説明

充填バルブ

【課題】メッシュや多孔板、整流羽根等の流れを阻害するような各種整流部材を用いることなく、充填液を十分に整流して容器内に充填することができる充填バルブを提供する。
【解決手段】上下に延びるノズル内に、導入口から導入される充填液の流量を調整する流量調整弁部30と、流量調整弁部30によって流量が調整された充填液の流れを整流する整流部が設けられ、整流部にて整流された充填液がノズル下端に開口する吐出口から吐出される充填バルブにおいて、整流部は、ノズルの内壁が円柱側面状で中心軸線方向に延びる空間であり、ノズルの中心軸線と直交方向の流路断面積が前記流量調整弁部30の断面積よりも拡大した流路拡大部を有し、流路拡大部の最大の流路断面積を流量調整弁部30の断面積の2.5倍以上としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば飲料等の充填液を容器に充填する無菌充填装置に用いられる充填バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の充填バルブとしては、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。すなわち、上下に延びるノズル内に、導入口から導入される充填液の流量を調整する流量調整弁部と、流量調整弁部によって流量が調整された充填液の流れを整流する整流部と、が設けられ、整流部にて整流された充填液がノズル下端に開口する吐出口から吐出されるようになっている。
【0003】
整流部には、多孔板と多層のメッシュを組み合わせて配置され、充填液を多孔板の孔及びメッシュの網目を通すことにより、液流を整流化すると共に、流量調整弁部の閉弁時には、多孔板の孔及びメッシュの網目に液体を保持し、ノズル先端の吐出口からの液だれ防止を図っていた。
しかし、このような多孔板やメッシュを用いた充填バルブを、パルプ質等の固形成分を含む果汁飲料の充填に適用すると、パルプ質等の固形成分が多孔板の孔やメッシュの網目に滞留し、目詰まりしてしまう。
【0004】
そこで、このような固形成分を含む充填液の場合には、特許文献2乃至5に記載のように、整流部に複数の整流羽根を配置した充填バルブを使用することが考えられる。
この充填バルブは、液体の流れ方向に沿って延びる複数の整流羽根が、液体の流れ方向と直交する流路断面で見て放射状に配置された構成で、充填液の流れを整流羽根に沿った流れとするものである。
また、閉弁時の液だれを防止するために、流量制御弁部とは別に吐出口を開閉する副弁体部を設け、流量制御弁部が閉弁した時に、流量制御弁部に同期させて副弁体部を吐出口の口縁内周に密接させ、吐出口を閉塞するようになっていた。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の充填バルブは、ノズルの中心軸線を中心とする旋回方向成分がある液流については、強制的に整流羽根に沿った流れに整流されるものの、乱れた直線的な液流はそのまま整流羽根に沿って流れ下ることになる。そのため、吐出口から吐出される液柱が乱れ、容器に充填される充填液の泡立ちが大きくなり、容器口部から充填液が吹き零れるおそれがある。
【0006】
また、整流羽根は充填液の流れ方向に沿って配置されるので、多孔板やメッシュのような早期の目詰まりはないものの、整流羽根の間隔によっては、依然として、パルプ質等の固形成分が整流羽根の間に滞留するおそれがある。
【0007】
さらに、吐出口を閉じる副弁体部が、流路断面積が急激に小さくなった後に全閉となるため、副弁体部が吐出口の口縁内周に着座する際の衝撃で、吐出口から液体の飛び散りが発生するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−139497号公報
【特許文献2】特許第4175106号公報
【特許文献3】特許第3750187号公報
【特許文献4】特開2000−346223号公報
【特許文献5】特公平7−112879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、メッシュや多孔板、整流羽根等の流れを阻害するような各種整流部材を用いることなく、充填液を十分に整流して容器内に充填することができる充填バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、上下に延びるノズル内に、導入口から導入される充填液の流量を調整する流量調整弁部と、この流量調整弁部によって流量が調整された充填液の流れを整流する整流部と、が設けられ、前記整流部にて整流された充填液がノズル下端に開口する吐出口から吐出される充填バルブにおいて、
