停止車両判別装置、自動車及び停止車両判別方法
【課題】高分解能のレーザレーダを用いなくても、自車両前方の物体が停止車両であるか否かを、精度良く判別することができる停止車両判別装置、それを備えた自動車及び停止車両判別方法を提供する。
【解決手段】自車両と自車両前方の停止物との距離Py_z0[i]に基づいて、停止車両判別閾値を設定し、その停止物の横幅objW_z0[i]と停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別する。このとき、停止車両判別閾値として上限閾値Th_Width2[i]と下限閾値Th_Width1[i]とを設け、自車両と停止物との距離が遠ざかるほど前記上限閾値を大きく、前記下限閾値を小さくする。
【解決手段】自車両と自車両前方の停止物との距離Py_z0[i]に基づいて、停止車両判別閾値を設定し、その停止物の横幅objW_z0[i]と停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別する。このとき、停止車両判別閾値として上限閾値Th_Width2[i]と下限閾値Th_Width1[i]とを設け、自車両と停止物との距離が遠ざかるほど前記上限閾値を大きく、前記下限閾値を小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両前方の物体が停止車両であるか否かを判別する停止車両判別装置、それを備えた自動車及び停止車両判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の停止車両判別装置としては、スキャニング式レーザレーダにて検出した、自車両前方の物体を示す複数の検出点(検出点群)に基づいて、自車両前方の物体が走行車両であるか停止物であるか、停止物であるときには標識等の停止物体であるか停止車両であるかを判別するというものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このとき、停止物体であるか停止車両であるかの判別は、自車両前方の物体を示す検出点群の検出点数、検出点と自車両との距離、及び検出点の端部幅から算出されるデータ充填率に基づいて行っている。
【特許文献1】特開2003−14844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、スキャニング式レーザレーダには、水平方向のレーザビーム幅の細い(主にリフレクタ反射を検出する:リフレクタ反射式レーザ)タイプのものと、レーザビーム幅の広い(主にボディ反射を検出する:ボディ反射式レーザ)タイプのものがある。上記リフレクタ反射式レーザは、水平方向のレーザビーム幅が細いことから、ボディ反射式レーザに比べて高分解能且つ高価であることが特徴である。
【0004】
上記従来の停止車両判別装置では、スキャニング式レーザレーダにて検出した検出点数に基づいて停止車両の判別を行っているので、レーザビーム幅の広いタイプのスキャニング式レーザレーダを適用した場合、その受光感度の高さから、特に自車両から遠方に存在する物体の停止車両判別精度が悪いという未解決の課題がある。また、レーザビーム幅の細いタイプのリフレクタ反射式レーザを適用した場合、コストが嵩むという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、高分解能のレーザレーダを用いなくても、自車両前方の物体が停止車両であるか否かを、精度良く判別することができる停止車両判別装置、それを備えた自動車及び停止車両判別方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る停止車両判別装置は、物体検出手段で自車両前方の物体を検出し、横幅取得手段で、前記物体検出手段で検出された検出物体の横幅を取得し、停止判断手段で、前記前方物体が停止していることを判断し、閾値設定手段で、自車両と前記停止判断手段で停止していると判断された停止物との距離に基づいて停止車両判別閾値を設定し、停止車両判別手段で、その停止物の横幅と前記閾値設定手段で設定された停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別する停止車両判別処理を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自車両と自車両前方の停止物との距離に基づいて、その停止物の横幅と比較するための停止車両判別閾値を設定するので、例えば、自車両と前記停止物との距離が遠ざかるほどレーザビームの広がりが大きくなって物体検知の不確かさが増すことを考慮して前記停止車両判別閾値を設定することができ、自車両前方の停止物が物体であるか車両であるかの判別を精度良く行うことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
(構成)
図1は本発明の実施形態における停止車両判別装置を適用した車両の概略構成図であり、図中符号1は自車両前方の物体を検知するための、例えばスキャニング式のレーザレーダである。図2は、本実施形態における停止車両判別装置の構成を示すブロック図であり、このレーザレーダ1が物体検出手段101に対応している。
【0008】
そして、このレーザレーダ1の走査結果は、レーダ処理装置2に入力され、ここで、レーザレーダ1によって検出した一つ又は複数の物体に対して、各物体の状態量として、自車両を原点とする二次元座標値、つまり、車間距離方向及び車幅方向における座標値が算出されると共に、検知物体の幅(大きさ)が算出される。これが横幅取得手段に対応している。そして、これら算出結果は、外界認識装置10に入力される。このレーザレーダ1及びレーダ処理装置2が状態量検出手段に対応している。
【0009】
また、車両の適所には、自車両前方を撮像し、自車両前方の状況を高速に把握するための物体検出手段としての、例えばプログレッシブスキャン式の3CCDカメラ等で構成される撮像装置3が搭載され、この撮像装置3の撮像結果は画像処理装置4に入力される。この画像処理装置4では、レーダ処理装置2で捕捉したレーダ検知物体の位置座標付近を注目領域としておき、自車両のピッチング変動等によってレーダ検知物体をロストした場合に、カメラ画像によりロストしたレーダ検知物体を検知し続ける等の処理を行う。そして、この画像処理装置4での検知結果は、外界認識装置10に入力される。なお、レーザレーダ1が物体を検知できない走行状況では、前記3CCDカメラの撮像データを画像処理することによる前方物体検知が実施される。
【0010】
また、この車両には、自車両の走行状態を検出するためのセンサとして、従動輪の左右車輪速度を検出する車速センサ5や、前輪操舵角を検出する操舵角センサ6が搭載され、これらセンサの検出値は、前記外界認識装置10に入力される。これら車速センサ5、操舵角センサ6で図2の走行状態検出手段102を構成している。
そして、前記外界認識装置10では、後述する停止車両判別処理によって、レーダ処理装置2で捕捉した各物体が、路側構造物であるか停止車両であるかを判断し、その物体が自車両にとって障害物であるか否かを判断する。そして、その物体が自車両にとって障害物であり、自車両がこの障害物と接触する可能性があると判定される場合には、必要に応じて自動ブレーキ制御装置12に制動指令を出力する。この自動ブレーキ制御装置12では、外界認識装置10からの制動指令に応じて負圧ブレーキブースタ14のソレノイドバルブに制動力指令電圧を印加することで負圧ブレーキブースタ14を作動し、各車輪に制動力を付与して当該障害物との接触を回避するようになっている。
【0011】
この自動ブレーキ制御装置12及び負圧ブレーキブースタ14が走行制御手段に対応している。
なお、前記レーダ処理装置2や、画像処理装置4、外界認識装置10、自動ブレーキ制御装置12は、マイクロコンピュータ等の演算処理装置とその周辺機器、並びに、各アクチュエータを駆動するための駆動回路等を備えており、互いに通信回路を介して情報を送受信できるようになっている。
【0012】
次に、前記外界認識装置10で実行される停止車両判別処理を、図3に示すフローチャートをもとに説明する。
この停止車両判別処理は、所定時間(例えば、100msec)毎のタイマ割込み処理として実行され、先ず、ステップS1で各種データを読み込む。具体的には、車速センサ5で検出された自車速Vsp、操舵角センサ6で検出された操舵角Stを読み込む。
【0013】
次に、ステップS2に移行して、将来の自車走行進路として、曲率半径の逆数Row[1/m]を、次式をもとに算出し、ステップS3に移行する。
Row=1/{(1+A・Vsp2・LWB)/St} ………(1)
ここで、Aは車両固有の値であるスタビリティファクタ(車重、ホイールベース長、重心位置、タイヤの横力で決まる定数)、LWBはホイールベース長、Stは操舵角(右切りがプラス)である。
【0014】
ステップS3では、レーザレーダ1で検出された物体の位置(横方向位置Px_z0[i],前後方向位置Py_z0[i])及び物体の幅(大きさ)objW_z0[i]を読み込み、ステップS4に移行する。ここで、_z0とは、今回のサンプリングにおける検出値であることを意味し、前回のサンプリングにおける検出値は_z1とする。また、[i]は検知物体ごとに割り付けられるID番号を意味しており、i≧0である。
【0015】
ステップS4では、レーザレーダ1で検出された各物体について、自車両との相対速度(横方向相対速度rVx_z0[i],前後方向相対速度rVy_z0[i])を、次式で表される伝達関数G(Z)により算出する。
G(Z)=(cZ2−c)/(Z2−aZ+b) ………(2)
ここで、Zは進み演算子である。また、係数a,b,cは正数であり、これらは所望の擬似微分特性を有するようにサンプリング周期100msで離散化されたものである。また、本実施形態における相対速度の符号は、負の場合を、前後方向=自車両と接近方向、横方向=自車進行方向に対して右側方向とする。
【0016】
次に、ステップS5に移行して、レーザレーダ1で検出された各物体が停止物であるか移動物(走行車両)であるかを判定する。この判定は、各物体の相対速度rVy_z0[i]と自車速Vspとの差分値ΔV[i]の絶対値が属性判別閾値Th以下であるか否かによって行い、ΔV[i]≦Thである場合には、その物体は停止物であると判定する。ここで、属性判別閾値Thは、次式で示されるような特性を有するものとする。
Th=HysTh+Kdw・Vsp ………(3)
ここで、HysThは、停止物と移動物との判定結果が安定するように、停止物から移動物に判定する場合とその逆の場合とでヒステリシスを付与することを意味する変数であり、Kdwは、動回転半径の変動による自車速Vspの誤差(実車速と計測車速との差)の最大見積もり値である。
【0017】
上記(3)式からも明らかなように、自車速Vspが大きくなるほど属性判別閾値Thは大きく設定されるので、自車両前方の検知物体が停止物であると判断する条件が緩和されて、当該検知物体が停止物であると判断されやすくなる。高速走行時には、人間の感覚として、停止車両に対する制御と極低速走行車両に対する制御とを同じにしても違和感がないため、停止車両と極低速走行車両とを区別する必要がない。そのため、自車速Vspが高くなるほど自車両前方の検知物体を停止物であると判断し易くすることで、停止車両を走行車両であると誤判別させるより極低速走行車両を停止車両であると判別させて、運転者への誤判別に対する違和感を低減することができる。
なお、Kdwは、本来の動回転半径の変動に対して数倍以上の大きなゲインであっても良い。このように、動回転半径の変動以上に閾値を停止車両と判定し易くすることで、運転者への誤判別に対する違和感を低減することができる。
【0018】
次に、ステップS6では、各検知物体が自車両の走行予想進路内に存在する可能性Reco[i]を、次式をもとに算出する。
Reco[i]=func1(Px_z0[i],Py_z0[i],Row) ………(4)
ここで、func1(X,Y,R)は、図4に表される特性を有する関数であり、検知物体が自車両の走行予想進路内に存在する可能性が大きいほど、Reco[i]の値は大きく算出される。
【0019】
次に、ステップS7では、各検知物体の選別を行う。具体的には、前記ステップS5の判定結果により停止物であると判断された検知物体と、移動物であると判断された検知物体とを選別し、停止物であると判断された検知物体に対しては後述するステップS10以降の処理を施し、移動物であると判断された検知物体に対してはステップS8以降の処理を施すようにする。
【0020】
ステップS8では、検知物体の属性フラグAttrObjCar[i]を、次式に示すように、物体が走行車両として属性付けされたことを意味する“2”に設定してステップS9に移行する。ここで、属性フラグAttrObjCar[i]は、初期状態は路側構造物に相当する“0”に属性付けされているものとする。
AttrObjCar[i]=2 ………(5)
ステップS9では、微分演算などで用いる変数の過去値を更新してからタイマ割込み処理を終了する。
【0021】
