説明

光ディスク装置

【課題】光ディスク装置において、光ピックアップのアクチュエータの過電流検出時も、光ディスクのディスク面への傷付きをなくす。
【解決手段】アクチュエータの過電流を検出するとともに該検出結果の信号に基づきディスクモータに駆動停止とブレーキ力を働かせることを指示する過電流検出部を備え、記録または再生時にフォーカス制御状態でアクチュエータの過電流を検出したとき、光ディスクの回転数が減少し予め設定された値以下となるまでの間は、ディスクモータにブレーキ力を働かせた状態でアクチュエータを制御し、対物レンズをフォーカス制御オフでディスク面から離間した退避状態にし、光ディスクの回転数が予め設定された値以下となったとき、該退避状態を解除する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に係り、特に、光ピックアップ内におけるアクチュエータの電流を監視する機能を備えた光ディスク装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する従来技術であって特許文献に記載されたものとしては、例えば、特開平9−305981号公報(特許文献1)、特開2006−79783号公報(特許文献2)及び特開平7−129978号公報(特許文献3)に記載された技術がある。特開平9−305981号公報には、光ディスク装置において、フォーカスロック外れが検出され、再びフォーカスサーチを行い、フォーカス引き込みを行うとき、対物レンズが光ディスクに衝突するのを回避するために、対物レンズが光ディスク方向に移動しないように当該対物レンズの位置を制御するとともに、光ピックアップを元のトラック位置に移動させるとした技術が記載されている。特開2006−79783号公報には、光ディスク装置において、光ディスクのローディング時またはアンローディング時など、レーザ出力がオフされ、フォーカスサーボに関した動作が行われないとき、対物レンズがディスク面から離れた位置で維持されるようにするとした技術が記載され、例えば、光ディスクのローディング時には、ローディング終了後、スピンドルモータの回転が規定の回転速度に到達したことを確認してから、レーザをオン状態にし、衝突回避モードを解除してフォーカスサーチを開始し、アンローディング時には、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボをオフした後、衝突回避モードをオン状態にし、その後、レーザをオフし、スピンドルモータの回転が完全に停止した後、アンローディング動作を開始し、光ディスクが対物レンズに衝突しない安全な位置に移動したことを確認したときに、衝突回避モードを解除するとした技術が記載されている。特開平7−129978号公報には、光ディスク装置において、振動や衝撃が加わった場合に光ヘッドが光ディスクに衝突しないようにするために、フォーカスサーボの制御動作中、対物レンズが光ディスクに異常接近する状態を検知して、異常接近した場合には、対物レンズを光ディスクから引き離す方向に強制的に駆動するとした技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−305981号公報
【特許文献2】特開2006−79783号公報
【特許文献3】特開平7−129978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば青系レーザ光を用いて記録や再生を行う光ディスクなどの高容量の光ディスクでは、光ピックアップの対物レンズの先端と光ディスクの記録面側の表面(以下、ディスク面という)との間の距離(対向ギャップ)が短くされた状態で情報の記録または再生が行われる。このため、光ディスク装置で記録または再生中に光ピックアップのアクチュエータに過電流が流れ、アクチュエータが対物レンズの特にフォーカス方向の移動制御がオフされた場合には、光ディスクの回転中に、例えば光ディスク面の面振れなどに起因して、対物レンズの先端のプロテクタ部とディスク面とが接触してしまい、光ディスク面に傷が付く。ディスク面の面振れ量は光ディスクの外周側位置ほど大きいため、対物レンズ位置が該外周側位置にある場合ほど、対物レンズの先端がディスク面に接触し易い。また、接触による傷は、光ディスクが高速で回転している場合ほど大きくかつ深くなる。
【0005】
