説明

光ファイバ形集光器およびそれを用いたレーザ装置

【課題】縮径領域先端部でのレーザ光の漏れを抑制して、ファイバ束先端部の外径を小さくでき、出力用ファイバのコア径も小さくできる光ファイバ形集光器を提供する。
【解決手段】複数の光ファイバ111の束からなる入力用ファイバ11と、1つのコア122を有する光ファイバからなる出力用ファイバ12との間に、複数の他の光ファイバ131の束からなるテーパ部ファイバ13を備え、前記テーパ部ファイバ13を構成する前記複数の他の光ファイバ131のそれぞれのコア132の径は、前記入力用ファイバ11を構成する前記複数の光ファイバ111のそれぞれのコア112の径よりも大きい構成にしたことにより、テーパ部ファイバ13の先端領域での漏洩光の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレーザ光源から出射されたシングルモード光を1つの出力用ファイバに集光させることができる光ファイバ形集光器およびそれを用いたレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ装置を高出力化する方法として、レーザ装置そのものを高出力化する方法以外に、単位レーザユニットを並列に設置し、各レーザユニットから出力されるレーザ光を集光、加算して高出力化する方法も用いられる。
【0003】
後者の場合において、レンズ等を使用した空間結合系で光を集光しようとすると、光軸を合わせるための微調整を行う必要がある。また、微動装置を付加しなければならないので光学系が複雑になる。また、いつ、光軸ズレが発生するかわからず、一旦、光軸がずれてしまうと、再び微調整に時間を要してしまう。最悪の場合は、レーザ発振中に光軸がずれて空間結合系そのものを破壊してしまう恐れもある。
【0004】
一方、光ファイバを集光器として用いた光ファイバ形集光器では、単位レーザユニットの出力ファイバと光ファイバ形集光器の入力用の光ファイバを融着結合することで対応できるので、微調整の必要がなくなる利点がある。しかも、装置構造を単純化できる。
【0005】
光ファイバ形集光器は、複数の入力用の光ファイバを束ねて一端を一体化してテーパ形状を有する先細り構造の縮径領域を設け、これに出力用の光ファイバを結合させたものである。複数の入力用の光ファイバ内に入射された光は縮径領域で集光、加算され、1本の出力用の光ファイバに合波される。光ファイバ形集光器から発せられる光の光密度を向上させるには、先細り構造の先端部分の断面積と出力用の光ファイバのコア断面積の両者を小さくすることが求められる。
【0006】
テーパ形状を有する光ファイバを用いて光を伝搬する装置が、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
【0007】
特許文献1には、マルチモード光を集光・加算する光ファイバ形集光器についての技術が記載されている。すなわち、複数の入力側光ファイバを束ね、テーパ状に縮径された領域を介して出射側光ファイバに結合するものである。
【0008】
特許文献2には、シングルモード伝搬光のモードフィールド径を変換するダブルコアファイバについての技術が記載されている。すなわち、図10に示されるように、コアを、中心の第1コア1とその周辺の第2コア2からなる二重構造にして、階段状屈折率分布を有する光ファイバの縮径領域3を設けている。なお、外周はクラッド層4で覆われている。これにより、縮径領域3でファイバ径が小さくなって中心の第1コア1の閉じ込め効果がなくなった状態では、周囲にある第2コア2で光の閉じ込め効果を機能させている。
【0009】
特許文献3には、コア径を変化させずに、クラッドをテーパ状にしてコア同士を接近させることにより、光密度を向上させるレーザ装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006‐337398号公報
【特許文献2】特開平3‐132605号公報
【特許文献3】特許第3939816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、光ファイバ形集光器のテーパ状に縮径された領域がマルチモード構造であり、原理的に光がこの部分を伝搬していくにしたがって光の伝搬開口数が増加してしまう。そして、コア開口数よりも大きくなった光はコアから外部に漏洩して損失となり、伝送効率の悪化を招く。マルチモード構造の場合は、光密度を向上しようとして、より小さな径に集光しようとすればするほど、それに比例して光の伝搬開口数が増加して伝送効率が悪化してしまう。そのため、光密度の向上と伝送効率の低下を両立させることが困難である。
【0012】
一方、シングルモードで伝搬する光を用いた場合、元々コア径が小さい状態であるので、光密度を向上させるために先細り構造の先端の断面積を小さくしていくと、縮径領域でコア径が必要以上に小さくなる。そのため、伝搬光は縮径領域の途中でコアの光の閉じ込め効果がなくなって漏洩光となり、伝送効率の低下、およびビーム品質悪化の原因となる。
【0013】
