説明

光伝送システムおよび光伝送方法

【課題】ターゲットに対して照射するレーザ光の照射精度を向上させると共に、光伝送システム全体の小型軽量化を図る。
【解決手段】光伝送システム10は、航空機等の飛翔体に設置される基台11と、この基台11上にアジマス方向に回動自在に支持されるシステム本体12とから構成される。 基台11は、アジマス方向回動軸受13と、光発生・送出装置14と、光軸補正データ生成手段15とを備える。 アジマス方向回動軸受13には、メインレーザ光mおよびガイドレーザ光gを導光する軸孔13aが設けられる。 光発生・送出装置14は、メインレーザmを生成する。 光軸補正データ生成手段15は、光検出器20と画像処理装置21と、光軸補正処理装置22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機等の飛翔体に搭載し、飛行中のターゲット(目標物)に対して、レーザ光を射出し、その反射光を受信してターゲットを捕捉・追尾することができるようにした光伝送技術に係り、特にレーザ光の射出精度の向上を図ることができる光伝送システムおよび光伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光伝送システムは、飛行中のターゲット(目標物)からの赤外光を受けることにより、ターゲットの位置が特定されると共に、この特定されたターゲットに対して、レーザ光を照射してターゲットを捕捉・追尾することができる光伝送システムが実用化されている。このような光伝送システムとして、特開2000−65497号公報(特許文献1参照)に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1には、図7に示すようにターゲット側から赤外光fを受けることにより、レーザ光eをターゲットに向けて照射する構成の光伝送システム1が示されている。
【0004】
この光伝送システム1は、ターゲット(ミサイル)側から赤外光fを受ける反射ミラー2と、この反射ミラー2からの赤外光fをダイクロイックミラー3を介して受けることにより、ターゲットを撮像する赤外光撮像器4と、この赤外光撮像器4により撮像した映像データからターゲットの位置を検出するターゲット位置検出器5と、このターゲット位置検出器5により検出した位置データに基づき、反射ミラー2をターゲット側に指向させる駆動部6と、ダイクロイックミラー3および反射ミラー2を介してターゲットに照射するレーザ光eを送信するレーザ光送出器7と、を備えている。
【0005】
このように、従来の光伝送システム1によれば、飛行中のターゲットから赤外光fを受けることにより、目標物の位置が特定されると共に、この特定されたターゲットにレーザ光eを照射してターゲットを捕捉・追尾することができる。
【0006】
しかしながら、従来の光伝送システム1によれば、ターゲット側から受ける赤外光fおよびターゲットからのレーザ光eの反射波を一つの反射ミラー2を介して行う構成である。
【0007】
光伝送システム1を収納するケーシングに外力、例えば熱、振動、加速度,風,重力等の外乱が加わると、その作用力によりケーシングが変形する場合がある。
【0008】
そして、その結果として、ターゲケットへの光軸がずれる惧れがあり、ターゲット位置検出器5やレーザ光送出器7側から送出されるレーザ光eの照射精度に狂いが生じていた。
【0009】
また、ターゲット側から受ける赤外光fおよびレーザ光送出器7から送出されるレーザ光eのターゲットからの反射光を反射ミラー2を介して受光する構成であるので、反射ミラー2による赤外光fおよびレーザ光eの導光路の構成が複雑且つ大型化する等の欠点があった。
【特許文献1】特開2000−65497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、光伝送システムとして、ターゲットに対して照射するレーザ光の照射精度を向上させると共に、光伝送システム全体の小型化・軽量化を図ることができる光伝送システムおよび光伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、所望のターゲットの方向へ光を照射するレーザ光照射系統と、このレーザ光照射系統の管理光軸を測定するレーザ光軸測定系統と、このレーザ光軸測定系統による管理光軸の測定の結果、この管理光軸がずれている場合に、この光軸のずれを補正するレーザ光軸補正系統と、を有するレーザ光伝送系統を備え、上記レーザ光照射系統は、光発生装置と、この光発生装置から出力される照射光を導光する反射ミラー群を備える導光路と、この導光路に導光された照射光をターゲット側へ照射する微動鏡装置とを備え、上記レーザ光軸測定系統は、測定光発生装置と、この測定光発生装置から出力される測定光を、上記照射光と共に導光する反射ミラーを備える導光路と、この導光路に導光された測定光の管理光軸に垂直に設けられた垂直反射ミラーと、この垂直反射ミラー群により反射された測定光を、上記測定光発生装置側にて受光するように設けられた光検出器とを備え、上記レーザ光軸補正系統は、上記光検出器により検出した上記測定光の検出データに基き、光軸のずれを補正する光軸補正データを生成する光軸補正データ生成手段と、上記光軸補正データに基き、上記微動鏡装置の微動鏡を角度制御する微動鏡駆動部とを備えたことを特徴とする光伝送システムを提供する。