光ディスク2のディスク面に面振れがある場合、該光ディスク2は、回転時には、図5に示すように、回転により、そのディスク面2aの、対物レンズ5の先端のプロテクタ部からの距離が変化する。図5は、面振れにより、実線で示される位置Qと点線で示される位置Qとの間でディスク面位置が変化する場合を示し、位置Qではディスク面2aの、対物レンズ5の先端のプロテクタ部からの距離がdであったものが、位置Qではゼロとなり、ディスク面にプロテクタ部が接触する。アクチュエータの過電流が検出されず、光ディスク2に対し情報を記録または再生動作中の場合には、例えば上記距離dが位置Qにおいても確保されるように対物レンズ5の位置が制御される。
【0006】
上記特開平9−305981号公報記載の技術は、光ディスク装置において、ディスクが記録または再生のための所定の速度で回転している状態で対物レンズの回避と該回避状態の解除とを行う技術であって、例えば、アクチュエータに過電流が流れ、ディスクの回転が停止されるとき、回転停止までの減速回転状態においては対物レンズの回避動作は行われず、ディスクの面振れが大きい場合には、対物レンズのプロテクタ部とディスク面とが接触してしまうおそれがあると考えられる。また、特開2006−79783号公報記載の技術は、光ディスク装置において、フォーカスサーボがオフ状態で衝撃が検出されたときに対応する技術であって、しかもディスク回転が完全に停止するまでの期間は、対物レンズのディスク面への衝突を回避するために、フォーカスコイルに連続的に衝突回避電流を流すものである。このため、例えば、記録または再生動作中にすなわちフォーカスサーボがオン状態でアクチュエータの過電流が検出された場合などには対応不可能であると考えられる。また、特開平7−129978号公報記載の技術は、光ディスク装置において、フォーカスサーボの制御動作中に対物レンズがディスク面に異常接近するのを防ぐための技術であって、例えば、アクチュエータに過電流が流れ、その結果、フォーカスサーボの制御動作がオフされ、ディスクの回転が停止されるとき、回転停止までの減速回転状態においてはやはり、対物レンズの回避動作は行われず、ディスクの面振れが大きい場合には、対物レンズのプロテクタ部とディスク面とが接触してしまうことが考えられる。
【0007】
本発明の課題点は、上記従来技術の状況に鑑み、光ディスク装置において、光ピックアップのアクチュエータの過電流検出時、光ディスクの回転が停止またはこれに近い状態となるまでは、対物レンズまたは該レンズのプロテクタ部がディスク面に接触しないようにし、ディスク面への傷付きをなくすことである。
本発明の目的は、かかる課題点を解決し、信頼性が確保された光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題点を解決するために、本発明では、光ディスク装置において、光ピックアップのアクチュエータの過電流を検出するとともに、該検出結果の信号に基づきディスクモータに駆動停止とブレーキ力を働かせることを指示する過電流検出部と、光ディスクまたはディスクモータの回転数に対応した信号を形成し出力する回転数検出部と、過電流検出部から出力される第1の信号と回転数検出部から出力される第2の信号とに基づき作動し該第2の信号が基準レベル以下の場合に対物レンズのアクチュエータ制御の停止を指示する制御信号(ミュート信号)がアクチュエータ制御部に入力されるようにする第3の信号を形成する論理回路部と、を備え、記録または再生時にフォーカス制御状態でアクチュエータの過電流を検出したとき、光ディスクの回転数が減速し予め設定された値以下となるまでの間は、ディスクモータにブレーキ力を働かせた状態でアクチュエータを制御し、対物レンズをフォーカス制御オフでディスク面から離間した退避状態にし、光ディスクの回転数が予め設定された値以下となったとき、第3の信号に基づき、対物レンズの退避状態を解除する構成とする。対物レンズを該退避状態にするアクチュエータ制御は、光ディスクからの反射レーザ光によるRF信号のレベルが基準値以下となったときを起点に開始される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ピックアップ内のアクチュエータの電流監視機能を有する光ディスク装置において、光ピックアップのアクチュエータの過電流が検出され、該アクチュエータの制御がオフされた場合にも、対物レンズの当接による光ディスク記録面への傷付きを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
図1〜図4は、本発明の実施例の説明図である。図1は、本発明の実施例としての光ディスク装置の構成図、図2は、図1の光ディスク装置における光ピックアップ内の構成を説明する図、図3は、図1の光ディスク装置においてアクチュエータの過電流が検出されたときの各部の動作状態を示す図、図4は、図1の光ディスク装置においてアクチュエータの過電流が検出されたときの動作フロー図である。
