹脂が脆くて割れやすくなり、機械的強度に十分に優れた透明保護フィルムが得られないおそれがある。
【0041】
前記一般式(1)で表される単位は、下記一般式(3)で表される単位に含まれていることが好ましい。
【化5】

【0042】
ただし、上記一般式(3)中のR及びRは、一般式(1)のR及びRと同様である。
前記一般式(1)及び(3)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基が好ましく、さらに、R及びRは、いずれもメチル基がより好ましい。
【0043】
前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位及び一般式(2)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有する(メタ)アクリル系樹脂は、一般には、以下の方法によって製造することができる。
【0044】
まず、一般式(2)で表される単位に対応する(メタ)アクリル酸エステル単量体と、不飽和カルボン酸単量体と、を共重合することにより、共重合体(a)を合成する。次に、この共重合体(a)を加熱することにより、共重合体(a)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体の構造単位と不飽和カルボン酸単量体の構造単位の分子内環化反応を行う。この反応によって、一般式(1)で表されるグルタル酸無水物の単位を前記共重合体(a)中に導入できる。このようにして上記(メタ)アクリル系樹脂を製造できる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱安定性に優れることから、(メタ)アクリル酸メチルを用いることが好ましく、更に、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0046】
不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α―置換アクリル酸、α―置換メタクリル酸などが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、不飽和カルボン酸単量体は、アクリル酸、又はメタクリル酸が好ましい。
【0047】
共重合体(a)を合成する際の重合方法は、基本的には、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。
なお、共重合体(a)の合成において、(メタ)アクリル酸エステル単量体の配合割合は、配合した単量体の総和を100質量%とした場合、好ましくは55〜85質量%であり、より好ましくは60〜80質量%である。また、不飽和カルボン酸単量体の配合割合は、配合した単量体の総和を100質量%とした場合、好ましくは15〜45質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。不飽和カルボン酸単量体の配合割合を15〜45質量%とすることによって、共重合体(a)を加熱して得られる、前記一般式(1)で表される単位の含有量が上記5〜50モル%となる。
【0048】
共重合体(a)の分子内環化反応としては、脱アルコール反応、脱水反応、及びこれらの複合反応などが挙げられる。分子内環化反応を行う際の共重合体(a)の加熱方法は、特に限定されない。この方法としては、例えば、ベントを有する加熱した押出機に共重合体(a)を通す方法、或いは、窒素気流中または減圧下で加熱脱気できる装置内で共重合体(a)を加熱する方法が好ましい。
【0049】
前記(メタ)アクリル系樹脂の分子中には、一般式(1)で表される単位及び一般式(2)で表される単位以外の構造単位(以下、他の構造単位という場合がある)を含んでいてもよい。
なお、上記他の構造単位とは、一般式(1)〜(3)のいずれにも属さない構造を有しており、好ましくは、ビニル単量体である。
【0050】
上記他の構造単位としては、例えば、前記分子内環化反応に関与していない、不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位が挙げられる。この不飽和カルボン酸の構造単位の含有量は、0〜10質量%であり、好ましくは0〜5質量%であり、より好ましくは0〜1質量%である。この他の構造単位を10質量%以下とすることによって、耐熱性及び透明性に優れた透明保護フィルムが得られ得る。
【0051】
加えて、上記他の構成単位としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び/又は不飽和カルボン酸と共重合可能な、他のビニル系単量体由来の構造単位などが挙げられる。前記他のビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アリルグリシジルエーテル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、N−ビニルエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、2−イソプロペニルオキサゾリン、2−ビニルオキサゾリン、2−アクリロイルオキサゾリン、2−スチリルオキサゾリン、N−フェニルマレイミド、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は、2種以上を併用してもよい。
【0052】
前記他のビニル系単量体の中でも、スチレンやα―メチルスチレンなどのスチレン系単量体が好ましい。前記共重合体(a)の合成において、前記スチレン系単量体の配合割合は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と不飽和カルボン酸単量体の合計量に対して、好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0〜0.1質量%である。スチレン系単量体由来の構造単位が導入された(メタ)アクリル系樹脂を製膜することにより、等方性及び透明性などに優れた透明保護フィルムが得られ得る。
【0053】
前記(メタ)アクリル系樹脂の質量平均分子量(重量平均分子量とも呼ばれる)は、好ましくは1000〜2000000であり、より好ましくは5000〜1000000であり、さらに好ましくは10000〜500000であり、特に好ましくは50000〜500000であり、最も好ましくは60000〜150000である。質量平均分子量が上記範囲から外れた(メタ)アクリル系樹脂を用いると、本発明の効果を十分に発揮しないおそれがある。
【0054】
前記(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは110℃以上であり、より好ましくは115℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上であり、特に好ましくは125℃以上であり、最も好ましくは130℃以上である。Tgが110℃以上である前記(メタ)アクリル系樹脂を製膜することにより、耐熱性及び耐久性に優れた透明保護フィルムが得られ得る。前記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は、特に限定されないが、成形加工性の観点から、好ましくは170℃以下である。なお、ガラス転移温度は、例えば、JIS K 7121(1987)に準じたDSC法によって求めることができる。
【0055】
本発明の透明保護フィルムの形成材料は、上記(メタ)アクリル系樹脂を主たる樹脂成分として含む。該形成材料を製膜することにより、本発明の透明保護フィルムを得ることができる。前記形成材料は、必要に応じて、(メタ)アクリル系樹脂の他に、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂と熱力学的に相溶し、得られる透明保護フィルムの透明性や機械強度を向上させる。