特許文献2に開示された技術では、ダブルコア構造によって縮径領域内でもシングルモード伝搬させることができ、光ファイバ形集光器にも適用可能である。しかしながら、ダブルコアファイバへ入射した光は、特有の屈折率分布構造から第2のコアに結合する成分が発生し、この光が第2のコアをマルチモード伝搬する恐れがある。第2のコアを縮径領域においてシングルモード伝搬構造にしようとして、例えば第2のコア径を小さい構造にすると、上記のようなマルチモード伝搬光が大幅に増加する。逆にマルチモード伝搬光の発生を防止しようとして、例えば第2のコア径を大きい構造にすると、第2のコアがほとんど機能しない状態になる可能性がある。
【0014】
特許文献3に開示された技術は、希土類元素が添加された複数の光ファイバのクラッドの一部をテーパ状になるように除去加工して、コア径が一定のままコアどうしを接近させることで発振器の光密度を向上させている。コア径縮小に対する対策を施す必要がないので理想的な構造であるが、ミクロンオーダーの細径ファイバのクラッドのみをテーパ形状に加工して整然と配列させることは困難である。
【0015】
本発明は、これらの課題を解決するもので、シングルモードでレーザ光源から出射された光を効率よく集光できる光ファイバ形集光器と、この光ファイバ形集光器を用いた高光密度、高ビーム品質のレーザ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、複数の光ファイバの束からなる、一端をテーパ形状に縮径した入力用ファイバと、1つのコアを有する光ファイバからなる出力用ファイバと、前記入力用ファイバの一端と前記出力用ファイバとの間に設けられた、複数の他の光ファイバの束からなるテーパ部ファイバとを備え、前記テーパ部ファイバを構成する前記他の光ファイバの数は、前記入力用ファイバを構成する前記光ファイバの数と同じであり、前記テーパ部ファイバを構成する前記複数の他の光ファイバのそれぞれのコアの径またはコアの開口数は、前記入力用ファイバを構成する前記複数の光ファイバのそれぞれのコアの径またはコアの開口数より大きい光ファイバ形集光器である。
【0017】
このような構成により、シングルモードでレーザ光源から出射された光を効率よく集光できる。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、前記テーパ部ファイバは、前記複数の他の光ファイバの束からなる複数のテーパ部ファイバ要素が結合されて構成され、前記テーパ部ファイバ要素を構成する前記複数の他の光ファイバのそれぞれのコアの径またはコアの開口数は、前記出力用ファイバに近い側に設けられた前記テーパ部ファイバ要素の方が前記入力用ファイバに近い側に設けられた前記テーパ部ファイバ要素よりも大きい構成を有する。
【0019】
このような構成により、テーパ部ファイバでのレーザ光の漏れをさらに抑制できるので、光密度のさらなる向上、ビーム品質劣化のさらなる抑制が可能である。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、前記入力用ファイバは、異なる径のコアまたは異なる開口数のコアを有する複数の前記光ファイバの束から構成され、前記テーパ部ファイバは、異なる径のコアまたは異なる開口数のコアを有する複数の前記他の光ファイバの束から構成されている。
【0021】
このような構成により、波長の異なる複数の光を、効率よく伝搬することができる。
【0022】
また本発明は、上記発明において、前記入力用ファイバを構成する前記複数の光ファイバのコアの径またはコアの開口数、および前記テーパ部ファイバを構成する前記複数の他の光ファイバのコアの径またはコアの開口数は、中心側の方が外側より大きい構成を有する。
【0023】
このような構成により、テーパ部ファイバの中心側の光ファイバを伝搬する光強度分布が高くなるので、伝搬する光をさらに効率よく出力用ファイバに伝搬することができる。
【0024】
さらに、本発明は、上記いずれかの光ファイバ形集光器を備えたレーザ装置である。
【0025】
このような構成によれば、シングルモードでレーザ光源から出射された光を効率よく集光して出力用ファイバに伝搬するので、高光密度、高ビーム品質のレーザ装置を提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は上記構成により、光を集光するためのテーパ部ファイバでのレーザ光の漏れを抑制できる。このことから、テーパ部ファイバの先端部の外径を従来より小さくでき、かつ出力用ファイバのコア径も小さくできる。したがって、光密度の向上、ビーム品質劣化の抑制が可能である。また、複雑なコア構造の光ファイバを製作する必要がなく、市販のファイバを使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態における光ファイバ形集光器を示す構成図
【図2】(a)同実施の形態に用いる光ファイバの断面図(b)同実施の形態の出力用ファイバに用いる光ファイバの断面図
【図3】同実施の形態の複合ファイバを示す側面図
【図4】同実施の形態の出力用ファイバのコア径を説明するための概略図
【図5】(a)同実施の形態の光ファイバ形集光器の固定方法を示す横断面構成図(b)同実施の形態の光ファイバ形集光器の固定方法を示す縦断面構成図
【図6】(a)同実施の形態の光ファイバ形集光器の他の固定方法を示す横断面構成図(b)同実施の形態の光ファイバ形集光器の他の固定方法を示す縦断面構成図
【図7】本発明の一実施の形態における光ファイバ形集光器を用いたレーザ装置を示す構成図
【図8】同実施の形態のファイバ束を示す断面図
【図9】(a)同実施の形態の出力用ファイバに入射するレーザ光を示す図(b)同実施の形態の出力用ファイバに入射するレーザ光の比較例を示す図
