説明

光コネクタ

【課題】安価かつ小型の構成で使い勝手が良く、さらに電気的接続と光学的接続とがほぼ同時に行われるようにしてこれら接続が確実に実行および認識されるような光コネクタを提供する。
【解決手段】配線用光コード105から引き出された光ファイバ素線107が挿入される孔および配線用光コード105から引き出されたメタル素線108が接続される導電部とを備える導線性フェルール101を有するプラグ100と、導電性フェルール101を収容するように電気的な絶縁性材料にて形成された割スリーブ202を有するアダプタ200と、を備え、割スリーブ202の中でアダプタ200の両方から二個のプラグ100が対向しつつ嵌挿されて両側の導線性フェルール101の先端で光学的な接続と電気的な接続とが略同時になされるような光コネクタとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学接続部と電気接続部とを共に接続するような光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
配線盤では接続ミスが起こりやすいことからその対策が必要となっている。そのような接続ミス対策を施した配線盤の従来技術例として、例えば、特許文献1(特開平6−260235号公報,発明の名称「配線接続装置及び配線接続方法」)が知られている。この先行技術文献に記載された従来技術では、メタルケーブルをLED表示による誘導や、六線の中の一線を接続確認線として接続確認を行うものである。
【0003】
特許文献1に記載した従来技術では、六線の中の一線を接続確認線として接続確認を行っているが、近年ではメタルケーブルに換えて信号線として光コードを用いたいという要請がある。しかしながら、光コードによるパッチパネル盤の場合では単純に適用できないという事情があった。例えば、通信線と接続確認線との光コードを併走させた光接続ケーブルを用いるとすると、接続確認をできるようにするために接続確認線用の光コード、E/O変換器、O/E変換器などがポートの数だけ必要となって、コストが大幅に上昇するという問題があった。
【0004】
さらには、複数の光コードが併走する光接続ケーブルでは、一次側,二次側コネクタユニットにおいてコネクタを正確な位置で対向させる必要があるが、複数の光コードで折り曲げにくくなっている光接続ケーブルからの力によりコネクタ位置がずれて、光信号がうまく通信できなくなり、この点で接続ミスになるおそれもある。この接続ミスは一次側,二次側コネクタユニットにおいてコネクタが正しく接続されているため却って接続ミスの原因が分からず、管理を困難にするおそれもあった。
【0005】
そこで、本出願人は、光コードによる配線でも、低コストかつ接続ミスの発生を抑止するような光コネクタを考案し、実用新案登録出願を行った。この実用新案登録出願は、実用新案登録第3107377号として実用新案登録されており、特許文献2(実用新案登録第3107377号公報,考案の名称「光コネクタ」)に掲載されている。
特許文献2によれば、フェルールとメタル端子とを並列に設け、フェルールにより光学的な接続を、また、メタル端子により電気的な接続を同時に行えるようにしており、利便性を高めた光コネクタとしている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−260235号公報(段落番号0012〜0039,図1〜図4)
【特許文献2】実用新案登録第3107377号公報(段落番号0010〜0019,図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に掲載された考案は、電気信号により接続が確認できるようになり利便性を高めたものであるが、フェルールとメタル端子とを並列に設けた構成のため、フェルールの先端同士が突き合わされた時点とメタル端子の先端同士が接触した時点とが同じでなく、時間のずれが生じるという問題があった。確認動作時に電気的接続と光学的接続とを同時に確認できるようにしたいという要請があった。また、先端同士が確実に接触したときのみ接続の確認ができるようにしたいという要請もあった。さらにまた、光コネクタを大型化することなく電気的接続と光学的接続とを行いたいという要請もあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、安価かつ小型の構成で使い勝手が良く、さらに電気的接続と光学的接続とがほぼ同時に行われるようにしてこれら接続が確実に実行および認識されるような光コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る光コネクタは、
配線用光コードから引き出された光ファイバ素線およびメタル素線とそれぞれ接続されるとともに光ファイバ素線が挿入される孔とメタル素線が接続される導電部とを備える導線性フェルールと、導線性フェルールが収容されるプラグフレームと、プラグフレーム、配線用光コード、光ファイバ素線およびメタル素線を収容するカバーと、を有するプラグと、
