充電装置
【課題】比較的簡単な回路構成を用いながらも、広範囲な充電条件の変化に対して共振動作を利用することによって高効率かつ低雑音を可能にする。
【解決手段】ハーフブリッジ型のスイッチング電源であって、複合共振のための共振回路を備える。充電制御回路CNは、充電が開始されてから電池電圧が規定の目標電圧に達するまでは充電電流が定電流になるように、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフを制御する。また、充電制御回路CNは、電池電圧が切替電圧未満の領域では、電池電圧が低いほどスイッチング素子のオン期間の時比率を小さくするように時比率を変化させ、電池電圧が切替電圧以上の領域では、スイッチング素子のオン期間の時比率を一定に保つとともに、電池電圧が高いほどスイッチング素子の駆動周波数を引き下げる。切替電圧は、駆動周波数が電流共振と電圧共振との境界で規定される。
【解決手段】ハーフブリッジ型のスイッチング電源であって、複合共振のための共振回路を備える。充電制御回路CNは、充電が開始されてから電池電圧が規定の目標電圧に達するまでは充電電流が定電流になるように、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフを制御する。また、充電制御回路CNは、電池電圧が切替電圧未満の領域では、電池電圧が低いほどスイッチング素子のオン期間の時比率を小さくするように時比率を変化させ、電池電圧が切替電圧以上の領域では、スイッチング素子のオン期間の時比率を一定に保つとともに、電池電圧が高いほどスイッチング素子の駆動周波数を引き下げる。切替電圧は、駆動周波数が電流共振と電圧共振との境界で規定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を充電するための充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、二次電池を充電するための充電装置は、出力電圧および出力電流を広範囲に変化させることが要求される。すなわち、二次電池の端子電圧は充電状態に応じて大きく変化するから、充電装置は、二次電池の端子電圧に合わせて低電圧から定格電圧まで広範囲に出力電圧を変化させることが要求される。また、二次電池の急速充電時には充電電流が大電流になり、二次電池の補充電時には充電電流が微弱電流になるから、充電装置は、二次電池の充電電流に合わせて出力電流を広範囲に亘って変化させることが要求される。
【0003】
この種の充電装置は、直列制御型の定電圧電源を用いた構成と、スイッチング電源を用いた構成とが主として採用されている。とくに、スイッチング電源を用いた充電装置は、直列制御型の定電圧電源を用いた充電装置に比べて、電力変換の効率が高く、小型化が可能であることから広く採用されている。
【0004】
ところで、共振型のスイッチング電源は、回路効率が良好で雑音も抑制されるから、共振型のスイッチング電源を充電装置に用いると、小型かつ低コストの充電装置を提供できると考えられる。
【0005】
共振型のスイッチング電源を用いた充電装置としては、たとえば、図13に示す構成が提案されている。図示する充電装置は、2個のスイッチング素子Q11,Q12と共振用のインダクタL11,L12,L13,L14と共振用のコンデンサC11,C12とを備えている。インダクタL11,L12はインダクタL15,L16と磁気結合されている。インダクタL15,L16から取り出される電力は、ダイオードD11,D12、インダクタL17、コンデンサC13により整流平滑され、二次電池B1の充電に用いられる(特許文献1参照)。特許文献1に記載された充電装置は、プシュプル型のスイッチング電源を用いて構成され、スイッチング素子Q11,Q12は制御部CN11によりオンオフが制御される。
【0006】
制御部CN11は、2個のスイッチング素子Q11,Q12をともにオフにするデッドオフタイムと、スイッチング素子Q11,Q12をオンオフさせる駆動周波数とを制御することにより、二次電池B1への出力を調節する。すなわち、制御部CN11は、充電電流の大小に応じてデッドオフタイムを調節し、充電電流が大きいときに共振モードで動作させ、トリクル充電のように充電電流が小さいときに非共振モードで動作させる。また、制御部CN11は、充電装置の出力を変化させる際には、デッドオフタイムを一定に保って駆動周波数を変化させ、出力を低下させるときには駆動周波数を高くしている。
【0007】
制御部CN11は、充電電流を低減させる場合、スイッチング素子Q11,Q12がともにオフになるデッドオフタイムを長くし、スイッチング素子Q11,Q12に印加される共振電圧が最小になる領域でスイッチングを行う。この動作では疑似的に共振動作が行われる。また、二次電池B1の満充電付近において定電圧充電を行っており、定電圧充電の際には、デッドオフタイムが異なる複数の非共振モードが設定され、充電電流に応じて何れかの非共振モードを選択することにより、スイッチング損失の増加が抑制される。
【0008】
共振型のスイッチング電源を用いた充電装置としては、たとえば、図14に示す構成も提案されている。この充電装置は、2個のスイッチング素子Q21,Q22の直列回路を備えたハーフブリッジ型のスイッチング電源を採用している。スイッチング素子Q22には、コンデンサC21とインダクタL21とトランスT2の一次巻線N12との直列回路が並列に接続される。さらに、トランスT2の一次巻線N12にコンデンサC22が並列に接続されている。トランスT2の二次巻線N22から取り出される電力は、ダイオードD21,D22、コンデンサC23により整流平滑され、二次電池B2の充電に用いられる(特許文献2参照)。コンデンサC21,C22、インダクタL21、トランスT2は共振回路を構成している。スイッチング素子Q21,Q22は、制御回路CN21により交互にオンオフされる。
【0009】
制御回路CN21は、充電電流が大きい領域ではスイッチング素子Q21,Q22の駆動周波数を低くし、充電電流が小さい領域ではスイッチング素子Q21,Q22の駆動周波数を高くする。また、コンデンサC21とインダクタL21は充電電流が大きい領域の低い駆動周波数に対応するように設定されており、コンデンサC22は充電電流が小さい領域の高い駆動周波数に対応するように設定されている。この構成は、駆動周波数を変化させることにより充電電流を調節する。また、複数の共振点を有していることにより、広範囲の充電電流に対して共振状態を維持することが可能になっている。
【0010】
共振型のスイッチング電源には、上述した構成のほか、図15に示すように、電流共振と部分共振による電圧共振とを複合した複合共振型のスイッチング電源もある。図示例は2個のスイッチング素子Q31,Q32の直列回路を備えたハーフブリッジ型であって、図14に示した構成とは、共振回路の構成が異なっている。すなわち、ローサイドのスイッチング素子Q32にコンデンサC31が並列に接続され、コンデンサC31にはインダクタL31とトランスT3の一次巻線N31とコンデンサC32との直列回路が並列に接続されている。この構成では、コンデンサC31,C32とインダクタL31とトランスT3とが共振回路を構成している。
【0011】
また、トランスT3の二次巻線N32から取り出される電力は、ダイオードD31,D32、コンデンサC33により整流平滑される。特許文献1、2とは異なり、図15に示す構成例では、二次電池ではなく負荷LDに直流電力を供給する構成を示している。また、図では、スイッチング素子Q31,Q32のオンオフを制御する制御回路が省略されている。
【0012】
図15に示す構成の動作例を図16に示す。図16(a)(b)はスイッチング素子Q31,Q32のゲート−ソース間の電圧Vgs、図16(c)(d)はスイッチング素子Q31,Q32のドレイン−ソース間の電圧Vds(実線)およびドレイン電流Id(破線)を示す。さらに、図16(e)はコンデンサC32の両端電圧であり、図16(f)はダイオードD31,D32に流れる電流を示している。この動作では、2個のスイッチング素子Q31,Q32がともにオフになるデッドオフタイムが設けられている。
【0013】
スイッチング素子Q31,Q32の駆動周波数は、コンデンサC32とインダクタL31とトランスT3とにより構成される直列共振回路の共振周波数よりも低く設定される。この構成では、電流共振と電圧共振とを複合した複合共振の動作になり、高効率かつ低雑音で動作させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−230104号公報
【特許文献2】特開2010−263683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に示された充電装置は、充電電流が大きい領域では充電電流を定電流とし、充電電流が小さい領域では充電装置の出力電圧を定電圧にする定電圧充電を行う。特許文献1に記載された構成では、充電のすべての領域で、高効率かつ低雑音になるように、充電の状況に応じて、共振動作と擬似的な共振動作と複数の共振モードとから動作を選択することが必要であって、回路構成が複雑になるという問題がある。また、電圧型のコンバータであるプシュプル型のスイッチング電源を用いているから、容量の大きい二次電池B1の急速充電を行う場合のように大きい充電電流が必要である場合には、トランスT1が大型化する可能性がある。
【0016】
特許文献2に示された充電装置は、ハーフブリッジ型であるからプシュプル型の構成を採用する場合よりもトランスT2を小型化可能である。しかしながら、容量の大きい二次電池B2の急速充電を行う場合、広範囲の充電条件に対して駆動周波数を制御するだけで共振動作を維持することは困難である。また、トランスT2の一次巻線N21と二次巻線N22との巻数比は、電池電圧がもっとも高い状態を想定して設計されるので、電池電圧が低い場合には、過大な充電電流が流れるおそれがある。
【0017】
さらに、特許文献2に記載された構成のように、直列共振を用いたハーフブリッジ型のスイッチング電源は、スイッチング素子Q21,Q22のストレスを回避するために、共振回路の共振周波数よりも高い駆動周波数で動作させる必要がある。そのため、二次電池B2の残容量が少なく電池電圧が低い領域において所定の充電電流を流そうとすると、動作周波数が非常に高くなり、結果的に、スイッチング損失の増加などに伴って効率が低下し雑音が増大するおそれがある。
【0018】
図15に示した複合共振を利用するハーフブリッジ型のスイッチング電源は、コンデンサC32の容量をCiとし、インダクタL31のインダクタンスをLrとすると、入力電圧Vinと出力電圧Voutとが数1の関係になることが知られている。
【0019】
【数1】
ただし、nはトランスの巻数比、LpはトランスT3の励磁インダクタンス、τは図16に示した電力非伝達期間である。
【0020】
数1からわかるように、出力電圧Voutを変化させるには、電力非伝達期間τを変化させればよい。つまり、スイッチング素子Q31,Q32の駆動周波数を変化させることにより、出力電圧Voutが変化する。しかしながら、充電装置は、上述のように、出力電圧および出力電流を広範囲に変化させることが要求されるから、出力電圧および出力電流のすべての領域において、最適な共振条件を維持することは容易ではない。
【0021】
本発明は、二次電池の急速充電を可能にする充電装置において、比較的簡単な回路構成を用いながらも、広範囲な充電条件の変化に対して共振動作を利用することによって高効率かつ低雑音を可能にし、しかも、トランスの小型化が可能である充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る充電装置は、上記目的を達成するために、入力電源である直流電源の両端間に接続された2個のスイッチング素子の直列回路と、スイッチング素子のオンオフを制御する充電制御回路と、スイッチング素子のうちの一方に並列に接続されインダクタとトランスの一次巻線とコンデンサとの直列回路を備えた複合共振動作用の共振回路と、トランスの二次巻線の出力を整流平滑し二次電池に充電電流を供給する整流平滑回路と、二次電池の端子電圧である電池電圧および二次電池に流す充電電流を検出する状態検出回路とを備え、充電制御回路は、インダクタとトランスの一次巻線とコンデンサとで決まる共振周波数よりも高い周波数範囲で電力非伝達期間を形成しながら2個のスイッチング素子のオンオフを制御するとともに、充電が開始されてから状態検出回路が検出した電池電圧が規定の目標電圧に達するまでは充電電流が定電流になり、電池電圧が目標電圧に達していると定電圧で充電するように、スイッチング素子のオンオフを制御し、さらに、充電電流を定電流とする期間において、電池電圧に応じた切替電圧を設け、電池電圧が当該切替電圧未満である第1の制御領域において、電池電圧が低いほど2個のスイッチング素子の一方のオン期間を一定として他方のオン期間を短くして時比率を変化させ、電池電圧が当該切替電圧以上である第2の制御領域において、2個のスイッチング素子のオン期間が等しくなるように時比率を一定としながら、電池電圧が高いほどスイッチング素子の駆動周波数を引き下げることを特徴とする。
【0023】
この充電装置において、充電制御回路は、第1の制御領域において、状態検出回路が検出した電池電圧にかかわらずスイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほどスイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くして相対的に時比率を制御することが好ましい。
【0024】
この充電装置において、充電制御回路は、第1の制御領域において、状態検出回路が検出した電池電圧が規定の閾値電圧以上である領域においては、スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほどスイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くし、電池電圧が閾値電圧未満である領域においては、スイッチング素子の前記他方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほどスイッチング素子の前記一方のオン期間を長くあるいは短くすることが好ましい。
【0025】
