説明

光レーダ装置

【課題】測定対象物が移動体である場合であれ、該移動体への追従性の低下を抑えながら、分解能を向上させることができる光レーダ装置を提供すること。
【解決手段】光レーダ装置の制御回路は、レーザ光源から出射されるパルス光の照射周波数fを、一走査周期当たりの照射パルス数が自然数にならないように設定する。このため、連続する走査周期Tの間で各走査周期Tにおけるパルス光の出射タイミングに、パルス光の照射周期tよりも短い時間Δt(本実施の形態ではΔt=t・1/2)分のずれが生じる。したがって、先の走査における隣り合うパルス光の照射位置p0〜p6の間に、その走査に連続する次の走査におけるパルス光の照射位置p0’〜p6’が設定され、分解能が擬似的に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物にパルス光を照射し、対象物の有無を判定したり対象物までの距離を測定したりする光レーダ装置には、例えば特許文献1に示すようなものがある。この光レーダ装置は、パルス光を出射する光源と、該光源から出射された光を所定の走査範囲に走査する回転ミラーと、測定対象物にて反射した光を受光する受光素子と、前記回転ミラーの回転角度(スキャン位置)を検出するための検出素子とを備えている。光源から出射されたパルス光は、回転ミラーの反射面にて反射し外部に向けて出射される。外部に向けて出射された光は、その照射位置に対象物があればその対象物にて反射し、受光素子に受光される。また、光源から出射されたパルス光は、回転ミラーの回転速度に応じた走査速度で測定対象物上に走査され、パルス光の走査速度と同パルス光の照射周期とによってパルス光の照射ピッチ角(方位分解能)が決まる。そして、該光が対象物との間を往復するのに要する時間や反射光の位相差に基づいて、走査範囲における対象物の有無や該走査範囲に存在する対象物までの距離を測定する。
【0003】
ところで、このような光レーダ装置の計測の方位分解能は、前述したようにパルス光の照射周期、すなわち照射周波数と走査速度とにより決定される。例えば、回転ミラーの回転速度(1秒間当たりの回転数)が10[sec−1]、パルス光の照射周波数が10kHzであった場合、回転ミラー1回転あたりの照射パルス数は1000パルスで、方位分解能は0.36degになり、10m遠方に配置され静止している対象物であれば、走査方向に沿って6.3cm間隔で対象物との距離を測定することになる。そして、計測の分解能は、一走査周期(回転ミラー1回転)当たりの照射パルス数、すなわちパルス光の照射周波数に比例して向上し、より精細な測定が可能となる。
【特許文献1】特開平6−137867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような光レーダ装置において、分解能を向上させるべくパルス光の照射周波数を高く設定すると、該照射周波数に対応することが可能な高性能の処理回路が必要となってしまう。また、如何に高性能の処理回路を用いたとしても対応できる照射周波数には限界がある。したがって、このように照射周波数を2倍、3倍…にして分解能を2倍、3倍…とすることには限界がある。そこで、このような限界がある装置においてさらに分解能を向上させる方法として、一走査周期当たりの照射パルス数が増加するようパルス光の走査速度を低く設定するということが考えられる。しかしながら、この場合には、分解能が2倍、3倍…となるほど走査周期が2倍、3倍…と長くなり、分解能を向上させるにつれて単位時間あたりの測定回数が大幅に少なくなる。したがって、測定対象物が移動体である場合、該移動体への追従性が大幅に低下してしまう。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、測定対象物が移動体である場合であれ、該移動体への追従性の低下を抑えながら、分解能を向上させることができる光レーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、パルス光を出射する光出射手段と、該光出射手段から出射された前記パルス光を所定の走査範囲に所定の走査周期をもって繰り返し走査する光走査手段と、前記走査範囲内に存在する測定対象物にて反射した光を受光する受光手段とを備え、前記光出射手段及び前記受光手段の出力に基づいて前記測定対象物までの距離を測定する光レーダ装置であって、一走査周期当たりの照射パルス数が自然数にならないように、前記光出射手段及び前記光走査手段を制御する制御手段を備えたことをその要旨とする。