【0011】
図1において、2は、情報の記録媒体としての光ディスク、3は、光ディスク2を回転駆動するディスクモータ、4は光ピックアップ、5は対物レンズ、11は、ディスクモータ3を回転駆動するとともに回転状態を制御するモータ制御部、12は、光ピックアップ4内のアクチュエータを制御し、上記対物レンズ5をフォーカス制御状態または光ディスク2のディスク面(対物レンズ5に対向する面)から離間した退避状態にするアクチュエータ制御部、13は、光ピックアップ4内でレーザ光を生成するレーザダイオードの駆動制御を行うレーザ制御部、14は、光ディスク2またはディスクモータ2の回転数を、例えばFG(Frequency Generator)(周波数発電器)やディスクモータ3の固定子コイルの逆起電力などに基づいて検出し、該検出した回転数が、予め設定してある基準値を超える場合には、第2の信号としての信号(以下、第2の信号という)Sを出力せず、該検出した回転数が該基準値以下の場合に、第2の信号Sを形成して出力する回転数検出部、15は、アクチュエータに過電流が流れたことを検出し該検出結果に対応した第1の信号としての信号(以下、第1の信号という)Sを形成して出力する過電流検出部、16は、光ディスク装置全体の制御を行う制御部としてのDSP(Digital Signal Processor)、161は、DSP16内に組み込まれたマイコン、17は、光ピックアップ4により光ディスク2からの反射レーザ光に基づき再生されたRF(Radio Frequency)信号を増幅したり、波形整形したりするアナログフロントエンド(以下、AFEという)、18は、上記過電流検出部15から出力される第1の信号Sと上記回転数検出部14から出力される第2の信号Sとに基づき、上記アクチュエータ制御部12へ上記アクチュエータ制御の停止を指示するための制御信号すなわちミュート信号Sの供給を行わせる第3の信号としての信号(以下、第3の信号という)Sを形成して出力する論理回路部である。上記過電流検出部15は、上記第1の信号Sを形成して出力するとともに、上記DSP16に対し、該第1の信号Sに基づき、上記ディスクモータ3にブレーキ力を働かせることを指示する制御信号が該DSP16から上記モータ制御部11に供給されるようにする。
【0012】
また、SW1は、上記DSP16と上記レーザ制御部13との間に設けられ、上記レーザダイオードをレーザ出力オンの状態にする制御信号すなわちイネーブル信号Sの、該DSP16から該レーザ制御部13への供給をオン、オフするスイッチ、SW2は、上記DSP16と上記アクチュエータ制御部12との間に設けられ、上記アクチュエータ制御の停止を指示するミュート信号Sの、該DSP16またはグランドから該アクチュエータ制御部12及びモータ制御部11への供給をオン、オフするスイッチ、SW3は、DSP16とモータ制御部11との間に設けられ、ディスクモータ3に駆動停止とブレーキ力を働かせることを指示する制御信号Sの、該DSP16から該モータ制御部11への供給をオン、オフするスイッチである。スイッチSW1、SW2、SW3はいずれも、半導体を用いた回路スイッチ等で構成するものとする。論理回路部18では、第2の信号Sは入力されずに第1の信号Sのみが入力される場合には、第3の信号Sを形成せず、第1の信号Sと第2の信号Sの双方が入力される場合に、第3の信号Sを形成して出力する構成を有するものとする。スイッチSW1、SW3は、過電流検出部15から出力される第1の信号Sによってオン、オフを制御され、スイッチSW2は、上記論理回路部18から出力される第3の信号Sによってオン、オフを制御されるものとする。スイッチSW1は、その内部において端子b側との接続がオン状態(閉鎖状態)にされたときに、イネーブル信号Sの、DSP16からレーザ制御部13への供給をオン状態にする。スイッチSW2は、その内部において端子b側との接続がオン状態(閉鎖状態)にされたときに、ミュート信号Sの、DSP16またはグランドからアクチュエータ制御部12及びモータ制御部11への供給をオン状態にする。スイッチSW3は、その内部において端子b側との接続がオン状態(閉鎖状態)にされたときに、ディスクモータ3に駆動停止とブレーキ力を働かせることとを指示する制御信号Sの、DSP16からモータ制御部11への供給をオン状態にする。
【0013】
また、図2において、6は、光ピックアップ4内に設けられたレーザダイオード、7は、同じくアクチュエータ、8は、光ピックアップ4内に設けられ、対物レンズ5を介し光ディスク2の記録面からの反射レーザ光を受光して電気信号に変換して出力する受光部、131は、レーザ制御部13内にあって上記レーザダイオードを駆動するレーザ駆動回路である。他の符号は、図1の場合と同じ構成要素を示す。