前記整流部は、ノズルの中心軸線方向に延びる空間であり、前記流量調整弁部の断面積よりも大きい断面積を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明においては、
1.前記整流部は、前記流量調整弁部の断面積よりも2.5倍以上の流路断面積を有すること、
2.ノズル内の吐出口近傍に、軸方向に吐出口を開閉する方向に移動可能の副弁体部が設けられ、副弁体部は流量調整弁部の弁体部と連結ロッドを介して一体的に連結され、前記流量調整弁部が閉じた際に、前記副弁体部は吐出口の内周口縁に当接せずに所定のクリアランスを介して近接した位置に停止すること、
3.2.の所定のクリアランスが0.5mm乃至3.5mmであること、
4.前記流量調整弁部にて流路が閉じた状態で吐出口は弁体に遮られることなく開いており、吐出口開口径はφ15mm以下に設定されていること、
5.流量調整弁部から流路拡大部の中途位置まで延びるロッドを有すること、
6.容器に充填される充填液はパルプ質等の固形成分を含む液体であること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、整流部の流路拡大部の流路断面積を流量調整弁部の最大の流路断面積の2.5倍以上とすることで、流量調整弁部で乱れた液流れを流路拡大部で流速を十分低下させることで整流することができ、吐出口から吐出される充填液の液柱を、可及的に乱れを小さくした状態として充填することができることが確認できた。
【0013】
また、従来のように、多孔板やメッシュあるいは整流羽根等の整流部材が不要となり、バルブ構成を単純化できる。
【0014】
また、吐出口を開閉するための副弁体部を有し、流量調整弁部が閉じた際に、副弁体部と吐出口の内周口縁との間にクリアランスが開く構成としておけば、閉弁時に弁座対応部に衝突することによる充填液の飛び散りが無く、また、充填液をクリアランスに保持することによって液だれも防止することができる。
【0015】
さらに、副弁体部が無くても、吐出口の大きさをφ15mm以下に設定しておけば、表面張力によって充填液の液だれを防止することができる。
【0016】
また、流量調整弁部の弁体部から流路拡大部の中途位置まで延びるロッドを有する構成
とすれば、流量調整弁部から噴出する充填液の液流は、ロッドに沿った液流に案内される。
【0017】
さらにまた、本発明は容器に充填される充填液はパルプ質等の固形成分を含む液体であっても、目詰まりするおそれが無く、目詰まりを除去するメンテナンス作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る充填バルブを示すもので、(A)は開弁状態の縦断面図、(B)は流量調整弁部の流路断面を示す図、(C)は整流部の流路拡大部の流路断面を示す図である。
【図2】図2(A)は図1の充填バルブの閉弁状態の縦断面図、(B)は吐出口付近の拡大断面図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態2に係る充填バルブを示すもので、(A)は開弁状態の縦断面図、(B)は閉弁状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係る充填バルブを示している。この充填バブル1は、容器の口部の上方から充填液を吐出し、容器に非接触の状態で容器内に充填液を充填するものである。
【0020】
この充填バルブ1は、上下に延びるノズル10内に、導入口3から導入される充填液の流量を調整する流量調整弁部30と、流量調整弁部30によって流量が調整された充填液の流れを整流する整流部40とが設けられ、整流部40にて整流された充填液がノズル下端に開口する吐出口5から吐出されるようになっている。
【0021】
整流部40は、ノズル10の中心軸線N方向及び中心軸線Nを中心とする回転方向に流れを阻害するものが無い連続して広がる中空円柱状の空間、若しくは第2実施形態にて後述する(中実の)円柱状空間であり、ノズル10の中心軸線Nと直交方向の断面積が流量調整弁部30の断面積よりも拡大した流路拡大部41を有し、流路拡大部41の流路断面積Saを流量調整弁部30の断面積Sbの2.5倍以上としたものである。
【0022】
以下、詳細に説明する。