【図10】従来の縮径領域を有する光ファイバの構成図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は、本発明の光ファイバ形集光器の一実施の形態を示す構成図である。図1において、本実施の形態の光ファイバ形集光器10は、一端をテーパ形状に縮径した入力用ファイバ11と、1つのコアを有する光ファイバからなる出力用ファイバ12と、入力用ファイバ11の一端と出力用ファイバ12との間に設けられたテーパ部ファイバ13とを備える。入力用ファイバ11は、複数のシングルモード光ファイバ111の束からなる。テーパ部ファイバ13は、複数の他のシングルモード光ファイバ131の束からなる。テーパ部ファイバ13を構成する他のシングルモード光ファイバ131の数は、入力用ファイバ11を構成するシングルモード光ファイバ111の数と同じである。入力用ファイバ11を構成するシングルモード光ファイバ111のそれぞれは、中心のコア112とその周囲のクラッド113とを有する。テーパ部ファイバ13を構成する他のシングルモード光ファイバ131のそれぞれは、中心のコア132とその周囲のクラッド133とを有する。テーパ部ファイバ13を構成する複数の他のシングルモード光ファイバ131のそれぞれのコア132の径は、入力用ファイバ11を構成する複数のシングルモード光ファイバ111のそれぞれのコア112の径よりも大きい。
【0030】
テーパ部ファイバ13は、それぞれ複数の他のシングルモード光ファイバ131の束からなる第1のテーパ部ファイバ要素13aと第2のテーパ部ファイバ要素13bとが結合されて構成される。テーパ部ファイバ要素13a、13bを構成する複数の他のシングルモード光ファイバ131のそれぞれのコア132の径は、出力用ファイバ12に近い側に設けられた第1のテーパ部ファイバ要素13aの方が入力用ファイバ11に近い側に設けられた第2のテーパ部ファイバ要素13bよりも大きい。
【0031】
なお、上記構成における、他のシングルモード光ファイバ131のコア132の径とシングルモード光ファイバ111のコア112の径との関係は、コア132、112の開口数の関係に適用されてもよい。すなわち、次のような構成も適用できる。
【0032】
テーパ部ファイバ13を構成する複数の他のシングルモード光ファイバ131のそれぞれのコア132の開口数は、入力用ファイバ11を構成する複数のシングルモード光ファイバ111のそれぞれのコア112の開口数よりも大きい。さらに、テーパ部ファイバ要素13a、13bを構成する複数の他のシングルモード光ファイバ131のそれぞれのコア132の開口数は、出力用ファイバ12に近い側に設けられた第1のテーパ部ファイバ要素13aの方が入力用ファイバ11近い側に設けられた第2のテーパ部ファイバ要素13bよりも大きい。
【0033】
または、テーパ部ファイバ13を構成する複数の他のシングルモード光ファイバ131のそれぞれのコア132の径および開口数は、入力用ファイバ11を構成する複数のシングルモード光ファイバ111のそれぞれのコア112の径および開口数よりも大きい。さらに、テーパ部ファイバ要素13a、13bを構成する複数の他のシングルモード光ファイバ131のそれぞれのコア132の径および開口数は、出力用ファイバ12に近い側に設けられた第1のテーパ部ファイバ要素13aの方が入力用ファイバ11に近い側に設けられた第2のテーパ部ファイバ要素13bよりも大きい。
【0034】
すなわち、テーパ部ファイバ13と入力用ファイバ11との接続点、および/またはテーパ部ファイバ要素13a、13bの接続点において、出力側の方が入力側に比べて次の3つの関係のうちの少なくとも1つの関係にあればよい。(1)コア径が大きくなるが、コア開口数が同じ、(2)コア径が同じであるが、開口数が大きくなる、(3)コア径と開口数の両方とも大きくなる。
【0035】
なお、図1では、シングルモード光ファイバ111、131および出力用ファイバ12の最外層に形成される被覆樹脂は省略してある。
【0036】
以下、本実施の形態の光ファイバ形集光器10について詳細に説明する。光ファイバ形集光器10は、入力用ファイバ11を構成するシングルモード光ファイバ111と、テーパ部ファイバ13を構成するシングルモード光ファイバ131とを融着結合した複合ファイバ14を複数本束ねたファイバ束15を備えている。各複合ファイバ14は、コア112、132とその周囲のクラッド113,133とから構成される。テーパ部ファイバ13は、第1のテーパ部ファイバ要素13aと第2のテーパ部ファイバ要素13bと入力用ファイバ11の一端部とを融着結合して構成される。ファイバ束15のテーパ部ファイバ13側が一体化されている。入力用ファイバ11の一部とテーパ部ファイバ13とがテーパ状の縮径領域16を形成している。縮径領域16の先端部分(図1では左部分)が、出力用ファイバ12の端面と融着結合される。そのため、縮径領域16の先端部分と出力用ファイバ12の端面との結合部には融着結合部17が形成されている。図1では、説明の便宜上、出力用ファイバ12はコア122にのみ示している。
【0037】