【0014】
上記図1、図2に示す構成において、スイッチSW1は、端子b側との接続がオン状態(閉鎖状態)とされているとき、レーザ駆動回路131がレーザダイオード6を駆動してレーザ出力オンの状態にするための制御信号すなわちイネーブル信号Sが、DSP16からレーザ制御部13へ供給され、また、端子a側との接続がオン状態(閉鎖状態)にされると、該イネーブル信号Sの、該DSP16から該レーザ制御部13への供給が断たれ、レーザ駆動回路131はレーザダイオード6を駆動せず、レーザ出力オフの状態となる。上記過電流検出部15から出力される上記第1の信号Sは、スイッチSW1の接続状態を、端子b側との接続がオフ状態(開放状態)、端子a側との接続がオン状態(閉鎖状態)となるように切替え、イネーブル信号Sの、DSP16からレーザ制御部13への供給が断たれる(オフされる)ようにする。
【0015】
スイッチSW2は、その内部において端子a側との接続がオン状態(閉鎖状態)にされているとき、アクチュエータ制御の停止を指示する制御信号すなわちミュート信号Sの、アクチュエータ制御部12への供給をオン状態とし、一方、端子b側との接続がオン状態(閉鎖状態)にされているときは、DSP16からアクチュエータ制御部12への、対物レンズ5のアクチュエータ制御を指示する制御信号すなわち対物レンズ5を退避状態にすることを指示する制御信号の供給をオン状態にする。対物レンズ5を該退避状態にするアクチュエータ制御は、光ディスク2からの反射レーザ光によるRF信号SRFのレベルが、予め設定された基準値以下となったときに開始される。該退避状態においては、対物レンズは、その先端部またはプロテクタが、光ディスク2のディスク面から、該光ディスク2の面振れ量よりも大きい距離離間した位置にあるようにされ、ディスク面と接触しない。また、端子b側との接続がオフ状態(開放状態)にされると、グランドからアクチュエータ制御部12へ上記ミュート信号Sが供給され、対物レンズ5の上記退避状態が解除される。上記論理回路部18から出力される上記第3の信号Sは、スイッチSW3の接続状態を、端子a側との接続がオン状態(閉鎖状態)、端子b側との接続がオフ状態(開放状態)となるように切替え、ミュート信号Sが、グランドからアクチュエータ制御部12へ供給されるようにする。
【0016】
上記構成において、光ディスク装置が光ディスク2に対し情報の記録または再生動作を行っているとき、過電流検出部15がアクチュエータの過電流を検出すると、該過電流検出部15は、第1の信号Sを形成して出力する。該第1の信号Sは、スイッチSW1とスイッチSW3と論理回路部18とDSP16に入力される。スイッチSW1は、第1の信号Sにより、端子a側との接続がオン状態(閉鎖状態)にされ、イネーブル信号Sの、DSP16からレーザ制御部13への供給が断たれ、レーザ駆動回路131はレーザダイオード6の駆動を停止し、レーザ出力はオフ状態になる。レーザ出力がオフ状態になることで、RF信号SRFのレベルも次第に減少する。このとき、DSP16内のマイコン161は、RF信号SRFのレベルを判別し、該レベルが、予め設定された基準値以下になった時点で、対物レンズ5を退避状態にするためのアクチュエータ制御をアクチュエータ制御部12に指示する制御信号をDSP16内で形成させる。該制御信号は、DSP16からアクチュエータ制御部12に入力され、対物レンズ5は退避状態にされる。また、スイッチSW3は、第1の信号Sにより、端子b側との接続がオフ状態(開放状態)にされ、ディスクモータ3に駆動停止とブレーキ力を働かせることとを指示する制御信号Sの、グランドからモータ制御部11への供給をオン状態にし、ディスクモータ3が駆動を停止されかつブレーキ力が働いた状態で光ディスク2の回転数を低減させるようにする。ディスクモータ3にブレーキ力を働かせる手段としては、例えば、ディスクモータ3の固定子コイルを短絡させたり、該固定子コイルに駆動時とは逆極性の電圧を印加したりする。
【0017】
