説明

光ピックアップ装置及び光ディスク装置

【課題】トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して良好なトラッキングエラー信号を得ることを可能とする光ピックアップ装置及び光ディスク装置の提供。
【解決手段】異なるトラックピッチの複数の光ディスクに対して情報の記録再生を行う光ピックアップ装置において、所定の波長の光ビームを出射する光源31と光源から出射された光ビームを所定の方向に回折して主ビーム及び副ビームに分割する回折素子32と、分割された主ビーム及び副ビームを光ディスク2の記録層に集光する対物レンズ33と、光ディスクからの戻り光のうち主ビームを受光する主受光部と副ビームを受光する副受光部とを有する光検出器34とを備え、回折素子は副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子32上の領域の一部が所定の方向への回折を制限されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の情報記録媒体に対して、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置及び光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報信号の記録媒体として、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクや、さらに高密度記録を可能とするため青紫色半導体レーザ等による波長405nm程度の光ビームを用いて信号の記録再生を行う光ディスク(以下、「高密度記録光ディスク」という。)が用いられ、この種の光ディスクに情報信号の記録を行い、あるいは光ディスクに記録された情報信号の再生を行うために光ピックアップ装置が用いられている。
【0003】
このような光ピックアップ装置において、情報記録及び/又は再生を行うために、この光ディスクの所定の記録トラック上に正しく集光スポットを照射する必要がある。光ディスクの記録トラック上に正しく集光スポットを照射するため、トラッキングエラー信号の検出手段として、従来より差動プッシュプル(DPP(Differential Push−Pull))方式が広く用いられている。
【0004】
このDPP方式を用いた光ピックアップ装置では、所定の波長の光ビームを出射する光源と、この光源から出射された光ビームを光ディスクの信号記録面に集光する対物レンズとを有し、この光源と対物レンズとの間に、凹凸パターンが平行に形成された格子パターンを有する回折素子が配置され、この回折素子により光源から出射された光ビームを0次光及び±1次回折光からなる3本の光ビームに分割している。
【0005】
これら3本の光ビームは、図14(a)に示すように、対物レンズに集光されることにより、光ディスク上に0次光であるメインビームが集光されることにより形成されるメインスポット200と、±1次回折光であるサブビームが集光されることにより形成される第1及び第2のサブスポット201,202とからなる3つの集光スポットを形成する。
【0006】
図14(a)に示すように、第1及び第2のサブスポット201,202は、メインスポット200に対して、光ディスクのトラックピッチ方向(トラッキング方向)に相対的に1/2Tpずれた位置に集光している(ここで、Tpは、トラックピッチを示すものである。)。
【0007】
そして、この光ピックアップ装置には、図14(b)に示すように、光ディスクに集光されたメインビーム及びサブビームからなる3本の光ビームの光ディスクからの戻り光をそれぞれ受光する受光部203a,203b,203cを有し、これらの戻り光を検出する光検出器203が設けられている。
【0008】
受光部203aは、2分割された受光領域A,Bを有し、受光部203b,203cは、それぞれ2分割の受光領域C,D及び受光領域E,Fを有し、メインビームの戻り光を受光した受光部203aにより検出した信号強度A,B,C,Dから得られるメインプッシュプル信号MPP=A−Bと、サブビームの戻り光を受光した受光部203b,203cにより検出した信号強度C,D,E,Fから得られるサブプッシュプル信号SPP1=C−D,SPP2=E−Fにより、所謂DPP方式のトラッキングエラー信号を得ることができる。このDPP方式により得られるトラッキングエラー信号は、対物レンズのシフトによるオフセットが補正されたものであり、良好なトラッキングエラー信号であり、記録トラック上に正しく集光スポットを照射することを可能とする。
【0009】
しかし、上述の光ピックアップ装置では、上述したように光ディスク上のメインスポット200と第1及び第2のサブスポット201,202とのトラッキング方向の間隔をトラックピッチTpの1/2程度にする必要があるため、トラックピッチが異なる光ディスクの両方に対して、良好なトラッキングエラー信号を得ることができないという問題点があった。
【0010】
【特許文献1】特開平10−162383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して良好なトラッキングエラー信号を得ることを可能とする光ピックアップ装置及び光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明に係る光ピックアップ装置は、それぞれ異なるトラックピッチで記録トラックが設けられた複数の光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、所定の波長の光ビームを出射する光源と、上記光源から出射された光ビームを所定の方向に回折して主ビーム及び副ビームに分割する回折素子と、上記回折素子に分割された上記主ビーム及び副ビームをそれぞれ光ディスクの記録層に集光する対物レンズと、上記光ディスクからの戻り光のうち主ビームを受光する主受光部と、上記戻り光のうち副ビームを受光する副受光部とを有する光検出器とを備え、上記回折素子は、上記副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように、上記対物レンズの入射瞳に対応する回折素子上の領域の一部が上記所定の方向への回折を制限されている。
【0013】
また、この目的を達成するため、本発明に係る光ディスク装置は、それぞれ異なるトラックピッチで記録トラックが設けられた複数の光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置と、上記光ディスクを回転する回転駆動手段とを備える光ディスク装置であり、この光ディスク装置に用いる光ピックアップ装置として、上述したようなものを用いたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、回折素子により回折された主ビーム及び副ビームの光ディスクからの戻り光を用いてトラッキングエラー信号を生成する際に、回折素子が副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように構成されていることにより、サブスポットのトラッキング方向の位置によらず良好なトラッキングエラー信号を得ることができ、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して良好なトラッキングエラー信号を得ることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を適用した光ピックアップ装置を用いた光ディスク装置について、図面を参照して説明する。
【0016】
本発明が適用された光ディスク装置1は、図1に示すように、光記録媒体としての光ディスク2から情報記録再生を行う光ピックアップ装置3と、光ディスク2を回転操作する回転駆動手段としてのスピンドルモータ4と、光ピックアップ装置3を光ディスク2の径方向に移動させる送りモータ5とを備えている。この光ディスク装置1は、フォーマットの異なる3種類の光ディスク及び記録層が積層化された光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行うことができる3規格間互換性を実現した光ディスク装置である。
【0017】
ここで用いられる光ディスクは、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、情報の追記が可能とされるCD−R(Recordable)及びDVD−R(Recordable)、情報の書換えが可能とされるCD−RW(ReWritable)、DVD−RW(ReWritable)、DVD+RW(ReWritable)、DVD−RAM等の光ディスクや、さらに発光波長が短い405nm程度(青紫色)の半導体レーザを用いた高密度記録が可能な高密度記録光ディスクや、光磁気ディスク等である。ここで、CD、CD−Rは、トラックピッチ1.6μm程度、使用波長780nm程度、NA0.45程度とされている。また、DVD、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAMは、使用波長650nm程度、NA0.6程度とされており、トラックピッチについては、DVD−RAMが1.48μm又は1.23μm程度とされ、それ以外のものが0.74μm程度とされている。さらに、高密度記録光ディスクは、例えば、トラックピッチ0.40μm又は0.32μm程度、使用波長405nm程度、NA0.85程度とされている。
【0018】
光ディスク装置1において、スピンドルモータ4及び送りモータ5は、ディスク種類判別手段ともなるシステムコントローラ7からの指令に基づいて制御されるサーボ制御部9によりディスク種類に応じて駆動制御されており、光ディスクの種類に応じて所定の回転数で駆動される。
【0019】
光ピックアップ装置3は、規格の異なる光ディスクの記録層に対して光ディスクの種類に対応した所定の波長の光ビームを照射するとともに、この光ビームの記録層における反射光を検出する。光ピックアップ装置3は、検出した反射光から各光ビームに対応する信号をプリアンプ部14に供給する。
【0020】
プリアンプ部14の出力は、信号変復調器及びエラー訂正符号ブロック(以下、「信号変復調&ECCブロック」という。)15に送られる。この信号変復調及びECCブロック15は、信号の変調、復調及びECC(エラー訂正符号)の付加を行う。光ピックアップ装置3は、信号変復調及びECCブロック15の指令にしたがって回転する光ディスク2の記録層に対して光ビームを照射し、光ディスク2に対して信号の記録又は再生を行う。
【0021】
プリアンプ部14は、フォーマット毎に異なって検出される光ビームに対応する信号に基づいて、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、RF信号等を生成するように構成されている。記録又は再生の対象媒体とされる光ディスク2の種類に応じて、サーボ制御部9、信号変復調及びECCブロック15等により、光ディスク2の規格に基づく復調及び誤り訂正処理等の所定の処理が行われる。
【0022】
ここで例えば、信号変復調&ECCブロック15により復調された記録信号がコンピュータのデータストレージ用であれば、インターフェイス16を介して外部コンピュータ17に送出される。これにより、外部コンピュータ17は、光ディスク2に記録された信号を再生信号として受け取ることができる。
【0023】
また、信号変復調&ECCブロック15により復調された記録信号がオーディオビジュアル用であれば、D/A及びA/D変換器18のD/A変換部でデジタルアナログ変換され、オーディオビジュアル処理部19に供給される。そしてオーディオビジュアル処理部19でオーディオビジュアル処理が行われ、オーディオビジュアル信号入出力部20を介して、図示しない外部の撮像映写機器等に伝送される。
【0024】
光ピックアップ装置3において、例えば、光ディスク2上の所定の記録トラックまで移動させるための送りモータ5の制御、スピンドルモータ4の制御、及び光ピックアップ装置3において光集光手段となる対物レンズを保持する2軸アクチュエータのフォーカス方向の駆動とトラッキング方向の駆動制御は、それぞれサーボ制御部9により行われる。
【0025】
レーザ制御部21は、光ピックアップ装置3のレーザ光源を制御する。特に、この具体例では、レーザ制御部21は、記録モード時と再生モード時とでレーザ光源の出力パワーを異ならせる制御を行っている。また、光ディスク2の種類に応じてもレーザ光源の出力パワーを異ならせる制御を行っている。レーザ制御部21は、ディスク種類判別部22によって検出された光ディスク2の種類に応じて光ピックアップ装置3のレーザ光源を切り換えている。
【0026】
ディスク種類判別部22は、装着される光ディスクの表面反射率、形状的及び外形的な違い等から光ディスク2のフォーマットを検出することができる。
【0027】
