説明

偏波面制御アンテナ及び偏波面制御アンテナの校正方法

【課題】校正を安価に行うことができ、移動環境下における使用に適した偏波面制御アンテナを提供する。
【解決手段】偏波面制御アンテナは、設定された偏波角に基づき入力信号を2つの経路に分配する分配部と、分配部の出力と接続する第1の90度ハイブリッド、及び、第2の90度ハイブリッドを含むバランス回路と、第2の90度ハイブリッドの出力を直交する偏波で送信する偏波共用アンテナと、第1の90度ハイブリッドによる変換後の各信号の振幅及び位相を変化させる第1及び第2の振幅位相制御部と、分配部の偏波角の設定と、第1及び第2の振幅位相部の利得係数及び位相係数を設定する制御部と、第2の90度ハイブリッドの出力と接続し、該出力を流れる校正用信号を抽出する手段と、抽出した校正用信号のレベルを測定する手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムおける送信アンテナに関し、より詳しくは、例えば、移動体通信衛星等に使用される、電気的に偏波面を制御するアンテナと、該アンテナの校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的に偏波面を制御可能な偏波面制御アンテナは、所望の偏波面を形成するために、互いに直交する偏波用の各入力端子を、所定の振幅及び位相で励振する必要がある。偏波面制御アンテナにおけるビーム形成のための信号処理は、従来のフェーズドアレイアンテナと同様であり、経路数が2のフェーズドアレイアンテナの校正方法が、例えば、非特許文献1及び非特許文献2に記載されている。
【0003】
非特許文献1及び非特許文献2に記載の構成は、ビーム形成装置の通過特性を、等振幅及び等位相状態になる様に制御するものであり、図16に示す様に、ベクトルネットワークアナライザが、ビーム形成装置の入力端子と各素子アンテナ間の、通過振幅及び位相を順次測定して相対振幅及び位相を求め、その後、ビーム形成装置において、振幅及び位相誤差補償を行っている。
【0004】
【非特許文献1】澤田 他、“技術試験衛星VIII型(きく8号)通信系ミッションシステムのシステム試験概要報告”、第51回宇宙科学技術連合講演会、1J12、2007年10月
【非特許文献2】鈴木 他、“技術試験衛星VIII型搭載ビーム形成装置2型の概要と基本動作の確認”、第51回宇宙科学技術連合講演会、1J14、2007年10月
【非特許文献3】江上 他、“多端子電力合成系マルチビーム送信系”、電子情報通信学会論文誌、Vol.J69−B、No.2、pp.206−212
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術における方法は、通過振幅及び位相を測定するために、高価なマイクロ波帯の測定器、具体的には、図16に示すベクトルネットワークアナライザの他、信号発生器、スペクトラムアナライザ、周波数変換器、可変移相器、可変減衰器等を必要とする。さらに、アンテナを移動環境で使用する場合、これら測定器を常に具備しておかなければならないが、上記、ベクトルネットワークアナライザ等は一般的にその重量が重く、サイズも大きいという問題もある。
【0006】
したがって、本発明は、従来技術よりその校正を安価に行うことができ、移動環境下における使用に適した偏波面制御アンテナと、偏波面制御アンテナの校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における偏波面制御アンテナの校正方法によれば、
設定された偏波角に基づき、第1の入力端子から入力される信号を2つの経路に分配する分配部と、分配部により分配された各経路の信号を変換する第1の90度ハイブリッドと、第1の90度ハイブリッドにより変換された各経路の信号を再変換する第2の90度ハイブリッドと、第2の90度ハイブリッドが出力する各経路の信号を、それぞれ、直交する偏波で送信する偏波共用アンテナと、第1の90度ハイブリッドと第2の90度ハイブリッドの間に設けられ、各経路の信号の振幅及び位相を変化させる第1及び第2の振幅位相制御部とを備えている偏波面制御アンテナの校正方法であって、第1の入力端子に入力する校正用信号を、偏波共用アンテナの一方の入力端子にのみ入力させる偏波角の値を分配部に設定し、第1の振幅位相制御部及び第2の振幅位相制御部における位相変化量及び利得を同一に設定する第1のステップと、校正用信号を第1の入力端子に入力し、第1又は第2の振幅位相制御部が与える位相変化量を変更し、偏波共用アンテナの他方の入力端子に入力される校正用信号が最小になるときの第1及び第2の振幅位相制御部の位相変化量を、第1及び第2の振幅位相制御部に設定する第2のステップと、校正用信号を第1の入力端子に入力し、第1の振幅位相制御部の利得を1とした状態で、第2の振幅位相制御部の利得を0から1で変化させ、第2の振幅位相制御部の利得を1とした状態で、第1の振幅位相制御部の利得を0から1で変化させ、偏波共用アンテナの他方の入力端子に入力される校正用信号が最小になるときの第1及び第2の振幅位相制御部の利得を、第1及び第2の振幅位相制御部に設定する第3のステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の校正方法における他の実施形態によれば、
