説明

光センサおよび電子機器

【課題】回路規模が小さく且つ高ゲインを確保できる光センサを実現する。
【解決手段】光センサ1は、フォトダイオードPD1と、ダミーフォトダイオードPD2と、フォトダイオードPD1およびダミーフォトダイオードPD2の出力電流をそれぞれ電圧に変換するダイオードD1,PD2と、変換された電圧を差動演算する差動増幅器とを備えている。ダミーフォトダイオードPD2は、フォトダイオードPD1のリーク電流を受ける位置に配置され且つ遮光されている。ダミーフォトダイオードPD2にリーク電流が流れることにより、ダイオードD2の電位が持ち上がるので、フォトダイオードPD1側とダミーフォトダイオードPD側との電位差が抑えられて、光センサ1の誤動作を抑制できる。また、フォトダイオードへPD1の光入射時には、ダイオードD1により高ゲインが得られる。しかも、電流補償をすることなく特性を改善できるので、回路規模は増大しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知や物理量検出を光学的に行なうための受光回路を有する光センサおよびその光センサを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
物体検知に用いられるフォトンタラプタ等の光センサは、装置において、検知対象に向けて必要数配置されている。例えば、複写機では、機内のさまざまな箇所を移動する用紙を検知するため、光センサが数十個と多数使用されている。したがって、装置の価格上昇を抑えるため、より安価で高性能な光センサが求められる。
【0003】
その解決策として、特許文献1,2に開示されている技術が挙げられる。特許文献1,2に開示されている光センサは、受光回路において、2個のフォトダイオードを用い、各フォトダイオードからの受光電流を、ダイオードにて対数圧縮することで電圧に変換した後、差動比較することで、ゲインを確保している。この光センサでは、抵抗ではなく、ダイオードにて電流−電圧変換することにより、回路規模を縮小することができると考えられる。
【0004】
また、性能の改善に関しては、ノイズを抑制する技術が特許文献3〜5に開示されているようにダミーフォトダイオードを用いることが考えられる。
【0005】
特許文献3には、フォトダイオードに隣接するダミーフォトダイオード領域にポリシリコンによるPN接合を形成し、ノイズ成分と成り得る光を吸収することが開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、画素部から溢れ出た電荷を隣接するダミー用フォトダイオードにより捕らえて放出し、S/N比の低下を抑制することが開示されている。
【0007】
さらに、特許文献5には、差動アンプの入力部とダミーフォトダイオードとの間にノイズ信号増幅用のアンプ回路を挿入して、ノイズ耐量を大きくすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-294682号公報(2006年10月26日公開)
【特許文献2】特開昭57−142523号公報(1982年9月3日公開)
【特許文献3】特開2006−190857号公報(2006年7月20日公開)
【特許文献4】特開2009−182127号公報(2009年8月13日公開)
【特許文献5】特開平9−92874号公報(1997年4月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2に開示された光センサにおいては、両方のフォトダイオードに光が入り、ダイオードのインピーダンスが数MΩ以下になることを想定している。このため、片方のフォトダイオードを特許文献3〜5に開示されているようなダミーフォトダイオードとして用いると、逆にゲインが数十MΩ以上と高くなり過ぎることから、ノイズ等の誤動作や周波数特性の悪化をもたらす。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路規模が小さく且つ高ゲインを確保できる光センサを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る光センサは、上記の課題を解決するために、フォトダイオードと、該フォトダイオードのリーク電流を受ける位置に配置され且つ遮光されたダミーフォトダイオードと、上記フォトダイオードの出力電流を電圧に変換する第1ダイオードと、上記ダミーフォトダイオードの出力電流を電圧に変換する第2ダイオードと、上記第1ダイオードおよび上記第2ダイオードによって変換された電圧を差動演算する差動増幅器とを備えていることを特徴としている。
【0012】
