説明

像保持体及びこれを用いた画像形成装置

【課題】画素電極に作用させる潜像電位が小さくても良好な現像がなされ且つ高画質画像が得られる像保持体及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】移動可能な支持体2と、この支持体2表面に支持され、画素毎に印加される画像信号電圧によって潜像模様が形成可能な画素電極3と、少なくとも画素電極3上に設けられる光導電層4とを有する像保持体1と、画素電極3夫々に対し潜像電圧を印加することで像保持体1に潜像模様を形成する潜像形成手段5と、潜像形成手段5にて形成された潜像模様をトナーにて現像する現像手段6と、潜像形成手段5より像保持体1の移動方向下流側で現像手段6と像保持体1とが対向する現像部位までに像保持体1に対向して設けられ、光導電層4を光照射する潜像調整照射手段7と、現像手段6にて現像されたトナー像を転写媒体8に転写する転写手段9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像保持体及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ等の画像形成装置で用いられる画像形成方式として電子写真方式が用いられる。これは、コロナ放電器や帯電ロール等の帯電器によって帯電された感光体に対して、レーザやLEDアレイを用いて光イメージを照射することで静電潜像を形成し、この形成された静電潜像に対し帯電したトナーを用いて現像することで可視像化するようにしたものである。そして、このように電子写真方式を利用した画像形成装置は、オンデマンド性に優れ、普通紙への画像形成が可能なことから、オフィスを中心に広く普及している。
【0003】
一方、電子写真方式での環境影響への配慮などから、マトリクス状に画素電極を配列して帯電器を使用しない方式の画像形成装置が提案されている(特許文献1〜4参照)。特許文献1には、薄膜トランジスタ(TFT)をマトリクス状に形成すると共に蓄積容量を夫々のTFTに設け、蓄積容量での電荷蓄積効果により安定した現像を行うようにした方式の画像形成装置が提案されている。また、特許文献2には、スイッチング素子をマトリクス状に構成し、レーザ照射によって走査ラインを選択し、選択された走査ライン上の画素毎の表面電位を変化させるようにした方式の画像形成装置が提案されている。更に、特許文献3には、マトリクス状に配列したスイッチング素子毎に二層分割された蓄積容量を持たせ、画像部/非画像部の電位を調整した構成が提案されている。そして、特許文献4には、マトリクス状に配列したスイッチング素子を使って画素毎の潜像を形成する方式の画像形成装置が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3233463号公報(実施例、図4)
【特許文献2】特開2002−326382号公報(実施の形態1、図1)
【特許文献3】特開2003−32440号公報(発明の実施の形態、図1)
【特許文献4】特開2004−219635号公報(実施の形態1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、画素単位でマトリクス状に配列された画素電極を有する像保持体を用いて画像形成を行うに際し、画素電極に作用させる潜像電位が小さくても良好な現像がなされ且つ本願の構成を有しない場合に比して高信頼、高画質な画像が得られる像保持体及びこれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、移動可能な支持体と、この支持体表面に支持され、画素単位で支持体の移動方向に沿った副走査方向及びこれに交差する主走査方向に配列され且つ画素毎に印加される画像信号電圧によって潜像模様が形成可能な画素電極と、少なくとも画素電極上に設けられる光導電層とを備える像保持体である。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る像保持体において、前記光導電層は、画素電極及び画素電極間を覆うように支持体表面に亘って設けられる像保持体である。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る像保持体において、隣り合う画素電極間に当該部位の光導電層に対して光が遮られる遮光部を有する像保持体である。
【0007】
請求項4に係る発明は、移動可能な支持体と、この支持体表面に支持され、画素単位で支持体の移動方向に沿った副走査方向及びこれに交差する主走査方向に配列され且つ画素毎に印加される画像信号電圧によって潜像模様が形成可能な画素電極と、少なくとも画素電極上に設けられる光導電層とを有する像保持体と、前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで前記像保持体に潜像模様を形成する潜像形成手段と、この潜像形成手段にて形成された潜像模様をトナーにて現像する現像手段と、潜像形成手段より像保持体の移動方向下流側で現像手段と像保持体とが対向する現像部位までに像保持体に対向して設けられ且つ光導電層を光照射する潜像調整照射手段と、前記現像手段にて現像されたトナー像を転写媒体に転写する転写手段とを備える画像形成装置である。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る画像形成装置において、潜像調整照射手段は、現像部位に対し光照射するように設けられる画像形成装置である。
請求項6に係る発明は、請求項4又は5に係る画像形成装置において、潜像調整照射手段は、像保持体の移動方向及びこれに交差する幅方向に沿った記録材の長さに対応した領域の光導電層を光照射するようにした画像形成装置である。
請求項7に係る発明は、請求項4乃至6のいずれかに係る画像形成装置において、前記支持体及び前記画素電極は透光性材料によって形成され、潜像調整照射手段は支持体側から光照射するように配置される画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項4乃至7のいずれかに係る画像形成装置において、像保持体は、隣り合う画素電極間に当該部位の光導電層に対して光が遮られる遮光部を有する画像形成装置である。
請求項9に係る発明は、請求項4乃至8のいずれかに係る画像形成装置において、更に、転写手段より像保持体の移動方向下流側で且つ現像部位より上流側にて像保持体に対向して設けられ、光導電層を光照射によって除電する除電照射手段を備える画像形成装置である。
【0009】
請求項10に係る発明は、移動可能な支持体と、この支持体表面に支持され、画素単位で支持体の移動方向に沿った副走査方向及びこれに交差する主走査方向に配列され且つ画素毎に印加される画像信号電圧によって潜像模様が形成可能な画素電極と、少なくとも画素電極上に設けられる光導電層とを有する像保持体と、前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで前記像保持体に潜像模様を形成する潜像形成手段と、この潜像形成手段にて形成された潜像模様をトナーにて現像する現像手段と、この現像手段にて現像されたトナー像を転写媒体に転写する転写手段と、この転写手段より像保持体の移動方向下流側で且つ現像部位より上流側にて像保持体に対向して設けられ、光導電層を光照射によって除電する除電照射手段とを備える画像形成装置である。