ノズル10は、上下方向に直線状に延びる筒状体で、上端に導入口3が開口し、下端に吐出口5が開口している。
流量調整弁部30は、ノズル10の内周の中途部を絞った小径穴部11と、小径穴部11に上方から挿入される弁体部31と、弁体部31を駆動する駆動部20と、を備えている。
【0023】
ノズル10の内周は、小径穴部11の上方部分が上端まで開放される大径穴部12となっており、大径穴部12と小径穴部11の間は、大径穴部12の下端から下方に向かって徐々に小径となって小径穴部11の上端に連なる第1テーパ穴部13となっている。
弁体部31は、段付き円柱形状で、大径穴部12に挿入される弁体大径部32と、弁体大径部32から段差部34を介して下方に延びて小径穴部11に挿入される弁体小径部33と、を備えている。弁体大径部32は、大径穴部12より小径で、かつ小径穴部11より大径となっており、弁体大径部32外周と大径穴部12内周面との間が環状の流路となっている。また、弁体小径部33は、小径穴部11より小径で、弁体小径部33と小径穴部11との間が狭い環状の流路となっている。段差部34は、下方に向かって徐々に小径となるように傾斜するテーパ形状となっており、段差部34の弁体小径部33側の付け根
に位置するテーパ状の弁頭部分34aが第1テ―パ穴部13の小径穴部11との角に位置する弁座部分13aに密接して閉弁するようになっている。
【0024】
また、弁体部31の上端には、駆動部20を構成する駆動プランジャ部21が一体的に接続されている。駆動プランジャ部21は弁体部31よりも大径で、ノズル10の大径穴部12に摺動自在に挿入される円柱状部材で、上端部には上方に向かって徐々に小径となるように傾斜する傾斜部21aが設けられ、下端部には、下方に向かって徐々に小径となるように傾斜する下端傾斜部21bが設けられ、下端傾斜部21bを介して弁体部31の弁体大径部32に連なっている。
【0025】
駆動プランジャ部21の外周には、上下一対の摺動リング22が装着され、駆動プランジャ部21を大径穴部12内周に沿ってノズル10の中心軸線Nとの心出しがなされている。駆動プランジャ部21内部には内部マグネット23が設けられ、ノズル10の外側には、ノズル10を取り囲むように内部マグネット23を磁気吸引する外部マグネット24が設けられ、外部マグネット24を上下に移動させることにより、駆動プランジャ部21を上下に移動させる構成となっている。
【0026】
なお、内部マグネット23と外部マグネット24とは、どちらか一方がマグネットであれば、他方は鉄などの磁石にくっつく磁性体であってもよい。もっとも、駆動部の構成としては、マグネット方式に限定されず、種々の方式が適用可能である。
また、駆動プランジャ部21の内部には、上流側と下流側を連通する連通路25が設けられている。連通路25の上端は駆動プランジャ部21の上端に開口し、連通路25の下端は分岐して駆動プランジャ部21の下端傾斜部21bに開口し、弁体部31周囲の環状流路に連通している。
【0027】
整流部40は、ノズル10の内周が、小径穴部11の下端から下方に向かって徐々に拡径する方向に傾斜する第2テーパ穴部14と、第2テーパ穴部14の下端から下方に向かって直線的に円筒状に延びる拡径部15と、拡径部15の下端から下方に向かって徐々に縮径する方向に傾斜する先端傾斜部16と、を備えている。
吐出口5は、この先端傾斜部16の先端に開口するもので、容器に向かって内周縁部が凸形状となっており、吐出口5周辺部がもっとも低くなる鋭角形状となっている。そのため、液滴が吐出口5周辺に集まる。
【0028】
この実施例では、ノズル10内部の吐出口5近傍には、吐出口5を充填バルブの内方側(図では吐出口5より上側)から開閉する方向に移動可能の副弁体部50が設けられている。この副弁体部50は、弁体部31の弁体小径部32下端面から下方に向かって直線的に延びる連結ロッド35を介して弁体部31と一体的に連結されている。
連結ロッド35は、弁体小径部32よりも小径の断面円形の丸軸で、ノズル10の中心軸線Nに沿って延びている。
副弁体部50は、流量調整弁部30が閉じた際に、吐出口5の内周口縁の弁座対応部51に当接せずに所定のクリアランスgを介して近接した位置に停止する構成となっている。このクリアランスgが開いた状態で、充填液の表面張力で吐出口5と副弁体部50とのクリアランスgからの液体の流出が阻止される。このクリアランスgは、0.5mm〜5mm程度とすることが好適である。
【0029】