光ディスク装置1を構成する各ブロックは、ディスク種類判別部22における検出結果に応じて、装着される光ディスク2の仕様に基づく信号処理ができるように構成されている。
【0028】
システムコントローラ7は、ディスク種類判別部22から送られる検出結果に基づいて光ディスク2の種類を判別する。光ディスクの種類を判別する手法としては、光ディスクがカートリッジに収納されるタイプであれば、このカートリッジに検出穴を設けて接触検出センサ又は押下スイッチを用いて検出する手法があげられる。また、同一光ディスクにおける記録層の判別には、光ディスク最内周にあるプリマスタードピットやグルーブ等に記録された目録情報(Table Of Contents;TOC)による情報に基づいて、どの記録層に対する記録再生かを判別する手法が使用できる。
【0029】
サーボ制御部9は、例えば光ピックアップ装置3と光ディスク2との相対位置を検出する(光ディスク2に記録されたアドレス信号をもとに位置検出する場合を含む)ことによって、記録及び/又は再生する記録領域を判別できる。
【0030】
以上のように構成された光ディスク装置1は、スピンドルモータ4によって、光ディスク2を回転操作し、サーボ制御部9からの制御信号に応じて送りモータ5を駆動制御し、光ピックアップ装置3を光ディスク2の所望の記録トラックに対応する位置に移動することで、光ディスク2に対して情報の記録再生を行う。
【0031】
ここで、上述した記録再生用の光ピックアップ装置3について詳しく説明する。この光ピックアップ装置3は、上述したそれぞれ異なるトラックピッチで記録トラックが設けられた複数の光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行うものである。
【0032】
本発明を適用した光ピックアップ装置3は、図2に示すように、所定の波長の光ビームを出射する光源31と、光源31から出射された光ビームを0次光及び±1次回折光からなる少なくとも3本の光ビームに回折して分割する回折素子32と、回折素子32に分割された3本の光ビームをそれぞれ光ディスク2の信号記録面として記録層上に集光する対物レンズ33と、光ディスク2の記録層で反射された3本の光ビームのそれぞれの戻り光を受光する受光部34a,34b,34cを有する光検出器34と、回折素子32と対物レンズ33との間に配置され、光ディスク2で反射された戻り光の光路を光源31から出射された往路の光ビームの光路とを分離する光路分離手段としてビームスプリッタ35とを備える。
【0033】
また、光ピックアップ装置3は、ビームスプリッタ35と対物レンズ33との間に設けられ、光源31から出射され回折素子32、ビームスプリッタ35を介して入射される光ビームの発散角を変えて略平行光とするコリメータレンズ36と、ビームスプリッタ35と光検出器34との間に設けられ、ビームスプリッタ35で反射された戻りの光ビームを光検出器34の受光部34a,34b,34c上に集光するマルチレンズ37とを備える。
【0034】
光源31は、光ディスク2の種類に対応した所定の波長のレーザ光束を出射する半導体レーザである。尚、光源31から出射される光ビームの波長は、例えば、405nm程度、650nm程度、780nm程度等の波長の光ビームを出射するように構成されている。また、光源31は、単一の波長の光ビームを出射するように構成してもよく、二以上の複数種類の波長の光ビームを出射する一又は複数の出射部を設けるように構成してもよい。
【0035】
回折素子32は、図3に示すように、光源31とビームスプリッタ35との間に設けられ、所定の領域に所定の回折構造が設けられており、入射する光ビームを所定の方向に回折させ少なくとも0次光(以下、「主ビーム」ともいう。)及び±1次回折光(以下、「第1の副ビーム」、「第2の副ビーム」、又は、±1次回折光を合わせて「副ビーム」ともいう。)からなる3本の光ビームに分割する。すなわち、回折素子32は、後述する第1の回折部41を通過する光ビームを回折して、それぞれ対物レンズ33により光ディスク2に集光されその戻り光が受光部34a〜34cで受光されて各種信号を検出するための主ビーム並びに第1及び第2の副ビームを生成する。
【0036】
また、回折素子32は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTF(空間周波数)のカットオフ周波数を下げるように、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域の一部が、所定の方向への回折を制限されている。ここで、所定の方向とは、上述の受光部34b,34cにより受光される副ビームが生成される際の回折方向をいう。また、ここで、カットオフ周波数とは、再生信号振幅がほぼ0となる周波数のことであり、情報の再生に用いられる光ビームの波長をλとし、対物レンズの開口数をNAとしたときに、2NA/λで表されるものである。
【0037】
具体的には、回折素子32は、図3に示すように、ラジアル方向Radに略垂直な複数(二つ)の分割線L11,L12により複数の領域32a,32b,32cに分割され、この複数の領域32a,32b,32cのうち、中央に形成された第1の領域32aに、上述の主ビーム及び副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部41と、この複数の領域32a,32b,32cのうち、両端に形成された第2及び第3の領域32b,32cに、第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部42とを有する。この第2及び第3の領域32b,32cには、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域Rの一部の領域を含んでいる。尚、図3中破線部で示される領域Rは、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域を示し、入射瞳に対応する領域とは、ビームスプリッタ35及びコリメータレンズ36を介して対物レンズ33の入射瞳に入射する光ビームが回折素子上を通過する領域をいう。また、対物レンズ33の入射瞳は、開口数等により決定される対物レンズ33の有効径をいう。また、図3及び後述の図4等におけるRadは、光ディスク2のラジアル方向を示すものである。
【0038】
尚、ここでは、回折素子32の第2及び第3の領域32b,32cには、第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部42を設けることにより、この領域を通過する光ビームを第1の回折部41とは異なる方向に回折させて、後述のように、第1の回折部41で回折された副ビームを受光する受光部34b,34cに入射させないように構成したが、これに限られるものではなく、回折素子32の第2及び第3の領域32b,32cには、回折構造が形成されない透過部を設けてもよく、透過部を設けることにより、この透過部が、この領域を通過する光ビームを透過させることにより、第1の回折部41で回折された副ビームを受光する受光部34b,34cに入射させないように構成して、すなわち、第1の回折部41で回折された副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるようにしてもよい。
【0039】
すなわち、回折素子32は、第1の領域32aに、上述の主ビーム及び副ビームを生成するための所定の第1の回折構造を有するとともに、第2及び第3の領域32b,32cに含まれる、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子32上の領域Rの一部の領域に第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されることでこの一部の領域を通過する光ビームを第1の領域32a(第1の回折部41)で生成された副ビームとは異なる方向に回折させることで、上述の副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる。
【0040】
ここで、回折素子32の主ビーム及び副ビームを生成する第1の回折部41は、図3に示すように、第1の回折部41を構成する領域32aのうち領域Rに含まれるラジアル方向の寸法W1が次式(1)を満たすように形成されている。尚、ここでは、第1の回折部41を構成する第1の領域32aが、そのラジアル方向においては、全て領域Rに含まれているため、寸法Wは、第1の回折部41のラジアル方向の寸法である。
W1≦(λ/2NA)/q×D ・・・(1)
但し、上記式(1)において、λ:光源31から出射される光ビームの波長、NA:対物レンズ33の開口数、q:複数の光ディスクのうちトラックピッチが最も大きい光ディスク(以下、「最大トラックピッチの光ディスク」ともいう。)のトラックピッチ、D:対物レンズ33の開口により決定される回折素子32上の有効径とする。尚、ここでDは、図3に示すように、上述した対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域Rの直径である。
【0041】
回折素子32は、上述のように構成されることにより、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げて、光ディスク2のトラックが読めないようにし、副ビームの光ディスク2からの戻り光を受光する受光部34b,34cにより検出されるサブスポット信号をDC化することができる。ここで、サブスポット信号をDC化することにより、後述するメインスポットによるプッシュプル信号MPPのようなトラック横断毎に現れる正弦波信号は現れず、対物レンズ33のシフト等によって現れる不規則な成分であるオフセット成分のみが現れることとなる。
【0042】
回折素子32は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を光ディスク2のトラックが読めないように下げるように、主ビーム及び副ビームを生成することにより、後述する受光部34a,34b,34cで検出される信号のうち、主ビームを受光する受光部34aではプッシュプル信号を検出するとともに、副ビームを受光する受光部34b,34cではサブスポット信号をDC化させた信号を検出させ、受光部34b,34cで得られるDC化した信号を用いて受光部34aで得られるプッシュプル信号のオフセット成分のみをキャンセルすることで、トラックピッチが異なる複数の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができるものである。
【0043】
ビームスプリッタ35は、回折素子32により回折されて入射された往路の主ビーム及び副ビーム(以下、往路の主ビーム及び往路の副ビームをあわせて「往路の光ビーム」ともいう。)を透過して、コリメータレンズ36側に向けて出射させるとともに、光ディスク2の記録層で反射され対物レンズ33及びコリメータレンズ36を経由して入射されたそれぞれの戻りの光ビーム(以下、「復路の光ビーム」ともいう。)を反射してマルチレンズ37側に向けて出射させる。このように、ビームスプリッタ35は、復路の光ビームの光路を往路の光ビームの光路から分離させて、マルチレンズ37及び光検出器34側に導く。
【0044】
コリメータレンズ36は、光源31から出射され、回折素子32及びビームスプリッタ35を経由した光ビームの発散角を変換して略平行光として対物レンズ33側に出射させる。
【0045】
対物レンズ33は、光ディスク2の種類に対応した開口数NAとされ、光ディスク2の選択される所望の信号記録面上に入射した光ビームを集光する。尚、この対物レンズの開口数は、用いる光ディスク2の種類に応じたものを用いるものであり、例えば、0.85程度、0.6程度又は0.45程度とされている。
【0046】
また、この対物レンズ33の入射側には、対物レンズ33に入射する光ビームの開口制限を行う図示しない開口制限手段が設けられており、この開口制限手段により光ディスク2の種類に対応した開口数に制限されている。
【0047】
マルチレンズ37は、ビームスプリッタ35により反射された戻りの光ビームが入射され、入射された復路の光ビームの発散角を変換して、所定の発散角でこの光ビームを光検出器34の各受光部34a,34b,34c上に集束させる。尚、マルチレンズ37は、さらにフォーカスエラー信号を検出するために通過する光ビームに非点収差を付与するように構成してもよい。
【0048】
光検出器34は、中央部に、例えば略正方形状に形成され入射した主ビームの戻り光を受光して検出する主受光部としての受光部34aと、この受光部34aを挟んで互いに反対側の位置に配置され例えば略正方形状に形成され入射した第1及び第2の副ビームの戻り光を受光して検出する副受光部としての受光部34b,34cとを有し、この受光部34a,34b,34cで受光した光ビームを検出する。受光部34aは、主ビームの戻り光を受光できる位置に形成され、受光部34bは、第1の副ビームの戻り光を受光できる位置に形成され、受光部34cは、第2の副ビームの戻り光を受光できる位置に形成されている。