この充電装置において、満充電時の電池電圧が異なる複数種類の二次電池に適合する充電装置であって、充電制御回路は、第2の制御領域において、二次電池の仕様ごとに定めた充電電流が流れるように、スイッチング素子の駆動周波数を変化させることが好ましい。
【0026】
この充電装置において、充電制御回路は、電池電圧が目標電圧に達した後、2個のスイッチング素子のオン期間が等しくなる状態で時間の経過とともに駆動周波数を高くして充電電流を低減させ、少なくとも電力非伝達期間が消滅する時点から、スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、充電電流が少ないほどスイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くすることが好ましい。
【0027】
この充電装置において、充電制御回路は、電池電圧が目標電圧に達した後、2個のスイッチング素子のオン期間が等しくなる状態で時間の経過とともに駆動周波数を高くして充電電流を低減させ、少なくとも電力非伝達期間が消滅する時点から、スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、充電電流が少ないほどスイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くするとともに、充電電流が規定の閾値電流未満である領域においては、スイッチング素子の前記他方のオン期間を一定に保ち、スイッチング素子の前記一方のオン期間を長くあるいは短くすることが好ましい。
【0028】
この充電装置において、充電制御回路は、電池電圧が目標電圧に達した後、スイッチング素子のオンオフ動作を間欠的に行って、充電電流を流す期間と停止させる期間とを設け、時間の経過とともに充電電流を停止させる期間を長くすることにより充電電流を低減させることが好ましい。
【0029】
この充電装置において、トランスの二次巻線の両端からの出力を整流平滑する経路に挿入されたスイッチと、電池電圧が規定の電圧を超えるまではスイッチをオフにしてトランスの二次巻線に設けた中間タップからの出力を整流平滑させ、電池電圧が規定の電圧を超えるとスイッチをオンにしてトランスの二次巻線の両端からの出力を整流平滑させるスイッチ制御部とを備えることが好ましい。
【0030】
この充電装置において、トランスは漏洩トランスであって、インダクタは漏洩トランスの漏洩インダクタンスを用いることが好ましい。
【0031】
この充電装置において、二次電池はリチウムイオン電池であることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の構成によれば、二次電池の急速充電を可能にする充電装置において、比較的簡単な回路構成を用いながらも、広範囲な充電条件の変化に対して共振動作を利用することによって高効率かつ低雑音を可能にし、しかも、トランスの小型化が可能になるという効果がある。とくに、複合共振を利用するハーフブリッジ型のスイッチング電源を用いて、充電電力の大きい領域では共振動作させ、かつ充電電力の小さい領域でも部分的に共振動作させることを可能として、高効率かつ低雑音の充電装置を提供することを可能とする。また、ハーフブリッジ型であるからトランスが小型であり、低コスト化にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態の一回路例を示す回路図である。
【図2】実施形態の他回路例を示す回路図である。
【図3】実施形態1を示す動作説明図である。
【図4】同上の制御を示す動作説明図である。
【図5】同上における要部の電圧波形と電流波形を示す動作説明図である。
【図6】実施形態2の制御を示す動作説明図である。
【図7】同上における要部の電圧波形と電流波形を示す動作説明図である。
【図8】実施形態3を示す動作説明図である。
【図9】実施形態4における要部の電圧波形と電流波形を示す動作説明図である。
【図10】同上の他の動作例を示す動作説明図である。
【図11】(a)(b)は実施形態5を示す要部の回路図である。
【図12】同上における要部の電圧波形と電流波形を示す動作説明図である。
【図13】従来構成を示す回路図である。
【図14】他の従来構成を示す回路図である。
【図15】ハーフブリッジ型のスイッチング電源の例を示す回路図である。
【図16】図15に示した回路の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(実施形態1)
以下に実施形態として説明する充電装置は、図1または図2に示すように、ハーフブリッジ型のコンバータを主回路として備える。
【0035】
図1に示す充電装置は、ダイオードブリッジDBおよび平滑コンデンサC2を備え、商用電源のような交流電源ACをダイオードブリッジDBで全波整流し、平滑コンデンサC2で平滑することにより入力電源を得ている。
【0036】
平滑コンデンサC2には、2個のスイッチング素子Q1,Q2の直列回路が並列に接続される。スイッチング素子Q1,Q2は、たとえば、パワーMOSFETが用いられる。一方のスイッチング素子Q2の両端(ドレイン−ソース)には、インダクタLrとトランスTの一次巻線N1とコンデンサCrとの直列回路が並列に接続される。インダクタLrおよび一次巻線N1とコンデンサCrとは共振回路を構成する。さらに、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間容量Cvも共振回路の一部として利用される。なお、ドレイン−ソース間容量Cvに加えて、ドレイン−ソースに共振用のコンデンサ(図示せず)を並列に接続して共振回路を構成してもよい。
【0037】
トランスTの二次巻線N2はセンタタップを備え、二次巻線N2の出力は、整流用の2個のダイオードD1,D2と平滑コンデンサC4とインダクタL1とを用いた整流平滑回路により整流平滑され、二次電池Bに供給される。二次電池Bは、リチウムイオン電池を想定しているが、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などの他の二次電池であってもよい。ここに、トランスTの一次巻線N1と二次巻線N2との巻数比は、二次電池Bの定格電圧付近で十分な大きさの充電電流が得られるように設定される。
【0038】
充電装置に二次電池Bが接続された状態では、平滑コンデンサC4の両端に、インダクタL1と二次電池Bと電流検出用の抵抗R1との直列回路が構成され、二次電池Bに流れる充電電流が抵抗R1の両端電圧として検出される。また、二次電池Bと並列に、2個の抵抗R2,R3の直列回路からなる電圧検出用の分圧回路が並列に接続され、二次電池Bの端子電圧(以下、「電池電圧」という)に比例する電圧が抵抗R3の両端電圧として検出される。すなわち、抵抗R1,R2,R3により状態検出回路が構成される。
【0039】
図示する充電装置は、平滑コンデンサC2と並列に接続されたコンデンサC5を備え、さらに、スイッチング素子Q2とコンデンサCrとの接続点と、トランスTのセンタタップとの間に接続されたコンデンサC6を備える。また、ダイオードブリッジDBの交流入力端には、ヒューズF、雑音防止用コンデンサC1、ラインフィルタFTなどを介して交流電源ACが接続される。
【0040】
抵抗R1の両端電圧として検出される充電電流の情報、および抵抗R3の両端電圧として検出される電池電圧の情報は、充電制御回路CNに入力される。充電制御回路CNは、充電電流および電池電圧に基づいてスイッチング素子Q1,Q2をオンオフさせるタイミングを決定し、スイッチング素子Q1,Q2をオンオフさせるタイミング信号を出力する。タイミング信号は、絶縁用のフォトカプラPC1,PC2を介して駆動回路DRに入力され、駆動回路DRにおいてスイッチング素子Q1,Q2に与える駆動信号が生成される。駆動信号は、タイミング信号による指示に従ってスイッチング素子Q1,Q2のオンオフを制御する。
【0041】
図2に示す充電装置は、図1の主回路に対してトランスTを漏洩トランスT1に置き換えた構成を備え、共振に漏洩インダクタンスを用いることによりインダクタL1を省略している。他の構成は図1に示した充電装置と同様である。
【0042】
以下では、図1、図2に示した充電装置の動作を説明する。本実施形態は、図3に示すように、定電圧・定電流充電に相当する充電方法を採用している。すなわち、充電制御回路CNは、二次電池Bが放電によって低い電圧となっているときには充電電流を定電流とし、電池電圧が規定した目標電圧Vtに達すると、微弱電流での補充電を行うように、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフを制御する。目標電圧Vtは、たとえば、二次電池Bの定格電圧に設定される。図3に示す動作例では、放電されて端子電圧が相当程度低下した二次電池Bには定電流の充電電流を与え、目標電圧Vtに達した後は、充電電流を徐々に低減させることを示している。
【0043】
ところで、図1、図2に示す充電装置は、共振回路を用いてソフトスイッチングを行う共振型のスイッチング電源を用いている。より具体的には、ハーフブリッジ型のスイッチング電源に、複数の共振要素を組み合わせた複合共振型の構成を有している。この構成のスイッチング電源は、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフのタイミングを適切に調節すると、高効率で動作させることが可能である。しかしながら、図3のように、充電電流が定電流である領域では電池電圧が大きく変化しているから、電池電圧の全範囲において、ソフトスイッチングが行われるようにスイッチング素子Q1,Q2のオンオフを制御することは困難である。
【0044】
そこで、本実施形態は、充電電流が定電流である領域を、図4のように、複数(図示例では2)の制御領域A1,A2に分割し、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフの周波数とオンデューティとを制御領域A1,A2に応じて変化させている。制御領域A1,A2は、電池電圧と規定の切替電圧Vsとの大小により分割されている。切替電圧Vsは、たとえば、数1に示した関係において電力非伝達期間τがほぼ0になるように規定され、Vin/2nよりやや大きい程度に設定される。以下では、電池電圧が、切替電圧Vs未満である制御領域A1を第1の制御領域と呼び、切替電圧Vs以上になる制御領域A2を第2の制御領域と呼ぶ。
【0045】
図4の横軸は電池電圧であって、充電電流が定電流であるから、充電電力は電池電圧に比例して増加する。また、図4において、特性aはスイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数、特性bはスイッチング素子Q1,Q2のオン期間の時比率、特性cは充電装置の効率を示している。スイッチング素子Q1,Q2のオン期間の時比率は、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間の合計に対するハイサイドのスイッチング素子Q1のオン期間の割合であって、百分率で表される。したがって、両スイッチング素子Q1,Q2のオン期間が等しく、1:1になる場合は、時比率は50%になる。
【0046】
充電制御回路CNは、第1の制御領域A1では、オン期間の時比率を50%未満とし、かつ電池電圧が高いほど時比率を大きくするが、第2の制御領域A2では、電池電圧にかかわらずオン期間の時比率を50%として一定に保つ。また、充電制御回路CNは、第2の制御領域A2において、電池電圧が高いほど駆動周波数を低く設定する。図4では、第1の制御領域A1においても、電池電圧が高いほど駆動周波数が低くなっているが、これは時比率を増加させて50%に近づけた結果として駆動周波数が低下しているのであり、第1の制御領域A1では駆動周波数の調節は行わない。
【0047】
上述した動作において、第2の制御領域A2で電池電圧に応じて駆動周波数のみが変化することは、数1において電力非伝達期間τが変化することに相当する。すなわち、駆動周波数が低下すると電力非伝達期間τが増加するから、数1により、出力電圧が上昇することがわかる。
【0048】
一方、第2の制御領域A2において、電池電圧が切替電圧Vsの付近では、オン期間の時比率が50%に保たれたままでは、電力非伝達期間τの調節幅が少なくなり、駆動周波数のみを調節しても出力電圧の調節が困難である。すなわち、電池電圧が切替電圧Vsの付近になると、複合共振を維持することが難しくなる。
【0049】
そこで、充電制御回路CNは、第1の制御領域A1では、ハイサイドのスイッチング素子Q1のオン期間を変化させてオン期間の時比率を変化させることにより、充電電流を定電流に維持する。すなわち、充電制御回路CNは、第1の制御領域A1において、電池電圧が低いほどスイッチング素子Q1のオン期間を短くしている。この動作により、第1の制御領域A1においては、電池電圧が低いほど駆動周波数が上昇することになる。なお、第1の制御領域A1では、ローサイドのスイッチング素子Q2のオン期間を一定に保ちながら、ハイサイドのスイッチング素子Q1のオン期間を変化させる場合について説明したが、スイッチング素子Q1のオン期間を一定に保ちながら、スイッチング素子Q2のオン期間を変化させても同等の結果が得られる。
【0050】
図5は、第1の制御領域A1および第2の制御領域A2におけるスイッチング素子Q1,Q2のドレイン−ソース間の電圧Vds(実線)とドレイン電流Id(破線)とを示している。したがって、各スイッチング素子Q1,Q2において、電圧Vdsが0ではない期間がオフ期間に相当する。なお、図5において、スイッチング素子Q1,Q2をともにオフにする期間としてのデッドオフタイムは省略している。デッドオフタイムは、第1の制御領域A1と第2の制御領域A2とにおいてとくに変化させる必要はない。図5における(1)〜(5)に示す動作は、図4における(1)〜(5)に示す電池電圧の領域に対応している。
【0051】
電池電圧が切替電圧Vs未満である第1の制御領域A1では、図5(1)(2)のように、スイッチング素子Q1のオン期間がスイッチング素子Q2のオン期間に比べて短くなり、オン期間の時比率が小さくなる。したがって、第1の制御領域A1では、ハイサイドのスイッチング素子Q1のドレイン電流Idは三角波状になり、ピークも比較的大きくなる。ただし、充電制御回路CNは、ローサイドのスイッチング素子Q2について、電力非伝達期間τが生じる程度にオン期間を比較的長く設定し、ドレイン電流Idに共振電流を流している。