回路規模を増大させずに、ダミーフォトダイオードへ接続されるダイオードのインピーダンスを下げるために、リーク電流を受ける位置に配置され且つ遮光されたダミーフォトダイオードを用いればよい。特許文献3,4には、フォトダイオード以外のICやフォトダイオードへのリーク電流を防ぐために、その間にダミーフォトダイオードを設けることが開示されている。これに対し、本発明では、フォトダイオードに隣接するダミーフォトダイオードには、フォトダイオードからのリーク電流を受けて微小電流が流れることを利用する。特許文献3,4では、ダミーフォトダイオードに流れるリーク電流を利用することについては開示されていない。
【0013】
このダミーフォトダイオードを用いることにより、光入力時にゲインを数MΩ程度に確保できるだけでなく、光入力時に第2ダイオードによるノイズ等の誤動作やゲインが高すぎることによる周波数特性の悪化を抑制できる。また、光ON/OFF時に伝播遅延の発生を抑えるために、フォトダイオードおよびダミーフォトダイオードによる両入力部に数nA程度の電流補償を行なっても良い。
【0014】
ここでこのフォトダイオード電流は例えば約10nAであり、ダミーフォトダイオード電流は約1nA条件にて光検知すると想定する。10nAであれば第1ダイオードにより、約2.6MΩのゲインが得られる。また、1nAのダミーフォトダイオード電流が流れることにより、図3に示すように、第2ダイオードの電圧は0バイアスから約0.47Vまで電位が持ち上がり、フォトダイオード側との電位差が数十mVに抑えられる。これにより、電位のアンバランスが解消されるので、ゲインが高すぎることによる光センサの誤動作等を抑制できる。また、両入力部に電流補償を実施した場合は、無入力時の電圧が電流補償分だけ持ち上がることになる。
【0015】
上記光センサは、定電流が流れる第1MOSトランジスタおよび第2MOSトランジスタを備え、上記フォトダイオードおよび上記ダミーフォトダイオードのアノードが接地され、上記フォトダイオードおよび上記第1ダイオードのカソードは上記第1MOSトランジスタのゲートと接続され、上記第1ダイオードのアノードが上記第1MOSトランジスタのドレインと接続され、上記ダミーフォトダイオードおよび上記第2ダイオードのカソードが上記第2MOSトランジスタのゲートと接続され、上記第2ダイオードのアノードが上記第2MOSトランジスタのドレインと接続されていることが好ましい。
【0016】
特許文献3に開示されている回路では、ダイオードをバイポーラトランジスタに接続していることにより、ベース電流が流れるため、上記ダイオードは0バイアスとならずにゲインが低くなる。
【0017】
これに対し、上記のように、第1および第2ダイオードをそれぞれ第1および第2MOSトランジスタと接続することにより、フォトダイオード電流の無入力時に0バイアスが実現できる。これにより、負帰還回路が構成されるので、第1MOSトランジスタのドレイン電圧が、フォトダイオード電流が第1ダイオードにて電圧変換された電圧変動のみをモニターすることになる。この結果、光電変換を適正に実現でき、有益である。
【0018】
また、両入力部に電流補償を実施した場合は、電圧が0バイアスとはならず、電流補償分だけ持ち上がるので、電流補償を数nA程度に抑える必要がある。
【0019】
上記第1および第2MOSトランジスタを備えた光センサにおいて、上記第2MOSトランジスタのソースとグランドとの間に接続される抵抗を備えていることが好ましい。
【0020】
前述のフォトダイオード電流が約10nAであると想定された場合、ダミーフォトダイオード電流が100pA以下とさらに微小となる場合、接続される差動演算器の入力電位差が大きくなりすぎ、光がほぼ無入力時にも検知信号を出力することが考えられる。この場合、上記のような抵抗(ここでは数十kΩ程度の抵抗値を有する)を導入することにより、ダミーフォトダイオード側の入力電圧を無入力時に増大させて、かさ上げしておくことができる。これにより、誤検知を抑制できるので、有益である。
【0021】
特許文献5には、差動アンプへの入力部とダミーフォトダイオードとの間にノイズ信号増幅用アンプ回路を挿入することが開示されている。これに対し、上記のように抵抗を導入することにより、ダイオードを用いた電流−電圧変換器における能力を変更するものであり、ノイズ信号増幅用のアンプを導入するものではない。特許文献5に開示された回路では、電流−電圧変換器に抵抗を用いているため、上記のように抵抗を導入すると、電位変動が大きくなってしまい、光センサとしての動作範囲が大幅に狭くなって特性が悪化する。
【0022】
上記第1および第2MOSトランジスタを備えた光センサにおいて、上記第2MOSトランジスタに流れる定電流の値が上記第1MOSトランジスタに流れる定電流の値より大きいことが好ましい。