また、ステップS10では、各検知物体が自車両の走行予想進路内に存在するか否かを判定する。この判定は、前記ステップS6で算出されたReco[i]が所定の進路内判断閾値Th_OwnLaneより大きいか否かによって行い、Reco[i]>Th_OwnLaneであるときには、その検知物体が自車両の走行予想進路内に存在すると判断して後述するステップS12に移行し、Reco[i]≦Th_OwnLaneであるときには、その検知物体が自車両の走行予想進路内に存在しないと判断してステップS11に移行する。ここで、進路内判断閾値Th_OwnLaneは、1未満の正数である。
【0022】
ステップS11では、検知物体の属性フラグAttrObjCar[i]を、次式に示すように、物体が路側構造物として属性付けされたことを意味する“0”に設定して前記ステップS9に移行する。
AttrObjCar[i]=0 ………(6)
ところで、レーダの視野角端に物体が存在する場合、その物体がレーダ視野内に完全に収まらないために、正確な物体幅を検知できない場合がある。また、レーダによる物体幅の検出精度は、自車両の正面ほど高くなる。そのため、前記ステップS10の判定結果により、検知物体が自車両の走行予想進路内に存在しないと判断したときには、その検知物体を路側構造物として属性付けすることで、物体の正確な大きさを検知できずに誤った停止車両判別を行ってしまうことを回避することができると共に、レーザの信頼性の高い検知状態で停止車両判別を行うことができる。
【0023】
また、自車走行車線外の遠方に存在する物体の脇を自車両が通過する際に、その物体は自車両の走行予想進路内に存在しなくても、位置精度の低下により自車進路上に侵入してくるものと誤った判断がなされる可能性があるが、この可能性を考慮して、自車両の走行進路外に存在する物体を停止車両であると判別しないことで、位置精度の低下が生じた場合の走行制御システムにおける誤作動や誤警報を軽減することができる。なお、ここで、走行制御システムにおける制御や警報などは、そのタイミングや制御量を“車両”であるか“非車両”であるかに応じて変更する一般的なシステムを用いるものとする。
【0024】
ステップS12では、各検知物体に対して、停止物体であるか停止車両であるかの判別に用いる停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]及び上限閾値Th_Width2[i]を、次式をもとに算出する。
Th_Width1[i]=W1+func2(Py_z0[i]),
Th_Width2[i]=W2−func2(Py_z0[i]) ………(7)
ここで、func2(Y)は、図5に示すような特性を有する関数である。この図5に示すように、func2(Y)の値は自車両と検知物体との前後方向距離Yに比例して大きくなるように設定されている。これにより、自車両と検知物体との距離Yが大きいほど、停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]は大きく、上限閾値Th_Width2[i]は小さく算出されることになる。
【0025】
また、W1,W2は、夫々小型車両の車幅と大型車両の車幅に相当する定数を意味しており、仕向け地によって変更するようにしてもよい。このように、停止物判別閾値Th_Width1[i]及びTh_Width2[i]は、検知物体の横幅と比較するための閾値である。
次に、ステップS13に移行して、検知された停止物が停止車両であるか否かを判定する。この判定は、検知物体の横幅objW_z0[i]が、前記ステップS12で算出された停止物判別閾値Th_Width1[i]及びTh_Width2[i]の範囲内に適合するか否かによって行い、Th_Width1[i]<objW_z0[i]<Th_Width2[i]であるときには、その物体は停止車両であると判断して後述するステップS14に移行する。一方、Th_Width1[i]≧objW_z0[i]又はTh_Width2[i]≦objW_z0[i]であるときには、その物体は路側構造物であると判断して前記ステップS11に移行する。
【0026】
図6は、レーザレーダ1の不確かさと停止物判別閾値との関係を示す図であり、横軸に自車両と検知物体との縦位置(前後方向距離)、縦軸に検知物体の横幅と比較するための停止物判別閾値をとっている。ここで、前述したように、W1は小型車両の車幅、W2は大型車両の車幅であり、平均的な車両の車幅は、このW1からW2までの範囲の値となる。
【0027】
レーザレーダ1のビームの分解能に依存した不確かさは、自車両と検知物体との距離Yが大きくなるほど大きくなる。つまり、図6の破線に示すように、自車両との距離Yが零であるときには不確かさも零であるが、自車両との距離Yが大きくなるほど、例えば横幅W1の物体をレーザレーダ1で検知した場合、その検出値には最大ΔW1の誤差が生じる。
【0028】
したがって、本実施形態のように、検知物体と自車両との距離が大きくなるほど、停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]と上限閾値Th_Width2[i]との差を最大値(W2−W1)から徐々に小さくすることで、自車両から遠方に存在する物体に対して、より確実な方向に上記不確かさの影響を排除することができる。
このとき、各閾値Th_Width1[i]及びTh_Width2[i]の自車両と検知物体と距離に対する変化率は、符号が逆で絶対値が同じとし、その絶対値は、レーザレーダ1の水平方向の分解能に基づいて定める。これにより、レーザレーダの設計仕様に応じた適切な閾値を設定することができる。
【0029】
また、ステップS14では、検知物体の属性フラグAttrObjCar[i]を、次式に示すように、物体が停止車両として属性付けされたことを意味する“1”に設定して前記ステップS9に移行する。
AttrObjCar[i]=1 ………(8)
図3の処理において、ステップS4及びS5の処理が停止判断手段に対応し、ステップS6及びS10の処理が判別許可手段に対応し、ステップS12の処理が閾値設定手段に対応し、ステップS13の処理が停止車両判別手段に対応している。
【0030】
すなわち、図2に示すように、物体検出手段101で検出した前方物体の相対速度と、走行状態検出手段102で検出した自車速とに基づいて、停止判断手段103で、物体検出手段101で検出した物体が停止しているか否かを判断する。また、走行状態検出手段102で検出した自車両の走行状態(自車速及び操舵角)と、物体検出手段101で検出した前方物体の位置とに基づいて、判別許可手段104で、前記停止判断手段103で停止していると判断された物体に対する停止車両判別処理の実行を許可するか否かを判断する。さらに、物体検出手段101で検出した前方物体の自車両までの距離基づいて、閾値設定手段105で、物体検出手段101の検出結果に含まれる不確かさを反映した、検出物体の横幅に関する閾値を設定する。そして、これら停止判断手段103、判別許可手段104及び閾値設定手段105からの出力と、物体検出手段101で検出した前方物体の横幅とに基づいて、停止車両判別手段106で、自車両前方の停止物が物体であるか車両であるかを判別する。
【0031】
(動作)
次に、本発明の第1の実施形態の動作について説明する。
今、図7に示すように、自車両MCが直線路LMを走行中であり、自車前方の停止車両N0(i=0)、路側構造物N1(i=1)及びN2(i=2)をレーザレーダ1で検知しているものとする。この場合、物体N0は自車走行レーンLM内に存在しているため、Reco[0]>Th_OwnLaneとなって、図3のステップS10の判定結果によりステップS12に移行する。このステップS12では、図8に示す物体N0の自車両MCとの前後方向距離Py_z0[0]に応じて、停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[0]がW1とほぼ等しいW1N0に、上限閾値Th_Width2[0]がW2とほぼ等しいW2N0に算出される。そして、Th_Width1[0]<objW_z0[0](=α)<Th_Width2[0]であり、物体N0の幅が停止物判別閾値に適合しているため、この物体N0が停止車両であると判断され、自動ブレーキ制御の対象となる。
【0032】
また、物体N1は、自車走行レーンLM内に存在していないため、Reco[1]≦Th_OwnLaneとなって、ステップS10の判定結果によりステップS11に移行する。このように、自車走行レーン内に存在しない物体は、路側構造物であると判断されて自動ブレーキ制御の対象としないので、自動ブレーキ制御が作動してしまうことに起因する運転者の違和感を防止することができる。
【0033】
また、物体N2は、自車走行レーンLM内に存在しているため、Reco[2]>Th_OwnLaneとなって、ステップS10の判定結果によりステップS12に移行する。このステップS12では、図8に示す物体N2の自車両MCとの前後方向距離Py_z0[2]に応じて、停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[2]がW1より大きいW1N2に、上限閾値Th_Width2[2]がW2より大きいW2N2に算出される。そして、この物体N2の大きさobjW_z0[2](=α)が下限閾値Th_Width1[2]から上限閾値Th_Width2[2]までの範囲内にないことから、この物体N2は路側構造物であると判断され、自動ブレーキ制御の対象外となる。このように、物体N0と物体N2とは同じ大きさであるが、物体N0は停止車両、物体N2は停止物体として判断される。
【0034】
レーザレーダ1と検知物体との前後方向距離が大きいほどビーム幅の広がりは大きくなるため、物体幅の検出値に誤差が生じやすい。そのため、実際は停止物判別閾値に適合しない路側構造物が、物体幅の検出誤差により停止車両であると誤って判断される可能性がある。
これに対して、本実施形態では、自車両前方の検知物体(停止物)と自車両との距離に基づいて停止車両判別閾値を設定するので、レーザレーダのビーム幅の広がりにより、停止物と自車両との距離が遠ざかるほど物体幅の検出精度が悪化することを考慮して停止物判別閾値を設定することができる。すなわち、検知物体と自車両との前後方向距離が大きいほど、レーザレーダ1のビーム幅の照射に関する不確かさが大きいとして、停止物判別閾値の上限閾値と下限閾値との差を小さく設定するので、実際の物体幅に対して生じる誤差を加味した(物体検出手段の検出結果に含まれる不確かさを反映した)閾値を設定することができる。
【0035】
その結果、レーザレーダの検出誤差により自車両から遠方の停止物体N2の横幅が、偶然平均的な車幅であるW1からW2までの範囲内に適合してしまった場合であっても、停止車両であると誤判別することを抑制することができ、レーザレーダのビーム幅の広がりを不確かさとして考慮してより高精度な停止車両判別を行うことができる。
【0036】
(第1の実施形態の効果)
(1)自車両前方の停止物の横幅と、閾値設定手段で自車両とその停止物との距離に基づいて設定される停止車両判別閾値とを比較することで、停止車両判別手段が、その停止物が車両であるか否かを判別する。
したがって、物体検出手段による検出結果の不確かさを反映した閾値を用いて、適切に停止車両判別処理を行うことができる。その結果、ビーム幅の細い高分解能レーザレーダ(リフレクタ反射式レーザ)を用いなくても、高精度で停止車両判別を行うことができる。
【0037】
(2)停止物判別閾値として上限閾値と下限閾値とを設け、自車両と停止物との距離が遠ざかるほど、上限閾値を小さく、下限閾値を大きくするので、物体検出手段による検出結果の不確かさを反映した閾値をより適切に設定することができる。また、このようにして設定された閾値を用いることで、より高精度な停止車両判別を行うことができる。
【0038】
(3)物体検出手段の水平方向の分解能に基づいて、上限閾値及び下限閾値を変化させるので、物体検出手段の設計仕様に応じた適切な停止物判別閾値を設定することができる。その結果、自車両から遠方の停止物体を停止車両であると誤判別することを防止することができる。
(4)走行状態検出手段で検出された走行状態に基づいて停止車両判別処理の実行を許可された停止物に対して、当該停止車両判別処理を行うので、判別精度が高められる走行状況下で停止車両判別処理を行うことができる。
【0039】
(5)自車両前方の停止物のうち自車両の走行進路上にある停止物に対してのみ、停止車両判別処理の実行を許可する。したがって、検知物体がレーダ視野内に完全に収まらない場合に誤った停止車両判別を行ってしまうことを防止することができると共に、常にレーダの信頼性の高い検知状態で停止車両判別を行うことができる。
(6)自車速が速いほど、自車両前方の検知物体が停止していると判断し易くするため、動回転半径の変化に対応することができ、停止車両を走行車両であると誤判別するより走行車両を停止車両であると判別して、運転者への誤判別に対する違和感を低減することができる。
【0040】
(7)自車両前方の物体を検出する検出手段の検出結果に含まれる不確かさを反映した、検出物体の横幅に関する判別条件に基づいて、検出物体が停止車両であるか否かを判別するので、適切に停止車両判別処理を行うことができる。
(8)自車両前方の検出物体が停止車両であるか否かを判別し、その判別結果に応じた走行制御を行う。したがって、停止車両であると判別された検出物体を障害物である認識し、自動ブレーキ制御装置で各車輪に制動力を付与することによって当該障害物との接触を回避することができ、安定走行を確保することができる。