【0052】
図5(1)(2)から明らかなように、第1の制御領域A1では、ローサイドのスイッチング素子Q2のオン期間がほぼ一定に保たれ、電池電圧が切替電圧Vsに近付くほどスイッチング素子Q1のオン期間が長くなっている。この動作により、充電装置から二次電池Bへの充電電流が定電流に維持される。また、電池電圧が高くなるほど、スイッチング素子Q1のドレイン電流Idの傾斜が緩やかになりピークが低減される。
【0053】
上述したように、第1の制御領域A1では、一方のスイッチング素子Q1のドレイン電流Idに共振電流を流すことができないから効率が低下するが、第1の制御領域A1は充電電力が比較的小さいから損失も少なく効率の低下の影響は比較的小さい。
【0054】
電池電圧が切替電圧Vs以上である第2の制御領域A2では、図5(3)(4)(5)のように、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間が等しく時比率が一定に保たれ、駆動周波数が変化する。スイッチング素子Q1,Q2のオン期間は、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン電流Idに共振電流が流れるように設定され、電池電圧が高くなるほど駆動周波数が低く設定される。すなわち、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間は、電池電圧が高いほど長くなる。
【0055】
第2の制御領域A2においては、電池電圧が上昇するほど、駆動周波数が低下し、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間が長くなる。つまり、電池電圧が上昇するほど、数1における電力非伝達期間τを延長することになり、出力電圧が上昇する。なお、電力非伝達期間τは、図5(1)〜(5)に示すドレイン電流Idにおいて、共振電流が流れた後の肩部分の期間に相当する。また、第2の制御領域A2では、充電装置を複合共振モードで動作させることになり、比較的高い効率が維持されることになる。
【0056】
上述したように、本実施形態の構成では、二次電池Bを定電流で充電する際に、電池電圧が切替電圧Vs未満である第1の制御領域A1において、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との一方のオン期間が制御される。また、電池電圧が切替電圧Vs以上である第2の制御領域A2において、時比率を50%に維持したままで駆動周波数が制御される。このような動作により、充電電流を所望の電流値に維持して二次電池Bを定電流で充電するとともに、電池電圧にかかわらず、少なくとも一部の期間には複合共振による共振電流を流し続けることを可能にし、比較的高い効率を維持することを可能にしている。
【0057】
なお、図4に示すように、第1の制御領域A1において、電池電圧が低いほど効率が低下するのは、以下の原因によると考えられる。すなわち、スイッチング素子Q1のドレイン電流Idのピーク値が増加すること、駆動周波数が高くなることでスイッチング素子Q1,Q2、トランスT、ダイオードD1,D2などでの損失が増加することが原因として考えられる。ただし、効率が低下するのは、充電電力が比較的小さい第1の制御領域A1であって、充電電力が大きい第2の制御領域A2では高い効率を維持することができる。そのため、二次電池Bを充電する過程のうちで電力損失が大きい期間の割合は少なく、結果的に充電過程における電力損失は抑制されることになる。
【0058】
なお、上述した実施形態では、第1の制御領域A1において、スイッチング素子Q1のオン期間を変化させているが、スイッチング素子Q2のオン期間を変化させるようにしても同様の動作になる。
【0059】
(実施形態2)
実施形態1は、電池電圧に基づいて、第1の制御領域A1と第2の制御領域A2との2領域を設定しているが、本実施形態は、図6に示すように、実施形態1における第1の制御領域A1がさらに2個の制御領域A11,A12に分割されている点が実施形態1と相違する。第1の制御領域A1において、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間の時比率を変化させる点は実施形態1と同様である。ただし、実施形態1では、2個のスイッチング素子Q1,Q2のうちの一方についてのみオン期間を変化させているが、本実施形態では、各制御領域A11,A12において、異なるスイッチング素子Q1,Q2のオン期間を変化させる。
【0060】
制御領域A11,A12は、電池電圧に基づいて分割される。制御領域A11は電池電圧が規定の閾値電圧Vu(<Vs)未満の領域であり、制御領域A12は電池電圧が閾値電圧Vu以上の領域である。閾値電圧Vuは、充電装置の効率に基づいて適宜に定められる。
【0061】
電池電圧が閾値電圧Vu以上である制御領域A12では、充電制御回路CNは、実施形態1の第1の制御領域A1と同様に、電池電圧に応じてスイッチング素子Q1,Q2のうちの一方のオン期間を変化させてオン期間の時比率を変化させる。たとえば、電池電圧が低いほどスイッチング素子Q1のオン期間が短くなることにより時比率が低減され、結果的に、電池電圧が低いほど駆動周波数が高くなる。一方、電池電圧が閾値電圧Vu未満である制御領域A11では、充電制御回路CNは、電池電圧に応じてスイッチング素子Q1,Q2のうちの他方のオン期間を変化させてオン期間の時比率を変化させる。すなわち、制御領域A12でスイッチング素子Q1のオン期間が変化するとすれば、制御領域A11ではスイッチング素子Q2のオン期間が変化する。
【0062】
ここで、制御領域A12では電池電圧が低いほどスイッチング素子Q1のオン期間が短くなることにより時比率が小さくなるが、制御領域A11では電池電圧が低いほどスイッチング素子Q2のオン期間が長くなることにより相対的にスイッチング素子Q1の時比率が小さくなる。
【0063】
本実施形態の動作例を図7に示す。図7には図5と同様に、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン−ソース間の電圧Vds(実線)と、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン電流Idとを示している。また、図7の(1)(2)(3)は、図6の(1)(2)(3)に対応している。
【0064】
制御領域A12では、図7(2)(3)に示すように、スイッチング素子Q2のオン期間は変化させずに、スイッチング素子Q1のオン期間を変化させ、電池電圧が低いほどオン期間を短くしている。したがって、図6に示すように、電池電圧が低いほどオン期間の時比率が小さくなる。また、制御領域A12では、スイッチング素子Q1のオン期間が短くなることによって、電池電圧が低いほど駆動周波数が上昇している。
【0065】
一方、制御領域A11では、図7(1)(2)に示すように、スイッチング素子Q1のオン期間は変化させずに、スイッチング素子Q2のオン期間を変化させ、電池電圧が低いほどオン期間を長くしている。したがって、制御領域A11においても、電池電圧が低いほど、相対的にスイッチング素子Q1の時比率が小さくなり、またスイッチング素子Q2のオン期間が長くなることによって、電池電圧が低いほど駆動周波数が低下している。
【0066】
実施形態1において説明したように、第1の制御領域A1において電池電圧が低下するにつれて効率が低下する一要因には、スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数が高くなることによる損失の増加が挙げられる。したがって、本実施形態のように、電池電圧が低い領域において駆動周波数が低下するように制御することによって、この損失を抑制することになり、結果的に効率の低下が抑制される。しかも、本実施形態の動作によって、第1の制御領域A1でオン期間の時比率が変化するから、電池電圧にかかわらず定電流で二次電池Bを充電することが可能である。
【0067】
実施形態1と同様に、本実施形態の動作において、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とは読み替えてもよい。他の構成および動作は実施形態1と同様であるから説明を省略する。
【0068】
(実施形態3)
上述した実施形態は、1種類の二次電池Bにのみ対応することを想定しているが、充電装置は、複数種類の異なる特性を有した二次電池の充電を要求される場合がある。たとえば、1台の充電装置で満充電時の電池電圧が異なる複数種類の電池パックに対応しなければならないことがある。
【0069】
本実施形態は、充電時の特性が異なる複数種類の二次電池に1台の充電装置で対応するための構成について説明する。いま、満充電時の電池電圧が異なる3種類の電池パック(二次電池)を想定し、各電池パックを充電する際の目標電圧をそれぞれVa,Vb,Vcとする(Va>Vb>Vc)。また、各電池パックの充電電流Ia,Ib,Icは、図8に破線で示すように制御されるものとする。図示例では、充電電流Ia,Ib,Icが定電流であるときに、Ia>Ib>Icの関係になっている。充電電流Ia,Ib,Icが、充電時間の経過に伴って図8に示すように変化するとき、電池電圧は図8に実線で示すように変化する。図示例では、目標電圧Va,Vb,Vcが高いほど、定電流での充電電流Ia,Ib,Icは大きくなっている。
【0070】
この3種類の電池パックでは、満充電時の電池電圧がもっとも高い電池パックに対する充電電流Iaがもっとも大きいから、充電装置は、充電電流Iaの出力電流が十分に得られるように設計条件が定められる。また、満充電時の電池電圧がもっとも低い電池パックに対しても複合共振の共振電流が流れるように設計条件が定められる。適正な出力電流が得られる設計条件は、トランスT(図1、図2参照)の巻線設計により定められる。また、上述した実施形態と同様の動作に動作させるために、切替電圧Vsは、もっとも低い目標電圧Vtよりも低くなるように定められる。
【0071】
本実施形態は、実施形態1と同様に、電池電圧と切替電圧Vsとの大小によって第1の制御領域A1と第2の制御領域A2とに分割してある。また、実施形態1と同様に、第2の制御領域A2において、オン時間の時比率を一定にし、駆動周波数を電池電圧が高くなるほど低くしている。ただし、電池パックごとの目標電圧Va,Vb,Vcに応じて駆動周波数は変化させる必要がある。そのため、電池パックの種類を判別して、満充電時における電池電圧を把握し、電池パックに合わせて駆動周波数を設定する必要がある。
【0072】
電池パックの種類を判別するには、電池パックにおいて二次電池のセル数を示すために実装されている抵抗値を検出する技術と、電池パックに判別用の抵抗を接続して電池パックの電圧を計測する技術とのいずれかを採用すればよい。また、充電制御回路CNは、電池パックのセル数によって検出された満充電時の電池電圧に応じて、駆動周波数を決定するためのデータテーブルを備える。ここに、2〜8セルの電池パックに対応するようにデータテーブルを設定しておけば、現状の電池パックだけではなく、将来の電池パック展開にも対応することが可能になる。
【0073】
本実施形態のように、トランスTの巻線設計を適宜に行い、切替電圧Vsを適宜に設定するとともに、駆動周波数を電池パックの仕様に応じて変化させることにより、電池電圧が少なくとも目標電圧Va,Vb,Vcに近い範囲では複合共振の動作が可能になる。すなわち、1台の充電装置で仕様の異なる複数種類の電池パックに対応することが可能になる。他の構成および動作は実施形態1同様であり、また、本実施形態においても実施形態2において説明した技術を採用することが可能である。
【0074】
(実施形態4)
実施形態1〜3では、充電電流が定電流である領域での制御について説明したが、本実施形態は、図1、図2に示した構成において、定電流での充電により電池電圧が目標電圧Vtに達した後に補充電(定電圧充電)を行う際の制御について説明する。
【0075】
充電電流を定電流として二次電池Bを充電する期間には、電池電圧が切替電圧Vs以上である第2の制御領域A2において、オン期間の時比率を一定とし、駆動周波数を変化させている。一方、補充電の期間には、充電電流が大きく変化し、たとえば定電流での充電時に比べて50分の1程度まで充電電流を変化させる必要があるから、駆動周波数を変化させるだけでは対応することができない。本実施形態は、補充電の期間において、オン期間の時比率を変化させることにより、充電電流の変化に対応させている。
【0076】
図9における(6)〜(8)に示す動作は、図3における(6)〜(8)に示す電池電圧の領域に対応している。また、図9において、実線はスイッチング素子Q1,Q2のドレイン−ソース間の電圧Vds、破線はドレイン電流Idを示している。図9から明らかなように、(6)に示した充電電流が大きい領域では、時比率を50%に維持して複合共振を利用して高い効率を得ている。(7)に示した充電電流ではスイッチング素子Q1,Q2のオン期間をともに短くして駆動周波数を高め、電力非伝達期間τを短縮して充電電流を低減している。また、(8)に示した充電電流が小さい領域では、スイッチング素子Q1のオン期間のみを短くして時比率を下げ、充電電流を低減する。
【0077】
本実施形態の動作では、補充電を行う期間に、充電電流が大きい領域では両方のスイッチング素子Q1,Q2の時比率を略50%に維持したままで駆動周波数を制御し、充電電流が小さい領域では一方のスイッチング素子Q1のオン期間を短くしている。この動作により、補充電を定電圧で行うことができるとともに、充電電流が大きい領域では複合共振を利用して高効率で動作させることになる。また、充電電流が小さい領域では損失が生じるが、充電電力の小さい領域であるから充電過程に占める損失の割合は小さく、全体としては高い効率が期待できる。
【0078】
ところで、実施形態2で説明したように、オン期間の時比率は、スイッチング素子Q1,Q2の一方のオン期間を短くするほか、他方のオン期間を長くすることによっても小さくなる。したがって、図3における(8)の領域では、上述したように、スイッチング素子Q1のオン期間を短くすることによって時比率を小さくし、図3における(9)の領域では、スイッチング素子Q2のオン期間を長くすることによって、スイッチング素子Q1の時比率を相対的に小さくする制御を行うことが望ましい。スイッチング素子Q1のオン期間を短くする動作からスイッチング素子Q2のオン期間を長くする動作への移行は、充電電流に対して閾値電流を規定し、閾値電流未満ではスイッチング素子Q2のオン期間を長くすればよい。この動作によって、充電電流が微弱電流である期間において、駆動周波数が高くなりすぎることが防止され、結果的に損失の低下に寄与することになる。