【0010】
請求項11に係る発明は、請求項10に係る画像形成装置において、前記除電照射手段は、転写手段より像保持体の移動方向下流側で且つ潜像形成手段による潜像形成位置より上流側に設けられる画像形成装置である。
請求項12に係る発明は、請求項9乃至11のいずれかに係る画像形成装置において、光導電層は、除電照射手段の光照射によって現像に供されるトナーの帯電極性と同極性の電荷に対する輸送能を有するものである画像形成装置である。
請求項13に係る発明は、請求項4乃至12のいずれかに係る画像形成装置において、前記潜像形成手段は、薄膜トランジスタを用いて画素電極に潜像電圧を印加するように構成される画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、画素単位でマトリクス状に配列された画素電極を有する像保持体を用いて画像形成を行うに際し、画素電極に作用させる潜像電位が小さくても良好な現像がなされ且つ本構成を有しない場合に比して高信頼、高画質な画像が得られる像保持体を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、光導電層の形成が容易になされるようになる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、高い解像度を確保することができるようになる。
請求項4に係る発明によれば、画素単位でマトリクス状に配列された画素電極を有する像保持体を用いて画像形成を行うに際し、画素電極に作用させる潜像電位が小さくても良好な現像がなされ且つ本構成を有しない場合に比して高信頼、高画質な画像が得られる画像形成装置を提供できる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、感度の向上並びに潜像形成手段の耐性向上を図ることができる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、記録材以外の領域へのトナー付着が更に抑えられるようになる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、適正位置への光照射が容易になされるようになる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、解像度の低下を防ぐことができるようになる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、良好な画像が形成されるようになる。
請求項10に係る発明によれば、画素単位でマトリクス状に配列された画素電極を有する像保持体を用いて画像形成を行うに際し、画素電極に作用させる潜像電位が小さくても良好な現像がなされ且つ本構成を有しない場合に比して、高信頼、高画質な画像が得られる画像形成装置を提供できる。
請求項11に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、良好な画像が形成されるようになる。
請求項12に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、良好な画像が形成されるようになる。
請求項13に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、画素電極夫々に所定の電圧を選択的に容易に印加することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
先ず、本発明が適用される実施の形態の概要を説明する。
◎実施の形態の概要
図1は本発明を具現化する実施の形態の代表モデルに係る画像形成装置を示すものである。同図において、画像形成装置は、移動可能な支持体2と、この支持体2表面に支持され、画素単位で支持体2の移動方向に沿った副走査方向及びこれに交差する主走査方向に配列され且つ画素毎に印加される画像信号電圧によって潜像模様が形成可能な画素電極3と、少なくとも画素電極3上に設けられる光導電層4とを有する像保持体1と、画素電極3夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで像保持体1に潜像模様を形成する潜像形成手段5と、潜像形成手段5にて形成された潜像模様をトナーにて現像する現像手段6と、潜像形成手段5より像保持体1の移動方向下流側で現像手段6と像保持体1とが対向する現像部位までに像保持体1に対向して設けられ且つ光導電層4を光照射する潜像調整照射手段7と、現像手段6にて現像されたトナー像を転写媒体8に転写する転写手段9とを備えている。
【0013】
ここで、支持体2は、画素電極3を支持できる移動可能なものであればその形状は特に限定されないが、装置を小型化する観点からすれば、回転可能な態様が好適である。また、画素電極3は画素単位でマトリクス状に配列され、画素毎に印加される電圧によって潜像模様が形成可能なものであればよく、画素電極3の数量は特に限定されないが、通常の画像が形成できる解像度を実現できる程度になっていることが好ましい。更に、潜像形成手段5は、像保持体1の画素電極3夫々に形成すべき画像の画像信号に基づいた電圧を印加し潜像模様を形成できるものであればよい。
【0014】
そして、転写手段9の転写方式は、コロトロン等の像保持体1に非接触なタイプであってもよいし、転写ロール等の接触するタイプであってもよいが、例えば転写ロールを用い、画素電極3毎に転写動作を制御するようにしても差し支えない。尚、転写手段9によって像保持体1上のトナー像が転写される転写媒体8としてはトナー像を一時的に保持して搬送する中間転写体の態様であってもよいし、記録材の態様であっても差し支えない。
【0015】
また、光導電層4としては、少なくとも画素電極3上に設けられればよく、代表的には画素電極3を覆うように支持体2表面に亘って設けられる。更に、光導電層4は、無機/有機を問わず、光照射により電荷発生機能と電荷輸送機能とを併せ持つものであればよく、基本的には光照射により、光照射前に比べて導電性が変化するものであればよい。このとき、図2に示すように、光導電層4内に光照射がなされると電荷発生によって分極が生じ、この分極によって光導電層4の見かけ上の誘電厚さ(t:厚さ/ε:誘電率)が小さくなるようになる。つまり、光照射(hν)がない状態で画素電極3に電圧Vが印加されている状態の画素電極3上の光導電層4の比誘電率をεとし、光照射後の比誘電率をεとすると、光照射がなされることで光導電層4中で分極が発生し、光導電層4中の見かけの比誘電率εが大きくなり、ε<εとなる。そのため、誘電厚さは光照射がなされることで薄くなり、結果的に光導電層4での電圧降下が小さくなる。その結果、画素電極3に印加する電圧Vが小さくても光照射を行わないものに比べ、見かけ上光電導層4上の表面電位が増え、現像時に大きな潜像電位が作用するようになる。
【0016】