【0049】
光検出器34は、マルチレンズ37により集光された主ビーム並びに第1及び第2の副ビームの戻り光をそれぞれ受光し、情報信号とともにトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号等の各種信号を検出するために、受光部34a,34b,34cのそれぞれが一の受光領域からなるフォトディテクタ、又は複数の受光領域からなる所謂分割フォトディテクタとして構成され、情報信号、トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号等の各種信号を検出する。
【0050】
具体的には、図4に示すように、受光部34a,34b,34cは、それぞれ2分割の受光領域A,B、受光領域C,D及び受光領域E,Fを有している。また、光検出器34は、これらの受光部34a,34b,34cの各受光領域A〜Fで受光して検出された検出信号A,B,C,D,E,Fに基づいて、プッシュプル信号MPP、並びにこのプッシュプル信号のオフセット成分を補正するための補正信号SSと、これらから得られるトラッキングエラー信号TEを得るための加算器52,53、減算器51,54,56、ゲインアンプ55とを有している。尚、ここで、主ビームの戻り光を受光する受光部34aを2分割として構成したトラッキングエラー信号の検出の例について説明するが、例えば、この分割線に直交する分割線によりさらに2分割した所謂4分割ディテクタ等を用いてフォーカスエラー信号等の他の検出信号を検出可能なように構成することも可能である。
【0051】
減算器51は、受光領域Aの検出信号から受光領域Bの検出信号を減算して得られるプッシュプル信号MPPを出力する。加算器52は、受光領域C及び受光領域Eの検出信号を加算して出力する。加算器53は、受光領域D及び受光領域Fの検出信号を加算して出力する。減算器54は、加算器52で得られた加算出力から加算器53で得られた減算出力を減算して得られる補正信号SSを出力する。ゲインアンプ55は、減算器54で得られた補正信号SSと補正係数Kとからゲイン出力(K・SS)を出力する。減算器56は、減算器51で得られたプッシュプル信号MPPからゲインアンプ55で得られたゲイン出力(K・SS)を減算して得られるトラッキングエラー信号TE(=MPP−K・SS)を出力する。
【0052】
このように、光検出器34は、主ビームの戻り光を受光した受光部34aにより検出した信号強度A,Bから得られるプッシュプル信号MPP=A−Bと、副ビームの戻り光を受光した受光部34b,34cにより検出した信号強度C,D,E,Fから得られる補正信号SS=(C+E)−(D+F)とにより、トラッキングエラー信号TE=MPP−K・SS=(A−B)−K・((C+E)−(D+F))を検出できる。尚、図4及び後述の図8は、非点収差が与えられた場合の各受光部上の光スポットを示す。
【0053】
ここで、光検出器34で得られるプッシュプル信号MPPは、従来の所謂DPP方式で得られるトラッキングエラー信号におけるメインプッシュプル信号と同様である。一方で、光検出器34で得られる補正信号SSは、DPP方式で得られるトラッキングエラー信号におけるサブプッシュプル信号とは異なっている。すなわち、上述したように回折素子32により副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向Radのカットオフ周波数を、副ビームに対応したサブスポットにより光ディスク2のトラックを読めないように下げるようにされていることから、この戻り光による受光部34b,34c上のサブスポットから得られる信号は、DC化されており、補正信号SSは、対物レンズ33のシフトによるオフセット成分のみを補正するものである。このように、光検出器34の受光部34a〜34cの構成及び演算自体は、従来の所謂DPP方式と同様の構成とされているが、上述した回折素子32を設けて副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるようにされていることから、トラッキングエラー信号の成分については主ビームによるメインスポットから得られる信号のみであるとともに、サブスポットから得られる信号を用いてメインスポットから得られる信号に加わってしまった対物レンズ33がシフトすることにより発生してしまうオフセット成分を相殺するために用いられている。
【0054】
すなわち、上述のように得られるトラッキングエラー信号TEは、TE=MPP−K×SSにより得られる(ここでKは補正係数である。)。これは、主ビームによるプッシュプル信号MPPだけでは、トラッキングのために対物レンズ33がシフトする等により、プッシュプル信号MPPがオフセットしてしまい良好なトラッキングエラー信号が得られないことを副ビームにより得られる補正信号SSで補正するものである。すなわち、光ディスク2上の副ビームのサブスポットは、主ビームのメインスポットから所定の距離だけずらして配置されているが、DC化されているので、対物レンズ33のシフトによるオフセットは、プッシュプル信号MPPも、補正信号SSも同じ極性で変化する。以上のことから主ビームと副ビームの明るさを補正する係数Kを用いて上述の演算により、対物レンズ33のシフト等によるオフセットがキャンセルされるとともに、グルーブで変調される良好なトラッキングエラー信号が得られる。さらに、サブスポットからはオフセット成分のみを抽出するだけであるので、サブスポットのトラッキング方向の位置にかかわらず、すなわち、サブスポットとメインスポットとのトラッキング方向の間隔がトラックピッチの1/2程度でなくても良好なトラッキングエラー信号を得ることができ、換言すると、トラックピッチが異なる複数種類の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができる。
【0055】
以上のように構成された光ピックアップ装置3において、光源31から光ビームが出射されると、回折素子32によって3ビームに分割され、ビームスプリッタ35を透過されて、コリメータレンズ36によって平行光とされ、対物レンズ33によって集光された光ディスク2の記録層にスポットが形成される。光ディスク2の記録層に集光された光ビームは、反射されて対物レンズ33及びコリメータレンズ36を経由して再びビームスプリッタ35に入射され、ビームスプリッタ35によって光路が変更されて、マルチレンズ37を介して光検出器34の各受光部34a,34b,34c上に集光される。
【0056】
尚、この光ピックアップ装置3における回折素子32により分割された主ビーム及び副ビームは、対物レンズ33によって光ディスク2上に、図5に示すようなスポットを形成する。尚、図5中Sd10は、回折素子32を通過した0次光である主ビームのスポットを示すものであり、Sd11は、回折素子32の第1の回折部41(第1の領域32a)により回折された+1次回折光である第1の副ビームのスポットを示すものであり、Sd12は、回折素子32の第1の回折部41により回折された−1次回折光である第2の副ビームのスポットを示すものであり、Sd13は、回折素子32の第2の回折部42(第2及び第3の領域32b,32c)により回折された+1次回折光のスポットを示すものであり、Sd14は、回折素子32の第2の回折部42により回折された−1次回折光のスポットを示すものである。
【0057】
また、光ディスク2で反射された主ビーム及び副ビームは、各受光部34a〜34c上に、図4に示すようなスポットを形成する。尚、図4中Sk100は、光ディスクで反射された主ビームの戻り光のうち光ディスクで回折反射された際の0次光を示すものであり、Sk110は、光ディスクで反射された第1の副ビームの戻り光のうち光ディスクで回折反射された際の0次光を示すものであり、Sk111は、光ディスクで反射された第1の副ビームの戻り光のうち光ディスクで回折反射された際の+1次回折光を示すものであり、Sk112は、光ディスクで反射された第1の副ビームの戻り光のうち光ディスクで回折反射された際の−1次回折光を示すものであり、Sk120は、光ディスクで反射された第2の副ビームの戻り光のうち光ディスクで回折反射された際の0次光を示すものであり、Sk121は、光ディスクで反射された第2の副ビームの戻り光のうち光ディスクで回折反射された際の+1次回折光を示すものであり、Sk122は、光ディスクで反射された第2の副ビームの戻り光のうち光ディスクで回折反射された際の−1次回折光を示すものである。ここで、図4に示す受光部34aには、従来の所謂DPP方式の場合と同様に、光ディスクで反射された主ビームの戻り光のうち光ディスクで回折反射された際の±1次回折光がスポットSk100と重複して形成されているが、ここでは省略する。
また、図5で説明したスポットSd13,Sd14に集光された光ビームの光ディスクで回折反射された戻りの光ビームは、受光部34a〜34cに入射しないので図4中には図示しない。
【0058】
本発明を適用した光ピックアップ装置3は、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して情報の記録又は再生を行う際に、回折素子32により分割された主ビーム及び副ビームを用いてトラッキングエラー信号を得る光ピックアップ装置であって、回折素子32により回折して分割された主ビーム及び副ビームのうち副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように構成されていることから、副ビームによるサブスポットの位置調整を必要とせず、且つこの主ビーム及び副ビームの戻り光を検出することで、サブスポットの位置にかかわらず、メインスポットにより得られたプッシュプル信号から対物レンズ33のシフトによるオフセット成分を取り除いた良好なトラッキングエラー信号を得ることを可能とし、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができ、良好な記録及び再生を実現することができる。
【0059】
すなわち、本発明を適用した光ピックアップ装置3は、トラッキングエラーを検出するために回折素子32により分割した主ビーム及び副ビームにより光ディスク2上に形成されるメインスポットとサブスポットとのトラッキング方向の間隔を所謂DPP方式のようにトラックピッチの1/2程度にしなくても、良好なトラッキングエラー信号を得ることができる。
【0060】
次に、上述した光ピックアップ装置3における光ビームが回折素子32を通過することにより回折されて主ビーム及び副ビームが生成される際の現象と、この主ビーム及び副ビームが光ディスクによって反射される際に回折される現象とについて説明するとともに、上述したカットオフ周波数との関係について説明する。
【0061】
光源31から出射され回折素子32に入射した光ビームは、回折素子32の第1の回折部41に周期dの溝が形成され、光源31から出射された光ビームの波長がλであるとすると、次式(2)で得られる角度θgで回折される。
sinθg=n・λ/d(nは次数、n=0,±1,±2・・) ・・・(2)
【0062】
このとき、第1及び第2の副ビームである±1次回折光は、sinθg=λ/dで得られる角度θgで回折される。
【0063】
また、回折素子32により回折され、ビームスプリッタ35、コリメータレンズ36及び対物レンズ33を経由した主ビーム及び副ビームは、光ディスク2によっても回折され、具体的には、光ディスク2がトラックピッチtpのトラックを有するとすると、次式(3)で得られる角度θdで回折される。
sinθd=n・λ/tp(nは次数、n=0,±1,±2・・) ・・・(3)
【0064】
このとき、光ディスク2で回折される±1次回折光の各受光部34a,34b,34c上での横ずらし分は、対物レンズ33の焦点距離をfとすると、fsinθd=f・λ/tpとなる。受光部34a〜34c上で、光ディスク2により±1次回折光が、0次光とオーバーラップし、0次光と重なった部分では、0次光との干渉が生じ、その結果、光強度の明暗が現れることとなる。ところが、横ずらし分が、ビーム光束直径2rよりも大きくなるとオーバーラップしなくなる。これが光学系のカットオフで、2r=f・λ/tpで表される。ここで、r/f=NA(開口率)なので、次式(4)、(5)のように変形することができ、このように変形された式(5)の右辺で示される2NA/λがカットオフ周波数である。
1/tp=(2・r/f)/λ ・・・(4)
1/tp=2NA/λ ・・・(5)
【0065】