分配部は、第1の入力端子に入力される信号とは直交する偏波で送信する信号のための第2の入力端子を有し、第2の入力端子に入力される信号を、設定された偏波角に基づき前記2つの経路に分配し、前記第1のステップから第3のステップの実行後、校正用信号の入力先を第2の入力端子として、前記第1のステップから第3のステップを再度実行し、各実行において得られた第1及び第2の振幅位相制御部の利得及び位相変化量の平均値を、第1及び第2の振幅位相制御部に設定することも好ましい。
【0009】
また、本発明の校正方法における他の実施形態によれば、
偏波面制御アンテナは、偏波面制御アンテナは、分配部と第1の90度ハイブリッドの間、又は、第2の90度ハイブリッドと偏波共用アンテナの間に、各経路の信号の振幅及び位相を変化させる第3及び第4の振幅位相制御部を備えており、分配部は、第1の入力端子に入力される信号とは直交する偏波で送信する信号のための第2の入力端子を有し、第2の入力端子に入力される信号を、設定された偏波角に基づき前記2つの経路に分配し、互いに直交する2つの偏波の無線信号を受信してそれぞれ出力するための第1及び第2の出力端子を備えた校正用偏波共用アンテナを、偏波面制御アンテナに対向させ、校正用信号を第1の入力端子に入力し、第1の出力端子から出力される校正用信号が最大となる様に偏波角を設定する第4のステップと、校正用信号を第1の入力端子に入力し、第3又は第4の振幅位相制御部が与える位相変化量を変更し、第2の出力端子から出力される校正用信号が最小になるときの第3及び第4の振幅位相制御部の位相変化量を、第3及び第4の振幅位相制御部に設定する第5のステップと、校正用信号を第1の入力端子に入力し、0からπ/2の範囲において第2の出力端子から出力される校正用信号を最小とする偏波角を、第1の偏波角として求める第1のサブステップと、校正用信号を第1の入力端子に入力し、π/2からπの範囲において第1の出力端子から出力される校正用信号を最小とする偏波角からπ/2だけ減じた値を、第2の偏波角として求める第2のサブステップと、第1の偏波角と第2の偏波角の平均値に基づき第3及び第4の振幅位相制御部の利得を設定する第3のサブステップを、第1の偏波角と第2の偏波角の差が所定の閾値内となるまで繰り返す第6のステップとを含むことも好ましい。
【0010】
本発明における偏波面制御アンテナによれば、
設定された偏波角に基づき、第1の入力端子から入力される信号を2つの経路に分配する分配手段と、分配手段により分配された各経路の信号を変換する第1の90度ハイブリッド手段と、第1の90度ハイブリッド手段により変換された各経路の信号を再変換する第2の90度ハイブリッド手段と、第2の90度ハイブリッド手段が出力する各経路の信号を、それぞれ、直交する偏波で送信する偏波共用アンテナと、第1の90度ハイブリッド手段と第2の90度ハイブリッド手段の間に設けられ、各経路の信号の振幅及び位相を変化させる第1及び第2の振幅位相制御手段と、偏波共用アンテナのいずれかの入力端子に接続し、該入力端子に入力される校正用信号を抽出する校正用信号抽出手段と、校正用抽出手段が抽出した校正用信号を検波して検波信号を出力する検波手段と、検波手段が出力した検波信号の電圧を測定する電圧測定手段と、電圧測定手段が測定した電圧を監視し、分配手段に設定する偏波角と、第1及び第2の振幅位相制御手段の利得及び位相変化量を設定する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の偏波面制御アンテナにおける他の実施形態によれば、
制御手段は、第1の入力端子に校正用信号が入力されたとき、偏波共用アンテナの、校正用信号抽出手段が接続されていない入力端子にのみ、校正用信号を入力させる偏波角を分配手段に設定し、第1及び第2の振幅位相制御手段の位相変化量を変化させ、電圧測定手段が測定する電圧が最小になるときの位相変化量を第1及び第2の振幅位相制御手段に設定し、続いて、第1及び第2の振幅位相制御手段の利得を変化させ、電圧測定手段が測定する電圧が最小になるときの利得を第1及び第2の振幅位相制御手段に設定することも好ましい。
【0012】
また、本発明の偏波面制御アンテナにおける他の実施形態によれば、
設定された偏波角に基づき、第1の入力端子から入力される信号を2つの経路に分配する分配手段と、分配手段により分配された各経路の信号の振幅及び位相を変化させる第3及び第4の振幅位相制御手段と、第3及び第4の振幅位相制御手段が出力する各経路の信号を、それぞれ、直交する偏波で送信する偏波共用アンテナと、校正用信号が入力される第1の90度ハイブリッド手段と、第1の90度ハイブリッド手段の一方の出力端子からの信号の振幅及び位相を変化させて、第3の振幅位相制御手段の出力と同一経路に信号を出力する第1の振幅位相制御手段と、第1の90度ハイブリッド手段の他方の出力端子からの信号の振幅及び位相を変化させて、第4の振幅位相制御手段の出力と同一経路に信号を出力する第2の振幅位相制御手段と、偏波共用アンテナの各入力端子にその入力端子が接続されている第2の90度ハイブリッド手段と、第2の90度ハイブリッド手段の2つの出力端子のうち、第1の90度ハイブリッド手段に入力された校正用信号が出力されない側の出力端子と接続し、該出力端子の出力信号から校正用信号を抽出する校正用信号抽出手段と、校正用抽出手段が抽出した校正用信号を検波して検波信号を出力する検波手段と、検波手段が出力した検波信号の電圧を測定する電圧測定手段と、電圧測定手段が測定した電圧を監視し、第1、第2、第3及び第4の振幅位相制御手段の利得及び位相変化量を設定する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の偏波面制御アンテナにおける他の実施形態によれば、
