像加熱装置
【課題】連続的な加熱処理の開始後に記録材の通過幅の外側で発生する過熱領域の移動に伴って通紙範囲を拡大して、加熱ベルト部材の局所的な過熱を回避できる像加熱装置を提供する。
【解決手段】記録材シフト機構11は、加熱ニップNにおける記録材Pの通過位置を幅方向に往復移動させて、加熱ニップNにおける記録材の通過範囲を拡張可能である。制御回路部102は、誘導加熱装置100を起動して記録材サイズに応じた加熱幅で記録材の加熱処理を開始させる。その後、記録材Pの累積加熱枚数に応じて記録材の通過範囲を拡張するように記録材シフト機構11を制御する。記録材の通過幅の外側で発生する過熱領域の移動に合わせて、通紙範囲を拡大するため、加熱ベルト1の局所的な過熱を回避できる。
【解決手段】記録材シフト機構11は、加熱ニップNにおける記録材Pの通過位置を幅方向に往復移動させて、加熱ニップNにおける記録材の通過範囲を拡張可能である。制御回路部102は、誘導加熱装置100を起動して記録材サイズに応じた加熱幅で記録材の加熱処理を開始させる。その後、記録材Pの累積加熱枚数に応じて記録材の通過範囲を拡張するように記録材シフト機構11を制御する。記録材の通過幅の外側で発生する過熱領域の移動に合わせて、通紙範囲を拡大するため、加熱ベルト1の局所的な過熱を回避できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱の加熱長さを可変に構成した加熱ベルト方式の像加熱装置、詳しくは、記録材の連続的な加熱処理を行う際の記録材の通紙領域の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー像を記録材に転写した後に、ローラ加熱方式の定着装置の加熱ニップで加熱加圧して、記録材にトナー像を定着させる画像形成装置が広く用いられている。ローラ方式の定着装置では、記録材の連続的な加熱処理に伴って、非通紙領域のローラ端部に過熱領域が形成される。このため、加熱ニップに搬送されてくる記録材と加熱ニップの相対的な位置関係をシフトさせる制御が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
一方、ローラ加熱方式とは異なる定着装置として、ベルト加熱方式の定着装置が実用化されている。ベルト加熱方式の定着装置は、円筒状の薄い加熱ベルト部材を加熱してトナー像の加熱加圧処理を行うため、肉厚のローラ全体を一様に加熱するローラ定着方式に比較して、加熱される質量が小さくて済む。特に、加熱ベルト部材に金属層を設けて、交流磁界により誘導加熱する電磁加熱方式は、加熱ベルト部材に加熱を集中させるため、ごく短時間で起動して記録材の加熱処理を開始できる(特許文献3)。
【0004】
しかし、電磁加熱方式のベルト加熱方式の像加熱装置は、ごく小さな質量に加熱が集中するため、非通紙領域の加熱ベルト部材の端部が短時間で過剰な温度に加熱されて熱変形を生じてしまう。特許文献1、2のような記録材の振り分けを行っても、記録材の通過を待っている間に大きな温度上昇が発生する。
【0005】
そこで、特許文献4では、加熱ベルト部材の回転方向に直角な幅方向における加熱ベルト部材の加熱長さを、記録材の通過幅に応じて複数段階に設定可能な交流磁束発生手段を用いて、加熱ベルト部材の誘導加熱を行っている。加熱ベルト部材の長手方向に複数個のコア部材を配列させ、記録材の通過幅に応じた範囲のコア部材の磁束の磁気回路の磁気抵抗を、その外側のコア部材の磁束の磁気回路の磁気抵抗よりも大きく設定して、記録材の加熱処理を開始している。これにより、記録材の通過幅の外側に位置する加熱ベルト部材の過熱を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−149970号公報
【特許文献2】特開2001−373178号公報
【特許文献3】特開2001−194940号公報
【特許文献4】特開2010−160388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に示されるように、記録材の通過幅に応じた加熱長さを設定しても、その加熱長さの外側の加熱ベルト部材に過熱領域が発生して熱変形を生じる場合があることが判明した。
【0008】
ベルト加熱方式の定着装置では、定着装置の全体の温度分布が平衡状態になるのを待たないで、加熱ニップの温度分布が記録材の幅程度の一様な温度状態になった時点で記録材の加熱処理を開始している。そのため、加熱ベルト部材の温度を一定に保って記録材に奪われる熱量を補う以上の加熱が常時行われおり、熱伝達(放熱)を妨げられた部分や非通紙領域では、思いがけない高温度が発生する。
【0009】
本発明は、連続的な加熱処理の開始後に記録材の通過幅の外側で発生する過熱領域の移動に伴って記録材のシフト範囲を拡大して、加熱ベルト部材の局所的な過熱を回避できる像加熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の像加熱装置は、誘導加熱される金属層を有し、内側面を支持されて回転する無端状の加熱ベルト部材と、内側面を支持された前記加熱ベルト部材の外側面に当接して前記加熱ベルト部材との間に記録材の加熱ニップを形成する加圧回転体と、前記金属層を誘導加熱するための交流磁束を発生させるとともに、記録材サイズに応じて前記加熱ベルト部材の幅方向に複数段階の加熱幅を設定可能な交流磁束発生手段とを備えたものである。そして、前記加熱ニップにおける記録材の通過位置を前記幅方向に往復移動させて前記加熱ニップにおける記録材の通過範囲を拡張可能な往復移動機構と、前記交流磁束発生手段を起動して記録材サイズに応じた前記加熱幅で記録材の加熱処理を開始させた後に、記録材の累積加熱枚数に応じて記録材の通過範囲を拡張するように前記往復移動機構を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の像加熱装置は、連続的な加熱処理の開始後に記録材の通過幅の外側で発生する過熱領域の移動に合わせて前記シフト機構を制御して記録材の通過領域を拡大する。このため、加熱ベルト部材の局所的な過熱を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】定着装置の要部の構成の説明図である。
【図3】定着装置の長手方向の構成の説明図である。
【図4】定着ベルト1の層構成模型図である。
【図5】外側磁性体コアの配置の説明図である。
【図6】外側磁性体コアの動作の説明図である。
【図7】記録材シフト機構の説明図である。
【図8】実施例1の通紙制御のフローチャートである。
【図9】記録材を往復移動させない場合の端部温度上昇の説明図である。
【図10】記録材を往復移動させるタイミングの説明図である。
【図11】記録材を往復移動させた場合の通紙50枚時点での端部温度上昇の説明図である。
【図12】通紙100枚時点での端部温度上昇の説明図である。
【図13】通紙200枚時点での端部温度上昇の説明図である。
【図14】通紙500枚時点での端部温度上昇の説明図である。
【図15】実施例3で用いる定着装置の構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、誘導加熱の加熱範囲を設定して記録材の加熱処理を開始した後に、定着ニップにおける記録材が通過する範囲が次第に拡大される限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0014】
従って、像加熱装置は、トナー像を転写された記録材を加熱処理して記録材にトナー像を定着させる定着装置のみならず、半定着又は定着済みトナー像を加熱処理して画像に所望の表面性を付与する表面処理装置を含む。
【0015】
像加熱装置を搭載する画像形成装置は、モノクロ/フルカラー、枚葉型/記録材搬送型/中間転写型、トナー像形成方式、転写方式の区別無く本発明を実施できる。
【0016】
本実施形態では、トナー像の形成/転写/定着に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途の画像形成装置で実施できる。
【0017】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置Eは、中間転写ベルト26に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部PY、PM、PC、PKを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0018】
画像形成部PYでは、感光ドラム21(Y)にイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト26に一次転写される。画像形成部PMでは、感光ドラム21(M)にマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト26に一次転写される。画像形成部PC、PKでは、感光ドラム21(C)、21(K)にそれぞれシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト26に順次一次転写される。
【0019】
中間転写ベルト26は、エンドレスの樹脂ベルトを用いており、駆動ローラ27、二次転写対向ローラ28、テンションローラ29の3本のローラに張架されて、駆動ローラ27によって駆動される。
【0020】
記録材Pは、記録材カセット31から給紙ローラ32により1枚ずつ取り出されてレジストローラ33で待機する。記録材Pは、レジストローラ33によって中間転写ベルト26上のトナー像にタイミングを合わせて二次転写部T2へ給送されて、中間転写ベルト26からトナー像を二次転写される。四色のトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置Aへ搬送され、定着装置Aで加熱加圧を受けてトナー像を定着された後に、排出機構36によって外部トレイ37へ排出される。
【0021】
画像形成部PY、PM、PC、PKは、現像装置23(Y)、23(M)、23(C)、23(K)で用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、実質的に同一に構成される。以下では、イエローの画像形成部PYについて説明し、他の画像形成部PM、PC、PKに関する重複した説明を省略する。
【0022】
画像形成部PYは、感光ドラム21の周囲に、帯電ローラ22、露光装置25、現像装置23、一次転写ローラ30、及びドラムクリーニング装置24を配置している。帯電ローラ22は、感光ドラム21の表面を一様な電位に帯電させる。露光装置25は、レーザービームを走査して感光ドラム21に画像の静電像を書き込む。現像装置23は、静電像を現像して感光ドラム21にトナー像を形成する。一次転写ローラ30は、電圧を印加されて感光ドラム21のトナー像を中間転写ベルト26へ一次転写させる。
【0023】
電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置Eは、搬送される記録材上に転写された未定着のトナー像を、熱によって融解して記録材上に融着させる定着装置Aが設けられている。
【0024】
<像加熱装置>
図2は定着装置の要部の構成の説明図である。以下の説明において、定着装置またはこれを構成している部材の長手方向とは、記録材搬送路面内において記録材搬送方向に直交する方向に平行な方向である。また、短手方向とは、記録材搬送方向に平行な方向である。また、定着装置の正面とは、定着装置を記録材入口側からみた面、背面とはその反対側の記録材出口側から見た面である。定着装置の左右とは、定着装置を正面から見て左または右である。上流側と下流側とは、記録材搬送方向に関して、上流側と下流側である。
【0025】