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によれば、レーザ光照射系統の光発生装置から出力される照射光を、反射ミラーおよびダイクロイックミラーを有する導光路を介して微動鏡側へ導光するステップと、レーザ光軸測定系統の測定光発生装置から出力される測定光を、上記導光路を介して垂直反射ミラー側へ導光するステップと、上記垂直反射ミラーにより反射した測定光を、上記導光路を往復して導光し、光検出器側へ導かれるステップと、上記導かれた測定光を受信した光検出器により管理光軸のずれを検知するステップと、この管理光軸にずれがある場合に、この光軸のずれを補正するため、光軸補正データ生成手段により光軸補正データを生成するステップと、この生成された光軸補正データに基き、微動鏡駆動部にて微動鏡を角度制御するステップと、を具備することを特徴とする光伝送方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、射出するメインレーザ光のターゲット側への照準精度を一層向上させることができると共に、照準合わせの調整が容易且つ確実であり、更には装置全体を小型・軽量化することができる。
【0014】
従って、航空機等の飛翔体に搭載して使用するにあたって、極めて有用な光伝送システムおよび光伝送方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る光伝送システムの実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の光伝送システム10の実施形態を示すの概要図である。
【0017】
図2は、本発明に係る光伝送システム10のレーザ光伝送系統を示す概要図である。
【0018】
光伝送システム10は、航空機等の飛翔体に設置される基台11と、この基台11上にアジマス方向に回動自在に支持されるシステム本体12とから構成される。
【0019】
基台11は、図1に示すように、システム本体12をアジマス方向に回動自在に支持するアジマス方向回動軸受13と、光発生・送出装置14と、光軸補正データ生成手段15とを備える。
【0020】
アジマス方向回動軸受13は、基台11の中心部上方に設置され、基台11上においてシステム本体12をアジマス方向に回動自在に指示される。
【0021】
また、このアジマス方向回動軸受13には、回動軸中心部に、後述するメインレーザ光mおよびガイドレーザ光gを導光する軸孔13aが設けられる。
【0022】
光発生・送出装置14は、メインレーザ光mを生成し、出力するメインレーザ発生装置16と、ガイドレーザ発生装置17と、これらの各装置16および17にて出力されるメインレーザ光mおよびガイドレーザ光gを導光するダイクロイックミラー(波長選択ミラー)18および19とから構成される。
【0023】
メインレーザ発生装置16は、ターゲットへ照射するメインレーザ光mを生成し、システム本体12側からターゲットへ射出するために設けられる。
【0024】
また、ガイドレーザ発生装置17は、ターゲット照準調整用として測定レーザ光gを生成し、メインレーザ光mをターゲットに対して正確に導光できるようにガイド用に設けたものである。
【0025】
ダイクロイックミラー18および19は、メインレーザ光mおよびガイドレーザ光gを導光路qに沿って導光可能なように、メインレーザ発生装置16およびガイドレーザ発生装置17の各レーザ光mおよびgの出力端側に配置される。
【0026】
また、光軸補正データ生成手段15は、光検出器20と、画像処理装置21と、光軸補正処理装置22とを備えている。
【0027】
光検出器20は、メインレーザ光mの光軸位置を検出する合わせ鏡25と、この光軸位置を表示する光画像検出器としてのCCD(電荷結合素子)26とを備えている。
【0028】
この光検出器20は、CCD26により検出した光の焦点座標(検出座標s,(s´))位置の検出データh1を生成し、この検出データh1を含む検出データ信号h1´を発信するようになっている。
【0029】