回折素子32は、上述したように、第1の回折部41を構成する領域32aのうち領域Rに含まれるラジアル方向の寸法W1が式(1)を満たすように構成されていることから、サブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げて、最大トラックピッチの光ディスクにおけるトラックピッチの空間周波数よりも小さくできる。すなわち、回折素子32は、上述のように構成されることにより、最大トラックピッチの光ディスクにおけるトラックピッチの空間周波数よりもサブスポットのカットオフ周波数を下げることにより、いずれの光ディスクのトラックピッチの空間周波数よりもカットオフ周波数を小さくすることができ、換言すると、複数の光ディスクの全ての光ディスクのトラックピッチの空間周波数がサブスポットのカットオフ周波数以上としてトラックの解像限界になるように制限することができる。
【0066】
回折素子32を有する光ピックアップ装置3は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように構成されていること、すなわち、副ビームによる光ディスク上のスポット径がトラックを検出することができない程度の大きさとされていることにより、サブスポットはトラック横断によって変調されることがなくオフセット成分のみを検出できるようにDC化され、換言すると、メインスポットとのラジアル方向の位置に拘わらず、メインスポットによるプッシュプル信号に加わっているオフセット成分のみを除去するためのオフセット成分のみを検出することができる。
【0067】
以上のように、本発明を適用した光ピックアップ装置3は、回折素子32により回折された主ビーム及び副ビームの光ディスク2からの戻り光を用いてトラッキングエラー信号を生成する際に、回折素子が副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように構成されていることにより、サブスポットのトラッキング方向の位置によらず良好なトラッキングエラー信号を得ることができるので、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して良好なトラッキングエラー信号を得ることができる。
【0068】
尚、上述では、ラジアル方向Radに略垂直な分割線L11,L12により第1乃至第3の領域32a,32b,32cに分割され、中央に形成された第1の領域32aに、主ビーム及び副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部41と、第2及び第3の領域に、第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部42とを有する回折素子32を設けるように構成したが、これに限られるものではなく、例えば、図6に示すように、ラジアル方向に略垂直な分割線により第1乃至第3の領域に分割され、第1乃至第3の領域のうち両端に形成された第2及び第3の領域に、主ビーム及び副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部と、第1の領域に、第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部とを有する回折素子を設けるように構成してもよい。
【0069】
次に、図6に示すような回折素子を備える光ピックアップ装置60について説明する。尚、以下の説明において、上述した光ピックアップ装置3と共通する部分については、共通の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0070】
本発明を適用した光ピックアップ装置60は、図3及び図6に示すように、光源31と、光源31から出射された光ビームを0次光及び±1次回折光からなる少なくとも3本の光ビームに回折して分割する回折素子62と、回折素子62に分割された3本の光ビームをそれぞれ光ディスク2の信号記録面として記録層上に集光する対物レンズ33と、光検出器34と、ビームスプリッタ35と、コリメータレンズ36と、マルチレンズ37とを備える。
【0071】
光ピックアップ装置60の回折素子62は、光源31とビームスプリッタ35との間に設けられ、図6に示すように、所定の領域に所定の回折構造が設けられており、入射する光ビームを少なくとも0次光である主ビームと、±1次回折光である副ビームとからなる3本の光ビームに分割する。
【0072】
また、回折素子62は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げるように、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域の一部が、所定の方向への回折を制限されている。
【0073】
具体的には、回折素子62は、図6に示すように、ラジアル方向Radに略垂直な複数(二つ)の分割線L21,L22により複数の領域62a,62b,62cに分割され、この複数の領域62a,62b,62cのうち、両端に形成された第2及び第3の領域62b,62cに、上述の主ビーム及び副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部66と、この複数の領域62a,62b,62cのうち、中央に形成された第1の領域62aに、第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部67とを有する。この第1の領域62a並びに第2及び第3の領域62b,62cには、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域Rの一部の領域を含んでいる。尚、図6中破線部で示される領域Rは、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域を示している。
【0074】
尚、ここでは、回折素子62の第1の領域62aには、第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部67を設けることにより、この領域を通過する光ビームを第1の回折部66とは異なる方向に回折させて、第1の回折部66で回折された副ビームを受光する受光部34b,34cに入射させないように構成したが、これに限られるものではなく、回折素子62の第1の領域62aには、回折構造が形成されない透過部を設けてもよく、透過部を設けることにより、この透過部が、この領域を通過する光ビームを透過させることにより、第1の回折部66で回折された副ビームを受光する受光部34b,34cに入射させないように構成して、すなわち、第1の回折部66で回折された副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるようにしてもよい。
【0075】
すなわち、回折素子62は、第2及び第3の領域62b,62cに、上述の主ビーム及び副ビームを生成するための所定の第1の回折構造を有するとともに、第1の領域62aに含まれる、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子62上の領域Rの一部の領域に第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されることでこの一部の領域を通過する光ビームを第2及び第3の領域62b,62c(第1の回折部66)で生成された副ビームとは異なる方向に回折させることで、上述の副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる。
【0076】
ここで、回折素子62の第1及び第2の回折部66,67は、図6に示すように、第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部67を構成する領域62aのうち領域Rに含まれるラジアル方向の寸法W2が次式(6)を満たすように形成されている。尚、ここでは、第2の回折部67を構成する第1の領域62aが、そのラジアル方向においては、全て領域Rに含まれているため、寸法W2は、第2の回折部67のラジアル方向の寸法である。
W2≧(λ/2NA)/q×D ・・・(6)
但し、上記式(6)において、λ:光源31から出射される光ビームの波長、NA:対物レンズ33の開口数、q:複数の光ディスクのうちトラックピッチが最も大きい光ディスク(以下、「最大トラックピッチの光ディスク」ともいう。)のトラックピッチ、D:対物レンズ33の開口により決定される回折素子62上の有効径とする。尚、ここでDは、図6に示すように、上述した対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域Rの直径である。
【0077】
回折素子62は、上述のように構成されることにより、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げて、光ディスク2のトラックが読めないようにし、副ビームの光ディスク2からの戻り光を受光する受光部34b,34cにより検出されるサブスポット信号をDC化することができる。ここで、サブスポット信号をDC化することにより、メインスポットによるプッシュプル信号MPPのようなトラック横断毎に現れる正弦波信号は現れず、対物レンズ33のシフト等によって現れる不規則な成分であるオフセット成分のみが現れることとなる。
【0078】
回折素子62は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を光ディスク2のトラックが読めないように下げるように、主ビーム及び副ビームを生成することにより、受光部34a,34b,34cで検出される信号のうち、主ビームを受光する受光部34aではプッシュプル信号を検出するとともに、副ビームを受光する受光部34b,34cではサブスポット信号をDC化させた信号を検出させ、受光部34b,34cで得られるDC化した信号を用いて受光部34aで得られるプッシュプル信号のオフセット成分のみをキャンセルすることで、トラックピッチが異なる複数の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができるものである。
【0079】
以上のように構成された光ピックアップ装置60において、光源31から光ビームが出射されると、回折素子62によって3ビームに分割され、ビームスプリッタ35を透過されて、コリメータレンズ36によって平行光とされ、対物レンズ33によって集光された光ディスク2の記録層にスポットが形成される。光ディスク2の記録層に集光された光ビームは、反射されて対物レンズ33及びコリメータレンズ36を経由して再びビームスプリッタ35に入射され、ビームスプリッタ35によって光路が変更されて、マルチレンズ37を介して光検出器34の各受光部34a,34b,34c上に集光される。
【0080】
尚、この光ピックアップ装置60における、回折素子62により分割された主ビーム及び副ビームは、対物レンズ33によって光ディスク2上に、図7に示すようなスポットを形成する。尚、図7中Sd20は、回折素子62を通過した0次光である主ビームのスポットを示すものであり、Sd21は、回折素子62の第1の回折部66(第2及び第3の領域62b,62c)により回折された+1次回折光である第1の副ビームのスポットを示すものであり、Sd22は、回折素子62の第1の回折部66により回折された−1次回折光である第2の副ビームのスポットを示すものであり、Sd23は、回折素子62の第2の回折部67(第1の領域62a)により回折された+1次回折光のスポットを示すものであり、Sd24は、回折素子62の第2の回折部67により回折された−1次回折光のスポットを示すものである。
【0081】
また、光ディスク2で反射された主ビーム及び副ビームは、各受光部34a〜34c上に、図8に示すようなスポットを形成する。尚、図8中Sk200は、光ディスクで反射された主ビームの戻り光のうち光ディスクで回折反射された際の0次光を示すものであり、Sk21b0は、光ディスクで反射された第1の副ビームの戻り光のうち往路において第2の領域62bにより回折された+1次回折光が光ディスクで回折反射された際の0次光を示すものであり、Sk21b1は、光ディスクで反射された第1の副ビームの戻り光のうち往路において第2の領域62bにより回折された+1次回折光が光ディスクで回折反射された際の−1次回折光を示すものであり、Sk21c0は、光ディスクで反射された第1の副ビームの戻り光のうち往路において第3の領域62cにより回折された+1次回折光が光ディスクで回折反射された際の0次光を示すものであり、Sk21c1は、光ディスクで反射された第1の副ビームの戻り光のうち往路において第3の領域62cにより回折された+1次回折光が光ディスクで回折反射された際の+1次回折光を示すものであり、Sk22b0は、光ディスクで反射された第2の副ビームの戻り光のうち往路において第2の領域62bにより回折された−1次回折光が光ディスクで回折反射された際の0次光を示すものであり、Sk22b1は、光ディスクで反射された第2の副ビームの戻り光のうち往路において第2の領域62bにより回折された−1次回折光が光ディスクで回折反射された際の−1次回折光を示すものであり、Sk22c0は、光ディスクで反射された第2の副ビームの戻り光のうち往路において第3の領域62cにより回折された−1次回折光が光ディスクで回折反射された際の0次光を示すものであり、Sk22c1は、光ディスクで反射された第2の副ビームの戻り光のうち往路において第3の領域62cにより回折された−1次回折光が光ディスクで回折反射された際の+1次回折光を示すものである。ここで、図8で示す受光部34aには、従来の所謂DPP方式の場合と同様に、光ディスクで反射された主ビームの戻り光のうち光ディスクで回折反射された際の±1次回折光がスポットSk200と重複して形成されているが、ここでは省略する。また、