図2に示すように、無端状の加熱ベルト部材の一例である加熱ベルト1は、誘導加熱される金属層を有し、内側面を支持されて回転する。加圧回転体の一例である加圧ローラ2は、弾性層を有し、内側面を支持された加熱ベルト1の外側面に当接して加熱ベルト1との間に記録材の加熱ニップNを形成する。 支持部材3は、加熱ベルト1を貫通して非回転に配置されて加圧ローラ2の対向位置で加熱ベルト1の内側面を支持する。
【0026】
定着装置Aの定着ベルト1は、金属層を有する無端状の加熱ベルト部材である。加圧ローラ2は、支持部材3によって内側面を支持された定着ベルト1の外側面に圧接して、定着ベルト1との間に記録材Pの加熱ニップNを形成する。定着ベルト1は、制御回路部102で制御されるモータM2によって加圧ローラ2が回転駆動されることで、画像形成時には、図1の二次転写部T2から搬送されてくる記録材Pの搬送速度とほぼ同一の周速度で回転駆動される。定着装置Aでは、定着ベルト1の表面回転速度が300mm/secであって、A4サイズ横送りのフルカラー画像であれば1分間に80枚、同じくA4サイズ縦送りであれば1分間に58枚を連続的に定着可能である。
【0027】
記録材Pは、加熱ニップNにおいて定着ベルト1の外周面に密着し、定着ベルト1と一緒に加熱ニップNを挟持搬送されていく。定着ベルト1の熱が付与されつつ加熱ニップNの加圧力を受けて、未定着トナー像Tは、記録材Pの表面に定着される。加熱ニップNを通った記録材Pは、定着ベルト1の表面が加熱ニップNの出口部分で変形するため、定着ベルト1の外周面から記録材Pが自己分離して定着装置A外へ搬送される。
【0028】
<圧力付与部材>
図3は定着装置の長手方向の構成の説明図である。図3に示すように、定着フランジ10は、定着ベルト1の長手方向の移動および周方向の形状を規制するための左右の規制部材である。回転する定着ベルト1は、基層が金属で構成されているので、回転状態にあっても幅方向への寄りを規制するための手段としては、定着ベルト1の端部を単純に受け止めるだけの定着フランジ10を設ければ十分である。これにより、定着装置Aの構成を簡略化できるという利点がある。
【0029】
ステー4及び支持部材3は、定着フランジ10に両端部を固定され、定着ベルト1を長手方向に貫通して非回転に配置される。支持部材3は、耐熱性樹脂であり、定着ベルト1と加圧ローラ2との間に押圧力を作用させて加熱ニップNを形成する圧力付与部材であり、金属製のステー4によって全長を梁状に支持されている。
【0030】
ステー4は、加熱ニップNに圧力を加えるために剛性が必要であるため、鉄製である。定着フランジ10内に挿通して配設されたステー4の両端部と定着装置Aの筐体側のバネ受け部材9aとの間に、ステー加圧バネ9bが縮設される。ステー加圧バネ9bは、ステー4に押し下げ力を作用させて、支持部材3の下面と加圧ローラ2の上面とを定着ベルト1を挟んで圧設して、加熱ニップNを形成する。
【0031】
<誘導加熱装置>
図2に示すように、定着ベルト1の内側には、外側磁性体コア7aから射出して定着ベルト1を貫通する磁束を案内する磁気回路部材として磁気遮蔽コア5が設けられている。磁気遮蔽コア5は、誘導加熱によるステー4等の温度上昇を防止するための磁気遮蔽部材としても機能する。支持部材3は、特に両端部で励磁コイル6と接近しており、支持部材3の発熱を防止するために励磁コイル6で生じる磁界を遮蔽するために、支持部材3の上面に長手方向にわたって磁気遮蔽コア5を配置してある。
【0032】
誘導加熱装置100は、外側磁性体コア7aを通じて交流磁界を定着ベルト1に作用させて定着ベルト1を誘導加熱する加熱源である。誘導加熱装置100は、定着ベルト1の外周面の上面側において、定着ベルト1に所定のギャップ(隙間)を存して対面させて配設してある。
【0033】
励磁コイル6は、交流電流を印加されて外側磁性体コア7aに交流磁界を作用させて高効率に磁束を発生させる。励磁コイル6は、電線としてリッツ線を用い、リッツ線を横長・船底状にして定着ベルト1の周面と側面の一部に対向するように巻回してなる。外側磁性体コア7aは、励磁コイル6によって発生した磁界が定着ベルト1の金属層(導電層)以外に実質漏れないように励磁コイル6を覆って配置される。
【0034】
定着ベルト1の回転状態において、誘導加熱装置100の励磁コイル6には電源装置(励磁回路)101から20〜50kHzの高周波電流が印加される。励磁コイル6によって発生した磁界によって、定着ベルト1の金属層(導電層)が誘導発熱する。
【0035】
温度センサTH1は、記録材の通過幅のほぼ中央で定着ベルト1の温度を検出するサーミスタ等の温度検出素子である。温度センサTH1は、支持部材3から弾性支持部材を介して取り付けられており、定着ベルト1の当接面が波打つなどの位置変動が生じたとしても、位置変動に追従して良好な接触状態を維持する。温度センサTH1の検出温度情報は、励磁コイル6に入力する電力にフィードバックされる。
【0036】
制御回路部102は、温度センサTH1から入力する検出温度が所定の目標温度(定着温度)に維持されるように、電源装置101から励磁コイル6に入力する電力を制御している。制御回路部102は、定着ベルト1の検出温度が、目標温度である180℃で一定になるように、温度センサTH1の検出値に基づいて高周波電流の周波数を変化させて励磁コイル6に入力する電力を制御する。定着ベルト1の検出温度が上限温度である200℃に昇温した場合、励磁コイル6への通電が遮断される。
【0037】
画像形成ジョブを受信すると、制御回路部102は、誘導加熱装置100の励磁コイル6に電源装置101から電力供給を開始させる。定着ベルト1を所定の定着温度まで立ち上がって温調された状態になると、制御回路部102は画像形成を開始する。これにより、未定着トナー像Tを有する記録材Pがトナー像担持面側を定着ベルト1側に向けてガイド部材7で案内されて加熱ニップNに導入される。
【0038】
定着装置Aでは、励磁コイル6を含む誘導加熱装置100が、高温になる定着ベルト1の内部ではなく外部に配置されている。このため、励磁コイル6の温度が高温になりにくく、電気抵抗も上昇せず、高周波電流を流してもジュール発熱による損失を軽減する事が可能となる。また、励磁コイル6を外部に配置したことで、定着ベルト1の小径化(低熱容量化)にも寄与しており、しいては省エネルギー性にも優れている。
【0039】
定着装置Aの起動時のウォーミングアップタイムは、非常に熱容量が低い構成であるため、例えば励磁コイル6に1200W入力すると、約15秒で目標温度である160℃に到達できる。このため、スタンバイ中の加熱動作が不要であるため、電力消費量を非常に低く抑えることが可能である。
【0040】
<加熱ベルト部材>
図4は定着ベルト1の層構成模型図である。図4に示すように、定着ベルト1は内径が30mmで電気鋳造法によって製造したニッケルを基層(金属層)1aを有して、回転可能である。この基層1aの厚みは40μmである。
【0041】
基層1aの外周には、弾性層1bとして、耐熱性シリコーンゴム層が設けられている。シリコーンゴム層の厚さは100〜1000μmの範囲内で設定するのが好ましい。定着装置Aでは、定着ベルト1の熱容量を小さくして、起動時のウォーミングアップタイムを短縮し、かつカラー画像を定着するときに好適な定着画像を得ることを考慮して、シリコーンゴム層の厚みは300μmとされている。このシリコーンゴム材料は、JIS−ASKER−C硬度で20度の硬度を持ち、熱伝導率は0.8W/mKである。
更に、弾性層1bの外周には、表面離型層1cとして、フッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が30μmの厚みで設けられている。
【0042】
基層1aの内面側には、定着ベルト1と温度センサTH1の摺動摩擦を低下させるために、フッ素樹脂やポリイミドなどの樹脂層(滑性層)1dを10〜50μm設けても良い。定着装置Aでは、樹脂層1dとして、ポリイミドを20μm設けた。
【0043】
なお、定着ベルト1の金属層1aには、ニッケルのほかに鉄合金や銅、銀などを適宜選択可能である。また、樹脂基層にそれら金属を積層させるなどの構成でも良い。金属層1aの厚みは、後で説明する励磁コイルに流す高周波電流の周波数と金属層の透磁率・導電率に応じて調整して良く、5〜200μm程度の間で設定すると良い。
【0044】
<加圧ローラ>
図2に示すように、モールド部材7cは、外側磁性体コア7aと励磁コイル6を電気絶縁性の樹脂によって一体に支持する。ただし、一部の外側磁性体コア7aは、定着ベルト1との対向間隔を変更可能に支持されている。
【0045】
定着ベルト1と誘導加熱装置100の励磁コイル6は、0.5mmのモールドにより電気絶縁の状態を保ち、定着ベルト1と励磁コイル6との間隔は1.5mm(モールド表面と定着ベルト表面の距離は1.0mm)で一定であり、定着ベルト1は均一に加熱される。
【0046】
加圧ローラ2は、外径が30mmで長手方向中央部の径が20mmで両端部の径が19mmである鉄合金製の芯金2aに、弾性層2bとして、シリコーンゴム層が設けてある。加圧ローラ2の表面は、離型層2cとして、フッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が30μmの厚みで設けられる。加圧ローラ2の長手方向中央部における硬度は、JIS−ASKER−C硬度で70度である。芯金2aにテーパー形状をつけているのは、加圧した時に、押圧部材3が撓んでも定着ベルト1と加圧ローラ2で挟まれる加熱ニップN内の圧力を長手方向にわたって均一にするためである。
【0047】
加圧ローラ2の回転方向における定着装置Aの加熱ニップNの幅は、ニップ圧が600Nにおいては、加圧ローラ2の長手方向の両端部で約9mm、中央部では約8.5mmである。このようにすることで、記録材Pの搬送の幅方向における両端部での搬送速度が中央部と比べて速くなるので、紙しわが発生しにくくなるという利点がある。
【0048】
<加熱幅調整機構>
図5は外側磁性体コアの配置の説明図である。図6は外側磁性体コアの動作の説明図である。
【0049】
図2に示すように、交流磁束発生手段の一例である誘導加熱装置100は、金属層を誘導加熱するための交流磁束を発生させるとともに、記録材サイズに応じて加熱ベルト1の幅方向に複数段階の加熱幅を設定可能である。
【0050】
コア部材の一例である外側磁性体コア7aは、幅方向に複数個を配列させている。コイル部材の一例である励磁コイル6は、複数個の外側磁性体コア7aに磁束を発生させる。
【0051】
外側磁性体コア7eは、加熱ベルト1の反対側で複数個の外側磁性体コア7aを磁気的に連絡する。
【0052】
複数個の外側磁性体コア7aと励磁コイル6と外側磁性体部材7eとが加熱ベルト1の外側に配置される。内側磁性体部材の一例である磁気遮蔽コア5は、加熱ベルト1の内側に配置されて、複数個の外側磁性体コア7aを加熱ベルト1の内側で磁気的に連絡する。
【0053】
磁気回路機構の一例である加熱幅調整機構9は、外側磁性体コア7aを射出して加熱ベルト1を貫通する磁束の磁気回路を制御する。加熱幅調整機構9は、記録材サイズに応じた範囲の外側磁性体コア7aの磁束の磁気回路の磁気抵抗を、その外側の外側磁性体コア7aの磁束の磁気回路の磁気抵抗よりも小さく設定して複数段階の加熱幅を設定する。
【0054】
モールド部材7cは、外側磁性体コア7aと励磁コイル6を電気絶縁性の樹脂によって一体に支持する。ただし、一部の外側磁性体コア7aは、定着ベルト1との対向間隔を変更可能に支持されている。
【0055】
図5に示すように、外側磁性体コア7aは、定着ベルト1の長手方向に分割されており、1つ1つの外側磁性体コア7aは、移動するためのガタ分を含めて間隔L(本実施例では10mm)で配置されている。
【0056】