【0007】
本発明によれば、制御手段により、一走査周期当たりの照射パルス数が自然数にならないように光出射手段及び光走査手段が制御される。このため、走査を繰り返す毎に、連続する走査周期の間で各走査周期におけるパルス光の出射タイミングに、パルス光の照射周期よりも短い時間分のずれが生じる。したがって、先の走査における隣り合うパルス光の照射位置の間に、その走査に連続する次の走査におけるパルス光の照射位置が設定され、分解能が擬似的に向上する。よって、測定対象物が移動体である場合であれ、該移動体への追従性の低下を抑えながら、分解能を向上させることができる。その結果、静止している測定対象物に対しては、より精細に測定することができるとともに、移動している測定対象物に対しては、追従性を確保することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記制御手段は、前記走査周期が前記パルス光の照射周期の自然数倍にならないように前記パルス光の照射周波数を設定することをその要旨とする。
本発明によれば、パルス光の照射周波数は、走査周期がパルス光の照射周期の自然数倍にならないように、言い換えれば、パルス光の走査周期をT、パルス光の照射周期をtとして、T=t(N+1/n)(但し、Nは自然数であり、nは2以上の自然数)を満たすように設定される。このため、一走査周期当たりの照射パルス数がN+1/nになり、連続する走査周期におけるパルス光の出射タイミングにt・1/nのずれが生じる。したがって、走査回数を重ねる毎にパルス光の照射位置が照射ピッチ(一走査における隣り合うパルス光の照射位置の間隔)の1/n倍ずつずれることとなり、分解能が擬似的に向上する。よって、走査速度を遅くして分解能を確保するようにした場合と異なり、移動体への追従性を低下させることなく、分解能を向上させることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、操作者により任意の自然数を入力可能な自然数入力手段を備え、前記制御手段は、前記光走査手段による前記パルス光の走査周期をT、前記パルス光の照射周期をt、前記任意の自然数をnとして、T=t(N+1/n)(但し、Nは自然数であり、nは2以上の自然数)を満たすように前記照射周波数を設定することをその要旨とする。
【0010】
本発明によれば、自然数入力手段を介して操作者の任意の自然数が入力される。そして、パルス光の照射周波数は、光走査手段による前記パルス光の走査周期をT、パルス光の照射周期をt、操作者の任意の自然数をnとして、T=t(N+1/n)を満たすように設定される。このため、走査回数を重ねる毎にパルス光の照射位置が操作者により入力された任意の自然数に対応する分(照射ピッチの1/n倍ずつ)だけずれることとなる。したがって、操作者の任意の分解能に設定することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記制御手段は、前記光走査手段による前記パルス光の走査周期をT、前記パルス光の照射周期をtとして、T=t(N+1/2)(但し、Nは自然数)を満たすように前記照射周波数を設定することをその要旨とする。
【0012】
本発明によれば、パルス光の照射周波数は、パルス光の走査周期をT、パルス光の照射周期をtとして、T=t(N+1/2)を満たすように、すなわち一走査周期当たりの照射パルス数がN+1/2になるように設定される。このため、連続する走査周期におけるパルス光の出射タイミングにt・1/2、すなわち照射周期の半分のずれが生じる。したがって、先の走査におけるパルス光の照射位置から前記パルス光の照射ピッチの1/2倍ずれた位置に、その走査に連続する次の走査におけるパルス光の照射位置が設定され、分解能が擬似的に2倍となる。よって、走査速度を遅くして分解能を確保するようにした場合と異なり、移動体への追従性を低下させることなく、分解能を向上させることができる。また、パルス光の照射位置はパルス光の照射ピッチの1/2倍ずつずれるため、走査回数を重ねる毎に交互に変更される。したがって、パルス光を比較的短時間で等間隔に照射することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、操作者により任意の走査周期を入力可能な走査周期入力手段を備えたことをその要旨とする。