制御手段は、第1の90度ハイブリッド手段に校正用信号が入力されたとき、第1及び第2の振幅位相制御手段の位相変化量を変化させ、電圧測定手段が測定する電圧が最小になるときの位相変化量を第1及び第2の振幅位相制御手段に設定し、設定した各位相変化量を、それぞれ、第1及び第2の位相校正値として記憶し、続いて、第1及び第2の振幅位相制御手段の利得を変化させ、電圧測定手段が測定する電圧が最小になるときの利得をそれぞれ、第1及び第2の振幅校正値として記憶し、第3の振幅位相制御手段の利得及び位相変化量を、第1の振幅校正値及び第1の位相校正値に基づきそれぞれ変更し、第4の振幅位相制御手段の利得及び位相変化量を、第2の振幅校正値及び第2の位相校正値に基づき変更することも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による校正方法は、理想的な状態においては校正用信号が流れない経路を監視し、この経路を流れる校正用信号を最小にすることにより行うものであるが、校正用信号のレベルの監視は、検波器及び電圧計という安価な機器のみで行うことが可能である。また、これらの機器は、非常に小型であり、本発明による偏波面制御アンテナは、これら機器を組み込んでおり、運用中であっても必要に応じて校正を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1及び2は、本発明による校正方法の対象である偏波面制御アンテナの形態を示す図である。図1によると、偏波面制御アンテナは、送信信号制御部100と、周波数変換部5と、増幅部61及び62と、出力90度ハイブリッド42と、偏波共用アンテナ71とを備えており、送信信号制御部100は、分配部2と、振幅位相制御部31、32、33及び34と、入力90度ハイブリッド41とを備え、分配部2の2つの入力端子11及び12には、直交する2つの偏波それぞれで搬送する変調信号が入力される。つまり、例えば、水平偏波で送信する信号が入力端子11に入力され、垂直偏波で送信する信号が入力端子12に入力される。なお、一つの偏波のみを使用する場合、入力端子12を省略することができる。
【0017】
分配部2は、入力端子11に入力される信号を、分配部2に設定された偏波角に基づき2つの経路に分配して出力し、同じく、入力端子12に入力される信号を、設定された偏波角に基づき2つの経路に分配して出力する。ここで、偏波角とは、入力端子11に入力される変調信号を送信する偏波の偏波面の、偏波共用アンテナ71が送受信可能な2つの偏波面のうちの一方の偏波面に対する傾き角度である。より具体的には2つの入力端子11及び12への入力信号を(x,y)、2つの出力端子からの出力信号を(u,v)、偏波角をθとすると、分配部2は、
【0018】
【数1】

となる様に信号の分配を行う。
【0019】
図3は、分配部2の機能ブロック図である。可変電力配分部21及び22は、入力端子11及び12に入力される信号、それぞれを、設定された偏波角に基づき分配して信号合成部23及び24にそれぞれ出力し、信号合成部23及び24は、2つの入力信号を合成して出力する。図4は、1つの入力端子のみを使用する場合における分配部2の機能ブロック図であり、可変電力配分部21は、入力端子11に入力される信号を、偏波角に基づき分配して出力する。
【0020】
振幅位相制御部31及び32は、アンテナ全体の校正のためのものであり、設定された利得係数及び位相係数に基づき通過する信号の振幅及び位相を変化させる。なお、設定する利得係数及び位相係数の決定手順は後述する。
【0021】
周波数変換のための周波数変換部5と、信号の増幅のための増幅部61及び62を、入力90度ハイブリッド41と、出力90度ハイブリッド42で挟む構成は、非特許文献3に記載されている様に、入力90度ハイブリッド41と出力90度ハイブリッド42の間にある各構成要素の経路間のバランス動作を目的とし、入力90度ハイブリッド41から出力90度ハイブリッド42間の校正のため、入力90度ハイブリッド41の出力に、振幅位相制御部33及び34を設けている。振幅位相制御部33及び34に対して設定する利得係数及び位相係数の決定手順は後述する。
【0022】
なお、振幅位相制御部31〜34の入力端子への入力信号をx、出力端子からの出力信号をu、利得係数をα、位相係数をβとすると、
u=xαejβ (2)
であり、入力90度ハイブリッド41及び出力90度ハイブリッド42の各入力端子への入力信号を(x,y)、各出力端子からの出力信号を(u,v)とすると、
【0023】
【数2】

である。ここで、A=1/(√2)である。
【0024】
偏波共用アンテナ71は2つの入力端子13及び14を有しており、その一方は出力90度ハイブリッド42の一方の出力端子に接続され、他方は出力90度ハイブリッド42の他方の出力端子に接続されており、各端子の入力信号を直交する偏波の無線信号として送信する。
【0025】