加熱幅調整機構9は、1つ1つの外側磁性体コア7aを垂直方向に移動させて、外側磁性体コア7aと定着ベルト1の間隔を遠近二段階に設定可能である。加熱幅調整機構9の具体的な構成としては、先端部に傾斜面を設けた一対のスライダをモールド部材7cに沿って長手方向に移動させて、個別に上方へばね付勢された外側磁性体コア7aを押し下げる機構を採用した。
【0057】
図6の(a)に示すように、記録材の搬送幅に対応する領域では、定着ベルト1と誘導加熱装置100の励磁コイル6は、0.5mmのモールド層によって電気絶縁の状態を保ち、モールド層の表面と定着ベルト1の表面の距離は1.0mmである。このため、定着ベルト1と励磁コイル6との間隔は1.5mmで一定であり、定着ベルト1は、均一に加熱されている。記録材Pの搬送幅に対応する領域では、励磁コイル6と外側磁性体コア7aの間隔は0.5mmと密接しており、発熱効率が非常に高い。
【0058】
図6の(b)に示すように、制御回路部102は、プリントジョブを受信すると、記録材サイズ入力値を読み取り、その記録材サイズに適した加熱幅を得るように加熱幅調整機構9を作動させる。記録材Pの搬送幅の外側に対応する領域では、励磁コイル6と外側磁性体コア7aの間隔を広げ、発熱効率が低下するように、外側磁性体コア7aを移動している。本実施例においては、移動量は10mmとしている。励磁コイル6と外側磁性体コア7aの隙間を広げることで、定着ベルト1を通過する磁束密度を低めて、定着ベルト1の発熱量を低下させている。
【0059】
像加熱装置Aにおいては、高速昇温させるために、定着ベルト1を誘導加熱により加熱する。これは、加熱媒体の熱容量を小さくし、加熱効率の良い熱源で加熱しようとしたものである。また、コストやエネルギー効率の点から、画像形成装置Eでは、薄肉の加熱媒体を記録材に接触させて記録材上のトナー像を加熱溶融させるタイプの像加熱装置を搭載している。
【0060】
ところが、熱容量を小さくするために薄肉の加熱媒体を使用する場合、軸直角断面の断面積がきわめて小さくなるために、軸方向への熱移動率が良好でない。この傾向は加熱媒体が薄肉なほど顕著であり、熱伝導率の低い樹脂層ではさらに顕著になる。
【0061】
これは、「熱伝導率をλ、2点間の温度差をθ1−θ2、長さをLとしたとき、単位時間に伝わる熱量Qは次式で表される」というフーリエの法則からも明らかである。
Q=λ・f(θ1−θ2)/L
【0062】
このことは、最大通紙幅の記録材を通紙して定着させる場合にはあまり問題にならない。しかし、幅の小さい小形サイズの記録材を連続で通紙させる場合には、加熱媒体の非通紙領域における温度が温調温度よりも上昇し、通紙領域における温度と非通紙領域における温度との温度差が大きくなってしまう。
【0063】
したがって、このような加熱媒体の長手方向の温度ムラのために、樹脂材料からなる周辺部材の耐熱寿命が低下したり、熱的なダメージを被ったりする虞れがある。さらには、小形サイズの記録材を連続で通紙させた直後に大形サイズの記録材を通紙したときに、部分的な温度ムラによる紙シワ、スキュー等や、定着ムラが生じることもある。
【0064】
このような通紙領域と非通紙領域との温度差は、搬送される記録材の熱容量が大きく、スループット(単位時間あたりのプリント枚数)を高くするほど広がる。このため、薄肉で低熱容量の加熱媒体を用いる像加熱装置は、スループットの高い複写機への適用が困難であった。
【0065】
そこで、定着装置Aでは、加熱媒体と誘導加熱源との間に、誘導加熱源から加熱媒体へ届く磁束の一部を遮蔽する磁束遮蔽手段を配置し、磁束遮蔽手段の位置を変化させる変位手段を設ける。磁束遮蔽手段を設けて移動させることで、必要部分以外は誘導加熱源から届く磁束が遮蔽され、発熱自体が抑えられることにより、発熱範囲の制御が行われ、昇温される加熱媒体の熱分布をコントロールすることが可能となる。
【0066】
しかし、このように加熱媒体の熱分布をコントロールしても、記録材搬送に直交する方向で分割された磁性体コアと記録材の位置関係が一致せず、加熱領域が記録材より広くなってしまうと、非通紙部において昇温してしまう。
【0067】
また、記録材搬送に直交する方向で分割された磁性体コアと記録材の位置関係が一致していても、記録材の両端部(コバ部)で昇温してしまう。
【0068】
これは、記録材の端部においてもトナーを定着するのに十分な発熱量を要するが、通紙するにつれ、通紙域に対して記録材の端部では記録材に奪われる熱量は小さく、過昇温してしまうためである。
【0069】
記録材Pの加熱処理の開始後、加圧ローラ2の長手方向で外側へ向かって高温の領域が移動して、当接する定着ベルト1には、加熱幅の外側でも過剰な昇温が発生する。記録材Pの表面を瞬時に100度以上に加熱するため、定着ベルト1の表面は160度に加熱され、誘導加熱を受ける定着ベルト1の金属層は200度近い高温になる。通紙領域では加圧ローラ2の温度が低下するため、通紙領域の外側の隣接部に加圧ローラ2の温度ピークが形成される。そして、通紙領域の外側の隣接部では、高温の支持部材3と高温の加圧ローラ2に挟まれた状態で金属層を通じて定着ベルト1の長手方向へ熱が移動するため過剰な昇温に至っている。
【0070】
この現象は、低熱容量ベルトを用いた構成ではより顕著に現れる。そこで、以下の実施例では、定着ベルトあるいは記録材を記録材搬送に直交する方向に往復移動させることで、非通紙部もしくは記録材端部における昇温を低減し、定着ベルトの耐久性を向上させる。
【0071】
<記録材シフト機構>
図7は記録材シフト機構の説明図である。図2に示すように、記録材シフト機構11は、加熱ニップNに搬送される記録材Pと加熱ニップNの相対的な位置関係を長手方向にシフトさせる。したがって、特許文献1に示される記録材カセットを幅方向に移動させる機構や、特許文献2に示される定着装置を幅方向へ移動させる機構を利用できる。しかし、ここでは、定着装置Aの手前位置で記録材Pを幅方向に平行移動する機構を採用した。
【0072】
図7に示すように、記録材先端センサ11aは、記録材先端を検出して、記録材Pの搬入を検知する。記録材端部位置センサ11cは、搬入された記録材Pの端部位置を検知する。記録材シフト機構11は、搬送方向と直交する方向に記録材Pをシフトさせて、定着ベルト1の幅方向の所望の位置へ記録材Pを搬送させる。記録材シフト機構11は、記録材Pの下面に当接する搬送ローラ11bの角度を変更して、記録材Pを幅方向にシフトさせる。ガイド11e、11fが記録材の幅方向の縁に当接して記録材の幅方向の位置を規制する。
【0073】
<実施例1>
図8は実施例1の通紙制御のフローチャートである。図2に示すように、往復移動機構の一例である記録材シフト機構11は、加熱ニップNにおける記録材Pの通過位置を幅方向に往復移動させて、加熱ニップNにおける記録材の通過範囲を拡張可能である。
【0074】
制御手段の一例である制御回路部102は、誘導加熱装置100を起動して記録材サイズに応じた加熱幅で記録材の加熱処理を開始させる。その後、記録材の累積加熱枚数に応じて記録材の通過範囲を拡張するように記録材シフト機構11を制御する。
【0075】
制御回路部102は、誘導加熱装置100の起動後に加熱ニップNに形成される、記録材を加熱処理可能な温度領域の拡大に追随させるように、段階的に記録材の通過範囲を拡張する。
【0076】
制御回路部102は、加熱幅調整機構9によって記録材Pの幅方向の長さよりも短い加熱幅を設定して記録材Pの加熱処理を開始させる。その後、記録材Pの種類によって異なる第1の累積加熱枚数に達すると、外側磁性体コア7aの幅方向の長さよりも短い刻み幅で記録材Pの通過範囲を1段階拡張する。
【0077】
制御回路部102は、記録材Pの加熱処理を開始させた後に、第1の累積加熱枚数よりも大きな第2の累積加熱枚数に達すると、記録材Pの通過範囲をさらに1段階拡張する。これにより、記録材Pの通過範囲を加熱幅調整機構9によって設定された加熱幅の外側まで至らせる。
【0078】
実施例1においては、通紙領域の外側の隣接部(以下では記録材端部)で生じた定着ベルト1の過剰な昇温を、記録材Pを幅方向に往復移動することで低減する。
【0079】
図2を参照して図8に示すように、制御回路部102は、記録材サイズ入力部103に入力された記録材サイズを取得する(S201)。
【0080】
制御回路部102は、読み取られた入力値に基づいて、図5に示すように、非通紙部にあたる外側磁性体コア7aを移動して(S202)、記録材Pのトナー像を定着させるのに適切な加熱幅を得る。
【0081】
図7に示すように、外側磁性体コア7aによって磁束密度が高められる領域をA、記録材Pの幅をBとする。領域Aの左端がA1、右端がA2、記録材Pの幅Bの左端がB1、右端がB2である。A1とB1の差分を第一領域W1とする。第一領域W1を外側へ拡張した領域を第2領域W2とする。制御回路部102は、第一領域W1及び第二領域W2を記録材サイズに応じて設定する(S203)。
【0082】
領域Aは、長手方向において定着ベルト1と記録材Pの中心位置が一致する時に、領域Aは幅Bよりも広く設定される。第一領域W1は、次式を満たすように、非通紙部の外側磁性体コア7aを移動して設定される。本実施例においてL=10mmである。
0<W1<L
【0083】
制御回路部102は、記録材Pの種類や通紙枚数や給紙間隔に基づき、シフトのピッチ幅d1、d2をテーブルから読み出す(S204)。シフトのピッチ幅d1、d2は、記録材Pの坪量が重いほど大きく設定する。それは、画像の定着性を確保するために温調温度を高く設定する必要があるためで、ピッチ幅を小さくしてしまうと、A1側へ記録材Pを移動させたときのA2側での昇温が大きくなってしまうからである。定着ベルトの耐久限界温度までのマージンが少ないため、A2側において耐久限界温度に近づいてしまうためである。
【0084】
実施例1では、耐久限界温度を230℃として、定着装置Aの耐久通紙枚数を50万枚に設計しているが、定着ベルト1の温度が耐久限界温度を超えると、耐久通紙枚数が大幅に低下してしまう。
【0085】
次に、第一領域W1における記録材Pの往復移動開始枚数N1と第二領域W2における記録材Pの往復移動開始枚数N2をテーブルから読み出す(S205)。N1、N2は、記録材Pの種類や給紙間隔に基づき、定着ベルト1における記録材Pの端部位置の温度が所定の温度を超えない通紙枚数からあらかじめ決められている。
【0086】
制御回路部102は、画像形成の開始後の通紙枚数NがN1より大きくなると(S206のYes)、記録材シフト機構11を作動させて、第一領域W1内で記録材Pの往復移動を開始する(S207)。
【0087】
その後も画像形成が継続すると、第一領域W1のさらに外側で定着ベルト1が昇温してくる。そのため、制御回路部102は、通紙枚数NがN2より大きくなると(S208のYes)、記録材Pの往復移動領域を増加し、第二領域W2まで往復範囲を拡大する(S209)。通紙枚数が所定の枚数N2を超えたところで、第二領域W2を所定のシフトのピッチ幅d2で往復移動する。
【0088】
第二領域W2の往復移動範囲は、通紙域の温度以上であり、通紙域と同等の画像が得られる領域である。第二領域W2は、あらかじめ記録材Pの種類や給紙間隔に基づき、設定した領域である(S203)。ピッチ幅d2も、ピッチ幅d1と同様に、あらかじめ記録材の種類や通紙枚数や給紙間隔に基づき、決められている(S204)。
【0089】
なお、外側磁性体コア7aによって磁束密度が高められる領域Aと記録材Pの幅Bが一致している場合も、図7の場合と同様に、画像形成が継続すると、記録材Pの幅Bの外側に昇温が見られる。これは、外側磁性体コア7aによって磁束密度が高められる領域Aの領域外においても、定着ベルト1の発熱量自体は小さいが、通紙枚数Nが増加するにつれて加圧ローラ2の昇温も手伝い、やはり昇温してしまうためである。この場合は、通紙枚数Nを重ねることで、記録材Pの非通紙部の温度が上昇してきたところで、通紙域と同等の定着画像が得られる第二領域W2から記録材Pの往復移動を開始することで、非通紙部の昇温を低減する。
【0090】
<実施例2>
