説明

光ディスク装置及び光ディスク判別方法。

【課題】球面収差の補正が必要な光ディスクが多層化すると、1回のスィープ処理で層数を判別しようとすると、層数が増えるほど精度が劣化する。
【解決手段】所定の球面収差補正量に設定してレーザを点灯し、対物レンズをスイープさせ、2層以上、もしくは2層より多くの情報記録面があると判別された場合は、球面収差補正量を3層目以上の情報記録面に適するように変更し、対物レンズを再度スイープさせ、層数を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置における光ディスクの判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクには、BD(Blu−ray Disc)、DVD、CDなど、様々な媒体がある。光ディスク装置は、複数の媒体に対応するものが多く、挿入されたディスクが何であるかを判別する必要がある。BDでは、球面収差の影響が大きく、球面収差補正素子により、球面収差を所定のレベルまで補正しなければ、判別が困難である。特許文献1では、衝突防止のために、開口数の低い媒体から判別を行う方法を示しており、この際、球面収差を共に補正することについて述べられている。特許文献2では、球面収差の補正量を変えて2回以上対物レンズを駆動させるスィープ処理を行うことで、媒体の情報記録面の層数を判別する方法を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−311004号公報
【特許文献2】特開2006−344268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
BDを判別する際、球面収差をある程度補正しなければ、判別が困難である。また、媒体判別では、種類を判別するだけでなく、当該光ディスクの情報記録面の数も判別する必要がある。このとき、2層の光ディスクであれば、例えば2つの層の中間に相当する球面収差補正量で層数も含めて判別できるが、2層より多くの層を持つ光ディスクに対しては、2つの層の中間に相当する球面収差補正量でのみ判別を行うと、精度が劣化する。また、球面収差補正の状態を変えて、複数回スィープ処理を行う場合、層数判別の精度は上がるが判別のための時間が伸び、効率が劣化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
光ディスクが1層および2層については、高確率で判別できるような球面収差補正量にまず設定しておき、その状態でレーザをオンにし、対物レンズをスイープさせ、判別する。2層以上、もしくは2層より多くの情報記録面があると判別された場合は、球面収差補正量を3層目以上の情報記録面に適するように変更し、対物レンズをスイープさせ、層数を判別する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、球面収差の補正が必要な光ディスクの情報記録面の数が増加しても、高精度で且つ効率的に、その層数を判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スイープ処理における信号波形を示す図である。
【図3】スイープ処理における信号波形を示す図である。
【図4】情報記録面の層数の異なる光ディスクの断面概略図を示す図である。
【図5】4層ディスクに対するスィープ処理における信号波形を示す図である。
【図6】1層ディスクに対するスィープ処理における信号波形を示す図である。
【図7】4層ディスクに対するスィープ処理における信号波形を示す図である。
【図8】3層ディスクに対するスィープ処理と信号波形
【図9】本発明の実施例1における層数確認処理のフローチャートを示す図である。
【図10】4層ディスクに対するスィープ処理における信号波形を示す図である。
【図11】2層ディスクに対するスィープ処理における信号波形を示す図である。
【図12】4層ディスクに対するスィープ処理における信号波形を示す図である。
【図13】3層ディスクに対するスィープ処理における信号波形を示す図である。
【図14】本発明の実施例2における層数確認処理フローチャートを示す図である。
【図15】本発明の実施例3における層数確認処理のフローチャートを示す図である。