【0056】
透明保護フィルムの形成材料の樹脂成分中、前記(メタ)アクリル系樹脂の配合割合は、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは60〜100質量%であり、さらに好ましくは70〜100質量%であり、特に好ましくは80〜100質量%である。(メタ)アクリル系樹脂の配合割合が50質量%未満であると、等方性、耐熱性及び透明性などに優れた透明保護フィルムが得られないおそれがある。
【0057】
上記他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系樹脂;塩化ビニル等の含ハロゲン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル等の他のアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド系樹脂;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム;アクリル系ゴムを配合したABS樹脂;ASA樹脂等のゴム質重合体などが挙げられる。
【0058】
また、上記熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
上記他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で配合される。
さらに、透明保護フィルムの形成材料は、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤又は酸化防止剤;高級脂肪酸、酸エステル系、酸アミド系、高級アルコールなどの滑剤又は可塑剤;モンタン酸、及びその塩、そのエステル、そのハーフエステル、並びにステアリルアルコール、ステアラミド、エチレンワックスなどの離型剤;亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤;ハロゲン系の難燃剤、又はリン系やシリコーン系などの非ハロゲン系の難燃剤;アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤;顔料などの着色剤などが挙げられる。これらは、本発明の透明保護フィルムの特徴である、等方性及び透明性に影響を及ぼさない範囲で配合される。実用的には、前記添加剤の配合割合は、形成材料中、好ましくは10質量%以下である。
【0059】
さらに、透明保護フィルムの形成材料は、さらに、アクリル弾性体粒子を含んでいてもよい。該アクリル弾性体粒子を含む形成材料を製膜することにより得られる透明保護フィルムは、優れた靭性を有する。
前記アクリル弾性体粒子は、ゴム質重合体を含むことが好ましい。ゴム質重合体は、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチルなどのアクリル成分(原料モノマー)を必須成分とし、その他の好ましい任意成分(原料モノマー)を含んでいてもよい。前記任意成分としては、ジメチルシロキサンやフェニルメチルシロキサンなどのシリコーン成分;スチレンやα−メチルスチレンなどのスチレン成分;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのニトリル成分;ブタンジエンやイソプレンなどの共役ジエン成分;ウレタン成分;エチレン成分;プロピレン成分;イソブテン成分などが挙げられる。これらの任意成分の中でも、ゴム質重合体は、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。ゴム質重合体は、原料モノマーの1種を重合させた重合体、原料モノマーを2種以上(好ましくは、上記必須成分及び任意成分)共重合させた共重合体、又は、前記1種単独重合体及び前記2種以上の共重合体の混合物で構成される。より好ましくは、ゴム質重合体は、前記2種以上の共重合体である。かかる2種以上の共重合体から構成されるゴム質重合体は、例えば、アクリル成分及びシリコーン成分の共重合体、アクリル成分及びスチレン成分の共重合体、アクリル成分及び共役ジエン成分の共重合体、アクリル成分、シリコーン成分及びスチレン成分の3種の共重合体などが挙げられる。
なお、ゴム質重合体は、任意成分として、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、ブチレングリコールジアクリレートなどの架橋性成分を含んでいてもよい。
【0060】
ゴム質重合体は、アクリル成分とスチレン成分を含むものが好ましい。アクリル成分(特にアクリル酸ブチル)は、靱性向上に極めて効果的である。該アクリル成分にスチレン成分を共重合させたゴム質重合体を含むことによって、アクリル弾性体粒子の屈折率を調節することができる。
【0061】
前記アクリル弾性体粒子の屈折率と前記(メタ)アクリル系樹脂の屈折率は、その差が0.01以下であることが好ましい。かかる屈折率の差を有するアクリル弾性体粒子と(メタ)アクリル系樹脂を含む形成材料を製膜することにより、等方性及び透明性に優れた透明保護フィルムが得られ得る。前記屈折率の差を0.01以下とするための方法は、任意の適切な方法が採用され得る。この方法としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂の各単量体の含有割合を調整する方法、或いは、前記アクリル弾性体粒子において2種以上のゴム質重合体の配合比又はゴム質重合体の原料モノマーの組成比を調整する方法などが挙げられる。特に、アクリル成分とスチレン成分を共重合する際に、その共重合比率を調整することによって、(メタ)アクリル系樹脂との屈折率差が小さいアクリル弾性体粒子が得られ得る。
【0062】
アクリル弾性体粒子の平均粒子径は、好ましくは70nm〜300nmであり、より好ましくは100nm〜200nmである。平均粒子径が70nm以上のアクリル弾性体粒子を含む形成材料を製膜することにより、靱性、耐衝撃性に優れた透明保護フィルムが得られ得る。また、平均粒径が300nm以下のアクリル弾性体粒子を用いることにより、透明保護フィルムの耐熱性低下を抑制できる。
【0063】
上記アクリル弾性体粒子の配合割合は、形成材料中、40質量%以下であり、好ましくは7〜40質量%であり、より好ましくは12〜20質量%である。かかる配合割合のアクリル弾性体粒子を含む形成材料を製膜することにより、適度な柔軟性を有し、巻き取り性などの加工性及び耐熱性に優れた透明保護フィルムが得られ得る。
【0064】
本発明の透明保護フィルムは、上記(メタ)アクリル系樹脂等を含む形成材料を、溶融押出成形法や溶液キャスト法などで製膜することによって得ることができる。前記製膜後のフィルムに延伸処理を施すことにより、透明保護フィルムの強度を向上させることができる。なお、前記延伸処理により、透明保護フィルムに若干の位相差が生じる場合がある。もっとも、上記形成材料に位相差調整剤を添加しておけば、延伸処理によってフィルムに位相差が生じることを抑制できる。
【0065】
本発明の透明保護フィルムの厚みは、適宜に決定できる。その強度や取扱性等を考慮すると、透明保護フィルムの厚みは、1μm〜5000μmであり、好ましくは、1μm〜300μmであり、より好ましくは5μm〜200μmである。特に、偏光板を薄型化に形成できることから、透明保護フィルムの厚みは、5μm〜100μmが好ましい。
また、本発明の透明保護フィルムは、透湿度300g/m・24hr以下を満足するので、耐久性に優れている。透明保護フィルムの透湿度は、好ましくは250g/m・24hr以下であり、より好ましくは200g/m・24hr以下である。