図9は記録材を往復移動させない場合の端部温度上昇の説明図である。図10は記録材を往復移動させるタイミングの説明図である。図11は記録材を往復移動させた場合の端部温度上昇の説明図である。図12は通紙100枚時点での端部温度上昇の説明図である。図13は通紙200枚時点での端部温度上昇の説明図である。図14は通紙500枚時点での端部温度上昇の説明図である。
【0091】
実施例2では、実施例1の構成及び制御における具体例を説明する。において定着ベルト1の周速度を300mm/secとし、A4サイズ横送り(長手幅210mm)のフルカラー画像を1分間に58枚定着する。外側磁性体コア7aは、1つ1つが幅10mmであるため、往復移動を行う第一領域W1=5mmとした。励磁コイル6には、通紙域における定着ベルト1の温度低下が最小となるように最大電力1500Wを投入する。
【0092】
記録材Pの種類は、普通紙(CLC80g)を用い、環境条件は、温度23℃湿度50%である。定着ベルト1の温調温度は160℃に設定してある。この時の横レジスト制御手段11による移動ピッチ幅は5mmとする。ここでは、CLC80gを用いているが、より坪量が小さいCLC64gの場合には、ピッチ幅は2.5mmとして、昇温の遅い領域Aの端部を記録材Pが通過する頻度を落とす。坪量が小さいと、投入電力が小さい分、記録材Pの端部での昇温が遅いためである。
【0093】
図9には、記録材Pの通紙直前と記録材Pを往復移動せずに通紙した場合の長手温度分布を示してある。記録材Pを往復移動せずに通紙した場合、長手方向の温度分布において記録材端部で大きな昇温が発生する。これは、外側磁性体コア7aによって発熱量が大きくなっている領域Aに対して、記録材Pの幅Bが小さく、この一致しない領域において昇温してしまうためである。
【0094】
図9に示すように、通紙直前の長手温度分布は、通紙域において均一な温度分布が得られているが、50枚通紙したところで通紙域と記録材端部の温度差が定着ベルト1の耐久温度を超えてしまっている。
【0095】
そこで、記録材端部の温度が上昇してしまう前に記録材Pの往復移動を開始する。ここで、記録材の往復移動を開始するタイミングは、記録材端部の温度が高すぎることで定着ベルト1に溶けたトナーが付着してしまう温度(ホットオフセット温度)以下である通紙枚数を選択している。すなわち、図10に示すように、記録材端部の温度があまり上昇していない通紙10枚目において記録材シフト機構11によって記録材Pを長手方向にそれぞれ5mmずつ往復移動させた。
【0096】
図11に示すように、記録材Pを往復移動していないものが通紙50枚で定着ベルト1の耐久限界温度を超えている。これに対して、第一領域W1で記録材を往復移動させた場合、通紙50枚でも、記録材端部の温度は、定着ベルト耐久限界温度よりかなり小さな値を示している。
【0097】
図12に示すように、通紙50枚から通紙枚数を重ねて100枚目まで通紙させると、第一領域W1の外側で、定着ベルト耐久限界温度は超えていないが、かなり大きく昇温していることが判明した。そこで、中央と同等の画像の定着性を得られる第二領域W2までを記録材Pの往復移動範囲として、一段広い範囲までを記録材Pが通過する。
【0098】
この場合も、第一領域W1での記録材Pの往復移動の開始時と同じく、通紙100枚目を待たないで、予測的に第二領域W2での往復移動を開始させている。すなわち、記録材端部の定着ベルト1の温度がホットオフセット温度以下である50枚目において、横レジスト制御手段11によって、記録材の往復移動幅を長手方向にさらに5mm図ずつ増加させている。
【0099】
この増加した第二領域W2は、図11に示すように、50枚目の通紙時点で既に第1領域W1以上の温度であり、通紙域と同等の定着画像が得られる領域である。この時の記録材Pの往復移動幅は第一領域W1を合わせた第二領域W2として、両端それぞれ10mmずつとなっている。記録材シフト機構11による1回ごとの移動ピッチ幅は5mmとしている。
【0100】
図13に示すように、通紙10枚から第一領域W1のみで記録材Pを往復移動させた場合、通紙200枚で定着ベルトの耐久限界温度を超えてしまっている。これに対して、通紙50枚から第二領域W2まで記録材Pの往復移動範囲を増加させた場合、200枚を通紙しても、記録材端部での温度上昇はほとんど見られない。
【0101】
図14に示すように、通紙50枚から第二領域W2まで記録材Pの往復移動範囲を増加させた場合、通紙200枚から通紙枚数を重ねて、最終的に500枚まで通紙してもほとんど記録材端部での温度増加は見られなかった。
【0102】
以上の実験を繰り返して確認したところ、記録材Pを往復移動させない場合、本構成の定着装置の耐久通紙枚数は10万枚以下で定着ベルト1の表面離型層1cの剥がれが観測された。それに対し、記録材シフト機構11を上記のタイミングで作動させて記録材Pを往復移動させた場合、定着ベルト1が耐久限界温度以下で連続通紙可能となったため、目標である耐久通紙枚数50万枚を達成することができた。
【0103】
なお、制御回路部102は、記録材Pによる加熱ニップNの単位時間当たりに奪われる熱量が大きい像加熱条件ほど、記録材Pが通過する幅方向の領域を段階的に拡大させる間隔を短くする。
【0104】
言い換えれば、制御回路部102は、記録材Pの単位面積当たり重量が大きいほど第1の累積加熱枚数及び第2の累積加熱枚数を少なく設定する。制御回路部102は、記録材Pの単位時間当たり加熱処理枚数が多いほど第1の累積加熱枚数及び第2の累積加熱枚数を少なく設定する。
【0105】
すなわち、実施例2では、CLC80gを用いて検討を行ったが、より坪量が大きい紙種に関しては、温調温度を高く設定する必要がある。これにより、定着ベルト1の耐久限界温度までのマージンが少ないため、より早い通紙枚数(CLC105gの場合は5枚目)から記録材の往復移動を開始する。
【0106】
また、実施例2では、1分間にA4サイズ記録材を58枚通紙しているが、より給紙間隔が遅い場合には、投入電力を小さくできる分、記録材端部での昇温も遅い。このため、より遅い通紙枚数(1分間にA4サイズ記録材を30枚通紙する場合は20枚目)から記録材の往復移動を開始する。
【0107】
<実施例3>
図15は実施例3で用いる定着装置の構成の説明図である。図15は像加熱装置としての定着装置の要部の拡大横断側面図である。
【0108】
図15の(a)に示すように、実施例3では、励磁コイル6が定着ベルト1内にあり、記録材サイズに応じて加熱ベルト1の幅方向に複数段階の加熱幅を設定するために磁束遮蔽版である銅板を用いている。なお、実施例3では、実施例1と同一機能を有する構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0109】
定着装置Bでは、加熱媒体と誘導加熱源との間に、誘導加熱源から加熱媒体へ届く磁束の一部を遮蔽する磁束遮蔽手段(14)を配置し、磁束遮蔽手段の位置を変化させる変位手段を設けている。磁束遮蔽手段を設けて移動させることで、必要部分以外は誘導加熱源から届く磁束が遮蔽され、発熱自体が抑えられることにより、定着ニップの発熱範囲の制御が行われ、昇温される加熱媒体の熱分布をコントロールすることが可能となる。
【0110】
具体的には、円筒状の定着ベルト1内に、励磁コイル6と発熱効率を高めるために配置された磁性体コア12とそれらを支持するホルダー13が挿入して配設してある。ホルダー13と定着ベルト1との間に磁束遮蔽部材14を配置している。
【0111】
磁束遮蔽部材14は、定着ベルト1とホルダー13の隙間に配置されているが、所定の磁束調整位置および磁束調整を行わない退避位置へ向けて移動せしめるための移動機構を有する。磁束遮蔽部材14は、磁束遮蔽部材14自体の昇温を防止するために、誘導電流を流す導電体であって固有抵抗の小さい非磁性材料、例えば銅、アルミニウム、銀、もしくはその合金、または磁束を閉じ込める固有抵抗が大きいフェライトなどが適している。
【0112】
図15の(b)に示すように、磁束遮蔽部材14は、階段状の形状となっており、磁束遮蔽部材14を定着ベルト1の回転方向に移動し、定着ベルト1と励磁コイル6の対向位置間に移動することで長手方向の磁束分布を調整する。
【0113】
このような定着装置Bにおいても、実施例1と同様な制御を行うことで、500枚通紙した時点でも、定着ベルト1の記録材端部位置の温度上昇はあまり見られなかった。
【符号の説明】
【0114】
1 定着ベルト、2 加圧ローラ、3 支持部材
4 ステー、5 磁気遮蔽コア、6 励磁コイル
7a 外側磁性体コア、10.定着フランジ
11 シフト機構、12 磁性体コア、13 ホルダー
14 磁束遮蔽部材、102 制御回路部、
TH1 温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱の加熱長さを可変に構成した加熱ベルト方式の像加熱装置、詳しくは、記録材の連続的な加熱処理を行う際の記録材の通紙領域の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー像を記録材に転写した後に、ローラ加熱方式の定着装置の加熱ニップで加熱加圧して、記録材にトナー像を定着させる画像形成装置が広く用いられている。ローラ方式の定着装置では、記録材の連続的な加熱処理に伴って、非通紙領域のローラ端部に過熱領域が形成される。このため、加熱ニップに搬送されてくる記録材と加熱ニップの相対的な位置関係をシフトさせる制御が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
一方、ローラ加熱方式とは異なる定着装置として、ベルト加熱方式の定着装置が実用化されている。ベルト加熱方式の定着装置は、円筒状の薄い加熱ベルト部材を加熱してトナー像の加熱加圧処理を行うため、肉厚のローラ全体を一様に加熱するローラ定着方式に比較して、加熱される質量が小さくて済む。特に、加熱ベルト部材に金属層を設けて、交流磁界により誘導加熱する電磁加熱方式は、加熱ベルト部材に加熱を集中させるため、ごく短時間で起動して記録材の加熱処理を開始できる(特許文献3)。
【0004】
しかし、電磁加熱方式のベルト加熱方式の像加熱装置は、ごく小さな質量に加熱が集中するため、非通紙領域の加熱ベルト部材の端部が短時間で過剰な温度に加熱されて熱変形を生じてしまう。特許文献1、2のような記録材の振り分けを行っても、記録材の通過を待っている間に大きな温度上昇が発生する。
【0005】
そこで、特許文献4では、加熱ベルト部材の回転方向に直角な幅方向における加熱ベルト部材の加熱長さを、記録材の通過幅に応じて複数段階に設定可能な交流磁束発生手段を用いて、加熱ベルト部材の誘導加熱を行っている。加熱ベルト部材の長手方向に複数個のコア部材を配列させ、記録材の通過幅に応じた範囲のコア部材の磁束の磁気回路の磁気抵抗を、その外側のコア部材の磁束の磁気回路の磁気抵抗よりも大きく設定して、記録材の加熱処理を開始している。これにより、記録材の通過幅の外側に位置する加熱ベルト部材の過熱を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−149970号公報
【特許文献2】特開2001−373178号公報
【特許文献3】特開2001−194940号公報
【特許文献4】特開2010−160388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に示されるように、記録材の通過幅に応じた加熱長さを設定しても、その加熱長さの外側の加熱ベルト部材に過熱領域が発生して熱変形を生じる場合があることが判明した。
【0008】
ベルト加熱方式の定着装置では、定着装置の全体の温度分布が平衡状態になるのを待たないで、加熱ニップの温度分布が記録材の幅程度の一様な温度状態になった時点で記録材の加熱処理を開始している。そのため、加熱ベルト部材の温度を一定に保って記録材に奪われる熱量を補う以上の加熱が常時行われおり、熱伝達(放熱)を妨げられた部分や非通紙領域では、思いがけない高温度が発生する。