縮径領域16のテーパ部ファイバ13を構成するシングルモード光ファイバ131のコア132は、入力用ファイバを構成するシングルモード光ファイバ111のコア112と比較して同等以上のコア径、または同等以上のコア開口数を有する。したがって、光ファイバ形集光器10のシングルモード光ファイバ111に入射されたシングルモード光は、縮径領域16でコア径が小さくなっていくために、光の閉じ込め効果が弱くなる。そのために、モードフィールド径が増加していき光はクラッド133へ発散しようとする。しかし、本実施の形態では、縮径領域16の適切な位置で、テーパ部ファイバ13は、第1のテーパ部ファイバ要素13aと第2のテーパ部ファイバ要素13bとが接続されて構成されているので、光の閉じ込め効果を復元することができる。すなわち、出力用ファイバ12に近い側に配置される第1のテーパ部ファイバ要素13aの方が、入力用ファイバ11に近い側に配置される第2のテーパ部ファイバ要素13bよりも、コアの径またはコアの開口数が大きいので、光の閉じ込め効果が得られる。したがって、縮径領域16において、光をコア132の領域内で伝搬させることが可能になる。
【0038】
図2(a)は、シングルモード光ファイバ111(131)から構成される複合ファイバ14に用いる光ファイバの代表的な断面図を示している。コア112(132)とクラッド113(133)は石英ガラスを用いる。クラッド113(133)の周囲には、石英ガラスを保護するために被覆樹脂114(134)が施されている。後述する単位レーザユニットの出力ファイバと接続することになるシングルモード光ファイバ111は、コア112がクラッド113に対して、光がシングルモード伝搬する条件である規格化周波数V値が、V≦2.405を満たしている。より良い条件は、シングルモード光ファイバ111の入力端(図1では右側)に接続する単位レーザユニットの出力ファイバと同じ構造(コア径、コア開口数、クラッド径等)のシングルモード光ファイバ111を使用することである。
【0039】
テーパ部ファイバ13は、シングルモード光ファイバ111が縮径領域16でコア112の径が縮小するのを補償するものである。そのため、縮径領域16での縮径サイズを事前に算出しておき、シングルモード光ファイバ、マルチモード光ファイバのどちらの種類でも構わないので、漏洩光にならない構造の光ファイバを適宜選択する。本実施の形態では、マルチモード光ファイバを用い、後述する縮径領域を形成する工程の後、シングルモード光しか伝搬しないシングルモード光ファイバとした。本実施の形態では、入力用ファイバ11をシングルモード光ファイバ111で構成している。しかし、上記のように、テーパ部ファイバ13でシングルモード光しか伝搬しなくなるので、本発明は、入力用ファイバ11もシングルモード光ファイバ111に限ることはない。
【0040】
テーパ部ファイバ13の構造は、光閉じ込め効果を保持して光が伝搬するように、シングルモード光ファイバ111のコア112より径を同等以上大きくしたコア132を使用する。または、シングルモード光ファイバ111のコア112より開口数を同等以上大きくしたコア132(屈折率を大きくしたコア132)を使用する。クラッド133の径の制限はないが、シングルモード光ファイバ111のクラッド113の径と異なる場合、溶融延伸工程でクラッド径の小さい側の光ファイバが必要以上に大きく引き伸ばされ、逆に大きい側がほとんど延伸されないという状態になる可能性があるので注意が必要である。
【0041】
図2(b)は、出力用ファイバ12に用いる光ファイバの代表的な断面図を示している。コア122は石英ガラスを使用し、クラッド123は、コア122よりも屈折率の低い石英ガラス、またはコア122よりも低屈折率の光学樹脂を使用する。高出力レーザを取り扱う場合は、耐熱性を考えて、コア122の材質を純粋石英ガラス、クラッド123の材質をフッ素またはホウ素をドープして屈折率を低下させた石英ガラスを使用するのが好ましい。
【0042】
以上のように、本実施の形態は、テーパ部ファイバ13を構成する縮径領域16の途中部分でコア132の径、またはコア132の開口数を段階的に大きくしていく構造である。そのため、シングルモードで入射された光が縮径領域16でのコア径縮小で光閉じ込め効果が減少することによる漏洩光の発生を抑制することができる。すなわち、シングルモードで光ファイバ形集光器10の入力用ファイバ11に入射された光は、縮径領域16の先端領域のファイバ束15の径が小さい場合、テーパ状の縮径領域16でシングルモード光ファイバ131のコア132の径も小さくなっているために、従来では光の閉じ込め効果が弱くなり、モードフィールド径が増加しながら(ブロードな光強度分布になりながら)クラッド133へ発散していく。しかし、本実施の形態では、テーパ部ファイバ13を構成する縮径領域16の適切な位置でコア132の径、またはコア132の開口数を段階的に大きくすることで、光の閉じ込め効果を復元し、縮径領域16の先細り部分の先端までコア132の近傍に光を伝搬させることが可能である。したがって、縮径領域16の先端部の外径を従来以上に小さくできる。また、光強度分布はそれぞれのシングルモード光ファイバ131を伝搬する光のコア132の付近に分布しているので、接続する出力用ファイバ12のコア122の径は、縮径領域16の先細り部先端でファイバ束15のクラッド133全体が含まれている必要がない。すなわち、出力用ファイバ12のコア122の径は、複数のコア132の近傍領域全てが含まれるだけの径でよくなる。
【0043】