図2に示す偏波面制御アンテナは、図1の構成におけるバランス動作のための入力90度ハイブリッド41及び出力90度ハイブリッド42と、この区間の校正のための振幅位相制御部33及び34を取り除いたものである。
【0026】
所望の偏波面を形成するためには、励振誤差をできるだけ小さくすることが求められ、よって、分配部2の各出力から偏波共用アンテナ71の2つの入力端子までの各経路の通過振幅及び位相を一致させることが必要である。以下、上記偏波面制御アンテナの校正方法について説明を行う。まず、図1に示すバランス動作のための構成を含む偏波面制御アンテナに対しては、バランス動作対象である区間の校正(校正1)を行い、続いて、アンテナ全体の校正(校正2)を行う。一方、図2に示すバランス動作のための構成を含まない偏波面制御アンテナに対しては校正2のみを行う。
【0027】
図5は、本発明による校正方法の、校正1のためのブロック図であり、校正用の信号を検波する検波器8が、偏波共用アンテナ71の一方の入力端子、図5においては入力端子13に接続され、検波器8からの検波信号のレベルを測定する電圧計9が検波器8の出力に接続されている。以下に、校正1の手順を説明する。
【0028】
(手順11)入力端子11又は12のどちらか一方に校正用の信号を入力し、理想的な状態において、検波器8を接続している端子に信号が現れない様に、送信信号制御部100内の分配部2の偏波角を設定する。つまり、式(1)の偏波角θを、0又はπ/2に設定する。また、振幅位相制御部31〜34の利得係数を1、位相係数を0に、つまり、式(2)のα=1、β=0に設定する。
【0029】
(手順12)振幅位相制御部33又は34の位相係数を0〜2πで変化させ、電圧計9の出力が最小となるときの各位相係数を、振幅位相制御部33及び34に対する設定値とすると共に、位相校正係数として記憶する。
【0030】
(手順13)振幅位相制御部34の利得係数を1としたまま、振幅位相制御部33の利得係数を0から1で変化させて電圧計9の出力を監視し、その後、振幅位相制御部33の利得係数を1としたまま、振幅位相制御部34の利得係数を0から1で変化させて電圧計9の出力を監視し、電圧計9の出力が最小となるときのそれぞれの利得係数を、振幅位相制御部33及び34に対する設定値とすると共に、振幅校正係数として記憶する。
【0031】
図6は、校正1を説明する図である。図6(a)に示す様に、手順11における初期設定により、送信信号制御部100が出力する2つの信号51と52は、振幅が等しく、90度の位相差のある信号になる。出力90度ハイブリッド42は、入力端子への各入力信号の位相差を90度だけ小さくして合成した信号と、90度だけ大きくして合成した信号を出力するため、図6(a)に示す等振幅で直交する2つの信号をそのまま出力90度ハイブリッド42に入力すると、一方の出力端子のみから信号が出力され、他方の出力端子からは何も出力されない。
【0032】
しかしながら、周波数変換部5、増幅器61及び62、さらに、配線等により生じる振幅特性及び位相特性の相対的な差により、増幅部61と62が出力する信号は、図6(b)に示す様に、振幅は異なり、位相差も90度ではなくなる。図6(b)に示す信号を、出力90度ハイブリッド42に入力すると、図6(c)に示す様に、本来打ち消しあうべき信号52を90度回転させた信号が、信号51と等振幅で逆相の信号とはならないため、信号53が残留することになる。手順12及び13は、この信号レベルを監視しながら、利得及び位相の調整を行うものである。
【0033】
本発明は上述した手順により、送信信号制御部100から出力90度ハイブリッド42の入力までの2つの経路の振幅特性及び位相特性の相対的な差を、振幅位相制御部33及び34により補償を行うものであるが、その校正のために使用する機器は、検波器8及び電圧計9であり、これら機器は、ベクトルネットワークアナライザ等と比較して、格段に安価なものである。図14及び図15に、それぞれ、振幅位相制御部33、34の位相係数を変化させたときと、利得係数を変化させたときの検波器出力を示す。
【0034】
続いて、校正2、すなわち、アンテナ全体の校正について説明する。偏波共用アンテナの各偏波間に特性差が、つまり、利得差及び位相差が生じていたとしても、この値が既知であれば、振幅位相制御部31及び32に、この利得差及び位相差を補償する利得係数及び位相係数を設定することで校正は完了する。しかしながら、偏波共用アンテナの特性が未知である場合は、本発明による校正方法の校正2により、以下の手順で校正を行う。図7は、校正2のためのブロック図である。
【0035】
図7によると、偏波面制御アンテナを校正するため、偏波共用アンテナ72と、偏波共用アンテナ72が出力する直交する各偏波の信号を受信する2つの検波器8及び電圧計9を備えている校正装置を使用する。なお、図7の左側に示す偏波面制御アンテナは、図1に示すものと同一であるが、例示であり、図2に示す偏波面制御アンテナの校正にも使用する。以下に、校正の手順を説明する。
【0036】
まず、事前準備として、偏波面制御アンテナと校正装置を対向、つまり、指向方向を合わせて配置する。このとき、偏波面制御アンテナの偏波共用アンテナ71と、校正装置の偏波共用アンテナ72の偏波面を合わせる必要はない。
【0037】
(手順21)続いて、偏波面制御アンテナの一方の入力端子から信号を入力し、分配部2の偏波角θを0〜π/2で変化させ、校正装置の電圧計9の出力が、一方で最大、他方で最小となる偏波角の値を探索し、その値を、分配部2への設定値とする。