【図16】本発明の実施例4における層数確認処理フローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は本実施例による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。光ディスク100は、光ピックアップ110からのレーザ光の照射により情報の読み取り、消去、書き込みが行われるとともに、システム制御手段120からのスピンドルモータ駆動信号を受けたスピンドルモータ駆動手段121で駆動するスピンドルモータ101によって回転される。レーザ光源111から発光されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ116を透過し、球面収差補正素子115、ミラー117を介して対物レンズ113に入射し、光ディスク100の情報記録面に光スポットとして集光される。
【0010】
光ディスク100の情報記録面で反射したレーザ光は対物レンズ113、ミラー117、球面収差補正素子115を介して偏光ビームスプリッタ116で反射し、光検出器114に入射する。アクチュエータ112によって動かされる対物レンズ113で光ディスク100の情報記録面に光スポットとして集光され、光ディスク100の情報記録面で反射し、光検出器114で検出される。光検出器114で検出された信号から信号生成手段122でフォーカス誤差信号(FES)やトラッキング誤差信号、総和信号(PES)などが生成される。FESは公知の非点収差法やナイフエッジ法などによって生成されるフォーカス誤差信号であり、PESは反射光の和信号にローパスフィルタを通し、高周波成分を抑制した信号である。
【0011】
レーザ光には、球面収差補正素子115で、光ディスク100の情報記録面上での球面収差を補正させるために、球面収差を与える。球面収差補正素子115は、レンズ間距離が可変の2枚のレンズの組み合わせからなり、このレンズ間距離を変化させることにより、透過光束の球面収差を調整可能なビームエキスパンダである。但し、本発明における球面収差補正素子は、これに限るものではなく、例えば、同心円状パターンを有し、光束の内周部と外周部との間に位相差を与えることにより、球面収差を補正可能な液晶素子であってもよい。また、図示しないが、光ピックアップ110には他にも球面収差以外の収差補正や偏光を行うための素子が搭載されていてもよい。
【0012】
システム制御手段120に入力される信号で、フォーカス誤差信号は、光スポットと情報記録面との誤差量を示す信号として読み取られ、トラッキング誤差信号は、光ディスク情報記録面上に螺旋状に連なるピットや溝で形成されたトラックと光スポットとの半径方向の誤差量を示す信号として読み取られる。アクチュエータ112は、システム制御手段120からの出力される、フォーカス方向へアクチュエータを動かすためのフォーカス駆動信号(FDS)と、半径方向へアクチュエータを動かすためのトラッキング駆動信号を受けたアクチュエータ駆動手段123によって駆動され、対物レンズ113を、光ディスク100のフォーカス方向および半径方向に動かす。アクチュエータ112は、コマ収差を補正するために、チルト方向にも動くものであってもよい。球面収差補正素子115はシステム制御手段120から出力される信号を受ける球面収差補正素子駆動手段124によって駆動される。レーザ光源111は制御手段120から出力される信号を受けるレーザ駆動手段125によって制御される。
【0013】
図2は、対物レンズ113をフォーカス方向に動かすスィープ処理で、光ディスク100へ近付ける方向へ動かすアップスィープ処理によって、光スポットを光ディスク100の表面に近い側から順番に情報記録麺を通過させた場合のFESとPESの信号波形の様子を表す。光ディスク100は、情報記録面が4つあり、表面に近い方から、情報記録面A、情報記録面B、情報記録面C、情報記録面Dとする。このとき、球面収差補正素子115は、情報記録面Aで最適となるように球面収差を補正するような設定であるとする。
【0014】
図2に示すように、情報記録面Aから遠いほど球面収差の影響によって、FESやPESの信号振幅が劣化する。一方、図3は、球面収差補正素子115が情報記録面Dで最適となるように球面収差を補正するような設定とした場合に、スィープ処理をさせたときの波形図である。この場合は、図2とは異なり、情報記録面Dに対して表面側の情報記録面ほど球面収差の影響によって、FESやPESの信号振幅が劣化する。