図7で説明したスポットSd23,Sd24に集光された光ビームの光ディスクで回折反射された戻りの光ビームは、受光部34a〜34cに入射しないので図8中には図示しない。
【0082】
本発明を適用した光ピックアップ装置60は、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して情報の記録又は再生を行う際に、回折素子62により分割された主ビーム及び副ビームを用いてトラッキングエラー信号を得る光ピックアップ装置であって、回折素子62により回折して分割された主ビーム及び副ビームのうち副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように構成されていることから、副ビームによるサブスポットの位置調整を必要とせず、且つこの主ビーム及び副ビームの戻り光を検出することで、サブスポットの位置にかかわらず、メインスポットにより得られたプッシュプル信号から対物レンズ33のシフトによるオフセット成分を取り除いた良好なトラッキングエラー信号を得ることを可能とし、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができ、良好な記録及び再生を実現することができる。
【0083】
尚、上述の回折素子62では、光検出器34で検出するための主ビーム及び副ビームを生成するための第2及び第3の領域62b,62cは格子ピッチが等しい、すなわち同一の回折構造が形成されるように構成したが、これに限られるものではなく、例えば、図9に示すように、ラジアル方向に略垂直な分割線により第1乃至第3の領域に分割され、第1乃至第3の領域のうち一端側に形成された第2の領域に、主ビーム及び副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部と、他端側に形成された第3の領域に、主ビーム及び副ビームを生成するための第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部と、中央に形成された第1の領域に、第1及び第2の回折構造とは異なる第3の回折構造が形成されてなる第3の回折部とを有する回折素子を設けるように構成してもよい。
【0084】
次に、図9に示すような回折素子を備える光ピックアップ装置70について説明する。尚、以下の説明において、上述した光ピックアップ装置3と共通する部分については、共通の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0085】
本発明を適用した光ピックアップ装置70は、図3及び図9に示すように、光源31と、光源31から出射された光ビームを0次光及び±1次回折光からなる少なくとも3本の光ビームに回折して分割する回折素子72と、回折素子72に分割された3本の光ビームをそれぞれ光ディスク2の信号記録面として記録層上に集光する対物レンズ33と、光検出器34と、ビームスプリッタ35と、コリメータレンズ36と、マルチレンズ37とを備える。
【0086】
光ピックアップ装置70の回折素子72は、光源31とビームスプリッタ35との間に設けられ、図9に示すように、所定の領域に所定の回折構造が設けられており、入射する光ビームを少なくとも0次光である主ビームと、±1次回折光である副ビームとからなる3本の光ビームに分割する。
【0087】
また、回折素子72は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げるように、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域の一部が、所定の方向への回折を制限されている。
【0088】
具体的には、回折素子72は、図9に示すように、ラジアル方向Radに略垂直な複数(二つ)の分割線L31,L32により複数の領域72a,72b,72cに分割され、この複数の領域72a,72b,72cのうち、一端側に形成された第2の領域72bに、上述の主ビーム及び副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部76と、この複数の領域72a,72b,72cのうち、他端側に形成された第3の領域72cに、第1の回折構造とは異なるとともに、上述の主ビーム及び副ビームを生成するための第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部77と、この複数の領域72a,72b,72cのうち、中央に形成された第1の領域72aに、第1及び第2の回折構造とは異なる第3の回折構造が形成されてなる第3の回折部78とを有する。この第1の領域72a並びに第2及び第3の領域72b,72cには、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域Rの一部の領域を含んでいる。尚、図9中破線部で示される領域Rは、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域を示している。
【0089】
尚、ここでは、回折素子72の第1の領域72aには、第1及び第2の回折構造とは異なる第3の回折構造が形成されてなる第3の回折部78を設けることにより、この領域を通過する光ビームを第1及び第2の回折部76,77とは異なる方向に回折させて、第1及び第2の回折部76,77で回折された副ビームを受光する受光部34b,34cに入射させないように構成したが、これに限られるものではなく、回折素子72の第1の領域72aには、回折構造が形成されない透過部を設けてもよく、透過部を設けることにより、この透過部が、この領域を通過する光ビームを透過させることにより、第1及び第2の回折部76,77で回折された副ビームを受光する受光部34b,34cに入射させないように構成して、すなわち、第1及び第2の回折部76,77で回折された副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるようにしてもよい。
【0090】
すなわち、回折素子72は、第2及び第3の領域72b,72cに、上述の主ビーム及び副ビームを生成するための所定の第1及び第2の回折構造を有するとともに、第1の領域72aに含まれる、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子72上の領域Rの一部の領域に第1及び第2の回折構造とは異なる第3の回折構造が形成されることでこの一部の領域を通過する光ビームを第2及び第3の領域72b,72c(第1及び第2の回折部76,77)で生成された副ビームとは異なる方向に回折させることで、上述の副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる。
【0091】
ここで、回折素子72の第1乃至第3の回折部76,77,78は、図9に示すように、第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部76を構成する領域72bのうち領域Rに含まれるラジアル方向の寸法W31が次式(7)を満たすように形成されており、第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部77を構成する領域72cのうち領域Rに含まれるラジアル方向の寸法W32が次式(8)を満たすように形成されている。
W31≦(λ/2NA)/q×D ・・・(7)
W32≦(λ/2NA)/q×D ・・・(8)
但し、上記式(7)、(8)において、λ:光源31から出射される光ビームの波長、NA:対物レンズ33の開口数、q:複数の光ディスクのうちトラックピッチが最も大きい光ディスク(以下、「最大トラックピッチの光ディスク」ともいう。)のトラックピッチ、D:対物レンズ33の開口により決定される回折素子72上の有効径とする。尚、ここでDは、図9に示すように、上述した対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域Rの直径である。
【0092】
回折素子72は、上述のように構成されることにより、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げて、光ディスク2のトラックが読めないようにし、副ビームの光ディスク2からの戻り光を受光する受光部34b,34cにより検出されるサブスポット信号をDC化することができる。ここで、サブスポット信号をDC化することにより、メインスポットによるプッシュプル信号MPPのようなトラック横断毎に現れる正弦波信号は現れず、対物レンズ33のシフト等によって現れる不規則な成分であるオフセット成分のみが現れることとなる。
【0093】
回折素子72は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を光ディスク2のトラックが読めないように下げるように、主ビーム及び副ビームを生成することにより、受光部34a,34b,34cで検出される信号のうち、主ビームを受光する受光部34aではプッシュプル信号を検出するとともに、副ビームを受光する受光部34b,34cではサブスポット信号をDC化させた信号を検出させ、受光部34b,34cで得られるDC化した信号を用いて受光部34aで得られるプッシュプル信号のオフセット成分のみをキャンセルすることで、トラックピッチが異なる複数の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができるものである。
【0094】
以上のように構成された光ピックアップ装置70において、光源31から光ビームが出射されると、回折素子72によって3ビームに分割され、ビームスプリッタ35を透過されて、コリメータレンズ36によって平行光とされ、対物レンズ33によって集光された光ディスク2の記録層にスポットが形成される。光ディスク2の記録層に集光された光ビームは、反射されて対物レンズ33及びコリメータレンズ36を経由して再びビームスプリッタ35に入射され、ビームスプリッタ35によって光路が変更されて、マルチレンズ37を介して光検出器34の各受光部34a,34b,34c上に集光される。
【0095】
本発明を適用した光ピックアップ装置70は、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して情報の記録又は再生を行う際に、回折素子72により分割された主ビーム及び副ビームを用いてトラッキングエラー信号を得る光ピックアップ装置であって、回折素子72により回折して分割された主ビーム及び副ビームのうち副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように構成されていることから、副ビームによるサブスポットの位置調整を必要とせず、且つこの主ビーム及び副ビームの戻り光を検出することで、サブスポットの位置にかかわらず、メインスポットにより得られたプッシュプル信号から対物レンズ33のシフトによるオフセット成分を取り除いた良好なトラッキングエラー信号を得ることを可能とし、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができ、良好な記録及び再生を実現することができる。
【0096】
尚、上述の回折素子32,62,72では、それぞれラジアル方向Radに略垂直な二つの分割線により第1乃至第3の領域に分割されてなる回折素子の例について説明したが、本発明を適用した光ピックアップ装置を構成する回折素子は、これに限られるものではなく、例えば、ラジアル方向に略垂直な一又は複数の分割線による複数の領域に分割され、複数の領域のうち一又は複数の領域に、主ビーム及び副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部と、複数の領域のうちの残りの一又は複数の領域に、第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部、又は回折構造が形成されない透過部とを有する回折素子であってもよく、この回折素子の第2の回折部又は透過部が、残りの一又は複数の領域を通過する光ビームを異なる方向に回折させ、又は透過させることにより、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるようにしてもよい。
