説明

光ピックアップ装置

【課題】 ジッター悪化のない良好な信号再生を出来る光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】 光源1と、この光源1から出射されるレーザ光を光ディスクに集光する対物レンズ13と、からなる光ピックアップ装置において、レーザ光の光軸上にあって、光源1と対物レンズ13との間に配置され、レーザ光から第1偏光面と第2偏光面に分離し、光軸に対して所定の傾斜角で傾斜して配置され、傾斜角によって分離された第1偏光面と第2偏光面のレーザ光との分光比を変えて出射する1/2波長板2と、1/2波長板2を光軸を中心として所定の傾斜角に傾斜させる角度変更手段5と、1/2波長板2から出射される第1偏光面のレーザ光を透過させ、第2偏光面のレーザ光を反射させる偏光膜を有した偏光ビームスプリッタ7と、偏光ビームスプリッタ7の偏光膜7aを透過した第1偏光面のレーザ光を対物レンズ13に入射させる光路変更手段16と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に用いられる光ピックアップ装置に関し、特に情報の高密度記録及び再生に好適な光ピックアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大量の情報を高密度に記録できるものとして光ディスクが広く普及している。光ディスクとしては再生専用のもの、記録再生できるものが実用化されており、記録密度の向上も著しい。
相変化ディスクや光磁気ディスクに代表される記録再生型(RW:Re−Writable)光ディスクでは、次第に、高密度大容量化が求められ、これに対応した光ピックアップ装置では、半導体レーザの短波長化、対物レンズの高NA(Numerical Aperture)化が図られ、対物レンズを介して集光される光ディスク上でのレーザスポットの小径化が進められている。
【0003】
しかしながら、短波長(青色光)の半導体レーザは、特に小出力使用時(再生時)においては、RIN(Relative Intensity Noise:相対雑音強度)が増大し、再生時におけるジッターを悪化させ、良好な信号再生を行うことが出来ないことが判明した。
これに対して、短波長の半導体レーザと対物レンズとの間の光路中に、半導体レーザの光量を制御する液晶を配置して、再生時には、液晶の光透過量が少なくなるように制御して、大出力の半導体レーザの光量を少なくして対物レンズを透過するようにする提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−149309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、短波長の半導体レーザと対物レンズとの光路中に、電圧の印加できる液晶層を設け、光ディスク上の信号の再生時に、RINが所定のレベル以下となるように半導体レーザの出力をあげ、所定以上に放射されるレーザ光を、液晶層の光透過率を制御して、減衰させる、従来の方法においては、液晶及びその駆動回路が比較的高価になること、液晶の動作が所定の温度範囲内で必ずしも安定でないこと、特に、例えば−10℃の低温になると、液晶の動作速度が遅くなる、場合によっては動作しなくなり、所定の再生動作が出来なくなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、光ピックアップ装置において、短波長の半導体レーザ使用時において、RINの低い、ジッター悪化のない良好な信号再生を出来る、安価な、光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための手段として、本発明は、光源と、前記光源から出射されるレーザ光を光ディスクに集光する対物レンズと、からなる光ピックアップ装置において、前記レーザ光の光軸上にあって、前記光源と前記対物レンズとの間に配置され、前記レーザ光から第1偏光面と第2偏光面に分離し、前記光軸に対して所定の傾斜角で傾斜して配置され、前記傾斜角によって前記分離された前記第1偏光面と前記第2偏光面のレーザ光との分光比を変えて出射する1/2波長板と、前記1/2波長板を前記光軸を中心として前記所定の傾斜角に傾斜させる角度変更手段と、前記1/2波長板から出射される前記第1偏光面のレーザ光を透過させ、前記第2偏光面のレーザ光を反射させる偏光膜を有した偏光ビームスプリッタと、前記偏光ビームスプリッタの偏光膜を透過した前記第1偏光面のレーザ光を前記対物レンズに入射させる光路変更手段と、を有することを特徴とする光ピックアップ装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記レーザ光の光軸上にあって、前記光源と前記対物レンズとの間に配置され、前記レーザ光から第1偏光面と第2偏光面に分離し、前記光軸に対して所定の傾斜角で傾斜して配置され、前記傾斜角によって前記分離された前記第1偏光面と前記第2偏光面のレーザ光との分光比を変えて出射する1/2波長板と、前記1/2波長板を前記光軸を中心として前記所定の傾斜角に傾斜させる角度変更手段と、前記1/2波長板から出射される前記第1偏光面のレーザ光を透過させ、前記第2偏光面のレーザ光を反射させる偏光膜を有した偏光ビームスプリッタと、前記偏光ビームスプリッタの偏光膜を透過した前記第1偏光面のレーザ光を前記対物レンズに入射させる光路変更手段と、を有するので、記録時には強い強度のレーザ光を光ディスクに照射し、再生時には弱い強度のレーザ光を光ディスクに照射することができる。このため、RINの低い、ジッター悪化のない良好な信号再生を出来る、安価な、光ピックアップ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態につき、好ましい実施例により、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の光ピックアップ装置の実施例を示す概略構成図である。図2は、1/2波長板の回転角によるP偏光成分/S偏光成分分光比を示すグラフ図である。図3は、本発明に係る角度変更手段の例を示す構成図である。
図1に示すように、本実施例の光ピックアップ装置10は、短波長(青色光)の半導体レーザ(以下、単にLDともいう)1と、半導体レーザ1より放射されるレーザ光20の光軸上に順次配置された2分の1波長板(以下、単に1/2波長板ともいう)2、回折格子3、偏光ビームスプリッタ7、コリメータレンズ15、及びプリズム16とから構成されている。
【0010】
さらに、偏光ビームスプリッタ7には、レーザ光20の光軸に対して45度を成す偏光膜7aが配置されており、この偏光膜7aによってレーザ光20e(後述する)が反射される方向に、検出レンズ6及びモニタ用光検出器(フォトダイオード:PD)4が順次配置されている。偏光膜7aはS偏光を反射し、P偏光を透過する性質を有している。
また、偏光ビームスプリッタ7において、検出レンズ6及びモニタ用光検出器4とが配置されている側とは反対側には、偏光ビームスプリッタ7より離れて、検出レンズ8、シリンドリカルレンズ9及びフォトダイオード11とが順次配置されている。
【0011】
一方、プリズム16には、レーザ光20の光軸に対して45度を成す反射膜12が設けられており、後述する入射するレーザ光20dは反射されて、方向を変えるようになっており、この反射された方向には、4分の1波長板(以下、単に1/4波長板ともいう)17及び対物レンズ13が順次配置されている。
対物レンズ13から所定の距離離れて、この光ピックアップ装置10で信号の記録再生が行われる光ディスク14が配置される。
【0012】
本実施例の光ピックアップ装置10は、光学系としては無限光学系であり、レーザ光20の整形は行っておらず、半導体レーザ1から放射されるレーザ光20の放射角の方向は、光ディスク14に照射される時には、タンジェンシャル方向、ラジアル方向よりも総合的に有利とされるタンジェンシャル方向及びラジアル方向に対してそれぞれ45度の方向に成るように設定されている。
【0013】
1/2波長板2は、角度変更手段5によって、レーザ光20の光軸を中心として任意の角度に回転、設定出来るように構成されている。
図2に示すように、1/2波長板2は、入射する例えばP偏光に対して、偏光方向を調整して出射するものであり、すなわち出射する偏光をP偏光とS偏光に分光し、入射光の光軸の周りに回転する角度により、そのP偏光とS偏光との割合を変化させることが出来る。この1/2波長板2の分光比及び透過量は、少なくとも、これが配置される光ピックアップ装置の使用温度範囲である−10℃から+80℃の範囲においては、ほとんど変化しない。
同図に示すように、例えば、相対的に角度0度の場合には、S偏光だけを出射し、P偏光を出射しない。角度約23度の時には、P偏光及びS偏光を同じ割合で、出射する。角度45度の時には、P偏光のみを出射し、S偏光を出射しない。
【0014】
また、図1に示すように、半導体レーザ1より放射されるレーザ光20は、例えば楕円光のP偏光であり、所定角度に設定された1/2波長板2を透過することによって、所定の分光比率を有するP偏光とS偏光の混合したレーザ光20aとなって、回折格子3に入射する。
レーザ光20aは、回折格子3を透過することにより、互いに進行方向の異なる3本の光束(メインビームと一対のサイドビーム)に分離されたレーザ光20eとなり、偏光ビームスプリッタ7に入射する。
【0015】