本発明によれば、走査周期入力手段を介して任意の走査周期が入力される。したがって、操作者の任意の走査周期で追従性を確保したまま、分解能を向上させることができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記制御手段は、前記走査周期が前記パルス光の照射周期の自然数倍にならないように前記走査周期を設定することをその要旨とする。
本発明によれば、パルス光の走査周期は、走査周期がパルス光の照射周期の自然数倍にならないように、言い換えれば、パルス光の走査周期をT、パルス光の照射周期をtとして、T=t(N+1/n)(但し、Nは自然数であり、nは2以上の自然数)を満たすように設定される。このため、一走査周期当たりの照射パルス数がN+1/nになり、連続する走査周期におけるパルス光の出射タイミングにt・1/nのずれが生じる。したがって、走査回数を重ねる毎にパルス光の照射位置が照射ピッチ(一走査における隣り合うパルス光の照射位置の間隔)の1/n倍ずつずれることとなり、分解能が擬似的に向上する。よって、一走査周期当たりの照射パルス数が自然数になるように設定されている場合と比較して、移動体への追従性の低下を抑えながら、分解能を向上させることができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記光走査手段は、所定の回転速度にて回転する回転反射部材を備え、該回転反射部材の回転角度に応じた方向へ前記光出射手段からのパルス光を反射して同パルス光を走査することをその要旨とする。
【0016】
本発明によれば、光出射手段からのパルス光は、光走査手段の回転反射部材により該回転反射部材の回転角度に応じた方向へ反射される。このパルス光は、上述したように、一走査周期当たりの照射パルス数が自然数にならないように出射される。したがって、先の走査によるパルス光の照射角度の間に、その走査に連続する次の走査によるパルス光の照射角度が設定され、方位分解能が向上する。よって、移動体への追従性の低下を抑えながら、方位分解能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定対象物が移動体である場合であれ、該移動体への追従性の低下を抑えながら、分解能を向上させることができる光レーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、本発明の光レーダ装置を、車両周辺にある検出対象物としての障害物までの距離を測定し該測定値の変化に基づいて障害物の有無を判定して搭乗者に報知する衝突防止システムに適用したものである。
【0019】
図1に示すように、光レーダ装置1のレーダヘッド部1aに設けられた光出射手段としてのレーザ光源2は、投光回路3に接続され、同投光回路3は、光レーダ装置1を統括的に制御する制御手段としての制御回路4に接続されている。投光回路3は、制御回路4から出力される制御信号に基づいて、レーザ光源2に駆動パルス信号を供給する。レーザ光源2は、レーザダイオード等であり、投光回路3から供給される駆動パルス信号に基づいて、所定の照射周波数f(図2参照)を有するパルス光を出射(投光)する。光レーダ装置1において、レーザ光源2から出射されたパルス光の光路上には、投光レンズ2a及びハーフミラー5が順に配設されており、レーザ光源2から出射された光は投光レンズ2aにて集束されハーフミラー5を透過して外部に向けて出射される。また、投光回路3は、パルス光Lを出射するタイミングでスタートパルス信号S1を制御回路4に出力する。
【0020】
レーダヘッド部1aには、光レーダ装置1の光走査手段としてのアクチュエータ6が接続されている。アクチュエータ6は、制御回路4に接続されている。アクチュエータ6は、制御回路4から出力される制御信号に基づいてレーダヘッド部1aを360°回転させ、レーザ光源2から出射されるパルス光Lの出射方向を所定の回転速度(走査速度)で繰り返し変更する。したがって、レーザ光源2から出射されるパルス光Lは、図2及び図3に示すように、光レーダ装置1の周辺の所定の走査範囲A(本実施の形態では、360°の範囲)を所定の走査周期Tで走査される。また、アクチュエータ6はパルス光Lの出射方向に対応する投光レンズ2aの角度検出信号を制御回路4に出力する。