なお、上記透明保護フィルムの表面には、必要に応じて表面処理を施してもよい。前記表面処理を施すことにより、透明保護フィルムと偏光子の接着性を向上させることができる。
前記表面処理の方法は、従来公知の方法を使用できる。該表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、火花処理などの電気的処理;低圧又は常圧下でのプラズマ処理;オゾン存在下又は非存在下での紫外線照射処理;クロム酸等による酸処理;アルカリけん化処理;火炎処理;シラン系プライマー、チタン系プライマーなどを塗布する処理;などが挙げられる。
また、透明保護フィルムの表面又は/及び裏面に、易接着層を設けてもよい。易接着層を設けることにより、金属化合物コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤との親和性を向上させることができる。前記易接着層は、透明保護フィルムに、共重合ポリエステル、ウレタン変性された共重合ポリエステル、カルボキシル基及び/又はスルフォン酸基を有する共重合ポリエステル、ポリビニルアルコールなどの溶液又は水分散液などを塗布し、乾燥することによって形成できる。また、前記易接着層は、透明保護フィルムに、セルロースエステル樹脂などの樹脂層を形成し、この樹脂層にアルカリけん化処理を施すことによって形成することもできる。
【0066】
(偏光子について)
本発明の偏光板に用いられる偏光子は、特に限定されず、従来公知の偏光子を用いることができる。該偏光子としては、例えば、二色性物質で染色された染色延伸フィルムや、吸収二色性を有する液晶性化合物を製膜した液晶フィルムなどが挙げられる。
金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤を介して、透明保護フィルムと適切に接着できることから、偏光子は、好ましくは上記染色延伸フィルムが用いられる。
【0067】
上記染色延伸フィルムは、一般に、ヨウ素又は二色性染料を含有する親水性樹脂を主成分とするフィルムを延伸した延伸フィルムである。
前記親水性樹脂を主成分とするフィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム、及びこれらの部分ケン化物フィルムなどが挙げられる。また、これらの他にも、ポリビニルアルコールの脱水処理物フィルムやポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルムなども使用できる。これらの中でも、二色性物質による染色性に優れていることから、ポリビニルアルコール系フィルムが好ましい。ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して得られる樹脂である。さらに、ポリビニルアルコール系フィルムには、前記ポリビニルアルコールに、不飽和カルボン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩などのように酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有した樹脂フィルムも含まれる。
染色延伸フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂などを主成分とする長尺状の未延伸フィルムを膨潤させる膨潤工程、前記フィルムにヨウ素などの二色性物質を含浸させる染色工程、ホウ素を含む架橋剤で架橋する架橋工程、及び所定の倍率で延伸する延伸工程、などの各工程を有する製造方法によって得ることができる。偏光子の厚みは、適宜、適切な値が選択される。一般には、偏光子の厚みは、好ましくは5μm〜50μmであり、より好ましくは10μm〜30μmである。
【0068】
(複屈折層について)
本発明の偏光板に用いられる複屈折層は、従来公知のものを用いることができる。視野角特性に優れた偏光板を構成できることから、波長が大きくなるに従い位相差値が大きくなる光学特性を有する複屈折層を用いることが好ましい。かかる光学特性は、逆波長分散性とも呼ばれる(以下、この光学特性を「逆波長分散性」という場合ある)。このような逆波長分散性の複屈折層は、その面内の位相差値(Re(λ))及び/又は厚み方向の位相差値(Rth(λ))が、次の関係を満たす。Re(450)<Re(550)<Re(650)。Rth(450)<Rth(550)<Rth(650)。
上記複屈折層のRe(450)とRe(550)の比(Re(450)/Re(550))は、好ましくは0.95以下であり、より好ましくは0.70〜0.90であり、さらに好ましくは0.75〜0.90であり、特に好ましくは0.80〜0.90である。
上記複屈折層のRe(650)とRe(550)の比(Re(650)/Re(550))は、好ましくは1.05以上であり、より好ましくは1.05〜1.20であり、さらに好ましくは1.05〜1.15であり、特に好ましくは1.05〜1.10である。
【0069】
上記複屈折層のRe(590)は、例えば、複屈折層の厚みを調整するなどの方法によって、適宜設計することができる。複屈折層のRe(590)は、好ましくは80nm〜220nmであり、より好ましくは100nm〜200nmであり、さらに好ましくは110nm〜180nmである。
上記複屈折層のNz係数は、好ましくは1〜2であり、より好ましくは1.0〜1.8であり、さらに好ましくは1.0〜1.5である。
上記光学特性(Re(λ)、Rth(λ)及びNz係数)を有する複屈折層を用いることにより、偏光子の軸ずれ及び液晶セルの厚み方向位相差を良好に補償できる偏光板が得られ得る。
【0070】
上記複屈折層は、その屈折率楕円体がnx>ny=nz、又はnx>ny>nzであることが好ましい。特に、複屈折層は、上記逆波長分散性を有し、光学的二軸性(例えば、屈折率楕円体がnx>ny>nz)であることが好ましい。かかる複屈折層を用いることにより、偏光子の軸ずれ及び液晶セルの厚み方向位相差を良好に補償できる偏光板が得られ得る。
複屈折層の厚みは、その位相差値などを設計する上で適宜調整されるが、通常、1μm〜150μmの範囲であり、好ましくは5μm〜150μmであり、より好ましくは5μm〜120μmであり、さらに好ましくは10〜100μmである。
【0071】
上記複屈折層の形成材料は、特に限定されない。好ましくは、形成材料自体が、逆波長分散性を示すものが好ましい。
【0072】
複屈折層の形成材料としては、例えば、非液晶性材料、特に非液晶性ポリマーが好ましい。このような非液晶性材料は、液晶性材料とは異なり、それ自身の性質により、nx>nz、又はny>nzという光学的一軸性を有するフィルムを形成できる。さらに、このフィルムに延伸処理などを施すことによって、nx>ny>nzなどの光学的二軸性を有するフィルムが得られ得る。
【0073】
逆波長分散性を有する複屈折層の形成材料としては、変性されたセルロース系樹脂、変性されたポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。該樹脂を含むフィルムは、逆波長分散性を示す。このフィルムに延伸処理を施すことにより、nx>ny>nzなどの光学的二軸性を有するフィルムが得られ得る。
【0074】
上記セルロース系樹脂としては、例えば、特開2002−82225号公報の段落[0106]〜[0112]などに記載されたセルロース系樹脂や、特許第3450779号公報の段落[0021]〜[0034]に記載されたセルロース系樹脂などが挙げられる。
【0075】