【0079】
補充電を行う期間おいて、充電電流を実質的に低下させるには、充電電流を間欠的に流してもよい。充電電流を間欠的に流す動作例を図10に示す。図10における(6)〜(8)は、図3における(6)〜(8)に対応しており、図10において期間T1は充電電流を流している期間、期間T2は充電電流を停止している期間を表している。図10の縦軸はスイッチング素子Q1,Q2のオンオフに対応している。図3の(6)のように、充電電流が大きい期間には、図10の(6)のように、充電電流が連続的に流されるが、図3の(8)のように、充電電流が小さい期間には、図10の(8)のように、充電電流は間欠的に流されるのである。また、充電電流を流す期間T1が短くなり、充電電流を流さない期間T2が長くなるほど、実質的な充電電流は小さくなる。
【0080】
図10に示す動作を採用することにより、充電電流が微弱電流であっても、充電電流を流す期間T1においては、図9の(6)に示す動作を維持することが可能であり、複合共振によって高い効率が得られ、また雑音の発生も抑制される。すなわち、補充電を行う全領域において、高効率かつ低雑音の動作が可能である。
【0081】
本実施形態で説明した補充電の動作は実施形態1〜3の技術と組み合わせて用いることができる。また、スイッチング素子Q1のオン期間ではなくスイッチング素子Q2のオン期間でもよい。
【0082】
(実施形態5)
上述した実施形態では、電池電圧あるいは充電電流に対応するために、スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数とオン期間の時比率とを制御している。本実施形態は、充電電圧が大きい変化に対応するために、図11(a)に示すように、トランスTの二次巻線N2に中間タップを設けた構成を付加している。図ではトランスTの二次側のみ記載している。充電装置の一次側の構成は、図1、図2に示した充電装置と同様である。
【0083】
図11(a)に示す構成において、トランスTの二次巻線N2は、センタタップのほかに、2個の中間タップを備えている。2個の中間タップは、センタタップとの間の巻数が等しくなるように設けられている。二次巻線N2の一端にはダイオードD1のアノードが接続され、二次巻線N2の他端にはダイオードD2のアノードが接続される。両ダイオードD1,D2のカソード同士は共通に接続される。また、二次巻線N2の一方の中間タップにはダイオードD3のアノードが接続され、他方の中間タップにはダイオードD4のアノードが接続される。両ダイオードD3,D4のカソード同士は共通に接続される。
【0084】
さらに、ダイオードD1,D2のカソードとダイオードD3,D4のカソードとの間にスイッチSWが挿入され、ダイオードD3,D4のカソードと二次巻線N2のセンタタップとの間に平滑コンデンサC4が接続される。図1,図2に示した充電装置と同様に、平滑コンデンサC4と二次電池Bとの間にはインダクタL1が挿入される。
【0085】
スイッチSWは、二次電池Bの仕様に応じて自動的に開閉されるように、図11(b)に示すように、パワーMOSFETのようなスイッチ素子Qsが用いられ、スイッチ素子Qsの開閉が電池電圧に応じて制御される。すなわち、電池電圧は、抵抗R2,R3の接続点の電圧として検出され、抵抗R2,R3の接続点の電圧は、コンパレータCPを用いて基準電圧Vrefと比較される。コンパレータCPは、ヒステリシスが付与され、出力をHレベルからローレベルに移行させる入力電圧が、出力をLレベルからHレベルに移行させる入力電圧よりも低く設定されている。
【0086】
スイッチ素子Qsは、コンパレータCPの出力がHレベルであるとオンになり、出力がLレベルであるとオフになるように、コンパレータCPの出力に駆動回路DR1を介して接続される。すなわち、抵抗R2,R3、コンパレータCP、駆動回路DR1によりスイッチ素子Qsのオンオフを制御するスイッチ制御部SCが構成される。
【0087】
スイッチ制御部SCは、電池電圧を表す抵抗R2,R3の接続点の電圧が基準電圧Vref以上になるとスイッチ素子Qsをオンにし、トランスTの二次巻線N2の両端からダイオードD1,D2を通して平滑コンデンサC4に充電させる。また、スイッチ制御部SCは、電池電圧を表す抵抗R2,R3の接続点の電圧が基準電圧Vrefに対して所定電圧以下になるとスイッチ素子Qsがオフにし、トランスTの二次巻線N2の中間タップからダイオードD3,D4を通して平滑コンデンサC4に充電させる。つまり、電池電圧に応じて、平滑コンデンサC4に印加される電圧が切り替えられる。
【0088】
上述した動作によって、充電電流を定電流に保つ領域において、図12に示すように、オン期間の時比率(特性b)を一定に保ったまま、スイッチ素子Qsのオンオフと駆動周波数(特性a)の変化とにより、電池電圧の変化に対応可能になる。このようにトランスTの二次巻線N2から取り出す電圧をスイッチ素子Qsのオンオフによって切り替えるから、駆動周波数の変化のみで電池電圧の変化に対応できる範囲が広くなり、広範囲の電池電圧に亘って駆動周波数の変化のみで定電流制御が可能となる。その結果、実施形態1の構成よりも切替電圧Vsを低くすることが可能であって、電池電圧の広範囲に亘って複合共振の動作を継続して充電電流を流すことが可能になる。すなわち、実施形態1の構成よりも効率を高めることができ、しかも雑音の発生を抑制することになる。
【0089】
スイッチ素子Qsのオンオフを切り替える電圧は、基準電圧Vrefにより設定される。充電時には電池電圧が時間経過に伴って上昇するから、図12のように、基準電圧Vrefに対応する電圧Vxを境界として駆動周波数が変化する。ただし、コンパレータCPにヒステリシスが付与されているから、電池電圧が基準電圧Vxの付近で変動しても、駆動周波数が変動(チャタリング)することはない。また、図12に特性cとして示すように、電池電圧が電圧Vxの前後である領域では効率は大きく変化せず、電池電圧が切替電圧Vs未満である第1の制御領域A1でのみ効率が低下する。
【0090】
充電電流を定電流とするために電池電圧に応じて駆動周波数を調節する場合、実施形態1において説明したように、電池電圧が高いほど電力非伝達期間τを長くするために、駆動周波数を低く設定する。したがって、上述した電圧Vxは、トランスTの二次巻線N2の両端からダイオードD1,D2を通して平滑コンデンサC4が充電される状態で、電力非伝達期間τがほぼ0になるときの電池電圧よりやや高い電圧に設定する。電池電圧が電圧Vxよりも低い領域では、スイッチ素子Qsがオフになり、トランスTの二次巻線N2の中間タップからダイオードD3,D4を通して平滑コンデンサC4が充電される。そのため、電池電圧が電圧Vx以上の領域とほぼ同様の範囲で駆動周波数を変化させることが可能になる。
【0091】
上述した動作により、第1の制御領域A1は、上述した各実施形態と同様に、一方のスイッチング素子Q1のみのオン期間が短くなり複合共振が生じないが、他方のスイッチング素子Q2のオン期間は複合共振を生じる程度の長さに設定される。また、電池電圧が切替電圧Vs以上である第2の制御領域A2では、オン期間の時比率が一定に保たれて、駆動周波数は第1の制御領域A1に対し比較的低いから、電池電圧にかかわらず複合共振の動作を行うことになり、高効率かつ低雑音の動作が可能になる。
【0092】
他の構成および動作は上述した各実施形態と同様であって、上述した本実施形態の特徴構成は、他の実施形態と組み合わせて用いることが可能である。上述の構成例では、二次巻線N2に2個の中間タップを設けているが、中間タップは偶数個であれば任意の個数設けることが可能である。
【0093】
なお、上述した各実施形態の充電装置は、ハーフブリッジ型のスイッチング電源を採用しているから、プシュプル型の構成と比較すると、トランスTの一次巻線に印加する電圧が略半分になる。つまり、一次巻線N1の巻数がプシュプル型のスイッチング電源よりも少なくなる。ハーフブリッジ型とプシュプル型とでトランスTの降圧比を一定とすると、一次巻線N1の巻数が少なくなれば、二次巻線N2の巻数も少なくなる。その結果、トランスTによる損失が低減され、トランスTの小型化に寄与する。ひいては、高効率かつ小型の充電装置を提供することが可能になる。
【0094】
また、上述した構成例では、スイッチング電源の入力電源が、交流電源ACをダイオードブリッジDBで整流し、平滑コンデンサC2で平滑した直流電源であるが、入力電源は他の構成の直流電源であってもよい。たとえば、太陽電池などの他の直流電源を用いてもよい。
【符号の説明】
【0095】
B 二次電池
C2 平滑コンデンサ(直流電源)
C4 平滑コンデンサ(整流平滑回路)
CN 充電制御回路
Cr コンデンサ(共振回路)
Cv ドレイン−ソース間容量(共振回路)
D1,D2 ダイオード(整流平滑回路)
DB ダイオードブリッジ(直流電源)
L1 インダクタ(整流平滑回路)
Lr インダクタ(共振回路)
Q1,Q2 スイッチング素子
R1,R2,R3 抵抗(状態検出回路)
SC スイッチ制御部
T トランス(共振回路)
T1 漏洩トランス
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を充電するための充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、二次電池を充電するための充電装置は、出力電圧および出力電流を広範囲に変化させることが要求される。すなわち、二次電池の端子電圧は充電状態に応じて大きく変化するから、充電装置は、二次電池の端子電圧に合わせて低電圧から定格電圧まで広範囲に出力電圧を変化させることが要求される。また、二次電池の急速充電時には充電電流が大電流になり、二次電池の補充電時には充電電流が微弱電流になるから、充電装置は、二次電池の充電電流に合わせて出力電流を広範囲に亘って変化させることが要求される。
【0003】
この種の充電装置は、直列制御型の定電圧電源を用いた構成と、スイッチング電源を用いた構成とが主として採用されている。とくに、スイッチング電源を用いた充電装置は、直列制御型の定電圧電源を用いた充電装置に比べて、電力変換の効率が高く、小型化が可能であることから広く採用されている。
【0004】
ところで、共振型のスイッチング電源は、回路効率が良好で雑音も抑制されるから、共振型のスイッチング電源を充電装置に用いると、小型かつ低コストの充電装置を提供できると考えられる。
【0005】
共振型のスイッチング電源を用いた充電装置としては、たとえば、図13に示す構成が提案されている。図示する充電装置は、2個のスイッチング素子Q11,Q12と共振用のインダクタL11,L12,L13,L14と共振用のコンデンサC11,C12とを備えている。インダクタL11,L12はインダクタL15,L16と磁気結合されている。インダクタL15,L16から取り出される電力は、ダイオードD11,D12、インダクタL17、コンデンサC13により整流平滑され、二次電池B1の充電に用いられる(特許文献1参照)。特許文献1に記載された充電装置は、プシュプル型のスイッチング電源を用いて構成され、スイッチング素子Q11,Q12は制御部CN11によりオンオフが制御される。
【0006】
制御部CN11は、2個のスイッチング素子Q11,Q12をともにオフにするデッドオフタイムと、スイッチング素子Q11,Q12をオンオフさせる駆動周波数とを制御することにより、二次電池B1への出力を調節する。すなわち、制御部CN11は、充電電流の大小に応じてデッドオフタイムを調節し、充電電流が大きいときに共振モードで動作させ、トリクル充電のように充電電流が小さいときに非共振モードで動作させる。また、制御部CN11は、充電装置の出力を変化させる際には、デッドオフタイムを一定に保って駆動周波数を変化させ、出力を低下させるときには駆動周波数を高くしている。
【0007】
制御部CN11は、充電電流を低減させる場合、スイッチング素子Q11,Q12がともにオフになるデッドオフタイムを長くし、スイッチング素子Q11,Q12に印加される共振電圧が最小になる領域でスイッチングを行う。この動作では疑似的に共振動作が行われる。また、二次電池B1の満充電付近において定電圧充電を行っており、定電圧充電の際には、デッドオフタイムが異なる複数の非共振モードが設定され、充電電流に応じて何れかの非共振モードを選択することにより、スイッチング損失の増加が抑制される。
【0008】
共振型のスイッチング電源を用いた充電装置としては、たとえば、図14に示す構成も提案されている。この充電装置は、2個のスイッチング素子Q21,Q22の直列回路を備えたハーフブリッジ型のスイッチング電源を採用している。スイッチング素子Q22には、コンデンサC21とインダクタL21とトランスT2の一次巻線N12との直列回路が並列に接続される。さらに、トランスT2の一次巻線N12にコンデンサC22が並列に接続されている。トランスT2の二次巻線N22から取り出される電力は、ダイオードD21,D22、コンデンサC23により整流平滑され、二次電池B2の充電に用いられる(特許文献2参照)。コンデンサC21,C22、インダクタL21、トランスT2は共振回路を構成している。スイッチング素子Q21,Q22は、制御回路CN21により交互にオンオフされる。
【0009】
制御回路CN21は、充電電流が大きい領域ではスイッチング素子Q21,Q22の駆動周波数を低くし、充電電流が小さい領域ではスイッチング素子Q21,Q22の駆動周波数を高くする。また、コンデンサC21とインダクタL21は充電電流が大きい領域の低い駆動周波数に対応するように設定されており、コンデンサC22は充電電流が小さい領域の高い駆動周波数に対応するように設定されている。この構成は、駆動周波数を変化させることにより充電電流を調節する。また、複数の共振点を有していることにより、広範囲の充電電流に対して共振状態を維持することが可能になっている。
【0010】