また、隣り合う画素電極3間での沿面抵抗の低下を抑えながら解像度の低下を防ぐ観点からすれば、隣り合う画素電極3間に当該部位の光電導層4に対して光が遮られる遮光部を有することが好ましい。ここで、遮光部としては、光が照射される方向に対し、光を遮るように設けられるもので、像保持体1の表面側あるいは裏面側からの光を遮るように設けられる。例えば、表面側からの光に対しては、光導電層4表面や、光導電層4の内層中に遮光膜を設けるようにしてもよい。また、裏面側からの光に対しては、画素電極3形成前に設けたり、画素電極3形成後に遮光部で隣り合う画素電極3間を覆うように設ければよい。特に、裏面側からの光に対しては、支持体2上に画素電極3を形成する前に例えば薄膜技術を用いて遮光膜を形成するようにしてもよいし、支持体2の裏面側に薄膜技術を用いて遮光膜を形成してもよいし、遮光膜が形成された透光性シートを貼るようにしてもよい。
【0017】
そして、図1に示すように、潜像調整照射手段7は光導電層4に合わせた波長の光を照射できるものであればよく、例えば一つ若しくは複数のLDを用いて例えば像保持体1の移動方向に略直交する方向に走査するようにしてもよいし、多数のLEDがライン上に配列された、例えばイレーズランプを像保持体1の移動方向に略直交する方向に配置して光照射を行うようにしても差し支えない。あるいは、光ファイバーの束の一方を直線状に配置すると共に他方を円弧状にまとめ、このまとめた円弧状の方にLED等で光を当て、直線状に配置した側から光を出射させるようにしてもよいし、直線状に配置した側に例えばセルフォックレンズ等による集光機能を持たせるようにしてもよい。更に、光導電層4への光照射による誘電率調整効果を大きくする観点から、潜像調整照射手段7は現像部位に対して光照射するように設けることが好ましい。
【0018】
また、潜像調整照射手段7によって光照射がなされる際に、より有効な領域に光照射を行う観点からすれば、潜像調整照射手段7は、像保持体1の移動方向及びこれに交差する幅方向に沿った記録材の長さに対応した領域の光電導層4を光照射することが好ましい。ここで、記録材はトナーが最終的に転写されるものであり、転写媒体8が記録材である態様であってもよいし、転写媒体8が記録材に転写する前にトナー像を一時的に保持搬送する中間転写体等の態様であっても差し支えない。
更に、潜像調整照射手段7による誘電厚さの低減を効果的に実現する観点から、支持体2及び画素電極3は透光性材料によって形成され、潜像調整照射手段7は支持体2側(支持体2の背面側)から光照射するように配置されることが好ましい。
【0019】
一方、帯電した状態の光電導層4に光照射を行うと、光照射により発生する電荷によって帯電電荷が中和され、光電導層4の余分な表面電位が減衰する。その結果、画素電極3に電圧Vが印加されると、光電導層4中の帯電電荷に影響されずに、現像時にはそのままの潜像電位が作用するようになり、このことは、潜像電位が小さくても良好な現像がなされることに繋がる。
そのため、潜像調整照射手段7の他に、転写手段9より像保持体1の移動方向下流側で且つ現像部位より上流側にて像保持体1に対向して設けられ、光電導層4を光照射によって除電する除電照射手段10を備えるようにすることが好ましい。この場合、潜像調整照射手段7によって光照射された光電導層4内には、電荷発生によって分極が生じ、この分極によって光電導層4の見かけ上の誘電厚さが小さくなる一方、転写後の残留電荷を有する光電導層4では、光照射による電荷発生によって残留電荷が中和する方向に働き、残留電荷が除電されるようになる。
【0020】
また、画像形成装置の他の代表モデルとしては、移動可能な支持体2と、この支持体2表面に支持され、画素単位で支持体2の移動方向に沿った副走査方向及びこれに交差する主走査方向に配列され且つ画素毎に印加される画像信号電圧によって潜像模様が形成可能な画素電極3と、少なくとも画素電極3上に設けられる光電導層4とを有する像保持体1と、画素電極3夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで像保持体1に潜像模様を形成する潜像形成手段5と、この潜像形成手段5にて形成された潜像模様をトナーにて現像する現像手段6と、この現像手段6にて現像されたトナー像を転写媒体8に転写する転写手段9と、この転写手段9より像保持体1の移動方向下流側で且つ現像部位より上流側にて像保持体1に対向して設けられ、光電導層4を光照射によって除電する除電照射手段10とを備えるようにすればよい。
これによれば、転写後の像保持体1上の残留電荷が低減され、次の現像時に良好な現像がなされるようになる。また、除電照射手段10は、転写手段9より像保持体1の移動方向下流側で且つ潜像形成手段5による潜像形成位置より上流側に設けられることが好ましい。
【0021】
そして、除電照射手段10による効果的な除電をなすには、光導電層4は除電照射手段10の光照射によって現像に供されるトナーの帯電極性と同極性の電荷に対する輸送能を備えることが好ましい。これによれば、像保持体1上のトナー像が転写された後、像保持体1表面にはトナーの電荷が転移した電荷が生じ易く、この転移電荷を低減するにはトナーの帯電特性と同極性の電荷が移動し易い光導電性を有する方がよい。
そして、このような画像形成装置での画素電極3に対し安定した電圧印加がなされる観点からすれば、潜像形成手段5は、薄膜トランジスタを用いて画素電極3に潜像電圧を印加するように構成されることが好ましい。
【0022】
次に、本実施の形態の概要モデルの理解を深める上で、比較モデルとして電子写真方式において通常用いられる方式について説明する。
図17に示すように、この比較モデルでは、帯電装置を用いて帯電された感光体(表面に感光層を備える態様)を露光装置からのレーザ照射等によって露光して静電潜像を形成した後、この静電潜像に対し現像装置を用いてトナーで現像することで可視像化するようにしたものである。このような方式では、感光体上の潜像電位や画素位置が回転する感光体やその感光体を帯電装置によって帯電することでばらつき易く、このようなばらつきがあると、濃度むら、色むら、すじ等の視認される画質劣化が生じ易くなる。また、このようなばらつきは、現像時のトナーの飛び散りやかぶりを生じさせ易くなる。
【0023】
更に、このような方式での経時的な変化に目を転じると、帯電装置がトナーによって汚染され、所望の帯電がなされなくなったり、帯電装置の放電(帯電装置自体の放電や、感光体との間隙による放電)による放電生成物の発生が感光体を変質させたり、更には感光体上の清掃性能を低下させるようにもなる。このような事態に対し感光体上の清掃性能低下を抑えるため、清掃部材を感光体に強く接触させるようにすると、却って感光体や清掃部材の劣化を早める虞もある。
それ故、帯電時のばらつきを低減し、放電生成物を低減することが高画質画像を形成する上で重要となる。
【0024】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
―画像形成装置の全体構成―