また、アセチル基及びプロピオニル基で置換されているセルロース系樹脂を用いることもできる。このセルロース系ポリマーにおいて、アセチル基の置換の程度は、「アセチル置換度(DSac)」で示され得る。前記アセチル置換度(DSac)は、セルロースの繰り返し単位中に存在する3個の水酸基が、アセチル基で平均してどれだけ置換されているかを示す指標である。上記セルロース系樹脂において、プロピオニル基の置換の程度は、「プロピオニル置換度(DSpr)」で示され得る。前記プロピオニル置換度(DSpr)は、セルロースの繰り返し単位中に存在する3個の水酸基が、プロピオニル基で平均してどれだけ置換されているかを示す指標である。アセチル置換度(DSac)及びプロピオニル置換度(DSpr)は、特開2003−315538号公報の[0016]〜[0019]に記載の方法により求めることができる。
【0076】
上記セルロース系樹脂としては、アセチル置換度(DSac)及びプロピオニル置換度(DSpr)が、2.0≦DSac+DSpr≦3.0を満たすものが用いられる。前記DSac+DSprの下限値は、好ましくは2.3以上、より好ましくは2.6以上である。前記DSac+DSprの上限値は、好ましくは2.9以下であり、より好ましくは2.8以下である。
【0077】
上記セルロース系樹脂としては、プロピオニル置換度(DSpr)が、1.0≦DSpr≦3.0を満たすものが用いられる。前記DSprの下限値は、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上である。前記DSprの上限値は、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8以下である。
上記セルロース系樹脂は、アセチル基及びプロピオニル基以外の他の置換基を有していてもよい。前記他の置換基としては、例えば、エステル基、アルキルエーテル基、アルキレンエーテル基等のエーテル基などが挙げられる。
上記セルロース系樹脂の数平均分子量は、好ましくは5千〜10万、より好ましくは1万〜7万である。
【0078】
また、変性されたポリビニルアルコール系樹脂としては、下記一般式(4)又は一般式(5)で表される側鎖の少なくとも何れか一方の側鎖を有するポリマーが挙げられる。
【0079】
【化6】

【0080】
上記一般式(4)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を表す(ただし、R及びR10は、同時に水素原子ではない)。R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。
【0081】
【化7】

【0082】
上記一般式(5)中、R11は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Aは、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を表す。ナフチル基、アントラニル基、又はフェナントレニル基を構成する炭素原子のうち1以上の炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい。
【0083】
また、変性されたポリビニルアルコール系樹脂としては、下記一般式(6)で表される繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。
【0084】
【化8】

【0085】
上記一般式(6)中、R12は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を表す。R13、A及びAは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、シアノ基、又は水酸基を表す(ただし、R13は、水素原子ではない)。
【0086】
上記一般式(4)〜(6)のいずれかを有するポリマーを含むフィルムは、逆波長分散を示す。このポリマーを用いたフィルムに関しては、特開2006−65258号公報の段落[0060]〜[0084]、及び特開2007−161993号公報の段落[0029]〜[0087]などに記載されている。上記公報に記載事項を本明細書中に記載したとみなして、その記載事項を省略する。
【0087】
上記複屈折層は、上記非液晶性ポリマーを含む形成材料を任意の適切な成形法によってフィルムを作製(製膜)し、必要に応じて、このフィルムに延伸処理を施すことによって得られる。該成形法としては、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、ソルベントキャスティング法等が挙げられる。好ましくは、成形法は、ソルベントキャスティング法または押出成形法である。前記ソルベントキャスティング法は、例えば、非液晶性ポリマーや他の成分(添加剤等)を含む形成材料が溶剤に溶解された濃厚溶液(ドープ)を、脱泡した後、エンドレスステンレスベルトまたは回転ドラムの表面に流延し、溶剤を蒸発させてフィルムを成形する方法である。また、前記押出成形法は、例えば、上記形成材料を加熱溶融し、Tダイ等を用いて、キャスティングロールの表面に押出して、冷却させてフィルムを成形する方法である。上記の方法を採用することによって、厚みの均一性に優れた複屈折層が得られ得る。
【0088】
上記延伸処理は、目的に応じて、任意の適切な延伸方法が採用され得る。延伸方法としては、例えば、縦一軸延伸法、横一軸延伸法、縦横同時二軸延伸法、縦横逐次二軸延伸法等が挙げられる。これを実施する延伸機としては、ロール延伸機、テンター延伸機、二軸延伸機などが挙げられる。好ましくは、前記延伸機は、温度制御手段を備える。加熱して延伸を行なう場合には、延伸機の内部温度は連続的に変化させてもよく段階的に変化させてもよい。延伸方向は、フィルムの長手方向(MD方向)であってもよいし、フィルムの幅方向(TD方向)であってもよい。また、特開2003−262721号公報の図1に記載の延伸法を用いて、斜め方向に延伸(斜め延伸)してもよい。
【0089】
延伸する温度(延伸温度)は、フィルムの種類に応じて、適宜設定される。好ましくは、延伸は、フィルムのガラス転移温度(Tg)±30℃の範囲で実施することが好ましい。このような条件で延伸することによって、位相差値が均一なフィルムが得られる上、フィルムの結晶化(白濁)を防止できる。具体的には、上記延伸温度は、好ましくは100℃〜180℃であり、さらに好ましくは120℃〜160℃である。
【0090】
上記延伸温度を制御する手段としては、特に限定されず、例えば、熱風または冷風が循環する空気循環式恒温オーブン、マイクロ波または遠赤外線を利用したヒーター、温度調節用に加熱されたロール、加熱されたヒートパイプロール、加熱された金属ベルトなどが挙げられる。
【0091】
上記フィルムの延伸倍率は、目的に応じて、適宜設定される。該延伸倍率は、好ましくは1倍を超え3倍以下であり、さらに好ましくは1倍を超え2.5倍以下であり、特に好ましくは1.1倍〜2.0倍である。また、延伸時の送り速度は、特に限定されないが、機械精度や安定性等の点から、好ましくは0.5m/分〜30m/分である。
【0092】
なお、上記アセチル基及びプロピオニル基で置換されたセルロース系樹脂を含むフィルムは、逐次二軸延伸法で延伸処理を実施することが好ましい。かかるセルロース系樹脂を含むフィルムは、二軸延伸することにより、光学的二軸性を示すフィルムとなる。該逐次二軸延伸法は、フィルムを長手方向(又は幅方向)に延伸した後、幅方向(又は長手方向)に延伸する。
【0093】
(ポリビニルアルコール系接着剤について)
本発明の偏光板に用いられる金属化合物コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂及び金属化合物コロイドを含む樹脂溶液であり、さらに、架橋剤を含む。前記金属化合物コロイドは、その平均粒子径が1nm〜100nmであることが好ましい。