【0009】
本発明は、連続的な加熱処理の開始後に記録材の通過幅の外側で発生する過熱領域の移動に伴って記録材のシフト範囲を拡大して、加熱ベルト部材の局所的な過熱を回避できる像加熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の像加熱装置は、誘導加熱される金属層を有し、内側面を支持されて回転する無端状の加熱ベルト部材と、内側面を支持された前記加熱ベルト部材の外側面に当接して前記加熱ベルト部材との間に記録材の加熱ニップを形成する加圧回転体と、前記金属層を誘導加熱するための交流磁束を発生させるとともに、記録材サイズに応じて前記加熱ベルト部材の幅方向に複数段階の加熱幅を設定可能な交流磁束発生手段とを備えたものである。そして、前記加熱ニップにおける記録材の通過位置を前記幅方向に往復移動させて前記加熱ニップにおける記録材の通過範囲を拡張可能な往復移動機構と、前記交流磁束発生手段を起動して記録材サイズに応じた前記加熱幅で記録材の加熱処理を開始させた後に、記録材の累積加熱枚数に応じて記録材の通過範囲を拡張するように前記往復移動機構を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の像加熱装置は、連続的な加熱処理の開始後に記録材の通過幅の外側で発生する過熱領域の移動に合わせて前記シフト機構を制御して記録材の通過領域を拡大する。このため、加熱ベルト部材の局所的な過熱を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】定着装置の要部の構成の説明図である。
【図3】定着装置の長手方向の構成の説明図である。
【図4】定着ベルト1の層構成模型図である。
【図5】外側磁性体コアの配置の説明図である。
【図6】外側磁性体コアの動作の説明図である。
【図7】記録材シフト機構の説明図である。
【図8】実施例1の通紙制御のフローチャートである。
【図9】記録材を往復移動させない場合の端部温度上昇の説明図である。
【図10】記録材を往復移動させるタイミングの説明図である。
【図11】記録材を往復移動させた場合の通紙50枚時点での端部温度上昇の説明図である。
【図12】通紙100枚時点での端部温度上昇の説明図である。
【図13】通紙200枚時点での端部温度上昇の説明図である。
【図14】通紙500枚時点での端部温度上昇の説明図である。
【図15】実施例3で用いる定着装置の構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、誘導加熱の加熱範囲を設定して記録材の加熱処理を開始した後に、定着ニップにおける記録材が通過する範囲が次第に拡大される限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0014】
従って、像加熱装置は、トナー像を転写された記録材を加熱処理して記録材にトナー像を定着させる定着装置のみならず、半定着又は定着済みトナー像を加熱処理して画像に所望の表面性を付与する表面処理装置を含む。
【0015】
像加熱装置を搭載する画像形成装置は、モノクロ/フルカラー、枚葉型/記録材搬送型/中間転写型、トナー像形成方式、転写方式の区別無く本発明を実施できる。
【0016】
本実施形態では、トナー像の形成/転写/定着に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途の画像形成装置で実施できる。
【0017】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置Eは、中間転写ベルト26に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部PY、PM、PC、PKを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0018】
画像形成部PYでは、感光ドラム21(Y)にイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト26に一次転写される。画像形成部PMでは、感光ドラム21(M)にマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト26に一次転写される。画像形成部PC、PKでは、感光ドラム21(C)、21(K)にそれぞれシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト26に順次一次転写される。
【0019】
中間転写ベルト26は、エンドレスの樹脂ベルトを用いており、駆動ローラ27、二次転写対向ローラ28、テンションローラ29の3本のローラに張架されて、駆動ローラ27によって駆動される。
【0020】
記録材Pは、記録材カセット31から給紙ローラ32により1枚ずつ取り出されてレジストローラ33で待機する。記録材Pは、レジストローラ33によって中間転写ベルト26上のトナー像にタイミングを合わせて二次転写部T2へ給送されて、中間転写ベルト26からトナー像を二次転写される。四色のトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置Aへ搬送され、定着装置Aで加熱加圧を受けてトナー像を定着された後に、排出機構36によって外部トレイ37へ排出される。
【0021】
画像形成部PY、PM、PC、PKは、現像装置23(Y)、23(M)、23(C)、23(K)で用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、実質的に同一に構成される。以下では、イエローの画像形成部PYについて説明し、他の画像形成部PM、PC、PKに関する重複した説明を省略する。
【0022】
画像形成部PYは、感光ドラム21の周囲に、帯電ローラ22、露光装置25、現像装置23、一次転写ローラ30、及びドラムクリーニング装置24を配置している。帯電ローラ22は、感光ドラム21の表面を一様な電位に帯電させる。露光装置25は、レーザービームを走査して感光ドラム21に画像の静電像を書き込む。現像装置23は、静電像を現像して感光ドラム21にトナー像を形成する。一次転写ローラ30は、電圧を印加されて感光ドラム21のトナー像を中間転写ベルト26へ一次転写させる。
【0023】
電子写真プロセスにより画像形成を行う画像形成装置Eは、搬送される記録材上に転写された未定着のトナー像を、熱によって融解して記録材上に融着させる定着装置Aが設けられている。
【0024】
<像加熱装置>
図2は定着装置の要部の構成の説明図である。以下の説明において、定着装置またはこれを構成している部材の長手方向とは、記録材搬送路面内において記録材搬送方向に直交する方向に平行な方向である。また、短手方向とは、記録材搬送方向に平行な方向である。また、定着装置の正面とは、定着装置を記録材入口側からみた面、背面とはその反対側の記録材出口側から見た面である。定着装置の左右とは、定着装置を正面から見て左または右である。上流側と下流側とは、記録材搬送方向に関して、上流側と下流側である。
【0025】
図2に示すように、無端状の加熱ベルト部材の一例である加熱ベルト1は、誘導加熱される金属層を有し、内側面を支持されて回転する。加圧回転体の一例である加圧ローラ2は、弾性層を有し、内側面を支持された加熱ベルト1の外側面に当接して加熱ベルト1との間に記録材の加熱ニップNを形成する。 支持部材3は、加熱ベルト1を貫通して非回転に配置されて加圧ローラ2の対向位置で加熱ベルト1の内側面を支持する。
【0026】
定着装置Aの定着ベルト1は、金属層を有する無端状の加熱ベルト部材である。加圧ローラ2は、支持部材3によって内側面を支持された定着ベルト1の外側面に圧接して、定着ベルト1との間に記録材Pの加熱ニップNを形成する。定着ベルト1は、制御回路部102で制御されるモータM2によって加圧ローラ2が回転駆動されることで、画像形成時には、図1の二次転写部T2から搬送されてくる記録材Pの搬送速度とほぼ同一の周速度で回転駆動される。定着装置Aでは、定着ベルト1の表面回転速度が300mm/secであって、A4サイズ横送りのフルカラー画像であれば1分間に80枚、同じくA4サイズ縦送りであれば1分間に58枚を連続的に定着可能である。
【0027】
記録材Pは、加熱ニップNにおいて定着ベルト1の外周面に密着し、定着ベルト1と一緒に加熱ニップNを挟持搬送されていく。定着ベルト1の熱が付与されつつ加熱ニップNの加圧力を受けて、未定着トナー像Tは、記録材Pの表面に定着される。加熱ニップNを通った記録材Pは、定着ベルト1の表面が加熱ニップNの出口部分で変形するため、定着ベルト1の外周面から記録材Pが自己分離して定着装置A外へ搬送される。
【0028】
<圧力付与部材>
図3は定着装置の長手方向の構成の説明図である。図3に示すように、定着フランジ10は、定着ベルト1の長手方向の移動および周方向の形状を規制するための左右の規制部材である。回転する定着ベルト1は、基層が金属で構成されているので、回転状態にあっても幅方向への寄りを規制するための手段としては、定着ベルト1の端部を単純に受け止めるだけの定着フランジ10を設ければ十分である。これにより、定着装置Aの構成を簡略化できるという利点がある。
【0029】
ステー4及び支持部材3は、定着フランジ10に両端部を固定され、定着ベルト1を長手方向に貫通して非回転に配置される。支持部材3は、耐熱性樹脂であり、定着ベルト1と加圧ローラ2との間に押圧力を作用させて加熱ニップNを形成する圧力付与部材であり、金属製のステー4によって全長を梁状に支持されている。
【0030】
ステー4は、加熱ニップNに圧力を加えるために剛性が必要であるため、鉄製である。定着フランジ10内に挿通して配設されたステー4の両端部と定着装置Aの筐体側のバネ受け部材9aとの間に、ステー加圧バネ9bが縮設される。ステー加圧バネ9bは、ステー4に押し下げ力を作用させて、支持部材3の下面と加圧ローラ2の上面とを定着ベルト1を挟んで圧設して、加熱ニップNを形成する。
【0031】
<誘導加熱装置>
図2に示すように、定着ベルト1の内側には、外側磁性体コア7aから射出して定着ベルト1を貫通する磁束を案内する磁気回路部材として磁気遮蔽コア5が設けられている。磁気遮蔽コア5は、誘導加熱によるステー4等の温度上昇を防止するための磁気遮蔽部材としても機能する。支持部材3は、特に両端部で励磁コイル6と接近しており、支持部材3の発熱を防止するために励磁コイル6で生じる磁界を遮蔽するために、支持部材3の上面に長手方向にわたって磁気遮蔽コア5を配置してある。
【0032】
誘導加熱装置100は、外側磁性体コア7aを通じて交流磁界を定着ベルト1に作用させて定着ベルト1を誘導加熱する加熱源である。誘導加熱装置100は、定着ベルト1の外周面の上面側において、定着ベルト1に所定のギャップ(隙間)を存して対面させて配設してある。
【0033】
励磁コイル6は、交流電流を印加されて外側磁性体コア7aに交流磁界を作用させて高効率に磁束を発生させる。励磁コイル6は、電線としてリッツ線を用い、リッツ線を横長・船底状にして定着ベルト1の周面と側面の一部に対向するように巻回してなる。外側磁性体コア7aは、励磁コイル6によって発生した磁界が定着ベルト1の金属層(導電層)以外に実質漏れないように励磁コイル6を覆って配置される。
【0034】
定着ベルト1の回転状態において、誘導加熱装置100の励磁コイル6には電源装置(励磁回路)101から20〜50kHzの高周波電流が印加される。励磁コイル6によって発生した磁界によって、定着ベルト1の金属層(導電層)が誘導発熱する。
【0035】