【0097】
次に、図10に示すように、ラジアル方向に略垂直な分割線により第1及び第2の領域に分割され、一方の領域に、主ビーム及び副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部と、他方の領域に、第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部とを有する回折素子を備える光ピックアップ装置80について説明する。尚、以下の説明において、上述した光ピックアップ装置3と共通する部分については、共通の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0098】
本発明を適用した光ピックアップ装置80は、図3及び図10に示すように、光源31と、光源31から出射された光ビームを0次光及び±1次回折光からなる少なくとも3本の光ビームに回折して分割する回折素子82と、回折素子82に分割された3本の光ビームをそれぞれ光ディスク2の信号記録面として記録層上に集光する対物レンズ33と、光検出器34と、ビームスプリッタ35と、コリメータレンズ36と、マルチレンズ37とを備える。
【0099】
光ピックアップ装置80の回折素子82は、光源31とビームスプリッタ35との間に設けられ、図10に示すように、所定の領域の所定の回折構造が設けられており、入射する光ビームを少なくとも0次光である主ビームと、±1次回折光である副ビームとからなる3本の光ビームに分割する。
【0100】
また、回折素子82は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げるように、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子82の領域の一部が、所定の方向への回折を制限されている。
【0101】
具体的には、回折素子82は、図10に示すように、ラジアル方向Radに略垂直な分割線L4により複数の領域82a,82bに分割され、この複数の領域82a,82bのうち、一方側に形成された第1の領域82aに、上述の主ビーム及び副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部86と、この複数の領域82a,82bのうち、他方側に形成された第2の領域82bに、第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部87とを有する。この第1の領域82a及び第2の領域82bには、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域Rの一部の領域を含んでいる。尚、図10中破線部で示される領域Rは、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域を示している。
【0102】
尚、ここでは、回折素子82の第2の領域82bには、第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部87を設けることにより、この領域を通過する意光ビームを第1の回折部86とは異なる方向に回折させて、第1の回折部86で回折された副ビームを受光する受光部34b,34cに入射させないように構成したが、これに限られるものではなく、回折素子82の第2の領域82bには、回折構造が形成されない透過部を設けてもよく、透過部を設けることにより、この透過部が、この領域を通過する光ビームを透過させることにより、第1の回折部86で回折された副ビームを受光する受光部34b,34cに入射させないように構成して、すなわち、第1の回折部86で回折された副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるようにしてもよい。
【0103】
すなわち、回折素子82は、第1の領域82aに、上述の主ビーム及び副ビームを生成するための所定の第1の回折構造を有するとともに、第2の領域82bに含まれる、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子82上の領域Rの一部の領域に第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されることでこの一部の領域を通過する光ビームを第1の領域82a(第1の回折部86)で生成された副ビームとは異なる方向に回折させることで、上述の副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる。
【0104】
ここで、回折素子82の主ビーム及び副ビームを生成する第1の回折部86は、図10に示すように、第1の回折部86を構成する領域82aのうち領域Rに含まれるラジアル方向の寸法W1が、上述した回折素子32と同様に、上述した式(1)を満たすように形成されている。
【0105】
回折素子82は、上述のように構成されることにより、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げて、光ディスク2のトラックが読めないようにし、副ビームの光ディスク2からの戻り光を受光する受光部34b,34cにより検出されるサブスポット信号をDC化することができる。ここで、サブスポット信号をDC化することにより、メインスポットによるプッシュプル信号MPPのようなトラック横断毎に現れる正弦波信号は現れず、対物レンズ33のシフト等によって現れる不規則な成分であるオフセット成分のみが現れることとなる。
【0106】
回折素子82は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を光ディスク2のトラックが読めないように下げるように、主ビーム及び副ビームを生成することにより、受光部34a,34b,34cで検出される信号のうち、主ビームを受光する受光部34aではプッシュプル信号を検出するとともに、副ビームを受光する受光部34b,34cではサブスポット信号をDC化させた信号を検出させ、受光部34b,34cで得られるDC化した信号を用いて受光部34aで得られるプッシュプル信号のオフセット成分のみをキャンセルすることで、トラックピッチが異なる複数の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができるものである。
【0107】
以上のように構成された光ピックアップ装置80において、光源31から光ビームが出射されると、回折素子82によって3ビームに分割され、ビームスプリッタ35を透過されて、コリメータレンズ36によって平行光とされ、対物レンズ33によって集光された光ディスク2の記録層にスポットが形成される。光ディスク2の記録層に集光された光ビームは、反射されて対物レンズ33及びコリメータレンズ36を経由して再びビームスプリッタ35に入射され、ビームスプリッタ35によって光路が変更されて、マルチレンズ37を介して光検出器34の各受光部34a,34b,34c上に集光される。
【0108】
本発明を適用した光ピックアップ装置80は、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して情報の記録又は再生を行う際に、回折素子82により分割された主ビーム及び副ビームを用いてトラッキングエラー信号を得る光ピックアップ装置であって、回折素子82により回折して分割された主ビーム及び副ビームのうち副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように構成されていることから、副ビームによるサブスポットの位置調整を必要とせず、且つこの主ビーム及び副ビームの戻り光を検出することで、サブスポットの位置にかかわらず、メインスポットにより得られたプッシュプル信号から対物レンズ33のシフトによるオフセット成分を取り除いた良好なトラッキングエラー信号を得ることを可能とし、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができ、良好な記録及び再生を実現することができる。
【0109】
尚、上述の回折素子32,62,72,82では、ラジアル方向Radに略垂直な一又は複数の分割線により複数の領域に分割され、この複数の領域のうち一又は複数の領域に、主ビーム及び副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部と、上述した第2の回折部又は透過部とを設けるように構成した回折素子の例について説明したが、本発明を適用した光ピックアップ装置を構成する回折素子は、これに限られるものではなく、例えば、対物レンズの入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子上の領域の外側部分にのみ、所定の方向に回折して対物レンズの入射瞳に入射させる副ビームを生成するための回折構造が形成されてなる回折部を有するような回折素子であってもよく、この回折素子が、対物レンズの入射瞳に入射する副ビームに対応する回折素子上の領域の一部が所定の方向への回折を制限されていることにより、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるようにしてもよい。
【0110】
次に、図11に示すような回折素子を備える光ピックアップ装置90について説明する。尚、以下の説明において、上述した光ピックアップ装置3と共通する部分については、共通の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0111】
本発明を適用した光ピックアップ装置90は、図3及び図11に示すように、光源31と、光源31から出射された光ビームを0次光及び±1次回折光からなる少なくとも3本の光ビームに回折して分割する回折素子92と、回折素子92に分割された3本の光ビームをそれぞれ光ディスク2の信号記録面として記録層に集光する対物レンズ33と、光検出器34と、ビームスプリッタ35と、コリメータレンズ36と、マルチレンズ37とを備える。
【0112】
光ピックアップ装置90の回折素子92は、光源31とビームスプリッタ35との間に設けられ、図11に示すように、所定の領域に所定の回折構造が設けられており、入射する光ビームを少なくとも0次光である主ビームと、±1次回折光である副ビームとからなる3本の光ビームに分割する。
【0113】
また、回折素子92は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げるように、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域の一部が、所定の方向への回折を制限されている。
【0114】
また、回折素子92は、図11に示すように、対物レンズ33の入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子92上の領域R0の外側であって、且つ、対物レンズ33の入射瞳に入射する副ビームに対応する回折素子92上の領域R1,R2内の一部の領域に、所定の方向に回折して対物レンズ33の入射瞳に入射させる副ビームを生成するための回折構造が形成されてなる回折部を有している。尚、図11中破線部で示される領域R0は、対物レンズ33の入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子92上の領域(以下、「主ビームの有効領域R0」ともいう。)を示し、領域R1,R2は、対物レンズ33の入射瞳に入射する第1及び第2の副ビームに対応する回折素子92上の領域(以下、「副ブームの有効領域R1,R2」ともいう。)を示している。これは、対物レンズ33のNAで制限される回折素子92上の有効なスポットは、回折素子で回折される0次光である主ビームと、±1次回折光である副ビームとでぞれぞれずれが生じているからである。上述した図3、図6、図9及び図10においても、この図11に示す主ビーム及び副ビームの有効領域が存在するが、各図で説明される回折素子はいずれもラジアル方向に略直交する分割線にのみ領域が分割されていることから、この点について考慮する必要がなく、これらの領域を代表して主ビームに対応する領域を「対物レンズの入射瞳に対応する回折素子上の領域」として説明したものである。
【0115】