ディスクモータ3の駆動が停止されることにより、光ディスク2の回転数またはディスクモータ3の回転数は次第に減少する。さらにブレーキ力が作用することで、ディスクモータ3及び光ディスク2の回転数の減少率が増大し、回転停止までの時間が短縮される。このディスクモータ3及び光ディスク2の回転数が減少しつつあるとき、対物レンズ5は、既に上記のようにアクチュエータ制御されて退避状態にあるため、回転数が減少しながらも回転状態にある該光ディスク2のディスク面には接触しない。回転数検出部14は、かかる状態にある光ディスク2またはディスクモータ3の回転数を例えば電圧信号レベルとして検出し、該検出した回転数の電圧信号レベルを予め設定してある基準値と比較し、該比較の結果、該電圧信号レベルが、該基準値を超える場合は、第2の信号Sを出力せず、該電圧信号レベルが、該基準値以下の場合に、上記第2の信号Sを出力する。該第2の信号Sは、上記過電流検出部15から出力された第1の信号Sと同様、論理回路部18に入力される。
【0018】
論理回路部18では、第1の信号S及び第2の信号Sに基づいて第3の信号Sを形成して出力する。すなわち、第2の信号Sが回転数検出部14から出力されずまたはゼロの場合すなわち第2の信号Sが論理回路部18に入力されない場合は、論理回路部18では第3の信号Sを形成せず、第2の信号Sが回転数検出部14から出力され、論理回路部18に入力される場合は、論理回路部18では第3の信号Sを形成して出力する。該第3の信号Sは、スイッチSW2を制御して、端子a側との接続をオン状態(閉鎖状態)、端子b側との接続をオフ状態(開放状態)にし、グランドからアクチュエータ制御部12へ、アクチュエータ制御の停止を指示するための制御信号すなわち対物レンズ5の退避状態の解除を指示するための制御信号(ミュート信号)Sを供給させる。アクチュエータ制御部12は、該制御信号(ミュート信号)Sに基づきアクチュエータ制御を停止し対物レンズ5の退避状態を解除する。この時点では光ディスク2は、既にほとんど回転停止の状態にあり、対物レンズ5の退避状態が解かれることで該対物レンズ5の先端部またはプロテクタが光ディスク2のディスク面に接触したとしても、該ディスク面に傷が発生するおそれはなくなる。
【0019】
図3は、図1の光ディスク装置においてアクチュエータの過電流が検出されたときの各部の動作状態を示す図である。横軸は時間軸である。
図3において、(a)は、過電流検出部15が光ピックアップ4のアクチュエータ7の過電流を時点tで検出したときの、過電流検出部15から出力される第1の信号Sのレベル変化状態を示し、(b)は、DSP16からレーザ制御部13に供給されるイネーブル信号Sのレベル変化状態を示し、(c)は、レーザダイオード6から出力されるレーザ光(レーザ出力)Pのレベル変化状態を示し、(d)は、RF信号SRFの変化状態を示し、(e)は、アクチュエータ制御による対物レンズ5のフォーカス方向位置の変化状態を示し、(f)は、光ディスク2の回転数nの変化状態を示し、(g)は、回転数検出部14が出力する第2の信号Sの変化状態を示す。
【0020】
(d)において、RF信号SRFは、時点tまでは、光ディスク装置が記録または再生状態にあってレーザ出力Pが定常レベルの値Pであるため、最大値がSRF1、最小値がSRF2の定常レベル範囲にあり、時点t後は、レーザ出力Pのレベルの低下につれてそのレベルが低減する。RF信号SRFのレベルは、DSP16内のマイコン161によって、予め設定された基準値(スレッシュレベル)SRFdと比較されて判別され、判別の結果、該レベルが、該基準値SRFd以下になった時点tで、マイコン161は、対物レンズ5のアクチュエータ制御を、(e)のように、これまでのフォーカス制御状態からレンズ退避状態すなわち直流のレンズプル電圧を印加された状態に切替える。(e)において、dは、フォーカス制御状態にあるときの対物レンズ5のフォーカス方向位置、dは、退避状態にあるときの対物レンズ5のフォーカス方向位置、dは、退避状態が解除されたときの対物レンズ5のフォーカス方向位置である。ディスクモータ3は、時点tで駆動を停止され、時点t以後はブレーキ力が作用しつつ回転速度を減速される。このため、光ディスク2の回転数は、時点t以後は、(f)のように次第に減少する。光ディスク2の該回転数nは、回転数検出部14で検出され、該回転数検出部14内で基準値(回転数検出スレッシュレベル)n((f))と比較され、比較の結果、該回転数nが、該基準値n以下となる場合は、その基準値n以下となる時点t(時点t以降)で、該回転数検出部14からの第2の信号Sの出力がオンされる。この結果、論理回路部18には、該第2の信号Sと、過電流検出部15から出力された第1の信号Sが入力される。これにより、該論理回路部18では第3の信号Sが形成される。該第3の信号Sは、時点tにおいてスイッチSW2を制御し、制御信号(ミュート信号)Sをグランドからアクチュエータ制御部12に供給させる。アクチュエータ制御部12は、該制御信号(ミュート信号)Sに基づきアクチュエータ制御を停止し、対物レンズ5の退避状態を解除する((e))。