図3は、上述の実施の形態モデルが適用された画像形成装置の実施の形態1を示す。同図において、本実施の形態の画像形成装置は、像保持体20に保持されたトナー像を転写媒体としての記録材Pに直接転写させるようにしたものであって、像保持体20の周りには、像保持体20の潜像を可視像化する現像装置40、現像装置40によって可視像化された像保持体20上のトナー像を記録材P上に転写する転写ロール等の転写装置51、転写された後の像保持体20を清掃する清掃装置52が設けられている。また、転写後の記録材Pはそのまま定着装置53によって定着され、例えば記録材排出受けに排出収容されるようになる。そして、特に、本実施の形態では、像保持体20と現像装置40内の現像ロール41との略対向する現像領域の像保持体20表面に向かって、光を照射する潜像調整照射手段としての照射装置54が設けられており、例えば像保持体20の回転軸方向に沿って多数のLEDが配列されたランプが用いられている。
更に、像保持体20の後述する画素電極に印加する電圧や印加タイミングを制御すると共に、照射装置54の照射タイミングや照射幅の制御等を行うために、制御装置100が設けられている。
【0025】
―像保持体の構成―
次に、本実施の形態の像保持体20について詳述する。
図4に示すように、本実施の形態における像保持体20は、回転可能な支持体である剛体ドラム21上に、フィルム上に多数の画素が所謂マトリクス状に形成されたマトリクスパネル30を巻き付けて固定支持したものとなっている。マトリクスパネル30は、例えばPI(ポリイミド樹脂)フィルムに対し、所謂IC製造プロセス等で用いられる薄膜技術を利用して作製したもので、画素がマトリクス状に配列されたものとなっている。尚、ここでは、マトリクスパネル30を剛体ドラム21上に巻き付ける方式を示したが、例えば剛体ドラム21としてアルミ合金のものを用い、表面を絶縁処理した後に所謂IC製造プロセスを用いて直接画素をマトリクス状に配置するようにしても差し支えない。
【0026】
そして、このようにマトリクス状に配列された画素は、例えば剛体ドラム21の回転軸方向に沿った方向(主走査方向)をデータラインとし、回転方向に沿った方向(副走査方向)を走査ラインとしている。そのため、マトリクスパネル30のデータライン及び走査ラインには、各画素に接続される複数のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32が適宜数設けられ、これらのドライバ31,32への入力線は更にまとめられて本数を少なくした段階でマトリクスパネル30を通して、剛体ドラム21の内面側にまで配線されるようになっている。そのため、剛体ドラム21には、その外周面の一部に回転軸方向に沿った溝21aが設けられている。尚、剛体ドラム21の溝21aは、例えばシールテープにて塞がれており、像保持体20が回転する際の気流の影響を低減すると共に、現像時のトナーの影響も防ぐようになっている。
そして、特に本実施の形態では、マトリクスパネル30の表面保護層として略全面に亘って後述する光導電層が形成されたものとなっている。
【0027】
剛体ドラム21の内周面側には、図5(a)及び(b)に示すように、適宜数の端子22が略剛体ドラム21の回転軸方向に沿って設けられ、これらの端子22は夫々マトリクスパネル30のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32へと接続されている。更に、これらの端子22には、回転軸中心方向で且つ夫々の端部が互いに離間する方向に延びるスライダ23が端子22に接続される形で設けられ、このスライダ23の凹部にマトリクスパネル30と外部との電気的接続を行うための所謂スリップリング24の集電環24aが装着されるようになっている。そして、剛体ドラム21は固定されたスリップリング24の周りを回転するようになっている。尚、スリップリング24の集電環24a部位は、両側の絶縁環24bより径が小さくなっており、剛体ドラム21の回転によってもスライダ23がその対向する集電環24aに常時接触した状態を保つようになっている。
【0028】
そのため、マトリクスパネル30と外部との信号の伝達は、スリップリング24の集電環24aに対応してスリップリング24内に配線されたリード線25から、集電環24a及びスライダ23を介してマトリクスパネル30との間で行われるようになり、剛体ドラム21が回転しても、マトリクスパネル30との信号の伝達が適切に行えるようになっている。尚、剛体ドラム21の回転方法は、特に限定されず、例えば剛体ドラム21の外周面端部側を回転ロールに圧接させて回転させるようにしてもよいし、スリップリング24の挿入側とは異なる側で剛体ドラム21自体を回転させる回転軸を備えるようにしても差し支えない。
【0029】
―マトリクスパネルの構成―
次に、マトリクスパネル30の各画素について説明する。
本実施の形態のマトリクスパネル30は、図6(a)に示すように、マトリクス状に画素が配列されており、各画素は、(b)に示すように、所謂アクティブマトリクス方式で構成され、スイッチング素子として例えばTFT(薄膜トランジスタ)33を用い、その他画素電極34、蓄積容量35及び配線(ソース線、ゲート線等)が夫々形成されている。各画素及び画素間の結線は、データライン毎にTFT33のソースが結線されるソース線、走査ライン毎にTFT33のゲートが結線されるゲート線としてまとめられている。また、TFT33のドレインには画素電極34と蓄積容量35が並列に接続され、蓄積容量35の一方は走査ライン毎にまとめられ(図示せず)、(c)のような等価回路を呈するように構成されている。尚、ここでは光導電層は省略している。
【0030】
―画素の断面構造―
図7は、マトリクスパネル30の断面構造の一部を示したもので、樹脂フィルム基材30a上にTFT33及び画素電極34が形成されている。TFT33は、例えばゲート電極331、p−Siゲート332、SiO絶縁膜333、a−Siチャネル334、ソース電極336、ドレイン電極337等によって構成され、ドレイン電極337が画素電極34と接続されている。尚、符号335,338は絶縁膜である。また、この図では蓄積容量35は省略している。
そして、TFT33や画素電極34上には、例えば10〜30μm厚の表面保護層としての光導電層36が形成されている。尚、光導電層36の厚さとしては、成膜するためにピンホール欠陥等のない状態で、かつ、使用による摩耗があっても実用上問題ない厚さであればよい。また、光導電層36が厚すぎると画素電極34の電極電位を大きくする必要があることから、通常10〜30μmの厚さが好適である。
【0031】
光導電層36としては、公知の材料を使用でき、無機光導電材料を用いたものであってもよいし、有機光導電材料を用いたものであってもよい。また、有機光導電材料としては、通常の感光体に用いられる電荷発生層や電荷輸送層を使用することができる。電荷輸送層としては、例えば、負電荷に感度を有するピラゾリン化合物、オキサジアゾール化合物、トリフェニルアミン化合物等が正孔輸送材料として使用できる。また、正電荷に感度を有するフルオレノン化合物、チオピラン化合物等が電子輸送材料として使用できる。更に、両極に感度を有する材料も知られている。
【0032】
―駆動系―