具体的には、回折素子92は、図11に示すように、主ビームの有効領域R0外であってラジアル方向Radに略垂直な複数の分割線L51〜L54と、この分割線L51〜L54の端部を結ぶようにラジアル方向に形成された分割線L55〜L58とにより複数の領域92a,92b,92cに分割され、この複数の領域92a,92b,92cのうち、主ビームの有効領域R0の外側であって、且つ、副ビームの有効領域R1,R2内のそれぞれに含まれる領域92a,92bに、上述の副ビームを生成するための回折構造が形成されてなる回折部96を有する。尚、領域92cには、回折構造が形成されておらず透過部97として機能し、この領域92cに含まれる主ビームの有効領域R0を通過する光ビームを透過させることで、回折素子92は、主ビームを生成する。
【0116】
すなわち、回折素子92は、領域92a,92bに、上述の副ビームを生成するための所定の回折構造を有するとともに、対物レンズ33の入射瞳に入射する副ビームに対応する回折素子92上の領域R1,R2の一部の領域と、対物レンズ33の入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子92上の領域R0と、に入射した光ビームを回折させない透過部97が形成されることでこれらの領域を通過する光ビームを透過させることで、上述の副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる。
【0117】
ここで、回折素子92の副ビームを形成する回折部96は、図11に示すように、回折部96を構成する領域92a,92bのうち領域R1,R2に含まれるラジアル方向の寸法W1が、上述した回折素子32と同様に、上述した式(1)を満たすように形成されている。
【0118】
回折素子92は、上述のように構成されることにより、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げて、光ディスク2のトラックが読めないようにし、副ビームの光ディスク2からの戻り光を受光する受光部34b,34cにより検出されるサブスポット信号をDC化することができる。ここで、サブスポット信号をDC化することにより、メインスポットによるプッシュプル信号MPPのようなトラック横断毎に現れる正弦波信号は現れず、対物レンズ33のシフト等によって現れる不規則な成分であるオフセット成分のみが現れることとなる。
【0119】
回折素子92は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を光ディスク2のトラックが読めないように下げるように、主ビーム及び副ビームを生成することにより、受光部34a,34b,34cで検出される信号のうち、主ビームを受光する受光部34aではプッシュプル信号を検出するとともに、副ビームを受光する受光部34b,34cではサブスポット信号をDC化させた信号を検出させ、受光部34b,34cで得られるDC化した信号を用いて受光部34aで得られるプッシュプル信号のオフセット成分のみをキャンセルすることで、トラックピッチが異なる複数の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができるものである。
【0120】
以上のように構成された光ピックアップ装置90において、光源31から光ビームが出射されると、回折素子92によって3ビームに分割され、ビームスプリッタ35を透過されて、コリメータレンズ36によって平行光とされ、対物レンズ33によって集光された光ディスク2の記録層にスポットが形成される。光ディスク2の記録層に集光された光ビームは、反射されて対物レンズ33及びコリメータレンズ36を経由して再びビームスプリッタ35に入射され、ビームスプリッタ35によって光路が変更されて、マルチレンズ37を介して光検出器34の各受光部34a,34b,34c上に集光される。
【0121】
尚、この光ピックアップ装置90における、回折素子92により分割された主ビーム及び副ビームは、対物レンズ33によって光ディスク2上に、図12に示すようなスポットを形成する。尚、図12中Sd30は、回折素子92を通過した0次光である主ビームのスポットを示すものであり、Sd31は、回折素子92の回折部96(領域92a)により回折された+1次回折光である第1の副ビームのスポットを示すものであり、Sd32は、回折素子92の回折部96(領域92b)により回折された−1次回折光である第2の副ビームのスポットを示すものである。
【0122】
本発明を適用した光ピックアップ装置90は、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して情報の記録又は再生を行う際に、回折素子92により分割された主ビーム及び副ビームを用いてトラッキングエラー信号を得る光ピックアップ装置であって、回折素子92により回折して分割された主ビーム及び副ビームのうち副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように構成されていることから、副ビームによるサブスポットの位置調整を必要とせず、且つこの主ビーム及び副ビームの戻り光を検出することで、サブスポットの位置にかかわらず、メインスポットにより得られたプッシュプル信号から対物レンズ33のシフトによるオフセット成分を取り除いた良好なトラッキングエラー信号を得ることを可能とし、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができ、良好な記録及び再生を実現することができる。
【0123】
また、光ピックアップ装置90は、回折素子92の回折部96が対物レンズの入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子上の領域R0の外側部分に設けられていることから、0次光の利用効率を高めることができ、レーザ利用効率を高めることができる。
【0124】
尚、上述の回折素子92では、対物レンズの入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子上の領域R0の外側部分であるとともに、ラジアル方向Radに略垂直な複数の分割線L51〜L54の内側の領域92a,92bに、副ビームを生成するための回折構造が形成されてなる回折部を有するように構成したが、これに限られるものではなく、例えば、図13に示すように、対物レンズの入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子上の領域の外側部分であるとともに、ラジアル方向に略垂直な複数の分割線の外側の領域に、所定の方向に回折して対物レンズの入射瞳に入射させる副ビームを生成するための回折構造が形成されてなる回折部を有する回折素子を設けるように構成してもよい。
【0125】
次に、図13に示すような回折素子を備える光ピックアップ装置110について説明する。尚、以下の説明において、上述した光ピックアップ装置3と共通する部分については、共通の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0126】
本発明を適用した光ピックアップ装置110は、図3及び図13に示すように、光源31と、光源31から出射された光ビームを0次光及び±1次回折光からなる少なくとも3本の光ビームに回折して分割する回折素子112と、回折素子112に分割された3本の光ビームをそれぞれ光ディスク2の信号記録面として記録層に集光する対物レンズ33と、光検出器34と、ビームスプリッタ35と、コリメータレンズ36と、マルチレンズ37とを備える。
【0127】
光ピックアップ装置110の回折素子112は、光源31とビームスプリッタ35との間に設けられ、図13に示すように、所定の領域に所定の回折構造が設けられており、入射する光ビームを少なくとも0次光である主ビームと、±1次回折光である副ビームとからなる3本の光ビームに分割する。
【0128】
また、回折素子112は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げるように、対物レンズ33の入射瞳に対応する回折素子上の領域の一部が、所定の方向への回折を制限されている。
【0129】
また、回折素子112は、図13に示すように、対物レンズ33の入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子112上の領域R0の外側であって、且つ、対物レンズ33の入射瞳に入射する副ビームに対応する回折素子112上の領域R1,R2内の一部の領域に、所定の方向に回折して対物レンズ33の入射瞳に入射させる副ビームを生成するための回折構造が形成されてなる回折部を有している。尚、図13中破線部で示される領域R0は、対物レンズ33の入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子112上の領域(以下、「主ビームの有効領域R0」ともいう。)を示し、領域R1,R2は、対物レンズ33の入射瞳に入射する第1及び第2の副ビームに対応する回折素子112上の領域(以下、「副ブームの有効領域R1,R2」ともいう。)を示している。
【0130】
具体的には、回折素子112は、図13に示すように、主ビームの有効領域R0外であってラジアル方向Radに略垂直な複数の分割線L61〜L64と、この分割線L61〜L64の端部から外側に向けてラジアル方向に形成された分割線L65〜L68とにより複数の領域112a,112b,112c,112d,112eに分割され、この複数の領域112a〜112eのうち、主ビームの有効領域R0の外側であって、且つ、副ビームの有効領域R1,R2内のそれぞれに含まれる領域112a,112b,112c,112dに、上述の副ビームを生成するための回折構造が形成されてなる回折部116を有する。尚、領域112eには、回折構造が形成されておらず透過部117として機能し、この領域112eに含まれる主ビームの有効領域R0を通過する光ビームを透過させることで、回折素子112は、主ビームを生成する。
【0131】
すなわち、回折素子112は、領域112a〜112dに、上述の副ビームを生成するための所定の回折構造を有するとともに、対物レンズ33の入射瞳に入射する副ビームに対応する回折素子112上の領域R1,R2の一部の領域と、対物レンズ33の入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子112上の領域R0と、に入射した光ビームを回折させない透過部117が形成されることでこれらの領域を通過する光ビームを透過させることで、上述の副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる。
【0132】
ここで、回折素子92の回折部116及び透過部117は、図13に示すように、透過部117を構成する領域112eのうち領域R1,R2に含まれるとともに、回折部116を構成する領域112a,112bの間に位置する部分、及び領域112c,112dの間に位置する部分のラジアル方向の寸法W2が上述した回折素子62と同様に、上述した式(6)を満たすように形成されている。
【0133】
回折素子112は、上述のように構成されることにより、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のMTFのカットオフ周波数を下げて、光ディスク2のトラックが読めないようにし、副ビームの光ディスク2からの戻り光を受光する受光部34b,34cにより検出されるサブスポット信号をDC化することができる。ここで、サブスポット信号をDC化することにより、メインスポットによるプッシュプル信号MPPのようなトラック横断毎に現れる正弦波信号は現れず、対物レンズ33のシフト等によって現れる不規則な成分であるオフセット成分のみが現れることとなる。
【0134】
回折素子112は、副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を光ディスク2のトラックが読めないように下げるように、主ビーム及び副ビームを生成することにより、受光部34a,34b,34cで検出される信号のうち、主ビームを受光する受光部34aではプッシュプル信号を検出するとともに、副ビームを受光する受光部34b,34cではサブスポット信号をDC化させた信号を検出させ、受光部34b,34cで得られるDC化した信号を用いて受光部34aで得られるプッシュプル信号のオフセット成分のみをキャンセルすることで、トラックピッチが異なる複数の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができるものである。
【0135】
以上のように構成された光ピックアップ110において、光源31から光ビームが出射されると、回折素子112によって3ビームに分割され、ビームスプリッタ35を透過されて、コリメータレンズ36によって平行光とされ、対物レンズ33によって集光された光ディスク2の記録層にスポットが形成される。光ディスク2の記録層に集光された光ビームは、反射されて対物レンズ33及びコリメータレンズ36を経由して再びビームスプリッタ35に入射され、ビームスプリッタ35によって光路が変更されて、マルチレンズ37を介して光検出器34の各受光部34a,34b,34c上に集光される。