【0021】
図4は、図3の光ディスク装置における過電流検出動作のフロー図である。
図4において、
(1)光ディスク2に対し情報の記録または再生が行われているとき、過電流検出部15による光ピックアップ4のアクチュエータ7の過電流の検出とそれに伴う一連の動作が開始される(ステップS401)。
(2)過電流検出部15が光ピックアップ4のアクチュエータ7の過電流の検出を行うと、DSP16内のマイコン161は、該過電流検出が行われたか否かすなわち過電流検出部15から第1の信号Sが出力されたか否かを判別する(ステップS402)。
(3)上記判別の結果、過電流検出部15から第1の信号Sが出力されている場合、該第1の信号Sは、スイッチSW1に入力され、該スイッチSW1の接続状態を切替え、イネーブル信号Sの、DSP16からレーザ制御部13への供給をオフ状態にする。また、第1の信号Sは、スイッチSW3にも入力されて該スイッチSW3の接続状態を切替え、ディスクモータ3の駆動停止とブレーキ力の発生とを指示する制御信号Sの、グランドからモータ制御部11への供給をオン状態にする。(ステップS403)。
(4)イネーブル信号Sのレーザ制御部13への供給が断たれることにより、レーザ駆動回路131はレーザダイオード6の駆動を停止し、レーザ出力はオフ状態になる(消灯する)(ステップS404)。
(5)レーザ出力がオフ状態になることで、反射レーザ光によるRF信号SRFのレベルも次第に減少してゼロになる。マイコン161は、AFE17を介してDSP16に入力される該RF信号SRFのレベルが、予め設定された基準値(図3(d)のSRFd)以下になったか否かを判別する(ステップS405)。
【0022】
(6)上記ステップS405における判別の結果、RF信号SRFのレベルが、予め設定された基準値以下になっているときは、マイコン161は、対物レンズ5を退避状態にするアクチュエータ制御をアクチュエータ制御部12に指示するための制御信号をDSP16内において形成させる。該制御信号は、DSP16からアクチュエータ制御部12に入力され、アクチュエータ制御部12は、これによって対物レンズ5のアクチュエータ制御を実施するすなわちアクチュエータ7を制御して対物レンズ5を退避移動(レンズプル)させる(ステップS406)。該退避移動では、対物レンズ5は、その先端部またはプロテクタが、光ディスク2のディスク面から、該光ディスク2の面振れ量よりも大きい距離離間する位置まで移動される。
(7)ディスクモータ3の駆動が停止され、ブレーキ力が働くと、ディスクモータ3の回転数は次第に減少し光ディスク2の回転数も減少する。かかる回転数減少状態にある光ディスク2またはディスクモータ3の回転数を検出し、該回転数が設定基準値(図3(f)のn)以下になっているか否かを判別する(ステップS407)。
【0023】
(8)上記ステップS407における判別の結果、光ディスク2またはディスクモータ3の回転数が上記設定基準値以下の場合は、回転数検出部14は、第2の信号Sを出力する。この結果、論理回路部18には、第2の信号Sと第1の信号Sが入力される。これにより、論理回路部18は第3の信号Sを形成して出力する。該第3の信号Sは、スイッチSW2の接続状態を切替え、グランドからアクチュエータ制御部12へ、アクチュエータ制御の停止を指示するための制御信号すなわち対物レンズ5の退避状態の解除を指示するための制御信号(ミュート信号)Sを供給させる。アクチュエータ制御部12は、該制御信号(ミュート信号)Sに基づきアクチュエータ制御を停止し対物レンズ5の退避状態を解除(レンズプル解除)する(ステップS408)。
(9)上記ステップS407における判別の結果、光ディスク2またはディスクモータ3の回転数が上記設定基準値を超える場合は、アクチュエータ制御の停止は行われず、対物レンズ5の退避状態は維持される。
(10)上記ステップS408により、対物レンズ5の退避状態が解除された後は、回転停止状態にある光ディスク2の面上に、対物レンズ5の先端部またはプロテクタが接触した状態となる。この状態をもってアクチュエータの過電流検出後の一連の動作を終了する(ステップS409)。
【0024】
上記実施例によれば、光ディスク装置において、アクチュエータの過電流検出時、光ディスクの回転が停止またはこれに近い状態となるまでは、アクチュエータ制御によって対物レンズは退避状態とされるため、光ディスク2に面振れがあっても該対物レンズの先端部またはプロテクタ部はディスク面に接触しなくなる。このため、ディスク面の傷付きをなくすことができる。特に、本実施例においては、アクチュエータの過電流検出時、ディスクモータ3はブレーキ力が作用した状態で減速されるため、過電流検出後、光ディスク2を短時間で回転停止の状態にすることができる。