【0094】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。前記アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、日本合成化学(株)製の商品名「ゴーセノールZシリーズ」、同社製の商品名「ゴーセノールNHシリーズ」、同社製の商品名「ゴーセファイマーZシリーズ」などが挙げられる。
【0095】
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニルのケン化物及びその誘導体;酢酸ビニルと、それと共重合し得る単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコール;などが挙げられる。前記共重合し得る単量体としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等を含むα−オレフィン;アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムモノアルキルマレート、ジスルホン酸ナトリウムアルキルマレート、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩などのスルホン酸基含有モノマー;N−メチロールアクリルアミド;N−ビニルピロリドン及びその誘導体などが挙げられる。
【0096】
前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、接着性の観点から、好ましくは100〜5000であり、より好ましくは1000〜4000である。前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、接着性の観点から、好ましくは85〜100モル%であり、より好ましくは90〜100モル%である。
【0097】
前記アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。具体的には、例えば、(a)酢酸等の溶媒中にポリビニルアルコール系樹脂を分散させた分散体に、ジケテンを添加する方法、(b)ジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にポリビニルアルコール系樹脂を溶解させた溶液に、ジケテンを添加する方法、(c)ポリビニルアルコール系樹脂にジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法などが挙げられる。
【0098】
前記アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、例えば、0.1モル%以上である。前記アセトアセチル基変性度が前記範囲の変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることにより、より耐水性に優れた接着剤が得られ得る。前記アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%であり、より好ましくは1〜20モル%であり、特に好ましくは2〜7モル%である。前記アセトアセチル基変性度は、例えば、核磁気共鳴(NMR)法により測定した値である。
【0099】
上記架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を採用し得る。前記架橋剤は、好ましくは、前記ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物である。架橋剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基とを2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニル)メタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのケトオキシムブロック物又はフェノールブロック物などのイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどのエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどのモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒドなどのジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物などのアミノホルムアルデヒド樹脂;ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属の塩、及びその酸化物などが挙げられる。これらの中でも、アミノホルムアルデヒド樹脂及びジアルデヒド類が好ましい。前記アミノホルムアルデヒド樹脂としては、メチロール基を有する化合物が好ましい。前記ジアルデヒド類としては、グリオキザールが好ましい。中でも、メチロール基を有する化合物が好ましく、メチロールメラミンが特に好ましい。前記アルデヒド化合物としては、日本合成化学(株)製の商品名「グリオキザール」、OMNOVA製の商品名「セクアレッツ755」などが挙げられる。前記メチロール化合物としては、大日本インキ(株)製の商品名「ウォーターゾールシリーズ」などが挙げられる。
【0100】
前記架橋剤の配合割合は、前記ポリビニルアルコール系樹脂(好ましくは、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂)100質量部に対して、例えば、1〜60質量部である。架橋剤の配合量が前記範囲の接着剤は、透明性、接着性、耐水性に優れた接着層を形成できる。架橋剤の配合割合の上限値は、好ましくは50質量部であり、より好ましくは30質量部であり、更に好ましくは15質量部であり、特に好ましくは10質量部であり、最も好ましくは7質量部である。前記配合量の下限値は、好ましくは5質量部であり、より好ましくは10質量部であり、更に好ましくは20質量部である。なお、本発明のポリビニルアルコール系接着剤は、金属化合物コロイドが含有されているので、架橋剤が多く配合されている場合であっても、安定性に優れている。
【0101】
次に、上記金属化合物コロイドは、例えば、微粒子が分散媒中に分散しているものでもよく、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的に安定化し、永続的に安定性を有するものでもよい。前記金属化合物の微粒子(コロイド)の平均粒子径は、特に制限されないが、好ましくは1nm〜100nmであり、より好ましくは1nm〜50nmである。かかる平均粒子径の金属化合物コロイドは、分散媒中に略均一に分散し得るので、該コロイドが含有された接着剤は、接着性に優れ、且つ透明保護フィルムと偏光子の界面でのクニックの発生を抑制できる。
【0102】
前記金属化合物は、任意の適切な化合物を採用できる。前記金属化合物としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物;ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウムなどの金属塩;セライト、タルク、クレイ、カオリン等の鉱物などが挙げられる。金属化合物は、好ましくはアルミナである。
【0103】
前記金属化合物コロイドは、例えば、前記金属化合物が分散媒に分散したコロイド溶液中に存在している。前記分散媒としては、例えば、水、アルコール類等が挙げられる。前記コロイド溶液中の固形分濃度は、例えば、1〜50質量%である。前記コロイド溶液は、安定剤として酸(例えば、硝酸、塩酸、酢酸等)を含んでいてもよい。
【0104】