【0041】
(9)自車両と、物体検出手段で検出された自車両前方の物体のうち停止していると判断された停止物との距離に基づいて、停止車両判別閾値を設定し、その停止物の横幅と前記停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別する。したがって、適切に停止車両判別処理を行うことができると共に、ビーム幅の細い高分解能レーザレーダ(リフレクタ反射式レーザ)を用いなくても、高精度で停止車両判別を行うことができる。
【0042】
(応用例)
なお、上記第1の実施形態においては、検知物体が自車両の走行進路上に存在するときに、停止車両判別処理の実行を許可する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、検知物体が自車両の正面に存在するときに停止車両判別処理の実行を許可するようにしてもよい。この場合にも、検知物体がレーダ視野内に完全に収まらないことに起因する誤判別を防止することができると共に、常にレーダの信頼性の高い検知状態で停止車両判別を行うことができる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
(構成)
この第2の実施形態では、より遠方の検知物体に対する誤判別の対策、及び雨天などで生じ易いガントリーなどに装着されている案内標識等に対する誤判別の対策を行うようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態の停止車両判別処理を図9に示すように、図3の第1の実施形態の停止車両判別処理におけるステップS6の後に、各検知物体の状態量(横方向位置)の安定度合いPxV[i]を算出するステップS21を追加し、ステップS10の前に前記横方向位置の安定度合いPxV[i]に基づいて、各検知物体の横方向位置が安定しているか否かを判定するステップS22を追加し、ステップS12の処理をステップS23の処理に置換したことを除いては、前述した図3と同様の処理を実行するため、図3との対応部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。このステップS21及びS22の処理が判別許可手段に対応し、ステップS23の処理が閾値設定手段に対応している。
【0044】
ステップS21では、各検知物体の横方向位置の安定度合いとして、次式で表される標準偏差PxV[i]を算出し、前記ステップS7に移行する。
n=func3(Py_z0[i]),
A=(Px_z0[i]+Px_z1[i]+…+Px_zn[i])/(n+1),
PxV[i]=√[{(Px_z0[i]−A)2+(Px_z1[i]−A)2+…+(Px_zn[i]−A)2}/(n+1)] ………(9)
ここで、func3(Y)は、図10に示されるような特性を有する関数であり、func3(Y)の値は、自車両と検知物体との距離Yが大きくなるにつれて段階的に大きくなるように設定されている。つまり、nは、過去にさかのぼる期間の長さのサンプリング数であって、Aは、その期間中の平均値を意味している。
【0045】
この(9)式からも明らかなように、各検知物体の横方向位置の分散値は、各検知物体の横方向位置の過去の参照期間のサンプリングデータに基づいて算出し、そのサンプリングデータの数nは、自車両とその検知物体との前後方向距離Yが大きいほど多くなるように設定されている。言い換えると、上記参照期間(各検知物体の横方向位置の分散値の算出期間)は、自車両とその検知物体との前後方向距離Yが大きいほど長く(過去にさかのぼるように)設定されている。
【0046】
また、ステップS22では、前記ステップS21で算出された各検知物体の横方向位置の安定度合いPxV[i]に基づいて、各検知物体の横方向位置が安定しているか否かを判定する。この判定は、下記(10)式を満足するか否かによって行い、下記(10)式を満足するときには、その物体の横方向位置が安定しているものと判断して前記ステップS10に移行し、下記(10)式を満足しないときには前記ステップS11に移行する。
PxV[i]<Th_V ………(10)
ここで、Th_Vは、ばらつきに関する閾値である。このように、横方向位置が安定しない物体を、幅情報を問わず路側構造物である(停止車両ではない)と判定するので、より誤判別の少ない停止車両判別が可能となる。
【0047】
上記(9)式に表されるように、検知物体との位置が自車両から離れるほど過去にさかのぼって横方向位置の安定度合いPxV[i]を算出するので、保守的な算出結果となる。これにより、遠方に存在する物体の横方向位置の検出精度が低いために、本来は停止車両判別をすべきでない物体に対して誤って停止車両判別処理を施し、誤って停止物体を停止車両であると判別してしまうことを抑制することができる。
【0048】
ステップS23では、各検知物体に対して、停止物体であるか停止車両であるかの判別に用いる停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]及び上限閾値Th_Width2[i]を、次式をもとに算出し、前記ステップS13に移行する。
Th_Width1[i]=W1+func4(Py_z0[i]),
Th_Width2[i]=W2−func4(Py_z0[i]) ………(11)
【0049】
ここで、func4(Y)は、図11に示すような特性を有する関数である。この図11に示すように、func4(Y)の値は自車両と検知物体との距離Yが大きくなるほど大きくなるように設定されており、その変化率の絶対値は、距離Yが所定値YTH(例えば、35m程度)まではfunc2(Y)と同等であり、所定値YTHを超えるとfunc2(Y)より大きく設定されている。これにより、自車両と検知物体との距離が大きいほど、停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]はより大きく、上限閾値Th_Width2[i]はより小さく算出されることになる。
【0050】
つまり、このときの停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]及び上限閾値Th_Width2[i]を図12に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、各閾値の差は、自車両と検知物体との距離が大きくなるほど小さくなるように設定され、各閾値の変化率は、符号が逆で絶対値が同じになる。ここで、その絶対値は、自車両と検知物体との距離が大きくなるほど、より大きくなるように設定されるため、より停止車両であると判断し難くなる。
これにより、自車両からより遠方の停止物体に対して、レーザの反射状況が想定外の結果となることでその物体の横幅が偶然W1からW2までの範囲に適合してしまい、誤って停止車両と判別してしまうことをより低減することができる。
【0051】
(動作)
次に、本発明の第2の実施形態の動作について説明する。
今、雨天時に自車両が高速道路を走行中であり、図13に示すように、自車両前方にガントリーGaに横一列に装着された案内標識Sが存在するものとする。雨天時には、レーザ発光から受光において2次反射が生じ易く、案内標識等の看板をレーザレーダで検知し易くなる。そのため、このような走行環境では、ガントリーに取り付けられた横一列に並ぶ看板のどこからレーザ光が反射するか分からないため、検知物体の横方向位置が安定しないという現象が生じ易い。
そして、この案内標識Sの横位置の安定度合いPxV[i]が、図9のステップS21で閾値Th_V以上に算出されると、ステップS22の判定によりステップS11に移行して、路側構造物であると判別される。
【0052】
(第2の実施形態の効果)
(1)検知物体の状態量の安定度合いに基づいて当該状態量が安定していると判断されたときに、その物体に対する停止車両判別手段の実行を許可するので、路側構造物を停止車両であると誤判別することを抑制することができる。
(2)前記検知物体の状態量として検知物体の横方向位置を適用するので、検知物体の横方向位置が安定しない検知状況における判別処理の誤作動を抑制することができる。
つまり、検知物体の横方向位置が安定しない検知状況で、本来は停止車両判別処理を行うべき停止物に対して誤って判別処理が行わなかったり、本来は停止車両判別処理を行わない停止物に対して誤って判別処理が行われてしまったりすることを抑制することができる。また、反射率の高いガントリーなどに対して停止車両判別処理を行った場合、誤って停止車両であると誤判別することを確実に回避することができる。
【0053】
(3)検知物体の状態量の安定度合いとして、当該状態量の分散値に基づいて算出される標準偏差を用いる。分散値は、前記状態量の過去の参照期間におけるサンプリングデータに基づいて算出し、その参照期間を、検知物体と自車両との距離が遠いほど長くなるように設定する。したがって、遠方に存在する物体の状態量の検出精度を考慮して、より誤判別を低減することができる。
(4)停止車両判別閾値の上限閾値及び下限閾値の自車両と停止物との距離に対する変化率を、符号が逆で絶対値が同じとし、その絶対値を自車両と検知物体との距離が大きくなるほどより大きくするので、より遠方の物体を停止車両であると判断し難くして、より誤判別を低減することができる。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
(構成)
この第3の実施形態は、物体検出手段として、レーザレーダとCCDカメラとを併用し、これらを用いて停止車両判別処理を行うようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態の停止車両判別処理を図14に示すように、図9の第2の実施形態の停止車両判別処理におけるステップS21の後に、検知物体に対してデリニエータの属性付けを行うステップS31と、CCDカメラ3により画像処理する検知物体を決定するステップS32と、ステップS32で決定した物体の横幅をCCDカメラ3で検出するステップS33と、ステップS32で決定した物体の横幅をステップS33の検出値に更新するステップS34と、各検知物体の状態量(横幅)の安定度合いoWv[i]を算出するステップS35とを追加し、ステップS10の後に横幅の安定度合いoWv[i]に基づいて、各検知物体の横幅が安定しているか否かを判定するステップS36を追加し、ステップS23の処理をステップS37の処理に置換したことを除いては、前述した図9と同様の処理を実行するため、図9との対応部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。このステップS35及びS36の処理が判別許可手段に対応し、ステップS37の処理が閾値設定手段に対応している。
【0055】
ステップS31では、各検知物体の相対位置から道路形状を形成する物体を道路構造物(デリニエータ)として属性付けし、ステップS32に移行する。
ステップS32では、CCDカメラ3により画像処理する検知物体を決定する。具体的には、先ず、自車両前方の物体のうち停止物であると判別された物体であり、且つこれまでは路側構造物(AttrObjCar[i]=0)として属性付けされている物体であり、且つ前記ステップS6で算出される自車両の走行予想進路内に存在する可能性Reco[i]がTh_OwnLaneより大きく、自車両の走行予想進路内に存在する物体の中で、最も自車両に近い距離に存在する物体を選択する。そして、選択した物体のID番号をcam_chk_idという変数に代入する。ここで、上記条件に該当する物体が存在しない場合には、cam_chk_idには負の値(例えば、−1)を代入する。
【0056】
次に、ステップS33に移行して、前記ステップS32で設定したcam_chk_idが負の値でない場合に、その物体のレーザレーダ検知位置に基づいてカメラ画像処理により物体幅CamWidthを算出し、ステップS34に移行する。ここで、cam_chk_idが負の値であるときにはカメラ画像処理を行わずにステップS34に移行する。
【0057】
ここで、カメラ画像処理による物体幅CamWidthの算出方法としては、例えば、画像処理領域について、公知のSobelフィルター演算等によりエッジ画像を求め、このエッジ画像から、縦エッジのペアとその間の横エッジ(H型のエッジ)を探す。そして、縦エッジペア(H型エッジにおける左側の縦エッジと右側の縦エッジと)の画素間隔Ewと検知物体の距離とに基づいて、下記(12)式をもとに、物体幅CamWidthを算出する。
CamWidth=Ew・Py_z0[cam_chk_id]/focusH ………(12)
ここで、focusHは、画素換算したカメラの水平方向の焦点距離[pix]である。
ステップS34では、前記ステップS33の画像処理で検出した物体幅CamWidthから、レーザ検知物体の幅を修正する。
objW_z0[cam_chk_id]=CamWidth ………(13)
【0058】