共振型のスイッチング電源には、上述した構成のほか、図15に示すように、電流共振と部分共振による電圧共振とを複合した複合共振型のスイッチング電源もある。図示例は2個のスイッチング素子Q31,Q32の直列回路を備えたハーフブリッジ型であって、図14に示した構成とは、共振回路の構成が異なっている。すなわち、ローサイドのスイッチング素子Q32にコンデンサC31が並列に接続され、コンデンサC31にはインダクタL31とトランスT3の一次巻線N31とコンデンサC32との直列回路が並列に接続されている。この構成では、コンデンサC31,C32とインダクタL31とトランスT3とが共振回路を構成している。
【0011】
また、トランスT3の二次巻線N32から取り出される電力は、ダイオードD31,D32、コンデンサC33により整流平滑される。特許文献1、2とは異なり、図15に示す構成例では、二次電池ではなく負荷LDに直流電力を供給する構成を示している。また、図では、スイッチング素子Q31,Q32のオンオフを制御する制御回路が省略されている。
【0012】
図15に示す構成の動作例を図16に示す。図16(a)(b)はスイッチング素子Q31,Q32のゲート−ソース間の電圧Vgs、図16(c)(d)はスイッチング素子Q31,Q32のドレイン−ソース間の電圧Vds(実線)およびドレイン電流Id(破線)を示す。さらに、図16(e)はコンデンサC32の両端電圧であり、図16(f)はダイオードD31,D32に流れる電流を示している。この動作では、2個のスイッチング素子Q31,Q32がともにオフになるデッドオフタイムが設けられている。
【0013】
スイッチング素子Q31,Q32の駆動周波数は、コンデンサC32とインダクタL31とトランスT3とにより構成される直列共振回路の共振周波数よりも低く設定される。この構成では、電流共振と電圧共振とを複合した複合共振の動作になり、高効率かつ低雑音で動作させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−230104号公報
【特許文献2】特開2010−263683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に示された充電装置は、充電電流が大きい領域では充電電流を定電流とし、充電電流が小さい領域では充電装置の出力電圧を定電圧にする定電圧充電を行う。特許文献1に記載された構成では、充電のすべての領域で、高効率かつ低雑音になるように、充電の状況に応じて、共振動作と擬似的な共振動作と複数の共振モードとから動作を選択することが必要であって、回路構成が複雑になるという問題がある。また、電圧型のコンバータであるプシュプル型のスイッチング電源を用いているから、容量の大きい二次電池B1の急速充電を行う場合のように大きい充電電流が必要である場合には、トランスT1が大型化する可能性がある。
【0016】
特許文献2に示された充電装置は、ハーフブリッジ型であるからプシュプル型の構成を採用する場合よりもトランスT2を小型化可能である。しかしながら、容量の大きい二次電池B2の急速充電を行う場合、広範囲の充電条件に対して駆動周波数を制御するだけで共振動作を維持することは困難である。また、トランスT2の一次巻線N21と二次巻線N22との巻数比は、電池電圧がもっとも高い状態を想定して設計されるので、電池電圧が低い場合には、過大な充電電流が流れるおそれがある。
【0017】
さらに、特許文献2に記載された構成のように、直列共振を用いたハーフブリッジ型のスイッチング電源は、スイッチング素子Q21,Q22のストレスを回避するために、共振回路の共振周波数よりも高い駆動周波数で動作させる必要がある。そのため、二次電池B2の残容量が少なく電池電圧が低い領域において所定の充電電流を流そうとすると、動作周波数が非常に高くなり、結果的に、スイッチング損失の増加などに伴って効率が低下し雑音が増大するおそれがある。
【0018】
図15に示した複合共振を利用するハーフブリッジ型のスイッチング電源は、コンデンサC32の容量をCiとし、インダクタL31のインダクタンスをLrとすると、入力電圧Vinと出力電圧Voutとが数1の関係になることが知られている。
【0019】
【数1】
ただし、nはトランスの巻数比、LpはトランスT3の励磁インダクタンス、τは図16に示した電力非伝達期間である。
【0020】
数1からわかるように、出力電圧Voutを変化させるには、電力非伝達期間τを変化させればよい。つまり、スイッチング素子Q31,Q32の駆動周波数を変化させることにより、出力電圧Voutが変化する。しかしながら、充電装置は、上述のように、出力電圧および出力電流を広範囲に変化させることが要求されるから、出力電圧および出力電流のすべての領域において、最適な共振条件を維持することは容易ではない。
【0021】
本発明は、二次電池の急速充電を可能にする充電装置において、比較的簡単な回路構成を用いながらも、広範囲な充電条件の変化に対して共振動作を利用することによって高効率かつ低雑音を可能にし、しかも、トランスの小型化が可能である充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る充電装置は、上記目的を達成するために、入力電源である直流電源の両端間に接続された2個のスイッチング素子の直列回路と、スイッチング素子のオンオフを制御する充電制御回路と、スイッチング素子のうちの一方に並列に接続されインダクタとトランスの一次巻線とコンデンサとの直列回路を備えた複合共振動作用の共振回路と、トランスの二次巻線の出力を整流平滑し二次電池に充電電流を供給する整流平滑回路と、二次電池の端子電圧である電池電圧および二次電池に流す充電電流を検出する状態検出回路とを備え、充電制御回路は、インダクタとトランスの一次巻線とコンデンサとで決まる共振周波数よりも高い周波数範囲で電力非伝達期間を形成しながら2個のスイッチング素子のオンオフを制御するとともに、充電が開始されてから状態検出回路が検出した電池電圧が規定の目標電圧に達するまでは充電電流が定電流になり、電池電圧が目標電圧に達していると定電圧で充電するように、スイッチング素子のオンオフを制御し、さらに、充電電流を定電流とする期間において、電池電圧に応じた切替電圧を設け、電池電圧が当該切替電圧未満である第1の制御領域において、電池電圧が低いほど2個のスイッチング素子の一方のオン期間を一定として他方のオン期間を短くして時比率を変化させ、電池電圧が当該切替電圧以上である第2の制御領域において、2個のスイッチング素子のオン期間が等しくなるように時比率を一定としながら、電池電圧が高いほどスイッチング素子の駆動周波数を引き下げることを特徴とする。
【0023】
この充電装置において、充電制御回路は、第1の制御領域において、状態検出回路が検出した電池電圧にかかわらずスイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほどスイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くして相対的に時比率を制御することが好ましい。
【0024】
この充電装置において、充電制御回路は、第1の制御領域において、状態検出回路が検出した電池電圧が規定の閾値電圧以上である領域においては、スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほどスイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くし、電池電圧が閾値電圧未満である領域においては、スイッチング素子の前記他方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほどスイッチング素子の前記一方のオン期間を長くあるいは短くすることが好ましい。
【0025】
この充電装置において、満充電時の電池電圧が異なる複数種類の二次電池に適合する充電装置であって、充電制御回路は、第2の制御領域において、二次電池の仕様ごとに定めた充電電流が流れるように、スイッチング素子の駆動周波数を変化させることが好ましい。
【0026】
この充電装置において、充電制御回路は、電池電圧が目標電圧に達した後、2個のスイッチング素子のオン期間が等しくなる状態で時間の経過とともに駆動周波数を高くして充電電流を低減させ、少なくとも電力非伝達期間が消滅する時点から、スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、充電電流が少ないほどスイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くすることが好ましい。
【0027】
この充電装置において、充電制御回路は、電池電圧が目標電圧に達した後、2個のスイッチング素子のオン期間が等しくなる状態で時間の経過とともに駆動周波数を高くして充電電流を低減させ、少なくとも電力非伝達期間が消滅する時点から、スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、充電電流が少ないほどスイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くするとともに、充電電流が規定の閾値電流未満である領域においては、スイッチング素子の前記他方のオン期間を一定に保ち、スイッチング素子の前記一方のオン期間を長くあるいは短くすることが好ましい。
【0028】
この充電装置において、充電制御回路は、電池電圧が目標電圧に達した後、スイッチング素子のオンオフ動作を間欠的に行って、充電電流を流す期間と停止させる期間とを設け、時間の経過とともに充電電流を停止させる期間を長くすることにより充電電流を低減させることが好ましい。
【0029】
この充電装置において、トランスの二次巻線の両端からの出力を整流平滑する経路に挿入されたスイッチと、電池電圧が規定の電圧を超えるまではスイッチをオフにしてトランスの二次巻線に設けた中間タップからの出力を整流平滑させ、電池電圧が規定の電圧を超えるとスイッチをオンにしてトランスの二次巻線の両端からの出力を整流平滑させるスイッチ制御部とを備えることが好ましい。
【0030】
この充電装置において、トランスは漏洩トランスであって、インダクタは漏洩トランスの漏洩インダクタンスを用いることが好ましい。
【0031】
この充電装置において、二次電池はリチウムイオン電池であることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の構成によれば、二次電池の急速充電を可能にする充電装置において、比較的簡単な回路構成を用いながらも、広範囲な充電条件の変化に対して共振動作を利用することによって高効率かつ低雑音を可能にし、しかも、トランスの小型化が可能になるという効果がある。とくに、複合共振を利用するハーフブリッジ型のスイッチング電源を用いて、充電電力の大きい領域では共振動作させ、かつ充電電力の小さい領域でも部分的に共振動作させることを可能として、高効率かつ低雑音の充電装置を提供することを可能とする。また、ハーフブリッジ型であるからトランスが小型であり、低コスト化にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態の一回路例を示す回路図である。
【図2】実施形態の他回路例を示す回路図である。
【図3】実施形態1を示す動作説明図である。
【図4】同上の制御を示す動作説明図である。
【図5】同上における要部の電圧波形と電流波形を示す動作説明図である。
【図6】実施形態2の制御を示す動作説明図である。
【図7】同上における要部の電圧波形と電流波形を示す動作説明図である。
【図8】実施形態3を示す動作説明図である。
【図9】実施形態4における要部の電圧波形と電流波形を示す動作説明図である。
【図10】同上の他の動作例を示す動作説明図である。
【図11】(a)(b)は実施形態5を示す要部の回路図である。
【図12】同上における要部の電圧波形と電流波形を示す動作説明図である。
【図13】従来構成を示す回路図である。
【図14】他の従来構成を示す回路図である。
【図15】ハーフブリッジ型のスイッチング電源の例を示す回路図である。
【図16】図15に示した回路の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(実施形態1)
以下に実施形態として説明する充電装置は、図1または図2に示すように、ハーフブリッジ型のコンバータを主回路として備える。
【0035】
図1に示す充電装置は、ダイオードブリッジDBおよび平滑コンデンサC2を備え、商用電源のような交流電源ACをダイオードブリッジDBで全波整流し、平滑コンデンサC2で平滑することにより入力電源を得ている。
【0036】
平滑コンデンサC2には、2個のスイッチング素子Q1,Q2の直列回路が並列に接続される。スイッチング素子Q1,Q2は、たとえば、パワーMOSFETが用いられる。一方のスイッチング素子Q2の両端(ドレイン−ソース)には、インダクタLrとトランスTの一次巻線N1とコンデンサCrとの直列回路が並列に接続される。インダクタLrおよび一次巻線N1とコンデンサCrとは共振回路を構成する。さらに、スイッチング素子Q2のドレイン−ソース間容量Cvも共振回路の一部として利用される。なお、ドレイン−ソース間容量Cvに加えて、ドレイン−ソースに共振用のコンデンサ(図示せず)を並列に接続して共振回路を構成してもよい。
【0037】
トランスTの二次巻線N2はセンタタップを備え、二次巻線N2の出力は、整流用の2個のダイオードD1,D2と平滑コンデンサC4とインダクタL1とを用いた整流平滑回路により整流平滑され、二次電池Bに供給される。二次電池Bは、リチウムイオン電池を想定しているが、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などの他の二次電池であってもよい。ここに、トランスTの一次巻線N1と二次巻線N2との巻数比は、二次電池Bの定格電圧付近で十分な大きさの充電電流が得られるように設定される。
【0038】
充電装置に二次電池Bが接続された状態では、平滑コンデンサC4の両端に、インダクタL1と二次電池Bと電流検出用の抵抗R1との直列回路が構成され、二次電池Bに流れる充電電流が抵抗R1の両端電圧として検出される。また、二次電池Bと並列に、2個の抵抗R2,R3の直列回路からなる電圧検出用の分圧回路が並列に接続され、二次電池Bの端子電圧(以下、「電池電圧」という)に比例する電圧が抵抗R3の両端電圧として検出される。すなわち、抵抗R1,R2,R3により状態検出回路が構成される。
【0039】