金属化合物コロイドは、静電的に安定しており、正電荷を有するコロイドと負電荷を有するコロイドに分けられる。正電荷と負電荷は、コロイド溶液におけるコロイド表面電荷の電荷状態によって区別される。金属化合物コロイドの電荷は、例えば、ゼータ電位を測定することにより確認できる。金属化合物コロイドの表面電荷は、一般に、pHにより変化する。従って、コロイド溶液の電荷は、調製された接着剤(樹脂溶液)のpHに影響される。接着剤のpHは、通常、2〜6であり、好ましくは2.5〜5であり、より好ましくは3〜5であり、さらに好ましくは3.5〜4.5に設定される。本発明において、正電荷を有する金属化合物コロイドを含む接着剤は、負電荷を有する金属化合物コロイドを含む接着剤に比べて、クニックの発生をより抑制できる。正電荷を有する金属化合物コロイドとしては、アルミナコロイド、チタニアコロイドなどが挙げられ、特に、アルミナコロイドが好ましい。
【0105】
前記金属化合物コロイドの配合割合(固形分換算)は、前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、好ましくは、200質量部以下である。前記配合割合の接着剤は、接着性を確保しながら、より好適にクニックの発生を抑制できる。前記配金属化合物コロイドの配合割合は、より好ましくは10〜200質量部であり、さらに好ましくは20〜175質量部であり、特に好ましくは30〜150質量部である。
【0106】
上記金属コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤(樹脂溶液)の粘度は、特に限定されないが、好ましくは1〜50mPa・sである。一般に、接着剤の粘度が下がるに従って、クニックの発生が多くなるが、本発明のポリビニルアルコール系接着剤は、前記のような比較的低粘度でも、クニックの発生を抑制できる。
【0107】
上記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂及び架橋剤を分散媒に混合し、これに金属化合物を配合することによって調製される。さらに、前記ポリビニルアルコール系接着剤中には、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などが含まれていてもよい。なお、本発明の金属化合物コロイドは、非導電性材料であるが、該コロイドに、導電性物質の微粒子を含有することもできる。
【0108】
金属コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤の塗布は、偏光子又は透明保護フィルムのいずれの接着面に行ってもよく、又、偏光子及び透明保護フィルムの双方の接着面に行ってもよい。前記接着剤は、乾燥厚み10nm〜300nmとなるように塗布され、好ましくは同10nm〜200nmであり、より好ましくは同20nm〜150nmである。
【実施例】
【0109】
つぎに、本発明の実施例及び比較例を示す。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例によって限定されるものではない。
下記実施例及び各比較例における各種測定等は、下記の方法で行った。
(1)Re(λ)、nx、ny及びnzの測定:
王子計測機器(株)製、商品名「KOBRA21−ADH」を用いて、23℃で各波長λnmにおいて測定した。なお、平均屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ(株)製、製品名「DR−M4」)を用いて測定した値を用いた。
(2)厚みの測定:
厚みが10μm未満の場合、大塚電子(株)製の薄膜用分光光度計(製品名「瞬間マルチ側光システム MCPD−2000」)を用いて厚みを測定した。厚みが10μm以上の場合、アンリツ(株)製のデジタルマイクロメータ(「KC−351C型」)を用いて厚みを測定した。
(3)接着剤の粘度の測定:
粘度は、レオメーター(HAAKE社製、RSI−HS)を用いて測定した。
(4)コロイドの平均粒子径平均粒子径の測定:
コロイドの平均粒子径は、粒度分布計(日機装社製、ナノトラックUPA150)を用いて測定した。
【0110】
(複屈折層(A)の製造例)
特開2007−161993号公報の[0103]〜[0106]の実施例3に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂(同公報の式(XI)で表されるポリマー)を準備した。この樹脂をジクロロメタンに溶解し、この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム製基材(厚み70μm)上にキャストし、乾燥することによって厚み110μmの樹脂フィルムを形成した。この樹脂フィルムを前記基材から剥離した後、140℃で2倍に幅方向に自由端延伸した。この延伸後の樹脂フィルムを、複屈折層(A)として用いた。複屈折層(A)(延伸後の樹脂フィルム)の厚みは50μmであった。また、複屈折層(A)の屈折率楕円体は、nx>ny=nz(Nz=1.00)であり、複屈折層(A)のRe(590)は、140nmであった。
さらに、複屈折層(A)のRe(480)は、132nm、Re(680)は、142nmであった。従って、複屈折層(A)は、Re(480)<Re(590)<Re(680)の関係を満足していた。
【0111】
(複屈折層(B)の製造例)
上記複屈折層(A)の製造例と同様にして、基材上に厚み110μmの樹脂フィルムを形成した。この樹脂フィルムを基材から剥離した後、140℃で2倍に幅方向に固定端延伸した。この延伸後の樹脂フィルムを、複屈折層(B)として用いた。複屈折層(B)(延伸後の樹脂フィルム)の厚みは50μmであった。また、複屈折層(B)の屈折率楕円体は、nx>ny>nz(Nz=1.10)であり、複屈折層(B)のRe(590)は、140nmであった。
さらに、複屈折層(B)のRe(480)は、132nm、Re(680)は、142nmであった。従って、複屈折層(B)は、Re(480)<Re(590)<Re(680)の関係を満足していた。
【0112】
(複屈折層(C)の製造例)
特開2003−315538号公報に記載のセルロース系フィルム(厚み80μm、アセチル置換度=0.04、プロピオニル置換度=2.76)を、延伸機を用いて140℃で1.6倍に自由端延伸した。この延伸後のセルロース系フィルムを、複屈折層(C)として用いた。複屈折層(C)(延伸後のセルロース系フィルム)の厚みは50μmであった。また、複屈折層(C)の屈折率楕円体は、nx>ny>nz(Nz=1.08)であり、複屈折層(C)のRe(590)は、88nmであった。
さらに、複屈折層(C)のRe(480)は、83nm、Re(680)は、90nmであった。従って、複屈折層(C)は、Re(480)<Re(590)<Re(680)の関係を満足していた。
【0113】
(偏光子(A)の製造例)
厚み75μmのポリビニルアルコール系樹脂を主成分とするフィルム(クラレ(株)製、商品名「VF−PS♯7500」)を下記[1]〜[5]の条件の5浴に、フィルムの長手方向に張力を付与しながら浸漬し、最終的な延伸倍率がフィルム元長に対し、6.2倍になるように延伸した。下記[5]の水洗処理後の延伸フィルムを、40℃の空気循環式オーブン内で1分間乾燥させた。得られた延伸フィルムを、偏光子(A)として用いた。
[1]膨潤浴:30℃の純水。
[2]染色浴:水100質量部に対し、0.032質量部のヨウ素と、水100質量部に対し、0.2質量部のヨウ化カリウムとを含む、30℃の水溶液。
[3]第1の架橋浴:3質量%のヨウ化カリウムと、3質量%のホウ酸とを含む、40℃の水溶液。
[4]第2の架橋浴:5質量%のヨウ化カリウムと、4質量%のホウ酸とを含む、60℃の水溶液。