このように、自車両前方の物体のうち、自車両の走行予想進路内に存在する路側構造物で最も自車両に近い距離に存在する物体について、その物体幅をカメラ画像処理により算出するので、万が一、停止車両を停止物体と誤判別している場合であっても、物体幅が正確な値に更新されることにより適切な停止車両判別を行うことができる。また、最も自車両に近い距離に存在する物体のみをカメラ画像処理する物体として選定するので、カメラ画像処理の負荷が大きくなることを抑制することができる。
【0059】
次に、ステップS35に移行して、各検知物体の横幅の安定度合いとして、次式で表される標準偏差oWv[i]を算出し、前記ステップS7に移行する。
n=func3(Py_z0[i]),
A=(objW_z0[i]+objW_z1[i]+…+objW_zn[i])/(n+1),
oWv[i]=√[{(objW_z0[i]−A)2+(objW_z1[i]−A)2+…+(objW_zn[i]−A)2}/(n+1)] ………(14)
【0060】
この(14)式からも明らかなように、各検知物体の横幅の分散値は、各検知物体の横幅の過去のサンプリングデータに基づいて算出し、そのサンプリングデータの数nは、自車両とその検知物体との前後方向距離Yが大きいほど多くなるように設定されている。言い換えると、各検知物体の横幅の分散値の算出期間は、自車両とその検知物体との前後方向距離Yが大きいほど過去にさかのぼるように設定されている。
【0061】
また、前記ステップS10の判定結果がYes、即ち検知物体が自車両の予想進路内に存在する場合には、ステップS36に移行し、このステップS36で、前記ステップS35で算出された各検知物体の横幅の安定度合いoWv[i]に基づいて、各検知物体の横幅が安定しているか否かを判定する。
この判定は、下記(15)式を満足するか否かによって行い、下記(15)式を満足するときには横幅が安定しているものと判断してステップS37に移行し、下記(15)式を満足しないときには前記ステップS11に移行する。
oWv[i]<Th_v ………(15)
ここで、Th_vは、ばらつきに関する閾値である。このように、横幅が安定しない物体を路側構造物である(停止車両ではない)と判定するので、より誤判別の少ない停止車両判別が可能となる。
【0062】
上記(14)式に表されるように、検知物体との位置が自車両から離れるほど過去にさかのぼって横幅の安定度合いoWv[i]を算出するので、保守的な算出結果となる。これにより、遠方に存在する物体の横幅制度が低いために、本来は停止車両でないと判別されるべき物体に対して誤って停止車両と判別してしまうことを抑制することができる。
【0063】
ステップS37では、各検知物体に対して、停止物体か停止車両かの判別に用いる停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]及び上限閾値Th_Width2[i]を算出する。検知物体のID番号がcam_chk_idと異なる場合には、前述した第1の実施形態におけるステップS12と同様に、前記(7)式をもとに算出し、検知物体のID番号がcam_chk_idと同じ場合には次式をもとに算出し、前記ステップS13に移行する。
Th_Width1[i]=W1+func5(Py_z0[i]),
Th_Width2[i]=W2−func5(Py_z0[i]) ………(16)
【0064】
ここで、func5(Y)は、図15に示すような特性を有する関数である。この図15に示すように、func5(Y)の値は自車両と検知物体との距離Yに比例して大きくなるように設定されており、その変化率の絶対値は、func2(Y)と比較して小さく設定されている。これにより、カメラ画像処理が施された物体に対しては、停止判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]は、距離Yが大きくなるほど大きくなるもののW1にほぼ等しく、上限閾値Th_Width2[i]は、距離Yが大きくなるほど小さくなるもののW2にほぼ等しく算出されることになる。
【0065】
つまり、このときの停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]及び上限閾値Th_Width2[i]を図16に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、各閾値の差は、自車両と検知物体との距離が大きくなるほど小さくなるように設定され、各閾値の変化率は、符号が逆で絶対値が同じになる。そして、その絶対値は、物体を検知したセンサの種類(レーザレーダかCCDカメラか)によって異なり、レーザレーダで検知した場合には実線で示すように絶対値は大きく設定され、CCDカメラで検知した場合には一点鎖線で示すように絶対値は小さく設定される。これは、レーザレーダとCCDカメラとの分解能に依存した不確かさの違いに基づくものである。
【0066】
(動作)
次に、本発明の第3の実施形態の動作について説明する。
今、図13に示すように、自車両前方にガントリーGaに横一列に装着された案内標識Sが存在するものとする。一般に、案内標識等の看板は、レーザ発光から受光における反射が安定せず、物体幅の検出値が安定し難くなる。そして、この案内標識Sの横幅の安定度合いoWv[i]が、図14のステップS35で閾値Th_v以上に算出されると、ステップS36の判定によりステップS11に移行して、路側構造物であると判別される。
【0067】
(第3の実施形態の効果)
(1)検知物体の状態量としての検知物体の横幅を適用するので、検知物体の横幅が安定しない検知状況における判別処理の誤作動を抑制することができる。
つまり、検知物体の横幅が安定しない検知状況で、偶然平均的な車幅であるW1からW2までの範囲に適合して誤った停止車両判別を行ってしまうことを抑制することができる。具体的には、反射の安定しないガントリーなどを誤って停止車両であると誤判別することを回避することができる。さらに、検知物が車両背面の反射板であるリフレクタを有する物体であるか否かを判定しやすくなる。その結果、より車両以外の物体を正しく路側構造物として属性付けすることができる。
【0068】
(2)停止車両判別閾値の上限閾値及び下限閾値の変化率を、符号が逆で絶対値が同じとし、その絶対値を物体検出手段の種類に応じて変更するので、自車両前方の物体を検出したセンサの違いによる横幅に関する不確かさの違いを反映した停止物判別閾値を設定することができる。これにより、より正確な停止車両判別を行うことができる。
(3)物体検出手段の種類に応じて停止物判別閾値の設定を適正化するので、物体検出手段としてレーザレーダとCCDカメラとを冗長的に用いた場合でも、適切に停止車両判別処理を行うことができる。
【0069】
(応用例)
なお、上記各実施形態においては、走行制御手段で実施する制御として、外界認識装置10で停止車両であると判断された前方物体を障害物と認識し、自動ブレーキ制御装置12で各車輪に制動力を付与することによって当該障害物との接触を回避するような制御を適用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、上記障害物との接触を回避するために操舵トルクを制御したり、上記障害物と自車両との距離に応じて運転者に対して警報を発したりする制御を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態における車両の概略構成図である。
【図2】停止車両判別装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態における停止車両判別処理を示すフローチャートである。
【図4】func1(X,Y,R)の特性を示す図である。
【図5】func2(Y)の特性を示す図である。
【図6】レーザレーダの不確かさと停止物判別閾値との関係を示す図である。
【図7】第1の実施形態の動作を説明する図である。
【図8】第1の実施形態の動作を説明する図である。
【図9】第2の実施形態における停止車両判別処理を示すフローチャートである。
【図10】func3(Y)の特性を示す図である。
【図11】func4(Y)の特性を示す図である。
【図12】第2の実施形態における停止物判別閾値について説明する図である。
【図13】第2の実施形態の動作を説明する図である。
【図14】第3の実施形態における停止車両判別処理を示すフローチャートである。
【図15】func5(Y)の特性を示す図である。
【図16】第3の実施形態における停止物判別閾値について説明する図である。
【符号の説明】
【0071】
1 レーザレーダ
2 レーダ処理装置
3 撮像装置(CCDカメラ)
4 画像処理装置
5 車速センサ
6 操舵角センサ
10 外界認識装置
12 自動ブレーキ制御装置
14 負圧ブレーキブースタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両前方の物体が停止車両であるか否かを判別する停止車両判別装置、それを備えた自動車及び停止車両判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の停止車両判別装置としては、スキャニング式レーザレーダにて検出した、自車両前方の物体を示す複数の検出点(検出点群)に基づいて、自車両前方の物体が走行車両であるか停止物であるか、停止物であるときには標識等の停止物体であるか停止車両であるかを判別するというものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このとき、停止物体であるか停止車両であるかの判別は、自車両前方の物体を示す検出点群の検出点数、検出点と自車両との距離、及び検出点の端部幅から算出されるデータ充填率に基づいて行っている。
【特許文献1】特開2003−14844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、スキャニング式レーザレーダには、水平方向のレーザビーム幅の細い(主にリフレクタ反射を検出する:リフレクタ反射式レーザ)タイプのものと、レーザビーム幅の広い(主にボディ反射を検出する:ボディ反射式レーザ)タイプのものがある。上記リフレクタ反射式レーザは、水平方向のレーザビーム幅が細いことから、ボディ反射式レーザに比べて高分解能且つ高価であることが特徴である。
【0004】
上記従来の停止車両判別装置では、スキャニング式レーザレーダにて検出した検出点数に基づいて停止車両の判別を行っているので、レーザビーム幅の広いタイプのスキャニング式レーザレーダを適用した場合、その受光感度の高さから、特に自車両から遠方に存在する物体の停止車両判別精度が悪いという未解決の課題がある。また、レーザビーム幅の細いタイプのリフレクタ反射式レーザを適用した場合、コストが嵩むという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、高分解能のレーザレーダを用いなくても、自車両前方の物体が停止車両であるか否かを、精度良く判別することができる停止車両判別装置、それを備えた自動車及び停止車両判別方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る停止車両判別装置は、物体検出手段で自車両前方の物体を検出し、横幅取得手段で、前記物体検出手段で検出された検出物体の横幅を取得し、停止判断手段で、前記前方物体が停止していることを判断し、閾値設定手段で、自車両と前記停止判断手段で停止していると判断された停止物との距離に基づいて停止車両判別閾値を設定し、停止車両判別手段で、その停止物の横幅と前記閾値設定手段で設定された停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別する停止車両判別処理を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自車両と自車両前方の停止物との距離に基づいて、その停止物の横幅と比較するための停止車両判別閾値を設定するので、例えば、自車両と前記停止物との距離が遠ざかるほどレーザビームの広がりが大きくなって物体検知の不確かさが増すことを考慮して前記停止車両判別閾値を設定することができ、自車両前方の停止物が物体であるか車両であるかの判別を精度良く行うことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
(構成)
図1は本発明の実施形態における停止車両判別装置を適用した車両の概略構成図であり、図中符号1は自車両前方の物体を検知するための、例えばスキャニング式のレーザレーダである。図2は、本実施形態における停止車両判別装置の構成を示すブロック図であり、このレーザレーダ1が物体検出手段101に対応している。
【0008】
そして、このレーザレーダ1の走査結果は、レーダ処理装置2に入力され、ここで、レーザレーダ1によって検出した一つ又は複数の物体に対して、各物体の状態量として、自車両を原点とする二次元座標値、つまり、車間距離方向及び車幅方向における座標値が算出されると共に、検知物体の幅(大きさ)が算出される。これが横幅取得手段に対応している。そして、これら算出結果は、外界認識装置10に入力される。このレーザレーダ1及びレーダ処理装置2が状態量検出手段に対応している。
【0009】