偏光ビームスプリッタ7に入射したレーザ光20eは、そのS偏光成分は、偏光膜7aにより反射され、レーザ光20bとなって出射され、検出レンズ6を透過することによって収束され、モニタ用光検出器4に照射される。モニタ用光検出器4は、照射されたレーザ光20bの強度を測定しモニタし、モニタ信号を半導体レーザ1の図示しない駆動部に供給する。駆動部は、半導体レーザ1を出力が所定の値で一定となるように制御する。
【0016】
一方、偏光ビームスプリッタ7に入射したレーザ光20eのP偏光成分は、すべて偏光膜7aを透過して、直進してレーザ光20dとして出射され、コリメータレンズ15を透過することによって、平行光とされ、プリズム16の反射膜12に達して、ここで反射され方向を変えて、1/4波長板17を透過した後、対物レンズ13に入射する。対物レンズ13に入射したレーザ光20dは、対物レンズ13を透過することによって収束されて出射し、光ディスク14の所定の位置に所定の光スポットで照射される。
【0017】
光ディスク14に照射された3本の光束からなるレーザ光20dは、ここで反射されて、対物レンズ13に入射し、対物レンズ13を透過することによって、平行光となって出射し、再び1/4波長板17を透過することにより、3本の光束からなるS偏光のレーザ光20cとなる。このレーザ光20cは、プリズム16の反射膜12に到達し、反射されて方向を変え、コリメータレンズ15に到達し、透過し、偏光ビームスプリッタ7に入射する。
【0018】
偏光ビームスプリッタ7に入射したS偏光のレーザ光20cは偏光膜7aに到達した後反射されて方向を変えて、偏光ビームスプリッタ7より出射する。この出射したレーザ光20cは検出レンズ8及びシリンドリカルレンズ9を順次透過し、収束されて、フォトダイオードに11に照射される。フォトダイオード11で検出された3本の光束のレーザ光20cは、例えば、フォーカスエラー信号の検出としては非点収差法で、トラッキングエラー信号の検出法としては、3スポット法で、図示しない信号系で処理される。
【0019】
次に、光ディスク14への信号の記録と再生時の動作について説明する。
上述したように、短波長の半導体レーザ1から出射されたレーザ光20は1/2波長板2を透過することで偏光方向を調整され、P偏光成分は偏光ビームスプリッタ7によって全て透過されて光ディスク14に向かい、S偏光成分は全て偏光ビームスプリッタ7によって反射され、モニタ用光検出器4に向かう。
【0020】
そこで、図2に示したとおり、1/2波長板2の回転角によってP偏光成分、S偏光成分の光量調整ができ、光ディスク14に向かう光量を、記録時および再生時に合わせて最適値に調整することができる。
すなわち、記録時、再生時各々において1/2波長板2の最適回転角をあらかじめ調整時に決めておき、1/2波長板2の角度変更手段5によって決められた回転角に合わせることにより、記録時は半導体レーザ1の出力を、記録性能が確保できる程度になるべく小さくし、1/2波長板2から出力されるP偏光成分を例えば7mWになるようにし、再生時には半導体レーザ1がRINの影響を受けない出力範囲まで出力を上げた状態で、1/2波長板2から出力される再生に必要なP偏光を例えば0.7mW〜0.8mWとなるようにする。
【0021】
このように、1/2波長板2をレーザ光20の光軸の周りに記録時及び再生時にそれぞれ所定の角度になるようにすることにより、半導体レーザ1の出力を、記録時には光ディスクに到達するレーザ光20dを性能確保できるように小さく出来、再生時には、RINが所定レベル以下となる半導体レーザ1の出力とするために、再生に必要以上のレーザ光20を放射するものの、実際に光ディスクに到達する再生に用いるレーザ光20dは所定のレベルに減衰することが出来、記録、再生各々に必要な光ディスク14上でのレーザ光量を得ることができる。
偏光ビームスプリッタ7で反射されるS偏光のレーザ光20bはモニタ用光検出器4によって検出され、半導体レーザの出力のAPC(Auto Power Control)に利用される。
【0022】
次に、図3に示す、角度変更手段5の一例を説明する。
ここで、図3の(a)は角度変更手段5の正面図を、図3の(b)は角度変更手段の側面図をそれぞれ示す。
同図に示すように、角度変更手段(1/2波長板回転駆動機構)5は、1/2波長板2を保持するホルダ22と、ホルダ22の円周を成す外周部に設けられたウォームホイル23と噛合うウォームギア21と、ウォームギア21に連結してこれを回転させるためのステッピングモータ24と、ホルダ22を回転自在に保持しステッピングモータ24を固定するオプトベース25と、オプトベース25に固定されホルダ22を回転自在に支える支持板26とから構成される。
【0023】
ホルダ22の内部は中空になっており、ホルダ22に近接して配置される半導体レーザ1から放射されるレーザ光20が1/2波長板2に支障なく到達できるようになっている。