縮径領域16内が本実施の形態の構造を有しない場合、コア132の径が光閉じ込め効果がなくなるまで小さくなると、クラッド133へ光が漏洩し、この光はクラッド133内を伝搬する。この場合、接続する出力用ファイバ12のコア122の径は、縮径領域16の先細り部分の先端で、一体化されたファイバ束15の各々のクラッド133の全てが含まれるだけの大きさが必要である。そのため、その分コア122の径を大きくしなければならないので、光密度が低下してしまう。さらに言えば、クラッド133に伝搬する光はマルチモード伝搬になるので、伝搬開口数が増加して要求値よりもビーム品質の悪化した光が含まれる可能性がある。また、縮径領域16でクラッド133の外にも光が放射されて伝送効率が悪化する可能性がある。
【0044】
本実施の形態の光ファイバ形集光器の製造方法は、ファイバ束15を構成する複合ファイバ14を製造することから始まる。まず、図3に示すように、入力用ファイバ11を構成するシングルモード光ファイバ111と、テーパ部ファイバ13を構成するシングルモード光ファイバ131のそれぞれの端部外周の被覆樹脂114、134を除去する。この時、被覆樹脂114、134を除去する長さは、後の工程で溶融延伸することを考慮して、あらかじめ通常の光ファイバどうしを融着結合する場合の長さよりも長めにする。除去する長さが短い場合、被覆樹脂114、134が延伸装置の加熱源の熱で溶融する恐れがある。また、被覆を除去した長さは、延伸工程で必要になるので記録しておく。なお、本実施の形態では、縮径工程前に、テーパ部ファイバ13を構成する光ファイバとして、シングルモード光ファイバ131を用意したが、マルチモード光ファイバを用意してもよい。
【0045】
次に、市販の融着装置によって、図3に示されるように、入力用ファイバ11のシングルモード光ファイバ111とテーパ部ファイバ13のシングルモード光ファイバ131とを融着結合する。テーパ部ファイバ13を構成するシングルモード光ファイバ131は、縮径領域16の先端部の外径に合わせて必要なだけ、直列に何連でも接続してもよい。本実施の形態では、第1のテーパ部ファイバ要素13aと第2のテーパ部ファイバ要素13bの2連を直列に接続してある。以上により縮径領域16部分になる複合ファイバ14が得られ、複数の複合ファイバ14を用意することにより、光ファイバ形集光器10を製造する準備ができたことになる。
【0046】
次に、準備した複数の複合ファイバ14を一般の延伸装置に並列に配列する。後の工程で出力用ファイバ12と融着結合することになるので、出力用ファイバ12のコア122の径を小さくして光密度を高くすることを考慮して、複数の複合ファイバ14を束ねたファイバ束15の断面形状は、最密充填構造となるように配列させるのが望ましい。長手方向には、事前に、被覆を除去した位置と融着結合部17との距離を測定しておき、この距離をもとにしてテーパ部ファイバ13の効果が得られる位置でファイバ束15を把持する。配列完了後、バーナー等の加熱源で配列済みのファイバ束15を溶融一体化して、軟化した部分を延伸する。延伸によってファイバ束15は外径が縮小して、図3の拡大図に示されるように、長手方向に縮径領域16を有するファイバ束15が得られる。なお、図3では、1本の複合ファイバ14について示しているが、模式的にはファイバ束15も同様の構成になる。
【0047】
延伸終了後は、一体化したファイバ束15の最小断面積の部分に切り傷をつけ、張力を付加して分割する。これにより、一端がテーパ状に縮径しているファイバ束15が2個できる。このようにして、入力用ファイバ11を構成するシングルモード光ファイバ111とテーパ部ファイバ13を構成するシングルモード光ファイバ131とから構成されるファイバ束15が得られる。
【0048】
次に、上記のようにして得られたファイバ束15を、出力用ファイバ12と融着結合部17を介して結合する。図4は、出力用ファイバ12のコア径122a、122bを説明する図であり、ファイバ束15の端面を示す図である。図4において、ファイバ束15は、7本のシングルモード光ファイバ131が束ねられており、これによりテーパ部ファイバ13が構成されている。テーパ部ファイバ13を構成するシングルモード光ファイバ131は、コア132とクラッド133とから構成される。ファイバ束15の端面と出力用ファイバ12の端面とを結合したときの出力用ファイバ12のコア径は、図4の点線122aに示されるように、ファイバ束15の各コア132付近の光強度の高い領域が全て含まれるようにすればよい。すなわち、ファイバ束15の各コア132の近傍に光が伝搬している場合の、出力用ファイバ12に必要なコア122の径は、点線122aに示す部分である。これは、ファイバ束15の各クラッド133の全体を含めた場合の径よりも一回り小さい径であり、この大きさで十分である。すなわち、二点鎖線122bで示す、ファイバ束15の各クラッド133にも光が伝搬している場合の、出力用ファイバ12に必要なコア122の径よりも一回り小さい。なお、本来、縮径領域16は、ガラスが溶融して表面張力よって隙間が埋まるので、光ファイバ単体の断面形状は円形から少し変形した状態になっている。
【0049】
今、計算の便宜上、光ファイバ単体が円形断面を保っているとして、例えば先細り部先端でのコア伝搬光のモードフィールド径をφAμm、クラッド径をφBμmとし、シングルモード光ファイバ131を7本束ねている状態とする。この場合、必要となる出力用ファイバ12のコア122の径から算出される断面積比は次のようになる。