また、車両の適所には、自車両前方を撮像し、自車両前方の状況を高速に把握するための物体検出手段としての、例えばプログレッシブスキャン式の3CCDカメラ等で構成される撮像装置3が搭載され、この撮像装置3の撮像結果は画像処理装置4に入力される。この画像処理装置4では、レーダ処理装置2で捕捉したレーダ検知物体の位置座標付近を注目領域としておき、自車両のピッチング変動等によってレーダ検知物体をロストした場合に、カメラ画像によりロストしたレーダ検知物体を検知し続ける等の処理を行う。そして、この画像処理装置4での検知結果は、外界認識装置10に入力される。なお、レーザレーダ1が物体を検知できない走行状況では、前記3CCDカメラの撮像データを画像処理することによる前方物体検知が実施される。
【0010】
また、この車両には、自車両の走行状態を検出するためのセンサとして、従動輪の左右車輪速度を検出する車速センサ5や、前輪操舵角を検出する操舵角センサ6が搭載され、これらセンサの検出値は、前記外界認識装置10に入力される。これら車速センサ5、操舵角センサ6で図2の走行状態検出手段102を構成している。
そして、前記外界認識装置10では、後述する停止車両判別処理によって、レーダ処理装置2で捕捉した各物体が、路側構造物であるか停止車両であるかを判断し、その物体が自車両にとって障害物であるか否かを判断する。そして、その物体が自車両にとって障害物であり、自車両がこの障害物と接触する可能性があると判定される場合には、必要に応じて自動ブレーキ制御装置12に制動指令を出力する。この自動ブレーキ制御装置12では、外界認識装置10からの制動指令に応じて負圧ブレーキブースタ14のソレノイドバルブに制動力指令電圧を印加することで負圧ブレーキブースタ14を作動し、各車輪に制動力を付与して当該障害物との接触を回避するようになっている。
【0011】
この自動ブレーキ制御装置12及び負圧ブレーキブースタ14が走行制御手段に対応している。
なお、前記レーダ処理装置2や、画像処理装置4、外界認識装置10、自動ブレーキ制御装置12は、マイクロコンピュータ等の演算処理装置とその周辺機器、並びに、各アクチュエータを駆動するための駆動回路等を備えており、互いに通信回路を介して情報を送受信できるようになっている。
【0012】
次に、前記外界認識装置10で実行される停止車両判別処理を、図3に示すフローチャートをもとに説明する。
この停止車両判別処理は、所定時間(例えば、100msec)毎のタイマ割込み処理として実行され、先ず、ステップS1で各種データを読み込む。具体的には、車速センサ5で検出された自車速Vsp、操舵角センサ6で検出された操舵角Stを読み込む。
【0013】
次に、ステップS2に移行して、将来の自車走行進路として、曲率半径の逆数Row[1/m]を、次式をもとに算出し、ステップS3に移行する。
Row=1/{(1+A・Vsp2・LWB)/St} ………(1)
ここで、Aは車両固有の値であるスタビリティファクタ(車重、ホイールベース長、重心位置、タイヤの横力で決まる定数)、LWBはホイールベース長、Stは操舵角(右切りがプラス)である。
【0014】
ステップS3では、レーザレーダ1で検出された物体の位置(横方向位置Px_z0[i],前後方向位置Py_z0[i])及び物体の幅(大きさ)objW_z0[i]を読み込み、ステップS4に移行する。ここで、_z0とは、今回のサンプリングにおける検出値であることを意味し、前回のサンプリングにおける検出値は_z1とする。また、[i]は検知物体ごとに割り付けられるID番号を意味しており、i≧0である。
【0015】
ステップS4では、レーザレーダ1で検出された各物体について、自車両との相対速度(横方向相対速度rVx_z0[i],前後方向相対速度rVy_z0[i])を、次式で表される伝達関数G(Z)により算出する。
G(Z)=(cZ2−c)/(Z2−aZ+b) ………(2)
ここで、Zは進み演算子である。また、係数a,b,cは正数であり、これらは所望の擬似微分特性を有するようにサンプリング周期100msで離散化されたものである。また、本実施形態における相対速度の符号は、負の場合を、前後方向=自車両と接近方向、横方向=自車進行方向に対して右側方向とする。
【0016】
次に、ステップS5に移行して、レーザレーダ1で検出された各物体が停止物であるか移動物(走行車両)であるかを判定する。この判定は、各物体の相対速度rVy_z0[i]と自車速Vspとの差分値ΔV[i]の絶対値が属性判別閾値Th以下であるか否かによって行い、ΔV[i]≦Thである場合には、その物体は停止物であると判定する。ここで、属性判別閾値Thは、次式で示されるような特性を有するものとする。
Th=HysTh+Kdw・Vsp ………(3)
ここで、HysThは、停止物と移動物との判定結果が安定するように、停止物から移動物に判定する場合とその逆の場合とでヒステリシスを付与することを意味する変数であり、Kdwは、動回転半径の変動による自車速Vspの誤差(実車速と計測車速との差)の最大見積もり値である。
【0017】
上記(3)式からも明らかなように、自車速Vspが大きくなるほど属性判別閾値Thは大きく設定されるので、自車両前方の検知物体が停止物であると判断する条件が緩和されて、当該検知物体が停止物であると判断されやすくなる。高速走行時には、人間の感覚として、停止車両に対する制御と極低速走行車両に対する制御とを同じにしても違和感がないため、停止車両と極低速走行車両とを区別する必要がない。そのため、自車速Vspが高くなるほど自車両前方の検知物体を停止物であると判断し易くすることで、停止車両を走行車両であると誤判別させるより極低速走行車両を停止車両であると判別させて、運転者への誤判別に対する違和感を低減することができる。
なお、Kdwは、本来の動回転半径の変動に対して数倍以上の大きなゲインであっても良い。このように、動回転半径の変動以上に閾値を停止車両と判定し易くすることで、運転者への誤判別に対する違和感を低減することができる。
【0018】
次に、ステップS6では、各検知物体が自車両の走行予想進路内に存在する可能性Reco[i]を、次式をもとに算出する。
Reco[i]=func1(Px_z0[i],Py_z0[i],Row) ………(4)
ここで、func1(X,Y,R)は、図4に表される特性を有する関数であり、検知物体が自車両の走行予想進路内に存在する可能性が大きいほど、Reco[i]の値は大きく算出される。
【0019】
次に、ステップS7では、各検知物体の選別を行う。具体的には、前記ステップS5の判定結果により停止物であると判断された検知物体と、移動物であると判断された検知物体とを選別し、停止物であると判断された検知物体に対しては後述するステップS10以降の処理を施し、移動物であると判断された検知物体に対してはステップS8以降の処理を施すようにする。
【0020】
ステップS8では、検知物体の属性フラグAttrObjCar[i]を、次式に示すように、物体が走行車両として属性付けされたことを意味する“2”に設定してステップS9に移行する。ここで、属性フラグAttrObjCar[i]は、初期状態は路側構造物に相当する“0”に属性付けされているものとする。
AttrObjCar[i]=2 ………(5)
ステップS9では、微分演算などで用いる変数の過去値を更新してからタイマ割込み処理を終了する。
【0021】
また、ステップS10では、各検知物体が自車両の走行予想進路内に存在するか否かを判定する。この判定は、前記ステップS6で算出されたReco[i]が所定の進路内判断閾値Th_OwnLaneより大きいか否かによって行い、Reco[i]>Th_OwnLaneであるときには、その検知物体が自車両の走行予想進路内に存在すると判断して後述するステップS12に移行し、Reco[i]≦Th_OwnLaneであるときには、その検知物体が自車両の走行予想進路内に存在しないと判断してステップS11に移行する。ここで、進路内判断閾値Th_OwnLaneは、1未満の正数である。
【0022】
ステップS11では、検知物体の属性フラグAttrObjCar[i]を、次式に示すように、物体が路側構造物として属性付けされたことを意味する“0”に設定して前記ステップS9に移行する。
AttrObjCar[i]=0 ………(6)
ところで、レーダの視野角端に物体が存在する場合、その物体がレーダ視野内に完全に収まらないために、正確な物体幅を検知できない場合がある。また、レーダによる物体幅の検出精度は、自車両の正面ほど高くなる。そのため、前記ステップS10の判定結果により、検知物体が自車両の走行予想進路内に存在しないと判断したときには、その検知物体を路側構造物として属性付けすることで、物体の正確な大きさを検知できずに誤った停止車両判別を行ってしまうことを回避することができると共に、レーザの信頼性の高い検知状態で停止車両判別を行うことができる。
【0023】
また、自車走行車線外の遠方に存在する物体の脇を自車両が通過する際に、その物体は自車両の走行予想進路内に存在しなくても、位置精度の低下により自車進路上に侵入してくるものと誤った判断がなされる可能性があるが、この可能性を考慮して、自車両の走行進路外に存在する物体を停止車両であると判別しないことで、位置精度の低下が生じた場合の走行制御システムにおける誤作動や誤警報を軽減することができる。なお、ここで、走行制御システムにおける制御や警報などは、そのタイミングや制御量を“車両”であるか“非車両”であるかに応じて変更する一般的なシステムを用いるものとする。
【0024】
ステップS12では、各検知物体に対して、停止物体であるか停止車両であるかの判別に用いる停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]及び上限閾値Th_Width2[i]を、次式をもとに算出する。
Th_Width1[i]=W1+func2(Py_z0[i]),
Th_Width2[i]=W2−func2(Py_z0[i]) ………(7)
ここで、func2(Y)は、図5に示すような特性を有する関数である。この図5に示すように、func2(Y)の値は自車両と検知物体との前後方向距離Yに比例して大きくなるように設定されている。これにより、自車両と検知物体との距離Yが大きいほど、停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]は大きく、上限閾値Th_Width2[i]は小さく算出されることになる。
【0025】
また、W1,W2は、夫々小型車両の車幅と大型車両の車幅に相当する定数を意味しており、仕向け地によって変更するようにしてもよい。このように、停止物判別閾値Th_Width1[i]及びTh_Width2[i]は、検知物体の横幅と比較するための閾値である。
次に、ステップS13に移行して、検知された停止物が停止車両であるか否かを判定する。この判定は、検知物体の横幅objW_z0[i]が、前記ステップS12で算出された停止物判別閾値Th_Width1[i]及びTh_Width2[i]の範囲内に適合するか否かによって行い、Th_Width1[i]<objW_z0[i]<Th_Width2[i]であるときには、その物体は停止車両であると判断して後述するステップS14に移行する。一方、Th_Width1[i]≧objW_z0[i]又はTh_Width2[i]≦objW_z0[i]であるときには、その物体は路側構造物であると判断して前記ステップS11に移行する。
【0026】
図6は、レーザレーダ1の不確かさと停止物判別閾値との関係を示す図であり、横軸に自車両と検知物体との縦位置(前後方向距離)、縦軸に検知物体の横幅と比較するための停止物判別閾値をとっている。ここで、前述したように、W1は小型車両の車幅、W2は大型車両の車幅であり、平均的な車両の車幅は、このW1からW2までの範囲の値となる。
【0027】
レーザレーダ1のビームの分解能に依存した不確かさは、自車両と検知物体との距離Yが大きくなるほど大きくなる。つまり、図6の破線に示すように、自車両との距離Yが零であるときには不確かさも零であるが、自車両との距離Yが大きくなるほど、例えば横幅W1の物体をレーザレーダ1で検知した場合、その検出値には最大ΔW1の誤差が生じる。
【0028】
したがって、本実施形態のように、検知物体と自車両との距離が大きくなるほど、停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]と上限閾値Th_Width2[i]との差を最大値(W2−W1)から徐々に小さくすることで、自車両から遠方に存在する物体に対して、より確実な方向に上記不確かさの影響を排除することができる。
このとき、各閾値Th_Width1[i]及びTh_Width2[i]の自車両と検知物体と距離に対する変化率は、符号が逆で絶対値が同じとし、その絶対値は、レーザレーダ1の水平方向の分解能に基づいて定める。これにより、レーザレーダの設計仕様に応じた適切な閾値を設定することができる。
【0029】
また、ステップS14では、検知物体の属性フラグAttrObjCar[i]を、次式に示すように、物体が停止車両として属性付けされたことを意味する“1”に設定して前記ステップS9に移行する。
AttrObjCar[i]=1 ………(8)
図3の処理において、ステップS4及びS5の処理が停止判断手段に対応し、ステップS6及びS10の処理が判別許可手段に対応し、ステップS12の処理が閾値設定手段に対応し、ステップS13の処理が停止車両判別手段に対応している。