図示する充電装置は、平滑コンデンサC2と並列に接続されたコンデンサC5を備え、さらに、スイッチング素子Q2とコンデンサCrとの接続点と、トランスTのセンタタップとの間に接続されたコンデンサC6を備える。また、ダイオードブリッジDBの交流入力端には、ヒューズF、雑音防止用コンデンサC1、ラインフィルタFTなどを介して交流電源ACが接続される。
【0040】
抵抗R1の両端電圧として検出される充電電流の情報、および抵抗R3の両端電圧として検出される電池電圧の情報は、充電制御回路CNに入力される。充電制御回路CNは、充電電流および電池電圧に基づいてスイッチング素子Q1,Q2をオンオフさせるタイミングを決定し、スイッチング素子Q1,Q2をオンオフさせるタイミング信号を出力する。タイミング信号は、絶縁用のフォトカプラPC1,PC2を介して駆動回路DRに入力され、駆動回路DRにおいてスイッチング素子Q1,Q2に与える駆動信号が生成される。駆動信号は、タイミング信号による指示に従ってスイッチング素子Q1,Q2のオンオフを制御する。
【0041】
図2に示す充電装置は、図1の主回路に対してトランスTを漏洩トランスT1に置き換えた構成を備え、共振に漏洩インダクタンスを用いることによりインダクタL1を省略している。他の構成は図1に示した充電装置と同様である。
【0042】
以下では、図1、図2に示した充電装置の動作を説明する。本実施形態は、図3に示すように、定電圧・定電流充電に相当する充電方法を採用している。すなわち、充電制御回路CNは、二次電池Bが放電によって低い電圧となっているときには充電電流を定電流とし、電池電圧が規定した目標電圧Vtに達すると、微弱電流での補充電を行うように、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフを制御する。目標電圧Vtは、たとえば、二次電池Bの定格電圧に設定される。図3に示す動作例では、放電されて端子電圧が相当程度低下した二次電池Bには定電流の充電電流を与え、目標電圧Vtに達した後は、充電電流を徐々に低減させることを示している。
【0043】
ところで、図1、図2に示す充電装置は、共振回路を用いてソフトスイッチングを行う共振型のスイッチング電源を用いている。より具体的には、ハーフブリッジ型のスイッチング電源に、複数の共振要素を組み合わせた複合共振型の構成を有している。この構成のスイッチング電源は、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフのタイミングを適切に調節すると、高効率で動作させることが可能である。しかしながら、図3のように、充電電流が定電流である領域では電池電圧が大きく変化しているから、電池電圧の全範囲において、ソフトスイッチングが行われるようにスイッチング素子Q1,Q2のオンオフを制御することは困難である。
【0044】
そこで、本実施形態は、充電電流が定電流である領域を、図4のように、複数(図示例では2)の制御領域A1,A2に分割し、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフの周波数とオンデューティとを制御領域A1,A2に応じて変化させている。制御領域A1,A2は、電池電圧と規定の切替電圧Vsとの大小により分割されている。切替電圧Vsは、たとえば、数1に示した関係において電力非伝達期間τがほぼ0になるように規定され、Vin/2nよりやや大きい程度に設定される。以下では、電池電圧が、切替電圧Vs未満である制御領域A1を第1の制御領域と呼び、切替電圧Vs以上になる制御領域A2を第2の制御領域と呼ぶ。
【0045】
図4の横軸は電池電圧であって、充電電流が定電流であるから、充電電力は電池電圧に比例して増加する。また、図4において、特性aはスイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数、特性bはスイッチング素子Q1,Q2のオン期間の時比率、特性cは充電装置の効率を示している。スイッチング素子Q1,Q2のオン期間の時比率は、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間の合計に対するハイサイドのスイッチング素子Q1のオン期間の割合であって、百分率で表される。したがって、両スイッチング素子Q1,Q2のオン期間が等しく、1:1になる場合は、時比率は50%になる。
【0046】
充電制御回路CNは、第1の制御領域A1では、オン期間の時比率を50%未満とし、かつ電池電圧が高いほど時比率を大きくするが、第2の制御領域A2では、電池電圧にかかわらずオン期間の時比率を50%として一定に保つ。また、充電制御回路CNは、第2の制御領域A2において、電池電圧が高いほど駆動周波数を低く設定する。図4では、第1の制御領域A1においても、電池電圧が高いほど駆動周波数が低くなっているが、これは時比率を増加させて50%に近づけた結果として駆動周波数が低下しているのであり、第1の制御領域A1では駆動周波数の調節は行わない。
【0047】
上述した動作において、第2の制御領域A2で電池電圧に応じて駆動周波数のみが変化することは、数1において電力非伝達期間τが変化することに相当する。すなわち、駆動周波数が低下すると電力非伝達期間τが増加するから、数1により、出力電圧が上昇することがわかる。
【0048】
一方、第2の制御領域A2において、電池電圧が切替電圧Vsの付近では、オン期間の時比率が50%に保たれたままでは、電力非伝達期間τの調節幅が少なくなり、駆動周波数のみを調節しても出力電圧の調節が困難である。すなわち、電池電圧が切替電圧Vsの付近になると、複合共振を維持することが難しくなる。
【0049】
そこで、充電制御回路CNは、第1の制御領域A1では、ハイサイドのスイッチング素子Q1のオン期間を変化させてオン期間の時比率を変化させることにより、充電電流を定電流に維持する。すなわち、充電制御回路CNは、第1の制御領域A1において、電池電圧が低いほどスイッチング素子Q1のオン期間を短くしている。この動作により、第1の制御領域A1においては、電池電圧が低いほど駆動周波数が上昇することになる。なお、第1の制御領域A1では、ローサイドのスイッチング素子Q2のオン期間を一定に保ちながら、ハイサイドのスイッチング素子Q1のオン期間を変化させる場合について説明したが、スイッチング素子Q1のオン期間を一定に保ちながら、スイッチング素子Q2のオン期間を変化させても同等の結果が得られる。
【0050】
図5は、第1の制御領域A1および第2の制御領域A2におけるスイッチング素子Q1,Q2のドレイン−ソース間の電圧Vds(実線)とドレイン電流Id(破線)とを示している。したがって、各スイッチング素子Q1,Q2において、電圧Vdsが0ではない期間がオフ期間に相当する。なお、図5において、スイッチング素子Q1,Q2をともにオフにする期間としてのデッドオフタイムは省略している。デッドオフタイムは、第1の制御領域A1と第2の制御領域A2とにおいてとくに変化させる必要はない。図5における(1)〜(5)に示す動作は、図4における(1)〜(5)に示す電池電圧の領域に対応している。
【0051】
電池電圧が切替電圧Vs未満である第1の制御領域A1では、図5(1)(2)のように、スイッチング素子Q1のオン期間がスイッチング素子Q2のオン期間に比べて短くなり、オン期間の時比率が小さくなる。したがって、第1の制御領域A1では、ハイサイドのスイッチング素子Q1のドレイン電流Idは三角波状になり、ピークも比較的大きくなる。ただし、充電制御回路CNは、ローサイドのスイッチング素子Q2について、電力非伝達期間τが生じる程度にオン期間を比較的長く設定し、ドレイン電流Idに共振電流を流している。
【0052】
図5(1)(2)から明らかなように、第1の制御領域A1では、ローサイドのスイッチング素子Q2のオン期間がほぼ一定に保たれ、電池電圧が切替電圧Vsに近付くほどスイッチング素子Q1のオン期間が長くなっている。この動作により、充電装置から二次電池Bへの充電電流が定電流に維持される。また、電池電圧が高くなるほど、スイッチング素子Q1のドレイン電流Idの傾斜が緩やかになりピークが低減される。
【0053】
上述したように、第1の制御領域A1では、一方のスイッチング素子Q1のドレイン電流Idに共振電流を流すことができないから効率が低下するが、第1の制御領域A1は充電電力が比較的小さいから損失も少なく効率の低下の影響は比較的小さい。
【0054】
電池電圧が切替電圧Vs以上である第2の制御領域A2では、図5(3)(4)(5)のように、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間が等しく時比率が一定に保たれ、駆動周波数が変化する。スイッチング素子Q1,Q2のオン期間は、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン電流Idに共振電流が流れるように設定され、電池電圧が高くなるほど駆動周波数が低く設定される。すなわち、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間は、電池電圧が高いほど長くなる。
【0055】
第2の制御領域A2においては、電池電圧が上昇するほど、駆動周波数が低下し、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間が長くなる。つまり、電池電圧が上昇するほど、数1における電力非伝達期間τを延長することになり、出力電圧が上昇する。なお、電力非伝達期間τは、図5(1)〜(5)に示すドレイン電流Idにおいて、共振電流が流れた後の肩部分の期間に相当する。また、第2の制御領域A2では、充電装置を複合共振モードで動作させることになり、比較的高い効率が維持されることになる。
【0056】
上述したように、本実施形態の構成では、二次電池Bを定電流で充電する際に、電池電圧が切替電圧Vs未満である第1の制御領域A1において、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との一方のオン期間が制御される。また、電池電圧が切替電圧Vs以上である第2の制御領域A2において、時比率を50%に維持したままで駆動周波数が制御される。このような動作により、充電電流を所望の電流値に維持して二次電池Bを定電流で充電するとともに、電池電圧にかかわらず、少なくとも一部の期間には複合共振による共振電流を流し続けることを可能にし、比較的高い効率を維持することを可能にしている。
【0057】
なお、図4に示すように、第1の制御領域A1において、電池電圧が低いほど効率が低下するのは、以下の原因によると考えられる。すなわち、スイッチング素子Q1のドレイン電流Idのピーク値が増加すること、駆動周波数が高くなることでスイッチング素子Q1,Q2、トランスT、ダイオードD1,D2などでの損失が増加することが原因として考えられる。ただし、効率が低下するのは、充電電力が比較的小さい第1の制御領域A1であって、充電電力が大きい第2の制御領域A2では高い効率を維持することができる。そのため、二次電池Bを充電する過程のうちで電力損失が大きい期間の割合は少なく、結果的に充電過程における電力損失は抑制されることになる。
【0058】
なお、上述した実施形態では、第1の制御領域A1において、スイッチング素子Q1のオン期間を変化させているが、スイッチング素子Q2のオン期間を変化させるようにしても同様の動作になる。
【0059】
(実施形態2)
実施形態1は、電池電圧に基づいて、第1の制御領域A1と第2の制御領域A2との2領域を設定しているが、本実施形態は、図6に示すように、実施形態1における第1の制御領域A1がさらに2個の制御領域A11,A12に分割されている点が実施形態1と相違する。第1の制御領域A1において、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間の時比率を変化させる点は実施形態1と同様である。ただし、実施形態1では、2個のスイッチング素子Q1,Q2のうちの一方についてのみオン期間を変化させているが、本実施形態では、各制御領域A11,A12において、異なるスイッチング素子Q1,Q2のオン期間を変化させる。
【0060】
制御領域A11,A12は、電池電圧に基づいて分割される。制御領域A11は電池電圧が規定の閾値電圧Vu(<Vs)未満の領域であり、制御領域A12は電池電圧が閾値電圧Vu以上の領域である。閾値電圧Vuは、充電装置の効率に基づいて適宜に定められる。
【0061】
電池電圧が閾値電圧Vu以上である制御領域A12では、充電制御回路CNは、実施形態1の第1の制御領域A1と同様に、電池電圧に応じてスイッチング素子Q1,Q2のうちの一方のオン期間を変化させてオン期間の時比率を変化させる。たとえば、電池電圧が低いほどスイッチング素子Q1のオン期間が短くなることにより時比率が低減され、結果的に、電池電圧が低いほど駆動周波数が高くなる。一方、電池電圧が閾値電圧Vu未満である制御領域A11では、充電制御回路CNは、電池電圧に応じてスイッチング素子Q1,Q2のうちの他方のオン期間を変化させてオン期間の時比率を変化させる。すなわち、制御領域A12でスイッチング素子Q1のオン期間が変化するとすれば、制御領域A11ではスイッチング素子Q2のオン期間が変化する。
【0062】
ここで、制御領域A12では電池電圧が低いほどスイッチング素子Q1のオン期間が短くなることにより時比率が小さくなるが、制御領域A11では電池電圧が低いほどスイッチング素子Q2のオン期間が長くなることにより相対的にスイッチング素子Q1の時比率が小さくなる。
【0063】
本実施形態の動作例を図7に示す。図7には図5と同様に、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン−ソース間の電圧Vds(実線)と、スイッチング素子Q1,Q2のドレイン電流Idとを示している。また、図7の(1)(2)(3)は、図6の(1)(2)(3)に対応している。
【0064】
制御領域A12では、図7(2)(3)に示すように、スイッチング素子Q2のオン期間は変化させずに、スイッチング素子Q1のオン期間を変化させ、電池電圧が低いほどオン期間を短くしている。したがって、図6に示すように、電池電圧が低いほどオン期間の時比率が小さくなる。また、制御領域A12では、スイッチング素子Q1のオン期間が短くなることによって、電池電圧が低いほど駆動周波数が上昇している。
【0065】