【0023】
上記の抵抗の代わりに、第1MOSトランジスタに流れる定電流の値を上記のように大きくすることで、ゲート−ソース間の電位が上がり、ダミーフォトダイオード側の入力電圧を無入力時に増大させて、かさ上げしておくことが可能となる。これにより、抵抗のバラツキを考慮する必要がなくなり、有益である。
【0024】
本発明は、ダイオードを用いた電流−電圧変換器における能力を電流増加により変更するものであり、前述の特許文献5に開示されたノイズ信号増幅用アンプ回路を挿入するものとは異なる。特許文献5に開示された回路では、電流−電圧変換器に抵抗を用いており、上記のように定電流を大きくすると、電位変動が大きくなるため、光センサとしての動作範囲が大幅に狭くなり特性が悪化する。
【0025】
上記第1および第2MOSトランジスタを備えた光センサにおいて、上記第1ダイオードと並列に接続される第1コンデンサと、上記第2ダイオードと並列に接続される第2コンデンサとを備え、上記第1コンデンサおよび上記第2コンデンサがポリシリコン−拡散容量からなることが好ましい。ポリシリコンは、MOSトランジスタで使われるゲート部に相当する。
【0026】
0バイアスから光入力により変動させるダイオードは、光電流量により、大きく周波数特性が変動する。そこで、ポリシリコン−拡散容量からなる第1および第2コンデンサをそれぞれ第1および第2ダイオードと併置することで、第1および第2ダイオードの電位により、第1および第2コンデンサの容量値が変動する。これにより、周波数特性の変動を相殺できるので、有益である。
【0027】
また、窒化膜容量などに対して、ポリシリコンおよびP拡散もしくはN拡散で容量を形成できることから、MOSトランジスタを形成する工程と同じ工程で形成できるため、光センサのICを作製する工程を削減でき、有益である。
【0028】
上記光センサは、上記ダミーフォトダイオードと並列に接続されるコンデンサを備えていることが好ましい。
【0029】
フォトダイオード周囲を囲むダミーフォトダイオードはフォトダイオードの容量値と一致させるためには大きな面積が必要となる。このため、ダミーフォトダイオードと並列にコンデンサを設置することで、フォトダイオードとの容量値の整合を図ることが可能となり、ノイズ特性等の耐性を向上させることが可能となり、有益である。
【0030】
容量形成には、他の素子との絶縁のため、容量周囲に分離用の拡散等の形成が必要である。したがって、分離部も含めた総面積を小さくするためには、分離面積を少なくするように、四角形にするなど簡易な形で、別素子で容量を形成することが望ましい。また、フォトダイオードを形成するPN接合容量に対し、リーク電流が流れないことや、逆バイアスによる誤動作が発生しないことからも、ポリシリコン−拡散容量によって容量を形成することが望ましい。
【0031】
本発明に係る電子機器は、上記のいずれかの光センサを備えていることを特徴としている。これにより、回路規模がより小さく、高ゲインを確保することができる光センサを配置することができる。したがって、電子機器における光センサの占有容積を小さくし、且つ電子機器の機能を向上させることができるので、有益である。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、上記のように構成されることにより、回路規模が小さく、かつ高ゲインの光センサを実現することができるという効果を奏する。また、本発明により、光センサを備える電子機器の大型化の抑制および高機能化を容易に図ることができ、特に、当該光センサを多数備える電子機器においては、その効果が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態1に係る光センサの受光回路の構成を示す回路図である。
【図2】(a)は図1の光センサを含む各実施形態の光センサが共通して有するフォトダイオードおよびダミーフォトダイオードの構成を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線矢視断面図である。
【図3】図1の光センサを含む各実施形態の光センサにおける受光回路のダイオードの特性を示すグラフである。
【図4】(a)は図1の光センサを含む各実施形態の光センサにおける受光回路の抵抗値−ダイオード電位異存特性を示すグラフであり、(b)は(a)のグラフを拡大したグラフである。
【図5】(a)は図1の光センサを含む各実施形態の光センサにおける受光回路の容量値−ダイオード電位異存特性を示すグラフであり、(b)は(a)のグラフを拡大したグラフである。
【図6】本発明の実施形態2に係る光センサの受光回路の構成を示す回路図である。