[5]水洗浴:3質量%のヨウ化カリウムを含む、25℃の水溶液。
【0114】
(透明保護フィルム(A)の製造例)
(a)(メタ)アクリル系樹脂の製造
メタクリル酸メチル:20質量部、アクリルアミド:80質量部、過硫酸カリウム:0.3質量部、及びイオン交換水:1500質量部を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら、単量体が完全に重合体に転化するまで70℃に保ち反応を進行させた。これによって、懸濁液を得た。前記懸濁液:0.05質量部とイオン交換水:165質量部とを、容量5リットルのバッフル及びファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに供給し、反応系内を窒素ガスで置換しながら400rpmで撹拌した。次に、メタクリル酸:27質量部、メタクリル酸メチル:73質量部、t−ドデシルメルカプタン:0.4質量部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:0.2質量部の混合物を、撹拌しながら前記反応系に添加した。
【0115】
上記混合物を添加後、70℃まで昇温し、内温が70℃に達した時点を重合開始時点として、それを180分間保ち、重合を進行させた。その後、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体を得た。この共重合体の重合度は98%であり、質量平均分子量は13万であった。
なお、得られた共重合体を、日本製鋼社製の2軸押出機「TEX30」(L/D=44.5)を用いて、下記条件で、分子内環化反応を行い、ペレット状の(メタ)アクリル系樹脂を得た。分子内環化反応は、前記2軸押出機のホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数100rpm、原料供給量5kg/時間、シリンダ温度290℃の条件で行った。
得られた(メタ)アクリル系樹脂のグルタル酸無水物単位は、30モル%であり、メタクリル酸メチル単位は、69モル%であり、メタクリル酸単位は、1モル%であった。また、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、128℃であった。
【0116】
(b)アクリル弾性体粒子の製造
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に初期調整溶液として下記材料を添加した。
脱イオン水:120質量部。
炭酸カリウム:0.5質量部。
スルホコハク酸ジオクチル:0.5質量部。
過硫酸カリウム:0.005質量部。
【0117】
上記初期調整溶液を窒素雰囲気下で撹拌しながら、アクリル酸ブチル:53質量部、スチレン:17質量部、及びメタクリル酸アリル(架橋剤):1質量部の混合物を添加して、70℃で30分間反応させて、ゴム質重合体を得た。
引き続き撹拌しながら、メタクリル酸メチル:21質量部、メタクリル酸:9質量部、及び過硫酸カリウム:0.005質量部の混合物を、70℃、90分間で連続的に添加した。添加終了後、さらに90分間保持して、シェル層を形成した。
上記重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、コアシェル型のアクリル弾性体粒子を得た。前記アクリル弾性体粒子のゴム質重合体部分の平均粒子径は、140nmであった。なお、平均粒子径は、電子顕微鏡で測定した。また、アクリル弾性体粒子と上記(メタ)アクリル系樹脂との屈折率差は、0.002であった。
【0118】
(c)(メタ)アクリル系樹脂含有組成物の製造
上記(メタ)アクリル系樹脂:80質量部、上記コアシェル型のアクリル弾性体粒子:20質量部、NaOCH:0.2質量部を配合し、日本製鋼社製の2軸押出機「TEX30」(L/D=44.5)を用いて、下記条件で、分子内環化反応を行い、ペレット状の(メタ)アクリル系樹脂含有組成物を得た。分子内環化反応は、前記2軸押出機のホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数100rpm、原料供給量5kg/時間、シリンダ温度290℃の条件で行った。
得られた(メタ)アクリル系樹脂含有組成物のグルタル酸無水物単位は、30モル%であり、メタクリル酸メチル単位は、69モル%であり、メタクリル酸単位は、1モル%であった。
【0119】
(d)透明保護フィルムの製造
上記(メタ)アクリル系樹脂含有組成物:50質量部を、2−ブタノン:150質量部に添加して、ダブルヘリカルリボン撹拌翼を用い、150rpm、50℃で8時間の撹拌を行い、樹脂濃度25質量%の溶液を得た。次に、濾過精度1μmの焼結金属フィルターで、この溶液を加圧濾過することによって、製膜原液を得た。
前記製膜原液を、ガラス板(厚み1.5mm)に両面テープで固定した基材(厚み100μmのPETフィルム)上に、乾燥後のフィルム厚みが80μmとなるようにバーコーターを用いて均一に塗工した。次に、熱風オーブンを用いて、以下の乾燥条件で乾燥を行った。
初期乾燥:50℃/10分。
2次乾燥:80℃/10分。
3次乾燥:120℃/20分。
4次乾燥:140℃/20分。
最終乾燥:170℃/40分。
【0120】
上記最終乾燥後のフィルムを基材から剥離して、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得た。この(メタ)アクリル系樹脂フィルムを、透明保護フィルム(A)として用いた。この透明保護フィルム(A)のRe(590)は、0nmであり、Rth(590)は、0nmであった。従って、透明保護フィルム(A)は、極めて等方性に優れたフィルムである。
【0121】
(接着剤(A)の製造例)
アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセファイマーZ200」。平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%、アセトアセチル化度:5モル%):100質量部と、メチロールメラミン:50質量部を、30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7質量%の水溶液を得た。
この水溶液:100質量部に、アルミナコロイド水溶液(平均粒子径15nm、固形分濃度10%、正電荷):18質量部を加えた。得られた溶液(金属化合物コロイドを含むポリビニルアルコール系接着剤)を、接着剤(A)として用いた。この接着剤(A)の粘度は、9.6mPa・sであり、pHは、4〜4.5であった。
【0122】
(接着剤(B)の製造例)
アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセファイマーZ200」。平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%、アセトアセチル化度:5モル%):100質量部と、メチロールメラミン:50質量部を、30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7質量%の水溶液を得た。
得られた水溶液(ポリビニルアルコール系接着剤)を、接着剤(B)として用いた。
【0123】
[実施例1]
上から順に、上記透明保護フィルム(A)と、上記接着剤(A)を塗布した第1接着層(乾燥厚み0.3μm)と、上記偏光子(A)と、上記接着剤(A)を塗布した第2接着層(乾燥厚み0.3μm)と、上記複屈折層(A)と、を積層することによって、実施例1の偏光板を作製した(図1のような層構成)。
表1に、実施例及び比較例の各偏光板の層構成を示す。
【0124】
[実施例2]