【0030】
すなわち、図2に示すように、物体検出手段101で検出した前方物体の相対速度と、走行状態検出手段102で検出した自車速とに基づいて、停止判断手段103で、物体検出手段101で検出した物体が停止しているか否かを判断する。また、走行状態検出手段102で検出した自車両の走行状態(自車速及び操舵角)と、物体検出手段101で検出した前方物体の位置とに基づいて、判別許可手段104で、前記停止判断手段103で停止していると判断された物体に対する停止車両判別処理の実行を許可するか否かを判断する。さらに、物体検出手段101で検出した前方物体の自車両までの距離基づいて、閾値設定手段105で、物体検出手段101の検出結果に含まれる不確かさを反映した、検出物体の横幅に関する閾値を設定する。そして、これら停止判断手段103、判別許可手段104及び閾値設定手段105からの出力と、物体検出手段101で検出した前方物体の横幅とに基づいて、停止車両判別手段106で、自車両前方の停止物が物体であるか車両であるかを判別する。
【0031】
(動作)
次に、本発明の第1の実施形態の動作について説明する。
今、図7に示すように、自車両MCが直線路LMを走行中であり、自車前方の停止車両N0(i=0)、路側構造物N1(i=1)及びN2(i=2)をレーザレーダ1で検知しているものとする。この場合、物体N0は自車走行レーンLM内に存在しているため、Reco[0]>Th_OwnLaneとなって、図3のステップS10の判定結果によりステップS12に移行する。このステップS12では、図8に示す物体N0の自車両MCとの前後方向距離Py_z0[0]に応じて、停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[0]がW1とほぼ等しいW1N0に、上限閾値Th_Width2[0]がW2とほぼ等しいW2N0に算出される。そして、Th_Width1[0]<objW_z0[0](=α)<Th_Width2[0]であり、物体N0の幅が停止物判別閾値に適合しているため、この物体N0が停止車両であると判断され、自動ブレーキ制御の対象となる。
【0032】
また、物体N1は、自車走行レーンLM内に存在していないため、Reco[1]≦Th_OwnLaneとなって、ステップS10の判定結果によりステップS11に移行する。このように、自車走行レーン内に存在しない物体は、路側構造物であると判断されて自動ブレーキ制御の対象としないので、自動ブレーキ制御が作動してしまうことに起因する運転者の違和感を防止することができる。
【0033】
また、物体N2は、自車走行レーンLM内に存在しているため、Reco[2]>Th_OwnLaneとなって、ステップS10の判定結果によりステップS12に移行する。このステップS12では、図8に示す物体N2の自車両MCとの前後方向距離Py_z0[2]に応じて、停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[2]がW1より大きいW1N2に、上限閾値Th_Width2[2]がW2より大きいW2N2に算出される。そして、この物体N2の大きさobjW_z0[2](=α)が下限閾値Th_Width1[2]から上限閾値Th_Width2[2]までの範囲内にないことから、この物体N2は路側構造物であると判断され、自動ブレーキ制御の対象外となる。このように、物体N0と物体N2とは同じ大きさであるが、物体N0は停止車両、物体N2は停止物体として判断される。
【0034】
レーザレーダ1と検知物体との前後方向距離が大きいほどビーム幅の広がりは大きくなるため、物体幅の検出値に誤差が生じやすい。そのため、実際は停止物判別閾値に適合しない路側構造物が、物体幅の検出誤差により停止車両であると誤って判断される可能性がある。
これに対して、本実施形態では、自車両前方の検知物体(停止物)と自車両との距離に基づいて停止車両判別閾値を設定するので、レーザレーダのビーム幅の広がりにより、停止物と自車両との距離が遠ざかるほど物体幅の検出精度が悪化することを考慮して停止物判別閾値を設定することができる。すなわち、検知物体と自車両との前後方向距離が大きいほど、レーザレーダ1のビーム幅の照射に関する不確かさが大きいとして、停止物判別閾値の上限閾値と下限閾値との差を小さく設定するので、実際の物体幅に対して生じる誤差を加味した(物体検出手段の検出結果に含まれる不確かさを反映した)閾値を設定することができる。
【0035】
その結果、レーザレーダの検出誤差により自車両から遠方の停止物体N2の横幅が、偶然平均的な車幅であるW1からW2までの範囲内に適合してしまった場合であっても、停止車両であると誤判別することを抑制することができ、レーザレーダのビーム幅の広がりを不確かさとして考慮してより高精度な停止車両判別を行うことができる。
【0036】
(第1の実施形態の効果)
(1)自車両前方の停止物の横幅と、閾値設定手段で自車両とその停止物との距離に基づいて設定される停止車両判別閾値とを比較することで、停止車両判別手段が、その停止物が車両であるか否かを判別する。
したがって、物体検出手段による検出結果の不確かさを反映した閾値を用いて、適切に停止車両判別処理を行うことができる。その結果、ビーム幅の細い高分解能レーザレーダ(リフレクタ反射式レーザ)を用いなくても、高精度で停止車両判別を行うことができる。
【0037】
(2)停止物判別閾値として上限閾値と下限閾値とを設け、自車両と停止物との距離が遠ざかるほど、上限閾値を小さく、下限閾値を大きくするので、物体検出手段による検出結果の不確かさを反映した閾値をより適切に設定することができる。また、このようにして設定された閾値を用いることで、より高精度な停止車両判別を行うことができる。
【0038】
(3)物体検出手段の水平方向の分解能に基づいて、上限閾値及び下限閾値を変化させるので、物体検出手段の設計仕様に応じた適切な停止物判別閾値を設定することができる。その結果、自車両から遠方の停止物体を停止車両であると誤判別することを防止することができる。
(4)走行状態検出手段で検出された走行状態に基づいて停止車両判別処理の実行を許可された停止物に対して、当該停止車両判別処理を行うので、判別精度が高められる走行状況下で停止車両判別処理を行うことができる。
【0039】
(5)自車両前方の停止物のうち自車両の走行進路上にある停止物に対してのみ、停止車両判別処理の実行を許可する。したがって、検知物体がレーダ視野内に完全に収まらない場合に誤った停止車両判別を行ってしまうことを防止することができると共に、常にレーダの信頼性の高い検知状態で停止車両判別を行うことができる。
(6)自車速が速いほど、自車両前方の検知物体が停止していると判断し易くするため、動回転半径の変化に対応することができ、停止車両を走行車両であると誤判別するより走行車両を停止車両であると判別して、運転者への誤判別に対する違和感を低減することができる。
【0040】
(7)自車両前方の物体を検出する検出手段の検出結果に含まれる不確かさを反映した、検出物体の横幅に関する判別条件に基づいて、検出物体が停止車両であるか否かを判別するので、適切に停止車両判別処理を行うことができる。
(8)自車両前方の検出物体が停止車両であるか否かを判別し、その判別結果に応じた走行制御を行う。したがって、停止車両であると判別された検出物体を障害物である認識し、自動ブレーキ制御装置で各車輪に制動力を付与することによって当該障害物との接触を回避することができ、安定走行を確保することができる。
【0041】
(9)自車両と、物体検出手段で検出された自車両前方の物体のうち停止していると判断された停止物との距離に基づいて、停止車両判別閾値を設定し、その停止物の横幅と前記停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別する。したがって、適切に停止車両判別処理を行うことができると共に、ビーム幅の細い高分解能レーザレーダ(リフレクタ反射式レーザ)を用いなくても、高精度で停止車両判別を行うことができる。
【0042】
(応用例)
なお、上記第1の実施形態においては、検知物体が自車両の走行進路上に存在するときに、停止車両判別処理の実行を許可する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、検知物体が自車両の正面に存在するときに停止車両判別処理の実行を許可するようにしてもよい。この場合にも、検知物体がレーダ視野内に完全に収まらないことに起因する誤判別を防止することができると共に、常にレーダの信頼性の高い検知状態で停止車両判別を行うことができる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
(構成)
この第2の実施形態では、より遠方の検知物体に対する誤判別の対策、及び雨天などで生じ易いガントリーなどに装着されている案内標識等に対する誤判別の対策を行うようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態の停止車両判別処理を図9に示すように、図3の第1の実施形態の停止車両判別処理におけるステップS6の後に、各検知物体の状態量(横方向位置)の安定度合いPxV[i]を算出するステップS21を追加し、ステップS10の前に前記横方向位置の安定度合いPxV[i]に基づいて、各検知物体の横方向位置が安定しているか否かを判定するステップS22を追加し、ステップS12の処理をステップS23の処理に置換したことを除いては、前述した図3と同様の処理を実行するため、図3との対応部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。このステップS21及びS22の処理が判別許可手段に対応し、ステップS23の処理が閾値設定手段に対応している。
【0044】
ステップS21では、各検知物体の横方向位置の安定度合いとして、次式で表される標準偏差PxV[i]を算出し、前記ステップS7に移行する。
n=func3(Py_z0[i]),
A=(Px_z0[i]+Px_z1[i]+…+Px_zn[i])/(n+1),
PxV[i]=√[{(Px_z0[i]−A)2+(Px_z1[i]−A)2+…+(Px_zn[i]−A)2}/(n+1)] ………(9)
ここで、func3(Y)は、図10に示されるような特性を有する関数であり、func3(Y)の値は、自車両と検知物体との距離Yが大きくなるにつれて段階的に大きくなるように設定されている。つまり、nは、過去にさかのぼる期間の長さのサンプリング数であって、Aは、その期間中の平均値を意味している。
【0045】
この(9)式からも明らかなように、各検知物体の横方向位置の分散値は、各検知物体の横方向位置の過去の参照期間のサンプリングデータに基づいて算出し、そのサンプリングデータの数nは、自車両とその検知物体との前後方向距離Yが大きいほど多くなるように設定されている。言い換えると、上記参照期間(各検知物体の横方向位置の分散値の算出期間)は、自車両とその検知物体との前後方向距離Yが大きいほど長く(過去にさかのぼるように)設定されている。
【0046】
また、ステップS22では、前記ステップS21で算出された各検知物体の横方向位置の安定度合いPxV[i]に基づいて、各検知物体の横方向位置が安定しているか否かを判定する。この判定は、下記(10)式を満足するか否かによって行い、下記(10)式を満足するときには、その物体の横方向位置が安定しているものと判断して前記ステップS10に移行し、下記(10)式を満足しないときには前記ステップS11に移行する。
PxV[i]<Th_V ………(10)
ここで、Th_Vは、ばらつきに関する閾値である。このように、横方向位置が安定しない物体を、幅情報を問わず路側構造物である(停止車両ではない)と判定するので、より誤判別の少ない停止車両判別が可能となる。
【0047】
上記(9)式に表されるように、検知物体との位置が自車両から離れるほど過去にさかのぼって横方向位置の安定度合いPxV[i]を算出するので、保守的な算出結果となる。これにより、遠方に存在する物体の横方向位置の検出精度が低いために、本来は停止車両判別をすべきでない物体に対して誤って停止車両判別処理を施し、誤って停止物体を停止車両であると判別してしまうことを抑制することができる。
【0048】
ステップS23では、各検知物体に対して、停止物体であるか停止車両であるかの判別に用いる停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]及び上限閾値Th_Width2[i]を、次式をもとに算出し、前記ステップS13に移行する。
Th_Width1[i]=W1+func4(Py_z0[i]),
Th_Width2[i]=W2−func4(Py_z0[i]) ………(11)
【0049】
ここで、func4(Y)は、図11に示すような特性を有する関数である。この図11に示すように、func4(Y)の値は自車両と検知物体との距離Yが大きくなるほど大きくなるように設定されており、その変化率の絶対値は、距離Yが所定値YTH(例えば、35m程度)まではfunc2(Y)と同等であり、所定値YTHを超えるとfunc2(Y)より大きく設定されている。これにより、自車両と検知物体との距離が大きいほど、停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]はより大きく、上限閾値Th_Width2[i]はより小さく算出されることになる。