レーザ光20の光軸と1/2波長板2の面の中心の法線とは略一致するように配置してある。
レーザ光20は1/2波長板2を透過することによって、P偏光とS偏光との分光比が所定の値となっているレーザ光20aとなる。
ステッピングモータ24を回転させることにより、これに連結するウォームギア21が回転すると共に、ウォームギア21に噛合うウォームホイル23が回転して、ホルダ22が回転し、1/2波長板2が回転する。
【0024】
ステッピングモータ24の回転数を所定の値とすることにより、1/2波長板2のレーザ光20に対する相対的な回転角度を決定できる。
このようにして、1/2波長板2の回転角度を所定の値とすることにより、これを透過して出射されるレーザ光20aのP偏光/S偏光の分光比を所定の値とし、半導体レーザ1の出力を調整することによって、光ディスク14への信号の記録又は再生に用いるP偏光のレーザ光20dを所定の光量とすることが出来る。
上述した角度変更手段5は、少ない部品数と安価な部品で構成することが出来るので全体としては、安価となる。
【0025】
以上説明したように、本実施例の光ピックアップ装置は、半導体レーザからの出射されて入射するレーザ光の偏光方向(分光比)を、光軸を中心として回転させることで制御して出射する1/2波長板と、1/2波長板から出射されるレーザ光を直線偏光成分により分割する偏光ビームスプリッタと、1/2波長板からの出力光量を検出するモニタ用光検出器と、1/2波長板を光軸を回転中心として回転駆動する駆動機構とを備えており、半導体レーザと偏光ビームスプリッタの間に1/2波長板を配置することにより、半導体レーザの出射光に対する光ディスクに照射される光量を調整することが可能となる。すなわち、記録時において半導体レーザからの出射光を高い透過率で光ディスク上に集光させ、再生時においては透過率を下げ、半導体レーザのRIN(相対雑音強度)を発生しない出力領域で使用することができ、再生時のジッター悪化を回避することができる。また、1/2波長板は使用する広い温度範囲でほとんど分光比に変化がないので、安定な記録又は再生が可能となる。さらに、駆動機構は安価に構成できるので、安価な光ピックアップ装置を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の光ピックアップ装置の実施例を示す概略構成図である。
【図2】1/2波長板の回転角によるP偏光成分/S偏光成分分光比を示すグラフ図である。
【図3】本発明に係る角度変更手段の例を示すの構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1…半導体レーザ、2…2分の1(1/2)波長板、3…回折格子、4…モニタ用光検出器(フォトダイオード:PD)、5…角度変更手段(1/2波長板回転駆動機構)、6…検出レンズ、7…偏光ビームスプリッタ、7a…偏光膜、8…検出レンズ、9…シリンドリカルレンズ、10…光ピックアップ装置、11…フォトダイオード、12…反射膜、13…対物レンズ、14…光ディスク、15…コリメータレンズ、16…プリズム、17…1/4波長板、20…レーザ光、21…ウォームギア、22…ホルダ、23…ウォームホイル、24…ステッピングモータ、25…オプトベース、26…支持板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から出射されるレーザ光を光ディスクに集光する対物レンズと、からなる光ピックアップ装置において、
前記レーザ光の光軸上にあって、前記光源と前記対物レンズとの間に配置され、前記レーザ光から第1偏光面と第2偏光面に分離し、前記光軸に対して所定の傾斜角で傾斜して配置され、前記傾斜角によって前記分離された前記第1偏光面と前記第2偏光面のレーザ光との分光比を変えて出射する1/2波長板と、
前記1/2波長板を前記光軸を中心として前記所定の傾斜角に傾斜させる角度変更手段と、
前記1/2波長板から出射される前記第1偏光面のレーザ光を透過させ、前記第2偏光面のレーザ光を反射させる偏光膜を有した偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタの偏光膜を透過した前記第1偏光面のレーザ光を前記対物レンズに入射させる光路変更手段と、
を有することを特徴とする光ピックアップ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−120215(P2006−120215A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305419(P2004−305419)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】