温度センサTH1は、記録材の通過幅のほぼ中央で定着ベルト1の温度を検出するサーミスタ等の温度検出素子である。温度センサTH1は、支持部材3から弾性支持部材を介して取り付けられており、定着ベルト1の当接面が波打つなどの位置変動が生じたとしても、位置変動に追従して良好な接触状態を維持する。温度センサTH1の検出温度情報は、励磁コイル6に入力する電力にフィードバックされる。
【0036】
制御回路部102は、温度センサTH1から入力する検出温度が所定の目標温度(定着温度)に維持されるように、電源装置101から励磁コイル6に入力する電力を制御している。制御回路部102は、定着ベルト1の検出温度が、目標温度である180℃で一定になるように、温度センサTH1の検出値に基づいて高周波電流の周波数を変化させて励磁コイル6に入力する電力を制御する。定着ベルト1の検出温度が上限温度である200℃に昇温した場合、励磁コイル6への通電が遮断される。
【0037】
画像形成ジョブを受信すると、制御回路部102は、誘導加熱装置100の励磁コイル6に電源装置101から電力供給を開始させる。定着ベルト1を所定の定着温度まで立ち上がって温調された状態になると、制御回路部102は画像形成を開始する。これにより、未定着トナー像Tを有する記録材Pがトナー像担持面側を定着ベルト1側に向けてガイド部材7で案内されて加熱ニップNに導入される。
【0038】
定着装置Aでは、励磁コイル6を含む誘導加熱装置100が、高温になる定着ベルト1の内部ではなく外部に配置されている。このため、励磁コイル6の温度が高温になりにくく、電気抵抗も上昇せず、高周波電流を流してもジュール発熱による損失を軽減する事が可能となる。また、励磁コイル6を外部に配置したことで、定着ベルト1の小径化(低熱容量化)にも寄与しており、しいては省エネルギー性にも優れている。
【0039】
定着装置Aの起動時のウォーミングアップタイムは、非常に熱容量が低い構成であるため、例えば励磁コイル6に1200W入力すると、約15秒で目標温度である160℃に到達できる。このため、スタンバイ中の加熱動作が不要であるため、電力消費量を非常に低く抑えることが可能である。
【0040】
<加熱ベルト部材>
図4は定着ベルト1の層構成模型図である。図4に示すように、定着ベルト1は内径が30mmで電気鋳造法によって製造したニッケルを基層(金属層)1aを有して、回転可能である。この基層1aの厚みは40μmである。
【0041】
基層1aの外周には、弾性層1bとして、耐熱性シリコーンゴム層が設けられている。シリコーンゴム層の厚さは100〜1000μmの範囲内で設定するのが好ましい。定着装置Aでは、定着ベルト1の熱容量を小さくして、起動時のウォーミングアップタイムを短縮し、かつカラー画像を定着するときに好適な定着画像を得ることを考慮して、シリコーンゴム層の厚みは300μmとされている。このシリコーンゴム材料は、JIS−ASKER−C硬度で20度の硬度を持ち、熱伝導率は0.8W/mKである。
更に、弾性層1bの外周には、表面離型層1cとして、フッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が30μmの厚みで設けられている。
【0042】
基層1aの内面側には、定着ベルト1と温度センサTH1の摺動摩擦を低下させるために、フッ素樹脂やポリイミドなどの樹脂層(滑性層)1dを10〜50μm設けても良い。定着装置Aでは、樹脂層1dとして、ポリイミドを20μm設けた。
【0043】
なお、定着ベルト1の金属層1aには、ニッケルのほかに鉄合金や銅、銀などを適宜選択可能である。また、樹脂基層にそれら金属を積層させるなどの構成でも良い。金属層1aの厚みは、後で説明する励磁コイルに流す高周波電流の周波数と金属層の透磁率・導電率に応じて調整して良く、5〜200μm程度の間で設定すると良い。
【0044】
<加圧ローラ>
図2に示すように、モールド部材7cは、外側磁性体コア7aと励磁コイル6を電気絶縁性の樹脂によって一体に支持する。ただし、一部の外側磁性体コア7aは、定着ベルト1との対向間隔を変更可能に支持されている。
【0045】
定着ベルト1と誘導加熱装置100の励磁コイル6は、0.5mmのモールドにより電気絶縁の状態を保ち、定着ベルト1と励磁コイル6との間隔は1.5mm(モールド表面と定着ベルト表面の距離は1.0mm)で一定であり、定着ベルト1は均一に加熱される。
【0046】
加圧ローラ2は、外径が30mmで長手方向中央部の径が20mmで両端部の径が19mmである鉄合金製の芯金2aに、弾性層2bとして、シリコーンゴム層が設けてある。加圧ローラ2の表面は、離型層2cとして、フッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が30μmの厚みで設けられる。加圧ローラ2の長手方向中央部における硬度は、JIS−ASKER−C硬度で70度である。芯金2aにテーパー形状をつけているのは、加圧した時に、押圧部材3が撓んでも定着ベルト1と加圧ローラ2で挟まれる加熱ニップN内の圧力を長手方向にわたって均一にするためである。
【0047】
加圧ローラ2の回転方向における定着装置Aの加熱ニップNの幅は、ニップ圧が600Nにおいては、加圧ローラ2の長手方向の両端部で約9mm、中央部では約8.5mmである。このようにすることで、記録材Pの搬送の幅方向における両端部での搬送速度が中央部と比べて速くなるので、紙しわが発生しにくくなるという利点がある。
【0048】
<加熱幅調整機構>
図5は外側磁性体コアの配置の説明図である。図6は外側磁性体コアの動作の説明図である。
【0049】
図2に示すように、交流磁束発生手段の一例である誘導加熱装置100は、金属層を誘導加熱するための交流磁束を発生させるとともに、記録材サイズに応じて加熱ベルト1の幅方向に複数段階の加熱幅を設定可能である。
【0050】
コア部材の一例である外側磁性体コア7aは、幅方向に複数個を配列させている。コイル部材の一例である励磁コイル6は、複数個の外側磁性体コア7aに磁束を発生させる。
【0051】
外側磁性体コア7eは、加熱ベルト1の反対側で複数個の外側磁性体コア7aを磁気的に連絡する。
【0052】
複数個の外側磁性体コア7aと励磁コイル6と外側磁性体部材7eとが加熱ベルト1の外側に配置される。内側磁性体部材の一例である磁気遮蔽コア5は、加熱ベルト1の内側に配置されて、複数個の外側磁性体コア7aを加熱ベルト1の内側で磁気的に連絡する。
【0053】
磁気回路機構の一例である加熱幅調整機構9は、外側磁性体コア7aを射出して加熱ベルト1を貫通する磁束の磁気回路を制御する。加熱幅調整機構9は、記録材サイズに応じた範囲の外側磁性体コア7aの磁束の磁気回路の磁気抵抗を、その外側の外側磁性体コア7aの磁束の磁気回路の磁気抵抗よりも小さく設定して複数段階の加熱幅を設定する。
【0054】
モールド部材7cは、外側磁性体コア7aと励磁コイル6を電気絶縁性の樹脂によって一体に支持する。ただし、一部の外側磁性体コア7aは、定着ベルト1との対向間隔を変更可能に支持されている。
【0055】
図5に示すように、外側磁性体コア7aは、定着ベルト1の長手方向に分割されており、1つ1つの外側磁性体コア7aは、移動するためのガタ分を含めて間隔L(本実施例では10mm)で配置されている。
【0056】
加熱幅調整機構9は、1つ1つの外側磁性体コア7aを垂直方向に移動させて、外側磁性体コア7aと定着ベルト1の間隔を遠近二段階に設定可能である。加熱幅調整機構9の具体的な構成としては、先端部に傾斜面を設けた一対のスライダをモールド部材7cに沿って長手方向に移動させて、個別に上方へばね付勢された外側磁性体コア7aを押し下げる機構を採用した。
【0057】
図6の(a)に示すように、記録材の搬送幅に対応する領域では、定着ベルト1と誘導加熱装置100の励磁コイル6は、0.5mmのモールド層によって電気絶縁の状態を保ち、モールド層の表面と定着ベルト1の表面の距離は1.0mmである。このため、定着ベルト1と励磁コイル6との間隔は1.5mmで一定であり、定着ベルト1は、均一に加熱されている。記録材Pの搬送幅に対応する領域では、励磁コイル6と外側磁性体コア7aの間隔は0.5mmと密接しており、発熱効率が非常に高い。
【0058】
図6の(b)に示すように、制御回路部102は、プリントジョブを受信すると、記録材サイズ入力値を読み取り、その記録材サイズに適した加熱幅を得るように加熱幅調整機構9を作動させる。記録材Pの搬送幅の外側に対応する領域では、励磁コイル6と外側磁性体コア7aの間隔を広げ、発熱効率が低下するように、外側磁性体コア7aを移動している。本実施例においては、移動量は10mmとしている。励磁コイル6と外側磁性体コア7aの隙間を広げることで、定着ベルト1を通過する磁束密度を低めて、定着ベルト1の発熱量を低下させている。
【0059】
像加熱装置Aにおいては、高速昇温させるために、定着ベルト1を誘導加熱により加熱する。これは、加熱媒体の熱容量を小さくし、加熱効率の良い熱源で加熱しようとしたものである。また、コストやエネルギー効率の点から、画像形成装置Eでは、薄肉の加熱媒体を記録材に接触させて記録材上のトナー像を加熱溶融させるタイプの像加熱装置を搭載している。
【0060】
ところが、熱容量を小さくするために薄肉の加熱媒体を使用する場合、軸直角断面の断面積がきわめて小さくなるために、軸方向への熱移動率が良好でない。この傾向は加熱媒体が薄肉なほど顕著であり、熱伝導率の低い樹脂層ではさらに顕著になる。
【0061】
これは、「熱伝導率をλ、2点間の温度差をθ1−θ2、長さをLとしたとき、単位時間に伝わる熱量Qは次式で表される」というフーリエの法則からも明らかである。
Q=λ・f(θ1−θ2)/L
【0062】
このことは、最大通紙幅の記録材を通紙して定着させる場合にはあまり問題にならない。しかし、幅の小さい小形サイズの記録材を連続で通紙させる場合には、加熱媒体の非通紙領域における温度が温調温度よりも上昇し、通紙領域における温度と非通紙領域における温度との温度差が大きくなってしまう。
【0063】
したがって、このような加熱媒体の長手方向の温度ムラのために、樹脂材料からなる周辺部材の耐熱寿命が低下したり、熱的なダメージを被ったりする虞れがある。さらには、小形サイズの記録材を連続で通紙させた直後に大形サイズの記録材を通紙したときに、部分的な温度ムラによる紙シワ、スキュー等や、定着ムラが生じることもある。
【0064】
このような通紙領域と非通紙領域との温度差は、搬送される記録材の熱容量が大きく、スループット(単位時間あたりのプリント枚数)を高くするほど広がる。このため、薄肉で低熱容量の加熱媒体を用いる像加熱装置は、スループットの高い複写機への適用が困難であった。
【0065】
そこで、定着装置Aでは、加熱媒体と誘導加熱源との間に、誘導加熱源から加熱媒体へ届く磁束の一部を遮蔽する磁束遮蔽手段を配置し、磁束遮蔽手段の位置を変化させる変位手段を設ける。磁束遮蔽手段を設けて移動させることで、必要部分以外は誘導加熱源から届く磁束が遮蔽され、発熱自体が抑えられることにより、発熱範囲の制御が行われ、昇温される加熱媒体の熱分布をコントロールすることが可能となる。
【0066】
しかし、このように加熱媒体の熱分布をコントロールしても、記録材搬送に直交する方向で分割された磁性体コアと記録材の位置関係が一致せず、加熱領域が記録材より広くなってしまうと、非通紙部において昇温してしまう。
【0067】
また、記録材搬送に直交する方向で分割された磁性体コアと記録材の位置関係が一致していても、記録材の両端部(コバ部)で昇温してしまう。
【0068】
これは、記録材の端部においてもトナーを定着するのに十分な発熱量を要するが、通紙するにつれ、通紙域に対して記録材の端部では記録材に奪われる熱量は小さく、過昇温してしまうためである。
【0069】