【0038】
(手順22)続いて、手順21で出力が最小であった電圧計9を監視しながら、振幅位相制御部31又は32の位相係数を0から2πの間で変化させ、監視している電圧計9の出力が最小となる位相係数を探索し、最小となるときの位相係数を振幅位相制御部31及び32に設定すると共に、この値を位相校正係数として記憶する。これにより位相の設定が完了する。
【0039】
(手順23)続いて、手順21と同じ入力端子から信号を入力しつつ、再度、分配部2の偏波角の設定を0〜π/2で変化させ、手順21及び22で監視していた電圧計9の出力が最小となる偏波角の値θを探索する。
【0040】
(手順24)続いて、手順21と同じ入力端子から信号を入力しつつ、分配部2の偏波角の設定をπ/2〜πで変化させ、手順21から23で出力が最小となった電圧計9とは異なる電圧計9の出力が最小となる偏波角からπ/2を減じた値θを探索する。
【0041】
(手順25)続いて、偏波角の値θと偏波角の値θの平均値θを算出し、分配部2の偏波角をθに設定し、手順21における入力端子から信号を入力しつつ、振幅位相制御部31の利得係数を1として、振幅位相制御部32の利得係数を0〜1で変化させ、さらに、振幅位相制御部32の利得係数を1として、振幅位相制御部31の利得係数を0〜1で変化させ、手順21において監視していた電圧計9の出力が最小となる振幅位相制御部31及び32の利得係数を探索して、この値を、振幅位相制御部31及び32に設定する。
【0042】
(手順26)手順23から手順25を繰り返し、θ及びθの差が閾値未満となった時点におけるそれぞれの利得係数を、振幅位相制御部31及び32に設定すると共に、振幅校正係数として記憶する。
【0043】
なお、手順23から手順25は、偏波角のずれと、経路間の利得の相対値を変数として2つの方程式を求め、これにより利得係数を求めるものであるが、θ及びθの値が0度又は90度となった場合には、方程式を解くことができないため、1回目の手順25で、θ及びθの値が0度又は90度となった場合には、校正装置のアンテナの偏波面をずらし、あらためて校正2を開始する。
【0044】
図8は、上記手順21及び22における位相の校正を説明する図である。分配手段2の偏波角を変化させることで送信される無線信号の偏波面が変化するため(図8(a))、まず手順21で、偏波面制御アンテナが送信する無線信号の偏波面を、校正装置のいずれかの偏波面に一致する様に偏波角の値を調整する。このとき、偏波面制御アンテナの2つの経路に位相差がなければ、校正装置の2つの経路のうち、偏波面制御アンテナの送信信号の偏波面とは直交する側の経路に接続されている電圧計9の出力は0である。しかしながら、偏波面制御アンテナの2つの経路に位相差が存在する場合、偏波面制御アンテナが送信する無線信号は、楕円偏波となり、その偏波方向が回転するため、偏波面と一致していない側の経路に接続されている電圧計9の出力は0とはならない(図8(b)の符号55の信号)。したがって、手順22において、偏波面と一致していない側の経路に接続されている電圧計9を監視しながら、振幅位相制御部31又は32の位相係数を調整して位相の校正を行う。
【0045】
図9は、手順23から26における振幅の校正を説明する図である。図9(a)に示す様に、振幅特性が理想的である場合、偏波面制御アンテナが送信する2つの直交する偏波の信号56及び57を合成した信号は、信号58となり、校正装置の偏波面の一方と一致する。しかしながら、振幅特性が同一でなく、図9(b)に示すように例えば信号57側の振幅の利得が大きい場合、偏波面制御アンテナが送信する2つの直交する偏波の信号56及び57を合成した信号58は、校正装置の偏波面の一方と一致せず、他方の経路にも信号が観測されることになる。
【0046】
手順23における偏波角の値θは、図9(b)の校正装置の一方の偏波面と信号58の角度を求めることに相当し、この角度は、信号56又は信号57の経路のどちらの利得が大きいかにより方向が異なる。また、手順24で求めるθともその方向が異なる。よって、これら角度の平均値に応じて利得係数を変更し、この値が一致した場合に、校正が終了することになる。
【0047】
以上、偏波面制御アンテナの校正方法について説明を行ったが、出力90度ハイブリッド42、偏波共用アンテナ71等はアナログ機器であり、僅かながら特性誤差を持つ。そのため、校正1及び校正2において、校正用信号を入力する分配部2の入力端子と、校正用信号を監視する偏波共用アンテナ71の入力端子又は偏波共用アンテナ72の出力端子の組合せを代えて、各校正係数を測定し、振幅位相制御部31〜34には、各測定で得られた各校正係数を平均化した値を設定することで、これら機器の特性誤差の影響を小さくすることができる。
【0048】
図10は、本発明の偏波面制御アンテナのブロック図であり、既に、説明したものと同一である要素には同じ参照符号を使用して説明は省略する。なお、図10の送信信号制御部100の構成は、図1に示す送信信号制御部100と同じである。図10において、校正用信号抽出部103は、偏波共用アンテナ71の2つの入力端子のいずれか、図10では入力端子13に接続されており、校正用信号抽出部103は、接続している入力端子を通過する信号から校正用信号を抽出して検波器8に出力する。
【0049】