複屈折層(A)に代えて、上記複屈折層(B)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2の偏光板を作製した。
【0125】
[実施例3]
複屈折層(A)に代えて、上記複屈折層(C)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例3の偏光板を作製した。
【0126】
[実施例4]
第2接着層の接着剤(A)に代えて、第2接着層の接着剤として上記接着剤(B)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例4の偏光板を作製した。
【0127】
[実施例5]
第2接着層の接着剤(A)に代えて、第2接着層の接着剤として上記接着剤(B)を用いたこと以外は、上記実施例2と同様にして、実施例5の偏光板を作製した。
【0128】
[実施例6]
第2接着層の接着剤(A)に代えて、第2接着層の接着剤として上記接着剤(B)を用いたこと以外は、上記実施例3と同様にして、実施例6の偏光板を作製した。
【0129】
[比較例1]
上から順に、上記透明保護フィルム(A)と、上記接着剤(B)を塗布した第1接着層(乾燥厚み0.3μm)と、上記偏光子(A)と、上記接着剤(B)を塗布した第2接着層(乾燥厚み0.3μm)と、上記複屈折層(A)と、を積層することによって、実施例1の偏光板を作製した。
【0130】
[比較例2]
複屈折層(A)に代えて、上記複屈折層(B)を用いたこと以外は、上記比較例1と同様にして、比較例2の偏光板を作製した。
【0131】
[比較例3]
複屈折層(A)に代えて、上記複屈折層(C)を用いたこと以外は、上記比較例1と同様にして、比較例3の偏光板を作製した。
【0132】
【表1】

【0133】
[評価]
市販の液晶テレビ(BanQ社製、32インチ液晶テレビ、商品名「DV3250」)から液晶パネルを取り出した。この液晶パネルの視認側及び反視認側に配置されている光学部材を綺麗に取り除くことによって、液晶パネルから液晶セルを取り出した。
【0134】
この液晶セルの反視認側(バックライト側)に、厚み12μmのアクリル系粘着剤を介して、市販の偏光板(日東電工(株)製、商品名「NIBCOM−NXP」)を貼り付けた。なお、この市販の偏光板は、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルムと、偏光子と、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルムと、厚み4μmのポリイミド系樹脂フィルム(Re(590)=55nm、Rth(590)=240nm)とが積層されている。
【0135】
上記液晶セルの視認側に、厚み12μmのアクリル系粘着剤を介して、実施例1〜6及び比較例1〜3の偏光板をそれぞれ貼り付け、試験用液晶パネルをそれぞれ作製した。
それぞれの試験用液晶パネルを、23℃の暗室でバックライト点灯から30分経過した後、画面を黒表示にした。この黒表示画面を目視によって観察し、画面中央部の500mm×500mmの範囲における、光抜けする箇所(クニック)の個数をカウントした。その結果を表1に併せて示す。
表1から明らかな通り、実施例1〜6の偏光板は、クニックの発生がない。一方、比較例1〜3の偏光板は、クニックの発生箇所が多く、実用上問題がある。従って、偏光子と透明保護フィルムが金属化合物コロイドを含有したポリビニルアルコール系接着剤で接着されている偏光板(実施例1〜6の偏光板)は、クニックの発生を抑制できる。一方、偏光子と透明保護フィルムが金属化合物コロイドを含有していないポリビニルアルコール系接着剤で接着されている偏光板(比較例1〜3の偏光板)は、クニックが多く発生する。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の偏光板の構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の液晶パネルの構成の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0137】
1 偏光板
2 透明保護フィルム
3 偏光子
4 複屈折層
5 第1接着層
6 第2接着層
9 液晶セル
11 第1偏光板
12 第2偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明保護フィルムと、偏光子と、複屈折層とが、この順で積層されている偏光板において、
前記透明保護フィルムが、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含み、
前記透明保護フィルムと偏光子が、金属化合物コロイドが含有されたポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わされていることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記複屈折層が、波長が大きくなるに従い位相差値が大きくなる光学特性を有する請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が、下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位、及び一般式(2)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有する請求項1または2に記載の偏光板。
【化1】

ただし、上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【化2】

ただし、上記一般式(2)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基を表す。Rは、置換若しくは無置換の炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の炭素数1〜5の脂環式炭化水素基を表す。
【請求項4】
前記金属化合物コロイドの平均粒子径が1nm〜100nmである請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコール系接着剤が、ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対し、前記金属化合物コロイドが200質量部以下含有されている請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板。
【請求項6】
前記金属化合物コロイドが、アルミナコロイドである請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコール系接着剤には、更に架橋剤が含有されている請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板。
【請求項8】
前記透明保護フィルムの波長590nmにおける面内の位相差値(Re(590))が、0nm〜10nmであり、波長590nmにおける厚み方向の位相差値(Rth(590))が、−10nm〜10nmである請求項1〜7のいずれかに記載の偏光板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の偏光板を備えることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−139525(P2009−139525A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314436(P2007−314436)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】