記録材Pの加熱処理の開始後、加圧ローラ2の長手方向で外側へ向かって高温の領域が移動して、当接する定着ベルト1には、加熱幅の外側でも過剰な昇温が発生する。記録材Pの表面を瞬時に100度以上に加熱するため、定着ベルト1の表面は160度に加熱され、誘導加熱を受ける定着ベルト1の金属層は200度近い高温になる。通紙領域では加圧ローラ2の温度が低下するため、通紙領域の外側の隣接部に加圧ローラ2の温度ピークが形成される。そして、通紙領域の外側の隣接部では、高温の支持部材3と高温の加圧ローラ2に挟まれた状態で金属層を通じて定着ベルト1の長手方向へ熱が移動するため過剰な昇温に至っている。
【0070】
この現象は、低熱容量ベルトを用いた構成ではより顕著に現れる。そこで、以下の実施例では、定着ベルトあるいは記録材を記録材搬送に直交する方向に往復移動させることで、非通紙部もしくは記録材端部における昇温を低減し、定着ベルトの耐久性を向上させる。
【0071】
<記録材シフト機構>
図7は記録材シフト機構の説明図である。図2に示すように、記録材シフト機構11は、加熱ニップNに搬送される記録材Pと加熱ニップNの相対的な位置関係を長手方向にシフトさせる。したがって、特許文献1に示される記録材カセットを幅方向に移動させる機構や、特許文献2に示される定着装置を幅方向へ移動させる機構を利用できる。しかし、ここでは、定着装置Aの手前位置で記録材Pを幅方向に平行移動する機構を採用した。
【0072】
図7に示すように、記録材先端センサ11aは、記録材先端を検出して、記録材Pの搬入を検知する。記録材端部位置センサ11cは、搬入された記録材Pの端部位置を検知する。記録材シフト機構11は、搬送方向と直交する方向に記録材Pをシフトさせて、定着ベルト1の幅方向の所望の位置へ記録材Pを搬送させる。記録材シフト機構11は、記録材Pの下面に当接する搬送ローラ11bの角度を変更して、記録材Pを幅方向にシフトさせる。ガイド11e、11fが記録材の幅方向の縁に当接して記録材の幅方向の位置を規制する。
【0073】
<実施例1>
図8は実施例1の通紙制御のフローチャートである。図2に示すように、往復移動機構の一例である記録材シフト機構11は、加熱ニップNにおける記録材Pの通過位置を幅方向に往復移動させて、加熱ニップNにおける記録材の通過範囲を拡張可能である。
【0074】
制御手段の一例である制御回路部102は、誘導加熱装置100を起動して記録材サイズに応じた加熱幅で記録材の加熱処理を開始させる。その後、記録材の累積加熱枚数に応じて記録材の通過範囲を拡張するように記録材シフト機構11を制御する。
【0075】
制御回路部102は、誘導加熱装置100の起動後に加熱ニップNに形成される、記録材を加熱処理可能な温度領域の拡大に追随させるように、段階的に記録材の通過範囲を拡張する。
【0076】
制御回路部102は、加熱幅調整機構9によって記録材Pの幅方向の長さよりも短い加熱幅を設定して記録材Pの加熱処理を開始させる。その後、記録材Pの種類によって異なる第1の累積加熱枚数に達すると、外側磁性体コア7aの幅方向の長さよりも短い刻み幅で記録材Pの通過範囲を1段階拡張する。
【0077】
制御回路部102は、記録材Pの加熱処理を開始させた後に、第1の累積加熱枚数よりも大きな第2の累積加熱枚数に達すると、記録材Pの通過範囲をさらに1段階拡張する。これにより、記録材Pの通過範囲を加熱幅調整機構9によって設定された加熱幅の外側まで至らせる。
【0078】
実施例1においては、通紙領域の外側の隣接部(以下では記録材端部)で生じた定着ベルト1の過剰な昇温を、記録材Pを幅方向に往復移動することで低減する。
【0079】
図2を参照して図8に示すように、制御回路部102は、記録材サイズ入力部103に入力された記録材サイズを取得する(S201)。
【0080】
制御回路部102は、読み取られた入力値に基づいて、図5に示すように、非通紙部にあたる外側磁性体コア7aを移動して(S202)、記録材Pのトナー像を定着させるのに適切な加熱幅を得る。
【0081】
図7に示すように、外側磁性体コア7aによって磁束密度が高められる領域をA、記録材Pの幅をBとする。領域Aの左端がA1、右端がA2、記録材Pの幅Bの左端がB1、右端がB2である。A1とB1の差分を第一領域W1とする。第一領域W1を外側へ拡張した領域を第2領域W2とする。制御回路部102は、第一領域W1及び第二領域W2を記録材サイズに応じて設定する(S203)。
【0082】
領域Aは、長手方向において定着ベルト1と記録材Pの中心位置が一致する時に、領域Aは幅Bよりも広く設定される。第一領域W1は、次式を満たすように、非通紙部の外側磁性体コア7aを移動して設定される。本実施例においてL=10mmである。
0<W1<L
【0083】
制御回路部102は、記録材Pの種類や通紙枚数や給紙間隔に基づき、シフトのピッチ幅d1、d2をテーブルから読み出す(S204)。シフトのピッチ幅d1、d2は、記録材Pの坪量が重いほど大きく設定する。それは、画像の定着性を確保するために温調温度を高く設定する必要があるためで、ピッチ幅を小さくしてしまうと、A1側へ記録材Pを移動させたときのA2側での昇温が大きくなってしまうからである。定着ベルトの耐久限界温度までのマージンが少ないため、A2側において耐久限界温度に近づいてしまうためである。
【0084】
実施例1では、耐久限界温度を230℃として、定着装置Aの耐久通紙枚数を50万枚に設計しているが、定着ベルト1の温度が耐久限界温度を超えると、耐久通紙枚数が大幅に低下してしまう。
【0085】
次に、第一領域W1における記録材Pの往復移動開始枚数N1と第二領域W2における記録材Pの往復移動開始枚数N2をテーブルから読み出す(S205)。N1、N2は、記録材Pの種類や給紙間隔に基づき、定着ベルト1における記録材Pの端部位置の温度が所定の温度を超えない通紙枚数からあらかじめ決められている。
【0086】
制御回路部102は、画像形成の開始後の通紙枚数NがN1より大きくなると(S206のYes)、記録材シフト機構11を作動させて、第一領域W1内で記録材Pの往復移動を開始する(S207)。
【0087】
その後も画像形成が継続すると、第一領域W1のさらに外側で定着ベルト1が昇温してくる。そのため、制御回路部102は、通紙枚数NがN2より大きくなると(S208のYes)、記録材Pの往復移動領域を増加し、第二領域W2まで往復範囲を拡大する(S209)。通紙枚数が所定の枚数N2を超えたところで、第二領域W2を所定のシフトのピッチ幅d2で往復移動する。
【0088】
第二領域W2の往復移動範囲は、通紙域の温度以上であり、通紙域と同等の画像が得られる領域である。第二領域W2は、あらかじめ記録材Pの種類や給紙間隔に基づき、設定した領域である(S203)。ピッチ幅d2も、ピッチ幅d1と同様に、あらかじめ記録材の種類や通紙枚数や給紙間隔に基づき、決められている(S204)。
【0089】
なお、外側磁性体コア7aによって磁束密度が高められる領域Aと記録材Pの幅Bが一致している場合も、図7の場合と同様に、画像形成が継続すると、記録材Pの幅Bの外側に昇温が見られる。これは、外側磁性体コア7aによって磁束密度が高められる領域Aの領域外においても、定着ベルト1の発熱量自体は小さいが、通紙枚数Nが増加するにつれて加圧ローラ2の昇温も手伝い、やはり昇温してしまうためである。この場合は、通紙枚数Nを重ねることで、記録材Pの非通紙部の温度が上昇してきたところで、通紙域と同等の定着画像が得られる第二領域W2から記録材Pの往復移動を開始することで、非通紙部の昇温を低減する。
【0090】
<実施例2>
図9は記録材を往復移動させない場合の端部温度上昇の説明図である。図10は記録材を往復移動させるタイミングの説明図である。図11は記録材を往復移動させた場合の端部温度上昇の説明図である。図12は通紙100枚時点での端部温度上昇の説明図である。図13は通紙200枚時点での端部温度上昇の説明図である。図14は通紙500枚時点での端部温度上昇の説明図である。
【0091】
実施例2では、実施例1の構成及び制御における具体例を説明する。において定着ベルト1の周速度を300mm/secとし、A4サイズ横送り(長手幅210mm)のフルカラー画像を1分間に58枚定着する。外側磁性体コア7aは、1つ1つが幅10mmであるため、往復移動を行う第一領域W1=5mmとした。励磁コイル6には、通紙域における定着ベルト1の温度低下が最小となるように最大電力1500Wを投入する。
【0092】
記録材Pの種類は、普通紙(CLC80g)を用い、環境条件は、温度23℃湿度50%である。定着ベルト1の温調温度は160℃に設定してある。この時の横レジスト制御手段11による移動ピッチ幅は5mmとする。ここでは、CLC80gを用いているが、より坪量が小さいCLC64gの場合には、ピッチ幅は2.5mmとして、昇温の遅い領域Aの端部を記録材Pが通過する頻度を落とす。坪量が小さいと、投入電力が小さい分、記録材Pの端部での昇温が遅いためである。
【0093】
図9には、記録材Pの通紙直前と記録材Pを往復移動せずに通紙した場合の長手温度分布を示してある。記録材Pを往復移動せずに通紙した場合、長手方向の温度分布において記録材端部で大きな昇温が発生する。これは、外側磁性体コア7aによって発熱量が大きくなっている領域Aに対して、記録材Pの幅Bが小さく、この一致しない領域において昇温してしまうためである。
【0094】
図9に示すように、通紙直前の長手温度分布は、通紙域において均一な温度分布が得られているが、50枚通紙したところで通紙域と記録材端部の温度差が定着ベルト1の耐久温度を超えてしまっている。
【0095】
そこで、記録材端部の温度が上昇してしまう前に記録材Pの往復移動を開始する。ここで、記録材の往復移動を開始するタイミングは、記録材端部の温度が高すぎることで定着ベルト1に溶けたトナーが付着してしまう温度(ホットオフセット温度)以下である通紙枚数を選択している。すなわち、図10に示すように、記録材端部の温度があまり上昇していない通紙10枚目において記録材シフト機構11によって記録材Pを長手方向にそれぞれ5mmずつ往復移動させた。
【0096】
図11に示すように、記録材Pを往復移動していないものが通紙50枚で定着ベルト1の耐久限界温度を超えている。これに対して、第一領域W1で記録材を往復移動させた場合、通紙50枚でも、記録材端部の温度は、定着ベルト耐久限界温度よりかなり小さな値を示している。
【0097】
図12に示すように、通紙50枚から通紙枚数を重ねて100枚目まで通紙させると、第一領域W1の外側で、定着ベルト耐久限界温度は超えていないが、かなり大きく昇温していることが判明した。そこで、中央と同等の画像の定着性を得られる第二領域W2までを記録材Pの往復移動範囲として、一段広い範囲までを記録材Pが通過する。
【0098】
この場合も、第一領域W1での記録材Pの往復移動の開始時と同じく、通紙100枚目を待たないで、予測的に第二領域W2での往復移動を開始させている。すなわち、記録材端部の定着ベルト1の温度がホットオフセット温度以下である50枚目において、横レジスト制御手段11によって、記録材の往復移動幅を長手方向にさらに5mm図ずつ増加させている。
【0099】
この増加した第二領域W2は、図11に示すように、50枚目の通紙時点で既に第1領域W1以上の温度であり、通紙域と同等の定着画像が得られる領域である。この時の記録材Pの往復移動幅は第一領域W1を合わせた第二領域W2として、両端それぞれ10mmずつとなっている。記録材シフト機構11による1回ごとの移動ピッチ幅は5mmとしている。
【0100】
図13に示すように、通紙10枚から第一領域W1のみで記録材Pを往復移動させた場合、通紙200枚で定着ベルトの耐久限界温度を超えてしまっている。これに対して、通紙50枚から第二領域W2まで記録材Pの往復移動範囲を増加させた場合、200枚を通紙しても、記録材端部での温度上昇はほとんど見られない。
【0101】
図14に示すように、通紙50枚から第二領域W2まで記録材Pの往復移動範囲を増加させた場合、通紙200枚から通紙枚数を重ねて、最終的に500枚まで通紙してもほとんど記録材端部での温度増加は見られなかった。
【0102】