一方、制御領域A11では、図7(1)(2)に示すように、スイッチング素子Q1のオン期間は変化させずに、スイッチング素子Q2のオン期間を変化させ、電池電圧が低いほどオン期間を長くしている。したがって、制御領域A11においても、電池電圧が低いほど、相対的にスイッチング素子Q1の時比率が小さくなり、またスイッチング素子Q2のオン期間が長くなることによって、電池電圧が低いほど駆動周波数が低下している。
【0066】
実施形態1において説明したように、第1の制御領域A1において電池電圧が低下するにつれて効率が低下する一要因には、スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数が高くなることによる損失の増加が挙げられる。したがって、本実施形態のように、電池電圧が低い領域において駆動周波数が低下するように制御することによって、この損失を抑制することになり、結果的に効率の低下が抑制される。しかも、本実施形態の動作によって、第1の制御領域A1でオン期間の時比率が変化するから、電池電圧にかかわらず定電流で二次電池Bを充電することが可能である。
【0067】
実施形態1と同様に、本実施形態の動作において、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とは読み替えてもよい。他の構成および動作は実施形態1と同様であるから説明を省略する。
【0068】
(実施形態3)
上述した実施形態は、1種類の二次電池Bにのみ対応することを想定しているが、充電装置は、複数種類の異なる特性を有した二次電池の充電を要求される場合がある。たとえば、1台の充電装置で満充電時の電池電圧が異なる複数種類の電池パックに対応しなければならないことがある。
【0069】
本実施形態は、充電時の特性が異なる複数種類の二次電池に1台の充電装置で対応するための構成について説明する。いま、満充電時の電池電圧が異なる3種類の電池パック(二次電池)を想定し、各電池パックを充電する際の目標電圧をそれぞれVa,Vb,Vcとする(Va>Vb>Vc)。また、各電池パックの充電電流Ia,Ib,Icは、図8に破線で示すように制御されるものとする。図示例では、充電電流Ia,Ib,Icが定電流であるときに、Ia>Ib>Icの関係になっている。充電電流Ia,Ib,Icが、充電時間の経過に伴って図8に示すように変化するとき、電池電圧は図8に実線で示すように変化する。図示例では、目標電圧Va,Vb,Vcが高いほど、定電流での充電電流Ia,Ib,Icは大きくなっている。
【0070】
この3種類の電池パックでは、満充電時の電池電圧がもっとも高い電池パックに対する充電電流Iaがもっとも大きいから、充電装置は、充電電流Iaの出力電流が十分に得られるように設計条件が定められる。また、満充電時の電池電圧がもっとも低い電池パックに対しても複合共振の共振電流が流れるように設計条件が定められる。適正な出力電流が得られる設計条件は、トランスT(図1、図2参照)の巻線設計により定められる。また、上述した実施形態と同様の動作に動作させるために、切替電圧Vsは、もっとも低い目標電圧Vtよりも低くなるように定められる。
【0071】
本実施形態は、実施形態1と同様に、電池電圧と切替電圧Vsとの大小によって第1の制御領域A1と第2の制御領域A2とに分割してある。また、実施形態1と同様に、第2の制御領域A2において、オン時間の時比率を一定にし、駆動周波数を電池電圧が高くなるほど低くしている。ただし、電池パックごとの目標電圧Va,Vb,Vcに応じて駆動周波数は変化させる必要がある。そのため、電池パックの種類を判別して、満充電時における電池電圧を把握し、電池パックに合わせて駆動周波数を設定する必要がある。
【0072】
電池パックの種類を判別するには、電池パックにおいて二次電池のセル数を示すために実装されている抵抗値を検出する技術と、電池パックに判別用の抵抗を接続して電池パックの電圧を計測する技術とのいずれかを採用すればよい。また、充電制御回路CNは、電池パックのセル数によって検出された満充電時の電池電圧に応じて、駆動周波数を決定するためのデータテーブルを備える。ここに、2〜8セルの電池パックに対応するようにデータテーブルを設定しておけば、現状の電池パックだけではなく、将来の電池パック展開にも対応することが可能になる。
【0073】
本実施形態のように、トランスTの巻線設計を適宜に行い、切替電圧Vsを適宜に設定するとともに、駆動周波数を電池パックの仕様に応じて変化させることにより、電池電圧が少なくとも目標電圧Va,Vb,Vcに近い範囲では複合共振の動作が可能になる。すなわち、1台の充電装置で仕様の異なる複数種類の電池パックに対応することが可能になる。他の構成および動作は実施形態1同様であり、また、本実施形態においても実施形態2において説明した技術を採用することが可能である。
【0074】
(実施形態4)
実施形態1〜3では、充電電流が定電流である領域での制御について説明したが、本実施形態は、図1、図2に示した構成において、定電流での充電により電池電圧が目標電圧Vtに達した後に補充電(定電圧充電)を行う際の制御について説明する。
【0075】
充電電流を定電流として二次電池Bを充電する期間には、電池電圧が切替電圧Vs以上である第2の制御領域A2において、オン期間の時比率を一定とし、駆動周波数を変化させている。一方、補充電の期間には、充電電流が大きく変化し、たとえば定電流での充電時に比べて50分の1程度まで充電電流を変化させる必要があるから、駆動周波数を変化させるだけでは対応することができない。本実施形態は、補充電の期間において、オン期間の時比率を変化させることにより、充電電流の変化に対応させている。
【0076】
図9における(6)〜(8)に示す動作は、図3における(6)〜(8)に示す電池電圧の領域に対応している。また、図9において、実線はスイッチング素子Q1,Q2のドレイン−ソース間の電圧Vds、破線はドレイン電流Idを示している。図9から明らかなように、(6)に示した充電電流が大きい領域では、時比率を50%に維持して複合共振を利用して高い効率を得ている。(7)に示した充電電流ではスイッチング素子Q1,Q2のオン期間をともに短くして駆動周波数を高め、電力非伝達期間τを短縮して充電電流を低減している。また、(8)に示した充電電流が小さい領域では、スイッチング素子Q1のオン期間のみを短くして時比率を下げ、充電電流を低減する。
【0077】
本実施形態の動作では、補充電を行う期間に、充電電流が大きい領域では両方のスイッチング素子Q1,Q2の時比率を略50%に維持したままで駆動周波数を制御し、充電電流が小さい領域では一方のスイッチング素子Q1のオン期間を短くしている。この動作により、補充電を定電圧で行うことができるとともに、充電電流が大きい領域では複合共振を利用して高効率で動作させることになる。また、充電電流が小さい領域では損失が生じるが、充電電力の小さい領域であるから充電過程に占める損失の割合は小さく、全体としては高い効率が期待できる。
【0078】
ところで、実施形態2で説明したように、オン期間の時比率は、スイッチング素子Q1,Q2の一方のオン期間を短くするほか、他方のオン期間を長くすることによっても小さくなる。したがって、図3における(8)の領域では、上述したように、スイッチング素子Q1のオン期間を短くすることによって時比率を小さくし、図3における(9)の領域では、スイッチング素子Q2のオン期間を長くすることによって、スイッチング素子Q1の時比率を相対的に小さくする制御を行うことが望ましい。スイッチング素子Q1のオン期間を短くする動作からスイッチング素子Q2のオン期間を長くする動作への移行は、充電電流に対して閾値電流を規定し、閾値電流未満ではスイッチング素子Q2のオン期間を長くすればよい。この動作によって、充電電流が微弱電流である期間において、駆動周波数が高くなりすぎることが防止され、結果的に損失の低下に寄与することになる。
【0079】
補充電を行う期間おいて、充電電流を実質的に低下させるには、充電電流を間欠的に流してもよい。充電電流を間欠的に流す動作例を図10に示す。図10における(6)〜(8)は、図3における(6)〜(8)に対応しており、図10において期間T1は充電電流を流している期間、期間T2は充電電流を停止している期間を表している。図10の縦軸はスイッチング素子Q1,Q2のオンオフに対応している。図3の(6)のように、充電電流が大きい期間には、図10の(6)のように、充電電流が連続的に流されるが、図3の(8)のように、充電電流が小さい期間には、図10の(8)のように、充電電流は間欠的に流されるのである。また、充電電流を流す期間T1が短くなり、充電電流を流さない期間T2が長くなるほど、実質的な充電電流は小さくなる。
【0080】
図10に示す動作を採用することにより、充電電流が微弱電流であっても、充電電流を流す期間T1においては、図9の(6)に示す動作を維持することが可能であり、複合共振によって高い効率が得られ、また雑音の発生も抑制される。すなわち、補充電を行う全領域において、高効率かつ低雑音の動作が可能である。
【0081】
本実施形態で説明した補充電の動作は実施形態1〜3の技術と組み合わせて用いることができる。また、スイッチング素子Q1のオン期間ではなくスイッチング素子Q2のオン期間でもよい。
【0082】
(実施形態5)
上述した実施形態では、電池電圧あるいは充電電流に対応するために、スイッチング素子Q1,Q2の駆動周波数とオン期間の時比率とを制御している。本実施形態は、充電電圧が大きい変化に対応するために、図11(a)に示すように、トランスTの二次巻線N2に中間タップを設けた構成を付加している。図ではトランスTの二次側のみ記載している。充電装置の一次側の構成は、図1、図2に示した充電装置と同様である。
【0083】
図11(a)に示す構成において、トランスTの二次巻線N2は、センタタップのほかに、2個の中間タップを備えている。2個の中間タップは、センタタップとの間の巻数が等しくなるように設けられている。二次巻線N2の一端にはダイオードD1のアノードが接続され、二次巻線N2の他端にはダイオードD2のアノードが接続される。両ダイオードD1,D2のカソード同士は共通に接続される。また、二次巻線N2の一方の中間タップにはダイオードD3のアノードが接続され、他方の中間タップにはダイオードD4のアノードが接続される。両ダイオードD3,D4のカソード同士は共通に接続される。
【0084】
さらに、ダイオードD1,D2のカソードとダイオードD3,D4のカソードとの間にスイッチSWが挿入され、ダイオードD3,D4のカソードと二次巻線N2のセンタタップとの間に平滑コンデンサC4が接続される。図1,図2に示した充電装置と同様に、平滑コンデンサC4と二次電池Bとの間にはインダクタL1が挿入される。
【0085】
スイッチSWは、二次電池Bの仕様に応じて自動的に開閉されるように、図11(b)に示すように、パワーMOSFETのようなスイッチ素子Qsが用いられ、スイッチ素子Qsの開閉が電池電圧に応じて制御される。すなわち、電池電圧は、抵抗R2,R3の接続点の電圧として検出され、抵抗R2,R3の接続点の電圧は、コンパレータCPを用いて基準電圧Vrefと比較される。コンパレータCPは、ヒステリシスが付与され、出力をHレベルからローレベルに移行させる入力電圧が、出力をLレベルからHレベルに移行させる入力電圧よりも低く設定されている。
【0086】
スイッチ素子Qsは、コンパレータCPの出力がHレベルであるとオンになり、出力がLレベルであるとオフになるように、コンパレータCPの出力に駆動回路DR1を介して接続される。すなわち、抵抗R2,R3、コンパレータCP、駆動回路DR1によりスイッチ素子Qsのオンオフを制御するスイッチ制御部SCが構成される。
【0087】
スイッチ制御部SCは、電池電圧を表す抵抗R2,R3の接続点の電圧が基準電圧Vref以上になるとスイッチ素子Qsをオンにし、トランスTの二次巻線N2の両端からダイオードD1,D2を通して平滑コンデンサC4に充電させる。また、スイッチ制御部SCは、電池電圧を表す抵抗R2,R3の接続点の電圧が基準電圧Vrefに対して所定電圧以下になるとスイッチ素子Qsがオフにし、トランスTの二次巻線N2の中間タップからダイオードD3,D4を通して平滑コンデンサC4に充電させる。つまり、電池電圧に応じて、平滑コンデンサC4に印加される電圧が切り替えられる。
【0088】
上述した動作によって、充電電流を定電流に保つ領域において、図12に示すように、オン期間の時比率(特性b)を一定に保ったまま、スイッチ素子Qsのオンオフと駆動周波数(特性a)の変化とにより、電池電圧の変化に対応可能になる。このようにトランスTの二次巻線N2から取り出す電圧をスイッチ素子Qsのオンオフによって切り替えるから、駆動周波数の変化のみで電池電圧の変化に対応できる範囲が広くなり、広範囲の電池電圧に亘って駆動周波数の変化のみで定電流制御が可能となる。その結果、実施形態1の構成よりも切替電圧Vsを低くすることが可能であって、電池電圧の広範囲に亘って複合共振の動作を継続して充電電流を流すことが可能になる。すなわち、実施形態1の構成よりも効率を高めることができ、しかも雑音の発生を抑制することになる。
【0089】
スイッチ素子Qsのオンオフを切り替える電圧は、基準電圧Vrefにより設定される。充電時には電池電圧が時間経過に伴って上昇するから、図12のように、基準電圧Vrefに対応する電圧Vxを境界として駆動周波数が変化する。ただし、コンパレータCPにヒステリシスが付与されているから、電池電圧が基準電圧Vxの付近で変動しても、駆動周波数が変動(チャタリング)することはない。また、図12に特性cとして示すように、電池電圧が電圧Vxの前後である領域では効率は大きく変化せず、電池電圧が切替電圧Vs未満である第1の制御領域A1でのみ効率が低下する。
【0090】
充電電流を定電流とするために電池電圧に応じて駆動周波数を調節する場合、実施形態1において説明したように、電池電圧が高いほど電力非伝達期間τを長くするために、駆動周波数を低く設定する。したがって、上述した電圧Vxは、トランスTの二次巻線N2の両端からダイオードD1,D2を通して平滑コンデンサC4が充電される状態で、電力非伝達期間τがほぼ0になるときの電池電圧よりやや高い電圧に設定する。電池電圧が電圧Vxよりも低い領域では、スイッチ素子Qsがオフになり、トランスTの二次巻線N2の中間タップからダイオードD3,D4を通して平滑コンデンサC4が充電される。そのため、電池電圧が電圧Vx以上の領域とほぼ同様の範囲で駆動周波数を変化させることが可能になる。