この光検出器20は、図1に示すように、基台11内にあって、光発信・送出装置14側のダイクロイックミラー18および19を通過してくるガイドレーザ光gを受光する位置に設けられる。
【0030】
光検出器20は、図3(a)および図4(a)に示すように、光伝送システム10として予め定められた管理光軸zに、ガイドレーザ光gがずれなくて検出される場合と、ずれて検出される場合の2通りを検出するものである。
【0031】
図3(a)には、管理光軸zに入射するガイドレーザ光gがずれない場合を例示している。
【0032】
ガイドレーザ光gが管理光軸zからずれていない場合には、図3(b)に示すように、CCD26の画素面上の中心座標pに、ガイドレーザ光gの検出座標sが重なって現れるようになる。
【0033】
また、図4(a)に示すように、ガイドレーザ光gが管理光軸zからずれた場合には、図4(b)に示すように、合わせ鏡25の特徴であるハーフミラー効果により、CCD26の画素面上において、その中心座標pからずれ方向に受光したことを示す検出座標s´が現れるようになる。
【0034】
CCD26は、図3(b)および図4(b)に示すように、受光したガイドレーザ光gの中心座標pおよび検出座標s(s´)の座標データが得られ、図1および図2に示すように、この座標データに基く検出データh1を、検出データ信号h1´により発信するようになっている。
【0035】
なお、光検知器20は、合わせ鏡25に限らず、ガイドレーザ光gのビームを絞り込み機能を有する、図示しないコリメータ(レンズ)に代替して使用することもできる。
【0036】
画像処理装置21は、検出データ信号h1´を受信することにより、画像データh2を生成し、この画像データh2を含む画像データ信号h2´を発信するようになっている。
【0037】
光軸補正処理装置22は、画像データ信号h2´を受信することにより、光軸補正データh3を生成し、この光軸補正データh3を含む光軸補正データh3´を発信するようになっている。
【0038】
一方、システム本体12は、基台11上に支持されるドーム状(一部のみ図示)のケーシング30と、このケーシング30内に収容された対をなす装置枠体31と、この装置枠体31にエレベーション方向に回動自在に支持された支持枠体32と、この支持枠体32内に備えられる機器群33と、基台11側から送出されるメインレーザ光mおよびガイドレーザ光gを機器群33側へ導光する導光路qとから構成される。
【0039】
ケーシング30は、その底部が、基台11のアジマス方向回動軸受13に固定され、アジマス方向に回動可能に設けられる。
【0040】
装置枠体31は、ケーシング30の底部から両側に起立する対をなすスタンド部31aと、このスタンド部31aの内方に各々設けられる一対のエレベーション方向回動軸受34とを備える。
【0041】
支持枠体32は、一対のエレベーション方向回動軸受34にエレベーション方向に回動自在に支持されると共に、機器群33が備えられる。
【0042】
この支持枠体32内には、各種機器からなる機器群33が備えられる。
【0043】
また、対の装置枠体31と支持枠体32との間に設置されたエレベーション方向回動軸受34の一方には、軸孔34aが形成され、この軸孔34aがメインレーザ光mおよびガイドレーザ光gを案内する導光路qの一部を構成している。
【0044】
メインレーザ光mおよびガイドレーザ光gは、基台11側から導光路qを介して機器群33側へ導光されるようになっている。
【0045】
この機器群33は、赤外(レーザ)光の受信機能を有する赤外光撮像器35と、この赤外光撮像器35にて撮像したターゲットに照準を合わせてメインレーザ光mを照射する微動鏡装置36と、この微動鏡装置36から照射したメインレーザ光mがターゲット側から反射する反射レーザ光m1を受信して、ターゲットの方位と距離を測定する反射光受信器37とから構成される。
【0046】
この機器群33は、ターゲット側へ照準すると共に、ターゲット側から照射されるレーザ光に対する妨害波をターゲット側へ向け照射するもので、赤外光撮像器35により、ターゲット側から発する赤外光aを検知してターゲットの方位を認知し、この方位へ微動鏡装置36から赤外レーザ光(以下、メインレーザ光mという。)を照射する一方、この照射されたメインレーザ光mを反射光受信器37によりターゲットからの反射レーザ光m1として受光する仕組みになっている。
【0047】
更に機器群33について詳述すると、赤外光撮像器35は、ターゲット側が発する赤外光aを受信することにより、ターゲットの方位を検知し、この検知した方位データを基に、微動鏡装置36へ照射レーザ光mを送出するようになっている。
【0048】