【0015】
光ディスク100と同じタイプの媒体が4層以外に、1層、2層、3層などがある場合、どの光ディスクが挿入されたかを情報記録面の層数はFESやPESなどの振幅を検出して判別する。このとき、球面収差補正素子の設定がずれていると、正しく層数を判別できない可能性がある。例えば、BDでは、記録および再生を行う際、球面収差補正素子が必須であるが、BDには1層ディスクと2層ディスクがあり、1層と2層を判別するには所定の球面収差補正素子の設定にしておくことで判別できる。しかし、これが3層、4層と層数が増えたとき、上記の球面収差補正素子の設定で層数の判別をしようとすると精度が劣化する可能性がある。
【0016】
図4に、同じレーザ波長でデータを記録または再生されるが、情報記録面の層数が異なる4タイプの光ディスクを示す。図4に示す光ディスクは全て、レーザの照射される側の表面から最も遠い情報記録面が表面からほぼ同じ距離であるとする。光ディスク100は、図4に示す1層ディスク、2層ディスク、3層ディスク、4層ディスクのどれかであるとし、光ディスク装置がその中のどれであるかを判別する方法を以下に示す。
【0017】
図5に球面収差の補正量を、4層ディスクの情報記録面0と情報記録面1の間となるように球面収差補正素子を設定した場合に、4層ディスクに対して、レーザを照射させた状態で対物レンズ113をスィープさせたときの波形図を示す。本実施例では、FESやPESが所定の判定スレッショルドをよぎった数の情報記録面があると判定するとする。図5では、判定スレッショルドを2つよぎっているので、少なくとも情報記録面が2層はあると判別する。
【0018】
図6に球面収差の補正量を、図5の場合と同じにし、光ディスク100が1層ディスクであった場合に、対物レンズ113をスィープさせたときの波形図を示す。この場合、判定スレッショルドは1つしかよぎりを検出しない。そのため、情報記録面0のみの1層ディスクであると判別する。
【0019】
図7に球面収差の補正量を、4層ディスクの情報記録面2と情報記録面3の間となるように球面収差補正素子を設定した場合に、レーザを照射させた状態で対物レンズ113をスィープさせたときの波形図を示す。この場合、情報記録面2と情報記録面3の2つで判定スレッショルドをよぎっている。図5で2層はあると判別した後、図7の動作を実施することで、光ディスク100は4層ディスクであると判別する。
【0020】
図8に球面収差の補正量を、図5の場合と同じにし、光ディスク100が3層ディスクであった場合に、対物レンズ113をスィープさせたときの波形図を示す。この場合、図5と同じく、判定スレッショルドで2度よぎりを検出する。そのため、少なくとも情報記録面が2層はあると判別する。図示はしないが、この後、図7と同じ球面収差の補正量で、対物レンズ113をスィープさせたとき、判定スレッショルドを1つだけよぎることになり、光ディスク100が3層ディスクであると判別する。
【0021】
また、光ディスク100が2層であった場合、球面収差補正量が図8と同じ設定で、対物レンズ113をスィープさせたとき、3層ディスクと同じように、FESやPESは判定スレッショルドを2回よぎる。この後、図7と同じ球面収差の補正量にしたときには、判定スレッショルドをよぎらないため、2層ディスクであると判別できる。
【0022】
本実施例の動作について、フローチャートに表したものを図9に示す。まず球面収差補正素子を第1の補正量に設定する(ステップ9−1)。対物レンズ113をスィープさせ、情報記録面の層数を確認する(ステップ9−2)。情報記録面の数が2層以上と判別されたかどうかを判定する(ステップ9−3)。
【0023】
ステップ9−3で、2層以上と判別された場合は、球面収差補正素子115を第2の球面収差補正量に設定する(ステップ9−4)。対物レンズ113をスイープさせ、情報記録面の層数を確認する(ステップ9−5)。ステップ9−5で判別された層数とステップ9−2で判別された層数の和を光ディスク100の層数であると判別する(ステップ9−6)。ステップ9−3で、1層ディスクと判別された場合は、光ディスク100が1層ディスクであると判別する(ステップ9−6)。
【0024】