[漏洩光なし]:[漏洩光あり]=[π(2B+A)/4]:[π(3B)/4]
【0050】
シングルモード光ファイバ131のクラッド133へ漏洩する場合と比較して、出力用ファイバ12のコア122の径を小さくすることで、伝搬する光密度をおよそ(3B)/(2B+A)倍高くすることが可能である。
【0051】
以上のようにして、ファイバ束15と出力用ファイバ12とが結合された光ファイバ形集光器10が得られる。
【0052】
最後に、この光ファイバ形集光器10の被覆を除去した部分の機械的強度を上げるために、固定治具を用いて外周に被覆樹脂を形成する。図5(a)、(b)は、本実施の形態の光ファイバ形集光器10の固定方法の一例を説明するための固定治具の横断面図および縦断面図である。図5(a)、(b)に示すように、溝21を有する固定治具22に、上記のようにして得られた光ファイバ形集光器10をセットして、被覆を除去した部分全体に低屈折率の被覆樹脂23を塗布し、硬化させる。これによって、光ファイバ形集光器10が固定治具22に安定に固定される。
【0053】
また、その後、図5(a)、(b)に示すように、固定治具22に固定した光ファイバ形集光器10を、さらに金属製の筒24等に挿入して筒24の両端部分を、シングルモード光ファイバ131、出力用ファイバ12と共にさらに樹脂25で覆い、筒24の内部を密閉した構造にしてもよい。これによって、光ファイバ形集光器10が固定治具22により安定に固定される。
【0054】
さらに別の固定方法として、図6(a)、(b)に示すように、光ファイバ形集光器10の被覆を除去した部分には被覆樹脂を塗布せず、ガラス部分がむき出しの状態にしておき、シングルモード光ファイバ131のファイバ束15、出力用ファイバ12の被覆部分の各1点のみを被覆樹脂23で固定治具22に固定する方法もある。この場合も、図6(a)、(b)に示すように、金属製の筒24等を用いて、筒24の内部を密閉した構造にしてもよい。
【0055】
図7は、本発明のレーザ装置の一実施の形態を示す構成図である。上記のようにして製造した光ファイバ形集光器10は、図7に示されるようにレーザ装置40に装着される。図7において、光ファイバ形集光器10の入力用ファイバ11を構成するシングルモード光ファイバ111(図7では3本のみを示している)は、それぞれ、レーザ光源となるシングルモード出力の3個の単位レーザユニット41に接続する。それぞれのシングルモード光ファイバ111は、単位レーザユニット41に備えられた出力ファイバ411と融着結合部412で接続される。光ファイバ形集光器10の出力用ファイバ12は、伝送用ファイバ42と、融着結合部422で接続する。これにより、各単位レーザユニット41から発せられたレーザ光は、光ファイバ形集光器10を介して1つの伝送用ファイバ42へと集光される。伝送用ファイバ42の出力端には、高密度、高出力な特徴を活かして、例えば、溶接ヘッド43等に接続し、ワーク44を溶接するのに使用することができる。図7では、3個の単位レーザユニット41により1個のレーザユニット413を構成しているが、レーザユニット413は任意のN個の単位レーザユニット41から構成される。
【0056】
各単位レーザユニット41は同一仕様でなくてもよい。例えば、波長1.06μmの光に加えて波長0.97μm、0.64μm等の光を同時に出射する構成にしてもよい。この場合、図8に示すように、ファイバ束15に使用する、入力用ファイバ11を構成するシングルモード光ファイバ111およびテーパ部ファイバ13を構成するシングルモード光ファイバ131を、それぞれの波長の伝搬特性に合致したものを組み込んでおく。また、ファイバ束15の縮径領域16の先端をさらに極細に延伸してコア間隔を接近させた場合、光増幅器で使用されている光ファイバカプラのようにコア間で光の乗り移り現象が発生しやすくなる。これを利用して、ファイバ束15の配列の外側から中心に向かって光閉じ込め効果の強い光ファイバを配置し、ファイバ束15の中心の光強度分布が高くなる構成にしてもよい。
【0057】
すなわち、入力用ファイバ11は、異なる径のコア112を有する複数のシングルモード光ファイバ111の束から構成され、テーパ部ファイバ13は、異なる径のコア132を有する複数の他のシングルモード光ファイバ131の束から構成されてもよい。この場合、コア112とコア132の径の関係を、コア112とコア132の開口数の関係としても同じ効果が得られる。すなわち、入力用ファイバ11は、異なる開口数のコア112を有する複数のシングルモード光ファイバ111の束から構成され、テーパ部ファイバ13は、異なる開口数のコア132を有する複数の他のシングルモード光ファイバ131の束から構成されてもよい。
【0058】
図8では、シングルモード光ファイバ111a(131a)のコア112a(132a)の径と、シングルモード光ファイバ111b(131b)のコア112b(132b)の径と、シングルモード光ファイバ111c(131c)のコア112c(132c)の径とはそれぞれ異なっている。
【0059】
さらに、入力用ファイバ11を構成する複数のシングルモード光ファイバ111のコア112の径、およびテーパ部ファイバ13を構成する複数の他のシングルモード光ファイバ131のコア132の径は、中心側の方が外側よりも大きい構成であってもよい。この場合も、コア112とコア132の径の関係を、コア112とコア132の開口数の関係としても同じ効果が得られる。すなわち、入力用ファイバ11を構成する複数のシングルモード光ファイバ111のコア112の開口数、およびテーパ部ファイバ13を構成する複数の他のシングルモード光ファイバ131のコア132の開口数は、中心側の方が外側よりも大きい構成であってもよい。