導電性フェルールを収容するように電気的な絶縁性材料にて形成された割スリーブと、割スリーブが収容されるアダプタハウジングと、を有するアダプタと、
を備え、
アダプタの両方から二個のプラグが対向しつつ嵌挿されて両側の導線性フェルールの先端で光学的な接続と電気的な接続とが略同時になされることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る光コネクタは、
請求項1に記載の光コネクタにおいて、
前記プラグは突起を有し、また、前記アダプタはツメを有し、
これら突起の幅およびツメの幅は略等しい長さであり、その幅の長さは導電性フェルールの幅と略等しいか、または導電性フェルールの幅よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る光コネクタは、
請求項1または請求項2に記載の光コネクタにおいて、
前記プラグは位置決め突起を有し、および、前記アダプタはスロットを有し、
位置決め突起がスロットに嵌め込まれて、位置決めされつつ接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明によれば、安価かつ小型の構成で使い勝手が良く、さらに電気的接続と光学的接続とがほぼ同時に行われるようにしてこれら接続が確実に実行および認識されるような光コネクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態の光コネクタについて図に基づき以下に説明する。図1は本形態の光コネクタのプラグの構成図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図、図1(c)は側面図である。図2は本形態の光コネクタのアダプタの構成図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は側面図、図2(d)は斜視断面図である。図3は接続前の光コネクタの断面図である。図4は本形態の光コネクタのプラグの内部構造の斜視分解図である。図5は導電性フェルールによる光学的および電気的接続を説明する説明図であり、図5(a)は接続前状態の説明図、図5(b)は接続状態の説明図である。図1,図3,図4で示すプラグ100を、図2,図3で示すアダプタ200に接続する。実際はアダプタ200の両端からプラグ100を差し込んで使用することとなる。
【0014】
プラグ100は、図1で示すように、導電性フェルール101、カバー102、フード103、プラグフレーム104、配線用光コード105を備える。さらにプラグ100の内部は、図3,図4で示すように、抗張力体106、光ファイバ素線107、メタル素線108、かしめリング109、ストップリング110、スプリング111を備える。
【0015】
図3で示すように、配線用光コード105は外側被覆が除去された状態でフード103内に収容され、配線用光コード105の中から抗張力体106、光ファイバ素線107およびメタル素線108が引き出される。これら光ファイバ素線107およびメタル素線108は抗張力体106により覆われ、張力から保護されている。光ファイバ素線107は、導電性フェルール101の孔内に収容され、導電性フェルール101の端面で光ファイバ素線107の端面が露出して光学的に接続可能になされている。導電性フェルール101の端面とともに光ファイバ素線107の光学端面は研磨されて両端面がほぼ同一平面内にあるようにして平面度を向上させている。導電性フェルール101はスプリング111により付勢されており、導電性フェルール101に対して他の導電性フェルール(図示せず)が突き合わされて配置された場合にスプリング111の付勢力により、光ファイバ素線107の光学端面が常に接触して光学的に確実に接続される。また、機械的位置の相違を吸収する。
【0016】
一方、メタル素線108は、かしめリング109と電気的に接続される。図3,図4で示すようなかしめリング109、ストップリング110、スプリング111、導電性フェルール101は何れも金属製である。スプリング111を挿通した状態の導電性フェルール101をストップリング110に挿通させると、スプリング111はこのストップリング110で止まるが導電性フェルール101は突出する。ストップリング110から突出した導電性フェルール101に対して、かしめリング109でかしめを行うと、かしめリング109が抜け止めとして機能しつつ、導電性フェルール101は通常はスプリング111の付勢力によりストップリング110から離れるように付勢される。また、導電性フェルール101にストップリング110へ向かう方向の力が加わったときは、スプリング111が圧縮されつつ導電性フェルール101はストップリング110に向かう方向へ移動する。これらのような機械的な構造では全体が接触していることから電気的な導電体となり、メタル素線108と導電性フェルール101とは電気的に接続される。導線性フェルール101は、光ファイバ素線107が挿入される孔とメタル素線108が接続される導電部とを備えるものであるが、本形態では導線性フェルール101全体を金属製として構成したため、孔以外では全て導電部となる。