マトリクスパネル30は、このように各画素を多数並べた構成のため駆動方式は次のように行われる。図8に示すように、データライン及び走査ライン毎に所定数の画素がまとめられ、TFT33のソース側がデータライン毎に夫々データ用ドライバ31へ接続される一方、TFT33のゲート側が走査ライン毎に夫々走査用ドライバ32に接続され、データ用ドライバ31及び走査用ドライバ32は制御装置100によって駆動されるようになっている。そのため、これらのデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32を駆動することで、所定の画素に所定の電圧が印加できるようになる。データ用ドライバ31としては、例えばサンプルホールド付きのシフトレジスタ、ラッチ、バッファ等で構成され、走査用ドライバ32としては、例えばカウンタ、ラッチ、バッファ等で構成される。尚、図8では、画素電極34は省略しているが、TFT33と蓄積容量35との間に接続された画素電極34が設けられていることは云うまでもない。
【0033】
次に、本実施の形態における駆動系による画素電極34夫々の駆動方式について図6(c)を用いて説明する。画素電極34に対しては、TFT33の走査ライン側に接続されたゲートにON電圧を印加すると、TFT33のソース−ドレイン間が導通状態となり、ソース電圧と等価になるまで蓄積容量35が充電される。この充電された電荷が静電潜像を形成する潜像電圧になる。また、その状態でゲートにOFF電圧が印加され、ソース−ドレイン間が遮断されても蓄積容量35によって画素電極電位はそのまま保持されるため、以降にソース電圧が変化してもゲートにON電圧が印加されない限り潜像電圧はそのまま保持されるようになる。
【0034】
そのため、各画素のTFT33のソース側へ像濃度に相当する画像信号に基づく信号電圧を印加すると共に、ゲート側へON電圧を印加することにより、データライン1ライン分の静電潜像が形成されるようになる。そして、ON電圧を印加するゲートを像保持体20の回転方向と逆方向に順次移動(走査)させ、データラインに新たな信号電圧を印加することにより、像保持体20上には二次元の潜像模様(潜像パターン)が形成されるようになる。
【0035】
―潜像調整照射装置―
本実施の形態では、図3に示すように、現像領域にある像保持体20の表面に対して光を照射する照射装置54が設けられている。この照射装置54は、画素電極34(図6参照)に対する駆動を制御する制御装置100によって、像保持体20に対する照射領域が適宜選択的になされるようになっており、マトリクスパネル30表面の光導電層36の選択領域に対して光照射がなされるようになる。つまり、本実施の形態ではマトリクスパネル30上の使用する記録材サイズに応じた領域のみに対し選択的に光照射を行うようになっている。このように、この領域内を選択的に光照射することで、領域外(非画像領域に相当する)へのトナー付着が一層抑えられるようになる。そして、このような光照射を行うように、照射装置54の照射領域(記録材の搬送方向に交差する幅方向に相当する領域)や照射タイミング(記録材の搬送方向長さに相当する領域)を制御するようになっている。
【0036】
ここでは、照射装置54による光照射を選択領域に行う方式を示したが、照射領域を選択的に行わず、像保持体20の幅方向(走査ライン)全域に亘って照射するようにしたり、照射タイミングを選択しないようにしてもよく、選択する方式に比べ、非画像領域へのトナー付着が生じ易くなる懸念はあるが、この場合、画素電極34に印加する電圧をより詳細に制御するようにすれば、非画像領域へのトナー付着が抑えられるようになる。
また、ここでは、光照射が現像領域に対応してなされるようになっており、画素電極34に与えられた潜像電圧がそのまま現像時に適用されるようになるが、現像領域より像保持体20の回転方向上流側で行うようにしてもよく、この場合、光照射後から現像部位に至る際の潜像電圧が大きく変化しない範囲内であればよい。
【0037】
―現像装置―
本実施の形態では、像保持体20に形成された静電潜像に対し、像保持体20と現像装置40との対向領域である現像領域にて、現像装置40内の現像ロール41(図3参照)と潜像電圧が印加された画素電極34との間に作用する現像電界によって、像保持体20表面には画素毎に潜像電圧に対応したトナー付着がなされるようになり、可視像化されたトナー像が得られるようになる。このとき、現像装置40としては、公知の一成分現像方式あるいは二成分現像方式のいずれを用いるようにしても差し支えない。
【0038】
―転写装置―
像保持体20表面にトナーが付着することで可視像化されたトナー像は、転写装置51によって記録材Pに転写される。本実施の形態では、像保持体20上のトナー像を記録材Pに転写する方向の転写バイアスが像保持体20と転写装置51との間に作用するようになっており、この転写バイアスによって転写がなされる。尚、本実施の形態の転写時には画素電極34に対する電圧印加等を行うようになっていないが、例えば現像時に画素電極34の電位に応じて付着したトナーに対し、画素電極34への付着トナー量に応じた転写電界を作用させるように、夫々の画素電極34に対応する転写電圧を印加するようにしても差し支えない。この場合、画素電極34を用いないものに比べ、現像された状態のトナー量に応じての転写が容易になされるようになり、画質の向上が一層なされるようになる。
【0039】
―清掃装置―
転写後の像保持体20上の残留トナーの清掃は、清掃装置52によってなされるようになる。本実施の形態では、清掃装置52としてブレードを用い、機械的に像保持体20上を清掃する態様を採っているが、例えば画素電極34を用い、現像時のトナー付着量に対応した清掃電圧を夫々の画素電極34に印加するようにしてもよく、この場合、残留トナー量に対応した清掃電界が作用するようになり、清掃装置52での清掃が良好になされるようになる。
【0040】
次に、本実施の形態における光導電層36に対する光照射の作用について説明する。
今、図9(a)に示すように、隣り合う画素電極34A,34Bに画像信号に基づく信号電圧が印加され、蓄積容量35A,35Bに蓄積された電荷によって、画素電極電位として夫々V及びV(ただしV>V)が加わるようになっているものとする。
【0041】
このような状態の光導電層36に対して光照射を行うと、図9(b)に示すように、光導電層36では光照射によって発生したキャリアにより分極され易くなり、比誘電率εが光照射しない場合の比誘電率εより大きくなり(ε>ε)、結果的に誘電厚さ(t/ε)が小さくなる。そのため、光照射を行うことで、現像時に光導電層36での電圧降下が小さくなり、画素電極電位(潜像電圧に相当する)が小さくても十分現像が行われるようになる。
また、このとき、光導電層36中の電気力線は画素電極34間での沿面抵抗が低下することで光導電層36での電界が若干広がるため、高解像度を必要とする場合は、画素電極34間を遮光する方がよい。
【0042】