以上の実験を繰り返して確認したところ、記録材Pを往復移動させない場合、本構成の定着装置の耐久通紙枚数は10万枚以下で定着ベルト1の表面離型層1cの剥がれが観測された。それに対し、記録材シフト機構11を上記のタイミングで作動させて記録材Pを往復移動させた場合、定着ベルト1が耐久限界温度以下で連続通紙可能となったため、目標である耐久通紙枚数50万枚を達成することができた。
【0103】
なお、制御回路部102は、記録材Pによる加熱ニップNの単位時間当たりに奪われる熱量が大きい像加熱条件ほど、記録材Pが通過する幅方向の領域を段階的に拡大させる間隔を短くする。
【0104】
言い換えれば、制御回路部102は、記録材Pの単位面積当たり重量が大きいほど第1の累積加熱枚数及び第2の累積加熱枚数を少なく設定する。制御回路部102は、記録材Pの単位時間当たり加熱処理枚数が多いほど第1の累積加熱枚数及び第2の累積加熱枚数を少なく設定する。
【0105】
すなわち、実施例2では、CLC80gを用いて検討を行ったが、より坪量が大きい紙種に関しては、温調温度を高く設定する必要がある。これにより、定着ベルト1の耐久限界温度までのマージンが少ないため、より早い通紙枚数(CLC105gの場合は5枚目)から記録材の往復移動を開始する。
【0106】
また、実施例2では、1分間にA4サイズ記録材を58枚通紙しているが、より給紙間隔が遅い場合には、投入電力を小さくできる分、記録材端部での昇温も遅い。このため、より遅い通紙枚数(1分間にA4サイズ記録材を30枚通紙する場合は20枚目)から記録材の往復移動を開始する。
【0107】
<実施例3>
図15は実施例3で用いる定着装置の構成の説明図である。図15は像加熱装置としての定着装置の要部の拡大横断側面図である。
【0108】
図15の(a)に示すように、実施例3では、励磁コイル6が定着ベルト1内にあり、記録材サイズに応じて加熱ベルト1の幅方向に複数段階の加熱幅を設定するために磁束遮蔽版である銅板を用いている。なお、実施例3では、実施例1と同一機能を有する構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0109】
定着装置Bでは、加熱媒体と誘導加熱源との間に、誘導加熱源から加熱媒体へ届く磁束の一部を遮蔽する磁束遮蔽手段(14)を配置し、磁束遮蔽手段の位置を変化させる変位手段を設けている。磁束遮蔽手段を設けて移動させることで、必要部分以外は誘導加熱源から届く磁束が遮蔽され、発熱自体が抑えられることにより、定着ニップの発熱範囲の制御が行われ、昇温される加熱媒体の熱分布をコントロールすることが可能となる。
【0110】
具体的には、円筒状の定着ベルト1内に、励磁コイル6と発熱効率を高めるために配置された磁性体コア12とそれらを支持するホルダー13が挿入して配設してある。ホルダー13と定着ベルト1との間に磁束遮蔽部材14を配置している。
【0111】
磁束遮蔽部材14は、定着ベルト1とホルダー13の隙間に配置されているが、所定の磁束調整位置および磁束調整を行わない退避位置へ向けて移動せしめるための移動機構を有する。磁束遮蔽部材14は、磁束遮蔽部材14自体の昇温を防止するために、誘導電流を流す導電体であって固有抵抗の小さい非磁性材料、例えば銅、アルミニウム、銀、もしくはその合金、または磁束を閉じ込める固有抵抗が大きいフェライトなどが適している。
【0112】
図15の(b)に示すように、磁束遮蔽部材14は、階段状の形状となっており、磁束遮蔽部材14を定着ベルト1の回転方向に移動し、定着ベルト1と励磁コイル6の対向位置間に移動することで長手方向の磁束分布を調整する。
【0113】
このような定着装置Bにおいても、実施例1と同様な制御を行うことで、500枚通紙した時点でも、定着ベルト1の記録材端部位置の温度上昇はあまり見られなかった。
【符号の説明】
【0114】
1 定着ベルト、2 加圧ローラ、3 支持部材
4 ステー、5 磁気遮蔽コア、6 励磁コイル
7a 外側磁性体コア、10.定着フランジ
11 シフト機構、12 磁性体コア、13 ホルダー
14 磁束遮蔽部材、102 制御回路部、
TH1 温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱される金属層を有し、回転可能な無端状の加熱ベルト部材と、
前記加熱ベルト部材の外側面に当接して前記加熱ベルト部材との間に記録材の加熱ニップを形成する加圧回転体と、
前記金属層を誘導加熱するための交流磁束を発生させるとともに、記録材サイズに応じて前記加熱ベルト部材の幅方向に複数段階の加熱幅を設定可能な交流磁束発生手段と、
前記加熱ニップにおける記録材の通過位置を前記幅方向に往復移動させて前記加熱ニップにおける記録材の通過範囲を拡張可能な往復移動機構と、
前記交流磁束発生手段を起動して記録材サイズに応じた前記加熱幅で記録材の加熱処理を開始させた後に、記録材の累積加熱枚数に応じて記録材の通過範囲を拡張するように前記往復移動機構を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記交流磁束発生手段の起動後に前記加熱ニップに形成される、記録材を加熱処理可能な温度領域の拡大に追随させるように、段階的に前記記録材の通過範囲を拡張することを特徴とする請求項1記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記交流磁束発生手段は、前記幅方向に配列させた複数個のコア部材と、前記複数個のコア部材に磁束を発生させるコイル部材と、前記コア部材を射出して前記加熱ベルト部材を貫通する磁束の磁気回路を構成する磁気回路機構とを有し、
前記磁気回路機構は、記録材サイズに応じた範囲の前記コア部材の磁束の磁気回路の磁気抵抗を、その外側の前記コア部材の磁束の磁気回路の磁気抵抗よりも小さく設定して前記複数段階の加熱幅を設定する機構であって、
前記制御手段は、前記磁気回路機構によって記録材の前記幅方向の長さよりも短い加熱幅を設定して記録材の加熱処理を開始させた後に、記録材の種類によって異なる第1の累積加熱枚数に達すると、前記コア部材の前記幅方向の長さよりも短い刻み幅で前記記録材の通過範囲を1段階拡張することを特徴とする請求項2記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記制御手段は、記録材の加熱処理を開始させた後に、第1の累積加熱枚数よりも大きな所定の第2の累積加熱枚数に達すると、前記記録材の通過範囲をさらに1段階拡張して前記磁気回路機構によって設定された前記加熱幅の外側まで至らせることを特徴とする請求項3記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記制御手段は、記録材の単位面積当たり重量が大きいほど前記第1の累積加熱枚数及び前記第2の累積加熱枚数を少なく設定することを特徴とする請求項4記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記制御手段は、記録材の単位時間当たり加熱処理枚数が多いほど前記第1の累積加熱枚数及び前記第2の累積加熱枚数を少なく設定することを特徴とする請求項5記載の像加熱装置。
【請求項7】
前記加圧回転体は、弾性層を有する加圧ローラであって、
前記加熱ベルト部材を貫通して非回転に配置されて前記加圧ローラの対向位置で前記加熱ベルト部材の内側面を支持する支持部材を有し、
前記複数個のコア部材と、前記コイル部材と、前記加熱ベルト部材の反対側で前記複数個のコア部材を磁気的に連絡する外側磁性体部材とが、前記加熱ベルト部材の外側に配置され、
前記複数個のコア部材を前記加熱ベルト部材の内側で磁気的に連絡する内側磁性体部材が、前記加熱ベルト部材の内側に配置されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項1】
誘導加熱される金属層を有し、回転可能な無端状の加熱ベルト部材と、
前記加熱ベルト部材の外側面に当接して前記加熱ベルト部材との間に記録材の加熱ニップを形成する加圧回転体と、
前記金属層を誘導加熱するための交流磁束を発生させるとともに、記録材サイズに応じて前記加熱ベルト部材の幅方向に複数段階の加熱幅を設定可能な交流磁束発生手段と、
前記加熱ニップにおける記録材の通過位置を前記幅方向に往復移動させて前記加熱ニップにおける記録材の通過範囲を拡張可能な往復移動機構と、
前記交流磁束発生手段を起動して記録材サイズに応じた前記加熱幅で記録材の加熱処理を開始させた後に、記録材の累積加熱枚数に応じて記録材の通過範囲を拡張するように前記往復移動機構を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記交流磁束発生手段の起動後に前記加熱ニップに形成される、記録材を加熱処理可能な温度領域の拡大に追随させるように、段階的に前記記録材の通過範囲を拡張することを特徴とする請求項1記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記交流磁束発生手段は、前記幅方向に配列させた複数個のコア部材と、前記複数個のコア部材に磁束を発生させるコイル部材と、前記コア部材を射出して前記加熱ベルト部材を貫通する磁束の磁気回路を構成する磁気回路機構とを有し、
前記磁気回路機構は、記録材サイズに応じた範囲の前記コア部材の磁束の磁気回路の磁気抵抗を、その外側の前記コア部材の磁束の磁気回路の磁気抵抗よりも小さく設定して前記複数段階の加熱幅を設定する機構であって、
前記制御手段は、前記磁気回路機構によって記録材の前記幅方向の長さよりも短い加熱幅を設定して記録材の加熱処理を開始させた後に、記録材の種類によって異なる第1の累積加熱枚数に達すると、前記コア部材の前記幅方向の長さよりも短い刻み幅で前記記録材の通過範囲を1段階拡張することを特徴とする請求項2記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記制御手段は、記録材の加熱処理を開始させた後に、第1の累積加熱枚数よりも大きな所定の第2の累積加熱枚数に達すると、前記記録材の通過範囲をさらに1段階拡張して前記磁気回路機構によって設定された前記加熱幅の外側まで至らせることを特徴とする請求項3記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記制御手段は、記録材の単位面積当たり重量が大きいほど前記第1の累積加熱枚数及び前記第2の累積加熱枚数を少なく設定することを特徴とする請求項4記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記制御手段は、記録材の単位時間当たり加熱処理枚数が多いほど前記第1の累積加熱枚数及び前記第2の累積加熱枚数を少なく設定することを特徴とする請求項5記載の像加熱装置。
【請求項7】
前記加圧回転体は、弾性層を有する加圧ローラであって、
前記加熱ベルト部材を貫通して非回転に配置されて前記加圧ローラの対向位置で前記加熱ベルト部材の内側面を支持する支持部材を有し、
前記複数個のコア部材と、前記コイル部材と、前記加熱ベルト部材の反対側で前記複数個のコア部材を磁気的に連絡する外側磁性体部材とが、前記加熱ベルト部材の外側に配置され、
前記複数個のコア部材を前記加熱ベルト部材の内側で磁気的に連絡する内側磁性体部材が、前記加熱ベルト部材の内側に配置されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−163586(P2012−163586A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21464(P2011−21464)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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