副弁体部50は、吐出口5の内径よりも大径、かつ、連結ロッド35の外径より小径の外径を備えた円筒状の本体部52と、本体部52の下端から逆円錐状に下方に突出する先端突出部53と、さらに、連結ロッド35と本体部52との段差部で充填液の乱れが生じないように、連結ロッド35の所定位置の外周から副弁体部50の本体部52上端外周にかけて漸次径が大径となるように傾斜する傾斜部54が設けられている。
【0030】
本実施例において、流路断面積が最大のSaとなる流路拡大部41は、ノズル10の拡径部15の軸方向上端位置から、連結ロッド35の副弁体部50に連なる傾斜部54の上端位置までの間の環状空間である。すなわち、拡径部15の内周を外径、連結ロッド35の外周を内径とする円環状の流路断面をノズル10の軸方向に直線的に延ばした円筒状の空間である。
また、流量調整弁部30の小径穴部11中の断面積Sbは、小径穴部11(直径;tb)流路部分で、流路拡大部41(直径;ta)の断面積を流量調整弁部30の小径穴部11中の断面積Sbより大きくし、より好ましくは流路断面積Saを断面積Sbの2.5倍以上としたものである。Saは、内径taの管内断面積から、連結ロッド35がある場合はその分の断面積を差し引いた流路断面積である。また、Sbは、内径tbの管内断面積である。
また、この整流部50の流路拡大部41の直管部分の長さLを、流路拡大部41の内径taと同等長さ以上としておくことが好適である。
【0031】
整流部40は、流量調整弁部30の流路から、流路拡大部41に向けて徐々に断面積が増大する流路断面漸増部42と、流路拡大部41の下端から副弁体部50に向かう傾斜部54に沿って徐々に断面が減少する流路断面漸減部43とを備えている。整流部40を通過して整流された充填液は、副弁体部50の周囲を通過して吐出口5から吐出される。
【0032】
また、ノズル10は、上流側に位置する厚肉のハウジング10Aと、ハウジング10Aの下端に接続される薄肉のシリンダ10Bと、シリンダ10Bの下端に接続される先端カバー部10Cとに分割構成されている。ハウジング10Aの下端とシリンダ10Bの上端の接続位置は、拡径部15の上端に近い中途位置で接続され、シリンダ10Bの下端と先端カバー部10Cの上端の接続位置は、拡径部15の下端近くで接続されている。
【0033】
本実施例の充填バルブにあっては、次のように動作する。
充填する際には、外部マグネット24を上昇させ、内部マグネット23を上方に向けて磁気吸引し、駆動プランジャ部21を上方に駆動することにより、これと一体の弁体部31及び副弁体部50を上方に移動させる。
これにより、流量調整弁部30において弁体小径部33の小径穴部11への挿入量が減少し、副弁体部50も吐出口5の口縁の弁座対応部51とのクリアランスが大きくなり、流量調整弁部30で調整された流量の充填液が吐出口5から吐出される。
【0034】
流量調整弁部30では、弁体小径部32が小径穴部11に挿入された量で、流量が調整される。軸方向の挿入量が大きくなれば、流量が小さくなり、軸方向の挿入量が小さくなれば、流量が大きくなる。
この流量調整弁部30の微小クリアランスから、整流部40に流入した液流は、乱流状態で流入したとしても、断面積漸増部42から流路拡大部41に至る間に流速が低下し、乱流成分が十分小さくなった状態で流路拡大部41を通過する。流路拡大部41では円筒状に整流されて流れ、流路断面漸減部43にて副弁体部50の周囲を通過して吐出口5から円筒状の液柱として吐出される。
【0035】
本発明によれば、流路拡大部41の断面積が流量調整弁部30の小径穴11の断面積Sbより大きく、より好ましくは流路拡大部41の最大流路断面積Saを、流量調整弁部30の小径穴11の断面積Sbの2.5倍以上とすることで、流量調整弁部30で乱れた液流れを整流部40で流速を十分低下させることでき、吐出口5での液中の乱れを防止することができることが確認できた。
開弁時には、副弁体部50の周囲の流路断面積が、少なくとも吐出口5の流路断面積より大きくなる位置へストロークさせることで、液中の乱れを防止することができる。
このように、本発明によれば、吹きこぼれ等が生じることなく、容器に充填することができる。充填液がパルプ質や粉体等の固形物を含む液体であっても、特に、整流板等を用いる必要がないので、目詰まり等の問題もない。
【0036】
閉弁時には、外部マグネット24を下降させ、内部マグネット23を下方に向けて磁気吸引して駆動プランジャ部21を下方に駆動させることにより、これと一体の弁体部31及び副弁体部50を下方に移動させる。これにより、弁体部31の段差部34の弁頭部分が弁座部分に着座し、流路が閉じられる。