【0025】
なお、上記実施例では、回転数検出部14は、検出した光ディスク2またはディスクモータ3の回転数が、判別の結果、設定基準値以下の場合には第2の信号Sを出力し、設定基準値を超える場合に第2の信号Sを出力しない構成としたが、この逆の構成、すなわち、回転数検出部14は、検出した光ディスク2またはディスクモータ3の回転数が、判別の結果、設定基準値以下の場合には第2の信号Sを出力せず、設定基準値を超える場合に第2の信号Sを出力する構成としてもよい。また、これに対応して、論理回路部18の構成を、第2の信号Sが入力されず、第1の信号Sのみ入力される場合は、第3の信号Sを形成して出力し、第1の信号Sと第2の信号Sとが入力される場合に第3の信号Sを形成しない構成としてもよい。また、上記実施例では、制御部としてのDSPの内部にマイコンが包含される構成としたが、マイコンはDSPの外部に設けてもよい。さらに、上記各実施例では、回転数検出部内で基準値(回転数検出スレッシュレベル)との比較を行う構成としたが、該比較は制御部のDSP内またはマイコン内で行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例としての光ディスク装置の構成図である。
【図2】図1の光ディスク装置における光ピックアップ内の構成を説明する図である。
【図3】図1の光ディスク装置においてアクチュエータの過電流が検出されたときの各部の動作状態を示す図である。
【図4】図1の光ディスク装置においてアクチュエータの過電流が検出されたときの動作フロー図である。
【図5】本発明の課題を説明するための光ディスク装置の要部説明図である。
【符号の説明】
【0027】
2…光ディスク、
3…ディスクモータ、
4…光ピックアップ、
5…対物レンズ、
6…レーザダイオード、
7…アクチュエータ、
8…受光部、
11…モータ制御部、
12…アクチュエータ制御部、
13…レーザ制御部、
131…レーザ駆動回路、
14…回転数検出部、
15…過電流検出部、
16…DSP、
161…マイコン、
17…アナログフロントエンド、
18…論理回路部、
SW1、SW2、SW3…スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ピックアップ内のアクチュエータの電流監視機能を有する光ディスク装置であって、
上記光ディスクを回転駆動するディスクモータと、
上記ディスクモータの回転状態を制御するモータ制御部と、
上記アクチュエータの過電流を検出するとともに、該検出結果に基づき、ディスクモータに駆動停止とブレーキ力を働かせることを指示する過電流検出部と、
上記アクチュエータを制御し、対物レンズを、フォーカス制御状態をオフしてディスク面から離間した退避状態にするアクチュエータ制御部と、
上記光ディスクまたは上記ディスクモータの回転数を検出する回転数検出部と、
を備え、記録または再生時にフォーカス制御状態で上記アクチュエータの過電流を検出したとき、上記光ディスクの回転数が減少し予め設定された値以下となるまでの間は、上記ディスクモータの駆動を停止しブレーキ力を働かせた状態で上記アクチュエータを制御し、上記対物レンズをフォーカス制御オフでディスク面から離間した退避状態にし、上記光ディスクの回転数が予め設定された値以下となったとき、該退避状態を解除する構成としたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ピックアップ内のアクチュエータの電流監視機能を有する光ディスク装置であって、
上記光ディスクを回転駆動するディスクモータと、
上記ディスクモータの回転状態を制御するモータ制御部と、
レーザ光を生成するレーザダイオードと、
上記レーザダイオードの駆動を制御するレーザ制御部と、
上記レーザダイオードから出射したレーザ光を集光し上記光ディスクに照射する対物レンズと、
上記対物レンズを駆動し、該対物レンズの位置や姿勢を変えるアクチュエータと、
上記アクチュエータを制御し、上記対物レンズをフォーカス制御状態または該フォーカス制御状態をオフしてディスク面から離間した退避状態にするアクチュエータ制御部と、
上記モータ制御部、上記レーザ制御部及び上記アクチュエータ制御部をそれぞれ制御する制御信号を形成し出力する制御部と、
上記アクチュエータに過電流が流れたことを検出し該検出結果に対応した第1の信号を形成して出力するとともに、該第1の信号に基づき、上記ディスクモータに駆動停止とブレーキ力を働かせることを指示する制御信号が上記制御部から上記モータ制御部へ供給されるようにする過電流検出部と、