微動鏡装置36は、基台11から送出されたメインレーザ光mを受信すると同時に、このメインレーザ光mをターゲットへ照射してターゲットの捕捉・追尾ができるようになっている。
【0049】
この微動鏡装置36は、具体的には、ターゲット、例えばミサイルから発するプルーム(排気ガス等の高温物体)長が3〜5μm(中間赤外線波長帯)帯の赤外光aを最初に捉えて、ターゲットの方位を検知し、方位が検知されるとこの方位へメインレーザ光mを照射する機能を備えている。
【0050】
反射光受信器37は、ターゲット側から反射する反射レーザ光m1を受光して、ターゲットまでを測距する測距機能を有している。
【0051】
導光路qは、システム本体12のケーシング30の底部からこのケーシング30の側壁に沿って迂回し、支持枠体32内へ導かれる空間に形成される。
【0052】
この導光路qは、基台11の低部からケーシング30の壁面に沿うように迂回し、支持枠体32内に至る空間に設けられたもので、基台11のアジマス方向回動軸受13の軸孔13aに対向する位置から装置枠体31を迂回した位置にそれぞれ設けられる反射ミラー群40(40a〜40c)と、支持枠体32内に設けられるダイクロイックミラー41とから構成される。
【0053】
この導光路qは、基台11側から送出されメインレーザ光mおよびガイドレーザ光gを反射ミラー40a〜40cにより反射させ、ダイクロイックミラー41側へ導光されるようになっている。
【0054】
また、導光路qを通って支持枠体32内へ導かれたメインレーザ光mおよびガイドレーザ光gは、ダイクロイックミラー41により2方向に分岐される。
【0055】
一方のガイドレーザ光gは、ダイクロイックミラー41を透過して垂直反射ミラー42へ導かれ、他方のメインレーザ光mは、ダイクロイックミラー41で反射して微動鏡装置36に導かれるようになっている。
【0056】
この光伝送システム10は、図1に示すように、基台11側から導光路qを介して機器群33側へメインレーザ光mを導光するレーザ光伝送系統45が構成され、このレーザ光伝送系統45でメインレーザ光mが管理光軸zに従って導光されるようになっている。
【0057】
レーザ光伝送系統45は、メインレーザ光mを照射するレーザ光照射系統Aと、光軸補正データ生成手段15の光検出器20によりメインレーザ光mのレーザ光軸を測定するレーザ光軸測定系統Bと、メインレーザ光mのレーザ光軸が、管理光軸zからずれている場合に、このレーザ光軸を補正するレーザ光軸補正系統Cとに区分される。
【0058】
レーザ光照射系統Aは、光発生装置としてのメインレーザ発生装置16と、このメインレーザ発生装置16から出力されるメインレーザ光mを管理光軸zに沿って導光する反射ミラー群40およびダイクロイックミラー41を備える導光路qと、この導光路qに導光されたメインレーザ光mをターゲット側へ照射する微動鏡装置36とから構成される。
【0059】
この微動鏡装置36は、ターゲットに、メインレーザ光mを直接照射する微動鏡36aと、この微動鏡36aの向きをターゲットに照準するように回動駆動させる微動鏡駆動部36bとを備える。
【0060】
また、レーザ光軸測定系統Bは、測定光発生装置としてのガイドレーザ発生装置17と、このガイドレーザ発生装置17から出力されるガイドレーザ光gを、メインレーザ光mと共通して導光する反射ミラー群40を備える導光路qと、この導光路qにおける管理光軸zに垂直に面するように設置された垂直反射ミラー42と、この垂直反射ミラー42により反射されたガイドレーザ光gを、導光路qの前段位置にて受光するように基台11側に設けられた光検出器20とから構成される。
【0061】
更に、レーザ光軸補正系統Cは、レーザ光軸補正データh3を生成する光軸補正データ生成手段15を備えている。
【0062】
この光軸補正データ生成手段15は、光検出器20と、この光検出器20から出力される検出データh1を受信して画像データh2を生成し出力する画像処理装置21と、画像データh2を受信して光軸補正データh3を生成し出力する光軸補正処理装置22とから構成される。
【0063】
また、システム本体12を支持するアジマス方向回動軸受13およびこのシステム本体12の装置枠体31に支持枠体32を支持するエレベーション方向回動軸受37は、図示しない制御手段により駆動するモータにより、回動駆動するようになっている。
【0064】
光伝送システム10が、レーザ光伝送系統45を備えることにより、飛行中のターゲット(目標物)に対して、正確にメインレーザ光mを照射し、捕捉・追尾することができる。
【0065】
次に、光伝送システム10の作用について図1〜図4を参照して説明する。
【0066】
光伝送システム10を搭載した飛翔体が、例えばミサイル等のターゲットから発する赤外光aを受けると、赤外光撮像器35が赤外光aを捉えて撮像する。