本実施例のように判別処理を行う方法によれば、例えば、所定のレーザ波長において、1回目のスィープ処理で光ディスクの情報記録面が2層以上であると判別された場合、当該所定のレーザ波長で、球面収差補正素子の補正量を変えて2回目のスィープ処理を行うことにより、1層ディスクについては、球面収差補正素子の設定及びスイ−プ処理が1回だけでよく、短時間で判別が可能となり、一方で複数層のディスクに対しては精度の良い判別を行なうことができる。すなわち、本実施例によれば、多層を含む光ディスクの判別を精度良く、且つ効率的に行なうことができるという効果がある。
【0025】
本実施例では、第1の球面収差補正量で判別できる情報記録面の数を1つもしくは2つ以上としたが、光ディスク100の情報記録面の層間距離の規格値や光学ピックアップ110の特性によっては、第1の球面収差補正量で判定スレッショルドを3つ以上よぎるように設定してもよい。この場合、判定スレッショルドをよぎる最大の層数より1つ少ない数までは第1の球面収差補正量で判別することができる。
【0026】
図5から図8の判定スレッショルドはそれぞれの値が同じであってもよいし、光ディスク100の情報記録面の層間距離の規格値や光学ピックアップ110の特性に合わせて異なってもよい。
【0027】
本実施例では、図4で示したように光ディスク100は表面から最も離れた情報記録面の距離がどの光ディスクもほぼ同じであるとしたが、最も離れた情報記録面の距離が異なっても同様の方法で判別可能である。
【0028】
本実施例では、第1の球面収差補正量と第2の球面収差補正量の2つの場合を示したが、第3の球面収差補正量など、光ディスク装置が対応する光ディスクの最大層数に応じて、さらに球面収差補正量の設定数を増やしてもよい。
【0029】
また、本判別処理を、最初の簡易的な判別処理とし、例えば、光ディスク100がBDであった場合、光ディスクの製造業者または作成者によってレーザカッティングされたBCA(Burst Cutting Area)と呼ばれる領域や、PIC(不変情報&制御データ: Permanent Information & Control data)領域、または記録トラックのウォブル形状内に記録層数が記録されている場合は、その情報を再生することで最終的に記録層数を確定してもよい。
【実施例2】
【0030】
本実施例における光ディスク装置は実施例1と同じく、図1に示す構成とする。また、光ディスク100は、所定のレーザ波長で記録および再生が可能な図4に示す1層ディスク、2層ディスク、3層ディスク、4層ディスクのどれかであるとし、光ディスク装置が挿入された光ディスク100がその中のどれであるかを判別する方法を以下に示す。
【0031】
図10に球面収差の補正量を、4層ディスクの情報記録面0と情報記録面1の間となるように球面収差補正素子を設定した場合に、4層ディスクに対して、レーザを照射させた状態で対物レンズ113をスィープさせたときの波形図を示す。本実施例では、少なくとも、FESが所定の判定スレッショルドAおよびPESが所定の判定スレッショルドCをよぎった数の情報記録面を光ディスク100が持つと判別するとする。図10では、FESが判定スレッショルドAを2つ、PESが判定スレッショルドCを2つよぎっているので、少なくとも情報記録面が2層はあると判別する。ここで、さらにスレッショルドAおよびスレッショルドCをよぎる以外のところで、FESが所定の判定スレッショルドBおよびPESが所定の判定スレッショルドDをよぎるっている。このとき、光ディスク100が3層以上であると判別する。
【0032】
図11に球面収差の補正量を、図10の場合と同じにし、光ディスク100が2層ディスクであった場合に、対物レンズ113をスィープさせたときの波形図を示す。この場合、FESが所定の判定スレッショルドAおよびPESが所定の判定スレッショルドCをよぎる数として2度検し、光ディスク100は2層以上であると判別する。一方、スレッショルドAおよびスレッショルドCをよぎる以外のところで、FESが所定の判定スレッショルドBおよびPESが所定の判定スレッショルドDをよぎるということを検出していない。そのため、光ディスク100は2層ディスクであると判別する。
【0033】