【0021】
レーダヘッド部1aに設けられた受光手段としての受光素子7は、受光回路8に接続され、同受光回路8は制御回路4に接続されている。受光素子7は、フォトダイオード等であり、レーダヘッド部1aにおいて、パルス光Lの照射位置に存在する障害物Wに反射した光(パルス光L)を、前記ハーフミラー5を介して受光可能な位置に配置されている。レーダヘッド部1aにおいて、ハーフミラー5に反射され受光素子7に向かうパルス光の光路上には、受光レンズ7aが配設されており、パルス光Lの照射位置に存在する障害物Wにて反射した光(パルス光L)は、受光レンズ7aを介して受光素子7に集束される。受光回路8は、受光素子7の受光量に基づいた障害物Wからの反射光の受光時点に対応する受光信号S2を、制御回路4に出力する。
【0022】
制御回路4には、自然数入力手段及び走査周期入力手段としての入力装置9が接続されており、該入力装置9を介して操作者により任意の走査速度(回転速度)が入力可能となっている。制御回路4は、入力された操作者の任意の走査速度に対応する走査周期Tでパルス光Lを走査する旨の制御信号をアクチュエータ6に出力する。また、制御回路4の照射周波数設定部4aは、一走査周期当たりの照射パルス数(一走査周期当たりにパルス光Lが出射される回数)が自然数にならないように、パルス光Lの照射周波数fを設定し、該照射周波数fでパルス光Lを出射する旨の制御信号を投光回路3に出力する。また、制御回路4には、入力装置9を介して操作者により照射周波数fに影響を及ぼすパラメータとして任意の自然数を入力可能となっている。照射周波数設定部4aは、アクチュエータ6による前記パルス光の走査周期をT、前記パルス光の照射周期をt、前記任意の数をnとして、T=t(N+1/n)(但し、Nは自然数であり、nは2以上の自然数)を満たすように前記照射周波数fを設定する。すなわち、操作者の任意の自然数nが入力されると、照射周波数設定部4aは、走査周期Tがパルス光Lの照射周期tの自然数倍にならないように照射周波数f(1/t)を設定する。
【0023】
制御回路4の飛行時間計測部4bは、制御回路4に出力された前記スタートパルス信号S1及び受光信号S2に基づいてレーザ光源2が出射した光(パルス光)を受光素子7が受光するまでの時間、すなわちレーザ光源2から出射された光が障害物Wとの間を往復するまでに要する時間を計測し、その計測結果を制御回路4の距離演算部4cに出力する。制御回路4の距離演算部4cは、飛行時間計測部4bの計測結果に基づいて障害物Wまでの距離を算出する。また、距離演算部4cは、前記アクチュエータ6から出力される角度検出信号に基づいてパルス光Lの出射方向を判別する。そして、距離演算部4cは、算出した距離データと該データに対応するパルス光Lの出射方向(パルス光の照射位置p0〜p6、p0’〜p6’)とを含む測定結果を、衝突防止システムのメインコンピュータMに出力する。メインコンピュータMは、該測定結果に基づいて、障害物Wの存在を搭乗者に報知する旨の音声や警告音等を出力する。
【0024】
次に、本実施の形態の光レーダ装置1の作用について説明する。
入力装置9を介して操作者により照射周波数fに影響を及ぼすパラメータとして「2」が入力された場合、制御回路4の照射周波数設定部4aは、パルス光Lの照射周波数fを、パルス光の走査周期をT、パルス光の照射周期をtとして、T=t(N+1/2)を満たすように、すなわち一走査周期(1回転)当たりの照射パルス数がN+1/2になるように設定する。このため、図2に示すように、連続する走査周期におけるパルス光の出射タイミングにt・1/2のずれが生じる。したがって、走査回数を重ねる毎にパルス光の照射位置p0〜p6、p0’〜p6’が照射ピッチ(一走査における隣り合うパルス光の照射位置の間隔d(図3参照))の1/2倍ずつずれることとなる。よって、図3(a)に示すように、障害物Wがパルス光Lの走査範囲A内をパルス光Lの走査方向に沿って移動している場合、時間T1の走査により、受光素子7は、照射位置p1〜p5に出射され対象物にて反射された光を受光する。また、時間T2の走査により、受光素子7は、照射位置p1’〜p4’に出射され対象物にて反射された光を受光する。したがって、時間T1、T2における連続する2回の走査により、一走査における隣り合うパルス光Lの照射位置の間隔dの半分(1/2・d)の間隔で物体の有無を判別できる。このため、時間T1、T2の走査による計測の分解能(方位分解能)は、一回の走査による計測の分解能の約2倍となる。