このように本実施の形態では、表面保護層として光電導層36を用い、この光電導層36を光照射した状態で現像を行うようにすることで、現像時の光導電層36での電圧降下による損失分を減らし、画素電極電位(潜像電圧)が小さくても有効な現像がなされるようになる。このことは、バルク状のトランジスタに比べ一般的に耐電圧が低いTFT33に対して必要な耐電圧を小さくすることにも繋がり、薄膜技術を利用したTFT33の使用が十分効果的になされることをも意味する。
そして、このような現像時に低電界を作用させた場合の画像濃度を安定に保つには、トナー帯電量を小さくすることも効果的である。つまり、画素電極34の表面電位(画素電極電位)によってもたらされる現像電界は、現像されたトナーの総電荷量により減少し、ほぼゼロとなった時に現像が停止すると考えられるので、トナー帯電量が小さいほど、低電界で多くのトナーの付着がなされるようになり、より高濃度の画像が形成されるようになる。
【0043】
この点、図9(c)のように、光導電層36に光照射を行わないで現像する比較モデルでは、光導電層36自体の誘電厚さ(t/ε)は変わらず、画素電極34の電気力線の光導電層36中での広がりは小さい。しかしながら、誘電厚さ(t/ε)が大きい分、現像時に光導電層36での電圧降下が大きくなり、画素電極34に作用させる画素電極電位(潜像電圧)を光照射が行われるものに比べ、大きくする必要があり、TFT33に対しても十分大きな耐電圧のものが要求される。
【0044】
◎実施の形態2
図10は、実施の形態2の画像形成装置に用いられるマトリクスパネルの断面構造を示すものである。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1の画像形成装置(図3参照)と略同様に構成されるため省略し、実施の形態1と異なる構成のマトリクスパネルについて説明する。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施の形態のマトリクスパネル30は、実施の形態1のマトリクスパネル30の断面構造(図7参照)と略同様に構成されるが、光導電層36の表面に光を遮光する遮光膜37を隣り合う画素電極34間に設け、光導電層36表面側からの光を遮光するようにしたものである。この遮光膜37としては、例えば黒色の吸光膜が用いられ、光照射によっても画素電極34間が遮光されるようになっている。
【0046】
このような遮光膜37を設けると、図11(a)に示すように、光導電層36上に走査ライン毎に全面露光を行っても光導電層36のうち画素電極34上の部位では誘電厚さ(t/ε)が小さくなり、また、画素電極34間の部位では光照射されないことから、電気力線は画素電極34に略直交する方向に延びるようになる。そのため、実施の形態1のように遮光膜37を備えない場合(図11(b)参照)に比べ、電気力線の広がりを抑えることができ、解像度をより向上させることができるようになる。
【0047】
ここでは、遮光膜37を光導電層36表面に設けるようにしたが、像保持体20の使用に際し、遮光膜37が摩耗してしまわないように使用期間を考慮したり、あるいは、摩耗し難いように硬化処理を行う等の工夫をする方が好ましい。そのため、遮光膜37を光導電層36成膜中の途中に形成するようにすれば、遮光膜37が光導電層36の途中に形成されるようになり、像保持体20として長期に亘る使用も可能になる。
【0048】
◎実施の形態3
図12は、実施の形態3の画像形成装置の概要を示すものである。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1の画像形成装置(図3参照)と略同様に構成されるが、清掃装置52より像保持体20の回転方向下流側の像保持体20に対向する位置に、照射装置54とは別の除電照射装置55を備えている点が、実施の形態1と異なる。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0049】
本実施の形態の除電照射装置55は、像保持体20上の残留トナーが清掃装置52によって清掃された後に光照射がなされるようになっており、現像領域に対応した照射装置54と同様の構成のもので、制御装置100によってその照射領域や照射タイミングが制御されるようになっている。
【0050】
本実施の形態における除電照射装置55による作用は次のようになる。仮に使用するトナーが負帯電トナーとすると、図13に示すように、転写前の光導電層36上には画素電極34に対応したトナーが付着している。これが転写さると、光導電層36には残留電荷が生じるようになる。この残留電荷は、トナー電荷が転移したものと推定され、トナー電荷と同極性に帯電することが多い。本実施の形態では、除電照射装置55による光照射によって、この残留電荷が中和されて除去されるようになる。このように残留電荷が除去されるようになると、以降の現像で、濃度むら、色むら、すじ等の画質欠陥の発生が抑えられるようになる。そのため、光導電層36としては光照射によってトナーの帯電極性と同極性の電荷に対する輸送能を有する方がよい。
更に、除電照射装置55によって光導電層36が除電されることで、潜像電位での潜像模様が光導電層36に影響されることもなく、潜像電位が小さくても良好な現像がなされるようになる。
【0051】
本実施の形態の画像形成装置では、図12に示すように、除電照射装置55を清掃装置52より下流側に設けるようにしたが、転写後から現像前の段階であればいずれの箇所に除電照射装置55を設けるようにしても差し支えなく、転写によって生じる残留電荷が有効に除去され、現像に際して支障がない箇所であればよい。
【0052】
◎実施の形態4
図14は、実施の形態4の画像形成装置の概要を示すものである。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態3の画像形成装置(図12参照)と略同様に構成されるが、照射装置54及び除電照射装置55がいずれも像保持体20の内部に設けられている点が実施の形態3と異なる。尚、実施の形態3と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施の形態の像保持体20は、剛体ドラム21の内側に照射装置54及び除電照射装置55を設けるようになっているため、実施の形態1や2の構成とは異なるものとなっている。図15は本実施の形態における像保持体20の断面構造を模式的に示したもので、剛体ドラム21は例えばポリカーボネート樹脂等の透光性を備える材料で構成される。また、スリップリング24は、その一部(図中二点鎖線で示す領域)でマトリクスパネル30との電気的接続を行うように構成され、照射装置54や除電照射装置55は、この二点鎖線の領域を除く領域に固定配置されるようになっている。そのため、本実施の形態では、マトリクスパネル30の図中二点鎖線で示す領域に対応する部分を除く領域に画像が形成される領域を設けるようになっている。尚、スリップリング24と照射装置54や除電照射装置55との間に、滑り移動可能な部材を一部に設け、更に、照射装置54や除電照射装置55と剛体ドラム21との間に滑り移動可能な部材を一部に設けるようにして、スリップリング24、照射装置54や除電照射装置55、剛体ドラム21の夫々の相対位置関係を安定化させるようにしてもよい。尚、符号21bは剛体ドラム21の側端部に設けられた塞ぎ蓋である。
【0054】