【図7】本発明の実施形態3に係る光センサの受光回路の構成を示す回路図である。
【図8】本発明の実施形態4に係る光センサの受光回路の構成を示す回路図である。
【図9】本発明の実施形態5に係る複写機の内部構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[実施形態1]
本発明の実施形態1について図1〜図5に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0035】
〔光センサの構成〕
図1は、本実施形態の光センサ1の受光回路の構成を示す。
【0036】
光センサ1は、発光回路(図示せず)および図1に示す受光回路を備えている。光センサ1の受光回路は、フォトダイオードPD1、ダミーフォトダイオードPD2、ダイオードD1,D2、pchMOSトランジスタTr1,Tr2(以降、単にpchトランジスタTr1,Tr2と称する)、nchMOSトランジスタTr3,Tr4(以降、単にnchトランジスタTr3,Tr4と称する)、抵抗R1〜R3、コンデンサC1,C2および定電流源CS1〜CS4を備えている。
【0037】
フォトダイオードPD1は、入射光の強度に応じた光電流を出力電流として発生する。ダミーフォトダイオードPD2は、後に詳しく説明するが、ダミーフォトダイオードPD2へ接続されるダイオードD2のインピーダンスを下げるために、直接の入射光によらず、フォトダイオードPD1からの微小なリーク電流により光電流として出力電流を発生するように遮光されている。
【0038】
フォトダイオードPD1のアノードは接地電位GNDが付与されるグランドに接続され(接地され)、カソードはnchトランジスタTr3(第1MOSトランジスタ)のゲートに接続される。同様に、ダイオードD1(第1ダイオード)のカソードもnchトランジスタTr3のゲートに接続される。nchトランジスタTr3のソースは接地され、ドレインはダイオードD1のアノードに接続される。ダイオードD1のアノードとカソードとの間にはコンデンサC1(第1コンデンサ)が接続される。また、定電流源CS3は、基準電位Vrefが付与される電源ラインとnchトランジスタTr3のドレインとの間に接続され、当該ドレインおよびダイオードD1のアノードに定電流I1を流す。
【0039】
ダイオードD1は、フォトダイオードPD1の光電流を対数圧縮することにより、電圧に変換する。また、nchトランジスタTr3は、ダイオードD1で変換された電圧を増幅する。
【0040】
一方、ダミーフォトダイオードPD2のアノードは接地され、カソードはnchトランジスタTr4(第2MOSトランジスタ)のゲートに接続される。同様に、ダイオードD2(第2ダイオード)のカソードもnchトランジスタTr4のゲートに接続される。nchトランジスタTr4のソースは接地され、ドレインはダイオードD2のアノードに接続される。ダイオードD2のアノードとカソードとの間にはコンデンサC2(第2コンデンサ)が接続される。また、定電流源CS4は、電源ラインとnchトランジスタTr4のドレインとの間には接続され、当該ドレインおよびダイオードD2のアノードに定電流I2(=I1)を流す。
【0041】
ダイオードD2は、ダミーフォトダイオードPD2の光電流を対数圧縮することにより、電圧に変換する。また、nchトランジスタTr4は、ダイオードD2で変換された電圧を増幅する。
【0042】
pchトランジスタTr1,Tr2、抵抗R1〜R3、定電流源CS1,CS2は、差動増幅器を構成している。この差動増幅器は、nchトランジスタTr3の出力電圧とnchトランジスタTr4の出力電圧との差を増幅して差動出力電圧を出力する。
【0043】
pchトランジスタTr1は、ゲートがnchトランジスタTr3のドレインに接続され、ドレインが抵抗R1を介して接地され、ソースが定電流源CS1を介して電源ラインに接続される。一方、pchトランジスタTr2は、ゲートがnchトランジスタTr4のドレインに接続され、ドレインが抵抗R2を介して接地され、ソースが定電流源CS2を介して電源ラインに接続される。また、定電流源CS1とpchトランジスタTr1のソースとの接続点、および定電流源CS2とpchトランジスタTr2のソースとの接続点の間には、抵抗R3が接続されている。
【0044】
上記の差動増幅器において、pchトランジスタTr1,Tr2のゲートがそれぞれ差動入力部となっている。また、抵抗R1とpchトランジスタTr1のドレインとの間から、差動出力電圧として正の値の出力電圧Vout1が出力される。一方、抵抗R2とpchトランジスタTr2のドレインとの間から、差動出力電圧として負の値の出力電圧Vout2が出力される。