このバルブ閉時に、副弁体部50は吐出口5の口縁の副弁座対応部51との間に僅かなクリアランス(g)で停止し、副弁体部50が弁座対応部51に衝突することはなく、液の飛び散りが防止される。
このときのクリアランス(g)は、3.5mm以下にしておけば、その表面張力によって液だれを確実に防止する効果がある。
【0037】
なお、駆動プランジャ部21から連なる弁体部31、連結ロッド35、副弁体部50の調芯は、駆動プランジャ部35とノズル10の大径穴部12内周との摺動嵌合にて調芯され、他に接触する部分が無いので、液流がスムーズに流れ、パルプ質の滞留を防止することができる。
【0038】
[試験結果]
表1は、上述のSaとSbとの比を変更した場合の充填試験の結果を示している。
充填液としては固形成分を含む果汁飲料(グレープフルーツジュース)であり、この果汁飲料を、500mlボトル(満中内容積525ml,ヘッドスペース25ml)に、約3.2秒かけて一定流量で充填したときの、泡立ちの傾向を調べた。
【0039】
【表1】

注記:泡立ち量は、泡の占める体積を
泡のボトル天面からの入れ目線位置から計測し、
体積によって以下の評価をした。
◎:10ml以下、○:15ml以下、
△:20ml以下、□:25ml以下、
×:25ml超(吹きこぼれ)

この表1の結果から、少なくとも流路拡大部の断面積をSbより大きくすれば吹きこぼれを防ぐことができ、SaがSbの2.5倍以上であれば、泡立ちを、15ml以下に抑えることができ、実用上申し分ない効果があった。さらに好ましくは、SaがSbの3.
8倍以上あると、泡立ちを10ml以下に抑えることができ、より好ましい結果となった。
【0040】
弁体のクリアランスと液はね、液だれの関係
次に、表2には、上述の副弁体部50と吐出口5の内周口縁とのクリアランスgと、液はね、液だれの関係の試験結果を示している。
試験方法は、次の通りである。
φ30の穴をあけた紙を準備する(事前に重量測定しておく)。
充填バルブ1の吐出口5から15mm離れたところに紙を配置する。
充填バルブ1にて、φ30穴を通して、水を吐出流速160ml/秒にて流下させる。
流量調整弁部30の弁体部31を閉じた後、紙を回収し、飛沫の有無を確認する。
飛沫のある紙は、重量を測定し、試験前後の重量増加にて飛沫量を算出する。
【0041】
<試験結果>
表2に示す結果から、副弁体部50のクリアランスgは、0.5mm以上であれば、液はねは小さく、3.5mm以下であれば、液だれが生じない。したがって、副弁体部50のクリアランスが、0.5mm以上でかつ3.5mm以下であれば、液はねが小さくしかも液だれが生じない、最適範囲と考えられる。
【0042】
【表2】

注記:液だれに関して、○:たれない、△:N=10にて1回液だれが発生。
注記:液はねに関して、○:飛沫なし、△:N=10にて1回発生、×:全数発生。
【0043】
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
以下の説明では、主として実施の形態1と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略するものとする。
この実施の形態2に係る充填バルブは、吐出口5を開閉するための副弁体部が無い構成で、流量調整弁部30の弁体部31から整流部40の流路拡大部41の中途位置まで延びる自由ロッド部36を有する構成である。
すなわち、流量調整弁部30にて流路が閉じた状態で吐出口5は開いており、吐出口5
は表面張力で液体の流出が阻止可能な大きさに設定されている。
この吐出口5の開口径の大きさは、水については、直径がφ15mm以下であれば、落下しないことが経験的に認められている。よって、本発明の目的とするパルプ質等の固形成分を含む果汁飲料のように粘稠性の高い液体についても吐出口開口径がφ15mm以下(吐出性の都合、好ましくはφ5mm以上)とする。
【0044】
このように、流量調整弁部30の弁体部31から延びる自由ロッド部36を有する構成となっていれば、流量調整弁部30での小径穴部11から噴出する液流は、自由ロッド部36に沿って案内される。この場合、自由ロッド部36のストレート部分(本実施形態ではハウジング10A,シリンダ10B,先端カバー部10Cの自由ロッド部36を除いたときの円柱状の流路部分であって、図3(A)又は図3(B)における第1,第2流路拡大部41A,41Bを合わせた部分の軸方向の長さ)に差し掛かる長さ(第1流路拡大部41Aの部分の軸方向の長さ)の約四分の一程度の長さである。