【0060】
図8では、最外周に配置されるシングルモード光ファイバ111a(131a)のコア112a(132a)の径よりも、中間に配置されるシングルモード光ファイバ111b(131b)のコア112b(132b)の径の方が大きい。さらに、中間に配置されるシングルモード光ファイバ111b(131b)のコア112b(132b)の径よりも、一番中心に配置されるシングルモード光ファイバ111c(131c)のコア112c(132c)の径の方が大きい。
【0061】
本実施の形態の具体例を以下に説明するが、以下の具体例は本発明の単なる例示にすぎず、本発明を限定するものではない。
【0062】
図1に示す光ファイバ形集光器10を製作する際に使用した光ファイバは以下のとおりである。
入力用ファイバ11を構成するシングルモード光ファイバ111:コア径φ4μm、クラッド径φ125μm、コア開口数0.12
テーパ部ファイバ13を構成するシングルモード光ファイバ131:コア径φ9μm、クラッド径φ125μm、コア開口数0.13
出力用ファイバ12:コア径φ100μm、クラッド材質:低屈折率樹脂、コア開口数0.46
【0063】
まず、入力用ファイバ11を構成するシングルモード光ファイバ111とテーパ部ファイバ13を構成するシングルモード光ファイバ131を融着結合して6本の複合ファイバ14を作製した。また、1本だけのシングルモード光ファイバ111のみからなる光ファイバを準備した。これら7本の光ファイバで最密充填配列(中心の1本の光ファイバを囲むように6本の複合ファイバ14を配列)になるように束ねて、ヒータで溶融させて一体化した。その後、単体でのシングルモード光ファイバ111の最小クラッド径がφ125μmから約φ30μmになるまで延伸した。そして、ファイバ束15の最小部で2つに分割した後、出力用ファイバ12に融着結合した。その後、被覆を除去している部分にガラスよりも低屈折率の被覆樹脂を再塗布してガラス部を保護し、光ファイバ形集光器10を完成した。
【0064】
検証のため、レーザ光源を光ファイバ形集光器10に接続して出力光の状態を観測した(この測定は出力用ファイバ12を融着結合する前に実施した)。レーザ光源は、発振波長1.06μm、出力10mWである。テーパ部ファイバ13を溶着した入力用ファイバ11とテーパ部ファイバ13を溶着していない入力用ファイバ11のそれぞれの一端にレーザ光を入射して、他端から出射されるレーザ光の形状を観測した。この観測は出力用ファイバ12を融着結合する前に測定している。
【0065】
図9(a)は、本実施の形態におけるテーパ部ファイバ13の先端部から出射されるレーザ光の形状を示している。図9(b)は、テーパ部ファイバ13を融着していない入力用ファイバ11の先端部から出射されるレーザ光の形状を示している。いずれの場合も、出射されたレーザ光は、図9(a)、(b)に示すようにコア近傍に分布している。しかし、テーパ部ファイバ13を融着した場合は、融着していない場合と比較してモードフィールド径が小さくなっており、光強度分布がブロード形状になっていない。この結果から、テーパ部ファイバ13を融着している場合の出力用ファイバ12のコア122に必要な断面積は、テーパ部ファイバ13を融着していない場合の断面積と比較して、約1.3倍小さくできることが確認された。また、出力用ファイバ12を結合した状態で、それぞれの出力値を確認したところ、同等の出力が得られた。
【0066】
以上説明したように、本発明の光ファイバ形集光器は、複数のシングルモード光ファイバの束からなる、一端をテーパ形状に縮径した入力用ファイバと、1つのコアを有する光ファイバからなる出力用ファイバと、入力用ファイバの一端と出力用ファイバとの間に設けられた、複数の他の光ファイバの束からなるテーパ形状ファイバとを備え、テーパ形状ファイバを構成する他の光ファイバの数は、入力用ファイバを構成するシングルモード光ファイバの数と同じであり、テーパ形状ファイバを構成する複数の他の光ファイバのそれぞれのコアの径またはコアの開口数は、入力用ファイバを構成する複数のシングルモード光ファイバのそれぞれのコアの径またはコアの開口数よりも大きい構成を有する。
【0067】
このような構成により、光を集光するためのテーパ部ファイバでのレーザ光の漏れを抑制できる。このことから、ファイバ束先端部の外径を今まで以上に小さくでき、かつ出力用ファイバのコア径も小さくできる。したがって、光密度の向上、ビーム品質劣化の抑制が可能である。また、複雑なコア構造のファイバを製作する必要がなく、市販のファイバを使用することも可能である。
【0068】
また本発明においては、テーパ部ファイバは、複数の他の光ファイバの束からなる複数のテーパ部ファイバ要素が結合されて構成され、テーパ部ファイバ要素を構成する複数の他の光ファイバのそれぞれのコアの径またはコアの開口数は、出力用ファイバに近い側に設けられたテーパ部ファイバ要素の方が入力用ファイバに近い側に設けられたテーパ部ファイバ要素よりも大きい構成を有する。
【0069】