また、本実施の形態では、マトリクスパネル30の断面構造は図16に示すようになっており、実施の形態1で示した構造(図7参照)と一部の構成が異なっている。つまり、本実施の形態では、TFT33が形成される前に樹脂フィルム基材30a上の隣り合う画素電極34間を遮光する遮光膜330として、例えば金属クロム等からなる反射膜や黒色の吸光膜を設けている。また、画素電極34としては、光導電層36への光照射がなされるように、例えばITO等の透明導電性皮膜によって構成されている。尚、遮光膜330として金属クロム等の導電性材料を用いるものでは、この遮光膜330による画素電極34間の電気的接続がなされないように、表面に絶縁処理等がなされていることは云うまでもない。
そのため、照射装置54や除電照射装置55から照射される光は、遮光膜330によって画素電極34側に選択的に照射され、光導電層36の画素電極34上の部位のみを選択的に照射するようになる。尚、遮光膜330によって、TFT33自体も遮光されることでTFT33でのスイッチング特性が低下する虞もない。
【0055】
そして、このような遮光膜330は除電に対しては、特に大きな作用は見出せないが、残留電荷がトナー付着に起因するものである以上、少なくとも画素電極34上の光導電層36に対し光照射がなされることからすれば、遮光膜330を設けたことによる除電作用が低下する虞もない。
【0056】
本実施の形態では、照射装置54及び除電照射装置55を像保持体20の剛体ドラム21の内部に備える態様を示したが、例えば除電照射装置55を備えないものであってもよいし、いずれか一方を像保持体20の表面側に設けるようにしても差し支えない。
【0057】
また、実施の形態1〜4で示した態様によれば、帯電器を使用しないことから、帯電器自身がトナーに汚染され帯電不良を起こしたり、帯電器から発生する放電生成物が像保持体20表面を変質させたり、また、放電生成物により清掃性能を低下させたりする虞が少なくなると共に、表面保護層として光導電層36を設けることで、現像時に画素電極34で必要な電極電位を低減させることができ、耐電圧の小さいTFT33の適用がなされるようにもなる。
【0058】
また、上述の実施の形態では、像保持体20を一つ備える態様の画像形成装置を示したが、例えば四つの像保持体20を直列に配置し、夫々の像保持体20上のトナー像を順次中間転写体で多重化されるように転写させ、中間転写体で多重化されたトナー像を記録材に一括転写する、所謂タンデム型の画像形成装置に適用するようにしてもよい。
そして、マトリクスパネル30としては、円筒状の基材上に薄膜技術を用い、TFT33や画素電極34を直接形成するようにしても差し支えない。
更に、上述の実施の形態では画素毎に蓄積容量35を備える方式を示したが、現像領域の近傍で、画素電極34に書き込む(ゲート側にON電圧を印加する)ようにすれば、蓄積容量35を備えていない場合でもTFT33自体の容量を利用することでトナー像の形成がなされるようになる。
【実施例】
【0059】
先ず、像保持体の表面保護層での作用を理解するために、表面保護層として厚さ5μm、比誘電率が3の層(通常の高分子膜)を形成したとき、現像部位において、コントラスト電位(画像部と非画像部の電位差に相当し、現像トナーが付着する電極電位と現像トナー量がゼロとなる電極電位との差を意味する)によって、トナー電荷量と現像トナー量との関係がどうなるかをモデル評価したものである。
トナーとしては、厚さd=5.8μm、比誘電率ε=5、トナー電荷量=qとし、現像ロールには絶縁性被膜を有するロールを用い、その厚さd=2μm、比誘電率ε=3、抵抗R=1016Ω・cmとし、像保持体と現像ロールとの間隙d=20μm、比誘電率ε=1とし、プロセス条件として、現像ロールの周速度比(像保持体に対する)k=2、現像ロールへのトナー付着量m=7g/m、現像時間(現像ニップ通過時間)T=0.013秒として、算出した。
尚、計算の根拠は、図20に示す式に依った。
【0060】
結果は、図18(a)に示すように、画素電極の電位を小さくするには、トナー電荷量を小さくし、現像トナー量も少なくする必要がある。しかしながら、現像トナー量は画像濃度等から6g/m程度は必要となり、トナー電荷量が重要となる。一方、トナー電荷量を小さくし過ぎると、トナーの搬送性や現像性等に際し安定性を損なう虞がある。したがって、今、仮に、現像トナー量を6g/mとし、トナー電荷量を20μC/gとすると、必要なコントラスト電位は約50Vとなる。
【0061】
次に、表面保護層の厚さと現像トナー量との関係をモデル評価するために、トナー電荷量が20μC/gのトナーを用いて行った。尚、他の条件は上と同じ条件とした。
結果は、図18(b)に示すように、画素電極の電位を小さくするには、表面保護層の厚さを薄くする必要がある。この例では、必要な現像トナー量を6g/mとすると、コントラスト電位を50Vにするには、表面保護層は約6μmの薄さが必要となる。しかしながら、このような薄い表面保護層では、形成された膜でピンホール等の膜質欠陥を生じる虞があったり、表面保護層での機械的強度(使用に対しての耐摩耗性等)が不足する虞があり、具体的には10〜30μm程度の表面保護層が必要となる。仮に、表面保護層を20μmとすると、約120Vのコントラスト電位が必要になる。
【0062】
したがって、画素電極に作用させる電極電位をより小さいものにするには、表面保護層の見かけ上の厚さを薄くしたり、トナー電荷量を下げる工夫が必要となる。
【0063】
次に、表面保護層を光導電層とした場合、光照射によってどうなるかを検証するため、実施の形態1のように光照射された状態を想定し、電極電位(コントラスト電位に相当)と現像トナー量との関係をモデル評価した。尚、比較として光照射を行わないものもモデル評価に加えた。
光導電層(表面保護層)としては、厚さd=20μm、光照射により比誘電率εが3から30へ変化するものとし、トナーとしては、厚さd=5.8μm、比誘電率ε=5、トナー電荷量q=15μC/gとし、現像ロールには絶縁性被膜を有するロールを用い、その厚さd=2μm、比誘電率ε=3、抵抗R=1016Ω・cmとし、像保持体と現像ロールとの間隙d=20μm、比誘電率ε=1とし、プロセス条件として、現像ロールの周速度比(像保持体に対する)k=2、現像ロールへのトナー付着量m=7g/m、現像時間(現像ニップ通過時間)T=0.013秒とし、更に、現像ロールへ印加するバイアスV=+13.7Vとして、算出した。
【0064】
結果は、図19に示すように、光照射を行わない場合には、現像トナー量を6g/mとすると、約85Vが必要となるが、光照射を行うと、この値が約25Vに低下する結果が得られた。このことは、図18(b)で換算すると、表面保護層の厚さが約16μmから約1μm程度に低下することに相当する。つまり、表面保護層として光導電層を用い、光照射を行うことで、十分な膜質が確保できる厚さであっても、実効的な厚さが大幅に低下し、必要な電極電位が大幅に低下することが理解された。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図2】光導電層の光照射による作用を示す説明図である。