【0017】
プラグフレーム104には、図1(b),図3で示すように、穴部104aが設けられている。導線性フェルール101は穴部104a内に位置してプラグフレーム104により支持されている。
フード103およびプラグフレーム104は、カバー102により覆われる。カバー102には、図1(b),(c)で示すように、左右両側に二個の突起102aが、また図1(a),(b),(c)で示すように、上側に位置決め突起102bが配置されている。これら突起102aおよび位置決め突起102bは、アダプタ200に接続されるときに位置決め・固定を行うために用いられるものであり、説明を後述する。
【0018】
アダプタ200は、図2,図3で示すように、アダプタハウジング201、割スリーブ202を備えている。
アダプタハウジング201は、スロット201a、ツメ201b、フランジ部201c、角穴201dを備えている。二個のアダプタハウジング201のフランジ部201cを貼り合わせてアダプタ200を構成する。図3で示すように、このアダプタ200の中央に割スリーブ202が配置され、両端が角穴201d内に位置している。また、図2(a)で示すように、スロット201aが両方の開口部の上側(図2(a)では左右両側)に二個配置されている。また、図2(b)で示すように角穴201d内には、左右両側にツメ201bが配置されている。これらを用いる接続については後述する。
【0019】
続いてこれらプラグ100およびアダプタ200を接続して光コネクタを構成する点について説明する。図3で示す矢印A方向にプラグ100を差し込み、アダプタ200の角穴201d内にプラグ100を挿入する。この際、まず、アダプタ200のスロット201a内に、プラグ100の位置決め突起102bが嵌め込まれて位置決めがなされるため、上下を誤って誤接続することはない。
【0020】
続いてプラグ100が奥へ挿入されると導電性フェルール101が割スリーブ202の中へ配置される。この割スリーブ202は電気的な絶縁材料で形成されており、導電性フェルール101と割スリーブ202とで導通することはない。また、導電性フェルール101の外径と割スリーブ202の内径とがほぼ一致しており、導電性フェルール101はがたや緩みなどがなく滑らかに挿入される。これにより導電性フェルール101と割スリーブ202とで中心軸はほぼ一致し、さらに導電性フェルール101の先端面はこの中心軸に対して略垂直な面を維持する。最終的にアダプタ200のスロット201aの奥側で、プラグ100の位置決め突起102bが突き当たる。この際、プラグ100の突起102aが、アダプタ200のツメ201bに係止されて固定される。導電性フェルール101は割スリーブ202内に配置される。
【0021】
そして、図示しないがアダプタ200の反対側でもプラグ100が接続される。すると図5(a)で示すように導電性フェルール101の両端部は、その両先端面をほぼ平行面となるように維持した状態で近づき、最終的に図5(b)で示すように突き合わされて導電性フェルール101の光ファイバ素線107の先端面同士が光学的に接続されるとともに導電性フェルール101の導電部の先端面同士が接触して電気的に接続される。この際、スプリング111により、機械的位置のズレが吸収されつつ、また、最適な力で押圧される。このようにして両側のプラグ100がアダプタ200に嵌め込まれて電気的・光学的に接続される。
【0022】
なお本形態では、図3で示すように、プラグ100の突起102aの幅およびアダプタ200のツメ201bの上下方向の幅aは、略等しい長さであり、かつその長さは割スリーブ202の幅b(導電性フェルール10も同じ幅b)よりも長くして抜け止めを確実にしている。また、ツメ201bの上下方向の幅aは上下方向に長いため、上下方向の力が加わるような場合でも長い突起102aとツメ201bとで係止されるとともに、導電性フェルール101が割スリーブ202に緩みなく嵌挿されているため、導電性フェルール101は殆ど移動することなく、光学的接続および電気的接続を維持する。このような接続は少なくともaとbとの長さが同じならば良い。光コネクタはこのようなものである。
【0023】
以上本形態の光コネクタについて説明した。しかしながら、本形態では各種の変形形態が可能である。
本形態ではプラグ100では位置決め突起102bを上側のみ有し、また、アダプタ200ではスロット201aを上側にのみ有する構成とし、位置決め突起102bがスロット201aに嵌め込まれて位置決めされつつ接続される構成であった。