制御部101は、偏波面制御アンテナの外部から校正用信号が入力され、例えば、校正開始のコマンドを外部から受信したとき、送信信号制御部100の分配部2、振幅位相制御部31〜34の初期設定を行い、その後、電圧計9の出力に基づき校正処理を行う。図12は、図10の偏波面制御アンテナにおける校正処理のフロー図である。
【0050】
(S101)制御部101は、分配部2に設定している偏波角を保存した上で、校正用信号を、校正用信号抽出部103が接続されていない、偏波共用アンテナ71の入力端子、つまり、図10においては入力端子14に流すように分配部2の偏波角の設定を変更する。つまり、校正用信号抽出部103が接続されている偏波共用アンテナ71の入力端子と、校正用信号が入力されている入力端子の関係に応じて、偏波角θを0又はπ/2に設定する。また、振幅位相制御部31及び32に設定していた利得係数及び位相係数を保存した上で、振幅位相制御部31〜34の利得係数を1、位相係数を0に設定する。
【0051】
(S102)制御部101は、振幅位相制御部33又は34の位相係数を0〜2πで変化させ、電圧計9の出力を最小とする位相係数を、振幅位相制御部33及び34に設定する。
【0052】
(S103)制御部101は、振幅位相制御部34の利得係数を1としたまま、振幅位相制御部33の利得係数を0から1で変化させて電圧計9の出力を監視し、振幅位相制御部33の利得係数を1としたまま、振幅位相制御部34の利得係数を0から1で変化させて電圧計9の出力を監視し、電圧計の出力を最小とする利得係数を、振幅位相制御部33及び34に設定する。その後、分配部2の偏波角と、振幅位相制御部31及び32の利得係数及び位相係数を、保存していた値に戻す。
【0053】
以上の構成により、上述した本発明による校正後、運用中において、温度変化等により校正状態が崩れたとしても、各経路の振幅及び位相誤差を補償することができる。なお、図1及び10の偏波面制御アンテナの場合、校正2で実施した特性差については、一度特性が判明すれば校正の必要はない。
【0054】
また図2の偏波面制御アンテナの場合、図11に示す構成を用いることで、運用中に、校正状態が崩れたとしても各経路の振幅及び位相誤差を補償することができる。図11に示す本発明の他の実施形態による偏波面制御アンテナは、図2に示す偏波面制御アンテナに、制御部101と、振幅位相制御部33及び34と、入力90度ハイブリッド41と、出力90度ハイブリッド42と、校正用信号抽出部103と、検波器8と、電圧計9と、終端器104とを追加したものである。
【0055】
図11に示す構成は、図1の偏波面制御アンテナの入力90度ハイブリッド41から出力90度ハイブリッド42までの構成を、校正用に設けたものである。制御部101は、偏波面制御アンテナの外部から校正用信号が入力され、例えば、校正開始のコマンドを外部から受信したとき、外部から入力された校正用信号を入力90度ハイブリッド41の一方の入力端子に導くように信号系統の切替えを行う。なお、校正用信号抽出部103を接続する出力90度ハイブリッド42の出力端子は、入力90度ハイブリッド41に入力する校正用信号が出力されない側としておく。さらに、制御部101は、振幅位相制御部33及び34の初期設定を行い、その後、電圧計9の出力に基づき校正処理を行う。図13は、図11の偏波面制御アンテナにおける校正処理のフロー図である。
【0056】
(S201)制御部101は、振幅位相制御部33及び34の利得係数を1、位相係数を0に設定する。
【0057】
(S202)制御部101は、振幅位相制御部33又は34の位相係数を0〜2πで変化させ、電圧計9の出力を最小とする位相係数を、振幅位相制御部33及び34に設定し、設定した値を位相校正係数として記憶する。
【0058】
(S203)制御部101は、振幅位相制御部34の利得係数を1としたまま、振幅位相制御部33の利得係数を0から1で変化させて電圧計9の出力を監視し、振幅位相制御部33の利得係数を1としたまま、振幅位相制御部34の利得係数を0から1で変化させて電圧計9の出力を監視し、電圧計9の出力を最小とする利得係数を、振幅位相制御部33及び34に設定し、設定した値を利得校正係数として記憶する。
【0059】
(S204)制御部101は、振幅位相制御部33の利得校正係数及び位相校正係数に基づき振幅位相制御部31の設定を変更し、振幅位相制御部34の利得校正係数及び位相校正係数に基づき振幅位相制御部32の設定を変更する。より詳しくは、振幅位相制御部33に設定した利得係数及び位相係数を、振幅位相制御部31の現在の利得係数及び位相係数に重畳した新たな利得係数及び位相係数を求めて、この新たな利得係数及び位相係数を振幅位相制御部31に設定し、振幅位相制御部34に設定した利得係数及び位相係数を、振幅位相制御部32の現在の利得係数及び位相係数に重畳した新たな利得係数及び位相係数を求めて、この新たな利得係数及び位相係数を振幅位相制御部32に設定する。
【0060】
なお、図1及び図10に示す偏波面制御アンテナにおいて、振幅位相制御部31及び32を、出力ハイブリッド42と偏波共用アンテナ71の間に設けても良い。
【0061】