【0067】
赤外光撮像器35には、画面上でのターゲットの方位分析が行なわれる。
【0068】
この方位の分析結果により、レーザ光伝送系統45のレーザ光照射系統A、レーザ光軸測定系統Bおよびレーザ光軸補正系統Cが順次作動する。
【0069】
すなわち、レーザ光伝送系統45のレーザ光照射系統Aが先ず作動することにより、基台11側から機器群33側へ、ターゲットに照射する所定出力のメインレーザ光mが送信される。
【0070】
機器群33の微動鏡装置36は、メインレーザ光mを微動鏡36aにより受光させると同時に、反射させてターゲットの方位へ照射するようになっている。
【0071】
この照射されたメインレーザ光mは、ターゲット側から反射作用を受け、その反射波である反射レーザ光m1を機器群33の反射光受信器37に受光させる。
【0072】
反射光受信器37は、受光した反射レーザ光m1を検知して、ターゲットの方位および測距を行う。
【0073】
ターゲットに対する方位および測距が行なわれた結果、光発信・送出装置14からメインレーザ光mがターゲットを捕捉・追尾しながら微動鏡装置36からメインレーザ光mを照射する。
【0074】
次に、レーザ光伝送系統45のレーザ光軸測定系統Bが作動する。
【0075】
すなわち、光発信・送出装置14のガイドレーザ発生装置17が作動し、このガイドレーザ発生装置17から出力するガイドレーザ光gを導光路qへ送出する。
【0076】
導光路qへ送出されたガイドレーザ光gは、垂直反射ミラー42により入射する管理光軸zに対して垂直に反射されて、導光路qの逆方向、すなわち復路方向へ導光される。
【0077】
ガイドレーザ装置17から出力されたガイドレーザ光gが、導光路qを往復することによりガイドレーザ光gの管理光軸zのずれを検出する。
【0078】
この検出した結果、ずれがない場合には、図3(b)に示すように、CCD26の画素面上の中心座標pと検出座標sが重なるようになる。
【0079】
従って、レーザ光軸測定系統Bは、作動しない。
【0080】
一方、管理光軸zのずれを検出した場合には、図4(b)に示すように、CCD26の画素面上の中心座標pとずれた位置に検出座標s´が流れ星状に現れる。
【0081】
なお、この状態においては、微動鏡36aから照射されるメインレーザ光mは、図2の点線矢視m´で示すように、ターゲットに対する方位がずれている。
【0082】
この流れ星状に現れた検出座標s´を検出した光検出器20は、この検出データh1を含む検出データ信号h1´を生成し、画像処理装置21側へ発信する。
【0083】
検出データ信号h1´を受信した画像処理装置21は、光軸補正データh3を生成し、このデータを含む光軸補正データ信号h3´を微動鏡装置36側へ発信する。
【0084】
光軸補正データ信号h3´を受信した微動鏡装置36は、補正角度データh4を生成し、このデータh4に基き、微動鏡駆動部36bを作動させ、微動鏡36aの鏡面を所望の角度に補正させる。
【0085】
従って、微動鏡36aから照射されたメインレーザ光m´は、照射方位が補正されたメインレーザ光mとしてターゲットに対して正確に照射させることができる。
【0086】
このように、メインレーザ発生装置16から出力されるメインレーザ光mの管理光軸zにずれが生じた場合に、レーザ光照射系統のメインレーザ発生装置16から出力されるメインレーザ光mを、反射ミラー群40およびダイクロイックミラー18,19および41を有する導光路qを介して微動鏡36a側へ導光する<ステップ1>と、
レーザ光軸測定系統Bのガイドレーザ光発生装置17から出力されたガイドレーザ光gを、導光路qを介して垂直反射ミラー42側へ導光する<ステップ2>と、
垂直反射ミラー42により反射したガイドレーザ光gが、導光路qを往復して導光し、光検出器20側へ導かれる<ステップ3>と、
ガイドレーザ光gを受信した光検出器20は、この管理光軸zに対する光軸のずれを検知する<ステップ4>と、
光軸がずれている場合には、この光軸のずれを補正するため、光軸補正データ生成手段15により光軸補正データh3を生成する<ステップ5>と、
この生成された光軸補正データh3に基き、微動鏡駆動部36bにて微動鏡36aを角度制御する<ステップ6>、の各ステップを踏むことにより、ターゲットに対するメインレーザ光mの指向性の調整を行う。
【0087】
このように、光伝送システム10によれば、メインレーザ光mの指向性の調整にあたって、ガイドレーザ光gをメインレーザ光mと同じ導光路q内において、同じ光軸の方向に合わせて導光させるようにしている。
【0088】
従って、ガイドレーザ光gの管理光軸zのずれを検知することにより、メインレーザ光mの管理光軸zのずれを検知するようにしたから、特別な管理光軸zの補正手段を必要とすることなく実現することができる。