図12に球面収差の補正量を、4層ディスクの情報記録面2と情報記録面3の間となるように球面収差補正素子を設定した場合に、レーザを照射させた状態で対物レンズ113をスィープさせたときの波形図を示す。この場合、情報記録面2と情報記録面3の2つで、FESが所定の判定スレッショルドAおよびPESが所定の判定スレッショルドCをよぎっている。図10で3層以上であると判別した後、図12の動作を実施することで、光ディスク100は4層ディスクであると判別する。
【0034】
図13に球面収差の補正量を、図10の場合と同じにし、光ディスク100が3層ディスクであった場合に、対物レンズ113をスィープさせたときの波形図を示す。この場合、図10と同じく、判定スレッショルドAおよび判定スレッショルドCで2度よぎりを検出する。また、さらにスレッショルドAおよびスレッショルドCをよぎる以外のところで、FESが所定の判定スレッショルドBおよびPESが所定の判定スレッショルドDをよぎるっていることを検出する。そのため、少なくとも情報記録面が3層以上であると判別する。図示はしないが、この後、図12と同じ球面収差の補正量で、対物レンズ113をスィープさせたとき、スレッショルドAおよびスレッショルドCを1つだけよぎることになり、光ディスク100が3層ディスクであると判別する。
【0035】
本実施例の動作について、フローチャートに表したものを図14に示す。まず、球面収差補正素子を第1の補正量に設定する(ステップ14−1)。対物レンズ113をスィープさせ、情報記録面の層数を確認する(ステップ14−2)。判定スレッショルドAおよび判定スレッショルドCより、情報記録面の数が2層以上であるかどうかを判定する(ステップ14−3)。ステップ14−3で、2層以上と判別された場合、スレッショルドBおよびスレッショルドDで、3層以上であるかどうかを判別する(ステップ14−4)。
【0036】
ステップ14−4で、3層以上であると判別された場合、球面収差補正素子115を第2球面収差補正量に設定する(ステップ14−5)。対物レンズ113をスイープさせ、判定スレッショルドAおよび判定スレッショルドCより、情報記録面の層数を確認する(ステップ14−6)。ステップ14−3とステップ14−6で判別された層数の和を光ディスク100の層数であると判別する(ステップ14−7)。
【0037】
ステップ14−4で3層以上でないと判別された場合、光ディスク100は2層ディスクであると判別する(ステップ14−7)。ステップ14−3で、1層ディスクと判別された場合は、光ディスク100が1層ディスクであると判別する(ステップ14−7)。
【0038】
本実施例によれば、例えば、所定のレーザ波長において、1回目のスィープ処理で光ディスクの情報記録面が3層以上であると判別された場合、当該所定のレーザ波長で、球面収差補正素子の補正量を変えて2回目のスィープ処理を行うことにより、1層ディスクと2層ディスクを第1の球面収差補正状態だけで判別できる。これより、例えば、BDやDVDなど1層と2層の光ディスクが規格化されている光ディスクに新たに3層以上の光ディスクが規格化された場合、現状市販されている2層までは短時間で迅速な判別が可能となる。
【0039】
本実施例では、FESおよびPESが所定の判定スレッショルドをよぎっている数を判別される層数とする場合について述べたが、FES、PESのどちらかが所定の判定スレッショルドをよぎった数を情報記録面の層数であるとする方法でも構わない。
【0040】
図10から図13の判定スレッショルドA、B、C、Dはそれぞれの値が同じであっても異なってもよい。
【実施例3】
【0041】
本実施例における光ディスク装置は実施例1と同じく、図1に示す構成とする。光ディスク100の情報記録面の層数がいくつであるかを判別する方法について述べる。実施例1や実施例2で述べてきたように、球面収差補正素子の補正量により、判別できる層が異なる。光ディスク100は、レーザ光源111のレーザ光により記録および再生が行われる。このとき、光ディスクの層数が異なると、記録および再生に最適なレーザパワーが異なる場合が多い。また層数だけでなく、1回記録、複数回記録、の媒体種別で異なる場合もある。複数の情報記録面を持つ光ディスクでは、情報記録面ごとに最適なレーザパワーが異なる場合がある可能性がある。
【0042】