【0045】
〔フォトダイオードおよびダミーフォトダイオードの構造〕
図2(a)は、本実施形態を含む各実施形態の光センサ1〜4(図1、図6、図7および図8参照)に共通して含まれるフォトダイオードPD1およびダミーフォトダイオードPD2の断面構造を示し、図2(b)は、図2(a)のA−A線矢視断面構造を示す。また、図3は、ダイオードD1,D2の特性(電圧−電流特性)を示す。
【0046】
図2(a)および(b)に示すように、フォトダイオードPD1およびダミーフォトダイオードPD2は、P基板11上に形成されており、ダミーフォトダイオードPD2がフォトダイオードPD1の周囲を取り囲むように配置されている。また、ダミーフォトダイオードPD2は遮光層12によって上部(受光面)が覆われているが、フォトダイオードPD1は上部が遮光層12に覆われておらず、光入射可能に形成されている。
【0047】
上記の構造では、フォトダイオードPD1への光入射によってP基板11にキャリアCAが発生する。一方、ダミーフォトダイオードPD2は、上部が遮光層12によって遮光されていても、上記のキャリアCAにより、フォトダイオードPD1側からの回り込み電流(リーク電流)を検出する。
【0048】
上記のように構成される光センサ1では、ダイオードD1の順方向への電流の入力部はフォトダイオードPD1のみと接続されているため、フォトダイオード電流の無入力時は、ダイオードD1の両端が0バイアスとなる。ここで、0バイアスとは0V〜数mV程度の電位差とする。このように、ダイオードD1で電流−電圧変換することにより、小面積にて適正なゲインを確保できるだけでなく、ノイズ等による光センサ1の誤動作を抑制できるので、有益である。また、電流補償をすることなく、特性を改善することができるので、補償用の電流を生成する必要がなく、さらに回路規模を増大させることがない。
【0049】
ここで、このフォトダイオード電流は約10nAであり、ダミーフォトダイオード電流は約1nAである条件にて光検知すると想定している。フォトダイオード電流が10nAであれば、ダイオードD1により、約2.6MΩのゲインが得られる。また、ダミーフォトダイオードPD2に1nAのダミーフォトダイオード電流が流れることで、図3に示すように、ダイオード電圧は0バイアスから約0.47Vまで電位が上昇する。これにより、ダミーフォトダイオードPD2側とフォトダイオードPD1側との電位差が数十mVに抑えられるので、電位のアンバランスが解消される。この結果、光センサ1の誤動作を抑制することができる。
【0050】
しかも、ダミーフォトダイオードPD2がフォトダイオードPD1の周囲を囲むことで、周辺回路へのリーク電流の防止を図ることもできる。
【0051】
なお、光ON/OFF時に伝播遅延の発生を抑えるために、フォトダイオードPD1およびダミーフォトダイオードPD2による両入力部に数nA程度の電流補償を行なっても良い。また、両入力部に電流補償を実施した場合は、無入力時の電圧が電流補償分だけ持ち上がることになる。
【0052】
上記のような効果は、後述する光センサ2〜4についても同様に得られることはもちろんである。
【0053】
なお、フォトダイオードPD1およびダミーフォトダイオードPD2の構造は、ダミーフォトダイオードPD2がフォトダイオードPD1からのリーク電流を受けられるような形状や配置であれば良いことはいうまでもない。したがって、上記の例では、ダミーフォトダイオードPD2がフォトダイオードPD1の周囲を囲む構造となっているが、この構造に限定されることはない。例えば、ダミーフォトダイオードPD2の一部が開放されることにより、コの字状やL字状に形成されていても良い。
【0054】
〔負帰還回路の構成〕
光センサ1において、フォトダイオードPD1のカソードと、ダイオードD1のカソードとがnchトランジスタTr3のゲートと接続され、ダイオードD1のアノードがnchトランジスタTr3のドレインと接続されることにより、負帰還回路が構成される。一方、ダミーフォトダイオードPD2のカソードと、ダイオードD2のカソードとがnchトランジスタTr4のゲートと接続され、ダイオードD2のアノードがnchトランジスタTr4のドレインと接続されることにより、負帰還回路が構成される。これにより、フォトダイオード電流の無入力時に0バイアスが実現できる。
【0055】
また、nchトランジスタTr3のゲート−ドレイン間電圧を一定に保つために、定電流I1を流源CS3からドレインに供給する。同様に、nchトランジスタTr4のゲート−ドレイン間電圧を一定に保つために、定電流I2を流源CS4からドレインに供給する。
【0056】