【0089】
なお、光伝送システム10のレーザ光伝送系統45のレーザ光軸測定系統Bは、図5に示すように、導光路qの微動鏡36a側の端部に設けられるダイクロイックミラー41を通過する光軸の延長線上に光検出器20を設置したレーザ光軸測定系統B1として設けた構成のものであってもよい。
【0090】
すなわち、ガイドレーザ発生装置17から出力されるガイドレーザ光gを導光路qの往路のみによるガイドレーザ光gの管理光軸zのずれを検出させるようにしたレーザ光軸測定系統B1であってもよい。
【0091】
このレーザ光軸測定系統B1を採用した場合には、ガイドレーザ光gを導光路qの往路のみによる管理光軸zに対する光軸のずれが検出されるので、レーザ光軸測定系統Bの場合に比べて管理光軸zにずれがある場合には、そのずれ分が半分となる。
【0092】
従って、光検出器20の検知精度が同じであれば、ずれ分の検出量は半減することになる。
【0093】
そこで、このレーザ光軸測定系統B1を採用する場合には、例えば光検出器20のCCD26の画素密度を向上させることにより検知精度を低下させずに対応させることができる。
【0094】
なお、レーザ光軸測定系統B1のその他の構成は、図2に示すレーザ光軸測定系統Bと同様構成であるので説明を省略する。
【0095】
また、このレーザ光軸測定系統B1を採用する場合には、レーザ光軸測定系統Bの場合のガイドレーザ発生装置17から出力されるガイドレーザ光gを、導光路qを介して垂直反射ミラー42側へ導光する<ステップ2>と、
垂直反射ミラー42により反射したガイドレーザ光gを、導光路qを往復して導光し、光検出器20側へ導かれる<ステップ3>と、
往復導光されたガイドレーザ光gを受信した光検出器20により管理光軸z
に対する光軸のずれを検知する<ステップ4>の、各ステップ<ステップ2>〜<ステップ4>はなく、以下のステップ<ステップ2>および<ステップ3>が加わる。
【0096】
すなわち、レーザ光軸測定系統Bの場合における、ガイドレーザ発生装置17から出力されるガイドレーザ光gを、導光路qを介して光検出器20側へ導光する<ステップ2>と、
ガイドレーザ光gを受信した光検出器20により、管理光軸zの方位のずれを検知する<ステップ3>の各ステップである。
【0097】
従って、このレーザ光軸測定系統B1を採用する場合には、光軸補正データ生成手段15をシステム本体12側に設けることができるので、光軸補正データ生成手段15と機器群33の設置部位を近接させることができ、その分データ信号配線が容易且つ確実になる。
【0098】
更に、光伝送システム10のレーザ光伝送系統45のレーザ光軸測定系統Bは、図6に示すように、レーザ光軸測定系統B2として構成してもよい。
【0099】
すなわち、ダイクロイックミラー18および19に、当該ダイクロイックミラー18および19の向きを微調整するダイクロイックミラー駆動部46aおよび46bを設けた構成とすることができる。
【0100】
この測定系統B2の構成によれば、レーザ光軸測定系統B1の構成と比較して、微動鏡36aを微調整するのではなく、光発信・送出装置14側のダイクロイックミラー18および19の向き(傾斜角度)を微調整するものである。
【0101】
また、レーザ光軸測定系統B2を採用した場合には、メインレーザ発生装置16およびガイドレーザ発生装置17それぞれのダイクロイックミラー18および19のそれぞれの向きの微調整が任意に可能となる。
【0102】
従って、両ミラー18および19の光軸相互の調整や管理が必要なく、光伝送システム10の使用時に必要に応じて微調整することができる。
【0103】
すなわち、レーザ光軸補正系統Cの光軸補正処理装置22側から出力される光軸補正データh3は、光発信・送出装置14の両ミラー18および19の向きを微調整するダイクロイックミラー駆動部46aおよび46bの向きを補正可能にするデータであり、ダイクロイックミラー駆動部46aおよび46bの少なくとも一方を同時に、または、個別に微調整することができる。
【0104】
なお、レーザ光軸測定系統B2のその他の構成および作用については、図2に示すレーザ光軸測定系統Bと同様であるので説明を省略する。
【0105】
また、光伝送システム10によれば、メインレーザ光mの導光路qを利用したガイドレーザ光gにより、メインレーザ光mの管理光軸zのずれを検出することができるようにしたものである。
【0106】
従って、メインレーザ光mをターゲット側へ照射する際に、その管理光軸zの調整が容易且つ確実になると共に、特別な装置・手段を要せず、全体として小型・軽量化を図ることができ、特に航空機等の飛翔体に搭載して用いるに好適するものである。