光ディスク100を図2に示すような4層の光ディスクとする。球面収差補正素子115をSの設定にし、かつ、レーザパワーをXの設定としてスィープ処理を行い、FESとPESの信号を検出し、次に球面収差補正素子115をTの設定にし、かつレーザパワーをYの設定としてスィープ処理を行い、FESとPESの信号を検出するということを行う。球面収差補正素子がSで、かつ、レーザパワーがXの設定とは、少なくとも情報記録面Aおよび情報記録面BのFESとPESの信号振幅が検出できるものであり、球面収差補正素子がTの設定で、かつ、レーザパワーがYの設定とは、少なくとも情報記録面Cおよび情報記録面DのFESとPESの信号振幅が検出できるものである。
【0043】
この層数確認処理の動作について、フローチャートで表したものを図15に示す。まず、球面収差補正素子115を球面収差補正量Sに設定する(ステップ15−1)。また、レーザパワーをXに設定する(ステップ15−2)。対物レンズ113をスィープさせ、情報記録面の層数を確認する(ステップ15−3)。次に、球面収差補正素子115をT球面収差補正量に設定する(ステップ15−4)。レーザパワーをYに設定する(ステップ15−5)。対物レンズ113をスイープさせ、情報記録面の層数を確認する(ステップ15−6)。以上で、情報記録面の層数確認を終了する。ステップ15−3およびステップ15−6のスイープ処理は、対物レンズを上方向に動かすアップスィープでも下方向に動かすダウンスィープのどちらでもよい。また、ステップ15−3をアップスィープで行い、所定量スィープさせた後、その状態を保持し、ステップ15−4およびステップ15−5で球面収差補正素子115およびレーザパワーの設定を変え、ステップ15−6をダウンスィープで行う方法もある。またはその逆に、ステップ15−3をダウンスィープで行い、所定量スィープさせた後、その状態を保持し、ステップ15−4およびステップ15−5で球面収差補正素子115およびレーザパワーの設定を変え、ステップ15−6をアップスィープで行う方法でもよい。ちなみに、層数の判別後、それぞれの情報記録面において情報を記録または再生する場合、球面収差補正量はそれぞれの情報記録面に適した設定とする。レーザパワーについても同様に、フォーカス引き込みを行う情報記録面に適した設定とする。このとき、層数判別後、球面収差補正素子を駆動して、より最適な球面収差補正量を求める動作を行ってもよい。レーザパワーについても同様である。さらには、実施例4において詳細に説明をするが、例えば1回目のスィープ処理でのレーザ光のパワーXに対し、2回目のスィープ処理でのレーザ光のパワーYを強くすることにより、情報記録面の記録状態への影響を低減することができる。
【0044】
本実施例は2回のスィープ処理での判別方法を記したが、光ディスク装置が対応する光ディスクの最大層数に応じて、さらに設定およびスィープ処理を行う回数を増やしてもよい。
【0045】
本実施例の方法によれば、例えば、情報記録面を所定層数以上有する光ディスクの判別を行う場合、所定のレーザ波長において、前記対物レンズをフォーカス方向に動かすスィープ処理を、球面収差補正素子の補正量を変えると共に、レーザ光のパワーを変えて、複数回行うことにより、情報記録面のからの反射光量がより最適に近づき、精度よく情報記録面の層数を判別できる。
【実施例4】
【0046】
本実施例における光ディスク装置は実施例1と同じく、図1に示す構成とする。
また、実施例1で示した図9のフローチャートのように、2層以上の場合、球面収差補正素子の補正量を変え、2回スィープ処理を行うことで、情報記録面の層数を判別する方法について考える。実施例3で述べたように、光ディスクは情報記録面の層数が異なると、記録再生に適したレーザパワーが異なる。そのため、2層以上と判別された場合、2回目のスィープ処理では、1回目のスィープ処理とレーザパワーを変えて行うと、より精度よく媒体を判別することができる。
【0047】