しかしながら、プラグ100では位置決め突起102bを下側のみ有し、また、アダプタ200ではスロット201aを下側にのみ有する構成とし、位置決め突起102bがスロット201aに嵌め込まれて位置決めされつつ接続される構成としても良い。
さらには、プラグ100の上下両側に位置決め突起102bを、アダプタ200の上下両側ではスロット201aを配置しても良い。この場合、位置決め突起102bとスロット201aの幅を異ならせて、上下誤って配置しないように配慮する。
【0024】
また、本形態の光コネクタでは光学的接続および電気的接続をそれぞれ一つずつ行う1心の光コネクタであるとして説明した。しかしながら、上記フェルールを2個配置したプラグ、および、上記割スリーブを2個配置したアダプタを用いる2心の光コネクタとしてもよい。また、3心,4心という複数心の光コネクタとしても良い。これら構成は適宜採用される。
【0025】
以上説明した光コネクタでは、接続とともに光学的接続と電気的接続がなされ、検出が容易な電気的接続がなされている場合には光学的接続がなされていると判断でき、光学的接続の有無を容易に検出できる。そして、その検出は光学的接続と電気的接続とでほぼ同時に行われ、特に電気的接続がなされていれば光学的接続も確実に行われるような構成としたため、信頼性も高く、確認時に使い勝手が良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を実施するための最良の形態の光コネクタのプラグの構成図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図、図1(c)は側面図である。
【図2】本発明を実施するための最良の形態の光コネクタのアダプタの構成図であって、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は側面図、図2(d)は斜視断面図である。
【図3】接続前の光コネクタの断面図である。
【図4】本発明を実施するための最良の形態の光コネクタのプラグの内部構造の斜視分解図である。
【図5】導電性フェルールによる光学的および電気的接続を説明する説明図であり、図5(a)は接続前状態の説明図、図5(b)は接続状態の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
100:プラグ
101:導電性フェルール
102:カバー
102a:突起
102b:位置決め突起
103:フード
104:プラグフレーム
104a:穴
105:配線用光コード
106:抗張力体
107:光ファイバ素線
108:メタル素線
109:かしめリング
110:ストップリング
111:スプリング
200:アダプタ
201:アダプタハウジング
201a:スロット
201b:ツメ
201c:フランジ部
201d:角穴
202:割スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線用光コードから引き出された光ファイバ素線およびメタル素線とそれぞれ接続されるとともに光ファイバ素線が挿入される孔とメタル素線が接続される導電部とを備える導線性フェルールと、導線性フェルールが収容されるプラグフレームと、プラグフレーム、配線用光コード、光ファイバ素線およびメタル素線を収容するカバーと、を有するプラグと、
導電性フェルールを収容するように電気的な絶縁性材料にて形成された割スリーブと、割スリーブが収容されるアダプタハウジングと、を有するアダプタと、
を備え、
アダプタの両方から二個のプラグが対向しつつ嵌挿されて両側の導線性フェルールの先端で光学的な接続と電気的な接続とが略同時になされることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の光コネクタにおいて、
前記プラグは突起を有し、また、前記アダプタはツメを有し、
これら突起の幅およびツメの幅は略等しい長さであり、その幅の長さは導電性フェルールの幅と略等しいか、または導電性フェルールの幅よりも大きいことを特徴とする光コネクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光コネクタにおいて、
前記プラグは位置決め突起を有し、および、前記アダプタはスロットを有し、
位置決め突起がスロットに嵌め込まれて、位置決めされつつ接続されることを特徴とする光コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−193251(P2007−193251A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13425(P2006−13425)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000145954)株式会社昭電 (22)
【Fターム(参考)】