【0136】
本発明を適用した光ピックアップ装置110は、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して情報の記録又は再生を行う際に、回折素子112により分割された主ビーム及び副ビームを用いてトラッキングエラー信号を得る光ピックアップ装置であって、回折素子112により回折して分割された主ビーム及び副ビームのうち副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように構成されていることから、副ビームによるサブスポットの位置調整を必要とせず、且つこの主ビーム及び副ビームの戻り光を検出することで、サブスポットの位置にかかわらず、メインスポットにより得られたプッシュプル信号から対物レンズ33のシフトによるオフセット成分を取り除いた良好なトラッキングエラー信号を得ることを可能とし、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクのいずれに対しても良好なトラッキングエラー信号を得ることができ、良好な記録及び再生を実現することができる。
【0137】
また、光ピックアップ装置110は、回折素子112の回折部116が対物レンズの入射瞳に入射する主ビームに対応する回折素子上の領域R0の外側部分に設けられていることから、0次光の利用効率を高めることができ、レーザ利用効率を高めることができる。
【0138】
また、本発明を適用した光ディスク装置1は、上述の光ピックアップ装置3,60,70,80,90,110を備えることにより、回折素子32,62,72,82,92,112により回折された主ビーム及び副ビームの光ディスク2からの戻り光を用いてトラッキングエラー信号を生成する際に、回折素子が副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように構成されていることにより、サブスポットのトラッキング方向の位置によらず良好なトラッキングエラー信号を得ることができ、トラックピッチの異なる複数種類の光ディスクに対して良好なトラッキングエラー信号を得ることができ、良好な記録再生特性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明を適用した光ディスク装置を示すブロック回路図である。
【図2】本発明を適用した光ピックアップ装置の光学系を示す光路図である。
【図3】本発明を適用した光ピックアップ装置を構成する回折素子を示す平面図である。
【図4】本発明を適用した光ピックアップ装置を構成する光検出器及び受光部上に形成されるスポットを示す平面図である。
【図5】図3に示す回折素子により回折された各光ビームが光ディスク上に集光されることにより形成されたスポットを示す平面図である。
【図6】本発明を適用した光ピックアップ装置を構成する回折素子の他の例を示す平面図である。
【図7】図6に示す回折素子により回折された各光ビームが光ディスク上に集光されることにより形成されたスポットを示す平面図である。
【図8】図6に示す回折素子を用いた光ピックアップ装置を構成する光検出器の受光部上に形成されるスポットを示す平面図である。
【図9】本発明を適用した光ピックアップ装置を構成する回折素子の更に他の例を示す平面図である。
【図10】本発明を適用した光ピックアップ装置を構成する回折素子の更に他の例を示す平面図である。
【図11】本発明を適用した光ピックアップ装置を構成する回折素子の更に他の例を示す図であり、対物レンズの入射瞳に入射する主ビームに対応する領域の外側に回折部が形成された例を示す平面図である。
【図12】図11に示す回折素子により回折された各光ビームが光ディスク上に集光されることにより形成されたスポットを示す平面図である。
【図13】本発明を適用した光ピックアップ装置を構成する回折素子の更に他の例を示す平面図である。
【図14】DPP方式を採用した従来の光ピックアップ装置における光ディスク上に集光される各スポット及び受光部上に集光される各スポットを示す平面図である。
【符号の説明】
【0140】
1 光ディスク装置、 2 光ディスク、 3 光ピックアップ装置、 4 スピンドルモータ、 5 送りモータ、 9 サーボ制御部、 31 光源、 32 回折素子、 33 対物レンズ、 34 光検出器、 35 ビームスプリッタ、 36 コリメータレンズ、 37 マルチレンズ、 41 第1の回折部、 42 第2の回折部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なるトラックピッチで記録トラックが設けられた複数の光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において、
所定の波長の光ビームを出射する光源と、
上記光源から出射された光ビームを所定の方向に回折して主ビーム及び副ビームに分割する回折素子と、
上記回折素子に分割された上記主ビーム及び副ビームをそれぞれ光ディスクの記録層に集光する対物レンズと、
上記光ディスクからの戻り光のうち主ビームを受光する主受光部と、上記戻り光のうち副ビームを受光する副受光部とを有する光検出器とを備え、
上記回折素子は、上記副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように、上記対物レンズの入射瞳に対応する回折素子上の領域の一部が上記所定の方向への回折を制限されている光ピックアップ装置。
【請求項2】
上記回折素子は、上記所定の方向へ回折して上記主ビーム及び上記副ビームを生成するための所定の第1の回折構造を有するとともに、上記対物レンズの入射瞳に対応する回折素子上の領域の一部の領域に、上記第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されることで上記一部の領域を通過する光ビームを上記所定の方向と異なる方向に回折させ、又は透過部が形成されることで上記一部の領域を通過する光ビームを透過させることにより、上記副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
上記回折素子は、上記ラジアル方向に略垂直な一又は複数の分割線により複数の領域に分割され、
上記回折素子は、上記複数の領域のうちの一又は複数の領域に、上記所定の方向に回折して上記主ビーム及び上記副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部と、上記複数の領域のうちの残りの一又は複数の領域に、上記第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部、又は回折構造が形成されない透過部とを有し、
上記第2の回折部又は透過部は、上記残りの一又は複数の領域を通過する光ビームを上記所定の方向と異なる方向に回折させ、又は透過させることにより、上記副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
上記回折素子は、上記ラジアル方向に略垂直な分割線により第1乃至第3の領域に分割され、
上記回折素子は、上記第1乃至第3の領域のうち中央に形成された第1の領域に、上記主ビーム及び上記副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部と、上記第2及び第3の領域に、上記第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部、又は回折構造が形成されない透過部とを有し、
上記第2の回折部又は透過部は、上記残りの一又は複数の領域を通過する光ビームを上記所定の方向と異なる方向に回折させ、又は透過させることにより、上記副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
上記第1の回折部は、上記ラジアル方向の寸法Wが次式(1)を満たすように形成されている請求項4記載の光ピックアップ装置。
W≦(λ/2NA)/q×D ・・・(1)
但し、上記式(1)において、
λ:上記光源から出射される光ビームの波長、NA:上記対物レンズの開口数、q:上記複数の光ディスクのうちトラックピッチが最も大きい光ディスクのトラックピッチ、D:上記対物レンズの開口により決定される上記回折素子上の有効径とする。
【請求項6】
上記回折素子は、上記ラジアル方向に略垂直な分割線により第1乃至第3の領域に分割され、
上記回折素子は、上記第1乃至第3の領域のうち両端に形成された第2及び第3の領域に、上記主ビーム及び上記副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部と、上記第1の領域に、上記第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部、又は回折構造が形成されない透過部とを有し、
上記第2の回折部又は透過部は、上記残りの一又は複数の領域を通過する光ビームを上記所定の方向と異なる方向に回折させ、又は透過させることにより、上記副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
上記第2の回折部又は透過部は、上記ラジアル方向の寸法Wが次式(2)を満たすように形成されている請求項6記載の光ピックアップ装置。
W≧(λ/2NA)/q×D ・・・(2)
但し、上記式(2)において、
λ:上記光源から出射される光ビームの波長、NA:上記対物レンズの開口数、q:上記複数の光ディスクのうちトラックピッチが最も大きい光ディスクのトラックピッチ、D:上記対物レンズの開口により決定される上記回折素子上の有効径とする。
【請求項8】
上記回折素子は、上記ラジアル方向に略垂直な分割線により第1及び第2の領域に分割され、
上記回折素子は、上記第1の領域に、上記主ビーム及び上記副ビームを生成するための第1の回折構造が形成されてなる第1の回折部と、上記第2の領域に、上記第1の回折構造とは異なる第2の回折構造が形成されてなる第2の回折部、又は回折構造が形成されない透過部とを有し、
上記第2の回折部又は透過部は、上記残りの一又は複数の領域を通過する光ビームを上記所定の方向と異なる方向に回折させ、又は透過させることにより、上記副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
上記回折素子は、上記対物レンズの入射瞳に入射する上記主ビームに対応する上記回折素子上の領域の外側に、上記所定の方向に回折して上記対物レンズの入射瞳に入射させる上記副ビームを生成するための回折構造が形成されてなる回折部を有し、
上記回折素子は、上記対物レンズの入射瞳に入射する上記副ビームに対応する回折素子上の領域の一部が上記所定の方向への回折を制限されていることにより、上記副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げる請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項10】
上記回折素子は、上記複数の光ディスクの全ての光ディスクのトラックピッチの空間周波数が上記カットオフ周波数以上となるように、上記対物レンズの入射瞳に対応する回折素子上の領域の一部が上記所定の方向への回折を制限されている請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項11】
それぞれ異なるトラックピッチで記録トラックが設けられた複数の光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置と、上記光ディスクを回転する回転駆動手段とを備える光ディスク装置において、
上記光ピックアップ装置は、所定の波長の光ビームを出射する光源と、
上記光源から出射された光ビームを所定の方向に回折して主ビーム及び副ビームに分割する回折素子と、
上記回折素子に分割された上記主ビーム及び副ビームをそれぞれ光ディスクの記録層に集光する対物レンズと、
上記光ディスクからの戻り光のうち主ビームを受光する主受光部と、上記戻り光のうち副ビームを受光する副受光部とを有する光検出器とを備え、
上記回折素子は、上記副ビームで形成されるサブスポットのラジアル方向のカットオフ周波数を下げるように、上記対物レンズの入射瞳に対応する回折素子上の領域の一部が上記所定の方向への回折を制限されている光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−234807(P2008−234807A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77345(P2007−77345)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】