上記光ディスクまたは上記ディスクモータの回転数を検出し該回転数に対応した第2の信号を形成して出力する回転数検出部と、
上記第2の信号が基準レベル以下の場合に、上記第1の信号と該第2の信号とに基づき、上記制御部から上記アクチュエータ制御部へ上記アクチュエータ制御の停止を指示する制御信号の供給を行わせる第3の信号を形成して出力する論理回路部と、
を備え、
記録または再生時に上記過電流検出部が上記アクチュエータの過電流を検出したとき、該過電流検出後、上記光ディスクの回転数が予め設定された値以下となるまでの間は、上記ディスクモータにブレーキ力を働かせた状態で、上記アクチュエータの制御を行って上記対物レンズを上記退避状態にし、上記光ディスクの回転数が予め設定された値以下となったとき、上記第3の信号に基づき、該アクチュエータの制御を解除して該対物レンズの退避状態を解除する構成としたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記光ディスクからの反射レーザ光によるRF信号のレベルを判別し、該レベルが基準値以下となったとき、上記アクチュエータ制御部に上記対物レンズを上記退避状態にするアクチュエータ制御を指示する制御信号を形成する構成である請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
上記過電流検出部は、上記第1の信号に基づき、上記レーザダイオードをレーザ出力オンの状態にする制御信号の上記制御部から上記レーザ制御部への供給をオフ状態にする構成である請求項2または請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
上記論理回路部は、過電流が検出され、上記光ディスクの回転数が予め設定された値以下となったとき、上記第1の信号に基づき、上記レーザダイオードをレーザ出力オンの状態にする制御信号の、上記制御部から上記レーザ制御部への供給をオフ状態にする信号を形成し出力する構成である請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
上記制御部と上記アクチュエータ制御部との間に、上記制御部から上記アクチュエータ制御部へ上記アクチュエータ制御の停止を指示する制御信号の供給をオン、オフするスイッチを備え、該スイッチが、上記論理回路部から出力される上記信号に基づき作動され、オン、オフされる構成である請求項2または請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
上記制御部と上記レーザ制御部との間に、上記レーザダイオードをレーザ出力オンの状態にする制御信号の上記制御部から上記レーザ制御部への供給をオン、オフするスイッチを備え、該スイッチが、上記過電流検出部から出力される上記第1の信号に基づき作動され、上記制御信号の上記供給をオフ状態にする構成である請求項6に記載の光ディスク装置。
【請求項8】
上記制御部と上記モータ制御部との間に、上記ディスクモータにブレーキ力を働かせることを指示する制御信号の該制御部から該モータ制御部への供給をオン、オフするスイッチを備え、該スイッチが、上記過電流検出部から出力される上記第1の信号に基づき作動され、上記制御信号の上記供給をオン状態にする構成である請求項6または請求項7に記載の光ディスク装置。
【請求項9】
上記制御部と上記レーザ制御部との間に、上記レーザダイオードをレーザ出力オンの状態にする制御信号の上記制御部から上記レーザ制御部への供給をオン、オフするスイッチを備え、該スイッチが、上記論理回路部から出力される上記第3の信号に基づきオン、オフされる構成である請求項6に記載の光ディスク装置。
【請求項10】
上記制御部と上記モータ制御部との間に、上記ディスクモータにブレーキ力を働かせることを指示する制御信号の該制御部から該モータ制御部への供給をオン、オフするスイッチを備え、該スイッチが、上記過電流検出部から出力される上記第1の信号に基づき作動され、上記制御信号のモータ制御部への供給がオン状態とされる構成である請求項6または請求項9に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−9635(P2010−9635A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164421(P2008−164421)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】