【0107】
更にまた、光伝送システム10によれば、メインレーザ光mおよびガイドレーザ光gを導光させる導光路qは、導光方向の複数箇所をほぼ直角に形成し、この直角部(コーナ部)に反射ミラー群40およびダイクロックミラー41を配置した構成にしたが、導光方向の複数箇所をほぼ直角に形成する必要はなく、例えば、ほぼ90°より大きく設けたり、更には小さく設けたりすることができる。
【0108】
例えば、ほぼ90°より大きく設けた場合(図示せず)には、導光路qを光路方向に沿って細長く形成することができる。
【0109】
また、例えば、ほぼ90°より小さく設けた場合(図示せず)には、導光路qを導光方向に沿って短く形成することができる。
【0110】
従って、光伝送システム10の設置場所やシステム本体12自体の形状・構造に制約がある場合に対応して、導光路qの形状・構造を、細長いものにするか、短いものにするか、更には中間的なものにするかを適宜に選択して設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明に係る光伝送システムの実施形態を示す概要図。
【図2】本発明に係る光伝送システムにおけるレーザ光伝送系統を示す概要図。
【図3】本発明に係る光伝送システムに用いる光検出器により、正常に光検出した状態を示す概要図で、(a)は、光検出手段での導光状態を示す概要図、(b)は、光検出手段による光検出した結果を表示するCCDの正面図。
【図4】本発明に係る光伝送システムに用いる光検出器により、異常を検出した状態を示す概要図で、(a)は、光検出器での導光状態を示す概要図、(b)は、光検出器による光検出した結果を表示するCCDの正面図。
【図5】本発明に係る光伝送システムにおけるレーザ光伝送系統の他の実施形態を示す概要図。
【図6】本発明に係る光伝送システムにおけるレーザ光伝送系統の更に他の実施形態を示す概要図。
【図7】従来の光伝送システムを示す概要図。
【符号の説明】
【0112】
10 光伝送システム
11 基台
12 システム本体
13 アジマス方向回動軸受
13a,34a 軸孔
14 光発信・送出装置
15 光軸補正データ生成手段
16 メインレーザ発生装置(光発生装置)
17 ガイドレーザ発生装置(測定光発生装置)
18,19,41 ダイクロイックミラー(波長選択ミラー)
20 光検出器
21 画像処理装置
22 光軸補正処理装置
25 合わせ鏡(光軸解析手段)
26 CCD
30 ケーシング
31 装置枠体
31a スタンド部
32 支持枠体
32a 透孔
33 機器群
34 エレベーション方向回動軸受
35 赤外線撮像器
36 微動鏡装置
36a 微動鏡
36b 微動鏡駆動部
40(40a〜40c) 反射ミラー群
42 垂直反射ミラー
45 レーザ光伝送系統
46a,46b ダイクロイックミラー駆動部
A レーザ光照射系統
B,B1,B2 レーザ光軸測定系統
C レーザ光軸補正系統
a 赤外光
a1 反射レーザ光
h1(h1´) 検出データ(信号)
h2(h2´) 画像データ(信号)
h3(h3´) 光軸補正データ(信号)
h4 補正角度データ
q 導光路
m メインレーザ光(照射光)
m1 反射レーザ光
g ガイドレーザ光(測定光)
p 中心座標
s,s´ 検出座標
z 管理光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のターゲットの方向へ光を照射するレーザ光照射系統と、このレーザ光照射系統の管理光軸を測定するレーザ光軸測定系統と、このレーザ光軸測定系統による管理光軸の測定の結果、この管理光軸がずれている場合に、この光軸のずれを補正するレーザ光軸補正系統と、を有するレーザ光伝送系統を備え、
上記レーザ光照射系統は、光発生装置と、この光発生装置から出力される照射光を導光する反射ミラー群を備える導光路と、この導光路に導光された照射光をターゲット側へ照射する微動鏡装置とを備え、
上記レーザ光軸測定系統は、測定光発生装置と、この測定光発生装置から出力される測定光を、上記照射光と共に導光する反射ミラーを備える導光路と、この導光路に導光された測定光の管理光軸に垂直に設けられた垂直反射ミラーと、この垂直反射ミラーにより反射された測定光を、上記測定光発生装置にて受光するように設けられた光検出器とを備え、
上記レーザ光軸補正系統は、上記光検出器により検出した上記測定光の検出データに基き、光軸のずれを補正する光軸補正データを生成する光軸補正データ生成手段と、上記光軸補正データに基き、上記微動鏡装置の微動鏡を角度制御する微動鏡駆動部とを備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