【0050】
つまり、このときの停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]及び上限閾値Th_Width2[i]を図12に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、各閾値の差は、自車両と検知物体との距離が大きくなるほど小さくなるように設定され、各閾値の変化率は、符号が逆で絶対値が同じになる。ここで、その絶対値は、自車両と検知物体との距離が大きくなるほど、より大きくなるように設定されるため、より停止車両であると判断し難くなる。
これにより、自車両からより遠方の停止物体に対して、レーザの反射状況が想定外の結果となることでその物体の横幅が偶然W1からW2までの範囲に適合してしまい、誤って停止車両と判別してしまうことをより低減することができる。
【0051】
(動作)
次に、本発明の第2の実施形態の動作について説明する。
今、雨天時に自車両が高速道路を走行中であり、図13に示すように、自車両前方にガントリーGaに横一列に装着された案内標識Sが存在するものとする。雨天時には、レーザ発光から受光において2次反射が生じ易く、案内標識等の看板をレーザレーダで検知し易くなる。そのため、このような走行環境では、ガントリーに取り付けられた横一列に並ぶ看板のどこからレーザ光が反射するか分からないため、検知物体の横方向位置が安定しないという現象が生じ易い。
そして、この案内標識Sの横位置の安定度合いPxV[i]が、図9のステップS21で閾値Th_V以上に算出されると、ステップS22の判定によりステップS11に移行して、路側構造物であると判別される。
【0052】
(第2の実施形態の効果)
(1)検知物体の状態量の安定度合いに基づいて当該状態量が安定していると判断されたときに、その物体に対する停止車両判別手段の実行を許可するので、路側構造物を停止車両であると誤判別することを抑制することができる。
(2)前記検知物体の状態量として検知物体の横方向位置を適用するので、検知物体の横方向位置が安定しない検知状況における判別処理の誤作動を抑制することができる。
つまり、検知物体の横方向位置が安定しない検知状況で、本来は停止車両判別処理を行うべき停止物に対して誤って判別処理が行わなかったり、本来は停止車両判別処理を行わない停止物に対して誤って判別処理が行われてしまったりすることを抑制することができる。また、反射率の高いガントリーなどに対して停止車両判別処理を行った場合、誤って停止車両であると誤判別することを確実に回避することができる。
【0053】
(3)検知物体の状態量の安定度合いとして、当該状態量の分散値に基づいて算出される標準偏差を用いる。分散値は、前記状態量の過去の参照期間におけるサンプリングデータに基づいて算出し、その参照期間を、検知物体と自車両との距離が遠いほど長くなるように設定する。したがって、遠方に存在する物体の状態量の検出精度を考慮して、より誤判別を低減することができる。
(4)停止車両判別閾値の上限閾値及び下限閾値の自車両と停止物との距離に対する変化率を、符号が逆で絶対値が同じとし、その絶対値を自車両と検知物体との距離が大きくなるほどより大きくするので、より遠方の物体を停止車両であると判断し難くして、より誤判別を低減することができる。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
(構成)
この第3の実施形態は、物体検出手段として、レーザレーダとCCDカメラとを併用し、これらを用いて停止車両判別処理を行うようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態の停止車両判別処理を図14に示すように、図9の第2の実施形態の停止車両判別処理におけるステップS21の後に、検知物体に対してデリニエータの属性付けを行うステップS31と、CCDカメラ3により画像処理する検知物体を決定するステップS32と、ステップS32で決定した物体の横幅をCCDカメラ3で検出するステップS33と、ステップS32で決定した物体の横幅をステップS33の検出値に更新するステップS34と、各検知物体の状態量(横幅)の安定度合いoWv[i]を算出するステップS35とを追加し、ステップS10の後に横幅の安定度合いoWv[i]に基づいて、各検知物体の横幅が安定しているか否かを判定するステップS36を追加し、ステップS23の処理をステップS37の処理に置換したことを除いては、前述した図9と同様の処理を実行するため、図9との対応部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。このステップS35及びS36の処理が判別許可手段に対応し、ステップS37の処理が閾値設定手段に対応している。
【0055】
ステップS31では、各検知物体の相対位置から道路形状を形成する物体を道路構造物(デリニエータ)として属性付けし、ステップS32に移行する。
ステップS32では、CCDカメラ3により画像処理する検知物体を決定する。具体的には、先ず、自車両前方の物体のうち停止物であると判別された物体であり、且つこれまでは路側構造物(AttrObjCar[i]=0)として属性付けされている物体であり、且つ前記ステップS6で算出される自車両の走行予想進路内に存在する可能性Reco[i]がTh_OwnLaneより大きく、自車両の走行予想進路内に存在する物体の中で、最も自車両に近い距離に存在する物体を選択する。そして、選択した物体のID番号をcam_chk_idという変数に代入する。ここで、上記条件に該当する物体が存在しない場合には、cam_chk_idには負の値(例えば、−1)を代入する。
【0056】
次に、ステップS33に移行して、前記ステップS32で設定したcam_chk_idが負の値でない場合に、その物体のレーザレーダ検知位置に基づいてカメラ画像処理により物体幅CamWidthを算出し、ステップS34に移行する。ここで、cam_chk_idが負の値であるときにはカメラ画像処理を行わずにステップS34に移行する。
【0057】
ここで、カメラ画像処理による物体幅CamWidthの算出方法としては、例えば、画像処理領域について、公知のSobelフィルター演算等によりエッジ画像を求め、このエッジ画像から、縦エッジのペアとその間の横エッジ(H型のエッジ)を探す。そして、縦エッジペア(H型エッジにおける左側の縦エッジと右側の縦エッジと)の画素間隔Ewと検知物体の距離とに基づいて、下記(12)式をもとに、物体幅CamWidthを算出する。
CamWidth=Ew・Py_z0[cam_chk_id]/focusH ………(12)
ここで、focusHは、画素換算したカメラの水平方向の焦点距離[pix]である。
ステップS34では、前記ステップS33の画像処理で検出した物体幅CamWidthから、レーザ検知物体の幅を修正する。
objW_z0[cam_chk_id]=CamWidth ………(13)
【0058】
このように、自車両前方の物体のうち、自車両の走行予想進路内に存在する路側構造物で最も自車両に近い距離に存在する物体について、その物体幅をカメラ画像処理により算出するので、万が一、停止車両を停止物体と誤判別している場合であっても、物体幅が正確な値に更新されることにより適切な停止車両判別を行うことができる。また、最も自車両に近い距離に存在する物体のみをカメラ画像処理する物体として選定するので、カメラ画像処理の負荷が大きくなることを抑制することができる。
【0059】
次に、ステップS35に移行して、各検知物体の横幅の安定度合いとして、次式で表される標準偏差oWv[i]を算出し、前記ステップS7に移行する。
n=func3(Py_z0[i]),
A=(objW_z0[i]+objW_z1[i]+…+objW_zn[i])/(n+1),
oWv[i]=√[{(objW_z0[i]−A)2+(objW_z1[i]−A)2+…+(objW_zn[i]−A)2}/(n+1)] ………(14)
【0060】
この(14)式からも明らかなように、各検知物体の横幅の分散値は、各検知物体の横幅の過去のサンプリングデータに基づいて算出し、そのサンプリングデータの数nは、自車両とその検知物体との前後方向距離Yが大きいほど多くなるように設定されている。言い換えると、各検知物体の横幅の分散値の算出期間は、自車両とその検知物体との前後方向距離Yが大きいほど過去にさかのぼるように設定されている。
【0061】
また、前記ステップS10の判定結果がYes、即ち検知物体が自車両の予想進路内に存在する場合には、ステップS36に移行し、このステップS36で、前記ステップS35で算出された各検知物体の横幅の安定度合いoWv[i]に基づいて、各検知物体の横幅が安定しているか否かを判定する。
この判定は、下記(15)式を満足するか否かによって行い、下記(15)式を満足するときには横幅が安定しているものと判断してステップS37に移行し、下記(15)式を満足しないときには前記ステップS11に移行する。
oWv[i]<Th_v ………(15)
ここで、Th_vは、ばらつきに関する閾値である。このように、横幅が安定しない物体を路側構造物である(停止車両ではない)と判定するので、より誤判別の少ない停止車両判別が可能となる。
【0062】
上記(14)式に表されるように、検知物体との位置が自車両から離れるほど過去にさかのぼって横幅の安定度合いoWv[i]を算出するので、保守的な算出結果となる。これにより、遠方に存在する物体の横幅制度が低いために、本来は停止車両でないと判別されるべき物体に対して誤って停止車両と判別してしまうことを抑制することができる。
【0063】
ステップS37では、各検知物体に対して、停止物体か停止車両かの判別に用いる停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]及び上限閾値Th_Width2[i]を算出する。検知物体のID番号がcam_chk_idと異なる場合には、前述した第1の実施形態におけるステップS12と同様に、前記(7)式をもとに算出し、検知物体のID番号がcam_chk_idと同じ場合には次式をもとに算出し、前記ステップS13に移行する。
Th_Width1[i]=W1+func5(Py_z0[i]),
Th_Width2[i]=W2−func5(Py_z0[i]) ………(16)
【0064】
ここで、func5(Y)は、図15に示すような特性を有する関数である。この図15に示すように、func5(Y)の値は自車両と検知物体との距離Yに比例して大きくなるように設定されており、その変化率の絶対値は、func2(Y)と比較して小さく設定されている。これにより、カメラ画像処理が施された物体に対しては、停止判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]は、距離Yが大きくなるほど大きくなるもののW1にほぼ等しく、上限閾値Th_Width2[i]は、距離Yが大きくなるほど小さくなるもののW2にほぼ等しく算出されることになる。
【0065】
つまり、このときの停止物判別閾値の下限閾値Th_Width1[i]及び上限閾値Th_Width2[i]を図16に示すように、前述した第1の実施形態と同様に、各閾値の差は、自車両と検知物体との距離が大きくなるほど小さくなるように設定され、各閾値の変化率は、符号が逆で絶対値が同じになる。そして、その絶対値は、物体を検知したセンサの種類(レーザレーダかCCDカメラか)によって異なり、レーザレーダで検知した場合には実線で示すように絶対値は大きく設定され、CCDカメラで検知した場合には一点鎖線で示すように絶対値は小さく設定される。これは、レーザレーダとCCDカメラとの分解能に依存した不確かさの違いに基づくものである。
【0066】
(動作)
次に、本発明の第3の実施形態の動作について説明する。
今、図13に示すように、自車両前方にガントリーGaに横一列に装着された案内標識Sが存在するものとする。一般に、案内標識等の看板は、レーザ発光から受光における反射が安定せず、物体幅の検出値が安定し難くなる。そして、この案内標識Sの横幅の安定度合いoWv[i]が、図14のステップS35で閾値Th_v以上に算出されると、ステップS36の判定によりステップS11に移行して、路側構造物であると判別される。
【0067】
(第3の実施形態の効果)
(1)検知物体の状態量としての検知物体の横幅を適用するので、検知物体の横幅が安定しない検知状況における判別処理の誤作動を抑制することができる。
つまり、検知物体の横幅が安定しない検知状況で、偶然平均的な車幅であるW1からW2までの範囲に適合して誤った停止車両判別を行ってしまうことを抑制することができる。具体的には、反射の安定しないガントリーなどを誤って停止車両であると誤判別することを回避することができる。さらに、検知物が車両背面の反射板であるリフレクタを有する物体であるか否かを判定しやすくなる。その結果、より車両以外の物体を正しく路側構造物として属性付けすることができる。
【0068】