以上、本発明による校正方法は、検波器及び電圧計という安価な機器のみにより校正を可能とする。これらの機器は、非常に小型であり、本発明による偏波面制御アンテナは、これら機器を組み込んでおり、運用中であっても必要に応じて校正を行うことが可能である。さらに、実際に使用する衛星搭載アンテナに本校正を適用することで、衛星搭載アンテナの偏波各誤差を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による校正方法の対象である偏波面制御アンテナの形態を示す図である。
【図2】本発明による校正方法の対象である偏波面制御アンテナの他の形態を示す図である。
【図3】分配部の機能ブロック図である。
【図4】分配部の他の形態の機能ブロック図である。
【図5】本発明による校正方法の校正1を実施するためのブロック図である。
【図6】校正1を説明する図である。
【図7】本発明による校正方法の校正2を実施するためのブロック図である。
【図8】校正2における位相の校正を説明する図である。
【図9】校正2における振幅の校正を説明する図である。
【図10】本発明による偏波面制御アンテナのブロック図である。
【図11】本発明による偏波面制御アンテナの他の実施形態のブロック図である。
【図12】図10に示す偏波面制御アンテナにおける校正方法のフロー図である。
【図13】図11に示す偏波面制御アンテナにおける校正方法のフロー図である。
【図14】位相係数を変化させたときの検波器出力を示す図である。
【図15】利得係数を変化させたときの検波器出力を示す図である。
【図16】従来技術による校正のブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
11、12、13、14 入力端子
2 分配部
21、22 可変電力分配部
23、24 信号合成部
31、32、33、34 振幅位相制御部
41 入力90度ハイブリッド
42 出力90度ハイブリッド
5 周波数変換部
51、52、53、56、57、58 信号
61、62 増幅部
71、72 偏波共用アンテナ
8 検波器
9 電圧計
100 送信信号制御部
101 制御部
103 校正用信号抽出部
104 終端器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された偏波角に基づき、第1の入力端子から入力される信号を2つの経路に分配する分配部と、分配部により分配された各経路の信号を変換する第1の90度ハイブリッドと、第1の90度ハイブリッドにより変換された各経路の信号を再変換する第2の90度ハイブリッドと、第2の90度ハイブリッドが出力する各経路の信号を、それぞれ、直交する偏波で送信する偏波共用アンテナと、第1の90度ハイブリッドと第2の90度ハイブリッドの間に設けられ、各経路の信号の振幅及び位相を変化させる第1及び第2の振幅位相制御部とを備えている偏波面制御アンテナの校正方法であって、
第1の入力端子に入力する校正用信号を、偏波共用アンテナの一方の入力端子にのみ入力させる偏波角の値を分配部に設定し、第1の振幅位相制御部及び第2の振幅位相制御部における位相変化量及び利得を同一に設定する第1のステップと、
校正用信号を第1の入力端子に入力し、第1又は第2の振幅位相制御部が与える位相変化量を変更し、偏波共用アンテナの他方の入力端子に入力される校正用信号が最小になるときの第1及び第2の振幅位相制御部の位相変化量を、第1及び第2の振幅位相制御部に設定する第2のステップと、
校正用信号を第1の入力端子に入力し、第1の振幅位相制御部の利得を1とした状態で、第2の振幅位相制御部の利得を0から1で変化させ、第2の振幅位相制御部の利得を1とした状態で、第1の振幅位相制御部の利得を0から1で変化させ、偏波共用アンテナの他方の入力端子に入力される校正用信号が最小になるときの第1及び第2の振幅位相制御部の利得を、第1及び第2の振幅位相制御部に設定する第3のステップと、
を含む校正方法。
【請求項2】
分配部は、第1の入力端子に入力される信号とは直交する偏波で送信する信号のための第2の入力端子を有し、第2の入力端子に入力される信号を、設定された偏波角に基づき前記2つの経路に分配し、
前記第1のステップから第3のステップの実行後、校正用信号の入力先を第2の入力端子として、前記第1のステップから第3のステップを再度実行し、
各実行において得られた第1及び第2の振幅位相制御部の利得及び位相変化量の平均値を、第1及び第2の振幅位相制御部に設定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
偏波面制御アンテナは、分配部と第1の90度ハイブリッドの間、又は、第2の90度ハイブリッドと偏波共用アンテナの間に、各経路の信号の振幅及び位相を変化させる第3及び第4の振幅位相制御部を備えており、
分配部は、第1の入力端子に入力される信号とは直交する偏波で送信する信号のための第2の入力端子を有し、第2の入力端子に入力される信号を、設定された偏波角に基づき前記2つの経路に分配し、
互いに直交する2つの偏波の無線信号を受信してそれぞれ出力するための第1及び第2の出力端子を備えた校正用偏波共用アンテナを、偏波面制御アンテナに対向させ、
校正用信号を第1の入力端子に入力し、第1の出力端子から出力される校正用信号が最大となる様に偏波角を設定する第4のステップと、
校正用信号を第1の入力端子に入力し、第3又は第4の振幅位相制御部が与える位相変化量を変更し、第2の出力端子から出力される校正用信号が最小になるときの第3及び第4の振幅位相制御部の位相変化量を、第3及び第4の振幅位相制御部に設定する第5のステップと、