【0025】
一方、一走査周期当たりの照射パルス数が自然数になるようにパルス光Lの照射周波数fが設定されている従来の光レーダ装置では、図3(b)に示すように、時間T1、T2の各走査においてパルス光Lは照射位置p0〜p6に照射される。したがって、時間T1、T2における計測の分解能は、一回の走査による計測の分解能と同程度となる。このような従来の光レーダ装置で、本実施の形態の光レーダ装置1による時間T1、T2の走査により得られる分解能と同等の分解能を得るためには、照射周期を約1/2倍(照射周波数fを約2倍)にしなければならない。すなわち、本実施の形態の光レーダ装置1によれば、従来のように一走査周期当たりの照射パルス数が自然数になるようにパルス光Lの照射周波数fが設定されている場合とは異なり、照射周波数fを2倍にすることなく擬似的に約2倍の分解能が得られる。
【0026】
また、図3(a)に示すように、本実施の形態の光レーダ装置1では、時間T1、T2、T3のそれぞれの時点における障害物Wの位置が測定される。ここで、走査速度を半分(走査周期を2倍)にして分解能を2倍にすることが考えられる。しかし、この場合、図3(c)に示すように走査周期が2倍となることから、時間T2の時点における障害物Wの位置が測定されない。本実施の形態によれば、前述したように、時間T1、T2、T3の各時点における障害物Wの変位をとらえることができるので、移動している障害物Wに対する追従性が維持される。
【0027】
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)光レーダ装置1の制御回路4により、一走査周期当たりの照射パルス数が自然数にならないように、レーザ光源2及び前記アクチュエータ6が制御される。このため、走査を繰り返す毎に、連続する走査周期Tの間で各走査周期Tにおけるパルス光Lの出射タイミングに、パルス光Lの照射周期tよりも短い時間Δt(本実施の形態ではΔt=t・1/2)分のずれが生じる。したがって、先の走査における隣り合うパルス光Lの照射位置p0〜p6の間に、その走査に連続する次の走査におけるパルス光Lの照射位置p0’〜p6’が設定され、分解能が擬似的に向上する。よって、測定対象物が移動体である場合であれ、移動体への追従性の低下を抑えながら、分解能を向上させることができる。その結果、静止している障害物Wに対しては、より精細に測定することができるとともに、移動している障害物Wに対しては、追従性を確保することができる。
【0028】
(2)光レーダ装置1の制御回路4は、走査周期Tがパルス光Lの照射周期tの自然数倍にならないように、言い換えれば、アクチュエータ6によるパルス光Lの走査周期をT、パルス光Lの照射周期をtとして、T=t(N+1/n)(但し、Nは自然数であり、nは2以上の自然数)を満たすように前記照射周波数fを設定する。このため、一走査周期当たりの照射パルス数がN+1/nになり、連続する走査周期Tにおけるパルス光Lの出射タイミングにt・1/nのずれが生じる。したがって、走査回数を重ねる毎にパルス光Lの照射位置p0〜p6、p0’〜p6’が照射ピッチ(一走査における隣り合うパルス光Lの照射位置の間隔d)の1/n倍ずつずれることとなり、分解能が擬似的に向上する。よって、走査速度を遅くして分解能を確保するようにした場合と異なり、移動体への追従性を低下させることなく、分解能を向上させることができる。
【0029】
(3)光レーダ装置1の制御回路4は、入力装置9に接続され、入力装置9を介して照射周波数fに影響を及ぼすパラメータとして任意の自然数が入力される。そして、制御回路4(照射周波数設定部4a)は、パルス光Lの照射周波数fを、光走査手段による前記パルス光Lの走査周期をT、パルス光Lの照射周期をt、前記入力装置9を介して入力された操作者の任意の自然数をnとして、T=t(N+1/n)を満たすように設定する。このため、走査回数を重ねる毎にパルス光Lの照射位置p0〜p6、p0’〜p6’が操作者により入力された任意の自然数に対応する分(照射ピッチの1/n倍ずつ)だけずれることとなる。したがって、操作者の任意の分解能に設定することができる。