本実施例の動作について、フローチャートに表したものを図16に示す。まず、球面収差補正素子を第1の補正量に設定する(ステップ16−1)。レーザ光源111をレーザ駆動手段125により、レーザパワーPでレーザ光を出力する(ステップ16−2)。対物レンズ113をスィープさせ、情報記録面の層数を確認する(ステップ16−3)。情報記録面の数が2層以上と判別されたかどうかを判定する(ステップ16−4)。ステップ16−4で、2層以上と判別された球面収差補正素子115を第2の球面収差補正量に設定する(ステップ16−5)。レーザ光源111をレーザ駆動手段125により、レーザパワーQでレーザ光を出力する(ステップ16−6)。対物レンズ113をスイープさせ、情報記録面の層数を確認する(ステップ16−7)。ステップ16−7で判別された層数とステップ16−3で判別された層数の和を光ディスク100の層数であると判別する(ステップ16−8)。ステップ16−4で、1層ディスクと判別された場合は、光ディスク100が1層ディスクであると判別する(ステップ16−8)。
【0048】
レーザ駆動手段125によって駆動されるレーザ光源より出力されるレーザ光の出力パワーについて述べる。最適なレーザパワーは層数によって異なる。その場合、最適なレーザパワーが最も低い光ディスクに合わせたレーザパワーで判別処理を行うことが望ましい。これにより、記録可能な光ディスクの場合、判別処理中に情報記録面の記録膜が反応して記録状態が変わることを、防ぐことができる。また、複数層の光ディスクでは、情報記録面で最適なレーザパワーが異なる可能性がある。例えば、4層ディスクでは、情報記録面2と情報記録面3で最適なレーザパワーが異なるかもしれない。この場合、それらのレーザパワーも含めて、最適なレーザパワーが最も低い情報記録面に合わせてレーザパワーを設定することが望ましい。
【0049】
一般的に層数が増えると、情報記録面の反射率が低くなる傾向にあるため、その場合、レーザパワーPに対し、レーザパワーQの方が強いことが望ましい。また、レーザパワーQにおいては、2層、3層、4層で最適レーザパワーが異なる可能性があり、この場合、最適なレーザパワーが最も低い情報記録面に合わせてレーザパワーを設定する。つまり、レーザパワーPは最適なレーザパワーの最も低い1層ディスクに合わせ、レーザパワーQは2層、3層、4層の中で、最適なレーザパワーが最も低い情報記録面に合わせる。これにより、精度の向上が図られるだけでなく、情報記録面の記録状態への影響を低減できる。それは、もし強いレーザパワーで情報記録面を通過した場合、通過部分の記録状態が反応して変わってしまう可能性があるからである。すなわち、例えば1回目のスィープ処理でのレーザ光のパワーに対し、2回目のスィープ処理でのレーザ光のパワーを強くすることにより、情報記録面の記録状態への影響を低減することができる。このことは、実施例3の構成においても同様に適用が可能である。
【0050】
但し、本実施例のように球面収差補正量がある層とある層の間に設定するようにしている場合は、レーザパワーが最も低い情報記録面のレーザパワーよりやや強めにして判別処理を行ってもよい。それは、球面収差補正量がずれている分焦点がぼやけており、記録状態への影響は少ないと考えられるためである。
【0051】
本実施例は、実施例1の図9に示すフローチャートの動作の別例として示したが、実施例2の図14に示すフローチャートに対しても同様の動作をさせることができる。
【0052】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
100…光ディスク、101…スピンドルモータ、110…光ピックアップ、111…レーザ光源、112…アクチュエータ、113…対物レンズ、114…光検出器、115…球面収差補正素子、120…システム制御手段、121…スピンドルモータ駆動手段、122…信号生成手段、123…アクチュエータ駆動手段、124…球面収差補正素子駆動手段、125…レーザ駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を用いて、光ディスクから情報を再生する、もしくは、光ディスクに情報を記録する光ディスク装置であって、
レーザ光を集光させる対物レンズと、
前記対物レンズを駆動するアクチュエータと、
光ディスクからの反射光を検出する検出器と、
前記検出器にて検出される反射光からフォーカス誤差信号を生成するフォーカス誤差信号生成手段と、
レーザ光に生じる球面収差を補正する球面収差補正素子と、
前記アクチュエータの制御を行うためのフォーカス駆動信号と前期球面収差補正素子の制御を行うための球面収差補正素子駆動信号の生成および出力を行う制御手段と、
前記フォーカス駆動信号を増幅させ、アクチュエータに電力を供給するアクチュエータ駆動手段と、