上記レーザ光伝送系統は、上記レーザ光照射系統の光発生装置およびレーザ光軸測定系統の測定光発生装置のそれぞれから発生される光が、共通の導光路の反射ミラー群を介して導光されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項3】
上記レーザ光照射系統の光発生装置は、赤外レーザを発生させるメインレーザ光発生装置であることを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項4】
上記レーザ光照射系統の微動鏡装置は、微動鏡と、この微動鏡の角度制御をする微動鏡駆動部とを備えたことを特徴とするとする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項5】
上記レーザ光軸測定系統の測定光発生装置は、ガイドレーザ発生装置であることを特徴とするとする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項6】
上記レーザ光軸測定系統の光検出器は、合わせ鏡と、CCDの組合せにより構成したことを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項7】
上記レーザ光軸補正系統は、光検出器により検出した検出データに基き、光軸のずれを補正する光軸補正データを生成する光軸補正データ生成手段と、上記光軸補正データに基き、微動鏡装置の微動鏡を角度制御する微動鏡駆動部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項8】
上記レーザ光軸補正系統は、光検出器により検出した検出データに基き、光軸のずれを補正する光軸補正データを生成する光軸補正データ生成手段と、上記光軸補正データに基き、光発生装置および測定光発生装置から出力される照射光および測定光を反射させるダイクロイックミラーのそれぞれの反射角を調整可能に設けられるダイクロイックミラー駆動部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項9】
上記レーザ光軸補正系統の光軸補正データ生成手段は、レーザ光軸測定系統の光検出器にて検出した検出データに基き、画像データを生成する画像処理装置と、この画像処理装置により生成した画像データに基き、光軸補正データを生成する光軸補正処理装置を備えたことを特徴とするとする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項10】
レーザ光照射系統の光発生装置から出力される照射光を、反射ミラーおよびダイクロイックミラーを有する導光路を介して微動鏡側へ導光するステップと、
レーザ光軸測定系統の測定光発生装置から出力される測定光を、上記導光路を介して垂直反射ミラー側へ導光するステップと、
上記垂直反射ミラーにより反射した測定光を、上記導光路を往復して導光し、光検出器側へ導かれるステップと、
上記導かれた測定光を受信した光検出器により管理光軸のずれを検知するステップと、
この管理光軸にずれがある場合に、この光軸のずれを補正するため、光軸補正データ生成手段により光軸補正データを生成するステップと、
この生成された光軸補正データに基き、微動鏡駆動部にて微動鏡を角度制御するステップと、を具備することを特徴とする光伝送方法。
【請求項11】
上記レーザ光軸測定系統の測定光発生装置から出力される測定光を、上記導光路を介して垂直反射ミラー側へ導光するステップおよび上記垂直反射ミラーにより反射した測定光を、上記導光路を往復して導光し、光検出器側へ導かれるステップは、
レーザ光軸測定系統の測定光発生装置から出力される測定光を、上記導光路の往路端部に設けられる光検出器側へ導かれるステップであることを特徴とする請求項10記載の光伝送方法。
【請求項12】
上記微動鏡駆動部にて微動鏡を角度制御するステップは、
光発生装置および測定光発生装置のダイクロイックミラー駆動部にてダイクロイックミラーを角度制御するステップであることを特徴とする請求項10記載の光伝送方法。
【請求項13】
上記導光路に設けられる反射ミラーおよびダイクロックミラーの設置角度を調整することにより、光路方向に沿って細長く、または短く形成することを特徴とする請求項10記載の光伝送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−189256(P2006−189256A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381480(P2004−381480)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】