【0030】
(4)光レーダ装置1の制御回路4は、入力装置9を介して任意の走査速度(回転速度)が入力される。したがって、操作者の任意の走査速度に対応する走査周期Tで追従性を確保したまま、分解能を向上させることができる。
【0031】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、入力装置9を介して操作者により照射周波数fに影響を及ぼすパラメータとして自然数nが入力されると走査周期Tがパルス光Lの照射周期tの自然数倍にならないように照射周波数f(1/t)が設定されるとしたがこのような態様に限定されない。例えば、入力装置9を省略し、一走査周期当たりの照射パルス数が自然数にならないように予め設定した照射周波数と走査周期とを制御回路4に予め記憶し、該照射周波数と走査周期とに基づいてレーザ光源2及びアクチュエータ6を制御するようにしてもよい。この場合、パルス光Lの走査周期をT、パルス光Lの照射周期をtとして、T=t(N+1/2)(但し、Nは自然数)を満たすように前記照射周波数fを設定すれば、一走査周期当たりの照射パルス数がN+1/2になる。このため、連続する走査周期におけるパルス光Lの出射タイミングにt・1/2、すなわち照射周期の半分のずれが生じる。したがって、先の走査におけるパルス光Lの照射位置から前記パルス光Lの照射ピッチの1/2倍ずれた位置に、その走査に連続する次の走査におけるパルス光Lの照射位置が設定され、分解能が擬似的に2倍となる。よって、走査速度を遅くして分解能を確保するようにした場合と異なり、移動体への追従性を低下させることなく、分解能を向上させることができる。また、パルス光Lの照射位置はパルス光Lの照射ピッチの1/2倍ずつずれるため、走査回数を重ねる毎に交互に変更される。したがって、パルス光Lを比較的短時間で等間隔に照射することができる。
【0032】
・上記実施の形態では、入力装置9を介して操作者の任意の走査速度(回転速度)が入力され、走査周期Tが設定されるようにしたが、走査速度は常に一定の値に設定されていてもよい。
【0033】
・上記実施の形態では、制御回路4は、走査周期Tがパルス光の照射周期tの自然数倍にならないようにパルス光の照射周波数fを設定したが、このような態様に限定されない。例えば、操作者の任意の照射周期t(照射周波数f)を入力可能な構成とし、走査周期Tがパルス光の照射周期tの自然数倍にならないように走査周期Tを設定するようにしてもよい。
【0034】
・上記実施の形態では、投光回路3から出力されるスタートパルス信号S1と受光信号S2に基づいて障害物Wまでの距離を算出したが、このような態様に限定されない。例えば、図4に示すように、光レーダ装置11におけるパルス光Lの光路上にハーフミラー10を設け、ハーフミラー10を透過した光を受光素子7が受光した時点とハーフミラー10に反射して障害物Wとの間を往復した光を受光素子7が受光した時点とに対応する受光信号S3に基づいて、障害物Wまでの距離を算出するようにしてもよい。なお、この場合、ハーフミラー10を図示しないアクチュエータにより回転若しくは揺動させて光を走査する。
【0035】
・上記実施の形態では、レーダヘッド部1aを回転させてパルス光Lを走査するようにしたが、例えば投光レンズ2aのみを駆動してパルス光Lを走査するようにしてもよい。また、レーザ光源2からの光を所定の方向へ反射する回転反射部材としてのハーフミラー10(図4参照)やポリゴンミラー等を回転させたり揺動させたりしてパルス光Lを走査するようにしてもよい。
【0036】
・上記実施の形態では、受光素子7の受光量に基づいた障害物Wからの反射光の受光時点に対応する受光信号S2に基づいてレーザ光源2から出射された光が障害物Wとの間を往復するまでに要する時間を計測し、障害物Wまでの距離を算出する光レーダ装置1に適用したが、このような態様に限定されない。例えば、レーザ光源2から出射された光と受光素子7に入射した光の位相差に基づいてレーザ光源2から出射された光が障害物Wとの間を往復するまでに要する時間を計測し、対象物までの距離を算出する距離測定装置に適用することもできる。