この結果、ドレイン電圧は、光電流がダイオードD1,D2にて変換された電圧の変動のみを適正にモニターできるので、有益である。
【0057】
なお、後述する光センサ2〜4も、上記の負帰還回路を有するので、上記と同様の効果が得られる。
【0058】
また、前述のように両入力部に電流補償を実施した場合は、電圧が0バイアスとはならず、電流補償分だけ持ち上がるので、電流補償を数nA程度に抑える必要がある。
【0059】
〔コンデンサの構成〕
前述のコンデンサC1,C2の容量値と、ダイオードD1,D2のインピーダンスとの積により、周波数特性が変動する。ダイオードD1,D2は、電流値によりインピーダンスが変動するため、コンデンサC1,C2の容量値もダイオード電位により変動することで、周波数特性の変動を抑えることができる。このため、コンデンサC1,C2は、ポリシリコン−拡散容量の変化を利用した可変容量コンデンサ(可変容量ダイオード)により構成されている。
【0060】
十分なゲインを確保するには、ダイオード電位を0.6V以下にする必要があり、その際のインピーダンス(抵抗)変動は図4(b)に示すように、0.2V〜0.6Vで約50%生じる。これに対し、ポリシリコン−拡散容量は、図5(b)に示すように、約50%変動する。このため、電位により相関は異なるものの、周波数変動を低く抑えることができるので、有益である。
【0061】
また、コンデンサC1,C2は、窒化膜容量などに対して、ポリシリコンおよびP拡散もしくはN拡散で容量を形成できることから、MOSトランジスタと同じ工程で形成することができるため、光センサ1のICを作製する工程を削減できるので、有益である。
【0062】
なお、後述する光センサ2〜4も、コンデンサC1,C2が同様に構成されているので、上記と同様の効果が得られる。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
[実施形態2]
本発明の実施形態2について図3,図6に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0066】
なお、本実施形態を含む以降の実施形態3,4において、実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0067】
〔光センサの構成〕
図6は、本実施形態の光センサ2の受光回路の構成を示す。
【0068】
図6に示すように、光センサ2は、光センサ1にさらに抵抗R4を加えた構成となっている。抵抗R4は、nchトランジスタTr4のソースとグランドとの間に接続されている。
【0069】
実施形態1の光センサ1において、フォトダイオード電流が約10nAであり、ダミーフォトダイオード電流がさらに微小(100pA以下)である場合、差動演算器の入力電位差が大きくなりすぎて(図3から100mV以上)、フォトダイオードPD1側とダミーフォトダイオードPD2側との電位差が前述の数十mVの場合と比べてさらに広がってしまう。このため、光がほぼ無入力時にも光検知信号を出力することが考えられ、受光回路の設計尤度が低くなるという不都合がある。
【0070】
そこで、光センサ2においては、nchトランジスタTr4に定電流I2を数μA流すと想定すると、抵抗R4が数十kΩの抵抗値を有しておれば、抵抗R4において〜0.4V程度の電位が得られる。ダミーフォトダイオード電流が、上記のように、より微小である場合、抵抗R4により電位を高めることで、図3に示すように、フォトダイオードPD1側とダミーフォトダイオードPD2側との電位差が数十mVに抑えられる。これにより、電位のアンバランスが解消されるので、光センサ2の誤動作を抑制することができる。
【0071】
なお、抵抗R4の抵抗値は、上記の例に限らず、定電流I2の値に応じて適宜設定されることはもちろんである。
【0072】
[実施形態3]
本発明の実施形態3について図7に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0073】
〔光センサの構成〕
図7は、本実施形態の光センサ3の受光回路の構成を示す。
【0074】
図7に示すように、光センサ3の受光回路は、光センサ1の受光回路と同等に構成されている。ただし、光センサ3においては、定電流源CS4は、定電流源CS3が流す定電流I1より大きい値の定電流I3を流すことが、光センサ1と異なる。
【0075】
このように、ダミーフォトダイオードPD2側の定電流I3を増大させることにより、nchトランジスタTr4のゲート−ソース間電位を〜0.4V程度上昇させることが可能となる。これにより、フォトダイオードPD1側とダミーフォトダイオードPD2側との電位差が数十mVに抑えられる。この結果、電位のアンバランスが解消されるので、光センサ3の誤動作を抑制することができる。