【0045】
整流部40は、自由ロッド部36のロッド挿入部分に当たる第1流路拡大部41Aと、ロッド先端から吐出口5までのロッドの無い部分の第2流路拡大部41Bの2段階に流路断面積が拡大される。
この実施例では、第1、第2流路拡大部41A、41Bの断面積は、共に、流量調整弁部30の小径穴部11中の断面積より大きく、好ましくは41A、41Bの流路断面積が共に流量調整弁部30の小径穴部11中の断面積の2.5倍以上に設定されている。
このように、本実施の形態2の充填バルブによっても、流量調整弁部30で乱れた液流れが、断面漸増部42を通じて流速が十分低下し、円筒状の第1、第2流路拡大部41A,41Bで整流することができ、吐出口5から吐出される充填液の液柱を、可及的に乱れを小さくした状態として充填することができる。
【0046】
また、従来のように、多孔板やメッシュあるいは整流羽根等の整流部材が不要となり、バルブ構成を単純化できる。
【0047】
さらに、副弁体部が無くても、吐出口5の大きさをφ15mm以下の適切な大きさに設定しておけば、表面張力によって充填液の液だれを防止することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 充填バルブ
3 導入口
5 吐出口
10 ノズル
11 小径穴部、12 大径穴部、13 第1テーパ穴部、
14 第2テーパ穴部、15 拡径部、16 先端傾斜部
20 駆動部
21 駆動プランジャ部、21a 傾斜部、21b 下端傾斜部
22 摺動リング、23 内部マグネット、24 外部マグネット、25 連通路
30 流量調整弁部
31 弁体部、32 弁体大径部、33 弁体小径部、
34 段差部、35 連結ロッド
36 自由ロッド部
40 整流部
41 流路拡大部、42 流路断面漸増部、43 流路断面漸減部
50 副弁体部
51 弁座対応部、52 本体部、53 先端突出部、54 傾斜部
N 中心軸線
Sa 流路断面積
Sb 断面積
g クリアランス
10A ハウジング
10B シリンダ
10C 先端カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びるノズル内に、導入口から導入される充填液の流量を調整する流量調整弁部と、該流量調整弁部によって流量が調整された充填液の流れを整流する整流部が設けられ、前記整流部にて整流された充填液がノズル下端に開口する吐出口から吐出される充填バルブにおいて、
前記整流部は、前記ノズルの中心軸線方向に延びる空間であり、前記流量調整弁部の断面積よりも大きい断面積を有することを特徴とすることを特徴とする充填バルブ。
【請求項2】
前記整流部は、前記流量調整弁部の断面積よりも2.5倍以上の流路断面積を有することを特徴とする、請求項1に記載の充填バルブ。
【請求項3】
ノズル内の吐出口近傍に、軸方向に吐出口を開閉する方向に移動可能の副弁体部が設けられ、副弁体部は流量調整弁部の弁体部と連結ロッドを介して一体的に連結され、前記流量調整弁部が閉じた際に、前記副弁体部は吐出口の内周口縁に当接せずに所定のクリアランスを介して近接した位置に停止する請求項1または2に記載の充填バルブ。
【請求項4】
前記所定のクリアランスが0.5mm乃至3.5mmであることを特徴とする、請求項3に記載の充填バルブ。
【請求項5】
前記流量調整弁部にて流路が閉じた状態で吐出口は弁体に遮られることなく開いており、吐出口開口径はφ15mm以下に設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の充填バルブ。
【請求項6】
流量調整機構部の流量調整用弁部から流路拡大部の中途位置まで延びるロッドを有する請求項5に記載の充填バルブ。
【請求項7】
充填液はパルプ質等の固形成分を含む液体である請求項1乃至6のいずれかの項に記載の充填バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−116425(P2011−116425A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276995(P2009−276995)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】