前記球面収差補正素子駆動信号を受け、球面収差補正素子の球面収差補正量を変える球面収差補正素子駆動手段、
を有し、
前記制御手段は、情報記録面を所定層数以上有する光ディスクの判別を行う場合、所定のレーザ波長において、前記対物レンズをフォーカス方向に動かすスィープ処理を、球面収差補正素子の補正量を変えて、複数回行うことを特徴とする、
光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記スィープ処理を、球面収差補正素子の補正量を変えると共に、レーザ光のパワーを変えて、複数回行うことを特徴とする、
光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記所定のレーザ波長において、1回目のスィープ処理で光ディスクの情報記録面が2層以上であると判別された場合、前記所定のレーザ波長で、球面収差補正素子の補正量を変えて2回目のスィープ処理を行うことを特徴とする、
光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記所定のレーザ波長において、1回目のスィープ処理で光ディスクの情報記録面が3層以上であると判別された場合、前記所定のレーザ波長で、球面収差補正素子の補正量を変えて2回目のスィープ処理を行うことを特徴とする、
光ディスク装置。
【請求項5】
請求項2に記載の光ディスクで装置であって、
1回目のスィープ処理でのレーザ光のパワーに対し、2回目のスィープ処理でのレーザ光のパワーの方が強いことを特徴とする、
光ディスク装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
レーザ光のパワーは、判別する光ディスクの中で最適なレーザ光のパワーが最も小さい情報記録面に合わせて設定することを特徴とする、
光ディスク装置。
【請求項7】
レーザ光を用いて、光ディスクから情報を再生する、もしくは、光ディスクに情報を記録する光ディスク装置における光ディスク判別方法であって、
レーザ光を集光させる対物レンズと、
前記対物レンズを駆動するアクチュエータと、
光ディスクからの反射光を検出する検出器と、
前記検出器にて検出される反射光からフォーカス誤差信号を生成するフォーカス誤差信号生成手段と、
レーザ光に生じる球面収差を補正する球面収差補正素子と、
前記アクチュエータの制御を行うためのフォーカス駆動信号と前期球面収差補正素子の制御を行うための球面収差補正素子駆動信号の生成および出力を行う制御手段と、
前記フォーカス駆動信号を増幅させ、アクチュエータに電力を供給するアクチュエータ駆動手段と、
前記球面収差補正素子駆動信号を受け、球面収差補正素子の補正量を変える球面収差補正素子駆動手段、
を用い、
前記制御手段は、情報記録面を所定層数以上有する光ディスクの判別を行う場合、所定のレーザ波長において、前記対物レンズをフォーカス方向に動かすスィープ処理を、球面収差補正素子の補正量を変えて、複数回行うことを特徴とする、
光ディスク判別方法。
【請求項8】
請求項7に記載の光ディスク判別方法であって、
前記スィープ処理を、球面収差補正素子の補正量を変えると共に、レーザ光のパワーを変えて、複数回行うことを特徴とする、
光ディスク判別方法。
【請求項9】
請求項7に記載の光ディスク判別方法であって、
前記所定のレーザ波長において、1回目のスィープ処理で光ディスクの情報記録面が2層以上であると判別された場合、前記所定のレーザ波長で、球面収差補正素子の補正量を変えて2回目のスィープ処理を行うことを特徴とする、
光ディスク判別方法。
【請求項10】
請求項7に記載の光ディスク判別方法であって、
前記所定のレーザ波長において、1回目のスィープ処理で光ディスクの情報記録面が3層以上であると判別された場合、前記所定のレーザ波長で、球面収差補正素子の補正量を変えて2回目のスィープ処理を行うことを特徴とする、
光ディスク判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−248978(P2011−248978A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123725(P2010−123725)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】