【0076】
定電流I3の値は、定電流I1の値より少しでも大きければ、nchトランジスタTr4のゲート−ソース間電位を持ち上げることができるが、より確実に持ち上げるためには2倍から7倍程度であることが好ましい。
【0077】
また、前述の光センサ2のように抵抗R4を必要としないので、抵抗4のバラツキを考慮する必要がなくなり、有益である。
【0078】
[実施形態4]
本発明の実施形態5について図8に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0079】
〔光センサの構成〕
図8は、本実施形態の光センサ4の受光回路の構成を示す。
【0080】
図8に示すように、光センサ4は、光センサ1にさらにコンデンサC3を加えた構成となっている。コンデンサC3は、ダミーフォトダイオードPD2と並列に接続されている。
【0081】
上記の構成では、フォトダイオードPD1の周囲を囲むダミーフォトダイオードPD2は、フォトダイオードPD1と同等の容量値を有するには大きな面積が必要となる。容量形成には、他の素子との絶縁のため、容量周囲に分離用の拡散等の形成が必要である。したがって、分離部も含めた総面積を小さくするためには、分離面積を少なくするように、四角形にするなど簡易な形で、別素子で容量を形成することが望ましい。また、フォトダイオードPD1を形成するPN接合容量に対し、リーク電流が流れないことや、逆バイアスによる誤動作が発生しないことからも、ポリシリコン−拡散容量によって容量を形成することが望ましい。
【0082】
そこで、ダミーフォトダイオードPD2と並列にコンデンサC3を設けることで、フォトダイオードPD1の容量値に近づけることが可能となる。このように、ダミーフォトダイオードPD2と並列にコンデンサC3を設けることにより、フォトダイオードPD1側とダミーフォトダイオードPD2側とで容量値の整合を図ることが可能となる。この結果、光センサ4の応答特性の変動を抑えたり、ノイズ特性を向上させたりすることが可能となるので、有益である。
【0083】
具体的には、例えば、フォトダイオードPD1の容量値が10pF前後であるとすると、ダミーフォトダイオードPD2の容量値は数pFとなるため、数pFの容量値を有するコンデンサC3を併置して、その和として10pFとなるよう容量値を合わせる。
【0084】
[実施形態5]
本発明の実施形態6について図9に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0085】
〔光センサの電子機器への適用〕
実施形態1〜4の光センサ1〜4は、物体の検知や各種の物理量の検出を光学的に行なう必要がある各種の電子機器に適用可能である。例えば、物体検知や物体動作速度を検出する装置として、高感度が必要とされるフォトインタラプタを用いている複写機、プリンタ、携帯機器、モーターを用いた電気製品等に光センサ1〜4を用いると好適である。また、煙センサ、近接センサ、測距センサ等で高感度を要するもの、もしくは光センサにおいて、十分な容積を確保できないもの等に光センサ1〜4を用いても好適である。
【0086】
〔複写機の構成〕
ここで、光センサを用いた電子機器の具体例として複写機について説明する。図9は、当該複写機の内部構成を示す正面図である。
【0087】
図9に示すように、複写機21は、本体22の上部に設けられた原稿台23に載置された用紙に光源ランプ24の光を照射し、原稿からの反射光をミラー群25およびレンズ26を介して帯電された感光体ドラム27に照射して露光する。また、複写機21は、露光により感光体ドラム24に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、手差し給紙トレイ28や給紙カセット29,30から搬送系31を介して供給される用紙に感光体ドラム27上のトナー像を転写させ、さらに定着装置32にてトナー像を定着させた後、本体22の外部に排出する。
【0088】
上記のように構成される複写機21においては、各部の位置や用紙の通過を検出するために光センサS1〜S12が配置されている。
【0089】
光センサS1〜S4は、原稿の光走査方向に移動するミラー群25の一部の位置を検出するために配置されている。光センサS5,S6は、ミラー群25の一部とともに移動するレンズ26の位置を検出するために配置されている。光センサS7は、感光体ドラム27の回転位置を検出するために配置されている。
【0090】
光センサS8は、手差し給紙トレイ28上の用紙の有無を検出するために配置されている。光センサS9は、上段の給紙カセット29からの給紙された用紙の搬送の有無を検出するために配置されている。光センサS10は、下段の給紙カセット30からの給紙された用紙の搬送の有無を検出するために配置されている。