このような構成により、テーパ部ファイバでのレーザ光の漏れをさらに抑制できる。このことから、ファイバ束先端部の外径をさらに小さくでき、かつ出力用ファイバのコア径もさらに小さくできる。したがって、光密度のさらなる向上、ビーム品質劣化のさらなる抑制が可能である。
【0070】
また本発明においては、入力用ファイバは、異なる径のコアまたは異なる開口数のコアを有する複数の光ファイバの束から構成され、テーパ部ファイバは、異なる径のコアまたは異なる開口数のコアを有する複数の他の光ファイバの束から構成されている。
【0071】
このような構成により、異なる波長の光を出射する複数の単位レーザユニットのそれぞれの波長の伝搬特性に合致した、複数の光ファイバにより入力用ファイバを構成することができる。したがって、異なる波長の光を出射する複数の単位レーザユニットを、波長の伝搬特性に合致した複数の光ファイバのそれぞれに接続することにより、波長の異なる複数の光を、効率よく伝搬することができる。
【0072】
また本発明においては、入力用ファイバを構成する複数の光ファイバのコアの径またはコアの開口数、およびテーパ形状ファイバを構成する複数の他の光ファイバのコアの径またはコアの開口数は、中心側の方が外側よりも大きい構成を備える。
【0073】
このような構成により、テーパ部ファイバの先端をさらに極細に延伸してコア間隔を接近させた場合、コア間で光の乗り移り現象を利用して、テーパ部ファイバの中心側の光ファイバを伝搬する光強度分布が高くなるので、伝搬する光を、効率よく出力用ファイバに伝搬することができる。
【0074】
さらに、本発明は、上記いずれかの光ファイバ形集光器を備えたレーザ装置である。
【0075】
このような構成によれば、シングルモードでレーザ光源から出射された光を効率よく集光して出力用ファイバに伝搬するので、高光密度、高ビーム品質のレーザ装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の光ファイバ形集光器は、高い光密度で光を1つの光ファイバに集光することができ、またビーム品質の劣化を抑制できるので、高出力、高ビーム品質なレーザ装置に有用である。
【符号の説明】
【0077】
10 光ファイバ形集光器
11 入力用ファイバ
12 出力用ファイバ
13 テーパ部ファイバ
13a、13b テーパ部ファイバ要素
14 複合ファイバ
15 ファイバ束
16 縮径領域
17、412、422 融着結合部
21 溝
22 固定治具
23、114、134 被覆樹脂
24 筒
25 樹脂
40 レーザ装置
41 単位レーザユニット
42 伝送用ファイバ
43 溶接ヘッド
44 ワーク
111、111a、111b、111c、131、131a、131b、131c シングルモード光ファイバ
112、112a、112b、112c、122、132、132a、132b、132c コア
113、123、133 クラッド
122a、122b コア径
411 出力ファイバ
413 レーザユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバの束からなる、一端をテーパ形状に縮径した入力用ファイバと、1つのコアを有する光ファイバからなる出力用ファイバと、前記入力用ファイバの一端と前記出力用ファイバとの間に設けられ、前記入力用ファイバ側よりも前記出力用ファイバ側の方がより縮径された、複数の他の光ファイバの束からなるテーパ部ファイバとを備え、前記テーパ部ファイバを構成する前記他の光ファイバの数は、前記入力用ファイバを構成する前記光ファイバの数と同じであり、前記テーパ部ファイバを構成する前記複数の他の光ファイバのそれぞれのコアの径またはコアの開口数は、前記入力用ファイバを構成する前記複数の光ファイバのそれぞれのコアの径またはコアの開口数より大きい光ファイバ形集光器。
【請求項2】
前記テーパ部ファイバは、前記複数の他の光ファイバの束からなる複数のテーパ部ファイバ要素が結合されて構成され、前記テーパ部ファイバ要素を構成する前記複数の他の光ファイバのそれぞれのコアの径またはコアの開口数は、前記出力用ファイバに近い側に設けられた前記テーパ部ファイバ要素の方が前記入力用ファイバに近い側に設けられた前記テーパ部ファイバ要素よりも大きい請求項1に記載の光ファイバ形集光器。
【請求項3】
前記入力用ファイバは、異なる径のコアまたは異なる開口数のコアを有する複数の前記光ファイバの束から構成され、前記テーパ部ファイバは、異なる径のコアまたは異なる開口数のコアを有する複数の前記他の光ファイバの束から構成されている請求項1に記載の光ファイバ形集光器。
【請求項4】
前記入力用ファイバを構成する前記複数の光ファイバのコアの径またはコアの開口数、および前記テーパ部ファイバを構成する前記複数の他の光ファイバのコアの径またはコアの開口数は、中心側の方が外側より大きい請求項3に記載の光ファイバ形集光器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバ形集光器を備えたレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−186267(P2011−186267A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52697(P2010−52697)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】