校正用信号を第1の入力端子に入力し、0からπ/2の範囲において第2の出力端子から出力される校正用信号を最小とする偏波角を、第1の偏波角として求める第1のサブステップと、校正用信号を第1の入力端子に入力し、π/2からπの範囲において第1の出力端子から出力される校正用信号を最小とする偏波角からπ/2だけ減じた値を、第2の偏波角として求める第2のサブステップと、第1の偏波角と第2の偏波角の平均値に基づき第3及び第4の振幅位相制御部の利得を設定する第3のサブステップを、第1の偏波角と第2の偏波角の差が所定の閾値内となるまで繰り返す第6のステップと、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
設定された偏波角に基づき、第1の入力端子から入力される信号を2つの経路に分配する分配手段と、
分配手段により分配された各経路の信号を変換する第1の90度ハイブリッド手段と、
第1の90度ハイブリッド手段により変換された各経路の信号を再変換する第2の90度ハイブリッド手段と、
第2の90度ハイブリッド手段が出力する各経路の信号を、それぞれ、直交する偏波で送信する偏波共用アンテナと、
第1の90度ハイブリッド手段と第2の90度ハイブリッド手段の間に設けられ、各経路の信号の振幅及び位相を変化させる第1及び第2の振幅位相制御手段と、
偏波共用アンテナのいずれかの入力端子に接続し、該入力端子に入力される校正用信号を抽出する校正用信号抽出手段と、
校正用抽出手段が抽出した校正用信号を検波して検波信号を出力する検波手段と、
検波手段が出力した検波信号の電圧を測定する電圧測定手段と、
電圧測定手段が測定した電圧を監視し、分配手段に設定する偏波角と、第1及び第2の振幅位相制御手段の利得及び位相変化量を設定する制御手段と、
を備えている偏波面制御アンテナ。
【請求項5】
制御手段は、第1の入力端子に校正用信号が入力されたとき、偏波共用アンテナの、校正用信号抽出手段が接続されていない入力端子にのみ、校正用信号を入力させる偏波角を分配手段に設定し、第1及び第2の振幅位相制御手段の位相変化量を変化させ、電圧測定手段が測定する電圧が最小になるときの位相変化量を第1及び第2の振幅位相制御手段に設定し、続いて、第1及び第2の振幅位相制御手段の利得を変化させ、電圧測定手段が測定する電圧が最小になるときの利得を第1及び第2の振幅位相制御手段に設定する、
請求項4に記載の偏波面制御アンテナ。
【請求項6】
設定された偏波角に基づき、第1の入力端子から入力される信号を2つの経路に分配する分配手段と、
分配手段により分配された各経路の信号の振幅及び位相を変化させる第3及び第4の振幅位相制御手段と、
第3及び第4の振幅位相制御手段が出力する各経路の信号を、それぞれ、直交する偏波で送信する偏波共用アンテナと、
校正用信号が入力される第1の90度ハイブリッド手段と、
第1の90度ハイブリッド手段の一方の出力端子からの信号の振幅及び位相を変化させて、第3の振幅位相制御手段の出力と同一経路に信号を出力する第1の振幅位相制御手段と、
第1の90度ハイブリッド手段の他方の出力端子からの信号の振幅及び位相を変化させて、第4の振幅位相制御手段の出力と同一経路に信号を出力する第2の振幅位相制御手段と、
偏波共用アンテナの各入力端子にその入力端子が接続されている第2の90度ハイブリッド手段と、
第2の90度ハイブリッド手段の2つの出力端子のうち、第1の90度ハイブリッド手段に入力された校正用信号が出力されない側の出力端子と接続し、該出力端子の出力信号から校正用信号を抽出する校正用信号抽出手段と、
校正用抽出手段が抽出した校正用信号を検波して検波信号を出力する検波手段と、
検波手段が出力した検波信号の電圧を測定する電圧測定手段と、
電圧測定手段が測定した電圧を監視し、第1、第2、第3及び第4の振幅位相制御手段の利得及び位相変化量を設定する制御手段と、
を備えている偏波面制御アンテナ。
【請求項7】
制御手段は、第1の90度ハイブリッド手段に校正用信号が入力されたとき、第1及び第2の振幅位相制御手段の位相変化量を変化させ、電圧測定手段が測定する電圧が最小になるときの位相変化量を第1及び第2の振幅位相制御手段に設定し、設定した各位相変化量を、それぞれ、第1及び第2の位相校正値として記憶し、続いて、第1及び第2の振幅位相制御手段の利得を変化させ、電圧測定手段が測定する電圧が最小になるときの利得をそれぞれ、第1及び第2の振幅校正値として記憶し、第3の振幅位相制御手段の利得及び位相変化量を、第1の振幅校正値及び第1の位相校正値に基づきそれぞれ変更し、第4の振幅位相制御手段の利得及び位相変化量を、第2の振幅校正値及び第2の位相校正値に基づき変更する、
請求項6に記載の偏波面制御アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−194808(P2009−194808A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35715(P2008−35715)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、総務省、「衛星通信における適応偏波多重(APDM)伝送技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】