【0091】
光センサS11は、感光体ドラム27からの用紙の分離を検出するために配置される。光センサS12は、複写機21の外部への用紙の排出を検出するために配置される。
【0092】
上記のように、複写機21は、多数の光センサS1〜S12を有している。そこで、これらの光センサS1〜S12として、前述の各実施形態の光センサ1〜4を用いることにより、光センサS1〜S12による複写機21の大型化抑制および高機能化を図ることができる。
【0093】
なお、上記の例では、便宜上、光センサS1〜S12を挙げて説明したが、実際の複写機には、より多数の光センサが用いられていることが多い。したがって、このような電子機器には、上記の効果がより顕著となる。
【0094】
[実施形態の総括]
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、物体検出、物体動作速度を検出する装置として、高感度が必要とされるフォトインタラプタを用いている複写機、プリンタ、携帯機器、モーターを用いた電気製品等に好適に利用することができる。また、本発明は、煙センサ、近接センサ、測距センサ等で高感度が必要なもの、もしくは光センサにおいて、十分な容積を確保できないもの等にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1〜4 光センサ
12 遮光層
21 複写機(電子機器)
C1 コンデンサ(第1コンデンサ)
C2 コンデンサ(第2コンデンサ)
C3 コンデンサ
CS1〜CS4 定電流源
D1 ダイオード(第1ダイオード)
D2 ダイオード(第2ダイオード)
I1〜I3 定電流
PD1 フォトダイオード
PD2 ダミーフォトダイオード
S1〜S12 光センサ
Tr1,Tr2 pchMOSトランジスタ
Tr3 nchMOSトランジスタ(第1MOSトランジスタ)
Tr4 nchMOSトランジスタ(第2MOSトランジスタ)
R1〜R4 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトダイオードと、
該フォトダイオードのリーク電流を受ける位置に配置され且つ遮光されたダミーフォトダイオードと、
上記フォトダイオードの出力電流を電圧に変換する第1ダイオードと、
上記ダミーフォトダイオードの出力電流を電圧に変換する第2ダイオードと、
上記第1ダイオードおよび上記第2ダイオードによって変換された電圧を差動演算する差動増幅器とを備えていることを特徴とする光センサ。
【請求項2】
定電流が流れる第1MOSトランジスタおよび第2MOSトランジスタを備え、
上記フォトダイオードおよび上記ダミーフォトダイオードのアノードは接地され、
上記フォトダイオードおよび上記第1ダイオードのカソードは上記第1MOSトランジスタのゲートと接続され、上記第1ダイオードのアノードは上記第1MOSトランジスタのドレインと接続され、
上記ダミーフォトダイオードおよび上記第2ダイオードのカソードは上記第2MOSトランジスタのゲートと接続され、上記第2ダイオードのアノードは上記第2MOSトランジスタのドレインと接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
上記第2MOSトランジスタのソースとグランドとの間に接続される抵抗を備えていることを特徴とする請求項2に記載の光センサ。
【請求項4】
上記第2MOSトランジスタに流れる定電流の値が上記第1MOSトランジスタに流れる定電流の値より大きいことを特徴とする請求項2に記載の光センサ。
【請求項5】
上記第1ダイオードと並列に接続される第1コンデンサと、
上記第2ダイオードと並列に接続される第2コンデンサとを備え、
上記第1コンデンサおよび上記第2コンデンサがポリシリコン−拡散容量からなることを特徴とする請求項2に記載の光センサ。
【請求項6】
上記ダミーフォトダイオードと並列に接続されるコンデンサを備えていることを特徴とする請求項1に記載の光センサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光センサを備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−89738(P2012−89738A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236403(P2010−236403)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】