【0091】
上述した動作により、第1の制御領域A1は、上述した各実施形態と同様に、一方のスイッチング素子Q1のみのオン期間が短くなり複合共振が生じないが、他方のスイッチング素子Q2のオン期間は複合共振を生じる程度の長さに設定される。また、電池電圧が切替電圧Vs以上である第2の制御領域A2では、オン期間の時比率が一定に保たれて、駆動周波数は第1の制御領域A1に対し比較的低いから、電池電圧にかかわらず複合共振の動作を行うことになり、高効率かつ低雑音の動作が可能になる。
【0092】
他の構成および動作は上述した各実施形態と同様であって、上述した本実施形態の特徴構成は、他の実施形態と組み合わせて用いることが可能である。上述の構成例では、二次巻線N2に2個の中間タップを設けているが、中間タップは偶数個であれば任意の個数設けることが可能である。
【0093】
なお、上述した各実施形態の充電装置は、ハーフブリッジ型のスイッチング電源を採用しているから、プシュプル型の構成と比較すると、トランスTの一次巻線に印加する電圧が略半分になる。つまり、一次巻線N1の巻数がプシュプル型のスイッチング電源よりも少なくなる。ハーフブリッジ型とプシュプル型とでトランスTの降圧比を一定とすると、一次巻線N1の巻数が少なくなれば、二次巻線N2の巻数も少なくなる。その結果、トランスTによる損失が低減され、トランスTの小型化に寄与する。ひいては、高効率かつ小型の充電装置を提供することが可能になる。
【0094】
また、上述した構成例では、スイッチング電源の入力電源が、交流電源ACをダイオードブリッジDBで整流し、平滑コンデンサC2で平滑した直流電源であるが、入力電源は他の構成の直流電源であってもよい。たとえば、太陽電池などの他の直流電源を用いてもよい。
【符号の説明】
【0095】
B 二次電池
C2 平滑コンデンサ(直流電源)
C4 平滑コンデンサ(整流平滑回路)
CN 充電制御回路
Cr コンデンサ(共振回路)
Cv ドレイン−ソース間容量(共振回路)
D1,D2 ダイオード(整流平滑回路)
DB ダイオードブリッジ(直流電源)
L1 インダクタ(整流平滑回路)
Lr インダクタ(共振回路)
Q1,Q2 スイッチング素子
R1,R2,R3 抵抗(状態検出回路)
SC スイッチ制御部
T トランス(共振回路)
T1 漏洩トランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源である直流電源の両端間に接続された2個のスイッチング素子の直列回路と、前記スイッチング素子のオンオフを制御する充電制御回路と、前記スイッチング素子のうちの一方に並列に接続されインダクタとトランスの一次巻線とコンデンサとの直列回路を備えた複合共振動作用の共振回路と、前記トランスの二次巻線の出力を整流平滑し二次電池に充電電流を供給する整流平滑回路と、前記二次電池の端子電圧である電池電圧および前記二次電池に流す充電電流を検出する状態検出回路とを備え、前記充電制御回路は、前記インダクタと前記トランスの前記一次巻線と前記コンデンサとで決まる共振周波数よりも高い周波数範囲で電力非伝達期間を形成しながら前記2個の前記スイッチング素子のオンオフを制御するとともに、充電が開始されてから前記状態検出回路が検出した電池電圧が規定の目標電圧に達するまでは充電電流が定電流になり、電池電圧が前記目標電圧に達していると定電圧で充電するように、前記スイッチング素子のオンオフを制御し、さらに、充電電流を定電流とする期間において、電池電圧に応じた切替電圧を設け、電池電圧が当該切替電圧未満である第1の制御領域において、電池電圧が低いほど前記2個の前記スイッチング素子の一方のオン期間を一定として他方のオン期間を短くして時比率を変化させ、電池電圧が当該切替電圧以上である第2の制御領域において、前記2個の前記スイッチング素子のオン期間が等しくなるように時比率を一定としながら、電池電圧が高いほど前記スイッチング素子の駆動周波数を引き下げることを特徴とする充電装置。
【請求項2】
前記充電制御回路は、前記第1の制御領域において、前記状態検出回路が検出した電池電圧にかかわらず前記スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほど前記スイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くして相対的に時比率を制御することを特徴とする請求項1記載の充電装置。
【請求項3】
前記充電制御回路は、前記第1の制御領域において、前記状態検出回路が検出した電池電圧が規定の閾値電圧以上である領域においては、前記スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほど前記スイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くし、電池電圧が閾値電圧未満である領域においては、前記スイッチング素子の前記他方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほど前記スイッチング素子の前記一方のオン期間を長くあるいは短くすることを特徴とする請求項1記載の充電装置。
【請求項4】
満充電時の電池電圧が異なる複数種類の二次電池に適合する充電装置であって、前記充電制御回路は、前記第2の制御領域において、前記二次電池の仕様ごとに定めた充電電流が流れるように、前記スイッチング素子の駆動周波数を変化させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項5】
前記充電制御回路は、電池電圧が前記目標電圧に達した後、前記2個の前記スイッチング素子のオン期間が等しくなる状態で時間の経過とともに駆動周波数を高くして充電電流を低減させ、少なくとも電力非伝達期間が消滅する時点から、前記スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、充電電流が少ないほど前記スイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項6】
前記充電制御回路は、電池電圧が前記目標電圧に達した後、前記2個の前記スイッチング素子のオン期間が等しくなる状態で時間の経過とともに駆動周波数を高くして充電電流を低減させ、少なくとも電力非伝達期間が消滅する時点から、前記スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、充電電流が少ないほど前記スイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くするとともに、充電電流が規定の閾値電流未満である領域においては、前記スイッチング素子の前記他方のオン期間を一定に保ち、前記スイッチング素子の前記一方のオン期間を長くあるいは短くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項7】
前記充電制御回路は、電池電圧が前記目標電圧に達した後、前記スイッチング素子のオンオフ動作を間欠的に行って、充電電流を流す期間と停止させる期間とを設け、時間の経過とともに充電電流を停止させる期間を長くすることにより充電電流を低減させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項8】
前記トランスの前記二次巻線の両端からの出力を整流平滑する経路に挿入されたスイッチと、電池電圧が規定の電圧を超えるまでは前記スイッチをオフにして前記トランスの前記二次巻線に設けた中間タップからの出力を整流平滑させ、電池電圧が前記規定の電圧を超えると前記スイッチをオンにして前記トランスの前記二次巻線の両端からの出力を整流平滑させるスイッチ制御部とを備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項9】
前記トランスは漏洩トランスであって、前記インダクタは前記漏洩トランスの漏洩インダクタンスを用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項10】
前記二次電池はリチウムイオン電池であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項1】
入力電源である直流電源の両端間に接続された2個のスイッチング素子の直列回路と、前記スイッチング素子のオンオフを制御する充電制御回路と、前記スイッチング素子のうちの一方に並列に接続されインダクタとトランスの一次巻線とコンデンサとの直列回路を備えた複合共振動作用の共振回路と、前記トランスの二次巻線の出力を整流平滑し二次電池に充電電流を供給する整流平滑回路と、前記二次電池の端子電圧である電池電圧および前記二次電池に流す充電電流を検出する状態検出回路とを備え、前記充電制御回路は、前記インダクタと前記トランスの前記一次巻線と前記コンデンサとで決まる共振周波数よりも高い周波数範囲で電力非伝達期間を形成しながら前記2個の前記スイッチング素子のオンオフを制御するとともに、充電が開始されてから前記状態検出回路が検出した電池電圧が規定の目標電圧に達するまでは充電電流が定電流になり、電池電圧が前記目標電圧に達していると定電圧で充電するように、前記スイッチング素子のオンオフを制御し、さらに、充電電流を定電流とする期間において、電池電圧に応じた切替電圧を設け、電池電圧が当該切替電圧未満である第1の制御領域において、電池電圧が低いほど前記2個の前記スイッチング素子の一方のオン期間を一定として他方のオン期間を短くして時比率を変化させ、電池電圧が当該切替電圧以上である第2の制御領域において、前記2個の前記スイッチング素子のオン期間が等しくなるように時比率を一定としながら、電池電圧が高いほど前記スイッチング素子の駆動周波数を引き下げることを特徴とする充電装置。
【請求項2】
前記充電制御回路は、前記第1の制御領域において、前記状態検出回路が検出した電池電圧にかかわらず前記スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほど前記スイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くして相対的に時比率を制御することを特徴とする請求項1記載の充電装置。
【請求項3】
前記充電制御回路は、前記第1の制御領域において、前記状態検出回路が検出した電池電圧が規定の閾値電圧以上である領域においては、前記スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほど前記スイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くし、電池電圧が閾値電圧未満である領域においては、前記スイッチング素子の前記他方のオン期間を一定に保ち、電池電圧が低いほど前記スイッチング素子の前記一方のオン期間を長くあるいは短くすることを特徴とする請求項1記載の充電装置。
【請求項4】
満充電時の電池電圧が異なる複数種類の二次電池に適合する充電装置であって、前記充電制御回路は、前記第2の制御領域において、前記二次電池の仕様ごとに定めた充電電流が流れるように、前記スイッチング素子の駆動周波数を変化させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項5】
前記充電制御回路は、電池電圧が前記目標電圧に達した後、前記2個の前記スイッチング素子のオン期間が等しくなる状態で時間の経過とともに駆動周波数を高くして充電電流を低減させ、少なくとも電力非伝達期間が消滅する時点から、前記スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、充電電流が少ないほど前記スイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項6】
前記充電制御回路は、電池電圧が前記目標電圧に達した後、前記2個の前記スイッチング素子のオン期間が等しくなる状態で時間の経過とともに駆動周波数を高くして充電電流を低減させ、少なくとも電力非伝達期間が消滅する時点から、前記スイッチング素子の一方のオン期間を一定に保ち、充電電流が少ないほど前記スイッチング素子の他方のオン期間を短くあるいは長くするとともに、充電電流が規定の閾値電流未満である領域においては、前記スイッチング素子の前記他方のオン期間を一定に保ち、前記スイッチング素子の前記一方のオン期間を長くあるいは短くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項7】
前記充電制御回路は、電池電圧が前記目標電圧に達した後、前記スイッチング素子のオンオフ動作を間欠的に行って、充電電流を流す期間と停止させる期間とを設け、時間の経過とともに充電電流を停止させる期間を長くすることにより充電電流を低減させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項8】
前記トランスの前記二次巻線の両端からの出力を整流平滑する経路に挿入されたスイッチと、電池電圧が規定の電圧を超えるまでは前記スイッチをオフにして前記トランスの前記二次巻線に設けた中間タップからの出力を整流平滑させ、電池電圧が前記規定の電圧を超えると前記スイッチをオンにして前記トランスの前記二次巻線の両端からの出力を整流平滑させるスイッチ制御部とを備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項9】
前記トランスは漏洩トランスであって、前記インダクタは前記漏洩トランスの漏洩インダクタンスを用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の充電装置。
【請求項10】
前記二次電池はリチウムイオン電池であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の充電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−5596(P2013−5596A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134411(P2011−134411)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]