【0037】
・上記実施の形態では、レーダヘッド部1aを360°回転させ360°の走査範囲Aとしたが、走査範囲は360°でなくともよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施の形態の光レーダ装置の概略構成図。
【図2】光レーダ装置の作用を説明するための説明図。
【図3】(a)〜(c)光レーダ装置の作用を説明するための説明図。
【図4】他の実施の形態の光レーダ装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0039】
1,11…光レーダ装置、2…光出射手段としてのレーザ光源、4a…制御手段としての照射周波数設定部、6…光走査手段としてのアクチュエータ、7…受光手段としての受光素子、9…自然数入力手段及び走査周期入力手段としての入力装置、10…回転反射部材としてのハーフミラー、A…走査範囲、f…照射周波数、L…パルス光、T…走査周期、t…照射周期、W…検出対象物としての障害物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を出射する光出射手段と、
該光出射手段から出射された前記パルス光を所定の走査範囲に所定の走査周期をもって繰り返し走査する光走査手段と、
前記走査範囲内に存在する測定対象物にて反射した光を受光する受光手段と
を備え、前記光出射手段及び前記受光手段の出力に基づいて前記測定対象物までの距離を測定する光レーダ装置であって、
一走査周期当たりの照射パルス数が自然数にならないように、前記光出射手段及び前記光走査手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とする光レーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光レーダ装置において、
前記制御手段は、前記走査周期が前記パルス光の照射周期の自然数倍にならないように前記パルス光の照射周波数を設定することを特徴とする光レーダ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光レーダ装置において、
操作者により任意の自然数を入力可能な自然数入力手段を備え、
前記制御手段は、前記光走査手段による前記パルス光の走査周期をT、前記パルス光の照射周期をt、前記任意の自然数をnとして、
T=t(N+1/n)(但し、Nは自然数であり、nは2以上の自然数)
を満たすように前記照射周波数を設定することを特徴とする光レーダ装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光レーダ装置において、
前記制御手段は、前記光走査手段による前記パルス光の走査周期をT、前記パルス光の照射周期をtとして、
T=t(N+1/2)(但し、Nは自然数)
を満たすように前記照射周波数を設定することを特徴とする光レーダ装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の光レーダ装置において、
操作者により任意の走査周期を入力可能な走査周期入力手段を備えたことを特徴とする光レーダ装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光レーダ装置において、
前記制御手段は、前記走査周期が前記パルス光の照射周期の自然数倍にならないように前記走査周期を設定することを特徴とする光レーダ装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の光レーダ装置において、
前記光走査手段は、所定の回転速度にて回転する回転反射部材を備え、該回転反射部材の回転角度に応じた方向へ前記光出射手段からのパルス光を反射して同パルス光を走査することを特徴とする光レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−292308(P2008−292308A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138207(P2007−138207)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】