【図3】実施の形態1に係る画像形成装置を示す説明図である。
【図4】実施の形態1の像保持体を示す斜視図である。
【図5】(a)(b)は実施の形態1の像保持体の内部構造を示す説明図である。
【図6】実施の形態1の画素構造を示す説明図であり、(a)は画素群、(b)は一つの画素、(c)は画素間の接続の様子を示す。
【図7】実施の形態1のマトリクスパネルの断面構造を示す説明図である。
【図8】実施の形態1の画素電極の駆動方式を示す説明図である。
【図9】(a)は現像前の光導電層の様子を示し、(b)は光導電層に光照射を行った状態での現像時の様子を示し、(c)は光導電層に光照射を行わない状態での現像時の様子を示す説明図である。
【図10】実施の形態2に係るマトリクスパネルの断面構造を示す説明図である。
【図11】(a)は遮光膜の作用を示す説明図であり、(b)は遮光膜がない場合の作用を示す説明図である。
【図12】実施の形態3に係る画像形成装置を示す説明図である。
【図13】実施の形態3での光照射による除電作用を示す説明図である。
【図14】実施の形態4に係る画像形成装置を示す説明図である。
【図15】実施の形態4の像保持体の断面構造を示す説明図である。
【図16】実施の形態4のマトリクスパネルの断面構造を示す説明図である。
【図17】比較モデルとしての従来の画像形成装置を示す説明図である。
【図18】実施例でのモデル評価結果を示すグラフであり、(a)はトナー電荷量と現像トナー量との関係、(b)は表面保護層と現像トナー量との関係を示す。
【図19】実施例でのモデル評価結果を示すグラフであり、光導電層での電極電位と現像トナー量との関係を示す。
【図20】実施例のモデル評価を行う際に用いた数式である。
【符号の説明】
【0066】
1…像保持体,2…支持体,3…画素電極,4…光導電層,5…潜像形成手段,6…現像手段,7…潜像調整照射手段,8…転写媒体,9…転写手段,10…除電照射手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な支持体と、
この支持体表面に支持され、画素単位で支持体の移動方向に沿った副走査方向及びこれに交差する主走査方向に配列され且つ画素毎に印加される画像信号電圧によって潜像模様が形成可能な画素電極と、
少なくとも画素電極上に設けられる光導電層とを備えることを特徴とする像保持体。
【請求項2】
請求項1記載の像保持体において、
前記光導電層は、画素電極及び画素電極間を覆うように支持体表面に亘って設けられることを特徴とする像保持体。
【請求項3】
請求項2記載の像保持体において、
隣り合う画素電極間に当該部位の光導電層に対して光が遮られる遮光部を有することを特徴とする像保持体。
【請求項4】
移動可能な支持体と、この支持体表面に支持され、画素単位で支持体の移動方向に沿った副走査方向及びこれに交差する主走査方向に配列され且つ画素毎に印加される画像信号電圧によって潜像模様が形成可能な画素電極と、少なくとも画素電極上に設けられる光導電層とを有する像保持体と、
前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで前記像保持体に潜像模様を形成する潜像形成手段と、
この潜像形成手段にて形成された潜像模様をトナーにて現像する現像手段と、
潜像形成手段より像保持体の移動方向下流側で現像手段と像保持体とが対向する現像部位までに像保持体に対向して設けられ且つ光導電層を光照射する潜像調整照射手段と、
前記現像手段にて現像されたトナー像を転写媒体に転写する転写手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、
潜像調整照射手段は、現像部位に対し光照射するように設けられることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の画像形成装置において、
潜像調整照射手段は、像保持体の移動方向及びこれに交差する幅方向に沿った記録材の長さに対応した領域の光導電層を光照射するようにしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記支持体及び前記画素電極は透光性材料によって形成され、
潜像調整照射手段は支持体側から光照射するように配置されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれかに記載の画像形成装置において、
像保持体は、隣り合う画素電極間に当該部位の光導電層に対して光が遮られる遮光部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項4乃至8のいずれかに記載の画像形成装置において、
更に、転写手段より像保持体の移動方向下流側で且つ現像部位より上流側にて像保持体に対向して設けられ、光導電層を光照射によって除電する除電照射手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
移動可能な支持体と、この支持体表面に支持され、画素単位で支持体の移動方向に沿った副走査方向及びこれに交差する主走査方向に配列され且つ画素毎に印加される画像信号電圧によって潜像模様が形成可能な画素電極と、少なくとも画素電極上に設けられる光導電層とを有する像保持体と、
前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで前記像保持体に潜像模様を形成する潜像形成手段と、
この潜像形成手段にて形成された潜像模様をトナーにて現像する現像手段と、
この現像手段にて現像されたトナー像を転写媒体に転写する転写手段と、
この転写手段より像保持体の移動方向下流側で且つ現像部位より上流側にて像保持体に対向して設けられ、光導電層を光照射によって除電する除電照射手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10記載の画像形成装置において、
前記除電照射手段は、転写手段より像保持体の移動方向下流側で且つ潜像形成手段による潜像形成位置より上流側に設けられることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかに記載の画像形成装置において、
光導電層は、除電照射手段の光照射によって現像に供されるトナーの帯電極性と同極性の電荷に対する輸送能を有するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項4乃至12のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記潜像形成手段は、薄膜トランジスタを用いて画素電極に潜像電圧を印加するように構成されることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−83032(P2010−83032A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255353(P2008−255353)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】