(2)停止車両判別閾値の上限閾値及び下限閾値の変化率を、符号が逆で絶対値が同じとし、その絶対値を物体検出手段の種類に応じて変更するので、自車両前方の物体を検出したセンサの違いによる横幅に関する不確かさの違いを反映した停止物判別閾値を設定することができる。これにより、より正確な停止車両判別を行うことができる。
(3)物体検出手段の種類に応じて停止物判別閾値の設定を適正化するので、物体検出手段としてレーザレーダとCCDカメラとを冗長的に用いた場合でも、適切に停止車両判別処理を行うことができる。
【0069】
(応用例)
なお、上記各実施形態においては、走行制御手段で実施する制御として、外界認識装置10で停止車両であると判断された前方物体を障害物と認識し、自動ブレーキ制御装置12で各車輪に制動力を付与することによって当該障害物との接触を回避するような制御を適用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、上記障害物との接触を回避するために操舵トルクを制御したり、上記障害物と自車両との距離に応じて運転者に対して警報を発したりする制御を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態における車両の概略構成図である。
【図2】停止車両判別装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態における停止車両判別処理を示すフローチャートである。
【図4】func1(X,Y,R)の特性を示す図である。
【図5】func2(Y)の特性を示す図である。
【図6】レーザレーダの不確かさと停止物判別閾値との関係を示す図である。
【図7】第1の実施形態の動作を説明する図である。
【図8】第1の実施形態の動作を説明する図である。
【図9】第2の実施形態における停止車両判別処理を示すフローチャートである。
【図10】func3(Y)の特性を示す図である。
【図11】func4(Y)の特性を示す図である。
【図12】第2の実施形態における停止物判別閾値について説明する図である。
【図13】第2の実施形態の動作を説明する図である。
【図14】第3の実施形態における停止車両判別処理を示すフローチャートである。
【図15】func5(Y)の特性を示す図である。
【図16】第3の実施形態における停止物判別閾値について説明する図である。
【符号の説明】
【0071】
1 レーザレーダ
2 レーダ処理装置
3 撮像装置(CCDカメラ)
4 画像処理装置
5 車速センサ
6 操舵角センサ
10 外界認識装置
12 自動ブレーキ制御装置
14 負圧ブレーキブースタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の物体を検出する物体検出手段と、該物体検出手段で検出された検出物体が停止車両であるか否かを判別する停止車両判別装置において、
前記検出物体の横幅を取得する横幅取得手段と、前記検出物体が停止していることを判断する停止判断手段と、自車両と前記停止判断手段で停止していると判断された停止物との距離に基づいて停止車両判別閾値を設定する閾値設定手段と、その停止物の横幅と前記閾値設定手段で設定された停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別する停止車両判別処理を行う停止車両判別手段とを備えることを特徴とする停止車両判別装置。
【請求項2】
前記閾値設定手段は、停止車両判別閾値として、上限閾値と下限閾値とを設定するものであり、自車両と前記停止物との距離が遠ざかるほど、上限閾値を小さく、下限閾値を大きく設定し、前記停止車両判別手段は、前記停止物の横幅が前記上限閾値及び前記下限閾値の範囲に適合すると判断されたとき、当該停止物が車両であると判別することを特徴とする請求項1に記載の停止車両判別装置。
【請求項3】
前記閾値設定手段は、前記物体検出手段の水平方向の分解能に基づいて、上限閾値及び下限閾値を変化させることを特徴とする請求項2に記載の停止車両判別装置。
【請求項4】
自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、該走行状態検出手段で検出された走行状態に基づいて、前記停止物に対する前記停止車両判別手段による前記停止車両判別処理の実行を許可する判別許可手段とを備え、前記停止車両判別手段は、前記判別許可手段で前記停止車両判別処理の実行を許可された停止物に対して、前記停止車両判別処理を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の停止車両判別装置。
【請求項5】
前記判別許可手段は、前記停止物の位置が、自車両の走行進路上にあると判断されたとき、前記停止車両判別処理の実行を許可することを特徴とする請求項4に記載の停止車両判別装置。
【請求項6】
自車両から見た横方向における前記停止物の状態量を検出する状態量検出手段を備え、前記判別許可手段は、前記状態量検出手段で検出された停止物の状態量の安定度合いに基づいて、当該状態量が安定していると判断されたとき、前記停止車両判別処理の実行を許可することを特徴とする請求項4又は5に記載の停止車両判別装置。
【請求項7】
前記停止物の状態量は、前記停止物の横方向位置であることを特徴とする請求項6に記載の停止車両判別装置。
【請求項8】
前記停止物の状態量は、前記停止物の横幅であることを特徴とする請求項6又は7に記載の停止車両判別装置。
【請求項9】
前記停止物の状態量の安定度合いは、当該状態量の過去の参照期間におけるサンプリングデータから求まる分散値に基づいて算出し、前記参照期間を、自車両とその停止物との距離が遠ざかるほど長くすることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の停止車両判別装置。
【請求項10】
前記停止判断手段は、自車速が大きいほど、前記物体検出手段で検出された前方物体が停止していると判断する条件を緩和することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の停止車両判別装置。
【請求項11】
自車両前方の物体を検出する検出手段を備え、その検出物体が停止車両であるか否かを判別する停止車両判別装置において、
前記検出手段の検出結果に含まれる不確かさを反映した、検出物体の横幅に関する判別条件に基づいて、検出物体が停止車両であるか否かを判別する判別手段を備えることを特徴とする停止車両判別装置。
【請求項12】
自車両前方の物体が停止車両であるか否かを判別する停止車両判別装置を備える自動車において、
前記停止車両判別装置は、自車両前方の物体を検出する物体検出手段と、該物体検出手段で検出された検出物体が停止していることを判断する停止判断手段と、該停止判断手段で判断された停止物の横幅を取得する横幅取得手段と、自車両と前記停止物との距離に基づいて停止車両判別閾値を設定する閾値設定手段と、前記横幅取得手段で取得されたその停止物の横幅と前記閾値設定手段で設定された停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別する停止車両判別処理を行う停止車両判別手段と、前記停止車両判別手段による停止車両判別処理結果に応じた走行制御を行う走行制御手段とを備えることを特徴とする自動車。
【請求項13】
自車両前方の物体が停止車両であるか否かを判別する停止車両判別方法において、
自車両と、物体検出手段で検出された自車両前方の物体のうち停止していると判断された停止物との距離に基づいて、停止車両判別閾値を設定し、その停止物の横幅と前記停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別することを特徴とする停止車両判別方法。
【請求項1】
自車両前方の物体を検出する物体検出手段と、該物体検出手段で検出された検出物体が停止車両であるか否かを判別する停止車両判別装置において、
前記検出物体の横幅を取得する横幅取得手段と、前記検出物体が停止していることを判断する停止判断手段と、自車両と前記停止判断手段で停止していると判断された停止物との距離に基づいて停止車両判別閾値を設定する閾値設定手段と、その停止物の横幅と前記閾値設定手段で設定された停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別する停止車両判別処理を行う停止車両判別手段とを備えることを特徴とする停止車両判別装置。
【請求項2】
前記閾値設定手段は、停止車両判別閾値として、上限閾値と下限閾値とを設定するものであり、自車両と前記停止物との距離が遠ざかるほど、上限閾値を小さく、下限閾値を大きく設定し、前記停止車両判別手段は、前記停止物の横幅が前記上限閾値及び前記下限閾値の範囲に適合すると判断されたとき、当該停止物が車両であると判別することを特徴とする請求項1に記載の停止車両判別装置。
【請求項3】
前記閾値設定手段は、前記物体検出手段の水平方向の分解能に基づいて、上限閾値及び下限閾値を変化させることを特徴とする請求項2に記載の停止車両判別装置。
【請求項4】
自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、該走行状態検出手段で検出された走行状態に基づいて、前記停止物に対する前記停止車両判別手段による前記停止車両判別処理の実行を許可する判別許可手段とを備え、前記停止車両判別手段は、前記判別許可手段で前記停止車両判別処理の実行を許可された停止物に対して、前記停止車両判別処理を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の停止車両判別装置。
【請求項5】
前記判別許可手段は、前記停止物の位置が、自車両の走行進路上にあると判断されたとき、前記停止車両判別処理の実行を許可することを特徴とする請求項4に記載の停止車両判別装置。
【請求項6】
自車両から見た横方向における前記停止物の状態量を検出する状態量検出手段を備え、前記判別許可手段は、前記状態量検出手段で検出された停止物の状態量の安定度合いに基づいて、当該状態量が安定していると判断されたとき、前記停止車両判別処理の実行を許可することを特徴とする請求項4又は5に記載の停止車両判別装置。
【請求項7】
前記停止物の状態量は、前記停止物の横方向位置であることを特徴とする請求項6に記載の停止車両判別装置。
【請求項8】
前記停止物の状態量は、前記停止物の横幅であることを特徴とする請求項6又は7に記載の停止車両判別装置。
【請求項9】
前記停止物の状態量の安定度合いは、当該状態量の過去の参照期間におけるサンプリングデータから求まる分散値に基づいて算出し、前記参照期間を、自車両とその停止物との距離が遠ざかるほど長くすることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の停止車両判別装置。
【請求項10】
前記停止判断手段は、自車速が大きいほど、前記物体検出手段で検出された前方物体が停止していると判断する条件を緩和することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の停止車両判別装置。
【請求項11】
自車両前方の物体を検出する検出手段を備え、その検出物体が停止車両であるか否かを判別する停止車両判別装置において、
前記検出手段の検出結果に含まれる不確かさを反映した、検出物体の横幅に関する判別条件に基づいて、検出物体が停止車両であるか否かを判別する判別手段を備えることを特徴とする停止車両判別装置。
【請求項12】
自車両前方の物体が停止車両であるか否かを判別する停止車両判別装置を備える自動車において、
前記停止車両判別装置は、自車両前方の物体を検出する物体検出手段と、該物体検出手段で検出された検出物体が停止していることを判断する停止判断手段と、該停止判断手段で判断された停止物の横幅を取得する横幅取得手段と、自車両と前記停止物との距離に基づいて停止車両判別閾値を設定する閾値設定手段と、前記横幅取得手段で取得されたその停止物の横幅と前記閾値設定手段で設定された停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別する停止車両判別処理を行う停止車両判別手段と、前記停止車両判別手段による停止車両判別処理結果に応じた走行制御を行う走行制御手段とを備えることを特徴とする自動車。
【請求項13】
自車両前方の物体が停止車両であるか否かを判別する停止車両判別方法において、
自車両と、物体検出手段で検出された自車両前方の物体のうち停止していると判断された停止物との距離に基づいて、停止車両判別閾値を設定し、その停止物の横幅と前記停止車両判別閾値とを比較することで、当該停止物が車両であるか否かを判別することを特徴とする停止車両判別方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−93347(P2007−93347A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282150(P2005−282150)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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